白望「 (29)
深夜。
私は布団の中にいた。
時刻は午前二時。
一時間ほど前に目が覚め、それからいままで、こうして布団の中でまどろんでいた。
眠るでもなく、完全に覚醒するわけでもなく、自分ともう一人の体温で温まった寝床の感触を、茫洋とした意識の中楽しんでいた。
明日に備えて寝るべきだとは思う。
しかし、幼い子供の頃以来、誰かと寝床を共にするのは久しぶりで、その暖かな感触を覚醒した意識下で享受したいという思いが、私の入眠を阻害していた。
眠れそうで、眠れない。
眠りたいような、眠りたくないような。
何にせよ、少なくとも。
不快な感覚ではなかった。
隣で眠る豊音に体を寄せる。
豊音は薄く口を開け、安らかな寝息を立てていた。
その寝顔を見て、私の同衾は豊音にとって安眠を妨げるものではないとわかり、嬉しくなる。
思わず、その頬を指先でつついた」
豊音「っっ! ん~……」
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白望「体を振るわせる豊音。
起きてしまうかもしれない。
少し、強くつつきすぎた。
私が起きているのだから、豊音にも一緒に起きていて欲しいという身勝手な思いが、指先に力の加減を間違わせた。
そんな感じだった」
豊音「ん……んー……? !! ひ! え!? え、あ、シロ!?」
白望「布団を跳ね上げ、飛び起きる豊音」
豊音「はぁーっ! はぁーっ!! あ~……! びっくりしたー……!!」
白望「豊音も目が覚めてしまったらしい。
怖い夢でも見ていたのか、その息は荒い」
豊音「い、いや、怖い夢っていうか……! シロー……! なんでいるのー……!?」
白望「豊音にとっては、当然の疑問である」
豊音「?? シロ、その変な話し方なにー……?」
白望「私の話し方に関しては特に理由などないので、説明はできない。
しかし『なんでここに』という疑問に答えることはできる。
今まで私たちが寝ていたのは、熊倉先生が学校の傍に借りた借家だった。
豊音の下宿先でもある。
熊倉先生が出張で一晩家を空けるというので、私は独り残された豊音の身を案じ熊倉先生宅に侵入、豊音の布団に潜り込み、添い寝をしていたのだった」
豊音「そうだったんだー……」
白望「そうだったのだ。
つまり私は、豊音に無許可で同衾していたのだった」
豊音「……」
白望「? 豊音は頬を赤く染め、恥ずかしそうにうつむいた」
豊音「シロー……その変な話し方はやめてよー。それに同衾って……」
白望「同衾という言葉を使ったことに、何か問題でもあったろうか」
豊音「え? 同衾ってえっちな意味で一緒に寝ることなんじゃ……?」
白望「……え?」
豊音「え」
白望「……」
豊音「……」
白望「……枕元のスマホを手に取り、辞書アプリを起動。
同衾と文字を打ち込み、意味を検索。
表示された同衾の意味は以下の通りだった。
『 どうきん[同衾]
〔名・自サ変〕
一つの寝具で一緒に寝ること。特に、一緒に寝て肉体関係を持つこと。ともね。 』
これは……。
一つの寝具で一緒に寝ること、という一文は、私の理解と一致する。
間違った理解をしていたわけではなかった。
しかし、理解が足りていなかった。
『特に』と前置いていることから、同衾という言葉は豊音の言うように、性的な意味で使われることが多い言葉なのではないだろうか……。
羞恥に頬が熱くなる。
二度と同じ恥をかかずに済むよう、私はブラウザを開き、さらに詳しく同衾の意味を調べようと――」
豊音「え、えっと、シロー……? ごめんね、なんか変なこと聞いちゃってー。それはもういいから、それより他に聞きたいことがあるんだけどー……」
白望「……なに?
