唯「さばげー!」 (29)
『けいおん!』のコメディSSです。よろしくお願い致します。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1400412361
澪「鯖芸?」
律「生臭そうだな、おい」
梓「見てるだけでお腹下しそうな芸ですね」
唯「違うよー、澪ちゃん! サバゲー! サバイバルゲームのこと!」
澪「サバイバルゲーム……? ああ、あの戦争ごっこみたいなアレか」
律「銃刀法違反で実刑くらった漫画家がやってたアレか」
梓「あの漫画、面白かったですよね」
澪「で、そのサバイバルゲームがどうしたんだ?」
唯「うん。昨日、ネットしてたらね、ブログでサバゲーしてる写真を載っけてる人がいてね。
それで私もやってみたくなっちゃった」
律「へえ、面白そうじゃん」
澪「ええー…… なんか怖そうだから私はあんまり……」
梓「私も興味無いです」
紬「私、海外で実銃を撃たせてもらったことがあるけど、結構気持ちいいものよ。ストレス
解消になるかも」
澪「ふうん。そんなものかな」
梓「澪先輩ってムギ先輩の言葉には物分りいいですよね」
唯「よーし、やろうやろう! みんなでサバゲー!」
律「いや、やるのはいいけどさ、モデルガンとかどうすんだよ。誰も持ってないだろ?」
紬「じゃあ、私が用意してみる。あまり種類多くは出来ないかもしれないけど……」
唯「さっすがムギちゃん!」
梓「あまり気は乗らないですけど、唯先輩と律先輩がノリノリだし、ムギ先輩が色々と用意
してくれるのであれば……」
澪「右に同じ」
紬「チーム分けはどうしようか? 私達は五人だけど」
律「あ、そっか。三対二に分かれたら、どっちかが不利になっちゃうな」
唯「チーム分け、チーム分けね。うーん」ンムムムム
梓「他にも誰か誘います?」
唯「!」ピコーン
唯「みんな、ちょっと待ってて! すぐ戻ってくるから」ガタッ
澪「え? どうしたんだよ」
梓「ど、どこ行くんですか? 唯先輩」
唯「内緒ー!」バタバタバタバタ
~30分経過~
梓「唯先輩、戻ってこないですね」
紬「何をしているのかしら。唯ちゃん」
澪「なあ、そろそろ練習しないか?」
唯「おまたせー!!」バタン
律「うわっ、びっくりした!」
唯「んっふっふー。みんな、TEAM唯を紹介するよ!」
澪「はあ?」
律「TEAM唯……?」
唯「まずは私の隣代表、姫子ちゃん!」
姫子「軽音部で何か面白いことやるんだって?」ニコニコ
澪「唯の隣って姫子しかいないだろ」
唯「続いて私の幼馴染み代表、和ちゃん!」
和「この子が張り切ると必ずろくでもないことになるから保護者としてね……」ハァ
律「お前の幼馴染みなんて和くらいしか聞いたこと無いぞ」
唯「最後は私の妹代表、憂!」
憂「お姉ちゃんの為に一生懸命頑張ります!」グッ
梓「もう突っ込む気も起きないんですけど」
唯「これがTEAM唯だよ! さあ、私達に勝てるかな!?」フンス
律「何をー! ならこっちはTEAM澪だ!」ガタッ
澪「わ、私!? なんで私がリーダー!? 部長なんだから律がやればいいだろ!」
律「こまけえこたぁいいんだよ!」
紬「な、何だか大変なことなってきたわね! 私も頑張って準備しなきゃ!」ワクワク
梓(うわ、ムギ先輩までおかしなテンションの上がり方してる……)
唯「TEAM唯 VS TEAM澪、四対四のサバゲーで決まりだね!」
律「負けないぞ! なあ、澪!」
澪「え!? お、おう……!」
唯「ムギちゃん! モデルガンってどれくらいで準備出来る!?」
紬「明日! 明日までに! 必ず!」ガタッ
澪「お、おいおい……」
梓「ムギ先輩が地味に壊れてます……」
唯「じゃあ、みんなのモデルガン選びは明日だね! ゲーム本番は今週の土曜で!」
紬「もしもし斉藤!? 今の会話、聞いていたわね!? 大至急モデルガンの準備よ!」スタスタスタ
律「おい、聞き捨てならないこと叫びながら帰ったぞ。ムギの奴」
澪「と、盗聴……?」ビクビク キョロキョロ
唯「TEAM唯、絶対勝つぞー! おー!」
姫子「おー!w」
和「おー(棒」
憂「雄々ーッッッ!!」
律「TEAM澪、完全勝利だー! おー!」
澪「おー(棒」
梓「おー(棒」
ヴーンヴーン ヴーンヴーン
澪「あれ? ムギから電話だ。 ――もしもし。ムギ、どうした?」
紬『おー!』
澪「だから盗聴すんな!」
~翌日の放課後~
唯「フンフンフーン♪ やっぱりムギちゃんはすごいね。ホントに準備出来たなんて」スタスタ
律「なあムギー、どこまで歩くんだ?」スタスタ
紬「ごめんね、もうすぐ着くから。広い場所が無くて、こっちにある駐車場を借り切ったの。
学校のグラウンドに停める訳にいかなかったしね」スタスタ
澪「広い場所……? 停める……?」スタスタ
紬「さあ、着きましたー。ここよ」
梓「えっ……」
姫子「ちょ……」
憂「これって……」
和「大型トレーラー……?」
紬「うん! さあ、入って入って。荷台がお部屋になっててね、この中で選ぶのよ」ガチャン
唯「お邪魔しまーす!」
律「うわっ、中広っ!」
梓「か、壁全面が銃だらけ…… 真ん中の棚にもごっそり銃が……」
和「これって本当にモデルガンよね……?」
紬「勿論! さあ、好きなのを選んで!」キラキラ
律「ムギが輝いてる…… 間違った輝き方だけど」
唯「あーっと! ここで私からルール説明!」ビシィ
澪「ルール? どんな?」
唯「銃は一人二つまで。でもね、一つめはここでみんなが見てる前で選ぶんだけど、二つめは
内緒にするの。その方がゲームが面白くなるでしょ?」
梓「ああ、なるほど…… ファーストウェポンはオープンにするけど、セカンドウェポンを
シークレットにするということですね?」
律「格好良く聞こえるけどまんま横文字にしただけだろ」
梓「すみません///」
和「でも、唯にしては悪くない思いつきね。セカンドウェポンがどんなものかが相手に知られて
いなければ戦術の立て方も多岐に渡るわ。その逆も然りだけど」キラッ
澪「和がやる気になってる……」
唯「はーい、まずみんなで一つめを選ぶよー!」
紬「二つめは、係の者に申告したらゲームの直前に渡す、という段取りにするわね」
律「おっけー!」
