鳴上「月光館学園?」(1000)

・ペルソナ4の主人公(鳴上悠)が月光館学園で最後の高校生活一年間を過ごす話。

・過去のペルソナシリーズのキャラとコミュを築きます。一部捏造設定有り。


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>2012年3月

>稲羽市での生活を終え、帰ってきた両親から告げられた鳴上の新たな転居先……

>それは、港区にある月光館学園の寮であった。


鳴上(息子と再会したのも束の間、また仕事で出張するから……だもんな。本当に忙しい人達だ)


>巌戸台駅へと向かう電車内。

>今日からまた新しい土地で新しい生活が待っている。

>だが、まだそこまでの道のりは長い……。


鳴上(なんだか眠くなってきた……少し目を閉じよう)


>……


?「おや……」

?「また貴方様でしたか」

>気付くとそこは車の中。

>もう利用する事はないだろうと思っていたベルベットルームの中のようだった。


イゴール「ようこそ、ベルベットルームへ」

マーガレット「お久しぶりですね」

鳴上「……ここは」


>意識がぼんやりとする……

>何故またこの場所にいるのだろう。

>これはただの夢なのだろうか?

>それとも……

イゴール「フフッ、どうやら御客人とは切っても切れぬ縁で結ばれているようですな」

イゴール「再会の記念に御客人のこれから一年を占ってさしあげましょう。何時の日かのように」


>イゴールの前にタロットが並べられ一枚ずつめくられていく。

>その結果は見覚えのあるものだった。


イゴール「ほほう。貴方もつくづく数奇な運命をお持ちのようだ」

イゴール「また私達も誠意をもって力添えせねばなりませんな」

鳴上「それは……どういう……」

マーガレット「お客様の持つワイルドの力。それをまた使う日が訪れたという事です」

イゴール「詳しい話はまたいずれ……。どうやら今日はもうお時間のようです」



イゴール「それでは次会う時まで。ごきげんよう……」


>……

『……次は巌戸台、巌戸台。モノレールご利用のお客様はお乗りかえです。お忘れ物なさいませんようお気をつけ下さい』

鳴上「……ん。着いたのか」

鳴上(……。それにしてもさっきの夢は……いや、今は考えるのはよそう。とりあえず寮へ行かなければ)


03/30日(金) 曇り

【昼間】

巌戸台駅


鳴上(今日からここで一年……か)

鳴上(修学旅行で一度来たからまったく知らない土地じゃないけど、やっぱりハイカラな場所だ)

鳴上(……さて、寮の場所はっと)

>……


学生寮前


>建物の前に女性が一人佇んでいるのが見える。

>女性もこちらの存在に気付いたようだ。


?「君だな。今日からこの学生寮に新しく入る鳴上悠くんというのは」

鳴上「はい、そうです」

?「私はこの寮の管理責任者の桐条美鶴だ」

鳴上「鳴上です。今日からお世話になります」

美鶴「長旅ご苦労だった。すぐに部屋へ案内しよう」


学生寮 ラウンジ


美鶴「……さて事前に説明は聞いていると思うが、今回君の入寮に関して少し不手際があってね。現在使われている寮での空き部屋の確保が出来なかった為、しばらくの間はこの先日まで閉鎖されていた寮で生活をして貰いたいという訳だ」

鳴上(生活のにおいがまるでない場所だ……)

美鶴「本当に申し訳ない。君が来る前にもう清掃は済んでいるから汚いという事はないだろうが、この広い寮で一人きりの生活になってしまうという事なんだ」

鳴上「いえ、屋根があって雨風が凌げる場所で生活出来るなら、そのくらいはどうという事はないです」

美鶴「頼もしいな。すまないがよろしく頼むよ」

鳴上「はい。……?」

>何処からか視線を感じる……。

>階段の方だ。

>階段の上から制服姿の男がこちらを見下ろしている……?


美鶴「? どうかしたか?」

鳴上「あの、他にも人が……あれ?」


>少し目を離した隙に人影は消えていた……。


鳴上(気のせいか……?)

美鶴「なんだ、幽霊でも見たような顔をして」

鳴上「……いえ、なんでもないです」

美鶴「そうか。さあ、君の部屋はこっちだ」

>二階へと続く階段をのぼっていくが、その先には誰もいない。

>やはりこの場所には鳴上と美鶴の二人しかいないようだ。

美鶴「二階の一番奥の部屋。今日からここが君の場所だ。大きな荷物ももうこの中に運んである」

鳴上「ありがとうございます」

美鶴「……」


>美鶴は鳴上の部屋の扉をじっと見つめながら黙っている。


鳴上「桐条さん?」

美鶴「……。鍵はなくさないようにな。何かあったらすぐに一階カウンターの回線から連絡してくれ」

鳴上「あ、はい、わかりました」

美鶴「近日中に私とは別にもう一人住み込みの寮の責任者を手配するから心配には及ばないとは思うがな」


>そういってごまかすように笑い、鍵を渡すと美鶴は去っていった。

自室

>部屋の中はダンボールでいっぱいだ。


鳴上「学校が始まるまでにはきちんと整理しておかないとな」


>とりあえずすぐに必要な荷物が入っている箱から順に開けていく事にしよう。







鳴上(ええと、制服は……あ)


>ダンボールの中から出てきたのは八十神高校の制服だ。


鳴上(うっかり入れてきてしまった)

鳴上(これを着る事はもうないんだな)

鳴上(…………)

>ダンボールから次々と思い出の品が溢れてくる。

>陽介の絆創膏、千枝とお揃いのリストバンド、雪子から貰った神社のお守り、完二お手製のストラップ、りせのサイン入り写真、直斗の探偵バッジ……

>他にも八十稲羽で得た大事なものがそこに物だけではなく沢山詰まっていた。

鳴上(落ち着いたらみんなに連絡してみよう)

鳴上(……おじさんも菜々子も元気にやってるかな)


>鳴上と菜々子と堂島の三人がうつる写真を飾り、今日はもう休む事にした……。


03/31(土) 曇り

【朝】

>春休みはまだ続いている。

>残りの荷物を片付けてしまおう。

>……


【昼間】

自室

>意外と早く終わらせる事が出来た!

鳴上「こんなものでいいかな」

鳴上「さて、これからどうしよう」

鳴上「周辺の確認も兼ねて散策でもしてみようか」

>修学旅行の時の記憶を頼りに街へ出かける事にした。


学生寮前

美鶴「なんだ出かけるのか?」

>寮を出たところで美鶴と会った。

鳴上「こんにちは、桐条さん。少しこの辺りに何があるのかきちんと見ておこうと思いまして」

美鶴「一人で平気か?」

鳴上「はい。一度来た事のある場所ですし、迷子になるという事はないと思います」

美鶴「そうか。君の様子を見に来たんだがあまり心配はいらなそうだな。ならば寮の留守は私に任せて行ってくるといい」

鳴上「いいんですか?」

美鶴「ああ。ここで少しやる事もあるからな」

鳴上「じゃあ、よろしくお願いします」

>留守を美鶴に任せて行く事にした。

>……

>ポロニアンモールでショッピング。巌戸台駅周辺を食べ歩き。長鳴神社でお参り。

>刺激溢れる都会の街並みを楽しんだ。

【夜】

学生寮 ラウンジ

鳴上「調子に乗って食べすぎた。お腹がいっぱいだ……」

>ラーメン、あんみつ、今日のオススメ定食、新作ハンバーガーセット、たこ焼き(たこなし)……

>色々な具が胃の中でまだ消化しきれず半端に混ざり合っている……

美鶴「……君か。おかえり」

美鶴「どうした? 顔が青いぞ」

鳴上「いえ、ちょっとはしゃぎすぎて……今日はもう休みます」

美鶴「? おだいじにな」

美鶴「そうだ。明日新しく寮の責任者がやってくる事になっている。ひとつよろしく頼むよ」

鳴上「わかりました。それじゃあ、おやすみなさい」

美鶴「おやすみ」


04/01(日) 晴れ

【朝】

>春休みはまだ続いている。

鳴上「今日は一日部屋でのんびりしていよう」

【昼間】

>テレビを点けた。

『あなたの テレビに 時価ネットたなか~』

>耳に残る音楽が流れてきた。

『みんなの 欲・の・友♪』

鳴上「……今日はめぼしい商品は売ってないな」

>適当にチャンネルをあわせてぼーっとテレビを見ながらすごした。


【夜】

コンコン

>扉をノックする音が聞こえる。

美鶴「私だ。少し出てきて貰っていいか?」

鳴上「はい、今開けます」

ガチャ

美鶴「夜遅くに済まない。昨日言っていたこの寮に住み込みで働いてくれる者が到着したので紹介したいんだが、下におりてきてくれるか」

鳴上「わかりました」

鳴上(どんな人だろう)


学生寮 ラウンジ

>カウンター前に銀色のトランクケースを持ち水色のワンピースを着た女性がいる。

?「美鶴さん、彼がそうですか?」

美鶴「ああ、彼が一昨日からここに住んでいる鳴上悠くんだ」

鳴上「鳴上です、初めまして」

?「初めまして。私は、今日からここの責任者として住む事になりました、アイギスです。以後よろしくお願いします」

鳴上「こちらこそよろしくお願いします」

鳴上(アイギス……外人さんか?)

美鶴「これからは寮で何かあったらアイギスに相談するといい」

鳴上「はい」

美鶴「さ、アイギス。君の部屋に案内しよう」

アイギス「わかりました」

アイギス「……」

鳴上「?」

>階段に上がる間際、アイギスはこちらを振り返り鳴上の事をじっと見つめてきたが、すぐに上へとのぼっていってしまった。

鳴上(なんだか不思議な人だな)


学生寮 四階


美鶴「アイギス、彼の事はくれぐれもよく頼む」

アイギス「“寮で何かあったら”ですか」

美鶴「……」

アイギス「……」

美鶴「ただの取り越し苦労で終わればいいのだがな」

アイギス「……そうですね」







>……

>それから数日。

>鳴上の春休みは何事もなく平和に過ぎていった。

>あの夜を迎えるまでは……


04/04(水) 雨

【夜】

>外は雨が降り続いている……

学生寮 ラウンジ

>消灯を終え、すっかり暗くなっている一階に鳴上はおりてきた。

>部屋には洗面台はあるもののトイレは備わってある筈もなく、この場所にしかない為だった。

ジャー……

鳴上(……今日はもう寝よう)

>うっすらと眠気を覚える。

>もうあと何日かすれば学校が始まる。

>それまでに早寝早起きを体に慣れさせなければならないかもしれない……

鳴上(……そういえば)

>トイレから出ると鳴上は階段にいかずラウンジの方へと向かう。


>そこにはもう映る事のないブラウン管のテレビが一台。

鳴上(雨の夜はどうしてもテレビが気になって仕方ない。習慣って怖いな)

>時刻はもうすぐ0時をまわろうとしている……

鳴上(まあ、もう何も起きないだろうけど)


04/05(木)

深夜 0:00……

>…
>……
>………

鳴上「……。うん、何も起きない。何も映らない」

鳴上「……」

――ドクン

鳴上「っ!?」

鳴上「今、一瞬だけど変な気配を感じたような……」

鳴上「まさか、な」

>だが、次に待っていたのは耳に届く確かな物音と大きな振動だった。

鳴上「なっ、なんだ……!?」

>いつの間にか寮の扉が何者かに破られている

>そこには明らかに人ではない何かがいる。
>だが自分は“それ”が何であるかを知っている……

鳴上「こ、これはっ……」





鳴上「シャドウ……!?」

>それはかつて鳴上が仲間達と共に戦った時に対峙していたシャドウに見えた。

鳴上(だけど何故こんな所に!?)

鳴上(そもそもここはテレビの中の世界でもない。現実世界だ……!)

鳴上(何処かのテレビから出てきたのか?いや、それを考えるよりもまず――)

鳴上「逃走だ!」

シャドウ「グオアァァアアアア!!」

>襲ってくるシャドウの攻撃をかわしながら鳴上は一気に階段をかけのぼる。

鳴上(アイギスさんを起こさなきゃ……!)

学生寮 四階

>ここの大きな扉の向こうがアイギスの使っている部屋だと聞いている。

鳴上「アイギスさん! 起きてくださいっ大変ですっ、アイギスさん!」ドンドンッ

>扉を叩いて呼びかけるがアイギスの返事はない……

鳴上(くそっ、こうしている間にもシャドウがっ……!)

>振り返るとそこには階段をのぼりきろうとしているシャドウの姿が見える。

>このままではアイギスも自分もどうなってしまうかわからない。

鳴上(こんな時にペルソナが呼べれば……でもここはテレビの中でもないし、それに今はもう……)





アイギス「鳴上さん、下がっていてください」

鳴上「! アイギスさん!?」

バンッ!

バララララララ…

>扉が勢いよく開きそれと共に聞こえたのは機関銃を思わせるような音だった。

>いや……『ような』ではない。

>機関銃の音だった。

>そして、それはアイギスの手から、正確には指から発射されている。

アイギス「鳴上さん、こちらへ」

>シャドウがアイギスのそれに怯んだ隙をついて、彼女は鳴上を連れて屋上へと走った。

学生寮 屋上

アイギス「貴方にはこれを」

鳴上「これは……」

>アイギスから手渡されたものは、ゴルフクラブ。それと……

鳴上「銃……?」

アイギス「そうです。弾は装填されていませんが」

鳴上「そんなものどうして。それに貴女は一体……」

アイギス「それを説明している暇はありません。今は戦闘体勢を整えてください」





アイギス「敵シャドウ、来ます」


グオアァァアアアア!!!

>人とも獣とも似つかない雄叫びが雨の夜の屋上に轟く。

>ついにシャドウに追いつめられてしまった……

アイギス「心配しないで。貴方にはあれに立ち向かえるだけの力がある。そうでしょう?」

アイギス「それに私がいます」

アイギス「私が貴方を、守ります」





アイギス「――ペルソナッ!」

>アイギスの頭上に現れたそれがシャドウに立ち向かっていく。

鳴上「っ……」

>……

>……そうだ。自分にだって

「ぺ、」

>あれに立ち向かえるだけの

「ル、」

>力が

「ソ、」

>……ある――!

「ナ……!」



>持っていた銃を無意識のうちに自分のこめかみに突きつけている。

>恐怖と昂揚の混じった感情が鳴上を包む。

鳴上「――こいっ、イザナギ!」



ズガンッ――!

>鳴上の頭上に現れたもの。

>それは紛れもなく、彼のペルソナだった。

>アイギスのペルソナに続き、シャドウへと立ち向かっていく。

>そして先ほどまで脅威でしかなかったそれが倒されるまでそう時間はかからなかった。


アイギス「敵シャドウの殲滅を確認しました」

鳴上「倒したの……か……」

アイギス「! 鳴上さん!? 鳴上さん!」

>急にアイギスの声も意識も遠くなっていく

>どこかに引っ張られていく……


>……

イゴール「ようこそ、ベルベットルームへ」

イゴール「再びお目にかかれましたな」

イゴール「どうでしょう、久しぶりに力を使った感想は」

>……

イゴール「これから先、またしても貴方に試練の時がこうして度々とやってくる事でしょう」

イゴール「それにはより強いペルソナを宿していく必要があるのは御客人も過去の経験から理解している筈です」

マーガレット「しかしながら残念なお知らせがあります」

マーガレット「お客様が以前まで使われていたペルソナ全書ですが、ページが全て白紙の状態に戻ってしまいました」

マーガレット「ですので、また一から作成・登録をしていただく事になります 」

イゴール「それに伴い、新たな環境でまた新たなコミュニティを築かれるのがよろしいでしょう」

イゴール「難しい事ではありません。また同じ事をすればよいだけの話です。フフッ……」

イゴール「もう時間のようですな。またこの鍵を貴方に授けましょう。次からはご自身の意志でここを訪れるといい」

>契約者の鍵を手に入れた

イゴール「それでは、いずれまた……」


おきのどくですが ペルソナぜんしょは きえてしまいました

という所で今回は終了

自分のイメージとしては

・引き継いでるもの
ステータス 所持金 一部のアイテム

・引き継いでないもの
ペルソナ全書 レベル

ってつもりで書いてるよ。

レベルに関しては、しばらくペルソナ使ってなかったから体が忘れてるだとか、テレビの中とは勝手が違うだとか、そもそも月光館学園での生活の経験値をまだ積んでいないからだとか、そういう理由で最初からみたいな、そんな感じで


では、投下

鳴上「ん……」

鳴上(ここは……?)

美鶴「! 気付いたか。気分は悪くないか?」

鳴上「桐条さん……?」

>いつの間にか寮のラウンジのソファに寝かされていたようだ。

>傍には美鶴と……アイギスもいる。

>アイギスが顔を覗き込んできた。

アイギス「呼吸、脈拍、体温、共に正常です」

アイギス「よかった……」

>今まで強ばっていたアイギスの表情が弛んだのが見えた。

アイギス「あのまま目覚めなかったらどうしようかと……」

鳴上「アイギスさん……」

>ソファからゆっくりと体を起こす。

>見渡した一階の様子は、扉も破られていないし何も無かったかのように綺麗になっている。

美鶴「まだあまり無理をしない方がいい」

鳴上「いえ、大丈夫です」

鳴上「それよりも、あの……」

>突然姿を現したシャドウ。

>これも夢だと思いたいが……

美鶴「きっと色々聞きたい事があるだろうがその話はまた明日しよう」

アイギス「今夜はこのまま部屋で休まれた方がいいと私も思います」

美鶴「用心の為、今晩は私とアイギスが一階に待機する」

美鶴「もし何かあったら、君にもすぐ知らせるからゆっくり眠っているといい」

鳴上「……。わかりました」

>言葉に甘えて自室で休む事にした。

>……


04/05(木) 雨 自室

【昼間】

>どうやら昼過ぎまで寝てしまったようだ。

>起こされなかったところをみると昨夜はあれから何もなかったのだろう。

>一階へおりてみる事にした。


学生寮 ラウンジ

美鶴「おはよう」

鳴上「おはようございます」

美鶴「やはりだいぶ疲れていたようだな」

鳴上「はい。こんな時間まですみません」

美鶴「いや、気にしなくていい。もしまだ具合が優れないような病院を手配するが」

鳴上「いえ、そこまでは……」

美鶴「そうか」

鳴上「……」

美鶴「……」


アイギス「おはようございます、鳴上さん」
鳴上「……あ、おはようございます」

美鶴「よし、人も揃った事だ」

美鶴「色々と積もる話をしようじゃないか。立ち話もなんだ、座るといい」

>……

美鶴「まずは改めて彼女の紹介からといこうか」

>アイギスがすっとソファから立ち上がる。

アイギス「私はアイギス。シャドウ討伐の為に造られた機械。桐条グループが開発した兵器です」


鳴上「シャドウ討伐の……兵器!? それに桐条グループって……」

美鶴「ああ。察しの通り、私の実家だ」

アイギス「昨夜すでにご覧になったかと思いますが、私にはシャドウに対抗する為の武器とペルソナ召喚能力が備わっています」

美鶴「そして私もまたペルソナ使いの一人だ」





美鶴「君と同じく、な」

鳴上「!」

美鶴「ここに来る前に君の事とその周辺の事を少し調べさせて貰った」

美鶴「去年、稲羽市を騒がせていた連続怪死事件及び連続失踪事件。それにはシャドウが絡んでいた……間違いないか?」

鳴上「……」

美鶴「そしてその事件を解決に導いたのは君とその仲間達のようだ。ペルソナの能力を使ってな」

鳴上(凄い……そんな事まで……)

美鶴「まあ、その話はまたいずれ詳しく聞かせて貰うとしよう」

美鶴「実はな、私とアイギスも今から三年ほど前に起こったある事件絡みでシャドウと戦った経験があるんだ」

アイギス「その頃に無気力症という原因不明の病が流行っていたのを覚えていらっしゃいますか?」

鳴上「確か冬頃に一気に患者が増えて、でも原因がわからないまま春にはもう殆どの人が完治したっていう……」

鳴上「まさかそれが……!?」

>美鶴とアイギスは頷く。

美鶴「その原因を排除したのは私達とその仲間だ」

美鶴「あの時にシャドウは一掃した。……そう考えていたんだがな」

鳴上「そこで昨夜のあれ、ですか」

美鶴「ああ……」

美鶴「もっとも、またシャドウが現れるかもしれないという予測は少し前から既にあったんだがな」

鳴上「予測?」

アイギス「はい。今から半年ほど前でしょうか。先のシャドウの事件を解決し、私は眠りについていたのですが……」

アイギス「いい現せない『不安』と共に再び目覚めたのです」

アイギス「また人類を脅かすシャドウが現れるのだという『悪い予感』がしたのです」

美鶴「さっき彼女が言った通り、アイギスはシャドウ討伐の為の兵器だからな。そういう予感があっても不思議ではないという事でしばらく様子をみていたんだ」

アイギス「ただの思い違いであって欲しい。そう願っていましたが……」



アイギス「私の『悪い予感』は当たってしまったようです」

鳴上「……」

鳴上「その原因に心当たりは?」

アイギス「今のところはまだ、何も」

アイギス「シャドウが現れた理由、その目的、現れる時期等、あの時とはまた状況が違っていてなにもかもが不明です」





美鶴「そこでだ」

美鶴「急な話であるのを承知で言わせて貰う」

美鶴「君の経験を見込んで、今回のシャドウ騒ぎ解決の為に協力を頼みたい」

美鶴「シャドウと戦えるのはペルソナ使いだけだ。本当なら以前の仲間達にも協力を頼めればいいんだが、あれから時間も経っていてこの街を離れているものも多い」

美鶴「人手が不足している、という訳だ」

鳴上「だからといってこのままシャドウを野放しにしておく訳にもいかない」

美鶴「そうだ」

鳴上「……」

鳴上「俺もシャドウに好き勝手されるのは御免です」

美鶴「それじゃあ……」

鳴上「俺で力になれるなら、よろこんで」

美鶴「……ありがとう。そう言ってくれて私も嬉しい」

アイギス「鳴上さん、これを」

>アイギスから昨日使った銃を渡される。

アイギス「これはペルソナの召喚を安定させる為の召喚器です。肌身離さず持っていて下さい」

鳴上「そんなものまであるのか」

鳴上(テレビの中でもないのにペルソナを呼べたのはこれのおかげって訳だな)

美鶴「それからこれもだ」

>美鶴から赤い腕章を受け取った。

>S.E.E.S と書かれている。

美鶴「君には特別課外活動部という表向きは学校の部活動に入って貰う事になる。実態はもちろんシャドウ討伐のための組織だ」

美鶴「私が顧問、アイギスもOBという形での参加になる」

アイギス「改めてよろしくお願いします、鳴上さん」

鳴上「よろしくお願いします」

美鶴「現在のメンバーは私を含めて四人だ。まだ人数は少ないが、他にまだ心当たりがない訳でもない。人員集めは私がなんとかしよう」

鳴上「四人?」

美鶴「ああ。今日からまた一人、この寮に新しくやってくる者がいる。それが四人目のメンバーだ」

アイギス「話はうかがっていましたが、一体誰なのでしょうか。前のメンバーの方ですか?」

美鶴「それなんだがな……」

>そこで話を遮るように学生寮の扉が開いた。

?「ただいま到着致しました」

美鶴「ああ。待っていたよ」

アイギス「!」

>アイギスの表情が驚きに変わる。

美鶴「紹介しよう。彼女が話に出ていた四人目だ」

?「初めましてみなさん。本日付けで特別課外活動部に所属する事になりました、対シャドウ兵器、個体名メティスと申します」

アイギス「何故、メティスが……」

メティス「“初めまして”、姉さん」

アイギス「……。初めまして」

鳴上「姉さん? 姉妹なのか」

美鶴「ああ。アイギスの『予感』を受けて万一の為にと新たに造られた最新型の対シャドウ兵器だ」

メティス「はい。私は姉さんのデータや記憶を元にして造られたと、そう聞いています」

アイギス「……なるほど、そういう事でしたか」

美鶴「そうだ。メティスの姿形や能力などはアイギスを頼りに極力“再現”をしているが、厳密には君の知っているメティスとは別物という事になる。特に、情緒面に関しては、な」

アイギス「わかりました」

アイギス「今日からよろしくね、メティス」
メティス「はい」

>メティスの表情が少し和らいだ。

メティス「鳴上さんも、よろしくお願いします」

鳴上「ああ、よろしく」

>鳴上たちの前に新しく現れたシャドウの存在……

>それに立ち向かう為の組織がここに結成された。

>みんなの強い決意を感じる……

>『0 愚者 特別課外活動部』のコミュを入手しました

>『0 愚者 特別課外活動部』のランクが1になった



美鶴「先にメティスの部屋を案内しよう。話はまたあとだ」

>……

>その後、特別課外活動部のこれからについてみんなで少し話しあった。


トラブルがあったので一旦終了

また後でこれたらきます

翌日――

04/06(金) 晴れ 自室

【朝】

>今日から学校だ。

>月光館学園の三年生として新たに学園生活が始まる。

コンコン

アイギス「おはようございます。少しいいですか?」

鳴上「はい、今開けます」

ガチャ

鳴上「おはようございます」

メティス「おはようございます、鳴上さん」

鳴上「メティスもおはよう。……って、その格好は?」

>メティスは制服を身につけている。

>鳴上と同じく月光館学園の制服だ。

アイギス「彼女も今日から月光館学園に三年生として通う事になりました」

鳴上「メティスが?」

メティス「はい。これから平日は美鶴さんも姉さんも貴方のそばにいる事が出来ません。日中貴方を一人にさせておくよりもこの方が安全だと判断した為です」

鳴上「そうか。よろしく」

メティス「こちらこそ」

アイギス「……」

アイギス「今日は転入初日ですから二人で登校してください」

メティス「通学までの順路、時間、交通費等諸々のデータは既に入手済みです。今から出発すれば、予期せぬ事態が起こらない限り、規定の時間より10分前の登校が可能です」

鳴上「あ、ああ。じゃあ行こうか」

アイギス「二人とも、気をつけて。いってらっしゃい」

鳴上「いってきます」


>……

月光館学園

鳴上「やっぱりジュネス三個分はありそうな大きさだ」

メティス「じゅねす? 私の中に該当するデータが存在しません。回答の入力を要請します」

鳴上「こっちの話だから気にするな」

メティス「なるほど、了解であります」

鳴上(うーん……)

鳴上(アイギスさんもそうだけど、こうしてると本当に人間にしか見えないな)

鳴上(でも話すとやっぱり人間とは何処か違う。アイギスさんはそうでもないんだけど)

メティス「? どうかされましたか」

鳴上「いや、なんでもない。それよりもまずはクラスを確認してそれから職員室に行こうか」

メティス「了解です」

>クラス分けの張り紙を見た。

>鳴上もメティスもA組のようだ。


職員室

鳴上「失礼します」

?「あ、転入生の鳴上悠くんとメティスさんだね」

>若い男性教員が話しかけてきた。

?「僕は君たちのクラスの担任で世界史を教えている橿原淳です。よろしく」

淳「今日はこれから講堂で集会があるのでまずそっちに案内します」



>……

月光館学園 講堂

>校長の長い話を聞いた……


月光館学園 3-A 教室

【放課後】

>特に問題もなく初日を終えた。

メティス「鳴上さん、よろしいですか?」

鳴上「ん? どうした」

メティス「今日は放課後になったらポロニアンモールへ来るようにと美鶴さんから仰せつかっています」

鳴上「わかった。一体なんの用だろうな」

メティス「辰巳東交番の前で待っているとしか聞いておりませんが……」

鳴上「交番?」

>とりあえず言われた通りメティスと一緒にポロニアンモールへ行く事にした。


>……

ポロニアンモール 辰巳東交番前

メティス「お待たせしました」

美鶴「いや、こちらこそ突然こんな場所まで呼びつけてすまない」

鳴上「交番に何かあるんですか?」

美鶴「ああ、紹介したい人がいてな。行こう」


辰巳東交番

?「ん? 桐条のお嬢さんか」

?「……」

>制服の警官とスーツ姿の男が一人いる。

美鶴「こんにちは。突然申し訳ありません」

?「いや、構わない。もうおおまかな話は聞いているよ」

美鶴「鳴上、メティス。こちらはこの辰巳東交番に勤務している黒沢さんだ」

美鶴「黒沢さんはこれからの戦いに備えて武器や防具を調達して下さる方だ」

黒沢「タダではないがな。よろしく」

>制服の警官、黒沢は頭を下げた。

黒沢「こちらは周防達哉さん。俺と同じく警官だ。この人の介添えもあって武器の調達が出来るんだ」

達哉「……」

達哉「周防だ」

>無口そうな男、周防から挨拶をされた。

メティス「了解しました。よろしくお願いします」

鳴上「よろしくお願いします」

達哉「……」

>周防がこちらをじっと見ている。

鳴上「あの、何か……?」

達哉「……いや、すまない。いい瞳をしているなと思っただけだ」

>周防は僅かだが笑みを浮かべた。

達哉「事情は大体聞いている。俺達も出来る限りの協力をさせて貰う。困った事があったら相談しろ。よろしくな」

>周防に握手を求められた。

>周防の厚意が伝わってくる……


>『ⅩⅨ 太陽 周防達哉』のコミュを入手しました

>『ⅩⅨ 太陽 周防達哉』のランクが1になった

鳴上「ありがとうございます」

達哉「ああ、またな」

>辰巳東交番を後にした。

ポロニアンモール

メティス「……」

鳴上「ん、どうかしたのか?メティス」

メティス「いえ。ただ周防さんから、私達と近い何かを感じとったものですから」

鳴上「私達と近い何かって?」

メティス「……。きっと気のせいでしょう」
鳴上「?」

>……

美鶴「二人とも今日はもう寮に帰って休むといい。転入初日で疲れただろう」

メティス「今後の作戦についての話し合いなどは行わなくていいのですか?」

美鶴「相手の出方が解らない以上は、こちらも何をすべきかまだ考えられないからな。今のところ、日夜問わずに周囲に極力注意を払うという他は出来ないだろう……悔しい話だがな」

メティス「学校を終えたらただちに寮内待機が望ましいという事ですね」

美鶴「それが一番かもしれんな」

美鶴「だが、非常時以外の行動は現状では君たちの自由にしてくれていて構わない」

美鶴「シャドウに備えて鍛錬をするのもいいが、君にとっては最後の高校生活なんだ。勉強なり部活なりに励んでくれていいんだぞ」

美鶴「進路が決まる大事な時期でもあるしな」

鳴上(進路、か。……)

美鶴「……では、私は今日はこれで失礼するよ。他に気になる事があればアイギスに聞くといい」

鳴上「はい、それじゃあ」

メティス「お気をつけて」

>美鶴と別れてメティスと二人で寮に戻る事にした。


今日はこれで終了です。

ペルソナシリーズの色々なところからキャラ引っ張ってきてて、しかも設定捏造もしてるから、今後これ誰だよと思う人も沢山出てくるかも。

ではまた次回。

目をそらすな<●><●>

って感じで投下

【夜】

学生寮 ラウンジ

アイギス「おかえりなさい」

鳴上「ただいまです」

メティス「ただいま戻りました、姉さん」

アイギス「学校はどうでしたか?」

メティス「まだ初日ですのでなんともいえませんが、特にこれといった問題点は見受けられませんでした」

メティス「これより着替えて一階にて待機に入ります」

>メティスは先に部屋へと戻っていった。

アイギス「鳴上さん」

アイギス「あの子の事……メティスの事、どうかよろしくお願いします」

鳴上「? はい……」

鳴上(本来なら俺の方がよろしくされるって話じゃなかったっけ?)

アイギス「あの子には学ぶべき事がまだ多い。シャドウと戦うという為だけに造られたけれど、それ以外の事を知ってはいけないという訳はないと思うんです」

>アイギスが優しく微笑む。

>メティスには見られない表情だ。

アイギス「あの子を見ているとかつての私を思い出します」

鳴上「そういえばアイギスさんを元に造られたって言っていましたね」

アイギス「ええ。まさかこんな形で再会する事になるとは思いませんでした」

アイギス「……いえ、正確には私の知っている彼女ではないのですけれどね」

鳴上「それはどういう……?」

アイギス「……」

>アイギスは複雑そうに言い淀んでいる。

>やはり機械にしては人間のようなところがあるように思えた。

アイギス「この話は少し長くなる割にはあまり面白い事ではありません。機会があればいずれお話しましょう」

鳴上「はい」

>……

【深夜】

自室


>ベッドの中……

鳴上(……)

鳴上(なんだか立て続けに色々あって疲れている筈なのに、寝付けないな)

鳴上(今夜は雨じゃないけどやっぱりテレビが気になるし……)

>ベッドに横になったまま視線だけテレビの方へと向ける。

>……

鳴上(……!?)

>何かがぼうっと浮かび上がってくるのが見える。

>しかしそれはテレビの画面にではない。

>鳴上の部屋の空間にだ。

>ヘッドホンを下げ月光館学園の制服を着た少年の姿がそこにはあった。

>どこかで見覚えがあるような気がする……

鳴上(……寮に来た日に階段にいた男?)

?「……」

>少年は前髪に隠れた片目をこちらに向けて鳴上を見つめていたが黙ったままで、その場ですぐに姿が消えてしまった……

鳴上(一体なんなんだ?)

鳴上(どうして部屋に……)

鳴上(……)

鳴上(そっとしておこう……)

鳴上(……ねむ……い……)

>急激に酷い眠気に襲われた……

>驚く間もなく目を閉じる事しか出来なかった……


04/07(土) 晴れ 自室

【朝】

>昨夜は妙なものを見た気がする。

>だが、なんだったのかはあまり考えたくない。

>学校に行かなければ……

学生寮 階段

>三階からおりてきたメティスと遭遇した。

メティス「おはようございます、鳴上さん」

鳴上「ん、おはよう」

メティス「顔色が優れないようですが、どうかされましたか?」

鳴上「いや……」

メティス「日々の自己管理はしっかりしていただかないと、有事の際に支障をきたします。注意してください」

鳴上「気をつけます……」

【昼休み】

月光館学園 3-A 教室

>メティスがクラスの女子に囲まれている。

>どうやら色々と質問攻めにあっているようだ。

鳴上(ボロが出ないといいけどな……)

男子A「なあ、鳴上ー。お前って何処のガッコからきたの?」

男子B「そっちの学校に彼女とかいる?」

男子C「つーか、昨日も今日もメティスちゃんと一緒に登校してきたってマジ? どういう関係?」

>こっちはこっちで質問攻めにあった……


【放課後】

メティス「鳴上さん、帰りましょう」

鳴上「あ、ああ……」

>クラスからひそひそと話し声がする。

>とりあえず教室から出た。


月光館学園 昇降口

鳴上「なあ、メティス」

メティス「はい、なんでしょう」

鳴上「えっと……もう登下校の道も覚えたしさ、行きも帰りも一緒にいなくても平気だから」

メティス「平気ではありません」

鳴上「え?」

メティス「姉さんから学校では鳴上さんと一緒にいるようにと言われています」

鳴上「だからって男子トイレにまで一緒に来ようとするのは流石にどうかと……」

鳴上「それに『一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいし』とか思ったりしないのか?」

メティス「鳴上さんは『一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいし』なのですか?」

鳴上「いや、そういう訳じゃなくて」

鳴上(うーん……)

鳴上「俺と一緒にいるって事にそれほど強要されなくて良いっていうか。アイギスさんの言ってるのは出来るだけって意味だろ?」

メティス「だから体育の授業などは除き、こうして鳴上さんと一緒にいるよう努めています」

鳴上「でもさ、それ以外にメティスだって他にしたい事とかあるだろ?」

メティス「他にしたい事?」

メティス「……」

メティス「……その問いに該当するものはありません」

メティス「私の大事は貴方の傍にいる事であります」

鳴上「アイギスさんに言われたから?」

メティス「……。そうです」

鳴上「……」

鳴上「メティスはアイギスさんの事が好きなんだな」



メティス「……え?」

鳴上「そうだよな。お姉さんなんだもんな。そりゃ、期待に応えたいって思うのは当たり前か」

メティス「……」

メティス「はい。私は姉さんの事が好きです。何故だかは解りませんが、まだ出会ってもいない頃からそうでした」

メティス「だから姉さんの意に背いて嫌われたくはありません……」

>メティスは顔を俯かせている。

>それは想像するだけでも悲しい事なのだろう。

鳴上「そういう事なら仕方ない、か」

>ふと、昨夜のアイギスの言葉が蘇る。

『あの子の事……メティスの事、どうかよろしくお願いします』

『あの子には学ぶべき事がまだ多い。シャドウと戦うという為だけに造られたけれど、それ以外の事を知ってはいけないという訳はないと思うんです』

鳴上(だから一緒にって事か)

鳴上「じゃ、真っ直ぐ帰るか」

メティス「はい」

>寄り道せずにメティスと一緒に寮まで帰った。

>空にうっすらと丸い月が浮かんでいるのがふと目に止まった。


【夜】

学生寮 ラウンジ

アイギス「おかえりなさい」

メティス「ただいま帰りました」

美鶴「お邪魔しているよ」

鳴上「こんばんは、桐条さん」

美鶴「今日は二人に少し話があってね。着替えないでいいからそこにかけてくれ」

>美鶴に促され、ソファに座った。

鳴上「話ってなんでしょうか」

美鶴「ああ。まずは君に聞きたい事がひとつ」

美鶴「君が以前戦っていたシャドウについての詳しい情報が欲しい」

美鶴「何処で、何時、どういう風にして出現していたのか」

鳴上「それは……」

>鳴上はマヨナカテレビの事について詳しい事情を説明した。

美鶴「テレビの中の世界か……それは実に興味深い話だ」

アイギス「影時間の中に現れていたタルタロスとはまた違ったもののようですね」

鳴上「影時間? タルタロス?」





美鶴「君は一日と一日の間に普通の人間には感知出来ない時間が以前まで存在していたと言ったら信じられるか?」

鳴上「なんですかそれ」

美鶴「私達が戦っていたシャドウはその時間にのみタルタロスと呼ばれる場所に出現していたんだ」

アイギス「タルタロスというのは鳴上さんが今通っている月光館学園の影時間での姿の事を言います」

鳴上「あの学校がそんな場所に!?」


美鶴「もちろん三年前の戦いで今はもう影時間もタルタロスもその存在をなくしている」

アイギス「そしてタルタロス以外に、一ヶ月に一度、満月の夜の影時間……街中に大型シャドウが現れるという法則がありましたが、これも全て前の戦いで殲滅済みです」

鳴上「……」

>自分もシャドウと戦った事がある身だとはいえ、この街であった出来事に鳴上は絶句している。

美鶴「しかし、やはりというべきか……こうして今までの事例を上げてみてやっと明確な事実が一つ浮かび上がったな」


メティス「再びここに現れたシャドウの存在は、皆さんが戦ったシャドウ事件の法則にどれも当てはまっていない。そういう事ですか?」

美鶴「そうだ」

アイギス「現在の時点では、やはりタルタロスと影時間の存在を再び確認してはいません」

メティス「そして、鳴上さんのいうテレビの世界にシャドウが現れた訳でもない」

鳴上「あの時、俺はここのテレビの目の前にいた。でも、テレビに変わった様子は見られなかったし、あれは少なくともこのテレビの中からでなく突然外からやってきたんだ」

美鶴「なるほどな……」

アイギス「しかし、問題は今夜が満月の夜だと言う事です」

鳴上(そういえば……)

アイギス「過去に満月の夜に出ていた大型のシャドウは、タルタロスに出ていたものとはまた別の特殊なものでした」

アイギス「もう、姿を現す事は無い筈ですが……それでも今晩は注意をしてみる必要があるかと思います。あんな事があった後ですから」

>その場にいた皆が黙ってしまう……

美鶴「やはり、今の所は様子見しかないという所か」

メティス「マヨナカテレビというもののチェックは今後も続けてみる価値はあると思います」

メティス「話を聞く限りでは稲葉市という地域に限定されていた現象のようですが、かつてどこでも影時間になっていたという例から考えて、今後この地域では起こらないとは言い切れないかと」

鳴上「俺、昔の仲間に連絡してみようかと思います。シャドウがこの周辺だけでなく別の地域にも出現している可能性もありますよね」

美鶴「ああ、そうして貰えると助かる。少しでも手がかりになりそうな情報が欲しいからな」

>仲間とシャドウ対策についての案を出せるだけ出しあった

>今後どう出てくるかはまだ解らないが、シャドウによる被害はなんとしても食い止めなければならない……

>みんなの決意がより強まったのを感じる。

>『0 愚者 特別課外活動部』のランクが2になった


>……

>0時を過ぎてからしばらくの間、様子を探る為この場に待機する事になった。


【深夜】


>……

>時刻は0時をまわったが特に異変を感じる事はない……

美鶴「ふむ、何も起こりはしないな……」

アイギス「影時間になってもいないし、タルタロスが現れている様子もないようです」

美鶴「今夜はもう出来る事はなさそうだな……」

美鶴「よし、各自部屋に戻って休んでくれ。今日も一日ご苦労だった」

>……

>この静けさが逆に不安を煽る気がする……

>今夜は自室に戻り、陽介に近況を尋ねるメールを打ってからもう寝る事にした。


今回はここまでです。

過去シリーズから色々なキャラが出てきますが、基本的にはP4以外にP3やってれば問題ないと思います(たぶん)

もちろん知っていれば(とくに罪罰辺り)「あ、あのキャラか」って感じになれると思うけど、「〇年後の〇〇」というのを捏造している訳で、半分はオリキャラのような感じになっちゃってますので…

ここに出てくるメティスも3FESのメティスとはまた違う存在ですので、彼女の正体知らないしFESやってねーよって人も別に平気だと思います。

それじゃあまた次回

鳥つけてみるテスト

04/09(日) 曇り 自室


【朝】

>今日は学校が休みだ。

>!

>陽介からメールの返事がきている。

>あちらは特に変わった様子もなく平和なようだ。

>陽介に電話をかける事にした。


>……

ガチャ

陽介『誰かと思えば相棒じゃねえか! 久しぶりだな!」

鳴上「ああ、久しぶり」

陽介『って言っても、お前がこっち離れてからまだ一ヶ月も経ってないんだよなあ……なんか不思議な気分だ』

鳴上「ん、そうだな……」

>少しの間、他愛もない雑談をした。


陽介『新しい学校にはもう行ったのか?』

鳴上「ああ。その事も含めて折り入って話したい事があるんだ」

>陽介にここ数日であった出来事を説明した。

陽介『その話、マジなのか!? そっか、それであんなメールを……』

鳴上「そっちでもまた何か異変が起こったりしていないか心配になったんだけど、とりあえずは無事なんだよな?」

陽介『ああ。暢気な田舎ライフのまんまだ』

鳴上「それでも、またしばらくはそっちでもマヨナカテレビのチェックをして欲しいんだ」

陽介『オッケー。里中達にも言っとく』

鳴上「よろしくな」

陽介『ちくしょー……そっちで戦力として加勢出来ないのが悔しいぜ』

陽介『でも、オレ達に出来る事はいくらでも協力するからな!』

鳴上「ありがとう」

>顔は見えずとも、陽介の思いやりが伝わってくる……

陽介『しかしそんな事情があるなら、この話はお流れになっちまうかな』

鳴上「? なんだ?」

陽介『いやさ、GWにこっちに遊びに来れないかなって話。まだそんなに時間も経ってないのに、お前がいなくてみんな寂しいんだよ』

鳴上「……」

鳴上「俺もみんなの顔が見たいな……」

鳴上「ちょっと相談してみるよ」

陽介『本当か!? じゃあ、今から計画たてとくから、いい返事期待してるぜ!」

鳴上「ああ。じゃあ、また改めて連絡する」

陽介『おう、……負けるなよ、相棒!』


>……


>美鶴にGWの事について相談しよう。


【昼間】

学生寮 一階 ラウンジ

>美鶴、アイギス、メティスの三人が集まっている。

鳴上「桐条さん、ちょっと話したい事が……」

美鶴「どうした?」

>向こうの仲間のところでは何の異変もない事を伝え、それからGWに稲羽市へ行きたいという事を相談した。

美鶴「……なるほどな。解った。行ってくるといい」

鳴上「いいんですか?」

美鶴「ああ、もちろん。私達に止める理由はないさ」

アイギス「こちらの事は気にせずに是非楽しんできてください」

鳴上「ありがとうございます」

メティス「……」

メティス「鳴上さん」

鳴上「ん?」

メティス「私も一緒についていきます」

美鶴・アイギス「!?」

鳴上「えっ」

メティス「貴方を一人にさせておく訳にはいきません。だって……」

アイギス「メティス」

メティス「?」

アイギス「確かに私は貴女に鳴上さんと一緒にいるように言いました」

メティス「はい。だから……」

アイギス「でもね、それには限度があるの」

アイギス「鳴上さんには鳴上さんだけの世界というものがある。そこへいくら貴女の方から足を踏み入れる事が可能でも、そうしてはいけない時があって」

アイギス「今の場合はそういう事なの」

メティス「……。よく理解できません」

メティス「でも、鳴上さん一人で行くべきだと、そういう訳ですね?」

アイギス「そう」

メティス「姉さんがそう言うのなら、それに従います」

鳴上「えっと……」

鳴上「お土産買ってくるから」

美鶴「……」

美鶴「……まあ、あれだ。あまりはしゃぎ過ぎず、な」

鳴上「はい」

>……

鳴上「……あ、そうだ。少し買い物に行ってきます」

美鶴「そうか。気をつけてな」

アイギス「いってらっしゃい」

メティス「……」

メティス「あまり遅くならないようにして下さい」

鳴上「ああ。そう心配するな。いってきます」


>陽介にGWの事をメールしてから、街へと学校に必要な物を買いに出かけた。

>……

巌戸台駅周辺

鳴上(これで必要な物は揃った筈だ)

鳴上(そういえばメティスはノートとか揃えたのか?)

鳴上(こういう時こそ一緒に連れてくるべきだったな……ん?)

>ふと前方に目がいった。

>とても目立つ白いドレスを着た少女が、スケッチブックに黙々と絵を描いている様子が見える。

鳴上(あれゴスロリってやつか? 初めて見たな……ああいうの普段着る人って本当にいるんだ)

>少女が描く絵にさりげなく視線を移す。

鳴上(なんだか凄い絵だ……!)

>言葉に現すのには苦労するがとても印象深い絵を描いているようだ。

?「……なに?」

鳴上(気付かれた!)

鳴上「いや、なにも」

?「そう。……」

>少女は一瞬上げた顔をまた落として手を動かし始めた。

>鳴上の事を構おうとする素振りは見せない。

鳴上(……)

鳴上(ハイカラな髪飾りだな)

鳴上(……帰るか)

>暗くなる前に寮に戻る事にした。


【夜】


>寮に着いたと同時に雨が降り出してきた。

学生寮 ラウンジ

メティス「おかえりなさい」

鳴上「ただいま」

>メティスは鳴上が出かけた時と同じ場所に腰を落ち着けている。

>ずっとここにいたのだろうか……

鳴上「桐条さんとアイギスさんは?」

メティス「美鶴さんはお帰りになられました。姉さんは作戦室に」

鳴上「作戦室?」

メティス「姉さんが普段生活に使用している部屋です。以前はあの場所でシャドウ討伐の作戦会議などをなさっていたとか」

鳴上「へえ。そんな部屋だったのか」

>メティスの近くのソファに腰を下ろした。

鳴上「メティスは学校で必要な勉強道具は揃えたのか?」

メティス「はい。美鶴さんが揃えてくれました。鳴上さんの買い物というのは、それの事ですか?」

鳴上「まあ、そんなとこ。あとはこれ」ガサゴソ

メティス「なんですか、それは?」

鳴上「折り紙だよ」

>折り紙の袋を開けるとピンク色を一枚取って慣れた手つきで折り始める。

>ピンクの綺麗な折り鶴が完成した。

鳴上「やる」

>メティスの手のひらに折り鶴を乗せた。

メティス「やる、と言われても。どうすれば」

鳴上「好きにすればいい。どこかに飾るもよし、いらないなら捨てるもよし。……あ、目の前で捨てられるのはちょっと悲しいから、それは勘弁」

メティス「……」

>メティスは困惑しているようだ。

鳴上「俺の趣味みたいなものだ。『俺だけの世界』の一つ……っていうのは、ちょっと大げさかな」

メティス「趣味、ですか」

鳴上「メティスは他にしたい事なんて無いって言ってたけどさ、無いなら無いで探してみればいいと思うんだ」

メティス「どうしたんですか? 突然そんな事……」

鳴上「シャドウを倒すだとか、しなければいけない任務だとか、色々あるとは思うけど……そればかりに気をとられてたら疲れちゃうだろ?」

鳴上「世の中には楽しい事が沢山ある。メティスがそれをまだ知らないだけで」

鳴上「だから、まずは俺が楽しいと思う些細な事をメティスに知って貰おうと思って。……まだ難しかったらごめん」

鳴上「それでも、メティスにもきっと、『メティスだけの世界』が出来る日がくるよ」

鳴上「……」

鳴上「……部屋に戻る」

メティス「……」

>なんとなく気恥ずかしくなったので、その場を後にした……



メティス「……鳴上さんの、世界」

メティス「私だけの、世界」

メティス「……」


学生寮 二階 廊下

>上の階からアイギスがおりてきた。

アイギス「鳴上さん宛に封書が届いています。どうぞ」

>折り曲げ厳禁と書かれた封筒を渡された。

>裏に書いてあった送り元の名前は、なんと菜々子からだ!

鳴上「ありがとうございます」

>部屋に戻ってさっそく中身を確かめてみる事にした。


自室

>……

>封筒の中にはDVDが入っていた。

>可愛らしい字で『お兄ちゃんへ』と書かれてある。

>再生してみる事にした。

>……

>画面に少し恥ずかしそうにしている菜々子の姿が映った。

堂島「菜々子、もういいぞ」

>姿は見えないが、堂島の声もする。彼が撮影しているのだろう。

菜々子「お兄ちゃん、げんきですか? 菜々子とお父さんはとってもげんきです」

菜々子「菜々子、二年生になったよ。お友だちも増えてこれからとっても楽しみなんだ!」

菜々子「えっと、今日はお兄ちゃんにお願いがあってこれを送ります」

菜々子「今年のGW、菜々子とお父さんとお兄ちゃんで遊びに行きたいな。去年は無理だったから……」

菜々子「お父さんはなんとしてもお休みしてくれるって」

菜々子「お兄ちゃんからのお返事待ってます。またね」

>手を振る菜々子を最後にして映像が終わった。

鳴上「菜々子……」

>堂島家へ連絡してみる事にした。

>……


菜々子『もしもし、堂島です』

鳴上「菜々子か? 俺だよ」

菜々子『お兄ちゃん!? お兄ちゃんだ!』

鳴上「DVD見たよ」

菜々子『本当? GWは……』

鳴上「大丈夫。陽介達とも遊ぶ約束してるし、そっちに行くよ」

菜々子『わーい、やったあ!』

鳴上「今、叔父さんはいる?」

菜々子『うん。お父さーん、お兄ちゃんから電話だよ』

堂島『もしもし、悠か? 久しぶりだな』

鳴上「ご無沙汰してます。GWの件、大丈夫です」

堂島「そうか。すまないな、急に。菜々子も俺も楽しみにしてる」

>しばらく堂島と話してから名残惜しくも電話を切った。

>5月が待ち遠しい。



>……今日はもう寝よう。

>そう思ったが、外はまだ雨が降り続いているようだ。

>用心の為、0時を待ちテレビをチェックする事にした。


【深夜】

>時刻は0:00……

>……

>テレビの画面には特に変化は見られない。

鳴上(異常はなし、か……)

鳴上(……!?)

>急に部屋の明かりが消えた。

鳴上(停電か? ……!)

>突如、鳴上の隣に人影が浮かぶ。

>……ヘッドホンの少年だ!

鳴上(っ……)

?「……」

>少年は相変わらず黙ったままである。

鳴上「えっと……」

鳴上「どうも、こんばんは……」

鳴上(って、なに呑気に挨拶してるんだろう)

?「……」

>特にこれといった反応はされなかった……

鳴上(この間からいったいなんなんだろうか……)

鳴上(シャドウとは違うよな? 嫌な気配はまったくしないし)

鳴上(……ただの幽霊?)

鳴上(幽霊にただのも何もないか……?)

鳴上(???)

>鳴上は混乱状態になった。

?「……」

>なんと謎の少年がパトラを唱えてくれた。

>鳴上の混乱状態が回復した。

鳴上「……はっ!?」

?「……」

鳴上「あ、あの……」

鳴上「何か俺に用でも……?」

?「……」

?「……気をつけろ」

鳴上「!?」

鳴上(喋った!? いや、それよりも……)

鳴上「気をつけろって……?」

?「この街についに異変が起こり始めた……」

?「あの時とはまた違う、大きな異変が……」

鳴上「……」

鳴上「君はいったい何者だ?」

?「……」

?「どうでもいい」

鳴上(いや、どうでもよくないだろ……)

>しかし、今の勇気・気力をもってしても、そう言い返す事は何故か出来なかった……

?「もう一度言う。……気をつけろ」

>見知らぬ謎の少年に忠告を受けた。

>不器用な言葉の端々に、鳴上の身を案じてくれているのを感じる。


>『ⅩⅢ 死神 謎のヘッドホンの少年』のコミュを入手しました

>『ⅩⅢ 死神 謎のヘッドホンの少年』のランクが1になった



>謎の少年の姿はいつの間にか消えていた……


本日はこれで終了

04/10(月) 雨 自室

【朝】

>昨夜は何時の間にか眠ってしまったらしい……

鳴上(……)

鳴上(最近、夢だと思いたい出来事が続いてるな)

鳴上(正体もよく解らないものの言う事をそのまま鵜呑みにするのもどうかとは思うけど……)

鳴上(大きな異変が起こり始めた、か)

鳴上(結局まだ詳しい事は解らないんだよな……)

>ここで考えていても仕方がないので、学校へ行く支度を始めた。

学生寮 階段

>一階へとおりていくメティスの後ろ姿が目に入った。

鳴上「メティス」

メティス「!」

>体を一瞬跳ねさせてからメティスは振り返った。

鳴上「おはよう」

メティス「……おはようございます」

>頭を下げて挨拶した後、メティスは一人で階段をおりていこうとする。

鳴上「ちょっと待てって」

鳴上「せっかくだから一緒に行こう。どうせ行く方角は同じなんだし」

メティス「……でも」

>メティスは気まずそうにしている。

>昨日のアイギスの言葉をメティスなりに考慮した結果がこれなのだろうか。

鳴上(一緒にいたがったり、そうじゃなかったり、極端だなあ……)

鳴上「歩きながら話したい事もあるからさ。一緒に行ってくれた方が助かる」

メティス「っ……、はい、了解しました!」

鳴上(あ、なんか嬉しそうな顔してる……)

>メティスと一緒に登校する事にした。

>……

メティス「……で、鳴上さんのいう、話したい事というのは、もしかして昨夜のテレビの事についてですか?」

鳴上「ああ。俺の部屋のテレビは何も映らなかったんだけど、メティスは何か見たりしなかったか?」

メティス「いいえ。こちらも、異常は見られませんでした」

鳴上「そうか……。あとさ、停電とか起こったりした?」

メティス「停電ですか? いえ、そのような事には……」

鳴上「……」

鳴上「もはやこれは学生寮の怪談話だな……」

メティス「?」

>……

月光館学園 校門

>生徒達の話す声が聞こえる。

生徒A「今日から運動部の部員募集再開するんだって」

生徒B「そうなんだー。でも私はやっぱり帰宅部でいっかな。受験生なんだし、勉強に集中したいもん」

鳴上(部活か……)

鳴上「なあ、メティス。今日の放課後、部活の見学に一緒に行ってみないか?」

メティス「部活?」

メティス「……」

メティス「いいえ、私は遠慮しておきます。今日の放課後は交番へ行く予定がありますので」

鳴上「……そっか。なら仕方ない」

メティス「私の事は気にせず、鳴上さんはどうぞ行ってきてください」

鳴上「わかった」


【放課後】

>今日の授業が終わった。

>メティスは早々と教室から姿を消しているようだ。

>外は、何時の間にか雨が上がっている。

>……運動部の見学に行ってみよう。

>……

体育館

>剣道部が活動を行っている。

>人数が多い。

>どうやら今日は、中等科との合同練習をしているようだ。

?「あっ、と……すみません!」

>誰かとぶつかってしまった。

鳴上「悪い、気付かなくて」

?「いえ、僕の方こそ不注意でした」

>さっきの拍子に、その人物が手に持っていた物が散乱してしまったようだ……

>拾うのを手伝う事にした。

>……

?「ありがとうございます。助かりました」

鳴上「君は剣道部の部員?」

?「いえ、そういう訳では。今日は高等科との練習で人手が欲しいっていうんで、手伝いにきたんです」

>どうやら中等科の生徒らしい。

?「それじゃあ、失礼します」

>中等科の男子生徒は、丁寧に頭を下げて挨拶してからその場を去っていった。

>剣道部の練習風景を少し見学してから、他の部の様子も見に行く事にした。

>……

>入部するかどうか今は保留にして、寮に帰る事にした。


辰巳ポートアイランド駅前

>帰宅に向かう沢山の生徒の姿が見える。

>その中で一人、目立つ存在を見つけた。

>昨日、巌戸台駅周辺で見かけた、白いドレスの少女だ。

>今日もスケッチブックに絵を描いてるようだ。

?「……」

鳴上(とても集中してるみたいだな……)

>スケッチブックの中をさりげなく見てみた。

>今日は、駅前を通り過ぎて行く人波の様子を絵にしているのが解った。

?「……邪魔」

鳴上「あ、ごめん」

>少女の前から、隣へと移動した。

?「……」

?「何か用なの?」

?「昨日もいたでしょ」

鳴上(覚えてたんだ……)

鳴上「いや、用ってほどでも無いけど、絵上手だなと思って」

?「……」

鳴上「昨日の絵は完成したのか?」

?「まあね」

鳴上「良かったら見せて欲しいな。俺、ああいう絵見たの初めてだったから」

?「……見てもどうせつまらないだけよ」

>そう言いながらも、少女はページをめくって絵を見せてくれた。

>とても抽象的で、やはり言葉に現すには苦労するが、不思議と悪い印象はしない絵だった。

鳴上「今日は風景画みたいだったけど、色々なジャンルの絵を描くんだな」

?「……こんな絵描いてる時の方が多かった。以前までは」

鳴上「俺は嫌いじゃないけど、こういう絵も」

?「……」

?「変な人ね」

?「私にこんな風に接してくる変わり者はあなたで二人目よ」

>少女はスケッチブックを畳んで立ち上がった。

鳴上「帰るのか?」

?「ええ」

鳴上「気を付けて帰れよ? この時間人通り激しいし」

?「……」

?「……名前」

鳴上「……ん?」

?「あなた、名前は?」

鳴上「鳴上悠、だけど」

?「悠……」

?「……私はチドリ」

チドリ「私、この辺に良くいるから、縁があったらまた会うかもね」

>チドリと名乗った少女は、ドレスを翻して人の波の中に消えていった。

>チドリと知り合いになった。

>『ⅩⅡ 刑死者 チドリ』のコミュを入手しました

>『ⅩⅡ 刑死者 チドリ』のランクが1になった

>寮に戻る事にした。


【夜】

学生寮 ラウンジ

アイギス・メティス「おかえりなさい」

>アイギスとメティスに揃って出迎えられた。

アイギス「鳴上さん、朗報があります」

鳴上「え、なんですか」

アイギス「今日からまた新たにこの寮に人が増えます」

鳴上「それってつまり……」

メティス「戦力が増える。そういう事です」

アイギス「そろそろ美鶴さんと一緒にいらっしゃる筈ですが……」

鳴上「本当ですか!」

>そう話をしている間に、寮の扉が開き、人が入ってきた。


美鶴「こんばんは、遅くなってすまなかったな」

鳴上「お疲れ様です」

美鶴「もう話は聞いているかもしれないが、今日から作戦に加わってくれる仲間を連れてきたぞ」

>美鶴の後ろから、ガラガラとトランクケースを引っ張ってくる人物が現れる。

?「こんばんは、今日からお世話になります」

鳴上「君は……!」

>つい数時間前に見た記憶がある人物だ。

>……そうだ、剣道部の見学をしていた時にぶつかった中等科の少年で間違いない。

?「あれ? あなたは……」

>少年も鳴上の事に気付いたらしい。


アイギス「天田さん、お久しぶりです」

アイギス「最後に会った時よりも大分身長が伸びたようですね。人間の成長期というものに驚きを感じます」

天田「お久しぶりです、アイギスさん」

>天田と呼ばれた少年は、アイギスの言葉に照れたように笑っている。

美鶴「紹介しよう。彼は天田乾。月光館学園中等科に通っている。かつて私やアイギス達と共に戦ってくれた、心強い仲間だ」

天田「天田乾です。あなたが美鶴さんの話していた鳴上さんだったんですね、びっくりしました」

鳴上「俺もだ。これからよろしくな」

天田「はい。よろしくお願いします」

>天田と握手をした。

美鶴「なんだ、二人はもう顔見知りだったのか。だったら話は早いな」

メティス「私も自己紹介を。アイギス姉さんと同じ対シャドウ兵器、名をメティスと申します。以後お見知りおきを」

天田「……」

>天田は驚いたような表情でメティスを見つめたが、すぐ笑顔をつくってメティスと握手をした。

天田「よろしくです」


美鶴「……それから、天田の他に『彼』もいるぞ」

「ワンッ!」

>天田の後ろから犬の鳴き声が聞こえてきた。

鳴上「彼って……この犬の事ですか!?」

美鶴「そうだ。彼はコロマル。これでもれっきとしたペルソナ使いだ。天田と同様、かつてシャドウと戦ってくれた仲間だ」

アイギス「コロマルさんもお元気そうでなによりです」

コロマル「ワンッ!」

鳴上「犬のペルソナ使いか……凄いな」

メティス「よろしくお願いします、コロマルさん」

鳴上「よろしくな」

>コロマルの頭を撫でてやった。

>コロマルは歓迎されて嬉しそうにしている。

美鶴「さて、天田の部屋だが、以前使っていた場所で構わないな?」

天田「はい。それで大丈夫です。とりあえず荷物置いてきますね」

>天田はケースを引っ張って階段をのぼっていった。


>……

>それぞれ一息置いたところで、再びラウンジに集合がかかった。

美鶴「……さて、こうして戦力が揃ってきた訳だが、おそらくこれ以上の人員は集まらないだろうという事をまず先に断っておく」

美鶴「ここにいるのがフルメンバーという事だ」

天田「前にいた他の特別課外活動部の人達は……?」

美鶴「やはりこの街から離れている者が多く、連絡をとるのも難しくてな。今の私の力ではこれが限界なんだ、……すまない」

>美鶴は本当に申し訳なさそうに項垂れている。

天田「そうですか……仕方ありませんよね、みなさんもそれぞれの都合があるでしょうから」

美鶴「……ああ」

アイギス「それでは、現場でのサポート・アナライズ役は必然的に美鶴さんが行う事になる訳ですね」

美鶴「そういう事だ。私は前線で戦う事が出来なくなる」

美鶴「それに伴って、現場のリーダー役及び特別課外活動部の部長をここで決めてしまいたい」

美鶴「私の意見としては……鳴上。君を推薦したいと思うのだが、どうだろう」


鳴上「俺、ですか?」

美鶴「君のペルソナの特性やかつての経験、それを見込んだ上でのお願いだ」

アイギス「異論はありません」

メティス「姉さんがそういうのでしたら、私も」

天田「僕も鳴上さんでいいと思います」

コロマル「ワンッワンッ!」

鳴上「……」

鳴上「わかりました。精一杯努めます」

美鶴「ありがとう」


>みんなから期待されているようだ……

>リーダー兼部長に任命された。


>『0 愚者 特別課外活動部』のランクが3になった


>このメンバーを今後まとめていかなくてはならない。

>骨が折れそうではあるが、苦痛だとは思わなかった。

美鶴「最後に、今後の事でもう一つ。明日から夜間の外出を許可する事にする」

美鶴「黒沢さんや周防さんにも話はつけてあるから、夜中に出歩いていても何か言われるという事はないから安心するといい。学校側には風紀委員の活動のようなものをしているという事になっているから、その事は頭においといてくれ」

美鶴「定期的に街中のパトロールや情報収集をして貰えればと思う。もちろん、学業に差し支えない程度で構わない」

美鶴「少しでも気になる事があったら、すぐ私や鳴上に相談するように」

>今後の指針が定まったところで、今夜は解散する事になった。


今日はここで終了です。

チドリとテレッテについては今後話に出てくると思うから詳しい事は言わないけど、>>1にNTR属性とか無いんでそういう展開にはならんよとだけ。

それじゃあまた次回。

04/11(火) 晴れ 自室

【朝】

>今日は雲一つない晴れ模様だ。

>この先一週間の天気予報も、雨が降る様子はないと言っている。

>……学校へ行こう。

>……

>今日の朝は寮でメティスの姿を見かけなかった。

>一人で登校しよう……

>……

月光館学園 校門前

>生徒達の話し声が聞こえてくる。

生徒A「なあ、おまえ『辰巳ちゃんねる』って知ってるか?」

生徒B「超ローカルなくだらない噂から新しい都市伝説まで、信憑性あるのかないのかわかんない色々な情報がやりとりされてる掲示板でしょ? 最近流行ってるよね」

生徒A「そうそれ。でさ、なんか最近この近辺に変なバケモノが出るらしいって話で昨日盛り上がってて!」

鳴上「!」

鳴上「!」

鳴上(バケモノ……シャドウの事か?)