と、私はスマホを脇に置き、豊音に聞いた」
豊音「……やっと普通に話してくれたと思ったのにー……。まあいいや。侵入したって言ってたけど、どうやってうちに入ったのー? 戸締りはしっかりしておいたのにー」
白望「これまた当然の疑問である。
私の熊倉宅への侵入経路は至ってシンプル。
正々堂々、玄関からお邪魔したのだった」
豊音「玄関からって……鍵はー?」
白望「あれは、先週のこと……」
豊音「回想!?」
白望「昼休み、私は職員室に侵入した。
ちらほらと自分のデスクで昼食をとる教員の姿が目に付いたが、昼休みの職員室は閑散としており、目当てのデスク、熊倉先生のデスク周辺はほぼ無人だった」
豊音「シロ、どっかに侵入してばっかりだよー。それに熊倉先生のデスクってまさかー……」
白望「私は先生のデスクから自宅やロッカーの鍵がまとめられたキーホルダーを入手した。
学校を抜け出し、近所の鍵屋で合鍵を作製。
学校に戻り、鍵を熊倉先生のデスクに返し、秘密裏に熊倉宅、つまり豊音の下宿先の合鍵を手に入れたのだった」
豊音「なにやってるのシロー……って待って。あれ? 先週ってまさか、先週の水曜日?」
白望「そうだよ、と私は肯定する」
豊音「あのときって確か、塞が熊倉先生も誘って部室でお昼にしようって言い出してー、みんなでお昼食べてー……シロは用事でいなくてー……?」
白望「豊音が何を言いたいのかはすぐにわかった。
豊音が察している通り、先週の水曜日の昼食会は職員室から先生を引き離すため、私が塞に頼んでセッティングしてもらったものだった。
つまり、塞もグルだった」
豊音「先生、あのときお昼に誘われてすごく喜んでたのにー……シロも一緒ならよかったのにって」
白望「胡桃もグルだった。
エイスリンもグルだった」
豊音「なんでそうまでしてうちの鍵をー?」
白望「……特に理由などなかった。
豊音の家の鍵が欲しいなと、そう思っただけだった。
強いて理由をあげるなら――そう、今夜のような状況……豊音が独りでお留守番するような、豊音のことが心配で居ても立ってもいられない状況になったとき役に立つだろうと、そ
う考えての窃盗だった。
後付ではないし、悪気もなかった」
豊音「別に留守番くらいできるよー……心配しすぎー」
白望「強がりを言う豊音」
豊音「強がりじゃないよー」
白望「意地になる豊音」
豊音「なってないもん……ていうか、もういいよー。来ちゃったものは仕方ないよー、この時間に一人で帰すのもなんだし泊まっていきなよー」
白望「ありがとう、そうさせてもら……えふん」
豊音「? シロー? もう寝ちゃおうよー」
白望「おふん」
豊音「? どうしたのー?」
白望「豊音、いっぱい喋ったら喉渇いた……なんか飲み物ちょうだい」
豊音「……やっと普通に喋ったと思ったらー。もー、とってくるから待っててよー。冷たいのとあったかいのどっちがいい?」
白望「……冷たいので。ぐいっといきたい感じ」
豊音「わかったよー」
白望「豊音は布団から出て、キッチンに向かった。
ただ待っているのも悪いので、私も後を追う。
豊音はキッチンの明かりを点け、冷蔵庫に手を掛けた。
狙い通りである」
豊音「狙い通りー……?」
白望「豊音はこちらを振り返りつつ、冷蔵庫の扉を開けた」
豊音「……? って!!! うわぁ!!!」
エイスリン「ココココ、コンバンワワワ……!」
白望「豊音が冷蔵庫に視線を戻すと、そこにはエイスリンがいた。
冷蔵庫内の敷居は取り外され、保管されていた食料も外に出されている。
エイスリンは冷蔵庫の中に、膝を抱えすっぽりと収まっていた」
豊音「何してるのー!!」
エイスリン「ハハハジメマシテ……! ワタシノナマエハ、エエエエイスリン・ウィッシュアート、デッデス……ヘクチッ!」
豊音「知ってるよー! いつからここにいたのー!? ほら早く出てー!」
エイスリン「カレコレ、イチジカンホド……クチンッ!」
白望「エイスリンを抱きかかえ、冷蔵庫から取り出す豊音」
豊音「取り出すとか言わない! お友達でしょー! って、うわぁ! これやばいよー! エイスリンさんキンッキンに冷えてやがるよー!」
