辻垣内智葉「田舎でツモろう?」2本場 (29)
臨海女子・部室
メグ「サトハー!」ガチャ
智葉「なんだ騒々しい」
メグ「実はマタ、TVのオファーが来てマス!」
智葉「断る」
メグ「無理デース!」
智葉「拒否権ねーのかよ…今度も田舎に行って麻雀するのか?」
メグ「イエス。前回の放送ガ、マズマズの視聴率だったヨウデ」
メグ「今回モ、智葉にご指名が来てイマース。理事長のサインも済んでマスヨ!」
智葉「あぁ、そうかい。 それで今回の目的地は?」
メグ「今回ハ…奈良デス!」
智葉「奈良? 本当にランダムで選んでるんだな」
メグ「出発ハ、今夜22時の深夜バスに乗ってくだサイ」
智葉「おい」
メグ「ハイ、バスのチケット」
智葉「新幹線でも行けるだろうが!」
メグ「ハイ、ハンディカム」
智葉「聞こえてねーのか!? しれっと渡すな!」
メグ「サトハ!グッドラック!」
智葉「憂鬱すぎる…」
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奈良県某所・早朝
智葉「…疲労感はんぱねー。腰が砕けたようにダルい…」
智葉「帰りは意地でも新幹線で帰ってやる…」
智葉「もう少し休んでから撮影開始と行くか。とりあえずGPSで現在地を確認」
智葉「奈良県吉野郡…阿知賀?」
智葉「ここから晩成高校は…結構距離があるじゃねーか」
智葉「今回のロケはキツくなりそうだ…人もほとんどいねーし」
智葉「大丈夫か…?」
智葉「みなさんおはようございます。臨海女子高校・麻雀部、辻垣内智葉です」Rec
智葉「今回の”田舎でツモろう”、奈良県は阿知賀に来ています」
智葉「そこかしこで桜が綺麗に咲いてますね。早速あたりを散策してみましょう」
玄「おもちもちもちー♪くろたんイェイー♪」
智葉「第一町人を発見しました。お話を伺ってみましょう」
智葉「突然すまない。○○TVの”田舎でツモろう”という番組で撮影をしている」
玄「ふぇ?! カメラ!? 田舎でツモろう??(いきなり何の話!?)」
智葉「臨海女子・麻雀部の辻垣内智葉だ。いくつか質問をしたいが、構わないか?」
玄「りりり、臨海女子!? あのちょっと突然すぎて話が…」
智葉「安心してくれ、質問に答えてくれるだけでいい」
玄「は、はぁ…(お姉ちゃんどうしよー!)」
智葉「それじゃあ…カメラに向かって名前と学校名を言ってくれ」
玄「ま、松実玄! 阿知賀女子学院・高等部2年です!えーっと…麻雀部です!」
智葉「阿知賀には麻雀部があるのか?」
玄「はい、正確には今年の県予選から復活ですが!」
智葉「なるほど、それじゃあ松実さん。私を阿知賀の麻雀部へ連れて行ってくれないか?」
玄「え、えーっと…お任せあれ!」
智葉「よろしく頼む」
阿知賀・部室
玄「みんなおはようー」ガチャ
隠乃「おはようございます!」
憧「おはよー玄♪」
玄「ふふん♪ 今日は何と! サプライズゲストが来ているのです!」
隠乃・憧「サプライズゲストー?」
智葉「臨海女子高校・麻雀部の辻垣内智葉だ」スッ
隠乃・憧「……(絶句)」
憧「いやいやいやいや!意味わかんないし!」
隠乃「たしか、えーと…去年のインターハイで個人3位だった!」
玄「???」
憧「指さすのやめなさい!失礼でしょ?!」
隠乃「ご、ごめん! でも玄さん凄いですね! 辻垣内さんと知り合いだったなんて!」
玄「???」
隠乃「…玄さん?」
憧「あーだめだめ、玄は完全に思考停止中だわ…それにしてもどうしてこんな田舎へ?」
智葉「それは、○○TVのかくかくしかじかで」
憧「その番組知ってるー! すごいわ!全国ネットよ!」
隠乃「そんなに有名なの? 私は全然わかんないや」
憧「あんたはいつも山ばっかり行ってるからでしょ?! てことは、このあと私たちと打ってくれるの?」
智葉「あぁ、理解が早くて助かる」
憧「やっば! 全国3位と打てるなんて夢みたい!」
隠乃「燃えてきたぁぁぁ!!」
智葉「早速だが、手合わせ願おうか?」
玄「おもちはドコ、私はダレ」
憧・隠「あ、戻った」
対局開始!