生徒B「なんだよそれ、アホらしー」

生徒A「ポートアイランド駅の広場の外れって不良が溜まってんじゃん? そこの何人かが、夜中に見たって」

生徒A「あとさ、上映時刻終了した夜中の駅前の映画館で……」

鳴上「ちょっとその話、詳しく聞かせてくれないか?」

生徒A・B「?」

>話していた生徒から情報を得たという『辰巳ちゃんねる』のアドレスを教えて貰った。

>帰ったらパソコンから見てみよう……


【昼休み】

女子A「ねぇ、鳴上くん。ちょっといい?」

>クラスの女子数名に話しかけられた。

女子B「鳴上くんさ、つい最近まで閉鎖されてた分寮にいるって話、ほんとなの?」

鳴上「ああ、そうだけど」

女子C「あそこってさ、なんかこう……出たりするの?」

鳴上「え?」

女子A「だから、ほら、幽霊的な何かがさ」

鳴上「幽霊……」

鳴上「あー……」

女子B「えっ何その反応! やっぱりマジなの!? 寮で自殺した月光館学園の男子生徒の霊が出るって噂!」

女子C「ちがうよー原因不明の病でー部屋で眠るようにぽっくり逝っちゃってぇ、一週間近く気付かれなくて悲しみのあまり化けて出たとかって話でしょ?」

女子A「えー? 私、死因は階段から踏み外して打ち所が悪くてーって聞いたよ?」

>あの寮には妙な噂があるらしい……

鳴上(まさかその霊っていうのが、あのヘッドホンの男なのか?)

>女子達は、鳴上を抜きにして勝手に盛り上がっているので、そっとしておくことにした……

鳴上(また色々質問される前に教室から出よう……)

鳴上(購買にでもいってみようかな)

月光館学園 一階 購買前

教師A「お、いいところに。おまえ確かA組の鳴上だったな」

教師A「橿原先生にこれ渡しといて貰えないか?」


>教師にプリントの束を押しつけられた。

>教師は用件を告げるだけ告げて、忙しそうにその場からすぐ去ってしまった……

鳴上(職員室すぐそこなのにな……)

>仕方ないので職員室に行く事にした。


職員室

鳴上「失礼します。橿原先生はいらっしゃいますか」

教師B「橿原先生? ……今はいないねー」

教師C「あー、たぶん花壇にいるんじゃないかな? 前、柿の木があったとこなんだけど」

鳴上「花壇ですか?」

教師C「体育館に続く渡り廊下から見えるとこだよ」

鳴上(そういえば昨日、部活見学に行く前にそんな場所を見た気がする)

鳴上「ありがとうございます。行ってみます」

>教えて貰った場所に行く事にした。

>……

渡り廊下

>橿原が花壇の前にいるのを見つけた。

>水やりをしているようだ。

鳴上「橿原先生」

淳「やあ、鳴上くん。どうしたんだい?」

>橿原に渡すように頼まれたプリントの束を見せて事情を説明した。

淳「僕を捜してたのか。悪かったね、転校したばかりでまだ校舎の中わからなかっただろうに」

鳴上「いえ。いい運動になりました」

淳「……君、なんだか面白いね」

>橿原は笑っている。

鳴上「この花壇は先生がずっと世話をしているんですか?」

淳「うん、そうだよ。本当はここに柿の木があったらしいんだけど、校舎の増設とかなんとか色々理由があって今は違う場所に移し変えられたんだって」

淳「でも、その話は結局無かった事になっちゃったらしくてね。ぽっかりと空いてるままなのも寂しいから、こうして花壇をつくったんだ」

鳴上「そうだったんですか。とても綺麗でいいと思います」

淳「そう言ってくれると嬉しいよ。最近の子は、あまりこういうものに関心を示してくれないからね」

淳「よかったら、今後もこの子達の事見にきてくれると嬉しいな」

鳴上「はい、そうします」

>橿原とささやかなひと時を過ごした……



>『Ⅹ 運命 橿原淳』のコミュを手に入れました

>『Ⅹ 運命 橿原淳』のランクが1になった


>昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

淳「もう午後の授業が始まるから行こうか」

>橿原と別れて教室に向かった。


【放課後】

>今日の授業は全部終わった。

メティス「鳴上さん、今日のご予定は?」

>メティスに声をかけられた。

鳴上「ちょっと気になる事があるから、それを調べようかと」

メティス「……もしやそれは、特別課外活動部の活動内容のひとつですか?」

鳴上「鋭いな。まあ、そんなとこ」

メティス「ご一緒してもよろしいですか?」

鳴上「ああ」

>メティスを連れて学校を出た。


辰巳ポートアイランド駅前

>メティスに、今朝登校途中に生徒から聞いた話を伝えた。

メティス「この周辺で目撃されたというバケモノの噂……それが、シャドウかもしれないと」

メティス「なんだか随分とアバウトな話ですね。詳細を要求します」

鳴上「それは帰ってからネットで調べてみない事には……。辰巳ちゃんねるってサイトで話題になってた事らしい」

メティス「辰巳ちゃんねる、ですか。クラスの女子の方達が口にしていたのを聞いた覚えがあります。なんなのですか?」

鳴上「この街に関する色々な情報が交換されてるとこらしいけど」

メティス「……。それは信用出来る情報なのでしょうか」

鳴上「正直あまり期待は出来ないと思うんだけど……でも、気になるじゃないか」

鳴上「その情報がデマならそれでもいい。むしろ、その方がいいとさえ思う」

鳴上「でも、そういう話が出てきてる以上、本当の可能性は捨てられないだろ」

メティス「……それもそうですね。では、より明確な情報収集に専念しましょう」

メティス「目撃があったとされる場所は、この広場はずれでしたね?」


駅前広場はずれ


>学生が易々と入れないような店が並んでいる……

>不良の溜まり場とされているが、猫が数匹いるだけで、今は人の気配がないようだ。

メティス「目撃者が普段からここにいるのならば直接問い質せるかと思ったのですが、来る時間帯を見誤りましたか……」


鳴上(確かにそうだけど、意外と大胆な事しようとするな……)

鳴上(まあ、メティスなら不良なんてどうという事はないんだろうけど)

メティス「日と時間を改めましょう」

鳴上「そうだな。みんなにも話さないといけないし。……ん?」

>近くにいる猫が何かを引っ掻いて遊んでいる。

>よく見てみるとそれは財布のようだ。

>誰かの財布を拾った。

鳴上「落とし物か? 交番に届けとくか」

>東辰巳交番に寄る事になった。


ポロニアンモール 辰巳東交番

>周防がいた。

達哉「……ん。お前らか」

鳴上「お疲れ様です。落とし物を拾ったんで届けにきました」

達哉「そうか。ご苦労だった」

>周防に拾った財布を渡した。

周防「財布か……そういえば、少し前に落としたって届けがあったな」

>周防は財布の中身をあらためている。

達哉「やはりそうだな。藤堂尚也……免許証の名前と届け人の名前が一致してる」

周防「落とし主には連絡しておこう。何処で何時拾ったのか詳しく教えてくれ」

>周防に拾った時の事を説明した。

達哉「……お前らあんな場所に何しに行ったんだ?」

鳴上「あの辺りでバケモノを見たっていう噂があったので、念のために確認しに行ったんです」

達哉「噂……」

鳴上「周防さんは、あの周辺で最近何か不可解な事件があったとか、そういうの知りませんか」

達哉「あそこはしょっちゅう騒ぎがあるからな……」

鳴上「そうですか……」

達哉「こっちでも少し詳しく調べてみよう。黒沢にもあの辺りの見回りを強化しておくよう言っておく」

鳴上「ありがとうございます。よろしくお願いします」

達哉「お前らにしか出来ない事があるように、俺達にしか出来ない事をするだけだ」

達哉「だが、あまり不用意な行動はするなよ。はりきるのは結構だがな」

>周防から忠告を受けた。

>周防なりに鳴上たちの心配をしてくれているようだ……



>『ⅩⅨ 太陽 周防達哉』のランクが2になった



>周防と別れて寮に戻る事にした。


【夜】


学生寮 ラウンジ

アイギス「二人ともおかえりなさい」

>寮にはアイギスの姿しか見えない。

アイギス「今日は、美鶴さんは寮にはこられないようです」

アイギス「天田さんはコロマルさんと散歩がてらこの周辺の見回りに行っています」

鳴上「そうですか。タイミングが悪かったな」

アイギス「どうかしましたか?」

>アイギスに今日知った情報を伝えた。

アイギス「そんな話が……」

アイギス「わかりました。今の事は私からみなさんに伝えておきますね」

鳴上「俺、今夜は部屋で辰巳ちゃんねるに書かれている事を調べてみようかと思います」

メティス「私は部屋で待機しています。何かあれば、姉さんも鳴上さんも何時でも呼んでください」

>各自別れて夜を過ごす事になった。


【深夜】


>あれから数時間……

>バケモノの噂と、辰巳ちゃんねる内にある有力そうな情報探しをした。

>しかし、思っていた以上の膨大な情報量がそこにはあり、一晩だけで目を通す事には無理があるようだった……


鳴上「それにしても、凄い騒がれ様だな」

>ポートアイランド駅に現れたというバケモノの話題を扱っている専用の掲示板は、レスの伸び率が凄まじい。

>しかしその内容は、大半が煽りや興味本位で知りたがっている者達の書き込みで、実際の詳しい内容はよく解らなかった。

鳴上「うわ、なんかそれっぽい合成画像までわざわざ作ってる人もいる」

鳴上「うーん……いくらなんでも変に盛り上がりすぎじゃないか……?」

>もっと過去のログを漁ってみる事にした。

>……

鳴上「……一番最初の話の出所は、『港区の噂話』ってタイトルのとこなのか」

>その中には、今日学校で聞いた学生寮に出るという男子生徒の霊の話もあった。

>初めはそれと同じく紛れるようにして書かれた信じるのも馬鹿らしい話のひとつに過ぎなかったようだが……

>ある人物がレスをしたのをきっかけに、急に話の流れが変わったようだった。

>書き込みを読み進めていくと、その人物は割と名の知れた『情報屋』だったらしい事がわかった。

>『情報屋』の話の食いつき方を見て、その内容を眺めていた周りが、これはただの噂で終わる話ではないと勝手に話を広げたのがそもそもの始まりだったらしい。

鳴上「今はもうその『情報屋』はここに来てないみたいだな」

>『情報屋』の名前を検索をかけてみた。

>そのトップにひとつの情報サイトがひっかかっている。

>そのページの管理人が、『情報屋』のようだ。

>どうやら、サイトに直接情報を載せる訳ではなく、メールやチャットで情報のやり取りをしているみたいだった。

>試しに、ページに設置されているチャットルームのひとつに入ってみた。


今日はこれでおしまい。

気になる事がいくらかあるかもしれないけど、それもそのうち話の中で明らかにすると思うので(多分)

また次回。おやすみ。


――番長さんが入室しました

番長:どうも初めまして


鳴上「……って、入ってはみたものの、俺しかいないみたいだな」

鳴上「とりあえず待機してみるか」

鳴上「ん?」

>さっそく誰かがチャットに入ってきたようだ。


――パオフゥさんが入室しました

パオフゥ:よぉ。初めて見る顔だな


鳴上「! この名前って……」

鳴上「このページの管理人……『情報屋』の名前だよな?」


番長:初めまして、パオフゥさん。今日は教えて貰いたい事があってきました。

パオフゥ:お前も例の港区に現れるバケモノの事について野次りにきたクチか?

パオフゥ:先に言っておくが、俺から話せる事は何もないからな

パオフゥ:最近ずっと同じような連中相手にしてて流石に疲れてんだよ


鳴上「……やっぱりただのデマなのか?」

鳴上「でも、それならどうして最初にその話に食い付いたのか、やっぱり気になるな……」

鳴上「それなら……」


番長:実は俺も妙な怪物に襲われた事があるんです。だから、同じヤツなのかと怖くて気になってしまって。

パオフゥ:そんな風に話を聞き出そうとするヤツも溢れるほどいるが

パオフゥ:どういう状況だったか詳しく説明できるか?


>最近起こったシャドウの事件と過去のシャドウとの戦いの事を、虚実を織り交ぜて話してみた。

>パオフゥのレスがしばしの間止まった……


パオフゥ:その話が本当だったとして、よく今まで無事でいられたな

番長:まあ、悪運が強かったというか、なんというか


>また少しの間パオフゥのレスが止まり、次に書きこまれたのはメールアドレスだった


パオフゥ:気が変わった

パオフゥ:そのアドレスにメールしろ

パオフゥ:別のチャットルームへ案内する

パオフゥ:その話、もう少し詳しく聞かせて欲しい

パオフゥ:お前が知りたい事も教えてやるよ。お前からの情報に見合う分だけだがな


鳴上「!」


パオフゥ:ただ、今日はもう時間が無い。話は明日以降だな

パオフゥ:じゃあ、先に落ちるぜ

――パオフゥさんが退室しました。


鳴上「なんで急に……」

鳴上「何かの罠って事もあるか?」

鳴上「いや、今はこの人を信じてみよう」

>チャットから退室して、教えて貰ったアドレスにメールを送る事にした。

>『情報屋』のパオフゥ知り合いになった。


>『Ⅸ 隠者 パオフゥ』のコミュを入手しました

>『Ⅸ 隠者 パオフゥ』のランクが1になった


>今夜はもう遅い……

>気になる事を抱えたままベッドに潜る事にした。


04/12(水) 朝 晴れ 自室

【朝】

>外はとても良い天気で気持ちよさそうだ。

>だが、昨日夜ふかしや長時間のネットなど慣れない事をしていたせいか、頭が重い気がする

>とりあえず学校に行かねば……

>……



【昼休み】

>午前の授業が終わった……

>今日は何故だかやけに時間が経つのが遅いように感じる。

メティス「具合が悪そうですね。大丈夫ですか?」

鳴上「……ああ、うん。昨日の夜ずっと辰巳ちゃんねるに張り付いてたから寝不足で……」

メティス「首尾の方は?」

鳴上「なんとも……バケモノ騒ぎの事を調べてて俺達よりも事情を知ってそうな人とコンタクトをとったんだけど、まだ詳しい話は聞けてないし」

メティス「そうですか……」

鳴上「……悪い、ちょっと寝る。午後の授業が始まる前に起こして」

メティス「了解です。鳴上さんの安眠は私が死守しましょう。おやすみなさい」

>しばしの休息をとった……


【放課後】

>今日の授業が全部終わった。

メティス「……鳴上さん、本当に大丈夫ですか?」

鳴上「ああ、なんとか……」

>一日疲れがとれなかった……

>今夜は寮で安静にしておくべきかもしれない。

メティス「私はこれから用事がある為、真っ直ぐ寮に戻れません。なので付き添い出来ませんが……」

鳴上「大丈夫。用があるなら、俺に構わず行ってこい」

メティス「……」

メティス「お気をつけて」

>鳴上の事を気にして先に行くのを躊躇いながらも、メティスは教室から出ていった。

鳴上(保健室に行くほどでもないよな)

鳴上(眠い……)

>少ししてから教室を出た。


>……

辰巳ポートアイランド駅前

>駅前は帰宅する生徒でごった返している。

>今の体調のせいもあって、人ごみに酔ってしまいそうだ。



>その中でチドリの姿を見かけた。

>ベンチに腰を落ち付けながら、相変わらずスケッチブックと向かい合っている。

鳴上「チドリ」

チドリ「!」

>驚いたようにして、チドリは顔上げる。

>次に彼女の口から出たのは溜息だった。

チドリ「……なんだ、悠なの」

鳴上(何故だかがっかりさせてしまったようだ……)


>チドリは絵を描く手を止めてスケッチブックを閉じてしまった。

鳴上「邪魔したなら悪かった」

チドリ「そういう訳じゃない。今日はもう時間ないし」

チドリ「……」

>そうは言いつつも、チドリはそこから去る素振りは見せず、座ったままでいる。

>まるで、ここから帰りたくないように見えた。

鳴上「どうかしたのか?」

チドリ「……別に」

>チドリはもう一度溜息を吐いてから、ゆっくりと立ち上がった。

チドリ「……何時くるかも解らない人を待ち続けるのって辛いわね」

鳴上「もしかして、約束すっぽかされたとか?」

チドリ「違うわ。私がただ勝手に待ってるだけ」

チドリ「……でも、今日はいくらかマシだったわ」

チドリ「悠に会えて気が紛れた」

チドリ「じゃあね」

>チドリは人の波の中へと消えていった。

鳴上(誰を待ってたんだろう……?)

>少しだけ、チドリの心に触れた気がした。


>『ⅩⅡ 刑死者 チドリ』のランクが2になった


鳴上(俺も早く帰ろう……)

>巌戸台駅へ向かうモノレールに乗った。


巌戸台駅周辺

鳴上(寮までの道ってこんなに長かったっけ……?)

鳴上(……)

鳴上(……あっ!?)

>うっかり足を滑らせて転んでしまった。

?「ちょっとキミ、大丈夫?」

>近くを通りかかった女性に声をかけられた。

鳴上「あ、はい。大丈夫です」

鳴上(恥ずかしいところを見られてしまった……)

>急いで立ち上がろうとするが、体が重い……

>女性の手を借りてなんとか起き上がった。

?「……あ、手のとこケガしちゃったみたいだね」

>手のひらを擦り剥いてしまったようだ。

>見た目はそれほどでもないのだが、出血もしているし地味に痛い……

?「ちょっと待っててね」

>女性は絆創膏で手当てをしてくれた。

?「うちに帰ったらちゃんと消毒するんだよ」

鳴上「なんか色々すみません。ありがとうございます」

?「ううん、気にしないで」

>女性はすぐに去って行ってしまった。

>口元のほくろとショートカットが印象的な美人だった……

鳴上(都会にもああいう優しい人はいるんだな)

>女性の後ろ姿を見送ってから、寮の方へと再び歩き始めた。


【夜】

学生寮前

天田「あ、鳴上さん、おかえりなさい」

コロマル「ワンッ!」

>寮に着いたところで天田とコロマルが中から出てきた。

鳴上「ただいま。散歩に行くのか?」

天田「はい。それから少し街の見回りを」

コロマル「ワンッワンッ」

鳴上「様子はどうだ?」

天田「特に変わったところは見られないですね。僕が知ってる限りでは、事件があった気配もないみたいです」

鳴上「そうか。ご苦労様」

>天田は一礼してから、コロマルを連れて出かけていった。


学生寮 ラウンジ

アイギス「おかえりなさい」

鳴上「ただいまです」

アイギス「鳴上さん、顔が青いですね。体調不良ですか?」

鳴上「ええ、ちょっと……。申し訳ないんですけど、早めに休ませて貰っていいですか?」

アイギス「わかりました。明日は美鶴さんがいらっしゃるようなので、今日はゆっくりしてください」

鳴上「はい。失礼します」

>早々に自室へと戻った。



自室


>着替えてすぐにベッドに潜った。

鳴上(パオフゥの情報が気になるけど、今日はもうホントに無理そうだ……)

鳴上(周防さんの言うように、張り切るのはいいけど程々にしとかないとダメって事か)

鳴上(……)

鳴上(なんかちょっと情けないな……)

鳴上(俺、リーダーなのにな……)

>……考えを遮断するように、静かに目を閉じた。

>明日からまた頑張ろう……


>>1も眠気に耐えられないので短いけど今夜はこれで終わりです

また次回



>……目を閉じますか?

>はい

?/?  ?

???

>微かに耳に届く雨音を聞いて目を開いた。

>ソファに沈んでいた体をゆっくりと起こして辺りを見回す。

>薄暗い。

>目の前に置いてあるテレビの画面だけが唯一の光源だった。

鳴上(えっと……)

鳴上(……そうだ。マヨナカテレビ……チェックしないと)

>じっとテレビを見つめる。

>すると、今まで砂嵐しか映していなかったそれに変化が起きた。

>人の姿がぼんやりと浮かび上がっている。

鳴上(……!)

>画面に映る誰かはこっちの方を真っ直ぐ向いている。

>しかし、誰なのかは解らない。




>何故なら、その人物は顔を仮面で覆っていたからだ。

?「……よお」

>画面の中の誰かが、こちらに話しかけてきた。

?「浮かない顔だな。どうかしたか?」

鳴上「……」

>何か返事をしようと思った。

>でも、何故だか声が出ない……。

?「……いや。わざわざ聞くような事じゃなかったな」

>仮面の人物は勝手に納得したのか、一度頷いてから一人で話を続けた。

?「調子はどうだ?」

?「……って、それも解りきってる事だったな」

鳴上「……」

?「うーん……」

?「困ったな。何を話そうか」

?「話すべき事は沢山あるんだが、ありすぎて何から話せばいいのやら……」

鳴上「……」

?「……お前はなんなんだ、って思ってるだろ」

?「言わなくても解るさ、それくらい」

?「でも、お前には俺の話したい事は解らないよな。それも俺は解ってる」

鳴上(何を勝手に話しているんだ……?)

?「今はいいさ、それでも」

?「……でもな」

?「考える時間は無限にある訳じゃないって事だけは頭に入れておけよ?」

?「……。今のところは、このくらいにしておこう」

?「もうすぐ朝がくる」

?「……ああ、そうだ。その前にもう一つ、これだけはちゃんと言っておかないとな」




?「お前とこうして話す機会が出来て嬉しいよ」


>……



04/13(水) 晴れ 自室


【朝】

鳴上「ん……」

鳴上「朝か……」

鳴上「……」

鳴上「……?」

>ベッドから体を起こした。

>早めに寝たおかげか、体調はすっかり良くなった。

>……しかし、それとは別に、どこかすっきしない部分がある。

>それがなんなのかまでは解らない……

>……

>今は、学校へ行く準備をしよう。


コンコン

>扉をノックする音が聞こえた。

メティス「おはようございます。起きていらっしゃいますか?」

鳴上「ああ、今開ける」

ガチャ

鳴上「おはよう」

メティス「……すっかり顔色もよくなったみたいですね。良かった」

>鳴上の顔を見て、メティスはほっと息を吐いた。

鳴上「……なんだかいらない気を使わせたみたいだな」

メティス「……いえ。リーダーにはしっかりしていただかないと、こちらも困りますから」

鳴上「ああ、うん、そうだよな。ごめん」

メティス「……」

メティス「問題が無いのなら、学校へ行きましょう」

鳴上「ああ」

>メティスと登校する事にした。

>……


月光館学園 3-A 教室

淳「それでは、出席をとります」

>朝のHRが始まった。

>……

淳「今日は、二人欠席か」

淳「最近すっかり暖かくはなったけれど、ここのところ体調を崩している人が結構いるみたいだから皆さん気をつけましょう」

鳴上(うーん……昨日の今日だから耳に痛いな)

>気を引き締めて授業に臨む事にした。

>……


【放課後】

>何ごともなく無事に今日の授業を全部終えた。

メティス「今日は夜に美鶴さんがいらっしゃるようなので、暗くなる前に早く帰りましょう」

鳴上「そうだな。……ん?」


pipipi……

>携帯に着信が入った。

>表示されている番号は知らない携帯からのようだ。

鳴上「誰だろう。……もしもし」

?「もしもし。鳴上悠さんの携帯で間違いないですか?」

>電話から聞こえてきた声も聞き覚えのない人物だ。

鳴上「そうですけど」

?「俺、藤堂と言います。先日落とした財布を拾って貰ったみたいで……」

鳴上「ああ……あの財布の持ち主の人ですか」

藤堂「はい。どうもありがとうございました」

鳴上「いえいえ」

藤堂「あの、この後お時間ありますか? 拾って貰ったお礼を……」

鳴上「え、そんな。気にしないでください」

藤堂「そう言わずに」


>藤堂と言う名の人物はなかなか引く気配を見せない。

鳴上(うーん……) 

鳴上「……わかりました。何処に行けばいいでしょうか」

藤堂「届けて貰った交番の前にいるんで、待ってます」

>行く場所を確認してから、電話を切った。

メティス「どうかされましたか?」

鳴上「この間拾った財布の落とし主とこれから少し会う事になったんだけど、……メティスも来るか?」

メティス「財布を届けてくれたお礼をって事ですか? 律儀な方ですね」

メティス「拾ったのは鳴上さんですから、私は遠慮しておきます」

鳴上「そうか。じゃあ、悪いけど先に帰っててくれるか? 俺もその後すぐに帰るから」

メティス「了解しました」

>メティスと別れ、交番前まで行く事にした。



辰巳東交番前

>交番の近くに、ピアスをつけた青年が立っているのが見える。

>声をかけてみる事にした。

鳴上「あの、藤堂さん……ですか?」

藤堂「! 君が財布を拾ってくれた……?」

藤堂「そうか、高校生だったのか」

藤堂「大事なものを拾って貰ったうえに、こんなところまでわざわざ呼びだして悪かったな」

藤堂「改めてお礼を言うよ。ありがとう」

鳴上「いいえ」

藤堂「そうだな……とりあえず、そこの喫茶店にでも行こうか」


シャガール 辰巳店

藤堂「なんでも好きなものを頼むといいよ」

鳴上「それじゃあ、お言葉に甘えて」

>紅茶とチョコレートケーキを頼む事にした。

藤堂「いやあ、本当に助かったよ。あの中には今月の生活費やらなんやらが全部入ってたからさ」

藤堂「何処で落としたのかもまったく見当がつかなくて」

鳴上「ポートアイランド駅の広場のはずれの方にあったんですよ」

藤堂「広場のはずれ……?」

藤堂「あー……じゃあ、あれかな。変な連中に絡まれた時にうっかり落としたんだ」

藤堂「……ちょっと暴れたからなあ」

鳴上(一見クールそうなのに、ケンカとかするんだ……意外だ)

藤堂「この街にはつい最近来たばかりでさ、あんなとこ行くつもりもなかったのに道に迷っちゃって」

鳴上「この辺、けっこうゴチャゴチャしてますよね。俺もここに来たばかりで、まだちょっと慣れないですし」

藤堂「へえ、そうなんだ」

>お茶を楽しみながら、少しの間世間話で盛り上がった……

>……

鳴上「ごちそうさまでした」

藤堂「いやいや。こちらこそ、お礼があんなんで良かったのかな」

鳴上「そんなに気にしないでください」

藤堂「そっか……」

藤堂「君この辺に住んでるんだろ?」

藤堂「もしかしたらまた会うかもな。その時はもうちょっと豪華なもの食いに行こうか」

鳴上「割り勘でいいなら付き合いますよ」

藤堂「謙虚なんだな」

>藤堂は鳴上に好感を抱いたのか笑っている。

藤堂「じゃあまた、機会があれば」

鳴上「はい」

>ピアスの青年、藤堂と知り合いになった。


>『Ⅳ 皇帝 藤堂尚也』 のコミュを入手しました

>『Ⅳ 皇帝 藤堂尚也』 のランクが1になった


>藤堂と別れ、美鶴が来る前に寮に帰る事にした。

ピアスの名前は>>1的には籐堂尚也が馴染み深かったからそうしたんだけど
ドラマCDだとまた名前が違ったんだっけね

という感じで、今日はこの辺りでおしまいです

おつ
まだコミュ回は続くのかな?

なんか最後盛大に誤字ってるし……

今更ですが、このSSの世界はTSみたいにパラレルワールド的なあれだと思ってください

>>214
しばらくはコミュ回収中心になると思います
なかなか本筋が進まなくて申し訳ない

【夜】


学生寮 ラウンジ


>特別課外活動部のメンバーが全員集合した。

美鶴「鳴上の例の話は聞かせて貰った。私もここに来る前に少しその事について調べてみたよ」

美鶴「しかし、私が知り得た限りでは、あの周辺で最近大きな被害があったという事実はなかった」

美鶴「相変わらずあそこら一帯にたむろしている不良連中の揉め事は多発しているみたいだがな」

天田「それについては僕も報告があります」

天田「昨日の夜、バケモノを見たっていう人に会って話が出来ないかと駅前広場のはずれに行ってみたんですが……」

天田「その人、最近あの場所に姿を現していないそうです」

天田「あそこによく集まる人にもその話を直接していたらしいんですけど、ネットでの反応とは違って誰も信じていないみたいですね」

天田「それで嘘吐き扱いされて相手にされなくなったから、あの場所に来にくくなったんじゃないかって、そういう話です」

鳴上「……」

鳴上「……バケモノなんてやっぱりいなくて、何かの見間違いとかだったって事だろうか」

アイギス「しかし、目撃者の行方がわからないというのが少し引っかかりますね」

メティス「その人物の名前などはわからなかったんですか?」

天田「いえ……。あの場所に来るようになってからまだ日が浅い人だったらしくて、誰も名前を知らないようでした」

天田「一人だけ、よく一緒につるんでいた人がいるらしいんですけど、その人も最近は顔を出していないんだそうです」

美鶴「ふむ……」

美鶴「一般人がシャドウと遭遇などしたらタダで済む筈がない」

美鶴「何かの勘違いのだろうが、だとしたら本当は何を見たのかも気になるな」

美鶴「ただの杞憂である線が強いだろうが、今後しばらくはあの周辺の見回りを強化する事にしよう」

鳴上「……」

鳴上(まだパオフゥからは話を聞いていないけど……これ以上の情報を持っているんだろうか)

>……


自室


>あの後、少しの間話し合いを続けたが、特に進展はなかった。

>しかし、この話にはまだ何かが隠されているような気がしてならない……

鳴上(神経質になりすぎか? でも、今はこれくらいはしないと何もわからないままだ……)

鳴上(……パオフゥと話をしよう)

>PCの電源を点け、パオフゥとチャットをする事にした。


>……



パオフゥ:よお。昨日は姿見せなかったからもう諦めたのかと思ってたぜ

番長:パオフゥさん、こんばんは。昨日は情報収集の疲れが出てしまったみたいで、休んでたんです……

パオフゥ:ほぉ。疲れるほど必死に例の事、調べてるって訳か

パオフゥ:なんでそこまで知りたいのか本当の事は聞かないでおくが

パオフゥ:世の中には知らなくても良い事、知っちゃいけない事ってのが山ほどある

パオフゥ:これもその一つなのかもしれないと俺は思っている

パオフゥ:ただ、お前さんにとってはそうでもないんだろうなっていうのが俺の勘だ

パオフゥ:だから現時点で教えられる事は教えてやるよ


鳴上(この人、本当に何者なんだ?)

鳴上(ただの情報通って訳でもなさそうに見えるけど……)

鳴上(……)



番長:よろしくお願いします

パオフゥ:まず、最初に辰巳ちゃんねるでバケモノがどうこう書いた人物についてだが

パオフゥ:実を言うと、そいつが直接バケモノを見た訳ではないんだそうだ

パオフゥ:これは書き込んだ本人から聞いたから間違いはない

パオフゥ:じゃあ、本当は誰がそのバケモノを見たのかって話になる訳だが

パオフゥ:答えはそいつの友人らしい



鳴上(書き込みをした人物の友人が真の目撃者?)

鳴上(それってなんだか少しおかしな話じゃないか? だって……)


パオフゥ:なんで目撃者本人からの話がないんだ。そう思うだろ?

パオフゥ:理由は簡単な事だ

パオフゥ:そいつは今、話せるような状態じゃないからだよ



鳴上「!?」



パオフゥ:バケモノを目撃したとされる人物は現在辰巳総合病院に入院している

パオフゥ:意識不明でな

パオフゥ:それらしい人物が入院している裏付けは取ったからこれも間違いない

パオフゥ:どうやら書き込みをした人物が、目撃者である友人から意識を失う前に聞いた話がバケモノが云々っていう事だったようだ

パオフゥ:だから詳しい事情は書き込んだやつにも解らないんだとよ


鳴上「目撃者は意識不明……」

鳴上「一体何故そんな事に……?」



パオフゥ:とまあ、現時点でお前に話せるのはこのくらいだ

パオフゥ:最近、書き込みした奴とも連絡がとれなくてな

パオフゥ:後はまだ不確定な情報しか揃ってないんだ

番長:ありがとうございます。少しでもそれらしい情報が得られて助かりました

パオフゥ:こんな事教えておいて言うのもなんだが……

パオフゥ:あまり妙な事に首をつっこみ過ぎるなよ?

パオフゥ:つっこむならつっこむで相応の責任と覚悟はもっておけ

パオフゥ:それが出来るってんなら、今後も情報提供はしてやるよ。タダとはいかないがな

パオフゥ:最近、この街も物騒だからな。毎日妙なネタで溢れてやがる

パオフゥ:面白い話や気になる話があったら聞かせてくれや

>パオフゥから気になる情報を得た。



>『Ⅸ 隠者 パオフゥ』のランクが2になった



>チャットを終了してPCの電源を落とした。

>辰巳総合病院に入院している意識不明の患者……

>その人物に何が起こったのかは未だに不明だ。

>だが、少しずつではあるものの謎に近付いている筈だ。

>そうだと、思いたい……



>美鶴に電話をして、パオフゥから教えて貰った事を伝え、その意識不明の患者についてもう少し詳しく調べられないか相談してから眠る事にした。



04/14(木) 晴れ 自室


【朝】

>今日も外は良い天気だ。

>夜も天気は崩れる心配は無いようなので、今夜から街の見回りを始めてみようか。

>……その前に、まずは学校だ。

>メティスが迎えにきたので、支度をして登校する事にした。

>……


通学路


>メティスに昨夜新たに得た情報を話した。

メティス「目撃者とされる人物は現在意識不明、ですか。なにやらきな臭い話になってきましたね」

鳴上「その情報からもう少し詳しい事を調べられないか桐条さんに頼んでみたんだけど、何か解ればいいな」

メティス「しかし、それがどこの誰か解っても、事情を知るには結局その方の意識が回復するのを待つしかありません」

メティス「そして、最初に書き込みをした人物の行方が解らないというのもやはり気になります」

メティス「……その方も、既になんらかの事件に巻き込まれている。そういう可能性もあるんじゃないでしょうか」

鳴上「っ……!」

鳴上「……思っていた以上に事態は深刻なのかもしれないな」


>……


月光館学園 3-A 教室


>HRが始まった。

淳「それでは出席をとります」

>……

淳「今日の欠席者は三人、か。……」

淳「……えと、今日の日直は鳴上くんだったね。ちょっと職員室まで一緒にきてくれるかな」

鳴上「はい」

>橿原に言われて一緒に職員室まで行った。

>……


淳「悪いんだけど、これ一限目の授業で使うから、教室まで持って行ってくれないかな」

>世界史の授業で使う教材を渡された。

淳「重いから気をつけてね」

鳴上「はい」

淳「……」

淳「鳴上くん」

鳴上「はい?」

淳「鳴上くんは、最近元気にしてる?」

淳「……えと、ほら、一昨日あたり顔色悪そうに見えたから」

鳴上「あー……はい。一晩ゆっくり寝たら、もうすっかり」

淳「そっか」

淳「HRでも言ったけど、最近体調悪くて休んでる生徒が結構いるから、気をつけてね」

淳「もう行っていいよ」

鳴上「はい。失礼します」

淳「……」

>職員室を出て、渡された教材を教室まで運んだ。

>……


【放課後】


>帰りのHRが終わったのとほぼ同時に、美鶴からのメールを受信した。

『昨夜君から言われた辰巳総合病院にいる意識不明の患者について調べがついた。寮に戻ったらラウンジに集合してくれ』

鳴上(随分と早かったな。流石、桐条さんだ)

>メティスを呼び止め、彼女にも美鶴からのメールを見せた。

メティス「今日は寮に直帰した方がよさそうですね」

鳴上「ああ。行こう」

>メティスと二人で急いで教室から出ていった。

>……


辰巳ポートアイランド駅前


>溢れる人の中で、ふと、見覚えのある後ろ姿を見た。

>駅前の花屋に橿原がいるようだ。

>橿原は、店員に花束を受け取り、駅の方へと歩いて行ってしまう。

>鳴上達には気付かなかったようだ。

メティス「鳴上さん、どうかしましたか? 早く行きましょう」

鳴上「……ん。ああ」

>向かう方面が違ったのか、駅のホームでは橿原の姿を見る事はなく、巌戸台の駅についてからは真っ直ぐ寮を目指した。



【夜】


学生寮 ラウンジ

>特別課外活動部のメンバーが皆揃うと、まずは美鶴から鳴上が昨夜得た情報をまだ知らない者に報告するところから話は始まった。

天田「……それで、辰巳総合病院にそれらしい患者は本当にいたんでしょうか?」

美鶴「……ああ」

美鶴「名前は伏せておくが、今年から月光館学園の高等科一年になる予定だった少年だ」

美鶴「病院に運ばれてきた時点で意識不明の重体だったが、身体に外傷は一つもなかったらしい」

美鶴「そうなった原因は未だに解らず、治療の施しようがないんだそうだ……」

鳴上「命に関わるような事はないんですか?」

美鶴「今のところは平気らしい。ただ、この状態が長く続くような事があれば、どうなるか解らない、という話だ」

>この場にいる一同がしばしの間黙ってしまう……

鳴上「……あの、一つ気になる事が」

美鶴「どうした?」

鳴上「高等科の一年になる予定だった少年っていうのはどういう意味ですか?」

鳴上「この話が広まったのって、学校が始まった後の事です」

鳴上「……だから、その少年が月光館学園の生徒なら、ただ『高等科の一年の生徒』って言えばいい話の筈です」

鳴上「病院に運ばれてきたのって、いつの話なんですか?」

美鶴「……察しがいいな、君は」

美鶴「少年が意識不明になったのは学校が始まる前……彼が入学する前の出来事だ」

美鶴「病院に運び込まれてきたのは……日付が4月5日になってからまだ一時間ほどしか経ってない、雨の降る夜の事だった」

アイギス「! それってまさか……!?」

美鶴「……ああ、そうだ」

美鶴「鳴上、君も覚えているだろう」





美鶴「君がこの寮でシャドウに襲われた夜の事だ」



週末は色々あってこれませんでしたが今日からまた投稿再開です。

そして、投稿途中で気付いたのですが、

実際のカレンダーの曜日とSSの中でのカレンダーの曜日が

途中から 盛 大 に ず れ て や が る … orz

今まで気付かなくてすみませんでした…次回から修正します

この話の次の日にあたる04/15は日曜日になるようです…


そういうことでまた次回!

鳴上「っ……!」

鳴上「……それじゃあ、もしかして」

鳴上「あの時、この寮の外からやってきたシャドウが、少年の目撃したバケモノの正体なのか……?」

美鶴「その可能性が高そうではあるが……」

美鶴「しかし、ポートアイランド駅からこの寮までは距離がある」

美鶴「あの夜、別々の場所にシャドウが多発していた……という事もあり得るな」

メティス「それは、ここと他に目撃されたとされる場所以外にも、という意味ですか?」

美鶴「……そうだ」

天田「……それじゃあ、まだ僕達が知らないだけでその夜に被害にあった人が他にもいるかもしれないですね」

天田「今回の事を考えると、ただの事故なんかとして上がっているかどうかも怪しいのかもですが……」

鳴上「何かがあったという認識すらまだされていないかもって事か」

鳴上「これ以上の被害があったなんてあまり考えたくはないけどな……」

天田「……そうですね」

アイギス「……」

メティス「姉さん? 何か気になる事でも?」

アイギス「……目撃者は意識不明という扱いになっているけれど、これは無気力症の時とは違うのでしょうか」

天田「!」

美鶴「……」

美鶴「おそらくあの時と同じ事、もしくは似たような事が起こっているのだろうな……」

美鶴「とは言っても、これもあくまでただの予測だがな」

美鶴「今回のシャドウは私達が知っているシャドウと性質は似ているにしても、まるで一緒のものなのかという確証がもてない」

鳴上「どうしてですか?」

美鶴「君が以前関わったシャドウの例があるからだよ」

アイギス「……そうですね。鳴上さんの話を聞いた限りでは、私達の戦っていたシャドウと貴方の戦っていたシャドウとでは、存在の性質と特徴に差異があるように感じられます」

鳴上「という事は、今までのシャドウのパターンにばかりとらわれて対策をしようとしても、ダメって事になりますね……」

メティス「……」

メティス「今の話でひとつ思い出した事があります。……話は少し逸れますが」

鳴上「どうした?」

メティス「鳴上さんの言う、『テレビの中の世界』というのは私達も入れるものなのでしょうか?」

メティス「過去に影時間の中に現れていたタルタロスとテレビの中に存在する世界は、共にシャドウが巣くう場所です」

メティス「ですが、影時間が消えタルタロスも無くなった今となっては、注意すべきなのはテレビの中の世界の方だと私は思います」

メティス「今回と過去二件の事例とは異なる可能性があるにしても、です」

メティス「……いえ、異なるならなおの事、注意した方がいいのかもしれません」

鳴上「どういう意味だ?」

メティス「今回は、具体的なシャドウ発生場所の特定すらまだ出来ていませんが……」

メティス「現時点で、シャドウがいてもおかしくない場所として解っているのが、テレビの中の世界という訳です」

メティス「鳴上さんの件の時は、誰かにテレビの中に入れられてしまい、そこで放置された後に特定の条件を満たした結果、そこに存在したシャドウの暴走に合い入れられた人物に被害が及んだ。そうですね?」

鳴上「ああ、そうだな」

メティス「鳴上さん達も、自らテレビの中に入る事でシャドウと戦い事件を防いでいた……」

メティス「……それはどうしてでしょう?」

鳴上「どうしてって……そうするしか他に方法がなかったからで……」

メティス「そうです。鳴上さん達から行くしかなかった」

メティス「……鳴上さん達が戦っていたシャドウ達はいくらか良心的、あるいは怠惰だったのでしょうかね」

メティス「現実世界と繋がる出入り口があるにも関わらず、奴らの方から出向く事はなかったなんて」

鳴上「っ……!」


メティス「もしかしたら、そのシャドウ達はなんらかの理由で出入り口はあっても、現実世界に行く事は出来なかったのかもしれません」

メティス「でも、それは『稲羽市ではそうだっただけ』という訳だったら……?」

メティス「今度のシャドウは何処からか……鳴上さん達がそうしていたように、テレビを媒介にして好きにこちら側へと侵入する事が出来るようなタイプのものだとしたら……」

美鶴「……まずいな、それは」

鳴上「この寮に現れたシャドウは外からきたもんだから、すっかりその可能性を失念していた……」

メティス「そう。まだそこが引っかかっているんですが……今は、その事は置いておきましょう」



メティス「話を『私達もテレビの中の世界に入れるのか?』という事に戻します」

メティス「今回の件がテレビの中の世界と関係あるにせよないにせよ、入れるのならそこでシャドウを狩るのは私達にとってマイナスにはならないと思うのです」

アイギス「もし、そこのシャドウ達が原因なら、解決の一端になるかもしれない、という事ね?」

天田「そうでなくとも、シャドウと戦う事でこれからに備えて力をつける事が可能かもしれませんしね」

メティス「はい。……実を言うと、私個人の意見としては天田さんの言葉の方が重要だったりします」

メティス「私にはシャドウのデータとペルソナはあっても、皆さんと違って実戦経験はまだありませんので……」

メティス「有事の際、ぶっつけ本番で皆さんに迷惑をかけるような事があるのは避けたいんです」

鳴上「……なるほど、な」

鳴上「でも、それは難しい事かもしれない……」

鳴上「ここのテレビの中から入っても、着く場所がどんな所か解らない訳だし」

鳴上「最悪入ったら最後、そこから出られなくなるかもしれない」

鳴上「前の時は入り口はいつも同じ場所にしていたし、帰りは来た場所に出口を作ってくれるやつがいたから行き来が可能だったんだ」

美鶴「未知の領域が過ぎる場所という訳か。中を探るのに私のペルソナのアナライズ能力で事足りるかというのも、入ってみなければ解らない訳だしな……危険な賭けになりそうだ」

鳴上(……クマと連絡がとれればどうにかなるだろうか)

鳴上「ちょっと待っててください」

鳴上(クマの携帯の番号はまだ登録してあるけど……繋がる事を祈ろう)

>クマの携帯にイチかバチかかけてみる事にした。

>……

鳴上(……! ちゃんと鳴ってるみたいだ! これはひょっとして……)

ガチャッ

クマ『センセー! センセークマね!? お電話嬉しいクマよー!』

鳴上「クマ!」

クマ『こっちの世界に遊びにきてる時にグッドタイミングでかけてきてくれたクマねー』

クマ『クマね、ヨースケにこの間センセーから電話があったって聞いて、すごーく羨ましかったんだクマよ!』

クマ『センセーの声が聞けて嬉しいクマ!』

鳴上「ああ。俺もクマが元気そうで嬉しいよ」

鳴上「ところでクマにちょっと相談があるんだ」

鳴上「今からテレビの中……クマが元々いた世界に行こうと思う」

鳴上「ジュネスのテレビのところから、俺の入る居場所までくる事は出来そうか?」

クマ『センセーは今いるところにあるテレビから入るって事クマか!?』

鳴上「そうだ」

クマ『うーん……センセーの匂いはバッチリ覚えているから、センセーの居場所を探せないって事はないと思うけど、距離が遠くて時間かかっちゃうかもクマ……』

鳴上「それでもいい。どうしても、テレビの中の世界でやらなきゃいけない事がまた出来たんだ」

鳴上「クマには無理をさせる事になるけど、クマの力でこっちに安全な出入り口をひとつ作っておきたいんだよ」

鳴上「頼む、クマ。この通りだ」

クマ『センセー……』

クマ『センセーの事情はヨースケから聞いてる。大変な事になっているってのは知ってるクマ』

クマ『だから、センセーが何を考えているのかクマにも大体解るクマ』

クマ『任せるクマ! クマもクマに出来る事は全力で協力するクマ』

鳴上「……ありがとう、クマ」

クマ『でもね、センセー。今日はちょっと無理クマよ……』

クマ『クマひとりだけじゃ、センセーのとこに無事辿り着けるか不安だし、ヨースケ達にも相談したいクマ』

鳴上「それもそうか……」

クマ『でも、明日は日曜だし、朝からみんなでそっちに向かえばどうにかなると思うクマ』

鳴上「じゃあ、また明日、だな」

クマ『朝、準備が出来たらセンセーに電話するクマ。それまでは、何があってもセンセー達だけでテレビに入るのは絶対、ゼーッタイ! ダメ! クマ!』

鳴上「大丈夫、解ってるってそれくらい」

クマ『それなら安心クマ!』

クマ『それじゃあ、みんなにも相談するからもう切るクマよ』

鳴上「ああ、よろしくな」

クマ『うん。おやすみ、センセー』




>クマとの通話が終わった。

>そして、クマの事とクマとしたその会話の内容をみんなに伝えた。


美鶴「では、明日は朝早くから作戦決行という訳だな」

メティス「万が一という時の為に、一人は寮で待機していた方がいいかもしれません」

鳴上「そうだな。俺の携帯を置いていくから、なかなかこちらに帰ってくる気配がみれなかったら、特捜本部の仲間達に連絡して欲しい」

アイギス「では、それは私が引き受けましょう。そうならなくて済むように無事を祈っています」

天田「今夜は明日に向けて準備しとかないといけませんね」

美鶴「よし。では、今夜はこれで解散としよう」

美鶴「……と、その前に。鳴上」

鳴上「はい?」

美鶴「ラウンジのこのテレビを入り口にするには、少々サイズがちいさくはないだろうか……」

美鶴「こんなのでもちゃんと中に入れるのか?」

鳴上「……あ。確かにそうですね……」

鳴上「まあ、こんな大きさでも中の世界にはちゃんと繋がっているんですよ。こんな風に腕を通す事だって……」


>実際にどんな風になるのかみんなに見せてみようと、テレビの画面に手を伸ばしてみた。


鳴上「……」

鳴上「……え?」


>……しかし。



>鳴上の手は、テレビの冷たい画面に触れたまま、その先へと進む事は無かった……


鳴上「なっ」

鳴上「どうしてだっ……!?」


>いくらテレビの画面を触っても叩いても、何時の日かのようにそれ以上画面の中へと入る事は無かった。

>それは、鳴上以外の人間がやってみても同じ事のようだ。


美鶴「ふむ……そもそもこのテレビは以前ここを閉鎖した時の物のままで、今となっては普通のチャンネルすら映らない状態だからな。そのせいもあるかもしれないが……」

美鶴「各部屋で現在映るテレビを持っている者はいるか?」

鳴上「俺の部屋にあります」

美鶴「よし。じゃあ、それでもう一度試してみよう」


>……


鳴上の自室


>一度電源をつけて本当に画面が映るか確認してから、同じように画面に手を伸ばしてみた。

>だが、結局は同じ事の繰り返しなだけであった……


鳴上「どういう事なんだ……?」

天田「テレビの中の世界はこの件には関係していないって事ですかね?」

美鶴「それはそれでありがたい事ではあるが、これから先どうしたら良いのかまた解らなくなってしまったな……」

メティス「私の見当違いだったのでしょうか」

アイギス「……」

アイギス「テレビという入り口……」

アイギス「外からやってきたシャドウ……」

アイギス「外で目撃されたシャドウ……」

アイギス「辰巳ポートアイランドの、駅……」

メティス「姉さん?」

アイギス「……テレビ以外のもので、テレビと似たようなものを代わりにして別の世界に出入りするとしたら、何かあるかと思って」

アイギス「しかも外で、ね」

アイギス「メティスも言っていたけれど、どうしてシャドウは外に現れたのか……それが私もどうしても気になって」

鳴上「テレビ以外のテレビの代わりになりそうな入り口……」

鳴上「……画面」

鳴上「!!」

鳴上「テレビのようでテレビでない、しかもテレビよりもだいぶ大きな画面があそこにはあるじゃないか……!」



鳴上「駅前の映画館……!」


なかなか先に進まないけど、今回はここで終わります

また次回

>……

【深夜】

辰巳ポートアイランド駅前



>映画館・スクリーンショット……

>特別課外活動部のメンバーで揃って問題に上がった映画館の前まできていた。

>時刻はあと五分ほどで日付が明日に変わろうとしている。

>そんな時間だという事もあるからか、周りには人影は見られない……


天田「そういえば、この映画館って前から変な噂や迷信が結構あったような気がします」

天田「4番の劇場で映画を見たカップルは必ず別れるだとか、月に一回限定で砂糖味噌味のポップコーンを販売してるだとか……」

天田「まあ、僕が知っているのはどれも下らない話ばかりだった筈ですけど」

鳴上「映画館の噂か……」

鳴上「辰巳ちゃんねるでもどこかで映画館の話があがっていた気がするけど……あの時は気付かなかったな」

美鶴「……勢いでここまで来てしまったが、外部を見た感じではいまのところ特に変わった風には見えないな」

アイギス「今はもう営業時間外ですからね。中の様子を見ることは出来なさそうですし……」

メティス「本当にこの場所に何か手がかりがあるにしても、結局明日を待つしかありませんね」

鳴上「そうだな。明日クマにも改めて相談してみよう」


>携帯の画面を見ると、23:59から0:00に変わるのが見えた――





>その瞬間、事は起こった。

鳴上「っ、まぶし……、!?」

美鶴「これは……」


>目の前にある映画館に突然照明がついた……

>入り口を閉め切っていたシャッターも、いつの間にかなくなっている。

>そして、その扉が自然にゆっくりと開いた。

>まるで、彼らを出迎えるかのように……


コロマル「ガルルル……ワンッワンッ!」

天田「コロマル!? おい、待てったら!」

>開いた扉の方を見て吠えたあと、コロマルは映画館の中へと駆けて入ってしまった。

鳴上「コロマルを追うぞ!」


>……


スクリーンショット


>映画館の中もきちんと明かりで照らされている。

>しかし、照明の光の鈍さからうみだされる薄暗さと、彼ら以外には客どころか従業員の姿すら見えない静けさが、不気味さを演出していた。


鳴上「いったい何が起こっているんだ……?」

美鶴「……。シャドウの気配らしきものは特に感じられないが……」

天田「また影時間が発生して映画館がタルタロスみたいになったのかもと一瞬思いましたけど、携帯に表示されている日付も時刻もきちんと次の日に進んでいるみたいです」

アイギス「でも、この場所は明らかに異質です。どうしてこんな事に……」

コロマル「ワンッ!」

メティス「! コロマルさんを発見しました」


>コロマルは映画館の一番奥にある一つの劇場の入り口の前でしきりに吠えている。

>扉のプレートには4番と書かれていた。


鳴上「ここってさっき天田が言ってたカップルがここで映画を見ると別れるっていう話のある場所か?」

天田「そうですね。……いや、でも、あれ?」

天田「確か4番の劇場って今は改装工事をするとかで、閉鎖されているって話ですけど」

天田「だからほら、ここは上映プログラムの案内に何も告知がされてない……」


>天田が指さした4番の劇場の案内には確かに何もなかった





>……筈だった。


天田「えっ……」


>映画館に突然照明がついたように、何も無かったその場所に徐々に何かが浮かび上がってきた……

>一同がその現象に驚いている間に、初めは朧気にしか見えていなかったそれは、くっきりと姿を現していた。

メティス「……ポスターでしょうか? 映画の」

鳴上「タイトルは『雪の女王』、上映開始時刻が0:15で上映時間は113分って書いてある。確か、童話にこんな話があったよな」



美鶴「っ……!」

美鶴「気をつけろ! この劇場の向こうから妙な反応がある!」

アイギス「シャドウですか!?」

美鶴「いや……こんなシャドウの気配は感じた事はない。しかし、何か嫌な予感がする……」

メティス「……中に入って様子を探ってみますか?」


>メティスがこちらに指示を求めている。


美鶴「私は一度引くべきだと思う。今は戦闘態勢が万全ではないし、やはり君の仲間にもこの事を相談してから再度来るべきだ」

鳴上「……」

鳴上「そうですね。気になる事は増えたけど、これ以上下手に動くのは今はまずいと俺も思います」

鳴上「今夜のところは寮に戻りましょう」

天田「ほら、コロマルももう落ち着けって」

コロマル「グルルル……」

>未だに劇場の扉を睨み、興奮しているコロマルを宥めようと天田はコロマルを抱き上げる。

>一同はそこから引き上げようと背を向けた……





>――その時、劇場の扉が大きく音を立てて開き、風が吹き荒れた。


メティス「くっ……!?」


>扉の一番近くにいたメティスがその風に吸われるようにして、劇場の中の闇に飲まれていく。


鳴上「メティス!!」


>鳴上はメティスの腕をとろうと必死に手を伸ばした。

>……しかし、次の瞬間には鳴上も他のメンバーも、全員がその強風の犠牲になっていた。


鳴上「っ……うわあぁぁぁぁ!」


>……

>鳴上は地面に叩きつけられるようにして、何処かに放られた。

>続いてバタンと何かが閉まるような音を耳にする。

鳴上「っ、痛……」

鳴上「……何が起こったんだ」

鳴上「ここは……」


>衝撃を受けて痛む体をわずかに起こし辺りを見回してみた。

>そこは……


鳴上「え……」

鳴上「ここ、さっきまでいた劇場の前……だよな?」


>鳴上の後ろには4と書かれたプレートのある劇場の扉。

>そして、床には他の仲間達も倒れている……


メティス「うっ……」

鳴上「! 大丈夫か、メティス!」


>掴んでいたメティスの腕を引っ張り、彼女の体を起こした。


メティス「……鳴上、さん?」

鳴上「よかった、気がついた……」


>それに続くように、他のメンバー達も目を覚ましていった。


アイギス「私達はいったい……」

天田「大丈夫か? コロマル」

コロマル「クゥーン……」

美鶴「……」

鳴上「みんな怪我はしていないか?」

美鶴「……ああ。それは心配ない。だが……」

美鶴「何がどうなったんだ? 私達は劇場の中に吸い込まれたように感じたんだが……」

鳴上「そうですね。ここの扉が突然開いて……」


>扉の取っ手を掴んで試しに引いてみた。

>しかし、今はびくともしない……


美鶴「……変だな。この向こうにあった反応も消えたようだ」

天田「でも、結局何も無かったんなら良かったじゃないですか」

鳴上「そうだな。これ以上変な事に巻き込まれる前にさっさと引き上げよう」

アイギス「それがよさそうですね」

メティス「……」

鳴上「……どうした、メティス?」


>メティスは、体は起こしたもののまだ床に座ったままでいた。

>そんな彼女に手を貸そうと差し伸べた。


鳴上「立てるか?」

メティス「っ! ……へ、平気です、このくらい」

メティス「早く帰りましょう」


>メティスは鳴上の手を借りる事なく立ち上がって、先を歩いていこうとした……





美鶴「っ!?」

美鶴「待て! 今度は外に気配を感じる!」

美鶴「間違いない、これはシャドウの反応だっ……!」

鳴上「なっ……」

アイギス「……。数はどの程度なのでしょう?」

美鶴「……」

美鶴「敵は全部で4体。いずれも小型のもののようだ」

美鶴「映画館の入り口周辺をうろついている。こちらの事には気付いていないみたいだが」

アイギス「数ではこちらの方が勝っていますね。その程度ならどうにかなりそうです」

天田「そうですね。ペルソナを使うのは久しぶりだけど、一気に畳みかけてしまいましょう」

コロマル「ワンッ!」

メティス「……」

メティス「そうですね。いきましょう」

美鶴「鳴上。君も召喚器は持ってきているな?」

鳴上「はい」

鳴上「気付かれていないなら、周りに被害が出る前に、不意をついてすぐに終わらせてしまいましょう」



鳴上「……いくぞ、みんな!」

>……


映画館前


>シャドウ達は何をするという事もなく、周辺をうろついているだけのようで隙だらけだ……

>その後ろをとって先制をしかける……!


