京介「ん、何!? これ酒かよ!」(165)
加奈子「んあ? そっだけど、それがどしたー?」グビグビ
京介「どしたーじゃねぇ! 馬鹿! 酒っておま…っ!」
加奈子「イーじゃねぇかヨ! ブレイコウってやつだってぇー! ガハハ!」
京介「俺は普通にジュース買って来いって言ったじゃねえかっ」
加奈子「それじゃツマンネーから加奈子が気を使ってやったんだヨー」
京介「いらんお世話すぎる!」
加奈子「キヒヒ! きょうすけー、そんな怒んなって! ホラ周りを見てみぃ」
京介「…え?」
桐乃「しゃー!」
瑠璃「にゃー!」
沙織「うふふふふふふふふふふふふふふ」
京介(あ、やばいこれ)
じゃあいつパンツを脱ぐのか?
京介「い、いつの間にか収拾が着かないことになっちまってるぞ!?」
加奈子「だナー」
京介「ど、どすんだコレ…今は俺の両親とも家に居ねえから何とかなってるけどよ…!」
加奈子「大丈夫だろ、京介のオヤジって明日の夕方帰ってくんだろ?」
京介「ま、まあな…夫婦そろって旅行に行ってるからばれるって事はなさそうだが…」
加奈子「んなって心配スンナって! ギャハハ! どーせ皆酔っ払って分っ潰れるだけだってー!」グビグビグビ
京介「その後の片づけを一体誰がやるんだよ…」
加奈子「んあ? 誰がするんだろナー?」
京介「…どうせ、俺だろ」
加奈子「ギャハハハ! いいよいいよわかってるナー京介はー!」
京介「あー……ったく、とりあえずそこの暴れてる奴らを止めてくる…」ガタ
加奈子「おーう! 頑張れにゃー!」フリフリ
京介(クソ、他人事だと思いやがって……)
京介「おい、そこの二人」
桐乃「しゃー!」
瑠璃「にゃー!」
京介(…なんで猫化してるんだ、コイツ等)
京介「とりあえず落ち着け、そして人語を話して喧嘩している訳を言うんだ」
桐乃「しゃあああああ!!」
瑠璃「みゃあああああ!!」
京介「……。あーもうメンドクせぇ…っ」
沙織「…うふふ、京介さん」
京介「ん、なんだ沙織…」
沙織「それでは駄目です、なってませんよ。
お二人は今は猫なのです、猫であればそれなりの対処の仕方があるではないですか?」
京介「いや、確かに猫っぽくなってるがそこまでやらなくとも…」
沙織「そうでしょうか、では、わたくしが少し手ほどきでも」すっ
桐乃「っ! にゃー!」
沙織「よーしよし、怖がらなくてもいいですよ。わたくしは怖くはありません…」
桐乃「……?」
沙織「うふふ」
京介(なん、だと? 不機嫌状態の桐乃が、こうもあっさりと警戒を解きやがるとは…)
沙織「さあ、きりにゃん。こちらにおいでませ…美味しい美味しいビーフジャーキーがありますから」
桐乃「……!」そろりそろり…
京介(おおっ! 若干、警戒しながらもゆっくりと瑠璃の傍から離れつつあるぞ! やるな沙織!)
沙織「うふふ。さあこっちへ…どうぞ、お食べください」すっ
桐乃「……」ちらっ
沙織「いいんですよ」ニコ
桐乃「……」
桐乃「ぺろぺろ」
沙織「うふふ」
桐乃「はぐっ! はぐはぐっ!」
ミミ:::;,! u `゙"~´ ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ ゞヾ ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
ミ::::;/  ゙̄`ー-.、 u ;,,; j ヾk'! ' l / 'レ ^ヽヘ\ ,r゙ゞ゙-"、ノ / l! !ヽ 、、 |
ミ/ J ゙`ー、 " ;, ;;; ,;; ゙ u ヾi ,,./ , ,、ヾヾ | '-- 、..,,ヽ j ! | Nヾ|
'" _,,.. -─ゝ.、 ;, " ;; _,,..._ゞイ__//〃 i.! ilヾゞヽ | 、 .r. ヾ-、;;ノ,.:-一'"i
j / ,.- 、 ヾヽ、 ;; ;; _,-< //_,,\' "' !| :l ゙i !_,,ヽ.l `ー─-- エィ' (. 7 /
: ' ・丿  ̄≠Ξイ´,-、 ヽ /イ´ r. `ー-'メ ,.-´、 i u ヾ``ー' イ
\_ _,,......:: ´゙i、 `¨ / i ヽ.__,,... ' u ゙l´.i・j.冫,イ゙l / ``-、..- ノ :u l
u  ̄ ̄ 彡" 、ヾ ̄``ミ::.l u j i、`ー' .i / /、._ `'y /
u `ヽ ゙:l ,.::- 、,, ,. ノ ゙ u ! /_  ̄ ー/ u /
_,,..,,_ ,.ィ、 / | /__ ``- 、_ l l ``ーt、_ / /
゙ u ,./´ " ``- 、_J r'´ u 丿 .l,... `ー一''/ ノ ト 、,,_____ ゙/ /
./__ ー7 /、 l '゙ ヽ/ ,. '" \`ー--- ",.::く、
/;;;''"  ̄ ̄ ───/ ゙ ,::' \ヾニ==='"/ `- 、 ゙ー┬ '´ / \..,,__
、 .i:⌒`─-、_,.... l / `ー┬一' ヽ :l / , ' `ソヽ
ヾヽ l ` `ヽ、 l ./ ヽ l ) ,; / ,' '^i
京介「おー! やるじゃねえか沙織! いや、本当に猫っぽく扱えば良かったんだな!」
桐乃「もぐもぐ」
沙織「……」
京介「しかし、こうも猫っぽくなっちまってると……桐乃もなんつぅか可愛く見えるもんだなって、沙織?」
桐乃「にゃーん!」すりすり
沙織「………」
京介「お、おい…沙織? どうした? 急に黙って…?」
沙織「…わ……い」
京介「え、なんだって?」
沙織「かわぃいいいいいいいいいいいい!! ふにゅぼらぁああああああん!!!!」ギュウウウウ
桐乃「にゃ───!!!!」
沙織「なんなんですかこれぇええええええ!!! かわいすぎてぶっほげほ、カハァ! ゲボゲホ!」
桐乃「にゃあああああ!!!!」
京介「沙織ぃいいいいい!! やめろ、やめてくれ! そんな風に抱きしめたら背骨が! 背骨が!」
沙織「素晴らしすぎますわっ…なんていうことでしょう、
最終兵器すぎてわたくしの寿命も著しく低下をみせてますわ…!」ギュウウウ
桐乃「にゃぁっ…ああっ…うっ…」ピクピク
京介「俺の妹も著しく寿命の低下をみせてるぞ! と、とりあえず離せ沙織っ…ぐおっ…力強ッ…!?」ギリギリ
沙織「いやですわ、絶対に離しません。わたくしの命に賭けても…」
京介「なんつぅー力込めてるんだっ…くそ! 加奈子! お前も手伝え!」
加奈子「あーい」
沙織「うふ、加奈子さん。わたくしはどんな策略にも屈する事はありませんのよ」
加奈子「ハッ、うっせーよデカ女。加奈子のダチの命と京介の頼みとあっちゃー、手段なんて選らばねーヨ」
沙織「あら、怖い怖い」
京介「無駄口叩いてねえで、早く助けろ! 桐乃の顔色が凄いことになってやがるから!」
桐乃「っ…っ…っ…!」
加奈子「おっし、まかせな加奈子さまにヨー! これでもくらえっ!」ばばっ
沙織「何をするのでしょうか、楽しみ、」
沙織「ひゃんっ!?」ビクゥ!
