門矢士「なるほど、仮面ライダーの世界か……」 (210)
風の街――風都。
一時期はとある事件によって混沌としていた風の都に、『良い風』が戻ってきた頃。
騒がしい街の中に、ひっそりと佇む、『探偵』達が、良くない噂を耳にする少し前。
その『写真館』は現れた。
光写真館――世界を旅する、仮面ライダーの拠点。
その部屋の中で、仮面ライダーディケイドに変身する青年、門矢士は一人でそこに座っている。
今の彼に旅の仲間はいない。
この街同様に、騒がしかった部屋も、彼一人では随分と寂しく見える。
不貞腐れたような無愛想な目で見つめる先には『探偵』が映っている。
「左翔太郎……」
『この世界』の仮面ライダーか、
そう呟く彼は、首に掛けてある二眼レフのトイカメラで建物の全体が映るように撮ってみる。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1392017990
トイカメラから出てきた写真は一面真っ黒の状態ではあったが、きっと――否、
それが歪みきっていることは既に判っている。
左翔太郎が覚えているかどうかはまだ判明してはいないが、
門矢士は仮面ライダーディケイドとして、左翔太郎はもう一人の相棒であるフィリップと共に、仮面ライダーWとして、
共闘し、敵を倒したことがあるからだ。
つまり、この世界が門矢士の世界ではないということは、もう殆ど確定したも同然なのだ。
それでもこの世界を撮影したのはなぜか、
ポリシーとでも言うのか、彼の写真家としての魂がそうさせたのか。
それは分からない。
分からないなりに、彼は考えるのを止め、黒を強調としたソフト帽を被り、玄関から外に出る。
「……この世界で俺は、どうやら探偵稼業をやっているらしい」
右手でソフト帽を抑え、街に繰り出す様は、ハーフボイルドの欲しかったモノを、持っているように見えた。
彼方此方からその姿を見て、黄色い声がその場を包む。
「やはり俺はどんな格好でも人を集める癖があるな……
神は俺に万物を与えたらしい……」
時刻は真昼時、鳴海探偵事務所には現在の看板探偵として風都に名を馳せている、左翔太郎が居た。
いや、その奥にももうひとりの相棒であるフィリップも居るのだが、彼は余り勘定に入ることのない人間なので、
この場合は鳴海探偵事務所には左翔太郎だけが居ることになる。
事務所にはタイプライターの気前の好い音が響く。
しかし当の本人は気難しそうな表情で、徹夜続きのサラリーマンのような雰囲気を醸し出している。
左翔太郎はハードボイルドを気取りたい青年である、
――フィリップや亜樹子にはハーフボイルド呼ばわりされることも多々あるが。
彼を見れば知らない者はそれなりの格好良さを垣間見ることができるだろう。
もちろん、彼がタイプライターで書いている報告書を見ればそんなことはないと言うのが一瞬でわかるだろうが。
それが彼のいいところの一つでもあるのだが。
「っあー、終わった!」
そう言うやいなや天を仰いで右手で両目の目元を押さえる。
久々の依頼が舞い込んできて、遠足に浮かれる子供のように一晩中街を走り回った結果、
本当に徹夜してしまって、更に報告書を続けざまに書いたこの日、彼は一切睡眠を取っていなかった。
少し前まではこんなことはなかったが、これも街が平和になったからだろう――
と彼は考える。
一時期風都を騒がせたドーパント事件。
ミュージアムによって売買されたガイアメモリ――それは人間が異形の化け物にへと変身するという、
悪魔の産物だった。
それも、一年前にテラー・ドーパント――ミュージアムの創設者にして総帥、園咲琉兵衛を倒し、
全ては幕を閉じた。
その後にもミュージアムの名残とした少数組織が幾つか残ったが、その殆ども最早消え去る運命だ、
風都にも、良い風が戻ってきたのだ。
「おい、フィリップ、どうだ?調子は」
隠し扉の向こうにあるもう一つの部屋、そこにフィリップは半分引き篭るように毎日を過ごしている。
ミュージアムも壊滅し、もう逃げ回る日々も終わったというのに。
フィリップはそこが落ち着くのだという。
「翔太郎!君は日本刀というものを知っているかい!
日本刀というものは日本独自の鍛冶製法によって作られたものでなんと古い物だと古墳時代に作られた物もあるそうだ!
古墳時代前期を代表する出雲の大型方墳である造山古墳からは鉄剣や太刀が出土していてその他にも多くの原型を留めた品が多数存在するらしいんだ!
一般的には平安時代末期に作られたものをそう呼ぶんだがこれが中々奥が深い!寸法――つまりは刀の刃渡りによって
太刀、大太刀、打刀や脇差、短刀、さらに長巻、薙刀、剣槍等等固有名詞としても名が高く世界でも眼を付けられる程の
芸術品としての価値も高く、コレクターも多数存在しているそうだ!基本的に折り返し鍛錬法という製法で鍛え上げられた
鋼を使い製造され、等身となかご、つまりは茎や中心それらが全て一体となった世界でも珍しい戦争に使われた美術作品
なんだ!他にも刀身の美しさや他を圧倒する切れ味!実に素晴らしい!海外でも今だその切れ味の検証や居合道の門下生になろうという人々は後を絶たない!
折れず曲がらず良く斬れるという三要素を非常に高い次元でそれらを同時に実現させているために質の高い鋼や玉鋼
を使うためにたたら吹きという製鋼法でここから刀匠達の工夫は始まっているんだ本当は諸外国では鉄鉱石を原材料とするんだが
それとは異なっていて原料に砂鉄を用いることによって低音で高速還元を実現させる!昔は不純物が入ることも多かったけれど
近代では非常に不純物の少ない砂鉄を手に入れることができるから更に良質な鋼を作り出すことができるんだ!
昔でも素晴らしい芸術品だったというのにそれが古来の職人魂を持ってして現代に美麗に帰還するというのは心がくすぐられるね!
聞いているかい!翔太郎!」
「あー!!分かった分かった!!!」
徹夜明け、というか恐らくはフィリップだってこの状態では徹夜明けだというのにこのテンションの差はなんだろうか。
「――おい、それより、検索は終わったか?」
冷めぬ興奮を抑えられないといった表情のフィリップは一度、深く深呼吸をする。
「そんな事とは、――まあいい、検索は終了したよ、やはり翔太郎の目星を付けた所で合っていたね」
そうか、と短く返答すると翔太郎は踵を返し、走り出す――と。
「あー、フィリップ、程々にしとけよ、いざって時に倒れ込まれちゃ適わねえからな!」
「何に適わないって言うんだい?翔太郎」
ホワイトボードに体を向けたフィリップはその手を止めずに日本刀についてを書きなぐっていく、
こちらを向く気は更々無いようだ。
さらに踵を返した翔太郎はフィリップに詰め寄り、
「――ドーパントだよ」
と言う。
それをフィリップは鼻で笑い、やっとこちらに振り返り、不敵な笑顔で。
「任せ給え」
と言い返した。
こうして、風都の一日は始まった。昼間だというのに。
門矢士は大きなタワーの近くにいる。
妙に風が強く、しかし何処か心地の良い風が吹いている。
何時ものことなのか、その風をものともせずに歩く風都市民を見て、
なるほど、と何に納得したのか、頷いてみる。
そのタワーの名前は『風都タワー』と言って、この街を象徴するものの一つだ。
何を思ったのか、首に掛けてあるトイカメラで、三枚ほど、風景を撮る。
その辺を歩く家族連れやカップル、有象無象の人の集まりを含めて、そのカメラに収める。
撮り終えた頃に後ろの方から女性の甲高い悲鳴が辺り一帯に轟く――、
門矢士は素早く振り返ると数十m先で何やら雲行きの怪しい人集ができている。
その中心にいたのは――異形の怪物だった。
「この世界の怪人か、――いいだろう、破壊してやる」
また書き溜めてきます
期待
ところでなんでコテハンなの?
酉でよくない?
