塵塚怪王の星 (15)
京極SSですが、原稿用紙七枚分の長さしかありません。
また、キャラ崩壊など恐らくありますので、気になる方はお控えください。
お楽しみいただければ幸いです。
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塵塚怪王
それ森羅万象およそかたちなせるものに長たるものなきことなし。麟は獣の長、鳳は禽の長たるよしなれば、このちりづか怪王は塵つもりてなれる山姥とうの長なるべしと、夢のうちにおもひぬ。
http://i.imgur.com/TG0sCPA.jpg
ここは。
この世界は。
吹けば飛ぶような儚いものでは無いだろうか。
花の一生が私たちにとって一瞬であるように──私達の一生も、木からすればほんの一瞬のことなのだろう。
その木の生涯とて星からすればほんの刹那なのだろう。
宇宙は──そんな星を、軽々と、無限に内包している。
私は。
宇宙と云う真白な布に落とされた───。
ちっぽけな塵と変わらない。
1
梅雨が明けて仕舞った──渾沌とした頭で、そんなことを思った。
私の頭は、常に一定以上の渾沌を抱えている。だが、それは何か考えている故のものでは無く──何も考えない故の産物だ。
だが私はその時、確かに「梅雨が明けた」と、そう思ったのだ。
私は雨に否定的な感情は余り持っていない。それどころか──好ましくさえ思っている。
だから───寂しかったのかも知れない。
また──夏が来た。
もう海開きもしたとは云え、夜はまだ寒い。
そう思って──ふと、空を見上げた。
2
七月が来た──そんな風に考える。。
もうこの間正月に餅を食べてから半年が経過しているのだ。
速いものだと──思う。
今年に入って──自分は社会に──何か貢献できただろうか。誰かから──感謝されただろうか。
勿論、人に感謝される為に働いているわけではないが──そんなことを思った。
また半年──自分が納得できるまで我武者羅に働こう。
我武者羅に──生きてみよう。
そんな風に思って──ふと夜空を見上げた。
3
気温が高くなってきたと感じる。
厭だ──と思う。
暑いのは苦手だ。しかし──騒がしいのは好きだ。
だから、平均してしまえば──夏と云うものに余り嫌悪感は感じていないようにも思える。
然し──何故かどうしても、夏は好きになれない。
だが、そんなことにはお構い無しに、世間は、世界は回る。
この星は──旋って行く。
そんな自分の小ささに小さく溜息を吐き──空を見上げた。
4
梅雨のせいで仕舞っていた風鈴を取り出した。
梅雨は明けても長期に亘って湿気を残し、じめじめとした日は長引く。
然し──それ程苦ではない。
雨の日は日光が暴力的に燦燦と降り注いでいる日よりも静かで良いと思うし──紫陽花の花も美しい。
日中常に曇っているから──虹がかかることは滅多に無いが──それでも趣があって良いものだと思う。
今年も梅雨が終わり──暦上は夏になった。
そして。
今日の暦を思い出し──空を見上げた。
今日が七夕であると思い出し見上げた空は生憎の曇り空だったけれど。
それでも美しいと思った。
この分厚い雲の上に広がっているであろう星空が。
そして───。
この世界が。
今年も──織姫と彦星はこの空の上で逢ったのだろうか。
ちっぽけな人間でも他人の幸せを願うことくらい、出来る筈だ。
(了)
以上になります。
読んでいただいた方、楽しんでくれた方、ありがとうございました。
乙
毎回楽しみにしてるぜ!
>>9
ありがとうございます。
ところで、最後の部分晴れの日バージョンもあったんですけど貼って良いでしょうか?
見上げた空には───。
星だ。星だ。星だ。
夜空を埋める満天の星が───此方を見ていた。
今日は七月七日、七夕である。
今年も──織姫と彦星は逢えたのだろうか。
塵のように小さな人間でも──他人の倖せを願うことくらい、できる筈だ。
(了)
本当にこれでおしまいになります。
ありがとうございました。
またそのうち貼りに来たいと思います。
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