P「残像だ」 (17)

P「窓には青空、事務所の中には日の光」

P「春香が机に雑誌を広げている」

P「千早はその向かいでしげしげと覗き込んでいる」

P「美希はと言えば、千早の肩にもたれかかって熟睡中」

P「響は狭い事務所の中を騒がしく駆け回っている」

P「貴音と雪歩は給湯室で侘び寂びに浸っていて」

P「音無さんは吉永さんの応対をしている」

P「あずささんと律子はお互いに衣装のチェック中」

P「そんな残像が見えた」

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P「雨粒と風が窓を叩く」

P「ボサボサになった髪で玄関をくぐる伊織」

P「裏返った傘を楽しそうに振り回す亜美」

P「そんな二人をやよいがふかふかタオルで出迎えて」

P「真美はゲームに夢中になっている」

P「雨合羽を羽織って出掛けようとする真」

P「酷い雨だから、と止める社長」

P「給湯室でヤカンが鳴っている」

P「美希はずっとソファでおにぎりを頬張り」

P「春香とやよいのオセロ対決はまた春香の辛勝」

P「律子と音無さんが予算表を片手に何か話している」

P「そんな残像が見えた」

P「西日が差し込む、オレンジ色の……」

P「千早の歌声で貴音が目を覚ます」

P「亜美はさっきから知恵の輪に念力を送ってばかり」

P「やよいの勉強を見る美希は少しお姉さんっぽくて」

P「伊織が出て行くと同時に、伊織の台本を持って追いかける雪歩」

P「書類整理を手伝う響の頭の上でハム蔵が踊っている」

P「歌詞を覚える真の隣でプリンをつまむあずささん」

P「真美は知恵の輪を外したまま戻せなくて悪戦苦闘している」

P「そんな残像が見えた」

P「蛍光灯が眩しい」

P「眼鏡と帽子を装備した春香が鏡と睨めっこしている」

P「その隣で春香が千早にクッキーを勧めている」

P「雪歩は嬉しそうに一つ食べて、お茶を淹れに給湯室へと」

P「知恵の輪を外そうと躍起になる真美が騒々しい」

P「反対側ではやっと外れた、と嬉しそうな顔で知恵の輪を持つ雪歩」

P「やよいがオセロを持ち出して伊織に勝負を持ちかけている」

P「美希が寝ている隙に、社長はおにぎりを一つくすねようと手を延ばしていて」

P「音無さんは電話の対応に追われている」

P「そんな残像が見えた」

P「空が徐々に白んで行く」

P「コートを羽織って朝食を買いに出て行く律子」

P「美味しそうにマカダミアンナッツを齧る響と高値」

P「音無さんが朝の早い内から事務所に入ってくる」

P「ソファにはステージ衣装のまま毛布に包まった律子と千早がいて」

P「美希が眠そうに目をこすりながら今日のスケジュールを聞いてくる」

P「貴音はハワイでの収録で買った土産を響に渡す」

P「社長が手品で予算表を隠し律子に怒鳴られていて」

P「手袋とマフラー、耳当てで護られた響が事務所に入って来る」

P「そんな残像が見えた」

P「月明かりが差し込む」

P「みんな揃って伊織の入社歓迎パーティーの飾り付けをしている最中で」

P「食べ散らかしたケーキやピザの残骸を手早くゴミ袋に突っ込む律子がいて」

P「歓迎されて満面の笑みを浮かべる美希がいて」

P「デスクでは今後の計画書が山と積まれている」

P「クーラーも効かない中で項垂れる真美に水鉄砲を向ける真美」

P「道端で拾ったというイチョウの葉っぱを髪に差したやよい」

P「竜宮小町の発表に驚く三人がいて」

P「雪歩は作詞の難しさに頭を抱えている」

P「そんな残像が見えた」

P「曇り空と稲光が窓の向こうから押し寄せる」

P「社長が事務所の中を掃除している」

P「初めてのハワイロケに不安と期待の入り混じる貴音」

P「鬼の面を被った音無さん、落花生を投げまくる亜美」

P「貴音の肩を抱いて勇気付けるやよい」

P「ガスガンを持ち出す真美とモデルガンのような物を振り回す雪歩」

P「響と伊織は台本の読み合わせに忙しそうにしていて」

P「吉沢さんが社長と将棋を差している」

P「そんな残像が見えた」

P「ガラス越しに入道雲が空へ広がる」

P「千早と紅茶を飲むあずささん」

