露天風呂
ハンナ「あー。風呂はいいな。固まった筋肉が解れる。話には聞いていたが、本当だった」
エーリカ「アフリカにはお風呂ないの?」
ハンナ「アフリカじゃあ水の一滴が血の一滴だ。こんな使い方はできんさ」
エーリカ「ふぅーん。大変なんだなぁ」
ハンナ「でも、アフリカはいいぞ」
エーリカ「そーだ。オシッコでも飲めば?」
ハンナ「……え?」
エーリカ「飲み水も貴重なんだろ? だったらオシッコをろ過して飲み水にしたらどう?」
ハンナ「その発想はなかったな。飲めるのか?」
エーリカ「できるよ。あとで宮藤にも聞いてみればはっきりすると思うけど」
ハンナ「みやふじ? ああ、あの子猫ちゃんか。聞いてみよう」
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更衣室
エーリカ「お?」
ハンナ「ん?」
ルッキーニ「おぉー」
芳佳「あ、マルセイユさんとハルトマンさん」
シャーリー「よぉ。どうだった、初めての風呂は」
ハンナ「丁度よかった。子猫ちゃん、聞きたいことがあるんだ」
芳佳「え? 私にですか?」
ハンナ「ああ。オシッコは飲めるのか?」
芳佳「おし……!?」
リーネ「ど、どういう意味ですか!!」
ハンナ「言葉通りさ。オシッコは飲めるのかと聞いた」
芳佳「の、のめませんよぉ!!」
ハンナ「話が違うぞ、ハルトマン」
エーリカ「ちゃんと説明しないとハンナが変態みたいになるぞ」
芳佳「そういう事情があるんですか」
ハンナ「アフリカでは水が限られているからな。利用できるもの全てに縋りたい」
芳佳「なるほど」
ハンナ「で、どうなんだ? オシッコは飲めるのか?」
芳佳「健康にいいって話をきいたことはありますけど」
ハンナ「健康にもいいのか。それはすごい。早速実践してみるか」
シャーリー「おいおい。ホントか?」
芳佳「まだまだ研究中らしいですから、はっきりしたことは……」
ルッキーニ「うぇー。オシッコなんてのめるのー?」
ハンナ「まずは採尿してみないとな」
エーリカ「でも、確か出してすぐに飲まないと菌がすごい繁殖しちゃうっていうよね」
芳佳「そうです。だから、ろ過するかすぐに飲むほうがいいんですよね」
ハンナ「物は試しだ。とりあえず出してくるか」
シャーリー「マジでやるのか……?」
ハンナ「当然だ。飲み水にもなって健康にもいいなんて最高じゃないか」
トイレ
ハンナ「出してみたものの、やはり躊躇してしまうな」
ハンナ「……」
ハンナ「しかし、早く飲まないと菌が繁殖してしまう」
ハンナ「よしっ」
バルクホルン「ん? マルセイユ?」
エイラ「なにしてんだ?」
ハンナ「んぐっ……んぐっ……」
バルクホルン「お、おい……」
エイラ「何飲んでだ……あれ……」
ハンナ「ぷはぁ。割といけるじゃないか。しかし、塩辛いな。これでは逆に喉が渇いて……」
バルクホルン「マルセイユ大尉!!!」
ハンナ「どうした?」
バルクホルン「今、何を飲んだ!?」
ハンナ「オシッコだ。……いるか?」
バルクホルン「ふざけるな!!」パシンッ
ハンナ「あっ」
パシャァ……
エイラ「……」
バルクホルン「エ、エイラ……」
エイラ「くせぇ……」
ハンナ「私のがかかってしまったか」
エイラ「なにすんだー!!」
バルクホルン「す、すまない!!」
ハンナ「貴重な水分を無駄にするとは……。やれやれ、これだからバルクホルンは……」
バルクホルン「お前!! こんなもので水分を補給しているのか!?」
ハンナ「試しただけさ。アフリカでは水の一滴が血の一滴だからな」
バルクホルン「理解できない!!」
エイラ「そんなことより私にあやまれー!!」
ハンナ「早く風呂に行ったほうがいいぞ? 私のとは言え、臭うからな」
エイラ「うぇー、さいあくだぁー」テテテッ
バルクホルン「エイラ!! 本当にすまない!!」
ハンナ「それにしても自分のでもそれなりに嫌悪感があるな。生温いし。これを毎日飲むのは流石に抵抗があるか」
バルクホルン「お前は間違っているぞ!!」
ハンナ「なに?」
バルクホルン「確かに尿を飲むことはサバイバル時には有効である場合もある。しかし、しかしだな!! 飲み水にするのはどうだ!?」
ハンナ「アフリカでは常にサバイバルだ。間違ってはいない」
バルクホルン「せめてろ過しろ!! そのまま飲んでどうする!!!」
ハンナ「言われなくても分かっている。でも、そのままでも飲めるかどうかは試してもいいじゃないか」
バルクホルン「よくない!! 常識で考えろ!!!」
ハンナ「はいはい。全く、口うるさいのは相変わらずだな」
バルクホルン「うるさくならないほうがおかしいだろう!!!」
ハンナ「次はろ過して飲んでみるか。……しまった。私は今出してしまったから暫くは無理か。そうだ。バルクホルン、あんたのオシッコを……」
バルクホルン「ことわる!!!!」
ハンナ「心が狭いな。オシッコも分けてくれないのか」
廊下
ハンナ「さて、どうするか……」
サーニャ「……」
ハンナ「あれはナイトウィッチの……。よし。ちょっといいか?」
サーニャ「はい?」
ハンナ「君のオシッコをわけてくれないか?」キリッ
サーニャ「……」
ハンナ「飲んでみたいんだ」
サーニャ「ひっ……」
ハンナ「どうした?」
