やよい「私はアイドル!!」 (19)

「長介ー、皆を起こしてきてー」

お母さんと一緒に朝ご飯の準備をしていると、いつの間にか皆を起こす時間になっています。
でも、今は卵焼きを焼いてる最中だから、長介にお願いして起こしに行ってもらいます。
長介、いつの間にか私と同じ時間にちゃんと起きて、学校に行く用意も一番にするようになりました。
伊織ちゃんのお蔭なのかな?

「はーい。皆ー起きろー!かすみ、浩太郎、浩二!」
「ほらあなた、早く食べちゃって下さい」

お母さんが、先にお父さんの分のご飯だけ用意しています。
お父さん、最近いっつも朝は早いし夜は遅いし……大丈夫なのかな?

「おとーさんおはよー」

長介に押されるようにして居間に入ってきたのは浩二。
挨拶はちゃんとしないと、伊織ちゃんにまた怒られちゃうよ、そう言おうとすると、かすみがもう怒ってくれていました。

「浩二。おはようございますでしょ」
「かすみねーちゃんはこまかいんだよー」
「もうっ、そんなんじゃまた伊織さんに叱られちゃうよ」

私が言うと、浩二はちゃんと、おはようございます、と言い直していました。
すっかり長介や浩太郎達も伊織ちゃんに懐いてるみたいです。

「ほらっ、皆席についてー、ご飯だよー」


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お盆に味噌汁とご飯を載せて持っていくと、途中から長介が替わってくれた。

「姉ちゃんは、早く仕事の準備しなよ、俺達は食べておくからさ」
「あっ……ごめんね、長介」
「いいよ、ほら」
「うんっ、じゃあお願いね」

長介、本当に最近はお兄ちゃんになって何だか私がビックリしちゃいます。
どうしたのかなぁ、でも、何か頼もしいですよね。

「……あっ、お洗濯物干さなきゃ」

丁度洗濯が終わったアラームが鳴ってたから、私は洗面所へ向かう。

「よいしょっ……と」

お父さんにお母さん、弟や妹の洗濯物は、毎日かごいっぱいになる位の量です。
洗濯機の中から全部取り出すと、水を吸っててすっごく重たいです。
ちょっとよろめきそうになりながらそれを運んでると、丁度ネクタイを絞めながらお父さんが会社に行くところでした。

「あっ!お父さん、行ってらっしゃい!頑張ってね!」
「ああ、やよいも遅いのかい?」
「うん、今日は7時くらいかなーって」
「そうか……あまり無理はするなよ」
「はいっ!」

でも、お父さんの方が私は心配です。何だか最近元気が無いようにも見えるんです。
元々お父さんは、あんな暗い表情をする人じゃ無かったんですけど。

「行ってらっしゃーい」
「やよい、時間は良いの?」
「えっ?」
「もう8時よ、今日は学校終わってから撮影でしょ?」
「そ、そうだった……ううーっ!い、行ってきまーす!」


ちょっと慌てちゃいましたけど、学校には余裕を持って着きました。
アイドルをやってても、私はやっぱりまだ中学生。
でも今日は授業じゃないんです。修了式でした。

「ねえ高槻さーん、来年も一緒のクラスになろうねー!」
「やよいー、今日この後遊び行こうよー」
「ごめんね明ちゃん、今日この後撮影が……」
「すっごいよねー、高槻さん、ホントにアイドルなんだねー」
「いいなー、めっちゃ格好いい俳優さんとか見れるんでしょー」
「そ、そんなことないよぉ……あっ、ごめん、もう行かなきゃ……」
「うんっ、頑張ってね、高槻さん!」

皆、やっぱりアイドルってそう言う風に見えるんでしょうか。
でも、なんだか寂しいです。
皆はこの後、遊びに行くんだろうなぁ。

でも、良いんです。
私は皆の為にも、頑張らないと!
学校の正門を出ると、もうプロデューサーの運転する車が来ていました。

「やよい、お疲れ様」
「遅くなりました、すいません」
「いや、いいよ……ごめんな、この後皆と遊びに行ったりするんじゃなかったのか?」
「いえ、大丈夫です!」
「……そうか、じゃあ、今日のスケジュール」