>>10
忘れてたんだよ言わせんな恥ずかしい
まあまあ、今回は早急に終わらせますんで、明日も休みなことだし、できるだけ頑張らせて貰います
それからの行動は素早かった。
腰にディケイドライバーを充て、出現したライドブッカーからライダーカード【カメンライド:ディケイド】を抜き出す。
「変身!」
ディケイドライバーにライダーカードを装填し、門矢士は仮面ライダーディケイドへと変身した。
悠長に二回、両手を払う仕草をして、右腰に付けてあるライドブッカーを取り外した。
ライドブッカーをガンモードへと移行させ、アタックカード【ディケイドブラスト】をディケイドライバーに装填する、
銃身を複数に分裂させ、弾幕を作り出し、ドーパントを狙って撃つ。
人間のそれではない叫び声をあげて、堪らずドーパントは後ろに跳ぶ。
その力を利用し――ドーパントは四本足の、競技場の馬のような体勢になる。
その姿は美しく品のあるものだった。
よく見ればその外見はどちらかというと異形というよりも美麗であり、本当に怪人なのかと疑ってしまう程のものだ、
鹿のような、それにしては大きい背丈を持ち、背毛は五色に彩られて、額にある一本角は西洋のユニコーンを思い出される。
しかし、ディケイドはその美しさには騙されない。
次に繰り出される技に対応するために、ライドブッカーの銃口をドーパントに向けた――。
結論を言えば、ディケイドはそのドーパントを取り逃がした。
ディケイドはライドブッカーの銃口をを向け、銃身を分裂させ、撃った次元エネルギー弾は、
エネルギー弾よりも速く動き、逃げたドーパントに追いつかず、
そのまま取り逃がす羽目となってしまった。
「……」
ライダーカード【カメンライド:カブト】のアタックカード【クロックアップ】を使うことも考えたが、
思考途中でその考えは廃棄されることとなる。
「おい、お前、仮面ライダー……ディケイド、だな」
全身を赤く染めたようなその男は、ディケイドに向かって声を荒げる。
服装からは全く分からないが、刑事であり、超常犯罪捜査課の課長でもある。
「変……身!」
この風都のもう一人の仮面ライダー、仮面ライダーアクセルである。
「……お前は誰だ」
ディケイドの『質問』に、アクセルは、
「俺に質問するな!ディケイドォ!」
と返す。
「やれやれ、有名人は辛いな」
両手を挙げて呆れるようなポーズをとると、真っ直ぐに向かってくるアクセルの攻撃を右に避けた。
「左ではないが、この風都を破壊する奴は許さん!さぁ、振り切るぜ!」
変身した状態も、赤を強調としたフォーム。
いきなりのトップスピードを躱したディケイドは、ライドブッカーから一枚のライダーカードを取り出す。
「……いいだろう、お前のごっこ遊びに付き合ってやる」
自身の目前に翳したディケイドはライダーカード【カメンライド:カブト】のカードを軽く人差し指でタップすると、
ディケイドライバーに装填し、カードの効果を発動させた。
仮面ライダーアクセルに負けず劣らず、赤を強調したライダー、カブトに変身したディケイドは、
右手の人差し指を天に掲げ、アクセルを挑発した。
「ハッ!」
しかし、そんなこともお構いなしにアクセルはディケイド目掛けてエンジンブレードを振り下ろす、
紙一重で避けてみせると、降り懸かる火の粉を払う様に銃口から発せられるエネルギー弾を撃つ。
銃弾を受け、仰け反るアクセルに、続けてアタックカード【クロックアップ】を使用する――。
瞬間的だが、時間の流れを操るアタックカードを使用する。
ゆったりとした歩調でディケイドはアクセルの横を素通りし、
一枚の、ライダーカードを手にする。
【ファイナルアタックライド:カブト】。
ディケイドライバーに装填し、効果音が鳴り響く。
アクセルは、照井竜は考えていた。
エンジンブレイドを振りかぶったのは軽率だった、と。
相手はあの『ディケイド』なのだ。
相手を見極め、行動すべきなのは目に見えているはず。
軽率だった――と、そんな事は考えず、
目の前から消えたディケイドについて考えていた。
一体どんな攻撃を仕掛けるのか、一体何処から攻撃されるのか、一撃必殺か、速度は、タイミングは。
右手にはトライアルメモリが握られている――アクセルの全速力を持ってして、
アクセルドライバーのアクセルメモリとトライアルメモリを交換し、パワースロットルを力の限り捻った。
アクセルの特徴であるスーツカラーが赤から黄へ、黄から青へ――。
その瞬間、背後からの電流音――。
左足で地面を蹴りつけ、無理な体勢でディケイドからの攻撃を避ける事に成功したものの、
自身の体にも大きなダメージを負うことになった。
しかし、直ぐに立ち上がったアクセルは、その超速度を使い次の攻撃に繋げる。
「――これで終わりだ!」
トライアルメモリのマキシマムドライブ、マシンガンスパイクを繰り出した――!
十数回の蹴りを繰り出したところで、多大なダメージを負っているアクセルは強制的に変身解除される。
「確かに、これで終わりのようだな」
ディケイドはカブトフォームから通常状態に戻っている。
ライドブッカーはガンモードからソードモードに移行し、刀身を右手で撫でる仕草を見せる。
「正直、あの攻撃を避けるとは思わなかったがな、褒めてやる」
尊厳とした態度で言うディケイドに、照井竜は何も言い返せない。
カブトのアタックカード【クロックアップ】は時間の流れを操るカードである。
一秒間を十秒間に変換する。
その中での攻撃を避けるとなれば相当の速さ、技術、最高級の反応速度が要求される。
ディケイドがライドブッカーの刀身を振り下ろそうとした時。
「ちょ、ちょっと待て待て……デェ、ディケイド!」
二人の間に割って入ったのは全身黒尽くめのライダーだった。
「左!お前……それは」
その姿は本来のダブルドライバーを使ったサイクロンジョーカーではなく、
ロストドライバーを用いた――この一年間、風都を守っていた。
仮面ライダージョーカーの姿だった。
また書き溜めてきます
乙です。
ただ…
>一秒間を十秒間に変換する。
クロックアップってもっと早くなかった?
>>26
すいません、間違いですね、
ファイズのアクセルフォームと同等なので通常の1000倍のスピード、つまりは……どのくらいでしょう
それが十秒間続くというのを間違って覚えてたっぽいです
まあ凄く疾いよ、ってことで
仮面ライダージョーカー、どうしてダブルドライバーではなくロストドライバーを用いた変身を行ったのかというと。
それは単純に時間がなかったからだ。
実際に、仮面ライダーWへと変身するためには、鳴海探偵事務所に居る、
フィリップの持つサイクロンメモリが必要となる。
サイクロンメモリをダブルドライバーに装填、転送し、ジョーカーメモリの装填までに、
ディケイドが果たして大人しく待ってくれるものだろうか。
それすら考える時間はなかった。
「あー、くそっ、変身!」
こうしてジョーカーメモリを用いた変身を、左翔太郎は選んだのだった。
「待て!待て、待てって!」
両手を広げ、ディケイドを制する。
「……冗談だ」
あっさりと引いたディケイドを見て、ジョーカーはがっくりと肩を落とす。
変身を解いたディケイドも多大とまでは行かずともそれなりのダメージを受けたようで、
その場で片足を着く。
「あー……言わんこっちゃない……、照井、大丈夫か?」
変身を解いた左翔太郎は倒れたままの照井竜に手を差し伸べる。
「ぐっ……すまない」
半分を背負った形になり、門矢士に向かい直す。
「……ほら、こっち来い、話だけでも聞いてやるよ――あっ!そうだ!ええっと」
頭に手を当て、苦い顔を作る左翔太郎に門矢士は自身の名を言い直す。
「……門矢士だ、この世界では探偵というものをやっている、らしい」
職業を聞いてからさらに苦々しい表情になった。
「探偵――探偵かぁ……まあ、それでよ!ここにドーパン、あー、怪人っぽい奴居なかったか?」
ドーパント、ガイアメモリによって人間から異形の怪物に変身、変化する。
先ほどのドーパントは一体どんなガイアメモリだったのだろうか、一体どんな『記憶』だったのだろうか。
門矢士は考えるが、いくら考えても前へは進まない。
「ドーパント……居たぞ、馬鹿っぽい奴が」
敢て暈して答える。
その返答を聞いた左翔太郎は暫し沈黙する。
「……そうか、分かった、その事も含めて話を聞きたい、コーヒーでも出してやる」
照井竜を背負った左翔太郎は改めて歩き出す。
「……ほう、君がディケイドだったとは、興味深いね
この星の本棚にも新しく本が追加されているよ、検索は『仮面ライダー』『次元』この二つで絞り出せた。
ああ、それともう一冊、仮面ライダーディエンドというのも結果に出ていたんだが、彼は……」
「奴ならもう居ない、顔も見たくない」
無愛想に、ぶっきらぼうに答える門矢士とは対照的にフィリップは満開の笑みで。
「そうかい、ディケイドのライダーカードというものがあると聞いたんだが、それを見せてもらいた――」
言いかけた途中で左翔太郎がフィリップを制す、損な役回りを任されたものだと頭を抱えたい気分ではあったが、
そんなことよりも、ドーパントのことを最優先にする。
「――おい、フィリップ、後にしてくれ。……門矢、こんな奴だったか?」
お世辞にも上手いとは言えない子供の落描きのような絵だった。
「芸術センスがないな」
誰も笑えない空間でただ一人、フィリップだけが笑っていた。
「……ちょっとペンを貸してみろ」
ペンを持った門矢士はサラサラと流れるように、滑るようにペンを走らせる。
数分経たずに先程見たドーパントが白紙の上に描き上がった。
左翔太郎は俯き、どんよりとした空気を纏っている。
先程よりも奇妙な空間が出来上がっていた。
「……コイツは一体何だ」
その質問に答えたのはフィリップだった。
「それはこの地球から――正確には、この地球の記憶から作られたガイアメモリというものだ、僕たちも変身の際に使用するが、
それとは製法の異なったものだから安心してくれていいよ、そのガイアメモリを使い、人間は超人的な力を手にする事ができる。
もちろん使われた地球の記憶にもよるけど、様々な能力が付属されるさらに興味深いデータだと――」
再度、左翔太郎がフィリップを制した。
ガイアメモリの全ての情報を渡したくはないというのと、それから、話をこじらせると二度と元には戻れない、
というのをよく知っているからだ、相棒だから。
しかし一つ目の理由は直ぐに破棄される。
「――そんなことは知っている。『このドーパントのガイアメモリは一体どうなっている』と聞いたんだ」
流石だね、とフィリップは間髪入れずに返答した。
ガイアメモリは、ありとあらゆる『地球の記憶』を収めた生体感応端末である。
全長10cmほどのUSBメモリ型で、仮面ライダー用に造られたものと、街に流出している二つの種類――、
もっと詳しく言えば、三種類から四種類に分別することも可能だが。
兎も角、そのUSBを使用者に使うことで(人体に直接挿す事と、ロストドライバーやダブルドライバーに挿すことができる)
その本体に収められた『地球の記憶』を再現することができるものだ。
超常的な力を手にするため、使用者はメモリの有害毒素に犯され、精神や感情に大きな影響を及ぼすことが分かっている。
