旧ザク「いやよ」(45)

ガンダム 「つ、付き合ってください!」

逡巡する様子もなく

旧ザク  「だからいやなんだって」

彼の告白を拒絶する彼女


ガンダム 「ど、どうしてですか」

旧ザク  「ん。タイプじゃないから」

ガンダム 「……」


興味さえもないのか視線すら彼に向けず片手の携帯を弄りながら


旧ザク  「消えてくんない?」


目障りだからと一言付け加え空いた片手でまるで犬を
追い払うかの様に手を振る


ガンダム 「クッ…」

旧ザク  「大体…アンタはアタシのドコが好きなわけ?」

ガンダム 「す、すべてです!!」


彼の言葉に微塵も核融合炉が動かない彼女は、冷たくモノアイを動かせ彼をジッと見て


旧ザク  「はなしにもならないわ。・・・クズ」


侮蔑を込めた言葉でそう言った後


旧ザク  「ワタシはアンタみたいなモヤシは嫌いなのよ」

旧ザク  「……」

ガンダム 「それでも…ぼくは」

視線を下方に落としながら呟くように彼は言葉を発する

旧ザク  「というか早く手を離してくれない?」

ガンダム 「でもそれじゃ話が出来ない」

旧ザク  「だからワタシは話なんかしたくないっていってんのよ?
      どうしてお肌の触れ合い会話しなきゃなんないのよ」

ガンダム「じゃ、じゃあ光学通信で?」

旧ザク 「アンタ…ばかでしょ」

え?と呆ける彼

ガンダム「ば、バカじゃないよ…一応、学習機能付きのaiだし」

否定さえも蚊の鳴くような声

旧ザク 「ま、とにかくスカートから手を離しなさいよ」

ガンダム「わ、わかりました」

彼は諦めその手を離す・・・とたんに彼女の声が聞こえなくなる。甘露のようなソノ声が

甘い時間はこうして幕を閉じた

ただ甘い時間というモノは彼の主観であり周囲に無遠慮に押し付けたものでしかない

したがって後にはこのような結果になるわけなのだが・・・


サイコガンダム「ちょっと、キミ」

そう言いながら、この警官は彼の体を軽々と持ち上げる


急に周囲が暗くなったのを感じた思った後

ガンダム 「え?え?えっ?」

彼は不意に浮遊感に襲われる

サイコガンダム「痴漢の準現行犯で逮捕する」

ガンダム「え・・・・・・」

彼は警官に強制的に現実へと戻される

下方には携帯を持った旧ザク

旧ザク 「あっはははは。超うけるッ」

けらけらと笑う彼女

サイコガンダム「詳しくは署で聴かせてもらう」

ガンダム 「ちょっと待ってください、僕は別に痴漢なんて…」

必死に説明しようとする彼。しかし


サイコガンダム「なに言ってるの、言い訳なんか通じないよ?」

サイコmk-2「もうとっとと署に連行しちゃおうよ」

サイコガンダム「そだね周りも騒がしくなってきたしね」

二人の女性警官には単なる自己弁護にしか聞こえない


ガンダム 「いや、だから、僕は…」

しどろもどろになりながら周囲に視線を泳がせる彼

ふと一瞬、彼女と視線が合う。彼女のモノアイは明滅している・・・光学通信

旧ザク 「アンタ、なに言ってるのよ!しっかりスカート触ってたじゃない!?」

ガンダム「いや、だってそれは・・・

旧ザク 「はい認めた!」

咄嗟の彼女の指摘に言葉を遮られる彼

ガンダム「えっ」

旧ザク 「今、否定さえしなかったよね!?」

くくっと笑みを浮かべながら彼女は言い放つ

旧ザク 「死ねよ…この痴漢やろう」

彼を捕まえている二人の女性警官は無言のまま

彼を連行していく

彼の頭の中は先程の彼女の「死ねよ…痴漢やろう」という言葉だけが

何度もリフレインされる

―――
――


―警察署・取調室―

    『で。どうしてあんなことをしたんだ?」

若い警官が言葉を発する

この取調室においては部屋全体が所謂お肌の接触回線を利用したつくりになっている
    
ガンダム 「あ…あんなこと…?」

思考がうまく働かない

     『キミねぇ…・・・ハァ」

要領を得ないやり取りを繰り返しているこの若い警官はため息を吐く

マラサイ「だ・か・ら・……どうして痴漢なんかしたのか聴いてるんだよ」

ビクッと彼は体を硬直させる

警官の「痴漢」という単語に反応して…

ガンダム (僕は痴漢なんかするつもりはなかったんだ。ただ彼女と話が・・・声が・・・)