加奈子「──くすぐりの刑だ、覚悟しろヨ? 加奈子は気絶するまで離さねえからヨ!!!」コショコショコショ
沙織「なん、てこひょっ…うくく、んふっ、んんっ───!!!」
加奈子「我慢すんなって、堪えれば堪えるほどヨー……
くすぐりってモンは絶大な効力を発揮するんだゼ───!!」コショコショ
沙織「んっ───!!!!」ビクビク
京介「お、おおっ…段々と腕の拘束が弱まってきてる! もっとだ! もっとやれ加奈子! 俺が許す!」
加奈子「わかってんヨ───!!!」コショコショコショコショ
沙織「やめ、やめてくださいまっ…んっ…はな、はなします、からっ…これ、いじょっ…!」パッ
京介「離した!」ぐい
桐乃「」グッタリ
京介「大丈夫か桐乃!? 死んでないよな、骨は折れてないよな!?」
桐乃「にゃ……」
京介「…よかった、猫になりきる元気はあるんだな…本当によかった…」
沙織「あはははははは! ごめ、ごめんなっ…もう、しま…しません、……あっはははは!」
加奈子「うろぉおおおらぁあああああ!!」ギラギラ
京介「お、おい。加奈子…もう大丈夫だぞ、桐乃は助かったから…」
加奈子「あー? 助かったからってナンだよ、またコイツは同じことすっかもしれねーダロ?」
沙織「しま、しませんっ…しません! わたくし、しませんわ! だ、だからあはははは!!」
京介「し、しないって言ってるけど…?」
加奈子「ハァー? しんよーならねえナァ? 元からなんつぅか信用できねーやつだから、
これを機にトコトン加奈子さまの恐ろしさを身を持って経験してもらおーじゃねえの」
なんでidコロコロ変わるんだ
沙織「あはははっ! あはっ! ひゃめっ、もうらめっ…!」
加奈子「アッヒャヒャヒャハ───!!!」
京介「…だめだ、完全にスイッチが入っちまってる」
沙織「た、たすけてっ…しんじゃ、しんじゃうから…! きょうすけしぃ───!!!」
京介「…すまん、無理だ。頑張ってくれ」
沙織「わぁああああああああ!!」
加奈子「オラオラオラ! ションベん漏らすまでとめねぇーぞ!」
沙織「っ…! っっ…!」ピクピク
京介(加奈子が飽きるまで、頑張れよ沙織…)
桐乃「にゃあ…」ぴく
京介「お、気がついたか桐乃!?」
桐乃「……」
京介「よかった…このまま起きなかったら…」
桐乃「にゃあんっ」ぎゅうっ
京介「ん?」
桐乃「っ…っ…っ…」ブルブル
京介「…そうか」
京介「怖かったんだな、おう…もう大丈夫だ。兄貴が守ってやるからな、安心しろ」
桐乃「にゃ…?」ちら
京介「ん、まかせろ」
桐乃「っ…!」ギュウ
京介(ふむ、こんなに怯える桐乃もなかなか…)フンスー
「にゃッ」がぶっ
京介「いてぇ───!!?」
京介「な、なんだッ!? いきなり首を噛まれたっ!?」
瑠璃「な”あ”あ”あ”っ…」がぶがぶ
京介「く、黒猫っ!? おまっ! なに俺の首裏を噛んでやがるんだ!?」
瑠璃「ぐるるる」
京介「やめ、やめろ黒猫! 本当にやめてください!」
桐乃「しゃー!」
京介「お前も戦闘態勢に入るなっ!」
瑠璃「ぷはっ」
京介「いッ…!」
瑠璃「にゃー!」
桐乃「しゃー!」
京介「うおおっ…首がよだれでべっとり…じゃない、お前ら! やめろやめろ!」ぐいっ
瑠璃「っ…?!」
京介「…今は桐乃は疲れてるんだよ、お前とケンカできる体調じゃないんだ」
瑠璃「……」シュン
京介「大丈夫か? 桐乃?」
桐乃「……」ペロペロ
京介「えっ? ちょ、やめろって! お、おい…ふへへ…」
京介「ば、ばか! 顔はちょっとマズイだろ、おいっ…ったくしょうがねえな…よしよし…」なでなで
桐乃「ごろごろ~」
京介「お、ここがいいのか? よしよーし」ナデナデ
桐乃「ぐるる~」
瑠璃「………」
桐乃「ぐるる~……、にやっ」チラ
瑠璃「っ!」
京介「ちょっと楽しいかもしれん…こういうのも…」ホクホク
ずしっ
京介「んごっ! な、なんだ…急に背中に重みが…」
瑠璃「……」
京介「…黒猫? な、なんだよ急に俺の背中に寄りかかって」
瑠璃「っ……」ぐい…
瑠璃「ん~……」すりすり
京介「お、おい…っ?」
瑠璃「にゃおん」すりすり
京介「黒猫…?」
瑠璃「ぺろ」
京介「っ~~~!?」びくん
桐乃「!」
京介「お、おい! どうしたんだよ、急に…! ちょ、本当にそれ以上はマズイ!」ぐいっ
瑠璃「にゃおーん」
京介(あ、あぶねえ…これ以上ぺろぺろとすりすりされてたら、俺の自制がきかなかったな…)
京介(しかし、どうするこの状況…改めて考えてみると、やべえんじゃねえかコレって)チラ
沙織「もっとぉおおおんっ! あひゃひゃひゃあへっ!」
加奈子「ふはっ! んだヨ、ここが良いのかぁぁン?」
京介(なんかこう、色々と忘れてる気がしないでもないんだが…)
京介(そもそもどうして俺らって、こうやって集まったんだっけっか…あ、そっか! 俺の受験が終わってお祝いで…それで…)
ピンポーン
京介「みんなが……あつまるって……」
京介「………」ドバァ
桐乃&瑠璃「!?」
京介「や、や、やばいぞオイ……い、今のって…!」ダラダラダラ
~~~
麻奈美「あれー? どうしたんだろうきょうちゃん~」
あやせ「どうしたんですか?」
麻奈美「ん~何回かいんたふぉんを鳴らしたんだけどね、一向に出てくる気配が無いんだよ」
あやせ「なるほど」
麻奈美「もしかして、買いだしに行ってるのかなぁ」
あやせ「流石にそれは無いんじゃないですか?
さっき電話では先に始めてても良いかって言ってたぐらいですし」
麻奈美「そうだよねぇ~加奈子ちゃんが始めたがってたもんね」
~~~
京介(確実に麻奈美とあやせが来ているっ…! 間違いない、というかそれ以外にありえないだろ!)
京介(どうする!? やっかいな二人だ、この場の状況を説明したとしても何て言えばっ…!)
京介(……居留守を使うか? 携帯に電話して、麻奈美の家で待ってるように言えば時間は稼げるはずだ!)