この後は、雑誌のインタビューの後、歌の練習とダンスの練習です。


「そういえば、やよい。春休み、良いのか?」
「えっ?」
「皆と遊びに行くとか」
「大丈夫です、それに、今は眠り姫の撮影があるから」
「……俺がやよい位ぐらいの時は、休み中なんか友達と遊んでばっかりだったなぁ」
「えへへっ、でも、良いんです。私は皆の為に頑張りたいんです」
「……やよいは偉いなぁ」

プロデューサーの運転する車に乗って、765プロの事務所に着いた私は、直ぐに雑誌の取材に入りました。
でも、あんまり緊張はしていません。
それは、取材に来てくれたのが、よく知っている人だから。

「やあ、高槻君。今日も元気そうだね」
「はいっ、善澤さん!」

社長と仲良しの雑誌記者さん善澤さんです。
千早さんが大変だったとき、善澤さんが書いてくれた記事のお蔭で、千早さんはまたアイドルを出来る様になりました。
ちょっと前まで、社長のお茶飲み友達かと思ってました。

「それじゃあ、早速取材を始めさせてもらうよ?」
「はいっ!」
「高槻君。最近アイドル活動、楽しい?」
「はいっ、それは勿論です」
「そうだね、高槻君は本当に、楽しそうに仕事をしているからね……じゃあ、次の質問」

善澤さんの取材は、途中で冗談とかを言ってくれるので、緊張せずに話せて、私は好きです。
最近の学校生活、アイドルの仕事の事、今度公開される映画の事を質問されました。

「ありがとう、高槻君。良い記事が書けそうだよ」
「えへへっ、善澤さんの取材は楽しいですから」
「はははっ、僕もそう言って貰えると記者冥利に尽きるよ」
「あっ、善澤のおっちゃーん、もう来てたんだ?」
「おお、真美君、もう着てたよ、今日は高槻君と君と我那覇君の取材だからね」
「あ、じゃあ私はこれで」
「うんっ、高槻君、またよろしく頼むよ」
「んじゃー、次はおっちゃんと真美の一騎打ち―!」

真美も、何だか善澤さんには懐いてる気がします。
気さくな人ですよね。

「あっ、やよい、そろそろボーカルレッスンの時間だろう?」
「はいっ」
「じゃあ、もうすぐ春香が来るから、一緒に連れて行くよ」
「春香さんと一緒のレッスンも久し振りですー」
「そうだな、最近は皆、バラバラに動いてるから……でも、何だか、前の時とは違うよな」
「……はいっ、何となくそんな感じがします!」
「遅れてごめんなさい!」
「春香さん、お疲れ様ですー!」
「ごめんねー、やよい」
「さ、レッスン行くぞー」




「どこかへお出かけー、お嬢様ぁん」
「喉がカラカラ限界ギリギリ!発狂寸前!」
「「きゅーんっ!」」
「はーい、ここまで」

実は、今度のシークレットライブで、私と春香さんが、美希さん達の「きゅんっ!ヴァンパイヤガール」を歌う事になったんです。
何だか難しいですね。

「二人が歌うと、こうなるわよねぇ。これはこれで面白いと思うから、良いと思うけど」
「えへへっ、やよいの『きゅーんっ』って可愛いよね」
「春香さんもカワイイデスヨー」
「うふふっ、今度のシークレットライブは、みんなびっくりするでしょうね、頑張ってね」

歌のレッスンの先生が、にこにこしながら私達を応援してくれています。
それに、私と春香さんも元気な返事で答えました。


「ワンツースリーフォーファイッシッセブンッエーイ、ワンッツースリーフォーファイッシッセブンエーイッ……いい感じねぇ、高槻さん、天海さん」

ダンスの先生も、最近は一回でオッケーが貰えるようになりました。

「高槻さんは特に、めっきり体力もついた物ね。この前のライブのキラメキラリなんかも、凄かったもの」
「えへへっ、ありがとうございます」
「天海さんも負けてられないわね」
「はいっ!」
「でも、私もびっくりだわ。最初のライブ前のレッスン中なんて、萩原さんも高槻さんも、大丈夫かなって心配してたんだけど」
「えへへっ、あれは皆が応援してくれたから」
「でも、やよい自身も、頑張ったからだよ?」

春香さんが、ニコニコしています。
私、春香さんの笑顔を見ると、何でも頑張ろうって思えるんです。

「今日はこの位にしておきましょうか。次のレッスンで、全体を通すわよ」
「「はいっ!」」


「やよいは、この後どうするの?」
「今日はお母さんが遅番で帰りが遅いから、直ぐに帰ってご飯の支度をしないといけないんですー」
「そっか……偉いなぁ、やよいは」
「えっ?」
「やよいの事を見てるとね、私も頑張らなくっちゃって思えるの!」
「えへへっ、私も春香さんを見てたらそんな気がしてきます!」

