僧侶「パーティのノリについていけない」(306)
僧侶「三年前、王国は勇者育成制度を発足した」
僧侶「いわば学校のようなもので、突如現れた魔王を倒すため、勇者の素質を持つものを集め、教育する制度だ」
僧侶「そして最近、第一期生となる勇者達が卒業、それぞれ仲間を集め、旅に出た」
僧侶「しかし、僕らのパーティの勇者、いや、パーティ全員は」
勇者「でさー、その村人なー……ぶふははは!」
戦士「さっきから笑い過ぎだろお前」モシャモシャ
魔法使い「あんただってさっきから何食ってんのよ」
戦士「お前もチーズスティック食うか?、ぼっち」モシャモシャ
魔法使い「だからぼっち言うなやああああおああ!!!」
僧侶「とんでもない落ちこぼれ集団なのです……!」
パーティ結成編
勇者「よっしゃ、パーティ組んだなー」
戦士「このジャーキー美味いな」モシャモシャ
魔法使い「ふん、私を迎え入れられたことを光栄に思うのね」
僧侶「よ、よろしく……」
勇者「で、だ」
勇者「こうしてお前らを集めたわけだけど」
勇者「ねえ、なんで、ふふ、誘われなかったの?、ぷくく……!」
僧侶「え、え?」
戦士「ジャーキー食うか?」モシャモシャ
勇者「だってねえ?、パーティ結成が始まったの、三日前だよね?」
勇者「他のパーティはもうずっと前に組んで、くく、行っちゃったじゃん?」
勇者「お前らだけだよ?、ポツンと残ってたの、ぷくすくす……!」
僧侶「(い、いきなりそんなこと聞く……?)」
戦士「んー、何かなー」モシャモシャ
戦士「一回パーティ組んだんどけどさー」モシャモシャ
戦士「皆で食事した後、クビにされた」モシャモシャ
勇者「ぶっはははははは!!、お前そりゃ、食い過ぎで、食費がかさんだ、からだろ、うひひひゃひゃひゃ!!」
戦士「あー、なるほどな」モシャモシャ
魔法使い「あんた、言われてんのに食べるのをやめないのね……」
勇者「ふう、ふう……で、お前は?」
魔法使い「あら、私?」
魔法使い「ふん、この私に釣り合う者達がいなかったのよ」
魔法使い「どいつもこいつもパッとしないったらありゃしないわね」
戦士「あー、ぼっちか」モシャモシャ
勇者「ぶっは!!、ぼっっち、くふふふぅ!!」
魔法使い「な、ちょ!?、誰がぼっちよ誰が!」
戦士「だってなー、そんな態度だから誘われなかったわけだろー?」モシャモシャ
戦士「そりゃ残るのも納得だわな」モシャモシャ
勇者「ぼっっち、ぶふふふ、やべっツボった、くくくかかか!!」
魔法使い「だぁぁぁ!、笑うの止めなさいよ、ムカツクわね!!」
勇者「ぶふ、ふふぅ……」
勇者「…………」
勇者「ぶふっ!!」
魔法使い「だあからあああ!、笑うなああああ!!」
戦士「落ち着けよ、ジャーキー食うか?」モシャモシャ
魔法使い「お前は食い過ぎだろおお!、いくつ頼んだんじゃああ!!」
勇者「だっはははは!!、うっひっひゃひゃひゃ!!」
魔法使い「だ、だからぁ!、わ、笑うなって、ぐすっ、いっ、言ってんじゃないのよぉ!!、ひぐっ」
勇者「やっべ、泣いちった、ふくくく……!」
戦士「あーあ、泣かせやがった」モシャモシャ
魔法使い「何よぅ……友達いないから何なのよぅ……えっぐっ……!」
勇者「ふ、ふう、ふう……」
勇者「で、お前は?」
僧侶「あ、え、僕?」
勇者「うん、お前」
僧侶「えっと……」
僧侶「回復魔法が初級しか使えなくて……」
僧侶「それで、使えないって、皆に断られて……」
勇者「……」
戦士「……」
魔法使い「……」
僧侶「……え、え?」
僧侶「(な、何で白い目で見られてんの?)」
勇者「はー……」
勇者「何それ、普通すぎて笑えねえ」
僧侶「は、え?」
戦士「センスねえなーお前、手が止まっちまった」
僧侶「え、ええ?」
魔法使い「私も涙が引っ込んだわ……私より哀れね、あんた」
僧侶「は、えっと、え?」
勇者「やっぱ最後まで取り残されるだけあるわー……はぁー……」
戦士「ちっ……」
魔法使い「やれやれね……」
僧侶「(なんで僕が悪いみたいな空気になってるの……?)」
戦士「……」
戦士「ぼっち」モシャモシャ
魔法使い「あぁん?」
勇者「ぶっひゃはゃはゃはゃ、げっほ!!」
魔法使い「どぁこらぁ!!、笑うな言うとるだろがァ!!」
僧侶「……」
戦士「でさー、そういうお前こそ何なん?」モシャモシャ
魔法使い「そうよね、なんで今頃仲間集めてるのよ」
勇者「おー、俺?」
勇者「寝てた」
戦士「ぶっはははは!!、寝てたってお前、くは、ははは!!」
魔法使い「引きこもりじゃないのそれ!、くひひひひ!!」
僧侶「(え?、笑うとこ?)」
勇者「勇者学校を卒業したのはいいんだけどさ」
勇者「パーティ組んで旅立つの、来週だと思っててさぁ」
勇者「余裕ぶっこいてベッドに篭ってたわけよ!」
戦士「くはは!、やべぇ、喉通らねぇ、くふふふ!」
勇者「母さんに何してんのって、布団引っ剥がされてさあ!」
勇者「その拍子にベッドから落ちて、くふ、頭打ったわけだよ!!」
魔法使い「くふひひひ!、もうやめて、お腹痛い、ぶっひひひひ!!」
僧侶「(笑いどころが分からない……)」
勇者「そんなわけで、今頃仲間集めに来ちまったわけだよ、うん」
戦士「お前さあ、アホだろ?」モシャモシャ
勇者「おう?、言うじゃないの脳筋」
戦士「なんで俺が脳筋になるんだよ」モシャモシャ
魔法使い「まあ、見た感じ頭に脳みそ詰まってなさそうよね、あんたら」
勇者「お前だって、くふ、ぼっちやろ?、くふふふっ!」
魔法使い「その笑うのが一番ムカツクんじゃあああああらあああ!!」
戦士「まあまあ、ジャーキーでも食えよ」モシャモシャ
勇者「お前は!、くふっ、いつまで食ってんだよ、あっははは!」
魔法使い「あんた笑い過ぎでしょ!」
僧侶「……」
勇者「いやー、お前ら面白すぎだわ!」
勇者「こりゃ道中も退屈しなさそうだ!」
戦士「うん、いいんでない?」モシャモシャ
魔法使い「まあ、あんた達なら組んでやってもいいわね」
僧侶「……そ、そうだね」
勇者「おぉ?」
戦士「あん?」
魔法使い「はぁ?」
僧侶「え……?」
勇者「……何?、お前も来んの?」
戦士「マジかよ……」
魔法使い「興醒めね……」
僧侶「……」
勇者「……あー……なんなのお前……」
戦士「空気読めねえな……」
魔法使い「ねえ、あんたそれ本気?」
僧侶「……」
勇者「あーしらけちった!、もういいから出発しようぜ!」
魔法使い「そうね、早く外に出たいわね」
戦士「待って、まだ残ってんだ」モシャモシャ
勇者「ぶふっ!、だからお前は、くふ、いつまで食ってんだよ、うしゃしゃ!」
僧侶「……」
僧侶「(このパーティで僕はやっていけるのだろうか)」
突然だけど、ネタが無いんだ
何か提供してくれると助かる
戦闘後の食談議編
勇者「しゃおらあ!」ズバッ
魔物a「グギィッ!?」ドサッ
戦士「おらよっと」ズドンッ
魔物b「ガゴッ」グチャ
魔法使い「火炎」カッ
魔物c「ガオエアアアア!!」ボオオオオ
僧侶「……」
勇者「なんだ、大したことねーのな!」
戦士「まあ、街近くの草原だしな」
魔法使い「最下級魔法で事足りるわね」
僧侶「……」
僧侶「(皆強いんだなあ……性格はアレだけど)」
僧侶「(勇者さんは素早い動きで敵を翻弄、要所を狙って敵の行動を封じる)」
僧侶「(戦士さんは圧倒的なパワーで硬い魔物も粉砕する)」
僧侶「(魔法使いさんは言わずもがな、多彩な魔法で後方から攻撃、支援する)」
僧侶「(そして僕は……)」
戦士「ん?、お前腕切れてるぞ」
勇者「あれ、ホントだ」
魔法使い「あんた、何も考えずに突っ込むからよ」
僧侶「あ、僕が」
戦士「ほれ、回復薬」
勇者「おー、ありがと」
僧侶「……」
勇者「うおっ、しみるっ!」
僧侶「(やる事がありません……)」
勇者「しかしあれだな」
勇者「お前の大剣、切るって言うより叩き潰す感じのやつだよな」
戦士「んー、まあそうだな」
魔法使い「刃の無い剣ってわけ?」
戦士「余計な手入れをしなくていいぞ、付いた血を拭き取るくらいだ」
勇者「まあそれはどうでもいいんだよ」
勇者「お前がそれで魔物を叩き潰す時のな?」
勇者「魔物の、く、目ん玉飛び出る感じがな?」
勇者「こう、ぐえーって感じで、くふっ、ぶっははははは!」
戦士「そっちの方がどうでもいいだろ、ってか笑うとこかそれ?」
魔法使い「そんなところ見てるから怪我するのよあんたは」
僧侶「……」
戦士「しかし、腹減ったな」
勇者「ぶはっ!、おま、さっき食ったばっか、うはは!」
戦士「この魔物食えるかな?」
勇者「うっはは!、魔物食うのか、あひぃひひ!」
戦士「ちょっと魔法で焼いてくれよ」
魔法使い「は、はあ?」
勇者「ぶひゃあひゃははひゃ!」
魔法使い「なんでそんなことしなきゃいけないのよ!、てかあんた笑い過ぎでしょ!」
僧侶「……」
戦士「いいから、ほら」
魔法使い「くっ……今までで一番下らない魔法の使い方してるわ……」ボォォォ
勇者「あー、まあ見た目は美味そうだね……くふひっ!」
魔法使い「やるからには焦がさない程度にやるわよ」
勇者「変なとこでこだわるんだな、くふふふっ!」
魔法使い「笑うな!」
魔法使い「ったく……こんなもんでどう?」
戦士「いいんでない?」
僧侶「……」
勇者「よーし、いったれ、ガブッと!」
戦士「はむっ!」
戦士「うあわっち!、熱ぅっ!」
勇者「ぶっはははははははは、げほ、はっははは!!」
魔法使い「……くっ、ぶふっ」
戦士「くそ、舌火傷した……ふーっ、ふーっ」
勇者「くふっ………………ぶくふっ!」
魔法使い「ほ、ほら、くふ、早く、た、くふふっ、食べてよね?」
戦士「わーってるよ……はむ」
戦士「ふむ……」モシャモシャ
勇者「どうよ?」
戦士「んー……」モシャモシャ
戦士「……」モシャモシャ
戦士「……」モシャモシャ
戦士「ふむ……」モシャモシャ
戦士「うん……」モシャモシャ
勇者「……」
魔法使い「……」
戦士「……」モシャモシャ
戦士「……うん……」モシャモシャ
勇者「いやさ!、黙って食い続けないで感想言ってよ!、くふ、はひゃひゃ!」
戦士「あー、うん」モシャモシャ
戦士「いけるんでね?」モシャモシャ
勇者「まじで?、ふっくふ、ねえマジ?」
戦士「いけるって、食ってみ、ほら」
魔法使い「え?、私ぃ?」
勇者「おー、いったれ」
魔法使い「待ってよ、何で私が食べる流れなのよ?」
勇者「いいからいいから!」
戦士「食ってみろって、ほら」
魔法使い「強引ね、全く……」
魔法使い「どれ……あむ」ガリッ
魔法使い「あっぐっ……!?」
勇者「どぁっっひゃひゃひゃははははは!!、ひぃぃぃーー!!」
戦士「だははは!、骨噛んでら!、ぶっはははは!!」
魔法使い「な、何よ!、笑うこたぁないでしょ!?」
勇者「ひぃっひひひ……」
勇者「……」
勇者「だっははっは!」
魔法使い「恥ずかしいわね、もぅ……」
戦士「ふー、で、どうよ?」
魔法使い「あー……何かしらね……」モグモグ
魔法使い「塩気が無いわね……固いし……」モグモグ
戦士「ふーん、流石お嬢様ってとこか」
勇者「ぼっちだけどねぇ……ぶっふ!」
魔法使い「ぼっち言うな言うとろおおおおがやあああおあああ!!」
戦士「さて、次はお前だな」
勇者「あー、俺か」
魔法使い「何かもう、皆で食べる流れなのね……」
僧侶「……」
勇者「いっただっきまーす!」バクッ
勇者「……んー……」モグモグ
戦士「……」
魔法使い「……」
勇者「……くっ、ぶふっ、ぶっははっ!」ブッ
戦士「ちょ、だはは!、何で食いながら笑ってんだよ!、はっひひ!」
魔法使い「ちょっとぉ!、こっちに飛ばさないでよぉ!、もー!」
勇者「いやあ、その、なんだ」
勇者「なんかさぁ……」
勇者「……くひひぃっ!」
戦士「いや、なんで笑ってんのか検討つかねえよ」
魔法使い「沸点低すぎでしょあんた」
勇者「ははぁー、ひはっ……」
勇者「まあ焼いただけならこんなもんだよね」キリッ
戦士「なんだその顔!、だっはは!」
魔法使い「何カッコつけてんのよ……くっふっ……!」
僧侶「……」
勇者「さぁーて、そろそろ先進むか!」
戦士「そうだな」
魔法使い「無駄な時間を過ごした気がするわ……」
僧侶「……あの……」
勇者「あん?」
戦士「ぉお?」
魔法使い「はて?」
僧侶「……」
勇者「……そっか……そういやお前いたな……」
戦士「……何?、お前も食うの?」
魔法使い「はあ……手短に済ませなさいよね……」
僧侶「う、うん……」
僧侶「い、いただきます……」パク
僧侶「……」モグモグ
僧侶「……お、おいしい、かな?」
勇者「……あっそ」
僧侶「……」
勇者「さて!、先進むか!」
戦士「こっちも焼いてくれよ、歩きながら食うから」
魔法使い「あんた、まだ食べる気?」
僧侶「……」
僧侶「(初日なのに色々と辛い……)」
補助魔法重ねがけ編
魔法使い「加速」カッ
勇者「うっひゃほーい!」シュバババ
魔物s「ブゲラッ」ズバババ
魔法使い「筋力増加」カッ
戦士「せりゃあっと」ズドガーン
魔物s「ゲベェッ」ベチョッ
魔法使い「……」
僧侶「……」
勇者「よっしゃ、片付いたな!」
戦士「楽勝だったな」
魔法使い「ふふん、そりゃあ私の補助魔法のおかげでしょ?」
戦士「お前、なんでも出来るのな」
魔法使い「そりゃあ、私はエリートだからね」
戦士「その代償が友達か」
勇者「くふっ、……ぶふふっ!」
魔法使い「お前ら、燃やされたいか?、あぁコラ?」
僧侶「……」
戦士「で、実際どれくらいの魔法を使えるん?」
魔法使い「そうね、例えば」
勇者「くふふ、ぼっち、あっひゃひゃ!」
魔法使い「……」カッ
勇者「あびゃあああああああ!?」ズガガガ
魔法使い「今のが氷槍魔法ね」
戦士「ふむ」
勇者「い、いてえ、これ深く刺さってるって、いててて」
魔法使い「攻撃魔法なら炎、水、風、地属性全ての魔法が使えるわよ」
魔法使い「私は炎属性魔法が得意だから最上級レベル、他の属性は上級レベルまで扱えるわ」
戦士「へー」モシャモシャ
魔法使い「……何食べてんのよ」
戦士「ポテトスティック」モシャモシャ
魔法使い「あぁ、そう……」
魔法使い「で、補助魔法は、物理攻撃を補助する筋力増加、防御力を上げる硬化、」
魔法使い「素早さを上げる加速、魔法を跳ね返す反射、敵の強化魔法を打ち消す消散とかがあるわ」
戦士「何、まだあんの?」モシャモシャ
魔法使い「あるわよ、でも面倒だから全部言わないわ」
勇者「重ねがけしようぜ!」
魔法使い「いきなり何言い出すのよあんたは」
戦士「怪我はどうした?」モシャモシャ
勇者「回復薬余裕でした」
僧侶「……」
魔法使い「なんでそんな魔力の無駄遣いをしようと思うのよ」
勇者「面白そうじゃん!」
魔法使い「あんたの頭の中は本当に楽しそうね……」
勇者「言われてんぞ脳筋」
戦士「お前のことだよアホ」モシャモシャ
勇者「ほれ、どんと来い!」
魔法使い「やらないわよ!」
勇者「でもホントは気になるんだろ?、むふふ」
魔法使い「……」
戦士「こうなったら言うこと聞かないから付き合ってやりなよ」モシャモシャ
魔法使い「仕方無いわね……」
勇者「よっしゃ!」
魔法使い「なんで戦闘よりどうでもいいことのほうが魔力消費量が激しいのかしら……?」
戦士「何の魔法を掛けるんだ?」
魔法使い「そうね、四属性の上級魔法フルコースを」
勇者「ちょっと!?、流石に冗談キツイぜ!?」
魔法使い「嘘に決まってんでしょ、手始めに加速魔法ね」
勇者「ふぅー、ビビらせんなよぼっちが」
魔法使い「最初は劫火魔法で、次に凍雪魔法かしら」
勇者「スタップ、スタゥーップ!!」
戦士「早くやってくれよ、ポテト食い終わっちまった」モシャモシャ
魔法使い「次は何食べてんのよ」
戦士「ポップコーン」モシャモシャ
魔法使い「あぁ、そう……」
魔法使い「じゃ、加速魔法重ねがけするわよ」
魔法使い「……」カカカカカカッ
勇者「!、ーー、ーーー!」
戦士「?、何喋ってんのか分からんな」モシャモシャ
魔法使い「加速魔法で喋るのも速くなりすぎて聞き取れなくなったみたいね」
勇者「?、ーー!、ー!、ー!」パッパッ
戦士「身振り手振りがすごい速いな」モシャモシャ
勇者「……!、ー!、ー!、~�・!」
魔法使い「……」カッ
勇者「ー!」ヒョイ
魔法使い「ちっ……」
戦士「なんで火炎魔法撃ったん?」モシャモシャ
魔法使い「聞き取れなかったけど、馬鹿にされた気がしたわ」
戦士「あー、指差して腹抱えてたのはそういうことか」モシャモシャ
勇者「ーーー!、ーー!」ビュンビュン
戦士「しかし速いな、目で追うのがやっとだ」モシャモシャ
魔法使い「私はもう動く度に見失ってるわよ」
勇者「ーーー!」ビューン
戦士「どっか行ったな」モシャモシャ
魔法使い「見えなかったわ」
ドゴンッ!