サーニャ「あ、あの……あ……」ブルブル
ハンナ「何を怯えている? 私はただオシッコが欲しいと言っているだけだ」
サーニャ「ご、ごめんなさい!!!」タタタッ
ハンナ「な……」
ハンナ「何故だ。排泄物なのだから惜しいということもないはずなのに」
食堂
ハンナ「おや?」
ペリーヌ「どうですか、ミーナ中佐」
ミーナ「うふふ。ペリーヌさんが淹れてくれた紅茶は美味しいわ」
ペリーヌ「よかったですわ」
ハンナ「お茶会か」
ミーナ「マルセイユ大尉もどう?」
ハンナ「いいな。もらおうか」
ペリーヌ「すぐに淹れますわ」
ハンナ「いや、ミーナのでいい」
ミーナ「え?」
ペリーヌ「どういうことですの?」
ハンナ「ミーナのオシッコを淹れてくれ」
ペリーヌ「は……?」
ミーナ「……」
サーニャ「ぐすっ……」
美緒「聞き間違いだろう?」ナデナデ
サーニャ「でも……はっきりと……」
美緒「信じられないな……」
ミーナ「マルセイユ大尉!!!! 何を言っているの!!!!」
美緒「な、なんだ?」
サーニャ「ひぐっ……!?」
美緒「ミーナ、どうした?」
ミーナ「み、美緒……!」
ペリーヌ「坂本少佐……」
ハンナ「どうして怒る?」
ミーナ「怒るに決まっているでしょう!!!」
ハンナ「やれやれ。オシッコぐらいでどうして」
ミーナ「あなたは何を言っているのかわかっていないの!?」
ハンナ「ミーナこそ、アフリカのことは知っているはずだ。オシッコが水に変わるのなら、私は欲しい」
ミーナ「だ、だからって……!!」
美緒「マルセイユ大尉。事情を説明してくれないか?」
ハンナ「ハルトマンから聞いたんだ。オシッコが水になると」
美緒「……ろ過すればな」
ハンナ「だからここで実験して、アフリカに持ち帰ろうと思っている。いけないことか?」
美緒「いや。マルセイユ大尉の言い分は正しいだろう。アフリカはただでさえ水に困っているのだからな」
ハンナ「理解してくれたか。よし、ミーナ。このカップに出してくれ」
ミーナ「ふざけないでぇ!!!!」
ハンナ「……何故だ。ここにはウィッチしかいない。恥ずかしがることもないはず」
ミーナ「……」
ハンナ「さぁ、ミーナ。溢れないように調整はしてくれ」
ミーナ「しませんっ!!!」
ハンナ「なら、もう少し大きな容器が必要になるな」
美緒「マルセイユ大尉。話がある。こっちにこい」
ハンナ「いいだろう」
廊下
エイラ「酷い目にあった」
シャーリー「災難だったな、エイラ」
エイラ「全くだ。初めての経験だ、あんなの」
芳佳「マルセイユさん……本当に困ってるんだ……」
シャーリー「水のことだからな。必死にもなるだろ」
リーネ「そんなに大変なんですか、アフリカは」
シャーリー「あいつも言ってたけど、一滴だろうと無駄にはできないってのは大袈裟でもなんでもないからね」
芳佳「そうなんですか」
エイラ「……それは分かったけど、だからってそのまま飲むか?」
ルッキーニ「あんまり美味しくなさそー」
芳佳「あはは……」
シャーリー「飲んだことないけど、やっぱり人によって味って違うのか?」
芳佳「なんで私にそんなこときくんですかぁ!!」
リーネ「水かぁ……」
ハルトマン・マルセイユの部屋
エーリカ「ハンナのやつ、まだ戻ってこないな」
バルクホルン「ハルトマン!!!」バンッ!!!
エーリカ「トゥルーデ、どうしたの?」
バルクホルン「どうしたもこうしたもあるか!!! 聞いたぞ!! お前がおかしなことをマルセイユに吹き込んだとな!!!」
エーリカ「な、なんのことだよぉ」
バルクホルン「尿を飲めといったんだろう!?」
エーリカ「ああ、そのこと。いい案でしょ?」
バルクホルン「そうだな。悪くない案だ。だが、その後のマルセイユの行動は見過ごせないぞ」
エーリカ「ハンナ、なんかしちゃったの?」
バルクホルン「トイレで出したばかりのものを飲んでいた。それも堂々と」
エーリカ「ハンナらしいなぁ」
バルクホルン「それだけじゃない。ミーナとサーニャに尿を分けて欲しいといったそうだ」
エーリカ「あー、それはダメだね」
バルクホルン「マルセイユが悪いのは勿論だが、お前にも責任はあるぞ。どうするつもりだ」
エーリカ「どうするって言われてもなぁ」
バルクホルン「……水のことだ。あいつがああなることは少し考えれば分かったはずだぞ、エーリカ?」
エーリカ「ごめん。私もそこまでアフリカの実情を知らなくてさ」
バルクホルン「泥水を飲むのが普通な場所だ。少しでも水を節約できるなら、自分が出したものぐらいは平気だろう」
エーリカ「私、余計なこと言っちゃった?」
バルクホルン「いや。今言ったとおり、悪いことではない。ろ過できれば問題ないからな」
エーリカ「でも、ろ過するための装置が必要になるよね」
バルクホルン「それぐらいならばいくらでも作ることはできる。材料さえあればな」
エーリカ「その材料、アフリカでも手にはいる?」
バルクホルン「その心配はないだろう。向こうでもろ過装置ぐらいあるはずだ」
エーリカ「それもそっか」
バルクホルン「しかしな……」
エーリカ「何を気にしてるの?」
バルクホルン「マルセイユのことだ」
エーリカ「ハンナ……?」
ブリーフィングルーム
美緒「尿を飲み水にしなければならないほど、困窮しているのか?」
