亜美「あさ!」真美「ぶろ!」 (47)
ちょっとだけ早く目が覚めた朝っていいよね。
テレビを付けてもまだロクな番組もやってなくてつまんないけど。
なんだか、いまこの時間に起きてるのは亜美だけなんじゃないかな、って思ったりするんだ。
爽やかな空気を吸って、まだセルリアンブルーの空を見上げる。
そういうの、すっごくいいと思わない?
真美「んー……そんなこと言うだけに起こしたの……?」
亜美「うむ!」
真美「……寝るっ」
亜美「あぁ、ちょっと待ってよう、真美ぃ! ごめんって!」
へいへいみなさんおはよーございます。
亜美と真美、はるるんと千早お姉ちゃんで泊まりのロケに来ておりました。
日曜日、時刻はもうすぐ……5時30分でごぜーます!
真美「すぴー…………」
亜美「二度寝はやっ!」
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真美「むー……ねむい」
亜美「へいお嬢ちゃん、顔を洗いな……」
真美「……うん」
亜美「朝だと真美もノリ悪いねぇ」
真美「5時半のノリじゃないっしょ」
亜美「あ、ハイ……」
リモコンでいろいろとチャンネルを変えてみる。
すごいや、ゴルフか買い物かしかないや。
千早お姉ちゃんとはるるんは隣の部屋にいる。
ここは亜美と真美の部屋。ふたつ下の階のシングルルームににいちゃんが泊まってる。
あんまり広くないけど、それぐらいがちょうどいいよね。落ち着くもん。
真美「さっぱりしたー」
亜美「おー、おかえりー」
真美「ただいまー」
亜美「ねえねえ、真美」
真美「うん?」
亜美「亜美は昨日から行きたいスポットがあってですな」
真美「ほう」
亜美「朝風呂というものにデスネ」
真美「朝風呂?」
亜美「そーそー。ここ、ビジネスホテルだけど温泉があるのがウリじゃん」
真美「でっかい湯船だったねぇ」
亜美「そんで、朝も開いてるんだってさ」
真美「ほうほう。いいですなぁ」
亜美「行ってみない?」
真美「真美はもちろんいいけど……はるるんと千早お姉ちゃんは?」
亜美「誘ってみようかなって」
真美「ならば……善は急げ、だよ!」
亜美「そーだね!」
『水瀬インホテルズ』のロゴ入りバスローブを整えて、真美と外へ。
鍵を閉めて、隣の部屋のドアを2回ぐらいノック。
真美「おっはよ→!」
亜美「ねー、真美」
真美「んー?」
亜美「れーせーに考えたらさ、こんな起こされ方メーワクじゃない?」
真美「だって提案者亜美じゃん!」
小走りで向かってくる音がして、ドアが開く。
千早「あら、おはよう。どうしたの、こんなに朝早く?」
千早お姉ちゃんがバスローブを着ると、普段と違うイメージだね。
亜美「うん、朝風呂に一緒に行きたいなぁって」
千早「朝風呂? 確か、6時からよね」
腕時計で時間を確認する千早お姉ちゃん。
真美「腕時計つけてるんだ。起きてたの?」
千早「ええ。昨日は早く寝てしまったから。ベッドの中で通販番組を見ていたわ」
亜美「はるるんは?」
千早「春香は……幸せそうに寝てるわよ。どうぞ?」
部屋に入れてもらった。
千早「それじゃあ、6時の少し前に春香を起こして、4人で行きましょうか」
亜美「うん、ありがとっ」
千早「プロデューサーを誘っても、仕方がないものね」
真美「女湯には入れないしねぇ」
『こちらのタラバガニ……』
真美「あっ、カニ」
亜美「美味しそうだねぇ」
千早「朝食のバイキングに、あるかもしれないわよ?」
亜美「カニはないと思うなぁ」
真美がベッドの上に座って、ゆっくり跳ねている。
千早「カニ……いくらだと思う?」
亜美「うーん、一万円ぐらいかな」
真美「八千円?」
千早「それじゃあ私は、間を取ろうかしら」
『こちら、なんと三万円!』