白望「豊音は体育座りの体勢のまま固まった……凍りついたエイスリンを抱きしめ、体を擦り始めた」
豊音「凍ってない! 凍ってないから! うわぁ、うわぁ、でもこれやばいよーこれ絶対やばいやつだよー、生きた人間とは思えない冷たさだよー……!」
エイスリン「トヨネ……ワタシ、シンジャウノ……?」
豊音「死なせないよー! 気をしっかり持って! 今ストーブ点けて来るから! シロは寝室から毛布持ってきて!」
シロ「合点。
私は寝室に戻り、毛布を手に取った。
すぐにキッチンに戻り、震えるエイスリンを毛布で包む」
豊音「どう? エイスリンさん、落ち着いた?」
エイスリン「チョット、ラクニナッテキタ……」
豊音「はー……もー、なんであんなとこに入っちゃったのー?」
エイスリン「シロガ……トヨネ、ビックリスルカラッテ……」
豊音「シロー……?」
白望「こちらを睨む豊音。
私は目を逸らした」
豊音「はー、もう、すっかり目が覚めちゃったよー……」
エイスリン「ネオキドッキリ、ダイセイコウ?」
白望「うん。大成功」
エイスリン「ヤッタネ!」
豊音「体張りすぎだよー……どっと疲れたよー」
白望「……そのときだった」
豊音「……まだなんかあるの?」
白望「 『きゃはは、うふふ』という笑い声が、不意に仏間のほうから聞こえてきた」
「きゃはは、うふふ……」
豊音「明らかに笑い声よりシロの語りのほうが先だったよー……何なのー? 今度は何を仕込んでるのー……」
白望「豊音は恐る恐る仏間の襖を開けた」
豊音「……ひ!」
「うふふ……あはは……」
白望「そこには、和服を着た小柄な少女がひとり、鞠をついて遊んでいた」
豊音「ざ、座敷童だよー……!」
白望「暗い仏間で見知らぬ和服の少女がひとり楽しそうに遊ぶ様を見て、豊音は震え上がった。
確かに、想像を超える不気味さである。
はまり役だとは思ったが、まさかここまでとは……。
仕込んだ私も怖くなり、豊音の腕にすがりついた」
豊音「はっ! そうだよー、これシロの仕込みなんだったー」
白望「しまった」
豊音「ということはー……」
白望「豊音は仏間の明かりを点けた」
豊音「やっぱり胡桃かー……」
胡桃「や、豊音」
白望「座敷童の正体は胡桃だった」
胡桃「すぐばれると思ったのに、意外と怖がってたね」
豊音「だってー、胡桃その格好はまりすぎなんだもん。一瞬ほんとに座敷童かと思ったよー」
胡桃「うーん……あんまり嬉しくないな……豊音のリアクションもいまいちだったし。シロのほうが怖がってるし」
白望「大丈夫大丈夫大丈夫……座敷童のいる家は豊かになる……あれは吉兆の証あれは吉兆の証……」
豊音「……それ以前にあれは胡桃だよー。なんで仕込んだ本人が一番怖がってるのー」
胡桃「バカみたい!」
豊音「私もひやっとしたよー?」
胡桃「そう? ならよかったんだけど」
豊音「でもー、みんなわけわかんないよー。なんでわざわざ人の家に忍び込んでこんなことやってるのー?」
胡桃「だって、シロがやろうって……」
豊音「なんでそんなにすぐシロの言うこと聞いちゃうのみんなー」
胡桃「面白そうだと思ったんだもん……寝起きドッキリ……」
エイスリン「ソレニ! トヨネ、ヒトリ、シンパイ!」
豊音「心配してくれたのは嬉しいけどー、私そこまで子供じゃないよー」
白望「ぜったい寂しくて泣いてると思ってたんだけどな……」
胡桃「ね!」
エイスリン「ネ!」
豊音「泣かないよー。ひとりは久しぶりだから、たしかにちょっと寂しかったけどー」
白望「ふああ……」
エイスリン「シロ、オネム!」
胡桃「私も眠い……夜更かしし過ぎたね」
豊音「みんな自由すぎるよー……お布団敷くから、手伝ってよー」
胡桃「泊まってっていいの?」
豊音「もう遅いし、別にいいよー」
エイスリン「ヤッタ!」
胡桃「誰が誰と一緒に寝る?」
白望「胡桃を抱いて眠るか、豊音に抱かれて眠るか……それが問題だ」
エイスリン「ナヤマシイ……」
豊音「……人数分敷くからゆっくり寝ようよー」