ハンナ「これは驚いたな。まさか、あの坂本少佐からそんな質問が飛び出すとは」
美緒「なに……?」
ハンナ「そういうのを愚問というんだ」
美緒「……」
ハンナ「確かに世界各地から物資は届く。水の補給は何よりも優先させている。でも、それでも、水は足りていない」
美緒「そうか。すまん」
ハンナ「ウィッチが潤う分には問題はない。でも、アフリカに住んでいる者だっている。その者たちは今でも飢えと渇きの恐怖を味わっている」
美緒「噂には聞いている。お前がウィッチの補給物資をそういった者達へ配給していると」
ハンナ「やめてくれ。あんなのは焼け石に水だ。誰も幸せにならない。私の自己満足だ」
美緒「そんなことはない。お前の人望の厚さもそういった日ごろの行いがあってこそのはずだ」
ハンナ「好かれるのは結構だけど、事実として私は誰も救えていないんだ。ネウロイの脅威から人々を守れても、飢えと渇きからは守ってあげることができない」
美緒「マルセイユ大尉……」
ハンナ「だから、水を一滴でも搾り出せるなら私はなんでもする。そう決めている」
美緒「では……」
ハンナ「私のオシッコが水になるのなら、こんなに喜ばしいこともないだろ?」
美緒「うむ、だろうな」
ハンナ「オシッコを飲み水にする方法は絶対に持ち帰る。邪魔はしないでくれ」
美緒「別に咎めようという気はない。少しでも水の確保に役立つというなら是非ともやってくれ」
ハンナ「ありがとう。早速そうさせてもらう」
美緒「しかし、直接的に頼みすぎだ。もっと言い方があるだろう」
ハンナ「ないね」
美緒「な……」
ハンナ「結局、私が欲しいのはオシッコなんだ。遠まわしに言っても、嫌がるやつは嫌がる。なら、言葉を選ぶだけ時間の無駄だ」
美緒「そういうことか。快く引き受けてくれる者を探す意味もあったのか」
ハンナ「あなたはどうなんだ?」
美緒「私か?」
ハンナ「ここまで私の話を聞いたんだ。オシッコを出せないとは言わせない」
美緒「む……。まて、先ほど済ませてきたばかりだ。すぐには出せん」
ハンナ「なんだ。私と同じか」
美緒「他の者に聞いてみたらどうだ?」
ハンナ「いいのか? また泣き出す子が出てくるかもしれないぞ?」
美緒「サーニャのことか? それともミーナか?」
ハンナ「私に任せてくれるのはありがたいが、それだと全員に聞いて回ることになる。私は中途半端が大嫌いなんだ」
美緒「分かった。私が聞いてこよう。マルセイユ大尉は部屋に戻っていろ」
ハンナ「助かるよ。正直、全員に聞いて回るのは面倒だと思っていたんだ」
美緒「そうか」
ハンナ「そうさ。それじゃ、あとのことは任せる」
美緒「ああ。引き受ける」
ハンナ「期待してるよ、坂本少佐」
美緒「はぁ……」
美緒「期待されたからには応えなくてはな」
美緒「誰から頼んでみるか……」
美緒「……ペリーヌなら大丈夫だろう。よし。いくか」
廊下
ハンナ「そうだ。ろ過装置を用意してもらわないといけないか」
ハンナ「ミーナに聞けばわかるか……。でも、さっきのこともあるから……」
芳佳「マルセイユさんだ」
リーネ「どうしたんですか?」
ハンナ「やぁ。まぁ、色々とね」
芳佳「あのぉ、オシッコを水に変える件なんですけど」
ハンナ「おっと。私はもうそのことには触れないと決めたんだ。坂本少佐にまかせてあるんでね」
芳佳「え、そうなんですか?」
ハンナ「子猫ちゃんたちも、オシッコなんて単語を何度も口にしたくはないだろう?」
芳佳「は、はぁ……そうですけど……」
リーネ「(なんだか優しいね)」
芳佳「(うん。そうだね)」
ハンナ「じゃ、私は部屋に戻るから。おやすみ」
芳佳「あ、は、はい。おやすみなさい」
ハルトマン・マルセイユの部屋
ハンナ「ただいま」
エーリカ「あ、かえってきた」
バルクホルン「遅かったな」
ハンナ「なんでバルクホルンがいるんだ? ここは私とハルトマンの部屋だ。出て行ってくれ。息がつまってしまう」
バルクホルン「……」
ハンナ「何か?」
エーリカ「ねえ、ハンナぁ。ちょっと気になることがあるんだけどさ」
ハンナ「どうした、ハルトマン。何でも言ってくれ」
エーリカ「ハンナはさぁ、アフリカで自分のオシッコを配り歩くつもりなの?」
ハンナ「そうだが?」
エーリカ「うわぁ、やっぱり」
ハンナ「飲み水になるなら幾らでもオシッコをして、そして配る。当たり前のことを聞かないでくれ」
バルクホルン「マルセイユ大尉、死ぬつもりか?」
ハンナ「そんなわけない。私はただ排泄をする。それを綺麗にして、配る。ただそれだけだよ。死ぬようなことはない」
バルクホルン「お前……」
ハンナ「さぁ、出て行ってくれ。私は寝るんだ。果報を待つために」
エーリカ「果報ってなんかあるの?」
ハンナ「坂本少佐がオシッコを集めてくれると言ってくれた。今現在、提供者を選出してくれているはずさ」
エーリカ「えぇ……」
バルクホルン「少佐が手を貸してくれたのか」
ハンナ「その通り。501でミーナの次に権力がある坂本少佐だ。きっとバルクホルンにも声をかける」
バルクホルン「ぐっ……」
ハンナ「バルクホルン、扶桑の大英雄の頼みなら流石に断れないんじゃないか?」
バルクホルン「命令でなければ断る!!」
ハンナ「今から楽しみだ。まぁバルクホルンのオシッコで出てきた水の味は泥水にも劣りそうだけど」