~~~
あやせ「はぁ、加奈子はほんとーに堪え性がないからなぁ」
麻奈美「あはは~。まあここで待っててもいいんだけどね、きょうちゃん家ってここの…えっとね…」ゴソゴソ
あやせ「?」
麻奈美「んー、あったあった。ここの植木鉢の裏に合鍵を入れてるんだよね~」
あやせ「流石です、麻奈美さん」
麻奈美「えへへ~。きょうちゃんには悪いけど、先に入ってまたせてもらおっか」
あやせ「そうですね」
~~~
かちゃ
京介「!?」
京介(か、カギが開いた音!? どうしてカギが開いた!? 合鍵か!? くそ、麻奈美なら知ってておかしくない!)
京介「やべえ! か、かかか加奈子! あ、あやせ達が来ちまったぞ!」
加奈子「あっひゃひゃひゃ! やめ、やめてくれっ! ごめ、ごめんって!」
沙織「いえいえご遠慮なさらずに! もっともっとくすぐり合いましょう!」
京介「加奈子ぉ───!!」
加奈子「きょ、きょうすけっ…やっ…みないでぇ…」
沙織「見てください京介さん! 加奈子さんがこんなにも乱れてますわよ! こんなにも! ハスハス!」ぱかー!
京介「だぁ──! やめろやめろ! パンツ丸見えだから!」
桐乃「ぺろぺろ」
瑠璃「にゃーん」スリスリ
京介「このタイミングで甘えてくるなよ! やめ、やめろぉ───!!!」
~~~
麻奈美「…あれ、今の声って…」
あやせ「むっ。なんですかこの匂い……まさか、お酒…?」
麻奈美「お酒? 本当だ、ちょっと匂いってくるかも」
あやせ「っ! お兄さん! いったい何をやってるんですか!」ドタドタ
麻奈美「あっ、あやせちゃん!」
あやせ「まさか桐乃たちにお酒を飲ませてるんじゃないでしょうね!」ガチャ!
あやせ「一体何を───」
あやせ「……」ピシィ!
麻奈美「あやせちゃん…? どうしたの固まっちゃって…」ひょこ
麻奈美「中でなにが起こってるの──」
多分、麻奈美たちが見た光景はこうだったんだろうと思う。
俺が四つん這いとなり、沙織に両手両足を絡め取られパンツ丸見えの状態の加奈子にのしかからんとし、
引き摺るようにして脱げかかった俺のジーパンを引っ張り合う桐乃と黒猫の二人。
どう考えても、通常一般で起こり得る光景では無かっただろう。
京介「ち、ちがっ…! これには訳があって…!」
あやせ「……」
麻奈美「……」
京介「頼むから、まずは俺の話を聞いてくれ! マジで! 本当に俺は悪くないから!」
~~~
京介「んっ…あれ、ここは…」
桐乃「ったく、やっと起きたのアンタ」
京介「…桐乃?」
桐乃「……」
京介「なんだ…俺、寝てたのか」
桐乃「ふん」
京介「そう、なのか…そしたらさっきまでの事は…夢、なのか?」
桐乃「なにボソボソ言ってるの? キモいんだけど」
京介「…うるせえ」ボリボリ
桐乃「…ふん」
京介「っていうか、アレ? 今何時だ? というかお祝いはどうした?」
桐乃「さあ」
京介「さあ、ってお前……俺のお祝いだぞ?もっとこう盛大に祝ってくれよ」
桐乃「うっさい。調子に乗るな馬鹿」
京介「んだよーもしかして寝過ごしちまったのか」
桐乃「……」
京介「…マジかよ、本当に寝過ごしちまったのか。ばっかだな俺、本当に馬鹿だ」
桐乃「…馬鹿は元からでしょ」
京介「はっ、そりゃそうだな。しかしなんだ、起こしてくれたっていいもんだろフツーは」
桐乃「……」
京介「気をきかせて起こしてくれなかったのか、麻奈美当たりならそうしそうだな、ったく」
桐乃「…良いでしょ別に」
京介「ん?」
桐乃「別に、いいじゃん。アタシと……その、二人っきりでも」
京介「なにがだよ」
桐乃「だ、だからっ…兄貴と、あたしと、二人きりでも…祝えるじゃん、そういうのって…!」
京介「………」
桐乃「アンタがっ…いやって言うんだったら、別にあたしはいいケド…っ」
京介「桐乃…」
桐乃「な、なによっ」
京介「すげー嬉しいこと言ってくれるんだな、俺、感動してる」
桐乃「ばっ……ばっかじゃないのっ! なに、シスコンって奴はこんなことでも嬉しいワケ!?」
京介「当たり前だ。嬉しくてやべぇよ、泣いていい?」
桐乃「き、キモいから却下!」
京介「そうか…ごめん」
桐乃「あ…ちが、くて…その…っ~~! だぁーもう!」がしがし!
京介「ど、どうした」
桐乃「……い、一回しか言わないからっ」
京介「あん?」
桐乃「いいから! 一回しか言わないから! ちゃんと聞きなさいよ!」
京介「お、おう」
桐乃「っ…その、えっと…」
京介「なんだ、早く言えよ」
桐乃「お、おおっ!」
京介(大丈夫かコイツ…)
桐乃「ぐっ…なにやってるのよ…アタシっ…!」
京介「別に無理して言わなくても良いんだぞ…? 何を言いたいんだが知らんが」
/. ノ、i.|i 、、 ヽ
i | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ |
| i 、ヽ_ヽ、_i , / `__,;―'彡-i |
i ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' / .|
iイ | |' ;'(( ,;/ '~ ゛  ̄`;)" c ミ i. (待機中です。しばらくお待ちください..........)