更には使用者によってメモリの力――つまりは『地球の記憶』の『再現度』を高く再現することが確認できており、
暴走の度合いも非常に高くなる。
この『地球の記憶』には『生物』、『人工物』や『無機物』などの無生物、『感情』や『現象』、更には『概念』といった、
抽象的なモノ、そして特定の『文明』、『人物』にまで様々なモチーフがあり、
それに対応する使用者がその力を引き出すことによって、正に無数のドーパントが生み出される。
しかし、このガイアメモリとは『星の本棚』の力なくしては作られることがないのだ。
ミュージアムが壊滅した今、あんなガイアメモリが製造されることなど、無いはずだが――。
「結論から言わせてもらうと、あれはこの『地球の記憶』にはないガイアメモリだった」
フィリップが今までに見せたことのないような真剣な顔で話し始める。
「あのフォルム、能力、身体能力は省くとしても、それでも検索することはできるが、
『この地球上』に存在しない生き物だった」
周囲を歩き回りながら、まるで名探偵のように話を続ける。
「名前だけでガイアメモリが作られるというのはまず無い、それにあんなにも正確に、惚れ惚れするような精密さ、
……僕が研究に携わらずにあそこまでのメモリが作られるというのが考えられない」
門矢士が口をつぐみ、考えを深める。
「……随分と強調したな、『この地球上』に、か」
フィリップが指を鳴らし、門矢士――仮面ライダーディケイド――『次元戦士』を指差す。
「そう、そこで僕が考えたのが『世界の融合』だった、『この地球上』には存在してはいなくても、
『他の世界』の技術、そして『生物』なら――どうかな?」
また書き溜めしてきます
『世界の融合』――一時期、門矢士は『世界の破壊者』として、幾つもの世界を廻った。
クウガの世界、キバの世界、龍騎の世界、ブレイドの世界、ファイズの世界、
アギトの世界、電王の世界、カブトの世界、響鬼の世界。
クウガの世界ではグロンギという人間とは別の進化をした異形の化物が、
キバの世界ではファンガイアという人間を食料として生き存えた別種のモンスターが、
龍騎の世界ではミラーモンスターという人間の欲望そのもののモンスターが、
ブレイドの世界ではアンデットという生来全ての種族の先祖が、
ファイズの世界ではオルフェノクという人類の進化形態が
アギトの世界ではアンノウンという天使の如き存在が
電王の世界ではイマジンという未来から来た人類の精神体そのものが、
カブトの世界ではワームという隕石と一緒に飛来した宇宙生物が、
響鬼の世界では魔化魍という古来より伝わる人の世界に被害をもたらす怪物が、
その他にも多くの世界が広がっているはずだ。
その中で一体何が、この事件と関与していないと言えるだろうか。
「――現に、今まで二回メモリブレイクしてきたが、どれも致命傷には至らずこのザマだ」
椅子に深く腰掛け、左翔太郎が語りだす。
「しかも、行動範囲がバラバラと来たもんだ、今回特定できたのが奇跡ってもんだぜ」
お手上げだと言わんばかりにそのポーズをとる。
しかしフィリップはそうは思ってはいないらしく、その左翔太郎の台詞に反論した。
「――いや、翔太郎、もしかすると、次も同じ場所に来るかもしれない、僕たちが行動をしたら、だけどね」
「フィリップ、何か思いついたのか?」
フィリップは考える体勢からにんまりと笑う。
「ああ、翔太郎、一つ思いついたことがある、成功するかどうかはわからないけれど」
「――なるほどな、大体わかった」
とは言ったものの、そして行ったものの、
自身が囮になるという事だけは、腑に落ちない部分があった。
―――――――――――――――――――
―――――――――
――――
「いいかい、今回のドーパント、ガイアメモリは異世界との混合物だった、
ここから恐らく使用者もそうなっている可能性が高いんだ、その異世界がこの世界を襲う理由が一体どこにある?
ミュージアムが復興するならまだしも、その兆しは一向に見えない、つまり他に何か理由があるということだ。
それが恐らく君だ――次元戦士、仮面ライダーディケイド」
あくまでも笑いながら一つ一つを確認するように話を繋げていく。
「実際にあのドーパントが襲ってきたのは三回、さっき襲ったのを含めれば四回、か、
ガイアメモリを使っての犯行としてはそれなりってとこだが、期間を考えると少なめって感じだな」
翔太郎が同意しつつ付け加えるように言葉を添える。
予想以上に速く目の前に現れた人間は眼は虚ろで半分白目をむいているような状態だった。
此方に差し出すように突き出した右手には歪な形をしたガイアメモリを掴んでいる。
『仮面ライダーディケイド――世界の破壊者!この世界もまた!お前の所為で破壊される運命にある!』
どの世界にも存在するのか、そんな声が世界を包んだ。
「鳴滝か……いい加減にうざったらしいな」
ディケイドライバーを腰に充て、ライドブッカーからライダーカード【カメンライド:ディケイド】を取り出す。
『その男は今!完全にその「記憶」と同一となり破壊者のお前を倒しうる存在となった!』
何処からか声が幾度にも反響し、世界に響く。
【{『グラーフ』}】
ガイアメモリから発せられた幾重にも重なったような低い声と共に人間が異形の化物、ドーパントへと変身した。
「俺は、破壊者じゃない、ただの通りすがりの仮面ライダーだ!覚えておけ!」
ライダーカードをタップしディケイドライバーに装填する。
ライダーカードの効力が発揮され、仮面ライダーディケイドに変身する!
一旦休憩します、この後オーズの世界を巡ってアポロガイストブッ倒して終わりって感じです
明日、または今日中に終わらせられるよう死力を尽くすので生暖かく見守ってください
再開します
「バッ!あのやろっ先走りやがって!フィリップ!行けるか!」
『ああ、大丈夫だ、翔太郎、行くよ』
左翔太郎の腰に充てられたダブルドライバーにサイクロンメモリが装填される、
続けてジョーカーメモリを装填する――。
「『変身!』」
サイクロンジョーカー――仮面ライダーWへと変身した二人は、サイクロンの風の力を使い、
トップスピードで、更にそのスピードのままグラーフドーパントへ拳を叩きつけた!
『翔太郎!使用者とメモリの相性が強すぎるようだ……恐らくクレイドールの比ではないほど、
使用者を洗脳し無理にメモリの力を引き出している。このままでは使用者の命が持たない』
「ああ、こんなもん誰が見たって普通じゃねぇ、オラァ!」
激しく打撃のコンボを決めていくが、全く効いている気配が見られない。
それどころか、一歩も動かずにその場に留まっている。
『……翔太郎、様子が妙だ、一旦離れてくれ!』
それと同時に爆発が起こる。受身を取れずにW、ディケイドは軽く10mほど吹き飛ばされた。
「がっ!……なんだってんだ!」
「……メモリの暴走か、しかし、益々分からなくなったぞ、何なんだ一体……」
クラーグドーパントの身体はもはや人間のそれではなかった、元の方は人間の形を保ったものだったのだ。
既に背丈は5mを尤に超え、顔は龍の風格を持ち、牛の尾と馬の蹄、額に一本の大角を掲げる、
背毛は五色に、煌びやかに彩られるそれは、何か生物のようでいて、
生物という枠から飛び出た優雅さ、可憐さを持ち合わせている。
一つの産声も上げず、一歩々々を優美に、芸術品そのものと言える程、思わずドーパントだということを忘れ去るほどの美しさ。
大きく一歩、振り下ろしたその一歩から、焔が一瞬で二人の仮面ライダーを囲う。
「うわあつ!あっちぃ!おいフィリップ!コイツは……」
「麒麟か、随分と珍しいものが生まれたもんだ」
炎に包まれながらも悠々歴然とした態度を崩さずにディケイドはフィリップよりも早く答える。
『それだけじゃないだろうね、麒麟をベースにいくつかのメモリが組み込まれているようだ、それに他の物もある』
実に興味深い、と続けたその研究魂には圧倒されるものがあるが、この場では流石に自重するようだ。
「おい、門矢、俺達三人でアイツをなんとかしなくちゃならない」
「見ればわかる」
「話の腰を折るなっつんだ。まぁいいや、行くぜ、二人共」
エクストリームメモリをダブルドライバーに差し、
仮面ライダーWは自身の最強形態であるサイクロンジョーカーエクストリームへ変身した。
半歩左足を後ろに引く。
右手を敵に向け、戦闘の合図をする。
「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」
ディケイドのライドブッカーから三枚のライダーカードが出現する。
ディケイドはカードとWの間で視線を行き来し、一枚のカードをその中から抜き出した。
「おい、ちょっとくすぐったいぞ」
ライダーカード【ファイナルフォームライド:W】をディケイドライバーに装填する。
クリスタルサーバーの丁度真ん中に両手を差し込むと騒ぎ出す左翔太郎を他所に、中心から開くように両手を広げる。
「うお!!またお前は一言もなしに!」
『……これは、僕も流石に予想外だ、素晴らしいね』
ジョーカージョーカーエクストリームとサイクロンサイクロンエクストリーム。
二人で一人の仮面ライダーをそれぞれの体に分ける。
三人の仮面ライダーが踏み揃った瞬間だった――。
「おおっ!プリズムソードまであるじゃねえか!二本!」
『全く、まるでお祭り騒ぎだね、しかしこの状況も実に興味深いものがある』
それぞれが別の行動をとっているのに違和感があるのか、無性に体を動かしている。
「はしゃいでいる暇はないぞ、麒麟もお待ちかねだ」
ケータッチを取り出し、紋章アイコンを順々にタッチしていく。
【ファイナルカメンライド:ディケイド】。
コンプリートフォームに強化変身したディケイドは、ライドブッカーをソードモードへ移行させ、
ブッカーソードの刀身を撫でる。
「行くぞ、これで終わらせる」
一発一発がこちらにも重く響き渡る。
確実に効いている証拠だというのがよくわかる。
プリズムソードで切り裂けば赤黒い液体が撒き散らされ、神々しい音が反響する。
一歩倒れたところで燃え広がっていた炎は消え去り辺りが極寒の地へと変化する。
「くそっ!一体どれだけのメモリを飲み込んでるんだコイツ!」
『無駄口を叩いている暇はないよ翔太郎!次は落雷だ!』
ありとあらゆる現象を一つに押さえ込んでいるとしか思えない程の攻撃量、
それらをプリズムソードで射なし、幾つもの斬撃を与えていく。
「だぁあああ!!キリがねえ!フィリップ!まだメモリブレイクできねえのか!」
『もう少しだ!翔太郎!』
このフォームの状態を持ってしても幾度に渡り何重もの攻撃を仕掛けなければならない。
「フィリップ!メモリブレイクだ!」
痺れを切らしたように叫んだ左翔太郎はフィリップの意見を聞かずにエクストリーム、プリズムメモリのツインマキシマム。
ダブルプリズムエクストリームを発動させる。
それに遅れずに全く同じタイミングでフィリップもメモリブレイクを開始する。
プリズムメモリを同時にマキシマムスロットに入れマキシマムドライブを発動させる。
次いで間髪入れずにエクストリーム、マキシマムドライブを発動!