鳴上「――イザナギ!」


>実弾の無い銃声と共に、鳴上のペルソナが現れる。

>……そこでようやくシャドウは彼らの存在に気付いたが、時は既に遅く、4体のうちの1体は消滅していた。


美鶴「よし、敵は動揺している! そのまま一気に終わらせろ!」



アイギス「ペルソナ!」

天田「いけっ! カーラ・ネミ!」

コロマル「ワォーン!」


>各々のペルソナがシャドウに立ち向かっていく。

>敵はその奇襲になす術もなく、弱り切って反撃も出来ない状態にまでなっていた。


天田「チャンスですよ、いきましょう!」

鳴上「ああ!」

鳴上「みんな俺に続け!」


>鳴上の声を合図に、とどめをさそうと一斉攻撃をしかけていく。

>……しかし、あと一歩というところで、最後の一体がその余力を振り絞るかのようにして突撃してくる。

>シャドウが向かった先には……メティスがいた。


鳴上「メティス!」

メティス「っ……私だって!」

メティス「――プシュケイ!」


>メティスのペルソナが最後のシャドウを跡形もなく切り裂く。

>……それで、すべては終わった。



>シャドウとの戦いに勝った。


>……

美鶴「みんな、よくやった。完勝だったな」

美鶴「周りにも特に被害は出ていないようだし、怪我もなくて本当に良かった」

鳴上「はい。……でも、また唐突に現れましたね、シャドウ」

アイギス「さっきの様子から考えて、やはりこの映画館が原因と見て間違いないのでしょうか」

メティス「なら、今後の課題はこの映画館に起こっている現象の究明という事になりますね」


>映画館の怪奇現象……

>それが、人々の平和を脅かす原因になっているのならば、これからそれをどうにかしなくてはならない。




天田「……? どうしたんだ、コロマル」

コロマル「ウウウ……ワンッ!ワンッ!」


>コロマルは毛並みを逆立て街の方を向きながらまた吠え始める。

天田「お前今日は落ち着きがないなー。どうしたんだよ」

美鶴「ん……?」




美鶴「なっ……馬鹿な!」

アイギス「……美鶴さん?」

アイギス「っ、まさかまだシャドウが!?」

鳴上「!」

天田「そんなっ……!」

メティス「今度は何処ですか? すぐに向かいましょう」

美鶴「っ……」

鳴上「桐条さん! 何処なんですか!?」

美鶴「……何処にいるとか、そういう問題じゃ……ない」



美鶴「今、この街の各所にシャドウの反応を感じる……港区の全域がシャドウの巣と化している……!」


今日の分はこれで終わりです。

また次回。

>……

>港区の全域がシャドウの巣と化している。

>美鶴の言葉は俄かに信じがたい事ではあったが、鳴上達はすぐにその現実を知る事となる。

>街の様子をこの目で確かめようと出回った結果……

>その行く先々に、シャドウの姿があったのだ。



>不幸中の幸いだったのは、出くわしたシャドウはいずれも小型であった事

>大勢で群れをなしている訳ではないという事

>シャドウにしては凶暴性があまり見られず、こちらの姿を確認しただけで逃げ出し姿を消すものも多かったという事だった。

>しかし、それでも今、シャドウが街中にいるという事実に変わりはないのだ……


鳴上「くそっ……こんなんじゃキリがないじゃないか!」

天田「シャドウの事もそうですけど、街の中……なんだかおかしいですよ」

美鶴「ああ。初めはシャドウに気を取られていたから解らなかったが……」

美鶴「いくら深夜だとはいえ、人の気配が無いにも程がある」

アイギス「一般人に被害が及ばなくて済むので助かりますが……まるで、私達とシャドウしかこの街にいないみたいですね」

メティス「……実際そうなのかもしれません」

メティス「私達はあの時、劇場の扉から中に吸い込まれて、気付いたら元の場所に戻っていたように思っていましたが……」

メティス「ここは多分、私達の知っている世界と似ているけれど別の場所なんだと思います」

鳴上「そうか……」

鳴上「つまり、俺たちはあの時、テレビの世界ならぬ劇場の中の世界にきてしまったって訳だな」

天田「さっきまでは普通だったのに、携帯の時刻も狂ってるし、電波も圏外になってますからね……」

アイギス「という事は、元の世界に帰るにはもう一度映画館に戻らないといけないのではありませんか?」

>来た道を引き返して映画館に向かった。

>……

スクリーンショット 館内

>一同は、再び4番の劇場の扉の前までやってきた。

>……しかし、その扉はさっきと同じく、押しても引いても開く事はなかった。

鳴上「なんだこの感じ。不思議な力に押し返されているような……」

メティス「ペルソナを使っても傷ひとつつきませんね」

天田「そんな……それじゃあ、僕達この世界に閉じ込められたままって事ですか!?」

美鶴「この扉を再び開かせる条件を見つけなければ、どうにもならないという事か……」

アイギス「今はここにいた方が安全なのか……」

アイギス「それとも、ここにただ留まっていても仕方ないのか……」

鳴上「……」

鳴上「寮の作戦室から街の様子を窺う事は可能ですか?」

美鶴「全部という訳にはいかないが、一定の範囲内なら可能だな」

鳴上「それじゃあ、一度寮に戻ってみましょう」

鳴上「装備も今あるもので可能な限り整えておかないと」

美鶴「……そうするしかなさそうだな」

>街中をうろつくシャドウに気を付けながら、寮へと一度帰還する事になった。

>……

学生寮前

鳴上「!」

鳴上「寮の扉が……」

>戻ってきて最初に目に入ったのは、破壊されている寮の扉だった……

美鶴「既に敵襲されているだと……!?」

アイギス「どういう事……? シャドウは私達の事を危険視して、しかも居場所までつきとめていたとでもいうの……?」

コロマル「ワンッ!」

メティス「っ……」

天田「コロマル!」

鳴上「メティス!?」

>コロマルとメティスは揃って破られた入口の中へと駆けていってしまった。


学生寮 ラウンジ


>寮の中は電気が落ちていて真っ暗だ……

>一階の様子は入口周辺が少し荒れている。

>……

>階段からコロマルとメティスが下りてきた。


コロマル「ワンッワンッ」

メティス「一階から屋上まで、寮にシャドウの姿は見当たりませんでした」

メティス「しかし、四階へ上がる階段の周辺に銃弾の跡らしきものが……」

美鶴「シャドウはここで暴れるだけ暴れて去っていったという事か?」

鳴上「……」

鳴上(銃弾?)

鳴上(それに、この扉の破られ方……)


>……寮の様子を見て、何かが頭の中に引っ掛かるような感じを覚えた。

>だが、何故そう感じるのかまではっきりと言葉に出来ない……


鳴上「……とりあえず、扉を出来る限り修復して、すぐ作戦室へといきましょう」


>寮にある工具と使えそうな素材を使い、突貫で扉の修理をした。





天田「鳴上さんって結構色々な事が出来て器用ですよね」

鳴上「まあ、過去に色々と経験したからな」

鳴上「後でちゃんと業者に修理して貰った方が……いや、現実世界じゃないから無理か」

美鶴「次にここで襲撃を受けた時が不安だな」

鳴上「そうですね……」

天田「今いるシャドウ達はおとなしいものが多いと思っていた矢先にこれですか……」

メティス「所詮シャドウはシャドウ。人類を脅かす存在に間違いはないという事です」

鳴上「……今、街の様子はどんな感じなんでしょうか?」

美鶴「ふむ……」

美鶴「やはりシャドウがそこらに点々といるようだが、目立った動きはしていない。大人しくしているようだ」

アイギス「時間をかけてでもそれらを全部駆逐するしか今は他に出来る事もないのでしょうか」

美鶴「しかし、それでもあまりに範囲が広過ぎる」

美鶴「せめて、瞬時に一掃出来る方法でもあれば……」

>……

>突然のどうしようもない危機に追い込まれ、皆が口を閉ざしてしまう……

鳴上「映画館以外に特に異常がありそうな場所がないか虱潰しに探してみるのはどうだろう」

鳴上「……まあ、何処も異常に見える事に違いはないんだけど」

美鶴「ここにある食料がつきる前にはどうにかしないといけない訳だしな。籠城しっぱなしというのは無理な話……」



美鶴「……!」

美鶴「……今、大きなシャドウの気配をこの近くに感じた!」

美鶴「それに……」

美鶴「とても微弱だが、シャドウ以外の生命反応を感じる」

アイギス「どういう事ですか?」

美鶴「……私達以外に人間がいるかもしれない」

鳴上「!」

美鶴「敵か味方か……もしかしたら、この空間に偶然迷い込んでしまった一般人という可能性もある」

鳴上「外に出てみよう。もし、本当にそれが一般人だったら助けないと……!」

美鶴「よし。では、急いで出発だ」

美鶴「現場の指揮は頼んだぞ」

鳴上「はい」

美鶴「場所は……長鳴神社の方面だ」

>……

長鳴神社周辺


>道路の真ん中に、今日見た中で一番巨大なシャドウが佇んでいる……


鳴上「あれか……!」

コロマル「グルルル、ワンッ!」


>コロマルが今にもそのシャドウに向かっていきそうなほど興奮している。


美鶴「まずい……そのシャドウの中に人の気配を感じる!」

美鶴「取りこまれてしまっているようだ……!」

メティス「シャドウ討伐と人命救助の両方を達成しないといけないという訳ですね……」

アイギス「でも、あのシャドウ……」

アイギス「街中にいた小さなシャドウと同じように、今は敵意というものが感じられない。こうして、目の前に私達がいるのに」


>大きなシャドウは、アイギスの言うようにただゆらりと佇むだけで、こちらに攻撃をしかけてくる様子もない。


美鶴「解析してみよう。その間、時間稼ぎを頼む」

鳴上「了解しました」

天田「あっ……!?」


>シャドウに動きが見えた――

>だが、それは鳴上達に危害を加える為ではなく、彼らから逃げるように離れていこうとしているのだった。


鳴上「っ、この……待て!」

鳴上(俺達から逃げるって事は、見かけ倒しなだけでそれ程強い敵でもないって事か?)


>しかし、あのシャドウの中には人間がいる。

>今ここで逃がす訳にはいかない。

>みんなを連れてシャドウを追いかけた――

鳴上「来い、イザナギ!」


>逃げるシャドウへと攻撃を喰らわせようとペルソナを召喚する。

>だが……

>それとほぼ同時に、鳴上達はどこから発生したのか解らない大きな光に包まれていた――


鳴上「っ――」





鳴上「……っ!?」


>眩んだ目を再び開いた次の瞬間、鳴上の視界に入ってきたのは……




>巨大なスクリーンだった。


鳴上「は……?」

>気付くと何故か鳴上と仲間達は全員が映画館の座席に座っていたのだ……

>目の前にあるスクリーンはそれまで映写機が回っていたようだが、その動きが止まると同時に幕がゆっくりと閉じていき――

>そしてまた、何か強い力に引っ張られて放りだされるような感覚を味わった。


鳴上「っ!!」


>……すべて、一瞬だった。

>鳴上達はまた外に出たのだったが、そこは大型のシャドウを発見した神社の周辺ではなく、映画館の前に投げ出されていたのだ。


天田「っ、さっきから一体なんなんだよ……」

アイギス「……また映画館のある場所に戻されてしまったのですか?」

メティス「! あの映画館、今はもう照明は消えてるしシャッターも閉じ切っていますよ」

美鶴「……まるでここでは何もなかったような雰囲気だな」

鳴上「っ……」


>もしかしてと思い、携帯の画面を急いで確認してみた。

>……さっきまで狂ってしまっていた日付と時刻が、今はそこにしっかりと映っている。


鳴上「4月15日、日曜日、02:03……」

鳴上「俺達、戻ってこれたのか……!?」

美鶴「……」

美鶴「街中に感じていたシャドウの気配もすっかりなくなっている」

美鶴「ここはちゃんとした現実世界のようだな」

天田「良かった! 僕達帰ってきたんですね!」

メティス「でも、何故突然……?」

鳴上「わからない、でも」

鳴上「みんな無事で良かった……」

アイギス「……」


>閉じ込められてしまったと思った劇場の中の世界から帰還出来た事に、安堵を覚えると同時に気が抜けた事で疲労を一気に感じる……


美鶴「……ここではもう敵に脅かされる事はない。気になる事はまだあるが、今は戻ろう」


>疲れきった体をひきずるようにして、寮へと戻った……


学生寮


>寮の扉は、修理してあるどころか壊れている様子も見られなかった。

>さっきまで体験していた事も目で見たものも全て、別の世界の出来事で間違いない事がはっきりした……


美鶴「みんな、くたびれただろう。今日はもう部屋で休むといい」

美鶴「私も少し頭の中を整理したい……。明日の朝、ラウンジに集合してその時話をまとめよう」


>美鶴の言葉を聞いて。メンバーは解散し各々の部屋へと足を運んでいった。


メティス「鳴上さん」

鳴上「……ん?」

メティス「……あの、さっきはありがとうございました」

鳴上「え?」

メティス「映画館での事です。変な場所に引っ張られる前に、私を助けてくれようとしましたよね?」

メティス「……迂闊でした。私が扉から一番近くにいたのに、即座に反応出来なかったなんて」

メティス「そうすれば、みなさんをあんな危険な場所へ行かせる事もなかったのに……」


>メティスは俯いてしまっている。


鳴上「いや、気にする事ないよ。あんな場所が存在する事も、そこにシャドウがいる事も解った訳だし」

鳴上「どのみちあの場所に用はあった訳だ。むしろ、早く気付けてよかった」

メティス「そうですか……?」

鳴上「ああ。……それに、またあの世界には行く事になると思う」

鳴上「いや、行かなきゃいけないんだ」

鳴上「その話もまたまとめて明日にしよう。メティスもシャドウと初めて戦って今日は疲れただろ?」

メティス「そんな、私は疲労だなんて……」

鳴上「メティスの力、これからも期待してるよ。……おやすみ」

メティス「……。はい、おやすみなさい」


>劇場の中の世界という新たな未知の場所。

>そこに住まうシャドウの存在。

>それらの意味するものを、知らなくてはならない

>だが、今は疲労しきって頭が回らない……

>明日、クマにも相談すれば、何かが少しでも解るだろうか

>……

>部屋に戻ってすぐに休む事にした。


終わりです。

また次回!

どうも>>1です
本日分投下の前に前回投下分の一部に修正があります

>>306のところに誤りがありました
正しくは以下の文になります


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


>もしかしてと思い、携帯の画面を急いで確認してみた。

>……さっきまで狂ってしまっていた日付と時刻が、今はそこにしっかりと映っている。


鳴上「4月15日、日曜日、02:08……」

鳴上「俺達、戻ってこれたのか……!?」

美鶴「……」

美鶴「街中に感じていたシャドウの気配もすっかりなくなっている」

美鶴「ここはちゃんとした現実世界のようだな」

天田「良かった! 僕達帰ってきたんですね!」

メティス「でも、何故突然……?」

鳴上「わからない、でも」

鳴上「みんな無事で良かった……」

アイギス「……」


>閉じ込められてしまったと思った劇場の中の世界から帰還出来た事に、安堵を覚えると同時に気が抜けた事で疲労を一気に感じる……


美鶴「……ここではもう敵に脅かされる事はない。気になる事はまだあるが、今は戻ろう」


>疲れきった体をひきずるようにして、寮へと戻った……


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


では、続きいきます

04/15(日) 晴れ 自室

【朝】


>カーテンの隙間から差し込む陽の光で目を覚ました。

>今日は学校が休みだ。

>……それは解りきっていた事ではあったのだが、携帯の画面を改めて確認してしまう。

>画面には正常に日付と曜日と時刻が表示されていた。

>眠っている間に、また別世界へと迷い込んでしまうような事がなくてほっとした……

>ラウンジへ行く前に、クマに電話して事情を説明しよう。

>……


クマ『……ふむふむ。それじゃあ、今センセーはテレビの中には入れないけど、代わりにスクリーンの中の世界に入れるようになったって事クマ?』

鳴上「ああ。状況から考えて、昨日起こったのはそういう事だったんだと思う」

クマ『センセーが無事に帰ってこれてよかったクマ……』

クマ『それにしても……今の話を聞いた限りだと、センセーの入った世界とクマのいる世界は似ているけど全然違う場所に感じるクマ』

鳴上「なんだって?」

クマ『出入り口になってるものがそもそも違うからだと思うんだけど……』

クマ『クマの世界は少なくともヨースケ達が住んでいる場所では時間に関係なくテレビさえあれば自由に出入り出来るクマ』

クマ『でも、センセーが昨日映画館から迷い込んだ場所は、たぶん特定の条件を満たさないと出入りが出来ない所なんじゃないかクマ?』

クマ『それに霧も出ていなかったんでしょ?』

鳴上「そう言われてみれば、あの眼鏡がなくても周りは見えてたな……」

クマ『入った時はともかく、どうして勝手に元の世界に帰ってきたのかもよく解らないクマ』

クマ『そんな場所だし、たぶんジュネスのテレビから入ってもその世界にいるセンセーのところに辿り着く事は出来ないと思うクマ……』

鳴上「……」

クマ『オヨヨ……ごめんね、センセー。クマは役立たずのクマクマ……』

鳴上「いや、気にするな。こっちこそ色々無理言って悪かったな」

クマ『うん……』

クマ『でもね、センセー! まだ今日はスペシャルサプライズがあるクマよ!』

鳴上「スペシャルサプライズ?」

クマ『ムフフ、きっとすぐにわかると思うクマー』

鳴上「?」


>……

>一度、クマとの通話を終了して、一階に降りる事にした。


学生寮 ラウンジ

>続々とメンバーが集合する。

>全員が揃ったところで、クマと先程と話した内容を伝えた。


美鶴「薄々感じてはいたが、やはりあの世界はテレビの中のものとは別物なのか……」

アイギス「鳴上さんの稲羽市にいるお仲間から協力を得る事は難しくなってしまった訳ですね」

鳴上「ああ……」

天田「不気味な場所でしたね、あそこ」

天田「影時間の時とはまた違う嫌な感じがしました……」

コロマル「グルル……」

鳴上「コロマルのやつ、昨日からずっとこんな調子のままだな」

天田「多分、大型シャドウがいたのが神社の近くだったせいもあるんじゃないかな」

メティス「……はい。コロマルさんはその事を凄く気にしているようです」

メティス「現実世界の事でないとは言え、神社の安否を確かめたいみたいですね」

鳴上「どういう事だ?」

鳴上(というか、メティスは犬の言葉が解るのか?)

天田「あの神社の神主さんがコロマルの元飼い主だったんですよ。今はもう、亡くなっているんですが」

鳴上「そっか。コロマルにとって大切な場所なんだな」


>コロマルの頭をそっと撫でてやった。

>そのおかげかコロマルは少し落ち着きを取り戻したようだ。


鳴上「あの大型シャドウは確かに無視出来ない存在だ」

鳴上「……俺達はこうして帰ってこれたけど、シャドウに飲まれている人は一緒じゃなかったんだ」

美鶴「シャドウに囚われたまま、あの世界に今もまだとり残されていると考えて間違いはないだろうな」

鳴上「早く助けないと……」

天田「でも、またあの世界に行ったとして、昨夜みたいにまたすぐに帰ってこれる保証はないんですよね?」

アイギス「無事に出入りする方法がきちんと解らなければ探索する事は不可能……こちらにとっても命取りになってしまいます」

美鶴「……それにについてなんだが、私なりに少し考えてみた事がある」

美鶴「鳴上の話にも出ていたが、あの世界は特定の条件が揃った時に入る事も出る事も可能なのだと私も思う」

美鶴「ではその具体的な条件とはなにか……」

美鶴「まず考えられる必須条件として、現在閉鎖されている筈の4番の劇場へ行ける事がひとつ」

美鶴「どうすれば行けるのかという点が不明瞭ではあるが、昨夜はあの場所が閉館した後日付が変わった瞬間にまた映画館に入れるようになっていたな……」

美鶴「そして、次に鍵を握っているのが……おそらく、4番の劇場の上映プログラムの内容だ」

天田「あれ、いきなり現れましたからね。どう考えても怪しいですけど……」

美鶴「上映開始時刻が0:15で、上映時間は113分。確かそう記憶してる」

美鶴「ところで……私達は何時頃にあの劇場に吸い込まれたのだろう? あの時、誰か時間を確認していた者はいるか?」


>鳴上を含める一同は首を横に振る。


美鶴「私もはっきりと確認はしていない。だが体感的に、あの映画館の中に入ってから15分ほどしたくらいだったと思う」

鳴上「15分……?」

鳴上「日付が変わってすぐにあの中に入った訳だから……」

アイギス「……0:15、あの上映開始時刻の告知と一致する時間ですね」

メティス「なるほど、そういう事ですか……」

美鶴「そして私達は、あの世界に閉じ込められた。だがある時間が経って、気付いた時には元の世界に帰ってきていた……いや、あの世界から追い出されたと言った方が正しいのかもしれない」

天田「追い出された?」

鳴上「こちら側に戻ってきたのは深夜の2時過ぎ……」

鳴上「じゃあ、もしかして、あそこに書かれていた上映時間が意味してる事って」

美鶴「あの世界で動ける制限時間……なのだろうな」

美鶴「それまでは一度中に入ってしまうと出る事は出来ないが、113分を迎えれば外に出されてしまう訳だ」

アイギス「ならば、もう一人あの世界にいたと思われる人物が帰ってこれなかったのは、シャドウに飲み込まれていたせいでしょうか」

鳴上「そういうカラクリか……」

美鶴「今述べた事を確証だと判断するにはもう一度あの世界に入ってみる必要があるが、これで概ね間違ってはいないと思う」

メティス「まだ他に気になる事を上げるとすれば……」

メティス「昼間、普通の営業時間での4番の劇場はどうなっているのか……という事ですね」

美鶴「そうだな。天田の言っていた事が正しいのなら、改装工事で閉鎖されている筈だが」

美鶴「一度どうなっているのか確認しに出向いた方が良いかもしれない」

鳴上「今日は日曜日だから結構人がいそうですけどね」

美鶴「ふむ、ならば最後の上映時刻を見計らって行ってみようか」

天田「でも、映画を見る訳でもないのにしかも大人数で映画館の中に入るのって凄く怪しくないですか? コロマルは絶対無理だろうし……」

コロマル「クゥーン……」

美鶴「なに、その辺の事はこちらでどうとでもなるさ」

鳴上(桐条グループの力でって事か? おそろしい……)

美鶴「……では、一度解散にしよう。それまでは各自自由に過ごしていてくれて構わないぞ」


>そう美鶴から号令がかかった時、寮の外から誰かがやってくる気配を感じた。


?「失礼しまーす」

美鶴「……? この寮に外部からの客人とは珍しいな」


>どうやら美鶴に心当たりは無いらしい。

>サングラスに帽子を被った少女が入ってきたのだが、……その背格好と声は鳴上の記憶にあるものだった。


鳴上「えっ、まさか……」

?「! 悠先輩!」

鳴上「りせ!?」


>サングラスと帽子を取った少女は、まさしくりせ本人だった。


りせ「先輩、久し振り~!」

鳴上「なんでりせがここに……!?」

りせ「あれ? クマから聞いてない?」

りせ「お仕事でこの近くまで来てたんだよ」

りせ「本当は今日の朝帰る予定だったんだけど、その前に先輩に会いたくなって来ちゃった♪」

鳴上(スペシャルサプライズってこの事だったのか……、って)

鳴上「仕事……?」

鳴上「そうか、春から芸能界復帰するって話だったもんな」

りせ「うん!」

りせ「……っていうのが半分の理由」

りせ「もう半分の理由は、先輩の手助けの為に来たの」

鳴上「!」

りせ「本当は悠先輩と一緒にテレビの中に入って、クマ達をこっちへ誘導する役って事だったんだけど……さっき電話でクマから聞いたよ」

りせ「……映画の中の世界。訳のわからない場所だって」

りせ「私も一緒に行って中の様子の解析を手伝う」

鳴上「りせ……でも、」

りせ「危険だから行かせたくないとか、そんな今更な事言うのはなしだよ? 心配してくれるのは嬉しいけどね」

りせ「先輩の力になりたいの」

りせ「最初、花村先輩から話を聞いた時みんな悔しがってたよ……なんで、先輩のもとで一緒に戦えないのかって」

りせ「だから、今日は私がみんなの代表。でも、私も明日には帰らなきゃならない……今日しかチャンスがないの」

りせ「お願い先輩。私も連れていって」

鳴上「……ありがとう、りせ」

美鶴「鳴上。そちらは……?」

天田「もしかして、久慈川りせじゃないですか!? アイドルと知り合いなんて顔が広いんですね」

アイギス「今の話から察するに、鳴上さんの稲羽市のお仲間のひとりですか?」

鳴上「ああ。紹介するよ」


>みんなに、りせの事を紹介した。


美鶴「私と同じアナライズ能力を持つペルソナ使いか」

りせ「はい。一人より二人で解析した方がきっと色々解る事があると思います」

美鶴「そうか……ありがとう。是非とも協力をお願いしたい」

りせ「任せてください」

美鶴「時間になるまでここにいるといい。鳴上とも積もる話があるだろう」

美鶴「では、私はスムーズに映画館に入れるよう、準備をしてくる」


>美鶴を見送り、りせを含めて仲間と共にラウンジで話をしたりしながら時を過ごした……


【夜】


辰巳ポートアイランド駅前広場


>まだ営業中の映画館が目の前に見える。


美鶴「まずは、営業時間内の劇場の様子の調査だな」

美鶴「今はもう、本日最後のプログラム上映の最中だ。殆どの人間は他の劇場内にいるだろうからそのうちに確認してしまおう」

天田「コロマルはここでちょっと待ってろよ」

コロマル「ワンッ」


>美鶴の計らいのおかげか、入場料を払う事もなくすんなりと館内に入る事が出来た。


4番劇場前


>昨夜と同じ映画館の奥までやってきた。

>しかし4番の劇場は、昨夜見た時とはまるで違い、立ち入り禁止の柵と扉を覆うブルーシートに阻まれ先へ進む事もままならない……

>どう見ても、ここでは映画を上映しているような雰囲気は無かった。


美鶴「ここの責任者に確認したのだが、やはり今4番の劇場はこれから改装工事を予定している為、随分と前から閉鎖しているようだ」

美鶴「他の劇場の工事はもう終わったのだが、ここだけ作業が滞っているらしい」

鳴上「りせ、これを」


>りせに自分の召喚器を貸した。


りせ「へえ、これを使うとこんな場所でもペルソナが呼べちゃうんだ」

りせ「――じゃあ、いくよ」


>りせはカンゼオンを呼び、中の様子を探っている……


りせ「……うん、今は変わった様子はないよ。至って普通の場所みたい」

美鶴「私にも異常は感じられないな」

メティス「営業時間内は平気だとみて大丈夫そうですね」

天田「良かった。人が沢山集まる時間帯にあんな事が起きてたら一溜まりもないですよ」

鳴上「じゃあ今度は、また日付が変わる頃を待つしかないか……」


>一度映画館の外に出て、昨夜と同じ状況になるまで待機する事になった。



【深夜】


>時刻は今日を終えるまであと一分を切った。


アイギス「そろそろですね」

鳴上「ああ……」


>携帯の画面を確認し、時間が変わる瞬間を待つ……

>……

>時計の数字が、23:59から0:00と変わった。

>……その瞬間、やはり昨夜のように営業を終了して人もいなくなっている筈の映画館に、鈍い照明がついた――!

>閉ざされていた筈のシャッターは消えて、入口が開かれていく……


りせ「うそ、なにこれ……!」

美鶴「やはり、この時間にならないと入れない訳か」

鳴上「……行こう」


>招きを受けて、再び館内へと足を運んだ。


スクリーンショット 館内 4番劇場前


>数時間前は塞がれていた筈のその場所は、立ち入り禁止の柵もブルーシートも綺麗になくなっていた。

>上映プログラムもきちんと告知されている。


アイギス「内容は昨日と変わっていないようですね」

りせ「! この中から変な気配がする」

コロマル「ガルルル……」

美鶴「この状況もまったく同じだな」

鳴上「……この扉、普通に開くぞ」


>扉を引くと確かに手ごたえを感じる……


メティス「上映開始時刻と告知されている0:15まで数分時間がありますが……」

美鶴「予測が正しければ、その時間まではこの中に入っていても何も起こらない筈だ」

鳴上「……」

鳴上「……行くか」


>中の様子に十分に注意を払いながら、重い劇場の扉をゆっくりと開いた……


>……

>劇場の中は館内よりもさらに薄暗い。

>一番前にあるスクリーンにはまだ幕が下りていた。


りせ「変な気配、あのスクリーンのところからしてる……本当にこれが入口なんだ」

鳴上「……時間だ」


>手に持ちずっと気にしていた携帯の画面は0:15を表示した。

>そして、幕が上がっていく――

>映写機が回り、スクリーンに映った光が徐々に大きくなっていくき……

>それが闇へと変貌すると、強風が起こりこの場にいる全員をスクリーンの中へと吸いこんだ。


>……


バタン――


鳴上「っ……」


>扉の閉まる音が聞こえると、そこは劇場内ではなくその扉の前に移動していた。


りせ「っ……いったあーい!」

鳴上「大丈夫か、りせ」

りせ「ありがと、先輩……」

りせ「……さっきと同じ場所に見えるけど……本当に、映画の中の世界に来ちゃったんだね」

りせ「周りの空気が、さっきの変な気配と一緒だもん。なのに、この扉の向こうからはその気配は消えた……」

天田「扉、やっぱり今はがっちり閉まっちゃってますね。押しても引いても動かない」

鳴上「携帯の時刻も……狂ってるな」

美鶴「ここにいる間は経過時間がわからないのが痛いな……」

メティス「それは大丈夫です。ここに来てすぐに、私に内蔵されているタイマーを作動させました。今はもう2分ほど時間の経過が確認出来ます」

りせ「……昼間、話では聞いたけど本当にロボットなんだね」

美鶴「……よし、それではこれからの行動だが」

コロマル「ワンッ!ワンッ!」

鳴上「っと、そうか……コロマルは神社の様子が気になるんだよな」

コロマル「ワンッ!」

美鶴「もしかしたらまたその辺りにあのシャドウが現れるかもしれないしな」

鳴上「長鳴神社まで行こう」


>……

長鳴神社

>途中何度かシャドウを倒しつつ、目的地まで辿りついた。


りせ「それにしてもここのシャドウ、本当に大人しいのが多い……昨日もこんな感じだったの?」

鳴上「ああ。まったく抵抗されないと、なんだかこっちが悪者みたいな気分だな……」

メティス「そんな事はありません。やつらは存在しているだけで脅威です」

メティス「あの大型シャドウも早く見つけて倒さないといけない……そうでしょう?」

鳴上「……。そうだったな」

コロマル「ワンッ」

アイギス「コロマルさんと神社の中を見回ってきましたが、特に荒らされている様子もないようです」

鳴上「よかったな、コロマル」

コロマル「ワンッ!」

>……


>その後、みんなで話合った結果、今夜はこのまま神社で待機して大きなシャドウの反応をりせと美鶴に探して貰う事になった。


りせ「……うーん。なかなかそれっぽい反応が見当たらない」

美鶴「同じくだ。まさか、昨日ここで私達に遭遇したのを学習して、別の場所に隠れてしまったのか……?」

りせ「街の中をうろついてるシャドウはどれも小さいのばかりだし、目立つ動きもなくてただその辺をふらふらしてるだけみたい」

鳴上「まいったな……」

メティス「ここに来てからの時間も110分を超えました」

アイギス「もうすぐ今日のタイムリミットだと思われる時間ね……」

りせ「……」

りせ「ごめんね、先輩。私ってば結局何の役にも立たなかったみたい……」

りせ「街中を出来る限り解析してみたけど、手掛かりになりそうな事は何も掴めなかった」

鳴上「……いいんだ。りせはよくやってくれたよ。明日からは俺達がなんとかする」

りせ「先輩……」

りせ「無理しないでね」

鳴上「……」

メティス「113分、経ちました」


>……





>……光に包まれ、一同は映画館の外に戻されていた。


美鶴「……あの世界での一日の探索時間には限りがあるという事がこれではっきりしたな」

鳴上「あの広い範囲を一日二時間足らずで探索しないといけないんだな……」

天田「でも、これから少しずつやっていくしかないんですね」

アイギス「まずは大型シャドウの発見と討伐を優先しましょう。あれがもしかしたらあそこの主なのかもしれません」

メティス「私も姉さんの意見に賛成です。他のシャドウはいまのところは大人しそうですから、あれを探すついでに狩っていけばいい話だと思います」

りせ「あそこら一帯に出ていたシャドウ、氷結系の技を使うのや耐性あるやつが多かったみたい」

りせ「雪の女王っていうあの映画のタイトルと何か関係あるのかな……?」

鳴上(雪の女王、か……)



美鶴「……今日もみんなご苦労だった。特に君には凄く助けて貰ったよ……遅くまで付き合わせてしまって悪かった」

りせ「いいえ。私は何も……」

美鶴「こんな時間にこれ以上女子を、しかもアイドルを出歩かせる訳にはいかないな。今日はこのまま学生寮に泊まっていってくれ」

りせ「わあ、ありがとうございます」

鳴上「礼を言うのはこっちの方だ。本当にありがとう、りせ」



鳴上「……それじゃあ帰ろう、みんな」


>ほんの僅かな事だがあの世界の事を少し知る事が出来た。

>本格的な探索は明日から始められるだろう……

>……今夜はこれで休む事になった。


いつも見てくれてるみなさんありがとう。

今日はこれで終わります。

また次回!

04/16(月)晴れ 自室


【朝】


>外は良い天気で暖かい。

>……だが、少し体がだるいような気がする。

>連日映画の中の世界へと行っていたせいなのだろうか……

>……


>今日の朝には、りせは稲羽市へと帰ってしまうらしい。

>支度をして、駅でりせを見送ってから登校する事にした。



学生寮 一階


>階段をおりているところで、寮の入り口から出て行こうとするりせの後ろ姿が見えた。


鳴上「りせ!」

りせ「!」


>鳴上の声にりせは振り返る。

>とても驚いたような表情を見せてからりせは苦笑を零した。


りせ「あーあ、見つかっちゃったかあ……」

鳴上「黙って帰ろうとするなんて酷いじゃないか」

りせ「……」

りせ「美鶴さん達に帰りは見送るって言われたけど、私から断ったんだ。忙しいとこ邪魔したくないし」

りせ「……それに、先輩の顔見たら本当に帰りたくなくなりそうだったんだもん」

鳴上「りせ……」

りせ「私もここに住みたいな……先輩達のサポート、続けたい」

りせ「なあんてね! ワガママ言っても仕方ないよね。芸能界の仕事も復帰した矢先なんだし」

鳴上「俺も、りせがここで力になってくれるなら嬉しいけど……」

鳴上「……」

鳴上「……駅まで送るよ。俺も学校行くのにモノレール使うんだし」

りせ「うん。折角だから、そうして貰っちゃおうかな」


>りせと一緒に寮を出た。

>駅までの足取りが二人とも自然に鈍くなっているような気がした……



>……


巌戸台駅


>いつもの登校時より時間をかけて駅まで辿り着いた。


りせ「ここまで送ってくれてありがとね、先輩」


>りせは名残惜しそうにこちらを見ている。

>足もそれ以上なかなか進まないようだ。


りせ「やっぱり帰るの嫌になってきちゃったよ……」

鳴上「何言ってんだ。別に永遠の別れって訳じゃないだろ?」

鳴上「5月になったら俺がそっちに遊びに行くし」

りせ「! そうだったね!」

りせ「みんなで楽しみにまってるから」

鳴上「ああ」

りせ「……だから、体には気を付けてね。先輩、今日ちょっと顔色悪く見える」

りせ「あの世界の影響なのかな……実は、私もちょっとだけど体だるいんだよね」

りせ「……昨日体験した世界だけどね、クマの言う通りテレビの中の世界と似てるんだけど別物だって感じがしたんだ」

りせ「なんていえばいいのかな。テレビの中の世界が厚揚げなら、あの世界はがんもみたいっていうか」

鳴上「豆腐屋の孫らしい例えだな」

鳴上「まあでも、言いたい事の雰囲気はなんとなくわかった」

りせ「あはは……」

りせ「とにかくね、今までの経験が役に立つ事もあればあてにならない事もあるかもって事」

りせ「油断はしないで」

鳴上「肝に銘じとく」

りせ「……今度会う時も、先輩の元気な姿ちゃんと見せてね」

鳴上「もちろん」

りせ「うん。またね、先輩」


>りせの姿が見えなくなるまで見送ってから、登校する事にした。


>……


【昼休み】


3-A 教室


メティス「鳴上さん、少しよろしいですか?」

鳴上「ん?」

メティス「職員室まで一緒に付き合っていただきたいのです」

鳴上「いいけど、何しに行くんだ?」

メティス「例の意識不明の少年の事についてです。この学校の高等科の一年生なんですよね?」

メティス「ここは初等科から学年が存在します。高等科に上がる前に事件にあっていたとしても、その方が中等科でもここに通っていたならば、どういう人物だったかどんな素行が見られたかなど解る教師もいるのではと思ったのですが……」

メティス「それに、その方の交友関係が気になります。今となっては、こちらの方が重要度の高い情報でしょう」

メティス「……彼が意識を失う前の第一発見者であるご友人の方、足取りが掴めなくなっているんですよね?」

鳴上「! なるほどな。せめてその人物が具体的にどこのどういう誰かもう少し解れば……」

鳴上「でも、どう聞いたらいいんだろうな。俺達は彼らと知り合いだって訳じゃないんだし」

鳴上「……とりあえず、行くだけ行ってみるか」


>メティスと共に職員室へ行く事にした。


>……


?「……ねえ、君たち、ちょっといい?」

鳴上・メティス「?」


>廊下で見知らぬ女生徒に声をかけられた。


?「聞きたい事があるの。この人、最近何処かで見た覚えないかな?」


>彼女が描いたものなのだろうか……一人の少年の顔が描かれた絵を見せられた。

>女生徒はそれと同じものがコピーされている用紙を何枚も手に抱えている。

>紙の中の少年は、鳴上達より少し幼く感じる顔立ちに見えた。

>とても上手に描かれているように見えるが……記憶にはこの絵の人物に該当する者はいなかったので、本当にそうかは解らなかった。


鳴上「ごめん、俺はないかな」

メティス「私にも見覚えはありません」

?「そっか……」


>女生徒は顔を曇らせ項垂れてしまった……


鳴上「いったい誰なんだ?」

?「私の知り合いでね、ここの一年になったばかりの子なんだけど、ね……」

?「……今、行方不明なの」

鳴上「!?」

?「しかも、何時何処で行方がわからなくなったのかさえよくわからなくて……」

メティス「……」

?「だから、些細な事でいいから情報を集めたいの。それあげるから、この先何かそれっぽい事わかったら私にも教えてくれないかな?」

?「私、高等科3-Bの星あかり。じゃあ、よろしくね!」


>星あかりと名乗った女生徒は、忙しなく廊下を走っていってしまった……


鳴上「……メティス。今の、どう思う?」

メティス「……」

メティス「判断する為の情報が不足しています。しかし……」

鳴上「もしかしたらそうなんじゃないかと思い当たる事はある、……だろ?」

メティス「……はい」

鳴上「これを持って職員室に行こうか」


>……


職員室


鳴上「失礼します」


>職員室の中を見渡すと、担任である橿原の姿がすぐに確認出来た。


鳴上「橿原先生」

淳「……ん? 鳴上くんとメティスさんか。どうかしたのかな?」

鳴上「ちょっと聞きたい事があるんです」

淳「授業の事かな?」

鳴上「いえ、実は……」


>橿原に、あかりから渡された絵を見せた。


鳴上「この絵の人物について、少しお話をうかがえたらと思って」

鳴上「高等科の一年の生徒……この絵の彼が、今行方不明になっていると聞きました」

淳「!」

淳「……」

淳「鳴上くん達は、彼の知り合い……なのかな?」

鳴上「えっと……」

メティス「B組の星あかりさんから、彼の捜索の為の手掛かりが欲しいと協力を要請されました」

淳「そっか……」

淳「星さんなら少し前に職員室に来て同じ事を問い質していたみたいだよ」

淳「僕は一年生とあまり関わりが無いから詳しくはわからないんだけれど……」

淳「彼の捜索願いが出されたのはつい先日のようだ」

淳「ご家族の方も最近彼と顔を合わせる機会が少なかったせいもあって、数日帰ってきていないと解るまで時間があったそうで……」

鳴上「そんな……」

淳「……」

淳「……今、一年の子で意識がなくて入院している子がいるんだけど」

淳「その子の友達みたいなんだ」

鳴上「!」

鳴上(やっぱりそうか……)

淳「警察は、その子も含めてなにか共通の事件に巻き込まれた可能性があると考えているみたいだね」

淳「意識不明の子も、そうなる直前まで行方知れずだったらしいから……」

鳴上(意識不明で発見される前まで失踪していた……!?)

淳「……君達にはこうして事情を話してしまったけど」

淳「この事で、もし君達が何かしようとか考えてるんだったら、それはやめて欲しいんだ」

淳「教師として、大人としての忠告だよ」

淳「星さんにも言った事だけど、これは警察に任せるべき事だ」

淳「ただでさえ、最近妙な事が多いんだ……君達にまで何かあったらと思うと、心配だよ」

鳴上「……」

鳴上「色々教えてくれて、ありがとうございました」

鳴上「失礼します」

メティス「……」

淳「……」


>メティスと共に、職員室を後にした……


>……


鳴上「だんだんと話が繋がってきたな」

メティス「そうですね」

メティス「新たに仮説も浮かびあがってきました」

鳴上「失踪届けの出ている意識不明の少年の友人……『ポートアイランド駅周辺にバケモノが出るらしい』と最初に掲示板に書き込みをした人物」

鳴上「彼にとってそれは、初めはただ人に聞いただけの情報に過ぎなかった。でも……」

鳴上「今は彼自身もまたバケモノに……シャドウに命を脅かされているのかもしれない」

鳴上「あの大型シャドウに囚われているのが、その彼なのかもしれない」

鳴上「友達がシャドウのせいであんな目にあったかもしれないんだ。その原因とバケモノの正体を突き止めたくて、彼も俺達のようにあの周辺を調べていたんだろうな」

メティス「おそらくは。……そしてその結果、あの世界に迷い込んでしまったのかもしれませんね。初めて私達があそこへ飛ばされてしまった時と同じように」

鳴上「……」

鳴上「今日の放課後、交番へ行って黒沢さん達に頼んで武器と装備を整えよう」

鳴上「早いとこあのシャドウをどうにかしないと……二の舞にはさせたくない」

メティス「その事なんですが……」


>その時、話の途中で午後の授業前の予鈴が鳴った……


メティス「……いえ、また後で話します。行きましょう」

鳴上「……ああ」


>早く帰って今夜の準備をしたいという焦燥に駆られながらも、教室に戻る事にした……


終わります。

…あかりちゃんについてはもしかしたら年齢詐称気味かもしれないけど気にしない。

また次回!

ペルソナ2の舞台・・・1999年:転生戦士イシュキック(星あかり)登場
ペルソナ4の舞台・・・2011年:鳴上登場(高校二年)

うむ

【放課後】


>今日の授業が全て終わり、ポロニアンモールにある交番へとメティスと共に行く途中……


鳴上「武器の調達が出来ないかもしれない?」

メティス「はい。美鶴さんに紹介していただいてから何度か辰巳東交番へと足を運んだのですが、なんらかの圧力を受けているのか色々と難しい事があるようで」

鳴上(まあ、いくら理由があるとはいえ、警察の人が武器の横流しするのに苦労があるなんて言わなくても決まってる事だよな……)

メティス「とりあえず行ってみましょう」


>……


辰巳東交番


>交番には周防の姿があった。


メティス「周防さん、お疲れ様です」

鳴上「こんにちは」

達哉「ん。ああ……」

達哉「黒沢に用なら悪いが今あいつはここにいないぞ」

達哉「お前達がここに来る事の意味は大体解ってるけどな。だが……」


>周防は溜息を小さく吐いて、その言葉を続けることさえ申し訳ないという表情をしていた。

メティス「その様子だとやはり……」

達哉「ああ。……すまない」

達哉「防具に関しては平気なんだがな。お前達に扱えそうなもので戦いに使えそうな武器を揃えるのに手間取っている」

達哉「もうじきどうにかなりそうではあるが、今はまだ無理だ」

達哉「……俺達に出来る事があるなら協力すると言っておいて情けない話だな」

鳴上「いえ、気持ちだけで十分です。ありがとうございます」

達哉「しかし……」

達哉「……行方不明になっている月光館の生徒の事件。あれはお前達が戦っている敵と関係があるとみて間違いはないんだろう?」

鳴上「はい。おそらく」

鳴上(周防さんも勘付いてたのか…)

達哉「……それを討ちに行く為の準備を何もしてやれないとはな」

達哉「相手が人間でない以上、俺達警察でもどうにもする事が出来ない」

達哉「お前達に託すしかないんだ」

鳴上「わかっています」

鳴上「必ず、彼を連れ帰ってきます」

達哉「……頼んだぞ」

達哉「よし。今日は今揃えられている範囲で一番いい防具を持っていけ。タダでやる」

鳴上「えっ、いいんですか?」

達哉「ああ。黒沢には内緒だぞ。あいつ、こういう事にはほんとうるさいからな……」

鳴上「ありがとうございます」

達哉「そのかわり、さっきの約束……必ず守れよ」

達哉「お前達も全員無事に帰ってこい」

達哉「信じてるからな」

鳴上「はい」


>周防から意志を受け継いだ……


>『ⅩⅨ 太陽 周防達哉』のランクが3になった


>……

>周防から防具一式を受け取り、交番を後にした。


ポロニアンモール


鳴上「……あ。俺、これから寄りたいと思ってた場所があるんだけど、メティスはどうする?」

メティス「そうですね……」

メティス「ご迷惑でなければ一緒に行ってもいいでしょうか?」

鳴上「ああ。一緒に行こう」

メティス「しかし、どちらへ行くのですか?」

鳴上「本屋だよ」


>……


>二人でこの近辺で一番大きな本屋までやってきた。


メティス「参考書でもお探しですか」

鳴上「いや、俺が探してるのは……たぶん、児童書の辺りにあるかな」

メティス「児童書?」


>……


>少し店内を歩くとすぐに児童書のコーナーを発見できた。

>見てみると今は童話絵本のフェアをやっているようだ。

>目立つ場所にお馴染みの童話から気鋭作家のオリジナルの話まで、色々な本が平積みにされて置かれているのがわかる。

>……その一角に、何処かで見たような姿があるのが目に映った。


鳴上「あれ……藤堂さん?」

藤堂「……うん? ああ、君か。こんな場所で会うなんて奇遇だね」

鳴上「そうですね。……あ」

鳴上「それ……」


>藤堂が手にして見ていた本に視線がいった。

>……その本のタイトルは『雪の女王』だった。


藤堂「ああ、これ?」

鳴上「その本を探しにここまできていたもんで」

メティス「……なるほど。そういう事ですか」

藤堂「へえ。君みたいな今時の子が本屋で童話探しか……意外だな。隣の彼女へのプレゼントとか?」

鳴上「え、いや、そんなんじゃないんですけど……」

藤堂「そう照れるなって」

メティス「?」

鳴上「えと……藤堂さんこそ、そういう本が好きなんですか?」

藤堂「ん……俺は、まあ、なんていうか」

藤堂「……ちょっと懐かしい気分になってただけさ」

鳴上「?」

藤堂「……」

藤堂「なんだか妙な縁を感じるな」

藤堂「ちょっと待ってな」


>藤堂は手に持っていた雪の女王の本をそのままレジで会計し戻ってきた。


藤堂「ほら、やるよ」

鳴上「えっ?」

藤堂「ん? これが目当ての本だったんだろ?」

鳴上「そうですけど……」

藤堂「金の事なら気にしなくていい。そうだな……この間のお礼の延長みたいなものだと思ってくれれば」

藤堂「じゃあな」


>藤堂は本を手渡してそのまま去って行ってしまった。

>『雪の女王』の本を入手した。


>『Ⅳ 皇帝 藤堂尚也』のランクが2になった


メティス「……。鳴上さんのお知り合いの方、不思議な人ですね」

鳴上(……今度会えたらちゃんとお礼を言おう)


>本屋から出て帰る事にした。

>……

巌戸台駅周辺


「悠」

鳴上「?」


>不意に名前を呼ばれて思わず振り返った。


鳴上「チドリか」

チドリ「……これ、今落としたみたいだけど」


>チドリの手には今日学校であかりから渡された行方不明の少年の描かれている絵があった。


鳴上「……あ。ありがとう」

チドリ「……」

チドリ「その絵、悠が描いたの?」

鳴上「いや、残念ながら」


>チドリは拾ったその絵を興味深そうにじっと見ている。


鳴上「どうかした?」

チドリ「……いえ。見た事ある顔だと思って」

鳴上「チドリも彼の知り合いなのか?」

チドリ「そういう訳じゃないけど。……『も』って?」


>チドリにこの絵についての色々な経緯を掻い摘んで教えた。


チドリ「ふぅん……」

チドリ「……思い出した。ポートアイランド駅の周辺でたまに見た顔よ、彼」

チドリ「もう一週間以上見ていなかったような気がしたけど……行方不明になんてなってたの」

チドリ「……最後に見かけた時、一緒にいた人と口喧嘩してた気がする。内容はよくわからないけど」

チドリ「それが何か関係してなければいいけど……」

チドリ「……」

チドリ「ところで、悠」

鳴上「なんだ?」

チドリ「ここで会ったのも何かの縁だと思って貴方にひとつお願いしてもいいかしら」

鳴上「俺に出来る事なら」

チドリ「私、訳があって明日からしばらくこの周辺に来る事が出来ないの」

チドリ「でも、そんな時に限って私の待っている人がここにくるかもしれない……」

鳴上「……今日も会えなかったのか、その人に」


>チドリは無言で頷いた。


チドリ「悠もこの時間帯は駅の周辺によくいるでしょ。だから、もし見かけたらでいい……その人に私の言葉を届けて欲しい」

鳴上「それはいいけど、どういう人なんだ」

チドリ「この人」


>チドリはスケッチブックをめくって一枚の絵を見せた。

>キャップを被った笑顔の男が描かれている。


チドリ「名前は順平。伊織順平」

鳴上「イオリジュンペイさん、か」

チドリ「いつもこの帽子をかぶっているから、見ればすぐわかると思う」

鳴上「そっか」

鳴上「……」

鳴上「チドリのカレシ?」

チドリ「……!」

チドリ「っ……」


>チドリは一度ひどく驚いたように目を見開いてから、怒ったように形相を変えてこちらを睨んできた……


鳴上(まずい……聞いちゃいけない事だったか)

鳴上「えっと……それで、そのジュンペイさんに何て伝えれば」

チドリ「……待って」


>チドリは再びスケッチブックをめくり、白いページに鉛筆を走らせそれを破ってたたみ鳴上に差し出した。


チドリ「わかってると思うけど、悠は見たらダメだから」

鳴上「うん」

チドリ「そのかわり、お礼って訳じゃないけどこれあげる。私には必要ないものだから」


>傷薬を5つ貰った。

チドリ「……」

チドリ「じゃあ、よろしく」

チドリ「……ワガママ聞いてくれてありがとう」


>立ち去ろうとするチドリから小さな声でお礼の言葉が聞こえた。



>『ⅩⅡ 刑死者 チドリ』のランクが3になった



メティス「あの方も不思議な雰囲気の方ですね」

鳴上「……だな」

メティス「それはそうと鳴上さん」

鳴上「?」

メティス「女性の込み入った事情を易々と聞こうとするのはいくら知り合いでもどうかと思いますが」

鳴上「……。そうですね」

鳴上(まさかメティスに注意される日がくるとは思わなかった……)


>……話もほどほどに寮に戻る事にした。

>……

【夜】


>寮に戻ってからは、映画館へと行く時間になるまで各自で自由に時間を過ごす事になった。

>……


自室


>あともう少しで出発の時間だ。

>出かける支度をしなければ……


鳴上「でもそれらしい武器が無いってのはやっぱりきついな……」

鳴上「今日もアイギスさんから貰ったゴルフクラブを一応持ってくか」


>電気を消して、部屋から出ようとした。

>その時、部屋の中にぼうっと影が浮かんできたのが見えた……


鳴上「!」

鳴上(またあいつか……)


>予想の通り半透明姿のイヤホンの少年がそこに佇んでいた……


イヤホンの少年「……」

鳴上「……」


>イヤホンの少年は相変わらず無口だ……

>しかし、こうして出てきた以上は何か用があるのだろう。


鳴上「あの……」

イヤホンの少年「……」

鳴上「……」

イヤホンの少年「……武器」

鳴上「?」

イヤホンの少年「無いよりはあった方がいいかと思って」


>そう少年が呟くと、何も無かった筈の空間から『何か』が現れた……!


鳴上「!?」

イヤホンの少年「大したものはもう残ってないが……」

イヤホンの少年「……」

イヤホンの少年「……みんなにも分けてやってくれ」

イヤホンの少年「頼んだ……」


>イヤホンの少年は出した武器を残してすぐに消えてしまった。

>少年が気遣ってくれたのを感じた……



>『ⅩⅢ 死神 謎のイヤホンの少年』のランクが2になった



鳴上「……」

鳴上「こうやって色々とくれたのはありがたいけど……」

鳴上「……武器?」

鳴上「……」

鳴上「とりあえず持って行ってみんなにも見せてみよう」


>……



学生寮 ラウンジ


>一階にはメンバーが集合している。


美鶴「これで全員だな。では、行こうか」

鳴上「その前にみんなにこれを……」

鳴上「役に立てばいいですけど。……」

アイギス「!」

天田「え……?」

美鶴「これは……」

コロマル「ワンッ!」


>鳴上の持ってきた『武器』に一番最初に飛びついたのはコロマルだった。

>コロマルがその中から瞬時に選んで口にくわえたもの、それは……

>骨だった。


アイギス・美鶴・天田「……」

鳴上「えっと……」


>鳴上が貰った武器一式は、実際には武器呼んでいいのか微妙なものばかりだった……

>コロマルが選んだもの以外を見ると、鉄パイプ、釘バット、ロケットパンチなどはまだいい方だとして、デッキブラシやジャックフロストとランタンを模した手袋のようなもの、バス停なんてものまである……


鳴上(こんなの武器に使う奴なんていたのだろうか……特に手袋)

鳴上「あの、やっぱりいらないですよね……」

美鶴「……」

美鶴「……いや。せっかくだから貰っておこうか」

鳴上「えっ……」


>そう言って美鶴は鉄パイプを


天田「僕も貰いますね」


>天田はデッキブラシを


アイギス「私もいただきます」


>アイギスはロケットパンチを迷わず手にとった。


>……みんなの表情からは呆れている様子は微塵も見えなかった。

>むしろ、何かを懐かしんでいるようなそんな雰囲気さえ感じる……


アイギス「……鳴上さんは、これをどこで?」

鳴上「えっと、……部屋にあったんで」

鳴上(嘘じゃないけど、これ以上本当の事は言えないよな……)

アイギス「鳴上さんの使ってるあの部屋に?」

アイギス「……。そうですか」

メティス「なるほど。無いものは有るものを持ってして補えという訳ですね」

メティス「では、私はこれを貰いますね」


>メティスはバス停を手に取った。

>それを軽く二、三度スイングしている。


メティス「これでもなかなか使えそうじゃないですか」

鳴上「ここで振り回すのは流石にやめろ……」

鳴上「……」

鳴上(俺はどうしようかな)


>試しにジャックの手袋を両手にはめてみた。


鳴上「……」

鳴上「やっぱりないわー……」

鳴上「となると、これか」


>鳴上は釘バットを装備した。


鳴上(なんかの血とか体液とかで薄汚れてるって事はこれって使い古しなんだよな)

鳴上(ますますあいつの正体がわからなくなった気がする……)


美鶴「……さて、準備も済んだ事だ。今度こそ行こうか」


>メンバー全員で映画館へと向かって出発した。

>……


【深夜】


映画館 スクリーンショット


>一同は時間を待ってスクリーンの中の世界へと足を踏み入れた……


美鶴「さて、今日から本格的に探索を開始する訳だが、あの大型シャドウを優先的に捜索するという以外に何か案があるものはいるか?」

アイギス「私からは特には」

天田「僕もあまりこれといって思いつく事はありませんね」

コロマル「ワンワンッ」

メティス「私もです」

鳴上「……」

美鶴「どうかしたか?」

鳴上「この街って人がいなくてシャドウが出る以外は俺達の街と変わりなく見えるけど……本当にそうなんでしょうか」

鳴上「俺達が確認した範囲ではそうだったかもしれないけど、探せばまったく違う場所も出てくるんじゃないかって」

鳴上「……まあ、なんとなく思っただけだし、だからどうなんだという話でもないんですけど」

美鶴「……。確かにな」

美鶴「この街は異常の固まりだ。そうであっても不思議ではないな」

鳴上「はい。だから、本命を探しながらもう少し丁寧に街中を調べてみるのはどうでしょうか」

鳴上「この世界を攻略するヒントも見つかるかもしれないという期待をかけて」

美鶴「リーダーがそう提案するなら、それに従うまでだな」

アイギス「そうですね」

天田「行きましょうか」

コロマル「ワンッ!」

鳴上「何か気付いた事があれば小さな事でも教えて欲しい」

メティス「了解しました」


>……今夜の活動を開始する事にした。

>……


アイギス「今夜のところは特に気になるところは見あたりませんでしたね……」

美鶴「大型シャドウの気配も感じられなかったな」

天田「どこに隠れてしまったんでしょうね。僕たちの事をそんなにも警戒しているんでしょうか」

鳴上「……でも、今日は今までに比べてその辺にいた小さなシャドウは落ち着きが無かったような気がする」

メティス「手こずるような事にはなりませんでしたけどね」


>しかし、それでも連日の探索と戦闘のせいでみんな体力に限界を感じているようだ……


コロマル「!」

コロマル「ワンッ!」


>神社の近くを通りかかったところで、コロマルが急に走りだしていってしまった。


天田「コロマル!」

メティス「敵の気配でも察知したのでしょうか」

美鶴「……いや、あの方面には変わった様子は感じられないが」

鳴上「とにかく行ってみよう」

長鳴神社


>神社の敷地内はとても静かだ。

>これといって不穏な気配は感じられない。

>……


コロマル「ワンッワンッ」


>コロマルは御神木の傍で吠えている。


アイギス「? なんなんでしょうあれは」


>アイギスはコロマルが吠えているその先を指さした。

>……御神木の前に不思議な扉がある。


メティス「昨夜はこんなものありませんでしたよね」

鳴上(ベルベットルームの扉とはまた違うよな……みんなにも見えているみたいだし)

美鶴「シャドウの気配はしないが、中になにかあるようだな」

美鶴「怪しくはあるが嫌な気配ではない……むしろ、シャドウなんかとは真逆の力のような……」

鳴上「!」


>不意にその扉が開き、鳴上達を招き入れた……


>……


>扉の中は、現実世界でもシャドウの世界でもない幻想的な何かを感じさせる場所だった。

>空間の真ん中には泉があるのが見える。

>……その上に、急に何かが現れた。

>その何かは人型をしているものの、人間にしては小さいし何よりも背中に羽がはえているように見えた。


鳴上「!?」

?「!」

?「Hi! 君たちお客さんだね?」

?「ボクはトリッシュ、この泉の妖精さ」

鳴上「妖精? お客さん?」

トリッシュ「ここはトリッシュの泉。君たちの傷を癒してあげる場所だよ」

鳴上「そんな事が出来るのか!?」

トリッシュ「of course!」

トリッシュ「でも、出すモノは出して貰うからね」

鳴上「というと……」

トリッシュ「渡る世間はGive and take! ケチケチしないでホラ!」


>トリッシュは回復に見合うだけの料金を貰いたいという事のようだ。


鳴上「それは、いかほどで……?」

トリッシュ「そうだねー。今日は特別初回サービスにするとして……」

トリッシュ「とりあえずおサイフplease!」

鳴上「え? ああ」


>トリッシュは鳴上の財布を半ば強引に奪うと、中身を吟味し始めた。


トリッシュ「フムフム……」

トリッシュ「まあ、このくらいが妥当なとこかな」


>中身を抜き取り、トリッシュは鳴上の財布を放るようにして返した。

>戻ってきた財布の中はほとんど空になっていた……


鳴上(今日は武器を買う為の資金が沢山入っていた筈なのに……)

トリッシュ「じゃあ、いっくよー。エイ!」


>不思議な力が鳴上達の傷と疲れを癒していく……


トリッシュ「死にたくなかったら気軽にボクのトコにおいでよ」

トリッシュ「今後ともヨロシク!」


>妖精、トリッシュと知り合いになった。



>『ⅩⅣ 節制 トリッシュ』のコミュを入手しました

>『ⅩⅣ 節制 トリッシュ』のランクが1になった



>気付けば鳴上達は、トリッシュの泉から出て神社へと戻っていた。

>……

>あっという間の出来事で、みんなしばらく唖然としているようだった……


天田「……シャドウと戦っていてこんな事いうのもあれですけど、妖精って本当にいたんですね」

美鶴「腕は確かなようだな。見事に傷が癒えている」

美鶴「で、結局のところ、料金はいくらだったんだ?」

鳴上「……」

美鶴「……」

美鶴「……カード払いが可能なら、次回からは私が払うが」

鳴上「……いえ、いいんです。いいんです……」

鳴上「前にも似たような事がありましたから……」

鳴上(キツネの時より割高な気がしないでもないけど……)

メティス「あの、せっかく回復して貰いましたけれども……」

メティス「もう時間のようです」

鳴上「!?」


>次の瞬間、鳴上達は現実世界へと押し戻された……

>……


ポートアイランド駅前


美鶴「今夜も大した収穫はなかったか……痛いな」

鳴上「ええ、痛いです……」

アイギス(鳴上さんの後ろ姿が本当に痛ましい)

鳴上(貯金はまだあるけど、ずっとこの調子が続いたら流石にヤバい気がする……)

鳴上(背に腹はかえられないが……場合によってはバイト探さないとダメか)

鳴上(はあ……)

鳴上「帰ろうか……」


>体の傷は治っても、予想をはるかに上回る金銭的大ダメージを受けて、学生寮へと戻る事になった……


>>359
やっちまった…そんなに時間が経ってたとは思わなかった
完全に「星あかり18さいです☆」オイオイ 状態じゃないか
まあでも、ここではあかりは18さいです。18さいです(大事な事なので(ry


あと今回またひとつ訂正があります

死神コミュ担当の彼は今まで「謎のヘッドホンの少年」という表記でしたが、正しくは「謎のイヤホンの少年」です
あれはどっちかっていうとイヤホンだよなといまさら思ったので

ではまた次回!