戦士「……盛大に木にぶつかったな」モシャモシャ
魔法使い「速すぎて制御が効かなかったみたいね」
勇者「……」
勇者「ひどい目にあった」
戦士「木に跡がくっきり残ってんな」モシャモシャ
魔法使い「とりあえず、重ねがけは危ないってことは分かったわ」
勇者「よし、次は……」
魔法使い「はあ?、まだ続けるつもり?」
勇者「え?」
魔法使い「いや、え?、じゃなくて……」
戦士「俺は実験体になるのはゴメンだぞ」モシャモシャ
勇者「だーいじょーぶだ、他に実験体用意したから」ヒョイ
スライム「ピギィ……」
戦士「いつの間に捕まえたんだ?」モシャモシャ
勇者「さっきはこいつを踏んづけてバランス崩したせいで木にぶつかったんだよ」
魔法使い「てか、続けることが確定してんのね……」
勇者「よし、来い、ほら」
魔法使い「はあ……じゃあ硬化魔法を重ねがけしてみるわ」
魔法使い「……」カカカカカカッ
戦士「てか、無言なのな」モシャモシャ
魔法使い「この程度の魔法、詠唱破棄でいくらでも出せるわよ」
スライム「ピ、ピギッ……」
勇者「お?」モシャモシャ
スライム「……」
戦士「動かなくなったな」
魔法使い「硬くなりすぎて動けなくなったんでしょ」
勇者「すげえ!、カッチカチだ!」コンコン
勇者「へえー……」
勇者「ほれっ!」ブン
戦士「ぬおっ!?」パシッ
戦士「いきなりこっちに投げるんじゃねーよ!、ポップコーンこぼしちまったろうが!」
勇者「はははは!、投げやすそうだったから!」
魔法使い「よく反応してキャッチ出来たわね……」
勇者「ほら、投げて投げて!」
戦士「ったく……そら!」ブン
勇者「よっとぉ!」パシッ
勇者「はは!、楽しいなこれ!」ブン
戦士「楽しいかこれ?」パシッブン
勇者「えー?、楽しいだろ?」パシッブン
戦士「分かんねえな……」パシッブン
勇者「よっと、ほれ!」パシッブン
魔法使い「え、ちょ!?、いきなりこっちに投げ」
ベシィ
魔法使い「ぶひぇえ!?」
勇者「うっひゃひゃひゃひゃ!、顔面に当たってんの!、ひゃあーはははは、うぇ、げほっげっほ!」
戦士「モロに入ったなあ、大丈夫か?」
魔法使い「……」
勇者「うっはっはっは!、ひぃーーっひっひっひっひっひ!!」
魔法使い「……」ツー
戦士「鼻血出てるぞ」
魔法使い「……筋力増加魔法重ねがけ」カカカカカカッ
勇者「ひゃひゃひゃ……ん?」
魔法使い「……」ドドドドド
勇者「あ……あ?」
戦士「……知ーらねっと」
勇者「あの、どうしました?」
魔法使い「そんなに遊びたいなら、きっちり投げ返してやるわよ……」
勇者「あの、そんな筋骨隆々の状態で投げて来られたら、危ないかなーって」
魔法使い「……」スッ
勇者「まっ…待って!、ダメ!、死んじゃうから、ね、ね!?」
魔法使い「去ねぇいっ!」ゴッ
勇者「うおおおおおおおおおおお!!」
ボ
僧侶「……」
僧侶「(僕は空気になりつつありました)」
目的求めて迷走編
勇者「俺らさあ」
勇者「なんで旅してんだろ」
戦士「勇者がそれ言うか?」モシャモシャ
魔法使い「何食べてんのよ」
戦士「チョコバー」モシャモシャ
魔法使い「……一口頂戴よ」
戦士「ほれ」
魔法使い「ありがと」モグモグ
勇者「あ、俺にもくれよ」
戦士「しゃーねーな、ほれ」
勇者「サンキュ」モグモグ
僧侶「……」
戦士「……」モシャモシャ
勇者「なんかさあ、ほら」
勇者「魔王を倒すためーとか、伝説の武具を手に入れるーとか、あるじゃん」
勇者「どうでもいいって思うわ」
魔法使い「なんで勇者学校に入ったのよあんた」
勇者「親がな?、働かないならせめて勉強しなさいってうるさいもんだから渋々」
戦士「ニートじゃねえか」モシャモシャ
魔法使い「ていうか、よく渋々で卒業出来たわね……あそこ、競争率高いんでしょ」
勇者「ほら、俺やれば出来るタイプだから」
戦士「自分で言うことかよ」モシャモシャ
魔法使い「間違った方向にやっているのは確かね」
勇者「そういうお前らはあるのかよ、目的」
戦士「んー……」モシャモシャ
戦士「美味いもん食えたらそれでいいかな」モシャモシャ
勇者「ぶふっ!、なんで戦士やってんだよお前、うっひひ」
魔法使い「美食家とか料理屋とか目指したら良かったんじゃないの?」
戦士「んー、確かに食うなら美味いもんの方がいいけど、追究とかそういうのとは違うかなー」モシャモシャ
戦士「料理屋と言っても、作るより食う方が好きだし」モシャモシャ
魔法使い「じゃああれね、食材ハンターとか目指したらいいんじゃない?」
戦士「食材ハンター?」モシャモシャ
魔法使い「希少価値の高い食材や、未知の食材を探すのよ」
魔法使い「そういった食材探索の依頼も少なくないし、あんたならそれなりの実力があるから、そういう探検もこなせるでしょ」
戦士「んー……」モシャモシャ
戦士「いいかも知れないな」モシャモシャ
魔法使い「その割にはすごいどうでもよさそうね……」
戦士「だって、食えればそれでいいし」モシャモシャ
魔法使い「あっそ……もういいわ、うん」
勇者「で、お前は?」
魔法使い「私?」
魔法使い「……言われてみると特に思いつかないわね」
勇者「おま!、くっふ、人のこと言えねえじゃんか、くっひひ!」
魔法使い「あんたのその笑い、すごくムカつくからやめなさいよ……」
戦士「今更だな」モシャモシャ
魔法使い「今まで魔法を使うこと一筋でやってきたから、その先を考えたことは無かったわね」
勇者「ぼっちですね分かります、ぬっふふひひ!」
魔法使い「火炎」カッ
勇者「うっご!?、熱っちぃ!」
戦士「じゃあ魔法関係か?」モシャモシャ
魔法使い「うーん……そうなるかしらね」
魔法使い「今までにない新しい魔法を研究するとか、それはそれで面白そうだとは思うんだけどね」
魔法使い「私は既存の魔法を組み合わせて新しい効果を見つける方が好きかもしれないわね」
戦士「ふーん」モシャモシャ
勇者「ぼっちにゃお似合いだよなあ、ひっひひ」
魔法使い「そうね、炎と水を組み合わせて蒸気魔法とか」カッ
勇者「ぬげぇっ!、あちっ、あっっち!」
魔法使い「課題は、魔力消費量のわりに威力が出ないことかしらね」
戦士「色々あるのな」モシャモシャ
勇者「なんだよ、結局のところお前らも目的が無いわけじゃんよ」
戦士「なんで旅してんだろうな、俺ら」モシャモシャ
魔法使い「もう帰ってもいいかもしれないわね」
勇者「えー?、このまま帰っても、俺は困るというか」
戦士「別に俺は依頼こなして稼げるし、実は王属騎士団からの誘いがあったし」モシャモシャ
勇者「えっ」
魔法使い「あら奇遇ね、私も王属魔導師団のお誘いがあったのよ」
戦士「へえ、そうなのか」モシャモシャ
勇者「えっえっ」
戦士「お前は……どうせ引きこもるんだろうな」モシャモシャ
魔法使い「言わなくていいわよ、分かってるから」
勇者「えっちょ、待てよ、聞いてないよ!」
戦士「そりゃあ、聞かれなかったし」モシャモシャ
魔法使い「あんたの態度次第では私達だけ帰ったりしてもいいのよ?」
勇者「ぬっぐ!、卑怯な……!」
戦士「お前は腐っても勇者だからなー、帰るに帰れないんだろうなー」モシャモシャ
魔法使い「大変ね、勇者って」
勇者「いや、あのさ!、お前らが抜けちゃったらさ」
勇者「その……」チラッ
僧侶「……」
勇者「……な?」
戦士「……あー」
魔法使い「そういえばそうね……」
僧侶「え……?」
戦士「そうだ、せっかくだから聞いてやれよ、旅の目的」モシャモシャ
勇者「えー?、……えー……?」
魔法使い「頑張んなさいよ、やれば出来るんでしょ」
勇者「しゃーねーな……」
僧侶「……」
勇者「……あー……なんで旅に出ようと思った?」
僧侶「……えっと」
僧侶「魔王が現れて、魔物が活発化して、」
僧侶「その、何とかしたいって、思った、から……」
勇者「……」
戦士「……」
魔法使い「……」
僧侶「(何この沈黙)」
勇者「……」
勇者「……な?」
戦士「すまんかった」
魔法使い「私も謝るわ、ごめんなさい」
僧侶「え?」
勇者「わかったろ?、こいつと二人とか、無理難題だっての」
戦士「うん、しばらくはお前に付き合ってやるよ」モシャモシャ
魔法使い「そうね、何だかんだこの雰囲気は嫌いじゃないしね」
僧侶「……」
勇者「いやー、よかった、これからもよろしくな!」
僧侶「……」
僧侶「(僕は帰ってもいいですか)」
目的:無いけど皆で探していこう!