バルクホルン「そんな安い挑発には乗らないぞ!!! 失礼する!!!」
エーリカ「あーあ。トゥルーデ、怒っちゃったよ」
ハンナ「あははは」
エーリカ「あんまりトゥルーデをからかうなよ。怒るぞ」
ハンナ「からかっているつもりはない。私は本当のことをついつい口にしてしまう性質なんだ」
エーリカ「だったら、黙っとけよ。もー」
ハンナ「やだね」
エーリカ「……必死だなぁ」
ハンナ「必死? 何に対して?」
エーリカ「水のことに決まってるじゃん」
ハンナ「あのな、ハルトマン……」
エーリカ「トゥルーデに言われたよ。ハンナは水のためならなんでもするんだろ?」
ハンナ「偏見だ。私だけじゃない。アフリカに住めば誰だって私のようになる」
エーリカ「ごめん」
ハンナ「何を謝る?」
エーリカ「オシッコでも飲めばいいって言ったけど、私そんなに深く考えてなかったから。ハンナはこんなにも真剣なのに」
ハンナ「そんなことか。気にするな。ハルトマンが何気なく言ったのは分かっていた。でも、私にとっては画期的な発想だった。それだけのことだ」
エーリカ「私も出来る限りは協力するよ。だからさ、無理はすんな」
ハンナ「別に無理などしていない」
廊下
美緒「ペリーヌ」
ペリーヌ「は、はい……」
美緒「お前の尿を私にくれ」
ペリーヌ「えぇ……!?」
美緒「頼む」
ペリーヌ「そ、そんな……少佐……わ、わたくしの……を……?」
美緒「今すぐ、出せるか?」
ペリーヌ「しょ、少佐のためなら!! 出します!! 出してみせます!!」
美緒「では、このコップに入れてきてくれ」
ペリーヌ「はぁい!! 少々待っていてください!!」テテテッ
美緒「……」
美緒「相変わらずペリーヌは何でもしてくれるな。良いウィッチだ。はっはっはっは」
ミーナ「美緒……?」
美緒「ど、どうした、怖い顔をして……」
ミーナ「マルセイユ大尉に協力しているのね」
美緒「あいつでは円滑に事を進められないだろうからな」
ミーナ「それはわかるけど、どうしてペリーヌさんに頼むの?」
美緒「ペリーヌなら二つ返事で引き受けてくれると判断しただけだ」
ミーナ「自分のを使おうとは思わなかったの?」
美緒「出せるなら私でもよかったが、生憎と出したばかりなのでだ」
ミーナ「はぁ……そうなの……」
美緒「気を悪くしないでくれ。マルセイユも切実なんだろう」
ミーナ「もっと自然にあるものを利用しようとは思わないのかしら」
美緒「尿は自然なものだろう」
ミーナ「海水とかあるじゃない。淡水化させることは難しいことではなかったはずだけれど……」
美緒「コストの問題だろうな。海水をくみ上げ、そこから真水に処理し、運搬する。かなりの費用と時間が必要だ」
ミーナ「そうね……」
美緒「簡単に解決することなら誰も悩みはしない」
ミーナ「だけど……尿は流石に……うーん……」
美緒「少しぐらいは付き合ってやってもいいだろう。奴も世界の空を守るウィッチなのだからな」
ミーナ「でもね……。ものがものだけに気が進まないというか……」
美緒「飲尿健康法というのもあるぐらいだ。一度、飲んでみれば抵抗もなくなるかもしれないぞ」
ミーナ「や、やめてっ」
美緒「はっはっはっは」
ペリーヌ「しょ、しょうさぁ……」
美緒「おぉ。ペリーヌ。持ってきてくれたか」
ミーナ「え……!?」
ペリーヌ「ちょっと……あの……いれすぎてしまって……」プルプル
美緒「なみなみと注いだな」
ミーナ「ちょ、ちょっとペリーヌさん!!」
ペリーヌ「わたくし……しょ、しょうさのために……できるだけ……おおく……の……」プルプル
美緒「気をつけろ、ペリーヌ。少しの衝撃でも大変な事態になるぞ」
ペリーヌ「は……い……」プルプル
ミーナ「あぁ、危ない……。一度、どこかに置いたほうがいいんじゃないかしら?」
シャーリーの部屋
ルッキーニ「シャーリー、もってきたー」
シャーリー「サンキュー。そこに置いていてくれ」
ルッキーニ「あーい」
芳佳「本当にこれだけでいいんですか?」
リーネ「小石や草だけですよ。信じられないです」
シャーリー「こういうのは覚えておいて損はないよ。特に私たちみたいな軍人はね」
芳佳「そうなんですか?」
シャーリー「遭難したときに役立つからな」
リーネ「でも、遭難したからって……その……」
芳佳「やっぱり、少し躊躇うよね」
リーネ「う、うん」
シャーリー「確かに普通は雨水とかを飲むだろうけど」
「あぁぁぁああ!!!」
ルッキーニ「うにゃ? ペリーヌの声だ」
エイラ「どうしたんだー? ペリーヌの叫び声が……」
サーニャ「あ……」
ペリーヌ「うぅ……すみません……少佐……」
美緒「お前は何も悪くない。泣くな、ペリーヌ」ゴシゴシ
ミーナ「そうよ。坂本少佐がこんなことを頼まなければ……」
美緒「そうだ。全ては私の責任だ」
ペリーヌ「少佐にわたくしのこぼしたものを拭いているなんて……ぅぅ……ちょっと嬉しいですけど……」
エイラ「なにやってんだよぉ」
サーニャ「アンモニアの臭いが……」
美緒「見ての通りだ。手があいているなら手伝ってくれ」
エイラ「お前、なにしたんだ?」
ペリーヌ「緊張で手が震えてわたくしの……をこぼしてしまいまして……」
エイラ「うぇ……」
美緒「ほら、サーニャ。これでふいてくれ」