それぞれが黒と緑の風を纏い!同じ角度、対極の位置で連続蹴りを行う!
その風圧によって体積が浮いたグラーフドーパントの四脚を切り捨てたディケイドは真下から、
ライダーカード【ファイナルアタックライド:ディケイド】をディケイドライバーに装填し、ディメンションキックを繰り出す!
「ハァアアアアアアアアアア!!!!」
残ったエネルギー分量が爆発するかのように破裂し、メモリと、何かが打ち破れる音がする。
見ると其処にはクラーグドーパントの姿はなく、変身を解いた門矢士はその『何か』の元へと駆け寄る。
そこに落ちていたのは――何かのメダルの破片だった。
門矢士がそれを拾い上げると何処からか反響する声があたりを再度包んだ。
『おのれディケイドォ!貴様の所為でこの世界も終末へのカウントダウンが始まった……』
「……何も知らないお前に教えてやろう、こいつらにあってお前にないものだ、
それは『守るもの』だ、こいつらは風都を、この街を守り続ける!この世界はお前が守っているんじゃない!
ここにいるこいつらが守った、そしてこれからも守り続ける!この世界に終末が訪れようとも、
仮面ライダーWが守り続ける!例えどんなに無謀なことでも!『守るもの』がないお前たちにこいつらは絶対に負けない!」
言い終わる頃には鳴滝は踵を返し、銀幕の裏へと進んでいった。
「あー、ありがとよ、門矢」
照れ臭そうにハーフボイルドは礼を言う。
「お前に礼を言われるとは思ってもみなかった、……なに、借りを返しただけだ」
「あんなもん、今回の事に比べちゃぁ…………」
そして徹夜だった時の疲れが崩壊するダムのように押しおせたのか、椅子に座ったそのまま、彼は寝てしまった。
「……起こさないでやってくれ、昨日から徹夜続きだったらしいからね」
隠し扉から出てきたフィリップはニンマリと笑う。
手の掛かる子供を見るような視線を送り、呆れるように笑う。
「…………」
首に掛けてあるトイカメラを通して、レンズ越しに二人を見る。
そのまま一枚、写真を撮り、真っ黒の写真を手に取り、踵を返し鳴海探偵事務所のドアを開く。
「行くのかい?ディケイド」
フィリップの問い掛けに、門矢士はこう答える。
「ああ、なにせ俺は『救世主』だからな、次の世界が俺を待ちすぎても困る。
パーティに、主役は付き物だからな」
そうかい、とフィリップはその辺に腰掛け、ディケイドを送り出す、と。
「やっぱり、君はハーフボイルドだねぇ……」
と、左翔太郎に告げるのだった。
光写真館に戻ると既に掛け軸は変わっていた。
欲望の渦巻くモノと、中心には大量のメダル。
溜息を一つつくと外の外観が変わっていることに気付く。
最早見慣れた光景だったが、今度は一体何の世界なのだろうか、
取り敢えずは飯を食わねば何とやらだ、目の前に食事処があるらしい。
――そこは、クスクシエという料理店だった。
『仮面ライダーの世界 ~W編~ 』:終了
また書き溜めしてきます
寝てました。痛恨の時間。
料理店に入って料理を注文する。
その間にも先程のWの世界で拾ったメダルを眺める。
金色の基盤に――同じく、金の配色。
欠けた部分がどうなっていたのかは分からないが、一本角の龍が描かれている。
だが、内側にまで罅が入り、真っ二つに割れてしまったメダルの破片。
これとこの世界に何か関係があるのか?
くっつけたりはがしたりを繰り返していると。
店の従業員には見えないが、二階から降りてきた人物がいきなり門矢士の胸倉を掴み、
無理矢理椅子から立ち上がらせる。
「オイ!お前ェ!……コイツを何処で手に入れた!」
髪は金髪に染め趣味が良いとは言えない服装、しかし随分と様になっている。
しかしその雰囲気をものともせずに軽く溜息を吐く。
「……お客様に対する礼儀がなってないな、それに人に教えを請うときは『教えて下さい、お願いします』だろう。
小学一年生――いや、幼稚園児でも分かることだ」
相当の怒りが込み上げたのか、胸倉を掴んでいる手とは逆の手で拳を作る。
この店の従業員だろうか、民族衣装のような格好をした青年がゴロツキのような人物を止めにかかる。
「あっ!アンク!なにやってんだお客様に――」
言い終わる前に門矢士は胸倉を掴む手を捻り、足払いしてその場でアンクと呼ばれた人物を転倒させる。
「わー、凄い、比奈ちゃん以外でアンク圧倒する人って初めてかも……知世子さんとかも、かなぁ……
あ、それより、大丈夫ですか!何か、お怪我とか……」
着崩しを直し、椅子に改めてふんぞり返った門矢士は今だ倒れ込んでいるアンクに再度向かって。
「教えて下さい、だ」
と言う。
「…………ぐぅ……おし、ぇてくだ、さ――」
「誰がお前のような奴に教えるか」
怒りが頂点に達し、暴力に転じようとする中で、アンクの右腕が化物のように変化する。
それにいち早く気付いた青年が、
「まっ、まーまー、アンク、ほら、アイスやるから!まーまー」
と、アンクを羽交い締めにして落ち着かせる。
アンクも無意識下で腕を変化させていたようで、右腕を庇うように左手で覆う。
しかし、落ち着く訳もなくそのまま玄関から飛び出してしまう。
「あー、行っちゃったか、……えっと、アンクの奴、見た目はあんなんですけど、根は凄く良い奴なんですよ」
コーヒーを口に含みながらその場で始まった話を聞き流し、
割れたメダルを提示する。
「お前だな、仮面ライダーオーズ」
そのメダルを見た瞬間に、仮面ライダーオーズ――火野映司の表情が強張る。
眼が一瞬だけ茶黒から紫へと。
お人好しの顔から、『人を守る』顔へ。
仮面ライダーの顔へ。
「……えっと、二階に俺の部屋があるんで、出来れば、そっちに……」
案内しようとする火野映司を他所に、門矢士は自身の座るテーブルを人差し指で二回叩く。
「頼んだ料理はまだか?」
「あっ!い、今すぐ持ってきますんで!」
そう言った火野映司の顔は、間違いなくお人好しだった。
――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――
―――――
「えっと……何処から話したもんかなぁ……」
頭を悩ませる火野映司に門矢士は今までの経緯を話す。
「ああ!Wさん!俺も一回お世話になって……」
「俺はお世話にはなってないがな」
「ああ、そうでした……」
相性としては真逆の位置にいる二人が、その二人だけで会話が弾むはずもなく、
淡々とした企業説明のような――いや、まだそちらの方がいいのかもしれない。
「……もういい、率直に聞くぞ、回りくどいのは得意じゃない」
「……はい、そのメダル、ですよね。それは――」
火野映司が説明しようとしたとき、先程と同じように、
火野映司の眼が一瞬だけムラサキに変わった。
その瞬間、二階だと言うのに窓が一人でに開く。
数枚の羽が落ち、異形の翼を自身の体内に隠した、アンクが窓を開けて顔だけ此方に向ける。
「オィ!エージ!ヤミーだ!それも新種だぞ!」
二人が出ていく最中、門矢士は考える。
――新種?グリードの生み出すヤミーは限られているはず。
――新種。雑種ではなく、混合種でもなく、――新種。
――このメダルと関係があるのか?それとも――ガイアメモリの。
タイミングを見計らって、門矢士は二階から飛び降りる。
また書き溜めてきます
周囲に既に人はいない。
何故なら奴が大きな焔やら雷を落とし、周辺は人が住むことの出来るものではなくなっていた。
そんな中に二つの影が見える。
一つは神々しいまでの異形の者。
もう一つは紫のメダルのコンボ、プトティラコンボのオーズ。
焔の光が反射し、どちらが怪人なのか、一目では見抜けることができないような状況だった。
――このヤミーはヤミー一個対だけで弱体化したグリードと同等の力を持っている。
それはどうしてか。
プトティラコンボでの必殺技ですらヤミーのセルメダルを百枚程度吐き出させることしかできない。
凍結能力も使った、メダガブリューも、メダジャリバーも、
「(門矢さんがWの世界からあのコアメダルを持って来たって事は、……このヤミーも世界が融合した副産物って事だよね)」
恐竜のような雄叫びを上げつつ、メダガブリューを振り下ろし、ヤミーに大きな一撃を加える。
大きく開いた傷口からセルメダルが幾つも溢れ出し、ヤミーはその場に崩れ落ちる。
しかしそれだけだ、ヤミーは左手を振り下ろすとオーズと自身の中間に落雷を落とす。
その隙に逃げる。――いつもこうやって戦いは長引いていく。
「ああ!もう六回目!今度という今度は……!」
ヤミーはその異常なまでに発達した脚力を持って逃げる魂胆だった。
それを幾度も戦ったオーズはわかっている。
だからこそ、超常的なジャンプを繰り出すために少しだけの『溜め』が必要だということも、よく分かっていた。
空かさず地面に散らばったセルメダルをメダガブリューに投入し――アックスモードからバズーカモードへと移行させて、
ストレインドゥームを発動させる――!
