恵美「魔王と夏祭り」(70)
恵美「ふ~ん、射的屋ね~」
芦屋「1回200円で4発だ。もしも商品を倒す事ができたら、商品をプレゼント。さらに弾を一発補充できるぞ」
恵美「ということは、200円で全部落とす事も可能ってなわけね」
芦屋「一回で落とし続ける事ができればの話だがな」
真奥「で、やるのか?やらんのか?」
恵美「やるわ!」
恵美「って、何これ!?」
恵美「銃身は微妙に曲がってるし、予想以上に飛ばないわ」
恵美「いいえ、それ以上に当たっても景品が落ちないじゃない!」
真奥「ハハハハハハ。そう簡単に落とさせてたまるものか!」
真奥「リラックス熊に釣られて、まんまと罠にハマったな勇者エミリア!」
恵美「くっ!卑劣な!」
芦屋(商品を落とさせず、どれだけ儲ける事ができるか?で時給が変わるバイト)
芦屋(こんなボロ屋台も魔王様にかかれば、物欲が湧く素晴らしい店に新装開店!!)
芦屋(さすが魔王様!芦屋…アルシエル一生ついていきます!)
恵美「はい、200円。もう一回やるわ」
真奥「何度挑んでも結果は変わらないぞ」
恵美「ご忠告ありがとう。でも、もうコツをつかんだから楽勝よ」
真奥・芦屋「え?」
真奥「…」
芦屋「し、商品が…たった400円で…ぜ、全滅!?」
真奥「お、俺達の臨時バイトが…」
恵美「ふ~。私にかかればこのくらい楽勝ね」
真奥「って、『楽勝ね』じゃねーよ!聖法気を使って銃の威力をあげるなんて卑怯だぞ!」
恵美「ったく、私はルールを守ったわよね?それに何か問題があるのかしら?」
真奥「だからってな、限度ってもんがあるだろうが!」
恵美「はいはい。限度ね。わかったわかった」
真奥「ぐ、ぐぐぐぐぐぐ」
真奥「…」
芦屋「し、商品が…たった400円で…ぜ、全滅!?」
真奥「お、俺達の臨時バイトが…」
恵美「ふ~。私にかかればこのくらい楽勝ね」
真奥「って、『楽勝ね』じゃねーよ!聖法気を使って銃の威力をあげるなんて卑怯だぞ!」
恵美「ったく、私はルールを守ったわよね?それに何か問題があるのかしら?」
真奥「だからってな、限度ってもんがあるだろうが!」
恵美「はいはい。限度ね。わかったわかった」
真奥「ぐ、ぐぐぐぐぐぐ」
恵美「ほら、早く商品を渡しなさい。悪魔でもルールくらい守りなさいよね」
真奥「ぐっ。悪魔みたいな女に言われたくねーよ」
恵美「ああ!?いい加減、言いがかりはよしてくれる!?私は何も悪い事はやってないんですけど!?」
真奥「ぐぬぬぬぬぬ!」
芦屋「魔王様…私に名案があります」ボソボソ
真奥「なんだと!?」ボソボソ
芦屋「ここは私めにお任せ下さい」
真奥「わかった」
芦屋「遊佐ぁ!」
恵美「はいはい。今度は芦屋?」
ドサッ
芦屋「これでうちの商品は全部だ」
恵美「あ、案外あるわね」
芦屋「もちろん全部持って帰るんだろうな?もしかして、今更持って帰れませんとか言う訳ではあるまい?」
真奥「おぉ!その手があったか!?さすが我が軍一の知将!!」
恵美「ハッ。あなたは勇者を勘違いしているわ」
芦屋「ん?」
恵美「悪魔を倒すだけが勇者の仕事と思わないことね!」
芦屋「なんだと、違うのか!?」
恵美「みなさーん。この景品を無料でお配りしまーす。無料です。貰ってくださーい」
真奥「なっ!?」
真奥「全部…持って行かれた…だと」
芦屋「すみません。魔王様…勇者がこんなに卑劣とは…」
真奥「いや、いいんだ。芦屋」
芦屋「うぅぅぅ…」
漆原「ねぇねぇ?休憩に行っていい?」
真奥「…というか、もう店じまいだ。好きにしてくれ」
漆原「やったー。所でバイト手伝ったらお小遣いくれる話だったよね?」
芦屋「貴様!この現状を見て言う事がそれか!?」
真奥「待て芦屋。これは俺の失態だ。部下のお前達に落ち度はない」
芦屋「うぅぅ…魔王様!一生ついていきます!」
ダキッ
真奥「芦屋ー!死ぬ時は一緒だー!」
芦屋「魔王様ーーー!」
漆原「はいはい。釣銭用のお金から勝手に持っていくね~」
真奥「よし!今から祭りを楽しむぞ!」
芦屋「はい!わかりました!!!!」
………………………………………………………
真奥「人が多すぎたせいで芦屋と別れちまった…はぁ~」
恵美「千穂ちゃんとも、はぐれちゃった」
真奥「…で、何でお前と二人っきりなんだよ…」
恵美「私が聞きたいわよ!」
真奥「アラス・ラムスは?」
恵美「あなたの射的屋に行くまで、ずっと遊んでたから今は疲れて寝ているわ」
真奥「やっぱりてめえと二人っきりなのかよ!」
恵美「はぁ~…ほらみんなを探すわよ」
真奥「ああ、それがいいな」
………
恵美「金魚すくい…この世界の人間は残虐ね。あんな遊びを思いつくなんて」
真奥「って言いながら、お前も金魚すくいをやったじゃねーか」
恵美「は、はぁ!?私は金魚を救ってあげようとしただけで!」
真奥「はいはい。…で、何で一匹も取れないんだ?」
恵美「う、うっさい!何でニヤニヤしてんのよ!キモイわよ!」
真奥「はははは。射的屋の仕返しだ。よし!俺も一回やってみっか」
恵美「無駄遣いはどっかの主夫さんに怒られるわよ?」
真奥「あのなー、俺だって小遣いくらい持ってるんだよ」
恵美「はいはい」
真奥「さーて、どいつを魔王城に迎えようかな~」
真奥「…」
恵美「…で、取れそうなの?」
真奥「俺を舐めるなよ。このすくう道具…ポイの構成は把握した。あとは一瞬ですくうだけだ!」
恵美「あははははははは」
真奥「このポイは不良品だ!不良品に決まってる!」
恵美「『ポイの構成は把握した。あとは一瞬ですくうだけだ!』ですって。あはははははは」
真奥「ぐ、ぐぐぐぐぐ。おやじ!もう一回だ」
店主「お兄さん。彼女さんの前でカッコいいところを見せたいのはわかるけど。もう1000円は使ってるぜ?」
真奥「あ、あと一回で終わるから…だ、大丈夫だ」
恵美「…は?かの…じょ?」
店主「はい。これたくさんお金を使ってくれたプレゼント」
真奥「金魚くれるのか?」
店主「次に使う予定だったお金は彼女さんにつかってやりな」
真奥「ありがとうな。大切にするぜ」
恵美「…」
真奥「ほら、恵美行くぞ」
恵美「…」
真奥「気絶してる。彼女扱いされたのが相当ショックだったみたいだな」
恵美「…」
ギュウウウ
真奥「はぁ~…ったく、何で俺が恵美の手を握って、引っ張ってやらないといけないんだよ」
恵美「…」
真奥「このままここにいると邪魔だから行くぞ。恵美」
恵美「…」
恵美「はっ!私はなにを……」
恵美「……………………………………」
真奥「おい!手を繋いでるからって気を失うな!」
恵美「何で私の手を触ってるのよ!変態!」
真奥「てめえが気を失うからだろ!」
恵美「仕方ないでしょう。あんな屈辱を受けたんだから!」
真奥「俺にとっても屈辱なんだからお互い様だろ!」
恵美「早く手を離しなさいよ!斬るわよ!」
真奥「てめえから離しやがれ!
恵美「いや!私から離すとなんか負けた気がして嫌!」
真奥「俺だって同じだ!」
恵美「ぐっぐぐぐぐぐ!!!」バチバチ
真奥「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!!」バチバチ
恵美「わかったわ。じゃあ、せーのっで離すわよ」
真奥「ああ、そうだな。それがいい」
恵美「せーのっ」
パッ
真奥「はぁ~。次は絶対に引っ張ってやらないんだからな!」
恵美「はぁ!?いつ私が頼んだのよ!」
真奥「あーはいはい。ほらみんなを探しに行こうぜ」
恵美「言われなくても探すわよ!」
真奥「うめえ!このジャンボ串焼きってうめえな!」
恵美「こういうのって雰囲気もあって美味しく感じたりもするわよね」
真奥「恵美も一口どうだ?」
恵美「そうね。一口頂くわ」
パクッ
恵美「あっ本当…。美味しいわね」
真奥(からかうつもりだったのに、普通に俺の串から一口食べやがった…)
恵美「もう一口頂くわね」
パクッ
真奥「あああああああ!俺のジャンボ串焼きがなくなっちまった!!」
恵美「あははははは。ぼーっとしてる方が悪いのよ!」
真奥「ぐっぐぐぐぐぐ!!」
恵美「ぷはっー」
恵美「このトロピカルジュースって中々美味しいわね」
真奥「どれどれ」
恵美「って、何で勝手に飲んでるのよ!」
真奥「ははははは。さっきの仕返しだ」
恵美(って、何で同じストローで飲んでるのよ!)
恵美(こんなの捨ててやる!)
恵美(…)
恵美(でも、食べ物や飲み物を捨てるなんてありえないし…)
恵美「ぐ、ぐぬぬぬぬ、魔王めっ!」
真奥「そんなに好きだったのか?もう一杯買ってこようか?」
ゴクゴクゴクゴク
真奥「お、おおう」
恵美「ぷはーっっ」
恵美「ふふふふふ。ストローを使わずに飲んだわ!これで文句ないわよね!」
真奥「ん?え?そうなのか?」
恵美「それにしても人が多いわね~」
真奥「ああ、だからみんなと、はぐれたんだけどな」
真奥(それにしても、浴衣姿の人間が多いな…)
真奥(実はこいつも浴衣姿なんだが…)
真奥(元がいいせいか意外と似合ってるんだよな~)
真奥(絶対に言ってやらんが)
恵美「なに見てんのよ。殺すわよ?」
真奥「これがなければ可愛い奴なんだがなー」
恵美「は、はぁ!?」
真奥「あっ、す、すまん。今のは心の声で…じゃなくてだな!」
恵美「ふんっ。あなたはダサいわね。もうちょっとマシな格好をすることねっ」
真奥「あ、ああ」
真奥(顔真っ赤にして本当に可愛い所もあるんだよな)
恵美(あっ、かんざし売ってる…)
恵美(髪をまとめたかったんだけど、いいアクセがなくて、結局いつも通りの髪型にしたのよね)
恵美(…)
恵美(このかんざしは可愛いかも)
真奥「すみません、これください」
恵美「は、はぁ!?男がこれを使うの!?」
恵美「確かにさっき『ダサい』って言ったけど、男が使うものじゃないわよ」
真奥「ったりめーだろ。ほらやるよ」
恵美「……………………………え?」
真奥「天地がひっくり返ったみたいに意外そうな顔をすんな」
真奥「ほら、いつもアラス・ラムスの面倒を見てくれてるお礼だよ。受け取れ。受け取らんなら捨てる」
恵美「…………そうね。捨てるぐらいなら貰うわ」
真奥「それにほら、これがあれば聖剣がなくても刺せるしな」
恵美「…は?」
真奥「サリエルみたいな奴に襲われても、これがあれば安心だろ?」
恵美「……………へたれ」ボソッ
真奥「なっ!?」
恵美「変な理由をつけなくても貰ってあげるわ」
真奥「…」
恵美「ありがとう。真奥」
真奥(…ちっ。可愛い笑顔しやがって)
真奥「そういえば、今日は鈴乃は一緒じゃないんだな」
恵美「はぐれちゃった。まあ、わざとなんだけどね」
真奥「わざと?」
恵美「だって、ベルったら風船とかお面とかヨーヨーとか、とても興味津々に見ていたんだもの」
真奥「あ、ああー」
恵美「きっと私達と一緒にいると買えないだろうから、一人にしてあげたのよ」
真奥「…お前って結構優しいだな?」
恵美「ええ。勇者ですから『人間』には優しいのよ」
真奥「俺も今は人間なんだが」
恵美「何か言ったかしら?悪魔の畜生さん?」
真奥「いや、何でもないです。はい」
恵美「あっ、それとも、もしかして優しくしてほしいのかしら?」
真奥「んなワケねーだろ。違うからニヤニヤすんなっ!」
恵美「じゃあ、今度から少しだけ優しくしてあげるわね。たぶん」
真奥「気持ち悪いからその笑顔やめろ」
真奥「おぉ!すげーな」
恵美「へぇ~。みんな中央に向かってるから何事かと思ったけど」
真奥「これは盆踊りじゃねーな」
恵美「男女でペアになって踊ってるわね」
真奥「たしかスプーンかフォークかのダンスだったと思うぞ」
芦屋「フォークダンスです。魔王様」
真奥「っ!?」ビクッ
恵美「悪魔の魔王がなにびっくりしてんのよ」
真奥「背後から話しかけられれば、誰だってびっくりくらいする!って芦屋!?」
芦屋「はい。ようやく魔王様を見つけることができましたので…」
梨香「芦屋さーん」
恵美「梨香!?」
梨香「あっ、恵美ー。ようやく見つけたわ」
真奥「あいつも来てたのか」
芦屋「はい、偶然お会いして途中からずっと一緒でした」
恵美(本当はアルシエルと梨香を二人っきりにして、私と千穂ちゃんとベルで真奥の相手をする作戦だったんだけどね)
梨香「もう芦屋さんったら、急にいなくなったからさ。はぐれちゃったかと思ったのよ?」
芦屋「すいません、ようやく真奥を見つける事ができましたので、興奮してしまい」