.i i.| ' ,|| i| ._ _-i ||:i | r-、 ヽ、
桐乃「べ、べっつに無理なんてしてないし!」
京介(顔を真っ赤にしながら何言ってるんだコイツは…)
桐乃「……い、いいから静かに聞いててよ」
京介「…わかった、じゃあ待ってる」
桐乃「うっ…」
京介「笑わない、それにせかさない。大事なことなんだろ、じゃあ俺も静かに待ってる」
桐乃「…あ、ありがと」
京介「ん」
桐乃「その、ね…兄貴…」
京介「おう」
桐乃「っ~~…えっと…受験、だけどさ…」
京介「……」
桐乃「…無事に終わって…おめでとって、ことを…言いたかっただけ、だから」
京介「……」
桐乃「それだけ、だから…」
京介「……」
桐乃「っ…な、なによ…なにかいってよ…」
京介「そうか」すっ
桐乃「っ…!」ビク
なでなで
京介「ありがとな、桐乃。嬉しいよ、俺は」
桐乃「…子供、扱いすんなっ」
京介「ん、そしたら抱きしめてやるか?」
桐乃「ば、ばーかばーか!」
京介「ははっ、だろ? なら黙って撫でられとけよ」
桐乃「……ばーか」
京介「…」なでなで
桐乃「ふんっ」
京介「うっし、そうだな。今日は何処か食いに行こーぜ、桐乃」ポン
京介「ファミレスでもファーストフードでもいいぞ、兄貴が奢ってやる、それもいっぱいだ!」
京介「どうだ? 今日の俺はちょっと太っ腹だぞ、前に行ったナンチャラ店みたいなお洒落な店でも可だ!」
桐乃「…お金あんの、アンタに」
京介「ふん、舐めるな受験生を。金を使う暇すらなかったぜ…」
桐乃「くす、確かにそうだったかも」
京介「……。じゃあ行くか桐乃、出かける準備して来い」
桐乃「え、あ、うん、えーと…その、このままでいい、かな」
京介「あん?」
桐乃「べ、別に着替えなくても……これでいけるし、へーきへーき!」
京介「いや、流石にそれじゃ薄着過ぎるって言うか、何か上からでも着て来いよ」
桐乃「大丈夫だってば! あたしってこう見えて、身体丈夫だし、健康体だし、ほら! スポーツマンっしょ?」
京介「……」
桐乃「だ、だからこのまま外に出て、出かけても平気っていうか~」
京介「桐乃…」
桐乃「な、なによ?」
京介「お前、何か隠してないか?」
桐乃「は、はぁ? 馬鹿言わないでよ、アンタに何を隠すっていうワケ?」
京介「ま、まあそうだけどよ…」
桐乃「でしょ? まあ、ちょっとアタシってばミステリアスな所もあるし、勘ぐっちゃうのもわかるけどさ~」
京介(丸顔がなにいってやがるんだ…ん、なんだ…財布がやけに軽く感じる?)パカ
京介「…あれ?」
桐乃「ということで、兄貴。静かにドアを開けて静かに出かけようじゃん…」キィ
京介「待て、桐乃」
桐乃「っ!?」びくっ
桐乃「な、なによっ…?」
京介「なにか、俺って忘れてない…か?」
桐乃「はぁ? ば、ばかじゃない? 記憶喪失にでもなっちゃったワケ? あはは、うけるー!」
京介「財布の中身が、少ないんだ。使った記憶なんて、これっぽっちも無いのに」
桐乃「…あ、ヤバ」
京介「んっ!? おい今ヤバって言ったか!?」
桐乃「えっ? ち、ちが! そうじゃなくって、その~……!」
京介「なんだよ! お前、何を隠してるんだよ!」
桐乃「ち、違うってば! べつにアタシは隠してるわけじゃ、うっ…来ちゃう、隠れないと!」ばばっ
京介「は? 隠れるって何を言って…」
桐乃「ば、ばか兄貴! アタシが来てること言わないでよね!」がらら
京介「お、おい! どうしてクローゼットの中に隠れるんだよ!」
桐乃「うっさい!」ばたん
京介「ちょっと待てって!」
がちゃ
京介「なんだよ、急に桐乃の奴──」
「──あら、起きてたのね。ちょうど良かったわ」
京介「って、はい? く、黒猫?」
瑠璃「ええ、そう。それがどうしたの?」
京介「「どうしたのって、お前どうして俺の家に?」
瑠璃「はい? どうしてって、それは……」
京介「それは?」
瑠璃「……………………」
京介「お、おい? どうした?」
瑠璃「…………貴方とデートする約束をしていたからでしょう、忘れてしまったの?」
京介「え、デート!? マジで!?」
瑠璃「ええ、そうよ」
京介(黒猫とデート!? そんな大事なこと忘れちまってたのか俺!?)
瑠璃「困ったお兄さんね、せっかくこうやって私から出迎えてあげたというのに」
瑠璃「…それとも私なんていう存在も忘れて、酒池肉林に溺れていたのかしら?」
京介(な、なんだ!? 違うって言いたいが、そう言いきれない自分がいる!)
瑠璃「まあ、いいわ。それはもう終わったことだもの」
京介「お、終わったこと…?」
瑠璃「気にしなくてもいいってことよ。それよりも、貴方……ちょっと臭うわよ」
京介「え?」
瑠璃「身体」
京介「身体って……ん、ちょっと汗臭いか…?」
瑠璃「ちょっとというほどじゃないでしょう。この距離からでも臭うのだから、相当なものよ」
京介「す、すまん! わからんが、寝汗かもな…ちょっくらシャワーでも浴びてくる」
瑠璃「そうね」
京介「おう」
瑠璃「…ちょっと待ちなさい」
ちょいうんんこ
京介「ん、どうした?」
瑠璃「少しだけ、時間をくれないかしら」
京介「え、なんで?」
瑠璃「いいから黙ってベットの端にでも座ってなさい。すぐに戻るわ」すっ
京介「お、おう…」
瑠璃「良い事? 黙ってそこで座ってるのよ」
きぃーぱたん
京介「一体何だって言うんだ…?」
がらら!
桐乃「黒猫の奴っ…! よくもまぁいけしゃーしゃーと…っ!」
京介「お、おい桐乃! どうしたいきなり隠れて…いや、それよりも俺って黒猫とデートの約束してたんだろうか…?」
桐乃「うっさいわよ馬鹿! アタシが知るわけないでしょ!」
京介「そ、そうだよな…」
桐乃「ぎりり、どうするべき…? こうも前に出て来られたらアタシも出れる暇が…」
京介「桐乃?」
桐乃「…そう、だ…今なら色々と出来るかも…」だだっ
京介「お、おい! 桐乃!?」
桐乃「アンタはここで黙って待ってて!」がちゃ!
桐乃「……その方がアンタの為でもあるから」バタン!
京介「お、おい…どういう意味だよ一体…」
京介「……」
京介(どうなってやがるんだ? どうも俺は勘違いをしている気がしてならないんだが…そこがわからん)
京介「俺は一体、何を忘れてるんだ…?」ズキン!
京介「痛っ!」
(──きょうちゃん、あのね)
京介「はぁっ…はぁっ…え? 今のって…麻奈実…?」
京介「どうして、麻奈実のことを思い出したんだ…?」
がちゃ
瑠璃「きたわよ」
京介「お、おう! 黒猫……」
瑠璃「待たせてしまってごめんなさい、これを用意してたのよ」カタ…
京介「これって、ヤカン?」
瑠璃「そう、そして風呂場から持ってきた桶に入れて、タオルを付ける」ちゃぷ
京介「……」
瑠璃「……」
京介「…いや、黒猫。お前がやりたいことは言わんとしても分かるんだが…」
瑠璃「そ、そうかしら」
京介「別に普通にシャワーを浴びてくれば良いだけの話じゃないか?」
瑠璃「それは駄目よ!」
京介「なんで!?」
瑠璃「そ、それはっ……その……」
京介「な、なんだよ」
瑠璃「…地球が滅びるからよ」
京介「スケールでけーなオイ!」
京介「俺がシャワー浴びたら地球滅びるのか!? こぇえええ!」
瑠璃「そうよ、恐れ慄きなさい…貴方の皮膚から溢れだすダークマターが水源を汚染し、地球規模で壊滅状態となるのよ」
京介「…末恐ろしい生物兵器だな、俺」
瑠璃「理解できたかしら? そんな貴方の噴き出す抗生物質に的確な対処が可能なのは……私しか存在しない」
瑠璃「つまりは、そう! 貴方の身体を拭く事が出来るのは私しかいないってことなのよ!」ビッシィイイイ!
京介「っ!?」
瑠璃「……」ぷるぷる
京介「そ、そうか……なるほどな」
瑠璃「え…」
京介「わかったよ、黒猫。お前が言ってる事も一理ある」
ドン!
京介「? なんか隣の壁がうるさいが、まあ、いい」すた…
瑠璃「っ…!」びく
京介「さあ、黒猫。拭いてもらおうか、俺の身体を」ばさぁ
瑠璃「ひっ」
京介「ん、どうした?」
瑠璃「あっ…や、その…なんでもないわよ、フフフ」
京介「そうか、じゃあお願いする」
瑠璃「……………」
京介「どうした黒猫?」
瑠璃「い、いいからあっちを向いていなさい!」ぐいっ
京介「おう」
瑠璃「…………」
瑠璃(な、なんなのかしらっ…なんだか随分と積極的というか、
確かにここぞと言う時にお節介になるのは知っているのだけれど…)
瑠璃(あの言い訳で貴方がこうも従うとは思えないのだけど…)
京介(ふふ、黒猫の奴め。戸惑ってやがるな! 俺は分かったんだ、この場の状況をな…)
京介(桐乃の件を含め、黒猫もそうだが──俺にドッキリをしかけようとしてやがるな!)
