「うん……うん……こっちはどうだって？」

「東京は人も多いし高い建物が多くてちょっと疲れるわぁ。でもみんながいるから平気よ？」


「……この前も道に迷いそうになったけど美奈子さんが連れてってくれたんよ」

「美奈子さんってのは料理が得意なお姉さんだべ。美奈子さんの作ったのはなまらおいしいんよ」

「でもちょっと量が多くてね？　育ちゃんと環ちゃんと桃子ちゃんも一緒だったんだけど、あのときはがんばって残さず食べたわぁ……」

「三人とも小学生なんだよ？　なのに桃子ちゃんはしっかりしてるし、育ちゃんはがんばり屋さんで、環ちゃんは元気なの」

「三人とも仲良しで見ててほっこりするんだわ」


「……あ、あたしだってお姉さんらしいこともできるよ？」

「そうそう、お姉さんと言えばね、千鶴お嬢さんって人がいるんだわ」


「……お嬢さんって呼んでるのはね、千鶴お嬢さんがお金持ちだからなんだわ。セレブなんだべ」

「こっち来たばかりのあたしに色々優しくしてくれたんだぁ」

「畑仕事って向こうではガーデニングって呼ぶんだよ？　知ってたかい？」

「あと千鶴お嬢さんが差し入れだってコロッケくれたりするんだわ。なまらおいしくてねぇ。ばあちゃんにも食べてもらいたいぐらいだわ」


「……今度遊びに来る？　本当かい？　楽しみだなぁ」

「……プロデューサーはどうだって？　心配ないってば。いつも私たちのためにがんばってくれてるよ」


「……みんな心配性だねぇ。プロデューサーが来たときも心配し過ぎだって言ったでしょや」


「……大丈夫だよ。あたしはプロデューサーを信じてるから。それにみんなもいるからねぇ」


「……うん、そっちのテレビにも映るぐらい有名になってみせるから。応援してて、ね？」

「そうだ。今日は何の日か覚えてるかい？」


「……うん、ありがとうねぇ。あたしもあの頃より少し大人になれたよ」

「それでね？　さっきまで劇場のみんなと誕生日会をしてたんだわ」

「みんなあたしにおめでとう、って言ってくれてね？　嬉しかったなぁ」

「料理もこのみさんとかあずささんが、素敵な料理をいっぱい作ってくれてね？」

「あと千鶴お嬢さんが七面鳥を持ってきてくれたんだわ。七面鳥なんて初めて見たからびっくりしちゃったべ」

「ケーキなんかも春香さんとか琴葉さんが手作りしてくれたんだぁ。育ちゃんたちも手伝ってくれたんだって」

「ロコちゃんと瑞希さんが部屋の飾りつけをしてくれたみたいで、綺麗だったべさ」

「……最後の挨拶でね。みんながあたしなんかのために色々やってくれてね、ありがとうって伝えたんだ」

「……あたしは一人でこっち来てさ。わからないこともいっぱいだったけど、みんなが助けてくれて」

「あたしはみんなに何もできなかったから、絶対お返しするねって」


「……うん……うん。プロデューサーにも同じこと言われたよ。ひなたに元気をもらってるって」

「あたしなんかなんて言うなって、怒られちゃったわ」

「それから……泣いちゃってねぇ。ありがとうって思ってたら、なんだか止まらなくって」

「……うん……ばあちゃんもありがとうね。ばあちゃんたちが応援してくれて、プロデューサーにみんなも助けてくれるから」

「あたしももっとがんばれるよ。がんばってアイドルになって、あたしがもらったものをみんなと、ファンの人たちにもお返しするよ」

「ありがとうって、みんなに届けられるようなアイドルになるよ」

「ごめんね。長くなっちゃったや。ばあちゃんにもありがとうって伝えたかったんだわ」


「……うん。じいちゃんたちにも伝えておいて？　もう少ししたらそっち行くからって。ありがとうはそんときに言うべさ」

「今日はありがとうね。……うん、おやすみ、ばあちゃん」


「……ふぅ、長くなっちゃったわぁ。久しぶりにばあちゃんの声聞いたけど、変わってなかったな」

「……よし、明日からもがんばっていこうかね」

「ばあちゃん、プロデューサー、みんな。おやすみ。これからもよろしくお願いします」


おわり