僧侶、抜ける編
勇者「でさー、そんときのクラスメイトがな?、……くっふふふひ!」
戦士「いやさ、一人で笑われてもな」モシャモシャ
魔法使い「何食べてんのよ」
戦士「スルメイカ」モシャモシャ
魔法使い「一本頂戴よ」
戦士「ほれ」
魔法使い「ありがと」モキュモキュ
僧侶「……」
僧侶「(決めた!)」
僧侶「(僕はパーティを抜ける!)」
僧侶「(今まで我慢してきたけれど)」
僧侶「(もう我慢の限界だ!)」
僧侶「あ、あの!」
戦士「……」モシャ…
魔法使い「……」
勇者「…………何?」
僧侶「(……お、怖気づくなっ……!)」
僧侶「ぼ、僕、」
僧侶「パーティ、抜けるよ……」
勇者「……ふーん」
勇者「いいよ、別に」
僧侶「ぅえ?」
勇者「うん……別にお前が抜けたって……なあ?」
戦士「回復も回復薬で間に合ってるしな」モシャモシャ
魔法使い「実は私、回復魔法も使えるのよ」
戦士「マジか」モシャモシャ
勇者「そんなエリートにも持っていないもの!、それは友達!、くふふひゃひゃ!」
魔法使い「あぁん?、言ってくれるなアホが」
勇者「おい、言われてんぞ」
戦士「だからお前のことだよアホ」モシャモシャ
勇者「なんだよ!、二人してアホアホってさあ!」
戦士「いやだって、アホはアホだろ?」モシャモシャ
魔法使い「そうよね、アホとしか言いようがないわね」
勇者「き、貴様らぁ!」
僧侶「……」
僧侶「(この人達、本当に僕のことどうでもいいと思ってる……!)」
僧侶「……」
戦士「それより話の続き聞かせろよ、クラスメイトが何だって?」モシャモシャ
勇者「ん?、あーそうだった」
勇者「えっとな、転移魔法の演習だったんだけどな?」
僧侶「……」スタスタ
勇者「そいつ、誤って女子更衣室に転移したんだよ」
戦士「ぶふっ!」
勇者「その時、丁度他の学年の奴が、くふふ、着替え中だったみたいでな?」
勇者「散々ボコられた上に、くっふ、一週間謹慎処分くらってさあ、だっはは!」
魔法使い「なんつーか、馬鹿じゃないのそいつ」
僧侶「……」バタン
勇者「まあ女子更衣室に飛ばしたの俺なんだけどな!、うははははは!」
戦士「お前かよ!」モシャモシャ
勇者「後で先生にバレて俺も謹慎処分くらっちまった!、うっしゃしゃしゃしゃ!!」
魔法使い「本当にアホよね、あんた……」
僧侶「……」
僧侶「パーティ抜けたのはいいけど……」
僧侶「これからどうするかな……」
僧侶「正直、ここから出発した街まで一人で戻れる気がしないし」
僧侶「かといって、手持ちも心許ないしなぁ……」
女剣士「うぅーん、どうしたもんかな……お?」
僧侶「ん?」
女剣士「君、君ぃ!、もしかして僧侶?、回復職?」
僧侶「そ、そうですけど……」
女剣士「他にパーティ組んでる人いる?」
僧侶「いませんが……」
僧侶「(今さっき抜けてきたばかりなので)」
女剣士「っしゃ!、見つけたぜ!」
僧侶「え、えっと?」
女剣士「よかったら私達のパーティに入ってくれないか!」
僧侶「え、え?」
女剣士「まあ、ちょっといざこざがあるんだが、君が来れば解決するんだ、どうかな?」
僧侶「い、いいですけど……」
女剣士「ホントか!、っしゃあ!」
女剣士「早速だけど、着いてきてくれるかな?」
僧侶「あ、はい……」
女剣士「おーい!、入ってくれる人、見つけたぞ!」
女勇者「え!、本当なの!」
女魔術師「……よく見つけてきた」
女僧侶「えー?、まじー?」
僧侶「ど、どうも……」
女剣士「一人でこの町まで来れるレベルだからさ!」
女剣士「実力は伴ってると思うんだ!」
僧侶「そ、そういうわけじゃ……」
女勇者「そう……なら大丈夫ね」
女勇者「そういうわけで、他に回復職を見つけたから、あなたは抜けてくれるわね?」
女僧侶「……ちっ、しょうがないわねー」
女僧侶「そんなに抜けて欲しいなら抜けてあげるわよ、ったく」
女僧侶「私が抜けたことを後悔しないことねー」スタスタ
僧侶「……あの、あの人、誰ですか?」
女剣士「あー、あいつ?、ひっどいんだぜ!?」
女魔術師「ちょっと回復魔法が上手いからって、調子に乗ってた……」
女剣士「態度もでかかったし、分け前自分だけ多く取ろうとしてたし!」
女勇者「まあ、そんなわけで、私達と折り合いが良くなかったのよねー」
女剣士「そんで、他の回復職を連れてきたらパーティを抜けてもらうって約束をしたんだ」
僧侶「そ、そうなんだ……」
女魔術師「そんなわけで、これからよろしく……」
僧侶「う、うん、よろしくお願いします」
女勇者「それで……」
女勇者「回復魔法、それなりに使えるのよね?」
僧侶「えっと、初級の回復魔法しか……」
女勇者「え?」
女剣士「え?」
女魔術師「え?」
僧侶「え……?」
女勇者「えっと、一人でこの町まで来たのよね?」
僧侶「いえ、この町で他のパーティから抜けたばかりで……」
女勇者「え?」
女剣士「え?」
女魔術師「え?」
僧侶「え……?」
女勇者「ちょ、ちょっと待っててね」
僧侶「あ、はい」
女勇者「どーゆうことよ女剣士~!」ヒソヒソ
女剣士「えっと、一人で歩いてたもんだからさあ……」ヒソヒソ
女魔術師「これは由々しき事態」ヒソヒソ
女勇者「性格はマシだと思うけど、正直あいつより使えないと思うわよ?」ヒソヒソ
女勇者「初級の回復魔法くらい、私も使えるもの」ヒソヒソ
女剣士「うー、すまん……」ヒソヒソ
女魔術師「とにかく、パーティに引き入れてしまった以上は仕方ない……」ヒソヒソ
女勇者「そうね……」ヒソヒソ
女勇者「……さて!」クルリ
女勇者「まあ、回復魔法は、その……これから覚えていけばいいのよ!、ね?」
僧侶「え?、はあ……」
女剣士「その、なんだ、これからよろしくな?」
女魔術師「……分からないことはなんでも聞いて」
僧侶「は、はい、ありがとうございます」
僧侶「……」
女勇者「(この先大丈夫かしら?)」
女剣士「(この先大丈夫かー……?)」
女魔術師「(この先大丈夫なのだろうか?)」
僧侶「(……僕、このパーティでやっていけるのかな?)」
宿屋の一夜編
僧侶「前のパーティを抜けて新しいパーティに入ったわけだけど」
女勇者「明日こなす依頼を今決めてもいいかしら?」
女剣士「えー?、明日考えよーぜ、夕食食べたら眠くなってきた」
女魔術師「……今のうちに決めておけば準備もできる」
女剣士「うげ、1対2かよ」
僧侶「えっと、僕も今のうちに決めた方がいいと思う、かな……」
女勇者「え?、……あ、そ、そうね」
女剣士「あー……じ、じゃあしゃーないかー」
女魔術師「……うん」
僧侶「……」
僧侶「(いまいち馴染める気がしない)」
女剣士「……でさー、何かあんの?」
女勇者「そうねー……色々あるわね」
女魔術師「ふむ」
僧侶「……あ、こ、これとかどうかな……?」
女勇者「え?、えっと、あー、これね」
女魔術師「……ちょっと厳しいかもしれない」
女剣士「だ、だなー、他にもっといいのがあるって、な、な?」
僧侶「そ、そう……」
僧侶「(なんか、居辛い……)」
女魔術師「……ん?」
女勇者「あら、何か見つけた?」
女魔術師「うん……私達のレベルに適性だと思う」
女剣士「んー?、洞窟に居座った巨大魔物かぁ」
女勇者「あそこの洞窟って、通行の要になってる場所よね?」
女勇者「いずれは倒さないといけないかもしれないわね」
女魔術師「……いく?」
女勇者「……うん、やってみましょう」
女剣士「へへ!、腕が鳴るぜ!」
僧侶「だ、大丈夫なの?」
女剣士「え?、あー、大丈夫だって、私達強いから」
女魔術師「三人でもやれる……」
僧侶「……そ、そう……」
女勇者「うん、明日こなす依頼は決まりね」
女剣士「そいやさー、宿屋の部屋割りってどうすんの?」
女剣士「たしか二人部屋を二つとってたよな?」
女勇者「そうね、やっぱり二人ずつになるわね」
僧侶「え?」
女勇者「え?、どうかした?」
僧侶「僕、男なんだけど、その……」
女勇者「え?」
女剣士「え?」
女魔術師「え?」
僧侶「女の人と、一緒の部屋はどうかと……」
女勇者「ちょ、ちょっと待っててね」
僧侶「あ、はい」
女勇者「ちょっと、あいつ男だったの?」ヒソヒソ
女剣士「女だと思ってたぞ、中性的な顔だし、声も高いし、ちっこいし」ヒソヒソ
女魔術師「私より背が低いのは男としてどうかと思う……」ヒソヒソ
女勇者「ま、まあ成長期なのよ多分、それより部屋はどうする?」ヒソヒソ
女剣士「私、男と一緒の部屋はゴメンだぜ?」ヒソヒソ
女魔術師「私も……」ヒソヒソ
女勇者「うん……こればっかりは仕方無いわね」ヒソヒソ
女勇者「……さて!」クルリ
女勇者「僧侶には悪いけれど、男だって言うなら仕方無いわ」
女勇者「私達は三人で一つの部屋を使うから、君は一人で部屋を使ってちょうだい」
僧侶「う、うん」
女勇者「じゃあ、宿屋に行きましょうか」
女剣士「抱き枕にしてやろうかー?」グリグリ
女魔術師「ち、ちょっと、止め、うぐぅ……」
僧侶「……」
翌日
女勇者「……んー」
女剣士「お、起きた?」
女勇者「あら、おはよう……相変わらず朝早いのね」
女剣士「こいつは朝弱いけどなー」
女魔術師「んぅ……むにゃ」zzz
女勇者「ふふ、そうね……さて」
女勇者「どうしたらいいのかしらね、あいつ」
女剣士「あー……回復魔法が初級しか使えないんだっけ」
女勇者「回復魔法を習得できる人は先天的に限られているけれど、それにしても初級だけしか使えないってのはね……」
女剣士「ぶっちゃけるけど……お荷物だよな」
女剣士「いっそ早めに宿屋を出てあいつだけ置いて行くとかするか?」
女勇者「…………流石にそれは酷いと思うわ、こっちからパーティに入れたのだし」
女剣士「(少し考えるくらいか……)」
女勇者「当分は荷物持ちでいいでしょ」
女剣士「ま、そんなもんかな」
女魔術師「……すぴぃ」zzz
女剣士「……おっきろー!」ガバッ
女魔術師「っゃあ!?」
女剣士「んふー、寝起きもかわいーなー」スリスリ
女魔術師「や、止め、うぅ……」
女勇者「……相変わらずね」ウズウズ
女剣士「人前じゃこんなにくっつけないもんなー」
女魔術師「うひぃー……」
女勇者「それはそうと、そろそろ支度して朝食食べましょう」ウズウズ
女剣士「我慢しないで一緒にモフろうぜー?」
女魔術師「む、むぎぃ……」
女勇者「……いや、いいわ、なんか見てたら可哀想になってきたし……」
女剣士「ん、そか」
女勇者「あなたが」
女剣士「私が!?」
女勇者「さて、食堂に来たけれど」
女剣士「さーて、今日のご飯は何かな……」
勇者「依頼受けてきたっぜー」
戦士「ん?、そうなのか」モシャモシャ
魔法使い「何の依頼よ?」
勇者「洞窟に群生するヒカリゴケの採集」
魔法使い「は……はあ?」
戦士「なんでコケなんだよ?」モシャモシャ
勇者「なんでって、コケだからだよコケ、くふ、くふひひ!」
戦士「何が面白いか分かるか?」モシャモシャ
魔法使い「私にはさっぱりだわ……」
勇者「ところで俺の分の飯は?」
魔法使い「安心して、ちゃんと取ってあるわ」
戦士「安心しろ、俺が全部食った」モシャモシャ
勇者「はああああああ!?、おま、何、何食ってんのおま!?」
魔法使い「あー、ご愁傷様ね……」カチャッ
魔法使い「……皿の上のおかずが無い」
戦士「え?、残してるから食わないのかと思った、すまん」モシャモシャ
魔法使い「ちょ、ちょっとぉ!、好きなものだから後で食べようと残してたのに!」
戦士「好きなのか、ハンバーグ」モシャモシャ
勇者「ハンバーグ?、これまた随分お子様な、ぬっふふひひ」
魔法使い「な、何だっていいでしょ!、それより私のハンバーグ返しなさいよぉ!」
戦士「返せって言われても、どうやって返すんだよ、まさか吐けなんて言わないだろ?」モシャモシャ
魔法使い「あんたの嘔吐物なんて誰もいらんわ!」
戦士「あー、ほら、代わりにこれやるから、浅漬け」モシャモシャ
魔法使い「……あ、浅漬け、ハンバーグの代わりに浅漬けってあんたねぇ……」ワナワナ
勇者「うはは!、浅漬け!、だっははははは、ひぃーはは、げほっうぇっげっほ!」
魔法使い「いい加減にしろやぁ!!」バシンッ
戦士「ぶっふぅ!?」
勇者「うわ!?、きたねぇ!」
女勇者「……なんだか騒がしいわね」
女魔術師「……後にしようか」
女剣士「そだなー」
女勇者「さて、うるさい奴らがいたからひとまず部屋に戻ってきたわけだけれど」
女剣士「暇だよなー、なんか無い?」
女魔術師「……中級魔導書なら」
女剣士「私が読んでどうするんだよそれ」
女勇者「それ、あいつに読ませてやった方がいいんじゃないの?」
女剣士「あー、あるな、それ!」
女魔術師「回復魔法は載ってない」
女勇者「それ、回復以外の魔法はあいつには使えないって言ってるわよね」
女魔術師「……だって中級だし」
女剣士「あっはは!、そりゃそうだな!、中級どころか下級魔法も使えないんだよな!」
アッハハー
僧侶「……」
僧侶「全部……全部聞こえてるんだ」
僧侶「この宿屋、壁が薄いから……」
僧侶「食堂に行く前の会話も、全部……」
僧侶「……」
僧侶「(もう故郷に帰ろうかなあ……)」
僧侶、折れる編
僧侶「(色々めげているけれど)」
僧侶「(とりあえず魔物討伐には向かうことにした)」
女勇者「この洞窟だよね、あの依頼の魔物が出てくるの」
女魔術師「そのはず」
女剣士「よっしゃ!、いつでもかかってこい!」
僧侶「……」
僧侶「(だ、大丈夫かな……)」
女勇者「魔物が出てきたら、私と女剣士が斬りかかるから」
女勇者「女魔術師と……僧侶、の2人は後方からサポートお願いね」
女剣士「おうよ!」
女魔術師「了解」
僧侶「わ……分かりました」
女勇者「さて……魔物が出てくるのはどこらへ
ズドンッ!!
一同「!?」
鋼殻土竜「グアオオオオ!!」
女魔術師「でかい……!」
女勇者「こ、こんな浅い所で出てくるの!?」
女勇者「……くっ!、行くわよ女剣士!」ダッ
女剣士「……!、おう!」ダッ
僧侶「あ、あわわわ……」
女魔術師「……」
鋼殻土竜「グルルル……」
女剣士「りゃあっ!」ブン
ガキンッ
女剣士「!?、硬っ……」
女勇者「!!、危ない!」
鋼殻土竜「グアアア!」ブンッ
女剣士「!?、しまっ
ドゴンッ!
女剣士「っ!!、……かっは……!?」
僧侶「あ、ああ……」
女魔術師「何してるの!、回復!」
僧侶「!、そ、そうだ、えいっ」カッ
ポワンッ
女剣士「……ぐっ、全然、治んねえぞ……!」
僧侶「そ、そんな、こんなにダメージが大きいなんて……」
女剣士「ちっ……こ、この役立たずが……!」
僧侶「っ!、……」
女勇者「……く!、今回復に行く……
鋼殻土竜「グアゥ!」ブンッ
女勇者「!、くっ!」ガキンッ
女魔術師「烈風魔法!」カッ
ビュオオオオ!
鋼殻土竜「……グルルォ」
女魔術師「……全然怯まない……!」
鋼殻土竜「ガアッ!」ドゴォ!
女勇者「ぐっふ……!?」
女剣士「!!、回復は、まだかよ、!」
僧侶「や、やってる!」ポワンッ
女剣士「ぐっ、追いついてねぇよ……!」
鋼殻土竜「グアオオオオオゥ!」
女勇者「うっ……!?」
グシャッ!!
鋼殻土竜「……グルル」グシャッグシャッ
僧侶「!!!、つ、潰された……!?」
女剣士「お、女勇者ああああああああ!!」
女魔術師「そ、そんな……」
鋼殻土竜「……グルルルゥ……」
女魔術師「い……いや、死にたくない……」
鋼殻土竜「グアオゥ!」
女魔術師「いやあああ!!」
ガブリッ!!