しかし、それは二つの影によって阻まれる。
「僕たちの子供に酷いことをする」
男が口を開き喋るが、その口からは女性のものと思われる声が響く。
「ヒドイ!ヒドイ!」
女からは対照的に男性の声が。
「酷いから、殺す」
「殺す!殺す!」
その二人組は童子と姫と呼ばれる怪人、しかし、この世界のモノではない、
その二人組みは、響鬼の世界の怪人、本来、この世界にはいない怪人だった!
「え?あれ?ふ、腹話術?そ、それとも――」
皆まで言わせず童子と姫は怪童子、妖姫へと変化する。
「やっぱり敵だったー!」
オーズは苦戦を強いられていた。
本来ヤミー一人(?)でも十分だというのに、さらによく分からない怪人二人組と一緒になって戦うというのは――、
「(やっぱり、俺が紫のコンボの力を引き出せないから……!)」
本来、このコンボは無敵といっても過言ではないほどの強さを秘めている。
グリードを一気に三体同時に戦ったとしても勝てるであろう強さを持っている。
それを火野映司は恐れた。
このコンボに全てを明け渡したら――誰かをきっと傷つけるだろう。
「(比奈ちゃん、後藤さん、伊達さん、アンク)」
きっとグリードと等しく、欲望に――否、無に襲われ、有を消すだろう。
欲望を、人間を、街を、世界を。
飲み込むだろう。
そして暗雲が辺りを包む。
一際大きな落雷が、オーズを貫いた。
「わー!やった!やった!」
「ヤッタ!ヤッタ!」
その瞬間だった。
どくん、と大きく体が痙攣する。
やばい――そう思うことすら叶わずに。
目の前が真っ暗に染まる。
「……ヴァァ……ヴォォオオオオオオオオ!!!!」
どっしりと構えたその構えは、正に『恐竜』、眼は緑眼から紫の複眼へと変わり、戦闘本能に全てを置いた。
本当の、プトティラコンボだった。
「ねーね、まずいっぽくない?」
「うーん、ダメっぽい」
更に大きく、総ての王だと言わんばかりに大きく『恐竜』の咆哮をあげるオーズは。
その雄叫びから、冷凍能力を発動させる。
「わわわ!凍った凍った!」
「固まった!固まった!」
そして足元に転がったメダガブリューを拾うと散らばったセルメダルを再度メダガブリューに投入する。
アックスモードのままグランド・オブ・レイジを発動し、怪童子と妖姫を二人纏めて切り刻んだ。
二人組は合わせて七つの肉片と化し、それ以降その口から言葉が発せられることはなかった。
真下を向いたオーズは顔を上げ、次の獲物を探す。
欲望を、探す。
ヤミーを見つけ、飛び上がると空中で三枚セルメダルを投入し、もう一度グランド・オブ・レイジを発動。
真上からの重い一撃を加え、辺りに大量のセルメダルを散らばらせる。
傷口が閉じぬ間にヤミーの体に左腕を突っ込み、体を裂くように、セルメダルの海を掻き分けて、
数十枚のセルメダルを手に、幾度も幾度も体を切り刻む。
十回以上切り刻んだ時に遂にヤミーの体が攻撃に耐えきれずに、崩れ落ち、爆散し、ヤミーの体は土へと帰った。
それでもまだ足りない、左右を素早く探し回り、遂にはプテラヘッドから伸びる翼、エクスターナルフィンで飛翔しようと、
大きく羽ばたかせたとき、門矢士はディケイドライバーにライダーカード【カメンライド:ディケイド】を、装填した。
「まるでグリードだな、全く、どっちが怪人か分かりゃしない」
「……変身」
また書き溜めてきます
そういえば(士)←これって顔っぽいですよね
あ、そうだ、言い忘れてた
一応このヤミーは響鬼の魔化魍との混合物のようなものですが、
成体ではないので清めの音ではなくとも倒せたってことで、一つ
( 士)<再開します
ディケイドに変身した直後――オーズはメダガブリューを振り上げ、ディケイドに向かって叩きつける。
「ッ!……いいだろう、次はコイツだ」
ディケイドはブッカーソードでメダガブリューの刃を受け流し、
ディケイドライバーにアタックカード【ディケイドスラッシュ】を装填、使用し、
今度は此方からブッカーソードの刃を分裂させ、オーズの胴体を斬りつける。
三度斬りつけるも、効果はあまりなく、ディケイドは後退し、ライドブッカーから二枚のカードを取り出す。
「最強には……最凶を、だ!」
一枚目を装填し、ディケイドの姿が変わっていく。
クウガのマイティーフォームから、更に一枚、ディケイドライバーに装填する――、
ライダーカード【フォームライド:アルティメットフォーム】。
「ハァ!」
黒く、禍々しい姿へと、『究極の闇をもたらす者』、『凄まじき戦士』。
全身に棘、各部、には浮き出た血管状組織――しかし、その複眼は赤く輝いている。
オーズとは違った力強さ、言うなれば『恐竜』という生物と、『絶滅』という概念そのもの。
オーズはコンクリートの地面が減り込むほどの脚力、ジャンプでディケイドに斬りかかる。
――しかし、ディケイドは一歩踏み込み、左手でオーズの巨体を殴った。
元の門矢士の戦闘センスと、アルティメットクウガのスペックで更に強化されたディケイドの一撃は、
オーズを軽々と吹き飛ばした。
オーズは倒されたあと、直ぐに立ち上がる。
しかし先程までの立ち振る舞いとは違い、ディケイドを警戒するように、深く構える。
すると、メダガブリューを放り投げる――、ディケイドがその行為に一瞬だけ気を取られる、その瞬間、
ティラノレッグに装着された強化外骨格・テイルディバイダーで強大な尾を作り――、
ディケイドの死角から攻撃する。
「ッ!……なに!」
その攻撃は腹部に直撃し、ディケイドの体がよろめいた。
尻尾を地面にぶつけ、そこを支点に、同じ腹部を素早く三回蹴りつける!
四回目に移ろうとしたとき、オーズの恐竜系コンボのオーメダルが自身の危機を感じ取る。
「まだまだ、甘いな!」
感じ取った時は既に遅く、ディケイドの拳がオーズの鳩尾に突き刺さる。
オーズは80tもの衝撃を受け、10m以上飛んだにも関わらず、そこから壁に激突し、大きなクレーターを作っただろう。
だが、戦闘本能の塊である現在のオーズは違う。
瞬時に突き刺さった拳の衝撃を巨大な尻尾で受身を取り、数mの範囲に留めた。
先程のように直ぐに立ち上がるが、石像のように固まってしまう。
オーメダルがベルトから抜き出て、火野映司自身の体の中に吸い込まれるように入って行く。
「ガッぁ……!」
三枚のメダルが全て火野映司の体内に、
――器に戻ると、火野映司は失神し、その場で倒れてしまった。
「……ふぅ、プトティラ――いや、流石最強のグリードの力だ、だが、『破壊者』の俺には敵わなかったらしいな」
ディケイドは変身を解除し、大量の汗を掻いた火野映司に肩を貸す。
このまま他のヤミーが、『破壊者』である門矢士の前に現れるより先に、クスクシエへと向かう。
「……んっ?アレ?映司くん!?」
少女が二人の近くに寄ってくる。
「ああ、丁度いい、コイツの知り合いか?出来れば肩を貸して欲しいんだが……」
「あっ、はい!って、貴方も怪我してるじゃないですか!」
そこでようやく自身の腹部から血が流れている事に気付いた。
しかし、少女の手を自ら制する。
二人を合わせても軽く90kgは超えるだろう、
この大人しめの少女にそんな怪力が――。
「いいえ!二人共怪我してるんです!」
ふんにゅー!という妙な掛け声と共に、少女は片手で一人づつ。
大男が大樽を両肩に担ぐように、軽々と二人の仮面ライダーを背負って、クスクシエへ走った。
思ったよりも少ないな……
アルティメットフォームが最強フォームだという話はライジングアルティメットクウガによって破られた!
