【マブラヴTE】京都萌ゆ【EX世界】(89)

はじめに。

【この物語は戦術機もBETAも存在しないマブラヴEX世界の西暦2000年、
 夏の京都を舞台に繰り広げられる、
 一人のブラコン女子高生の、苦悩と奮闘とピンク思考の物語である。】


篁唯依:主人公。17歳。高2。京都の一般家庭に住む。
   家族は父と母と、腹違いの兄がいる。
   兄とは果たして誰のことなのか、TEアニメだけじゃ分からないけど、
   ゲームでは明らかになります。

――EX世界2000年、夏休み前、京都の嵐山にある高校


ガラッ

志摩子「皆、おはよう」
安芸「おはよー」

唯依「おはよう、志摩子っ!!」にこっ

志摩子「!!??」



志摩子「どうしたの…唯依…」
唯依「どうしたのとはどういうことだ」
志摩子「だって…そんなに上機嫌な唯依久しぶりに見たよ?」
唯依「そ、そうか?」ウキウキ

志摩子「すごい浮き足立ってるし」
上総「今朝からずっとこの調子ですの」

上総「ずっと気落ちしたままでも困りますが、あまり浮つくのもどうかと」
志摩子「一体何があったの…」

和泉「志摩子、忘れちゃった? 唯依がどうしてここ暫く気落ちしていたか」
安芸「ほら、大学生の」
志摩子「え? それは大好きなお兄さんが海外留学に行ったから……あっ!(察し)」
上総「篁さんはブラコンですから」

ガタッ

唯依「そ、そこっ! にゃ、にゃにを噂を立てている!?」

唯依「私がブラコンなどという噂!あくまで噂が出回っているようだが!」

唯依「わっ、私にとって! おにいさ…もとい兄は所詮兄だしぃ!」

唯依「兄が何処へ留学しようと知ったことではなかったのだ!」

唯依「アラスカの大学に留学したからと言って!」

唯依「全然、なーんとも思ってないぞっ!!」

唯依「だからこの夏、兄が帰省するからと言って!」

唯依「私の私生活が変わることなんか何も無いッ!!」

唯依「嬉しくて嬉しくて浮つくことなんか、」

唯依「絶対に絶対にありえないのだっ!!」ドーンッ

上総「”唯依、今夜は肉じゃがを作ってくれないか…? 人参たっぷりで”」ボソッ

唯依「あっ、はい、お兄様ぁ!!」

ズキューンッ!


安芸「お兄さんのモノマネにときめいたぞ」

志摩子「はぁ…、唯依のブラコンは昔からだけどここまで重症になるなんて」

和泉「あっちょっとごめん、私、彼から電話来た(PHSだけど)」

唯依「山城さん何を!!」

上総「篁さん…、今ので少し濡れてしまったのではありませんか?」

唯依「はぁっ!?」


唯依(確かにちょっとだけ興奮してパンツ濡れちゃったけど…)ドキドキ

上総(発情してる上に照れてる篁さんかわいい…。襲ってしまいたいですわ…)ハァハァ


安芸「あっ、上総も地が出かけてる」

志摩子「唯依の趣味もあれだけど山城さんはそっちのケがあるのよねぇ…」

和泉「えっ? 今日デート? うんうん、行く行く行くよっと!」


キーンコーンカーンコーン

ガラガラッ

安芸「おっ来たなデコガン」


※デコガン=先生のあだ名。おでこが出ていて、謎の眼帯をしているため。


上総「石見さん、担任の先生なんですからちゃんと真田先生と…」

志摩子「山城さんとりあえず今は席につこ」

和泉「やばい、ピッチ(PHS)隠さないと!」


※2000年当時はカメラ付き携帯が発売されるなど
 携帯電話に革命が起こりつつあった時期ですが、
 まだ料金の安いPHSを利用している顧客は学生を中心に大勢いました。
 以後数年で凄まじい勢いで携帯電話に駆逐されていくことになるのですが。

晃蔵「こらチャイム鳴ったぞ!お前ら席につけっ! 山城!!(←学級委員長)」

上総「あ、はいっ! 起立!!」

ガタッ

上総「礼」

生徒達「「「「「 おはようございます 」」」」」

山城「着席!」

ガタンッ

安芸「けどさー、デコガンのあの眼帯ってなんなんだろーな? 昔ヤーさんだったとか?」

志摩子「安芸、聞こえるよ」

安芸「大丈夫だって~、この小声じゃバレやしないよ」

晃蔵「聞こえとるぞ石見。誰がデコガンだ!」

安芸「げぇっ!!地獄耳!!」

こうしていつもの様に一日は始まった。
が、唯依にとってはあっという間に終わってしまった。

※※※

―――同日夜、京都市内にある普通の民家、篁家

――その浴室


唯依(確かに、ユウヤお兄様は私の兄だ…)

唯依(昔お父さんはアメリカに住んでてお兄様のお母さんと結婚して、)

唯依(別れて、お兄様を連れて帰国してお母さんと再婚したんだから、)

唯依(お母さんは違ってても、間違いなく私達は兄妹…)


唯依(でもそんなの、血が繋がっているかいないかの違いだけじゃないか…)

唯依(そんな繋がりのせいで、私は子供の頃から、)

唯依(周囲に自分の気持ちを伏せて生きてこなければならなかった…!!)