サーニャ「は、はい」
ペリーヌ「もうお嫁にいけませんわ……」
美緒「そんなことはないぞ。お前の貰い手はいくらでもいる」
ペリーヌ「少佐ぁ……」
美緒「それはそれとして、どうするか。尿が無駄になってしまったな」
エイラ「なんで私とサーニャがツンツン眼鏡のを処理しなきゃいけないんだよぉ」ゴシゴシ
サーニャ「よいしょ……よいしょ……」ゴシゴシ
ミーナ「ごめんなさい、二人とも」
エイラ「別にいいけどさぁ」
ペリーヌ「エイラさん……それはどういう……も、もしかして……」モジモジ
エイラ「変な勘違いすんなー!!!」
サーニャ「エイラもマルセイユ大尉のことを気にしているのよね?」
エイラ「い、いや。サーニャを困らせたやつのことなんて、嫌いだ」
サーニャ「ふふっ。ありがとう」
美緒「では、次はエイラから分けてもらうとするか」
エイラ「すんなぁー!! 絶対にそんなことしないからなぁー!! ぜったいにぃー!!」
美緒「嫌なのか」
エイラ「誰が好き好んでそんなことするんだよぉ」
美緒「ペリーヌは即諾してくれたが」
エイラ「そんな奴と一緒にしないでくれ」
ペリーヌ「そんな奴とはどういうことですのっ!!!」
エイラ「うるさい。ションベン眼鏡」
ペリーヌ「それだけはいわないでくださいな!!!」
ミーナ「エイラさんが正しい反応なのよね……」
サーニャ「私もマルセイユ大尉のことは心配していますし、できれば協力はしたいと思っています」
ミーナ「そうなの?」
サーニャ「はい。エイラから聞きました。私、アフリカのことはよく知りませんでしたから……」
ミーナ「やっぱりサーニャさんは優しいわね」
美緒「では、サーニャから……」
エイラ「ダメダー!! サーニャだけはダメダー!! サーニャのオシッコを飲んでいいのは私だけだかんな!!!」
サーニャ「……」
バルクホルン「はぁ……」
バルクホルン「マルセイユにも困ったものだな……」
バルクホルン「だが、あいつの気持ちを考えれば……」
シャーリー「よし。早速試してくるか」
ルッキーニ「おー!」
芳佳「ほ、本当にやるんですか!?」
リーネ「えぇ……」
シャーリー「やってみないとわからないだろ?」
芳佳「そ、それはそうですけど……でもぉ……」
バルクホルン「何を試してみるんだ、シャーリー?」
シャーリー「ん。これだ」
バルクホルン「それは……? ろ過装置か?」
シャーリー「流石、バルクホルン。なら、どうして私がこれを作ったのかも察しがつくだろ?」
バルクホルン「やるのか?」
シャーリー「ああ。私とルッキーニのでね。ちゃんとろ過できればマルセイユに渡すつもりさ」
バルクホルン「待て、シャーリー。何も尿を使うことは……」
シャーリー「海水でやれっていうのか? アフリカだといちいち海から汲み上げにいくのも大変だぞ」
バルクホルン「そうかもしれないが……」
シャーリー「私とルッキーニはアフリカにいたから、少しぐらいはわかるんだ。向こうのこともな」
ルッキーニ「わかるー」
シャーリー「地域によっては本当に地獄みたいなところだったよ。雑巾から絞ったような水でも啜っている子どもだっていた」
バルクホルン「シャーリー……」
シャーリー「飲めるなら水なら文句はない。そういうことを言うやつだっていた」
芳佳「そ、そんな……」
シャーリー「私のできることなんて限られてるけど、これで救われるやつがいるなら、恥ずかしくはないよ。むしろ嬉しい」
ルッキーニ「あたしもー!!」
バルクホルン「ふっ。お前がそこまで考えているとは意外だな。驚きを隠せない」
シャーリー「なんだと!?」
芳佳「……あの!! わ、私のオシッコも使ってください!!!」
リーネ「芳佳ちゃん!?」
バルクホルン「宮藤……!」
シャーリー「宮藤、嫌がってたじゃないか」
芳佳「今のシャーリーさんの話をきいて、恥ずかしがっている場合じゃないって思えたんです!!!」
シャーリー「そっか。よし。それならいっぱい出せよ」
芳佳「出します!!! お風呂に入れるぐらい出します!!」
ルッキーニ「おぉー!! しゅごーい!! 大洪水だぁー!!」
シャーリー「あははは。そんなことしたら宮藤が死ぬから」
リーネ「うぅ……」
ルッキーニ「リーネ、どうしたの?」
リーネ「わ、わわ、私のオシッコもつかってくださーい!!」
芳佳「リーネちゃん!? 無理しちゃダメだよ!!」
ルッキーニ「にゃはー。リーネ、顔真っ赤だよー」
リーネ「うぅぅ……はずかしい……」
シャーリー「おいおい。リーネ。これはただの実験だから。付き合うことはないって」
リーネ「で、でも……できるだけたくさんあったほうが……いいとおもって……何回ろ過できるのかも……調べられますし……」
シャーリー「まぁ、手作りだからなぁ。ろ過できる回数も有限だよなぁ」
リーネ「だ、だから……私のも……つかって……いいですから……」
シャーリー「リーネ、ありがと。それじゃ、行こう」
ルッキーニ「あーい!!」
芳佳「が、がんばりますっ!!」
リーネ「あの、芳佳ちゃん?」
芳佳「なに?」
リーネ「私のをろ過したのは……芳佳ちゃんが……の、飲んで……」
芳佳「うん。それじゃあ、私のはリーネちゃんが飲んでよ」
リーネ「も、もちろんっ!!」
シャーリー「おいおい。せめて自分のを飲めよ」