白望「……え?」
エイスリン「エ? ハ? エ? ソンナノキイテナイヨ? ココガメインダッテ、シロイッテタヨ?」
胡桃「豊音……それはないよ……それじゃあ私たち、なんのためにこんな……」
豊音「私が心配で来たって言ってたのにー……わかったよー、でも四人でお布団ひとつは狭いから、もう一組敷くよー?」
白望「じゃあ、二人ずつだね」
エイスリン「ハーイ、フタリグミツクッテー」
胡桃「はーい」
豊音「この人数ならあまりはでないねー。ぼっちが出ないのはいいことだよー…………ってあれー……? ぼっちが、出ない……?」
白望「どうしたの、豊音?」
豊音「……いや、別に。まぁ……うん、うん。さっさと寝ようかー、明日も学校だしー」
白望「? そうだね」
* * *
* * *
白望「……そして、私たちは豊音が敷いてくれた布団でふたりずつ就寝した。
組み合わせは、私と豊音、胡桃とエイスリンに決まった。
時刻は二時半を過ぎており、みんな布団に入るなり眠ってしまった。
起きているのは私ひとりだ。
なんとなく、眠れなかった。
何か、この状況に違和感がある。
何かを忘れているような気がする……。
朝、家を出てしばらしくして、何か忘れ物はないだろうか、鍵は掛けたか、電気は消したかとあれこれ不安になるような――あの感覚に近い。
何かを忘れているような、しかし、何を忘れているのかは判然とせず、もやもやしてしまうあの感覚に、いま私は陥っていた」
豊音「すー……すー……」
白望「……」
白望「しかし、まぁ……。
何かを忘れているような気がする、というだけで、何も忘れていない可能性もある。
なんやかんやで私を抱き枕にして眠る豊音の寝顔を見て、漠然とした不安は霧散した。
私は瞼を閉じ、豊音の大きな体に抱かれ眠ることにした……。
zzz……」
* * *
* * *
白望「zzz……」
???「そのとき私は天井裏にいた」
「天井に開いた小さな穴から、眼下に友人四人が安らかに眠る様を見下ろしていた」
「私に天井裏に控えているよう指示したシロは、どうやら……ぐすっ……私のことを忘れてしまったらしい……ずっ」
「ひっく……て、天井裏は埃っぽくていけない。
ぐすっ、埃が目に入り、涙がにじむ。
けっして、誓って、私は寂しくて泣いているわけではない。
埃っぽくてかび臭い天井裏に放置されて、悲しくて泣いているわけではない。
私、臼沢塞は宮守女子麻雀部の部長である。
部長の私には、みんなが無事に床に就くのを見届ける義務があったのだ。
けっして、考えてはいない。
けっして、シロはどういう意図で私をここに配置したのだろう、どうやって豊音を驚かせるつもりなのだろう、なんて、微塵も考えていなかった。
自分の出番を待ってうきうきわくわくなんてしていなかった。
シロが私を天井裏に配置した意図は、事ここに至ればもはや明白。
シロは豊音がひとりでお留守番することを心配して、今夜のスニーキングミッションを提案したのだ。
目的は豊音の安眠の確保。
つまり、天井裏に配置された私の任務は見張り。
豊音やみんなが安心して眠れるよう、シロは見張り役として私をここに配置したのだ。
そうに決まっている。
シロが私を忘れるなんて、そんなことあるはずがないのだ――」
塞「――…………うん、いや」
塞「……そんなわけないじゃん。
見張りって、何から見張るってのよ……。
ここは岩手よ……!?
深夜の岩手で、しっかり鍵を掛けた家の中で……!
いったい何を警戒しろっていうのよ……!
危険なことなんて何もないじゃない!
ああ……! もう……! また涙出てきた……!
ぐすっ
シロの奴、私のこと忘れてるんだ……!
ていうかシロ、寝る前にモノローグで言ってたし……!
何か忘れてる気がするって、それたぶん私のことですよー……!
みんなの塞ちゃんを忘れてますよー……!」
塞「もう! 何よ! 豊音にはぐはぐされて気持ち良さそうに寝ちゃってさ……!
私はこんなかび臭いところでひとりだってのに……!
だいたい胡桃もエイスリンもなんで私のこと何も言わないのよ……!
