リヴァイ「人類最強であるなら」(35)

リヴァイ「クソが…」

兵長室のデスクを一心不乱に漁る1人の人類最強がいた。

リヴァイ「確かにここにしまったはずだが…」

一見ぶっきらぼうにしているように見えるが、決してデスクを散らかしてはいなかった。
スッスッと物を動かし、まるでテト*スように空いた隙間に的確な大きさの物を移動させる。
豪快かつ繊細にデスクを漁る姿は、さながら熟練された板前のような手つきであった。

リヴァイ「おい…ねぇぞ…!」

誰に話しかけているわけでもないが、つい口走ってしまう。
窮地に立たされた人はそうしてしまうものなのだ。

リヴァイ「あぁもう…」

人類最強とてイラつくものはイラつく。
最強と謳っていても、所詮は『人類』という小さな枠内の生物なのだからしょうがない。

リヴァイ「…落ち着け。落ち着きやがれリヴァイ…」

しかし焦りはない。
それが人類最強たる由縁。
リヴァイは一つ深呼吸をして思考を巡らせた。

リヴァイ(確かに昨日ここにあったはず…。
ここにしまって引き出しを閉め…そして……考えろ……俺は人類最強だ。
記憶力も人類最強のはずだ)

のしかかる人類最強の称号とプレッシャー。
人というものは極限状態で更なる飛躍を遂げる。
人類最強とてそれは同じこと。

リヴァイ(無理だ…全然わかんねぇぞオイ)

不覚にも、諦める速度も人類最強であった。

リヴァイ(おいおいおいおい…あんなもんが他の奴らに見つかったら、調査兵団はおろか、壁内にすらいられねぇ…)