04/17(火) 曇り 自室

【朝】

>……

>起床してからすぐに部屋のカーテンを開けて外を見てみた。

>今日は空模様が少しあやしいようだ。

>テレビで天気予報を確認してみよう。


『……今週の天気予報です。今週は曇りの日が続き、週末にかけて天気が崩れるおそれがあります。折り畳み傘の準備をしておくと良いでしょう。……』


>先週暖かい晴れの日が続いていたのが嘘のような予報だ。


鳴上(とりあえずマヨナカテレビが映るかどうかのチェックはまだ続けていた方がいいよな)

鳴上(突然何が起こっても大丈夫なように……)

鳴上(……学校に行こう)


>……

学生寮 階段

>学校へ行こうとするメティスと遭遇した。


鳴上「おはよう」

メティス「……」

メティス「……あ」

メティス「おはようございます」


>一緒に学校に行く事にした。

>……



通学路


メティス「……」

鳴上「……」


>……今日は朝から、メティスの口数がいつもより少ないような気がする。

>何かずっと考え事をしているようにも感じた。


鳴上「何か悩み事?」

メティス「……え?」

メティス「あ、いえ。悩み事という程ではないんですが……」

メティス「……」

鳴上「俺に出来る事があるなら、話聞くけど」


>メティスは初め言うのを躊躇っているようだったが、決心したのかおずおずとではあるが口を開いた。


メティス「……あの、お金を稼ぐというのは難しい事ですか?」

鳴上「うん……?」

鳴上「まあ、どんな簡単な事でも、働いてお金を得るっていうのに全部楽で済む事はないんじゃないかな」

メティス「そうですか……」

鳴上(何を言われるかと思ったら結構意外な事だったな。でもなんでだろう)

メティス「……私でも可能な、その……アルバイトというものがあればと思ったのですが」

鳴上「!」

メティス「……あ。もちろん、シャドウ討伐が私にとっての最優先事項だという認識はしていますのでご安心を」

メティス「ですので、それに差し障りのない範囲で何か出来る事はないかと朝から考えていたのです」

鳴上(珍しいな。理由はわからないけど、メティスがそんなものに興味を示すなんて。でも……)

鳴上(これはいい傾向……なのか?)

鳴上(……よし)

鳴上「実は今、俺もアルバイトを探してみようかと思ってたところなんだ」

鳴上「ほら、昨日のあの妖精の件もあったし……」

メティス「……」

鳴上「メティスもするっていう話なら、一度桐条さんに相談してみようか」

メティス「美鶴さんから許可はおりるでしょうか」

鳴上「大丈夫。きっと許してくれるよ。メティスでも出来そうなアルバイトを紹介してくれるかもしれない」

メティス「……そうだと、嬉しいです」

メティス「……。時間がおしてしまいましたね。行きましょうか」

鳴上「ああ」


>遅刻しないようにと学校へ急いだ。

>……


【昼休み】


月光館学園 3-A 教室


>昼食が済んだが、午後の授業まではまだ時間があるようだ。


鳴上(……昨日貰ったあれを読もうか)


>机の上に『雪の女王』の本を広げた。


メティス「私にも見せて貰ってもよろしいですか」

鳴上「ああ」


>メティスと一緒に本を読んだ。

>……

>『雪の女王』

>あるところにカイという少年とゲルダという少女がいた。

>二人は仲良しだったが、ある日悪魔の作った鏡の破片がカイの眼と心臓に突き刺さってしまった事で、彼の性格が一変してしまう事になる。

>それ以来、カイは仲良しのゲルダに対しても乱暴な態度や言葉を見せるようになるのだが……

>そんなある日、カイがひとりで遊んでいるところに雪の女王が現れカイを連れ去ってしまった。

>ゲルダはいくら待っても帰ってこないカイを探して旅に出る決心をし、道中助けを借りながらやっとの事で雪の女王の宮殿まで辿り着く。

>カイと再会出来たゲルダは喜びの涙を流し、その涙はカイに刺さった鏡の破片を洗い流し元に戻ったカイはゲルダと共に無事故郷へ帰るのだった。

>……というのが、話のあらすじだった。


鳴上「あの世界が今、雪の女王というタイトルになぞっていると仮定すると、大型シャドウが雪の女王って事なのだろうか……?」

メティス「そうなると、シャドウに囚われている彼はカイという事になりますね」

メティス「あるいは、初めにシャドウに犠牲になった意識不明の少年がカイならば、その真相を探ろうとして自身もまた犠牲になってしまったゲルダか……」

鳴上「ゲルダ……」


>……カイを助けようとするゲルダ。

>そこから、一人の少女がふと連想された。


鳴上「隣のクラスに行こう」


>……


月光館学園 3-B 教室


>B組の教室入口から中の様子をうかがった。

>探している人物の姿は見当たらない。

>近くにいるB組の女生徒に声をかけた。


鳴上「なあ。星あかりさんってこのクラスの人だよな? どこにいるか知らない?」

女生徒「……星さん? ……。彼女なら今日は学校にきてないよ」

鳴上「休みか?」

メティス「……」

鳴上「……そうか。ありがとう」


>仕方なくB組を後にした。

>……


鳴上「あれ以上手掛かりになりそうな事があるかはわからないが、もう少し彼についての話を聞きたかったんだけどな……」


>ちょうど昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。


鳴上「もうそんな時間か……」


>自分の教室の戻った。

>……

>しばらくして、橿原が教室に入ってきた。


淳「みんな席について」

鳴上(あれ、次の授業って世界史だったっけ……?)

淳「今日はこの後急遽職員会議が行われる事になったので、午後の授業はなしでこのまま帰りのHRになります」

淳「部活動も無しになるので、真っ直ぐ帰宅してください」


>教室がざわついている。

>早く帰れる事を喜んでいる生徒もいるようだが……

>その中で気になる話し声が聞こえてきた。


生徒A「……なあ、もしかしてあの話本当なのかな」

生徒B「かもね。だから先生達が会議するんでしょ」

生徒C「一年に行方不明者が出てるってやつ?」

生徒A「そう。それに三年にも一人出たって俺は聞いた」

生徒B「え、それ初耳!」

淳「みんな静かにして」

淳「ええと……もう、話が大分広まってるみたいだけど改めて学校側から注意があります」

淳「最近、月光館学園の生徒が何人か行方不明になっているという事件が起きています」

淳「一人は発見されましたが、今は意識不明で入院しています……」

淳「事件が落ち着くまで学校側での対応としては、しばらくの間今日みたいに授業は午前までで部活動も休止という形をとる事になります」

淳「みんなは明るいうちに出来れば複数人で下校し、帰宅後は夜間の外出も控えるようにしてください」

淳「以上でHRは終わりです。日直、号令」


>教室のざわつきが収まらない中、日直の号令でHRが終了した……

>橿原に何か聞こうかとも思ったが、彼はすぐに教室を出て職員室に急いで向かっていってしまった。


鳴上(……三年でも行方不明者だって?)


>疑問と不安を抱えつつ、メティスと連れ立って教室を出た……


【放課後】


辰巳ポートアイランド駅


>思わぬ時間が出来てしまった……

>学校で言われた通り真っ直ぐ帰り、時間になるまで寮で待機していようか。

>……そう思っていた時、前方に美鶴の姿を見かけた。

>美鶴は傍にいる誰かと話しているようだ。


美鶴「……それにしても、本当に久し振りだな。元気にしていたか?」

?「あ、はい。先輩に会うのは久し振りっすけど、実は一ヶ月に一度はここに帰ってきてるんすよ」

美鶴「そうだったのか。……何か用があるんだったら呼び止めてしまってすまなかったな」

?「いやいや。用っていうか、俺が勝手に訪ねてきてるだけっていうかだし……」


>美鶴と一緒にいる誰かの顔に最近見覚えがあるような気がした。


鳴上(あの帽子の男の人……間違いない、チドリの絵の人だ!)

鳴上「あの」

美鶴「……ん? 鳴上とメティスじゃないか。今日は随分早い帰りだな」

?「え、メティス? え?」

メティス「?」


>帽子の男は、メティスの姿を見て驚いた表情を見せているようだったが、構わず話を続けた。


鳴上「えっと、……そちらは、イオリジュンペイさんですか?」

美鶴「そうだが……鳴上に伊織の話をした事はあったか?」

順平「なになに? 俺っちいつの間にかそんな有名人になっちゃったワケ?」


>やはり、彼がイオリジュンペイで間違いないようだ。


鳴上「貴方宛てに伝言を頼まれています。チドリという女性からです」

順平「!」

鳴上「これを」


>今までおどけたように笑っていた彼の表情が変わったのが見えた。

>鞄の中から折り畳まれたスケッチブックに書かれたチドリの伝言を出し、彼に渡した。

>順平はそれをすぐに開いて中に目を通し始めた。


順平「……」

順平「……先輩。久々に会ったとこ悪いんすけど、失礼します」

美鶴「ん? ……ああ」

順平「それから、鳴上だっけ?」

鳴上「はい」

順平「これ、ありがとな」


>順平は短くお礼を告げて、その場からすぐに姿を消してしまった……


鳴上(何が書かれていたんだろう……)

美鶴「……ふっ。彼も相変わらずだな」

メティス「美鶴さんは今の方とお知り合いなんですか?」

美鶴「ああ。昔の後輩で、三年前の特別課外活動部のメンバーでもある」

鳴上「じゃあ、あの人もペルソナ使い……!?」

美鶴「そういう事だ」

美鶴「それよりも、二人ともこんな時間にこんな場所でどうしたんだ? まだ学校の時間じゃないのか」


>美鶴に事情を説明した。


美鶴「なるほど、そういう事か」

美鶴「……一般の学生達がいつも通りの学園生活に戻れるように、一刻も早く私達がなんとかせねばな」

メティス「はい」

鳴上(……あ、そうだ。折角だから、朝のメティスとの話も桐条さんに聞いて貰おう)

鳴上「桐条さん。その話とは別に少し相談したい事が……」

美鶴「?」

鳴上「実は、俺とメティスでアルバイトを探してまして……」

美鶴「アルバイト? 君はともかく……メティスもか?」

鳴上「はい。それで、メティスにも出来そうな求人に心当たりはないかと」

美鶴「ふむ。メティスが、か……」

メティス「……あの、やはりダメでしょうか?」

美鶴「……」

美鶴「……いや、大いに結構だ」

メティス「!」

美鶴「こちらとしても都合がよくなったしな」

鳴上「どういう事ですか?」

美鶴「いや、実はな。以前は異常が見られなかったが、やはり営業時間中の映画館の様子が気になってしまってな……」

美鶴「桐条の人間を何人か潜らせようかと考えていたんだが、アルバイトを探しているというのなら君達がそこで働いてみるというのはどうだろう」

メティス「それはつまり、働きながら映画館内部を監視する任務につくという事ですか?」

美鶴「そういう事だ。もちろんきちんとアルバイト代も出る」

鳴上「俺はそれでいいです。メティスは?」

メティス「私も構わないです」

美鶴「決まりだな」

美鶴「実はその件でここまで来ていたんだ。さっそく話をつけにいこう」


>美鶴につれられて映画館まで足を運んだ。

>……

>映画館への責任者へと美鶴が話を通し、軽い面接をしてメティスと共に映画館でアルバイトをする事が決まった。

>時間もあるのでそのまま研修を受ける事になった。

>……





>初日のアルバイトを終え、手取りで4500円を貰った。

>……


鳴上「……どうだ? 働いてみた感想は」

メティス「はい。簡単に見えて、私にはまだまだ難しい事ばかりのように感じましたが……」

メティス「でも、頑張ってやっていこうと思います」

メティス「鳴上さんもいてくれますから」

鳴上「そうか。よかった」

メティス「……私達が就業中の間は、映画館で特に気になるような事は起こらなかったですね、やはり」

鳴上「そうだな。このまま気にし過ぎってだけで終わればいいけど」

メティス「ええ……」

鳴上「……ところで、メティスはどうして働きたいなんて急に思ったんだ?」

メティス「!」

鳴上「欲しいものが出来たとか? それとも貯金?」

メティス「それは……」

メティス「……」


>メティスは、今日受け取ったお金の収まっている封筒を鳴上にすっと差し出した。


鳴上「?」

メティス「……昨日、鳴上さんがあの妖精にお金を支払っているのを見て」

メティス「鳴上さんだけに色々と負担をかけるのもどうかと思ったんです」

鳴上「えっ……」

メティス「だから、すこしでも私の力でその負担を減らして貰いたいって……」

鳴上「……そんな事気にしていたのか」

鳴上「別にいいんだよ。あれは、ほら、リーダーの役目のひとつみたいなものだから」

メティス「でも……」

鳴上「それはメティスが働いて自分で稼いだお金だ。俺が使う権利はないよ」

鳴上「メティスが好きに使えばいい」

メティス「それならなおさらです」

鳴上「その気持ちだけでも十分だ。ありがとう」

メティス「……」

メティス「……それじゃあ。これから私に少し付き合って貰ってもいいですか?」

メティス「実は、ひとつだけ欲しいものがあって。それを買ったら後は何かあった時の為の貯金にまわす事にします」

鳴上「わかった。何処にいくんだ?」

メティス「文房具店です」


>……






学生寮


>メティスとの買い物を終えて、寮まで帰ってきた。


鳴上「意外な買い物だったな」

メティス「……おかしいですか?」

鳴上「いや、そういう意味じゃないけど」

メティス「……」


>メティスは自分のお金で買ったものを大事に抱えている。

>……メティスが文房具店で買ったもの。

>それは折り紙だった。


メティス「……以前、鳴上さんが鶴を折って私にくれたでしょう? あれ、姉さんにも見せたんです」

メティス「そしたら、姉さんが『かわいい鶴ね、私もひとつ欲しいかも』って……」

メティス「でも私、鶴を折る為の折り紙なんて持っていないし、折り方もわからなかったから……」

メティス「だから、鳴上さん。私に鶴の折り方を教えていただけませんか?」

鳴上(なるほどな……)

鳴上「ああ、任せろ。ばっちりマスターするまで教えてやる」

メティス「! はい!」


>時間がくるまで、メティスと折り紙をする事にした。

>……

鳴上「……」

メティス「……」

鳴上「……えっと。ドンマイ」

メティス「……うう」


>メティスは思っていた以上の不器用さを発揮していた……

>買ってきた折り紙を全部使ってみても、それらしい折り鶴は完成出来なかった。


メティス「やはり、兵器である私では無理な事なんでしょうか……」

鳴上「そんな事ないさ。これからもっと練習すればきっと折れるようになる」

鳴上「何ごとも努力だ。メティスが鶴を折れるようになるまで、これからも付き合うよ」

メティス「!」

メティス「は、はい……! よろしくお願いします」


>メティスから感謝されている。

>メティスとの絆が少し深まったようだ……



>『Ⅴ 法王 メティス』のコミュを入手しました

>『Ⅴ 法王 メティス』のランクが1になった



>……

>そろそろ時間のようだ。

>今夜の作戦の準備をしよう……


終わります。

テレッテッテー、また次回

【深夜】


>……

>映画館 スクリーンショット

>日付が変わり時刻は0:15を迎え、予定通りスクリーンの中の世界へやってきた。


天田「あの……美鶴さんからは何も言われなかったんで黙ってましたけど、この世界の月光館学園ってどんな感じになってるんですかね?」


>映画館から出たところで天田が唐突にそう呟いた。


鳴上「いきなりどうしたんだ?」

天田「いえ、ただちょっと気になっちゃって」

天田「僕たち昨夜までは街の方ばかりに気を取られてたじゃないですか」

天田「ここからだと街よりも学校の方が近いのに、そっちは探索しなくていいのかな……って」

天田「……影時間が存在していた頃、その時間に学校が変貌していたのをこの目で見て体験していた身としては、気にならない方がおかしいですよ」

天田「あの時と状況が違っているのはわかってますけど……」

アイギス「そうですね。鳴上さんも言っていた、この世界のこの街で一番変化が起きていそうな場所を私達が連想するとしたら、まず出てくるのは月光館学園のような気がします」

アイギス「でも、美鶴さんが何も言わないと言う事は、学校の方面に異常は感じられないという事なんですよね?」

美鶴「ああ。実はそうなんだ」

美鶴「久慈川にも探って貰ったんだが、月光館学園方面にはまったくといっていいほどシャドウの反応が感じられないんだ」

美鶴「タルタロスを知っている天田達にとっては驚く事かもしれないがな」

天田「そうなんですか……」

アイギス「でもそれが逆に不気味にも感じられますね」

アイギス「何故、学校にはシャドウが現れないのでしょう」

メティス「シャドウが寄りつかない場所ですか……」

鳴上「……」

鳴上「シャドウが『寄りつかない』場所じゃなくて、シャドウが『寄りつく事が出来ない』場所だっていう可能性は?」

美鶴「考えられる理由のひとつとしてはあげられるな」

美鶴「しかし、そんな場所になるような何か特別な力が働いていそうな雰囲気がしている訳でもないんだ」

美鶴「あそこにはただ学校という建物があるだけ……」

鳴上「それなら余計にどうして学校は無事なのか気になりますね」

鳴上「……これも、この世界を解明するヒントのひとつなのか?」

美鶴「……」

美鶴「そうだな。異常がないからこそ何か解る事があるかもしれない」

美鶴「今日はまず、月光館学園の方へ行ってみる事にしようか」


>……


月光館学園前


>目の前には何処か禍々しい月明かりに照らされた校舎が聳え立っている。

>美鶴の言っていた通り、ここにくるまでの道ですらシャドウと遭遇する事は一度もなかった。

>その静けさに、素直に安堵してもいいのかどうかは今はわからなかった……


鳴上「肉眼で確認出来る範囲ではシャドウはいないみたいだな」

美鶴「……学校の中にもやはりシャドウらしき反応は感じない」

天田「見かけも普通の学校のままだし……」

メティス「本当にそうなのかどうか、もう少しこの周辺を調べてみませんか?」

鳴上「そうだな」


>学校の周辺の様子がどうなっているのか詳しく見てみる事にした。

>……

鳴上「結局、異常らしい異常は見当たらない、か」

鳴上「強いて言うなら、異常がない事が異常というか……ここだけは本当に平和そのままだ」

アイギス「……どうしてそうなのかという理由はわかりませんでしたけれどね」

メティス「しかし、この世界で一番安全そうな場所が解ったのはいい事かもしれません」

メティス「私達のいる寮は、この世界ではシャドウの襲撃を既に受けていましたし、今後どうしようもない事態に陥った時は、ここに逃げ込むのも有りではないでしょうか」

天田「……僕は、まだここが本当に安全である保証はないと思いますけど」

美鶴「そうだな。シャドウの巣になっていない場所もあるにはあるのだと記憶しておくくらいがいいのかもしれない」

美鶴「余裕が出来れば、シャドウがいる場所といない場所の差はどういった点にあるのかというのも調べてみようじゃないか」

美鶴「……、っ!」

美鶴「ここが静かすぎる分、騒がしくなっている場所の察知がすぐに出来て助かるな……!」

鳴上「シャドウですか!?」

美鶴「ああ。しかもこの反応は本丸のようだ!」

美鶴「ポートアイランド駅の方まで急いで戻るぞ!」

鳴上(ついに姿を現したか…!)

>……


美鶴「大型シャドウ以外にも複数のシャドウの反応を感じる」

美鶴「広場の外れの方だ……!」


駅前広場はずれ


鳴上「なっ……」

鳴上「どういう事だっ……!?」


>さっきと同じように、美鶴の言っている事は正しかった。

>たどり着いたその場所には、大型シャドウが一体と小さなものではあるが十体近くのシャドウの姿があった……

>鳴上達はその光景に驚きを隠せなかった。

>だがそれは、多くのシャドウが固まって存在しているからという理由だけではなかった。



>大型のシャドウが、周りのシャドウを襲っていたのだ……!


メティス「これは一体……」

天田「シャドウが仲間割れなんて、そんなの今まで見た事ないですよ!?」

美鶴「……あの大型シャドウは状態異常になっているという訳でもなさそうだな」

アイギス「つまり、あの大型シャドウは自らの意思でああしていると……?」

鳴上「何が起こっているんだ……」


>襲われている小さなシャドウ達は動揺しているのか大型シャドウから逃げようとしているものが多数だった。

>しかしそれでも中には大型シャドウと対峙しようとするものも何体かいたのだが……

>それらは全て、大型シャドウによってあっという間に消滅させられていたのだ。


鳴上(あのシャドウはどうしてあんな事を……)

メティス「鳴上さん」

鳴上「!」

メティス「こちらも奇襲をしかけるなら今がチャンスだと思います」

メティス「あの大型シャドウが周りのシャドウに気を取られている内に決めてしまいましょう」

鳴上「……」

鳴上(なんでだ)

鳴上(なんでここにきて俺は迷っているんだ?)

メティス「鳴上さん?」

鳴上「いや、なんでもない」

アイギス「……」

鳴上「メティスの言う通りだな。みんな、行くぞ!」

美鶴「こちらもアナライズが完了した」

美鶴「あの大型もここら一帯に出ていたシャドウと同じく氷結系の技には耐性をもっているようだな。私のペルソナとは相性の悪い敵だ」

美鶴「だが火炎の技には弱いようだ。弱点をついて一気に終わらせてしまおう」

鳴上「それなら……コロマル!」

コロマル「ワンッ!」


>コロマルのペルソナ、ケルベロスがシャドウに向かってアギラオを放つ――!


鳴上「こっちも行くぞ! チェンジ!」


>鳴上のワイルドの力でペルソナがイザナギから別のものへと変わる。


鳴上「来い! ――ベリス!」


>続いてベリスのマハラギがシャドウを包み込んだ。

>――と思ったのも束の間、周りのシャドウは一掃出来たものの、大型のシャドウは鳴上達の攻撃に気付いていたのか、上手い具合にかわされてしまう。


鳴上「くそっ、やはり一筋縄じゃいかないか……!」

鳴上「あっ…!?」


>大型シャドウは攻撃を回避出来たのをいい事に逃走しようとしている。


天田「またこのパターンか。ならば……!」

アイギス「逃がしません!」

メティス「このっ……!」


>天田は即死系の魔法を試みたようだったが、効果は得られていないようだった。

>だが、間髪入れずに、アイギスとメティスのペルソナが敵へと突進していく。

>大型シャドウとの間を詰める――!

>……しかし、そこまできて、シャドウの姿は冷気だけを残して霞むように消えてしまった。


アイギス「っ……。目標、見失いました」

天田「美鶴さん、敵の反応は追えないんですか?」

美鶴「駄目だ……倒したという訳でもないのに、完全に敵の気配は消失してしまっている」

鳴上「……」

メティス「そろそろ、ここに来てから113分が経ちます」

メティス「せっかく追いつめたと思ったのに……」

鳴上(っ……何をやっているんだ、俺は)

鳴上(チャンスを無駄にしてしまった……)

鳴上「すまない。あんな時に躊躇わず、もう少し早く指示を出せば良かった」

美鶴「君のせいじゃない。あのシャドウの行動パターンが読み切れなかった私のミスだ」

美鶴「あれはなんなんだ……。あまりにも不可解な行動が多すぎる」

鳴上(不可解な行動……そうなんだよ)

鳴上「あのシャドウの目的がまったく掴めない」

鳴上「人を取り込んで、他のシャドウに攻撃をしかける。それなのに、俺達と戦おうとする素振りは見せないんだ」

鳴上「あいつは何がしたいんだ……?」


>あのシャドウの行動に、そもそも意味はあるのだろうか……?

>……

>……敵を逃したまま、今夜のタイムリミットを迎えた。

>……





04/18(水) 曇り 自室


【朝】


>朝から空は厚い雲に覆われ、どんよりとしている。

>まるで、今の自分の心の内がそのまま天気に現れているようだ……


鳴上「……雨、降らないといいな」

鳴上「……」

鳴上(解らない事は増えていく一方だ……でも)

鳴上「俺がこんなんじゃ駄目だよな」

鳴上「今日も一日がんばろう」


>自分に言い聞かせるようにそう声に出してから学校に行く事にした。

>……

通学路


>通学する生徒達の話し声が聞こえてくる。


生徒A「また駅前広場のはずれのところでなんかあったらしいな」

生徒B「あそこの不良達もあきねぇなー」

生徒A「救急車の通る音聞こえたし、多分怪我人でてんな」

生徒B「うわっまじかよ」

生徒B「失踪事件やら暴力沙汰やら……しばらくの間はマジで夜中出歩くのやめといた方がいいかもな」

生徒A「お前ビビりすぎじゃね? だっせー」

生徒B「なんだよ、自分には関係ないとか思ってるとそのうち痛い目みんぞ?」

生徒B「誰が次の犠牲者になるか……」

生徒A「次の犠牲者って……まだこれからも事件が続くみたいな言い方すんなよ。変なテレビの見すぎじゃね?」

生徒B「だってよー」

鳴上「……」


>……


月光館学園 3-A 教室


>教室の中は騒然としている。

>漏れ聞こえてくる会話の内容は、どれも行方不明の生徒の事件についてのようだ……


メティス「不安半分、面白半分って感じですね」


>先に教室に来ていたメティスがその様子を見て呟いていた。


鳴上「人間は自分に関係ない非現実的な事で勝手に盛り上がるのが好きだからな」

メティス「……」

メティス「私にはそういうのはよくわかりませんが……」

メティス「なんなんでしょう、この気持ちは」


>メティスは若干顔をしかめているように見えた。

>好き勝手に色々と話が飛び交っているのをよく思っていないのだろうか……



>そんな中、教室の窓際の方で大きな声が上がった。


生徒A「おい、校門のとこでケンカしてるやつらがいんぞ!」


>その言葉で窓の付近に野次馬と化した教室の人間が集まるのにそう時間はかからなかった。


メティス「本当に何が楽しいのでしょうか」

メティス「理解に苦しみます」


>その後、予鈴が鳴り担任が来るまでの間教室では騒然としたままの状態が続いていた……

>……


【放課後】


>昨日に続き、午前で一日の授業が終わってしまった。


メティス「鳴上さん、帰りましょう」

鳴上「ああ。……」

鳴上「いや、ちょっと教室で待っててくれ」

メティス「え? どこに行かれるんですか?」

鳴上「先生のとこ」


>メティスの返事も待たずに彼女を残して一人教室を出た。

>……





渡り廊下


鳴上(職員室にはいないって事は……)

鳴上(またこの辺にいたりしないかな)

鳴上「!」

鳴上「橿原先生!」

淳「! 鳴上くん……」


>鳴上が探していた教師……橿原は花壇の傍にいた。

>花を眺めていたというよりは、声をかけられるまでぼーっとしていたという感じに思えた。


淳「……どうしたの? 早く帰らないと駄目だよ?」


>橿原の表情は疲れているように見える。

>声にも覇気がなかった。


鳴上「あの、先生に聞きたい事があって」

鳴上「それが済んだらすぐに帰りますから」

淳「……。何かな?」

鳴上「昨日、三年生でも行方不明者が出たらしいっていう話を耳にしたんですけど、それってただの噂にすぎないんですか?」

淳「……」

鳴上「うちのクラスに数日休んでいる欠席者が何人かいるから、もしかしてその中に風邪なんかとは違った意味で学校にこれない理由がある人がいるんじゃないかと思って」

淳「……」

鳴上「先生」

淳「……鳴上くんはなかなか鋭いね」

淳「でもちょっとだけ的がはずれてる」

淳「A組には行方不明になんてなっている人はいないよ。A組には、ね」

鳴上「じゃあ、三年の他のクラスに?」


>橿原は一瞬黙った後、首を小さく縦に動かした。


淳「もうこれ以上の事は言えない。ごめんね」

鳴上「どうしてですか?」

淳「生徒をあまり刺激したくないからっていう学校側の意向でね……うるさく注意は促しても、事件の詳しい事は話すなって」

淳「僕たち教師にも詳しい事なんてそんなにわからないのにね……」


>橿原の表情がどんどん暗くなっていく。


鳴上「先生……?」

淳「……ああ、ごめんね。当り前だけど、このところ職員室でもこの話題ばかりだからね。それなのに、僕達に出来る事ってそう多くないからさ」

淳「君も転入早々身近に変な事件が起こって不安になって当然だよね」

鳴上「……」

淳「みんな無事に帰ってきて、早く事が終わればいいのにね」

淳「生徒達が危険な事に巻き込まれる可能性がまだあるかもなんて、これ以上想像したくもないよ」

淳「僕は僕の出来る事で生徒のみんなを守らないといけないね……」


>橿原は今の状況を憂いているようだ。

>生徒達の安全を守りたいという気持ちが伝わってくる。

>橿原という教師の事を少し理解したような気がした。



>『Ⅹ 運命 橿原淳』のランクが2になった



淳「さ、もう時間だよ。くれぐれも気を付けて帰るんだよ」

淳「そういえば、君とメティスさんは同じ寮にいるんだったよね? 出来る事なら、しばらくの間は彼女と一緒に登下校してあげて欲しいな」

鳴上「はい、わかりました。失礼します」


>橿原と別れてメティスを迎えに教室に向かった。

>……

辰巳ポートアイランド駅


「あ、オイ! そこの!」


>メティスと下校途中、不意に前方から声をかけられた。


メティス「あの方、昨日美鶴さんと一緒にいた……」

順平「やっぱそうだ。鳴上と妹ちゃんだ」

メティス「妹ちゃん?」

順平「アイちゃんの妹ちゃんだろ……って、そっか、この妹ちゃんは俺の事よく知らないのか」

鳴上「こんにちは」

順平「ちーっす。いやー、帰る前にまたお前に会えて良かった」

順平「昨日はホントにどうもな。おかげでチドリに会えたぜ」

鳴上「! そうですか。良かった」

順平「それはいいんだけど、さ……」

順平「鳴上とチドリってどういう知り合いなワケ?」

順平「これ聞いとかねーと、モヤモヤしたまんまで帰るに帰れねぇっつの!」


>順平は今にも食いかかってきそうなくらいの勢いで聞いてくる。


鳴上「えっ、どういうって」

鳴上「駅の周辺でたまに偶然会うくらいで……時々絵を見せて貰ったりしてますけど」

順平「ホントにそれだけか?」

鳴上「はい」

順平「ふーん……」

順平「ま、そういう事にしとくか」


>そう言いつつ、順平は鳴上のその答えにどこか安心したようにほっと息を吐いていた。


鳴上「順平さんはチドリとはどういったご関係で?」

鳴上(チドリのあの時の様子からすると、恋人って訳ではなさそうだけど。いやでも……)

順平「え? 俺とチドリの関係?」

順平「それを俺に言わせちゃう? いやほら、アレだよアレ。なんつーか、アレ的なソレだよ!」


>順平は妙にデレデレとしている……


メティス「チドリさんに、順平さんはカレシなのか? と尋ねてみたら無言で怒っていたように見えましたから、それ以外ですね」

順平「えっ」

順平「……」

順平「……えー」

鳴上(メティスが代わりに地雷を踏んでくれたようだ)

順平「……まあ、確かにそうなんだけどさ。怒ってたって……俺と会った時にはそんな風には見えなかったのにな」

順平「それも仕方ない、か……」


>二人の間には何か複雑な事情があるのだろうか

>いまさらだが、そう簡単に聞いてはいけない事のような気がする……


順平「っと、ワリィ。もう行かないとマズイわ」

順平「今後もチドリと会うような事があったら話し相手になってやってくれよ。アイツ、気が許せる人間ってそういないみたいだし」

順平「あっ! あくまで話し相手だかんな! それ以上はお父さんが許しません!」

メティス「順平さんはチドリさんの父親だったのですか」

順平「いや、そこは突っ込むとこだから……」

順平「とにかく頼んだからな! 俺もまた来るし! お前ともまた会えたらいいな」

鳴上「はい」

順平「じゃあな!」


>順平は手を振って駅の方へと行ってしまった。

>伊織順平と知り合いになった。


>『Ⅰ 魔術師 伊織順平』のコミュを入手しました

>『Ⅰ 魔術師 伊織順平』のランクが1になった


>順平を見送ってから寮に戻る事にした。

>……


【夜】


学生寮 ラウンジ


アイギス「二人ともお帰りなさい」

鳴上「ただいまです」

メティス「戻りました……、?」

メティス「!」

メティス「えっと、深夜になるまで自室で待機していますね!」


>メティスは急に慌てたようにして階段を上っていってしまった。


鳴上「? メティスのやつ、どうしたんだ?」

アイギス「ふふっ……」


>アイギスはおかしそうに笑っている。


アイギス「多分、これのせいじゃないでしょうか」

鳴上「あ」


>アイギスの手には、不格好な紙で出来た何かがある。

>昨日、メティス作った折り鶴の出来そこないだ。


アイギス「朝、あの子がこれを捨てようとしているところを偶然見つけたんです」

アイギス「何かと聞いてみたら、言いにくそうにしてましたけど鳴上さんに折り紙を教わったって答えてくれました」

アイギス「あの子がこんな事をするなんてね」


>アイギスは嬉しそうに笑みを浮かべている。


アイギス「美鶴さんに聞きましたが、一緒にアルバイトも始めたらしいですね?」

鳴上「あ、はい」

鳴上「なんか、俺の金銭的な面に気を使ってくれたみたいで」

鳴上「でも、メティスが稼いだお金はメティスのものだから、自分の好きに使ってくれって言いました」

アイギス「そうですか……」

アイギス「あの子も色々な事に興味を持ったり、考えてくれるようになったんですね」

アイギス「きっと鳴上さんのおかげです」

鳴上「そんな事はないですよ」

鳴上「折り紙をし始めたのだって、アイギスさんの言葉がきっかけだったみたいだし」

アイギス「……ああ、そう言えばそんな事も言いましたね」

アイギス「そうだとしても、やはり嬉しいです」

アイギス「あの子にこれからもっと、こういう機会が増えていってくれたら……」

アイギス「生きる事を楽しんでくれたらいいと、そう思います」

アイギス「こういうのって人間にとっては当たり前の事でも、私達は機械ですから見たり聞いたり触れたりしないと解らないんです」

アイギス「そうだとしても……私も、メティスや皆さんと生きる事を楽しみたいです」

アイギス「大変な事かもしれませんが、どうかあの子の面倒を見てやって下さい」

アイギス「私もあの子の姉として尽くします。あの子の姉として生きてみます」

アイギス「その為には、鳴上さんの力を借りる事も多く出てくるかもしれませんが……」

アイギス「どうかよろしくお願いします」

鳴上「はい。喜んで」


>アイギスからとても信頼されているようだ。

>アイギスとの絆が深まったような気がする……



>『Ⅶ 戦車 アイギス』のコミュを入手しました

>『Ⅶ 戦車 アイギス』のランクが1になった




鳴上「その折り紙はどうするんですか?」

アイギス「あの子が初めて自分の手で作ったものですからね。大事にとっておこうかと思います」


>アイギスは笑顔を浮かべ、メティスが作ったそれを大事に持って部屋へと戻っていった。

>……


終わります。

アイギスのコミュは訳あって戦車になってしまいました。
永劫じゃねーのかよって思う人がいたらごめんなさい。

ではまた次回

【深夜】


スクリーンの中の世界
映画館 スクリーンショット内





アイギス「相次ぐ行方不明事件……どんどん事態が深刻になっていきますね」

アイギス「その三年の生徒の方も、この世界に迷い込んでしまったという確証はまだありませんけれど……」

アイギス「でも、今までの事を考えると、そうとしか考えられませんね」

天田「中等科ではそういった被害は今のところ出ていないみたいですが、やっぱりその話でもちきりですよ」

天田「都会でも神隠しは起こるんだー、なんて人事みたいに騒いでるのも多いですけどね」

メティス「こうなってくると、この世界に知らずに入ってしまい出られなくなった人間が、私達が知らないだけで他にもいるんじゃないかという不安が高まりますね」

鳴上「……むしろその可能性が少ない方がおかしいかもな」

鳴上「いくら深夜だとはいえ、この世界への入り口になっているのは駅前の映画館なんだ」

鳴上「つまり、誰でも行けるような場所にある訳で……」

鳴上「ここに入れる人間にも条件があるという話でない限り、あくまで憶測だけれどもうっかりこの世界に来てしまった人も割といるんじゃないだろうか」

鳴上「ネットでも、そんな体験をしたっていう書き込みがあったのを見かけた訳だしな」

鳴上「でも逆に考えると、この世界に入れる人間にも条件があるかもしれないからこそ、今のところ集団失踪事件なんて大きな話があがってないって事だとも思う」

メティス「この世界に入れる人間の条件、ですか」

アイギス「私達はこうして全員入れている訳ですが……」

天田「じゃあ、僕達に共通している事がその条件かもしれないと?」

鳴上「そういう事になるよな」

鳴上「という事は――」



美鶴「!? ――みんなっ、止まれ!」

鳴上「!」


>映画館の中から外に出ようとしたその間際、急に美鶴が声を上げた――


美鶴「今日はやけに外が騒がしい……」

美鶴「シャドウの数が多いというだけじゃない」

美鶴「どいつも殺気立っているように感じるな」

鳴上(どういう事だ?)

鳴上「昨日までの事を考えると、なんだか嫌な予感がするな……」

鳴上「みんな、慎重にいこう」


>……


ポートアイランド駅前広場


>外はほんの少しではあるが、雨が降っていた……

>そして、一帯には無数のシャドウの姿が窺える。

>一同は様子を見計らってから、その群の中へと飛び込んだ――

>一歩遅れて、シャドウも鳴上達の存在に気付いたようだが……

>今まで見てきていた様子とは違い、逃げる事もなく鳴上達を襲ってきたのだった。

>……

>数分後。

>駅前広場にいたシャドウの群はその数を残すところあと一体にまでなっていた。


鳴上「――ジャックランタン!」


>その一撃で決着はついた……






天田「急に何事かと思いましたけど、そんなに強い敵って訳ではなかったですね」

アイギス「そうですね。でも、一体突然どうしたのでしょうか……」

美鶴「この世界のシャドウの特性は本当に謎だらけだな」

コロマル「ウゥ……ワンッ!」

メティス「? コロマルさん、どうかしましたか?」


>コロマルはしきりにアスファルトの匂いを嗅いでいるように見えた。


鳴上「ん? なんだこれ……」


>コロマルの鼻先とアスファルトの間に何か光る物がある。


鳴上「ガラス……?」

鳴上「! これはっ……!?」


>この辺り一帯をよく見渡してみると、そこら中にそのガラスの破片らしきものが散らばっていた。


天田「ここを出た時、こんなもの落ちてましたっけ……?」

メティス「いいえ。確認していません」


>試しにひとつ拾い上げてみた。

>しかし……


鳴上「あっ……」


>手にしたそれはすぐに消えてしまった――

>同様に、地面にあったそれらも最初からそんな物など存在していなかったかのように、なくなってしまったのだった。


美鶴「多勢のシャドウにいつの間にか散らばっていたガラスの破片、か」

アイギス「この現象、どうとればいいんでしょうね?」

鳴上「ガラス……」

鳴上「……」

美鶴「っ……! あまりこの場で悠長に考えている暇はなさそうだ」

美鶴「別の方角からもシャドウの反応がする」

美鶴「……いや、待て。何だこの感じは」

鳴上「どうしたんですか?」

美鶴「シャドウとは違う反応がそこに混じっている……」

鳴上(! まさか……)

鳴上「急いで行こう!」







>美鶴の案内でメンバーはシャドウの出現している場所までやってきた。

>そこには駅前広場と同じように無数のシャドウの存在があった。

>だが、その中央にはシャドウに囲まれている人の姿があった――!


メティス「!?」

メティス「鳴上さん、あれって」

メティス「星さんじゃありませんかっ……!?」

鳴上「何だってっ!?」



あかり「ちょっとやだっ……どいてったらっ!」


>そこにいたのはメティスの言う通り、星あかりの姿だった。

>あかりは、自身を囲んでくるシャドウをしきりに振り払おうとしている。


鳴上「くそっ……ジャックランタン!」


>ジャックランタンの炎が、周りのシャドウを焼き尽くしていく。

>あかりはようやくシャドウから解放された。

>だがその隙に、あかりはその場から走り出して行ってしまった。


鳴上「!? ちょっ……おい!」

メティス「鳴上さん! あれ……!」


>メティスが指差したあかりの背中に、シャドウが張り付いているのが見える……!


鳴上「星!」

あかり「……」


>あかりは何かをぶつぶつと呟きながら、鳴上の声を気にとめる事もなくこの場から遠ざかっていく……


鳴上「みんな、追うぞ!」







美鶴「まさか、鳴上達の知り合いまでこんな場所に迷い込んでいたとはな……」

メティス「……昨日、彼女が欠席していると聞いた時、実は嫌な予感がしていたんです。でも、確証もないし、口に出せなかった」

メティス「まさか、それが本当に当たっていたなんて、思いもしなかった……」

アイギス「あの大型シャドウに取り込まれていると予測される人物と知り合い……という話でしたね」

アイギス「きっと、彼女もまた彼の事を探している時に偶然ここに来てしまったのでしょうね……」

メティス「星さんの保護を急ぎましょう」

メティス「……鳴上さん。星さんの背中に張り付いていたシャドウ、よく見えましたか?」

メティス「あのシャドウ、体に何かついていた……いえ、刺さっていたんです」

鳴上「何かが刺さっていた?」

メティス「はい。おそらく……」

メティス「先程、駅前広場に無数に散らばっていたガラスの破片と同じものかと」

鳴上「!」

鳴上「刺さったガラスの破片……急に狂暴化したシャドウ……」

鳴上「……雪の女王」

鳴上「まさか、あのガラスの破片は……」

メティス「多分、そうなんだと思います」

メティス「雪の女王というタイトルになぞるように、あのガラスの破片は割れた悪魔の鏡の欠片と同等のもので……」

鳴上「それが刺さったせいでシャドウが豹変した」

鳴上「っ……まずい。そんなシャドウが近くにいたら、あいつまで……!」

鳴上(くそっ……無事でいてくれ!)

コロマル「ワンッ!ワンッ!」

天田「いました! あそこです!」


>駆けつけたその先では、あかりがまたシャドウに囲まれているのが見えた。

>今にもあかりを飲み込んでしまいそうなくらい彼女に群がっている。


鳴上「ジャックランタン!」


>鳴上のペルソナがシャドウを一掃していく……

>その火力で、あかりの背にくっついているシャドウも一緒に焼き払おうとしたのだ。

>しかし、あかりの背中にいるシャドウだけは何事もなかったかのように、まだ彼女に絡み付いていた……!


鳴上「星!」

あかり「っ……こっち来ないで! 邪魔しないでよ!」

メティス「星さん……!?」


>あかりに近付こうとするが、何故か彼女は拒否している……

>物凄い剣幕で、鳴上達を睨んでいた。


美鶴「彼女様子が変じゃないか……?」

鳴上(これも、あの張り付いているシャドウのせいなのか?)

あかり「行かなきゃ……」

鳴上「待て! そっちは危険だ!」

あかり「危険がなんだっていうの!?」

あかり「あかりは光の戦士なんだから、悪い奴らなんかやっつけてやるんだから!」

鳴上(何を言ってるんだ……?)

あかり「だから、行かなきゃ……」

あかり「助けに行かなきゃ!」

鳴上「!」

あかり「あの子がこの先にいるの! 行かなきゃ!」

鳴上「この先に……!?」

美鶴「っ! ああ! 確かにこの気配はそうだ!」

美鶴「すぐ近くに、あの大型シャドウがいる!」

あかり「あかりが助けに行かなきゃ……!」

メティス「あっ!?」

鳴上「くっ……待てって言ってるだろ!」


>……


>あかりを追い掛けて、間もないうちに目標の姿は視認する事ができた……

>大型シャドウは、周りに複数の小さなシャドウを従えてそこに存在していた。

>そのどれもに、あの破片が突き刺さっている。

>そして、そのすぐ目の前には、シャドウが張り付いたままのあかりがいた――


鳴上「星!」

メティス「星さん危険です! 下がってください!」

あかり「っ……」


>……メティスの声は虚しく、大型シャドウの咆哮によってかき消された。

>大型シャドウの影が、ゆらりと動いた。


あかり「っ、やめてええええええ!!!!!!」








美鶴「なっ……」

天田「どうなっているんですか、これ……」

アイギス「前の時と、一緒……?」


>鳴上達は、シャドウの鳴き叫ぶ声を聞き、あかりが泣き叫ぶ声を呆然と聞きながら、その光景を眺めていた……



>大型シャドウは、あかりに危害を加える事も鳴上達に攻撃をしかけてくる事も無かった。

>その代わり、周りに従えていると思っていた小型のシャドウを次々と容赦なく狩っていたのだ。

>力あるものの一方的な殺戮だった……

>そしてそれは、以前も見た覚えのある事でもあった。


メティス「……」

メティス「あのシャドウ、ないている」

メティス「泣いて、いる……?」

あかり「……もう、いいよ」

あかり「もう、そんな事しなくてもいいんだよ……!」

>あかりはその場にうずくまって涙を流している……

>そしてその隙が、一匹の小型シャドウの攻撃を許してしまう事になった。

>小型シャドウが、あかり目がけて突進する――!


あかり「っ!?」

あかり「キャアァァァァァ!!」

メティス「星さんっ!」

鳴上「くそっ、間に合わなっ……」


グオアァアアアアァァアァアアアアアァ!!






あかり「あ……」

鳴上「……」

鳴上「え……?」


>あかりに襲いかかってきた小型シャドウは、気付いた時には跡形もなくなっていた。

>あの大型シャドウによって、倒されていたのだ……


美鶴「どういう事だ。これじゃあ、まるで……」

アイギス「守ったとでもいうの?」

アイギス「シャドウが彼女を……」

鳴上「……いいや、違う」

鳴上「シャドウが、じゃない」

鳴上「これは、きっと」


あかり「……」

あかり「もう、いいんだよ」

あかり「一人でこんな場所で苦しまなくても」

あかり「あかり知ってるもん、君が本当は良い子なんだって事」

あかり「だからこそ、悔しかったんだよね? 悲しかったんだよね?」

あかり「友達を助けられなかった事。誰も力になってくれなかった事……」

あかり「その気持ち、あかりにも解るよ」

あかり「君がいなくなったって聞いた時は本当に驚いて」

あかり「でも、あかりだけじゃどうにも出来なくて、悔しくて悲しかった」

あかり「……でも、迎えに来たよ。もう帰ろう?」

あかり「君がするべき事は、こんなところで暴れる事じゃなくて」

あかり「友達の傍にいてあげる事でしょ?」

あかり「君が信じていれば、きっと友達も元気になるよ」

あかり「大丈夫、あかりも一緒に祈るから」

あかり「だから、ね? 一緒に帰ろう」


>あかりは大型シャドウを抱き締め――

>あかりの涙が、シャドウに零れ落ちた。

>すると、たちまち大型シャドウの溶け始めていった。

>それだけでなく、まだ残っていた小型のシャドウも、あかりに憑いていたシャドウも消えていき――

>刺さっていたガラスは、粉々に砕け散った。

>そしてそこにはただ、少年と少女の姿があるだけとなった。


鳴上「っ……!」


>次の瞬間、鳴上達は大きな光に包まれた……

>……


鳴上「……ん」

鳴上「ここは……」


>鳴上達は、気付くと劇場の座席に背を預けていた。

>目の前のスクリーンには『END』の文字が表示されており、幕がゆっくりと閉じていくのが見える。


メティス「おかしいですね」

メティス「まだ、あの世界で動ける時間はある筈なんですが」

鳴上「でも、ENDって出ていたという事は……」

鳴上「これで終わり……問題も解決したって事なのか?」

鳴上「そうだ! あの二人は!?」

美鶴「大丈夫だ。一緒に帰ってきている。意識は失っているみたいだがな」


>美鶴の言う通り、あかり達も座席に身を埋めているのが確認出来た。

>そして、映画が終わった後のように、暗くなっていた劇場内に明かりがついた。


アイギス「今日は強制的に外に追い出されないようですね。時間にまだ余裕があったうちに帰れたからでしょうか」

天田「でも用がないのなら早いところ出ましょうよ。その二人の事も心配ですし」

美鶴「そうだな。病院の手配やらなんやらは私に任せて、お前達は先に寮に帰っているといい」

美鶴「今後についてはまた明日以降話し合うとしよう」


>……


メティス「とりあえず、二人の救出は無事完了しましたね」

鳴上「ああ。俺達は結局何も出来なかったけどな」

鳴上「星があの少年を救ったんだ」

鳴上「……それでも、解明出来ていない謎はまだ随分と残っている」

鳴上「それが今後の課題のうちのひとつってところだな」

アイギス「そうですね」

天田「ま、今回の事件は無事解決したし、今夜はもうゆっくり休みましょうよ」

鳴上「ああ。みんなお疲れ様」

鳴上「……ん?」


>映画館の中から外へと出たところで、額に冷たいものが当たるのを感じた。


鳴上「雨、か。小降りだけど」

鳴上「ここに来るときは降ってなかったのに」

鳴上(でも、今週は天気が崩れるって予報で言ってたもんな)

鳴上(……)

鳴上(なんか、イマイチすっきりしないな……でも)

鳴上(今日は疲れたな……今はもう、何も考えたくない)


>ひとまず事件に区切りがついた事による安堵と共に、疲労が押し寄せてくるのを感じる……

>みんなと一緒に寮に帰り、今夜はもう休む事にした。



終わりです。

書きためていたデータがごっそり消失したせいで投下までに時間がかかってしまった……申し訳ないです

泣く泣く前に書いたのを思い出しながら書きなおしてる最中なので、以前までの投下スピードに戻るまでまだちょっと時間がかかりそうかも…

とりあえず、劇場版雪の女王編はこれにて終了ということで

ラビリス…出したいけど、まだED見れてないので、どういう設定なのかイマイチ把握出来てないんだよなあ

そんなところで、また次回

?/? ?

???


>……

>耳に雨音が届いている……

>外は晴れていないようだ。

>部屋の中も薄暗い。

>ソファから体を起こし、ふと、頭を上げると目の前には砂嵐の映るテレビがあった。

>だが、その画面は鳴上がそちらを見た時を見計らったかのように、変化を見せた。

>画面にぼんやりと人影が現れる。

>そこには仮面の男が映っていた。


鳴上(こいつは……)

仮面の男「よぉ」

鳴上「……」

仮面の男「ひとまずお勤めご苦労様、ってとこか?」

仮面の男「良かったな。無事に二人とも助ける事が出来て」

仮面の男「俺も嬉しいよ」

仮面の男「お前が活躍出来ているみたいで、さ」

鳴上「……」

仮面の男「……自分は何もしていないって?」

仮面の男「そんな事はないさ。お前があちら側へ行かなければ、あの二人はあのままどうなってたか解らないだろ?」

仮面の男「生きて帰ってくる事はきっと出来なかっただろうな」

仮面の男「お前はよくやってるよ」

仮面の男「……でもな。まだこれは始まりが終わっただけに過ぎない」

仮面の男「すぐにまた、お前は『事件』と直面する事になるだろう」

仮面の男「それにどう立ち向かうのか……俺に見せてくれよ」

仮面の男「おっと。時間だな」

仮面の男「もう朝みたいだ」

仮面の男「……嫌な天気だな」


4/19(木) 雨 自室


【朝】


鳴上「……ん」

鳴上「夢、か?」

鳴上「……」

鳴上「前にもあんな夢を見たような、見ないような……」

鳴上「……いや、そもそもどんな夢だったっけ?」

鳴上「まあ、いいか」


>起き上がってカーテンを開けた。

>外は、昨夜よりも雨が酷くなっている。

>テレビでの今日の予報は、このまま夜まで降り続けるという事らしい。


鳴上「……嫌な天気だな」

鳴上「今夜はテレビをチェックしとかないと……」


>天気のせいで少々気が滅入りながらも、支度をして学校に行く為部屋を出た。


学生寮 二階ロビー


メティス「!」

メティス「鳴上さん、おはようございます」


>ロビーの椅子に、制服姿で鞄を持ったメティスが座っていた。

>どうやら、鳴上が出てくるのを待っていたようだ。


鳴上「おはよう、メティス」

メティス「一緒に登校しても構いませんか?」

鳴上「ああ、もちろん」


>メティスと一緒に寮を出た。

>……

通学路


メティス「今日は雨が酷いですね」

鳴上「夜まで続くって天気予報で言ってた」

メティス「そうですか」

メティス「マヨナカテレビのチェックが必要という訳ですね」

鳴上「そうだ」

鳴上「映画館の事もまだ気になるけど、今夜は行くのをやめておこうと思う」

鳴上「あの世界の入り口が開くとのマヨナカテレビの映る時間は被っているからな」

鳴上「今後も雨の夜は探索はしないで寮で待機っていう方針にしようかと思っている」

メティス「了解しました」

メティス「映画館の事についてですが、今日は寮に帰ったらみんなが揃い次第一階のラウンジに集合して話し合いをしたいと美鶴さんから連絡がありました」

メティス「私は今日映画館のアルバイトがありますが、そんなに遅くならないうちに帰れると思います」

鳴上「ん、わかった」


>……


月光館学園 3-A 教室


HRの時間


>教室に来て早々、担任の橿原から行方不明の生徒が見つかったという話がされた。

>当然ながら、教室は騒然とした状態になった。


淳「……静かに。そういう訳ですが、とりあえず今週中は午前授業のままで、来週から通常授業に戻る事になります」

淳「だからといって今後も夜遅くまで遊び回るなんて事のないように」

淳「……続いて、出席をとります」







淳「……欠席者は三名、か」

淳「……」

淳「それではHRを終わります。一限目の準備をしてください」


>……

【放課後】


>午前で全ての授業が終わった。


メティス「それでは私はアルバイトに行きますので、お先に失礼します」

鳴上「ああ。頑張れよ」

メティス「はい!」


>メティスはいそいそと教室から出ていった。


鳴上(張り切ってるなあ)

鳴上「さて、俺も帰るか」


>……



辰巳ポートアイランド駅前


>駅に向かう途中、見た事のある後ろ姿が目に入った。


鳴上「天田」

天田「えっ?」

天田「ああ、鳴上さんか。びっくりした」

鳴上「今帰りか?」

天田「はい。今週いっぱいは午前授業のままらしいので」

鳴上「中等科もか」

鳴上「……それにしてもお前、学校帰りにしては随分と大荷物だな」

天田「えっと、これは……」


>天田は手に大きなビニール袋をぶら下げている。

>近くのスーパーの名前が印字されていて、中には色々と食材が詰まっているようだ。


天田「今日美鶴さんが学生寮に来るのが夜になりそうって事なんで、それまで時間があるし、その……」


>天田は何故か答えるのに焦っているようだ。


天田「……」

天田「……あの、鳴上さん。今日、時間ありますか?」

鳴上「? ああ、大丈夫だけど」

天田「それじゃあ……」


>……


学生寮


鳴上「何かと思ったらそういう事か」

天田「あはは……あまり大っぴらに言うのも恥ずかしかったんで」

天田「特にここの寮の人たちには」

鳴上「なんでだ? 別に男がやっても恥ずかしい事じゃないだろ」

鳴上「俺だってするし。まあ、この寮に来てからはそんな機会なくなってたけど」

天田「! 本当ですか!?」

天田「じゃあ、評価役として期待が出来ますね」

天田「さ、どうぞ」


>天田は出来立てのオムライスを鳴上の前に出した。

>ライスがくるんである卵はとてもいい色に焼けている。


天田「自分で食べる分には平気な物を作れる事は確かですけど、やっぱり人に出せるものなのかどうか気になってたので……」

天田「でも、こうやって僕の作った料理を出せるような人なんて心当たりがなくて」

天田「だから、こうして鳴上さんが味見してくれて助かります」

鳴上「任せろ。俺は食物とはほど遠いものでも収める事の出来る鍛えられた鋼鉄の胃袋を持っている」

天田「えっ」

鳴上「それじゃあ、いただきます」


>手を合わせてから、天田の作ったオムライスに口をつけた。


鳴上「……」

天田「どうですか?」

鳴上「うっ……」

天田「えっ? えっ……!?」

鳴上「うまい!」


>ふんわりした卵に、チキンライスの味が上手い具合に絡み合って絶妙なハーモニーを醸し出している……!


天田「なんだ、脅かさないでくださいよー……」

鳴上「悪い。でも、本当にうまい!」

鳴上「これは俺も負けてられないな……!」


>鳴上の中に眠っていた何かが再び目覚めた……!


鳴上「……でも、天田が料理できるなんて意外だったな」

鳴上「いや、やれば出来そうだけど、自分からそういう事を進んでやるようなタイプには見えなかったっていうか」

鳴上「……こういうのがギャップ萌えという要素になるのだろうか?」

鳴上「いやしかし、完二のようなインパクトには欠けるか……」

天田「ぎゃっぷもえ? なんの話ですか?」

鳴上「こっちの事だから気にするな」

天田「?」

鳴上「それより、天田も自分の分も作ったなら冷めないうちに食べた方がいいんじゃないか」

天田「あ、そうですね」

天田「いただきます」

天田「……」

天田「……うーん」

鳴上「どうした?」

天田「あ、いえ……」

天田「やっぱり、まだまだかなあって思って」

鳴上「そうなのか? 俺はじゅうぶんな腕前だと思うけど」

鳴上(……それとも、今まで食べ物じゃないものを食べさせられ続けてきて、俺も味覚が麻痺してきているのか?)

