洋榎「お見舞い来たでー!」 怜「洋榎ちゃん、おおきにな~」(128)

みたいな?

はよ

洋榎「ほれ、これお土産。安もんですまんけど」

怜「ええってそんなん。来てくれるだけで嬉しいし」

洋榎「ほんで?調子はどうや?」

怜「んー…ぼちぼちやな。散歩にも出れるようになったし」

洋榎「そうか、そらよかった」

怜「うん」

洋榎「うん」

怜「……」

洋榎「……」

洋榎「そ、そういえば、最近あの子は来てんのかいな?」

怜「竜華のこと?なんか受験勉強忙しいらしくてな。今日も塾らしいわ」

洋榎「そっか、大変やな」

怜「うん」

洋榎「うん」

怜「…」

洋榎「…」

ガラッ

竜華「怜ー?いるー?」

洋榎・怜「「!?」」

竜華「あれ?愛宕さん?珍しいねこんなとこで。怜のお見舞いに来てくれたん?」

洋榎「ま、まあな。あ、そろそろ用事あるから帰らな!ほなまたな!」

ダダダダ バタン

竜華「…うちなんかしたかな?」

怜「いや、気にせんとって」

竜華「いつも来てくれてはんの?愛宕さん」

怜「あ、ああ、まあな…というか竜華塾は?」

竜華「今日は休講やったから。はい、これお菓子。怜の好きなやつやで」

怜「毎度おおきにな」

怜(あれからどれくらい竜華と話したやろ。2時間はおったな)

怜(いつもと変わらん会話。他愛のない話)

怜(それだけで十分や。十分やった)

怜(洋榎が来るまでは)

怜「はぁ…」ポスン

怜「……うち、どないしたらええんやろ」

怜「……洋榎…」ギュッ

prrrrrr

怜「!?」

ピッ

怜「も、もしもし…?」

竜華『あっもしもし、怜』

怜「ああ竜華…どうしたん?」

竜華『いや、ちゃんと晩ご飯食べたかなーって』

怜「食べたで。子供とちゃうねんからそんな心配は無用やで?」

竜華『あ、あはは、そうやんな』

怜「そやで、ほんま」

竜華『やんなー』アハハ

怜「で、なんの用?なんか気になることあったからかけてきたんちゃうん?」

竜華『うっ……な、なんでわかったん?』

怜「どんだけ長い付き合いやと思てんねん」フフ

竜華『こういう時だけ勘が鋭いねんから』

怜「で、なんや?言うてみ?」

竜華『あの、今日の愛宕さんのことやねんけど…』

怜「」キュウウ

怜「ああ、洋榎がどうかした?」

竜華『…もう名前で呼び合う仲なんやね』

怜(しまった……)