リヴァイはピタリと動きを止め、焦った時に誰しもがやったモノマネを試みる。

リヴァイ「まだ慌わわわわわわてててててててててて」

ダメだった。
リヴァイは大振りのロシアンフックを顎にモロにもらったように震えていた。

リヴァイ「しょうがねぇ…外に探しに行ってみるか…」

リヴァイはおもむろにパンツを履き、時をかける少女の如く廊下へ飛び出した。

モブリット「お疲れ様です兵長。
血相を変えてどうしたんですか?」

誤算だった。
勢い良く廊下に駆り出したいいが、殆どノープランのリヴァイは容易く返答に詰まった。

リヴァイ「お、おうモブリット。最近どうだ」

モブリット「はい?」

完全なる失敗。
リヴァイは勢いだけで久々にあった職場の同僚みたいな感じになってしまった。

モブリット「まぁ…ボチボチですね…?」

モブリットは完全に困っているようだ。

リヴァイ「そうか…それはいいことですね」

モブリット「はぁ…。それでどうしたんですか。
あ、探し物でもされてるのですか?」

鋭い。
リヴァイはヒヤリとしたもの感じた。

リヴァイ「そんな事いいからトッポキ…」

モブリット「トッポキ?」

噛んだ。
最悪タイミングで噛んだ。
もう誤魔化しようが無いくらいに噛んだ。

「そんな事いいからとっと仕事に戻れ」

兵長という地位を利用したセリフでうやむやにしようとしたかった。
しかしもう遅い。

モブリット「トッポキ…と言いますとあのコリアンフードの…ですか?」

なんで知ってんだこいつ。
内心思いつつもリヴァイは焦ってはいなかった。
もうこれで乗り切るしかない。
リヴァイはゆっくりと口を開いた。

リヴァイ「ああ…トッポキだ。
あのモチモチした食感が気にくわねぇから、チゲにブチ込んでやろうと思ってな」

流石は人類最強。
即座に正確無比な回答を繰り出した。

モブリット「いいですね。
私的にはスンドゥブも捨てがたいですよ」

まさかの食い付き。
以前ペトラに食わされてなんとなく覚えていたが、『チゲ』『トッポキ』その二つの単語しかリヴァイは知らなかったのだ。

リヴァイ「そうだな…俺はドゥンガが好きだ」

分隊長補佐程度に無知を晒すわけにはいかない。
リヴァイ咄嗟に閃いた単語で対応を試みた。

モブリット「ドゥンガ…ブラジルでサッカーの監督をされてる方ですよね」

だから何でこいつは知ってんだ。
しかもコリアは関係無かった。

モブリット「彼が代表監督に就任してから結果は残せませんでしたね。
まぁ私としましては…」

ドコッ

モブリット「へ、兵長…何を…う…」ドサッ

一瞬で背後に周り首筋に一撃。
人類最強であるからには分隊長補佐程度の瞬殺など造作もないことだ。

リヴァイ「許せ…誰だかわからねぇが…」

リヴァイ「…まずはどこへ行くか」

ザッザッザと軽快に歩みを進める人類最強。
歩き方一つからも人類最強と伺えるオーラを感じる。

目指すは食堂。
時間もランチタイムに差し掛かり、決して小腹が空いてきたからというわけではない。
断じて違う。
人類最強は空腹程度を気にすることはないのだから。

グンタ「あ、兵長。
もうすぐ昼ご飯出来ますよ」

リヴァイ「メニューは何だ」

鋭き眼光でグンタに問い詰めた。

グンタ「今日の当番はオルオですよ。
確かにクリームシチューって言ったました」

リヴァイ「そうか…待つとしよう」

クリームシチュー。
リヴァイはテンションが上がった。

リヴァイ(オルオのクリームシチューは好きだ)