ルッキーニ「えー!? 飲まなきゃダメなのー!?」
シャーリー「そりゃ、味はみないと」
バルクホルン「待て!!! シャーリー!!!」
シャーリー「なんだよ? お前も協力してくれるのか?」
バルクホルン「……ああ。協力する」
シャーリー「へぇ。何だかんだ言ってもマルセイユのことは心配か」
バルクホルン「ふんっ。いくぞ」
シャーリー「お前が仕切るなよ。全く」
ルッキーニ「えぇぇ……。飲むんだぁ……」
芳佳「だ、大丈夫だよ。ルッキーニちゃんのはきっと綺麗だと思うし」
リーネ「うんうん」
ルッキーニ「でも、オシッコだよぉ?」
芳佳「私も飲むから!!」
ルッキーニ「じゃあ、芳佳があたしの飲んで」
芳佳「うん!! ルッキーニちゃんのも飲むよ!!」
ルッキーニ「ホントに?」
芳佳「うん! 約束するから」
ルッキーニ「にひぃ。わかったぁー。やくそくっ。芳佳が飲んでくれるなら、あたしも飲むー」
リーネ「私もルッキーニちゃんの飲む!!」
ハルトマン・マルセイユの部屋
エーリカ「すぅ……すぅ……」
ハンナ「……遅いな。オシッコはまだか」
ハンナ「本当に飲み水になるなら、私のオシッコを隊の連中にも振舞ってやろう」
エーリカ「……ハンナ?」
ハンナ「ん? すまない。起こしてしまったか?」
エーリカ「トゥルーデが心配してたよ」
ハンナ「心配? 私は誰にも負けない。何を心配することがあるんだ」
エーリカ「ハンナが無理してオシッコをみんなに配るんじゃないかってさ」
ハンナ「なに……」
エーリカ「トゥルーデが死ぬ気かって聞いたのはそういうことなんだ」
ハンナ「死ぬつもりは毛頭ない」
エーリカ「ホント? 信じてもいい?」
ハンナ「……できれば、風呂にいれてやりたいがな」
エーリカ「おい。マジで死ぬ気? それならミーナに頼んでアフリカではオシッコを飲用することは禁止にしてもらうよ」
ハンナ「それはもう無理だ、ハルトマン。いくらミーナでも水への欲求を止めることはできない」
エーリカ「そうかもしれないけど」
ハンナ「安心しろ。お前と決着がつくまでは、死なない」
エーリカ「次の作戦でその決着をつけるつもりなんだろ?」
ハンナ「さぁ、どうかな」
エーリカ「ハンナ!!」
ハンナ「……心配してくれるのは嬉しいさ。でも、優しさだけで喉は潤わない」
エーリカ「海水をろ過するとか川の水をろ過するんじゃダメなの?」
ハンナ「どちらも労力と時間と金がかかる。アフリカにそこまでの余裕はない」
エーリカ「難しいんだなぁ」
ハンナ「そう。難しいんだ。だから、誰かが犠牲にならないといけないこともある」
エーリカ「それがハンナだっていうのか?」
ハンナ「私がウィッチであり続けるうちは無理はしない。それは約束する」
エーリカ「引退したら?」
ハンナ「……」
トイレ
美緒「すまないな、ミーナ。無理に頼んでしまって」
ミーナ「……ちゃんと美緒が飲んでね?」
美緒「分かっている。味見は任せろ。はっはっはっは」
ミーナ「はぁ……」
エイラ「なんとかサーニャの採尿だけは避けることができたな」
サーニャ「エイラ……」
ペリーヌ「サーニャさん、エイラさんのこと考え直したほうがいいですわ」
サーニャ「うん」
エイラ「なんでだ!?」
シャーリー「いやぁー。結構、濃いのがでたなぁ。私、疲れてるのか……」
バルクホルン「そういうことを声に出すな!!!」
ルッキーニ「あ、垂れてきたよ」
芳佳「ほんとだー。一滴ずつだから時間かかっちゃうね」
リーネ「何時間ぐらい待てばいいのかな。早く飲みたいな」
ミーナ「あなたたち、何をしているの?」
芳佳「あ、ミーナ中佐」
シャーリー「ろ過装置作ったんで、試してみようと思って」
美緒「ろ過装置?」
エイラ「宮藤、その水って……」
芳佳「はい。今、私のオシッコをろ過しているところです」
エイラ「なにやってんだよぉ。きたねえなぁ」
シャーリー「ちなみに次は私のをろ過する」
エイラ「きいてねえよ」
美緒「もう用意したのか?」
シャーリー「ええ。時間をおいたやつでもちゃんとろ過できていれば、最高ですからね」
美緒「なるほどな。……それにしてもシャーリー、随分と濃いな」
シャーリー「そうなんですよ。自覚はないんですけど、疲れているのかも」
美緒「ふむ」
ミーナ「こら、まじまじと見るものじゃないでしょう」
サーニャ「これが、芳佳ちゃんのなの?」
芳佳「そうだよ」
ルッキーニ「透明だね。飲めそうな気がしてきた」
ペリーヌ「うーん。正体を知っているだけに、透明な水でもどうにも複雑ですわね」
リーネ「綺麗……」
芳佳「あまりみないでー!! 恥ずかしくなってきちゃったー!!!」
バルクホルン「お前が選んだ道だろう。宮藤」
芳佳「バ、バルクホルンさん……」
バルクホルン「これを今から誰かが飲むことになるんだ。見られているだけで恥ずかしがるな」
芳佳「す、すみません」
美緒「この透明度なら飲めそうな気もするが」
ミーナ「でも、飲めたとしてもやはり時間がかかるわね」
シャーリー「これが成功したら大きなタンクをつくって、それをトイレと繋げればいいんですよ」
美緒「ほう? 下水をそのまま除染し、貯めてしまおうというのか。なるほど」
ミーナ「なるほどじゃありません」
リーネ「溜まってきたね。もう飲んでもいいかな?」
