サキュバスの砦、囚われの勇者(39)
「──う…ぅ」
俺は今、目を覚ましたはずだ。
なのに周囲は真っ暗で、瞼を開けていないかのような錯覚を感じる。
腕を動かすと、じゃらりという鎖が擦れる音が響いた。
四肢を繋がれ大の字に固定されているのだ。
しかも屈辱的な事に、全ての着衣を奪われた上で。
どのくらいの時間が経ったのだろう。
俺は…選ばれし勇者たるはずの俺は魔物の砦に攻め込み、敗れ、囚われた。
砦に潜む魔物の数は想像を遥かに超えていた。
そしてその砦が魔物の軍勢にとってどういう施設なのかもまた、予想だにしないものだった。
「目覚めたか、囚われの勇者殿」
不意に視界が明るくなる。
…とはいっても、たかが松明一本が灯されただけだが。
それでもさっきまで暗闇に慣らされていた目は、眩むような感覚に襲われた。
「…あはっ、勇者ともあろう者が良いザマじゃの」
声の主は少女のような外見をしている。
しかしその背には蝙蝠のそれに似た翼が生え、淡い桃色の頭髪からは羊のような二本の角が覗いていた。
「なぜ、俺を生かしている」
「それはこれから解ろう、嫌というほどのぅ」
外見上の年齢にそぐわない喋り方で、魔族の少女は俺の心をわざと逆なでする。
くすくすと悪戯に笑うその表情は、幼く見えるはずなのにやけに淫猥に映った。
「どれ…せっかくじゃ、まずは妾が味利きするとしようかの」
彼女はその左腕を俺に翳し、聞き取れないほど小さな声でなにかの魔法を詠唱したようだった。
「うっ…!?」
途端に身体が力を失う。
もともと鎖に吊るされた状態であったため、自分の足で立ってはいなかった。
しかし今は四肢に動作を命令する事さえできないほどに、全ての筋肉が弛緩した状態だ。
「なにを…した…」
決して滑舌はよくないが、かろうじて喋る事は可能らしい。
少女は少し驚いた顔をする。
「呼吸のための筋力にはできるだけ作用せぬよう心がけはしたが、まさか口がきけるとはの…さすが勇者といったところか」
「…嬉しくないな」
「ちょうどよいわ、より興が増すというものじゃ。どうせ舌を噛み切るほどの力は入るまい」
話しながら、一歩ずつ俺に近寄る少女。
ほとんどが露わなのではないかと思えるその肌は、艶やかに白い蝋人形のようだ。
あと数歩というところまで近づいた時、ふと俺の鼻を甘ったるい香りがくすぐった。
「う…ぅ……」
身体が痺れる感覚、なのに鼓動だけは僅かに早まったように思える。
そして──
「おうおう…待ちきれぬ様子じゃのぅ」
「くっ…なんだ、これは…」
──全身が弛緩していたかに思えた、しかし部分的に例外が生まれる。
強く鳴る鼓動によって血液を送られ、その身を固く大きく強張らせた性器だ。
「なるほど、立派ではないか」
目の前まで歩んだ少女が、白く細い指でそれを撫でる。
決して強い刺激ではない、それなのに力が入らないはずの全身が大きく痙攣した。
それほどの快感に襲われたのだ。
彼女は反対の手で桃色の髪をかき上げ、その顔を俺の胸元に寄せる。
艶やかな唇の隙間から、人間のそれより多少長いであろう舌が延られる。
「ほれ、どうじゃ──」
舌の先端が俺の胸をなぞり上がり、乳首を弄ぶように舐め絡めた……その瞬間の事だった。
「うあぁっ!? あっ! あぁっ…!! あっ…あっ…ぁ…」
一瞬、理解が及ばなかった。
突如として全身を快感が貫いた。
彼女の指は俺の性器に触れていただけ、それは決して動かされてはいなかった。
それなのに上半身に僅かな悪戯をされただけで──
「あはははっ! なんと…子供のようじゃのう…!」
「くっ…ぅ……!」
──俺の身体は達し、大量の精液を撒き散らしたのだ。
「なにを…俺に何をした…っ」
「なにもしてはおらぬ、見ていたじゃろうに…妾はそなたの乳首を軽くなぞっただけじゃ」
触れる事も叶わない性器の先からは、だらしなく白濁とした涎が糸をひいて垂れている。
「それだけでそなたは絶頂を迎えた。まるで精通したての少年が淫らな夢をみただけで下着を汚すようにのぅ…ふふふっ」
「くそっ…!」
「じゃが、無理もない。妾の汗も唾液も…人間には強烈過ぎるほどの媚薬。さぞ心地よかった事じゃろう」
「なんだと…貴様はっ」
「そうじゃ、ようよう気づいたか…妾はサキュバス、この砦の主じゃ」
そう、剣を交えた魔族の騎士が口にしていた。
この砦の主は美しき淫魔、サキュバスだ…と。
そしてこの砦の正体は──
「勇者よ…貴様を生かした理由を訊いておったな?」
「なんて…事だ…」
「もう解ろう? 貴様の子種を搾り取り、魔族に与えるためじゃ…あはははははっ!」
──新たな魔物を創り出すための、研究施設だと。
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン゙ン バンバン
バン(∩`・ω・) バンバンバンバン゙ン
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バン はよ
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ドゴォォォォン!!
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