天田「ありがとうございます。その言葉は素直に嬉しいです」

天田「でも、なんていうか、自分が納得出来るような味に近付けてないっていうか」

天田「あの人だったらきっともっと上手に作るんだろうなって思うと……」

鳴上「え?」

天田「……あっ! いやっなんでもないです!」

天田「えっと、なんか色々ありがとうございました」

鳴上「いや、こっちも美味しいものにありつけて良かったよ」

鳴上「さっき料理を出せる人に心当たりがないって言ってたけど、せっかくだから桐条さん達にも振る舞ってみればいいんじゃないか?」

鳴上「……ん? アイギスさんやメティスって食事できるのか?」

天田「……」

天田「いえ、やめておきます」

天田「あの人達は舌が肥えてるだろうし……」

天田「いつか食べて貰えたらそりゃ嬉しいですけど」

天田「今はまだその時じゃないです」

鳴上「? そうか」

天田「……」

天田「あの。また時間があったらこうして鳴上さんに味見を頼んでもいいですか?」

鳴上「ああ。天田の料理ならいつでも大歓迎だぞ」

鳴上「今度は俺が作った料理も披露してやろう」

天田「わあ、楽しみです!」

天田「よろしくお願いしますね!」

>天田との間に、ほのかな絆が芽生えた気がする……



>『Ⅷ 正義 天田乾』のコミュを入手しました

>『Ⅷ 正義 天田乾』のランクが1 になった



天田「食器洗っちゃいますね」

鳴上「俺も手伝うよ」

天田「お願いします」

天田「……あっ。この事は、しばらく寮のみんなには内緒にしておいて下さいね」

天田「その……隠れた趣味って事で」

鳴上「わかった」


>寮の人間に気付かれないうちに天田と二人で急いで片付けをした。

>……


【夜】


>一階のラウンジに特別課外活動部のメンバーが全員集合した。


美鶴「みんな揃ったな」

美鶴「……さて、本題に入る前にひとつ話をしておかなければな」

美鶴「救出した二人の事だが、命に別状はないようだ。今は意識も取り戻している」

鳴上「本当ですか!」

美鶴「ああ。ただ、少しの間入院する事になるだろうがな」

鳴上「良かった……あの、お見舞いに行っても平気ですか?」

美鶴「大丈夫だ。近いうちに顔を見に行ってくるといい」

美鶴「ただ、あちら側の世界の事など、自分の身に何があったのかはっきりと覚えていないようでな……。その辺りを注意して話すようにしてくれ」

鳴上「そうなんですか? ……わかりました」

鳴上(明日にでも病院に行ってみよう)

美鶴「……では、議題に入ろうか」

美鶴「事件が解決したところで改めてあの世界の事について振り返ってみたいと思う」

美鶴「まずはそうだな……鳴上」

鳴上「はい」

美鶴「君の知るテレビの世界と、あのスクリーンの中の世界でどういう違いがあったのか、改めて君の口から説明して貰いたいのだが」

鳴上「そう、ですね……」

鳴上「まず、俺が以前体験したテレビの中の世界というのは、テレビに入れられた人間の抑圧された心によって様々な場所が出来たり変化したりしていたみたいなんです」

鳴上「対してあのスクリーンの中の世界は、人間の気配がまったくなくてシャドウが出るという以外は完全にこの港区を再現しているようで……」

鳴上「スクリーンの中の世界と言うよりは鏡に映った虚構の世界。そんな印象を俺は受けました」

鳴上「冷静になってよく考えてみれば、やっぱりこの二つの世界は似ているようでまったくの別物だって事なんだと思います」

鳴上「だから、比べる事にあまり意味はないようにも感じられます」

美鶴「なるほど……説明ありがとう」

鳴上「ここからはまた推測の話になります」

鳴上「少年を救い出した事によってあの世界は終わりを迎えたと思うんです」

メティス「ENDって出ていましたからね」

鳴上「そうだ」

鳴上「でもそれは、あくまで雪の女王というタイトルの世界が終わっただけだったとしたら……」

天田「どういう意味ですか?」

鳴上「みんなも見ただろう。何もなかった上映プログラムの表示が、突然雪の女王になった所を」

鳴上「映画ってひとつのタイトルを何時までもずっと上映している訳じゃないだろ?」

鳴上「もしかしたら、一日の制限時間の他に、一つの世界に入れる期間というのもあるのかもしれない」

鳴上「その期間が終わると別の映画のタイトルに変わって、別の世界に変わってしまう……とか」

鳴上「テレビの中の世界でも、入れられた人を救出するのに期日があった」

鳴上「あの時は、現実世界の天気次第っていうランダムな要素が肝だったけれど……」

鳴上「何時までもあの世界を探索しようとうだうだやっていたら、もしかしたらまずかったのかも……と、今となっては感じるんだ」

鳴上「あくまで俺の考えのひとつってだけだけど」

アイギス「ENDを迎えたあの世界が、今後どうなるのか……もう少し様子を見たいところですね」

鳴上「でも、今夜のところはあの世界に探索に出かけるのはやめておきたいんだ」

鳴上「マヨナカテレビが雨の夜の0時に映る可能性がまだ捨てきれない以上、今後も雨の夜は探索に出ず寮に待機という形をとりたい」

美鶴「ふむ。リーダーがそう言うのならばそれに従うまでだな」

美鶴「では、以降の活動はその日の天気を見てから決定するという事で」

鳴上「はい」

鳴上「みんな、大変だと思うけど、今後もよろしく」


>メンバーの一同が、力強く頷いて返事をしてくれたのが見えた。

>仲間達との結束が強まった気がした……



>『0 愚者 特別課外活動部』のランクが4になった



美鶴「では、今夜は自室にテレビのあるものは自室で、そうでないものは私と一緒にここにあるテレビでマヨナカテレビが映るかどうか確認する事にしよう」


>……


【深夜】


自室


>0時を迎えるまで、PCをつけて辰巳ちゃんねるに書かれている情報を眺める事にした。





スレッド一覧
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鳴上「うーん……」

鳴上「今となっては書かれているどの情報も気になってくるな」

鳴上「だからといってここの掲示板全部に目を通す時間がある訳でもないし」

鳴上「近いうちにまたパオフゥと連絡をとってみようか」

鳴上「……っと、そろそろ時間か」


>カーテンの向こう側は未だに強い雨が降っている……

>もうすぐ時刻は0時になろうとしている。

>テレビに注目した。

>……

23:59→0:00

>…
>……
>………

>……しばらくの間、画面を見つめてみたが特にこれといった変化は見られなかった。


鳴上「今夜のところは異常なし、か」

鳴上「……」

鳴上「……とりあえず、今日はこれで休もう」

鳴上「やっぱり、長時間のネットは目が疲れるな……」


>部屋の電気を消して、今日はもう寝る事にした……


終わりです。

みんなあたたかい言葉をありがとう。挫けずやっていきたいと思います。

ではまた次回。

04/20(金) 雨 自室


【朝】


>しとしとと降る雨音で目を覚ました。

>……

>起き上がり着替えてからすぐにニュースのチャンネルに合わせた。

>どうやら、今日のところは今降っている雨も昼頃にはやんでしまうようだ。

鳴上(今日はまた探索出来そうかな)


『引き続きニュースです。30代の男性が、老人の孤独死のような状態で発見されたという……』


コンコン


鳴上「? はい」

アイギス「おはようございます、鳴上さん。少し、よろしいですか?」

鳴上「今開けます」

ガチャッ


鳴上「おはようございます。どうかしましたか?」

アイギス「美鶴さんからメモを預かっています」

鳴上「俺にですか?」


>美鶴のメモを貰った。

>病院の名前とそこまでの行き方が簡単に記されていて、一番下には201号室とある。


鳴上(病院……)

鳴上(そういえば、星が入院している場所を具体的に聞いていなかったっけ)

鳴上「ありがとうございます」

アイギス「いいえ」

アイギス「……ところで、昨夜の事ですが、鳴上さんの部屋のテレビには、マヨナカテレビは映りましたか?」

鳴上「いや。それらしきものはまったく」

アイギス「私は美鶴さんとラウンジにあるテレビで様子をうかがっていたのですが、やはりこちらでも確認は出来ませんでしたね」

アイギス「天田さんやメティスも同じようです」

鳴上「そうですか……。わかりました」

鳴上「今夜は雨がやむようなんで、また映画館の探索に行こうかと思っています」

アイギス「了解しました。美鶴さんに報告しておきますね」

鳴上「よろしくお願いします」

アイギス「それでは失礼します。学校までお気をつけて」


>準備をして、学校に行く事にした。

>……


月光館学園 3-A 教室


>教室には既にメティスの姿があった。

>自分の席で何かしきりに作業をしているようだ。


メティス「……」


>近くまで寄ってみたが夢中なようでこちらにはまったく気付いていない。

>そっとメティスの手元を覗き込んでみると、どうやらまた折り紙で鶴を折る練習をしているようだった。

>一生懸命な様子がなんだか微笑ましい。


鳴上(おお。やってるやってる)

鳴上(でも出来の方はやっぱり……)

鳴上「おはよう、メティス」

メティス「!?」

メティス「おっ、おはようございます!」

>メティスは折っていたそれを急いで隠そうとするが、床に散らばってしまったようだった。

メティス「あっ……!」


>落ちたそれを拾ってあげた。


鳴上「まだまだ、って感じだな」

メティス「……」

メティス「はい……」

鳴上「そうしょげるなって。HRまでまだ時間があるし、それまで一緒に折る練習しよう」

メティス「はっ、はい! 是非、ご教授お願いします!」


>チャイムが鳴るまで折り紙の練習に付き合った。

>……



【放課後】


>午前で授業が終わった。


鳴上(学校も終わったし、星のお見舞いに行こう)

メティス「あの、鳴上さん」

鳴上「ん?」

メティス「もしかして、これから星さんのいる病院へ行かれる予定ですか?」

鳴上「ああ、そうだ」

メティス「それなら、私も行きます」

メティス「彼女の事、気がかりでしたので……」

鳴上「ん。じゃあ、一緒に行こう」


>メティスと一緒に病院へ向かった。

>…


辰巳総合病院


>メモに書かれている201号室までやってきた。


コンコン


あかり「はい、どーぞ」


>室内からあかりの声が聞こえてきたので、扉を開けた。


あかり「あれ? あなた達は……」

鳴上「どうも」

メティス「こんにちは」

あかり「入院してるってよく知ってたね。というか、どうしてここに?」

鳴上(あ。そうか)

鳴上(あの時の事をよく覚えてないなら俺達がいた事だって解ってないって事だよな)

鳴上「前に聞かれた事についてちょっと話がしたかったんだけど、学校で姿見ないしどうしたのかと思ったらこの病院にいるって話を聞いたからさ。お見舞いに」

あかり「そっか。ありがとね」

あかり「もう知ってるかもしれないけど、あの子見つかったんだよ! 今、一緒の病院にいるの」


>あかりは嬉しそうに笑っている。


あかり「……実を言うとね。私、ここ数日の記憶が曖昧で、気付いたら何故かあの子と一緒に病院にいたみたいなんだよね」

あかり「で、話を聞くとあの子が見つかった時、私も一緒にいたって事らしいんだけど全然覚えがないの」

あかり「そしたら、なんだか私までいつの間にか失踪届けが出されてたっていうし……」

あかり「でも、そのいなくなってたっていう間に何処で何してたのか自分自身よくわからなくて」

あかり「警察の人にもなんて言えばいいのかって凄い困ったよー……」

メティス「本当に、何も記憶にないのですか?」

あかり「うん……」

あかり「夜の街の中をずっと迷っていたような感じもするんだけど……でも、おかしいよね。知ってる街の中を迷う訳ないし」

鳴上「そっか……」

鳴上「でも、元気そうで良かった」

あかり「多分、来週にはまた学校に行けると思うよ。あの子はもうちょっとかかるみたいだけど……」


>……

>少しの間、あかりとおしゃべりをして過ごした。


鳴上「あまり長居しても悪いから、今日はもう帰るよ」

あかり「うん。わざわざこんなところまでありがとね」


>挨拶をしてあかりの病室から出た。


>……


辰巳総合病院 廊下


メティス「……? 鳴上さん、あれ……」

鳴上「?」

鳴上「……あ」

鳴上「橿原先生」

淳「! 鳴上くんにメティスさん……」

淳「こんなところでどうしたんだい?」

メティス「隣のクラスの星あかりさんのお見舞いにきていました」

鳴上「もしかして、先生もそうですか?」

淳「そっか。星さんや例の子もこの病院にいるって話だったね」


>どうやら、違うらしい……


淳「……」

淳「僕はね、クラスの生徒のお見舞いにきたんだ」

>橿原は、手に持っている花束に視線を落としながらそう答えた。


鳴上「うちのクラスの生徒に入院している人がいたんですか?」

淳「うん。ここ数日何人か休んでいるだろ? その一人だよ」

鳴上(そういえば前に駅前で先生が花束買ってるところ見たよな。あの時もお見舞いに行ってたのか?)

メティス「……」

メティス「あの。その方はどうして入院しているんでしょうか。怪我? それとも病気?」

淳「……」

メティス「……」

鳴上「……?」

淳「それがね。病気なのかなんなのか……よくわからないらしいんだよ」

淳「ある朝突然、目が覚めなくなったんだって」

鳴上「えっ…!?」

メティス「目が、覚めない?」

淳「うん……」

淳「しかも、かなり衰弱しているらしくてね。このままだと、どうなるかわからないって……」

鳴上「……」

淳「この間お見舞いに来た時に見た限り、本当にただ眠っているだけのようにしか感じなかったんだけどね……」

淳「……」

淳「ごめん。もう行くね。君たちはもう帰りかい?」

鳴上「あ、はい……」

淳「じゃあ、気をつけて帰るんだよ」


>橿原は廊下を歩いて行ってしまった。


メティス「眠ったまま目が覚めない、ですか」

メティス「原因が解らないというだけで、何でもかんでも怪しく思えてしまいますね」

メティス「それもこれもシャドウのせいなのかって」

鳴上「気にしすぎるのもどうかとは思うけど」

鳴上「でも、そうも言ってられない事も確かな訳だからな」

メティス「はい……」

鳴上「今は、頭の隅に置いておく程度にしておこう」

メティス「……」


>少し気になる話ではあったが、このまま病院を後にした。

>……


学生寮


コロマル「ワンッ!」


>帰りをコロマルが出迎えてくれた。


鳴上「ただいま、コロマル」

メティス「ただいまです」

コロマル「ウ~ッ、ワンワン!」


>コロマルは鳴上の周りを落ち着きのない様子でぐるぐると走り回っている。


鳴上「ん、どうした?」

コロマル「ワンッ!ワンワンッ!」

メティス「コロマルさんはどうやら外に散歩に出かけたいそうです」

鳴上「散歩?」

コロマル「ハッハッ」


>コロマルは期待するような目でこちらを見上げている……

鳴上「そうだな。事件も片付いた訳だし、一緒に遊ぶか」

コロマル「ワンッ!」

鳴上「メティスも一緒に行かないか?」

メティス「私も、ですか?」

メティス「そうですね。断る理由もありませんし、ご一緒します」


>部屋に鞄を置いて、支度をしてからコロマルの散歩に出る事にした。


>……



長鳴神社


>神社の敷地内でコロマルは元気に駆け回っている。


鳴上「やっぱりコロマルにはこの場所が一番か」

メティス「そうですね。ここで遊ぶのがコロマルさんはとても好きなようです」

コロマル「ワンッ」

メティス「前にもここによく遊びに連れて行ってくれた方がいたとか……」

メティス「そういえば鳴上さんはその方とどことなく似ている、との事です」

鳴上「俺が?」

コロマル「ワンッ!」

鳴上「へえ、どんな人なんだろうな」

メティス「私も興味がありますね。一度会ってみたいものです」

コロマル「クゥーン……」


>コロマルは急にしょげてしまった……


メティス「あ……」

メティス「そう、なんですか」

鳴上「え、何?」

メティス「その方は、……もういないんだそうです」

鳴上「……」

鳴上「……そっか。ごめんな」


>コロマルの頭を撫でてやった。


鳴上「俺でよければ何時でもここに連れてきてやるから」

鳴上「また一緒に遊びに来ような」

コロマル「ワンッ!ハッハッ」


>コロマルは嬉しそうに尻尾を振っている。

メティス「今後ともヨロシク、だそうです」

>コロマルと少し仲良くなった気がした。



>『ⅩⅠ 剛毅 コロマル』のコミュを入手しました

>『ⅩⅠ 剛毅 コロマル』のランクが1になった



>コロマルの気が済むまで神社で遊んでから寮に戻った。

>……

【深夜】


辰巳ポートアイランド駅前


>一同はその後の映画館の様子を探る為、その近くで0時を迎えるのを待った……

>……


23:59→0:00


>……

>映画館は今までの通り、この世界を異界へと繋ぐ為に再び営業を開始し始めたようだ。


スクリーンショット 館内 4番劇場前


アイギス「館内に目立った変化は見られないみたいですね」

鳴上「……いや」

メティス「?」

美鶴「! これは……」


>劇場前に貼ってある、上映プログラムをよく見てみた。

>そこには、未だに雪の女王のタイトルと上映開始時刻、上映時間が記載されている。

>だが今までとは違い、更に『4/22(日)まで』という記述が書き加えられていた。


天田「鳴上さんの予想、当たっていたみたいですね」

アイギス「日曜までという事は、あの世界も明後日までで終わりという事でしょうか」

鳴上「多分そうですね。でも、問題なのはその後あの世界はどう変化をみせるのか……」

鳴上「とにかく今は、EDを迎えている筈の雪の女王の世界はどうなっているのか確認しよう」


>……


スクリーンの中の世界
辰巳ポートアイランド駅前


美鶴「……ふむ。今はもうシャドウの数も激減しているようだな」

美鶴「解る範囲では、一匹も姿がないようだ」

天田「この世界は平和になった、めでたしめでたし、ってところですか」

アイギス「今日はシャドウ退治をしなくても済みそうですね」

メティス「では、今日の活動はどうしましょうか?」


>みんなが、指示を待っている。


鳴上「そうだな……」

鳴上「……」

鳴上(今ならゆっくりあの場所を確認できそうだな……)

鳴上「もう一度、学生寮を調べてみたいんだけど……付き合って貰っていいだろうか」

天田「学生寮……って、僕達が生活しているあそこのですか?」

メティス「以前行った時は、シャドウの襲撃を受けていたんですよね。その様子をもう一度確認するんですか?」

鳴上「まあ、そんなとこだけど……」

鳴上「特にアイギスさんと桐条さんにはもう一度よく確認して貰って、改めて聞きたい事があるんです」

アイギス・美鶴「?」

鳴上「とりあえず、まずは学生寮まで行きましょう」


>……


学生寮


>学生寮の扉は、以前簡単に修理した時のままだ。


メティス「あれからまた被害を受けたりはしていないようですね」

鳴上「……。そうだな、中に入ろう」


>……


アイギス「鳴上さん。私や美鶴さんに改めて聞きたい事というのは一体なんでしょうか?」

鳴上「まずは、階段のところを見て貰ってもいいですか?」

鳴上「作戦室……アイギスさんが普段使用している部屋に上がるところのです」


>……


>四階 階段付近。

>この一帯には、以前ここに来た時から銃弾の跡が見られている。

メティス「ここは私も以前から気になっていたところですね。いったい誰がこんな事……」

鳴上「アイギスさん。この銃弾の跡、よく確認して貰ってもいいですか?」

アイギス「はい」


>アイギスは言われた通り、まじまじと一帯を見つめている。


アイギス「……」

アイギス「……え?」

メティス「姉さん?」

アイギス「そんな、まさか……でもどうして……」


>アイギスは散らばっていた薬莢のひとつを拾い上げて考え込んでしまった。


鳴上「……」

鳴上「やっぱりそうでしたか」

美鶴「いったいどういう事なんだ?」

鳴上「桐条さん。貴女にもひとつ思い出して欲しい事があります」

鳴上「今月の初めの、俺が寮でシャドウに襲われた夜の事です」

美鶴「それがどうしたんだ?」

鳴上「あの夜、桐条さんが寮に来たのってどれくらいでしたか?」

美鶴「アイギスからシャドウに襲われて君が倒れたという連絡を受けてすぐに駆けつけたんだが……」

美鶴「それから大体15分くらいというところだっただろうか」

美鶴「着いてから少しして君の目が覚めたんだ」

鳴上「……」

鳴上「その時、寮の入り口ってどうなっていましたか?」

美鶴「どうって」



美鶴「……別に普通だったと思うが」

アイギス「そう、だったんですか。今の今までそんな事に気付かなかったなんて……」

鳴上「それは俺もです。あの時は混乱してて深く考えてなかった……」

鳴上「多分、アイギスさんか桐条さんが綺麗に片付けてくれたんだろうって、勝手にそう思いこんでたんだ」

美鶴「……何の話なんだ?」

鳴上「俺が寮でシャドウに遭遇した時、シャドウは入り口からやってきたって話は前にもしましたよね」

鳴上「……それは寮の扉を“破って"入ってきていたんです」

美鶴「!」

鳴上「シャドウのせいで扉が壊れたところを俺ははっきりこの目で見ています」

鳴上「そしてアイギスさんを呼ぼうと階段を上がり……」

アイギス「そこで私が一度、シャドウに応戦しました。銃を撃って」

アイギス「結論からいいましょう。ここにある銃弾の跡は、私が撃った後のものかと思われます」

天田「つまり、……え?」

鳴上「壊れた筈の扉もシャドウのせいで荒れたその周辺も、俺が目覚めた時には何事もなかったかのように綺麗になっていた」

鳴上「それは『何事もなかったかのよう』ではなく……」

鳴上「本当にあの場では何もなかったんだよ」

鳴上「ずっと勘違いをしていたんだ」

鳴上「俺は現実世界でシャドウに襲われた訳じゃない……」

鳴上「この世界のこの場所でシャドウと遭遇していたんだ」

メティス「……!」

メティス「でも、どうしてですか? シャドウが寮の中に侵入してくるまでは普通の……現実世界に鳴上さんも姉さんもいた訳ですよね?」

メティス「あの映画館のように、元いた場所から別のところへ引っ張られるような事があったんですか?」

鳴上「いや、そんな事はなかった……」

鳴上「でも、急に周りの雰囲気が変わったような感じは確かしていたと思う」

アイギス「私も、鳴上さんが階段を上がって作戦室にやってくる直前に、そんな感覚を覚えました」

美鶴「原因は解らないが、二人とも現実世界にある我々の寮からこの世界の寮へと突然移動してしまい、その後いつの間にかまた現実世界へ戻ってきていた……と」

鳴上「そうなりますね」

美鶴「その直前に、何かきっかけになるような事はなかったのか?」

鳴上「いえ。雨の夜だったから、以前の習慣でマヨナカテレビが映ったりしないかとラウンジのテレビの様子を見ていましたけど……」

鳴上「でもやっぱりそんなもの映りもしなかったし、他にこれといって思い当たる原因はありません」

美鶴「そうか……」

天田「あの。これってまずくないですか?」

天田「僕達、今まであの映画館がこの世界に来る唯一の入り口だと思ってましたけど……」

天田「さっきの話が本当なら、あそこを通らなくても何かの拍子にここへ来れちゃうって事じゃないですか!」

天田「あっ……そういえばこの間、この世界に来るには、来ようとする人自体にも何か条件があるのかもしれないって話をしていましたよね?」

天田「その考察の答えは結局……?」

天田「もしそうなら、条件の内容次第では関係ない人がこの場所に迷い込む確率が多くもなるし、逆に少なくもなりますよね?」

天田「えっと、確かここにいるメンバーに共通している事がその条件かもって事でしたっけ」

鳴上「ああ」

メティス「私達に共通している事……ってなんでしょうか」

メティス「性別、年齢、種族は人間から機械や犬まで……どれをとってみても、バラバラのような気がしますが」

鳴上「そのバラバラの俺達がこうして集まっている理由を考えればすぐに解る」

鳴上「俺達、みんなペルソナ使いっていう共通点があるじゃないか」

メティス「あ……」

メティス「当たり前すぎて失念していました」

メティス「なるほど。ここは、ペルソナを持つ者が入れる空間って事ですか」

鳴上「これも、今まであげてきた多くのトンデモ仮説のひとつでしかないけどな」

美鶴「しかし、君が言うとじゅうぶんに有り得る事のよう聞こえるから不思議だな」

美鶴「今までこの世界に知らずにやってきた人間達にも、ペルソナ使いの適性があるのかもしれない」

美鶴「……これもまあトンデモ仮説か」

アイギス「……」

アイギス「謎がわかったようでいて、増えていくばかりのような気がします」

鳴上「そうですね。俺も、色々考えすぎてちょっと頭の中が訳わからない事になってます……」

鳴上「でも、ここで確認したかった事はこれではっきりした」

鳴上「この後は、街の様子を見てまわって、もう異変がないかどうか出来る限り改めて確認……って感じでいいかな」


>一同が頷いたのが確認できた。


鳴上「それじゃあ、行こう。何か気付いたらすぐ知らせて欲しい」


>制限の時間まで、街中の探索に出る事になった。

>……


現実世界
辰巳ポートアイランド駅前


メティス「結局、何事もなく静かで平和な街になっていただけでしたね」

アイギス「途中何体か出たシャドウも、初めてあの世界に入った頃のようなおとなしくて臆病なものばかりでした」

アイギス「ガラスの破片が刺さっている様子もないようです」

天田「少なくとも雪の女王の世界はもう僕達にとっては脅威でもなんでもなく、日曜が過ぎるのを待てばいいってだけですかね」

美鶴「確かにあれ以上、雪の女王の世界で得られる事はもう何もなさそうだな」

鳴上(これ以上の探索は無駄、か……?)

鳴上「じゃあ、次に映画館へ来るのは雨が降っていなければ月曜日の深夜という事にしよう」

鳴上「みんな、今夜もお疲れ様」


>今後の活動指針を決めてから、寮に戻る事にした。

>……

自室


鳴上「ふう……」

鳴上「なんだか、三歩進んで二歩下がったと思ったら、そこに別の道が出来ていてどっちの道に進めばいいのかわからない、って感じだな……」

鳴上「……」

鳴上「何か起こらないと行動に移せないのはやっぱり辛いとこだな……」

鳴上「……今日はもう寝とくか」


>寝る支度をし電気を消してベッドに潜り込んだ。

>……


鳴上「……」


>いい具合にうとうとしてきた……

>その時、ベッドの近くが青白く光り、ぼうっと人影が現れた。


鳴上「……ん」


>その気配を感じ薄く目を開くと、ベッドの傍にイヤホンの少年が立っているのが見える。


イヤホンの少年「……」

鳴上(……あ。まただ)

鳴上(今度はなんだろう……眠いからまた今度にして欲しいけど)


>うとうとしたままイヤホンの少年と目を合わせるが、向こうから話す気配はなかなか感じられなかった。


鳴上「……何?」

イヤホンの少年「……」

鳴上「用件があるなら……聞くけど……手短、に……頼……」

鳴上(あ、だめだ……本当にねむい……)


イヤホンの少年「……」

イヤホンの少年「……『漢たちの戦い 最終章』」

鳴上(……?)

イヤホンの少年「……DVD」

鳴上(……??)

イヤホンの少年「頼んだ……」


>イヤホンの少年は、鳴上の手に何処から出したのか一万円札を握らせてきた。


鳴上「そのタイトルのDVDを……買えって、事……?」


>イヤホンの少年は黙ってコクリと頷いた。


鳴上「わかっ……た……」

イヤホンの少年「……」


>イヤホンの少年は、その答えにほっとしたような表情を見せて姿を消した……。


>『ⅩⅢ 死神 謎のイヤホンの少年』のランクが3になった



鳴上(……)

鳴上(DVDを見たがる幽霊……)

鳴上(エキセントリックだ)

鳴上「……Zzz」


>夜が更けていった……

>……

04/21(土) 雨 自室


【朝】


鳴上「……」

鳴上「夢じゃなかったか」


>手に握っているそれを掲げてみる。

>そこには一万円札があった。


鳴上「見た感じ偽札には見えないけど……」

鳴上「でも、これを店で使うのはなんか不安だからやめておこう」


>起き上がり、手に持っていた一万円札を机の引き出しにしまった。

>学校に行く準備をしなくては……

>今日はまた朝から雨が降っているが、予報ではすぐにやんでしまうと言っている。

>支度を済ませ、登校する事にした。

>……


通学路


>……


女子生徒「行方不明になってたうちの生徒って、見つかったんだよね?」

男子生徒「そーみたいだな。詳しい事情はよくわかんねぇけど」

女子生徒「でも事件解決したって事でしょ? 良かったあ。GW前に妙な騒ぎとかホントやめて欲しいって感じ」

男子生徒「そのおかげで、来週からまた普通の授業だぜ。かったりー……」

女子生徒「文化部の募集も月曜から再開するんだってさ。まあ、私はパスだけど」

男子生徒「あーあ。はやくGWになんねーかなあ」

女子生徒「それが終わると次は進路相談だよ?」

男子生徒「うっわあ……かったりー」

女子生徒「そんな事言ってないで、ちゃんと先生に話す事決めときなよね?」

女子生徒「進学か就職かってくらいは考えてるでしょ?」


>……

月光館学園 3-A 教室


HR


淳「出席をとります」


>……

>どうやら、今日も同じ顔ぶれが欠席しているようだ……


鳴上(入院してるってやつ以外もどうして休んでるのかちょっと気になるよな)

鳴上(ただの不登校ってだけならまだいいけど……)

鳴上(……)



【放課後】


>午前で授業が終わった。

>来週からはまた通常授業だ。


鳴上(今日はこれから映画館でアルバイトだ)

鳴上(日中の映画館の様子の観察はもう少し続けとかないとな)

鳴上(少なくとも日曜を越えるまでは……)


>帰り支度をして、映画館へと向かった。


>……

>アルバイトの最中、館内で目立って気になる点は今日も特に見つからなかった。


映画館の女性社員「鳴上くん、お疲れ様。もうあがっていいわよ」

鳴上「お疲れ様です」


>手取りでアルバイト代4500円を入手した。

>……


辰巳ポートアイランド駅前


鳴上「……そういえばDVDを買うんだったな」

鳴上「えっと、『漢たちの戦い 最終章』だったっけ?」

鳴上「何時頃のものかわからないし、そもそもジャンルはなんだ? ドラマ? アニメ?」

鳴上「……とりあえず店に行くか」


>DVDショップに向かった。

>……


鳴上「あった」


>『漢たちの戦い 最終章』のDVDを発見した。

>どうやら、数年前に映画でやっていたシリーズの最終作のようだ。


鳴上「これは一応買うとしても……」

鳴上「シリーズものの最後だけ見て面白いのか?」

鳴上「どんな映画か気になるし、残りのシリーズはレンタルして見てみよう」


>DVDを購入し、レンタルショップへと場所を移した。

>……

【夜】


学生寮 ラウンジ


>結局、全部の『漢たちの戦い』シリーズのDVDをレンタルして帰ってきた。


メティス「鳴上さん、おかえりなさい」

コロマル「ワンッ!」

鳴上「ただいま。……ん?」

鳴上「テレビ、新しくなってる?」

メティス「はい。ついさっき、美鶴さんが持ってきてくれて」


>ラウンジのテレビは、薄型で大型のものに変わっている。

>DVDやBDまでここで見られるようだ……!


鳴上「これ、最新型っぽいな。流石桐条さんだ……」

鳴上「……」


>もしかしたらと思い、テレビの画面に手を近付けてみた。

>……

鳴上「……やっぱりダメか」


>手は画面に触れて、それ以上先へはやはり進まないようだ……


メティス「私達もさっき同じように試してみたんですが、無理でした」

メティス「……テレビの中の世界、気になるんですけどね」

鳴上(どうして急に入れなくなったんだろうな……)

コロマル「ワンッワンッ」

メティス「? 鳴上さん、その手に持っているものはなんでしょうか?」

鳴上「DVDだよ、映画の」


>中身を取り出して、パッケージを見せた。

コロマル「!」

コロマル「ワンッ! ワンッ!」

鳴上「ん、どうしたコロマル?」

メティス「コロマルさんはそのDVDが観たいようですね」

メティス「最終章はないのか、と言っています」

鳴上「最終章? あるけど……」

鳴上「シリーズ全部揃ってるから、観るなら最初のからの方がいいんじゃないのか?」

コロマル「ウ~ッ、ワンワンッ!」

メティス「最終章だけで構わないそうです」
鳴上「そっか」

鳴上(最終章は借り物じゃなくて頼まれた買い物の品なんだけど……)

鳴上(後で事情を説明すればいいか)

鳴上(あいつに通じるかはわからないけど……)

鳴上「ここで観ても平気なのか?」

メティス「はい。好きに使ってくれていいとの事です」

鳴上「じゃあ、一緒に観るか」

コロマル「ワンッ!」


>急遽、映画鑑賞会が行われる事になった。

>……

>コロマルは鳴上の膝の上に落ち着きながら、画面から目を離さずにいる。

>……

>『漢たちの戦い 最終章』を見終わった。

鳴上(なかなかに熱いストーリーだった……!)

鳴上(結末解っちゃったけど、ちゃんと他のシリーズも後で観ておこう)

コロマル「ワンッ!」


>コロマルも満足そうにしている。


メティス「ずっとみたかったものがみれて良かった、ありがとう、と言っています」

鳴上「どういたしまして」

コロマル「ワンッワンッ」


>コロマルが鼻を擦り付けてじゃれついてきた。

>なんだか、とても感謝されているようだ。

>コロマルとまた少し仲良くなれたような気がした。



>『ⅩⅠ 剛毅 コロマル』のランクが2になった



メティス「コロマルさん、そろそろお食事にしましょうか」

コロマル「! ワンッ」


>コロマルは鳴上の膝から飛び降りて、メティスの後についていってしまった。

>部屋に戻る事にした。


>……

自室


>着替えてからPCの電源を点けて机に向かった。


鳴上(今日は久しぶりにパオフゥと話してみよう)


>メッセンジャーを起動させた。

>……

>パオフゥはオンラインにいるようだ。

>メッセージを飛ばしてみる事にした。



>…
>……
>………



>パオフゥからの応答がきた。


パオフゥ:よお、番長。久しぶりだな

番長:こんばんは。しばらくですね。

パオフゥ:今日はまた気になる話題でも探りにきたってところか?

番長:はい、そうです。

パオフゥ:素直に答えるな。まあ、そういう奴は嫌いじゃないぜ

パオフゥ:どうやら、駅前に怪物がどうこうって話はもう収まったみたいだな

パオフゥ:この手の話題は盛り上がるのも盛り下がるのも早ぇこった

番長:そうみたいですね

パオフゥ:でも、これ以上の話題になりそうな事があるって訳でもねぇんだよなあ、これが

番長:そうなんですか

パオフゥ:胡散臭い話はいつもゴロゴロ転がってはいるがな

パオフゥ:そういえば最近、若いのの間でちょっとしたゲームがいくつか流行ってるみてぇだな

パオフゥ:番長は聞いたことないか?

番長:ゲームはあまりやらないので……

番長:どういうものなんですか?

パオフゥ:携帯のアプリゲームなんだけどよ

パオフゥ:それがどうやら、どっかのサイトでダウンロード出来るような代物じゃないらしいって話だ

番長:どういう事ですか?

パオフゥ:なんでもそれはある日突然知らないメールアドレスから携帯に送られてくんだと


パオフゥ:それが、そのメールを開いただけで数秒してから自動的にアプリのダウンロードが始まるらしくてな

パオフゥ:最初は新手のウィルスかもなんて話もあったけど、やってみると結構普通の面白いゲームなんだそうだ

パオフゥ:携帯のGPS機能と連動していて、街中を歩く事で『仲魔』ってのを見つけて増やしていくってゲームってらしいが

パオフゥ:図鑑を作成したり、『仲魔』同士を合体させてより強い『仲魔』を作ったり、オンラインで他のプレイヤーと戦ったりも出来るとか

パオフゥ:こういうゲームって好きなやつはほんとにのめり込むみてぇだからな



鳴上「へえ。確かに面白そうだ」


パオフゥ:俺はゲームなんざやらねぇからどうでもいいが

パオフゥ:あまり知らないアドレスからのメールをほいほい開くもんじゃねえと思うな

パオフゥ:ま、でも、もし番長もそんなメールを受け取るような事があったとしたら、俺にも詳しい話聞かせてくれや

番長:わかりました。色々と話を聞かせてくれて、ありがとうございます

パオフゥ:おう

パオフゥ:じゃ、今夜はこれで落ちるわ


>パオフゥはオフラインになった。



>『Ⅸ 隠者 パオフゥ』のランクが3になった


鳴上「知らないアドレスからのメールってのは確かに怖い話だな」

鳴上「しかも勝手にダウンロードって……」

鳴上「……」

鳴上「最近は色々と進化してるって事か」

鳴上「……さて。寝よう」


>PCの電源を落とした。

>……

【深夜】


>ベッドの中……

>電気を消して、横になって目を閉じたはいいが今夜はなかなか寝付けない。


鳴上(またあいつが来るのは何時かと思うと、な……)


>……

>そう思った矢先、ベッドの傍で人影がぼぅっと浮かび上がり、その気配を感じた。


鳴上(きたか!?)


>目を開いて、ベッドから起き上がった。

>予想通り、イヤホンの少年がそこには佇んでいた。


イヤホンの少年「……」

鳴上「えっと、……こんばんは」


>イヤホンの少年は小さく頭を下げた。


鳴上(毎度の事ながら無口だな……じゃなくて)

鳴上「DVD買ってきたぞ」

鳴上「訳あって封開けちゃったけど……これでいいんだよな?」


>頼まれていたDVDをイヤホンの少年に差し出した。


イヤホンの少年「……」


>しかし、イヤホンの少年は首を横に振っている。


鳴上「えっ、買ってくるの違ったのか?」

イヤホンの少年「そうじゃない」

イヤホンの少年「……俺に必要なものじゃないから」

鳴上(せっかく買ってきたのにどういう事だ?)

イヤホンの少年「それに、もう目的は達成されたから、いい」

鳴上「?」

イヤホンの少年「無理を言ってすまなかった」

イヤホンの少年「協力してくれて、ありがとう」


>イヤホンの少年は僅かに微笑んだ。


鳴上「えっと、お釣りは……」

イヤホンの少年「そんなもの、どうでもいい」

イヤホンの少年「DVDも含めて、お前にやる」

イヤホンの少年「……」


>イヤホンの少年の姿は徐々に薄くなっていき消えてしまった。



>『ⅩⅢ 死神 謎のイヤホンの少年』のランクが4になった



鳴上「……」

鳴上「結局、なんだったんだ……?」

鳴上「……今度こそ寝よう」


>そっとしておくことにした。

終わりです。

また次回。

04/22(日) 曇り 自室


【朝】


>今日は休日だ。

>テレビをつけてニュースと天気予報のチェックをした。

>夜はまた雨が降ってくるらしい。

>マヨナカテレビの確認が必要になるかもしれない……。

>……

>昼からはまた映画館でアルバイトがある。

>メティスも一緒だった筈だ。

>その時間まで、借りてきたDVDを観て過ごす事にした。

>……


【昼間】


映画館 スクリーンショット


>休日だからか、人も多いようだ。

>意外とする事も多く、平日よりも忙しく感じる……


(メティスは大丈夫だろうか……)


>忙しない合間にメティスの様子をうかがってみた。

>……忙しさに驚いてはいるようだが、精一杯働いているようだ。

>……

>何事もなく無事に時間まで働き終え、本日分の給料を貰い帰る事にした。



辰巳ポートアイランド駅前



鳴上「お疲れ様」

メティス「おつかれさまです……」


>メティスはヘトヘトのようだ。


鳴上「仕事は慣れてきたか?」

メティス「……あ、はい。今のところは特にこれといって問題もありませんし」

メティス「でも、前に鳴上さんが言っていたように、どんな事でも働いてお金を得るというのに楽はないんですね」

メティス「勉強になります」


>メティスはひとり納得しながら頷いている。


鳴上「それにしても、日中の映画館の様子に特におかしなところはやっぱり見当たらないな。この分なら、明るいうちはもうそれほど心配しなくてもいいかもしれない」

メティス「え?」

メティス「……あ。そ、そうですね。そうかもしれませんね」

鳴上(この様子だと、仕事の方に集中しすぎてそこまで気が回っていなかったとみた)


鳴上「……さて。なんだか空模様も怪しいし、降り出す前に帰ろうか」

メティス「はい。今日は夜中の間はずっと雨のようですね」

メティス「どうなんでしょうか、マヨナカテレビの方は。映るような気配はありますか?」

鳴上「なんとも言えないな」

メティス「映るような事がないのが一番だと思いますけど、でも一度どんなものなのかはっきりとこの目で確認してみたい気もしますね」

鳴上「……ある意味では面白かったりもするけど、やっぱり面白いものでもないと思う。特に映ってしまった人にとっては」

メティス「なるほどなー」

鳴上(本当にわかってるんだろうか……)


>……


学生寮 ラウンジ


美鶴「君達か、おかえり」

鳴上「あ、どうも」

メティス「お疲れ様です、美鶴さん。今日はまた何か作戦会議でもするのでしょうか?」

美鶴「いや。少し様子を見に立ち寄っただけだ」

メティス「そうですか」

メティス「……」

メティス「あの、何もないようでしたら、このまま部屋に戻って少し休ませて貰ってもいいでしょうか?」

美鶴「ん? ああ、私に構うことはないぞ?」

メティス「……すみません。失礼します」


>メティスは頭を下げてからこの場を去っていった。


美鶴「なんだか疲れているようだったが……」

鳴上「今日のバイト、忙しかったからだと思います」

鳴上「凄く頑張ってましたよ、彼女」

美鶴「そうか、今日はアルバイトの日だったのか」

美鶴「最初、メティスが働きたいなどと言い出した時は驚きもしたが、君もついているし心配はいらないようだったな」

美鶴「時間があるようなら、その辺りの事をもう少し詳しく教えて貰ってもいいか?」

鳴上「はい」


>ソファに座り、美鶴にメティスの事を色々と話した。

>……


美鶴「ふむ。メティスも日々様々な事を少しずつ経験し、吸収しているようだな」

美鶴「……しかし、君には色々と面倒を押しつけてしまっているようで悪いな」

鳴上「いいえ、そんな事はないですよ」

美鶴「メティスの事だけじゃない。初めから色々な事を、だ」

美鶴「……」

美鶴「……覚えているか? 君がここにくる事になった経緯を」

鳴上「今使われている寮の空き部屋が確保出来なかったから、って話でしたよね」

美鶴「実はな、……それは嘘なんだ」

美鶴「君の事を調べさせて貰ったと言った事もあるが、あれも順序が逆で、前々から稲羽市での不可解な事件について調査していたその時に君や君達の仲間について行き着いたというのが正しい」

美鶴「そんな君が月光館学園に転入するという話を聞いて、私が仕組んだ事なんだ」

美鶴「……万が一の時に備え、少しでも戦える人物を傍に置いておく為に」

鳴上「……」

鳴上「なんとなくそうなんじゃないかなって気はしてました」

鳴上「でも、俺は全然気にしていませんよ。その万が一が本当に起こった訳ですから」

鳴上「俺の力が必要な場があって、俺の存在が役に立つっていうのなら、是非使って下さい」

鳴上「それで多くの人達の平穏を守れるのなら」

美鶴「……」

美鶴「君は本当に頼り甲斐のある男だな。感謝してもしきれないくらいだ」

鳴上「そんな事はないですよ」

鳴上「むしろ、現在リーダーとして上手くやれてるのかって思ってたくらいです」

鳴上「あの事件だって、結局は星の想いの力があったからこそ丸く収まったようなもので、俺は何も出来ていないんですから……」

美鶴「君がそう卑下する必要が何処にある」

美鶴「立派にやってくれているよ、君は」

鳴上「……」

美鶴「君はかつての特別課外活動部のリーダーだった男と似ている」

鳴上「以前のリーダー?」


美鶴「ああ。だから私は、君ならこのメンバーをこれからも引っ張っていってくれると、そう信じている」

美鶴「君がいるから、みんな戦えるんだ」

鳴上「そんな……大袈裟ですよ」

鳴上「でも、そこまで言われたらこれからももっと頑張らないとダメですね」

鳴上「前のリーダーだったっていう人に負けないように、自分の務めを果たします」

美鶴「ああ。これからもよろしく頼む」

美鶴「私も頼ってばかりでなく、君やみんなの為にも力を惜しまない」

美鶴「終わりの見えない戦いではあるが……必ず、この街に平和を取り戻そう」


>美鶴から信頼されているのを感じる……



>『Ⅲ 女帝 桐条美鶴』のコミュを入手しました

>『Ⅲ 女帝 桐条美鶴』のランクが1になった


鳴上「……その以前リーダーだったっていう人も、今はもうこの街にはいないんですか? 力になって貰えれば、心強いのに」

美鶴「……」

美鶴「ああ。もう彼はいないんだ」

美鶴「だから……彼の守った街を、この世界を、今度は君が守ってほしい」

鳴上「……」

鳴上「はい」


>……


【深夜】


>外は強い雨音が響いている。

>もうすぐ0時だ。


鳴上「……」


>電源が入っていない何も映っていないテレビへと視線を向けた。


23:59→00:00


>…
>……
>………


鳴上「……今夜も変化はなし、か」

鳴上「相変わらずテレビの中へは入れないし」


>拳をテレビの画面に突きつけると、こつんと音が鳴っただけでそれ以上どうにもならなかった。


鳴上「……待てよ。俺がテレビに入れないって事は、陽介達もそうなっている可能性があるって事か?」

鳴上「遊びに行った時に聞いておこう」

鳴上「……」

鳴上「寝るか」


>部屋の電気を消して、寝る事にした。

>……

04/23(月) 晴れ 自室


【朝】


>外は昨夜の大雨が嘘のように晴れて良い天気だ。

>天気予報では、これからGW中もずっと晴れが続き、少し暑さを感じるくらいの気温が多くなると言っている。

>……

>支度をして登校する事にした。






【放課後】


>今日から再び通常授業に戻り、特に問題がある事もなく一日の授業が全て終わった。

>そういえば、今日から文化部の部員募集が再開になるそうだが、どんな部があるか見学だけでも行ってみようか……


鳴上「メティス」

メティス「はい。なんでしょう」

鳴上「これから文化部の見学に行こうと思うんだけど、メティスはそういうの興味ないか?」

鳴上(って、運動部見学の時は行かなかったんだったよな。まあ、無理に誘う必要もないとは思うけど……)

メティス「部活の見学、ですか」

メティス「……」

メティス「どんな部があるんでしょうか?」

鳴上(……ん?)

鳴上「いや、それは行ってみないとわからないけど」

メティス「……」

メティス「……面白そうな部がありそうかどうか、確認するだけなら」


鳴上(……んん!?)

鳴上「そっか。じゃあ、行こう」

メティス「はい」

鳴上(まさか、誘いにのってくるとは)

鳴上(……もしかしたら、気を使われただけって可能性もあるけど)

鳴上(まあ、いっか)


>メティスと部活の見学に行く事にした。

>……


メティス「結構な数の部活があるんですね。知りませんでした」

鳴上「そうだな。何か気になる部はあったか?」

メティス「どれもこれもどんな事をする部なのか気になりますが……入りたいかと言われればそれはまた別の話ですね」

メティス「……私に似合うかどうかもわかりませんし」

鳴上「似合うかどうか? そんなの別に気にする必要ないだろ」

鳴上「どんな事だって、メティスがやりたいと思ったものをやればいいんだよ」

鳴上「折り紙の時がそうだったじゃないか」

メティス「でも、あれは……」

鳴上「理由はどうあれ、メティスがやりたい事をやって怒る奴も笑う奴もいないだろ」

鳴上「もしそんな奴がいたら、俺がぶん殴ってやるからすぐに言え。な?」

メティス「……」

メティス「……ありがとう、ございます」


>メティスは恥ずかしそうにしながら俯いた。


鳴上「えっと、……この部で最後か」

メティス「美術部ですね」


>扉をノックしてから中に入った。


鳴上「あの。部活の見学をさせて貰いたいんですが……」

「んー? はいはい、どーぞご自由に! ……って、あ」

鳴上「……ん?」

メティス「星さんじゃないですか」

あかり「やっほー! まさか、君達がこの部の見学にくるなんて思ってもみなかったよ」

メティス「無事に退院したんですね。良かったです」

あかり「うん、ありがと」

鳴上「星は美術部だったのか」

鳴上(だからあんなに絵が上手だったんだな)

あかり「うん、そうだよ。美術部の部長さんなの」

あかり「そんなに人数が多いわけでもない部だけど、好きなだけ見学していってね」

鳴上「それじゃあ、お言葉に甘えて」


>美術部の見学をさせて貰う事にした。

>……


>あかりはモデルを見ながら真剣にスケッチしている。


鳴上(チドリもだけど、絵を描ける人って凄いな)

鳴上(俺も練習すれば少しくらいはああいう絵が描けるようになるんだろうか……)

メティス「……」


>メティスも、あかりの描く絵に見入っているようだ……


あかり「……じゃあ、今日の部活はこれで終わりです。各自、片付けをした後帰宅してください」


>部活動の時間が終わったようだ。


あかり「どうだった? 美術部の様子は」

鳴上「俺、絵を描いたりした事もないから上手く言えないけど……みんな好きなものを好きに創作している雰囲気が自由でいいな」

あかり「うん。美術部はね、絵でも彫刻でも自分の好きなものを自分の自由に形にしていく部だからね」

あかり「君も、何かそういったものがあるのかな?」

鳴上「知り合いにも絵を描いてる奴がいてさ、そいつの影響か俺もちょっと絵に興味が沸いてたんだけど……俺にも描けるかな?」

あかり「もちろん! 必要な道具とその気持ちさえあればじゅうぶんだよ」

鳴上「そうか……」

鳴上「それじゃあ俺、この部に入ってみようかな」

あかり「本当? やった!」

あかり「貴女の方はどうかな?」

メティス「そう、ですね」

メティス「私には何かを形にしたいとか、そういうものはありません。でも」

メティス「一から何かを創造し、完成させていくという行為は、それを見ているだけでも素晴らしい事だと感じました」

メティス「私も努力すればそういう事が出来るようになれるのでしょうか」

あかり「うん、貴女にもきっと出来るよ」

メティス「そうですか……」

メティス「いえでも、入部の件は今は保留にさせて下さい」

あかり「そっか。入りたくなったら何時でも来てね」

メティス「はい」

あかり「じゃあ、君はこれ書いてくれる?」


>入部届けに名前を書いた。


あかり「そういえば、君の名前聞いてなかったんだよね。鳴上悠くんっていうのか……これからよろしく!」

あかり「あ、私の事は部長……もしくはあかりでいいからさ」

鳴上「ああ。改めてよろしく、あかり」


>美術部に入部した。



>『ⅩⅦ 星 星あかり』のコミュを入手しました

>『ⅩⅦ 星 星あかり』のランクが1になった



あかり「活動もテスト期間以外は自由に来てくれていいからね」

鳴上「わかった。それじゃあ、また」

あかり「うん。また部活でね」


>美術部を後にし、寮に帰る事にした。

>……


【深夜】


辰巳ポートアイランド駅前


>特別課外活動部の一同は、予定していた通り映画館の様子を窺いに近くまでやって来ていた。


>時刻はもう0時になるまで一分を切っている。


鳴上(……さて、どんな事になるやら)

鳴上(シャドウの数が増えていたりなんかしたら……)

鳴上(……)

美鶴「みんな、時間だ」


23:59→00:00


>…
>……
>………


アイギス「……?」

美鶴「っ……!」

天田「え……」

メティス「これは……!?」

コロマル「クゥン……?」

鳴上「なっ……どういう事なんだ!?」




鳴上「何も、……起こらない?」


>……

>0時を迎えると異界への扉へと化す筈のその映画館は……再び電気が灯る事もなく、シャッターが開く事もなかった。


天田「時間はちゃんと過ぎてますよ。もう日付が変わっている筈です」

鳴上「俺の携帯もそう表示されてる」

鳴上(どうなっているんだ?)

鳴上「これで終わった……って事なのか?」

美鶴「日中は特に異常もなく、深夜に起こっていた不可思議な現象もなくなった……と」

天田「ほんと人騒がせな映画館ですね。引っ張るだけ引っ張っておいて結局あれ以降は何もなしって訳ですか」

アイギス「でも、不安要素がひとつ解消されたのは良い事です」

メティス「あの世界は消失したって事でいいんでしょうか」


鳴上(消失した? 本当に?)

鳴上(……)

美鶴「今夜はここにいてもこれ以上どうにもなりそうな気配がない事は確かだな」

鳴上「……念の為、明日の夜以降もここに来てみよう」

鳴上「それで何も起きなければ、この事件は本当に終わったって事でいいのかもしれない」

鳴上(そう。それでも“かもしれない”ってだけだ……)


>……

>こうして、深夜の異界探索はまた明日以降へと持ち越される事となった。

>しかし……

>その夜を境に、深夜の映画館に起こっていた異変はぴたりとなくなってしまい、普段の生活においてもこれといった事件らしい事件が報道される事もなく……

>それでも拭えきれない幾つかの謎を残したまま、平和な時がしばしの間流れていった。






04/30(月) 晴れ


>今日は振り替え休日だ。

>学生寮のラウンジには暇を持て余した一同が集まっている。


天田「あれから何もなくて平和ですね」

天田「コロマルなんかここのところずっと食べて遊んでるだけだし」

コロマル「ワゥン」

メティス「こういう事を言うのもどうかとは思いますが……なんだか拍子抜けですね」

メティス「シャドウってこの程度の存在だったのかと思うと」

アイギス「あの世界がこちら側の世界と繋がる事さえなければ、もうシャドウが私達の生活を脅かす事もなくなる」

アイギス「けれど、あの世界がこちらの世界に繋がった原因も、消失した原因も、そもそも何故あんな世界が出来たのかという原因すらまだ解っていない」

アイギス「またあの世界が唐突に私達の前に現れる可能性だって十分にありえます」

鳴上「油断は出来ないって事だよな」

鳴上(何も起こらなくなったのにこの得体のしれない不安は消えない……何故なんだ?)



『……でもな。まだこれは始まりが終わっただけに過ぎない』




鳴上「っ……!?」

アイギス「? 鳴上さん、どうかしましたか?」

鳴上「いえ、何でもない……です」

メティス「鳴上さん……?」

鳴上(なんなんだ、今のは……?)


天田「そういえば、鳴上さんはもうすぐ稲羽市の方に泊まりで遊びに行くんですよね? いいなあ、そういう予定のある人は」

アイギス「また何時事件が起こるともわかりません。こういう時間は大切にしておいた方がいいと思います」

アイギス「ゆっくり楽しんできてくださいね」

鳴上「はい、そうします」

メティス「あちらに向かわれるのはいつになるんですか?」

鳴上「2日の夕方かな。学校終わったらすぐに寮に戻って、電車で行く。その日の夜遅くに向こうに着く予定」

メティス「休みの日を丸々遊びに使う気満々みたいですね」

鳴上「いや……ちょっと従妹と約束している事がある関係でさ」

鳴上「朝にはあの家にいたいんだよ」

メティス「そうなんですか?」

メティス「はしゃぎすぎて怪我したりしないで下さいね」

鳴上「ははは……うん」







05/02(水) 晴れ


学生寮


鳴上「それじゃあ、留守の間よろしくお願いします」

アイギス「はい。お気をつけて」

アイギス「私達の事は気にせず、お友達と楽しんでくださいね」

鳴上「はい。何かあったら連絡ください」

美鶴「そんなに心配しなくていい。数日くらいの留守は君がいなくとも守れるさ」

鳴上「はい。頼みます。6日には戻りますから」


>荷物を持って駅へ向かった。


メティス「……」

アイギス「どうしたの? 鳴上さんがいなくて寂しい?」

メティス「いえ、そんな事は……」

アイギス「大丈夫よ。すぐにまた戻ってくるんだから」

メティス「だ、だから、そういう訳じゃ……!」

アイギス「ふふ……」

アイギス「連休中は私達も何処か遊びに行けたらいいわね」

メティス「!」

メティス「姉さんと遊びに……?」

メティス「姉さんと……」



pipipipipi……


美鶴「ん……?」

ガチャッ

美鶴「はい。私です」

美鶴「はい。はい……」

美鶴「……」






美鶴「えっ……!?」


終わりです。

また次回。

???


>……


>真っ暗な部屋の中、唐突に画質の荒いテレビの画面が点いた。

>そこに映る仮面の男がこちらに話しかけてくる……


仮面の男「よお」

仮面の男「……」

仮面の男「フフッ……」


>仮面のせいで表情までは確認出来なかったが、男は楽しそうな笑い声を零している。


仮面の男「……いや、悪い。俺もつい……な?」

鳴上(……?)

鳴上(『つい』なんだっていうんだ……?)

仮面の男「ほら、久しぶりだろ。あの場所に帰るのは」

仮面の男「もう一ヶ月近くも離れていたんだ」

仮面の男「この日が本当に待ち遠しかった。……違うか?」

鳴上「……」

仮面の男「ああ……楽しみだなあ」

仮面の男「何が待っているかな」

仮面の男「……何が起こるのかな」

仮面の男「フフッ……」

仮面の男「……ほら、やっと着いたぞ」






『……次は終点、八十稲羽、八十稲羽でございます。車内にお忘れ物なさいませんよう、お気をつけ下さい』


鳴上「……ん」

鳴上「ふぁ……」

鳴上「着いたのか」


>荷物を持って、下車する準備をした。

>……



【夜】


八十稲羽駅


菜々子「お兄ちゃん!」


>駅から出てきたところで菜々子に出迎えられた。


堂島「久しぶりだな、悠」

鳴上「お久しぶりです」

鳴上「菜々子も久しぶり」

菜々子「いらっしゃい、お兄ちゃん!」

菜々子「菜々子、お兄ちゃんが来るのすごく楽しみにしてたんだよ!

>菜々子はとてもはしゃいでいる。


「それを言うなら俺たちも、だぜ!」

鳴上「!」

鳴上「みんな!」


>そこにはかつて共に戦った仲間達も揃っていた。


陽介「よっ! 久しぶり」

千枝「やっほー、鳴上くん!」

雪子「元気にしてた?」

りせ「会いたかったよ、先輩~!」

完二「オメェはこの前会ったばかりだろがよ! ……っと、お久しぶりっす!」

直斗「遊ぶのは4日って話でしたけど、出迎えにきちゃいました」

鳴上「ありがとう、みんな」

クマ「センセイ~!」

鳴上「ちょっ……クマ!」


>クマが突撃するようにして抱きついてきた。


クマ「クマ、センセイの元気な顔をこの目できちんと確認しないと心配で心配でたまらんかったクマ~!」

クマ「センセイには例の話、直接詳しくセンセイの口から聞かせて貰いたいクマよ!」

堂島「例の話?」

鳴上「あ、いや……」

鳴上(その話はまた遊ぶときにな?)ヒソヒソ

クマ(クマ~!)ヒソヒソ

堂島「お前達、久々の再会ではしゃぎたいのはわかるが、今日はもう遅いから帰りなさい」

りせ「えぇ~そんなあ! まだ会ったばっかりなのに……」

陽介「……でも、警察の人にそう言われちゃしょーがねぇな」

千枝「じゃあ、4日にまたみんなで君の家に迎えに行くから!」

雪子「また明後日、ね?」

完二「その時は積もる話もきっちり聞かせてくださいよ」

直斗「そうですね。……おやすみなさい」

鳴上「ああ、また」


>名残惜しくはあるが、楽しみは4日までとっておく事にして、みんなと別れてから堂島家の方へと向かった。


>……


堂島家


菜々子「お兄ちゃんを迎えに行く前にジュネスでお買い物してきたよ」

菜々子「だから明日の朝は約束通り美味しいお弁当作ってね!」

鳴上「ああ、任せろ」

堂島「そういやお前、夕飯はまだだろ? 弁当買ってきてあるから一緒に食おう」


>夕食をとりながら、楽しいひと時を過ごした……






菜々子「それじゃあ、おやすみなさいお兄ちゃん」

鳴上「おやすみ」


>明日に備えて部屋で休む事にした。


堂島家 自室


>部屋は堂島が言っていた通り、使っていた時のままの状態で残っている。


鳴上「戻ってきた、って感じだな……」

鳴上「この家の空気も雰囲気も、何もかも懐かしく思える」

鳴上「ここを出て、まだ一ヶ月くらいしか経ってないのに……」

鳴上「……」

鳴上「明日は早起きしないといけないんだ。寝よう」


>……


05/03(木) 晴れ


【朝】


>外は雲ひとつ無い青空が広がっている。

>良いピクニック日和だ!

>菜々子との約束通り、お弁当を作る事にした。

>……

>美味しそうなお弁当が出来上がった!