鋼殻土竜「……」クチャクチャ
女剣士「お、女魔術師ぃ……!」
僧侶「あ、あ、あああ……」
僧侶「そ、そんな、二人共……」
女剣士「……」
女剣士「お前のせいだ……」
僧侶「……え?」
女剣士「お前のせいで!、二人共死んだ!」
僧侶「っっ!!」
女剣士「お前の回復が間に合って私が前線に復帰していれば!」
女剣士「女勇者は死ぬことは無かった!!」
女剣士「女魔術師も死ななかった!!!」
僧侶「ぅぅっ……」
女剣士「お前が!、二人を殺し
ドスッ
鋼殻土竜「グルル……」フリフリ
女剣士「カッ……」プラプラ
僧侶「つ、爪が頭に……」
僧侶「み、皆……」
僧侶「……僕の、せい?」
僧侶「僕のせいで、皆は……」
鋼殻土竜「……」バリッモグモグッ
僧侶「……あ」
鋼殻土竜「……」チラッ
僧侶「ああああ……」
鋼殻土竜「……グルルォ」
僧侶「あっ……」ドサッ
鋼殻土竜「グオオオオゥ!」
魔法使い「凍雪」カッ
ガキンッ!
鋼殻土竜「!?」
魔法使い「動きは止めたわよ」
戦士「よーし、頭をガツンと」
戦士「ぬん!、っと」ブンッ
ガキィン!
鋼殻土竜「グアアア!?」グラッ
戦士「かってぇ!」
勇者「上出来!、おかげで頭の装甲が砕けてるぜ!」ダッ
鋼殻土竜「グルルゥ……」フラフラ
勇者「おいしいとこ、いただき!」ドスッ
鋼殻土竜「ッッ!?」
戦士「おー、綺麗に頭に刺さったな」
鋼殻土竜「ガッ……」ズシン
魔法使い「倒したわね」
戦士「で、何なのこいつ」
勇者「あー、なんかこの洞窟の魔物討伐依頼があったような気がする」
魔法使い「それを横目にヒカリゴケの依頼を取ってきたのねあんた……」
勇者「だってさあ、コケの方が面白いじゃん!、うぬふふふ!」
戦士「何が面白いのか分かるか?」
魔法使い「相変わらずさっぱりだわ」
勇者「まあなんだ、倒したからいーじゃん!、コケ集めに行こうぜ!」
戦士「この倒した奴どうすんの?」
魔法使い「せっかくだからそっちの依頼報酬も受け取っておきましょう」
戦士「ところで、食い千切られた奴とか潰された奴とか転がってるんだけどさ」
勇者「食ったら美味いのか、とか聞くんじゃないだろうな?」
戦士「アホか」
魔法使い「放っておきましょう、こんなにグチャグチャじゃあどこの誰かも分からないんだし」
勇者「そだなー、黙祷くらいはしとくかー」
戦士「……お前がそんなまともな事を言うとは」
魔法使い「驚いたわ、明日は嵐が来るわね」
勇者「おいおいおい!、お前ら俺のことどんな風に思ってんのさ!?」
戦士「アホ」
魔法使い「アホ」
勇者「ぬぉぉ、キッパリ言いおってからに……!」
戦士「まあ、死人にはそうするとして」チラッ
僧侶「……」
戦士「こいつ気絶してるだけか、よく生きてたな」
魔法使い「初級の回復魔法しか使えないのによく戦おうと思ったわね」
勇者「あー、こいつか、ほっといていいだろ、つまんねー奴だし」
勇者「それよりコケだよコケ!、早くさあ、行こうぜ!」
魔法使い「なんでそんなにコケを推すのよあんたは」
戦士「お、キノコ見つけた、食えるかな?」
魔法使い「知らないけど、生で食べるのはやめときなさいよ」
スタスタ……
………
僧侶「……」
僧侶「(目が覚めたら、魔物の死体と……三人の死体があった)」
僧侶「(尤も、三人の方は千切れたり潰れたりしていて、判別がつきづらいけれども)」
僧侶「(誰があの魔物を倒したのだろうか)」
僧侶「……」
僧侶「……僕のせいで死んだ……か」
僧侶「……もう、いやだ」
僧侶「僕には向いてなかったんだ、魔王を倒す旅だなんて」
僧侶「……」
僧侶「帰ろう……」
いよいよ方向性が分からなくなってきた
これからどうすっかな
守る為に、生まれ変わる編
僧侶「……」
僧侶「(僕は今、故郷に向かっている途中です)」
僧侶「(そして今、パーティを組んで旅立った時の草原に来ています)」
ガサガサッ
僧侶「!」
狼「……ガルルル」
僧侶「……沢山いて、囲まれてる」
僧侶「逃げるのは無理かな……」
僧侶「(……戦うしかないんだ)」
僧侶「(……でも、戦えるのだろうか?)」
僧侶「(実力不足で仲間を死なせた僕が?)」
僧侶「……」
狼a「ガウッ!」バッ
僧侶「!、うっ」ガキンッ
狼b「ガルッ!」ズバッ
僧侶「うぐぅっ!?」
狼c「ガルルゥ!」バッ
僧侶「う、うわあああ!」
僧侶「(町から出たばかりなのに……!)」
僧侶「(僕は、ここで、死ぬのか……?)」
僧侶「(ああ……思えば不甲斐ない人生だった)」
僧侶「(僕は弱いからと、心のどこかで妥協していた)」
僧侶「(もう少し、強くなろうと努力をするべきだった……)」
「せやあっ!」
ドゴォ!
狼c「ガウッ!?」ズサー
僧侶「……え?」
「せいっ、でりゃあっ!」ドカッバキッ
狼d「キャイ!?」
狼e「クゥン!?」
僧侶「(一体何が……)」
「……」
狼a「……グルルル……」
「……」
狼b「……クゥン……」トボトボ
「……逃げたか」
僧侶「……えっと」
「……大丈夫か?」
僧侶「あ……はい」
「……そうか」
僧侶「あの……ありがとう、ございます」
「礼には及ばん」
「それより、ここらへんは最近、魔物が活性化してきている」
「見たところ僧侶のようだが、対抗手段無しにあまり出歩かないことだ」
僧侶「は、はい」
僧侶「あの……あなたは?」
「……」
武闘家「武闘家、だ」
武闘家「……じゃあな」
武闘家「早めに町に帰るんだな」
僧侶「……ま、待ってください!」
武闘家「……どうした」
僧侶「ぼ、僕、強くなりたいんです!」
僧侶「どうか、修行をつけさせてください!」
武闘家「……」
武闘家「(えー……?)」
武闘家「(なんか妙な事になったぞー?)」
武闘家「(おにゃのこが襲われてると思って颯爽と助けに入ったんだけど)」
武闘家「(いざ近くでよく見てみると男だって気付いちゃってさあ)」
武闘家「(一気に萎えたもんだからさっさと立ち去ろうと思ったのに)」
武闘家「(なんで修行させて下さい、だなんて言われてんの?)」
武闘家「(そりゃ俺は一人で旅する程度には強いつもりだけどさあ)」
武闘家「(兎にも角にも、モチベが上がんねーよなあ)」
武闘家「(適当言って断るかな……)」
武闘家「……」
武闘家「お前は僧侶なのだろう」
武闘家「修行を乞う相手が違うのではないか?」
僧侶「……僕は、仲間を守る力が欲しいんです」
僧侶「たとえどんな力でも!」
僧侶「もう、自分に言い訳するのは嫌なんです!」
武闘家「(何なのこいつ)」
武闘家「……仲間を守る力、か」
僧侶「……僕が、弱かったせいで、仲間がいなくなってしまったんです」
僧侶「もう……あんな思いはしたくない!」
武闘家「……仲間を失うことが怖いのか」
武闘家「だったら、魔物退治の旅などに出ずにひっそりと町で暮らしている方がいいのではないか?」
僧侶「うっ……」
武闘家「何故、強くなろうと思う?」
武闘家「何故、力を得るために努力をしようと思う?」
僧侶「……そ、それは……」
僧侶「……」
武闘家「……」
僧侶「……ぼ、僕は!」
僧侶「家族が魔物達に、殺されたんです……!」
武闘家「……ほう」
僧侶「僕は……魔物が憎い……」
僧侶「家族を殺した魔物が……魔王が……!」
武闘家「……復讐か」
武闘家「そんな心持ちでよく僧侶が務まるものだな」
僧侶「……」
武闘家「(あー……こいつなかなか引かないな)」
武闘家「(うーん……他に断る理由、何か無いかな……)」
武闘家「(……)」
武闘家「(……女の子の恰好をさせれば、ワンチャンスあるか……?)」
武闘家「(遠目からだと女と間違うくらい中性的な顔だし……)」
武闘家「(……)」
武闘家「(………………………………………………)」
武闘家「(しかしこいつはどうあがいても男……)」
武闘家「(……男の娘……?)」
武闘家「(男の娘……男の娘……)」
武闘家「(……)」
武闘家「(経験は大事だよな!)」
武闘家「……いいだろう」
僧侶「ほ、本当ですか!」
武闘家「二つ、条件がある」
武闘家「一つ、修行期間は一ヶ月だ、俺も暇ではないからな」
武闘家「そしてもう一つ」
武闘家「お前には俺の慰み者になってもらう」
僧侶「…………え?」
武闘家「俺の夜伽の相手になってもらうということだ」
僧侶「うえええええ!?」
僧侶「で、でも、僕は男で、武闘家さんも男でっ」
武闘家「この条件が飲めないのなら、この話は無かったことにしてもらう」
僧侶「う、ううぅ……」
武闘家「(経験は大事とか言ったけどさ)」
武闘家「(冷静に考えたらやっぱり男とヤるってのはちょっとなー)」
武闘家「(これで断ってくれたらいいんだけどなー)」
僧侶「……」
僧侶「……」
僧侶「……分かりました」
武闘家「そうか……え?」
僧侶「その条件、呑みます……!」
武闘家「……」
武闘家「(マジで?、嘘だろ?)」
~一ヶ月後�・
僧侶「せいやっ!」ドカッ
魔物「ギィッ!?」
武闘家「ふむ、ここらへんの魔物は何とか狩れるようになってきたな」
武闘家「さて、修行を始めて一ヶ月が経った」
武闘家「お前に稽古をつけるのも今日で終わりだ」
僧侶「はい!、今までありがとうございました!」
武闘家「……」
武闘家「(しかしまあ……変わったよな……色々と)」
武闘家「(最初は苦痛で顔を歪ませて叫んでいたというのに)」
武闘家「(時が経つと段々快楽を感じるような喘ぎ方になってきてなあ)」
僧侶『もっとぉ!、もっとくださいっ!』
武闘家「(って言われた時は耳を疑った)」
武闘家「(女の子の恰好をさせてヤッたときの嬌声は女のそれそのものだったな)」
武闘家「(つまり、こいつはドmだったということだ)」
武闘家「……俺はこの一ヶ月間、武闘家としての修行をしたが」
武闘家「お前はそれでも僧侶として旅をするのか?」
僧侶「はい」
僧侶「仲間をサポートするのが僧侶ですから!」
武闘家「そうか」
武闘家「(どういう意味のサポートなのやら)」
武闘家「(まあその、なんだ)」
武闘家「(別に武闘家に転職せずとも僧侶のままでいいと思うな)」
武闘家「(有り余る努力でカバーこそしてるけど……)」
武闘家「(……武闘家としての才能、無いからさ)」
武闘家「(普通ならここらへんの魔物、何とか倒せる、じゃなくて余裕で倒せる、くらいにはなるからさ)」
武闘家「(いっそ娼婦になった方がいいと思う、そういう人には大絶賛のはずだ、言わないけど)」
武闘家「では、俺はもう行く、達者でな」
僧侶「はい!、師匠もお元気で!」
武闘家「(ふむ……師匠と呼ばれるのは悪くないな)」
武闘家「(世界が平和になったら道場でも開いてみるか)」
僧侶「(僕は強くなった!、もうあの頃の弱い僕じゃない!)」
僧侶「(僕の旅は、ここから新しく始まるんだ!)」
僧侶「……回復魔法は未だに初級しか使えないんだけどね」
かくして、僧侶の旅が新しく始まるのであった
パーティ収集編
僧侶「鍛えて強くなったのはいいけれど」
僧侶「パーティを組まないことには始まらないよね」
僧侶「空きのあるパーティはいないかな?」
僧侶「酒場に行けば見つかるかなあ」
~酒場�・
僧侶「……へえ!」
僧侶「仲間募集掲示板なんてあるんだなあ」
僧侶「用紙を書いてここに貼れば、パーティが雇ってくれるのか」
僧侶「後は待っていればいいのかな」
剣士「ふんふん……あれ、君、僧侶?」
僧侶「あ、はい僧侶です」
僧侶「(早速声をかけられちゃった!)」
剣士「そうか!、丁度回復役が欲しいところだったんだ!」
僧侶「はい!、お任せください!」
剣士「それで、回復魔法はどのくらいのを使えるんだい?」
僧侶「えっと、初級、だけです」
剣士「え?、初級?」
僧侶「はい!」
剣士「そ、そう……」
僧侶「あ、でも身のこなしには自信がありますよ!」
僧侶「危なくなったら、僕が身を呈して守ります!」
剣士「あ、あはは……」
剣士「ほ、他を当たることにするよ……」