警官はこの現時点では彼のかすかな変化には気づかなかった

ガンダム 「・・・・・・」



マラサイ 「それでは・・・このを端末を見てもらえるか」

そう言って警官は彼のほうへ端末を差し出す

そこには先程の彼女のスカートを掴む彼の手が映っていた

画像が少々粗い。まるで携帯で撮った様な…

旧ザク「……ふ~」


まるで、一仕事終えたかのように背伸びをし、軽く息をはく。

旧ザク「これで撃墜数…更新っと」


手にしている携帯に文字を打ち込む。


旧ザク「今日のあのモヤシはチョロすぎだって…くくっ」


先程の光景を頭に浮かべ、思わず笑いが込み上げる。

彼女は連日この場所で数え切れないほどの被害を受けてる。

警察への被害届けおよび通報のみでいえば…

旧ザク「今日はあと一人くらい地獄に落せないかな?」

旧ザク「さっきのモヤシじゃストレス解消にもならないわ…」

この繁華街で彼女は一際目を引く存在である。

見た目、煌びやかな女性はこの場所においてもそこかしこに居ては居る。

ではなにが彼女を注目の的にするのか,それは健康的なふとももであろう。

短めのスカートからのびる下品ではないそのふともも…正しく神が与えたもうた奇跡のふともも。

次なる自身の発散の捌け口を探すように視線を周囲へ向け

旧ザク「あ…カモ…見~つけた…ふふふ」

一人の若者を捉えると含み笑いを浮かべながら、

彼女のモノアイが妖しく光る。

旧ザク「ねえ?暇」

若者に声を掛ける………


―――
――


ガンダム (どうして…どうし…て…ど…う…し…テ…)

彼は理解する。彼女は自分で警察へ通報したのだと。

彼が正常な思考を維持できていたのなら、

自身の行動こそが現在の彼が置かれている状況の、

そもそもの要因だと帰結するのだが…

ガンダム (僕を拒絶したんだ。…くそっ…通報までして……復讐してやる)

彼は反省という言葉さえ忘れているのか、あらぬ方へと思考を向ける。

彼のその身にナニかドス黒いものが彼を包み込む。

そして彼の体が黒く変色していく。

通常であれば、この様な変化は起こり得ない。

しかし彼が内に秘めている暗黒の魂がコノ変化をもたらす…


マラサイ 「ん~早く認めてくれないかな~?」カキカキ


警官は早々にコノ件を終わらせたいのか、未だ調書に記入している為、

彼の変化にはまだ気づいていない。


ガンダム「………」


無言のままの彼に対して、自分の言葉を無視されていると感じた警官は、

調書から視線を外して彼の方へと移す。

マラサイ「キミねぇ……アレ?」

先程までの色白い青年は変貌を遂げていた。

マラサイ「ち、ちょっと、キミ!」

慌てふためく警官。

ガンダム「……ハイ」

対して起伏の無い言葉で返す彼。しかし警官は問う。

マラサイ「ななななな、なんだソレは!」

何かの不具合か?…体の色素が変化する、それも僅かな時間で…。

この様な事は、見た事も聞いた事もない警官は、素っ頓狂な声をあげる。

ガンダム「ナニガ、デショウカ?」

それでも、先程と同じく起伏の無い声で彼は答える。

アッガイ「いえ。ご遠慮します」

若者の素っ気無い言葉が気に入らない彼女だったが、

それは後の地獄への切符を3倍増でこの若者に突きつけてやればいいと、

彼女は自身を抑えて

旧ザク 「なに?待ち合わせ?」

と、再び声を掛ける。

アッガイ「はい」

しかし、またも若者は素っ気無く応える。

旧ザク (なにコイツ…田舎モンのくせに…)

黒いガンダム…バンシィ的な?

彼女が若者の事を見下していたときに、

アッガイ「…すみませんが」

と、初めて若者が先に口を開く。(…実際には開きはしないが…)

旧ザク「なになに、なにかな~?」

この若者に対して彼女は苛立ちを憶えてはいたが、

彼女は努めて明るく応える。

アッガイ「いえ、特に用が無いなら向こうへ行って欲しいのですが…」

彼女はプライドを傷つけられ

旧ザク「……ふざけんなっ!!」

とうとう彼女は自制できなくなり声を荒げる。

>>25 ただ単純に表面の色が黒くなったとご理解ください。現時点では…ですけど

旧ザク「アンタ!一体、なに様のつもりよ!?」

彼女の豹変した態度に驚きはしたが、若者は

アッガイ「何故、貴女が怒っているのかボクには分りませんが気分を害したのなら謝ります」

これ以上、彼女を怒らせてはまずいと考え丁寧に答えた。

しかし……。

旧ザク「その澄ました態度が気に食わないのよ!!」

結果は若者の意図に反して、更に火に油を注ぐ事になってしまった。

烈火の如く怒った彼女。

アッガイ(……どうしよう)