梨香「じ、じゃあ、お詫びとして………その……一緒におひょってくわさぁい!」
芦屋「…え?」
梨香「…」
恵美(梨香が赤くなってプルプル震えてる…可愛いわね)
芦屋「…えーと…」キョロキョロ
芦屋「ああ、なるほど……あー」
真奥「行ってこい。魔王城で合流な」
芦屋「はい」
芦屋「鈴木さん。私と一緒に踊っていただけますか?」
梨香「ひゃいっ」
真奥「行ったな…」
恵美「なるほど、あれがギャップ萌えって言うのね」
真奥「…何言ってるんだよ」
…………
恵美「ちゃんと踊れているわね。あの二人」
真奥「さて、帰るか」
恵美「そうね、私達が一緒に踊る理由はないしね」
アラス・ラムス「………うふぁぁぁぁぅ…んゅ」
アラス・ラムス「ぁ、ぱぱ、まま、おぁよじゃます」
真奥「おお、起きたかアラス・ラムス」
恵美「おはようって、本当に嬉しそうね」
真奥「ああ、久々に会えたしな」
アラス・ラムス「おまつり?」
真奥「ああ、そうだぞ」
アラス・ラムス「あれー?」
恵美「あれはダンス。みんな踊ってるのよ」
アラス・ラムス「だーすだーす♪」
真奥「おい、恵美。アラス・ラムスも踊りたいみたいだぞ」
恵美「…はぁ~。仕方ないわね。今回だけよ」
真奥「それはこっちのセリフだっつの」
アラス・ラムス「ぱぱ!まま!」
真奥・恵美「はいはい」
真奥「寝ちまったな」
恵美「そうね」
真奥「たくさん踊って、たくさん食べて…楽しそうだったな」
恵美「そうね」
真奥「寝る子は育つというから、将来は安心だな」
恵美「そうね」
真奥「それにしても、三人で踊るのも中々悪くなかったな」
恵美「そうね」
真奥「完全にまわりと違ってオリジナルダンスだったが、祭りのせいか妙なテンションで楽しかったぜ」
恵美「そうね」
真奥「…おい、何か機嫌悪くねーか?」
恵美「そうね」
真奥「おい!」
恵美「あなたが悪いのよ!」
真奥「何がだよ」
恵美「踊っている間にずっとニヤついてたでしょう!キモイったらありゃしなかったんだから!」
真奥「それはアラス・ラムスと踊れて楽しくてだな!」
恵美「あーはいはい。そういうことにしておいてあげるわ」
真奥「つーか、てめえも俺と手を握る時に、いちいち赤くなったり反応するな!こっちが恥ずかしくなるんだぞ!」
恵美「はぁ!?今日は少し長く外にいたから日焼けしだけですが、なにか!?」
真奥「夜に日焼けするか!」
千穂「へ、へぇ~。お楽しみだったみたいですね」
真奥「ち、ちーちゃん?」
恵美「千穂ちゃん!?」
真奥「ちーちゃん誤解だ!こいつとは仕方なく!」
恵美「そうよ!アラス・ラムスがいなかったら、誰がこいつなんかと!」
千穂「そうですよねー。みんな口ではそう言いますよねー」
真奥「わかったよ。ほら、今度祭りがあったら一緒に踊ってやるからな?」
千穂「…今度っていつですか?」
真奥「え?えーと…」
千穂「真奥さん知ってます?」
真奥「へ?」
千穂「祭りは夜中まであるんですよ」
真奥「へ、へぇ~。そうなのか」
千穂「じゃあ、行きましょうか?」
真奥「え?でも、親御さんも心配するし」
千穂「行きましょうか?」
真奥「あっ、はい」
恵美「行っちゃったわ…」
恵美「はぁ~。まったく…」
恵美「女子高生ひとり何ともできないで、何が魔王よ」
恵美「でもま、何かあっても困るんだけど」
恵美「…って、何で私が困るのかしら?」
恵美「まぁ、いいわ」
恵美「あいつから貰ったかんざし…とっても屈辱だけど、来年の祭りの時は付けて行ってあげるわ」
恵美「…気付いてくれるかしら?」
恵美「まぁ、どうでもいいわね。そんな事」
恵美「じゃあ、帰るわよ。アラス・ラムス」
アラス・ラムス「ぅー…」Zzzz
恵美「ふふふ。来年もお祭りにいきましょうね♪」
アラス・ラムス「ぁぃ~…」Zzzz
終わり
これにて終わりになります
読んでくれてありがとうございました
また機会があれば、よろしくお願いします!
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