親・憧
憧(さーて、全国3位だろうと私は私のスタイルを貫くだけよ!)
憧「ポン!」
憧「チー!」
憧「チー!」
隠乃(憧のやつ、今日もノッてるなー)
玄(さすが憧ちゃん!)スッ
智葉「ロン。3900」パラッ
玄「えっ!?」
智葉「よそ見をしている場合か?」
玄「は、はい…(まったく聴牌の気配が無かったよ!)」
親・玄
玄(さっきは油断しちゃった…でも私にはドラがある!)
………
玄(あれー!? なんかいつもよりドラの集まりが悪いよーな…)
智葉「リーチ」スッ
隠乃「うーん…」スッ
憧(鳴けないし…)スッ
玄(これで…!)スッ
智葉「ツモ。立直一発イッツードラドラ…3000・6000」
玄「えっ!?」ガタッ
憧「うそ!?玄以外にドラが渡るなんて…!ありえないわ!」
智葉「何をそんなに驚いている?ドラは私に味方した…ただそれだけのことだ」
智葉「それとも…私以上にこの場を支配できる奴がいるのかな?」
玄・憧・隠乃「!!!」ゾクッ
隠乃「まーけーたー!!」
憧「強すぎよ…久々に凹んだわ」
玄「うぅー……(あれからもドラの集まりが悪かったよー)」
智葉「お前たちの目標は何だ?県大会出場で満足か?」
憧「…! バカにしないで! 私たちが目指してるのはインターハイよ!」
智葉「奈良には晩成がいるだろうが。お前たちが晩成に勝てるとは到底思えないがな」
隠乃「それでも勝つんです! 今は難しくても…絶対に!」
智葉「言うだけなら誰でも出来る。せいぜい頑張るんだな」
隠乃「くっ…!」
隠乃「絶対勝ってみせます! 勝って勝って勝ちまくって…全国で臨海女子にも勝ちます!」
智葉「その心意気や良し。今年の奈良県予選は荒れるかもな」
憧「!!」
智葉「またいずれ何処かの卓で。お前たちを待っている、東京で」
…バタン
隠乃「え…?」
玄「わたし! 辻垣内さんを追ってきます!」ダッ
………
玄「ちょっとまってください! 辻垣内さん!」
智葉「………」
玄「先程は、ありがとうございました!」
智葉「なんのことだ?」
玄「正直いうと…悔しかったです!負けた上に、あんな酷いこと言われて!」
玄「でも、憧ちゃんも隠乃ちゃんも凄い負けず嫌いだし…優しさや慰めだけじゃ強くなれない!」
玄「あんなキツい言い方をしたのも、わたし達のためだったんですよね?」
智葉「どうだろうな? お前も意外と賢いじゃないか」
玄「い、意外とは余計です! 憧ちゃんは早いうちから気付いてたみたいですし…」
智葉「あいつは頭の回転が早いし、役を作るのも技術が高い」
智葉「高鴨隠乃、奴はまだ力を隠し持っている。一番化けるかもな」
玄「あの対局だけでそこまで…! すごいです!辻垣内さん!」
智葉「やめてくれ。私は感じたままを言っただけだ」
玄「それでも、ありがとうございました!」
智葉「あぁ…それはそうと、一つ頼みがある」
玄「頼み?? なんでしょうか?」
智葉「今晩泊まる場所を探しててな。もし可能であれば、松実の家に…
玄「いいですよー!」
智葉「…! いいのか? 無理しなくてもいいんだぞ?」
玄「無理なんてしてないですよ! わたしの家、旅館ですから♪」
智葉「そうか…それじゃあ私を松実の家まで連れて行ってくれ」
玄「はい! お任せあれ!」
松実館
智葉「一通り撮影も終えたし、部屋まで案内して貰えるか?」
玄「はい! それではこちらへどうぞー」
智葉「あぁ…お邪魔します」
客室
玄「それではごゆっくりおくつろぎくださいませ」
智葉「あぁ、すまないな」
………
智葉「深夜バスのせいでロクに寝れてないせいか…この時間ですでに眠い」
智葉「少し横になるか…」
智葉「…zzz」
………
玄(辻垣内さん、寝ちゃってる?)