亜美「たっ……か!」
真美「もったいなくて食べられないよ」
千早「高いわね……」
あっという間に時間は過ぎていって、5時55分。
千早「春香、春香……」
春香「……ちはやちゃーん……」
千早「おはよう。朝風呂に行くから、準備をして」
春香「はーい……あっ、おはよう、あみ、まみ」
亜美「おっはよーん!」
真美「はるるんも眠気覚まそうYO!」
春香「顔洗ってくるねー」
千早「ええ」
春香「じゃあ行こうか!」
亜美「主導権を握られたッ!」
タオルとシャンプーと下着と……そのへんを持って、部屋の外へ。
廊下には誰も居なかった。
真美「いざ出発!」
エレベーターで地下1階に降りる。
地下がまるまる、温泉スペースになってるんだ。
自販機とかレトロゲームも置いてあって、良い感じ。
脱衣場にも誰もいない。
春香「一番乗りだね!」
千早「やっぱり、朝と夜では印象が違うわ」
亜美「外明るいねぇ」
真美「あれっ、地下なのに外が見えるの?」
千早「ええ、ここは高い場所にある建物だから」
春香「そっかぁ……なるほど」
湯気がもくもくとたちこめている。
目の前にはプラスチックの「お湯をかけてからご入浴ください」的な文字。
昨日に体験済みだもんねっ!
ザバー
春香「あちゅいっ!」
千早「もう、春香ったら大げさね……つっ!?」
亜美「いけにえって必要だよね→」
真美「亜美、はるるんたちのリアクションで温度を知るなんて……おそろしい娘っ」
朝の光が差し込む湯船に、4人で入る。
真美「あっついねー」
春香「うぅ、目が覚めたよぉ」
千早「気持ちいいわね……」
亜美「そだねー……」
水の流れる音が響いて、くもっているガラスに真美が指でいたずら書き。
静かな、心地良い時間。
春香「真美、なに描いてるの?」
真美「はるるん」
春香「えっ、それ私!?」
千早「私にはリボンにしか見えないのだけれど……ふふっ、そうね、春香ね」
亜美「そっくりだね!」
春香「みんな酷いよぅ!」
千早「そういえば春香、リボンはどうしたの?」
春香「お風呂に入るときぐらいは外すよ!」
亜美「リボンがないと分かんないねぇ」
春香「あ、亜美と真美だって髪結んでないじゃない!」
真美「なーに言ってるのはるるん、お風呂に入るときは結ばないよう」
春香「もーっ!」
千早「昨日のロケは楽しかったわね」
亜美「そうだねー、アイスも美味しかったし」
真美「亜美、ソフトクリーム3個ぐらい食べてたよね」
亜美「美味しいんだもん」
春香「あはは」
千早「春香、亜美と一緒に連続で並んでいなかった?」
春香「……美味しいんだもーん」
真美「あー、マネしたー」
亜美「ひどいやはるるーん」
春香「ええっ!?」
千早「もう一度食べたいわね……」
亜美「そんじゃあさ、にいちゃんに頼んであのサービスエリアに寄ってみよーYO!」
春香「あっ、いいねーそれ! 賛成っ」
真美「おみやげも買いたいしねー」
千早「ええ、いいわね。私、プロデューサーに提案してみるわ。……ところで、おみやげは何を買うの?」
亜美「うーん、りっちゃんしかリクエストしてないんだよねぇ。いっそのこと、してくれたほうがいいんだけど」
真美「何が欲しいか分かんないよねー」
春香「律子さん、何が欲しいの?」
亜美「お饅頭だって。りっちゃんのお家の分と、事務所のみんなの分と、お客さん用。お金はもらってるよ」
千早「それは果たしておみやげなのかしら……」
真美「真美、ちょっとのぼせ気味だから、一旦あがるよ」
春香「大丈夫? 気分が悪かったら、すぐに言うんだよ?」
真美「うん、だいじょーぶ。身体洗ってるよ」ザバー
亜美「……はるるん、お母さんだね」
千早「ええ、お母さんね」
春香「へぇっ!? い、いきなり何!」
亜美「心配性だし」
