リヴァイ 「太陽風 ―The wind from the sun ―」(181)

太陽風 ―The wind from the sun ―

リヴァイ視点の物語です

ネタバレは、別マガ最新号、単行本の付属DVDになります

リヴァハン風味があるかもしれないです

ご了承いただける方、ご覧ください

壁の上に立つと、温かい爽やかな風が頬を撫でる

誰もが恐れる壁の向こうに、何故か温かい懐かしい何かを感じる

何故なのかはわからない

ただ漠然と、向こうに行きたいと切望する

カラネス区の、調査兵団臨時本部

今回の遠征では、トロスト区からの入口を使うことができなくなったために、東のカラネス区からの出立になった

さすがにトロスト区の調査兵団本部をそのまま使うことはできず、臨時で本部を移設させていた

今回の遠征でも、多大な犠牲をはらった

しかも、得られる物が殆どない有様

八方塞がりのこの状況下において、やはりいつも通り思考を前へ前へと飛ばすのは、こいつの末恐ろしい所だった

「おい、エルヴィン・・・」
俺は低い声でつぶやくように、執務机にかじりつく大きな背中の男に声をかける

聞こえなかったのか、返事もしなけりゃ、振り向きもしない

ちっ・・・いつもの様に舌打ちがついて出た

「リヴァイ、舌打ちとは・・・いったい何だ」
エルヴィンは振り向いて怪訝そうな表情を見せた

「てめえを呼んでるのに返事がねえから舌打ちしただけだ」

「そうか、すまない。思考に没頭しすぎていたかな」
そう言うと、エルヴィンは首を左右にコキコキ、と鳴らした

「今から、行ってくる。何か伝えることは、あるか」

俺は奴の目をじっと見つめた

その厳しいまでの光を放つブルーの瞳は、一瞬淡い光がたゆたうように、揺れた
奴はゆっくり瞬きをし、また目を開く

「・・・必ずやこの死を無駄にしないと・・・」

奴はそこまで言って、言を止めた

「・・・なんだ?中途半端だな」

俺は、首を傾げた

「・・・リヴァイ、すまない。言葉が見つからない」
エルヴィンは首を左右に振り、また瞼を閉じて呟く様に言った

「・・・そうか。わかった」
俺は踵を返し、団長室を後にしようとした

「リヴァイ」

背中から、呼び止める声

「なんだ」

一応奴のほうに体ごと振り向いてやる

奴は、普段人前では絶対に見せないような、なんとも言えない悲しげな表情を見せていた

「・・・すまない」

力なくつぶやく奴に向かって吐き捨てるように言う
「・・・謝られても、死んだ奴はもう戻ってはこない。そんな顔すんな気色悪ぃ」

「・・・気色悪いか・・はは」

自嘲気味に笑う奴に、静かに言う

「そんな顔してる暇があったら、俺たちの処遇を何とかする作戦を練ってろ。他のことはすべて俺たちがやる」

「・・・ああ、わかった。頼んだぞ、リヴァイ」

その言葉を背に、団長室を後にした

日常のやる事など、何時もさして変わり映えしなかった

壁外にいれば、走る、飛ぶ、削ぐ、その繰り返し

壁内にいれば、作戦を練る、部下を鍛える、掃除をする、紅茶を飲む…

調査兵団に入ってもう何年もたつ

慣れて当然の日常だ

だが、今から行う事、これだけは…
何度やろうとも、慣れる事など出来なかった

オルオの実家

哀しみに暮れる、両親

まだ訳が分かっていないのか、兵長兵長、と俺の手を握ってくるちびども

「息子の、最期は…」
父親が涙声で、俺に尋ねる

オルオに良く似た母親は、嗚咽が止まらず、机に突っ伏していた

「オルオは、突如現れた巨人と交戦し、勇敢に戦い、命を落としました」

そう言って差し出す、自由の翼の紋章
オルオの胸ポケットにつけられていた刺繍ワッペン

父親は、それを受け取り、握りしめた

「息子は、オルオは、貴方を尊敬しとりました…」

「…はい」

「…実家に帰ると、掃除だ掃除だと息巻いて、部屋中ひっくり返しとりました…はは」

父親は、悲しげな顔を無理に笑わせた
そんな表情で、話をした

「貴方は、紅茶がお好きなんですよね…息子はコーヒー派だったのに、貴方の班になってから、突然紅茶にはまり出しやしてね…」