僧侶「そ、そうです、か……」
剣士「わ、悪いね、それじゃあ」
剣士「(危ない時こそ回復魔法で支援して欲しいってのに、全く)」
僧侶「駄目だったか……」
僧侶「いや、まだ一人目だ、他のパーティに期待しよう!」
僧侶「回復できますよ!」
魔導士「でも初級だけなんでしょ?」
僧侶「前線で戦えます!」
格闘家「攻撃役は間に合ってるよ」
僧侶「ハイブリッドです!」
射撃手「器用貧乏なんだよなあ」
僧侶「お願いします!」
勇者「……は?、いや、お前つまんねーからさ……」
僧侶「何か見覚えのある人もいたような……」
僧侶「いけない、夢中になりすぎて相手の顔を見てなかった」
僧侶「けれど、誰もパーティに入れてくれないなあ……」
僧侶「あの修行は何のために……」
僧侶「……いやいや!、僕はあの一ヶ月間の修行を無駄だと思いたくないな」
僧侶「とにかく、根気強くいこう……!」
夢魔「……」キョロキョロ
僧侶「ん?」
僧侶「(あの子、人間じゃないよね、魔物かな?)」
僧侶「(何でこんなところにいるんだろう)」
夢魔「……!」
僧侶「(目が合った)」
夢魔「ねえ、君君!、もしかして男の子?」
僧侶「え?、そうですけど……」
夢魔「やった!、いいの発見!」トコトコ
僧侶「(向こうに行っちゃった)」
召喚師「んー……」キョロキョロ
夢魔「ねーえ、ダーリン?」
召喚師「おお、ハニー!、探したんだぞ、どこ行ってたんだい?」
夢魔「えへ、ごめんね?、それでね、お願いがあるの!」
召喚師「ふふ、何かな?」
夢魔「あたしー、ペットが欲しいかなって!」
召喚師「ペット?、他の召喚獣じゃダメなのかな?」
夢魔「うん!、向こうの仲間募集フロアでいいの見つけたんだー!」
召喚師「何と、人間をペットにしたいのかい?」
夢魔「ねえダーリン、いいでしょ?」
召喚師「うーん、そのペットにしたいって人に聞いてみないといけないかなぁ」
夢魔「じゃあ聞きに行こ!、こっちこっち!」
夢魔「やっほ!」
僧侶「(あ、戻ってきた)」
召喚師「えーと、この人?」
夢魔「そだよ!」
僧侶「(なるほど、召喚獣なのか)」
召喚師「ふーむ、いかにもハニーが気に入りそうな顔立ちだね」
夢魔「でも一番はダーリンだよ!」
召喚師「僕の一番も君だよハニー!」
僧侶「……えっと」
召喚師「おっと、失礼したね」
召喚師「ここにいるってことは、パーティに入りたいってことかな?」
僧侶「はい、そうです」
召喚師「ふむ、じゃあ私のパーティに入ってみないかね?」
僧侶「え?」
召喚師「といっても私は一人旅なんだけどね」
夢魔「むー!、一人じゃないでしょ!」
召喚師「おあっとそうだった、君を忘れていたよ、ごめんねハニー」
僧侶「……あの」
召喚師「ああー、失礼したね」
召喚師「実を言うと私のハニーが君を気に入ったんだ」
夢魔「ぜひともあたしのペットにしたいなーって!」
僧侶「ぺ、ペット?」
召喚師「まあ、君がよければ、だけどね」
召喚師「どうかな?」
僧侶「……は、はい、パーティに入れてくれるならいいですよ」
召喚師「おお!、やったぞハニー、了承してくれたぞ!」
夢魔「きゃー!、ペットが出来て嬉しいよダーリン!、これから賑やかになるね!」
召喚師「はは、召喚獣がたくさんいるから十分賑やかなんだけどね!」
僧侶「……その」
召喚師「うおわった、失礼したね」
召喚師「それじゃあ、これからよろしく頼むよ」
僧侶「はい、よろしくお願いします!」
夢魔「うふふー、これから楽しみだなあ」
召喚師「何が楽しみなんだいハニー?」
夢魔「んー、ダーリンにはヒミツ!」
召喚師「そうなのかい?、ちょっと寂しいかなぁ」
夢魔「大丈夫だよ、あたしはいつでもダーリン一筋だから!」
召喚師「嬉しいこと言ってくれるじゃないかぁハニー!」
僧侶「……」
僧侶「(最初の頃のような置いてけぼり感を感じる)」
~その日の夜�・
召喚師「じゃあ部屋は一人部屋のを二つ借りたから、君は片方の部屋を使ってくれ」
僧侶「はい」
召喚師「じゃあハニー、今晩はどうする?」
夢魔「えっとね、ペット君と遊びたいな!」
召喚師「そうか、寂しくなるなあ」
夢魔「うん、だからモフモフちゃんを召喚して抱き枕にするといいよ!」
召喚師「そうだなあ、たまには他の子もいいかもな」
召喚師「でも私の一番は君だからねハニー!」
夢魔「あたしの一番もダーリンだよ!」
僧侶「……」
夢魔「さ、行こっか」
僧侶「あ、うん」
夢魔「んふふー、実はあたしは夢魔、サキュバスなんだー」
僧侶「そ、そうなんだ」
夢魔「いつもはハニーから養分を貰ってるんだけどね」
夢魔「今晩はペット君から貰おうと思ってるんだ!」
僧侶「え、ええ!?」
僧侶「(そ、それって……)」
夢魔「緊張しなくていいよ?、全部あたしに任せてね……?」
僧侶「は……はい」
夢魔「それじゃあ、まずはこれ!」
僧侶「えっと、首輪?」
夢魔「うん!、あたしのペットだからね!」
夢魔「はい、着けてあげる!」カチャリ
僧侶「ぁぅ……」
夢魔「そしてー、メインはこれ!」
僧侶「……」
僧侶「……ペニスバンド?」
夢魔「そだよー!」
夢魔「実は前からそういう願望を持ってたんだけど」
夢魔「愛しのダーリンにはあまり負担をかけたくなかったんだー」
夢魔「だから、あたしの願望を満たせるようなペットが欲しかったの!」
僧侶「ぅ、ぅぁ」
夢魔「大丈夫だよ?」
夢魔「あたしが一杯気持ちよくしてあげる♪」
~翌朝�・
召喚師「ふあー……モフモフちゃんもいいね、特に抱きしめた時のあのモフモフ感が」
夢魔「むむむ……」
召喚師「お、おはようハニー、昨夜は楽しめたかい?」
夢魔「あ、おはようダーリン……」
召喚師「何か悩み事かい?」
夢魔「悩みってほどでもないんだけどね?」
夢魔「実は……あたしが最初じゃなかったの」
召喚師「……ふむ?」
夢魔「結構進んでいたの」
夢魔「こなれていた感じだったんだ」
召喚師「ふむ……何の事か分からないけどそうなのか」
夢魔「うん、ダーリンに話したらスッキリしたの!」
召喚師「そうか、それは良かったよ」
夢魔「それでねダーリン?」
召喚師「分かってるよ、いつものだろう?」
夢魔「うん!」
チュッ
夢魔「んふふ!、これで今日も頑張れるよ!」
召喚師「私もチャージ完了だよハニー!」
僧侶「……」
召喚師「お、僧侶君おはよう」
僧侶「おはようございます……」
召喚師「?、元気が無いように見えるけれど大丈夫かい?」
僧侶「大丈夫です」
僧侶「慣れてますから……」
召喚師「?、よくわからないけど分かったよ」
夢魔「(今度は女装させてみよっかな!)」
かくして、僧侶はパーティに入ったのであった
本当は三人組メインで書きたかったはずなのにいつの間にか僧侶メインになってた
どうしたもんかな……
軍隊を打ち崩す軍隊編
召喚師「さて、行くか」
僧侶「い、いきなりですね……」
夢魔「せめて説明くらいはしてよダーリン」
召喚師「ああ、済まなかったなハニー」
召喚師「さっき受けてきた依頼なんだけどね」
召喚師「どうやらここから北西の方角の山岳地帯に魔物の軍団が集結しているらしい」
召喚師「それを叩く。敵全部」
僧侶「ぜ、全部?」
夢魔「ねー、その軍団ってどれくらいいるの?」
召喚師「聞いた話だと千を超えるとか」
僧侶「千!?」
夢魔「千かあ」
夢魔「余裕だねっ」
僧侶「うええ!、余裕なの!?」
夢魔「そっか、ペット君はダーリンのこと知らないんだよね」
夢魔「ダーリンはね、ここらじゃ噂されるくらい強いんだよ!」
召喚師「ははは、それほどでもないさ」
夢魔「もう、ダーリンは謙虚すぎるの」
夢魔「でもそんなダーリンもバリカッコいいよ!」
召喚師「君も素晴らしくカワイイよハニー!」
僧侶「(固有結界入った)」
夢魔「まあ、ダーリンがどれくらい強いかは行ってから実際に目にするといいよ!」
僧侶「え?、あ、うん」
僧侶「(いきなりこっちに振るんだもんなあ)」
召喚師「じゃあ説明したところで行くかな」
夢魔「やっぱりダーリンはせっかちだね、そこもまた魅力だけれど」
夢魔「ペット君は準備できてる?」
僧侶「うん、まあ」
~道中�・
召喚師「あっはぁ、ハニー!」イチャイチャ
夢魔「んふふぅ、ダーリン!」イチャイチャ
僧侶「……」
僧侶「(い、居辛い……)」
召喚師「そういえば」
召喚師「僧侶君の実力はどれくらいなのかな?」
僧侶「え?、えっと……」
夢魔「関係ないよ!、私のペットだから!」
僧侶「え?」
召喚師「ん、まあそうか」
召喚師「本音を言っちゃうとね、あんまり期待してないんだ」
僧侶「え」
夢魔「わー、ダーリンってばズバッと言っちゃうんだなあ」
夢魔「そんなダーリンも渋カッコイイ!」
召喚師「ハニーもめちゃカワイイよ!」
僧侶「……」
召喚師「そういうわけでだね、まあ敵の攻撃を避けることが出来ればいいかな」
召喚師「不安があるなら私の背後にでも隠れているといい」
僧侶「……」
僧侶「(せ、戦力扱いされてない!)」
僧侶「(完全に仲間というよりペット扱いだなんて……)」
召喚師「さて、場所はここらへん、かな?」
召喚師「どうだいハニー?」
夢魔「んーとね……」
夢魔「囲まれてる感じがするよ?」
僧侶「えっ」
ガサガサッ
魔物a「……」
魔物b「キシャァ」
魔物c「グールルル……」
僧侶「わ、い、いっぱい……」
召喚師「ありゃ、これは参ったね」
夢魔「余裕の顔して言う言葉じゃないよね」
召喚師「まあ余裕だからね」
召喚師「では……いでよ!、我が召喚獣達!」
カッ
コボルトs「クルルルゥ!」
リザードマンs「ガルルルッ!」
ハーピーs「キャハハハ!」
僧侶「!?」
召喚師「レッツ・ダンス!、皆で踊ろうか!」
召喚師「コボルト隊、リザードマン隊!、突撃!」
コボルトs「クオオオオオ!」ドドド
リザードマンs「ギャーーース!」ドドド
召喚師「ハーピー隊!、風魔法で援護射撃!」
ハーピーs「キャッホウ!」ズババ
僧侶「」
ワーワー
ウォォーー
僧侶「(僕の知ってる召喚魔法と違う)」
夢魔「言ったでしょ?、ダーリンはすごいんだって!」
僧侶「あー……うん……次元が違う感じがするよ……」
夢魔「あ!、三時方向が劣勢だよ!」
召喚師「ハーピー隊、三時方向に援護射撃を集中!」
僧侶「(何がすごいって、沢山召喚して消費魔力が半端じゃないはずなのに涼しい顔してることだよ)」
魔物「ガゴォ!」ブンッ
僧侶「わったった!」ヒョイ
コボルト「クゥォ!」ドゴォ
魔物「ゲベェッ!?」グチャ
召喚師「へえ、中々の身のこなしじゃないか」
僧侶「はは、まあ……」
僧侶「(あの修行は無駄じゃなかった!)」
ドゴォンッ!
コボルトs「キィ!?」
リザードマンs「ガァ!?」
夢魔「強い魔力を感じるよ!」
召喚師「……大将のお出ましか」
デーモン「……随分と暴れてくれたな」
召喚師「お前を倒せば終わりかな?」
デーモン「ふん、数だけで俺を倒せると思うな」カッ
ドドドドド!
ハーピーs「キピィ!?」
召喚師「む、広範囲魔法か……」
デーモン「貴様が召喚した召喚獣など、まとめて屠ってくれるわ」
召喚師「……ふふ」
召喚師「一つ、残念なお知らせがあるよ」
デーモン「ふん、戯言か」
召喚師「どう思うかは勝手だがね」
召喚師「私の召喚獣は、数だけではない!」
カッ
氷竜「クオオオオオオオオオオオ!!」バサッ
デーモン「なっ!?、ドラゴンだと!」
僧侶「(あの大群に加えてドラゴンまで召喚しちゃうの!?)」
召喚師「キャンディちゃん、アイスブレス」
僧侶「(きゃ、きゃんでぃちゃん?)」
氷竜「クオオオ……」スゥー
デーモン「……ふん!、ブレスならば吐く前に止めれば」
夢魔「あ、束縛魔法」カッ
ビィン!
デーモン「ぬぅっ!?、動けん、だとっ!?」
夢魔「キャンディちゃん!、やっちゃえ!」
氷竜「クアアアアアッッ!!」ブォッ
デーモン「ぬおおおおおおっ!」
キィンッ!