京介(どういったドッキリを仕掛けてきているかは分からねえが、
まあいい……ここはお前らの言う通りにワザと従ってやる!)
瑠璃「………」ドキドキ
京介(さあ、来い黒猫ォ! お前の手さばき、見届けてやろうじゃねえか!)
瑠璃「い、行くわよ…」すっ
京介「おう!」
瑠璃「………」ぐいっ
京介「ん…」
瑠璃「………」ふきふき
京介「ん、ん」
瑠璃「…湯加減というか、熱くはないかしら」
京介「お、おう。大丈夫だ、平気だぞ」
瑠璃「そう…」ふきふき
京介(ん~……なんだろうこの気分、不思議な気分だ)
瑠璃「よいしょっと」ギュー
京介(なんつぅーか、すっげードキドキする…)
瑠璃「次、腰のあたり拭くのだけれど…」
京介「お、お願いする…」
瑠璃「ん」フキフキ
京介(凄いくすぐったい!)
瑠璃「………」ふき
瑠璃(拭いたタオル…)
瑠璃「………」チラ
瑠璃「………」
瑠璃「……」すっ
くんくん…
桐乃「フゥン!」ばぁん!
京介「うおおっ!?」
瑠璃「きゃああ!?」
瑠璃「あ、あなたっ…!」
京介「桐乃っ!?」
桐乃「……あんた、なにやってんの?」
瑠璃「…ふ、ふふ、それは簡単には答えられぬ問題ね…」
京介「は、ははっ! 何を怒ってんだよ桐乃…!」
桐乃「……」
瑠璃「な、なにかしら?」
桐乃「今、アンタ、タオルのにお」
瑠璃「だめぇ──!!」ばばっ
京介「だ、だめ…?」
桐乃「むぐぉっ!?」
瑠璃「はぁ…はぁ…ふふふ、何を一体解放させようとしたのかしら貴女は…っ!」
桐乃「むぐぅー!」
瑠璃「い、いいからこっちに来なさい! はやく!」ずりずり
ぱたん
京介「………」
京介「ハックション!」
京介「ズビビっ…何だ一体、黒猫が桐乃を連れていっちまった」
京介(これが二人のドッキリだったのか? なんだかしっくりこねえな…)
京介「とりあえず、服着るか…」
コンコン
京介「ん、誰だ…いいぞー!」
「失礼します、もう体調のほうがいいんです──きゃー!!!」
京介「うおっ!?」
あやせ「なっ…なっ…なんて格好なんですかお兄さん!! 変態変態!」
京介「なっ!?ちょ、待ってくれ!」
あやせ「は、裸でっ…入室を許可するなんてっ…わざとですよね! それってワザと見せつけるために私をいれたんですよね!!」
京介「裸って言うな! 下は履いてるぞ! ていうか違う! これは、ちょっとした不可抗力で…!」
あやせ「い、いいから早く上を着てください! 目のやり場に困りますから!!」
京介(あっち向けばいいだろうに……本当に…)
京介「もういいぞ、眼を開けても」
あやせ「…本当ですか? 実は今の間に下半身も露出してるんじゃないんですか?」
京介「誰がするか!」
あやせ「……」チラ
あやせ「ふぅ、本当に着たようですね」
京介「ああ、当たり前だろ」
あやせ「お兄さんは信用できませんから、本当に信用できませんから」
京介「二回も言わなくていい」
あやせ「重要なことなんです!」
京介「そうか、わかったから…その、要件を言ってくれ」
あやせ「あ、そうでした。下でみなさんがお待ちかねですよ」
京介「あん? 下で誰が待ってるんだ?」
あやせ「はぁー? 何言ってるんですか? とうとう頭の中に虫でもわいちゃったんですか?」
京介(なんだか今日のあやせは、とてもとても毒舌だー)
あやせ「皆さんと言えば、みなさんでしょうに。今日という日を忘れたわけじゃないでしょう?」
京介「えーと…」
あやせ「……?」
京介「あの…すまん、こう言っても信用してくれないと思うけどよ。俺、記憶が曖昧なんだよ」
あやせ「記憶が、曖昧?」
京介「おう、さっきも桐乃や黒猫…瑠璃の奴も来てたんだが、どいつもこいつも違う事ばっかり言いやがってさ」
あやせ「………」
京介「ん、まあどうやら。あやせが正解っぽいな。すまん、ちょっくら今日の事を教えてくれないか?」
あやせ「………」
京介「…? あやせ、どうした?」
あやせ「…いいですよ、今日の事を話せばいいんですよね?」
京介「お、おう。そうだな、とりあえず俺がどうして寝てるのかを教えてくれたら───」
ぽすっ
京介「──え?」
あやせ「……」
京介「な、なんだ? どうしたっ? 急にもたれ掛かって……」
あやせ「お兄さん」ぎゅっ
京介「お、おうぅっ!」
あやせ「…寂しかったんですよ、わたし」
京介「えっ?」
あやせ「だけど、お兄さんは皆でパーティすると言って…せっかくのチャンスだったのに」
京介「チャ、チャンス?」
あやせ「はい、お兄さんと、二人っきりに……なれるチャンスだって」
京介「っ~~~!?」
あやせ「なのにお兄さんは全然気づいてくれなくて…わたしはとても寂しくて…」
京介「そ、そうだったのか!? 俺って奴は…!」
あやせ「いえ、いいんです。それがお兄さんだってことはわたし、知ってますから」
あやせ「それが…京介先輩の魅力だってことは、知ってますから」
京介(駄目だ、脳が溶けそう)
京介(ど、どうする! ここで、ここで俺は抱きしめるべきなのか!?)
京介(だ、だが! 俺の記憶にない所であやせを困らせた事実……
それを安易に認めて、それに乗っかってもいいもんなのか?)
あやせ「……」
京介(俺は、あくまであやせにたいして紳士でありたい。素直でありたい。
この気持ちは純粋で、ピュアで、なによりも代え難い想いなんだ!)
京介「あやせ」
あやせ「はい…」
京介「俺は、本当に悪い奴だと思う。あやせに悲しい想いをさせた事も、謝る」
あやせ「そんな、私はそんな風にお兄さんに思って欲しくなんて…!」
京介「駄目だ! あやせ!」
あやせ「っ…」
京介「俺はな、責任を取るべきだって思うんだ。俺の記憶に無い所で悲しい想いをさせたことに、
真面目に考えて答えるべきなんだと思ってる。本気で、そう思ってる」
あやせ「……」
京介「だからよ、あやせ。今度一緒に何か食べに行こうぜ」
京介「その時は、その……なんだ、ははっ、二人っきりでってのは……どうだ?」
がしゃん
京介「へ?」チャラ…
あやせ「あーあ、なんだかなーもー」
京介「あ、あやせ…? これ、手錠だよな…?」
あやせ「ええ、そうですよ。手錠です、うふふ」
京介「えっと、あのー…どういうこと?」
あやせ「あはは。まあ色々と聞きたい事もあるんでしょうけど、まずはひとつだけ」
あやせ「あれは嘘です、まるっきりの嘘、寂しくなんてなってませんから」
京介「…どうして、嘘をついた?」
あやせ「どうして? くすくす、お兄さんがそんなこと言っちゃうんですか?」
あやせ「──今日一日の記憶が無いなんて、嘘をついてるくせに」
京介(あ、やっぱ信用してなかったなコイツ!!)
あやせ「そんな事普通信用すると思いますか? しませんよね、絶対に、これっぽっちも、少したりとも」
京介「そ、そこまで否定しなくたって…」
あやせ「えいっ」
京介「あばばばば!?」
あやせ「軽い微電流が流れる手錠なんですよ、凄いでしょう?」
京介「末恐ろしいモノを持ちやがって…っ!」
あやせ「うふふ」
京介「っ…それで、お前は一体何が狙いなんだ! 正直に言えよ!」
あやせ「何が狙いか、ですかー……そうですね、ぶっちゃければ『お兄さんの確保』ですかね」
京介「お、俺の確保…?」
あやせ「はい。お兄さんが忘れたがってる事から無事に、逃してあげる…が正解でしょうか」
京介「ま、待て待て! 一体お前は何を言ってるんだ!」
あやせ「そのままですけど?」
京介「もっとわかりやすく!」
あやせ「どちらにせよ、お兄さんの命もあと少しです。多分ですけどね」
京介「俺の命が危ないの!?」
あやせ「…怒ってましたよ~? 麻奈実さんが」
京介「あ、それはヤバい」
あやせ「………なんだか変なリアクションですね」
京介「うわぁあっ…アイツが怒ってるとかっ…うわぁああっ…! 俺って何をしたんだよぉっ!」
あやせ「……」ちょんちょん
京介「ひっぐ…なんだ…?」
あやせ「もしかして、お兄さん……本当に記憶が無いんですか?」
京介「だっ、だからそう言ってるだろ! これっぽっちもねえんだって!」
あやせ「じゃあ、さっき…私にいった言葉は? 誤魔化しとかじゃなくて?」
京介「はぁ? 本気に決まってるだろ! あやせを悲しませたのかなって、本当に思ってよぉ…!」
あやせ「………」
あやせ「………」ぼっ!
あやせ「そ、そうなんですかぁ~……へ、へーふーん…」
あやせ「…お兄さんは、私が寂しがってたらその…何処かに連れてってくれんですか~…ふーん」
京介「あ…? あったりまえだろっ、あやせが正直にそんな事言ってくれたらっ…俺は何処へだって着いて行くぞ…!」
あやせ「えっ…?」
京介「お前がもし、東京タワーをみたいっていうなら連れってやるさ…水族館に行きたいっていうなら連れってやる」
京介「──あやせが寂しいって一言、俺に言ったなら……俺は何だってしてやるつもりだよ!」
あやせ「あ、えっ…そのっ……」
京介「どうした…っ?」
あやせ「っ……っ……!」ぽち
京介「あばばばばばばばぶひぃいいいいいい!!」ビリビリビリビリ
あやせ「あっ…! ごめんなさい、お兄さん! わざとじゃないんです!」
京介「んじゃじゃじゃじゃじゃじゃはなさししししししっててててって」
あやせ「ちがっ…わたしはただ、ちょっと嬉しくって、って何言ってるのわたし!? 違うんです嘘です勘違いしないでくださいー!」パタパター!
京介「お”お”い”っ…! ちょ、すいいいいいいいいいいいいいっちいちちちちちちちい」
京介「ぐがががががががが」
京介(やべぇ…意識が朦朧としてきた…なんなんだ今日は…)
京介(このまま俺、死ぬのかな…死んじゃうのかよ…)
『──きょうちゃんのこと、信じてるから』
京介(なんだ…? また麻奈実の声が、どうしてさっきから声が…)
ポチ
京介「あががっ……が…?」
「大丈夫? きょうちゃん?」
京介「この声は……麻奈実…?」
麻奈実「うん、そうだよ~」
京介「お、おおっ…?」
麻奈実「立てる? 肩貸してあげよっか?」
京介「だ、大丈夫だ…うん…」
京介「…ありがとな、麻奈実」
麻奈実「いいよ~、ちょっと廊下を覗いたら上の階からきょうちゃんの叫び声が聞こえたから~」
麻奈実「何事だ! なんて見に来れば、あやせちゃんが勢いよく走り去って来たんだよ」
京介「…おう」
麻奈実「うんー」
京介「…」
麻奈実「…それで?」
京介「っ」ビクゥ
麻奈実「…それで、何もかも終わったわけじゃないんだよって事は、わかってるんだよね、きょうちゃん?」
京介「う、うん」
麻奈実「そっか~よかった~。わたしってばほら、一人で勝手にわかっちゃってる気分になったりするでしょ~?」
京介「…そんなこと、無いって思うけどなぁ俺は…」
麻奈実「へぇ、そう思うの?」
京介「…いや、わ、忘れてくれ今のは」
麻奈実「うん、わかった~」
京介「……」
麻奈実「うふふ」
京介「麻奈実!」ずさぁ!
麻奈実「わっ! なになにどうしたのきょうちゃん!?」
京介「ごめん! 本当にごめんな!」ふかぶかー!
麻奈実「えっ、えっ、どういうこと? きょうちゃんどうして土下座なんかしてるのっ!?」
京介「俺、お前を怒らせる事をしたんだろ」
麻奈実「……」
京介「言っても信じてくれないと、思うん、だけどよ…記憶が無いんだ今日一日の」
京介「だから! 俺はお前に対して悪い事をしたって言う自覚は無い、だけど…だけど!」
京介「お前が怒る程のことをしたって、そういった事実があるんなら! 俺は謝る! この通りだ、本当に…すまん」
麻奈実「きょうちゃん…」
京介「……」
麻奈実「うん、きょうちゃん。顔をあげて」
京介「…いいのか、俺はまだ許してもらってないぞ」
麻奈実「そうだね。だけど、顔をあげて話をしなくちゃ許す事も出来ないから」
京介「…おう」
麻奈実「うふふ、なんだかきょうちゃんの土下座…久しぶりに見たねぇ~」
京介「…昔は良くしてたからな」
麻奈実「それはそれでどうかって思うけど、うん、でも確かにしてたね」
京介「……」
麻奈実「きょうちゃん、あのね、私は別に怒ってなんかいないよ?」
京介「え? でも…」
麻奈実「あやせちゃんにでも聞いたの? うふふ、そうじゃなくってね」
麻奈実「桐乃ちゃんや、五更ちゃんもちょっとおかしくなかったかな?」
京介「ど、どうしてそれを?」
麻奈実「うん~? だって見てたから、かな?」
京介「そ、そうか…」
麻奈実「きょうちゃんの部屋に行く所だけ、だけどね」
麻奈実「色々と大変だったでしょ? くすくす、その様子からわかるよ」
京介「ああ、皆が皆違う事を言うもんだからよ…」
麻奈実「まあね。チャンスだって思ったんじゃないのかな」
京介「チャンス…?」
麻奈実「それは内緒だよ」
京介「…そっか」
麻奈実「………」じっ
京介「どうした、麻奈実?」
麻奈実「うん。今のでわかったよ、きょうちゃん。本当に記憶がないんだねぇ」
京介「し、信じてくれるのか!?」
麻奈実「うん! 今の感じ、きょうちゃんが本当に困ってる時の顔だもん」
京介「表情でわかるもんなのか…」
麻奈実「そうだよー? 何年付き合いがあると思ってるの?」
京介「…そうだな」
麻奈実「うんうん、じゃあそろそろ…色々と事実を語っちゃおうかなぁ」
京介「頼む、麻奈実」
麻奈実「まかされましたー、だけどね? それはとっても簡単なんだよ?」
京介「えっ?」
麻奈実「うふふ、そうだねぇ…じゃあ下に降りてみよっか?」
麻奈実「──みんながみんな、きょうちゃんを下に降りさせたくなかった理由が分かるからねぇ」
~~~
パンパンパン!