※反応がバレバレなのでユウヤ以外にはあんまり隠せてませんでしたけど。

唯依(実の兄と妹でそういう意識を持つことが普通ではないなんて、)

唯依(そんな事私だって分かっている)

唯依(でも、それは、そういう人間が世の中に多いというだけじゃないのか?)


唯依(その人たちはそれでいい。でも私は私なんだ)

唯依(私の気持ちは私にしか理解できない、私だけのもの)

唯依(恋心が向いた先が偶然兄だっただけ…。これは、罪なのか…?)

唯依(お兄様……!!)キュンッ

唯依(ダメ…、こんな事考えてたら、また身体がおかしくなる…)

唯依(身体敏感になって…)ハァ、ハァ…

唯依(乳首こんなに尖っちゃって…)ハァ、ハァ…

唯依(頭がお兄様のことでいっぱいになって…)ハァ、ハァ…

唯依(女の子の大事な部分だって、もう…)キュンキュン

唯依(触りたい…、お兄様のこと想いながら、このまま自分を慰めて…)

唯依(でもだめ、風呂場でなんかやったら、声が響く…!)

唯依(もし私がお兄様なんて言いながらイってること知られたら、)

唯依(家族にもご近所にも私の気持ちが知られてしまう…!!)

唯依(やるなら部屋、早くお風呂を上がって自分の部屋で…)

唯依(ああっ、でもだめっ…、もう、我慢できないっ!!)


ぐちゅぐちゅぐちゅっ!!

唯依「ああっ…! お兄様ぁ!!」

唯依「唯依は、お兄様が欲しいっ!!」

唯依「胸を揉んで! キスして! 処女、貰って!!」

唯依「お兄様抱いてッ!! お兄様ぁぁぁぁ!!」

唯依「イくっ!! 唯依イっちゃうよおおおお!!」


ぷしゃああああああああっ!!

唯依「ああ…」

唯依(イ…イってしまった…)

唯依(お風呂場だから声響いたなぁ…)

唯依(お父さんたちに聞かれたかなあ…)

唯依(私がお兄様をそういう目で見ているなんてことが知られたらどうしよう…)

――同時刻、居間


<オニイサマアアアアアア!!


祐唯「…唯依の奴、夜の部屋だけでなく、とうとう風呂場でもか」

栴納「昔から兄離れの出来ない子ではありましたけれど…」

祐唯「ユウヤがアラスカへ行ってからほとんど毎日だな」

栴納「寂しくて想いが募る一方なんでしょうね」

祐唯「相手が相手だけに不安だが、あの年頃の娘だからな…。
   まだ私が下手にどうこう言わない方がいいか?」

栴納「はい。思春期の女の子の恋心だけは、親は静かに見守る他はありません」

祐唯「クラスメート相手の健全な恋であるならば私も何の抵抗もなく応援するんだが…」

栴納「そこも唯依自身がどうにか決着をつけなければならないでしょう」

祐唯「まあ、確かに唯依がユウヤを好きになってしまうのも分かる。
 

祐唯「あいつは俺に似てイケメンだからなw ははは」

栴納「あらあら。確かにユウヤは器量良しですね」

――数分後

祐唯「…ん! 母さん」

栴納「はい。分かっています」


ガチャッ

唯依「えっと…」

祐唯「む?」

唯依「お、お父さん、お風呂空いたよ」

祐唯「唯依上がったか。ありがとう。じゃあ頂くかな」

唯依「お母さん、あの、その」

栴納「どうしたの唯依。何かあったの?」

唯依「ううん。何も、ない」

栴納「そう? 頂き物のいちごあるけど食べる?」

唯依「うん、食べる」


唯依(良かった。お父さんにもお母さんにも気づかれていないぞ!)


※※※

――その夜、篁唯依の自室


唯依「明後日の土曜日、お兄様が帰って来る」

唯依「休みが終わったらまた去ってしまうけど…」

唯依「ひと夏の思い出を、お兄様といっぱい作れるといいな」

唯依「ふふふ」


※※※

――そして土曜日の朝、篁家玄関前


栴納「…唯依、貴方は自分がどこに行くか分かっているの?」

唯依「分かってる。おにいさ、ごほん、兄さんを迎えに行くだけだ」

栴納「それも関空へではありませんよ。京都駅よ?」

唯依「それも分かってる!」

栴納「その格好はそのちょっと、気合入りすぎじゃない?」

唯依「おかしい事は何もないよお母さん」

唯依「ちょっと美容院に行って髪を整えて、」

唯依「ちょっと気合入れてメイクもして、」

唯依「服やスカートもちょっと良いものを買っただけなんだから」

栴納(とてもすぐそこまで実の兄を迎えに行くようには見えないわ…)

栴納(その胸元の開いた服や短いスカート、まるで初デートよ…)

栴納(とはいえ、口出ししないと言ったのも私ですのもね…)

栴納(はあ)


唯依「じゃあ行ってきます!!」


※※※

――京都市内、路上


唯依「お母さんの言いたいことも分かるけど、これは私には大事な事なのだ!」

唯依「せっかく久しぶりにお兄様に会うのに、普段着は嫌だ!」

唯依「せめて今日くらいはとびきりのオシャレをしてお兄様を出迎えてやる!」

唯依「その後はまっすぐ家に帰ったりなんかしないで市内を一緒に散策しよう」


唯依「そう、前みたいに」

唯依「一緒に京都タワーにのぼったり、神社やお寺に行ったり、御所の中を散歩したり」

唯依「おいしいご飯を食べてお茶して」

唯依「四条河原町でショッピングもいいな」

唯依「まるで恋人のような雰囲気になって!」

唯依「”唯依、しばらく見ない間に女らしくなったな”なんて言われちゃったり…」

唯依「その後は?その後は……」

唯依「でゅふふふふふふふふふふふ!wwwww」



通りすがりの子供「お母さん、あのお姉ちゃんなんか変だよ」

そのお母さん「しっ、指差しちゃいけません!」

※※※

――京都駅改札前


唯依「おっ、多分あの電車だな」

唯依「ドキドキしてきた」

唯依「最初の一言はなんて言うのが良いだろうか」

唯依「劇的な再会を演出して何も言わずにお兄様の胸に飛び込むか…?」

唯依「あるいは無邪気さを演出して、おーいと手を振って可愛らしく駆けていくか…」


唯依「ああっ、いかん、もうドアが開いた!」

唯依「直に改札(こっち)に来てしまう!!」

唯依「よ、よし、こうなったらシンプルに、自然に出迎えよう! 妹として!」

唯依「…」

ドキドキ

唯依「あっ、いた…!! 来た…!! お兄様…!!」


唯依「…ん?」

唯依「ふぇ?」

唯依「えっ?」

唯依「ええええええええええええっ!!!!!!?????」


※※※

――京都駅構内


クリスカ「すまない。急に私も日本に行きたい等とわがままを言ってしまった」

ユウヤ「いいって。分かってる」


ユウヤ「論文が予定より早く出来ちまったのはいいことだ」

ユウヤ「お陰でラトロワ教授もご満悦で、俺もこうやって休みを一緒に過ごせる」

ユウヤ「俺も、クリスカには俺の家族を知って欲しいしな」

クリスカ「けれど突然連絡も無しだと、ユウヤの家族も驚くのではないか…?」

ユウヤ「驚くかも知らねえけど、喜びこそすれ嫌うなんてことはないさ」

ユウヤ「クリスカは俺の大事な女(ひと)なんだからな」

クリスカ「ユウヤ…」


※※※

――京都駅改札前


唯依「にゃ、にゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ!?」

唯依「にゃんだ!? いや、もといっ!!」

唯依「なんだっ!? あの女はッッッッ!!!???」

唯依「お兄様と…並んで…!!」

唯依「あろうことかお兄様が肩を抱いているだとぅ!!!???」

唯依「お、おかしいッッ!!」

唯依「これは夢なのだ!!」

唯依「お兄様が私以外の女にあんなことをするなんて…!!!」


※以外のとか言ってますが、妹ちゃんは、やって貰ったことなんかありません。


※※※

――京都駅改札内


ユウヤ「おっ、いた。出迎えに来るって言ってた通りだ」

クリスカ「あの娘(こ)がそうか」

ユウヤ「ああ。ずっと話してた俺の妹の、唯依だ」

クリスカ「綺麗な娘だ。仲良くなれると良いが…」

ユウヤ「なれるさ。将来はお前の義理の妹になるんだから。さ」

クリスカ「あ、ああ…」


※※※

――京都駅改札前


唯依「待て…、落ち着くのだ私…!」

唯依「もしあれがお兄様の恋人だったらどうする…!?」

唯依「そうだとしたら、私は悲しい…!」

唯依「が!!!」

唯依「ここで私が失態を犯せば、お兄様の顔に泥を塗ることになる…!!」

唯依「恋人に、こいつの妹はダメだななんて思われたらどうする…!!」

唯依「私はともかく、お兄様の名誉は守らなければならないのだ!!」


※※※

ユウヤ「よ、唯依。出迎えサンキュー。久しぶりだな」

唯依「お、おおおおおお、おに…」

唯依「…」

唯依「兄、さん。おかえりなさい」

ユウヤ「おう、ただいま」

唯依(本当ならとっくにお兄様の胸に飛び込んでいたかったのに…)

唯依「時に兄さん、そちらの女性は…?」

ユウヤ「ああ、紹介する。俺のユーコン大学の同級生で、ロシアから留学して来てる…」

クリスカ「クリスカだ。宜しく唯依さん」

唯依「!! 私の名前を?」

クリスカ「アラスカではユウヤからはよくお話を聞いていた」

唯依「兄さんが私の話を…?」


クリスカ「とても可愛くて、よく出来た妹さんだと」

クリスカ「とても大事にしていると聞いていた」

唯依「か、可愛くて…よく出来た…、可愛くて… ///」

ユウヤ「クリスカ、本人に面と向かって言うのはやめてくれ。恥ずかしいから」

クリスカ「ああ、すまん。そういうものなのか」

クリスカ「私にもロシアの実家に妹がいるのだが、その辺りの勝手は違うのだな」

唯依「私は別に構いませんが…、ぽっ」

クリスカ(けれどこの娘へのアプローチは喜んで貰えたようだ。よかった)


ユウヤ「とりあえず立ち話もなんだ。お茶でも飲もうか」


※※※

―――京都タワー前の喫茶店


唯依「クリスカさんは日本語がお上手ですね」

クリスカ「そうか…? ありがとう」

唯依「アラスカで使うために習われた訳ではないですよね?」

クリスカ「実家ではロシア語、学校ではユウヤ共々英語を使っている」

クリスカ「だが将来日本で暮らすことも考えて勉強したのだ」

唯依「日本で?」

クリスカ「ユウヤに、学校を卒業したら、日本で一緒に住まないかと言われてな」

唯依「兄さん。それって」

ユウヤ「ああ…、そうだ」

ユウヤ「クリスカは俺の恋人なんだ」

唯依「―――――!!!!!」

唯依(やっ………、ぱり………)

ユウヤ「真剣なんだ、俺」

唯依「そうなんだ…」


唯依(クリスカさんか…。でもこんなに綺麗で、人が良さそうな外国の人…)

唯依(何よりもお兄様の目が真剣そのもの)

唯依(私に出来る事はもう本当に、)

唯依(二人を祝福することしかないのか……)

クリスカ「!? 唯依さん、どうした!?」

ユウヤ「お前大丈夫か!?」

唯依「えっ…?」

ユウヤ「凄い涙出てきてるぞ!?」

唯依「あっ…、ごめん兄さん。先に帰る」

ユウヤ「唯依!?」

唯依「お父さんとお母さんには伝えておくから…」

唯依「兄さんはゆっくりこの辺りを見物しながら、クリスカさんと来てほしい」

ユウヤ「ああ…」

クリスカ「大丈夫か唯依さん、もしかして私が何か失礼を…」

唯依「そういうことではありません。失礼しますッ!!」


ダダダダッ!!

※※※

――京都市内


クリスカ「本当に私のせいではないのだろうか…」

ユウヤ「お前のせいじゃないさ。難しい年頃だからな、色々あるんだろう」

クリスカ「彼女はハイスクールの2年生だったか?」

ユウヤ「ああ、17歳だ」

クリスカ「他に兄弟は?」

ユウヤ「俺だけだ。二人兄妹」

クリスカ「姉も妹もいないのか…」

ユウヤ「どうかしたのか?」

クリスカ「その年の女は、両親にすら悩みを話すことを躊躇ってしまう事もある」

クリスカ「早く仲良くなれれば、姉として相談に乗れるかもしれないのに、と思ってな」

ユウヤ「お前…」

クリスカ「すまない。出過ぎた考えだった。気が早いにも程があるな」

ユウヤ「そうじゃなくて」

クリスカ「?」

ユウヤ「俺、やっぱりお前を好きになって良かったよ」

抱きっ


クリスカ「ちょっ、ユウヤ、人が見てる…、あっ…」

ちゅっ

※その後市街地の真ん中に喝采が湧きました。


※※※

――その夜篁家、唯依の私室


唯依(クリスカさんの急な来訪にお父さんとお母さんは驚いたけれど、)

唯依(お兄様が元気であったことを喜び、)

唯依(お兄様とクリスカさんとの間も凄く祝福した)

唯依(私もそれは同じだ)

唯依(贈った”おめでとう兄さん”という言葉に嘘偽りはない。ない、はずなんだ…)


唯依(けれど辛い)

唯依(クリスカさんは凄く良い人で、あのような義姉が出来ることは歓迎するべきはずなのに、)

唯依(それを絶対に認めたくない自分もいる)

唯依(今日、お兄様はご飯を食べた後クリスカさんと出て行った)

唯依(クリスカさんは市内のホテルに逗留するというのだが、)

唯依(お兄様もこっちにいる間はホテルに泊まるという)

唯依(若い恋人同士の事、つまりはそういうことだろう)

唯依(お父さんにもお母さんにも引き止める気はまったく起きなかった)

唯依(今頃何が行われているか…)

唯依(もうそれが分からない年でもないのだ、私は)


※※※

――同時刻、京都市内ホテル、クリスカの部屋。


クリスカ「ああっ、いいっ…、ユウヤッ、ユウヤッ!!」

ユウヤ「クリスカ、クリスカァッ!!」

ギシギシッ!


クリスカ「ユウヤ、キス…、キスして…」

ユウヤ「ああっ…!!」

クリスカ「んっ…!」

チュッ、チュプッ、チュプッ…。

クリスカ(ユウヤのキス、激しい…!! あそこももうダメッ、限界、イ、イクッ!!)

ユウヤ「ぷはっ…! ク、クリスカ出すぞ!! 膣内で出す!!」

クリスカ「出してッ!! ユウヤの熱いの膣内に出して!!」

ドピュドピュドピュッ!!


クリスカ「んああああああッ!! あ、熱いッ!! ユウヤの熱いの入って来る!!」

ユウヤ「良いぜ、クリスカ…!!」


※※※

――同時刻篁家、唯依の私室

唯依「…今頃二人とも、幸せそうにシているのかな…」

くちゅっ…

唯依「んっ…」

唯依「私は…はぁ…」

唯依「こんな、気持ちで…はぁ…」

くちゅくちゅ…

唯依「一人で惨めに、やっているのに…」

唯依「んっ…ふぅんっ!!」

ビクッ!!

唯依「あああ…、」

唯依「お兄様ぁ………」


※※※

――週明けの朝、唯依の教室


志摩子「おはよー」

和泉「おはよ」

上総「おはようございます」


志摩子「え? ゆ、唯依!?」


唯依「」ぐったり。

安芸「返事がない。まるで屍のよーだ」

志摩子「どうしたの!? 週末にはあんなにウキウキしてたのに!」

和泉「どうもお兄さんが彼女を連れて帰ってきたらしいのよ」

志摩子「ああ、それで…」

上総「…」


安芸「そりゃブラコン唯依ちゃんにはキツい展開かもしんないけどさぁ」

安芸「これって何時かは来る試練だった訳じゃん?」

安芸「悩んでてもしょうがなくね?」


和泉「あんたよく薄情なこと言えるわね!」バンッ!

和泉「私は唯依の気持ち分かる!!」

和泉「年頃の女の子の恋愛感情は理屈で成り立ってる訳じゃないのよ!?」

安芸「そういうのめんどくさいよなー」

和泉(こいつも17歳の乙女のはずなのに…!)

志摩子「まあでも、言い方は悪くても、」

志摩子「安芸の言う通りそれは唯依にしか解決できない問題であるのは確かなのよね…」

和泉「まあ、それは…」


上総「その通りです」

上総「篁さん、立ち止まっていては何も解決はしません」

上総「潔く彼女の女性にお兄さんを譲るか、禁断の愛を貫くのかはっきりなさい」

上総「このままうじうじなさっていたのでは、」

上総「その隙を見て私が篁さんをものにしてしまいますわよ」

志摩子「!?」

和泉「!?」

安芸「!?」


上総「ああ、最後のは冗談ですよ」

安芸「本気かと思ったっつの!!」

上総「そんなはずないでしょう」

上総(実は少しだけ本気でしたけど)

ガラガラッ

安芸「お、真田せんせーが来た」

晃蔵「ほう石見。少しは口の利き方を理解したか」

安芸「へっへ~」

晃蔵「では山城」

上総「はい。起立、礼」

ガタッ

「「「「 おはようございます 」」」」

上総「着席」

ガタンッ

晃蔵「今日で1学期が終了する」

晃蔵「来年受験であることを考えると、高校生として遊べる最後の夏だ」

晃蔵「楽しむなとは言わん。むしろ楽しい思い出はたくさん作れ」

晃蔵「だがハメを外し過ぎんようにはしろ。いいな!」


唯依(そう、明日から夏休みなのだ)

唯依(皆は凄く楽しそうにしているのに、)

唯依(私の心は沈んだままだ………)

唯依(…)

唯依(どうしよう)


※※※

――後日、唯依の私室


唯依(あれから私のもやもやとした夏休みは始まった)

唯依(前もって考えていたお兄様とのラブラブな夏休みは実現しようはずもなく、)

唯依(むしろお兄様はクリスカさんとラブラブしている)


唯依(尤も私を意図的にはぶるような真似はせず、)

唯依(予定さえ合えば私も交えて3人で遊ぶというのもざらだ)

唯依(クリスカさんは初めての日本を楽しんでいる)


唯依(クリスカさんは本当に良い人だと思う)

唯依(まだ大学生だというのに浮ついた気分を感じさせない大人の女性で、)

唯依(何をするにしてもお兄様を立て、私の事も気遣ってくれる)

唯依(お兄様にとって理想の伴侶であり、私にとって理想の義姉なのではないか、)

唯依(日が経つに連れてそんな気分が増してくる)

唯依(だがその一方で、)

唯依(私の中に無理やり抑え込んでいる、私の汚い部分が、)

唯依(溢れそうになっているのも自分で感じる)


唯依(私は嫌な女なのだろうか?)


唯依(心の底、根っこではお兄様を誰にも渡したくないと思っているのに、)

唯依(それでも家族の前では、良い子を演じているというのは…)

ピリリリリリリッ

唯依「あ、ピッチ(PHS)が…!!」

唯依「はい、篁です」

クリスカ『唯依さんか。クリスカだが…。夜分にすまないな』

唯依「クリスカさん。どうしましたか?」

クリスカ『明日いつもの場所で会えないか。二人きりで…』

唯依「!?」


唯依「兄さんは呼ばなくて良いのですか?」

クリスカ『ああ。唯依さんと二人だけで話をしたい』

唯依「はぁ、分かりました。三条のドゲザ像前で…」

ピッ

※京都の三条駅前、高山彦九郎の像は学生達の待ち合わせスポットです。
 高山彦九郎に関心がない人も、彼が御所に拝礼している姿を像にしたそれは
 「ドゲザ像」と呼び、親しんでいます。