~武器選択中~
姫子「この銃大きいし、カッコいいわね。私、これにしよっと」
【姫子第一武器:デザートイーグル.50AE ハンドガン】
澪「早っ。よく選ばなくていいのか?」
律「大き過ぎて扱いづらいんじゃないの?」
姫子「形がイケてるからこれでいいよ。どれもそんなに変わらないでしょ?」
梓(さすが立花先輩。ある意味真っ当と言うか、ある意味素人と言うか、ある意味一般人
代表というか)
律「なあ、ムギ。モデルガンの弾ってどうなってんだ?」
紬「赤い塗料の詰まったペイント弾よ」
律「ふーん。じゃあ、ショットガンとかはどうなんの?」
紬「散弾を選択すれば小さなペイント弾を散弾状に発射するし、スラッグ弾を選択すれば
大きな一つのペイント弾になるわ」
律「へえ、なるほどね」
憂「火炎放射器まであるんですね。すごい」
律「それ『エイリアン2』でリプリーが使ってたヤツだw 実在しない銃まで揃えてるのかよw」
紬「えへへー」
澪「ムギ、火炎放射器の仕組みはどうなってるんだ?」
紬「塗料を直接噴霧するの。大きくて勢いの強いスプレーを想像してみて」
澪「ふうん」
律「澪、パルスライフルもあるぞw これにしろよw」
澪「私はよくわかんないし、律に任せるよ」
律「おーし、澪のファーストウェポンこれなー」
【澪第一武器:M41Aパルスライフル】
和「私はこれにするわ」
【和第一武器:ルガーP08 ハンドガン】
梓「それ、ドイツ製ですよね。なんか渋いです」
和「そう? 何となく私に合ってるような気がしてね」
梓(ナチスSSの黒服を着た和先輩が見てみたいなぁ……)
紬「私、これにしようっと」ウキウキ
【紬第一武器:パイファー・ツェリスカ ハンドガン】
律「でかっ」
澪「でかっ」
姫子「でかっ」
唯「ムギちゃん、ムギちゃん。それ、ちょっと持たせて~―― のぉおおっ!」ズシィ
梓「全長550mm、重量6000gって…… もうハンドガンじゃないですよ、それ」
澪「説明書に『世界最大最強の拳銃』とか『象狩りに用いられる』とか『射手の安全性は計算
されていない』とか書いてあるんだけど……」
和「ねえ、もう一度聞くけど、ここにある銃って本当にモデルガンよね……?」
紬「勿論♪」
梓「じゃあ、私は…… これにします。軽いし、それなりに反動も少ないって説明書にも
書いてありますし」
【梓第一武器:グロック17 ハンドガン】
憂「梓ちゃんにピッタリだね」
梓「なんか釈然としない」ムッ
律「それ、プラスチック素材だから空港の金属探知機やX線検査にも引っ掛からないって
デマが流れたんだよなw」
梓「普通に考えれば弾丸や部品が金属なんだから引っ掛かるに決まってるんですけどね」
律「んじゃー、私は『ダイハード』でマクレーンが使ってたこれ」
【律第一武器:ベレッタM92F ハンドガン】
律「しかし、みんなファーストウェポンはハンドガンにするのな。どうせシークレットの
セカンドウェポンをメインにしようと思ってんだろw」
和「当たり前じゃない。律だってそうなんでしょ?」
律「まあねー」
姫子「これ、何?」ヒョイ
紬「あ、それは手榴弾と地雷ね。手榴弾はピンを抜いて投げつけたら、地雷は踏んづけたら、
それぞれ炸裂して広範囲に塗料を撒き散らすのよ」
姫子「へー、怖ーい」
紬「こっちのクレイモア地雷なんかは、コードを伸ばして離れた場所から手動で起爆出来たりも
するのよ」
和「使い方によっては戦術の幅が広がりそうね」
唯「ねえねえ、りっちゃん。私、どんな銃にしたらいいかな?」
律「んー? じゃあ、唯はこれにしろよ。マクレーンが『ダイハード4.0』で使ってたヤツ」
唯「おおー、なんかすごそう。ありがとう、りっちゃん」
和「ちょっと唯! あんた、相手チームの人間に銃を選んでもらうなんて!」
憂「そうだよ! お姉ちゃんには私が選んであげるよ! 軽くて、扱いが簡単で、殺傷能力が
高いのを!」
梓「おい」
律「へへーん、もう遅いもんねー。はい、唯のファーストウェポンはこれで決まりー」
【唯第一武器:シグザウエルP220 ハンドガン】
唯「憂はもう決めたー?」
憂「あ、うん。私はこれ」
【憂第一武器:スオミKP/-31 サブマシンガン】
梓「メインじゃないファーストウェポンでそれって……」
律「なんかさ、銃のチョイスがもうさ……」
澪「殺る気満々だよな……」
和「頼りになりそうね」クスッ
~武器選択終了~
唯「みんな、銃は選んだー?」
全員「はーい」
唯「じゃあ、後は係の人にセカンドウェポンを申告して今日は終わりだね」
紬「あっ、当日はみんなこの上下のユニフォームを来てね」サッ
憂「配るのお手伝いしますね」
律「おー、ミリタリーっぽくてカッコいいじゃん」
姫子「モスグリーンかぁ。上だけなら私服と合わせられるかも。トップスを黒にして、ボトムは
デニムで……」
梓「私、Sサイズでお願いします」
唯「よーし、これでいよいよ準備完了だね! さあ、決戦は土曜日! 本番はどっちのチームも
全力で頑張ろう!」
全員「おー!」
律(乗り気じゃなかった澪と梓と和も何だかんだで結局テンション上がってんじゃんw)
~そしてゲーム当日~
純[はじめましての方ははじめまして! そうでない方もはじめまして! 私、実況担当の
鈴木純でございます! 本日はここ、紬先輩の別荘前特設会場より生中継でお送りして
おります!]
信代「えー、ジュースにお茶ー、おつまみはいかがっすかー」ウロウロ
エリ「コーラちょうだーい」
純[さあ、いよいよ始まろうとしておりますTEAM唯 VS TEAM澪、四対四のサバイバルゲーム!
この世紀の対決を見逃すまいと会場には桜が丘高校3年2組及び2年1組の生徒、秋山澪
ファンクラブメンバー等、多数の観客が来場しております!]
曜子「見て見て、売店で買ってきちゃった! 澪ちゃんのブロマイド! 戦闘服で銃を構えてる
澪ちゃんカッコいい///」
一子「そんなのまで売ってるんだ……」
つかさ「ね、ねえ、姫子ちゃんのはあった?」
純[八人が戦いを繰り広げる舞台は別荘近くの森の中になっており、その様子は各所のカメラを
通じ、この特設会場に設置してあります縦15m横30mの超大型オーロラビジョンに
映し出されます!]