「受験終了おめでと~~~~~!!!」
京介「………」ポカーン
加奈子「おせーぞ京介ー! なーにやってたんだ? いやむしろナニやってたか? ギャハハハ!」
沙織「お待ちしておりましたわ。京介さん、此方の準備は全て整っております」
京介「加奈子…沙織…」
桐乃「ったく、色々と邪魔が入り過ぎなのよ…」
瑠璃「あら。貴女がいうのかしら、お兄さんと二人っきりで何処か出かけようとしたというのに…」
桐乃「ハァ?! アンタなんてあ、アイツを半裸にして…に、匂いとか!」
瑠璃「っ~~~!!」ぽかぽか
京介「桐乃に、黒猫も……」
かちゃん ずるり
あやせ「…ごめんなさい、お兄さん」
京介「お、おおっ…あやせ」
あやせ「わたしってば…あの状態のお兄さんを置いて行ってしまうなんて…」
あやせ「これはもうっ…お兄さんから罰を受けなきゃダメですよね、そうです、きっとそうです、いつかメールで呼ばれて…それから我が物当然のようにわたしの身体を…」
京介「おい、ストップ! そこまではしないから! 許すぞ俺は!」
麻奈実「んーそろそろ焼けたかなぁ」
チーン
京介「ん、この匂いは…クッキーか?」
麻奈実「そうなのでーす! 和菓子屋の孫が、なんと! 洋菓子を作っちゃいましたー!」
あやせ「さ、流石です麻奈実さん!」
加奈子「さっすがなんでもできるナー!」
桐乃「わ、良い匂い…」
瑠璃「ふん、なかなかやるわね…」
沙織「さあ、みなさん。紅茶も入れてますわよ」
京介「お、おおっ」
麻奈実「美味しいそう?」
京介「何枚でも行けそうだ」
麻奈実「ふふ、そっか~」
京介「食べていいのか?」
麻奈実「いいよ、うん!」
京介「ぱくっ」
麻奈実「…どう、かな?」
京介「もぐもぐ…すっげー美味しい、まじかよ…」
麻奈実「…えへへ~」によによ
加奈子「やっべー! なんだこれ! クセになるわー!」
あやせ「食べ過ぎ加奈子!」
京介「ほら、お前らも食べてみろ。美味しいぞ」
桐乃「言われなくても食べるっつーの」
瑠璃「いただくわ」
沙織「まあ、美味しいですわ! 素晴らしい!」
麻奈実「も、もぉ~! みんな褒めすぎだよ~!」
京介「あはは」
京介(…なるほどな、俺が下に行かせない理由はこの為だったのか)ちらり
『オメデトウ! 受験終了ぱーてぃ!』
京介「……ちくしょう、嬉しいじゃねーか」
京介(こんなにも祝われて、こんなにも笑顔がいっぱいで)
京介(全部全部、俺の為だけにって…本当に良い奴らだな、こいつらは)
京介「……」
京介「よっし! お前らよーく聞けぇ!」
麻奈実「んー?」
京介「いいか? このチラシはなんだと思う!」パサ!
あやせ「なんですか?」
桐乃「ピザじゃない」
瑠璃「ピザね」
京介「おうそうだ! これから俺が好きなやつ、三枚! 奢ってやるぞ!」
沙織「ほんとうですか!!?」
京介「お、おう! えらい食いつき様だな、沙織」
沙織「わたくし、宅配ピザというものを一度食べてみたかったのです!」
瑠璃「出たわ。ここぞとばかりにお嬢様アピール…流石ね」
加奈子「太っ腹じゃねーか京介! 大好きだぜ!」
京介「俺も大好きだぞ! よし、頼むぜ! ちょー頼むぜー!」すたすた
ガッ!
京介「うっ!?」
京介(小指を角にッ! うっ、て───)
キィイイイイイイイイインンン
『──しんようするよ、きょうちゃん』
『──きょうちゃんが、お酒を飲むなんて事をしないって』
『──だからね、わたしが証言となってあげるから』
『──ぷはぁ、うん、これ、お酒じゃないよ!』
京介「………………え?」
京介「今のって……あれ、なんだろ、ちょっと待ってくれ…」
京介「っ…!」ばっ
麻奈実「うふふ」
桐乃「なに笑ってんの、地味子。きも!」
京介「今の…忘れてた記憶、だよな?」
京介「そこで、麻奈実は……確かお酒を飲んだ…よな?」
京介「うっ」
『──麻奈実さんは優しすぎます、絶対にこれってお酒ですよ!』
『──庇わなくてもいいじゃないですか! みんなへべレけ状態ですよ!?』
『──…そう、ですか。なら仕方ないですね、麻奈美さんが言う事ですし』
『──きゃあ!? お、お兄さん!? なんで真っ青に…!?』
京介「………俺が、倒れたんだ…多分、お酒が回って…そうだ、そうだよ! 確かそうだった!」
京介「今日! みんなが酔っ払っちまって! それから、麻奈実とあやせが帰ってきて、凄い状況で、それから…」
京介「俺が酔って倒れちまって…」
京介「沙織!」
沙織「ピザはまだですか?」
京介「ピザは後回しだ! それよりも、俺が気絶した後の事を教えてくれ!」
沙織「はあ、わかりました」
沙織「京介さんが倒れた後、みなさんで部屋に運び、それからパーティの準備を始めましたわ」
京介「それはっ…なんとなくわかった、じゃなくて酔っ払ってた奴らは何時起きたんだ!?」
沙織「酔っ払う…?」
京介「え…?」
沙織「失礼、酔っぱらうとはどういうことなんでしょうか? わたくしにはその様な記憶がこれっぽっちも」
京介「だ、だって…起きたんだろ? それから麻奈実たちに状況のことを説明されなかったのか?」
沙織「……」
沙織「…いえ、皆が騒ぎ疲れて寝てしまったのだと麻奈実さんから聞いたのですが」
京介「なん、だと…?」
京介「あやせ!」
あやせ「は、はい!」
京介「…俺たちは酔っ払ってたよな、確かに」
あやせ「え、えっと…その…はい、酔っ払ってましたよ?」
京介「じゃあどうして、あいつ等はその事実を知らないんだ?」
あやせ「……その、麻奈美さんが内緒にしておくように仰られて…」
京介「麻奈実に…?」
あやせ「そう、です。私はちょっとだけ、ちょっとだけですよ? 反論したんですが、お兄さんが倒れてうやむやになってしまい…」
京介「………」
あやせ「お兄さん? どうかされたんですか?」
京介「……なんだ、とてつもなく、何かが密かに進行している気がする、そんな気が…」
加奈子「うめぇー!」ばりばり
桐乃「いけるわね…」ぽりぽり
瑠璃「…」ずずっ
沙織「待って下さいまし! わたくしにもクッキーを!」
麻奈実「まだまだいっぱいあるよー」
京介「……」
京介「な、なあ麻奈実…ちょっといいか?」
麻奈実「うんー? なあに、きょうちゃん? うふふ」
京介「その、な」
麻奈実「うん?」
京介「……ちょっと、デコ触らしてくれないか?」
麻奈実「デコ? ふふふ、くふふ、くすっくすくすくすくす! デコだってきょうちゃん! あははは!」
