男「あなたはわたしと婚約関係にありますか」女「いいえ」(24)

男「あなたはわたしと婚約関係にありますか」

女「いいえ」

男「だけどあなたとわたしは同じ指輪をはめている」

女「それは結婚指輪ではありません。薄く切られたちくわです」

男「これはちくわですか。わたしにはそうは見えないけれど」

女「そういうものです」

男「あなたはわたしと付き合っていますか」

女「いいえ」

男「だけどわたしとあなたはおんなじところに住んでいる」

女「ルームシェアです」

男「ワンルームなのに?」

女「今朝起きたら壁が無くなっていたんです」

女「ちなみに私は隣に住んでいるものです」

男「これはこれは」

女「どうもどうも」

男「ところでこの家、一戸建てですよね」

男「だまされましたか」

女「だまされた!!理不尽な暴力!理不尽な暴力!」

男「殴らないでください」

男「あなたはわたしとデートにでかけたことがありますか」

女「いいえ」

男「水族館に行ったようですよ、写真がある」

女「それは私ではなく、ジンベエザメです」

男「間違えました」

男「でもこのジンベエザメはとても可愛らしいですね。」

女「やっぱりわたしです」

男「どうりで肌が青くないわけだ」

男「あなたは灰色がきらいですか」

女「はい」

男「なぜですか」

女「私のきらいなものは、たいてい灰色なのです」

男「例えば?」

女「曇った空とか、ネズミとか、あと、あなたの脳みそもきっと灰色です」

男「私の脳はきらわれているようですね」

女「はい」

男「あなたはわたしのことをおぼえていますか」

女「・・・・・」

男「どうしました?」

女「黙秘権を使います」

男「すいません、こちらの黙秘クーポンの有効期限、昨日までなんですよ」

女「そこをなんとか!」

男「だめです」

女「こいつじゃ話にならねえ!店長を呼べ!」

男「タチの悪い客だ!店長――!!」

男「あれっ」

男「ごまかさないでください」

男「あなたはわたしのことを好きですか」

女「いいえ」

男「そうですか、悲しいです」

女「どちらかといえば、愛していますよ」

男「今なら空も飛べるはずです。ちょっと飛んできますね」

女「窓から飛び降りるのはやめてください」

ワロタwwww

男「あなたは記憶喪失ですか」

女「いいえ」

男「本当のことを教えてください」

女「では、私からもあなたに3つ質問をしましょう」

男「わかりました」

女「まず一つ目」

女「あなたはわたしのことをおぼえていますか」

男「黙秘権は使えますか」

女「すいません、こちらのクーポン当店のものではないんですよー」

男「そうなんですか!恥ずかしい!!」

女「ははは、なんだこいつ!なんだこいつ!」

男「指を指して笑うのはやめてください!

ワロタ

女「つぎに二つ目」

女「あなたは記憶喪失ですか」

男「・・・いいえ」

女「嘘ですね」

男「嘘です」

女「やっぱり、あなたには記憶がない」

男「・・・・はい。朝起きたら何も覚えていませんでした。
  この部屋も、となりで寝ていたあなたのことも」

女「何も?」

男「ええ、何もかも」

>>7>>10 ありがとう!やっぱり誰かに何か言ってもらえるのはすごいうれしい

女「では、最後の質問を」

女「あなたは、わたしのことを好きですか」

男「・・・・いいえ」

女「ですよね」

男「すみません」

女「いいえ、あなたが謝ることはない」

女「代わりと言ってはなんですが、
  左手の薬指にはまったちくわを食べてください」

男「・・・・わたしには、婚約指輪にしか見えないのだけれど」

女「それはちくわなんですよ、だから飲み込んでください」

男「そういうものですか」

女「そういうものっていうことにしといてください」

男「・・・・なぜ泣いているんですか?」

女「泣いてません、こっち見ないでください」

男「あなたはまだわたしに隠しごとをしていますね」

女「どうしてわかったんですか」

男「起きた時、体中がとても痛かったんです。
  見ると全身にあざややけどの痕が、そしてとなりには、
  わずかに血のついたフライパンを持ったまま寝ている、あなたが」

女「それで?」

男「記憶のないわたしでも分かります。
  あなたは、わたしに暴力をふるっていた」

女「例えば?」

男「フライパンで叩いたり、熱湯をかけたり。
  それらなら、小柄なあなたにでもできるでしょう」

女「・・・・ごめんなさい。あなたは耐え切れなくなって、
  すべてを忘れることを選んだのでしょう、きっと」

女「わたしは壊れているんです。歪んでいるんです。
  だから、いびつな形でしか、あなたを愛せなかった」

女「あなたはここにいるべきではない。きっとわたしはまた、
  あなたを傷つける。だから、逃げてください」

男「誰から?」

女「わたしから」

男「・・・・いやですよ、ここはわたしとあなたの家です」

男「わたしには記憶がありませんが、
  あなたのことが嫌いではないみたいです」

女「あなたに暴力をふるっていたのに?」

男「そういうものです」

男「さあ、着替えて指輪を買いに行きましょう。

今度はちくわではなく、本物の婚約指輪を」

女「・・・・免罪符は使えますか」

短いですが、これで終わりです。
見てくださった方、ありがとうございました。

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