英子「和ちゃん、大丈夫かしら。心配だわ……」フゥ
風子「くまさん、本当にお母さんみたくなってるよ」
夏香「あ、パンフレット買うの忘れてた。ちょっと行って来るね」
純[それではここでルール説明をさせて頂きます。
1.ゲームフィールドは別荘近くの森の中5km四方に限定されます。故意にフィールド
から出る行為は失格の対象となります。
2.使用武器は事前に選択した二つのみとなります。それ以外の武器の使用は認められません。
しかし、自然物を利用した罠等の作成、使用は認められます。
3.弾薬に関しては、予備弾倉の携帯が三つまで許されており、残弾数がゼロになった
場合の支給はありません。ただし、例外的措置として両チーム共に残弾数ゼロに
なった場合のみ、本部から両チームへ弾薬が支給されます。
4.射撃による失格の条件は、頭部および胴体への被弾が即時失格、上下肢への被弾が
二発で失格となっております。失格になった者は速やかにフィールドから退出し、
実況席横の本部に帰還しなければなりません。
5.同チームメンバー間の通信は、全員に配られる無線機で行ってもらいます。なお、
周波数を変えてありますので、通信内容は相手チームには聞こえません。そして、
余談ですが、私のこの実況もゲーム中の八人には聞こえておりません。
6.最後に、ゲームは正午に開始、午後九時の終了となっております。私達は未成年
ですからね♪ タイムオーバーとなった場合は残り人数、被弾数によって判定が
なされます。まったくの同一数の場合は残念ながら引き分けとなります。エンター
テインメントの観点から、これだけは避けたぁい!w]
アキヨ「……」ドキドキ
キミ子「何だかお腹空いてきちゃった」
響子「売店でチュロスかポップコーンでも買ってこようか?」
キミ子「うん」
アキヨ「……」ドキドキ
純[さあ、もう間も無くゲームスタートとなりますが、ここで両陣営の様子を見てみましょう。
まずはTEAM唯ですが…… 和先輩を中心にミーティングをしているようですね。あー、
やはり唯先輩がテンションダダ上がりの様子です。憂もそれをなだめること無くニコニコ
笑っております。いつもの平沢姉妹です。そして、立花先輩に至っては化粧を直して
いるぞー! これから森の中で撃ち合いだってのに何考えてんだ、この人!]
よしみ「姫子がんばれー!」
いちご「……」
春子「唯ー!! がんばれー!! ――ほら、いちごも声出して応援してやれよ」
いちご「がんばれ軽音部……」
春子「いや、どっちにもいるし……」
純[続いてTEAM澪ですが…… ああー、四人共落ち着いております。表情も真剣そのもの。
静かな闘志が伝わってきます。こちらもミーティング中でしょうが、TEAM唯と違い、
それぞれの役割を確認、認識、共有しているのが雰囲気で見て取れます。個人の能力
よりも士気と練度で勝利を勝ち取るのか、TEAM澪!]
曜子「澪ちゃーん!! 澪ちゃんがんばってー!!」
澪FC1「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
澪FC2「ミオセンパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアイィ!!!!」
澪FC3「やっぱ澪先輩だねええええええええええええええええええええ!!!!」
純[いよいよ決戦の火蓋が切って落とされます!!]
【TEAM唯】
平沢唯
第一武器:シグザウエルP220 ハンドガン
真鍋和
第一武器:ルガーP08 ハンドガン
平沢憂
第一武器:スオミKP/-31 サブマシンガン
立花姫子
第一武器:デザートイーグル.50AE ハンドガン
【TEAM澪】
秋山澪
第一武器:M41Aパルスライフル
田井中律
第一武器:ベレッタM92F ハンドガン
琴吹紬
第一武器:パイファー・ツェリスカ ハンドガン
中野梓
第一武器:グロック17 ハンドガン
~ゲームスタート~
ドーン ドーン ドーン
[合図の花火が打ち上げられ、ついにサバイバルゲームが開始となりました。オーロラビジョンには
まずTEAM唯、立花先輩の姿が映し出されております]
姫子「フフフ、この日の為にTSUTAYAで『マトリックス』借りて観たし、ネカフェで
『ブラックラグーン』も読んだもんね。やっぱガンアクションと言えば二丁拳銃でしょ」ウロウロ
【姫子第二武器:デザートイーグル.50AE ハンドガン】
[さすが立花先輩、ルールの主旨を微妙に理解しておりません。セカンドウェポンもデザート
イーグルを選び、二丁拳銃でゲームに挑んでおります。まるでジョン・ウー映画です。ホント
何考えてんだ、この人]
姫子「歩きづらいし、枝が髪に引っ掛かるし……」ガサガサ ウロウロ
ザザッ
姫子「!?」
律「こんにちは! 死ね!」ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ
【律第二武器:AA-12フルオートショットガン(散弾仕様・ドラムマガジン装弾数32発)】
姫子「わわっ!」 ズザザッ
[おーっと! 突如として藪の中から律先輩が躍り出た! それにしてもとんでもない武器を
選んだものです! たまらず逃げ出す立花先輩!]
律「澪! 右に回り込みながら撃ちまくれ! ポイントに追い込むぞ!」ドンッドンッドンッ
澪「おう!」バババババッ バババッ バババババッ
【澪第二武器:M240A1火炎放射器(ガムテープでM41Aパルスライフルと連結)】
[パルスライフルを撃ちながら澪先輩も参戦! 幼馴染み同士のコンビネーションがここでも
発揮されるのか!?]
姫子「ひええええ!」
[多方向からの射撃に立花先輩、全力での退却を余儀無くされております! おや? 律先輩と
澪先輩はそれほど執拗には追いませんね。一定の距離を取っていますが……]
姫子「はあはあ…… こ、ここまで逃げれば――」
バシュッ
姫子「へ……? く、首に…… 撃たれたの? どこから!? 律や澪とは結構離れたのに!」
[あっと! 立花先輩、首にいきなりの被弾! これは即失格です! しかし、弾丸は一体
どこから!?]
姫子「もしかして私、これで終わり!? 何よ、もー!」
【立花姫子:リタイア】
~姫子から30mほど離れた樹上~
梓「ふう。まずは一人」カチャッ
【梓第二武器:ブレイザーR93 スナイパーライフル(デジタルスコープ付)】
[い、いた。いました…… スナイパー梓が木の上に隠れております…… 何だか意味も無く
声が小さくなってしまいます……]ヒソヒソ
律『梓、ナイススナイプ。どーぞー』
梓「お二人が上手く誘導してくれたおかげですよ。どうぞ」
律『山猫にゃんは眠らない、だなw どーぞー』
梓「それ、やめてください。残りもこの調子でいきましょう。どうぞ」
律『あいよー。どーぞー』
梓「さてと…… これなら思ったより楽に――」
バシュッ
梓「えっ?」
[梓の頭上の、木の幹が赤く染まりました……! ペイント弾が着弾した模様です……!]ヒソヒソ
梓「狙撃されてる!? どこ!?」カチャッ ウィイイイン
[どうやらスナイパーの梓を狙撃しているスナイパーがいるようです……! 本部、カメラを
切り替えて探してください……!]ヒソヒソ
梓「……いた! 11時の方向、距離は…… ご、500m!?」
~梓から500mほど離れた樹上~
憂「うーん、やっぱりちゃんと当てるのは難しいのかなぁ。私もスコープを付ければ良かったかも。
でも、光が反射して見つかっちゃうのは嫌だし……」
【憂第二武器:モシンナガンM1891/30 スナイパーライフル】
[う、憂…… あんた……]
憂「一生懸命撃てばそのうち慣れるよね。頑張ろう! いくよー、梓ちゃん!」
~再び梓が隠れる樹上~
ヒュッ
梓「ひいっ!」ビクッ
[憂の銃弾が今度は肩先の空気を切り裂いたぁー!]
バシュッ
梓「うわぁ!」ビクッ
[お次はブーツの爪先に! これは被弾一発としてカウントされます! さあ、後が無いぞ梓!]
梓「狙いがどんどん正確になってる! ここにいたらまずい! あっ!」グラッ
[あっと! 梓、焦ったのか大きくバランスを崩しました!]
梓「きゃああああああああ!!」ザザザザザッ
[うわぁー! 梓、木の枝に身体を打ちつけながら転落! これは大丈夫でしょうか!?
すぐに琴吹家医療班が動き出しました!]
梓「いたたたた…… 枝がクッションになってなかったら大怪我してたよ……」
[ど、どうやら大事には至っていない様子です…… 良かったぁ……]
梓「ライフル…… ライフルはどこ……?」
和「無事で良かったわ」ゴリッ
梓「うっ……」
[あああ…… 和先輩が梓の後頭部に拳銃を……!]
和「王手詰み(チェックメイト)よ」バシュッ
【中野梓:リタイア】
[ああー、梓が失格となってしまいました。残念……]
梓「ひどいです! 撃つなら頭じゃなくて背中を撃ってください!」
和「ご、ごめんね。つい雰囲気を出したくなっちゃって。ほら、拭いてあげるから」ゴシゴシ
梓「むー…… でも、すごいです。長距離武器の憂がターゲットを追い詰めて、近距離武器の
和先輩がとどめを刺すなんて。私達の作戦の逆パターンですよね」
和「ありがとう。これならスナイプポイントに追い込む必要も無いし、梓ちゃんみたいな
スナイパーもこうやって対処出来るしね。まあ、憂の捕捉能力と狙撃能力が無いと不可能な
作戦だけど」
梓「立花先輩って…… あれ? そういえば唯先輩は?」
和「ああ…… あの子ならメインウェポンを試し撃ちしているうちにテンションが上がり過ぎて
どこかへ駆け出していっちゃったわ。今頃、どこで何をしてるんだか……」ハァ
梓「行動が6歳の男の子だ……」
本部『本部より通達。本部より通達。真鍋選手と中野選手は不必要な私語は慎んでください』
梓「あっ、いけない。戻らなきゃ」
和「じゃあ私、ゲームに戻るわね。気をつけて」
梓「ありがとうございます。和先輩も気をつけて」
~ゲームフィールドの中央辺り~
律「梓がやられたか。この時間帯でこの流れはちょっと予想外だなー」
澪「仕方無い。プランBでいこう」
律「あ? ねえよそんなもん」
澪「あるよ! さっきミーティングで決めたろ!」
律「ちょ、ちょっと言ってみたかっただけだって。澪がリーダーみたいなこと言うからさw」
澪「実際リーダーだよ!! お前がやらせたんだろ!!」クワーッ
律「わーかったって。そんな怒ってばっかだとそのうち血管切れちゃうぞ?」
澪「誰が怒らせてるんだ!!」
律「私でーすw ごめんなさーいw」
[本部、この二人に注意してください。不必要な夫婦漫才は慎んでくださいって]
律「あ、ムギ? プランBでいくぞ。もう少し距離縮めてくれ。どーぞー」
紬『了解。どうぞ』
澪「まったく、もう……!」
律「ほらほら、機嫌直せって。リーダースマイル、リーダースマイルw」
澪「城島か!」
ガサッ
律「シッ! 澪、静かに!」
澪「ムギか……?」ヒソヒソ
律「早過ぎるし、近過ぎる……」ヒソヒソ
澪「展開して交戦準備……!」ヒソヒソ ザザッ
律「あいよ……」ヒソヒソ ザザッ
[どうやら何者かが藪をかき分けて律先輩と澪先輩の方へ近づいているようです。二人は静かに
左右に広がり、迎撃の準備をしております]
律「いつでも来い……!」ジャキッ
ガサガサガサガサ
梓「あれ? ここさっきも通ったような…… あっ、律先輩、澪先輩」ガサガサ
澪「何だ、梓か……」ホッ
律「ビックリさせるなよー」
[正体は失格となった梓でした。ホント律先輩の言う通りです]
梓「本部に帰ろうと思ったら迷っちゃって…… どうしましょう」
澪「下手に動かずにスタッフに迎えに来てもらえばいいよ。カメラ、どこだろ」キョロキョロ
ギュイイイイイイイン
澪「ん? 何の音だ?」
律「伏せろ澪!!」ザッ
澪「うわわっ!」ズザァ
バババババババババババババババッ
梓「ぶべべべべべべべっ!」ビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャ
[どわあー! 突然藪の中から横殴りの雨のような無数の弾丸がー! あっという間に梓が
トマトケチャップかイチゴゼリーにー!]
律「木の陰に隠れろ! 早く!」
澪「すごい弾幕だ……! 総攻撃か!?」
律「いや、違う。一方向から広範囲に射撃してるだけだ。たぶん、射手は一人……」
澪「この弾の量はどう説明するんだよ!」
律「あのモーター音はまさか……」
ガサッ ガサッ ガサッ
[あっ、藪からゆっくりと誰か出てきました! あれは……]
唯「あはははははははははは!!」ババババババババババッ
【唯第二武器:M134ミニガン】
[唯先輩だー! 給弾ベルトパックを背負い、ミニガンを掲げ、悪魔の高笑いを発しながら、
唯先輩が現れたー!]
唯「あはははははははははは!!」ババババババババババッ
[とんでもない弾幕です! 手元の資料によると、回転するガトリングからの発射速度は
毎分3000発! 二人は手も足も出ない! 森の木々が、草花が、ペイント弾の赤に染め
上げられております!]
澪「ここから動けないよ! 弾切れまで待つか!?」
律「ダメだ! あのドでかいパック全部が弾薬だぞ! それに唯の奴、どんどん近づいて来てる!」
澪「くそっ! ムギ! ムギぃ!」
紬『まかせて! もうすぐそこよ!』
唯「あはははは! 澪ちゃんもりっちゃんもやっつけちゃうぞー! あははははは!」ババババババババババッ
ヒュンッ ズバコォンッ
梓「ぶべらっ!!」ズザザーッ
[ぎゃあああ! 凄まじい勢いで飛来した銃弾が、いや砲弾!? ともかく梓の後頭部に直撃!
数m吹っ飛んだぁー!!]
紬「ご、ごめんね梓ちゃん! 上手く狙いが定まらなくて!」
【紬第二武器:ブローニングM2重機関銃】
[ムギ先輩が恐ろしい武器を持って救援に駆けつけました! てゆーか持てるのかよ!
全長160cm、重量38kgを超える巨大な機関銃を軽々と振り回す! その姿はまるで
脱獄囚三人を殺った後のフランクさんだぁ!]
唯「えええええ…… そんな武器、反則だよぅ……」タジタジ
[ちなみに手元の資料によると、本物の方は頭を撃てば頭が丸ごと吹き飛び、胴体を撃てば
身体が真っ二つ、当たらなくても衝撃で絶命させられる超破壊力です! 梓が宙を舞った
のも頷けます! 医療班早くー!]
澪「助かったぁ……」クテッ
紬「唯ちゃん」
唯「は、はい……!」ビクッ
紬「ごめんね……?」ジャキンッ
律「いっけええええええ!」
ズドドドドドドドドドドドドドドドッ
唯「ひゃあああああああ!」バタバタバタ
[たまらず逃げ出す唯先輩! そりゃ逃げるしかないでしょう! 一発で人が吹っ飛ぶ威力の
ペイント弾が毎分1000発の勢いで襲ってくるんです! むしろ逃げてください!]
ヒュンッ バキイッ
唯「当たった木が折れてるううう! もうやだー! びえええええん! 助けてえ!」バタバタバタバタ
和「唯! こっちよ! 早く!」ガサッ
唯「ああっ、和ちゃん! 助けて!」
和「言うことを聞かないで勝手ばかりするからこうなるのよ! 馬鹿な子ね!」グイッ
唯「うえええええん! ごめんなさぁい!」ベソベソ
[怒りながらも手を取って走る姿は姉か母親か! 和先輩の愛情が痛い唯先輩! 私は何を
言ってるんだ!]
和「憂! こっちの場所はわかるでしょ!? 早く援護して!」
憂『見えてるけど射程距離外だよ! そっちに向かうから待ってて!』
和「それじゃ間に合わないのよ……!」
唯「どうしよう、和ちゃん……」
和「もう、あの手しか…… 唯、こっちよ! もっと早く走って!」ザザッ
紬「澪ちゃんとりっちゃんは今のうちに装填を済ませて迎撃の準備を! すぐに憂ちゃんが
来るわ! 私はこのまま和ちゃん達を追うから!」ズドドドドドドドドドドッ
澪「わかった! 気をつけろよ!」
律「一難去ってまた一難か……!」
和「はあはあ……」ガサガサ
唯「ひいひい……」ガサガサ
[懸命に逃げる二人! どうやら和先輩はどこかに向かっているようです! 戦略的撤退
でしょうか!]
和「唯、もうそのミニガンは捨てなさい。これ以上は邪魔になるだけよ」
唯「ええっ、でも……」
和「重さでどんどん行動が遅くなってるじゃない。それに憂が来てくれれば、そんな武器は
必要無くなるわ。ほら」
唯「う、うん。わかった……」ドサッ
[唯先輩、ミニガンと給弾ベルトパックを捨てました。これは賢明な判断でしょう。 ――って
言ってる間に!]
ズドドドドッ ズドドドドドドドドドドッ
和「もう追いついてきた……! さあ、逃げるわよ!」ザザッ
唯「あうう……」ヨロヨロ
紬「絶対に逃がさないわよ、和ちゃん!」ザッザッザッザッ
[この超重量武器を抱えて、この移動速度! 執拗な追跡! 私にはムギ先輩がターミネーターに
見えてまいりました!]
ザザッ ザザッ ザザッ
和「やっと着いたわ……!」ヨロッ
唯「これって…… 洞窟?」
[二人がたどり着いた先は小さな洞窟でした! この中でムギ先輩を迎え撃とうというの
でしょうか!?]
和「さあ、入るわよ」
唯「うん」
[あっ、二人が洞窟に入るようです!]
唯「暗いよぅ…… 怖いよぅ……」コツコツコツ
和「唯、いい? この中は曲がりくねっているけど、一本道ですぐに出口があるわ。ここからは
私に構わず走って出口を目指しなさい。洞窟から出たら、すぐに憂が見つけてくれるわ。
わかったわね?」コツコツコツ
唯「で、でも、和ちゃんは……?」
和「私はここでムギを倒すわ」
唯「そんな! 危ないよ!」
和「大丈夫。ちゃんと秘策があるから。唯はミーティング聞いてなかったでしょうけど……」
唯「ごめんなさい……」
和「さあ、早く行きなさい」
唯「う、うん。和ちゃん、また後でね」
和「後でね」ニコッ
~洞窟入口~
紬「この中に入ったのね……」
[遂にムギ先輩が追いつきました。しかし、すぐには入らないようです。洞窟の前に立ったまま
動きを見せません]
紬「鬼が出るか蛇が出るか…… いずれにせよ、この武器じゃ入れないわね」ドサッ チャッ
[ムギ先輩がM2を捨てました! やはりあの長大な重火器では狭い洞窟の中だと不利になると
踏んだのでしょう! しかし、懐から取り出したパイファー・ツェリスカは世界最大最強の
ハンドガン! 火力に不足はありません!]
紬「お邪魔します……」スッ
[撃ち合いの最中ですが、やはり育ちの良さが出ますね。一言挨拶をしてから中に入ります。
そして、カメラの無い洞窟では中の様子を伺い知る事は出来ません。勝者が帰ってくるのを
待つのみです!]
~洞窟内部~
紬「暗い…… 罠は無いようだけど……」コツコツコツ
紬「ん? あそこに座り込んでるのは…… 和ちゃん?」ササッ
和「来たわね、ムギ。隠れなくてもいいのよ。ほら」ポイ ガチャッ
紬「どういうつもり? 銃を捨てちゃうなんて。それで私が安心すると思ったの?」
和「安心するとは思ってないわ。でも、銃を構えているあなたと両手に何も持っていない私、
どっちが不利かは一目瞭然でしょ?」
紬「……」スッ
和「ようやく出てきてくれたわね」クスクス
紬「ゆっくりとセカンドウェポンを出して」ジャキッ
和「わかったわ。そんなに警戒しないで。今、上着のジッパーを開けるから……」
紬「……諦めちゃったの? 和ちゃんらしくないね」
和「あら、私は諦めた訳じゃないわよ。私の役割は二つ。一つは憂がいぶり出したターゲットを
近距離で仕留めること……」ジジジジジジ
紬「もう一つは……?」
和「もう一つは最低でも一人を確実に抹殺すること。この胸のセカンドウェポンでね」ジジジジ バッ
【和第二武器:クレイモア地雷】
紬「!?」
和「さあ、一緒に逝きましょう」ニヤリ
紬(撃つ!? いや逃げ――)
和「遅い!」カチッ キュイイイン
チュドォオオオオオオオオン
【真鍋和:リタイア】
【琴吹紬:リタイア】
バシャアアアアア
[おわぁあああ! ビックリしたぁ! 突然、洞窟の中から大量の塗料が吹き出しました!