ちょっとくらい気にする素振り見せなさいよ……!
何ふたりも私のこと完全スルーでべったりくっついて寝てんのよ!
……もしかして。
ふたりも私のこと忘れて……?」
塞「……はは」
塞「いやいや……そんなまさか……」
塞「…………」
塞「ぐすっ…………ふっ、うう……」
塞「うわぁ~ん!」
* * *
* * *
うわぁ~ん!
豊音「……シロー」
白望「……ん、ふぁ?」
豊音「おかしいと思ったんだよー……」
うおお~ん! みんな~!
白望「……あ」
豊音「あ、じゃないよー! 塞がいないなーと思ったらいるんじゃない!」
白望「そっか……なんか忘れてると思ったんだけど。塞のことだった。そうだった……私があそこにいろって言ったんだった」
豊音「わ、忘れてたの……? ひどすぎるよー」
白望「いや、塞にもなんかやってもらおうと思ったんだけど、特に何も思いつかなくて。とりあえず天井裏にでも潜んでいてもらおうと……」
豊音「それで放置とかー、そりゃ塞も泣くよー、もー」
白望「ごめんなさい……」
豊音「私に謝ってもしょうがないでしょー」
胡桃「私はシロが塞にもなんか指示出してると思って、黙ってたんだけど。この後なんかやるのかなって」
エイスリン「ワタシモデス」
豊音「単に来てないのかと思ってたよー。だいたい、あんなとこどうやって入ったのー?」
白望「別の部屋から、脚立で……」
豊音「じゃあ、その脚立持ってきてよー」
白望「あい」
白望「私は塞が天井裏に侵入した部屋から脚立を持ってきた。
豊音は脚立をセットし、天井の板を一枚はずした。
そこには埃まみれの塞の姿が」
塞「と、豊音~!」
豊音「うわぁ、塞、酷いありさまだよー」
白望「無事、天井裏から救出される塞。
埃にまみれ、涙でぐずぐずになったその顔は、確かに酷いありさまだった」
胡桃「それ、シロが言っちゃう?」
エイスリン「シロ、サイテイ!」
塞「さみしかったよ~」
豊音「はいはいもう大丈夫だからねー。塞、これは寝る前にお風呂だねー、すごいことになってるからー」
塞「うん……ぐすっ」
豊音「シロは塞に謝ってー」
白望「はい……ごめんね、塞」
塞「……シロのあほ」
白望「う……」
豊音「……塞とお風呂いってくるからー、シロは布団もう一組敷いといてー」
白望「はい……」
豊音「罰としてシロがひとりで寝るんだからねー? 私は塞と寝るからー」
白望「っ! ……はい、わかりました……」
胡桃「自業自得!」
エイスリン「シロガワルイ!」
白望「だるい……」
* * *
* * *
白望「……」
白望「…………」
白望「その後」
白望「風呂で埃を落とした塞と豊音が戻り、私たちは今度こそ寝床に落ち着いた。
豊音に言われた通り、私だけひとりで寝ていた。
最後に詰めを誤り豊音と添い寝する目論見は果たされなかったが、まぁ、今夜の主な目的、寝起きドッキリは成功したのでよしとしておこう。
熊倉宅の合鍵は未だ私の手中にある。
豊音の寝床に侵入する機会は、いずれまた訪れるだろう」
豊音「……」
白望「リベンジの機会に闘志を燃やし、私は瞼を閉じたのだった。
カン。
zzz……」
豊音「……シロー」
白望「zzz……んあ? なに?」
豊音「どうして侵入にこだわるのー? みんなでお泊りしたいなら、別にこんなやり方にしなくてもー……」
白望「……別に、理由なんてないんだけどね」
豊音「じゃあなんでー……?」
白望「いや、豊音、楽しいかなって思って……」
豊音「……」
白望「豊音、楽しい?」
豊音「楽しいy――ってやかましいよー」
白望「楽しくなかった?」
豊音「……まぁ、楽しいっちゃ楽しかったよー」
白望「なら、よかった。おやすみ」
豊音「……うん、おやすみー……」
白望「……」
白望「豊音はすぐに眠りに落ちた。
他の三人も、すやすやと寝息を立てている。
私もいい加減、眠るとしよう。
おやすみなさい。
かん」
短いけどこれで終わりです
ありがとうございました
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