一気に得体の知れないナニかに追い詰められてしまった若者。

数分前まで、ただ知人を待っていただけの若者。

……災難や事故というものはこうして突発的に起こるんだ。と若者は理解した。

―取調室―

全身が黒く変色した彼に警官は

マラサイ「キ、キミ…大丈夫か?」

と、彼に聞くが…

ガンダム「………」

彼は無言で答える。


兎に角、なにかあってからでは遅いと考え、

警官は上司に報告する為に内線を掛ける。

マラサイ「…わ、わたしですが――---」

事の経緯を説明した警官だったが彼の上司は全く信じなかった。

現にこの警官も未だに信じられない。…自分の目前で起こった事だとしても…。

結局、上司はこの取調室に来るという事になった。

マラサイ「………キミってマジシャンなの?」

場に不相応な声のトーンで聞くが、

ガンダム「………」

彼は反応さえ見せなくなっていく。

と、そこへ警官から報告を受けた彼の上司が入ってきた。

プシュウ―

ハンブラビ「まったく、お前は訳の解らない事を言い出しやがって」

上司は部屋の中を一瞥してから部下である警官に声を掛ける。意識は彼(ガンダム)に向けたまま。

マラサイ「だから嘘なんかじゃないんですって」

言いながら警官は端末に指を走らせ画像を表示させる。

ハンブラビ「……コレが彼?」

上司はまず端末を指差し、続いて彼の方へと指差す。

そこには確かに色白の青年が表示されている。……時間表示は一時間ほど前となっていた。

ハンブラビ「君はマジシャンかナニか?」

再度、この場所には不相応な言葉が部屋に響く。

やはり、この上司も信じられないと思ったのか、しばらく無言のまま彼を見続けた後、

ハンブラビ「……で、彼の罪状は?」

と、警官に聞いた。


マラサイ 「接触です。通報を受けましたので痴漢行為での逮捕となりましたが」

ハンブラビ「接触……」

『接触による通報』と聞いて、上司は秘匿回線を開き警官に聞く。

ハンブラビ「……場所は?」

マラサイ 「○×繁華街です」

警官も秘匿回線で答える。

この間、一人の青年は無言のままだった。

当該の繁華街において逮捕者がかなりの数でていた。

数にして一週間で30件。

その全ての件の被害者が『旧ザク』という一人の女性だった。

一時はあまりの被害件数の多さに警察内部で冤罪の可能性も示唆された。

しかし、物的証拠などが有った為に、その可能性は無くなった。

話が変わるが、近年における接触行為そのものは、日常的なモノへと移り変わっていた。

理由は秘匿性のため。


痴漢行為と成るか否かは、当事者間の問題となっていた。

信頼関係によるものか、はたまた好意的か否か。

現在ではそれ等によって、スキンシップと犯罪行為の垣根ができている。


――

「ではどうしたらいいんですか?」 


旧ザク「―――――ッ」

若者の言葉に一瞬、言葉を失ってしまう。

彼女は自尊心を傷つけられた故に若者に対して怒っている。

ではこの若者に対して、どの様な報復をすれば良いのだろうと彼女は考える。

そんな思考を張り巡らせていく内に、次第に彼女は興奮状態から覚め始める。

旧ザク 「……そうね」

アッガイ「……なんですか?」

なにか思いついたのか彼女は

旧ザク 「じゃあ、ここで土下座でもしてもらおうかしら?」

彼女はこの若者に対し、この往来の中での土下座を要求した。

彼女は自身が要求した事だが、この若者は拒否してくるだろうと考えていた。

しかし

アッガイ「ここで土下座ですか」

と、まだ言い終わらない内に土下座をする若者。

アッガイ「これでいいんですよね」

若者はコレで満足なのかと彼女に問いかける。

旧ザク 「くっ……」

彼女は何も言い返すことが出来なかった。

若者は無言のまま立ち上がり、彼女と視線を合わさるのを確認してから

アッガイ「……で?」

と、なにかに吹っ切れたのか彼女に半ば挑発てきな態度をとる。

この若者に対して彼女は

旧ザク「な、なにもないわよっバカッ!」

と、幼稚な言葉しか紡ぎだせなかった。

若者はこの彼女の言葉に嘆息がでかけたが、それを押さえ込み、

アッガイ「では。これで…」

と、今度は極力視線が交わらない様、歩み始めた…

その様子を彼女はただただ見ている事しか出来なかった。

先ほどの若者を見送った(意図した見送り方では全くなかったが…)彼女は

旧ザク「これだから田舎モンは……」ブツ ブツ

と、必死にそして一方的な思考によって自分の精神の安定に努める。

元々、彼女はこういう性格ではなかった。

幼い頃はとても素直で面倒見もいい方であった。

しかし、とある事柄(彼女にしてみれば、事件と言う方が正しいのか)が起こり。

彼女は変わってしまった……。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom