『知らなかった日常』 (36)

モバP「お前こそが、俺のすべて」
というスレの続きを自分なりに書いてみました。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1398355047

書き忘れましたが、胸糞要素は微妙です。

「ほら、舐めてよプロデューサー」

そう言われ彼女の足を丁寧に舐める。

「うわ、キモ。 本当に舐めてる」

「凛は優しいな~。 こんな奴に足を舐めさせてやって!」

言葉と同時に俺の腹に奈緒の蹴りが入る。

痛みが走る。 空気が口から飛び出す。

それでも舐めるのをやめない。

いや、やめてはいけない。

「そうだよプロデューサー」

「私がいいって言うまでやめちゃダメだから」

これが今の俺の日常。

トライアドプリムスのプロデューサーになった俺の日常。

卯月が移籍をした後、俺はトライアドプリムスのプロデューサーになった。

理由は俺にプロデュースするアイドルがいなくなったから。

そして

凛が俺を指名したからだ。

「プロデューサーは頼りになるから」

そう社長に自分から言いにいったのだ。

凛が俺を頼ってくれるなら。

そうやって卯月のことを忘れて。

しかしそんな幻想はすぐに消えた。




「ほら、次は右足」

左足を舐めおえると、次の命令がくる。

それに従い舐めようとする。

だが、その前に凛の右足が俺の顔に蹴りこまれる。

奈緒の蹴りよりも痛かった。

いつもならここからリンチになるのだが、

今日はここで終わった。

なぜなら

「凛、ストップ」

「え、もうそんな時間なの?」

これから彼女たちは仕事だからだ。

「これからいいところだったのに」

「まぁまぁ」

「じゃ、行ってきます」 

「「「プロデュサー」」」

三人の声が微かな意識の中で聞こえる。

俺は三人ついていかない。

いや、いかせてもらえない。

だから

プロデューサーの俺はここで静かに目を閉じた。

意識が途切れてから30分ほどしてから目が開く。

いつの間にか事務所には千川さんがいた。

「いつまで寝てるんですか」

「......すいません」

「仕事してください」

「......はい」

弱々しい返事をして席に戻る。

あいつが来てからみんな変わった。

良くも悪くも。

そんなことを考えながら仕事を始める。

特になんの変哲もない仕事。

書類をまとめるだけの仕事。

なのに、俺は

「ここ間違ってる」

「......すいません」

間違える。そして

バシッという音と共に殴られる。

「何回すれば気が済むんですか?」

「......すいません」

「学習してください」

バシッ

殴られる。

「......はい」

「早く直して」

こんなのも日常になった。

席に戻り間違えた箇所を直す。

幸い、直す箇所は少なかったのですぐに終わった。

「......できました」

「確認します」

書類が俺の手から千川さん手に移る。

確認がすぐに終わる。

「いいです」

バシッ

それでも殴られた。

でも、もういいや。

「......ありがとうございました」

そう言って席に戻ろうとすると、

「おい」

後ろから声が聞こえた。

「なんで私があなたをいじめてるか分かってますか?」

「......仕事ができないから」

質問に答える。

「違う」

「そんな理由なら私はあなたに仕事の仕方をアドバイスします」

「他は?」

少しだけ考えるが何も思いつかないので

「......わかりません。 何でですか?」

逆に質問をする。

「情けないから」

答えはすぐに返ってきた。

「あなたは女に蹴られたり、殴られたりして悔しくないんですか?」

千川さんは大声で怒りながら俺に近づいてきた。

大声を聞いて腰が抜けてしまう。

「そういう所だよ」

「後輩に負けても何もしない」

「何だよ」

「前はあんなに頑張ってたのに」

「惚れた女に逃げられて」

「でも、追いもしないで他の女の言いなりになって」

「何なんだよ」

「ふざけるなよ」

「............」

「黙ってないで何か言えよッ!」

耳が壊れるんじゃないかという程の大声でそう言われた。

だから

「..................俺だって」

「あ?」

無意識のうちに

どこからかわからない場所から声が出た。

「俺だって好きでこんな風に生きてるんじゃないッ!」


「じゃあなんでだよ」

「何がお前をそんな風にしてるんだよ?」

そう問われ答えを探す。

なんで俺は。

なんで俺は弱いままなのだ。

なんで。

そう考えてみると答えはすぐ近くに落っこちていた。

「寂しいから」

「一人ぼっちになるのが怖いから」

「だから......」

目から哀しみがが溢れた。

そんな自分に千川さんは

「なら」

「自分で作れよ」

「居場所なんざ自分で作れよ」

「男だろ!」

「金玉ついてんだろ!」

最高に熱いを言葉をかけてくれた。

「............」

  プチン

何かが切れた。


理性に近い何か。


堪忍袋の緒みたいな何か。


俺が俺であるための大事な何かが。

「......やってやるよ」

「あ? 聞こえねーよ」

「やってやるよッ!」

叫びながら立ち上がる。

拳に力を込めながら。

覚悟を決めて。

「居場所くらい自分で作ってやるよッ!」

「......フッ」

「いい面になったじゃねーか」

そういう彼女は最高に笑顔だった。

「ハァハァ......」

「卯月......」

千......ちひろさんに言われて目が醒めた俺は走っていた。

彼女を探しに。

とりあえず移籍した事務所の前まで来てみたが......