これは中で爆発物が使われたものと思われます! し、しかし、これでは中の三人は
ひとたまりも……]
本部『平沢唯選手の生存を確認。平沢唯選手の生存を確認』
スタッフ『真鍋、琴吹、両選手の失格を確認。真鍋、琴吹、両選手の失格を確認』
[やはり失格者が出ていました! 武器の構成からいって爆発物を使用したのは和先輩と
思われます! しかし、自分を犠牲にした確実な攻撃というのも現実的な和先輩らしいと
言いますか…… と、とにかく、これで両チームともに失格者が二名ずつ! 人数は半分まで
減ってしまいました! 現時点での生存者は、TEAM唯が唯先輩と憂の平沢姉妹、TEAM澪が
澪先輩と律先輩となっております! ゲームは佳境に入り、どのような展開を見せるので
ありましょうか!]
~洞窟出口付近~
唯「ふええ…… 憂、どこぉ……?」ウロウロ
[おっと、和先輩を失い、憂を探し求める唯先輩が森をさまよい歩いております。でも、
この状況だと、あまりウロウロせずに憂が見つけてくれるのを待った方がいいんじゃ……]
唯「うう……」ウロウロ ガサガサ
澪「唯の奴め、どこへ行ったんだ……」ウロウロ ガサガサ
唯「あ」
澪「あ」
[あぁーっと! 出会ってはいけない二人が顔を突き合わせてしまった。唯先輩、これはまずい!
非っ常ーにまずい!]
澪「い、いたぞ……」
唯「あわわ……!」オロオロ
澪「いたぞおおおおおおおお!!」ジャキッ カチッ カチッカチッ
唯「に、逃げろー!」ダダッ
澪「あ、あれ!? 弾が出ない!? 火炎放射器もだ!」カチッカチッ カチッカチッカチッ
唯「ん……?」ピタッ
澪「何で!? ま、まずい!」アセアセ カチッカチッカチッカチッカチッ
[おーっと! アクシデント発生! アクシデント発生です! 澪先輩のライフルと火炎
放射器に突然の不具合! 本部、これは!? ――本部からは続行の裁定が出ました!
澪先輩、急転直下! 一気に大ピンチだー!]
澪「ダメだ……! くそっ、逃げなきゃ!」ダッ
唯「こ、これ、もしかしてチャンス……? チャンスだよね? よし!」チャッ
[形勢逆転! 唯先輩、懐からシグザウエルを出し、臨戦態勢で決するか大勢!]
唯「待て待てー! 澪ちゃーん!」タンッタンッ タンッ タンッ
澪「うわわっ! 来るなー!」ザザッ ザザザッ
[逃げる! 走る! 澪先輩、一心不乱の逃走!]
唯「待て待て待てー! やっつけちゃ――」
ズボオッ
唯「ひゃあああ! な、何なのぉ!?」ズボボボボオッ
澪「やったか!?」ピタッ
律「かかった!」ガサッ
[唯先輩が消えた! 地面に吸い込まれた! これはもしや落とし穴ぁ!?]
唯「やだやだ! 動けないよぉ!」ジタバタ
律「澪、やれ! 穴の中に火炎放射器だ!」
澪「わかった!」カチャッ
[ああっ、澪先輩のアクシデントすらも罠だった! 単に銃器へ弾倉を装填していない
だけでした! 何という頭脳的戦術!]
澪「喰らえぇ!」プッシャアアアアアアアア
唯「びゃああああああああああ!!」ビチャビチャビチャビチャビチャ
律「よっしゃあ!」
澪「上手くいったぁ…… 良かった……」フゥ
唯「きゅう……」ガックリ
【平沢唯:リタイア】
[唯先輩、失格! 律澪コンビのクレバーな頭脳プレーの前に唯先輩失格! これで遂に
TEAM唯は憂一人を残すのみとなってしまったぁー!]
律「やったな、澪! 作戦成功だぜ!」タッタッタッ
澪「ああ、こんなに上手くいくとはな」
律「あとは憂ちゃんだけだ。ここからは私達の――」
ヒュッ ザシャアッ
憂「お、お姉ちゃん……」
[はぅあ……! 二人の背後に憂が……]
律「来たか……」ヒソヒソ
澪「振り向くなよ……! まだ刺激するな……」ヒソヒソ
律「ああ、わかってる…… それにしても胃が縮み上がりそうだよ……」ヒソヒソ
澪「いいか、1・2・3で撃ちながら左右に飛ぶぞ……」ヒソヒソ
律「ちょ、ちょっと待て……! それって、3と同時か? 3の後か?」ヒソヒソ
澪「3と同時だよ……! いくぞ? 1……」
憂「よくも……」
律「2……」
憂「よくもお姉ちゃんを……!」
律澪「3!」ザザッ ドンッドンッドンッ ババババババッ
憂「ああああああああああ!!」ババババババッ
[遂に始まったぁ! ゴールデン律澪コンビVS憂怒りの第二形態! 律先輩と澪先輩は
横っ飛びに飛んで、それぞれフルオートショットガンとパルスライフルを撃ちまくる!
それに対し、憂は怯むこと無く雄叫びを上げながらサブマシンガンを乱射!]
律「くそっ! なんてすばしっこいんだ!」ドンッドンッドンッドンッドンッ
[憂、常軌を逸した身体能力で銃弾を回避! 当たりません! 憂にはまったく当たりません!
射撃したその先に憂がいない!]
憂「ああああああああああ!!」ババババババッ
[かと思えば、連続側宙を駆使し、まるで無重力状態を思わせる動きでサブマシンガンを撃つ!
その射撃も正確無比です!]
律「危ねっ! だああ! 弾が切れた! 澪、装填するから火炎放射器で憂ちゃんの動きを止めろ!」
澪「おう!」プッシャアアアアアアアア
憂「……!」ダッダッダッダッダッダッ ババババババッ
[憂、今度は走る! 一ヶ所にとどまらず、全速力で走りながらの射撃! 火炎放射器ですら
憂を捉えきれません!]
律「う、嘘だろ……?」ガシャッ ジャキッ
澪「律、角度を崩すな! 90度を保ちながら二方向からの斉射を続けろ! 絶対に止められる!
憂ちゃんだって人間なんだ!」ババババババッ
律「この人間離れした動き見て、よくそんなこと言えんな! ちくしょう!」ドンッドンッドンッドンッ
[あ、いや! しかし、憂の反撃が減ってまいりました! 回避に専念しだしております!
二人の攻撃が確実に憂を追い詰めつつあります。]
憂「くっ……!」ギラッ ババババババッ
律「やばっ! なんか私ばっか狙ってね!?」ザザッ ドンッドンッドンッ ザザッ
[おおっ!? ここに来て憂の戦法が変わりました! 二人の攻撃を回避しつつも、連射数と
装弾数の劣る律先輩一人に的を絞っております! 律先輩が徐々に退避に回ろうとして
おります!]
澪「律! 陣形を崩すなって!」ババババババッ
律「無茶言うな! 防ぎ切れないんだよ!」ザザッ ドンッドンッ ザザッ
憂「……」ババババババッ ババババババッ
律「ダメだっ! 一旦退避する! 憂ちゃんを撒いたら無線で連絡するから!