デーモン「」カチンコチン
僧侶「い、一瞬で氷漬けに……」
召喚師「キャンディちゃん、踏み潰し」
氷竜「クルル」グシャッ
バリーンッ
僧侶「(うわあ、木っ端微塵)」
召喚師「さて、これで依頼達成かな」
召喚師「残党は統率を失って散り散りになるだろう、そもそも数えるほど残っていないし」
夢魔「やっぱりダーリンはすごカッコイイの!」ガバッ
召喚師「ははは!、カワいいハニーに言われたら照れるじゃないかあ!」ギュッ
氷竜「クルル」
召喚師「うん、キャンディちゃんもよく頑張ってく」ナデナデ
召喚師「冷てっ!」
氷竜「……」
僧侶「……」
僧侶「……僕、いらなかったんじゃ?」
夢魔「え?、いるよぉ!」
夢魔「私のペットなんだから!」
僧侶「……」
僧侶「(愛玩扱いなんだよなあ……)」
僧侶「(守る為の力を得たはずなのに……)」
早くもパーティに疑問を感じる僧侶であった
魔王さんと近況報告会編
魔王さん「はぁっはっはっはっはっはっ!」
側近「何笑ってるんですか」
魔王さん「ん?、とりあえずふんぞり返って笑っていれば雰囲気は出るかと思って」
側近「はあ」
魔王さん「して?、侵略は進んでいるのか?」
側近「それがですね」
魔王さん「まあ、次々に侵略して今や完全制服まであと一歩というところだろう!」
魔王さん「わっはっはっは!」
側近「全く進んでおりません」
魔王さん「はっはっはっ……」
魔王さん「は?、なんだって?」
側近「ですので、進んでません、全く」
魔王さん「ななな、何でじゃ!」
魔王さん「あれだけ魔物を駆り出したというのに全く侵略できていないのか!?」
側近「はい」
魔王さん「はい、じゃないよ!」
魔王さん「洞窟の巨大土竜とか、千の軍隊とかどうなったのさ!」
側近「全部やられました」
魔王さん「はあーーー?」
側近「というか最近は占拠した土地を人間達に奪い返されている状況です」
魔王さん「えぇー?、三年かけて手に入れた土地がこんなにあっさり奪い返されるの?」
魔王さん「三年前に俺が魔王になって人間界に侵略を始めてさ」
魔王さん「何も分からないまま手探り状態で何とかかんとかやりくりしてさ」
魔王さん「そんな感じで必死こいて手に入れた土地が奪い返される?」
側近「はい」
魔王さん「はい、じゃないよ!」
側近「どうやら原因は一ヶ月前に旅立った勇者パーティにあるようです」
魔王さん「俺の三年が一ヶ月で崩れたというのか」
側近「はい」
魔王さん「はい、はいいから」
魔王さん「はあ、進まないどころか後退しているのはその勇者のせいってことか」
魔王さん「そうだよなー、魔王である俺がいるんだからそりゃ勇者もいるよなあ」
魔王さん「で?、どんな奴?」
側近「そうですね、数ある中で危険度の高い者を」
魔王さん「待って、勇者複数人いるの?」
側近「そうですね、一ヶ月前に100人旅立ちました」
魔王さん「ひゃくぅ!?、多過ぎだろ!」
魔王さん「魔王さんは一人だぞ?、それに対して勇者100人って」
側近「最近は我が軍の頑張りもあって80人程に減りましたが」
魔王さん「ん?、80人?」
魔王さん「じゃあ別にいいか、3桁いってなけりゃ楽勝だしな」
側近「そうですか」
側近「話を戻します、危険度の高い者をピックアップしました」
側近「まず始めに、聖騎士と呼ばれる勇者ですね」
側近「剣術、魔法、身体能力、どれも高水準にまとまったハイレベルオールラウンダーです」
魔王さん「ん?、オールラウンダーってことは器用貧乏なんだろ?、大したことなさそうだな」
側近「そうですか」
側近「この聖騎士は4人パーティを組んでおります」
側近「パーティの仲間は忍、賢者、錬金術師となっております」
魔王さん「ふーん」
側近「聖騎士は男で他三人は女です」
魔王さん「ハーレムかよ畜生、随分余裕なもんだな」
側近「魔王様こそ余裕そうですね」
魔王さん「ん?、あー、まあ結局は器用貧乏なんだろうし、ムカついただけだ」
側近「そうですか」
側近「ちなみにこの勇者、勇者学校を主席で卒業したそうです」
魔王さん「勇者学校?、何それ」
側近「魔王を倒すべく勇者の才能を持つ者を集め、育成する機関です」
魔王さん「はあ、そんなのあったんだ、道理で勇者がたくさんいるわけだ」
側近「……」
魔王さん「……うん?、続けて?」
側近「はあ」
側近「次は死神と呼ばれる勇者ですね」
魔王さん「人間のくせして死神だなんて呼ばれてるのか」
側近「そうですね」
側近「魔法はそこそこですが、体術と剣裁きはかなりのものだそうで、戦闘力は先程の聖騎士を凌いでいるとされます」
魔王さん「ん、まあ器用貧乏より何かに特化してた方が好きだな、個性になるし」
側近「そうですか」
側近「死神と呼ばれている所以ですが、残虐性のある性格から来ているようです」
側近「彼と戦った者は誰一人生き残っていないとのことです」
魔王さん「ふーん」
側近「彼は一人で旅をしています。誰も彼と組みたくないみたいです」
魔王さん「くふっ、ぼっちなのか?、くっふふ」
側近「そうかもしれませんね」
側近「次は無頼と呼ばれる武闘家ですね」
魔王さん「ん?、勇者じゃないの?」
側近「はい」
側近「まあ勇者だから魔王を倒せるとは限らないでしょう」
魔王さん「そうね」
魔王さん「ぶっちゃけ勇者だから何だという話だよね」
側近「話を戻しますね」
側近「彼は魔法こそ使えないものの、様々な格闘術を会得し、高い戦闘力を持ちます」
魔王さん「良い感じにミックスしてブレンドしてるのか、ハイブリッドってやつね」
側近「彼も一人旅ですね」
魔王さん「もしかして」
側近「いえ、ぼっちではなさそうですよ」
側近「実は彼、かなり女癖が悪いと聞き及んでおります」
側近「一人の方がやりやすいんでしょうね」
魔王さん「うわ、マジか」
側近「街に着いたら風俗に行くなり街娘をたぶらかすなりしてやりたい放題ですね」
魔王さん「引く一歩手前だわ」
側近「最近は男にも手を出したという噂です」
魔王さん「引いたわ」
側近「次は要塞と呼ばれる召喚師です」
魔王さん「また勇者じゃないのか」
側近「先の三人は個人の戦闘力がずば抜けていますが」
側近「こいつは軍としての戦闘力がとんでもないです」
魔王さん「軍?」
側近「彼が一度に召喚できる召喚獣は三千を超えます」
魔王さん「三千!?」
側近「千の軍隊を壊滅させたのはこいつです」
魔王さん「はあー、数には数か、単純だけど手っ取り早いよな」
魔王さん「でも召喚獣一体一体は大したことないんだろ?」
側近「そうでもないですね」
側近「彼はドラゴンすら召喚すると軍隊の生き残りから報告を受けています」
魔王さん「ドラゴン!、ドラゴンなあ」
魔王さん「そういえば魔界にある実家で潜水竜を飼ってるんだけどね」
魔王さん「リヴァイアちゃんって名前なんだけどね、元気でやってるかな」
側近「そうだといいですね」
魔王さん「で、要塞、だっけ?」
魔王さん「すごいの召喚するのは分かったけど、結局は召喚魔法を使うそいつをぶっ叩けばいいんだろ?」
魔王さん「ハイ解決、大したことないな」
側近「そうですか」
側近「では次が最後ですね」
側近「彗星と呼ばれる勇者です」
魔王さん「彗星、すばしっこそうな呼ばれ方だな」
側近「実際、スピードで撹乱する戦い方をするそうですが、隕石が落ちたみたいにいきなりその場に現れることから付いた二つ名だそうです」
側近「戦闘力は先の4人に若干劣りますが、スピード、特に逃げ足は群を抜いてます」
魔王さん「逃げ足って」
側近「特筆すべきは頭の回転ですね」
側近「常人では及びもしない発想で型破りな行動を取るそうです」
側近「特に悪知恵に関してはもう敵いませんね」
側近「ある意味、一番恐ろしい相手です」
魔王さん「でも戦闘力は先の4人に劣るんだろ?、余裕だな」
側近「そう思っていると足下を掬われるかもしれませんよ」
魔王さん「ふーん?」
側近「それでですね、彼は3人パーティを組んでいます」
側近「戦士と魔法使いですね」
側近「全員戦闘力は高いですが、性格と行動に難のあるクセ者達です」
魔王さん「よくパーティなんて組んでるよな」
側近「実際、余り物同士だそうですがなんか意気投合したみたいです」
魔王さん「ふーん」
側近「ちなみにこのパーティ、津波と呼ばれているようです」
魔王さん「津波?」
側近「彼らが現れて、悪ノリをしだしたら辺り一帯には何も残らないそうです」
側近「まるで災害だということでこう呼ばれるようになりました」
魔王さん「はあ」
ドゴォンッ!
魔王さん「ぬっ?、何だ?」
側近「あっちは食料庫ですね」
魔法使い「あんたさぁ!、なんで倉庫にあった爆弾を爆発させるわけ!?」
勇者「いやあ、何となく」
魔法使い「何となくで爆発させんな!、爆発音を聞きつけて誰かが来るでしょ!」
勇者「だってさあ?、爆弾があったらさ、爆発させたくなるじゃん?」
魔法使い「ガキかお前は!」
戦士「高級な食材が揃ってんなあ」モシャモシャ
魔法使い「あんたも何のんびり食っとるんじゃ!」
戦士「だって爆発で全部吹っ飛んだからさぁ、残りは味わって食いたいだろ?」モシャモシャ
魔法使い「そもそも人様の食料勝手に食べるってどうなのよ?」
戦士「お前だってなんか高そうな宝石盗ってるだろ?」モシャモシャ
魔法使い「うっ、見てたのね……」
勇者「気付いてないと思ったの?」
魔法使い「こら!、私を責めるシフトに持ってくな!」
勇者「でもさ、良い感じじゃん?」
勇者「天井に穴が開いて日が差し込んでてさ」
戦士「バーベキューやりたくなるな」モシャモシャ
勇者「いいなそれ!、うひゃひゃひゃひゃ!」
魔法使い「何呑気なこと言ってんのよ!」
戦士「その時は火付け役、頼むぜ?」モシャモシャ
魔法使い「お前から真っ黒焦げなグリルにしてやろうか!」
側近「貴様ら!、ここで何をしている!」
勇者「あ!、見つかっちった!」
魔法使い「そりゃ見つかるわよ!」
魔王さん「……」
勇者「お?」
戦士「あれ、もしかしてあいつ魔王じゃね?」モシャモシャ
魔法使い「嘘!?、ここ魔王城だったの?」
勇者「あ、そうなの?」
魔王さん「……」
勇者「何そのカッコ!、ダサッ!、うはは!」
魔王さん「ッッッ!!」
側近「貴様!、なんて無礼な!」
勇者「くふふ、何、その、マントさあ」
魔王さん「……」
勇者「引きずりまくって、くふふ、擦り切れてて、さらに虫食いの穴が空い、ぶふっ、空いてて、おまけに配色もデザインもヒドイけどさあ、カッコいいと思ってんの?、くっくく」
魔王さん「……ふふふ」
戦士「先に逃げようか」モシャモシャ
魔法使い「そうね、転移魔法」バシュン
勇者「こう、バサァってマントはためかせて自分ではかっこいいと思ってるポーズするんでしょ?、その、くっふ、ダサいマントで!」
魔王さん「はぁーっはっはっはっはっはっはっはぁ!」
勇者「うははははははは、げっぼ、はっははははははは!」
魔王様「深い冥闇にいざなって永遠に彷徨わせてやるわぁ!!!!!!」クワッ!
勇者「転移魔法!、バイビー!」バシュン
側近「なんという事だ、食料庫が吹き飛ばされるとは……」
魔王様「くっくっ、くくくくく……」
側近「魔王様、あやつらこそが津波と呼ばれるパーティと彗星と呼ばれる勇者です」
魔王様「くくくく…………」
側近「しかしいつの間に、というかどうやって魔王城に……」
魔王様「……」
側近「……魔王様?」
魔王様「あいつは俺がぶっ潰す」
魔王様「グチャグチャに引き裂いて擦り潰してブタの餌とスライムの肥料にして魂の一欠片も闇の中にごちゃ混ぜてやる」
魔王様「他の危険人物は任せた」
側近「は、はい」
魔王様「ついでに勇者学校とやらも潰しておけ」
側近「承知しました」
側近「(しかし、あの勇者も可哀相に)」
側近「(魔王様は普段は仕事帰りのオッサンみたいに気が抜けていますが)」
側近「(本気を出すと何よりも恐ろしいというのに)」
側近「(もはやこの世界に魂を繋ぎ止めることすら出来ないでしょうな)」
魔王様「(俺を怒らせた事……後悔させてやるぞ!、アリンコに転生しても深く心に刻み付いているくらいにな!、まあ転生すらさせてやらないがな!)」
対決!、四天王編 その一
召喚師「そういえば」モフモフ
召喚師「僧侶君、首輪を付けてたんだな、気付かなかったよ」モフモフ
僧侶「え、はあ……」
狼娘「……」
夢魔「えへへー、これ似合ってるでしょ?」
召喚師「うむ、ハニーのセンスは相変わらずイカしてるね!」モフモフ
夢魔「やった、ダーリンに褒められたの!」
狼娘「……」
僧侶「(相変わらずペット扱いです)」
僧侶「(しかも召喚師さんは今まで僕の首輪に気づいていなかったようで)」
僧侶「(これ、僕のこと見てないってことだよね……)」
狼娘「う、うがー!」
召喚師「うをっ、どうしたモフモフちゃん」
狼娘「い、いつまでもモフモフしないで欲しいぞ!」
狼娘「それにモフモフちゃんって名前じゃないって何度も言ってるじゃないか!」
召喚師「えー?、いいだろー?、ほれ」モフ
狼娘「あ、あふんっ!?」
召喚師「顎の下、撫でられると気持ちいいだろー、うりうり」モフモフ
狼娘「ぁ、ぁぅぅぅ……」ヘタリ
夢魔「私にもモフらせて!」モフモフ
狼娘「や、やめてー……ぁぅ……」
僧侶「……」
僧侶「(僕もあんな風に可愛がられてるんだよなあ……ベッドの上で)」
狼娘「……む?」ピク
召喚師「うりゃうりゃ」モフモフ
狼娘「ちょっと止めて」
召喚師「え?、あ……はい」
狼娘「…………」
夢魔「どしたの、モフモフちゃん?」モフモフ
狼娘「だから止めて」
夢魔「あ、ごめん……」
狼娘「……」
狼娘「何か来る」
僧侶「え?」
狼娘「こっちに敵意が向けられてるような、そんな匂いがする」
召喚師「……ふむ」
僧侶「(どんな匂いなのやら)」
召喚師「君達、警戒を怠るな」
夢魔「うん、分かった」
僧侶「は、はい」
機人「そうだナ」
召喚師「……」
夢魔「……」
狼娘「……」
召喚師「誰だお前はぁ!」
僧侶「え?、召喚獣の一匹じゃないなの?」
機人「ちっ、バレてしまったカ」
夢魔「何なのよあんた!」
機人「フン!、ワシこそが魔王軍四天王最強の機人だなどと、誰が教えるカ!」
召喚師「何ぃ、四天王だと!?」
機人「ホウ?、ワシの正体を見破るとは、危険人物リストに名前が挙がるだけはあるナ」
僧侶「突っ込んでいいかな……」
召喚師「危険人物?」
機人「喜べ!、貴様は危険人物な為、早々に始末される義務があル!」
機人「その義務をワシが施行しに来てやったゾ、感謝するんだナ!」
召喚師「なるほど、私を殺しに来たわけか」
召喚師「四天王が直々にとは、光栄だね!」カッ
コボルトs「クオオオン!」
リザードマンs「ガアアアア!」
ハーピーs「ウッフフフ!」
機人「ナルホド、それが要塞と呼ばれる召還獣軍隊カ」
機人「ダガシカシ、数を並べたところでミソ汁のダシにもならんゾ!」ガシャン
僧侶「!?、背中から何かが!」
機人「鉛玉の嵐、タップリ味わわせてやろウ!」
機人「イッツ、ショータイム!!!」ズドドドドド!
コボルトs「クウウウ!?」
リザードマンs「ゴアアア!?」
ハーピーs「キイイイ!?」
夢魔「きゃあ!」
召喚師「いかん!」カッ
ゴーレムs「ゴゴゴゴ!」
召喚師「ゴーレム隊、防御だ!」
ゴーレムs「グ、ゴゴゴ!」ガガガガ
ズドドドドド!
機人「……フム」プシュー
ゴーレムs「……グ、ゴ……」ズシン
狼娘「……むむむ」
夢魔「か、壊滅しちゃったよぅ」
召喚師「……くっ!」
機人「ヌルい、ヌルすぎル」
機人「この程度ではオーバーヒートも起こせないゾ」
機人「貴様の手札は知っていル、早く切ることだナ」
召喚師「……」
召喚師「本気で行くしかないみたいだな!」
召喚師「頼んだぞ、キャンディちゃん!」カッ
氷竜「クオオオオオオオオオオオ!!」
機人「出たな、ドラゴン!」
召喚師「熱暴走が起きないように、キンキンに冷やしてあげよう!」
機人「マズは鉛玉ダ!」ズドドドドド!
召喚師「結界氷壁!」
氷竜「クゥルルル!」ガキンッ!
機人「厶、壁を作ったカ」
召喚師「氷針雨!」
氷竜「クオオオオオ!」ガガガガ!
機人「ホウ?」
ズガガガガガ!
機人「氷壁でこっちの攻撃を遮断シ、そっちは氷壁より高く撃ち上げて攻撃するとハ」プシュー
機人「力押しかと思っていたガ、思ったより考えるものだナ」
召喚師「……自身に当たる物は全部撃ち落としたか」
機人「(こっちも同じように攻撃してもいいガ)」
機人「(それだと大したダメージにはならんだろウ)」
機人「(マア、対策はいくらでもあるからナ!)」
機人「……充填、開始」キィン
狼娘「!、ヤバい、エネルギーが溜まる匂いがする!」
召喚師「何!」
僧侶「(だからどんな匂いなのやら)」
召喚師「くっ!、キャンディちゃん!」
機人「邪魔されては困るのでナ!、ミサイル発射!」ズガンズガン
召喚師「むう!、こっちと同じ撃ち上げ攻撃か!」
召喚師「迎撃!」
氷竜「クルルルゥ!」ヒュオッ
ドゴォンッ!
人「ワシの弾数はマダマダあるゾ!」ズガンズガン
氷竜「クルル!」ヒュオッ
召喚師「……マズい、防御で手一杯とは!」
機人「サテ、充填完了ダ!」
機人「超電磁ビーム、発射!」バシュン!
ズドォン!
召喚師「ぬぅお!?」
氷竜「クオ!?」
機人「……外したカ」プシュー
夢魔「氷壁が撃ち抜かれるなんて……」
機人「一度穴が空けば後は脆いモンダ」
召喚師「……!、キャンディちゃん!」
氷竜「……クルル!」スゥー
機人「その壁、崩してくれル!」ガシャン
機人「フルバースト!、ウラララララ!」ズドドドドド!
ゴゴゴゴゴゴ!
僧侶「壁が……!」
機人「サア!、壁はブッ壊してやったゾ!、これからタップリ蹂躙して
召喚師「氷砲!」
氷竜「クオォ!!」ズドン!
ドッ!!