更衣室から出ていくと、丁度プロデューサーが迎えに来てくれたところでした。

「すまんっ、遅くなった」
「プロデューサー、ありがとうございます」
「春香は駅までで良いのか?」
「はい、やよいの事お願いします」
「分かった」



「プロデューサー……すみませんでした、買い物まで付き合って貰っちゃって」
「いや、良いさ」

この後、また事務所まで帰ってお仕事があるのに、プロデューサーは私の家まで付き合ってくれました。
玄関まで荷物を運んでもらうと、プロデューサーはそのまま帰っていきました。

「ただいまー」
「おかえり―ねーちゃーん!」
「あれ?さっきの」
「うんっ、プロデューサーが送ってくれたんだー」
「プロデューサーのにーちゃんはご飯食べないの?」
「まだお仕事があるんだって、洗濯物は?」
「私が取り込んだよー」
「俺が畳んだー」
「浩二は雑すぎるの」
「えー」
「うあーーーんっ!」
「あっ、浩三泣いてる!」
「はいはーい、やよいお姉ちゃんが帰ってきましたよー」

ベッドで寝ていた浩三を抱っこすると、直ぐに泣きやみました。
可愛いですよね、私もいつか、子供が出来たらって思うと、何か不思議な感じです。

「えへへっ、ちょっと待っててねー。晩御飯は?」
「お母さんが作って行ってくれたよー」

かすみが、キッチンで鍋を火にかけ始めました。

「あっ、いいよーかすみ、私は自分の分やるから」
「良いの、お姉ちゃんは座ってて」
「そうだよ、今日もレッスンだったんだろ?」
「長介にーちゃーん、ふろー」
「はいはい、待ってろって」
「浩三は私が」
「浩三も俺と一緒に入るよなー?」
「あー」

長介が、浩三を抱っこしてお風呂に行っちゃいました。

「はい、お姉ちゃん、どうぞ」
「ありがとう、かすみ……何だかごめんね」
「えっ?」

私がアイドルをやっているから、家の事があんまりできなくて、かすみ達が頑張ってくれているけど、それで良いのかなって思う時があるんです。
かすみ達だって、本当はもっと遊びたいかもしれないのに。

「お姉ちゃんは、気にしなくていいんだよ」
「……」
「お姉ちゃん、私達の為にすっごく頑張ってるもん」
「でも」
「良いの、お姉ちゃんはアイドルを頑張って!お姉ちゃんの代わりに、私達がお家の事は頑張るから!」
「かすみ……ありがとう」

……皆、私を見ると頑張ろうって思うって言ってくれる。
もしかすると、私がアイドルをしてるのは、それが嬉しいからなのかもしれない。

長介たちがお風呂から上がってくると、今度は私とかすみがお風呂です。

「えへへっ、ちょっと待っててねー。晩御飯は?」
「お母さんが作って行ってくれたよー」

かすみが、キッチンで鍋を火にかけ始めました。

「あっ、いいよーかすみ、私は自分の分やるから」
「良いの、お姉ちゃんは座ってて」
「そうだよ、今日もレッスンだったんだろ?」
「長介にーちゃーん、ふろー」
「はいはい、待ってろって」
「浩三は私が」
「浩三も俺と一緒に入るよなー?」
「あー」

長介が、浩三を抱っこしてお風呂に行っちゃいました。

「はい、お姉ちゃん、どうぞ」
「ありがとう、かすみ……何だかごめんね」
「えっ?」

私がアイドルをやっているから、家の事があんまりできなくて、かすみ達が頑張ってくれているけど、それで良いのかなって思う時があるんです。
かすみ達だって、本当はもっと遊びたいかもしれないのに。

「お姉ちゃんは、気にしなくていいんだよ」
「……」
「お姉ちゃん、私達の為にすっごく頑張ってるもん」
「でも」
「良いの、お姉ちゃんはアイドルを頑張って!お姉ちゃんの代わりに、私達がお家の事は頑張るから!」
「かすみ……ありがとう」