ペリーヌ「本当に飲めますの、これ?」
エイラ「私はサーニャの以外は飲めたもんじゃないと思うけどな」
サーニャ「……」
ルッキーニ「のんでみりゅ?」
リーネ「飲もうよ!! もう飲めるよ!!」
芳佳「な、なんだかドキドキしてきちゃったぁ……。オシッコを飲まれるなんて……。で、でも、これもマルセイユさんの、ううん、アフリカにいる人たちのためだから……!!」
美緒「誰が飲むんだ?」
ミーナ「私はあまり……」
シャーリー「それならもう決まってますよ。な?」
リーネ「はい!!」
美緒「リーネが飲むのか。味の感想を頼むぞ。マルセイユにも報告しなければいけないからな」
リーネ「きっと雪解け水みたいに美味しいと思います!!」
ミーナ「飲んでから感想はいいなさい」
バルクホルン「……待て、リーネ」
リーネ「な、なんですか?」
バルクホルン「万が一ということもある。私が飲もう」
リーネ「え……でも……」
バルクホルン「私が飲む。文句はないな?」
リーネ「う……は、はい……」
シャーリー「おい。バルクホルン……」
バルクホルン「……」
芳佳「バルクホルンさんに飲まれる……私の……オシッコ……」ドキドキ
ペリーヌ「異様な光景ですわね」
ルッキーニ「あにゃー……」
リーネ「あぁ……芳佳ちゃんの……」
バルクホルン「いただく」ゴクッゴクッ
エイラ「おぉ。一気に飲んだ」
バルクホルン「ふぅ……」
サーニャ「あ、あの、お味のほうはどうですか?」
ハルトマン・マルセイユの部屋
エーリカ「うーん。あきたー」
ハンナ「まだ5勝5敗だ!! 引き分けは好きじゃない!!」
エーリカ「もーハンナの10勝でいいよー」
ハンナ「何を言っているんだ!! ほら、もう一度やるぞ!! 私が配ってやる!!」
エーリカ「二人でババ抜きしたって面白くないよ」
ハンナ「私は面白いんだ」
エーリカ「えぇー?」
ハンナ「さ、やるぞ。むむ。私のほうにジョーカーはない。ということは、ハルトマンが持っているな?」
エーリカ「……」
ハンナ「図星をつかれてぐうの音も出ないか」
エーリカ「ハンナは楽しそうでいいね」
ミーナ「ハルトマン中尉!! マルセイユ大尉!!!」ガチャ
ハンナ「どうした、ミーナ?」
エーリカ「なんかあったの?」
医務室
バルクホルン「ぐ……ぁぁ……!!」
芳佳「バルクホルンさん!! しっかりしてください!!」パァァ
シャーリー「大丈夫かぁ?」
ペリーヌ「やはり無理があったのですわね」
エイラ「宮藤のだしなぁ」
リーネ「そんな……」
エーリカ「トゥルーデ!!!」
ハンナ「どういうことだ!!!」
美緒「静かにしろ」
エーリカ「少佐、トゥルーデが倒れたってきいたけど!?」
美緒「宮藤の尿をろ過し、それを飲んだ途端、腹痛を訴えてな」
ハンナ「なに……?」
バルクホルン「ぐ……うぅ……」
サーニャ「バルクホルンさん……がんばってください……」
ルッキーニ「あにゃぁ……オシッコ、やっぱりのめにゃいんだぁ……」
ミーナ「みたいね」
美緒「ふむ……。いきなりこれではな。それもあの屈強なバルクホルンが倒れる事態となれば……」
ハンナ「飲み水としては適していないな。泥水より劣悪なものだ」
美緒「そういうことになる」
エーリカ「トゥルーデ、しっかり」
バルクホルン「う……うぅ……」
シャーリー「でも、次はろ過したあとに沸騰させればなんとかなると思う。バルクホルンはそのまま飲んだからこうなったわけだし」
ハンナ「……いや。いい。危険なものをアフリカの者たちに振舞うことはできない」
シャーリー「マルセイユ……」
ハンナ「バルクホルンが体を張ってくれてわかったことだ。オシッコを飲もうとは思わない」
美緒「そうか……」
ハンナ「子猫ちゃんがいれば心配はなさそうだ。私は部屋に戻る。ハルトマンはどうする?」
エーリカ「私はもう少しいるよ」
ハンナ「そうか。では、おやすみ」
エイラ「……おかしいなぁ」
サーニャ「どうしたの、エイラ?」
エイラ「あいつは自分の飲んでなんともないのに、なんで大尉は倒れたんだ……」
サーニャ「それはろ過の途中で菌が増えたからじゃ……?」
エイラ「そうなのか……。ろ過できてなかったのかな」
芳佳「シャーリーさんの言うとおり、せめて煮沸消毒するべきでした……」
ミーナ「バルクホルン大尉が強引に飲んだだけだから、宮藤さんが気に病むことじゃないわ」
芳佳「でも……」
バルクホルン「そうだ……宮藤……。私が悪かったんだ……」
芳佳「バルクホルンさん!!」
バルクホルン「もういいぞ。かなり楽になった」
芳佳「いえ、もう少しだけ」
バルクホルン「大丈夫だ。もう部屋に戻って休んでくれ」
美緒「いいのか?」
バルクホルン「ああ。みんな、すまなかったな。もうなんともない」
ペリーヌ「行きましょうか。大尉を休ませてあげるべきですわ」
エイラ「そうだなー」
サーニャ「うん」
シャーリー「私のオシッコ、どうしたらいい?」
ルッキーニ「捨てたほうがいいんじゃない?」
美緒「濃いからな」
ミーナ「やめなさい」
芳佳「はぁ……」
リーネ「芳佳ちゃん。元気出して。私が飲んでたらきっと――」
エーリカ「……」
バルクホルン「なんだ、ハルトマン。お前も部屋に戻ったらどうだ?」
エーリカ「……仮病だろ?」
バルクホルン「な、何を根拠に……」