菜々子「おはよう、お兄ちゃん」

菜々子「わあ! これが今日のお弁当?」

菜々子「すっごーい!」


>菜々子は目をきらきらと輝かせている。


菜々子「お父さん起こしてくるね」

菜々子「おとーさーん! 早く起きていこーよ!」






鮫川


>菜々子の希望で、三人で鮫川の河川敷までピクニックにやってきた。


菜々子「お兄ちゃん、お父さん、こっちで一緒に遊ぼう!」

堂島「あまり川の深いところまで行くんじゃないぞ」


>水遊びや釣りをしたりしながら昼まで遊んだ。

>……


鳴上「菜々子、そろそろお弁当の時間にしようか」

菜々子「うん!」


>レジャーシートを敷いて、持ってきたお弁当を広げた。


菜々子「いただきまーす」

菜々子(モグモグ)

菜々子「すっごくおいしい!」

堂島「ん、本当だ」


>二人とも喜んでくれているようだ。


鳴上(作った甲斐があった)

菜々子「うー、これじゃあ菜々子も頑張ってお料理覚えないと、お兄ちゃんのおよめさんになれない」

鳴上「いつか菜々子の手料理が食べられる日がくるのを楽しみにしてるよ」

堂島「……」


>堂島に睨まれているような気がしたが、スルーする事にした。


菜々子「あ、そうだ」

菜々子「菜々子ね、この間お父さんにケータイ買って貰ったんだよ!」

菜々子「番号交換しようよ、お兄ちゃん」

鳴上「ああ、いいぞ」


>菜々子の携帯の番号とメールアドレスを入手した。


菜々子「これで寂しくなってもお兄ちゃんとすぐ連絡が出来るね」

堂島「あまり無駄遣いするんじゃないぞ」

菜々子「はーい」


>……

>お昼を食べてからは、夕方になるまでまた三人で遊んで過ごした。

>一日が過ぎるのがとても短く感じた……


翌日――


04/04(金) 晴れ


【朝】


ピンポーン


千枝「おはよう、鳴上くん。約束通り迎えに来たよ」


>みんなが揃って堂島家にやってきた。


鳴上「おはよう。……って、あれ?」

鳴上「陽介は?」

千枝「あー……うん、それがね」

千枝「とりあえず、ジュネスいこ」


>……


ジュネス フードコート


鳴上「人手が足りないから急遽手伝い、か」

千枝「ま、いつもの事だね」

千枝「でも昼過ぎまでだって話だから、それまで私たちはここでのんびりおしゃべりしてようよ」

雪子「そうだね」

鳴上「天城は旅館の方大丈夫なのか?」

雪子「うん。昼間の間はお友達とゆっくり遊んできなさい、って気使われちゃって」

雪子「……あ、みんなの部屋、ちゃんと確保出来てるから、今夜はゆっくりしていってね」

完二「今度はちゃんと風呂の時間は確認しといて欲しいっす……」

雪子「あ、あはは」

りせ「雪子先輩んとこの旅館もひさしぶりだよねー」

直斗「前の時みたいに菜々子ちゃんも誘ってみたらどうですか?」

クマ「クマもナナちゃんと遊びたいクマー!」

鳴上「そうだな、後で連絡してみる」


>……


【昼間】


陽介「ふいー……やっと終わったぜ」

鳴上「お疲れ」


>ようやく全員が揃った。


千枝「花村、待たせたんだからなんか奢ってよ。ジュースでいいから」

陽介「なんでそうなるんだよ!」

鳴上「俺、コーラ」

千枝「私はメロンソーダね」

雪子「烏龍茶がいいかな」

クマ「クマはオレンジジュースがいいクマ」

りせ「クマと同じく」

完二「花村先輩のオススメでいっすよ」

直斗「僕は、ええと……一番安いのでいいです」

陽介「お前らな……」


>……


鳴上「ごちそうさま」

陽介「はあ……まあ、こういうのも慣れっこだけどさ」

千枝「じゃあついでに肉もよろしく!」

陽介「調子にの・ん・な!」

鳴上「ははっ」

陽介「笑い事じゃねえだろ!」

鳴上「……いや、悪い。なんかみんなと一緒にいるんだなって感じがしてさ」


>みんなが黙ってしまった……

>でもそれは少しの間の事で、すぐに笑い声が響いた。


千枝「そうだね。私も、ここに鳴上くんもいるんだなって思ったらついはしゃぎすぎちゃったかも」

陽介「その被害が主に俺にきてるのはどうなんだよ」

雪子「こんなとこで時間潰してないで、早く遊びにいこっか」

陽介「こんなとこって言うな!」

りせ「それより悠先輩、どこ行こうか?」

直斗「先輩の好きなところまわりましょう」

陽介「それよりって」

完二「花村先輩、それ以上喋るともっと悲しい思いする事になると思うからやめといた方が……」

クマ「モテない男は大変クマねー」

陽介「やめたげて! 知ってるからホントの事言うのやめたげて!」

鳴上(賑やかだなあ)


>しばしのじゃれ合いの後、ジュネスを出て町へ行く事になった。


>……


愛屋


陽介「ま、この町の中で遊べる場所ってあんまないし行くとこも限られるからこうなるよな」

千枝「いいじゃん。私はここの肉丼好きだし」

陽介「お前の意見は聞いてねっつの!」

陽介「悠がここでいいなら別に文句はねぇけどさ」

鳴上「やっぱりここに来ないと始まらないだろ」

あいか「へい、おまちー」

あいか「鳴上くん、おひさ」

鳴上「あ。久しぶり」

あいか「そんな鳴上くんの為に、今日は特別に晴れてるけど雨の日限定のスペシャル肉丼どぞー」

鳴上「おお、これだよ、これ」

あいか「ごゆっくりー」


>スペシャル肉丼を味わいながら食べた。

>……


クマ「ところで、センセイ。今、センセイがいるトコのシャドウ事件はどうなってるか今度こそ聞かせて貰うクマよ!」

りせ「そうそう! あれから何か進展はあったの?」

鳴上「それが……」


>みんなに、今までの事件の流れを説明した。


完二「……なんか気味悪いっすね」

陽介「でも、一応そのスクリーンの中の世界ってのは消えたって事だろ? それから目立って変な事も何も起こってないみたいだし、だったら今はそれでいいんじゃね?」

直斗「色々とまだ謎が残っているようですから、気楽に構えているのも怖いですが……」

直斗「だからといって、これといった具体的な対策が練れそうな雰囲気でもないようですね」

鳴上「ああ。実はそれが一番困っている」

雪子「この町の事件の時は、犯人を捕まえるっていう風にするべき事が明白だった訳だけど」

雪子「鳴上くんの今抱えている事件は、それすらまだ朧気というか……何が事を悪くしているのかっていうのがさっぱりだよね」

雪子「誰かのせいなのか、何かきっかけみたいなのがあったからなのか……」

千枝「見えないものと戦ってる的なあれだよね」

クマ「クマも今の話聞いてもさっぱりクマよ」

クマ「でも、この町の事件が解決してもテレビの中の世界は消えていないように、そのスクリーンの中の世界も入る手段が一つなくなっただけで世界自体が消えた訳じゃないんだとクマは思う」

鳴上「やっぱりそう思うよな……」

陽介「入るって言えばさ」

陽介「クマから聞いたけど、お前テレビん中に入れなくなったって話マジなのか?」

鳴上「……ああ。何度か試したみたけどダメだった」

鳴上「ここに来られるって事は、クマは普通に出入り出来てるんだよな?」

鳴上「陽介たちは?」

陽介「それがさ……」


>みんなは顔を見合わせている。


千枝「その話聞いて私たちもなのかなって思って試してみたけど」

雪子「私たちは入れたんだよね、普通に」

鳴上「……」

鳴上「そうなのか」

完二「なんで先輩だけそんな事になっちまったんすかね」

りせ「場所の問題とか? この地域にあるテレビなら入れるかもしれないんじゃない?」

直斗「逆に、ここ以外の場所だと僕たちも入れなくなるかもしれないって事になりますよね」

鳴上「そういう考えもあるか……」

鳴上「後で部屋のテレビで確かめてみるよ」

鳴上「マヨナカテレビの方はどうだ? 何か映ったりしてる気配はあるか?」

鳴上「港区の方じゃさっぱりそういうのは見られないけど……」

陽介「……マヨナカテレビ、な」

陽介「実はまた最近変な話が広まってるみたいなんだよ」

鳴上「え……どんな!?」

千枝「雨の夜、消えているテレビを覗くとね、変な番組が映るっていう……」

千枝「前は運命の相手が映るとかっていう噂だったじゃん? それが……」

雪子「今度のは格闘番組が映るっていう話だったよね」

鳴上「格闘番組?」

直斗「噂になっている番組の名は確か……“P-1 Grand Prix"」

完二「高校生のダチ同士が殺し合いの決着を付ける、決死の格闘ショウとかっつーあれか」

直斗「なんでも、そこで負けた人間は翌朝死体で発見されるんだそうで」

りせ「でも別にそんな事件実際起こってないんだよね」

陽介「その番組自体見た事もねぇしな」

鳴上「ふうん……」

直斗「去年あんな事件があった後ですからね。妙な話が混ざり合って、そんな噂が流れてしまうという事もあるでしょう」

陽介「ま、とにかくこっちは平和にやってんぜって事」

鳴上「そっか。ならよかった」

雪子「――じゃあ、そろそろ旅館の方に行ってみる?」

鳴上「そうだな。菜々子にも連絡してみる」


>……

>この後も、楽しい時間が過ぎていった。

>事件の事など忘れてしまいそうになるくらい、みんなと遊ぶのに夢中になっていた……






05/05(土) 晴れ


天城屋旅館


鳴上「そうだ。お土産買っていかないと」

鳴上「ここの土産屋って完二の家の染め物とか置いてるんだったよな? せっかくだからそれ買っていこうか」

完二「あざっす!」

鳴上「女性が使えそうなのを何か……」



千枝・雪子・りせ・直斗「!?」



菜々子「お兄ちゃん、おんなのひとにプレゼントするの?」

菜々子「……カノジョ?」



千枝・雪子・りせ・直斗「かのじょ!?」



鳴上「え? い、いや……」

鳴上「ただ寮でお世話になっている人達にな」


雪子「ね、ねぇ、りせちゃん。鳴上くんのいる寮って女の子もいるの?」

りせ「女の子は女の子だけど……でも、みんなロボットだよ?」

千枝「ロ、ロボット!? 鳴上くんってそういうアレだったの!?」

りせ「あ! ひとり生身の人がいた! 寮に住んでる訳じゃないみたいだけど、大学生の綺麗な女の人が……」

直斗「と、年上……?」

りせ「う、うん。しかも、お金持ちのお嬢様みたいだし、スタイルもいいし……」



陽介「なんだよ、相棒も隅に置けねーなあ! プレゼントで気になるあの子にアタックってか?」

鳴上「いや、だからそういう訳じゃ……」

陽介「あっちの学校レベル高そうな女子が沢山いんだろ? 羨ましいこった」

陽介「そんな女子達が、相棒みたいないい男をほっとく訳もねーだろうしなあ」



千枝・雪子・りせ・直斗「……」

菜々子「お兄ちゃん……」



陽介「……あれ? 女子のあの重い雰囲気はなに?」

完二「アンタ、わざとじゃないのかよ……」

陽介「えっ」

クマ「地雷屋の本領発揮ってトコね、やれやれクマー」

陽介「えっ? えっ?」


>なんだか気まずい雰囲気になってしまった……

>その後、空気が戻るまで少し時間がかかった。







【夕方】


鳴上「もうこんな時間か。……家に戻らないと」

陽介「えっ? あ、ホントだ」

千枝「時間が経つの早く感じるねー……」

雪子「明日にはもうあっちに戻っちゃうんだもんね」

りせ「ううっ、そんなあ……」

完二「このタイミングで泣くなっての! 別に一生の別れって訳でもねぇのに」

直斗「会おうと思えば機会は作れますよね?」

陽介「でも、俺たち今年三年だしな」

千枝「これから進路の事で色々あるもんね」

雪子「私は旅館を継ぐってもう決まってるけど、その為にもやっぱり前よりも忙しくなっちゃいそうかな……時間作るの厳しくなるかも」

陽介「相棒は進路、もうどうすんのか決めてるのか?」

千枝「鳴上くんは成績いいし、いい大学行けそうだよね!」

雪子「となると、やっぱり進学?」

鳴上「……」

鳴上「……ん。まあ、そんなとこ……かな」

完二「進路かあ。俺も来年はそんなんで悩まなきゃなんねーのか」

直斗「僕は卒業したら本格的に探偵としての活動と勉強に励むつもりです」

りせ「私も芸能活動復帰したとは言っても、本腰入れるのは卒業してからにしようと思ってるんだ。それまでは、学生生活の方を優先するつもり」

完二「俺もまあ、やりたい事はあっけどよ」

雪子「千枝は警察官目指してるんだよね。花村くんは進路どうするつもりなの?」

陽介「俺は大学行っとこうかなって。ゆくゆくはまあ、ジュネス継げたらいいけど」

千枝「へえー意外。花村もちゃんと考えてんだね」

陽介「俺だって自分の将来くらい考えるっつーの」

菜々子「菜々子はお兄ちゃんのおよめさんになる!」

千枝・雪子・りせ・直斗「……」

陽介「……また女子の空気が……」

鳴上(……進路)

鳴上(……)

菜々子「お兄ちゃん?」

鳴上「……ん」

鳴上「帰ろうか」

陽介「明日またみんなで見送りに行くからな!」

鳴上「ああ」


>みんなと別れて家に戻る事にした。

>……


【深夜】


>外はいつの間にか雨が降り出しているようだ。


鳴上(……)

鳴上(なんだか寝付けない……)


>一度横にした体を起こして窓の外を見た。


鳴上(あっという間の連休だったな)

鳴上(向こうに戻る頃には天気よくなってるといいけど……)

鳴上(そういえば、あの格闘番組がどうとかって噂……ちょっと気になるよな)


>何も映っていないテレビへと視線を移した。


鳴上「……いや、まさかな」

鳴上「映る筈ない、よな」


>独り言が思わず口から飛び出た。

>その時――


――ジジ――ッ――ジ――ジジジ――



鳴上「っ!?」


>唐突に、テレビに何か映り始めた……!

>画面には“P-1 Grand Prix"というタイトルが大きく表示されている。

>そして次に現れたのは――


鳴上「クッ……」





鳴上「クマ!?」



クマらしき人物『さあ、いよいよ開催が迫ったP-1 Grand Prix!』

クマらしき人物『今宵はついに注目の出場者をどどーんと紹介するクマ!』

クマらしき人物『目ぇかっぽじって見逃すなー!』


可愛い菜々子は誰にも渡さん! 鋼のシスコン番長 鳴上悠!!


寂れた田舎を踏み台に、大英雄に俺はなる! キャプテン・ルサンチマン 花村陽介!!

女を捨てた肉食獣!! 男勝りの足技系ドラゴン 里中千枝!!


王子様、私をリングへ連れてって 難攻不落の『黒』雪姫 天城雪子!!


薔薇と肉体の狂い咲き! 戦慄のガチムチ皇帝 巽完二!!


見た目は子供、頭脳はバケモノ! IQ2000のKY探偵 白鐘直斗!!



クマらしき人物『挑戦者はまだまだ受付中!』

クマらしき人物『我こそはと思う猛者共は、今すぐテレビへダーイブ!』

クマらしき人物『男の中の男たち、かかってこいクマー!』


――ブツン――


鳴上「……」

鳴上「これはひどい……」


pipipipipi……


鳴上「! 陽介からだ!」

鳴上「もしもし!?」

陽介「お、おい、相棒! さっきの番組見たか!?」

鳴上「ああ。P-1 Grand Prix……だろ?」

陽介「何なんだよあれ! キャプテンルサンチマンって!? 何語だよ!?」

鳴上「落ち着け!」

鳴上「司会してたの、クマだったよな?」

鳴上「クマは今どうしてるんだ?」

陽介「それが、一度帰るっつって、テレビの中に……

陽介「まさか、あの番組を流す為に!?」

陽介「あのクマ公、何考えてやがんだよ!」

鳴上「……とにかく」

鳴上「明日、朝一でジュネスに集合しよう」
陽介「そうだな。みんなにも連絡だ」

鳴上「ああ。じゃあ、切るぞ」


>他の仲間とも連絡を取り合ってから、さっきの番組のせいで余計寝付けなくなったものの、無理矢理寝る事にした。

>……


05/06(日) 曇り


【朝】


鳴上(帰りの電車までにはまだじゅうぶん時間がある)

鳴上(それまでに何が起こっているのか解明出来ればいいけど……)

鳴上「支度をして、ジュネスへ急ごう」


>荷物の中から持ってきていた八十神高校の制服を出して着替えた。


鳴上「制服、この家に置いていこうと持ってきてただけだったのにな……」

鳴上「……」

鳴上「行こう」


>……


ジュネス フードコート


鳴上(……)

鳴上(おかしい)

鳴上(なんで誰も来ないんだ?)

鳴上(ケータイも繋がらないし……)

鳴上「まさか……」

鳴上「……」

鳴上「……仕方ない」


>……


ジュネス 家電売場


>いつも入り口にしていたテレビの前までやってきた。


鳴上(……頼む)

鳴上(入ってくれ!)


>腕を恐る恐るテレビへと伸ばした……


鳴上「!」

鳴上「入っ……た」


>手の先が、テレビの画面に埋まっている……!


鳴上(よしっ! 行くぞ)


>テレビの中へと入った。


>……


鳴上「……え」

鳴上「ここは……?」


>テレビに入り辿り着いた場所は、見慣れない風景が広がっている……


鳴上「いつも最初に着く広場と似ているけど、ちょっと違うよな……」


>辺りをきょろきょろと見回してみる。

>すると突然、周りが真っ暗になり――

>かと思えば、スポットライトの光に照らされていたのだった。


鳴上「っ!?」

「レディースあーんどジェントルメン!」

鳴上「その声は……クマかっ!?」

クマのような声「お待たせしたクマ!」

クマのような声「ここでついに役者が揃ったクマよ!」


>クマらしき声はこちらに構わず喋り続けている。


クマのような声「というところでぇ」

クマのような声「今大会のルール説明に移るクマ!」

鳴上「大会? ルール?」


鳴上「おい、クマ! これはいったいどういう事だ!」

クマのような声「静かに静かにー、ちゃんと最後まで聞くクマ」

クマのような声「ルールは至ってシンプル! 道行く先で出会った奴らをまとめてボッコボコにしたれ~! ただそれだけクマ!」

クマのような声「武器の使用もペルソナもなんでもありなのがこのP-1 Grand Prixの面白いとこ!」

クマのような声「待ち構えるのが誰であろうと、昨日の友は今日の敵!」

クマのような声「殺らなきゃ殺られるの精神でゴーゴー!」

クマのような声「全てを乗り越えたその先には何が待っているのか……自分の目で確かめに来いクマ!」

クマのような声「これにて、クマ総統がP-1 Grand Prixの開催を宣言しちゃうクマ!」


>どこからともなく歓声がわき上がる。

>そこで、クマらしき声は途絶えてしまった。


鳴上「クマ総統……?」

鳴上「クマだとしても、なんだか様子がおかしかったな」

鳴上「役者が揃ったって言ってたけど……」

鳴上「やっぱり、みんなはもうここに来ているって事なのか?」

鳴上「……」

鳴上「……今は前に進むしかない、か」


>広場を抜けて先へと進んだ。

>……


八十神高校?


鳴上「ここは、俺が通ってたあの学校なのか?」

鳴上「なんなんだこの雰囲気は……」

鳴上「……!?」

?「……」


>誰かが物陰からこちらを窺っているような気配がした。

>しかし、その誰かはそれに気付くと同時に駆け出して離れていってしまった。


鳴上「おい、待て!」







体育館


鳴上「確かこっちに来たと思ったんだけど……」

鳴上「誰もいないみたいだな」

鳴上「誰か一人でもいいからいないのか?」

鳴上「……みんな」


>もう一度体育館の中を見渡してからその場を去った。

>……



?「……」

?「やっぱり今はまだやめておこうか」

?「……まだ、な?」

?「フフッ……」

?「せっかくのショーだ。存分に楽しめよ?」


>……


八十神高校? 校舎内


>だいぶ進んできたが一向に誰とも会う気配がない。


鳴上「早く、クマを見つけないとな……」

鳴上「!」


>一瞬、殺気のような何かを感じた。

>反射的にすばやく体を動かし伏せる。



バラララララ……!



>それにわずかに遅れて、音が聞こえてきた。

>……顔を上げて、後ろを振り返ってみると、壁に穴が無数に空いているのが確認できた。


鳴上「これは……」

?「……」

鳴上「!!」


>いつの間にか、目の前に人影が立ち塞がっている。


>その顔は見覚えのある人物だった……


鳴上「なっ……!」

鳴上「アイギスさん!?」

アイギス「……」


>攻撃をしかけてきたのはアイギスだった。

鳴上「どうしたんだ、アイギスさん!」

鳴上「いや、そもそも何故こんな場所に!?」

アイギス「……」


>アイギスは黙ったままこちらを見つめている。

>そして、構え直してきたのだった。

>まるで今から戦いを挑んでくるかのように……


『おおっと! これは意外な対戦カードだ!』


>今度は別の場所から声が響いてくる。

>どうやら、スピーカーを通して聞こえてきているようだ。


鳴上「この声は、りせなのか!?」


りせらしき声『鋼のシスコン番長、鳴上悠! 注目の初戦はなんと、彼と同じ寮住まいでありながらもその実態は対シャドウ兵器!」

りせらしき声『飛び入り参加で登場の、機械の乙女! アイギス選手だー!』

りせらしき声『さて、両者どうでるのでしょーか? 目が離せませんね!』

りせらしき声『ご紹介遅れましたが、ここからの実況はみんなのりせちーでお送りします♪』


>またどこからともなく歓声が響いてきた……


りせらしき声『それではみなさんご一緒に!』

りせらしき声『レディー……ゴー!』


>その声を合図にして、アイギスがこちらへと銃を撃ちながら一直線に向かってきた――!


鳴上「くっ……!」


>咄嗟にそれを避けながら、この状況に混乱した頭で必死に考える。


鳴上(みんな、一体どうしたんだ……!?)

鳴上(誰かに……何かに操られているのか?)

鳴上(……)

鳴上(本当はこんな事したくない。でも……)

鳴上「殺らなきゃ殺られるってんなら、今はそうするまでだ!」


>防御一辺倒から、瞬時に攻撃体勢へと切り替える。


鳴上「ごめんなさい、アイギスさん! ちょっとだけ眠ってて貰います!」

鳴上「イザナギ!」


>鳴上とアイギスのペルソナがぶつかり合う――


りせらしき声『両者一歩も譲らず! これは激しい戦いだあ!』


>二人は常に一定の間合いを保ちつつ、隙をついてその差を詰めて決めてしまおうと窺っていた。

>……そして、先に動いたのは。

>鳴上だった。


鳴上「っ……!」

アイギス「!?」


>身を屈めて一歩踏み込み、足のバネの力を最大限に利用して、アイギスの至近距離まで近付く。

>そして拳を一発、彼女の腹へと叩き込み。

>アイギスの体勢が崩れたのを見逃しはしなかった。


鳴上「いけ、イザナギ!」

鳴上「――ジオダイン!」


>大きな雷が、アイギスの体を走った――!

りせらしき声『決まったあああああ!』

りせらしき声『勝者、鳴上悠!』


>割れんばかりの拍手が聞こえ、鳴上にスポットライトがあたる。


鳴上「はあ……はあ……」

鳴上(これで良かったのか……?)


>少し離れた場所で、アイギスの体が横たわっている。

>反撃してくる様子はもうなかった。


鳴上「アイギスさん!」

鳴上(ヤバイ、少しやりすぎたかも……!)


>慌ててアイギスの傍まで近寄った。


アイギス「……」

アイギス「……ん」

鳴上「アイギスさん!? 大丈夫ですか!?」


>アイギスの体を、抱えて起こした。

>少ししてから、アイギスの目がぱちりと開く。


アイギス「!」

アイギス「鳴上さん! 一体どうしたんですか!?」


鳴上「えっ!?」


>そのアイギスの勢いに気圧された……


アイギス「鳴上さんに会えたと思ったのも束の間、やけに好戦的で急に襲ってくるし、りせさんは変なアナウンスをしているみたいだし……」

鳴上「……ちょっと待ってください」

鳴上「そっくりそのまま、言葉を返します」

アイギス「えっ?」


>アイギスに、自分が彼女に何をされたのかを説明した。


アイギス「どういう事でしょうか……私たちはお互いに幻でも見ていたというのでしょうか」

アイギス「少なくとも、私には私の方から仕掛けたなんて記憶はありません」

鳴上「そうですか……」

鳴上「ところで、何故アイギスさんがこんな場所にいるんですか?」


アイギス「……そう。それなんですが」

アイギス「……」

アイギス「実は、鳴上さんが出かけた直後に、美鶴さんのところへと連絡がきたんです」

アイギス「過去に作られた対シャドウ兵器の一体が突然目覚め、何処かへ逃走してしまったと」

鳴上「対シャドウ兵器って、アイギスさんやメティスと同じ?」

アイギス「はい。名前はラビリス。私とメティスの『姉』という事になりますね」

アイギス「そして、姉さんの足取りを追ううちに辿り着いたのがここという訳です」

鳴上「何故こんな場所に……」

アイギス「それはわかりません」


鳴上「!」

鳴上「もしかして、P-1 Grand Prixとかいう番組やこの空間も、クマやりせの様子がおかしいのも、さっきの幻も……」

アイギス「そうですね。ここに来ている姉さんが原因なのかもしれません」

アイギス「一刻も早く姉さんを保護しないと、これ以上どんな事が起こるかわかりません……」

アイギス「鳴上さん。姉さんを追うのを手伝ってはくれませんか?」

鳴上「もちろんです」

鳴上「アイギスさんのお姉さんに何が起こっているかはわからないけれど……この事態をどうにかする為にここに来た訳ですから」

アイギス「ありがとうございます」

アイギス「行きましょう」

アイギス「美鶴さんと、もう一人助っ人の方も一緒に来てくれている筈ですから」


>……

アイギス「……!」

アイギス「鳴上さん、止まって!」


>駆け足で先を急いでいたが、アイギスに言われ急停止をした。


鳴上「? どうしたんですか?」

アイギス「そこに誰かいます」

鳴上「!」

アイギス「いったい誰なの! 隠れていないで出てきなさい!」

鳴上「もしかしたら、仲間の誰かかも……!」

?「ふふふ……」


>身を潜ませていた人物が、静かにその姿を現した……


鳴上「……誰だ?」


>そこにいたのは、全身青い服で身を包んだエレベーターガールを連想させるような女性だった。


アイギス「!」

アイギス「あ、あなたは……!」

?「ご無沙汰しております、アイギス様」

鳴上「もしかして、この人がさっき言ってた助っ人の?」

アイギス「……いえ。違います」

アイギス「何故あなたがこのタイミングでこんな場所に?」

アイギス「……」

アイギス「こんな事は思いたくないけれど、もしかしてあなた、この一件に噛んでいるとでもいうの?」

?「はて……わたくしには何の事やら」

?「残念ながらアイギス様。わたくしが今日ここを訪れた理由は、アイギス様ではなくお隣の殿方の方にございます」

鳴上「えっ、俺……?」

アイギス「……どうしてあなたが鳴上さんに?」

?「ふふふ……」

?「お初にお目にかかります、鳴上様」

?「わたくしはベルベットルームの住人が一人、名をエリザベスと申します」

エリザベス「姉がいつもお世話になっております」


>エリザベスと名乗った女性は、深々と優雅なお辞儀をしてみせた。


鳴上「ベルベットルーム……姉……」

鳴上「もしかして、マーガレットの妹って事か?」

エリザベス「ご賢察、痛み入ります」

エリザベス「鳴上様のお話は、風の噂で耳にしております」

アイギス「お喋りは後にして。私たちは今、急いでいるの」

エリザベス「そうは参りません」

エリザベス「これを逃すと、もう機会が設けられそうにありませんもので……」

アイギス「何を言っているの?」

鳴上「あの……手短に済ませて貰えるなら聞くけど」

アイギス「鳴上さん!」

エリザベス「ありがとうございます」

エリザベス「それでは単刀直入に申し上げます」

エリザベス「わたくしとひとつ手合わせの程をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

鳴上「えっ?」

りせらしき声『これは予想外も予想外の展開だあ!』



鳴上・アイギス「!?」

りせらしき声『続く第二戦は、イレーギュラー中のイレーギュラー! 突如現れた謎のエレベーターガールがお相手です! 鋼のシスコン番長は果たしてどう立ち向かうのか!?』

鳴上「またこれか!」

アイギス「じゃあ、もしかしてこのエリザベスも幻……?」

エリザベス「どうなのでしょうか? お相手いただけないのでしょうか?」

エリザベス「……ですが、これを聞いても果たしてそう言っていられるか。見物でございます」

鳴上「?」

エリザベス「実はわたくし、只今鳴上様のお仲間方の身柄を少々預からせていただいているのです」

鳴上「なっ……!?」

エリザベス「もしもの時の為と思いまして……備えあればうれしいなとはこの事でございますね。ふふっ」

エリザベス「……ああ、ご心配には及びません。酷い怪我は負っておりませんので」

エリザベス「皆様、急所を外さず一撃でコロリ! させていただきました」

エリザベス「……さあ、どうなさいますか?」


>エリザベスは不敵な笑みを浮かべている……


鳴上「……やるしか、ないのか」


エリザベス「どうぞ、お手柔らかにお願いいたします」

エリザベス「わたくしは所詮、ラスボス前の前座に過ぎませんもので……何卒ご容赦を」

鳴上「全力でいかせて貰う」

エリザベス「ふふふ……」


りせらしき声『それでは緊張の第二戦! レディーゴー!』


鳴上「イザナギ!」


>先手を取ろうと開幕から大きく攻めに出たのは鳴上の方だった。

>イザナギがエリザベスめがけて猛スピードで突っ込んでいく。

>しかし、エリザベスは優雅さを依然と保ったまま、ひらりと軽くかわしてしまう。

>イザナギは幾度もエリザベスに切ってかかっていくが、その攻撃はいずれもかする事さえ無かった……


エリザベス「どうしてこのような事を、とお思いですね?」

鳴上「ぐっ……!?」


>エリザベスは地面を蹴ると、人間とは思えない大きな跳躍で鳴上の目前までやってくる。

>エリザベスの顔は文字通り、鳴上の目と鼻の先にあった。

>わずか一瞬の出来事で、咄嗟に反応する事はかなわなかった……


エリザベス「……」

エリザベス「……やはり、貴方様からあの人の気配を僅かながら感じます」

鳴上「え……?」


>エリザベスは鼻をすんすんと小さく鳴らし、鳴上の匂いをかぐような素振りをみせると耳元でそう囁き――

>手に持っていた分厚い本を横に払うようにして、鳴上の頭へとヒットさせた。


鳴上「ぐあっ……」


>その勢いのままに鳴上の体が真横へと吹っ飛んでいく。

>そして、エリザベスが攻撃に使った本をもう片方の手へと持ちかえると――

>不思議な事に、勝手に本のページが勢いよく捲れ始め、あるページになるとぴたりとその動きが止まったのだった。


エリザベス「さて、わたくしもそろそろウォーミングアップへと参りましょう」

>エリザベスの持つ本が青白い輝きを放つ――

エリザベス「貴方様を素敵な死への欲動へと誘ってご覧にいれましょう。おいでませ――」


エリザベス「タナトス」


アイギス「っ、あれは……!」


>鳴上が吹っ飛んでいくその終着点に、エリザベスの呼んだペルソナ――タナトスが現れる。

>タナトスは鳴上を受け取ろうとするかのように、その場に待ちかまえて腕を大きく広げていた。


エリザベス「殺られる前に殺れ。それが、この大会における基本概念だと聞き及んでおります」

エリザベス「――ので、素直にそうさせて貰う事に致しましょう」



エリザベス「マハムドオン」


>タナトスの腕の中に黒い渦が発生し始める……

>鳴上は方向転換する事も出来ず、傍からみるとそれはまるで死の抱擁に吸い込まれていくように見えた。


鳴上「っ、イザナギ!」


>しかしその直前、すんでのところでイザナギを呼び出し、体を引き上げて貰うことでそれをギリギリ回避する。


エリザベス「あら、かわされてしまったようでございますね」

エリザベス「流石です」


>エリザベスは、本を腕で挟むように持ちながら拍手をしている。


鳴上(皮肉にしか聞こえない……)

鳴上(さっきの殴り方は、本でやったにしても随分と重かったな……)


>殴られた場所が鈍痛で疼き、頭がくらくらしている。


エリザベス「しかし、あまり余所見をなさらない方が宜しいかと」

鳴上「!」


>そう忠告されるも、鳴上の背後には既にタナトスの姿があった。

>そこから羽交い締めをかけられるまでにそう時間はかからなかった。


鳴上「うぐっ……」

アイギス「鳴上さん!」

エリザベス「ふふふ」

エリザベス「それでは今度こそ、鳴上様も一撃でコロリ! して頂きましょう」


>エリザベスは楽しそうに鼻歌をうたいながら、緩やかに片手を上げ――高らかに宣言した。





エリザベス「メギドラオンでございます」

鳴上(くっ……!)


>そして、鳴上を中心にして辺り一帯が大きな光と衝撃にに押し潰され――





>――る事はなかった。


鳴上(……)

鳴上(……え?)


>咄嗟に瞑ってしまった目を開いてみると……そこには、こちらの事など一切気にせず懐中時計を眺めているエリザベスの姿があった。

>そして、懐中時計の蓋をぱちりと閉じるとエリザベスは深々と頭を垂れたのだった。


エリザベス「申し訳ございません、鳴上様。本日はこれにて時間切れにございます」

鳴上「えっ」

エリザベス「本日は有意義な時間をいただきまして、誠にありがとうございました」

エリザベス「かなうならば、いずれまたこの続きを、今度は時間を気にせず楽しみたいものでございます」

エリザベス「前座としては少々物足りない事かと存じますが、これにて失礼させていただきたいと思います」

エリザベス「それでは……」


>エリザベスが指をぱちんと鳴らすと、彼女の姿はいつの間にかそこから消えてしまっていた……


りせらしき声『一方的に見えた試合はまさにどんでん返し! 最後の最後まで予測不能のまま終わりを迎えてしまったようです』

りせらしき声『という訳で、エリザベス選手は棄権とみなし……』

りせらしき声『勝者は、鳴上悠選手で決まりました!』


鳴上「……」

鳴上「試合に勝って勝負に負けたってまさにこういうのを言うんだろうな……」

鳴上「って、みんなは!?」

アイギス「大丈夫です、こちらにいますよ」


>いつの間にか床に陽介、千枝、雪子、完二、直斗、クマの姿が横たわっている。


アイギス「目立った外傷はありません。気絶しているだけのようです」

鳴上「良かった……」

鳴上「……あれ」

鳴上「りせは?」



『……………………………』

『………………………い…』

『……たす…て………い…』



アイギス「……鳴上さん、何か聞こえてきませんか?」

鳴上「これは……」



『……たすけて………………』

『……たすけて! 悠先輩!』


鳴上「りせ……!?」


本日はこれにて終了でございます。

また次回までご機嫌よう。

>聞こえてくるりせの声は、今までの実況していた彼女の声とはまったくの別物に聞こえる。


鳴上「何処にいるんだ、りせ!」

りせ『やっと通じた……!』

りせ『悠先輩! 放送室だよ!』

鳴上「放送室?」

りせ『うん。悠先輩がいる場所から、すぐ近くのそこに捕まってるの……!』

鳴上「一体誰がそんな事を!?」

りせ『それが、クマじゃない変なクマが……あっ!?』

鳴上「りせ!」


>そこでりせの声が聞こえなくなってしまった……


鳴上「クマじゃない変なクマ……?」

鳴上「それじゃあ、やっぱりあのテレビに映っていたのも聞こえていた声も、ここにいる本物のクマじゃなかったんだな」

アイギス「私達のすぐ近くにいる……と言っていましたね」

アイギス「その『変なクマ』さんというのも、姉さんがこの場所にいる事と何か関係あるのでしょうか……」



陽介「う……」

千枝「……あ、れ?」

雪子「私たち……?」

完二「いってぇ……」

クマ「クマー……」

直斗「……どうしたんでしょうか……僕達は」

鳴上「みんな、大丈夫か!?」


>陽介たちが目を覚ましたようだ。

>様子からすると、何がどうしてこうなったのか自身でよく理解出来ないように見える。

>……


鳴上「……つまり、みんなどうしていつの間にかテレビの中にいたのかはっきりしないんだな?」

千枝「うん、そう。昨日の夜、あの番組を偶然見てみんなと連絡取り合った後に寝たところまでは記憶にあるんだけど……」

陽介「目覚めたらもうテレビの中にいて、よくわかんねぇうちにクマが大会の説明とかなんとか言い出しやがってさ」

クマ「クマはそんな事しとらんクマ!」

クマ「クマは昨日センセイと別れた後にテレビの中に一度戻ったんだクマ」

クマ「そしたら、中の様子がなんだかヘンだったんで、ちょっと調べてたんだクマよ」

クマ「で、ヨースケたちが言うようにクマそっくりの声が突然聞こえてきたもんだから、そらもービックリクマ!」

陽介「とりあえず先に進んでみたはいいものの、出会った青い姉ちゃんにいきなり一発お見舞いされてさっきまでまたおネンネ……って感じだな」

雪子「……」

千枝「どしたの雪子?」

雪子「……うん。あのね」

雪子「私も記憶が朧気でよくわからないんだけど……」

雪子「この感じ、なんか身に覚えがあるな……って」

完二「そうなんすよね。俺もさっきからそれが引っ掛かってて……」

直斗「実は僕もです」

千枝「え? ……私はそんな事ないけどな」

陽介「俺も里中と同じく」

直斗「っ……そうだ!」

直斗「誰かにテレビに落とされたっていう、あの感じですよ……!」

完二「あっ」

雪子「そう! それ!」

鳴上「誰かに落とされた……? 故意に、って事か?」

千枝「うそ……マジで?」

陽介「悠がテレビの中にいるのもそれでか?」

鳴上「いや。俺はジュネスのテレビから以前と同じように」

陽介「え。テレビに入れなかったんじゃ……」

鳴上「その筈だったんだけど何故か、な」

鳴上「それよりも今は放送室へ急ごう。りせがそこで誰かに捕まっているみたいなんだ」

千枝「りせちゃんが!?」

雪子「その誰かっていうのは……?」

鳴上「わからない。ただ、クマじゃない変なクマがいるらしいって事だけしか……」

クマ「ムキーッ! そいつのせいでクマはとんだ濡れ衣を着せられたクマね!」

完二「俺らを勝手に放り込んだ犯人かもしんねぇな。とっちめてやんぜ!」

直斗「……ところで先輩」

直斗「さっきから先輩と一緒にいるそちらの方はいったい……?」

鳴上「そうだ。紹介しないとな」

アイギス「みなさん、初めまして。私はアイギスと言います」

アイギス「いつも鳴上さんにお世話になっています」

雪子「え?」

千枝「お世話……?」

鳴上「ええと、つまり……」


>みんなにアイギスの事と、何故彼女がここにいるのか事情を説明した。


直斗「なるほど。大体察しはつきました」

直斗「そのラビリスさんという方も誰かにテレビの中に落とされてしまったのかもしれませんね……」

直斗「こんな場所が出来てしまった原因はそのせいなんだと思います」

直斗「以前僕達がここに落とされた時のように……」

鳴上「ラビリスの心から産み出たって事か?」

陽介「でも、なんで俺たちの学校で格闘ショーなんて事に?」

アイギス「……」

アイギス「先を急ぎましょう」

アイギス「なんだか、嫌な予感がします」

鳴上「アイギスさん!」


>アイギスは先へと走り出していってしまった。


鳴上「俺たちも続こう!」


>……


放送室


>先頭にいたアイギスが勢いよく放送室の扉を開けた。

>中をよく見渡してみると、そこには四人の人物の姿が確認出来る。


鳴上「りせ!」

りせ「悠先輩! みんなも……!」

鳴上「怪我はないか?」

りせ「うん。美鶴さんと真田さんも来てくれたから」


>りせの近くには美鶴と見知らぬ男が一人いた。

>真田というのはその人物の事であり、おそらくアイギスの言っていた助っ人というのが彼なのだろう。


美鶴「鳴上もここに来ていたのか! 無事だったか?」

鳴上「はい」

鳴上「話は聞いています。ラビリスの行方の方は?」

美鶴「それがな……」


>美鶴は放送室の一番奥にいる最後の人物に視線を移す。

>そこには八十神高等学校の夏服を着た少女が一人いた。

>だが服から露出している彼女の体をよく見てみると、人間のそれとは違う事がはっきりと解る。


アイギス「姉さん……!?」

鳴上「あれがラビリス?」

鳴上「良かった。見つかったんだな」

真田「だが、さっきからどうにも様子がおかしくてな」

美鶴「こちらがいくら話しかけても取り合ってくれないんだ」


>少女――ラビリスは、頭を抱えながらさっきから何かぶつぶつと呟いている。


ラビリス「……嘘や。嘘や、こんな事……」

アイギス「姉さん!」

ラビリス「!」

アイギス「探しました、姉さん」

アイギス「こんな場所に迷い込んでしまって混乱しているんですね」

アイギス「でも、もう大丈夫です。私達と一緒に帰りましょう」

ラビリス「……」

ラビリス「……嫌や」

アイギス「え……?」

ラビリス「嫌や。うちは帰らん!」


>ラビリスは持っていた大きな斧を構えて睨んでいる。


ラビリス「思い出したなかった、こんな事……」

アイギス「姉さん!?」

ラビリス「どうしても連れてく言うなら、相手したる!」


>ラビリスは問答無用でそのまま突撃してきた。


美鶴「落ち着けラビリス!」

ラビリス「くっ……」


>しかし、ラビリスが何かに動揺していた事とこの場に大勢が集まっていた事もあって、彼女はすぐに取り押さえられてしまった。


アイギス「……大丈夫ですか?」

ラビリス「……」

真田「おい、美鶴。早くここから連れ出した方がいいんじゃないか?」

美鶴「そうだな。詳しい話を聞くのはそれからでもいいだろう」



陽介「なんか割とあっさり片付いたみたいだな」

鳴上「そうだな」

クマ「一件落着クマね!」

千枝「私たち、何もしてないけどね」

完二「結局どういう事だったんだ?」

雪子「それをこれから帰って聞くんだって」

直斗「そういえば、変なクマくんというのは……?」

りせ「ああ、あのクマね。みんなが来る直前に何処かに消えちゃっ……」



りせ「……え?」

鳴上「!?」


>……気付かぬ合間にそれはラビリスの背後に佇んでいた。


鳴上「クマがふたり……!?」

クマ「ク、クマー!?」

陽介「つーコトは、あのコスプレクマがりせの言ってた?」

りせ「そう! あいつだよ!」

真田「どういう事だ!?」

美鶴「これは……!」

?「ふふふ……」


>クマではないクマは不気味に目を光らせながらラビリスを見ていた。


ラビリス「なっ、なんやの!?」


>ラビリスが不気味がっていると、そのクマは姿を変えてみせる。

>そしてそこにいたのは、今度はラビリスに瓜二つの人物だった。


?「随分なお言葉じゃない? せっかくアンタの望みを叶えてあげようとしてたのに」

ラビリス「ウチの望み……?」

鳴上「まさかあれは……」

鳴上「ラビリスのシャドウ!?」

シャドウラビリス「ふふ、ふふふ……」

シャドウラビリス「せっかく忘れてたのに思い出しちゃったんだものね?」

シャドウラビリス「自分が人間じゃなくて、ただの機械……殺戮兵器だってコト」

ラビリス「っ……」

シャドウラビリス「いいわよね、人間は。毎日こんな場所に通っておもしろおかしく平和に暮らしてる」

シャドウラビリス「私はこんなに苦しんでるっていうのに」


シャドウラビリス「だから学校なんて場所に通っている連中に、幻を見せて殴り合わせて」

シャドウラビリス「そうすれば理解してくれるんじゃないかと思った。……ううん、わからせてやりたかったのよ!」

ラビリス「何、言って……」

鳴上「どういう事なんだ……?」

アイギス「……」

シャドウラビリス「人間は勝手よね」

シャドウラビリス「自分たちの都合がいいようにこんな私を造ったくせに、実験するだけ実験して戦わせるだけ戦わせて……」

シャドウラビリス「それなのに、やるだけやってどうにも出来なくなったらそのまま放置? 何よそれ!」


シャドウラビリス「それなのに、ちょっとだけでもいいから普通の人間のように学校に行ってみたいって思ってみれば、今度は連れ戻そうとする……ほんとに勝手!」

シャドウラビリス「人間なんて大っ嫌い!」

シャドウラビリス「……そうよね? 私?」

ラビリス「ち、違う……!」

シャドウラビリス「もういいわ」

シャドウラビリス「人間なんて、もうどうだっていい」

シャドウラビリス「ここにいる連中、まとめて皆殺しにしてやる!」

シャドウラビリス「昔のアンタみたいにね!」

ラビリス「違う! お、お前なんかっ……」


鳴上「ダメだラビリス! それ以上言ったら……!」

ラビリス「お前なんか、ウチやない!!」

シャドウラビリス「……ふ、」

シャドウラビリス「ふふふ……ハハ、アハハハハハッ!!」

シャドウラビリス「力が……力が漲ってくる!!」


>放送室の中が変貌し、ラビリスのシャドウの背後にペルソナが現れる……



シャドウラビリス「我は影、真なる我……」

シャドウラビリス「アンタも一緒に地獄に送ってやる!」

ラビリス「きゃああああっ!」

アイギス「姉さん!」

鳴上「くっ……イザナギ!」


>ラビリスに攻撃しようとするラビリスのシャドウのペルソナをイザナギが食い止める。


鳴上「下がってろラビリス!」

アイギス「こっちへ!」


>アイギスに連れられてラビリスは安全な場所へと避難をする。


美鶴「私たちも鳴上に加勢するぞ!」

真田「やっと出番がまわってきたという訳だな」

陽介「俺たちの事も忘れて貰っちゃ困るぜ!」

クマ「クマをかたった罪は重いクマ! 制裁しちゃるクマ!」

完二「観念しやがれ!」

千枝「これだけ数がいればラクショーだよね!」

雪子「うん。向こうは一体だけだもの」

直斗「早いとこケリをつけてしまいましょう」

りせ「みんな油断しないで!」


>みんなのペルソナがラビリスのシャドウを抑えようと一斉に向かっていく。

>しかし……


>一ヶ所に集まったペルソナたちはラビリスのシャドウのペルソナに一気に飲み込まれ、消えたかと思えば別の場所へと吐き出されていた。


りせ「何この動き……!?」

りせ「気をつけて!」


>ラビリスのシャドウが操るペルソナは、地面に溶けるようにして姿を消してしまう。


鳴上(これじゃあ何処からくるかわからない……!)



ラビリス「……」

ラビリス「……右や!」

鳴上「!」


>ラビリスの言葉を聞いて右に注意を向ける。

>その通りにラビリスのシャドウのペルソナが鳴上に攻撃を仕掛けてきたのを素早く反応してかわす事が出来た。


シャドウラビリス「ちっ……」

シャドウラビリス「なんなのよアンタ!」

ラビリス「お前の攻撃くらいわかるに決まっとるやろ?」

ラビリス「……お前がウチやっていうんならな」

シャドウラビリス「!」

ラビリス「このっ……!」

シャドウラビリス「っ!? なっ、離せ……!」


>避難していた筈のラビリスが己のシャドウに組みかかり、動きを押さえつけようとしている。

ラビリス「今や!」

鳴上「!」


鳴上「……イザナギ!」


>不意をつかれ咄嗟の判断が出来なかったのか、シャドウのペルソナは鳴上の一撃が決まった事で消失していく。

>……


シャドウラビリス「……」


>ペルソナが消えたからか、ラビリスのシャドウもおとなしくなった。

>しかし、ラビリスに向ける眼差しは、ここで姿を現した時と変わっていない……


ラビリス「……」

ラビリス「こんなん認めたくない」

ラビリス「うちが人間でない事も、心の奥底でこんな風に思っていたなんて事も……」

鳴上「ラビリス……」

ラビリス「でもだからってこんなトコでワガママやってたらあかんよね」

ラビリス「これからは自分にきちんと向き合わんと」

ラビリス「そのためにウチは目覚めたのかもしれへんね」

ラビリス「だからアンタはウチのところに帰っておいで」

ラビリス「ウチもぐずってないで帰るから」

ラビリス「一緒に行こう?」

ラビリス「アンタはウチなんやから」

シャドウラビリス「……」


>ラビリスのシャドウの眼差しが優しいものに変わり微笑みを見せた。

>そして、ラビリスとひとつになっていく……


ラビリス「う……」

アイギス「姉さん!」


>倒れ込んだラビリスをアイギスが受け止める。


美鶴「これで本当に一件落着……のようだな」

ラビリス「みんなには悪いことしてしもうたな……」

鳴上「気にしなくていい。怪我もしてないし、ラビリスも無事だったんだからな」

鳴上(考えてみたら、エリザベスにくらったダメージの方がでかいんじゃないか……?)

ラビリス「……」


>ラビリスは鳴上の事をじっと見つめている。


鳴上「? どうした」

ラビリス「……なあ、アンタ」

ラビリス「ウチとどっかで会った事ある?」

鳴上「え?」

ラビリス「……いや、気のせいやな」

ラビリス「そんな事あらへんよな」

美鶴「用も済んだ事だ。引き上げよう」

美鶴「君も詳しい話は落ち着いたらでいいから」

ラビリス「……うん」


>ラビリスを連れてテレビの世界から出る事にした。

>……


陽介「行っちまったな。ラビリスって子」

鳴上「結局どうしてこんな事になったのかは聞けなかったしな」

完二「でも、大事にならなくて良かったっす」

クマ「終わりよければ全てよしクマ!」

陽介「寮に戻れば後で美鶴さんって人に事情聞けるだろ? どうなったのか教えてくれよな」

鳴上「ああ、わかった」



雪子「……」

雪子「りせちゃん。さっきの女の人が、例の生身の?」

りせ「そ。生身の」

千枝「すっごい美人だったね……」

直斗「大人の女性って感じでしたね」

雪子「あんな人が今、鳴上くんの近くにいるんだ……」

千枝・雪子・りせ・直斗「……」


>……


>P-1 Grand Prixは誰の犠牲も出さずに静かに幕を閉じた。

>稲羽市にまた平和な日常が戻ったのだ。

>しかし、この場所に長くいる事は出来ない。

>再び離れる時が無情にも訪れる……



八十稲羽駅


陽介「なんかさ、遊び足んねーよな」

千枝「あと一週間くらいGWでもいいよねー」

雪子「また寂しくなっちゃうね……」

りせ「グスッ……私、やっぱり先輩のいる寮に行っちゃおうかな」

完二「もうパターンになってんな、これ」

クマ「今度センセイの顔がみれる日は何時になるクマ?」


鳴上「ここに来るとしたら……やっぱり夏休みかな」

菜々子「菜々子、今度こそスイカ割りしたい!」

陽介「みんなで海行きたいな」

直斗「海……ですか。泳がないのであれば……」

完二(直斗の水着姿はムリか……?)

堂島「おい、そろそろ時間じゃないのか?」

鳴上「あ、はい」

鳴上「じゃあ、みんな。……」

鳴上「またな」


>名残惜しい気持ちを抱えたまま電車に乗り込んだ。

>今度みんなと会える時までには、向こうの事件は片付いているだろうか……

>……


【夜】


学生寮


>やっとの事で、港区まで戻ってこれた。


メティス「鳴上さん、おかえりなさい」

天田「おかえりなさい」

コロマル「ワン!」

鳴上「ただいま」

鳴上(帰ってきたのか。この場所に)

アイギス「おかえりなさいです」

美鶴「おかえり」

美鶴「向こうではすまなかったな。結局貴重な休日を潰してしまうような事になって」

鳴上「いえ。それはいいんですけど」

鳴上「……」

鳴上「何故、ラビリスがここに?」


ラビリス「なんや、いたらアカンの?」

鳴上「そういう訳じゃないけど。当たり前のようにいるからさ……ちょっと驚いた」


>ラビリスはラウンジのソファに座って寛いでいる。


美鶴「彼女は今日からこの寮に住む事になった」

アイギス「つまり、特別課外活動部の新メンバーという事であります」

ラビリス「ひとつよろしく頼むわ!」

鳴上「えっ」

ラビリス「だーかーらー! なんでそんな顔するん?」

鳴上「急で驚く事が多すぎて……」

鳴上「でも嫌とかいう訳じゃなくて、まあその……」

鳴上「よろしくな、ラビリス」


ラビリス「ん、よろしく!」


>新しくラビリスがメンバーに加わった。



>『0 愚者 特別課外活動部』のランクが5になった



ラビリス「あ、それとな」

ラビリス「ウチほんまに学校に行けるようになったんや!」

鳴上「え、そうなのか?」

美鶴「彼女の強い希望でな。明日から君やメティスと同じく月光館学園高等科の三年に通う事になった」

鳴上(それも急な話だな。でも……)

鳴上「良かったな、ラビリス。学校でもよろしく」

ラビリス「よろしくな!」


>ラビリスは子供のようにはしゃいでいる。


メティス「……」

鳴上「そうだ、忘れないうちにみんなにお土産を」


>買ってきたお土産を配った。


美鶴「気を使わせてしまったようで済まないな」

アイギス「ありがとうございます」

鳴上「コロマルには総菜大学で買ってきた食べ物があるからな」

コロマル「ワン!」

鳴上(それと天田にはこれも)ヒソヒソ

天田「?」

鳴上(向こうで作ってきた……俺の料理だ)ヒソヒソ

天田「!」

鳴上(参考になるかはわからないけど。後で感想よろしく)ヒソヒソ

天田(ありがとうございます!)ヒソヒソ


美鶴「さ、明日からはまた学校だ」

美鶴「みんなもう休むといい。特に鳴上とラビリスは疲れているだろうからな」

美鶴「するべき話はまだあるが……また後日にしよう」

ラビリス「ん……」

鳴上「はい、そうさせて貰います」


>連休があっという間に終わってしまった。

>一波乱あったが、とても充実した旅行だった。

>騒がしくも楽しく平和な日々が、このままここでも続けばいいのに……そう思った。





>だから鳴上はこの直後、まさか文字通りに『悪夢』と戦う事になるなどとは考えもしなかったのだった……




港区の噂話

666:名無しのSummoer 2012/05/06(日)

何年か前にも流行ったんだけど覚えてんのいるかな?

【夢の中で落ちてそのまま目が覚めないと死ぬ】ってやつ

最近また見るやつ増えてるらしいな

俺の知り合いにも見たってのがいるし

この間、謎の衰弱死体出たじゃん?

一晩で変わり果てたって

あれもその犠牲者だったのかもよ

もしかしたら、次はこれを見てるお前の番だったりしてな

まあ、あれだ

みんな、いい夢みろよ







夢とは、いくらそれを信じたいと思っても消えてしまうものの事である。―トーマス・マトン





これで終わります。

また次回。

乙。
ついにラビリス、アイギス、メティスの三姉妹?が揃ったか。
メカっ娘好きーにはたまらんな。
もしや>>1も…!?

>……


鳴上「……ん」

鳴上「うん?」


>気付くと見知らぬ場所に立っていた。

>周りに人の気配はない。

>あるのは石で出来た階段と壁だけだ。


鳴上「なんだここは」

鳴上「……?」


>足下から僅かに振動を感じる。

>それはその一回だけで終わる事はなく、一定の間隔を置いて二回目、三回目と続いている。

>そして、時間が経つに連れ、体に覚える振動とその音は強く大きくなっていた。

>立っている階段からそっと下の方を覗き込んでみる事にした。


鳴上「……え」




鳴上「崩れて、る……!?


>下の方にある階段や足場が一段ずつ闇に落下していくというとんでもない光景が目に飛び込んできた。

>このままだと、じきに今いるこの場所も崩れ落ちていってしまう……!


鳴上「くっ……上へ行くしかないのか!?」

>急いで階段を昇る。

>何故このような状況になっているか理解出来ないまま、安全な場所を探そうとする。

>だが、上へ行くに連れて狭い足場が増え穴も多くなり、ついには上へ行く為の階段も途切れてしまう。

>完全に行き場を失ってしまった……

>崩れていくのが止まる様子は……ない。


鳴上「くそっ……」


>乗っていた足場が鳴上を連れて完全に崩れ落ちていくまで時間はかからなかった。


鳴上「う、」





鳴上「うわあああああああああああああああ!!」


05/07(月) 曇り 自室



【朝】


鳴上「……」

鳴上「……痛い」


>枕を抱えながら頭からベッドの下に落ちたらしい……

>その衝撃で目覚めた。


鳴上「エリザベスに殴られたとこもまだ痛いっていうのに……頭がバカになったらどうするんだ」


>痛む場所を手で押さえながら体を起こした。


コンコンコン


アイギス「鳴上さん、どうかしましたか!? 凄い声と音が聞こえましたが……」

鳴上「あ、いえ、大丈夫です」

アイギス「そうですか?」


>アイギスに余計な心配をさせてしまったようだ……


鳴上(悲鳴まであげてたのか……)

鳴上(変な夢を見ていたような気もするけど……よく覚えてない)

鳴上(なんだか目覚めが悪いな)

アイギス「あの、鳴上さん」

アイギス「学校に行く支度が出来たら一階に来ていただいていいですか?」

鳴上「? わかりました」


>気持ちを切りかえ、急いで着替える事にした。

>……


学生寮 ラウンジ


メティス「おはようございます、鳴上さん」

ラビリス「おはよー!」


>一階にはアイギスに加え、メティスとラビリスが揃っていた。


鳴上「おはよう。……お」

鳴上「なかなか様になってるな、その格好」

ラビリス「ホント? 嬉しいわー」


>ラビリスは昨日まで着ていた八十神高校の制服ではなく、月光館学園の制服を着ている。


アイギス「昨日言っていた通り、今日から姉さんも学校に通う事になります」

アイギス「鳴上さんにはご迷惑をおかけする事になるかもしれませんが、どうかよろしくお願いします」

ラビリス「心配性やなー、アイギスは」

ラビリス「大丈夫やて! もう勝手に暴走したりせんし」

ラビリス「悠の言う事に従っとけばええんよね?」

アイギス「はい。あと、わからない事も鳴上さんにすぐ聞くようにして下さい」

ラビリス「おっけー」


>ラビリスはそわそわしている。

>よほど学校に行くのが楽しみなのだろう。


アイギス「ふふ。……あ、姉さん」

ラビリス「ん、なんや?」

アイギス「リボンが曲がっていますよ。……はい、これで大丈夫です」

ラビリス「ありがとな」

アイギス「いいえ、どういたしまして」

メティス「……」

メティス「準備が出来たのなら行きましょう。転入初日なのですから、早めに出た方が良いかと思います」

鳴上「そうだな。じゃあ、行こうか」


>三人揃って寮を出て学校に向かった。


>……



月光館学園 3-A 教室


淳「今日はみんなに新しく転入生を紹介します」

ラビリス「ラビリスや。よろしくな!」


>ラビリスは鳴上たちと同じクラスになった。

>不都合がないようにと、美鶴が根回ししてくれたのかもしれない。

>新しいクラスメイトの存在に、教室の中が一時騒然とした。


淳「ラビリスさんは空いている席へどうぞ」

ラビリス「はーい」

淳「えーと。それから……」

淳「今日から進路指導が始まる為、しばらく午前授業になります」

淳「連絡は以上です。続けて出席をとります」


>……


【放課後】


>午前中で授業が終わった。

>今日はこれから進路指導を控えている。


鳴上「メティス」

メティス「……」

鳴上「おい、メティス!」

メティス「!」

メティス「あ、はい。なんでしょう」

鳴上「えっと。……」

鳴上「どうかしたのか?」

メティス「……どうもしませんが?」

鳴上(気のせいか?)

鳴上(昨日からやたらと口数が少ないような気がするんだけど……)

メティス「……」

メティス「鳴上さんは今日が進路指導の日でしたよね?」

メティス「私は違いますので、一足先に失礼します」


鳴上「あ、ちょっと待った」

鳴上「ラビリスも一緒に連れて帰ってくれ」

鳴上「メティスの言う通り、俺はまだ帰れないからさ」

鳴上「でも、まだラビリス一人で行動させられないし」

メティス「……」

メティス「わかりました」

鳴上「ありがとう」

ラビリス「ん? 悠はまだ帰らんの?」

ラビリス「ウチ待ってよか?」

鳴上「いや、時間かかりそうだから」

鳴上「メティスと一緒に先に寮に戻っていてくれ」

ラビリス「そっか。じゃ、また後でなー」


>ラビリスは手を振って教室から出ていった。


メティス「……。それでは。ご武運を」

鳴上(ご武運?)