オルオ「もう少しで出来ます。
ちょっと待ってください」

リヴァイ「まだできねぇのか…」

オルオ「まだ5秒しか経ってませんよ!」

我慢強さも人類最強だった。

オルオ「ああっ!?」

ペトラ「なに?手首でも切り落としたの?」

オルオ「ミルクが…無い」

エルド「なんだ。じゃあコンソメスープにでもすればいいだろ」

リヴァイ「…ダメだ。クリームシチューにしろ」

オルオ「すいません…流石に牛乳が無いと…」

リヴァイ「買ってこいエルド。10秒以内だ」

エルド「ええっ!?
牛乳となると遠くの酪農家まで行かなきゃいけませんよ!」

リヴァイ「心臓を捧げたんならさっさと買ってこい。
それができなきゃ調査兵団に必要無い」

俗にいうパワハラである。

エルド「無理ですよ!昼休み終わりますって!」

リヴァイ「…チッ。ならしょうがねぇ」

リヴァイは上の取り組みは従順だった。

リヴァイ「おいペトラ」

ペトラ「はい?」

リヴァイ「ミルク出せ」

ペトラ「…え?」

リヴァイ「そんなでけェもん2つも付いてるなら、クリームシチュー作るぐらい出せるだろうが」

ペトラ「え…あの…」

まさに人類最強のセクハラであった。

この時リヴァイは既に冷静ではなかったのだ。
探し物も見つからず、好物のオルオ特性クリームシチューもお預けに。

リヴァイ程の精神力を持ってしても耐えられる物ではなかった。

特性→特製

ペトラ「ぐす…兵長のばかぁ…」

グンタ「泣くなよ…な?
兵長だって最近忙しくて参ってるんだ。
軽いジョークなんだからここは笑わないとよ」

ペトラ「うう…」グスッ

オルオ「あれ?兵長どこ行った?」

リヴァイは逃げた。
人類最強の最速の動きで逃げた。

リヴァイ「クソ…なんて1日だ」

あえて言うならば全て自業自得だが、そこには触れない事にしておこう。

ハンジ「あ!いたいた!」

リヴァイ「…何の用だアブラギッシュ」

ハンジ「なんかギルガメッシュみたいだね。
はいこれ。リヴァイのだろ?」

リヴァイ「…!」

あった。
探し物が見つかった。

リヴァイ「何故てめぇが持ってんだ…」

返答次第ではコンソメスープをミネストローネにしてやろう。
リヴァイはブレードに手をかけた。

ハンジ「え?昨日、酔っ払って私の部屋に君が置いてったんだろ」

リヴァイ「あ」

そうだった。
昨日、エルヴィンと宅飲みし、…テンション上がり過ぎて全裸で徘徊していたのだった、

リヴァイはホッと胸を撫で下ろした。

リヴァイ「何故てめぇが持ってんだ…」

返答次第ではコンソメスープをミネストローネにしてやろう。
リヴァイはブレードに手をかけた。

ハンジ「え?昨日、酔っ払って私の部屋に君が置いてったんだろ」

リヴァイ「あ」

そうだった。
昨日、エルヴィンと宅飲みし、…テンション上がり過ぎて全裸で徘徊していたのだった、

リヴァイはホッと胸を撫で下ろした。

リヴァイ「悪いな」

ハンジ「どういたしまして。
……それ、あの子へのプレゼントだろ?
ちゃんと渡しなよ」

リヴァイ「余計お世話だ」

日も暮れ、辺りが静寂に包まれる中、調査兵団の一室に数人が集まっていた。

ハンジ「誕生日おめでとう!」

ペトラ「…え?」

グンタ「おめでとう!」

ペトラ「え?え?」

エルド「お前、今日で二十歳だろ?
まぁ人生の節目ってやつだし、心ばかりだがサプライズしてやろうと思ってな」

ペトラ「…嘘…みんな…私のために?」

エルヴィン「オロロロロ」

オルオ「ふっ…これでまた俺の女に少し相応しくなれたな」

ペトラ「あはは…死ねばいいのに。
って団長凄いことになってますけど」

ハンジ「ああ。ゲロヴィンは気にしないでくれ。
二日酔いで完全に死んでるだけだから。
それより本日のメインの登場だよ!」

ペトラ「メイン?」

ミケ「ハッピバースデートゥーユー」

リヴァイ「ハッピバースデートゥーユー」

ペトラ「うおっ…」

現れたのは身長2m近い全身タイツのヒゲオヤジ。
そして鼻眼鏡にとんがり帽を頭に乗せた小粋な小さなオッさん。
つまり人類最強ことリヴァイだった。
人類最強の手に乗せられた人類最強手作りの人類最強のバースデーケーキ。
もちろん甘さは控えめだ。

人生で一番のサプライズだったペトラは思わず言葉を失った。

ペトラ「あり…がとう…ございますぅ…」グスッ

顔をくちゃくちゃにさせ、鼻水を垂らしながら少女笑った。

リヴァイ(汚ねえな…)

そう思いながらも、自作のハンカチでペトラの顔を拭った。

リヴァイ「大人になってまで泣くんじゃねぇ」

ペトラ「す、すびばぜんんん…」

ハンジ「あっはっは。可愛い顔が台無しだね」

ペトラ「か、可愛くないです…///」

リヴァイ「ああ。可愛くないな」

ペトラ「!?」

リヴァイ「美しい、だ」ボソッ

ペトラ「え?今なにか…」

リヴァイ「チッ…ケーキが冷めないうちにさっさと食べろ。
おいエルヴィン、いつまでそうしてんだ。
情けねぇな」

エルヴィン「オーウェ」

あはははは………

ペトラ「あー楽しかった…。
あれ?ポケットに何か入ってる…」

いつの間にかポケットの中に入っていた小包。
ペトラは包装が破けないように丁寧に開けた。

ペトラ「髪飾り…」

何の変哲もデザイン性もない普通の髪飾り。
ペトラは思った。

流石は人類最強だ、と。

ペトラ「包装紙に何か書いてある…」

力強く、繊細に想いの込められた3文字の言葉。

『死ぬな』

仲間を想う人類最強らしい言葉だった。

ペトラ「…死にませんよ。
一生着いて行きます。
リヴァイ兵長」

『ごめんなさい』
『すまない』
『ごめんなさい』
『すまない』
『ごめんなさい』
『すまない』
『ごめんなさい』
『すまない』
『ごめんなさい』
『すまない』

人類の勝利を信じて

先に逝きます

私は幸せでした

だから謝らないでください

ご視聴ありがとうございました

(**~)モウ…カキタクナイ…

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