だから使ってみたかった!ただそれだけ……
本当はアルティメットクウガの特殊コピー能力でメダガブリューのように地中成形してタイタンソードとか作ろうかなと
ワクワクしてたら本来の力で生成可能だったのでションボリしたりとか、
アルティメットはチートだなぁ、と思いました
乙 ユウスケとライアルはもっと評価されるべきだと思う
ライアルというかユウスケは製作側の扱いが雑すぎてな・・・
>>93
>>95
すまない……この先ユウスケクウガが出ることはないんだ……
俺も嫌いってわけじゃないんだが、五代クウガが格好よすぎてな……
あと制作側は本当に酷いと思う、出演できないからパラレルワールドってのは分かるんだが、
正直居ても居なくてもいいような扱いするんだったら居ない方がこんなことにはならずに済んだ。
大量に散らばったメダルを前に、一人の男が佇む。
鳥類系のグリード、アンク。
不敵な笑みを浮かべながら、右腕をグリード体にさせながら、根刮ぎメダルを体内に入れていく。
「……このメダル量、いずれにしても半端な数じゃない……一体どんな親玉が――」
そう言い、メダルを全て回収した後に、彼のグリードとしての感性が、
自身と共鳴する者を感じ取る。
「この感覚……アイツか」
この世界にはガザリやメズールなどのグリードは存在していない。
真のオーズとなった火野映司と戦い、敗れたからだ。
つまり、この世界に存在するグリードは自身を含め、たった『三人』しか居ない事になる。
>>104
すいません、ガザリではなくカザリで……
>>73 訂正、なんで気がつかなかったんだろう
――このヤミーはヤミー一個対だけで弱体化したグリードと同等の力を持っている。
それはどうしてか。
事実、プトティラコンボでの必殺技ですらヤミーのセルメダルを百枚程度、吐き出させることしかできない。
凍結能力も使った、メダガブリューも、メダジャリバーも、だが、このヤミーを打ち倒す致命傷には至らなかった。
「(門矢さんがWの世界からあのコアメダルを持って来たって事は、……このヤミーも世界が融合した副産物って事だよね)」
恐竜のような雄叫びを上げつつ、メダガブリューを振り下ろし、ヤミーに大きな一撃を加える。
大きく開いた傷口からセルメダルが幾つも溢れ出し、ヤミーはその場に崩れ落ちる。
しかしそれだけだ、ヤミーは左手を振り下ろすとオーズと自身の中間に落雷を落とす。
その隙に逃げる。――いつもこうやって戦いは長引いていく。
ヽ( 士)ノ始めるよー
「いま、この世界には『世界の融合』が起こりつつあることくらいは君たちにも理解できているだろう?」
ディエンドライバーを手元で回しながら手品師のように何もない場所から、一つのコアメダルを取り出す。
「これは今よりもずっと先の未来で発掘されたコアメダルさ、一体いつ作られたのか、誰がどんな思いで、
その全てが不明瞭、だけどこの性質を見ると紫のコアメダルに対抗して作られたんじゃないかなって思うよ」
――紫が『無』だとすれば金は『全て』。
「ここから先は僕の推測だけれど、先人たちは紫のコアメダルを作ったが、その性能、性質全てを恐れた。
オーズである君が一番良く分かっているはずだよ、火野映司くん。」
呼ばれた火野映司は苦く頷く。
鴻上光生が見込んだ『真のオーズ』ですら扱いきれない紫のコアメダル。
「だからこそ拮抗し、対抗できる――いや、それ以上のコアメダルを作る必要があった訳だ。
紫のグリードが完全体になってでもしたら、コアメダルを破壊するその性質とその圧倒的なまでの力でどうにもならないからね。」
「……だが、それでは不完全だ、結局金のグリードが――現に街を襲っている」
門矢士が反論するがそんな士を海東大樹は鼻で笑い。
「君のような浅知恵をご先祖様が考えなかったとでも?――実際にコアメダルが作られたのは3枚だけだったのさ」
――三枚?
「そう、オーズが変身できる最低の枚数だけだったというわけだ、
最初から欠けていればグリードが産まれる心配もなかった――、『世界の融合』が起こる前まではね」
「……なるほど、大体分かった、世界の融合が起こり、9枚のメダルが揃ってしまったということか」
そこで空かさず海東大樹は右手を指鉄砲の形に変え、火野映司にそれを向ける。
「僕はそのお宝が欲しいのさ、ひとつの世界に三枚しかないお宝、僕はそれが手に入りさえすればいい」
その指鉄砲を撃つふりをすると、黙って扉から出ていく。
両人がその扉を黙って見つている。
夕日は沈み、夜になる直前。
疲労のせいか、それとも、門矢士とのバトルでのダメージが深刻だったのか、
火野映司はそれから間もなく、眠りへと落ちる。
丑三つ時の頃。
場所は鴻上ファウンデーションの屋上。
一人の男がその強面の顔に似合わず、一ホールのケーキを作り上げている最中だった。
鼻歌を歌いながらも、その手は一切休むことはなく、ケーキを作り上げていく。
外装が完成し、後は盛り付けるだけだが、その人物――鴻上光生は大きな金色の円板を乗せると、
そこに直接生クリームで『Happybirthday Greed』と荒々しく書いていく。
「――ハッピバアァスディィッア!……グリィード!」
屋上に鴻上光生の高らかな笑いが響く。
また、何処かで落雷の音がする。
ヽ( ;士)ノ書き溜めが少ない……また出直します。
会長はどこでもどんな状況でもブレねぇなwwww
乙です
ウィザード編は構想あるなら見てみたいなあ。単品として。
>>123
何処でもってのはそうなんですが、設定的にこの状況を作り出したのはこの会長だったりして……
設定ですけど(というか、後付け)鳴滝は鴻上会長に入れ知恵をして金のコアメダルを発掘させるように仕込んだりとか……
>>124
すみません、構成も構想も練ってなくて……(^U^)<申し訳ありません、このような構想で
まあ考えられるだけ考えてみます、そのときはコヨミちゃん出せるかも……?
始めます
「はっッガァア!!」
という火野映司の叫び声に反応し、両者が飛び起きる。
「……グリードか」
という呼び声に、火野映司は反応しない。
今までよりも長時間、その眼には紫の支配が罹っている。
消えるまでに時間も掛かりはしなかったものの、その表情には陰りが見える。
「……行きましょう、門矢さん」
神々しい、という言葉そのものだった。
黄金に輝く一本の角、黒、白、赤、青、黄の五色に輝く翼と魚のような尾、青紫の鱗のつく足は三本の指で、
人為らざるものという印象がさらに強くなる。
これまでのヤミーなんて比べ物にならないほどのその美しさは、世界をも魅了する。
世界の幅を超えて、誕生した生物――否、欲望。
その強さは、一体どれだけの――。
場所は荒野に近い場所だった。
――いや、違う。
荒野になってしまった場所、だった。
そこだけ一部分、完全な荒野と化してしまっている。
「…………」
グリードは何も言わず、そこに佇む。
「おい、エージ」
騒然とした中、グリードの領域だと言わんばかりの荒野の一歩手前。
焼けずに残っていた木から飛び降りたアンクは、火野達に声をかける。
「アンク!お前一体何処行ってたんだよ!」
舌打ちで返事を返すと、余程切羽詰っているのか、口早に告げる。
「話は後だ、今はグリードに集中しろ!」
「でも、お前のその傷……」
見れば、アンクの登っていた木の根元に、数枚のセルメダルが散らばっている。
まるで、それ以上を見せないように、アンクの右手が火野映司の顎を掴み、自らの顔に向ける。
「いいから、行け……死にたくなかったらな」
「……ああっ!もう!海東さん!お願いします!金のコアメダルを貸してくれませんか!」
火野映司はここに居ないはずの人間を呼ぶ。
周囲を歩き回り、自身も体力が少ないはずだというのに、それでも叫ぶことを止めない。
「海東、居るんだろ、返事をしろ」
大きく溜息が聞こえたかと思うと変身を解除した海東大樹が現れる。
アタックカード【インビジブル】で姿を隠していたらしい。
「……貸したくはないんだけどね、自分達でなんとかし給え、
と言いたい所だけどね、士、一つ――いや、二つ貸し、といったところかな?」
「……勝手にしろ」
口笛を吹かせると驚いた、と言いたげな顔をする。
「破壊者が随分と丸くなったものだね」
「うるさい」
メダルを弾く音が、辺りに鳴った。
「…………お出ましか」
グリードの眼には二人の仮面ライダーが映る。
本来このグリードにそこまでの超常的な視力はない。
では、何故ここまでの力があるのか、それは他のグリードからコアメダルを奪った結果だった。
タカコアメダル――アンクのコアメダルを。
それでも、足りない。
欲望は紫のコアメダル以上。
火野映司は恐れている。
自身の力を、紫のコアメダルの強さを、
体内から出た紫のプテラコアメダル、トリケラコアメダル、ティラノコアメダル。
その一つ一つを確かめるようにオーズドライバーに差し込んでいく。
そして覚悟を決め、オーズスキャナーで変身する。
――絶対に暴走しない!
「……変身!」
恐竜の咆哮、だが、緑の複眼は輝かしくその眼に――。
門矢士はディケイドライバーを腰に充てたまま、ライダーカードを握り締め、
グリードの元へ一直線に歩いていく。
それは、その神々しさに心惹かれたわけでも、見蕩れたわけでもない。
その眼には――信念が宿っていた。
倒さなくてはならない相手を見る眼。
「――漸く来たか、『破壊者』、ディケイド」
「――数百年前からの欲望の塊如きに知ってもらえているとはな、驚いた」
その声は、ほんの少しだけ、震えている。
「そう無下にするでないぞ、俺はお前が居たからこそ誕生したのだ、もっと誇れ、『破壊者』」
「何か勘違いしているようだな、もう一度だけ伝えてやる――
俺は、ただの通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」
ライダーカード【カメンライド:ディケイド】をタップし、ディケイドライバーに装填する。
宣戦布告は終わりを告げる。
そう、世界の終末が――かつて、紫のグリードの望みが、欲望が、今、叶えられようとしていた。
また書き溜めてきます
今日中にオーズ編終われるかな……
乙
書けてるかな?