「…」
俺は、頷いた

「話し方も、不自然に格好をつけましてね…スカーフなんか巻いて、似合わねえのに…はは」

「…オルオは、勇敢で優しい兵士でした。ムードメーカーで、いつも班のメンバーを笑わせてくれていました」

じっと父親の目を見ながら、話す

「リヴァイ兵長殿…」

母親が、涙を溢れさせながら俺の名を呼んだ

「…はい」

「息子の死を、無駄になさらないで下さい…」

俺の手を握る、震える母親の手

もう片方の手は、ちびが握りしめて離さない

「…息子さんの死は、決して無駄にはしません。必ずや俺が…巨人を駆逐してみせます」

俺のその言葉に、両親が泣き崩れた

俺は目を閉じた…何かに耐える様にしっかりと…

オルオ、グンタ、エルド、ペトラ

皆俺を信じてついてきてくれた、かけがえの無い部下…いや、同志

全員を、一度に無くしてしまった

亡くなった兵士の家族との対面の後は、必ずと言っていいほど壁外が見渡せるこの場所に来た

壁の外に手を伸ばす

温かい風が、その腕を包むように吹く

手を握りしめてみるが、この手は何も掴めなかった

ちっ…
癖になってしまった舌打ちをし、がっくりと座り込む

こんな姿の俺が、人類最強?
笑わせる

4000人の兵士に匹敵する力?
バカらしい

なあ、一体何処が、人類最強だ?
自分の班の人間すら守れない奴の何処が…

拳を握りしめて、壁の床に叩きつけようとする

その手は、床に打ち付けられる手前で止められた

「…駄目だよリヴァイ。手を怪我しちゃう」

俺の手を止めたのは、泣き笑いの様な顔をした、ハンジだった

順番が回ってきて診察室に入ると、後ろからハンジが声をあげた

ハンジ「やあ!!先生元気!?あのさあ、巨人の筋肉と骨についてだけどさあ…」

医師「ハンジさん、その話は後程…今日は兵士長の診察ですよ」

咎めるような口調の、若い医師
なかなか整った造作の顔をした、穏やかそうな男だ

ハンジ「そうだった!!リヴァイの足がもげたりしたら大変だから、早く見て一瞬でなおしてよね!?先生」

医師に近寄り、顔を覗きながらそう言ったハンジ

リヴァイ「…もげるわけねえだろうが…」
俺は独りごちた

医師「兵士長、ベッドに横になってください…あ、ハンジさんは外に出ていて下さい」

ハンジ「えー!!診察見たい!!」

医師「兵士長には下着姿になっていただきますので」

ハンジ「脱がせるのは得意なんだ!!」

リヴァイ「さっさと出ていけ!!クソメガネ!!」

結局俺の無事な方の脚で蹴られて、部屋を出ていったハンジだった

うわあ、名前入れてしまってた…
読みづらかったらすみません…

診察室のベッドに横たわり、スラックスを脱いだ常態で診察を受ける

「骨には異常はないですね…ただ、足首を捻挫しています」
医師は丁寧に脚を触診しながら、たんたんと話した

「捻挫か…動くのは大丈夫か?立体機動は…?」

「足首の靭帯を損傷しているのですよ。捻挫とはそう言う怪我です。無理に動いたのではありませんか?捻挫が酷くなって、靭帯が断裂しかかっています。全治3週間といった所でしょうか…」

医師は俺を起き上がらせながら、諭すような口調でそう言った

「3週間…?」
俺は眉をひそめた

「安静に動かさずに…の場合です。下手をすれば、捻挫は癖になったり、骨が変形したりしますから、今は安静に動かさないように…」

「そんなに長い間戦力外なのか…」
ため息が出た

「立体機動などもっての他ですよ。禁止です。捻挫を甘く見ないで下さいね、兵士長」

「ああ、わかった。ありがとう」
俺は頷くしかなかった

結局俺は松葉杖を持たされて、診察室から出た

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年10月12日 (日) 10:16:16   ID: snJW0TeQ

期待してます!!!!!!

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