志希「キミの匂いに出会うまで」 (14)

モバマス、一ノ瀬志希のSSです。

志希の一人語りで進んでいきます。

短いです。

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 おはよー、プロデューサー♪

 クンクン……んー、今日もイイ匂いしてるね! キミの匂いを、胸いっぱい吸い込んじゃう!
 スーハースーハー、んほぉぉぉ! 朝からドーパミン過剰分泌だよぉ!!
 え、アイドルがしちゃいけない顔してるって? クンカクンカ、そりゃそうよ、あたしはアイドルである前に一人のヘンタイだし~。
 
 ああゴメンゴメン。頼まれてたね、はいこれ履歴書。
 え? 何その顔? 書いてることが信用できないみたいなー? 自分に正直な志希チャンは、履歴書にウソを書けないのだ。
 そうだよ、小学校卒業したら海の向こう。飛び級してたけど、つまんないから戻ってきちゃった。
 へえ、みーんな同じ反応するんだね。向こうの学校の名前出したらビックリして、「中退」って文字を見たらガッカリして。
 
 でもね……ハスハス……今までの学校生活なんて、キミの匂いの染み付いた、このワイシャツ1枚にも及ばにゃいよぉ~♪
 あたしの意識は、ちょっとだけ過去にトリップ~……



 あたしは昔から、じっと我慢ってゆーのができない子だった。

 学校の授業でも、興味がなければ3分で騒ぎ出しちゃって、教室から失踪。
 ま、しょうがないよねー。
 
 でも面白いと思ったら、誰にも止めらんなかった。
 花はどうして、こんなにいい香りがするんだろう。
 生ゴミはどうして、こんなにひどい臭いになるんだろう。
 原因になる物質があって、それがどういう分子構造をしていて、ヒトの鼻はどういう仕組みで受け入れて、脳でどう感じるのか。
 図書館の本を読みあさって、こっそり薬品揃えて家で実験開始ー! 怪しい煙が上がって警察出動ー!! 
 いろんな匂いをかいでるうちに、かぐこと自体が癖になっちゃったし。もう、小学校から今のヘンタイなあたしだったね。
 
 当然、クラスじゃ見事にボッチだったねー。いじめられもしなかったけど、みんな遠巻きに見てるだけ。隣の子と机も離されてたかな。
 いーのいーの、実験の邪魔さえしてくれなきゃ♪

 でも、親も先生も、あたしの将来を心配して。日本じゃ、普通の学校に進めないんじゃないかって。
 普通って何だか知らないけど、あたしも実験できなくなるのは単純にイヤだった。
 それからね。いろんな専門家っぽい人達が、あたしのことを調べはじめた。
 その人達は、難しい顔をしてあたしに告げたんだ。

「君はギフテッド……生まれつき、並外れた観察と実験の才能を与えられているんだ」
「君の才能を、今の日本で伸ばすのは難しい。某国の専門学級に留学して勉強してはどうか」

 えーとアタシ、褒められてたのかな? 哀れに思われてたのかな?
 実験とヘンタイごっこができるなら、どこでも良かった。専門書を読むうち、外国語も自然と覚えてたし、日本を出て行くことは気にならなかった。
 学食のランチメニューを選ぶような気軽さで、あたしは海外留学を決めちゃった。

 留学は、そりゃ面白かったよー! だって夢の実験三昧だもん♪ 思う存分専門書と薬品を使えてさー。
 その中で気付いたんだ。
 あたしが面白いと思った人からは、イイ匂いがするの。もっと嗅ぎたいと思っちゃうような、トリップ間違いなしの、ね。
 顔が良くても、お金持ちでも、ダメな匂いのヤツはホントにダメダメ。
 どこのブランドだか知らないけど、大量生産の香水で、あたしの鼻を騙そうだなんて、10年は早いよーん♪

 たーだーし。
 あたしお手製の香水なら、話は別。嗅いだ人をメロメロにしてしまうのだ。アウトオブ眼中の男が、運命の王子様のように思えたりね。
 人はそれを惚れ薬とゆー。
 
 さすがにこの発明をおおっぴらにするのはヤバイ。先生にも秘密にしてたけど、どこからか話が漏れたんだねー。手紙が届いたんだ。
 その香水を売ってほしい、金に糸目は付けないって。
 にゃーっはっはっは、もちろんこっそり会いに行っちゃいましたー。
 
 商談先の高級レストラン。あたしの目の前で、お札が山ほど積まれていった。
 普通の人なら、うなずいちゃうんだろうけど、あいにくあたしは匂いフェチ。人を匂いで判断するヘンタイ。
 
 その時あたしの鼻腔をついたのは――吐き気を催す、ゲロ以下の臭い!
 
 本能が危険信号を発して、回れ右して得意の失踪。
 あそこで逃げなかったら、それはそれで面白いことになってたのかな? それとも、好奇心がネコを殺すことになっていたかも。

 こんな体験が何度かあって、さすがにあたしもうんざりしてきた。誰かに利用されるため、実験してきたんじゃないってのに。
 それじゃ逆に、匂いで世界を支配しちゃう? 先生の一人が大まじめに言ってた。
「君たちは、将来の世界を背負って立つ資質がある」
 クラスメイトもみんなその気だった。自分の才能で、世界を変えてやるって。
 でも私は思う存分実験して、好きな匂いをクンカクンカして、一生を過ごしたいだけ。権力なんて、別に望んでない。
 もういいや。全部ほっぽり出して、日本に帰ってきちゃった。

 久しぶりに再開した両親は、あたしの気まぐれに呆れてた。そして聞かれた。
「今、やりたいことは何?」
 ……何だろう? とりあえず、普通の女子高生ってのをやってみたかった。
 それが、自分にはとっても難しいことだったから。
 授業は最後まできちんと聞く。
 必要最低限のコミュニケーションは取る。
 そして「人前で」クンカクンカしない。
 あたしを取り巻く匂いは平凡だけど、まあ悪くはないかな……
 
 と、考え始めてたところだったのに、運命の匂いに出会ってしまったよ!
 まず、ものすごい数の女の子の香りがして、どれもが強烈な個性を放っていたの。
 キミが会ってきた、アイドルたちの香りだよね?
 次にかいだのは、キミの汗の匂い。
 留学先のエリート君達には真似できない、一生懸命仕事をする男の匂い。
 きっと、仕事相手も同じ汗を流して働いているんだなって。
 もうね、危うくその場で絶頂に達するところだったねー。
 こんなにイイ匂いの元になった、プロデューサーというお仕事と、アイドルというお仕事ってどんなだろう?
 抱いた好奇心は、もう止まらない。
 キョーミ深い実験材料、発見♪


 
 ん? ちょっとね、この匂いに出会うまでのこと、思い出してた。
 匂いで人生決めていいのか、って? もちろん。あたし、鼻が利くんだから!
 スーハースーハークンカクンカ、そう、この匂いだよキミィ!! らめええぇぇぇ、志希ケミカルキメちゃうのほおぉぉぉ!!
 これからも一緒に、ヘンタイアイドル街道を歩んでいこうね……うへへ……♪

以上です。本当に短いな自分!
これからの彼女が楽しみです。

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