最強が最弱に破れた後――世界は狂い世界は救われた
これはそんな救いがある救いがない物語
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アレイスター「ふむ、御坂クローンの食用化?」
木原数多「あぁ、なんかどっかから提案が来てたぜぇ――最低試算可食部位は20キログラム――御坂クローンの生産をを効率的に行えば、世界の飢餓を救えるらしいぜ」
アレイスター「ふむ、だが――それには色々な反発があるだろうな」
木原数多「それは心配要らねぇ――ちょっと細工をして、御坂クローンの家畜化は行える」
アレイスター「ふむ、しかしそれになんのメリットがある?」
木原数多「利益と信頼が得られるな――オリジナルが五月蝿いから、今存在する約10000体の御坂クローンには危害を加えず、再生産する御坂クローンには知性を与えない――が現実的だな」
アレイスター「ふむ――やってみるか」
――世界の異変に気がついたのは、上条当麻だった
上条当麻「なんだ、この謎の肉?」
スーパーに並ぶ謎の肉
誰も疑問を持たずに買う肉は、牛でも豚でも鶏でもなかった
上条当麻「妙に安いけど――買わないでおこう」
上条当麻は妙に安い肉に違和感を覚えながら、普通の鶏肉を買った
学園都市に謎の肉は広がる――
常磐台
御坂美琴「最近学園都市内で流通しているこのお肉、美味しいわね」
黒子「ですの!」
コンビニ
駒場「この肉、旨いな」
浜面「ああ」
服部「なんの肉だろうな?」
浜面「合成肉じゃねぇか?」
日本の各地
あんちゃん「学園都市謹製合成肉、美味しいよー」
おばちゃん「買うわー」
あんちゃん「あんがとー」
一方通行「この肉ジューシィーだなァ」モグモグ
土御門「だにゃー」モグモグ
学園都市から広まった謎の肉は、日本から世界に広まり、各国の飢餓地域で人々の命を救った
ある人は学園都市最高の発明と謳い、ある人は貧困地域の救世主と称えた
誰もその正体を知らなかった
誰も彼も謎の肉を食べ、その味に溺れた
唯ニ人を除いて――
上条当麻「なぁ、インデックス。お前は今流行っている謎の肉についてどう思う?」
インデックス「うーん、かおりとステイルがこの間食べていたけど、私はあんまり食べる気がしなかったかも」
上条当麻「そうか」
上条当麻は違和感について考える
何か胸の中に痼があった――
精肉工場
御坂クローン「」スパッ
御坂クローン「」スパッ
御坂クローン「」スパッ
御坂クローン「」スパッ
御坂クローン「」スパッ
この精肉工場は狂気の工場であった
全うな人間が見たら発狂しそうな魔窟――
全裸の少女がひたすら首を切られ、全自動で解体される精肉工場
失楽園よりも醜い地獄絵図
希望を作るための絶望
着々と謎の肉が広まる中――最後まで違和感を感じていた二人の内、ついに片方が墜ちた――
インデックス「とーまとーま、お肉美味しいよ」
上条当麻「あ、ああ」
ゆっくりとゆっくりと、上条当麻の回りに謎の肉が満ちていく
たが、上条当麻は何故かこの肉を食べる気がしなかった
胸の内の痼
食べたら戻れない
食べたら何かが終わりそう
人並み外れた彼の直感は、警告を発する
木原数多「はっ、本当にキチガイじみてるな」
木原数多は出荷される肉を見て笑う
木原数多「にしても――魔術なぁ。そんなもんが本当にあるなんてなぁ――研究してみても面白そうだな」
肉に背を向けて木原数多は工場から去る
違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感
何故だ――あの肉には何か恐ろしい秘密がありそうだ
上条当麻は外れそうなタガを辛うじて繋ぎ止める
上条当麻は何故違和感を感じるかを考える
冷静に、上条当麻は思い出す
回りであの謎の肉を食べ始めた順番を――
上条当麻「初めは・・・ビリビリの知り合い・・・次に浜面・・・で、白井、ビリビリ、姫神、吹寄、青ピ、土御門、インデックス・・・あれ?」
上条当麻「俺と会っていない人から謎の肉を食べ始めてる?」
違和感の正体――それは、流行の順序だった
自分と親しい人ほど流行が遅い――それは「自然な」流行ではあり得ない話だった
上条当麻「――まさか、また世界規模の魔術!?」
上条当麻は走り出す――嫌な予感が当たらないように、と切に願いながら
以前――人の中身が入れ替わる魔術があった
あれを経験しているからこそ、上条当麻は偶然である事を祈る
前は土御門が気が付いた
今回は違う――思い違いなら上条当麻の被害妄想、思い違いでないなら、恐ろしい魔術だ
上条当麻「――っ」
気のせいであれ、気のせいであれ
ひたすら英雄は祈る
一台のトラック
上条当麻がそのトラックを調べようとしたとき――
バチン
上条当麻の意識は絶たれた
木原数多「後味がわりぃな」
木原数多はそういいながら、上条当麻を運び出す
木原数多「好奇心は猫を殺す――ま、恨むならこんな狂った計画を考えた奴を恨めや」
木原数多「――安価な肉による食料危機の解決――それに付随して人の共食いに関する罪悪感を無くしていく魔術」
木原数多「はっ、自分自身を生け贄にして食料危機を解決する方法を考えた狂人が相手とはついてねぇな」
淡々と、動かない上条当麻に対して語りかける
木原数多は退屈そうに語る
木原数多「てめえは殺しはしねぇらしいぜ、アレイスターのプランとやらに必要らしいからな」
木原数多「――ま、こんなカニバリズムを流行らせて、あの糞野郎がなにやりてぇなんてわからないけどな」
木原数多は饒舌に語る
それは彼の恐怖の捌け口だったのだろうか――
こうして、上条当麻は消えた
上条当麻が消えてから二週間後、謎の肉の正体が発表された
しかし、魔術で完全に狂わされた人類は謎の肉を許容した
餓えて死ぬよりましだ
食料危機の恐怖につけ込んだ魔術は、人類の良心の枷を外してしまったのだ
御坂美琴「妹が美味しい件について」モグモグ
一方通行「ジュゥゥゥシィィィィッ!」
本来ならあり得ない悪夢が世界中に満ちた
――英雄は現れない
――餓えは無くなった
救いがあって救われない物語――
Bad End
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