千早「面倒見も良いし」
亜美・千早「ねー」
春香「お母さんじゃありません! だいたい、事務所だったらお母さんはあずささんみたいな……」
千早「それ以上はダメよ、春香」
亜美「はるるん、絶対にあずさお姉ちゃんの前で言っちゃダメだよ」
春香「ごっ……ごめん」
シャワーの音が止まった。ふと真美を見ると、シャンプーが髪の上で泡立っている。
千早「そういえば、水瀬さんとあずささんはこのロケに来なかったのね」
亜美「そーそー。真美とのお仕事だからねー。竜宮の仕事は明後日まで無いのだよ」
春香「明日はやよいとライブだっけ。大変だよね」
亜美「午後からふたりと一緒にラジオじゃーん! こっちのセリフだYO!」
千早「そうねぇ……私たちも、忙しいのかも」
春香「お仕事いっぱいあるのはいいことだし、こうやってゆっくりお風呂に入れてるから……私は満足かなぁ」
亜美「うんうん」
シャワーの音がまた聞こえ始める。
千早「……ふぅ。お風呂だと話も弾むわね」
千早お姉ちゃんが伸びをしながら笑った。そーだねぇ。
亜美「なんとなく、喋ると間延びしちゃうよねぇ」
春香「癒される感じがするよー、なんだか寝ちゃいそう……」
亜美「今度は事務所のみんなで朝風呂とか入りたいねー」
春香「そうだね、なんだか貴音さんとか、朝に弱そう」
千早「一番朝に弱いのは春香だと思うけれどね」
春香「むー! 弱くないもん!」
亜美「いやいや、弱いっしょ→!」
真美「ただいまぁ」
亜美「おかえりー」
真美は湯船に入らずに、お風呂のフチに座って足をお湯にいれる。
のぼせたとき、そういう入り方するよねぇ。
亜美「そういえば、真美も朝に弱いんだよ?」
千早「そうなの? 可愛いわね」
春香「真美、お姉ちゃんなのにー」
真美「違うYO→! だって亜美、朝すっごい酷かったんだよ!?」
亜美「へ?」
春香「ん、どういうこと?」
真美「だってさぁ」
————
亜美「真美、まーみっ! 起きるのDA!」
真美「うみゅー……」
亜美「ほら、もうこんな時間だよ!」
真美「え……?」
亜美「はい、ベッドから出るっ」
真美「んー……」
亜美「ところでさ、真美」
真美「なにさ……」
亜美「ちょっとだけ早く目が覚めた朝っていいよね!」
————
千早「それは……弱いということになるのかしら?」
春香「判定は……ファールでーす」
はるるんがバッ、とファールのポーズ。
亜美「えー……弱いよねえ?」
真美「いやいや」
亜美「いやいやいや」
真美「いやいやいやいや」
千早「亜美、今日は何時に起きたの?」
亜美「んーとね、5時過ぎ?」
春香「はやっ!」
亜美「昨日早く寝たからねぇ」
真美「ま、真美は夜更かししたから……」
千早「夜更かししたの?」
真美「うん、亜美が寝たのが10時ぐらいで、そのあと真美は深夜番組見てたんだ」
春香「あっ、もしかして『サタデーフェアリー』?」
真美「そー、それ!」
亜美「ミキミキたちの番組だね」
千早「本当は見たかったんだけれど……眠気に勝てなくて」
真美「でもでも、亜美も千早お姉ちゃんも起きるの早いんじゃない?」
千早「そうかしら……私、普段から5時20分ぐらいには起きているけれど」
亜美「早いねぇ」
千早「でも、朝食とシャワーで時間は潰れるわね」
春香「あー、わかるよ。朝ってすっごく早く時間が流れるんだよね」
千早「不思議よね」
真美「うんうん」
亜美「気づいたらもう学校に行く時間だったり……」
春香「でも、きょうみたいな日はゆっくりだよねぇ」
千早「予定が入っていないから、かしら?」
真美「心にヨユーがあるとゆっくりなんじゃないかなぁ」
亜美「お風呂もあったかいし、こんな朝だったらどんと来いだよねー」
春香「うんうん……さーて、そろそろ身体を洗おうかなっ」ザバー