京介「ま、麻奈実…?」
麻奈実「でこー? いいよん☆ どんどん触っちゃってよきょうちゃん!」ずいっ
京介「お、おおっ…」ぴと
京介「熱っつ!!? すげー熱じゃねえか! お、お前どうしてこんな!」
麻奈実「ひっく」
京介「…え?」
麻奈実「ひゃら~? ひょうひゃんら…いっぱい~!」ぎゅうっ
京介「えっ、ええええっ!? なにそれ!? 麻奈実!?」
麻奈実「ふぇへへへ~」
京介「も、もしかしなくても…お前、酔っ払ってるの…か?」
京介「どうして酔っ払って…」
『──しんようするよ、きょうちゃん』
『──きょうちゃんが、お酒を飲むなんて事をしないって』
『──だからね、わたしが証言となってあげるから』
『──ぷはぁ、うん、これ、お酒じゃないよ!』
京介「──あの時か! あの時からお前、ずっと酔っ払ってて! それで…!」
麻奈実「にゅふふっ!」
京介「今になって爆発したって、ことか…? だが、どうして急に…?」
「ひっく」
「…ふへへ」
「にゃー」
「ギャハハハハハ!」
京介「………え?」
桐乃「しゃー!」
瑠璃「にゃー!」
沙織「ハァハァハァハァハァハァ!」
京介「なっ、なぁああああっ!? どういうことだこれ!? デジャヴすぎる光景!」
京介「これってもしかして、酔っ払って……」グラァ
京介「っ…!? な、なんだ俺も…!? どうして、俺は酒なんてひとくちも……」
がさっ
京介「……まさか、これか…?」
京介「〝クッキー〟が…原因だと…いうのか…!?」
京介「これって只のクッキーじゃあ…」
加奈子「ラム酒クッキーって知ってるか京介ー?」
京介「か、加奈子?」
加奈子「前にヨ、ししょー所で料理勉強してるときに本でよんだんだけどヨー」
加奈子「酒入りのクッキーってやつだナ。くひひっ、なかなかいけんじゃねーのコレ」
京介「酒入りの…クッキー…」
加奈子「しかもこれラム酒じゃねえーとおもうゾ。この鼻につく匂いは……おー! ウィスキーじゃねー?」
京介「マジかよ…」
加奈子「ガハハハ! まあいいか! ウマけりゃなんでもいいゼ!」ばくばく
京介「うっ…これ、作ったのっは…やっぱり」
麻奈実「きゅー」ぐてー
京介「麻奈実! お前だろ、これ作ったの…!」
麻奈実「ふぇ?」
京介「ど、どうしてこんなの作ったんだ!? おい!」
麻奈実「んーとねぇ…それはねぇ……」
麻奈実「…きょうちゃんを、信用したからだよ?」
京介「っ!」
京介「俺が…お酒を飲んでないって、それを証明するために、その場に合ったモノを使ったのか…?」
麻奈実「うんー! そうだよ~!」
京介「……」
京介(…なんつーこったよ、すべて、俺が招いたもんじゃねえか。そこに至る経緯や理由、原因なんてもんは関係ねえ! 俺が作っちまった問題だ!)
桐乃「にゃーん」すりすり
瑠璃「ごろごろ…」ゴロンゴロン
沙織「はぁーん! くぁいいよ~!」
加奈子「ばりばり」
あやせ「………………………」
京介「…うっ、あやせ…?」
あやせ「お兄さん…」
京介「お、おう! ど、どうした…? お前もやっぱり…?」
あやせ「……」
パサァ
あやせ「熱いんです…すごく熱いんです…どうしたらいいのでしょうか…お兄さん…火照りを止める方法を教えてください…」
京介「あやせぇ───!!! まずい! それはすごくまずいぞ!」
あやせ「まずいんですか…? だったら、こうします…」かちゃん
あやせ「これなら、大丈夫ですよね…? わたし、うごけませんから…後はお兄さんが為すがままにです…お好きにお使いください…」
京介「待ってくれ! 何も大丈夫じゃない! 半裸で手錠って、凄く絵的に駄目だぞ!!」
京介「く、くそ! どうする! 俺が出来ることと言えばっ…!」
コロリ
京介「………」
京介「…………」
京介「……帰宅は、明日の夕方、それまでは自由」
京介「うぉおおおおおお!! やってやるぜええええええ!!」ばくばくばくばくばくばくばく
桐乃「にゃー!!」
瑠璃「しゃー……あれ、わたし…?」
沙織「ん? わたくし…?」
京介「うぉおおおおおおおおおお!!! ゴクゴクゴクゴクゴク!!!!」
加奈子「あー!! 京介、テメ、加奈子の分も食うんじゃねえーヨ!」
京介「ああン!?」
加奈子「ひっ!」
京介「てめーみたいなロリッ子はジュースでも飲んどけばーか!!」
京介「ばくばくばくばくばくばく」
加奈子「きょ、きょうすけ…?」
あやせ「……えっ、あれ? なんですかこれ!? きゃー! どうして手錠されてるのわたし!」
京介「ばくばくばくばくばくばくばく」
麻奈実「ふぇ…? あれ、痛たた…頭が…うぅぅ…」
京介「ゴクゴクゴクゴクゴクゴク」
桐乃「にゃー!」
瑠璃「…寒気がするわ、これと同じような状態にわたしがなっていたとでもいうのっ!?」
沙織「かわいかったですぞー黒猫殿ー」
京介(──食べつくす! 飲みつくす! この場にある危険分子を、俺が全てひとつ残らず消滅させる!)
京介(人は言うかもしれない、隠せばいいだろうと、捨てればいいだろうと、だがな! それはできねえ!)
京介(──人が俺の為に、作って、買ってきてくれて、善意をもってのものだらけだ!!)
京介(なら全て!! 俺が吸収しきってやんよ!!!!)
~~~
こうして、俺の受験パーティは幕を下ろした。
その後の記憶は一切ない。これっぽっちもない……忘れたいわけじゃない、決してだ。
俺の中ではただひとつ、皆の想いを全て受け取ったという充実感だけが残っているのだから。
それで充分じゃねえか、それだけで満足だろ?
人間一人、男一人、沢山の人間から貰える想いを全て受け取ることなんて、早々出来ることじゃねえ。
だがそれを、俺はやりきったんだ。誰にも文句なんてもんは言わせない。
例え、想いをくれた人物たちからでもだ。
俺はそうやって生きて行く。いつかは疲れ果てて道端の隅っこでのたれ死ぬかもしれない。
だけど、それがなんだっていうんだ。悪い事か? 俺はそうは思わない。
京介「はぁっ…はぁっ…ぐぇっ…」
もし死に絶えて行く時に、そこで一人じゃなく皆が居たら。
それだけで幸せってもんだろ、そうは思わねえか?
思わねえんだったら、そうだな、うん。
俺みたいな人生は、絶対に歩まない方が身のためだって忠告しておくぜ。
おわーり
ご支援どうもありがとう
うんこいってくるノシ
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