……皆、私を見ると頑張ろうって思うって言ってくれる。
もしかすると、私がアイドルをしてるのは、それが嬉しいからなのかもしれない。

長介たちがお風呂から上がってくると、今度は私とかすみがお風呂です。


「ねえ、お姉ちゃん。アイドル楽しい?」
「うんっ、楽しいよー」
「私も、いつか……?」
「えへへっ、かすみはもうちょっと大きくなったら……?」
「私も、慣れるかな、やよいお姉ちゃんみたいに」
「うんっ、かすみなら、きっともっともーっと凄いアイドルになれるよ!」

かすみと、お風呂につかりながら、ぼんやりとそんな事を話していました。
かすみはお風呂から上がって髪を乾かすと、そのまま寝るって言って2階に上がっていきました。
いつの間にか、長介達も寝てしまったようです。お皿もちゃんと洗ってありました。

「……あっ、そうだ、宿題やんないと」

ロケが始まれば、そんな暇もなくなっちゃいそうなので、早めに宿題は終わらせる約束をプロデューサーとしていました。

「……うう……ちょっと眠いかも……」

でも、今日ある程度進めないと……
そんな時、玄関の扉があく音がしました。
誰だろう……お父さんかな?


「あっ、お父さん、お帰りなさい!」
「ああ、やよいか……まだ、寝てなかったのか?」
「うん、さっき長介とかすみ達が寝たところだよ、お父さん、ご飯まだだよね?準備するから」
「あ、いいよやよい、お父さん自分でやるから」
「ううん、いっつもお父さん遅くまで頑張ってるんだもん、疲れてるでしょ?座ってて!」

いっつも、お父さんはこんな遅い時間なのかな。
こういう時くらい、ちゃんとご飯の用意してあげないと。

「ありがとな、やよい」
「あとでお皿は洗っておくから、お水につけておいてね」
「うん……まだ、寝ないのか?」
「宿題やんないといけないんだ」
「そうか……」

やっぱり、元気が無いなぁ、お父さん。
何かあったのかな。
お父さんのご飯を用意していると、外から自転車のブレーキ音がしました。
お母さんが帰ってきたんだ。

「あっ、お母さん、お帰りなさい!今ご飯用意するね」
「ああ、いいのよやよい、私は自分でするから。宿題あるんでしょ?早く済ませちゃいなさい」
「はい」

お母さんも、こうして偶に凄く遅い時間に帰ってきます。
お仕事、忙しいのかな。
お母さんが洗い物もしてくれるみたいなので、私は部屋の隅に置いておいた勉強道具を持って2階に上がります。
私達の部屋では長介たちがすやすやと寝息を立てていました。
起こさない様に、そっと机に向かうと、春休みの課題のプリントと教科書を開きます。

「……皆、頑張ってるんだなぁ……私も、頑張らないと……」

宿題をある程度終わらせると、私も布団にもぐりこみました。
皆の寝顔を見ると、何だか私も眠く……


「おはよう、やよい、今日も早いね」

今日は少し朝早く起きて、朝ご飯を作っています。
お母さん、昨日は夜遅かったし、こういう時くらいゆっくり寝て貰おうと思ってたんです。
お父さんも、今日は仕事が早いみたいで、もう起きてきました。

「あっ、お父さん、おはよう!はい、新聞」
「ありがとう……今日の朝ご飯は、やよいが?」

お父さん、私の心配ばっかり……何か、顔が付かれてる気がする。

「やよいも、あんまり無理するんじゃないぞ」
「えへへっ、大丈夫だよ」
「……お父さんも、頑張るからな、やよい」

お父さんが、その時すっごく明るい笑顔を浮かべました。
昔見た、遊園地で私達と遊んでくれているあの笑顔。

「えっ……うんっ!私ももっともーっと頑張って、皆が楽しくなれるように頑張るね!ハイ、ターッチ!」
「「いえいっ!」」

お父さんと私の手が、パァンッって音を立てます。
今日もみんな起き出して、また1日が始まります。
皆に笑顔、届けられたらいいな。

「それじゃあやよい、お父さんもう行くから」
「はいっ!これお弁当」
「ありがとう、やよい。行ってきます」
「行ってらっしゃい、お父さん、頑張ってね!」

私も、まだまだ頑張りますよ。
皆に元気と笑顔、届けたいから。

「皆起きて―朝ご飯で来たよー!」



11、12はエラーで二重投稿しただけなのよ…

やよい、お誕生日おめでとう!

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