玄(夕食を持ってきたけど、無理に起こすのも悪いよね…)
玄(それにしても…)
玄(寝てる辻垣内さん、すっごく可愛いよ//)
玄(起きてる時はサバサバしてて怖い人だなーって思ったけど)
玄(こうして見ると、私たちと同じ女子高生なんだなーって思う)
玄(そうだ! せっかくだから、こっそり写真撮っちゃおうかな//)
玄(そーっと…そーっと…)
智葉「おい」
玄「ふぇ!? あわわわわ!!」
智葉「人の寝顔を盗撮とは、いい趣味とは言えないな」
玄「あっ!これはっ!その!違うんですよ!いい旅館だなーって!それで写真を…」
智葉「ここお前ん家じゃねーか…つーかな」
智葉「写真を撮りたいなら私に言えばいいじゃねーか」
玄「えっ!?」
智葉「減るもんじゃねーし、一枚くらい撮られてやる」
玄「えーっ!? いいんですか!?」
智葉「あぁ。ただし一枚だけだからな」
玄「ありがとうございます! じゃあ早速撮りますね!」
智葉「あぁ…いつでもいいぞ」
玄「……あのー、腕組みしたまま撮るんですか?」
智葉「あ? ポーズなんて何だっていいだろうが」
玄「だめです! せっかくの一枚なんですから、もっと可愛く!」
智葉「できるか! 早く撮れよ!」
玄「シャッター権は私にあります! キャメラマン玄にお任せあれ!」
智葉「何言ってんだコイツ…」
玄「辻垣内さん! ピースしてください!ピース!」
智葉「…! 早く撮れっ!///」
玄「いきまーす!はい、チーズ!」
カシャシャシャシャシャシャシャ!
智葉「おい!」
玄「ついうっかり///」
智葉「わざとだろ!」
玄「ひどいですよー!せっかく撮ったのに!」
智葉「約束と違う。私は一枚と言ったはずだが?」
玄「でも…一枚だけ残してくれるなんて、辻垣内さん優しいですね!」
智葉「全部消したら約束と違うだろうが…」
玄「ふふふ♪ あっ…!写真に夢中で夕食出すの忘れてました!」
智葉「あぁ、もうそんな時間か。じゃあ早速…
玄「冷めちゃってますけど…」
智葉「…おい」
玄「すぐに新しいの持ってきますから! ちょっとお待ちを!」
智葉「はぁ…」
玄「お待たせしました!」
智葉「これは美味そうだな…」
玄「うちの旅館、食事がすごい好評なんですよ!」
智葉「そうなのか? じゃあ早速いただこう」
玄「はい!ごゆっくりお召し上がりください」
智葉「…美味い!」
玄「よかったー! 辻垣内さんのお口に合うようで」
智葉「一品一品、食材そのものの味が生かされ…味付けもどこか懐かしい」
玄「グルメレポーターですね!」
智葉「東京では中々食べられないからな、こういう料理は」
玄「ありがとうございます! あ、お食事が済んだらお風呂へどうぞ」
智葉「あぁ…すまない。そうさせてもらおう」
玄「いえ! それでは私は一旦失礼します!」
智葉「あぁ」
………
智葉「食ったなー…それにしても全部美味かった」
智葉「腹ごなしに散歩でもしにいくか…」
松実館・庭園
智葉「改めて見ると、本当に立派な旅館だな」
智葉「この星空も…東京ではまず見られないな」
玄「あ!辻垣内さん! 散歩ですか?」
智葉「そんな所だ。お前は?仕事はいいのか?」
玄「今は休憩時間です! あの、ちょっとお話ししませんか?」
智葉「あぁ、構わないが。そこのベンチに座るか」
玄「はい! では失礼します」
智葉「あぁ」
玄「ふぅ…今日は色々とありがとうございました!」
智葉「いや、礼を言うのはこちらのほうだ」
玄「あの…私と対局してどうでしたでしょうか?」
智葉「どうと聞かれてもな…牌の支配力は感じたが」
玄「そうですか! わたし…ドラが手牌に集まりやすくって」
玄「ドラを一度捨てると…しばらくの間、ドラが全く来なくなるんです」
智葉「まるでオカルトだな」
玄「そう言われても仕方ないですね! だからドラを捨てないよーに打つんですが…」
