トレック「んー、そっかぁ」

ノア「そっかぁって、お前なぁ・・・」

トレック「まぁ、人間だからそういうこともあるさ」

ノア「・・・お前がそういう性格なのはわかってる。でも今日は真剣に聞いてくれ」

トレック「それもそうだな。ところで何の話だっけ？」

ノア「フィルさんのことだ」

トレック「？どっかで聞いたことがあるような、無いような・・・」

ノア「オスティアの闘技場の子」

トレック「ああいたいた！ぶっきらぼうなお前が、見知らぬ女剣士相手に親切にしてたから珍しいと思ったもんだ」

ノア「・・・悪かったな。何か心当たりはあるか？」

トレック「んー、ないなぁ」

ノア「そうか・・・」

ゴンザレス「う？」

トレック「お？」

ノア「知り合いか？」

トレック「そうそう。ひさしぶりだなぁ。名前は、えーと・・・」

ゴンザレス「おれ、ゴンザレス」

トレック「ゴンザレス・・・いい名前だなぁ。あ、いいこと教えてやろう。俺の名前は・・・」

ゴンザレス「お前レック」

ノア「！？」

トレック「レック・・・？そう言われればそんな気がしてきたなぁ」

ノア「！！？？」

トレック「ところでどうしたんだ？」

ゴンザレス「師匠が娘の結婚相手をみつけた」

トレック「んー、そっかぁ。それで？」

ゴンザレス「もうない」

ノア「何でこいつにその話を？」

ゴンザレス「？　あれ？どうしてだ？・・・だめだ、おれ　あたまわるい」

ゴンザレス「考えたら熱が出る・・・」

ノア「ああ、すまない。・・・ところで師匠の名前は？」

ゴンザレス「バ、バ、バ・・・バアトル！」

ノア「・・・！！」

ツァイス「・・・」

ルブレー「ｷｭｰ…」

ミレディ「あら、ツァイスじゃない。どうしたの？」

ツァイス「姉さんか・・・」

ミレディ「元気ないわね」

ツァイス「・・・ほっといてくれ」

ミレディ「本当に大丈夫？ルブレーも心配してるわよ？」

ツァイス「姉さんは例の噂を知らないのか？」

ミレディ「うわさ？」

ツァイス「・・・やっぱいいや。余計面倒なことになりそうだ」

ミレディ「あら、姉に言えないことがあるのかしら？大丈夫よ、怒らないから」

ツァイス「わかった、言うよ。実は・・・」

～数日前～

バアトル「ツァイスよ、なぜかわしはお前と気が合うようだ。お前といるとわし本来の実力が出せる気がしておる」

ツァイス「はい。俺もなぜかバアトルさんといると安心します。なにか・・・、大きな力に守られているような」

ルブレー「ｷｭｰ‼」

バアトル「わしは息子を持つならお前のような男を育てたかった。娘のムコにはお前のような男がふさわしい」

ツァイス「ど、どうも・・・」

バアトル「何を他人行儀にすることがあろうか。これからはわしを父と思って何でも打ち明けるがよい！」

バアトル「我が息子ツァイスよ！」

ツァイス「はぁ、あ、ありがとうございます・・・。」

ツァイス「（また暴走し始めたなバアトルさん・・・。面倒なことになる前にここから離れよう）」

ツァイス「それじゃ、これで」

バアトル「決めた！フィルの結婚相手はこのツァイスだ！そうと決まればフィルにこのことを伝えなくては！」

ツァイス「えっ！？ちょっと、おれ結婚するなんて一言も・・・」

バアトル「フィル――ーーーッ！フィルーーーーッ！どこにおるのだぁー！」ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ








ツァイス「・・・行ってしまった」

エレン「ツァイス・・・」

ツァイス「！　エレン！聞いていたのか！？」

エレン「そういうことだったのですね・・・」

ツァイス「エレン、あれはバアトルさんが・・・」

エレン「わたし・・・、わたし・・・」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

エレン「さようなら！」ﾀﾞﾀﾞッ

ツァイス「！？　エレン！待ってくれ誤解だ！」







ツァイス「ということなんだ・・・」

ミレディ「なんともまぁ・・・苦労するわね」

ツァイス「あの後サカのシンが目が合うなりいきなり勝負をしかけてきて・・・」

ツァイス「かんやかんやで引き分けに持ち込んだけど・・・肝心のエレンを・・・」

ミレディ「見失ったのね」

ツァイス「バアトルさんは勝手に俺をムコにするし、エレンはいなくなるしで碌なことがなかったよ」

ミレディ「確かに私が出る幕じゃなかったようね」

ツァイス「バアトルさんの娘さんに申し訳ないよ・・・」

フィル「あのー・・・」

ルトガー「・・・またお前か。今度は何だ？」

フィル「いや、勝負とかじゃなくてですね・・・、えーと」

ルトガー「・・・」

フィル「・・・人生相談？」

ルトガー「俺はもう行く」

フィル「ああっ！まって！少しでもいいから話を・・・」

クラリーネ「あらルトガー、こんなところで何をしてらっしゃるの？」

ルトガー「・・・クラリーネか」

クラリーネ「そこの方は？」

フィル「あっ、はじめまして。フィルです。ルトガーさんに人生相談を・・・」

クラリーネ「人生相談！どんなものか私にも聞かせて下さらない？もちろんルトガーと一緒に」

ルトガー「・・・・・」ﾊｧ･･･

フィル「・・・・！」ﾎﾟｶｰﾝ

フィル「（あのルトガーさんが素直に言うことを聞くなんてすごいなぁ。わたしなんか相手にされないことが多いのに）」

クラリーネ「早くして下さらない？」

フィル「は、はい。実はですね・・・」

クラリーネ「なるほど。その殿方の目の前にするとついつい逃げ出してしまうと」

フィル「はい・・・」

クラリーネ「フフフ・・・、面白くなってきましたわ！」

フィル「？」

クラリーネ「ズバリ！あなたは自分に自信を持ててないのですわ！自分から不釣り合いと思っても何も始まりませんわ！」

フィル「自信・・・？不釣り合い・・・？」

クラリーネ「大体なんですのその服装は？全く女らしさを感じませんわ！殿方に振り向いてもらうのなら少しは気を付けるべきじゃなくて？」

フィル「・・・それって今回の件と関係があるのでしょうか？」

クラリーネ「あら？それでは今まで通り喋れなくて良いですのね？」

フィル「！　それは困ります！ノアどのと話せなくなるなんて・・・」

クラリーネ「大丈夫、私の言うことを聞けば確実ですわ！私の事は魔導軍将とお呼びなさい」

フィル「はい！お願いします魔導軍将！」

ルトガー「（面倒なことになった・・・）」











セシリア「ハブショッ！」

ロイ「わぁ、セシリアさん凄いくしゃみですね」

セシリア「きっと誰かが私の武勇伝を語っているのね」ﾀﾗｰ

ロイ「（セシリアさんに武勇伝なんかあったかなぁ・・・？）」

リリーナ「セシリアさん鼻水が垂れてますよ・・・」

クラリーネ「まずその世間知らずな所を直すべきですわ」

フィル「は、はい！」

ルトガー「お前がそれを言うか・・・」

クラリーネ「・・・何かご不満な事でも？」

ルトガー「・・・」

クラリーネ「その服装も色気のあるものか、私のように可愛らしいものにしましょう！」

フィル「（服はなるべく変えたくないなぁ・・・。でもノアどのといつものように話せるようになるには仕方ないことかもしれない）」

フィル「わかりました。出来ればクラリーネさんの着ているような可愛らしいもので！」

クラリーネ「私のお古になりますけど、それでもいいかしら？」

フィル「はい！なんでも！」

ドロシー「あれ？何してるのクラリーネ」

クラリーネ「あら、丁度いい所に来ましたわねドロシー。このお方を一人前のレディにするためのレッスン中ですの」

フィル「ど、どうも」

ドロシー「もしかしてあなたがフィルさん？やっぱあの噂って本当だったんだー！」

フィル「噂？なんのことですか？」

ドロシー「え？バアトルさんが娘の結婚相手を見つけたってみんなに言ってるって聞いたけど・・・」

フィル「・・・へ？」

ツァイス「エレンの誤解も解かなきゃだがバアトルさんとその娘さんの誤解も解かなきゃ・・・」

シン「噂は聞いたぞ」

ツァイス「・・・またシンか。悪いがお前にかまってる暇はないんだ」

シン「別に戦いに来たわけじゃない。あの娘はサカ出身だがサカの暮らしには程遠い生活を親子でしてきたらしい」

ツァイス「・・・それがどうしたんだ？」

シン「結婚するなら相手の事を知るものだろう？」

ツァイス「違うって！それは誤解なんだ。バアトルさんが勝手に言ってるだけなんだよ」

シン「そうか。あのシスターのために花まで摘んできてたのに他の女と結婚するなんておかしいと思ったが・・・」

ツァイス「・・・なんで俺がエレンに花を摘んできたことを知ってるんだ？」

シン「・・・『エレンとは故郷が同じだし、それになんかほっとけない気がするんだ。俺がいつでも守ってあげたい・・・ダメかな？』」

ツァイス「なっ！聞いてたなコイツ！」

シン「フン　初々しくてとても聞いてられなかったぞ」

ツァイス「この槍の錆にされたいか？・・・お前だってどうなんだ！スーって子、最近ロイ殿と仲がいいらしいじゃないか。いいのか？」

シン「一つ勘違いしてるなツァイス。別にスー様のことを異性としてはみてないぞ」

ツァイス「えっ、そうなのか？」

シン「俺の使命はスー様を守り無事に族長のいるサカへ送ることだ」

ツァイス「でも万が一ロイ様と仲良くなってそのままリキアに嫁いだらどうするんだ？」

シン「それだ。そうなると一つ問題が出る」

シン「スー様のご両親は二人ともスー様が生まれて数年もしないうちに病気で亡くなったのだ」

ツァイス「それがどうしたんだ？」

シン「族長の後継者がいなくなるのだ。本来スー様がなるはずだが、リキアに嫁いでしまうとなるとな」

ツァイス「ならリキアに嫁がせるのを止めるべきじゃ？・・・あっ！」

シン「そこでだ。スー様がいないとなると族長の座はどうしても他の者に譲らざるを得ない」

シン「ここで族長が誰に継がせるか？スー様を無事に守り通すという重要な使命を全うしたおれしかいなかろう」

ツァイス「なんて奴だ・・・、正直ここまで腹黒いとは思わなかったぞ！・・・って！お前とこんな話をしてる場合じゃなかった！」

シン「あのシスターなら輸送隊の近くにいたぞ」

ツァイス「輸送隊か！ありがとな！急ぐぞルブレー！」

ルブレー「ｷｭｰ」







シン「行ったか。・・・そういえば他に子供たちが近くにいたが・・・特に問題は無いだろう」