エーリカ「トゥルーデが食中毒なんてありえないもん」
バルクホルン「お前は私をなんだと思っているんだ……!!」
エーリカ「全く。少佐とミーナは気づいてたかもね」
バルクホルン「ミーナは騙せたはずだ。慌ててお前とマルセイユを呼びにいったのだからな」
エーリカ「それはハンナにトゥルーデの姿を見せたかったからじゃないかなぁ?」
バルクホルン「……」
エーリカ「ま、どーでもいいけどー」
バルクホルン「あいつは命を削りかねない」
エーリカ「うん」
バルクホルン「そういう奴だからな」
エーリカ「そうだねー。それでトゥルーデが命削ってちゃ、意味ないと思うけど」
バルクホルン「うるさい」
エーリカ「にひぃ。ありがと、トゥルーデ」
バルクホルン「……別に。それより、ハルトマン。頼みがあるんだ。その、クリスがマルセイユのファンでな……」
エーリカ「クリスが?」
バルクホルン「だから……その……サインを……」
エーリカ「うん。任せてよ。頼んであげる」
ハルトマン・マルセイユの部屋
ハンナ「……」
エーリカ「ハンナー」ガチャ
ハンナ「おかえり。ババ抜きの続きでもするか」
エーリカ「それより、ハンナ。トゥルーデにクリスっていう妹いるの知ってるだろ? ハンナのファンなんだって。クリスのためにサインちょーだい」
ハンナ「……やだね。サインはしない主義なんだ」
エーリカ「なんでだよぉ。いーじゃん、サインのひとつやふたつ」
ハンナ「ふん。あんなシスコンのクソ石頭に書いてやるサインはないね」
エーリカ「おい……」
ハンナ「……でも、クリスのために書いてやるサインはちょうど一つだけある」
エーリカ「……」
ハンナ「ちょっと待っていろ。どんなサインにするか、考える」
エーリカ「ねー、ハンナぁ。別にさ、トゥルーデは意地悪したわけじゃないからね」
ハンナ「分かっている。だからサインを考えているんだ」
エーリカ「ありがと、ハンナっ」
食堂
……グツグツ……
シャーリー「……」
ルッキーニ「シャーリー、やめよー。オシッコのむなんて」
シャーリー「でも、折角ろ過したんだし。あんなに濃いものがここまで透明になったんだ。絶対に飲める」
ルッキーニ「えぇー?」
シャーリー「私の作ったろ過装置は完璧のはずなんだ。だから信じられない」
ルッキーニ「でも、倒れちゃったよ?」
シャーリー「バルクホルンの演技かもしれないだろ?」
ルッキーニ「なんで?」
シャーリー「それは……マルセイユのため、とか。ほら、あいつ結構無茶するって噂もあっただろ?」
ルッキーニ「あった、あったー」
シャーリー「だから、マルセイユを止めるためにあんなことをしたのかもな」
ルッキーニ「でも、そうだったら、それで終わりじゃない? シャーリーがまたオシッコ飲むこともないと思うけどぉ」
シャーリー「それはそれ、これはこれさ。さぁ、飲んでみるか。……いただきますっ」ゴクゴクッ
数日後 滑走路
ハンナ「中々、楽しかったよ」
ミーナ「随分、急ぐのね」
ハンナ「今日の午後から雑誌の取材があるんでね。私は忙しいんだ」
美緒「流石、アフリカの星だな」
ハンナ「……ああ、そうだ。ミーナ、バルクホルンに伝えて欲しいことがある」
ミーナ「なにかしら?」
ハンナ「――ありがとう。そう伝えてくれ」
美緒「ほう?」
ミーナ「うふふ。自分から伝えればいいじゃない。一言をいう時間も惜しいの?」
ハンナ「ああ、惜しいね。あんなやつのために使ってやる時間は1秒たりともない」
美緒「ふっ、そうか」
ハンナ「言っただろう。私は忙しいんだ」
ミーナ「わかったわ。伝えておきます」
ハンナ「世話になった。それじゃ」
シャーリー「バルクホルン、見てくれ」
バルクホルン「なんだ?」
シャーリー「オシッコを飲み水にするためのタンクを作ってみた。これをトイレと繋げれば、完璧だ」
バルクホルン「な……!? 何をいっているんだ!!!」
シャーリー「やっぱりさ、こういう技術はアフリカとか水に困っている地域、国にとっては必要になるだろ?」
バルクホルン「そ、そうかもしれないが……」
芳佳「これにろ過されたオシッコを貯水するんだ……」
リーネ「飲めるのかなぁ……」
ペリーヌ「飲みたいはないですわ」
エイラ「サーニャの分だけ別に溜めてくれたらイケるな」
サーニャ「エイラ、やめて。お願いだから」ギュゥゥ
ルッキーニ「いくら綺麗な水でもオシッコだもんねー」
エーリカ「飲みたい人はそのまま飲めばいいのに。そのほうが健康的だよ」
バルクホルン「そうか……。宮藤のも……。そう考えれば……」
芳佳「え!?」
後日 アフリカ基地
ハンナ「うーん……」
ハンナ「……」
ハンナ「しかし……いや……」
圭子「帰ってきてから、あの調子ね」
ライーサ「そうですね。ティナ……」
ハンナ「……やはり、一度飲めると分かった以上、このまま流すのは忍びない」
ハンナ「よしっ。いただきます」ゴクゴクッ
ライーサ「え……!?」
ハンナ「なんだ?」
圭子「な、なにのんでるの!?」
ハンナ「朝一番のオシッコだ。……いるか?」
ライーサ「はい!!」
圭子「ライーサ!?」
おしまい。
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誰だ感動タグ付けたのw