4月…早朝…
大学を卒業し、獣医の資格を無事に習得できた俺は今年の春、晴れて地元の動物園に就職が決まり…
子供の頃からの夢であった“どうぶつえんのおいしゃさん”になることができた。
獣医「…よし!今日も頑張ろう!」
…初勤務から今日で七日目。人生初の社会人経験となるわけだが、自分は周りの友人達が言うような社会人特有の対人関係で気疲れするようなことはなかった。なぜなら…
この動物園には去年まで祖父が獣医として長年勤務していたため、俺は子供のころからちょくちょく遊びに来ていたのである。
とどのつまり、俺は元々ここのほとんどの職員さん達と顔見知りなのだ。
獣医「おはようございます」
飼育員「あ!獣医くん!おはよう!」
清掃員「おう!若造!今日も精がでるな!」
獣医「はい!」
そのおかげでここでの人間関係は俺にとって気疲れ催すどころか、実に温かで和気あいあいとしたものである。
まだまだ仕事には馴れないところはあるが、やりがいはあるし、職場に対する不満などは一切ない。
…しかし、そんな恵まれた環境ではあるが、どうしても気になって仕方がないことがある…
事務員「お!今日も早いねぇ!感心感心っ!」
…それは今、俺の目の前で朝の陽射しに負けないくらい眩しい笑顔を振り撒いているこの人物そのものでる。
第1章…
『兎って寂しいと死んじゃうなんて嘘ですよっ☆』
ちょっと用事ができたので続きはまた夜遅くに書きます
獣医「おはようございます」
事務員「うん。おはよー!」
獣医「俺、家がここから近いですし、この仕事が好きだからついつい早めに来ちゃうんですよね」
事務員「うんうん!分かるっ!分かるよそれ!私も似たようなもんだからね~」
事務員「…おっと、そろそろ戻らないと。じゃあね!」
しばらく他愛のない雑談を交わした後、彼女はこの医務室を後にして事務所に向かった。
部屋の時計は8時25分を示している。もうすぐ事務方の職員の朝礼が始まる時間だ。
獣医「さて、と…俺もやりますか」
机の上に置かれている業務日報を開き、昨日の当直担当者からの引き継ぎ欄に目を通す。
獣医「…特に問題なし…か」
…今日も特に体調を崩していたり、風邪をひいたりしている動物はいないようだ。
獣医「午前中は園内の見回りだけで済みそうだ」
必要事項を確認した後、俺は動物達の様子を見に行くことにした。
…どうぶつ☆ふれあい☆コーナー…
動物園の正面入り口から入ってすぐ左に曲がった場所に『どうぶつ☆ふれあい☆コーナー』なるものがある。
そこには主に様々な種類のウサギ達が展示されていて、文字通り直接触ったり抱っこしたりできるコーナーである。
常日頃から多くの人に触れられたりしている為、ここのウサギ達の体調は毎日チェックしてあげないといけないのだが…
白ウサギ「…」ピョンピョン!
獣医「待って~」
…基本は大人しいウサギ達に紛れて一匹だけ、いつも俺の手から元気いっぱいに逃げ回る白いアルビノのヤツがいて…
女性飼育員「はい!つかまえた!」ヒョイ…
白ウサギ「…!」ジタバタ…
獣医「はぁ…はぁ…。いつもすみません」
女性飼育員「いいのよ。この子、新人キラーだからね。捕まえるのにはちょっとしたコツがいるんだよ」
いつも十数分の格闘の末、彼女に助け船を出してもらって事なきを得るのである。
獣医「はぁ…、今日もお前さんのおかげでいい運動になったよ…」モフモフ…
白ウサギ「…?」キョトン…
…今日も今日とて、なんとか最初の難関を切り抜けた俺は次の場所に行く準備をしていた。
獣医(早くそのコツとやらを習得しないとなぁ…)
獣医「しっかし、ウサギ相手にここまで手こずってる俺って…」はぁ…
獣医「まぁ、なるようになるか」
すっかり意気消沈し、無意識の内にうつむき加減になっていた顔を上げた時、視界の片隅に事務所が映った。
獣医(あ、事務員さんだ)
遠くから窓越しに見える彼女は、何やらパソコンを用いて入力作業をしているようだった。
獣医(そういえば事務員さんは動物の中でも特にウサギが好きって言ってたな…理由は聞いてないけど)
獣医「昼休みに食堂で会えたら聞いてみるか…」
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