雨降小僧の虹 (11)
京極SSですが、原稿用紙6枚分の長さしかありません。
また、筆者が高校生のときの作品です。
ある程度推敲はしたつもりですが、キャラ崩壊なども恐らくありますので嫌な方はお控えください。
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雨降小僧
雨のかみを雨師といふ。雨ふり小僧といへるものは、めしつかはるる侍童にや。
http://i.imgur.com/xP4oXS2.jpg
───あれは虹だ。
無限の色。
光の帯。
七色の光の弓。
嗚呼──薄らいでゆく。
疾く───伝えなければ。
1
関口巽は小説を書く。
雨の日も。風の日も。空が晴れていても泣いていても。
否。別に平素書いている訳ではない。寧ろ自分は遅筆だと理解している。
しかし、雨の日だけは別だ。
雨の日は少し───本当に少しだけ───筆が乗る。其れが何に起因するものなのか、関口は知らない。
ただ──関口は今日も、小説を書く。
2
木場修太郎は刑事だ。
弱きを助け──強きをくじく。
だが───木場の求める勧善懲悪の話のような、明らかな悪人と云うのは然う然う居無い。
しかし、下手な鉄砲も何とやら、数多くの人と出会えば、──まあ大抵は犯罪者だが──いつかそんな「悪」に出会うかも知れない。
だが、元はそんな─言ってしまえば邪な目的で始めた行動に因って──木場は多くの知人や友人を得た。
そんな人たちを煩く思い乍も──今日も木場は歩く。
まだ見ぬ巨悪を一直線に目指して。
雨の中を──傘もささずに。
3
榎木津礼二郎に天候などは関係ない。
雨が彼に与えられる影響と云えば──周囲の人間の気持ちを暗くすることくらいのものである。
榎木津には殆ど視力が無い。その替わり──
─彼は人の気憶を視る。
だからこそ──周囲が暗い気持ちに成れば──暗い気億が視得れば──彼も陰鬱な気分に成るのかも知れない。
だが──それは普く間接的なものであるし──躁病の気のある彼には──恐らくそんなものは関係ないことだ。
今日も彼は、名探偵らしく──事件を解決する。
───雨を鬱陶しく感じ乍ら。
4
中禅寺秋彦にとって──天候というものは本当に関係が無い。
雨が降ろうが雹が振ろうが──彼は頑なに本を読む。
但し──虹だけは別だ。彼は虹を好む。だから本当は、雨の日は少し──本当に少しだけ──書に集中できない。
以前知人である関口にそう話すと、彼は驚いたような少し笑ったような顔になって──見つければ報せに来るよと云った。
結局それ以来、愚鈍なる知人が虹を報せに来たことはない。
それでも中禅寺は、泣き出しそうな空を見上げる。
ほんの少しだけ──友人を待ち乍ら。
関口は休憩がてら出かけた散歩で、ふと空を見上げる。
そして見つける。
ああ──あれは虹だ。
疾く───────。
(了)
おしまいです。
読んでくださった方、ありがとうございました。
乙
面白かったぜ!
乙
京極テイストがしっかり出ていて良かった
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