「どうするか......」

事務所に入れるかどうか考えていた。

卯月は人に隠し事ができない素直な子だ。

だから、移籍をした理由を事務所の人に言ってしまってるだろう。

「チッ どうすれば......」

「何がですか?」

「ッ!」

声の方向に体を向けると求めていた彼女はそこにいた。

「卯月......!」

「もうあなたとは何の関係も......」

「すまなかった」

「えっ!」

俺は思いっきり頭を下げる。

その行動に卯月は驚いている。

「俺、一人なのが辛くって」

「だから、凛に認めてもらえたことがうれしくて」

「あんなことしちまった」

「本当にすまない」

ああ、情けない。

でも、これしかない。

卯月を裏切ったのだ。

一番大切だったのに。

だったら、恥も何も関係ない。

まずは謝らなくては。

「で?」

「え」

「それだけじゃないでしょ?」

「ああ」

さすがだ。俺のことをよく分かってる。

頭を上げる。

卯月は憎しみや軽蔑するような表情をしていた。

でもやっぱり、俺には......

「卯月」

「俺ともう一度頂上を目指さないか?」

「頂上?」

「そうだ。 総選挙で一位。 シンデレラガールになりたくないか?」

最高に意味が分からないという顔をしている。

まぁ、そうだろう。

こんな俺だ。

「俺はクズだ」

「仕事もできないし、女に殴られてんのに何もしないし、少し優しくされただけで傾くどうしようもないクズだ」

この気持ちが届くように力を込める。

「でも」

「こんな俺もお前となら頑張れる」

「俺にはお前が必要だ」

「お前しかいない」

「だから」

「また、一緒に頑張らせてくれないか?」

届いただろうか?

卯月の表情は少しも変ってなかった。

駄目か......

あきらめかけていたその時

「もう......」

「もう二度とあんなことしませんか?」

卯月の声が聞こえた。

「ああ」

すぐに答える。

「もうあんなことしない」

「そう......ですか」

まだ迷っているそうだ。

「なら......」

「ならもう一度」

「あなたにプロデュースをお願いします」

「卯月......」

「ありがとう」

心の底からそう思う。

あんなに酷いことをしたのに。

裏切ったのに。

「本当ですよね?」

「大丈夫だ。 一人ぼっちだった俺を救ってくれたお前とならな」

ありがとう。本当に。

そして、卯月がとても大事なことを聞いてきた。

「でも、事務所はどうするんですか?」

「あっ、それならやめてきたから大丈夫」

「はぁ!?」

正確に言うとクビにされた。

ミスばっかりしてる使えない社員はいらない。

ちひろさんにそう言われた。

だから、もうお役御免というわけだ。

そして、俺は卯月を連れて小さな事務所を創った。

ここで、卯月が前の事務所にと少し問題があったようななかったような。

事務所の経営は簡単じゃなかったけど楽しかった。

もちろん、卯月もしっかりプロデュースした。

いきなり有能になった?

人は誰かのためなら自分の限界だって越えられるもんだ。

そして―

「第三回シンデレラガール総選挙、第四位は......島村卯月ちゃんです!」

ここまで来た。

「やりました! プロデューサーさん!」

「ああ。 やったな!」

うれしかった。

「でも、卯月」

「はい! 目指すは」

「シンデレラガールですよね!」

「そうだ!」

「うわ。 キモ」

そこに声が割り込んできた。

声の主は今回のシンデレラガール、渋谷 凛。

「何言ってんの? んなのあんたには無理だよ」

「いや、あんただからじゃないかな?」

「だって、私が一番なんだから」

勝者の余裕、だろう。

けどそんなのは

「ハッ」

鼻で笑ってやる。

「どうした? 頭がおかしくなったか?」

「いや、いつまでそこにいれるかなって」

「は?」

「今は負け犬の遠吠えに聞こえるかもしれないが」

「今に見てろ」

「そこに次にいるのは」

「島村卯月だ」


唖然、どうかしてる、そんな顔をしてる。

きっとバカにしてるんだろう。

「ふーん。 千尋さんに聞いてたけど」

「元に戻ったか」

「いや、それ以上」

ふん、という声が聞こえてきそうな顔をしている。

シンデレラガール渋谷凛。

その口元は笑っていた。

いいライバルを見つけた。

そんな顔だ。

「卯月」

「何、凛ちゃん」

「早く、ここに来なよ」

「まぁ、無理だろうけど」

そう言って彼女は去って行った。

前の凛に戻った......か?

凛が戻ったなら他のみんなもきっと......

「プロデューサーさん」

卯月が頬を膨らませて上目づかいでこちらをみてくる。

どうやら不満があるようだ。

「何、笑ってんですか?」

「へ?」

「変態」

「いや、違うぞ卯月。 これはだ......」

「わかってます」

ならいじらないでくれ。 心臓に悪い。

「プロデューサーさん」

「なんだ」

「私を凛ちゃんと同じ場所へ連れてってくれますか?」

「......」

ニィと笑って言ってやる。

「あぁ」

思いを込めて、願いを込めてこう言おう。

「あそこへ連れてってやるからな卯月」

「ついてこれるか?」

「はい!」

そう返事をする彼女は

とびっきりの笑顔だった。

Fin.

これでおしまいです。

勝手に書いてすみませんでした。

書いてみて感想

卯月って結構可愛かったんだね。 知らなかった。

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