すみません、PCの調子が悪く、これ以上は無理っぽいです
後はオーズとの共闘、ラスボスをぶっ倒して終了なんですがね……
結局一週間掛かっちゃいそうですが、まあ、ちゃんと完結出来ればと思います
フォーゼ、ウィザード(出来れば鎧武も)はもう少し先送りになりそうです
次の作品書いてる間に構想練れたらいいなぁ……
真っ先に動いたのはオーズだった。
冷凍能力を使い、グリードだけを器用に冷却しようとする。
それに気付いたグリードは逆に自身の冷凍能力を使い、自分の周囲を素早く凍らせた。
オーズの冷却はそれ以上進まない。
――と、その隙をグリードの死角、更にアタックカード【インビジブル】で様子を伺っていたディエンドは、
ライダーカード【ファイナルアタックライド:ディエンド】、ディエンドシュートを放つ!
タイミングは完璧だった、ディエンドの攻撃は、アタックカード【ディケイドイリュージョン】で作り出された分身ごと撃ち抜かれる。
しかし、グリードは相も変わらずに平然と立っている。
まるで最初から攻撃など、されていないかのように。
ライダーカード【カメンライド:ファイズ】ライダーカード【フォームライド:アクセルフォーム】。
グリードの背後に潜み、ファイズ、アクセルフォームに変身したディケイドはグリードに連打を与える。
「児戯にも等しいぞ、ディケイド」
危険を察知したディケイドはアクセルフォームをアイドリングモードからアクセルモードに、
そしてアクセルフォームの真骨頂を発動させる。
「それはコイツを喰らってから言え」
仮面ライダーカブトに搭載されているマスクドライダーシステム、クロックアップと同等の能力、
世界のスピードを置き去りにし、グリードに先ほどの何倍もの猛打、連打を打ち込む、
――残り五秒、十分だ。
ライドブッカーから一枚のライダーカードがディケイドの手に移る。
ライダーカード【ファイナルアタックライド:ファイズ】。
グリードを中心として、八つ以上の円錐状のポインターが射出され、グリードを拘束する。
アクセルクリムゾンスマッシュをグリードの体に叩き込んだ直後、
ディケイドは基本フォームに戻り、時間が流れ出す。
「つまらん、つまらんぞ、『破壊者』――」
言い終わる前にもう一度グリードにディエンドシュートが放たれる。
「小賢し――」
しかし、それだけでは終わらない。
『真逆』から、同じく放たれたディエンドシュートに挟み撃ちにされて――。
「君のやろうとしていることはお見通しだよ、士」
ディケイドがライドブッカーから取り出している最中、ディエンドも同じく、ライダーカードを取り出していた。
ライダーカード【ファイナルアタックライド:ディエンド】、アタックカード【クロックアップ】。
二枚のカードを駆使し、グリードを挟むように、狙って撃つ。
「…………、訂正しよう、仮面ライダー共、悪くない!悪くないぞ!」
手を大きく広げ、高笑いする。
感情に合わせて雷が落ちる。炎が踊る。高層ビルが凍る。
オーズは、その場に立つことでやっとだった。
自身の体内に潜む、この身を包んでいるコアメダルの歓喜の声、
同族と会えたという歓喜の声と、闘争衝動に、必死に耐えることで精一杯だ。
しかし、同時に自身がコンボの圧倒的な力を抑えていることは、分かっている。
――すべてを明け渡したら、このグリードを倒せるだろうか?
――俺が犠牲になって、すべてが救えるというのなら。
衝動と動悸が激しくなる。
頭の中にノイズが奔り、眼の前がゆっくりと暗転していく。
「これに、全部を明け渡したら――」
次の瞬間、恐竜の大きな咆哮。
グリードの眼がオーズを捉えると同時、右手を防御の体勢に変える。
重く響く一撃を簡単に払っていく。
ディケイドがそのチャンスを逃さずに、グリードを攻撃していくが、
オーズはディケイドを眼に入ると、振り払うように拳をぶつける。
「ガァアア……ヴオオオォオォオオ!!!」
右手を地中に潜らせ、メダガブリューを成形させ、引き抜く動作と共に、グリードに向かって振り上げる。
メダガブリューはグリードを切り裂く!
「ぐッ……!貴様、まさか!」
浅く、しかし、それだけで十分。
緑の複眼をしたオーズは、その十分な隙間に拳を文字通り突き抜く!
手に輝くメダルが――紫のコアメダルと反響するメダルの感触がする。
「うおぉぉおおおお!」
感触と実感を頼りに、強引に左手を引き抜く。
「ま、待て!俺のコアメダルを――!」
空に舞う大量のメダルの中、金のコアメダルをディエンドが奪い去る。
「ふむ、上出来だ、それじゃあ、僕は目的の物も盗ったし、退散するかな?後は頑張りたまえ、士」
そう言いながら背後に登場した銀幕に吸い寄せられるように進んでいき、ディエンド――次元戦士の姿は消えた。
「――ふ、はははははは!いいぞ!もっと俺を楽しませろ!もっとだ……もっと!」
――ディケイドの目の前に三枚のライダーカードが出現する。
その内の一枚、ライダーカード【ファイナルフォームライド:オーズ】のカードの絵柄が変わる。
メダガブリューからプトティラコンボのオーズへ。
そのライダーカードをディケイドライバーに装填すると、オーズの肩を叩き背後に回る。
「おい、ちょっとくすぐったいぞ」
「……え?ちょ!門矢さん!?」
ディケイドがそのカードの効果を発揮させ、背中に手を入れると、
より一層輝きを増したプトティラコンボのオーズへと姿を変える。
――手に力が入る。
――煩いほど響いたコアメダルが、消えてなくなったかのように静まり返っている。
「――わ、コアメダルの反発がない……これなら!」
力強く握りしめた拳をグリードに向けて放つ。
コアメダルを失い、動揺したグリードにその拳は容易に突き刺さる。
続けてラッシュを駆ける中、ディケイドはケータッチを取り出し、素早く紋章をタッチしていく。
【ファイナルカメンライド:ディケイド】。
コンプリートフォームに姿を変えたディケイドはケータッチからアギトの紋章をタッチ、
【アギト:カメンライド:シャイニング】、ディケイドの背後からシャイニングフォームのアギトが召喚され、
さらにライダーカード【ファイナルアタックライド:アギト】を手にし、
左腰に取り付けてあるディケイドライバーに装填し、効果を発動させ、シャイニングクラッシュを打つ。
ディケイドとアギトシャイニングフォームの三つの斬撃は、一つ一つをグリードの体に確実に打ち込んでいく。
右上から左下、左下から右へ真横に真上に流れるように斬撃を当てる。
最後にXをなぞる様に放たれた光の刃でグリードの体は吹き飛ぶ。
「ハアァァ――!!」
オーズは攻撃によって散蒔かれたセルメダルは吸い込まれるようにメダガブリューに入って行く。
それはかつて紫のグリードと対峙した時と同じ光景の様て、しかし、確信できる。
この攻撃は、必ず通る。
続けてディケイドはライダーカード【ファイナルアタックライド:オーズ】を手に、ディケイドライバーに装填する。
ブッカーソードの刀身を撫で、構えを取ると、ブッカーソードを左下から右上に振り上げる。
大きく出た二つの刃が、金のグリードを襲う。
「――何故だ!俺は総てを持っていた!何も持ってはないお前らなんぞに!――お前らなんぞ!!」
「失うことのなかったお前に、全てを失った奴が負ける訳がない、
なぜなら――失う寸前で、手を伸ばそうとするからだ!掴みとろうとする力は強い!お前はそれに敗れていろ!」
「セイヤァ――――!!!」
コアメダルにヒビが入り、破壊される。
それだけで、グリードは崩れ、その地にはセルメダルだけが残る。
ただ――それだけ、それだけだった。
「――ありがとうございました!」
クスクシエに戻った三人のうち、最初に口を開いた火野映司は、感謝を口にした。
「ほらっ、アンクも言えって」
「あー!うるせぇぞエージ!俺はアイス食ってんだ!」
アンクは鬱陶しそうに腕を振り払うと明後日の方向を見ながらアイスを食べる。
「でも折角助けてもらったんだし、あのまんまじゃやばかったって――ほらっ!」
仲睦まじいその様子を、トイカメラで写すと、一転、踵を返し、クスクシエの扉を開ける。
「――あ!門矢さん、これ、持ってって下さい、明日のパンツ!」
満開の笑みで奇抜なパンツを渡され、有無を言わさずに無理矢理持たされる。
「俺の祖父が言ってました、『男はいつ死ぬかわからない、だからパンツだけは一張羅を履いておけ』
って、俺もよく旅に出るんで、これだけは持ってるんです」
曇りのない笑顔、これならば、もう『無』のコアメダルに悩まされることもないだろう。
門矢士は笑う。
「――わかった、貰っておいてやる」
「はい!」
――その瞬間、二人の目先、海東達が通った銀幕が現れる。
『「世界の破壊者」――ディケイド!お前は倒されなければならない!今、その準備が整った!』
「鳴滝か、今度はなんだ、随分と意気込んでいるようだが、俺はどうやっても倒せはしないぞ」
明日のパンツもあるしな――と言いつつ、火野映司を見遣る。