怜「いや、むこうが名前やないと恥ずかしい言うたから。他意はないで」

竜華『そう……いつから会うようになったん?』

怜「…最近かなぁ」

竜華『最近って、一週間とか?』

怜「いや、もうちょい前かな」

竜華『二週間前くらい?』

怜「いやもうちょい前」

竜華『じゃあ最近ちゃうやん…』

怜「別にええやんいつからでも」

竜華『…そうやね。ごめん』

怜「いや別に謝らんでもええけど…」

竜華『…愛宕さんとは…どういう関係?』

怜「関係?どういうこと?」

竜華『ただのお友達なん?それとも、なんか他の…』

怜「……」

竜華『怜…?』

怜「友達……やで…」

竜華『…そっか……』

怜「……」

竜華『…ごめんな、こんな遅くに急に電話して。おやすみ』

怜「うん。おやすみ」

ピッ

翌日

洋榎「おーす!邪魔するでー!」ガチャ

怜「邪魔すんにゃったら帰れ」

洋榎「さよか、ほななー」バタン

洋榎「ってなんでやねん!」バーン

怜「ほんまにやるやつ初めて見たわ」

洋榎「誰がやらせたと思てんねん」

怜「別にやってて頼んでへんやろ」

洋榎「なんやとこのー!」コチョコチョ

怜「うへっ!?あひぃ!や、やめって!あはっ……あんっ!///」ビクン

洋榎「ほれほれほれぇ!なんとか言うたらどやー!」コチョコチョ

怜「ちょ!ごめんって!ほんまに…やめって…んあっ!/// んぅぅ…んっ///」ビクン

洋榎「ごめんですんだら警察いらんわ!病人やからて容赦はせんでー!」コチョコチョ

怜「ちゃ、ちゃうねん…ほんまに……あかんっ…んぁあん///」ビクン

コチョコチョコチョコチョ

怜「あっ…あっ……ふぅんっ!いやっ!やめて……やめ……っ……!!///」ビクンビクンビクン

洋榎「うわっ!?なんやどないした?」

怜「はぁ……はぁ……はぁ……///」

竜華「怜ー、来たでー」ガチャ

怜「はぁ…はぁ…///」

洋榎「あ」

竜華「……なにこれ?どういうこと?」

洋榎「あ、いや、ちょっとこそばしてたら急に飛び跳ねて…」

怜「……///」

竜華「……怜、そうなん?」

怜「う、うん…」

洋榎「す、すまんな、やりすぎたわ」

怜「いやええよ、煽ったんウチやし」

洋榎「ほな、ウチはこれで…」ガチャ バタン

怜「は!?何しに来てん??」

お風呂

怜「……」

竜華「………怜」

怜「な、なに?」

竜華「こそばされたんや」

怜「え…?う、うん…」

竜華「こそばされただけでそんな息荒げるんや」

怜「……え?」

竜華「こそばされただけでそんな顔火照らすんや」

怜「あの、竜華…?」

竜華「こそばされただけで……シーツ濡らすんや」

怜「え…?」チラ

怜「あっ……ちゃ、ちゃうねん、竜華!これは…」

竜華「…さようなら」バタン


怜「…竜華……」

ダメだ
誰か交替して

怜「どないしよ……」

怜「今更誤解やって言うても信じてくれへんやろうなぁ…」

怜「竜華…」グスン

prr

怜「!?」ガバッ

ピッ

洋榎『お、怜か?』

怜「洋榎……」

洋榎『どないしてん、そんな泣きそうな声して?」

怜「……うち、竜華に捨てられるかもしれへん」

洋榎『え?なんで?』

怜「洋榎ぇ…うち捨てられるかもしれへん…!」ポロポロ

怜「いやや…そんなんいやや…!」ポロポロ

洋榎『お、おお落ち着けよ、な?あの子がそんなことするわけないやろ?』

怜「もうあかんねん…弁解の余地もあらへんねん…」ポロポロ

怜「竜華…竜華ぁ……!」ポロポロ

洋榎『……ちょっと待っとけよ』ピッ ツーツーツー

怜「え…?洋榎…?」

怜「洋榎?…洋榎!!」

怜「…洋榎ぇ……!」ポロポロ

洋榎「怜!」ガチャ

怜「洋榎…?」グスン

洋榎「すまん!この通りや!!」ドゲザ

怜「…え?」

洋榎「多分うちとあんたが仲良うしとったから、あの子がなんか勘違いしてなもうたと思うねん!後であの子のとこにも謝りにいくから安心してくれ!」

怜「洋榎……」

洋榎「ほんまにすまなんだ!」

怜「そんなん…洋榎のせいとちゃうよ…」

怜「うちがちゃんと止めとけば…」

洋榎「怜……」

怜「うちが、うちがちゃんとしてへんばっかりに…竜華を傷つけてしもうた…」

怜「うちが…うちが…」ポロポロ

ダキッ

怜「……!」

洋榎「怜は悪ない。あの子もきっとわかってくれる。うちに任しとき」

怜「洋榎……」ポロポロ

怜「ちゃうねん…うちはもう、あかんねん……」

怜「だってほんまは心が痛まなあかんのに」

怜「それよりも今は……」

怜「洋榎の暖かさを感じれる幸せの方が勝ってる…!」ポロポロ

怜「ごめん、竜華……ごめん……」ポロポロ

洋榎「怜……」

ガチャ

竜華「怜、さっきは勝手に帰ってごめn……」

洋榎「怜……」

怜「洋榎ぇ……」グスン

竜華「…………え?」

洋榎「ん?………あ」

怜「洋榎ぇ、洋榎ぇ……」ギューッ

洋榎(あ、あほ!今すぐ離れろ!あの子が…)

怜「え……?」クルッ

竜華「………怜……?」

怜「…竜華……」

怜「竜華…これは…」

竜華「な、なーんや!そういうことやったんかー!」

怜「え…?」

竜華「いや、今まで気付けんでごめんな?邪魔するつもりはないから!」

怜「竜華…ちが…」

竜華「いやー薄々は気付いとったけど、やっぱそうやったんかー!愛宕さんいい人そうやし良かったやん!」ポロポロ

怜「竜華…やめて…」ポロポロ

竜華「もうこれからはうちがお見舞い来る必要ないよな?愛宕さんがおるんやし!うちはそれに甘えさせてもらって受験勉強がんばろーっと!」ボロボロ

怜「竜華…お願い……話を聞いて…!」ポロポロ

竜華「今さらなんか話すことある?ないやんな!ほなまた学校でな!お大事に!」

バタン

怜「……」

洋榎「………っ…!」

洋榎(あかん、言葉が見つからん…)

怜「………か」ボソ

洋榎「ん?なんや?」

怜「竜華あああああああああ!!!」ウワーン

ウワーン ウワーン

洋榎「……!」ダッ

ガチャ バタン

竜華「あんな幸せそうな怜、初めて見たわ」

竜華「もううちは用済み、か」

竜華「ふふっ」ポロポロ

竜華「ふふっ…ふっ……うっ…うくっ…」ポロポロポロ

竜華「どぎぃ……」ヒグッ



「ちょっと待ってやそこの!」

竜華「!」ゴシゴシ

洋榎「清水谷、でいいんか?」

竜華「竜華でええよ」ニコ

洋榎「ごめん!!」

竜華「なにが?愛宕さんはなんも悪くないよ?」

竜華「怜が愛宕さんを選んだんやし、それを愛宕さんのせいにするんはお門違いやで」

竜華「それにうちはずっと前から怜と一緒やったし、お節介すぎて呆れられたんよ」

竜華「そこにちょうど愛宕さんが現れたから、怜もいい逃げ道ができたと思うで」

竜華「愛宕さんいい人そうやし、強そうやし、うちなんかより全然良いと思うわ」

竜華「もううちは怜には寄り付かんから安心してな」ニコ

パシーン

竜華「……え?」ジンジン

洋榎「このドアホ!人の話を最後まで聞け!」

竜華「なによ!?謝ったくせに自慢話でもすんのか!?」

洋榎「だから最後まで聞け言うとるやろが!!」

竜華「そんなん聞いたって現実は変わらへん!!!」

竜華「怜を……怜を返してよ!!!あああああああああああ!!!!!」

洋榎「返すもなにもあいつはお前のもんなんかとちゃうわアホタレぇ!!勘違いもええ加減にせえ!!」

竜華「うるさいうるさいうるさいうるさい!!うちが今どんな気持ちかも知らずにぬけぬけと!!」

洋榎「」プツン

洋榎「……おい」

洋榎「お前がどんな気持ちかって…?お前は怜が今どんな気持ちかわかって言うてんのか…?」

竜華「怜はあんたがおるから幸せやろ!?」

パシーン

竜華「………!」キッ

洋榎「お前…怜が……怜がどんだけ思い詰めてたかも知らずによくもそんなこと…!」

洋榎「お前が勘違いばっかしてるせいでなぁ!怜がどんだけ苦しんでんのかわかってんのかぁ!!!」

竜華「怜が……苦しんでる……?」

洋榎「あいつがなんで今まで生きて来れたか、なんで病気と戦ってられるんか、なんで必死に生きようとしてんのか」

洋榎「全部お前がおるからや」

洋榎「あいつはお前なしでは生きて行けんて言うてた」

洋榎「だからお前が勘違いして距離とりはじめた時からうちに相談してきた」

洋榎「お前に捨てられるかもしれん、ってな」

洋榎「そん時にどんな顔してたか、想像できるか?」

洋榎「苦痛と絶望に押さえつけられた顔しとった」

竜華「……」

洋榎「お前、さっき気が狂ったように泣き叫んだな。怜はその気持ちをここ最近ずっと持ってたんやぞ」

洋榎「お前が今勝手に感じてる苦しみを、あいつはずっと持ってたんやぞ」

竜華「そんな……でもあん時はあんたと怜は……」

洋榎「じゃれあってただけや。さっきのは"お前に捨てられた"怜を慰めてたんや」