機人「……ォ?」
召喚師「ふん、氷壁を撃ち抜いた礼だ」
召喚師「お前の身体も撃ち抜いてやったぞ」
機人「……参ったナ」
機人「壁破壊にばかり気を取られていタ」
夢魔「やった!」
狼娘「……」
狼娘「(嫌な予感がプンプン匂うぞ……)」
召喚師「さあ、トドメだ!」
氷竜「クルルルゥ!」
機人「……仕方なイ、作戦変更ダ」
機人「親玉を叩いたもん勝ちダ!」
バキュンッ
召喚師「……な」
夢魔「え……?」
ミニロボ「ロボ!」
僧侶「な……!」
氷竜「!!」
召喚師「……ぐ」ドサッ
狼娘「ぅ、ぅぁ」
機人「ミサイルと一緒に小型ロボットをそっちに撃ち込んでおいたのダ」
機人「急所を的確に撃ち抜く程度の能力はあるゾ」
ミニロボ「ロボ!、ロボ!」
夢魔「い、いやあああああ!」
夢魔「ダーリン!、ダーリィィィン!」
僧侶「そ、そんな……!」
機人「勝負には負けたガ、任務は果たしタ!」
機人「ショーイズオーバー!!」
狼娘「こ、こいつ!」バキッ
ミニロボ「ゲベッ!?」グシャッ
氷竜「ク、クオオオオオオオオオオオ!!!」
機人「激昂しても無駄ダ」
氷竜「……!」ズシン
夢魔「ぁ……ぁぅ」ドサッ
機人「召喚獣は召喚した主がいなくなる卜、魔力が供給されなくなり、この世界に留まることが出来ないハズダ」
狼娘「……うぅぅ」スウッ
氷竜「……クル、ル……」スウッ
夢魔「イヤ……ダーリン……眼を覚ま、して……」スウッ
僧侶「み、みんな消えた……」
機人「ン?、お前召喚獣じゃなかったのカ」
僧侶「また……守れなかった……」
機人「貴様程度、首から上だけでも十分なのだガ、まあ億劫だし生かしといてやるヨ」
機人「じゃあナ」シュゴー
僧侶「……」
僧侶「……」
僧侶「……う」
僧侶「うわああああああああ!!」
対決!、四天王編 その二
僧侶「……」
僧侶「……」
ザッ
死神「……」
悪霊「……今のが四天王の一人ね」
悪霊「どう?」
死神「……」
死神「大したことないな」
死神「あの程度の実力ならば……」
死神「四天王全員、殺れるな」
悪霊「……ふふ、頼もしいわね」
僧侶「……!」
僧侶「誰……ですか」
死神「……」
悪霊「あら、この人が気になるの?」
悪霊「この人はね、私の旦那様よ」
僧侶「……」
僧侶「?」
死神「……これでも勇者でな」
僧侶「ゆ、勇者!?」
死神「善か悪かで言えば、善とは言えないだろうがな」
悪霊「そそ、旦那様はカッコイイんだから」
死神「……」
僧侶「はあ……」
僧侶「……そちらは?」
悪霊「私?」
悪霊「私はね、呪いの剣に憑いてる悪霊よ」
僧侶「呪い?」
悪霊「かなり強力な剣なんだけど、使う代わりに呪いをかけるの」
悪霊「命を蝕む呪いを、ね」
悪霊「でもね、私、この人を見て……」チラッ
死神「……」
悪霊「一目惚れしちゃったの♪」
僧侶「……はあ」
悪霊「だから一生付き纏うことを約束してもらって、代わりに呪いはナシにしてもらったわ」
死神「……」
死神「誰も寄り付かなくなったがな」
悪霊「だって!、旦那様に近づく人がいたら」
悪霊「嫉妬に狂って呪い殺したくなっちゃうもの」
僧侶「……」
悪霊「あなたも例外じゃないわよ」
僧侶「え?」
悪霊「今はまだいいけど、一緒にいたいなんてことを言ったら……」
悪霊「老若男女関係なく呪うから」
悪霊「一日より長く生き延びれると思わないことね」
僧侶「(……本気の目をしてる……!)」
死神「……さて」
死神「来たようだな」
バサッバサッ
悪霊「あら?」
ズシィンッ
僧侶「!?」
黒竜「グルル……貴様が死神と呼ばれる勇者か」
死神「……」
死神「そうらしいな」
黒竜「俺は魔王軍四天王最強の黒竜」
黒竜「喜べ、貴様は危険人物に認定された」
黒竜「よって、この俺が貴様を屠ってやる」
悪霊「……ふぅん?」
悪霊「あなた程度のトカゲが旦那様に勝てるとは思えないわね」
黒竜「……何?」ピクッ
死神「……」
死神「すぐにカタが付きそうだな」
黒竜「……」ピクピク
悪霊「1分も要らないわね」
黒竜「……そこまで言うのなら……」
黒竜「やってみせろ!!」スゥー
死神「……戻っておけ」
悪霊「了解」
黒竜「ォオオオオオオ!!」ゴォオッ
黒竜「ファイアブレス!」ブオッ
死神「!」
ゴオオオオオオオッ!
黒竜「ふん!、所詮口先だけか!」
黒竜「地獄の業火に身を焼かれるといい!」
スパァンッ!
黒竜「……ん?」
死神「……」チャキ
紅剣「……ォォォ……」
黒竜「馬鹿な……炎を掻き消しただと?」
黒竜「その剣の一振りだけで!?」
死神「……」スタスタ
紅剣「……ォォ……ォ……」
黒竜「……くっ!」
黒竜「これはどうだ!」ブンッ
死神「ふん」
ズバシャッ!
黒竜「……ッッ!!!」
黒竜「う、腕がああああ!!」
ドシャッ
僧侶「うわ!、こっちに飛んで来た!」
死神「……」ダッ
黒竜「!」
死神「死ね」
紅剣「ォォォオオオ!」
黒竜「ぐ、ぬおおおおっ!」
ドスッ
死神「……」
黒竜「……ぁ」ズシィンッ
僧侶「頭を一突き……」
死神「……28秒か」ズシャッ
悪霊「1分どころか30秒も要らなかったわね」
僧侶「……強い……」
死神「……ふん、四天王の実力はこのくらいか」
僧侶「……あ、あの!」
死神「……」
僧侶「どうして……そんなに強いんですか?」
僧侶「どうやったら強くなれますか!」
死神「……」
死神「お前は何故力を欲する?」
僧侶「……仲間を……守るためです」
悪霊「仲間を守る?」
悪霊「笑わせないで欲しいわね」
僧侶「え……?」
死神「……」
死神「俺は先の召喚師と四天王の戦いを見ていたが……」
死神「お前は何をしていた?」
僧侶「え?」
死神「仲間を守る為に何をした?」
僧侶「……な、何も出来なくて……」
悪霊「出来なかった?」
悪霊「私には出来なかったじゃなくて、何もしなかったように見えたけれど」
僧侶「そ、そんな!」
死神「……」
死神「お前には才能や努力以前に」
死神「度胸がない」
死神「勇気がない」
死神「仲間を守るという意志がない」
僧侶「っ!……」
悪霊「戦いに対しての緊張感すら感じられないわね」
悪霊「なんだか哀れね、呪い殺そうとも思わないわ」
死神「……」
死神「一言でまとめるならば」
死神「お前は戦いに向いてない」
僧侶「……」
僧侶「……」
僧侶「……あなたは何故……」
僧侶「力を手に入れたんですか……?」
悪霊「愛よ」キリッ
死神「……」
死神「あえて言うならば」
死神「強くなる」
死神「それ自体が目的だ」
僧侶「え?」
死神「……」スタスタ
僧侶「あっ……」
僧侶「(行ってしまった……)」
僧侶「……」
僧侶「向いてない、か……」
僧侶「分かってた、つもりだったけれど……」
僧侶「……」
僧侶「これから、どうするかなぁ……」
対決!、四天王編 その三
僧侶「鍛えてください!」
武闘家「はあ?」
僧侶「もっと強くなりたいんです!」
武闘家「何なんだ、出会い頭に」
僧侶「体や技を鍛えるんじゃないんです!」
僧侶「心を鍛えたいんです!」
武闘家「とりあえず落ち着け」
僧侶「あ、はい」
武闘家「……数日ぶりだな」
僧侶「そうですね、師匠」
武闘家「で、なに?、心を鍛えたい?」
僧侶「はい」
武闘家「何故?」
僧侶「仲間を守るためです!」
武闘家「……尤もらしい事を言っているが」
武闘家「そもそもパーティを組まなければいいのではないか?」
僧侶「え……」
武闘家「うんそれがいい、という訳でじゃあな」スタスタ
僧侶「ま、待ってください!」
武闘家「俺も暇じゃねえ、あ、ゲフン、暇ではないのだ」
僧侶「なんで仲間を組まなくてもいいだなんて」
武闘家「というか戦わない方がいい」
僧侶「ぐっ……師匠もそういうんですね……」
武闘家「誰かに言われたということはそういう事なんだろう」
武闘家「そもそも俺が修行してやった時も武闘に関して才能を見出だせなかったしな」
僧侶「……」
武闘家「……お前には」
武闘家「戦おうとする覚悟が本当にあるのか?」
僧侶「……」
武闘家「……じゃあな」スタスタ
僧侶「…………くっ……」
武闘家「……」スタスタ
僧侶「……」コソコソ
僧侶「(とりあえず、今後の方針だけでも聞きたい……!)」
武闘家「……」ピタ
武闘家「いるんだろ、出て来いよ」
僧侶「(!、バレた……?)」
……
ザッ
剣帝「……気付いていたか」
僧侶「(!?)」
武闘家「おう、わざわざ人のいない開けた場所に来たからな」
剣帝「……」
剣帝「俺は魔王軍四天王最強の」
武闘家「せやっ!!」ブンッ
ガキンッ!
剣帝「……剣帝だ」ギリギリ
武闘家「(!、不意打ちを澄ました顔で防ぎやがった!)」
剣帝「確か、無頼とか言ったな」
剣帝「貴様は魔王軍に対する危険人物としてリストアップされた」
剣帝「よって俺が斬り捨ててやる」
武闘家「……ちぃっ」
剣帝「ぬんっ!」ブンッ
武闘家「ぬぅっ、くっ!」サッ
剣帝「……ふん!」ブオッ
武闘家「!、せや!」ブンッ
剣帝「!」パシッ
武闘家「何!?」
武闘家「(確かに攻撃の隙を突いた筈だ!)」
剣帝「少しは動けるようだな」
武闘家「(……反応速度がとんでもねえ!)」
剣帝「……少しばかり、俺の実力を見せてやろう」
武闘家「何?」
剣帝「……」チャキ
武闘家「!!」ダッ
武闘家「(何かがヤバイ!、攻撃される前に止めなければ!)」
剣帝「遅い」
剣帝「秘技・烈星衝!」バッ
武闘家「!!!」
武闘家「(何だこの突きの数は!?)」
武闘家「(よ、避けきれ……)」
武闘家「ぐあああああああ!?」ズババババババ
僧侶「!!」
僧侶「(し、師匠!?)」
剣帝「……」
武闘家「……ぐぅっ……」フラッ
剣帝「……立っていられるとはな」
武闘家「……ぜぇー……」
剣帝「その目……まだ戦うつもりでいるのか」
剣帝「ならばきっちりと、トドメを刺してやる」チャキ
僧侶「!」
僧侶「(師匠が危ない!)」
死神『仲間を守るために何をした?』
僧侶「っ!」
僧侶「(僕は……また見ているだけになるつもりなのか!?)」
僧侶「(ただの傍観者に成り下がるのか!?)」
僧侶「……う」
僧侶「うわあああああ!」ダッ
武闘家「な!」
剣帝「む!?」
僧侶「あああああああ!」ドカッ
剣帝「ぬうっ……!?」グラッ
武闘家「!」
武闘家「貰った!」ブンッ
剣帝「!!」
ベキィッ!
剣帝「っ!?、ぐふぁ……!」
武闘家「おおおおお!」ダッ
剣帝「……ちぃっ!」ガシッ
僧侶「えっ、うわっ!?」グイッ
武闘家「!?」
武闘家「(僧侶を盾に……!?)」ピタッ
剣帝「止まったな」
武闘家「!!、しまっ
ドスッ
武闘家「……がはっ……!」
剣帝「……ふん」ズシャッ
武闘家「っ……」ドサッ
僧侶「し、師匠!」
武闘家「……へっ……」
武闘家「お前にも、あった、みたいだな……」
武闘家「立ち向かう、覚悟が……」
僧侶「今、回復魔法で……」
剣帝「ぬん!」ゲシッ
僧侶「ぐぅぅ!?」ゴロゴロ
剣帝「今度こそ、トドメだ」
ザシュッ
僧侶「……あ」
僧侶「師匠……」
剣帝「……ちっ、一発貰うとは……」
僧侶「……ぅぅ」
僧侶「うおおおおお!」ダッ
剣帝「ふんっ」ズバッ
僧侶「ぐああ!」ドサッ
僧侶「ぐ、くうう……痛い……」
剣帝「……貴様のせいで手間取ってしまった」
剣帝「雑魚のくせにでしゃばってくれたものだ」
僧侶「……ぐううう……!」キッ
剣帝「なんだその目は」
僧侶「よくも……師匠を……!」
父親『』
子供『パパ!、パパーーー!』
母親『……よくも、旦那を……!』キッ
剣帝『……』
剣帝「……」
剣帝「(あの時の、奴に似ている)」
剣帝「(計り知れない憎悪の篭ったあの目に)」
僧侶「うわあああああ!」ダッ
母親『うわあああああ!』
剣帝「……っ!!」ズバッ
僧侶「あがっ……!?」ドサッ
剣帝「(……気圧された、戦慄かされた!)」
剣帝「(あの時のように、大した実力も無い奴にっ!)」
剣帝「……」
僧侶「……ぐっ……」
剣帝「……貴様は……」
ブンッ
剣帝「!」ガキンッ!
「……止めたか!」
剣帝「……貴様、聖騎士か」
聖騎士「……ああ、そう呼ばれてるね」
剣帝「……」
聖騎士「せいっ!」ブンッ
剣帝「ふん」ガキンッ
聖騎士「せっ、はっ!」
剣帝「……」ヒョイヒョイ
剣帝「(……この太刀筋)」
剣帝「(似ている……)」
忍「ふっ」シュバ
剣帝「!」キン
忍「……弾かれたか」
賢者「追いついた!」
錬金術師「二人共速すぎだよー!」
剣帝「……集まったか」
聖騎士「覚悟しろ、四天王!」
剣帝「……」
剣帝「貴様は魔王軍に対する危険人物に認定されている」
剣帝「近いうちに担当の奴が貴様の命を狙いに来るだろう」
聖騎士「何?」
剣帝「(俺がこの場で葬ってやってもいいが……)」
剣帝「(任務を横取ると怒られるからな)」
剣帝「……ここは引かせてもらおう、さらばだ」バシュン!