唯依「どういうことだ…? 二人だけとは…」

唯依「たまには女同士で遊びたいということだろうか?」

唯依「だが、それならば付き合おう」

唯依「兄妹共々お世話になっている方だからな」

※※※

――京都市内、三条駅前


クリスカ「唯依さん、ここだ」

唯依「お待たせしました、クリスカさん」

クリスカ「待ってはいない。それよりも突然だったが、ありがとう」

唯依「いえ」

クリスカ「とりあえず何処かのお店に入ろうか」

――京都市内、三条大橋付近の喫茶店


クリスカ「今日唯依さんをお呼びしたのには訳がある」

唯依「訳?」

クリスカ「唯依さんは…」

唯依「?」

クリスカ「私に何か、気に入らない所があるか…?」

唯依「!!??」

クリスカ「初日から感じていたことでもあった」

クリスカ「最初は私に関係無い悩み事なのかとも思ったが、」

クリスカ「この1週間程を共に過ごす中で、」

クリスカ「唯依さんが私のことを慕ってくれていると感じる一方で、」

クリスカ「何か私に対して、どうしようもない不満を抱えているような、」

クリスカ「そんな気がしてならないのだ」

唯依「…」

クリスカ「私は貴方との付き合いは薄い」

クリスカ「私はユウヤを通してしか日本の文化を知らない」

クリスカ「考え方も日本人とは違う部分もあると、思う」

クリスカ「けれど、」

クリスカ「貴方が良い娘であることは疑いようがないと思っている」

クリスカ「貴方とは良い関係を築き、続けていきたいとも…」

クリスカ「だから何かあるのなら、言って欲しいのだ」

クリスカ「直せるところは努力して直していきたい」


唯依「そう、か―――」

唯依「………」

唯依「なら」

クリスカ「やはり何かあるのか?」

唯依「ああ、ある…」

※※※

唯依(この時私は、自分の中の闇のコントロールを完全に失ってしまっていた)

唯依(クリスカさんはとても良い人だ。理想の義姉になりえるだろう)


唯依(それが分かっていても)

唯依(いや、それだからこそ)


唯依(私はそれまでに抱いていた彼女への恐れ、危機―――、)

唯依(つまりお兄様を奪われても決して文句が言えない、)

唯依(自分に対して言わせることができないということが分かっているから、)

唯依(そうなる前に暴走してぶっ壊してしまおうと、)

唯依(ふいに思ってしまったのかもしれない……)

唯依(私は1秒前までは完全に沈めていた彼女への嫉妬を)

唯依(猛烈に燃やし、放ってしまった)


―和泉「年頃の女の子の恋愛感情は理屈で成り立ってる訳じゃないのよ!?」


唯依(和泉のあの台詞は、実に正しかったと思う…。良いか悪いかで言えば悪いのだけど)


※※※

唯依「邪魔なんだ…!!」

クリスカ「唯依さん…?」

唯依「私にとっては、貴方は邪魔なんだ!!!」

クリスカ「――――!?」


唯依「貴方さえいなければ!!」

唯依「今頃私は、お兄様と一緒にいられた!!」

クリスカ「そ、それは、この夏にユウヤと予定を入れていたと…? それなら」

唯依「そういうことじゃない!!」

唯依「貴方がこの世に存在していなければ、と言ったんだ!!」

クリスカ「存……在………」

唯依「教えてやる!!」

唯依「私はな!!」

唯依「兄が、実の兄が!!」

唯依「ユウヤが大好きなんだ!!」

唯依「子供の頃から愛していたんだ!!!!」


ざわっ…!!と周囲からざわめきが起こった。

クリスカ「愛…していた? し、しかし、貴方は、ユウヤの妹だと…」

唯依「妹ならば何が悪い!?」

唯依「偶然好きになった男が兄だった、それだけなんだ!!」

唯依「けれど世間はそれを忌む!!」

唯依「ブラコンだとか禁断の恋などという中身の無いレッテルを貼るんだ!!」


唯依「もし貴方が私の立場だったら…!!」

唯依「もし貴方がお兄様の妹に生まれていて、お兄様を愛してしまったら…!!」

唯依「それを咎める何者かに、大人しく従うことが出来るか!!??」

クリスカ「それは………」

クリスカ(軽々しく出来るなどとは言えない…)

クリスカ(彼女の怒り、憤りは真実なんだ)

クリスカ(今までの彼女の人生は、ユウヤへの想いとの戦いだったのだろう)

クリスカ(ユウヤを想う自分、近親の恋を許さない周囲の目…)

クリスカ(長い、終わりの見えない戦いだったに違いない)


クリスカ(その辛さはきっと、いや確実に、彼女の身になってみなければ分からない事だ)

クリスカ(私には彼女の感情をその身になって知ることはできない…)


クリスカ(私はどうすればいい…?)

クリスカ(分からない…!!)

クリスカ(ユウヤを、諦める…?)

クリスカ(だが私がユウヤを諦めて、この娘は幸せになれるのだろうか…?)

クリスカ(第一、私だってユウヤの事は本気で…)

唯依「…すみませんでした」

クリスカ「えっ?」

唯依「こんな事を言っても、クリスカさんを困らせるだけでした…」


唯依「分かっているんです」

唯依「これはわがままで、」

唯依「異端なのは私の方だと」

唯依「お兄様は真剣に貴方を愛しています」

唯依「貴方のお兄様への愛も然り」

唯依「そこに横恋慕して割り込む資格は、妹だろうと他人だろうとあるはずが無い」

唯依「貴方達を前にしては、私も他の人と同じ…」

唯依「妹でなかったら、等という仮定はまるで意味を持ちません」

クリスカ「唯依さん…」

唯依「でもどうしてでしょう…?」

クリスカ「…」

唯依「分かっているのに…」

唯依「こんな簡単な理屈はとっくに理解できているのに…」

唯依「お兄様の事を思うと…」

唯依「それでも…」

唯依「涙がまったく止まってくれないのは………!!」

唯依「うわああああああああああん!!!!」

クリスカ(唯依さん…)


※※※

――夜、ホテルのクリスカの部屋


クリスカ(あのままではとても唯依さんを帰すことはできなかったので、)

クリスカ(一度ホテルまで連れて帰って、顔を洗って、落ち着いて貰って、)

クリスカ(準備が終わってから帰って貰った)

クリスカ(家まで送って行こうとも言ったけれどそれは聞いて貰えなかった…)


クリスカ(私はどうすればいい…?)

クリスカ(ユウヤは今日、日本の友達に会いに行っていてもうすぐ帰って来る)

クリスカ(ユウヤには話した方がいいか…?)

クリスカ(いや、それでは今日女同士で会った意味が無い)

クリスカ(唯依さんとの信義を裏切ることになりはしないか…?)

クリスカ(どうすれば…!?)

――その後。


ユウヤ「よ、クリスカ。ただいま」

クリスカ「ああ、おかえりユウヤ。日本の友達には会えたか?」

ユウヤ「ああ。楽しかったぜ。ん?」

クリスカ「な、なんだ?」

ユウヤ「何かあったのか」

クリスカ「え、いや、それは…」

ユウヤ「あったんだな」

クリスカ「…」


※変な所で勘の良い彼氏にはあっさりバレた。

かくかくしかじか

クリスカ「という訳なのだが…」

ユウヤ「はあ!? 唯依が俺の事を!!??」

クリスカ「驚くとは思う。だがおかしいとか、変とかは言わないでやってくれ」

クリスカ「ユウヤにそう言われることが、唯依さんには一番悲しい」

ユウヤ(いや、だっておかしいだろ。変だろ)


ユウヤ「俺達は兄妹だぞ!? 母親は違うけど、同じ父親の血を引いた兄妹!!」

クリスカ「だが唯依さんは真剣なんだ…。そのことで、とても苦悩している」

ユウヤ「そうなのか!?」

ユウヤ「いや確かに仲の良い兄妹ではあったけど…そんな…!?」

クリスカ「あの娘はとても良い娘だ」

クリスカ「世間的におかしい事をしていても、それをおかしいと思える常識もある」

クリスカ「自分に気に入らない立場の人間が現れても淑女として接せられる理性もある」

クリスカ「だからこそ、」

クリスカ「そのキャパシティを越えてしまった時に彼女にかかる負荷が心配なんだ…」

ユウヤ「あいつが良い妹だってのは俺が一番よく知ってるよ!!」

ユウヤ「俺の自慢の妹なんだ!!」

ユウヤ「けど、それとこれとは違うだろ!?」

ユウヤ「だいたいお前らが言ってることは、」

ユウヤ「今のクリスカの、彼女って立場に、あいつを据えられればって事じゃないのか!」

ユウヤ「俺はそれは御免だ!!」

ユウヤ「お前の気持ちはどうなんだよ!?」


クリスカ「分かっている…!!」

クリスカ「私だってユウヤと離れたくはない!!」

クリスカ「何のために崔との死闘を制した思っている!?」


ユウヤ「あ…、それはその通りだった。すまん、言いすぎた」


※崔亦菲は同じユーコン大学の同級生。
 クリスカの恋敵だった。
 料理対決やら水着コンテストやらの壮絶な恋愛バトルの果てにクリスカは勝利した。

ユウヤ「とにかく…。俺は今から家に行く」

ユウヤ「この問題はどうやら、俺とあいつの問題らしいしな」

ユウヤ「お前はここにいてくれ」

ユウヤ「俺がケリをつける」

クリスカ「分かった。いってらっしゃい」

ユウヤ「ああ、いってきます」


※※※

――篁家


ユウヤ「ただいま」

祐唯「ユウヤ?」

栴納「ユウヤ、どうしたの。クリスカさんは?」

ユウヤ「父さん義母さん。今はクリスカの事より、唯依の方が大事なんだ」


祐唯「!!」

栴納「!!」

ユウヤ(このリアクション…!)


ユウヤ「知ってたのか…? その、唯依の秘密」

栴納「ええ…、というより」

祐唯「お前はよく今まで気付かなかったな…」

ユウヤ「うるせえ! 部屋だな!?」

ずかずかずか


栴納「あなた…、大丈夫でしょうか?」

祐唯「分からんが、あの子達が決着をつけるというのであればそれは良いことだ」


<”兄さんは出て行って!!””待ってくれ、話を…うわあ!!”


栴納「失敗した様ですね」

祐唯「まったくあいつめ」


※※※

――再びホテル


クリスカ「失敗したのか?」

ユウヤ「よく分かったな」

クリスカ「顔を見れば分かる」

ユウヤ「やっぱり出てたか」

クリスカ「もうどうしようも無いのか?」

クリスカ「私達の関係は、このいびつな形を保ったままずるずる進んでしまうのか…?」

ユウヤ「いや、そうはさせない」

クリスカ「!」

ユウヤ「あいつもそれはダメだと思ったんだろう」

ユウヤ「だから明日、改めて話をする約束はつけてきたんだ」


クリスカ「そうか。明日お互い気持ちを固めた上で話をするのだな」

ユウヤ「その通りだ。場所は…」

※※※

――翌日夕方。三条大橋下、鴨川沿い


唯依「待ってたぞ、おに…兄さん」

ユウヤ「待たせたな唯依」


ユウヤ(最初にまず謝った方がいいか?)

ユウヤ(今までのお前の気持ちに気付かなくてごめん、と)

唯依「その言葉は言わなくていい」

ユウヤ「!」

唯依「気付く気付かない以前に、そういう発想が出なくて当たり前だ」

唯依「だって私達は兄妹なんだから」

唯依「少し寂しかったけど、もうそれはいい」


唯依「今から私は一言だけ兄さんに自分の気持ちを言う」

唯依「それに答えてくれるだけで、全てが終わる」

ユウヤ「分かった」

唯依「…」ドキドキ

ユウヤ「……」

唯依「………」ドキドキドキ

ユウヤ「……」

唯依「…………」ドキドキドキドキ

ユウヤ「……」

唯依「……………ッ!!」


すうっ…

唯依「好きです兄さん!!!! 唯依と結ばれてください!!!!!」

唯依「はぁ、はぁ、はぁ………」


ドキドキドキドキドキドキドキドキッ!!


唯依(い、言ってしまった…!!)

唯依(とうとう、私は言ったんだ…!!)

唯依(物心ついた頃から抱いていた感情!!)

唯依(10数年間ずっと胸の内に閉じ込め続けて誰にも相談とか出来なかった、)

唯依(実の兄を愛しているのだという、恋心を…!!)

唯依(とうとう、とうとう言った…!! 大声で、全部吐き出した…!!)


唯依(お兄様、返答は…!?)

チラッ

ユウヤ「ごめん。俺には好きな人がいるから、唯依の想いには答えられない」

唯依「うっ…」

ユウヤ「唯依」

唯依「あっ、あはは、あははははははは!!!」

ユウヤ「おい、唯依!?」


唯依「すっきりした!! 兄さん、私もう大丈夫だ!!」

ユウヤ「はあ?」

唯依「頭の中では無理って分かってた」

唯依「後はどう決着つけるかって思ってたけど、」

唯依「こんだけはっきり想いを伝えたんだから」


唯依「それでフラれたっていうなら、私も踏ん切りがついた」

唯依「私は”お兄様”を卒業して、新しい恋を探しに行くことにする」

ユウヤ「そ、そうか、頑張れよ」

唯依「兄さん」

ユウヤ「ん?」

唯依「クリスカさんの……お義姉さんの事、大事にしてあげて」

ユウヤ「お前、それじゃ」

唯依「とっても良い人だから」

唯依「お義姉さんがいないと、多分今の状況は生まれてないし」

ユウヤ「分かった。というかそのつもりだ」

ユウヤ「あいつは俺が一生面倒見ていく」

唯依「じゃ、今日はありがとう兄さん」

ユウヤ「改まった礼なんかいらねーよ。俺達は兄妹だぞ」

唯依「ふふっ、その通りだ」


※※※

2週間程の滞在を経て、ユウヤとクリスカはまたアラスカの空へと旅立っていった。


――京都市内、夏祭り会場


志摩子「あれ、和泉は?」

安芸「あいつは忙しいってさー」

志摩子「ああ、彼氏さんとか」

安芸「しっかしまぁ」

唯依「えっ?」

安芸「唯依が元気になってよかったよかった」

志摩子「本当ねー。どうなるんだろうってずっと心配してたけど」

唯依「失恋のショックを真正面から受け止め、それに打ち勝つことで女は強くなるのだ」

安芸「おーおー、言うねえ」

志摩子「でも本当に良かった。で、新しい出会いは見つかりそう?」

唯依「ううん、それはまだ。ゆっくり探すことにする」

上総「けれど篁さん」

上総「先ほどからの物言いでは、」

上総「お兄様への想いは禁断の恋だったと暴露したのに等しくてよ」

唯依「もうそれは隠さない。私の初恋の相手は間違いなく兄さんだ。兄さんだった」

上総「つまり二度目の恋が禁断のものになる可能性もなくはない、と?」ハァハァ

唯依「山城さん……まさか…」

上総「冗談です」シレッ

唯依「冗談でもあまりびっくりさせないで欲しいんだが…」

上総(半分は本気でしたけどね)

唯依「兄さん、クリスカさん、お幸せに」

唯依「私はこんな調子ですが頑張っていきます」


おわり。

もし読んでくださった方がいたら感謝を。
めんどくさくて台本形式で書いてしまった。
いつかちゃんとした小説形式にしてどっかに書きたい。

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