うわあ!」ザザッ ザザッ ドンッドンッ ザザッ
澪「律ぅううう!!」
[退避に全精力を注ぐ律先輩! 執拗に追う憂! 二人がどんどん澪先輩から遠ざかって
いきます!]
澪「くそっ! 装填してすぐ動けるようにしとかないと!」ガシャッ チャッ
[澪先輩、パルスライフルと火炎放射器に装填し、合流の準備を整えております。別のカメラは
律先輩と憂が巻き起こしている戦いの渦を追っていますが、何しろ凄まじいスピードです!]
澪「火炎放射器はもうそろそろ危ないな。直付のカートリッジタンクじゃ容量なんて知れた
ものか……」ガシャッ ジャキッ
[ん……? あれ……? 二人の様子が……]
律『澪、澪……!』
澪「律! 無事か!?」
律『あ、ああ…… 無事は無事なんだけど…… 急に攻撃が止んでな。もしかしたら憂ちゃん、
そっちに向かったかもしれない』
澪「わ、わかった……」ゴクリ
律『そんなに離れてないはずだから、周りに気をつけながらそっちに向かうよ』
澪「ああ、なるべく早く頼む……」ドキドキ
ガサガサッ
憂「お姉ちゃん…… 今、助けるからね……」
澪「ひいっ……!」ビクッ
[のおっ! 私までビックリしたじゃないですか! ど、どこからか憂の声が聞こえました!]
憂「お姉ちゃん、待ってて…… 今、助けるから……」ガサガサ
澪「う、う、憂ちゃんだ……! こっちは、唯が落ちた落とし穴の方か……?」コソコソ
[あっと、憂がいました……! 唯先輩が気絶している落とし穴を覗き込んでいるところです!
カモフラージュでしょうか、上着に枝や葉っぱをたくさん付けて、頭からスッポリと被って
おります……!]
澪「よ、よし」カチャッ
[澪先輩、静かにゆっくりとパルスライフルを構えます……! 憂が気づく様子は無い……!]
憂「お姉ちゃん…… 今、助けるよ……」
澪「喰らえっ!」ババババババッ
バシュバシュバシュバシュ
[当たったぁー! 被弾! 憂、遂に被弾! 今、この瞬間、TEAM澪の勝利が確定
しましたぁー!!]
澪「よし! 律! やったぞ! 憂ちゃんを倒した!」スタスタスタ
律『ホントか!? やったな!』
澪「憂ちゃん、残念だったな。お姉ちゃん想いなのはいいけど――」スタスタ
憂『オ姉チャン…… 今、助ケルヨ……』
澪「う、憂ちゃん……?」バサッ
[んなぁ!? こっ、これは!?]
澪「憂ちゃんじゃない……! あ、梓!? それに…… こ、これは、唯の無線機……」チャッ
[何ということでしょう! 何ということでしょう!! 上着の中から出てきたのは憂では
ありません! 梓でした! 気絶している梓と唯先輩の無線機を使い、己に見せかけた
罠を張っていたぁー!!]
律『澪、どうしたんだ? ゲームは終わったんだろ? 澪!?』
澪「じゃ、じゃあ、憂ちゃんは…… どこに……?」ガクガク ブルブル
[あ、ああ…… う、うっ、後ろ……]
憂「狩りの時間です……」
ヒュバッ
澪「きゃああああああああああ!!」ズシャアッ ズザッ ザザッ ズルズルズルズルズルッ
【秋山澪:リタイア】
律「澪っ! 応答しろ! 澪ぉ!! くそっ! どうなってんだ! ちくしょう!」
[み、澪先輩が…… これで両チーム共に残り一名ずつ……! 律先輩と憂の一騎討ちと
なります!]
律「ったく…… やるしかないか……!」ザザッ
[おや……? 律先輩が後退します。どうやら自陣方向へ引き上げるようです。そして、
一方の憂は…… 本部がカメラ映像をチェックしておりますが見当たりません。完全に
姿を消してしまいました]
~TEAM澪スタート地点近く~
律「こんなのがどこまで通用するかわからないけど……――」ザシュッ ザシュッ
律「手持ちのスペックで戦るしかないのが人だもんな……――」グイッグイッ ギュッ
律「サバゲーなんかでここまでやるとは思わなかったよ、まったく。なんで私がこんな目に……――」カチャカチャ
律「泥を身体に塗ってカモフラージュした方がいいかな…… そりゃやり過ぎかw――」ギュッギュッ ドスッ
[律先輩、懸命に罠を作成しております。基本の落とし穴は勿論ですが、あの草を結んでいるのは
足を引っ掛けさせるためのものでしょうか。そして…… ああ、これは考えましたね。蔓と
木の枝を使った鳴子です。当たれば音を出して相手の居場所を知らせてくれます。あの簡易的な
カカシは意味がよくわかりませんが……]
律「ああ、もう! もっと人数いるうちに作っときゃよかった!」イソイソ
~数時間後~
[すっかり陽も落ちて、辺りはだいぶ暗くなってまいりました。罠を張り終えた律先輩は火を
起こしております。火の始末には気をつけましょう! 憂の方は依然として所在が掴めません。
一体、どこに潜んでいるのでしょうか……]
律「そろそろ頃合いかな…… 松明にしてっと……」ボボボボ
[律先輩、上着を脱いでタンクトップ姿となり、松明を掲げました! これは何を意味するのか!]
律「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
[律先輩、敢然と雄叫びを上げました! まるで、自分はここだぞ、と知らせるかのように!]
~ゲームフィールドのどこか~
憂「……!」ピクッ
ザシャアッ ザザザザザッ
~再びTEAM澪スタート地点近く~
律「急げや急げ……!」ダダッ バサッ グイグイ
[律先輩、上着をカカシに着せ、松明を持たせました! なるほど! 自陣への後退、罠、
カカシ、夜! ようやくすべてが符号しました!]
律「さあ、いつでも来い……!」ダダッ スッ
[カカシから少し離れた場所で息を潜めます……! しかし、この作戦、憂相手に通用するか
どうか……!]
律(はあ…… 緊張で漏れそう……)ドキドキ
[まだ何の動きも無いようですが――]
ババババババッ バシュッバシュッバシュッ
律(!?)
[えっ!? カカシに何の前触れも無く突然の射撃!! 一体どこから!?]
律(馬鹿な! あれだけ罠を張ってたのに! 鳴子も鳴ってないぞ!)
ヒュッ ザシャアッ
憂「違う…… 律さんじゃない……」
律(上から……! そうか…… 木から木へ跳び移って……!)
[憂が律先輩の頭上から飛び下りてきました! どうやら罠を警戒して、木の上を移動して
ここまでやって来たようです! しかし、律先輩の存在には気づいていません! これは
律先輩、僥倖!]
律(気づくな…… 気づくなよ……)ソロリソロリ
[律先輩、カカシを見て首を傾げる憂の背後へにじり寄ります……! 射撃にベストの
ポジションへ……!]
