あの日までボクは、普通だった (40)

「……はぁっ……はぁっ……」

キミの首筋に手を当て、力を込める
汗ばんだキミの手が、僕の顔へと伸びて

「……ふっ、ぅ……」

キミが僕へ、笑みを向けた
そこでふっと力が抜け、僕はその場にへたり込んだ

「……」

キミは無言のままで、僕の方へと歩み寄ると
そっと僕を抱きしめた

……温かい

「……うん、温かいね」

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僕は昔から、よく顔に出ると言われていた
喜びや悲しみ、嫌悪まで分かりやすいらしく
トランプゲームで勝てた試しはない

……はぁ

今日も、頼まれ事が面倒だと思ったのが顔に出ていたらしく
相手に大分不快感を与えてしまったようだ
出しているつもりはないのに、出ているだとか
そんなこと言われても、僕には分からない

……にー

ガラスに映る自分の顔を、笑わせてみる
別に常にこんな顔でいろってことじゃないのは分かってる、分かっているのだけれど

……?

視線を感じて、振り返ると
同じクラスの……名前は忘れた
とりあえず女子が、こっちを見ていた

「……」

目の下の隈が目立つその子は、僕を一瞥すると去って行った
何か言いたいことがあったのだろうか?
まさか、また話しかけづらい顔をしていたのか……と
僕は表情をむにむにしてみる
頑張って普通にならないと、と思う

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