玄「どうしても手が詰まって苦しくなる時が、いくつもあるんですよ」
智葉「だったら…」
玄「???」
智葉「ドラに頼らず打てばいいだろう。麻雀はドラが全てじゃない」
玄「それはそうなんですけど…」
智葉「ドラが集まるメリットと、ドラが切れないデメリット」
智葉「まるで諸刃の剣だな」
玄「!!」
智葉「チームプレイにおいては、自らのスタイルを貫くだけでは強敵には勝てない」
智葉「むしろチームそのものを敗北させる要因にもなる」
智葉「チームが負けそうな局面でも、お前はドラを切れないか?」
玄「辻垣内さん…」
智葉「?」
玄「わたしはずっと待ってたんです。昔みたいに皆で麻雀ができる時を」
玄「わたしがいつも通りなら、きっとまたみんなが集まってくれる…」
玄「そしたら…隠乃ちゃんが、憧ちゃんが、みんなが戻ってきてくれたんです」
玄「だから!わたしのせいでチームが負けそうな時は…!」
玄「…ドラを切ります!いつかまたドラが帰ってきてくれるまで、わたし待ちます!」
智葉「そうか。さっきと顔つきが変わったな」
玄「そうでしょうか??」
智葉「あぁ」
玄「ふふふ♪ありがとうございます」
智葉「…そろそろ戻るか。風呂にも入りたいしな」
玄「あ! お背中流しましょうか?」
智葉「…その手はなんだ」
玄「ついでにおもちを…」グニグニ
智葉「絶対に来るな!」
………
客室
『だから!わたしのせいでチームが負けそうな時は…!』
智葉「ドラを切ります、か…」
智葉「私もきっとそうするだろうな…チームのために」
翌朝・客室
玄「おはようございます! 朝食をおもちしましたー」
智葉「おはよう。適当にセットしておいてくれ」
玄「はい!了解です!」
智葉「それと、」
玄「はい?」
智葉「一宿一飯の礼に、なにか手伝いをさせてほしい」
玄「えー?! そんな!辻垣内さんはお客さんですし…」
智葉「番組のルールだしな、何でも言ってくれ」
玄「うーん…あ! そうしたら庭掃きをお願いします!」
智葉「お安い御用だ、それなら素人の私でも出来るしな」
玄「臨海の制服ではなんなので…ここの従業員用の着物を用意します」
智葉「松実の着ているそれか?」
玄「そうですよー、今持ってくるので少し待っててくださいね!」
智葉「あぁ」
………
智葉「着てみたが…どうだ?」
玄「すっごく似合ってますよ!写真撮ってもい
智葉「庭に行ってくる」
玄「ガーン! 辻垣内さーん!待ってくださいよー」
………
松実館・門前
智葉「いろいろと世話になったな、松実」
玄「辻垣内さん! 最後くらいは下の名前で呼んで欲しいのです…」
智葉「あぁ…ありがとうな。玄」
玄「東京まで気をつけて帰ってくださいね!辻垣内さん」
智葉「智葉でいい、私の名字は長いからな」
玄「わ、わかりました!智葉さん//」
智葉「それに、玄はさっき”最後くらい”と言ったが…」
智葉「私はインターハイ、東京で待っているからな」
玄「!! はいっ!」
智葉「いい顔だ。じゃあな、玄」
玄「また必ず会いましょう!智葉さん!」
………
臨海女子・部室
智葉「おはよう」
メグ「おかえりなサイ! お土産ハー?」
智葉「ほら、鹿せんべい」
メグ「鹿せんべい? ウワッ!味がしまセン!!」
智葉「鹿用だからな」
メグ「それデ、奈良はどうでしたカー?」
智葉「あぁ」
インターハイで待っているぞ…玄。
智葉「温泉がよかった」
カン!
あとがき
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
前回皆さんのあったかーいコメントに後押しされ、阿知賀編を書いた次第です。
次回は真瀬由子が覚醒するお話なのよー。
ありがとうございました!
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