P「桜の花びらを頭に乗せた真と雪歩が事務所に入って来て」

P「あずささんがまた迷子になったと連絡を受けて飛び出す律子」

P「春香は初出社から玄関で転んで」

P「貴音は一人でピザを次々に平らげている」

P「白い息を吐きながらストーブを点ける社長」

P「初めてのスーツに照れ臭そうにする律子がいて」

P「それぞれお互いにチョコを渡しあっている」

P「そんな残像が見えた」

P「窓枠にも雪が積もり、蚊がそこら中を飛び回っている」

P「美希はダンスの振り付けを真に確認してもらっていて」

P「美希は一つ一つのおにぎりに丁寧に海苔を貼り付けていて」

P「亜美がカップ麺を啜ろうとする最中」

P「伊織と真は顔を突き合わせて言い争っている」

P「ヤカンの音に気付いたあずささんが給湯室に向かって」

P「どんぐりのネックレスを着けたやよいが事務所に入って来る」

P「嬉しそうにケーキを食べる響」

P「小言を言いながらも満更でもなさそうに赤くなる伊織」

P「自分でクラッカーを鳴らしておきながら気絶する雪歩」

P「そんな残像が見えた」

P「満月、灰色の空、飛行機雲、一番星、烏の群れ」

P「CDショップの袋を持った制服姿の千早」

P「春香はまた転んでいる」

P「髪を切ったあずささんは新鮮で」

P「貴音はアロハシャツを持って鏡に向かっている」

P「真美は雪歩のラーメンから焼豚を抜き取ろうとしている」

P「伊織は風で乱れた髪を整えるのに忙しくて」

P「カボチャを被った音無さんがやよいに呪文を唱えている」

P「美希は千早の歌にハモって練習の邪魔をして」

P「響と貴音が社長に漫才を披露している」

P「そんな残像が見えた」

P「本当は埃だらけの床」

P「本当は破れたソファ」

P「本当は割れた窓ガラス」

P「倒れた椅子、壊れた机、点かない電灯、開かない扉!」

P「……本当は、誰もいない事務所」

P「あれもこれもみんな残像だ」

P「懐かしいなぁ」

P「……」

P「765プロのプロデューサーをしていて、毎日忙しく働いている」

P「そんな残像?」

P「……」

P「ああ、残像だ。かつての思い出だ」

P「春香、おはよ……って危ないな。また何かに躓いたのか?」

P「おはようございますあずささん、事務所までの道のりはもう覚えたみたいですね」

P「千早、挨拶は元気よく。 ほら、おはよう!」

P「雪歩ー、事務所に入って来ないと会話出来ないだろー? 頑張れ頑張れ、あとちょっとだ」

P「律子、そんなに睨むなよ……ちゃんと今日残業して取り返すから」

P「伊織……100%オレンジジュースなんてそうそう売ってないんだぞ?」

P「亜美、いきなり抱きつくなってば! いや、嫌とかじゃなくてな?」

P「真、今日も元気だな。これなら今日のオーディションはバッチリだな!」

P「やよい、ベロチョロの紐新しくしたのか? かわいいなぁ」

P「……貴音、朝から二十郎はやめろとあれ程言っただろう」

P「ははーん、この声は真美だな? おう、間違えるもんか」

P「おはようございます、社長。へえ、これが今の流行……難しいですね、社長ならどう攻めますか?」

P「響ー! いぬ美を退けてくれー!潰れるー!」

P「美希、おはよう。また思い切ったなー、イメチェンか?」

P「音無さん、おはようございます。え、今夜ですか? ええ、大丈夫ですよ!」

P「……」

P「なんて、な。ははは」

春香「ここにいたんですか、社長! こんな懐かしい場所で黄昏ちゃって、一体どうしたんです?」

P「いや、ちょっとな」

春香「ちょっとって、もう……帰りますよ、プロデューサーさん」

P「天海君。呼び方、戻ってる戻ってる」

春香「あ、す、すみません社長」

P「いやいいよ、きっとアレのせいだ」

春香「アレ?」

P「そう、愛しい思い出の」

春香「思い出の……」

P「残像だ」

終わり

乙乙

>>4
>P「眼鏡と帽子を装備した春香が鏡と睨めっこしている」

>P「その隣で春香が千早にクッキーを勧めている」

これも間違いなく残像

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