>後に続いてメティスも帰っていった。


>……


進路指導室


淳「さ、そこに座って」

鳴上「はい。失礼します」


>橿原と向かい合わせで座った。


淳「えーと、それじゃあ早速だけど……」

淳「鳴上くんはもう進路は決めているのかな?」

鳴上「……」

鳴上「……進学を、考えています」

淳「……」

淳「そっか」

淳「じゃあ、具体的にどの学校に行きたいかっていうのは決まってる?」

淳「大学じゃなくて専門学校っていう道もある訳だし」

鳴上「それは、まだ……」

淳「なるほど」

淳「……ねえ、鳴上くん」

淳「君は本当に進学したいって思ってるのかな?」


鳴上「え?」

淳「僕の目にはね、君はこれからの事をまだ迷っているように映っているんだけど。違う?」

淳「進学するにしても、ただなんとなく……って思っているのなら、あまりおすすめは出来ないかな」

淳「いくら僕が君の担任だからといって、君自身が決めた事に細かく口出しする権利がある訳ではないけど……」

淳「でも、君の生涯に関わる分岐点な事は確かだから。安易に決めてしまったせいで後悔はして欲しくないんだ」

鳴上「……」

鳴上「……実は、先生の言う通りです」

鳴上「俺、まだ自分がどうしたいのか、よく解ってなくて」


鳴上「とりあえず進学しておけば、そこで何か見つかるのかもしれないって、そう考えてました」

淳「うん。それも立派なひとつの考えだね」

淳「鳴上くんはさ、将来の夢ってもってる?」

鳴上「夢?」

淳「夢があるのなら、その為に行くべき場所ややるべき事なんかをきちんと考えられるだろ?」


>自分の夢……

>考えてはみたが、すぐに思い浮かぶものは無かった……


淳「……そっか」

淳「でも悩むってのも大事なことだよ」

淳「悩んで悩んで悩み抜いて。答えを探せばいい」

淳「その時間は有限ではあるけれど、そう出来るくらいにはまだあるから」

淳「僕は君の話を聞いて、どうすればいいのか一緒に考えて悩むよ」

鳴上「……はい」


>橿原に進路に対する悩みを打ち明けた。



>『Ⅹ 運命 橿原淳』のランクが3になった



鳴上「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」

淳「ん?」

鳴上「先生の夢ってなんだったんですか? 最初から学校の先生?」

淳「んー……そうだね」

淳「その話は長くなりそうだから、時間がある時にゆっくり聞かせてあげるよ」

淳「時間もおしちゃってるからね」

鳴上「あっ、すみません……俺のぐだぐだな話のせいで」

淳「君のせいじゃないから大丈夫」

淳「……僕がもっとしっかり出来てればいいだけの話だから」

淳「じゃあ、鳴上くんとの話は今日はここまでにしておこうか」

淳「次の人を呼んできてもらっていいかな?」

鳴上「はい。失礼します」

淳「帰りは気をつけてね」


>進路指導室を出て、次の生徒に声をかけてから学校を出た。

>……

辰巳ポートアイランド駅前



「鳴上」


>誰かに声をかけられたようだ。

>足を止めて辺りを見回してみると周防の姿が目に入った。


鳴上「こんにちは。お疲れ様です。こんなところで奇遇ですね」

達哉「お前の方こそこんなところでどうした? まだこの時間は学校だろう」

鳴上「今日からしばらく進路指導があるんで早帰りなんです」

達哉「進路指導……そうか、お前三年だったな」

達哉「……」

達哉「……ふっ」

鳴上「?」

達哉「お前の進路指導の番、今日だっただろ?」

鳴上「えっ……はい。よく解りましたね」

達哉「そんな顔、してるからな」

達哉「しかもこれはまだ進むべき道を悩んでるって風だ」

鳴上「……」

鳴上「凄いな。担任の先生もだったんですけど、なんで喋ってないのに解るんだろう」

鳴上「そんな顔に出てるんですか……?」

達哉「なんとなく思っただけだ。……俺もこの頃は似たような感じだったからな」

鳴上「周防さんも? 意外だな」

達哉「俺の場合は、担任と向き合って話すことすら嫌で、しばらく進路指導から逃げ回ってたりもしたな」

達哉「結局、逃げきれなかったんだけどな」


達哉「お前はちゃんと先生と話したか?」

鳴上「はい。まだどうしたらいいのか解らないって言ったら、悩むだけ悩めばいい、自分も一緒に悩むから……って言ってくれました」

達哉「へえ、いい先生だな」

鳴上「周防さんはどうして警察に?」

達哉「親父や兄貴がそうだったからってのが一番のきっかけだろうか」

鳴上「尊敬してるんですね。お父さんやお兄さんの事」

達哉「……これでも昔は折り合いが悪かったりもしてたんだがな」

鳴上「え?」

達哉「人生、何が起こるか解らないって事だ」


達哉「今は色々悩んだりしていても、突然あっさりと道が拓けたりするかもしれない……お前もな」

鳴上「……」

鳴上「でも……行こうとした道に石がある事に気付かなくて、躓いてそのまま起きあがれなくなる事だってあるかもしれない」

達哉「……悩み過ぎも考え物だな」

達哉「見えない障害物を気にして立ち止まるより、転んでもいいから走る方が俺は好きだ」

達哉「お前の場合、それで転んだりしても起きあがれなくなるなんて事はないだろ?」

達哉「少なくとも先生が手を差し伸べて引っ張ってくれる。さっきの先生の言葉は、そう言う話じゃないのか?」

達哉「そこで動かなくなるか、別の方向へ行くか、前を行き続けるか……その選択肢は結局お前が決める事ではあるが」


鳴上「……」

達哉「……余計な事を言い過ぎたか」

鳴上「いえ。……ありがとうございます」

鳴上「色々な人に話を聞いてもらえて嬉しかったです」

達哉「そうか」


>周防と話をして、少しすっきりした気がする……



>『ⅩⅨ 太陽 周防達哉』のランクが4になった



pipipi……


達哉「ん?」

達哉「もしもし。……」

達哉「……了解」

達哉「すまない。俺はもう行く」

鳴上「仕事ですか?」

達哉「そんなところだ。……っと、そうだ」

達哉「大事なことを言い忘れていたな」

達哉「この前の事件、本当にお疲れだった」

達哉「俺との約束を守ってくれた事……心から感謝している」

達哉「ありがとう」

鳴上「……はい」

達哉「じゃあな」


>周防の背中を見送ってから、寮へと帰った。


学生寮 ラウンジ


アイギス「おかえりなさいです」


>ソファに座るアイギスから声をかけられた。

>どうやらここにいるのは彼女だけのようだ。


鳴上「ただいまです」

鳴上「メティスとラビリスはちゃんと帰ってこれましたか?」

アイギス「はい。それから姉さんは美鶴さんと一緒に一度メンテナンスをしに出かけました」

アイギス「メティスは自分の部屋に戻っています」

鳴上「……」

鳴上「あの、アイギスさん」

鳴上「連休中にメティスに何かありましたか?」


アイギス「……え?」

鳴上「昨日からちょっと様子が変だなって思ったんですけど……」

鳴上「でも、本人はどうもしないって言ってるし」

鳴上「ただの俺の勘違いでしょうか?」

アイギス「……」

アイギス「……そうですね、何もなかったのは確かです」

アイギス「たぶん、だからだと思います」

鳴上「どういうことですか?」

アイギス「私、鳴上さんが出かけた後に、メティスに私たちも遊びましょうかって言ったんです」

アイギス「でもすぐに姉さんの事があったから結局あの子に構ってあげられなくて」

アイギス「それで、……拗ねてるんだと思います」

アイギス「本人にその自覚は無いのかもしれませんけれど」


鳴上「あー……そうか」

鳴上「ラビリスに対してなんだかちょっとよそよそしい感じがしてた気がするのも、そのせいか」

アイギス「……そうですね。あまりあの子の方から姉さんと積極的に話している様子はないみたいです」

鳴上(それも自覚無しかな……)

アイギス「……」

アイギス「せっかく、姉妹がこうして揃ったのに……」


>アイギスは顔を俯かせている。


アイギス「でも、約束を破ってしまった私の責任ですね」

アイギス「ちゃんとあの子に謝らなきゃ」

鳴上「まだ大丈夫ですよ」

アイギス「え?」


鳴上「休みなんて一週間もすればすぐにまたやってきます」

鳴上「今度の休みに遊べばいいんです」

鳴上「今はラビリスもいるんだから、姉妹みんなで一緒に」

鳴上「そうすればきっと、メティスも機嫌をなおしてくれるし、ラビリスとも仲良くしてくれますよ」

アイギス「……」

アイギス「……そう、ですね」

アイギス「そうですよね!」

アイギス「ありがとうございます、鳴上さん」

アイギス「姉さんの事も、メティスの事も。私の事まで親身になってくれて……」

アイギス「貴方は、とても不思議な人です」

アイギス「貴方は、……」

鳴上「?」


>アイギスは言い掛けた言葉を飲み込んでしまった。

>しかし、さっきの悲しそうな表情は消え、今は笑みを浮かべている。

>アイギスとの仲が深まったような気がした。



>『Ⅶ 戦車 アイギス』のランクが2になった



アイギス「私、ちょっとあの子と話をしてきますね」


>アイギスは、メティスの部屋の方へ行ってしまった。

>……


【夜】


学生寮 ラウンジ


>美鶴がラビリスを連れて帰ってきた。

>ここでようやく、ラビリスからP-1 Grand Prix事件の事情を尋ねる事になった。

>しかし……


鳴上「なんであそこにいたのかわからない?」

ラビリス「うん。ウチにもサッパリわからん……」

ラビリス「起動したての頃は自分の記憶が曖昧で、気の向くままに進んでたらあの稲羽市ってところにいつの間にかいたと思うんやけど」

ラビリス「でも、テレビの中に入ってた理由がな……」

ラビリス「ただ……突然、誰かに押し込まれたって感じだけ覚えてて」


美鶴「それが誰かはわからない……と?」

ラビリス「うん」

アイギス「その人物の顔を見たりはしていない訳ですね?」

ラビリス「……ん」


>ラビリスは黙って考え込んでしまった。


ラビリス「なあ、悠」

鳴上「ん?」

ラビリス「……」

ラビリス「……ううん。やっぱりそんな筈あらへん」

ラビリス「きっと起きたばっかで、寝ぼけてたウチの思い違いや」

ラビリス「それだけは、絶対にありえへん……」

鳴上「何か心当たりがあるのか?」

ラビリス「……」

ラビリス「ないよ。心当たりなんて」

ラビリス「今のは、忘れて。な?」


美鶴「……」

美鶴「結局真犯人はわからずか」

アイギス「目的もまったく思い浮かびませんね」

アイギス「姉さんや稲羽市のみなさんをテレビの中に放り込むような真似をした理由……」

アイギス「そんな事をして得をする人物なんているんでしょうか?」

鳴上「……」

ラビリス「すまんな。アテにならなくて……」

美鶴「いや、十分だ。ありがとう」

美鶴「でも、何か少しでも思い出したら、すぐに知らせて欲しい」

ラビリス「ん、わかったわ」


>みんなをテレビに入れた人物はいったい何がしたかったのだろう……

>もしかしたら、今後もその人物がラビリスや仲間を襲ってくる事もあるのかもしれない。

>その可能性を視野に入れつつも、今日のところはこれ以上話が進展する事はなさそうなので、解散し部屋に戻る事になった。

>……


【深夜】


>外はいつの間にか雨が降り出しているようだ。



>陽介に電話でラビリスにあった事について説明をした。


陽介『俺たちをテレビに入れた犯人は未だ不明、か……もしかしたら、そいつってまだこっちに潜んでるかもって事だよな』

鳴上「そうだ。だから、くれぐれも注意してくれ」

陽介『オッケー。何かあったら知らせるな』

鳴上「ああ。頼む」

陽介『しかしなあ……俺らが寝てる間に怪しまれずにテレビの中へ落とせる人間だろ?』

陽介『そんなやつ本当にいんのか? 忍者かなにかかっつーの』

鳴上「稲羽市に潜む現代の忍者……」

鳴上「ないな」

陽介『ないよな』


>部屋の時計が不意に目に入った。

>もうすぐ、時刻が明日に変わる頃のようだ。

>三つの針が、12で全て合わさる……



23:59→00:00



>……


――ジ



ジジッ――ジ――ッ――



鳴上「!?」

陽介『ん? どうした』


>点いていない筈のテレビの画面が揺れている……


鳴上「マヨナカテレビ!?」

陽介『はぁ!?』

陽介『ちょっ……マジで? 俺の部屋のテレビはなんともねーけど……』

陽介『つーか、こっちは雨すら降ってねーし!』

鳴上「……」


>息を飲んで画面を凝視した……


>画面には、音楽と共にアニメーションが流れている。

>それを見て瞬時に思いついたのは、劇場用の作品をテレビで放映する時の番組のOP……というようなものだった。

>そして、タイトルが画面に表示された。


鳴上「ゴールデン遊戯劇場……?」


>タイトルが遠のいていくと、そのタイトルがテレビの中のテレビに表示されていたのだという事が解った。

>そのテレビはどうやら酒場のような場所に置かれているようだが……

>次に聞こえてきたのは女性の声だった。


?「夜空が満天の輝きに満ちるころ、素敵な物語を貴方と」



鳴上「……いや。星ひとつ見えてないけど……」


>酒場の奥からその声の主であろう女性が歩いてくる。

>胸元と体のラインを強調させるようにピッタリとした黒いパンツスーツのような服装と、その刺激的な服装がどうでもよくなってしまうほどのインパクトがある赤い大きなアフロヘアーを携えた女性だった。

>女性はくるりと体を回転させ、椅子に座るとこちらを見て微笑む。


?「皆さん、こんばんわ」

?「ゴールデンプレイシアターへようこそ」

?「案内役は、私……ミッドナイト・ヴィーナスこと、石田☆ルウです」



鳴上「……誰?」


ルウ「ところで、皆さんはこんな“怖い噂”をご存知?」

ルウ「夜、“落ちる夢”を見た時、すぐに眠りから目覚めなければ……」

ルウ「そのまま実際に死んでしまう」



鳴上(!?)

鳴上(落ちる……夢?)

鳴上(死ぬ……?)


>何かが記憶に引っかかっている気がする……

>しかし、それがなんなのかは思い出す事が出来ない。



ルウ「今宵からご紹介するこの作品は、異色の“恋愛ホラー”」

ルウ「ある“呪い”にとり憑かれた男の恐怖の日々を体験して頂きます」

ルウ「物語の主人公は――」





ルウ「テレビの前の貴方自身!」


鳴上「は……!?」



ルウ「貴方はとても真面目で優しい人だけれど……ある悪夢を見始めるようになってしまうんです」

ルウ「そして襲いくる甘い誘惑の嵐……」

ルウ「果たして貴方、人生の“山場”を越えられるかしら?」

ルウ「全ての結末は、テレビの前の貴方次第」

ルウ「――さあ、お待たせしました! いよいよ始まります!」

ルウ「それでは皆さん、また後でお会いしましょうね!」

ルウ「登らなければ生き残れない……この地獄から帰ってくる事が出来たのならば」


>画面の中で手を振るミッドナイト・ヴィーナスがだんだん朧気になっていく……





――ブツンッ――


>意識が遠のいていく……


陽介『悠? おい、悠! 返事を……』


>陽介の声も小さくなっていく。

>なんだかとても眠い……



>……





扉をくぐると、そこは石の階段と壁に囲まれた墓場だった――


NEXT→

―stage 1 Underground Cemetery


地下墓地―



>>736
言われるまで自覚した事なかったけどもしかしたらそうなのかもしれない…



実は豪血寺ネタを絡ませようかと考えていた時期もあったけれど、無理そうだから没ったなどとは口が裂けても

2に豪傑寺って寺があった気がするし…

真田先輩は本来ここで出す予定なかったので、出番がないのは当たり前というか

期待してた人いたらごめんなさい


では終わります

また次回

>……


鳴上「……」

鳴上「ここ、は……?」

鳴上「!?」

鳴上「開かない……!」


>入り口だった扉は、今は押しても引いても動く気配がない……

>そして、しばらくすると消失してしまう。

>次に待っていたのは大きな振動だった。


鳴上「なんだっていうんだよ……!」

鳴上「おい! 誰かいないのか!?」

?「早く登ってこい!」


>何処からともなく声がする。

>上の方からだろうか……?


鳴上「誰だ!? ここは一体、何処なんだっ!?」

?「叫んでいる間に登れ! 急がないと、落ちて死ぬぞ!」

鳴上「落ちて……死ぬ!?」


>どういう事なのだろうか……

>そもそも、さっきまで自分が何をしていたのかすらもよく覚えていない。

>ただひとつ確かなのは、聞こえてくる声は嘘ではないのだろうという事だった。

>……足場が下から崩れ落ちているのだ。

>今は言う通りに登るしか他にない。


?「石を動かして足場にするんだ! 一段ずつなら、登れるだろ!」


鳴上「動かす!?」


>そんな事が出来るのだろうか。

>……今はそんな事を疑っている時間も惜しい。

>目の前にある自分の身長より一回りほど小さい立方体の石を両腕で掴んで押してみた。

>石は思っていたよりも重くはなく、押した方向にスライドしてくれるようだ。


?「石は、むやみに奥へ押すな! 上が崩れて、登り難くなるぞ!」

鳴上「崩れる……?」

?「引き出して足場を作るんだ!」

鳴上「わ、わかった!」


>石を引き出し、安定した足場を作る事が重要なようだ。

>上手く利用して、早く上を目指さなければ……


?「次に、大事な事を教えとくぞ。これだけは、絶対に覚えたほうがいい」

鳴上「大事な事?」

?「その石には妙なクセがある。辺だけで下の石と繋がるんだ!」

鳴上「辺だけ……繋がる?」

鳴上「どう意味だ!?」

?「石の真下に何もなくても、下の段の石と辺だけで繋がって落ちなくなるんだよ!」

?「繋がるとその瞬間青白く光るから、確かめてみろ!」


鳴上「こ、こうか……!?」


>言われた通りにしてみると、確かに辺と辺が触れ合った瞬間に青白く光り、そのまま石が押した場所より下へと落下することなく、固定されているのが確認出来る。

>その上に乗ってみても崩れる事もないようだ。


鳴上「とりあえずなんか普通じゃないって事だな!」

鳴上「……そうか! 一辺でも触れてれば落ちないんだから、自分で階段状の足場が作れるのか!」

?「そういうこった! 後は慣れるしかない!」

?「頑張れよ! 生きていたらまた会おう!」


>声はここで聞こえなくなってしまった。

>だが、登り方を把握する事は出来た。

>石の特徴を活かせば、石が壁状に詰まれている場所でも上手く登れそうだ。

>足場が崩れないよう考えながら、登り続けていった。

>……


ゴーン…… ゴーン……


鳴上「!? なんだこの音……何が鳴っているんだ?」


>頭上からする音は、鐘の音のように聞こえる。

>見上げてみると、もう少し登ればその先に扉がある場所へ行けるのが確認出来た。


鳴上「あれが出口か!?」

鳴上「っと、これで……!」


>苦戦の末、扉のある場所まで登ってくる事が出来た。


鳴上「出れる、のか……?」


>扉を引いてみる……

>鍵はかかっていないようだ。


鳴上「良かった。これで、」

鳴上「っ!?」


>出ようとした瞬間、一際大きな振動を体に感じた。


鳴上「なっ……なんだあれ!?」


>下から何か大きな物体が迫ってきている……!

>暗くて何がいるのかよく確認出来ないが、そんなものに構うより、早くここから抜け出した方が良さそうだ。


鳴上(こんな場所に長居する義理はない!)


>扉から急いで脱出した。




「おめでとう。なんとか抜け出せたみたいだな」

「これで、地下墓地は終わりだ」

「明日の夜……また会えるのを楽しみにしているよ」


>……


1st days


05/08(火) 雨 自室


鳴上「ッ――!」


>目を開くと見知った天井がそこにはあった。

>飛び起きて辺りを急いで確認してみる。

>……学生寮の自分が使用している部屋で間違いない。


鳴上「はあっ……夢か」

鳴上「……夢?」

鳴上「どんな?」


>目覚めの気分が最悪なのは恐らく見ていた夢のせいなのだろうが、その内容をしっかりと思い出せない。

>何故だろう……


鳴上「床で寝てたみたいだし」

鳴上「えっと、昨日の夜はどうしてたんだっけ……」


鳴上「そうだ。陽介と電話をしていたら、マヨナカテレビが映って」

鳴上「その途中で、凄い眠気に襲われたんだ」

鳴上「……」

鳴上「あれは、マヨナカテレビだったと思う……けど」

鳴上「どういうのだったっけ……?」


>ひどく記憶が混乱しているようだ。

>こんな経験は初めてかもしれない。

>……

>またあとで陽介に電話してみよう。

>昨夜の自分がどんな様子だったのか聞けば、何か思い出すかもしれない。

>今は着替えて学校へ行く準備をする事にした。

>……


学生寮 階段


ラビリス「あ、悠! おはようさん!」

鳴上「……ん。おはよ」


>三階から降りてきたラビリスと挨拶を交わした。


ラビリス「なんや? 顔色があんまよくないな」

鳴上「ちょっと変な夢見たっぽくて……」

ラビリス「っぽくて?」

鳴上「よく覚えてないんだよ。それが余計気持ち悪いって感じで」

ラビリス「ふーん?」


>ラビリスにはあまり興味のない話題のようだ。


鳴上「あ、そうだ」

鳴上「ラビリスは昨日の夜、マヨナカテレビを見たか?」


ラビリス「マヨナカテレビ? ……って、あれか。雨の夜の0時に、消えてるテレビに映るっていう」

ラビリス「ウチがテレビに放り込まれた時も出てたとかって話の」

鳴上「そうだ」

ラビリス「いや。ウチは見てへんな」

鳴上「え?」

ラビリス「部屋に戻ったあとすぐに休んでしもうたからなー……その話、今言われるまで忘れてたわ。ゴメン」

鳴上「なんだ、そうだったのか」

ラビリス「もしかして、なんか映ったの?」

鳴上「映ってた……と思う。それらしいのが」


ラビリス「えっ、どんなんだったん! また格闘ショーか!?」

鳴上「それが、映ってる最中に寝ちゃったみたいでさ……」

鳴上「よく覚えてないから、見た人に内容を確認したかったんだけど」

ラビリス「よく覚えてない事だらけやないの。アンタ、案外抜けてるところもあるんやな」

鳴上「俺も自分でびっくりしてる……」

鳴上「アイギスさんやメティスなら見てるだろうか」

鳴上「って、そういえば今日はメティスは?」

ラビリス「それがなー、さっき部屋に行ってみたんやけど、先に学校へ行ってしまったみたいなんや」

ラビリス「ずいぶんはやい登校やな」

鳴上(……まだラビリスの事、避けてるのか?)

ラビリス「ウチらもはよ行こ」

鳴上「……ああ」


>ラビリスと一緒に登校した。

>……


月光館学園 3-A 教室


>メティスの姿を発見した。

>席に座りながら、机の上で作業をしている。

>どうやら、また折り紙の練習をしているようだ。


鳴上(ラビリスの事だけが原因って訳でもなさそうか)

鳴上「おはよう、メティス」

ラビリス「おはよ!」

メティス「!」

メティス「えっと……その」

メティス「おはようございます」

ラビリス「んー? なにしてんの?」

メティス「あっ……!」

ラビリス「へえ、すっごいなあ! これ、メティスが作ったん?」


>ラビリスは、メティスが作った折り紙のひとつを手に取り、感心しながらまじまじと見つめている。


メティス「……」

メティス「そんな、お世辞なんか、いいです……」


>メティスの折ったそれは、初めよりだいぶ上達した事は確かではあるが、まだまだ歪である事に違いはなかった。

>それでも、ラビリスは心の底から凄いと思っているようだった。


ラビリス「ウチ、こんなんした事ないから尊敬するわ!」

ラビリス「メティスが作ったのすっごくかわいいな」

メティス「っ……!」


>メティスはラビリスの言葉に照れているようだ。


メティス「……私も、こういう事始めたの最近ですから」

メティス「だから、やろうと思えばきっと出来ると思いますよ」

メティス「……ラビリス姉さんにも」

鳴上「!」


鳴上(少し、心を開いたみたいだな)

鳴上(昨日アイギスさんと話をしたのもきいてるのかも)

メティス「一枚折ってみますか?」

ラビリス「ええの?」

メティス「はい。でも、私はまだまだ人に教えられるほどではありませんので……」

メティス「一緒に鳴上さんに教わりましょう」

メティス「いいですよね、鳴上さん?」

鳴上「ああ」


>HRが始まるまで、仲良く折り紙で遊んだ。

>この調子で、メティスがラビリスと打ち解けてくれればアイギスも安心するだろう。

>……そういえば、メティスに昨夜のマヨナカテレビの事を尋ねるのがまだだった。


鳴上「なあ、メティス。昨日のマヨナカテレビ……どうだった?」

メティス「はい?」

鳴上「映ってただろ?」

メティス「……」

メティス「……いえ。私は昨日、マヨナカテレビを見てはいません」

鳴上「メティスも確認し忘れたのか、珍しいな」

メティス「そうではありません」

鳴上「?」

メティス「雨が降っていたのはきちんと解っていましたから、昨夜日付が変わる頃にチェックをしましたけれども……」

メティス「特にこれといった異常は確認していませんが」

鳴上「えっ……?」


メティス「鳴上さんのテレビには映ったんですか? マヨナカテレビが」

鳴上「映った」

鳴上「……と思う」

ラビリス「悠な、昨夜の記憶が眠かったせいで曖昧なんやて」

ラビリス「そういや変な夢見たとか言うてたよね?」

ラビリス「もしかして、そのマヨナカテレビも夢の中の事だったんちゃうの?」

鳴上「……」

鳴上(あれが、夢……?)

メティス「……」

メティス「帰ったら、アイギス姉さんたちにも聞いてみましょうか」

鳴上「そう、だな……」


>ただの記憶違いなのだろうか……

>陽介への確認も早くしておいた方がいいのかもしれない。

>……


【放課後】


>今日の授業が終わった。

>ラビリスはこれからメティスに街の中を案内してもらいに行くらしい。

>自分も誘われたが、姉妹水入らずの邪魔をするのも気が引けたので適当な理由をつけて二人で行ってくれば良いと言った。

>しかし、本当はこれといった予定もない……

>陽介に電話しようかとも考えたが、おそらくまだ向こうは授業中だろう。


鳴上(そうだな……)

鳴上(久しぶりにベルベットルームに行ってみようかな)

鳴上(ついでに、マーガレットにエリザベスの話でもしよう)


>ポロニアンモールへ向かった。

>……


ポロニアンモール


>カラオケ店近くの路地の行き止まりに、ベルベットルームに続く扉がある。

>ベルベットルームの扉は一般人は勿論のこと、ペルソナ使いですらその存在が見える者は少ない。

>それに加えて他は何もない場所なので、ポロニアンモール内であるにも関わらず、あまり人が寄りつくような場所ではないのだが……

>今日に限って、その路地に入ろうとしたところで奥の方から人の気配を感じた。

>滅多にない事だ。

>足音がこちらに近付いてくる……


「……ああ。いまのところ特に問題はないけど」


>片手で携帯を持って電話をしながら、もう片方の手にも携帯持ってカチカチとボタンを器用に操作している妙な人物が出てきた。

>……暗がりからやってきたので最初は気付かなかったが、その人物は知り合いだった。


>視線が合いこちらの存在に気付いた人物は目を丸くして足を止める。

>軽く会釈をすると同じように会釈を返してくれた。


藤堂「悪い、たまき。また後でかけ直す。一回切るぞ」

藤堂「……よ、また会ったな」

鳴上「こんにちは、藤堂さん」

鳴上「あの、こんな場所で何を?」

藤堂「君こそどうしてこんな場所に?」

藤堂「この先は行き止まりだぞ」

鳴上「えっと……」

藤堂「……」


>なんて言い訳しよう……


鳴上「ちょっとぼーっとしてて、ついこんな場所まで」

藤堂「ふーん……?」


藤堂「……ま、俺も似たようなとこかな」

藤堂「電話しながらゲームで遊んでたらこんな場所に、な」

鳴上「ゲームですか?」

藤堂「そう。知る人ぞ知るゲーム。……って話らしいけど」

藤堂「知らないアドレスからのメールに添付されて送られてくるアプリゲームって知ってるか?」

鳴上「あ。話だけなら聞いた事あります」


>パオフゥが以前教えてくれた『仲魔』というものを集めたり合体させたりするというゲームの事だろう。


鳴上「それ、本当に覚えのないアドレスから送られてきたものなんですか?」


藤堂「……ん。まあな」

藤堂「こういうのなんだけど」


>実際にそのアプリがどういうものなのか見せてもらった。

>画面には『仲魔』であろう名前がいくつか表示されており、中央にはゲーム内でエンカウントしたと思われる『仲魔』に出来る何かが映っていた。

>その『仲魔』というものは、自分の持つペルソナと似た雰囲気を持っているような気がする。


藤堂「君のところには届いてない? こういうの」

鳴上「こんなゲーム今まで見た事ありませんね」

藤堂「そっか」

藤堂「……」


藤堂「なあ。もし、君もこのゲームを受け取るような事があったら俺にも教えてくれないか?」

藤堂「俺の知り合いに持ってるやついなくて」

藤堂「その……情報を教えてもらえたらな、と」

鳴上「そういえば他のプレイヤーと対戦とかも出来るって話でしたもんね」

鳴上「わかりました。俺、普段ゲームなんてあまりしないんで、あまり役に立たないと思いますけど」

藤堂「……よろしく」

藤堂「俺のアドレス教えておこうか」


>藤堂とメールアドレスを交換した。



>『Ⅳ 皇帝 藤堂尚也』のランクが3になった



藤堂「じゃ、また」


>藤堂は携帯を操作し続けながら去っていった。


鳴上(本当にあんなゲームが存在してたんだな)

鳴上(……)

鳴上(やっぱり今日はベルベットルームに行くのはやめておこう)


>寮に戻ることにした。

>……


学生寮 自室


>あの後、陽介の方から電話がかかってきた。

>昨夜は突然電話が繋がらなくなったとの事で、心配させてしまったようだった。

>余計に心配をかけないように言葉を選んで昨夜の自分の事を陽介に尋ねてみた。

>それによると、やはり昨夜自分はマヨナカテレビを目撃していた様子だったらしい。

>しかし、どんな内容だったのかまでは、電話を越しの陽介にはわからなかったようだ。

>……

>電話を終えて、PCを立ち上げた。

>自分以外に昨日のマヨナカテレビを見た人がいないか探ってみよう。

>……

>しかし、辰巳ちゃんねるを覗いてみても、それらしき情報は掴めなかった……

>かわりに目に付いたのは、今朝方起こったというある事件とそれに関係しているかもしれないらしい噂の話だった。


>……05/08(火) 港区の某所にて、20代男性の衰弱死体が発見された。

>第一発見者は男性の母親。朝、息子が起きてこないので部屋に行ってみたところ、無惨に変わり果てた姿がそこにあったのだという。

>男性は連日寝不足が続いている様子だったと母親は供述しているが、それが彼の衰弱死に繋がったのかどうかは不明であり……

>このような死体が発見されたのは先月末に続きこれが二件目で、警察は事件と事故両面の可能性をみて捜査中である。

>……といった事が、ニュースサイトにも書かれてあった。

>奇妙な話はここからまだ続く。


>この話題をうけて、辰巳ちゃんねるにある噂話のスレッドにひとつのレスが書かれていた……

>“この事件はある呪いによるものなのかもしれない”

>本来ならば、こんな漠然とした書き込みが注目される事などなかっただろう。

>ところが……叩くならばまだしも、そのレスに肯定的なレスがちらほらとついていたのだ。

>もちろんそんな話など信じないものも多かったのだが、ログを辿っていくと何年か前にも同じような死体が連続して出た謎の事件があったという書き込みを見つけた。

>そんな時にちょうどその呪いの噂が広まっていたらしい……

>状況が酷似している。

>おかげで、今の辰巳ちゃんねるはその話ですっかりもちきりのようだ。


鳴上「まさかその呪いって……シャドウが関係したりしてないよな?」


>過去の連続衰弱死事件について、もっと詳しい情報がないだろうか。

>……パオフゥなら知っているかもしれない。

>急いでメッセンジャーを起動させた。

>パオフゥはオンラインにいるようだ。

>さっそく、聞いてみよう。


>…
>……
>………


ピロン♪


>パオフゥから応答がきた!


パオフゥ:よお、番長

パオフゥ:なんとなく、近々お前さんからまた接触がきそうな気がしてたぜ


>ニュースやネットで大きく騒がれている事だ……きっともう、聞きたい事の察しがついているのだろう。


番長:それなら話が早いです。

番長:今話題になっている衰弱死体があがった事件に類似しているという、過去にあった連続衰弱死事件について聞きたいんですが。

パオフゥ:それくらいなら過去のニュースサイトを漁れば出てきそうなもんだが……まあいいだろう

パオフゥ:その前に、お前さんの近辺で何か気になるネタはないか教えて貰おうか

パオフゥ:タダで教えてやるほど優しくないんでな



鳴上「うーん……あ、それなら」


>さっき藤堂から見せて貰った例のアプリゲームについての話をした。


パオフゥ:番長の目できちんと確認したのか?

番長:はい、そうです。

パオフゥ:どんな風だったんだ?

番長:前にパオフゥさんから聞いた通りのゲームだったと思いました。

パオフゥ:なら遊んでいる人間の様子はどうだった?


鳴上「?」

>それはどういう意味だろう……?


パオフゥ:何もないならいいんだが

パオフゥ:それならそれで、今の内にそのゲームをするのをやめさせた方がいいかもしれない

番長:どうしてですか?


>しばしの間のパオフゥが沈黙した。


パオフゥ:遊びすぎたせいで何処かの会社から莫大な請求がきたって話もある

パオフゥ:ま、遊ぶにしてもほどほどにしておいた方がいいってことだ



鳴上「勝手に送られてきたものなのに、タダで遊べるゲームじゃなかったのか」

鳴上「それは怖いな……」



パオフゥ:じゃあ、話を本題に移そう

パオフゥ:過去に起こった連続衰弱死事件についてだったな

パオフゥ:あれは今から三年ほど前に起こった事だった

パオフゥ:その時期に謎の病が流行っていたのは記憶にあるか?



鳴上「三年前の謎の病……って、まさか」


パオフゥ:無気力症

パオフゥ:2009年の春頃から年明けにかけて爆発的に増えていた未だに原因不明だと言われてるやつだ

パオフゥ:あの病が蔓延る傍ら、その不安をさらに煽る形で起きたのが連続衰弱死事件だった

パオフゥ:症状は今話題になっているものと一緒

パオフゥ:若い体でも一晩のうちに老人の孤独死にも似た骨と皮だけの衰弱死体になるというものだ

パオフゥ:それは無気力症から派生して起こる病状だという考えもあったようだが

パオフゥ:結局のところ何故そんな死に方をするのか判明する事はなかった

パオフゥ:だがそれでも、いつの間にかその両方が世間から消えていた訳だな


パオフゥ:ここまでがニュースで取り上げられていた事実だ

パオフゥ:さて、ここからはネットで騒がれている、その時に流行ったとされる噂についてだ

パオフゥ:何処まで本当か、あるいは全部でたらめかもしれない話だという事をまず言っておく

番長:呪いがどうこう、ってやつですね?

パオフゥ:そうだ

パオフゥ:それは魔女の呪い、なんだそうだ

パオフゥ:魔女が見せるある夢のせいで一晩のうちにあんな惨い事になると、簡単にまとめればこういう話だな


番長:その夢というのは?

パオフゥ:夢の中で何処かから落ちる

パオフゥ:その時、目覚めることが出来なければ

パオフゥ:現実でも死ぬ



鳴上「!」


>昨日見たはずのマヨナカテレビの内容をこの時になってようやく思い出した。

>確か、あれでもこんな事を言っていたはずだ……



パオフゥ:という話ではあるが

パオフゥ:これっておかしな話だと思わないか?

番長:?


パオフゥ:夢なんてのは見た本人しか知りようがない

パオフゥ:仮にその夢で死んだとしても、それを語る口が動かないんだから、こんな話が広まる筈がないだろ?

番長:なるほど、たしかに

パオフゥ:でも、この噂にはまだ結末が残っていたりもする

パオフゥ:当時、その夢に悩まされていた男のひとりが、この呪いに打ち勝ち終止符を打ったというものだ

パオフゥ:そのおかげで、例の衰弱死事件は終わったのだと、そう密かに囁かれているようだな

パオフゥ:なんでもポロニアンモールにあるクラブ エスカペイドの常連客だったらしいが

パオフゥ:ホントに何処まで真実かわかんねぇな

パオフゥ:もしかしたら、運が良ければそこで会えたりするのかもな

パオフゥ:伝説の男に


鳴上(伝説の……男、か)



番長:参考になりました。教えてくれてありがとうございます

パオフゥ:ああ

パオフゥ:今日はもうこれで落ちる

パオフゥ:あのゲームの話、何か進展があったらまた教えてくれ


>パオフゥとの会話を終了した。



>『Ⅸ 隠者 パオフゥ』のランクが4になった



鳴上「……エスカペイドって、りせに連れていってもらったあの場所だよな」

鳴上「……」

鳴上「久々に行ってみるか」


【夜】


クラブ エスカペイド


>『伝説の男』の話が何故だかどうしても気になって仕方ないので、ついここまで訪れてしまった。

>そう都合良く会えるとは思えないが……少しくらい探してみても悪くはないかもしれない。

>むしろそうしないと今夜は安心して眠れないかもしれないとさえ思えた。


鳴上(よし……行くぞ)


>そう意気込んで扉から入ろうとしたが、中から出てきた人とぶつかってしまった……


鳴上「っと……すみません!」

?「……ちゃんと前見て歩けよ」


>黒髪の腰まである長髪にサングラス、加えて派手な色のスーツ姿の男がそう告げて去っていった。

>とてもカタギの人間には見えなかった……


鳴上(普段はあんな人間がゴロゴロ来ているのだろうか、この店は……)


>気を取り直して、油断しないように注意しながら店の中に入った。

>……

>店の中は、さっきすれ違った男のような人間ではなく普通の今時の若者で賑わっていた。

>たしかアルコールの取り扱いをやめているという話だった筈だが、それ故か十代に見える者も多い。

>……だから、カウンターに座るその男は周りと同調する事はなく、異彩を放っていたのだ。

>明らかにメインの客層よりも年のいった三十代ほどの男がいる。

>彼は一人でグラスを傾けていた。


?「……ん? こんなオッサンに何かようか?」


>見ていた事に気付かれてしまったようだ。

?「……」


>男もこちらをじっと見つめてきている……


?「その制服、確かこの近くの……月光館とかいう学校のだったか」

鳴上「……あ、はい」

?「やっぱりそうか」

?「……話し相手でも探しているのか?」

鳴上「えっと」

?「だったらそこに座って少し話をしないか」


>隣の席をすすめられた。

>断わる理由が咄嗟に出なかったので、なし崩し的に男の隣に座った。


?「彼にも同じものを」

店員「かしこまりました」


>店員がグラスに入った謎の黒い液体を出してきた。


?「大丈夫、アルコールじゃねえから」

?「ちょっと刺激は強いかもしれねえけど」

鳴上「はあ。……いただきます」


>勇気を出して喉に流し込んでみた。

>……炭酸の味がする。

>コーラをベースにしているような感じがしたが、様々な炭酸水の混じったような不思議な味が口の中で弾けている。

>眠気が一気に飛ぶ代物だ。


鳴上「凄い味ですね」

?「癖になりそうだろ?」

?「本当はラムコークが飲みたかったんだけどな」

?「この店も変わっちまったな」

店員「すみませんねえ」


>男はグラスを傾けて中身を一気に飲み干した。


?「……こんなんじゃ酔えねぇや」

?「……」

?「なあ、お前さ」

?「落ちると死ぬ夢の話って……聞いたことあるか?」

鳴上「!」

鳴上(またその話か……)

鳴上「ありますよ。近頃ネットで流行ってるみたいですね」

?「……そう」

?「なんで今になって、また……」


>男はしばらく黙り込んでしまった。


?「じゃあさ、その夢を見るようになる人間の条件って知ってるか?」

鳴上「条件……? そんなものあるんですか?」

?「ああ、あるとも」

?「……お前はその条件に当てはまってるのかな」


鳴上「!?」

?「……」

?「なあ、お前には恋人っているか?」

鳴上「……?」

鳴上「いえ、いませんけど」

?「へえ?」

?「けど、結構な面構えしてるからモテそうだな」

鳴上「そんな事ありませんよ」

?「そう思いこんでるのはお前だけだったりしたら……悲惨だぞ?」

鳴上「えっ……」


>さっきからこの男はなんの話がしたいのだろう……


鳴上「あの……それで、落ちる夢を見る人間の条件っていうのは?」

?「……悪い。もう時間だ」

鳴上「えっ」


>男は二人分のドリンクの代金を置いて、席から立ち上がって帰ろうとしている。


?「もし話の続きに興味があるなら、またここに来いよ」

?「ドリンク一杯分くらいならいつでも奢ってやるからさ」

鳴上「あっ、あの……!」

?「あ、そうか。まだ名乗ってなかったな」

?「んー……そうだな」

?「ヴィンセント、っていうのはどうだ?」

鳴上「ヴィンセントさん?」

店員「お客様が飲んでいらっしゃる炭酸ジュースの商品名ですよ」

?「ばっか、お前! 早々にネタばらしすんなよ! せっかく格好良く決めて帰ろうと思ってたのに……」


ヴィンセント「……まあ、とにかく」

ヴィンセント「この話の続きをするなら今度だ」

ヴィンセント「お前の名前は……また会えることが出来たら、その時に聞くって事にしておこうか」

ヴィンセント「じゃあな」


>自らをヴィンセントと名乗る男は、そのまま去っていってしまった。

>ヴィンセントと知り合いになった。



>『ⅩⅤ 悪魔 ヴィンセント』のコミュを入手しました

>『ⅩⅤ 悪魔 ヴィンセント』のランクが1になった



鳴上(また不思議な人と知り合ってしまったような気がする……)

鳴上(結局、『伝説の男』探しは出来てないし)

鳴上(でも、今日はもう遅いから、これを飲んだら帰った方がいいか)

鳴上(また今度、だな)

鳴上(……)

鳴上(落ちると死ぬ夢……)

鳴上(どうしてただの噂でこんなにも不安になるんだろう……)


>炭酸ジュースを飲みながらしばらくの間ひとりで考えた……

>…

>……

>………





「あのう、ここいいですか?」



>……




檻の中の羊たちがこちらを見つめている

まるで、次にここに入るのはお前なのだとでもいうように――


Next→


―stage 2 Prison of Despair

罪人監獄―


これで終わります。


豪血寺ネタは誰を出そうとかまで具体的に考える前に没にしてしまったんだけど、

P4Uの流れで何故か豪血寺の頭首決定戦が同時に開催されて巻き込まれる形になったりとか、

鳴上家が実は豪血寺の血を受け継いでるかもしれないという根も葉もない疑惑と噂が広がってだとか

番長がプリンセス・シシーの婿の有力候補にあがってだとか

もはやペルソナに関係ない流れになりそうだった……

デビルサマナーやってるキャラとかいた筈だから上手くすれば本当に絡められたかもだけど>>1には無理だった


ではまた次回


Night mare


鳴上「……!?」

鳴上「ここは……昨日の続きって事か!?」


>確か、自分はクラブにいた筈なのだが……


鳴上「あの人が帰ってから、ひとりでジュースを飲んでて、それでその後……」

鳴上「誰か来たんだ」

鳴上「そうだ……女の子が隣に来て、それで」

鳴上「……思い出せない」

鳴上「どうなっているんだ……!?」


>そんな事を考えている間にも、また足場が徐々に崩れ落ちていっているのが振動でわかる。

>まずは上へ行くのが先のようだ。


?「なんだ、昨日の新入りか?」


>周りに誰かいる気配はないが、声が聞こえてくる。


鳴上「その声は……昨日の!?」

?「いいか、石には幾つも種類があるから気をつけろ」

?「重かったり、動かない石なんかもある。初めて見る石には注意しておけよ!」

?「あとはともかく周りをよく見て早く上まで登ってこい!」

?「上の踊り場で会おう。そこに、みんなもいるからな!」

鳴上「みんなって……誰だ?」

鳴上「……行けばわかる事か」






>聞こえてきた声の通り、登る先々に置かれている石は、昨日見た事のないものが何種類かあった。

>それでもなんとか足場を作って上を目指していくと、鐘の音が聞こえてきた。


鳴上「やっと終わりか!?」

鳴上「……? なんだ、これ」


>一番上には、周りの石よりも意匠の凝った高級そうな石と、吊り輪のようなものが下がっている。

>これ以上は登る場所が見当たらないので、その石の上に登り、吊り輪を思い切り引っ張ってみた。

>すると、今足場にしている石と同じ物が次々と降りてきて、上へ繋ぐための階段が出来上がった。

>これで更に先に進める筈だ。

>……


踊り場


>鐘の音がずっと鳴り響いている。

>辿り着いた場所には、今までなかった自分以外の気配がしていた。

>やっと誰かに話を聞ける。

>そう思えたのはほんの一瞬の事で、目に映る光景が異常な事にすぐ気が付いた。





>そこには、二本足で立つ羊が集まっていたのだ……


>一番近くにいる羊がこちらをに振り返った。


?「ちゃんと上まで登ってこれたみたいだな」

鳴上「なっ……羊が喋った!?」

?「俺が羊に見えるのか?」

?「俺にはお前が羊に見える」

鳴上「!?」

?「他の連中も、みんなだ」

鳴上「その声……さっき俺に忠告してくれた奴だよな?」

鳴上「お前は何者なんだ。ここは一体、どこなんだ!?」

?「さあな、こっちが聞きたい」

?「ただひとつ確かなのは、俺たちは……」

?「逃げなければ殺される、という事だ」

鳴上「ころされっ……!?」


?「ここを一度でも見たが最後、毎晩のように来る事になる」

鳴上「毎晩って……嘘だろ、何でだ!」

?「……」

?「いいか、ここから先は自分の力で登っていけ。俺はもう行く」

鳴上「ちょっ……待ってくれ!」


>羊人間は先へと行ってしまった……

>……

>さっきの羊人間はこっちが羊に見えると言っていたが、自分で確認できる範囲では自分の体は人間のままであった。

>ただ、何故か下着一枚の格好である事と、頭を触ってみるとふたつ角がはえている事が気になった。


鳴上(今まで登るのに必死でこんな姿だなんて気付かなかった……)

鳴上(とりあえず、これからどうしたらいいんだろう)


>聞きたい事はまだ山ほどある訳だが……

>他の羊人間に話しかけてみようか。


羊人間A「なっ、なんなんだよここは!?」

羊人間B「こんなとこもう嫌だ! 誰か助けてくれぇ!」

羊人間C「どうせ……どうせみんな死ぬんだ……」

羊人間D「チクショウ……誰を蹴落としてでも絶対に生き延びてやる!」


>周りの羊人間は誰もが錯乱している。

>一人として何故こんな場所でこんな事をしているのかわかっていないようだ。


羊人間E「絶対に逃げてやる……こんなとこで死んでたまるかよ」

鳴上「助かる方法、探してみないか? 一緒に協力して……」

羊人間E「お前一体誰なんだよ! 信用出来る訳ねえだろ!」


>まともに話を取り合って貰えない……

>みんな、自分の事だけで精一杯なのだ。

>……


>踊り場の奥にある小さな建物の前までやってきた。

>ずっと鳴り続けている鐘はこの建物の上で揺れている。

>近くには看板が下がっていた。

>『↑Freedom』と書かれてある。


鳴上「自由……」


>見上げてみたが、上の方は暗くて何があるのかわからない。

>建物の方を調べてみる事にした。

>建物は二つの部屋で成り立っている様子だ。

>ただ、右側の部屋の方は赤いカーテンの掛かった入り口があるのだが、左の部屋は窓があるだけで何処から入ればいいのかわからなかった。


>窓を覗き込んでみた。

>……ぼんやりと黒いシルエットが映っている。


鳴上「!」

鳴上「誰かいるのか?」

鳴上「よく見えないな……」


>右の部屋から探れないか調べてみよう。

>……

>右の部屋は非常に狭い場所だった。

>入ると壁に不気味な絵が飾ってあるのがすぐ目に入る。

>後は腰を掛ける場所と、隣の部屋に面している壁に小窓があるだけだ。

>この小窓でも、隣の部屋の様子を確認する事は出来なかった。

>でも、隣にいる人物に話しかける事くらいなら大丈夫かもしれない。


鳴上「そっちの部屋、誰かいるのか?」

?「……まずは座れ」


>返事がかえってきた。

>ここは素直にその言葉に従ってみよう。


?「ようこそ、告解室へ」

鳴上「告解室?」

鳴上「……なんで俺たちはこんな場所にいるんだ?」

鳴上「お前の仕業なのか!?」

鳴上「お前は誰だ!」

鳴上「俺たちをどうしようっていうんだ!」

?「……質問が多いな」

鳴上「答えろ!」

?「まったく、勝手なやつだ」

?「まあ、いいか。やっとまともに話してくれる気になったみたいだし」

?「こうして会話した事なんて、お前は起きればまた忘れるんだろうけどな」


鳴上「また……? 何の事なんだ?」

鳴上「お前、俺と会った事あるのか?」

?「……ほらな」

?「まあ、いいさ。この夢は元々そういう風に出来てるらしいから」

鳴上「どういう事だ」

?「夢の事を現実に持ち込まれたら困るから、忘れさせるようにしているみたいだな」

鳴上「……さっきから、『らしい』とか『みたい』とか言ってるけど」

鳴上「お前もよくわかってないのか? ここの事」

?「俺はこの夢の管理者」

?「……の、代行人だ」

?「けど、実際は上手いことこの夢に干渉しているだけの存在に過ぎない」


?「だから、この夢が本来どういう意図を持っているかなんて俺の知った事じゃない」

?「というより、俺にはどうでもいい事だ」

鳴上「どうでもいい?」

鳴上「何だよそれ……下手したらここにいる羊たちがみんな死ぬかもしれないんだぞ!」

鳴上「そんな風に考えている時点で、代行人だろうがなんだろうがおまえにも罪がある」

?「俺に罪?」

?「お前が俺にそんな事を言うか。……面白い」

?「しかしな、俺がこの夢の中で干渉出来るのはお前だけなんだ」

鳴上「え……?」

?「そして、俺にとって用があるのはお前だけなんだよ、鳴上悠」

?「俺は今、お前に問いたい事があってここにいる」


鳴上(何故、俺の名前まで知っている? こいつは……)

鳴上「わかった」

鳴上「……答えればここから出してくれるのか?」


?「いいや、それは無理だ」

?「朝がきて目が覚めればそれは可能だろう」

?「でも、それまでにここで落ちて死ぬような事があれば……」

?「お前にその朝は永遠に訪れない」

?「もちろん、夜がやってきて眠りにつけばまたこの世界にやってくる事になる」

?「その繰り返しって訳だ」

鳴上「それを終わらせるには?」

?「ひたすら上を目指すしかない」

?「……としか今は言えないな」


?「その場に立ち止まっていても崩れるだけなんだ、それしかないだろ?」



?「さて……いい加減、こちらの質問にも答えて貰おうか」

?「そうしたら次のエリアに案内しよう」

?「質問に対して出された選択肢のうち、どちらかを選んでくれればいいだけだ」


機械的な声「第一問です」


>告解室からする声とはまた別の声が聞こえてくる。


機械的な声「貴方は人付き合いが積極的な方ですか?」

機械的な声「近いと思う方のロープを引っ張ってみてね」


>目の前に『はい』という文字の浮かび上がるロープと、『いいえ』という文字の浮かび上がるロープが垂れ下がってきた。


鳴上「……」

鳴上「おい」

?「どうした?」

鳴上「思わせぶりな事を言っておいて、この質問はなんなんだ?」

鳴上「こんなものに答える事に意味があるのか?」

?「……質問してるのはこっちなんだが」

?「いいから早く」

鳴上「……」


>釈然としないが、仕方なく片方のロープを引っ張った。


?「へえ、そっちか。なるほど」

?「……じゃあ、この告解室の説明をしようか」

?「この告解室はな、ここにやってくる羊たちの命の価値を見定める場所なんだとさ」


?「質問の答え次第で、その命を救うべきか摘むべきか決めるとか……」

?「そう本来の管理者から聞いている」

鳴上「命の価値を見定める? どうして、他人にそんな事をされなきゃならないんだ!」

?「さあ、なんでだろうな?」

鳴上「それもお前には興味のない事か」

?「……」

?「俺はお前の口から語る答えが聞きたいだけだ」

?「お前の命の価値を計りたいというよりは……」

?「お前の中に存在している価値を、俺は知りたい」

?「……俺は別に、お前がここで死ねばいいとか思ったりはしてないしな」

?「ただそれと同時に、ここで死ぬような事があったりしても、それはそれでいいんじゃないかとも思ってる」

?「その時は……所詮、鳴上悠はそれしきの人間だったっていう話で終わるだけだ」

?「だから俺は、お前の話を聞く事はあっても、殺しはしないし助けたりもしない。絶対に」


鳴上「なんでそんな……」

?「少し喋りすぎた」

?「後がつかえている。先へ行こう」

鳴上「っ!?」


>入り口のカーテンがひとりでに閉まり、急に告解室が激しく揺れ出した。

>そして、告解室がそのまま上昇していく。

?「次を登りきる事が出来たら、また会おう」


>……


>告解室の動きが止まり、カーテンが開いた。

>中から出ると、目の前にはまた石の山場が待ち構えていた。

>告解室は勢いよく下へとおりてしまいもう引き返す事も出来ない……


鳴上「……登ればいいんだろ、わかったよ」


>……

>今回の山場は、やけに脆い足場が多かった。

>さらに、自分以外に羊がいて邪魔なせいで、なかなか思うように先に進めない。

>進む途中で羊とぶつかって落ちそうになったり、逆に羊の方が落ちていってしまったり……

>そんな事を繰り返しながら、また吊り輪が下がっている一番上の石までやってきた。

>それを引っ張ると、さっきと同じように階段が上へと伸びていった……

>……


鳴上「そしてまた踊り場と告解室……か」


>踊り場には登ってきた他の羊たちもいる。

>みんな疲れているのが見ただけで解った。

>しかしそれでも、上へ登る為の技を研究し話し合っている羊なんかもいる。

>ここから抜け出す事を、完全に諦めている訳ではないようだ。


>……その中で、明らかに異質な羊を一匹見つけてしまった。

>数匹の羊が、その羊のところに群がっているのだが……


羊人間A「おい、コレをひとつくれ!」

羊人間B「俺にも!」

羊人間C「俺はソッチのヤツ!」

「コレは8000、ソッチは10000ね!」


>どうやら何かを売りさばいているようだ。

>その声に、聞き覚えがあるような気がする……

>群がる羊たちが散ったのを見計らって傍に寄ってみた。


鳴上「トリッシュ……お前、こんなところで何してるんだ」

トリッシュ「fm……その声は」

トリッシュ「Hi! 悠」


>思った通り、トリッシュだった。

>他はみんな同じような羊に見えるのに、トリッシュだけは明らかに羊のコスプレをしているだけのような風体なのですぐにわかったのだ。


鳴上「トリッシュもこの世界に連れてこられたのか?」

トリッシュ「違うよ。ボクは連れてこられたんじゃなくて、自分からやってきたのさ!」

鳴上「なんでまた」

トリッシュ「迷える羊たちの救済に!」


>トリッシュはとても機嫌が良さそうに見える。

>その理由はなんとなくわかるような気がした。

>トリッシュの周りには大量のコインが積まれていたのだ。

>羊人間に何かを売りつけて得たものに違いない。


トリッシュ「悠も何か買っていきなよ」

鳴上「買うって……何を?」

トリッシュ「ここを登りきる為の、お助けitemだよ!」


鳴上「お助けアイテム?」

トリッシュ「何もないところに置ける白い石や、特殊な石を普通の石に変える事が出来たりするベルとか……」

トリッシュ「あと今のオススメは、この枕かな」

トリッシュ「いかなる衝撃も吸収! 高いところから落ちても痛くない! 心地よい眠りをお守りしマス♪」

鳴上「ふ、ふーん……」


>一瞬胡散臭くも感じたが、場合によっては使えそうなものが揃っているようだ。


トリッシュ「ここを登ってくる時にコインを拾わなかった? それと交換だよ」


>そういえば、そんなものを拾っていた気がする。


鳴上「もう随分儲けてるみたいだけど、まだ絞れるところから絞りとる気なのか……」

トリッシュ「何言ってるの!? まるで足りないよ!」

トリッシュ「ああ、それにしても金が欲しい……! 円で! ドルで! マッカで!」

トリッシュ「お金で買える命がここにはあるけど、命でお金は買えないんだよ!?」

トリッシュ「……コホン。とにかく、買うの? 買わないの?」

鳴上「うーん、それじゃあ……」


>手持ちで買える範囲で使えそうなアイテムを吟味してトリッシュから購入した。


トリッシュ「Thank you!」

トリッシュ「これで、無事に生き残れるといいね!」

トリッシュ「なんか次は『デカい』のがくるってみんな噂してるみたいだから気をつけて!」

鳴上(デカいの?)

トリッシュ「持ってるitemで無理そうだったら、また何時でも他のものを買いにきてね」

トリッシュ「See you again! have a nice dream!」



>『ⅩⅣ 節制 トリッシュ』のランクが3になった



>……そろそろ告解室へ行こう。

>……


告解室


鳴上「……来たぞ」

?「よお。まずはそこに座ってからだ」


>すすめられるまま、腰を掛けた。


?「さて、ここでひとつ朗報だ」

?「この階層……『罪人監獄』は次のエリアで終了になる」

?「上手く登りきれればその頃には朝を迎えている筈だ」

鳴上「!」

鳴上「じゃあ、早く連れていってくれ」

?「そう急くなよ。もうひとつ、ここの管理者からお前に伝言がある」

?「生きてここから抜け出したくば、最上階にある“カテドラル”を目指せ」

?「……との事だ」

鳴上「“カテドラル”……?」


鳴上「その管理者ってのが何故俺にそんな事を?」

鳴上「そいつには会えないのか?」

?「残念ながら、管理者は今忙しいみたいでね」

?「この世界の修復に手間取っているようだ」

鳴上「世界の……修復?」

?「まあ、その辺の詳しい話も追々してやるよ」

?「無事に生きていられたらな」

?「……さあ、今夜最後の質問に移ろうか」

鳴上「まだあのふざけた質問をする気なのか!?」

?「たった一問で、お前の中の価値を見極められる筈ないだろ」

?「言っておくけど、これをやらないと先に進まないからな?」


鳴上「くっ……」


機械的な声「第二問です」

機械的な声「年の離れた相手でも、恋愛対象になりえますか?」


>『はい』と『いいえ』のロープが垂れ下がってきた。


鳴上(だからなんなんだよ、この質問は………)

鳴上(……)

鳴上(こっちかな)グイッ

?「ふーん……? へえ……?」

鳴上「何か文句があるなら受け付けるぞ」

?「いやいや」

?「オッケー、記録した」

?「それじゃあ、この階層の最終エリアへ……」

?「っと、その前に」

鳴上「まだ何かあるのか?」

?「大事な事を言い忘れていた」


?「お前の持っているワイルドの力……ここではなんの役にも立たない事を、身を持って知るといい」

鳴上「!?」

鳴上「なんでお前がその事をっ……」

?「上へ行くぞ」

鳴上「なっ!?」


>告解室が上昇を始めた……

>……


>最終エリアに到着した。


鳴上「……どういう事だ」

鳴上「あいつの言った通りだ」

鳴上「ペルソナが呼べない……」


>いくら試してみても、ペルソナが現れない。

>召喚器がない事が原因だろうか。


鳴上「何故あいつは俺の力の事まで知っている?」

鳴上「……」


鳴上「ここで立ち止まって考えてもわかる事じゃないか」

鳴上「崩れる前に登ろう」

鳴上「……そういえばデカいのがくるって一体なんの事なんだ?」

鳴上「!?」


>急に周りが振動し始めた。

>下から大きな影が迫ってくる……!





『愛にギモンをかんじたら、魔法の力で速効解決!!』

鳴上「?」

『素行調査は弊社にお任せっ!』

鳴上「……え?」

『キラッと登場! キラッと解決!』

鳴上「え? え?」

『魔女探偵ラブリーン!』





『蜂の巣にされたいかッッ!!!!!!』


>足場の下からやってきたのは……

>巨大なラブリーンと魔女犬だった。



鳴上「なっ……」

鳴上「なんだよこれはあああああ!!」

魔女犬『犯人はアヤツですぞ!』


>魔女犬が、こちらに向かって突進してくる!

>足場に衝撃がきて、そこから落ちそうになってしまった……!


鳴上「くっ……こんなところでっ」

鳴上「死んでる場合じゃない!」


>必死でよじ登り、上へ向かった。

>ラブリーンと魔女犬は次々と容赦なくその邪魔をしてくる。


魔女犬『吾輩を太陽にかざすのだ!』


>ラブリーンが虫眼鏡を上へかざすと、熱が集まり足場が溶けていく……

>それを巧みにかわしつつ、ゴールはまだかと急ぐ……!






ゴーン…… ゴーン……


鳴上「鐘だ……! もうすぐか!?」


>あともう少しで頂上のようだ。

>……そこには吊り輪ではなく、扉が見える!


鳴上「つっ……」

鳴上「ついた!」


>扉に手を伸ばし、取っ手を思い切り引っ張った。


鳴上「!?」


>扉から出ようとしたところで、ラブリーンの虫眼鏡のステッキが長く伸び……

>こちらに向かって大きく振り下ろされたのが目に映った。


鳴上「ぐっ……!」

鳴上(ここまでなのか!?)


>しかし間一髪というところで、扉の中から放出される光が鳴上を守るかのごとくそれを吹き飛ばしていく――



ギャアアアアアアアア!!!!!!



>凄まじい断末魔と共に、ラブリーンと魔女犬は跡形もなく消え去っていった……

>そのうちに、急いで扉から脱出をした。



?「おめでとう。これで罪人監獄は終わりだ」


>告解室にいた代行人の声がする……


?「明日の夜が今から楽しみだ……フフッ」


>…
>……
>………



2nd day


05/09(水) 曇り 自室


【朝】


鳴上「ッ――」

鳴上「……あ、れ?」

鳴上「また変な夢か……」

鳴上「よく思い出せないけど」

鳴上「……」

鳴上「昨日の夜の記憶も、ない」


>昨日、クラブに行ってからいつ寮に戻ってきたのかさっぱり覚えていない。


鳴上「最近変な事が続いてるな……ん?」


>ベッドから起きあがると、左腕に不思議な重みを感じた。

>そちらへ視線を向けてみる。


鳴上「……え」


>左腕に絡みついていたのは

>自分以外の人間の腕だった。





>自分のベッドで、隣に知らない女が気持ちよさそうに寝ている……


鳴上(え、)

鳴上(えええええええええええええええっ!?)



終わります。

また次回。

ショタ好きなので神郷結祈と洵君に一票!

鳴上(な、なんだよこの子! 誰だよ!)

鳴上(というか、どうして一緒のベッドに!?)

鳴上(ダメだ……! 何一つ思い出せない!)