竜華「そんな……私は……」ポロポロ

洋榎「泣いとる暇あったらさっさと行けや!!友達やろが!!」

竜華「……っ!」ダッ


洋榎「……はぁー…」ドサッ

洋榎「……帰ろ」

ガチャ

竜華「怜!!」

看護師「あ、園城寺さんならいま手術室で手術を受けておられます」

竜華「…え?手術……??でもさっきまでなんも変わらんと

看護師「なんでも刃物で手首を自分で切りつけたらしいです」

竜華「え……?」

看護師「大量に出血しているので、血液が足りるかどうか…」

竜華「…私のを」

看護師「はい?」

竜華「私、彼女と同じ血液型なんです。私のを使ってください。いくらでも」

------------

キーンコーンカーン

竜華「怜ー!帰ろー!」

怜「はいはーい、ちょっと待ってや」



竜華「勉強どう?捗ってる?」

怜「ぼちぼちやな。やっぱ数学があかんわ」

竜華「数学やったらうちが教えてあげるよ?今日放課後うち来る?」

怜「いや、今日はちょっと用事があるからまた今度でええ?」

竜華「そっか。じゃあまた今度な」

怜「うん。じゃあうちこっちやから」

竜華「うん、また明日な!」

大阪某所

怜「ごめーん、おまたせ」

洋榎「ええよええよ、たいして待ってへんし」

洋榎「で、話ってなんや?」

怜「うん。ここではあれやし、どっか店入ろ」

洋榎「せやな」

「こちらアイスコーヒーとバニララテになります」

洋榎「どうも」

怜「おおきにです」


洋榎「ここのコーヒーはうまいねんでー」

怜「ほんまや、うちブラック飲めへんのにこれならスッと飲めるわ」

怜「洋榎は物知りやなぁ」

洋榎「せやろーさすがやろー?」

怜「せやな」ニコ

洋榎「…そろそろええやろ?」

怜「……」

洋榎「聞かせてや。話」

怜「……洋榎」

洋榎「ん?なんや?」

怜「…うち、竜華と一緒の大学受かったら、竜華に告白しようと思う」

洋榎「……」

怜「洋榎とおる時は楽しいし、なんか心があったかくなるというか、癒される」

怜「でもやっぱりそれは友達としての感情やって、気づいた」

怜「うちには竜華が必要や。友達としても、恋人としても。だから---」

洋榎「ふふっ…あはははは!」

怜「洋榎…?」

洋榎「いや、深刻な顔するからどんな話かと思たら、なんやそんなことかいな」

怜「そんなことて…結構悩んだんやで?」

洋榎「いやいや、こんなん言われんでもわかっとったがな」

洋榎「いや、いい選択やと思うで?あんたらめっちゃお似合いやし」

怜「そう…やろか…///」

洋榎「うん。でもまあ、直接聞けて良かったわ。話してくれておおきにな」

怜「やめてやそんな改まって。こっちこそ聞いてくれてありがとう」

洋榎「はは。ほんならこうやって会うのも今日がラストか」

怜「? 何言うてんの?うちら友達やねんからいつでも会えるやろ?いままでもこれからも」

洋榎「---そうやな」

洋榎「あっごめん、そろそろ家帰らなおかんに殺されるわ!んじゃ"また"な!」ダッ



怜「…ごめんな、洋榎」

洋榎「はぁ…はぁ…はぁ…」

洋榎「"また"、か」

『うちら友達やねんからいつでも会えるやろ?いままでもこれからも』

洋榎「いままでもこれからも友達、か」

洋榎「あれ、雨降ってきた」

洋榎「傘なんか持ってきてへんぞ…天気予報見とけばよかったわ…」

洋榎「目の下にさす傘なんかないけどな」アハハ

怜「洋榎」

洋榎「はい……え?」

洋榎「なんで……ここにいんの?」

怜「洋榎。目つむって」

洋榎「は?なんで---」




怜「…最初で最後の過ち。竜華には内緒やで」

洋榎「……ははっ、参ったなー」

洋榎「今日は土砂降りやわ」ニコ



おわれ

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