忍「!、転移魔法!」
賢者「……駄目、完全に逃げられた」
聖騎士「……」
僧侶「……ぅ……」
錬金術師「!、この人まだ息があるよ!」
賢者「本当に!?、回復させなきゃ!」
聖騎士「……間違いない」
聖騎士「あの剣、あの目、あいつこそが」
聖騎士「師匠の、仇……!」
魔王さんと討伐報告会編
魔王さん「はぁっはっはっはっはっはぁ!」
側近「何笑ってるんですか」
魔王さん「最近は貫禄も出てきたと思うんだ」
側近「そうですか」
魔王さん「して?、お前が言ってた危険人物共はどうなった?」
機人「要塞担当の機人、任務は果たしたゾ!」
剣帝「無頼担当の剣帝……標的は斬り捨てた」
魔王さん「ふむ、御苦労」
側近「死神担当の黒竜ですが、返り討ちに遭い、絶命したそうです」
機人「ハッ、やられるとは情けない奴だナ」
剣帝「貴様こそ首から下を失って情けない姿を晒しているわけだが」
機人「……フン!、任務を優先した結果ダ」
機人「お前こそ頬が腫れ上がって面白い顔になってるゾ」
剣帝「……ふん」
魔王さん「あー、あのぼっち強いんだな」
魔王さん「で、もう一人は?」
側近「聖騎士担当の……」
ガチャ
魔女「ふぁー……はいざいます」
魔女「ん?」
機人「遅れてくるとは、偉そうな奴だナ」
魔女「ぶっはは!、なんで首だけなの!、超ウケる!、うはは!」
機人「チッ、シャクに触る笑い声だナ」
側近「……魔女よ」
魔女「あ、はーい」
側近「あなたには、聖騎士討伐の命を出した筈ですが」
魔女「あー、ごめん、まだ行ってない」
側近「なっ」
魔王さん「何?、魔女ちゃんまだ行ってないの?」
魔女「うん、実はそうなんだ」
魔王さん「仕方ないなあ、この会議が終わったら行ってきてね」
魔女「分かったー」
側近「……」
魔女「ところで、黒竜の奴は来てないの?」
剣帝「……奴は返り討ちに遭った」
魔女「ぶふっ!、何、あいつやられたの?、ダサッ!」
機人「日頃から偉ぶってたクセにこのザマだからナ」
魔女「だよねー!、あっあはっ、笑える!」
魔女「あ、ちょっと待って!、よく見たら頬が膨れてる!、たんこぶおじさんみたい!、ぎゃははは!」
剣帝「……」
魔王さん「そういえばアイツ、俺のペットのリヴァイアちゃんの写真を見せたら、紹介してくれってうるさかったな」
機人「潜水竜のことカ?」
魔女「うわっ盛ってたの!?、引くわー!、はははは!」
剣帝「……情事に現を抜かすとは愚かな」
側近「あー、ゴホン」
魔王さん「あ、どうぞ」
側近「えー、現在危険人物と認定した5人の内、2人を倒したわけですが」
側近「残りの3人、聖騎士は」
魔女「はい!、私の担当だよね」
魔女「大丈夫、言われた事はちゃんとやるよ!」
側近「そうですか」
側近「次に彗星は」
魔王様「俺が直々に捻り千切りもいでやる」
側近「はい」
側近「そして残る死神ですが」
魔王さん「残ってる二人のどっちかが行けばいいんでないの?」
機人「ふむ、しかしワシはこの通り前線復帰には時間が掛かるでナ」
側近「では剣帝さん、お願いできますか?」
剣帝「……構わん」
側近「でほお任せします」
機人「ワシのボディ、早く直らないものかネ」
側近「もうしばらくお待ちください」
魔女「そのままでも、くすっ、いいんじゃないの?」
機人「タワケ!、首だけだと色々不自由で仕方ないのダ!」
魔王さん「話し合い終わった?」
側近「そうですね、私から報告することは以上です」
魔女「じゃあ部屋に戻って研究の続きを」
側近「聖騎士討伐、行ってきてくださいね」
魔女「うっ……はぁい」
魔王さん「俺はこの後どうするかなぁ」
勇者「あれ?、まだそのダサいマント着けてたんだ!」
魔王さん「ッッッ!!?」
魔女「あ、それ分かる!、ダサいよね!」
勇者「だよな!、ダサいよな!」
魔女「ねー!」
勇者「わはははははははは!」
魔女「あははは、げほっ、あ、あはは!」
魔女「ところであなた誰?」ケロッ
勇者「ん?」
機人「オ?」
剣帝「む?」
側近「……ぁー」
魔王様「いつからいた貴様ァアアアアアアアアア!!!!1」
勇者「転移魔法!、オサラバタラバ!」バシュン
魔王様「ぬおおおおおおおおお!!!」ドタバタ
機人「今のは誰ダ?」
側近「……彗星と呼ばれる勇者です」
魔女「あいつがそうなんだ、なんだか気が合いそう!」
剣帝「……ふん」
魔王さん「ふぅー、ふぅー……」
側近「あやつ、この場所を覚えましたからね」
側近「これからも来ると思いますよ……おちょくりに」
魔王さん「……」
魔王さん「俺だってさ」
魔王さん「このマント、ダサいと思ってるんだよ」
魔女「自覚あったんだ」
魔王さん「虫食いの穴はあるし、擦り切れてるし、配色とデザインは酷いし」
魔王さん「なんかソースとかケチャップとかこぼしたような跡があるし」
魔王さん「小便みたいな黄色いシミが付いてるし」
魔王さん「カビ生えてるし」
魔王さん「一本グソうんちの落書きが茶色の油性ペンで描かれてるし」
魔王さん「臭いし。今は魔法でごまかしてるけど」
機人「ワシの感知センサーはビンビンだけどナ」
魔女「フローラルな香りがすると思ったら、魔法だったんたね」
魔王さん「こんなマントだけどさ」
魔王さん「なんかよく分からないけど、先祖代々受け継がれてきたものなんだよ」
魔王さん「魔王になったら何故かこれを羽織る伝統があるんだよ」
魔王さん「いわば親父の形見なんだよ」
魔王さん「魔界でピンピンしてるんだけれどね」
魔王さん「まあ、だからさ」
魔王さん「仕方ないじゃん?」
側近「……」
魔王さん「側近よ」
側近「はい」
魔王さん「新しいマント買ってきて」
側近「了解しました」
魔王さん「そんなわけで」
魔王さん「このマント、欲しい人がいたらあげるよ」
一同「!?」
魔王さん「正直、魔力も何も篭ってないただのマントだし」
魔王さん「こんな泥棒の風呂敷みたいなデザインに何か意味があるわけでもないし」
魔王さん「でも自分では処理したくないからお前らの誰かにあげるわ」
魔王さん「ちなみにこれ、魔王様命令な」
一同「……」
機人「……ナア」ヒソヒソ
魔女「……ぶふっ!、面白そうかも……」ヒソヒソ
機人「ハイ!、ワシ欲しイ!」
魔女「私も欲しいかなーって!」
側近「(何をヒソヒソしていたかと思えばそういうことですか)」
側近「私も欲しいです」
機人「(オ、予想通り乗ってくれたナ)」
魔女「(さっすが、空気読める!)」
剣帝「……」
剣帝「お前ら三人で決めれば」
機人「……チッ」
魔女「……ぁーぁ」
側近「……はぁ」
剣帝「………………」
剣帝「(な、何だこの空気は……!)」
剣帝「………………」
剣帝「………………………………………………」
剣帝「…………俺も欲しい、かな」
三人「どうぞどうぞ!」
剣帝「ぬぐぉお!、やっぱりか!」
魔王さん「お?、剣帝君が貰うの?、じゃあはい」スッ
剣帝「あ、ありがたく頂戴します……」ネチョ
剣帝「(なんかネバついてる!)」
魔女「……くっ、うぷぷぷ……」
機人「……カカカカッ……」
側近「……………………んふっ」
剣帝「……貴様ら……」
魔王さん「あースッキリした!」
魔王さん「じゃあ解散!」
魔王さん「俺、ちょっと魔界の統治に行ってくるわ」
魔女「私も聖騎士倒しに行かなきゃ」
機人「ワシもボディのチェックをせねばナ」
側近「私も事務の仕事に戻りますか」
剣帝「……」ポツン
剣帝「……」
剣帝「うっ、これ臭っ……」
対決!、四天王編 その四
僧侶「……」
聖騎士「……そいつの様子はどうだ?」
賢者「傷の回復は終わったわ、後は目が覚めるのを待つだけよ」
聖騎士「そうか」
錬金術師「一晩経ってるけどね」
忍「……」
錬金術師「確かあいつ、私達担当の刺客がいるって言ってたけど」
聖騎士「……昨日、要塞と無頼の二人が討たれたという情報を聞いた」
賢者「えっ……要塞って、ドラゴンを使役する召喚師よね?」
忍「無頼と呼ばれる格闘家の死には私達も居合わせた」
聖騎士「どうやら奴等、実力のある者を優先的に排除するつもりらしい」
賢者「ということは、私達は相応の実力を持つと認識されているのね」
錬金術師「喜んでいいものなのかねー」
忍「……来るよ」
聖騎士「!」
バシュン
魔女「やっほー!、みんな待っ
忍「しっ!!」ドスッ
魔女「え……」
忍「……先手必勝」
魔女「……なーんちゃって」スゥー
忍「っ、分身!?」
魔女「気配察知に長けた忍を欺けられるなら上々かなー」スッ
賢者「これは、幻影魔法!?」
魔女「そだよー、あなたも魔力で察知できなかったでしょ?」
賢者「くっ……」
魔女「改めて自己紹介、私こそが魔王軍四天王最強の魔女です!」
魔女「えっとー、上から命令が下ったのでー」
魔女「面倒だけどさっさとあなた達をぶち殺しますっ!」
錬金術師「……」
聖騎士「いいだろう、相手になってやる!」チャキ
魔女「じゃあ早速……」
魔女「灼熱、零嵐、天嵐、溶岩」カッ
賢者「なっ!?」
聖騎士「くっ、軽減魔法!」カッ
ズドォン!
忍「……ぬぐっ」
魔女「……へぇー?」
賢者「……全体回復魔法」ポワン
魔女「あれだけの魔法を死なないレベルにまで軽減できちゃうんだねー」
魔女「さすがは勇者、なんて言っとく?」
聖騎士「……各属性の最上位魔法を連発してくるとは」
忍「ふっ!」ドスッ
魔女「無駄、無駄ァ」スゥー
忍「また分身か……!」
賢者「……反射魔法!」カッ
魔女「甘いわ」
魔女「星弾」カッ
ズドンッ!
賢者「ぐっふ!?」
聖騎士「っ!、回復魔法!」ポワン
魔女「フォローは早いんだね」
賢者「ぐっ……貫通魔法も使って来るなんて……」
魔女「当たり前じゃん、私魔女だよ?」
魔女「最初に名乗ったはずだけど、聞いてなかった?」
魔女「それとも、魔女って何なのか理解してない?、くふふっ」
賢者「……駄目、魔法では敵わないわ」
聖騎士「だったら物理攻撃だ!」ズバッ
魔女「……ぷふっ!」スゥー
聖騎士「!、そうか……!」
魔女「幻影魔法使ってるの覚えなよー、きゃはは!」
聖騎士「ちぃっ……」
魔女「ちょっとー、4人もいるから少しは苦戦するかなーって思ってたんだけど」
魔女「これじゃあ肩透かしかなーって」
錬金術師「……解析完了」
聖騎士「!、終わったか!」
錬金術師「ばっちり!、もう惑わされることもないよ!」
魔女「んー?、何の話?」
錬金術師「こういう話ってこと!」
錬金術師「解魔の術式!」キィン
スゥー
魔女「……えっ、あれれぇ……
忍「分身が消えた!」
魔女「……ち、ちょっとー……」パッ
賢者「本体は透過魔法で姿を隠してたのね」
魔女「ねぇ、何それ」
魔女「聞いてないんだけど……」
錬金術師「あんたの魔力の波長を特定して、それを打ち消す波長を出したのさ!」
忍「ふっ!」ドスッ
魔女「痛ァ!?、待って、幻影魔
錬金術師「解魔!」キィン
魔女「……ぅぅっ、発動しない!」
賢者「こっちの番ね!、豪風魔法!」カッ
魔女「うわっとと!、反射!」キィン
聖騎士「貰った!」ブンッ
魔女「え!、うわっ!」
ズバッ
魔女「……っ!、ぐぅぅ……っ!」
魔女「か、回復魔
錬金術師「解魔」キィン
魔女「……くぅっ」
聖騎士「……終わりだな」
魔女「……聞いてない、聞いてないよこんなの……」
聖騎士「トドメだ」チャキ
魔女「……」
魔女「……転移魔法っっ!!」カッ
聖騎士「なっ!?」バシュン
忍「むっ!?」バシュン
賢者「えっ!?」バシュン
錬金術師「うわ!?」バシュン
錬金術師「あう!」ドテッ
錬金術師「こ、ここは?」
錬金術師「転移魔法で別々に飛ばされたの?」
錬金術師「(魔力の波長は個人によって特有で、不変のものなのに)」
錬金術師「(まさか自身の魔力の波長を書き換えるなんて、普通出来ないよ……)」
バシュン
錬金術師「あ……」
魔女「……」
魔女「いやー……君には驚かされたね」
魔女「まさかあんな方法で私の魔法が封じられるなんて思わなかったよ」スタスタ
錬金術師「ぅ、ぅぁ」
魔女「灼熱っ!」カッ
ボォオオオオオ!
錬金術師「うぎゃああああああ!」
錬金術師「熱い、熱いいぃぃ!!」
魔女「それで忍に一発入れられたのはムカつくし」
魔女「賢者に隙を作らされたのもムカつくし」
魔女「聖騎士にズバッと斬られたのもムカつくけれど」
魔女「あんたに解析されたのがまるで見透かされたみたいで一番ムカつくんだよぉ!」
魔女「星弾っ!」ズドン
魔女「星弾星弾星弾っ!」ズドンズドンズドン
錬金術師「ぎゃあああああ!!」
魔女「……あークソ!、指と四肢ふっ飛ばすだけじゃ足りない!、やっぱ死ね!」
錬金術師「や、やだ、誰か助
魔女「核熱っ!」カッ
ボンッ!
錬金術師「あぎいいい!?」
魔女「核熱、核熱、核熱!」
錬金術師「が、ぎ……」
魔女「核熱核熱、核熱っ!」
魔女「核熱核熱核熱核熱っ!」
錬金術師「」
魔女「核熱核熱、陽熱!」
肉塊「」
魔女「陽熱陽熱陽熱陽熱」
炭「」
魔女「陽熱陽熱陽熱、陽熱っ!」
灰「」
魔女「陽熱陽熱陽熱陽熱」
魔女「陽熱陽熱、よっ……」
魔女「……ハァーッ、ハァーッ……」
塵「」
魔女「……魔力、切れか……」
魔女「ふぅー、ふぅー……」
魔女「もう、帰る分の、魔力しか、ないわね……」
魔女「他の奴、どうしよ」
魔女「ふぅー……」
魔女「一旦、帰るしか、ないかな……」
魔女「……聞いてないよ、本当に……」
バシュン
賢者「……やっと見つけた!」
魔女「あー……魔力を追ってここまで来たのね」
聖騎士「小賢しい真似をしてくれたな」
忍「……覚悟」
魔女「みんな来てるんだ」
聖騎士「……錬金術師は何処にやった?」
魔女「どこって、そこにいるけど」
忍「……どこ」
魔女「いやだから、あんた達で踏んでるじゃない」
聖騎士「……なっ!!」
魔女「あ、手足の残骸は原型残ってた、ほら」ポイ
賢者「きゃあああああああ!!」
聖騎士「貴様ァァァ!!」
女「私、ちょっとやりすぎたから魔力なくなっちゃったんだよねー」
魔女「だから帰る、バイバイ」バシュン
聖騎士「待てっ!……くっ!」
忍「っ……」
賢者「うぅっ……」
聖騎士「……賢者、魔力を追えるか」
賢者「……大丈夫、どこに飛んでいったか、把握したわ」
賢者「でもごめん、少し休ませて……」
聖騎士「……すまない……」
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