その笑顔は崩れない、確固たる自信がその目には宿っている。
『――いつまでその自信が続くのか、この世界の終末も近づいている
――いや、全世界の終末が、近づいている。全てはお前のせいだ、ディケイドォ!』
「責任転換もいいところだな、それにアンゴルモアの大予言のような台詞は聞き飽きた」
――不意に、銀幕がこちらに近づくと、一瞬にして二人の仮面ライダーが取り込まれる。
銀幕を抜けると、見渡す限りの荒野。
まるで全世界がそうであると主張するかのように広がる荒野が、世界の終わりを告げるように静まり返る。
向かい数十メートルの先に大きな銀幕が出現した。
『お前を倒す手筈は整ったのだ、倒されるがいい、ディケイド』
出現したものは、鳴滝ではない、何者よりも、どんな物よりも、白くある者だった。
全身を白く染めた『狂気』を体現したかのような人物――否、『化物』は、
「――きみが、僕を笑顔にしてくれるの?」
そう――犯しく、笑った。
『仮面ライダーの世界 ~オーズ編~ 』:終了
分かる人にはわかるネタ、私は好きです
さて、恐怖の象徴がやってきたといったところでしょうか、
これからも色んな奴が世界を渡ります
もうすこしで終わりますが、それまでお付き合いいただけると幸いです
>>151
アンゴルモアってなんだ……
ノストラダムスの大予言ですね……
当時ディケイドのアンデッド破壊とかミラーワールド進入見て
世界が無いから、世界の制約を無視できるのかと勘違いしてた
>>158
公式設定に『様々なライダーの力を受け継ぐ』とあるのですが
アンデットが封印されずに破壊されるのはディケイドが破壊者たる所以ですかね
ちなみに門矢士の世界自体はありますよ、可愛らしい妹もいますし
おっ、復活っぽいですね。
二週間って結構長い期間だなーと感じました
「……ン・ダグバ・ゼバ、『究極の闇』か、厄介な奴が現れたもんだ」
冷静さこそ失ってはいないものの、その表情に冷や汗が流れる。
「門矢さん――」
「ああ、やるしかないようだ、あれを放置したらそれこそ世界が終わるかもしれない」
ライダーカードを構え、門矢士は戦闘態勢に入る。
三枚のコアメダルをオーズドライバーに差し込む。
「いえ――ライダーは助け合いですから」
二人の仮面ライダーは完全なる黒の世界へと足を踏み入れる。
「どうしたの?もっと僕を楽しませてよ……」
金のグリードが霞む程の戦闘能力――戦闘センス、全てを持ってして最強最悪のイキモノ。
それが、ン・ダグバ・ゼバ。
先程のオーズの世界で言われた台詞と瓜二つのセリフが、どうしてか、重い。
言葉のひとつひとつに狂気を、恐怖を――そして悦びを。
それに加えて、クウガの世界にいた時よりも、むしろパワーアップしている気すら――。
「随分と無様な表情だな、門矢」
一人、銀幕の裏から赤いライダーが登場する。
『て、天道さん、そういうのは、ちょっと……』
「おうおう!良太郎!構うこたぁねえよ!」
『モモタロス、ちょっと静かにしてて……』
もう一人、弱々しい声と正反対の荒々しい動作で現れる。
「おお!なんか、白アスパラみたい……」
「えー?そ、そう見えるのかなぁ、所々金色入ってるけど……」
全身を金に包んだライダーと、銀と赤の強調されたライダー。
「よっ、青年、なんか、苦戦してるみたいね、手伝うよ」
「……そう、ですね、士さん、僕たちも戦います、キバット!」
『おう!渡ーひっさびさだなぁ~、キバって行くぜ!』
鬼のような表情とは裏腹に、温かい声が凛と鳴る。
全身に鎖が用い合っれたライダーが、手を大きく広げ、先頭の構えを取る。
「士、積もる話もあるだろうけど、まずはこいつから倒してからだ!」
「俺たちの守ってきたものが破壊されるのはごめんだな」
銀と青のライダーと、全身を黒に染めたライダー。
「まあまあ、士くん、大丈夫!――まあ、もう一回合うとは思わなかったけど」
「借り、返しに来たぜ、門矢」
『興味深い……ぞくぞくするねぇ』
赤いライダーがサムズアップし、緑と黒のライダーが登場する。
「ふ、あははっはははは、いいよ、もっと僕を楽しませて」
乾いた笑い声を上げ純粋に、楽しそうに嗤うダグバを見て、クウガはサムズアップを下げる、
その表情は見えることがないが、えも言えぬような雰囲気を纏っている。
悲しそうな、哀愁を感じる。
自分以外の仮面ライダーたちが走り出す中、その場に留まったのは彼だけだった。
「――クロックアップ」
カブトはそう呟き、自身のベルトに付属されたマスクドライダーシステム、
超高速化――クロックアップを発動させる。
次の瞬間にはダグバの体は無数の攻撃を受ける――はずだった。
ダグバの背後に回り拳を振り下ろす最中、カブトは見た、
ダグバの肩の辺りで蠢く何かを。
おかしい――、危険を察知しカブトは振り下ろした拳を下げようとする、が、
間に合わない――!
そう直感的に感じたカブトは、その腕を戻そうとする動作の中、
体の重心を移動させ、左足でダグバを蹴り付け、反動で一気にダグバとの距離を取った。
だが、『それ』はカブトの腕を切り裂く、幸いにも軽く掠る程度だ、見るとダグバは肩の刺を瞬時に伸ばし、
カブトの腕だけを切り裂くように伸ばしていた。
当然、死角である背後に攻撃を集中させることは本能としてある。
しかし、狙って、背後のカブトの腕だけを切り裂くことが――しかも超高速のクロックアップをもってして、
――否、カブトにはそれが分かった、ダグバは超高速のクロックアップに反応出来るだけの超感覚を持ち合わせている、と、
カブトを見詰める黒い瞳が、それを物語っていた。
「――ハッ!」
真っ先にたどり着いたアギトはフレイムセイバーを手に取り、フレイムフォームへ変身して、ダグバに斬りかかる。
「どけどけぇ!モモタロス様のお通りだぁ!」
続けて電王がデンガッシャーを振り回し、アギトの真逆からデンガッシャーの刃を振り上げる。
その二つの斬撃をダグバは両手で掴みとり、先程と同じく体のあらゆる箇所を鋭い棘状に変化させ、突き刺す。
知覚感覚に優れるフレイムフォームを身に纏ったアギトは一瞬早くフレイムセイバーから手を離し、
元のグランドフォームに戻る、
電王はデンガッシャーの刃先を切り離し、対応する。
「アブねぇアブねえ……アイツ、ウニ見てぇな事しやがって!」
『……ちょっと、違うんじゃないかなぁ』
「はいっ、ちょっとゴメン、ね!」
響鬼が二人の間を通り、音撃棒を振り下ろす動作で特大の火炎弾をダグバに向け、打つ。
「っしゃ!俺も!」
龍騎はベルトのデッキからストライクベントのカードを取り出し、召喚機に装填する。
龍の頭部を模したドラグクローが召喚され右腕に装着される、
振り被る中でドラグレッダーが舞い降り、火球をダグバに向けて放つ。
正に辺りを火炎が包まんとする中、対極の白は大いに笑う、
「……」
その笑える理由を知るのは古代の戦士と破壊者――クウガとディケイドだけだ。
「あはははっ」
ダグバはその場にフレイムソードとデンガッシャーの刃先を落とし、両手を広げ、
まるで歓迎するかのような姿勢から、大きく手を眼の前で鳴らす。
ばんっ、と強大な爆発音が鳴り、三つの炎が消える。
そして周囲が一気に燃え上がる、ダグバは超自然発火能力で――、
三つの炎よりも大きな火力で、相殺させ、辺りを燃え上がらせた。
――獰猛な猛獣の叫び声と共に空からの打撃と斬撃がダグバを襲撃する。
ブレイドジャックフォームと、キバの姿でもある飛翔体、
――エンペラーバットへ覚醒を遂げたキバはブレイドと天から放たれた弾丸の如く飛来する。
ダグバの超感覚は、人間の約数万倍――否、今はそれすらも上回るであろう、超感覚は、
上位に位置する二人に意識を寄せたあと、寸分違わずに『真下』からの攻撃に対応する。
アクセルフォーム、ファイズの振り上げたファイズエッジを防ぐが、その衝撃によって浮き上がる。
「お前に、破壊はさせない!」
「士さんの為にも、ここで僕達が『破壊』する――!」
ダグバは体を捻り両手でブレイドとキバの攻撃を受け止め、止めきり。
「今の君たちじゃ、僕は楽しませられないよ?」
力任せに地面に叩きつけた。
体勢を立て直した白は、真っ直ぐに赤を見つめた。
紅い瞳と、今だ赤い体、
クウガは――五代雄介はその瞳を見返す。
周囲を見回し、次に曇りがかった空を見る。
「――そうだよな」
再度ダグバを見つめ直し、腰に装着された、アマダムに両の手を翳した。
霊石・アマダムの色が変化する、何者も寄せ付けることのない闇の色へ、
白とは対極の黒へ――。
ダグバは子供の様に無邪気に――悪に、微笑む、
それを感じ取れたのは恐らく二人だけだろう。
多分次で最後かなぁ……?
なんか、ダグバがぼくのかんがえたさいきょーの系に成り下がってる気がしないでもないけれど
できるだけ面白くなるように頑張ってみます
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