千早「じゃあ、私も」
亜美「それじゃあ真美、行ってくるよ……」
真美「あ、亜美! 真美を1人にするのっ!?」
亜美「真美……亜美は、身体を洗わなくちゃ……いけないんだッ……!」ザバーッ
真美「い、いかないで亜美ーっ!」
千早「……元気ねぇ」
春香「あはは、そうだね」
——
————
亜美「ふぃー……いいお湯でしたなぁ」
真美「そだねー」
春香「そーだ。こういう時はコーヒー牛乳だよ! コーヒー牛乳!」
千早「買いましょうか」
女湯から出てきて、自販機コーナーの椅子に座る。
朝からホカホカで気持ちよく入れたよん。
男湯は賑わっているようで、おじさんとか親子が目の前を通っていた。
春香「んっふっふー、お姉さんがトクベツに奢ってあげよう!」
亜美「わーい! 大好きはるるん!」
真美「ありがとうはるるん!」
春香「えへへ……」
それじゃあ買ってくるね、と小走りで自販機に向かうはるるん。
髪を結ぶ途中の真美の横に千早お姉ちゃんが座る。
千早「本当は今日、仕事があったみたいなのだけれど……」
真美「え?」
千早「プロデューサーが、記者の方に頼み込んでずらしてもらったそうよ」
亜美「そうなの?」
千早「ええ。だから、しっかりお礼をしないと。帰る途中、いっぱい寄り道ができるんだから」
にいちゃん、何にも言わなかったよね。
ただ、「今日のロケ頑張れば、明日はまるまる遊べるぞ!」って。
真美「にいちゃんにありがとーって伝えなきゃね!」
亜美「うんうん!」
千早「ふふ……って、プロデューサー?」
振り返ると、そこには髪がしっとり濡れたにいちゃん。
メガネはかけていなかった。
P「おう、みんな。朝風呂か?」
春香「あっ、プロデューサーさん!」
はるるんが自販機の前からブンブンと手を振る。
P「おはよー、春香」
春香「おはようございます! あのっ、コーヒー牛乳飲みますか?」
P「ん? ああ、そうだな。みんなの分の金も出すから、買ってくれないか」
春香「分かりました! でも、大丈夫ですよ? 私が出しますから」
P「いいんだよ、遠慮するな」
春香「それじゃあ、おねがいしますねー」
千早「プロデューサーも早起きしたんですか?」
P「ああ、それでせっかくだから入ろうと思ってな」
亜美「早く起きた朝っていいよね!」
P「いいよな、特に目覚めもスッキリしてると」
春香「お待たせしました!」
P「おう、ありがとうな。はいこれ」
春香「ありがとうございます」
千早「それじゃあ、いただきます。プロデューサー、春香」
亜美「いただきまーす」
真美「いただきまーっす!」
ごく、ごく、ごく。
フタを開けて喉に流し込む。冷たくて甘いコーヒー牛乳。
P「くー、やっぱり風呂あがりはこれだな」
真美「にいちゃん、オヤジっぽいよー」
P「ふっふっふ、デキる男の間違いじゃないのか?」
亜美「デキる男が間違いだよ→」
千早「そうだ、プロデューサー。今日、昨日のサービスエリアに行きたいのですが」
P「あそこか? いいぞ、おみやげ買うのか?」
千早「はい。あと、ソフトクリームを食べたいなと」
春香「5人で食べましょうよ!」
真美「ねー、いいでしょー?」
P「分かった。みんなで食おうな」
千早「ありがとうございます!」
亜美「やったー!」
ちょっとだけ早く目が覚めた朝っていいよね!
だって、いいことがたくさんあるんだもん!
終わりです。投下途中に寝ちゃってすみませんでした。
朝風呂後のコーヒー牛乳とか、アイスとか最高ですよね。
お読みいただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。
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