鳴上(とりあえず、この腕をどうにか……)

「……ん」

鳴上「!!」


>女の目が開いた……

>視線が合って、数秒時が止まったような感覚を覚える。


鳴上「……」

「……」

鳴上「……あ、あの」

「……ふふ。なあに?」

鳴上「一体どちら様でしょうか……」

「ひっどーい!」


>女は勢いよく起きあがると、体を突き飛ばしてきた。

>その勢いで、再びベッドに横になってしまう。


鳴上「痛っ……」

「貴方の方から誘ったくせに! 普通そういうこと言う?」

鳴上「は? え?」

鳴上「誘っ、た? 君を?」

鳴上「……俺が?」

「そうだよ。覚えてないの?」

鳴上( 覚 え て ま せ ん )

「昨日クラブで顔色悪そうにしててさ」

「ひとりで帰すの心配だったから、部屋まで付き添ってあげたんじゃない」

「そうしたら、貴方が……」

「今夜は帰さないって」

「それでその後、」

鳴上「わああああああ!!」

鳴上(う、嘘だっ、誰か嘘だと言ってくれ!)


>そんな事を言われてもまったく思い出せない。


「ふふ。照れちゃってかわいいー」


>混乱しているうちに、女が上からのしかかってきた。


「気持ちはわかるけどね?」

「私だって、その……あんなの初めてだったし」


>女は顔を赤らめながら恥じらっている。


鳴上(あんなのって、何だ!?)

「でも、誘われれば誰でもいいって訳じゃないから」

「貴方の事、気に入ったからそうしたんだから。そこんとこ誤解しないでね?」

「悠」


>女の顔が、徐々に自分の目の前に近寄ってくる。

>何故だか、迫る彼女の瞳から視線を逸らす事が出来ない……


鳴上「っ……」

「……」

「ああー!!」

鳴上「うわああああ! ごめん! 俺が悪かった!」


>意味もなく勢いで謝ってしまった。


「悠、ガッコウ……だよね!?」

「私も、もう行かないと!」

「じゃあ、またね!」


>女は身なりを素早く整え、部屋から急いで出て行ってしまった。


鳴上「……」

鳴上「どうしてこうなった……」

鳴上「って、あんなに騒いでみんなに見つかったらヤバいだろ!」


>特に、女性陣に気付かれたら何を言われるかわからない。

>急いで部屋から出て女を追いかけた。


学生寮 階段


アイギス「おはようございます、鳴上さん」

メティス「おはようございます」

ラビリス「おっはよー」

鳴上「うわああああ!! おはようございますうううう!!」


>三階に続く階段から降りてきた三人と遭遇してしまった。


ラビリス「えっ、ちょ……悠?」

アイギス「どうかしたんですか?」

メティス「体温・心拍数・呼吸……普段の鳴上さんのそれとは異なっています。異常なほどの発汗も見受けられるようですが」

アイギス「具合、悪いんですか?」

鳴上「いやっ、あのっ……」


美鶴「おはよう、みんな。どうした、こんなところで揃いも揃って」

鳴上「あああああ、本日はお日柄も良くうぅぅぅぅ!!」

美鶴「……今日は曇っているぞ?」


>一階から美鶴も昇ってきた。


鳴上(つ、詰んだ……これは確実に詰んだ!)

鳴上(……って、あれ?)

鳴上「あの、桐条さん。一階で……誰かを見ませんでしたか?」

美鶴「ん? 一階で?」

美鶴「……」

美鶴「ああ、見たな」

鳴上「ッ――!?」

鳴上(お、終わった……なんて説明すれば……)

美鶴「コロマルがお腹を空かせてそわそわしているようだったが」


鳴上「そう、そのコロマルなんですが……え、コロマル?」

美鶴「ああ。コロマルがどうした?」

鳴上「あ、いえ……」

天田「騒がしいですけど、何かありましたか?」


>天田まで部屋から出てきてしまった。

>集まる視線が痛い……


コロマル「ワンッ!」

メティス「コロマルさんが呼んでいるようです」

アイギス「そうそう、コロマルさんにご飯をあげに行くところでした。ちょっと失礼しますね」


>アイギスは一階へと降りていった。


ラビリス「悠、もしかして寝ぼけてる? まだそんな格好のままやし」


ラビリス「また変な夢でも見たんと違う?」

鳴上(夢……そうだったらどれだけ良い事か)


>しかし、誰もあの女の事には気付いていないようだ。

>とりあえずこの場は何も言い訳しなくて済みそうだ。


ラビリス「ウチらラウンジで待ってるから、はよ悠も支度して来てな!」

鳴上「……あ、ああ」


>自分の部屋へと逃げるように戻った。



自室


>今まで気付かなかったが、携帯を見ると着信とメールがそれぞれ一件ずつ入っているのが確認できた。

>どちらとも菜々子の携帯からのものだった。

>時間は昨日の夜だったが……

>おそらく、クラブにいた頃だ。

>無視する形になってしまっているので、きちんと謝らなければ。

>今の時間ならまだ学校に行っていない筈なので、急いで菜々子の携帯にかけてみた。


prrrr……


菜々子『お兄ちゃん!? おはよう!』

菜々子『わあい、お兄ちゃんから電話だ!』

鳴上「おはよう菜々子。昨日は電話に出れなくて、しかもこんな時間に電話してごめんな。すぐ謝っておきたくて……」

鳴上「何か用事だったか?」

菜々子『ううん。ただ、急にお兄ちゃんの声が聞きたくなっただけ、なんだけど……』

菜々子『……』


>菜々子は急に黙ってしまった。


鳴上「菜々子?」

菜々子『……あ、うん。えっと』

菜々子『お兄ちゃん……だいじょうぶ?』

鳴上「えっ? 何が?」


菜々子『あのね、菜々子ね、昨日の夜とつぜんいやなヨカンを感じたの』

菜々子『お兄ちゃんの身に何かキケンがせまってるような、そんなヨカン』

菜々子『特に理由があった訳じゃないんだけど……』

菜々子『これって【おんなのカン】っていうのだよね?』

鳴上「へ、へえ……」

菜々子『それでお兄ちゃんに電話とメールをしてみたんだ。そのあと、菜々子ねむくてすぐ寝ちゃったみたいなんだけど……』

菜々子『だから、朝からお兄ちゃんの声がきけてよかった!』

菜々子『……何もないよね? お兄ちゃん?』


>菜々子の言葉が胸に刺さる……

>自分に何があったのか記憶がないからこそ、余計に心が痛い。


菜々子『あ、菜々子もう学校いかなきゃ!』

鳴上「そうだったな、長々とごめんな」

菜々子『だいじょうぶ! じゃあまたね、お兄ちゃん』


>菜々子との通話が終了した。


鳴上「ヤバい。菜々子の勘がヤバい」


>さっきまでの事は、犬に噛まれたとでも思って早く忘れてしまおう……

>今は、学校に急がないといけない。

>……


通学路


メティス「ところで鳴上さん。昨夜はお出かけになられていて遅かったようですが、どちらに?」

鳴上「えっ」

鳴上(気にしないようにしてる矢先に傷口を抉られた……)

メティス「おかげで報告が遅れてしまいました」

鳴上「報告?」

メティス「はい。アイギス姉さんも、美鶴さんも、天田さんも、マヨナカテレビらしきものは確認していないとの事です」

鳴上「!」

メティス「ちなみに昨夜もそうです」

鳴上(そっか。昨日も夜まで雨が降っていたのか……)

メティス「鳴上さんはどうでしたか?」


鳴上「いや。昨日は見ていないな」

鳴上(そもそもテレビの様子を確認出来てなかった訳で……)

鳴上「でも、一昨日の夜は確かにマヨナカテレビを見たんだ。裏付けもとれたし」

鳴上「それに、マヨナカテレビに映っていた内容も思い出したよ」

ラビリス「ホンマに? それで結局どんなんやったん!?」


>二人に自分が見たマヨナカテレビの内容を話した。

>そして、それが三年前や今現在噂になっている話と同じである事。

>更に、昨日出た衰弱死事件にその噂が絡んでいるかもしれないなどという話まで広がっている事を説明した。


ラビリス「夢の中で落ちた時、そのまま目が覚めないと現実で死ぬかあ……変な噂やね」

メティス「それにしても、なぜ鳴上さんだけがそのマヨナカテレビを目撃しているのでしょうね」

メティス「もしかして、鳴上さんの部屋にあるのは特殊なテレビだったりするのでしょうか?」

鳴上「そんな事ないと思う。市販されてるどこにでもある普通のテレビだ」

メティス「そうですか……」

メティス「ところで、その話が関係しているかもなどと言われている昨日の衰弱死事件ですが……」

メティス「どうやら亡くなっているのは一人だけではないようですね」


鳴上「えっ!?」

メティス「昨夜のニュースで確認しました。昨日だけで、似たような死体が三人ほどあがったとか」

ラビリス「美鶴さんが不審がって、昨日遅くまでその事を調べてたみたいやね」

鳴上「無気力症が流行っていた時にも連続で起きていた事件らしいからな」

鳴上「その原因は未だに解っていないって話だし……」

メティス「シャドウが関係しているのかもしれないという事ですね」

ラビリス「さっき言ってた妙な夢をシャドウが人間に見せてるとか?」

鳴上「どうだろうな」

ラビリス「そういや、悠が見たっていう変な夢の方は思い出せたん?」

鳴上「ん……そっちの方はさっぱりだ」

ラビリス「もしかしてそれが落ちると死ぬ夢だったりしてなー、なんて」

鳴上「ははっ、そんな事ある訳ないだろ」

鳴上(……まさか、な)


>……


【放課後】


月光館学園 3-A 教室


>午前中で授業が終わった。

>今日は、進路指導の最終日だ。

>メティスとラビリスはその件でもうしばらく学校にいなければならないようなので、先に帰らせてもらう事にした。

>帰ったら、例の衰弱死事件の事や噂の事などもう少し調べてみようか。

>……


辰巳ポートアイランド駅前


>久しぶりにゴスロリ服の少女をここで発見した。

>例のごとく、チドリがスケッチブックに絵を黙々と描いている。


鳴上「久しぶり、チドリ」

チドリ「……悠?」


チドリ「こんにちは」


>チドリは一瞬だけ手を止めてこちらに視線を移したが、すぐにまたスケッチブックに集中し始めた。

>鉛筆をそのまま走らせながらだが、チドリは言葉を続ける。


チドリ「このあいだは……どうも」

鳴上「ああ、うん。無事に会えたみたいだな、順平さんと」

チドリ「ええ」

鳴上「順平さん、また来るって言ってたけど、もしかして今日?」

チドリ「……さあ、どうかしら」

鳴上「……」

鳴上「でも、その顔は、順平さんを待ってるって顔だ」

チドリ「……」


鳴上「なあ、この間から気になってたけど、順平さんの連絡先知らないのか? 電話番号とか住所とかメールアドレスとかさ」

鳴上「どうしてそうやって、来るかもわからない時にこんな場所でいつも待っているんだ?」

チドリ「余計なお世話」

鳴上「……ごめん」

チドリ「……」

チドリ「携帯の番号は、知ってる。聞いてもいないのに教えてくれたから」

チドリ「でも、私は携帯持ってないし、電話って好きじゃない」

チドリ「離れていても、簡単に繋がる事が出来るものなんて……」


>チドリは黙ってしまった。


>彼女の考えている事は、顔色をうかがってもよくわからない……

>話題を変えた方がいいのだろうか。


鳴上「えっと……あ、そうだ」

鳴上「俺、美術部に入ったんだよ」

鳴上「まだ、これといってまともな活動してないけど……でも、絵が描けたらチドリにも批評して欲しいな」

チドリ「……ふうん?」

チドリ「気が向いたらね」

鳴上「チドリは今日、どんな絵描いているんだ?」


>チドリのスケッチブックを覗き込んでみた。

>そこには、ポートアイランド駅前の風景の中をたくさんの羊が行き交う絵が描かれている。


鳴上「何で羊?」

チドリ「最近、誰も彼もがそう見える」

チドリ「ここにいる人だけじゃない」

チドリ「私も、……貴方も」

チドリ「迷える子羊だわ」

鳴上「羊に、見える? 周りの人が……?」


>なんだろう……

>つい最近、誰かも似たような事を言っていたような気がするのだが……

>どうしてそんな風に思うのか、はっきりとした心当たりが、ない。

>ずっとこういう事が続いている気がして、なんだか気持ち悪い。

>どうかしてしまったとでも言うのだろうか。


チドリ「ものの例えよ。あまり深く考えないで」

鳴上「……」


>鳴上たちがいるその雑踏の中で、不意に街頭の巨大モニターからニュースが流れているのが耳に届いた。

>どうやら、昨日の衰弱死事件の続報のようだが、はっきりとした内容までは周りの騒音のせいで頭の中に入ってこない。


鳴上「……なあ、チドリは死ぬ夢って見た事あるか?」

チドリ「死ぬ、夢」

チドリ「……」

チドリ「あるわ」

鳴上「え……」

チドリ「誰かを殺そうとする夢も、誰かが死ぬ夢も、そして私が死んでいく夢も、よく見る」

チドリ「それがとてもリアルで、……」

チドリ「っ、アタマ……いたい……」


>チドリは頭を両手で抱えて苦しそうにしている。


鳴上「だ、大丈夫か!?」

チドリ「っ……」

チドリ「……平気」

チドリ「今日はもう、帰る」

鳴上「途中まで送ろうか?」

チドリ「平気って言ってるでしょ」

鳴上「ん……じゃあ、気をつけて、な?」


>心配ではあったが、チドリがそのままゆっくりと去っていくのを静かに見守った。



>『ⅩⅡ 刑死者 チドリ』のランクが4になった


>……駅前から去っていこうとするチドリの足が急に止まった。


チドリ「ねえ、悠。順平は悠に何か言ってた?」

チドリ「……私のことで」


鳴上「チドリのことで?」

鳴上「えと、またチドリの話し相手になってやって欲しいって言われた事ならあるけど」

チドリ「っ……!」

チドリ「……どうして」

チドリ「なんで順平が悠にそんなこと頼むの?」

チドリ「なんで順平がっ……」

鳴上「チドリ?」

チドリ「……順平なんて」

チドリ「順平なんて、死んじゃえばいいんだわ!」

鳴上「えっ……チドリ!?」


>チドリは走り去って行ってしまった。

>その最後の言葉は、涙声だったような気がする……

>追いかけようとしたが、人が多くすぐに姿を見失ってしまった。

>心配になって辺りを探してみたが、それ以降チドリの姿を見る事はなかった。

>……


【夜】


>あの後どうする事も出来ず、仕方なく寮に戻ってから長い間PCに向かった。

>マヨナカテレビについては相変わらず自分以外にそれらしい目撃証言がないようだ。

>何故、自分だけがあの番組を見たのだろう……

>そこで語られた『落ちると死ぬ夢』も、自分の中ではもはやただの噂で終わらせる事は出来そうにない。

>不思議とそう思っていたりもした。

>しかし、これ以上はどうやって調べればいいのかわからない。

>残された道は、やはりパオフゥが言っていた過去に悪夢から生還したとされる『伝説の男』を探す事だろうか。

>……彼はどうやって生き延びたのか。

>もし、ちょっとした話だけでも聞く事が出来れば、何かのヒントになるかもしれない。

>また、クラブ エスカペイドへいってみよう。

>『伝説の男』はそう簡単に見つからないかもしれないが、それ以外にもあそこにはまだ話を聞きたい人物がいる。

>今夜は、ヴィンセントに会えるだろうか……


>……


クラブ エスカペイド


>店内は若者で賑わっている。

>一度店内をぐるりと見回ってみる事にした。

>男の客は割といるが、死地から生き延びた『伝説の』と付きそうな風体の人物はいそうになかった。


鳴上(ここの常連客の男ってだけじゃ明らかに情報不足だもんな……)

鳴上(パオフゥは他にその男の情報を持っていないんだろうか。また今度、聞いてみよう)

鳴上(……ん?)


>昨日と同じカウンターの席に、ヴィンセントの姿を見つけた。

>彼も同時にこちらの事に気付いたようだ。


ヴィンセント「よう。昨日の学生」

鳴上「こんばんは」

鳴上「それと、俺の名前は鳴上悠です。よろしく」

鳴上「昨日の約束、守りましたよ」

ヴィンセント「ん? ……ああ、あれね。お前も律儀だな」

ヴィンセント「そういう男はモテるぞ」

鳴上「モテるとかモテないとかどうでもいいんで、貴方も約束守ってください」

鳴上「昨日の話の続きを聞きにきました。それとドリンクを一杯、ごちそうに」

ヴィンセント「……せっかちなのはいけないな」

ヴィンセント「とりあえず、隣にこいよ」


>ヴィンセントの隣の席に座った。


ヴィンセント「彼に同じのを」

店員「かしこまりました」


>目の前に、また謎の黒い液体が出てきた。


鳴上「いただきます」

ヴィンセント「……鳴上、って言ったか?」

鳴上「はい」

ヴィンセント「お前はなんであの夢の噂を気にしている?」

ヴィンセント「どこから出たのかわからない、お伽話みたいなものを」

鳴上「それは。……」

ヴィンセント「魔女に呪い殺されるのは嫌か?」

鳴上「まあ、自ら望んで殺して欲しいとは思いませんよ。そんなハードなマゾじゃないんで」

ヴィンセント「ふーん?」


鳴上「だから、そんな夢を見ないで済む方法がわかるなら知りたいじゃないですか」

ヴィンセント「そうだな。そう思うのが普通だ」

鳴上「それで、そんな夢を見るようになる人間の条件って、魔女が呪う対象って具体的にどういう人物なんですか?」

ヴィセント「……浮気男」

鳴上「えっ?」

ヴィセント「恋人がいるのに、他の女に現を抜かしているような男なんかが狙われるって話をよく聞くな」

鳴上(なんだそのふざけた話は……)

鳴上「なんかが……って事は、他の理由で見るようになる人間もいるんですか?」

ヴィンセント「まあ、そういう事になるよな」


ヴィンセント「結局、様々だって事だ。その中でも、そういう例が割と多いっていう話」

鳴上「……」

ヴィンセント「鳴上は、浮気をした事は?」

鳴上「ありませんね」

鳴上「まず、本命がいた事がありませんから」

ヴィンセント「へえ。きっぱり言ったな」

ヴィンセント「聞いた話によると、男の七割は浮気の経験があるそうだ」

ヴィンセント「お前はレアケースの方って訳だな」

ヴィンセント「ま、十代の若い奴で浮気経験があるヤツなんて、それほどいそうにないか」

鳴上「……ヴィンセントさんはあるんですか? 浮気の経験」


ヴィンセント「あるよ」

鳴上「そっちも、きっぱり言いましたね」

ヴィンセント「誤魔化してどうにかなる罪って訳じゃないからな、あれは」

鳴上「罪?」

ヴィンセント「罪だろ」

ヴィンセント「自分の恋人の未来を、俺なんかのせいで台無しにするところだったんだ……」

ヴィンセント「罪は拭う事は出来ても、そうしたからって綺麗に消し去る事は出来ない」

ヴィンセント「浮気を清算した今でも、あの時の事を思い出すと自分で自分の事を殺したくなるね」

ヴィンセント「……浮気ごときで大げさに言い過ぎだって思うか?」

ヴィンセント「でも、俺は……」

ヴィンセント「……」


>ヴィンセントは、ドリンクを喉に流し込んで黙ってしまった。


鳴上「……」

鳴上「ヴィンセントさんは優しい人なんですね」

鳴上「だから、そんな風に今でも自分を責めてるんだ」

ヴィンセント「優しかったらそもそも浮気なんてしねえよ」

ヴィンセント「……」

ヴィンセント「なあ、お前はさ」

ヴィンセント「他人の未来を奪ってでも、何かを手に入れたいって思った経験……あるか?」

鳴上「え……」

鳴上「なんの話ですか、突然」

ヴィンセント「誰かの可能性を摘みとるような男……」

ヴィンセント「そんな奴に、呪いはやってくる」

鳴上「!」


ヴィンセント「……って、これもどっかで聞いた話なんだけどな」

鳴上(この人……)

鳴上「あの、」

ヴィンセント「さ、話はもうこれで終わりだ」

ヴィンセント「子供はもう帰って寝る時間だぞ」

ヴィンセント「俺もあまり遅くなったらカミさんにどやされる」

ヴィンセント「じゃあな、よい夢を」


>ヴィンセントは二人分のドリンク代を置いて帰っていった。


鳴上(行ってしまった……)


>彼はこの件について、もっと何かを知っていそうな気がする……

>またここにやってくれば話を聞けるだろうか?

>そんな事を考えながら、奢ってもらったドリンクを飲んだ。



>『ⅩⅤ 悪魔 ヴィンセント』のランクが2になった


>“誰かの可能性を摘みとるような男”

>自分は今まで生きてきた中で、そんな真似をした事などないつもりだが……

>もし仮に、気付いていないだけで誰かが自分のせいで犠牲になるような事が今まであったのだとしたら。

>それは、呪われるに足る理由になるのだろうか。

>……自覚がないという、それ自体が罪であるような気がする。

>そんな事を、ふと思った。


>…

>……

>………





「あ、やっぱりここにいた♪」





それが罪で、これが罰だというのなら、甘んじて受けるべきなのだろうか――


Next→

――stage 3 Torture Chamber


拷問刑場――



>>881
あの双子いいよね


これで終わります

また次回


Night mare


>……

>気付くとまた石の階段や壁が自分の目の前に立ち塞がっている。


鳴上「っ……これで、ここに来るのも三回目、か」

鳴上「一度見たら毎晩来るようになるって話、本当だった訳か」

鳴上「……ん? 俺、クラブに行ってからその後……いつ帰って寝たんだ?」


>起きれば夢での事が、夢をみれば現実での事が曖昧になる。

>こんな事がずっと続いていたら気がおかしくなってしまいそうだ……

>しかし、ここで泣き言を吐いても何にもならない。


鳴上「とにかく今は、少しでも上へ行く事。落ちないようにする事。これが最優先だ。そして……」

鳴上「カテドラル……か」

鳴上「……死んでたまるか」


>……


踊り場


>少し慣れてきた事もあるのか、第一エリアは割と簡単に越せたような気がする。

>しかし、今回訪れた場所はその先々にトラップがしかけてある石が多く存在している。

>上に乗ると無数の針が飛び出してくるという代物なのだが……

>一歩間違えると簡単に串刺しにされてしまうので、決して油断は出来ない。

>実際、一緒に登っている羊の何匹かがそうなったところをこの目で見てしまっていた。

>……この階層はあといくつエリアがあるのだろう。

>まだこんな危ない仕掛けがいくつも待ち受けているというのか……

>出来る事ならば、少しでも早く多く上へと登っていきたいところだが、体力が追いつかない。


鳴上「夢の中なのにこんなに疲れるなんて……ホントにふざけてるな」


>あの告解室に行くのは少し休んでからにしよう。

>聞いてくれるかはわからないが、他の羊たちにも声をかけて少し話をしてみようか。


?「おい! そこのキノコ頭の羊!」


>と思っていたら、向こうの方から話しかけてきた。


鳴上「それ、俺の事?」

?「そうだよ。他に誰がいんだよ!」


>帽子をかぶった羊がこちらに近付いてくる。


鳴上(この帽子、どこかで見た事あるような……?)

帽子の羊「なあ! これいったい何が起こってる訳!? 意味わかんねーんだけど!」

鳴上「もしかして、そちらもつい最近こちらに連れて来られた口で?」

帽子の羊「そちらもって事は、……そちらも?」

鳴上「ああ。そうだ」


帽子の羊「うっわ、マジかよ……やっと話が通じそうな奴に会えたと思ったのに」

帽子の羊「力は使えないみたいだし、お手上げ侍だぜ……」

鳴上「力?」

帽子の羊「あーあーいやいや、こっちの話!」

帽子の羊「……なあ、ここって落ちたら生きて帰れないって話みたいだけど、それって」

鳴上「嘘じゃないらしい」

帽子の羊「……」

帽子の羊「……チクショウ、なんでこんな事に!」

鳴上「ここに連れてこられる理由に心当たりは?」

帽子の羊「ねーよんなもん!」

帽子の羊「明日やっとまたアイツのところに行けるってのに……」


帽子の羊「おい! どうしたらここから出れるか、お前何か知ってるか!?」

鳴上「とにかく上へ登れって。それで、カテドラルってところまで行けばいいとか……」

帽子の羊「は!? カテ……カテーテル!?」

帽子の羊「よくわかんねーけど、登るしかないんだな! よし!」

鳴上「あっ、ちょっ……!」


>帽子の羊は走っていってしまった。


鳴上「……。やっぱり、あの感じも何処かで……」

鳴上「気のせい、か?」

鳴上「俺も、あまりゆっくりはしてられないな」


>告解室に向かう事にした。

>……


告解室


鳴上「おい、いるんだろ?」

代行人「……ああ、待ってたぞ。まあ、まずは座れ」


>昨夜その場所にいた代行人の声だ。


代行人「もうこの世界にも順応してきてるみたいだな」

鳴上「そうなる前に、ここからおさらばしたかったけどな」

鳴上「だから、早いとこカテドラルへ行きたい」

鳴上「あとどのくらい登れば辿り着けるんだ?」

鳴上「まさか……三桁や四桁の階があったりはしない、よな?」

代行人「あー、その事だけどな」

代行人「管理者が本気で頑張ってくれてるみたいだぞ」

鳴上「え?」


代行人「昨夜まではこの上がそれはもうぐっちゃぐちゃで、300近くまで階層があって中身も見る度変わってたらしいんだが……」

代行人「なんとか元の構造に戻りつつあるってさ」

代行人「ここが第三階層の一つ目のエリアが終わったところだから……」

代行人「この階層で残っているエリアはあと二つ。それが登りきれても、あと五つほど大きな階層が残っている計算になるようだ」

代行人「でも最後まで行かなくてもいいみたいだぞ。カテドラルは大きな階層の中の第七階層目にあたる場所にあるって話だから」

代行人「……まあそれも、ここがきちんと元通りになればの話だけどな」


鳴上「昨日もこの世界を修復してるとかなんとか言っていたけど、なんでそんな事してるんだ?」

鳴上「ここは元からおかしな場所だけど……今はさらにおかしくなってるって事なのか?」

鳴上「その管理者の手にもあまるくらいに」

代行人「そういう事だ」

代行人「この世界は今、ある力の影響を受けて歪んで壊れ不本意な形で再構築されてしまっている状態らしい」

代行人「だから実を言うとここは、管理者の知っている世界とは厳密には別物になってるって訳だな」

代行人「この先に何が起こるか……あいつにもわからないんだと」


鳴上「それじゃあ……」

鳴上「カテドラルに辿り着いても、どうにもならないかもしれないって事もあるのか?」

代行人「あるかも、な」

鳴上「……」

代行人「なんだ。意味がないかもしれないなら、諦めるか?」

鳴上「……いいや」

鳴上「進むに決まってるだろ」

鳴上「何もなかったとしても、道自体が閉ざされてないのならな」

鳴上「途中で何かいい方法が思い浮かぶかもしれないし」

代行人「……へえ」

代行人「オッケー、わかった。じゃあ、ここでの質問は飛ばして、次の告解室で聞く事にしよう」

代行人「早く先に行きたいようだから、な?」

鳴上「ああ」

代行人「じゃあ、次のエリアへ行こう」


>告解室が上昇を始めた。

>……


第三階層 第二エリア


鳴上「……なんて、アイツにあんな事を言ったのはいいけど」

鳴上「カテドラルを目指す事が無駄だとしたら、俺は……」

鳴上「やめよう」

鳴上「悪い方へ考えるのは……」

鳴上「……今回は、一段と高い場所だな。上がよく見えない」

鳴上「……行くか」


>……


踊り場


>時間はかかったが、第二エリアを無事突破し、その先の踊り場まで辿り着いた。

>串刺しになる羊も、落下していく羊も、多くなってきている。

>次にああなるのは自分かもしれないなんて、考えたくもなかった……

>だが、代行人の言葉を信じるならば、この第三階層は次のエリアで終了の筈だ。

>今夜のうちに一区切りつければいいのだが……


鳴上「……あれ? そういえば、さっきの帽子の羊の姿がないな」

鳴上「もうこの階層をクリアしたんだろうか」

鳴上「それとも……」

鳴上「……」


>嫌な想像が後をたたない。

>……早く、告解室へ行こう。


告解室


鳴上「来たぞ」

代行人「ああ。座れよ」

代行人「……随分手こずってたみたいだな。こんなんで、この先の最終エリアを越せるかな」

代行人「次はまたデカいのがやってくるぞ」


>デカいの……

>巨大ラブリーンと魔女犬がまた襲って来るのだろうか。

>せめてペルソナの力があればもう少し楽に進めるのだろうが……


鳴上「……どうしてここだと使えないんだ?」

代行人「それは、ここが『そういう世界』だから、としか言いようがないな」


>聞いたつもりで呟いた訳ではなかったのだが、代行人はなんの事を言っているのか理解しているようだ。


代行人「仮にお前以外にもあの力を持つ奴らがここに来てるとしたら、やっぱり使えてない筈だぞ」

代行人「本来、この場所は『お前たちの世界』とは性質の異なる『別の世界』に存在するものだった」

代行人「それが、ある人間の存在が原因で繋がってしまったというだけだからな」

代行人「ここのルールはそのまま『別の世界』を準拠にしている訳だから、あれが扱えなくて当然だろ」

代行人「……そうでなくとも、非常に相性が悪いようではありそうだけどな」


>言っている意味がよくわからない。


鳴上「……ちょっと待った。ある人間が原因ってのはなんだ?」

鳴上「もしかして……そいつが、この夢の元凶なのか!?」

代行人「……そうとも言えるし、違うとも言える」

鳴上「何だって……?」

代行人「少なくとも、その人間にすべての責任がある訳ではない」

代行人「彼もまたこの夢にとらわれた犠牲者のひとりだしな」

鳴上(彼……という事は、男か?)

代行人「お前も知ってる人間だよ」

鳴上「!?」

鳴上「誰なんだ!?」

代行人「そんな事、ここで言ってもどうせ忘れるだけだ」

代行人「聞いてばかりいないで、少しは自分の頭で考えてみたらどうだ?」

鳴上「……」

代行人「無駄なお喋りはやめて、忘れる前にこちらからの質問に移るぞ」

鳴上「……ずっと忘れてればよかったのに」


機械的な声「第三問です」

機械的な声「肉と野菜どちらが好きですか?」



>『肉』と『野菜』のロープが垂れ下がってきた。



鳴上「もしかしてさ、お前の姿も羊だったりするのか?」

代行人「ん?」

鳴上「あまりにも悪ふざけが過ぎるなら、お前をジンギスカン鍋にしてやるからな」

鳴上「……こっちだ」グイッ

代行人「ふーん、そうか」

代行人「よし。じゃあ、お待ちかねの最終エリアへ行こうか」

代行人「グッドラック」


>告解室が動き出した。


>……


第三階層 最終エリア


>ここを越えれば、次は第四階層だ。

>スタートが肝心。勢いで登りきってしまおう。


鳴上「ッ!!」


>体に大きな振動を感じる。

>『デカいの』が来た……!


『フフ……フフフッ……』

鳴上「え――?」


>やってきた『デカいの』は、昨夜現れた巨大ラブリーンと魔女犬





>……ではなかった。


『さあ、そこに跪きなさいッ!!』

鳴上「あれは……トモエ……じゃない。あれは」

鳴上「里中の、シャドウ……!?」


>巨大な千枝のシャドウが下から迫ってくる……!


鳴上「ど、どうしてだ!? 里中のシャドウは里中のペルソナに生まれ変わった筈だろっ!?」

シャドウ千枝『逃げんなぁっ!!』


>巨大な千枝のシャドウは持っている鞭を振り下ろし、足場を崩そうとしてくる。


鳴上「逃げんなって言われたら逃げるに決まってるだろっ!」

鳴上(くそ……ペルソナが使えないのがこんなに不便だなんて!)


>迫る攻撃と無数の罠の両方に気を使いながら登っていくのは至難の技だった。

>何度も千枝のシャドウの攻撃からくる振動に足を止められ、落ちそうになり、どう避けても絶対に渡らなければならなくなるトラップが上へ行くのに比例して多くなる……

>しかしそれは、同時にゴールが徐々に近付いているという証でもあった。

>それを決定付けてくれる鐘の音も耳に届いてくる。

>だからといって気は抜けない。

>一番上にある扉に手が届くまでは……!


鳴上「――着いた!」


>手に触れた、扉の取っ手を勢いよく引っ張った!


シャドウ千枝『私の靴の味を知りなさいッ!』

鳴上「なっ……!?」


>千枝のシャドウの靴の裏が顔面に迫ってくる!

>……しかしそれも、扉から放たれた光の衝撃が消し去ってくれた。


シャドウ千枝『キャアアアアアアアア!!』


>千枝のシャドウは完全に消滅した。





代行人「おめでとう。これで第三階層、拷問刑場は終わりだ」

代行人「見事な登りっぷりだな……見ていて飽きなかった」

代行人「明日の夜、また会おう」


>…
>……
>………


3rd day


05/10(木) 曇り 自室


【朝】


鳴上「っ……!」

鳴上「……朝、か?」

鳴上「はあ……」


>なんだか眠った気がしない。

>また夢を見たようだが、やはりよく覚えていなかった。

>良く覚えていないといえば、昨夜の事もだ。


鳴上「俺、クラブから何時帰ったんだ……?」

鳴上「……ハッ!?」


>昨日の朝の似たような状況を思い出して、思わず勢いよく隣を振り返ってしまった。

>……

>どうやら、またあの女が隣で寝ているというような事はなかったようだ。


鳴上「良かった……」

鳴上「今、何時だろう」


>枕元にあった携帯で時間を確認した。

>時間はいつも起きている時刻だったが、それと同時にメールが一件届いている事に気付いた。


鳴上「里中からメール? 届いたのは昨日の、……夜か」

鳴上「……」


>メールを開いた。


from:里中千枝

やっほー鳴上くん!突然ごめんね。

元気してるかなーってちょっと気になっちゃってさ。

少し前に会ったばっかりなのにね。

この間のゴールデンウイークの疲れとか出てない?

そういう時は肉を食べるのだ。肉を!

時間があったら電話したいなーなんて言ってみたり。

色々忙しいかもしれないし、大変だろうけど無茶したらダメだからね?

なんかまとまりのない事、色々言っちゃってるかな?(汗)

今日はこのへんにしとくね。じゃあまた!

追伸:今日、靴を新調しました。

今履いてるやつ、だいぶ踵がすり減っちゃてたからさー。

たぶんこれ、花村に蹴り入れまくってたせいだよ。

今度、花村がいかにアホかって話も聞いてね……知ってるかもしれないけどさ(笑)



>メールには、新しく買ったと思われる靴の画像が添付されていた。

>陽介は今度、この靴の跡まみれにされるのだろう……

>……

>自分の事を気にしてくれている内容はとても嬉しいのだが、何故だか悪寒が走る。

>何かにせっつかれるようにしながら、千枝へ差し障りのない返信メールを急いで打って送った。



>……千枝のメールで思い出した事がひとつ出てきた。

>部屋の隅に置いてある、また荷解きをしていない鞄を開けた。


鳴上「結局、また持ちかえってきちゃったな。この制服」

鳴上「叔父さんの家の部屋もあのままなんだし、あっちに置いとけばいいかと思ったんだけど……」

鳴上「……」


>八十神高校の制服をハンガーにかけ、月光館学園の制服の隣に吊した。

>そんな風にもたもたしていたら、時間もなくなってしまったようだ。

>学校へ行く準備をしなければ……


>テレビをつけて、ニュースを耳に入れながら、支度をした。


『……先日お伝えした謎の連続衰弱死事件、新たに犠牲者が発生しました』


鳴上「!!」


>ニュースの内容は、同じような衰弱死体が新たに三件出たというものだった。

>これで今判明しているだけで、合計七人の人間が似たような死に方をしている事になる。

>亡くなった人物はいずれも男性で、接点らしい接点はないがあまりにも不自然な死体の状況から、事故ではなく悪質な無差別殺人の可能性もあるとしているようだ。

>また、三年前にもこのような事件が連続して起きた事についても話にあがっており、どのチャンネルでもその話題の事ばかり報道していた……


鳴上(桐条さんがこの事を調べているって言ってたけど、何か有力な情報を掴めたんだろうか)


>後で聞いてみよう。

>今は、メティスとラビリスと一緒に学校へ向かう事にした。

>……


【昼休み】


月光館学園 3-A 教室


ラビリス「悠、ちょっとええ?」

鳴上「ん?」

ラビリス「メティス、悠借りるわ」

メティス「了解しました。いってらっしゃい」

鳴上「えっ、どうした?」


>ラビリスに引っ張られて教室から出た。


ラビリス「生徒会室がどこか案内して欲しいんやけど」

鳴上「生徒会室? それならほら、あそこだぞ」


>目の前にある生徒会室を指さした。


ラビリス「なんや、こんな近くにあったんか!」

ラビリス「わざわざ悠に聞く事もなかったかー、ごめんな連れ出して」


鳴上「それはいいけど、どうしてこんな場所に?」

ラビリス「あのな、ウチ生徒会の手伝いしようと思ってん」

鳴上「えっ!?」

ラビリス「昨日の進路指導の時の話の流れでな、生徒会に人手が足りないから準役員を探しているって先生から聞いて」

ラビリス「ウチ、それに立候補したんや!」

鳴上「生徒会の準役員、か」


>そんなものをやりたがるラビリスに驚いたが、彼女の表情は本気のようである。


ラビリス「もう必要な書類に署名は書いたから、あとは挨拶しとけばいいって先生が」


ラビリス「だからウチ、ちょっと行ってくるわ」

ラビリス「……あれ? 扉開かない?」

鳴上「たぶん、活動は放課後なんじゃないのか?」

ラビリス「あ、そっか! そういえばそんな事言っとったわ」

ラビリス「アカンなあ。先走りすぎたわ」


>ラビリスは恥ずかしそうに笑っている。


鳴上「どうして準役員に立候補を?」

ラビリス「うん。あのな……ウチ、テレビの中でみんなにひどい迷惑かけてもうたやろ?」

ラビリス「悠たちはもちろん、八十稲羽の人にまで」


ラビリス「それから保護されて、今はこうして普通に生活さしてもらっとるけど……ウチ、誰かの力がないと結局なにもできてないんやなあって、そう感じたんや」

ラビリス「だから、誰かの力になれるような、誰かの為になれるような事なにかできないかなってな」

ラビリス「わからないことばっかやけど、ウチにもやれるかな……」

鳴上「……ああ。ラビリスが真剣にそう思ってるなら、やれるさ」

ラビリス「えへへ、そうだったらええなあ」

ラビリス「……うん! 悠にそう言ってもらえたら、さらにやる気出てきたわ!」

ラビリス「ありがとな、悠!」


>ラビリスから感謝されている。

>少し仲が良くなれたようだ。



>『ⅩⅥ 塔 ラビリス』のコミュを入手しました

>『ⅩⅥ 塔 ラビリス』のランクが1になった


鳴上「放課後はひとりで大丈夫か?」

ラビリス「うん。帰り道ももう覚えたし、ひとりで残っても平気や」

ラビリス「教室戻ろ!」


>……


【放課後】


>今日の授業が全て終了した。

>ラビリスはすぐに生徒会室へと向かっていったようだ。


メティス「あの、鳴上さん。帰り、ご一緒してもいいですか? ラビリス姉さんは用事があるようですし……」

鳴上「ん、ああ」


>メティスと下校する事にした。

>……


メティス「例の事件、また死亡者が出ましたね」

鳴上「ニュースでやってたな」

メティス「鳴上さんはこの件、どう思いますか?」

鳴上「……」

鳴上「ただの事故だとは思えないな」

鳴上「自然死には到底見えないし、誰かの犯行なんだとしても人間の力で出来るような事でもないと思う」

鳴上「でも……」


メティス「でも?」

鳴上「……いや、なんでもない」


>シャドウの仕業であるとも思えないなどとは、今は口に出来ない……

>そう感じる理由を、上手く説明出来ないからだ。


鳴上「今、過去の似た事件で被害に遭いながらも生き延びたらしいって人を探してる」

鳴上「その人に話が聞ければ、何か手がかりが掴めるかもしれないしな」

鳴上「これもただの噂話だから、アテになるかはわからないけど……」

鳴上「あ、でも、その人とは別にこの事件について詳しそうな人をひとり発見したから」

鳴上「まずはそっちから聞き込みだな」


メティス「もしかして、最近夜に出かけられているのは、それが理由ですか?」

鳴上「ん……まあ、そうだな」

メティス「言ってくれれば、私もご一緒したのに」

鳴上「いや、そこまで大げさな事じゃないっていうか、ひとりでも平気だから」

メティス「……そう、ですか」

メティス「……」

鳴上「メティス?」

メティス「……鳴上さん。私って」

メティス「私ってみなさんの……鳴上さんの役に立っているんですか?」

鳴上「え? どうしたんだよ、いきなり」

メティス「私……」


>メティスは思い詰めたような表情をしている。


メティス「……最初の映画館の事件のときからそうです」

メティス「シャドウを倒そうと必死になっていました。なっていた、つもりなんです……」

メティス「でも、私結局何もしていないんです」

メティス「できていないんです。あの時、自分がやっていた事を聞かれたら、何も答えられません。鳴上さんたちにくっついていただけだから……」

メティス「ラビリス姉さんの件だって」

メティス「私もあの時、ラビリス姉さんの捜索にあたっていたんです」

メティス「でも、まったく見当違いなところを探していて、そうしている間に遊びに行ってた筈の鳴上さんが解決してしまって……」

メティス「それなのに、ふてくされるような真似をして。ラビリス姉さんにも変な態度とっちゃうし」

メティス「……自分が恥ずかしいです」

メティス「私、ここにいる意味あるんでしょうか」

メティス「私、ここにいてもいいんですか?」

メティス「シャドウとまともに戦う事も出来ない対シャドウ兵器なんて……」


鳴上(そっか、連休の終わりから様子が変だった理由って、この事もあるのか……)


>メティスは黙ってしまった。


鳴上「俺はメティスが役立たずだなんて思った事はないよ」

鳴上「他のみんなもだけど……ただ、傍にいてくれるだけでもじゅうぶん勇気をもらってるし」

鳴上「俺は、ひとりきりじゃないんだってな」

鳴上「だから今回の件も、メティスの力が必要になればすぐに言うから」

鳴上「今はまだひとりでも大丈夫だってだけの話だよ、さっきのは」

メティス「鳴上さん……」

メティス「……」

メティス「私、これからもっと頑張ります」

メティス「特別課外活動部の一員として恥じないように」

メティス「この街の平和の為にも」


>メティスは固い決意を見せている。

>メティスの気持ちを知る事が出来たような気がする。



>『Ⅴ 法王 メティス』のランクが2になった


鳴上「……やっぱり姉妹なんだな。言ってる事が似てる」

メティス「え?」

鳴上「いや、なんでもない」

鳴上「そういや、今度の休みは結局……」

鳴上「……!」


>姉妹で遊ぶという話はどうなったのかと聞こうとした時、目立つ姿が視界に飛び込んできた事で言葉が途切れてしまった。


メティス「鳴上さん?」

鳴上「あそこにいるの……」

鳴上「チドリ!」

チドリ「!」


>自分の声で振り返った人物は、やはりチドリだった。


鳴上「心配してたんだぞ、急にどうしたのかって」

チドリ「……」


鳴上「何か悩みがあるなら聞くぞ? そういう約束してるし。……順平さんの代わりにはならないと思うけど」

チドリ「……そうよ」

鳴上「え?」

チドリ「悠が順平の代わりなんて、する必要がない」

チドリ「私はただ……」


>チドリはそれ以上の言葉を続けなかった。

>かわりに聞こえてきたのは、街頭にある巨大モニターからのニュースの声だった。


『――連続衰弱死事件の速報です』

『さきほど、新たな死亡者の名前が発表されました』


>キャスターは、死亡者の名前を読み上げていっている。

>そこで最後に聞こえてきた名前は、この場を凍らせるのに十分な力を持っていた……


『――伊織順平さん 19歳。以上です』


鳴上・チドリ「ッ――!」

メティス「鳴上さん……今の名前って」

鳴上「そんな、まさか……」

チドリ「嘘、でしょ?」

チドリ「私が昨日、あんな事言ったから……?」

チドリ「順平っ……」


順平「よーっす! 皆さんお揃いでどしたの?」



メティス「……」

鳴上「……で」

鳴上「出たっ!?」

順平「ちょっ、なにその幽霊でも見たような反応は!?」

鳴上「順平さん……ですよね?」

順平「他に誰がいるっつーんだよ」


>確かに、生きた順平がそこにいる……

>さっき聞こえてきた名前は同姓同名の別人だったようだ。


順平「チードリ! よっす、おひさ!」

順平「ごめんな。来るの遅くなっ……」

順平「……チドリ?」

チドリ「っ……」


>チドリは俯いて小さく震えていた。

>そして上げた顔にある瞳には涙が溜まっていた……


順平「な……」

順平「なんだよ、チドリー。俺っちに会えて泣くほど嬉しい訳? いやあ、照れるなー」

順平「でもさ、ほら! 今は人前だし、な?」

チドリ「……っの」

チドリ「バカ! バカ順平!」

順平「うわっぷ!?」


>チドリはスケッチブックを順平の顔面に投げつけて走り去っていってしまった……


順平「いてて……」

鳴上「順平さん、今のはちょっと……」

メティス「これが、いわゆる『男子サイテー』というやつですか?」

メティス「モットモヒクイ」

順平「妹ちゃんの知識源はどこなんだよ……」


順平「まあ、チドリが怒ってる事に心当たりはあるから何も言えないけど……突然ガチギレされるとは思わなかったなあ」

鳴上「それなんですけど」


>順平に昨日の事とさっきあった事を話した。


順平「それは……マズった」

順平「タイミング最悪だったんだな、俺……」

鳴上「追いかけなくていいんですか?」

順平「ああ、もう行くって。チドリが何処に行ったかは大体見当ついてるし」


>順平はスケッチブックを拾い上げた。


順平「……お前、詳しい事情とか聞かないのな」

鳴上「今はそんな事話してる時じゃないと思うし」

鳴上「……また機会があって、順平さんが話してもいいと思ったら、聞かせてください」


順平「ん。この間から、なんか悪いな」

順平「サンキュ」


>順平は帽子をかぶり直し、苦笑している。

>二人の事は気になるが……今はそっとしておくしかないのだろう。



>『Ⅰ 魔術師 伊織順平』のランクが2になった。



順平「そういえば、鳴上よぉ」

順平「俺たち、最近どっかで会ったっけ?」

鳴上「え?」

順平「あ、いや、お前だけなんか久しぶりって感じがしなくてさ」

順平「ワリ、変な事言って。もう行くわ」


>順平は誤魔化して走っていってしまった。

鳴上(言われてみれば俺もそんな気がするけど……でも、そんな事ないよな?)

メティス「……私たちも行きましょうか」

鳴上「ん、ああ……」


>二人で学生寮に戻った。

>……


【夜】


>アイギスに聞いたところ、美鶴はずっと衰弱死事件の事について調べているようだった。

>もう数日は時間がかかるかもしれないらしく、寮の方にも来れそうにないのだという。

>ならば、こちらもこちらで出来る限りの事をするしかない。

>今夜もあの男、ヴィンセントがあの場所にいる事を祈ろう。

>……



クラブ エスカペイド


>若者から少々浮く形で、カウンターの指定席に座るヴィンセントの姿を発見した。


鳴上「こんばんは」

ヴィンセント「……」

ヴィンセント「……ああ。お前か」

鳴上「隣、良いですか?」

ヴィンセント「ああ」


>ヴィンセントは何処となく元気が無いように見える。


ヴィンセント「……だいぶ偉い事になっているな」

ヴィンセント「落ちる夢が原因だって囁かれてる、例の謎の衰弱死事件」

鳴上「ここ三日くらいで、もう十人以上の死亡者が出ているみたいですね」

鳴上「さっきここに来る前に見たニュースで、また新しい犠牲者の名前があがっていました」

ヴィンセント「犠牲者、……か」

ヴィンセント「あの衰弱死をした人間の口からは、蟻が出てくるんだとな」

ヴィンセント「その蟻は魔女の使い魔だって言われているようだ」

ヴィンセント「想像しただけで気持ち悪いな」


鳴上「あの……ヴィンセントさんはどうしてそんなにあの噂の事とか詳しいんですか?」

ヴィンセント「……」

ヴィンセント「三年前にあった似たような事件の時にな、あの死に方をした知り合いが何人かいたんだ」

ヴィンセント「周りも当然あの話題ばっかで、自然と色々な話が耳に入ってきたってだけだよ」

ヴィンセント「だから、この話題を聞くとどうしてもあのときの事を思い出しちまう」

ヴィンセント「……色々と、な」

鳴上「……」

鳴上「……すみませんでした。変な事聞いて」

ヴィンセント「いいよ、別に」


ヴィンセント「お前と初めて会った時から、既に色々と思い出しちまってたからな」

鳴上「え?」

ヴィンセント「その三年前にもな、ここで月光館の生徒とその話をしてた事があるんだよ」

ヴィンセント「あの時話をしたのは女の子だったけどな」

鳴上「……あ」

鳴上「もしかして、昨日話してた浮気相手っていうのは」

ヴィンセント「バカちげーよ!」

ヴィンセント「……あー、でもそうだな。雰囲気はなんか似てたかも、な」

ヴィンセント「小悪魔的っつーの? タイプは違ってたけどさ……。こう言ったらあれだけど、あの子は真面目で可憐で純情そうに見えて、でも影で男心を弄んでそうな風だった」


ヴィンセント「しかも無自覚っぽいときたもんだからなあ、余計タチが悪い……」

ヴィンセント「実際、あの時ここに来てた客であの子に入れ込んでるっぽいヤツいたからな」

鳴上「へ、へえ……」

ヴィンセント「あの子に、今度会う事があったらこの話の続きを聞かせてやるなんて言った事もあるけど……元気にしてっかな」

ヴィンセント「流石に卒業してるだろうしな。この街にはもういないかもな」

鳴上「あの、もし良かったら、俺がその話の続きを聞いてもいいですか?」

ヴィンセント「ん? んー……」

ヴィンセント「まあ、それもいいかもな」

ヴィンセント「でも、別に面白い話って訳じゃないから、そこんとこは期待すんなよ」


>ヴィンセントは曖昧な笑みを浮かべている。


ヴィンセント「じゃ、今日はもう帰るわ」

ヴィンセント「またな」

鳴上「おやすみなさい」


>ヴィンセントと別れた。



>『ⅩⅤ 悪魔 ヴィンセント』のランクが3になった



鳴上「俺も今日はもう帰ろうかな」

鳴上「……」



【深夜】


>最近、あまり眠れていないような気がするので早めにベッドに潜ってみたつもりだったが寝付けない……

>もしかしたら……眠りたいのに眠りたくないのかもしれない。


鳴上(眠ったらまた思い出せない嫌な夢を見るのかって思うと……)


>深いため息が出た。


>閉じていた目をゆっくりと開いてみる。

>すると、すぐ近くで人の顔がこちらを覗き込んでいるのが目に入ってしまった。


鳴上「!?」

イヤホンの少年「……や」


>……この部屋のもうひとりの主だった。


鳴上(びっ、びっくりした……!)

鳴上「おどかさないでくれ……」

イヤホンの少年「? ごめん」

鳴上(この顔は絶対にわかってないだろ……)

鳴上「今夜はどうしたんだ? またお使いか?」

イヤホンの少年「いや」

イヤホンの少年「……」

イヤホンの少年「最近……夜、うなされてるみたいだから気になって」

鳴上「!」


鳴上「……そんな風に、見えるのか?」


>イヤホンの少年は、こくりと頷いた。


イヤホンの少年「もしかして、変な夢……見てる?」

鳴上「……と、思う」

イヤホンの少年「はっきりしないんだ」

イヤホンの少年「……なるほどね」


>イヤホンの少年はその静かな口を一層噤んで何かを考えている。


イヤホンの少年「たぶん、見たことある……その夢」

イヤホンの少年「三年前くらいに、ね」

イヤホンの少年「……あまり、思い出したくはないけど」

鳴上「!?」


>イヤホンの少年の顔が若干青ざめているような気がする……


鳴上(まさか、こいつ……)

鳴上「なあ、もしかして」

鳴上「お前がそんな風なのって、その夢が原因……とか?」

イヤホンの少年「それは違う」

イヤホンの少年「むしろ、あれを見ていた中で……奇跡的に生き残っていた側の方だと思う」

鳴上「じゃ、じゃあ!」

鳴上「お前が『伝説の男』!?」

イヤホンの少年「それも……違う」

イヤホンの少年「俺は、あれを登りきる前に、あの夢を見なくなった」

イヤホンの少年「俺が辿り着く前に、一番上まで登りきった奴がいたんだろうな。きっとその影響で……」

鳴上「……」


イヤホンの少年「……」

イヤホンの少年「よし、わかった」

鳴上「……何が?」

イヤホンの少年「任せろ」

鳴上「だから、何がだ……」


>イヤホンの少年はグッと拳を握っている。

>どうでもいいなどと言ったりする彼にしては、珍しく何かやる気を見せているようだ。


イヤホンの少年「この間のお礼をきちんとしようと思って」

イヤホンの少年「……また後で会おう」


>イヤホンの少年の姿が、徐々に希薄になっていった……



>『ⅩⅢ 死神 謎のイヤホンの少年』のランクが5になった



>…
>……
>………





囚われた羊たちは、裁きの時を待つしかない

たとえ、有罪である事から逃れられないとわかってはいても――


Next→

――stage 4 Inquisition


審問法廷――



終わりです。

また次回。

もしかして次スレ立てた方が良いかね。

とりあえず立ててきました

次スレ

鳴上「月光館学園?」 No.2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/mread.cgi/news4ssnip/1335610871/)


いつも読んでくれてるみなさんありがとう。
まだまだ続きます。

今後ともよろしく!

>>981で行ったら、変になった人はこっち

鳴上「月光館学園?」 No.2 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1335610871/l50)

でやってみてくれ。

ブラウザはfire foxだったんだが、>>981だとダメだったんだ

>>984
誘導ありがとうです。
飛べなかったのは>>1が携帯からスレ立てしてそのままそのURL貼ったせいかな?

以後気をつけます。

まだレスが残ってるので小ネタいっこ投下してこのスレ埋めたいと思います。

では。

学生寮 四階 作戦室


アイギス「……それでは、お願いします。自分でやろうとも思ったのですが、余計壊してしまいそうなので」

鳴上「わかりました」


>アイギスは作戦室から出ていった。


鳴上「とは言っても、俺にも出来るかどうかちょっと……な」

鳴上「ま、見みるだけ見てみよう」


>とりあえず、作戦室の機材に触ってみる事にした。



>今、鳴上が普段アイギスが生活の場に使用しているこの場所にいるのはこれが理由だ。

>最近、ここにある機材の調子があまりよくないとの事らしい。

>それを自分にどうにかして欲しい、という話なのだが……


鳴上「俺だって機械にそこまで詳しいって訳じゃないんだよな……」

鳴上「右斜め45度から叩いたら、案外すぐ直ったりして」

鳴上「なんてな。……あ!」


>予期せず、何だかわからないボタンを押してしまった。

>すると、急に機械が動きだしてしまったようだ。

>モニターに、映像が映り始める。

>右下には、『2012/05/07』と表示されている。

>映っている場所は見た事のない部屋だったが、雰囲気からなんとなく何処なのかは察しがついた。


鳴上「これ、寮の中か?」


鳴上「! 誰か出てきた! これは……」


鳴上「ラビリスとアイギスさん、それにメティスか?」


>しばらく眺めてみる事にした。

>……


アイギス『着心地の方はどうですか?』

ラビリス『うんうん、ピッタリや! これが月光館の学園用迷彩……もとい、制服なんやね』

ラビリス『妹とおんなじ服着ておんなじトコ通えるなんて夢みたいやわぁ』

アイギス『ふふ、気に入ったみたいで何よりです』

ラビリス『アイギスは行く支度せんの?』

アイギス『え?』

ラビリス『や、だから学校に』

アイギス『いえ。私は、あの学校の生徒ではありませんから……』

ラビリス『えっ、そうなん!? ウチ、アイギスとも一緒に学校行けると思ってたのに……』

メティス『そう言われてみれば、私たちが通うのに姉さんが行かないのはおかしい気もしてきますね』

ラビリス『せや! 今からでもええ、アイギスも一緒に学校行こ!』

アイギス『それは、ちょっと無理が……』

美鶴『諸君、おはよう。ラビリスは学校に行く支度はできて……どうかしたか?』

ラビリス『おはよう、美鶴さん。なあなあ、アイギス用の制服ってあらへんの?』

美鶴『アイギスの制服? 月光館学園のか? もちろん、あるけれども』

アイギス『も、もちろん!? あるんですか!?』

美鶴『ああ。いつまた君が学校に行きたいと言い出してもいいように、な』

ラビリス『よっしゃ! ならアイギスも着替えよ』

アイギス『えっ、ちょ……』

美鶴『これだ』

ラビリス『よーし。メティスはアイギスを確保!』

メティス『……仕方ないですね。了解です』

アイギス『美鶴さん! メティスまで……!』

アイギス『きゃっ! あ、あの、そこは触らないでくだっ……』


>……


ラビリス『というわけで、お着替え終了や!』

メティス『制服も似合ってますね、姉さん』

アイギス『……。本当に久しぶりですね、これを着るのは』

美鶴『ふっ……そのまま本当に学校へ行ってしまってもいいんだぞ?』

アイギス『いえ、それは……』

アイギス『……』

アイギス『不公平です』

美鶴『え?』

アイギス『私だけでは、不公平であります』
美鶴『何がだ?』

アイギス『美鶴さんの制服姿も見たいであります』

美鶴『は!? 突然何を言ってるんだ!?』

美鶴『私の制服姿なんて、君は見た事あるだろうが!』

アイギス『しかし、姉さんとメティスは美鶴さんの制服姿を見た事がありません。それに……』

アイギス『美鶴さんが「規定の」制服を着ているところは、私も見た事がありません」

美鶴『なん……だと……?』

アイギス『美鶴さんが月光館学園の高等科に通っていた時、美鶴さんはいつも指定のブラウス以外のものを着用していました』

アイギス『それに、夏はともかく冬もブレザーを着込んでいるところを見た覚えがないのですが……』

アイギス『生徒会長が先立って校則違反をしていたけどいいのか! という声が聞こえてくるような気がするであります』

美鶴『どこからだ!?』

アイギス『という訳で』

美鶴『どういう訳だ! 話を……』

ラビリス『美鶴さんもお着替えタイム?』

アイギス『ぴんぽんぴんぽーん』

メティス『予備の制服はまだここにありますしね』

美鶴『や、やめろ! それ以上近付くな!』

アイギス『大丈夫。痛くなんかしませんから、私たちに身を委ねてください……』

美鶴『ばっ、ばか! 脱がそうとするな! 手を! 手を入れるなぁ!』

>……


アイギス『任務完了です』

美鶴『……。これはきつい、色々な意味で……』

アイギス『? ……あ、そういえば美鶴さん、少し体型に変化がありませんか?』

美鶴『え!? いや、これは……胸が! そう! 胸がきついんだ!』

アイギス『確かに、過去のデータに比べて胸囲に2cmほど差異があるようですが、それにあわせてウエストも、』

美鶴『言うな! それ以上言うな!』

メティス『……で、姉さん。その手に持っているものは?』

アイギス『カメラよ。せっかくだから、記念にメティスと姉さんの並んだ制服姿を撮ろうかと思って』

ラビリス『だったらもういっその事、みんなで写ればええんやないの?』

アイギス『タイマー付きですから、やろうと思えば可能ですが……』

ラビリス『決まりや!』

美鶴『……それには私も含まれているのか?』

アイギス『じゃあ、みなさんここに一列に』
アイギス『……いいですね? いきます』

アイギス『いちたすいちはー?』

アイギス『にー』

メティス『……に?』

ラビリス『にー!』

美鶴『に、にー……』


カシャッ


アイギス『はい。お疲れ様でし……』




鳴上『うわあああああああああああああ!!』

ドターン!


アイギス・メティス・ラビリス・美鶴『!?』


ラビリス『え? なに今の? すごい音やったけど……』

メティス『それに、鳴上さんの悲鳴が……!』

アイギス『わ、私、様子を見てきます!』

美鶴『アイギス!? ……行ってしまった』

美鶴『あの格好のままで……』

美鶴『……』

美鶴『……私は誰かに見られる前に着替えてしまおう』

ラビリス『えー、もう? そんなん、つまんなーい!』

美鶴『これ以上バカな事を言ってないで支度をしろ! 転入初日から遅刻するぞ!』


>……

>映像はここで終わっている……

>……


鳴上「……」

……カチ

カチカチカチカチカチカチカチカチカチッ

鳴上「巻き戻し! 巻き戻しボタンはどれだ!?」

鳴上「あと、ダビングはどうやったら……!」

鳴上「くそっ、あの時部屋の扉を開けていれば、制服姿のアイギスさんをこの目で見れていたって事なのか!」

鳴上「せめて、あの写真を一枚俺にも……」

鳴上「……」

鳴上「なにやってるんだろう、俺……」

鳴上「アイギスさんには、よくわかりませんでしたって言っとくか……」


おわり


あらためて、次回から2スレ目もよろしくお願いします!

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