律(よし!)チャッ
憂「……!」ギンッ
律(気づかれた! うおおおおお!」ドンッドンッドンッドンッドンッ
憂「ハアッ!」ザザッ ババババババッ
[殺気か!? 僅かな物音か!? 律先輩に気づいた憂、ショットガンの散弾をかいくぐり、
猛然と反撃!]
律「当たれえええええ!!」ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ
憂「あああああっ!」ザザッ ババババババッ ザザッ
[ダメです! 当たらない! これはいつか見た光景! 凄まじいスピードで跳び回る憂!
それどころかサブマシンガンの弾丸が徐々に律先輩を追い詰める!]
律「うおおおおお!」ドンッドンッドンッドンッドンッカチッカチッ
[ああっと! 律先輩、これはっ……!]
律「くそったれ! 弾切れだ!」ザザッ
[律先輩、遂にショットガンが弾切れです! 急いで木の陰に隠れる! 絶体絶命大ピンチ
だぁー!]
憂「……律さん、ショットガン終わっちゃいましたね」ジリジリ
律(よく見てるな、くそっ……)
[憂がゆっくりと近づいて行きます……! 律先輩にはベレッタが残されているとはいえ、
勝負にならないのは明らか! どうする律先輩!]
律(この場所…… よし、あとはなるようになれだ……!)
[おや……? 律先輩が……]
律「負けた負けたー! 降参だよ、降参!」ガチャン
憂「……?」
[な、なんと律先輩! ショットガンを投げ捨て、両手を頭の後ろに回して出てきました!
これは戦意喪失か!? 勝負を放棄したのか!?]
律「いやー、まいったまいったw やっぱ憂ちゃんには敵わないよw」
憂「一体、何の真似ですか……?」ジリジリ
律「いや、だからさ、降参だって。あとは一思いに撃ってくれよw(もうちょっとだ……
あと三歩……!)」
憂「……」ピタッ
律「どうした? 早く終わらせようぜ(くそっ! 来い! あと二歩だろ!)」
憂「……落とし穴ですか」ギロッ
律(バレてら……)
憂「それとも背中のベレッタで不意討ちですか?」
律(これもバレてると……)
[ああっ! 別のカメラでアングルを切り替えてわかりました! 両手を回した頭の、その下!
背中の首に近い辺りにベレッタをガムテープで貼りつけております!]
憂「小細工を……!」ジャキッ
律(こうなりゃ……!)
[怒り心頭の憂! サブマシンガンを構えた! 律先輩、あなたはよく頑張りました!
相手が悪かったんです!]
律「そう、小細工だ。だってさ、憂ちゃん強過ぎるんだもん。私と澪が組んでメインウェポン
撃ちまくっても勝てないくらいな。でもさぁ……」
憂「……?」
律「この状況はどうなの? もうハンドガンしかない私がだよ? 憂ちゃんよりずっと弱っちい
私が両手を上げてんのにだよ? またピョンピョン飛び跳ねて、そのサブマシンガンで
バンバン撃ちまくんの? それを唯が見たらどう思うかなぁ」
憂「……!」ピクッ
律「憂ちゃんはそんな子だったのかなぁ。弱い者イジメをするように今まで唯に教えられて
きたのかなぁ」
憂「~~~ッ!」プルプル
律「唯が泣くぞぉ? 今の憂ちゃんを見たら」
憂「な、なら、どうしたらいいんですかっ……!」スッ
律(かかった……!)ニヤリ
[憂がサブマシンガンを下げました! 効いています! 今までのどんな攻撃よりも、律先輩の
“口撃”が効いています!]
律「簡単簡単。ウェスタンさ。『抜きな。どっちが速いか勝負しようぜ』ってヤツだよ」
憂「いいでしょう……」グイッ
[憂がサブマシンガンを後ろに回し、ズボンの腰辺りに差し込みました! 対する律先輩は
両手を頭の後ろに回したまま! 格好は違いますが、どちらもすぐに銃を抜ける体勢です!
さあ、決着の速撃ち勝負の用意が整ったぁ!!]
憂「何か言い遺すことはありますか……?」
律「イピカイエー、ってか……w」
憂「……」
律「……」
憂「……」
律「……」
アォオオオオオオオオン
憂「!」ジャキッ
律「!」ガチャッ
[野犬の遠吠えを合図に二人が抜いたぁー!!]
タァーン
ババババババッ
~琴吹家別荘前特設会場~
唯「遅いねー」
紬「もうすぐ戻ってくるはずよ。あっ、ほら! 来たわ!」
姫子「おーい!」
和「おかえりなさい、二人共」
唯「おかえりー!」
憂「ただいま。お姉ちゃん、和ちゃん」
律「たっだいまー!」
梓「すごい勝負でしたよ、律先輩。同時被弾で引き分けですけど、不満に思ってる人なんて
誰もいませんでした」
律「いやー、ホント憂ちゃん強かった!」
和「あの状況から憂に引き分けるのは正直すごいと思うわ。見直したわよ、律」
憂「でも、最後は律さんの勝ちみたいなものです! 私は額を撃たれたけど、律さんはお腹
でしたから。もし、これが本物だったら倒れていたのは私ですよ」
律「いや、そんな“もし”は絶対あり得ないから…… あれ? そういや澪は?」
紬「あ、あそこに……」
澪「憂ちゃん怖い憂ちゃん怖い憂ちゃん怖い……」
和「背後から襲いかかられて、蔓で木に逆さ吊りにされたら、そりゃ誰だってああなるわね」
憂「ご、ごめんなさい……」
梓「私は三回殺された挙げ句、気絶してるとこを罠に使われたけどね」
憂「梓ちゃん、本当にごめん! 許して!」
唯(ごめんなさい)
紬(ごめんなさい)
律「でもそのくらいで済んで良かったな、澪。もうちょっと手こずらせてたら脊椎から頭蓋骨
抜かれてトロフィーにされてたかもw」
澪「ひいい!」
憂「そ、そんなことしませんよ!」
紬「さあさあ、この後はバーベキュー大会よ。観に来てくれたみんなも一緒にね」
律「やったー! もう腹ペコだよ!」
和「律と憂には特にお腹いっぱい食べてもらわないとね」
唯「行こう行こう! レッツゴー!」
姫子「あ、鈴木さん鈴木さん」
純「はい?」
姫子「鈴木さんの実況、すごく良かったよ。私、早くにリタイアしたからずっと聞いてたけど、
スポーツ中継みたいな名実況だった。お疲れ様」
純「あ、いや、えへへ……/// ありがとうございます!」
憂「純ちゃん。はい、マイク」
純「えっ? あ、じゃあ……」
純[残念ながらお別れの時間が来てしまいました! それでは皆さん、ここ紬先輩の別荘前
特設会場から、ごきげんよう! さようなら!]
おしまい
以上になります。お読み頂き、ありがとうございました。
挿絵は私が仲良くさせて頂いている方に描いて頂きました。
本当にありがとうございます。
投下に気を取られて、うpするタイミングを間違えました。
申し訳ございません。
パスワードは keion です。
では、失礼致します。
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