飛鳥「うわー、間違えてかつ姉殺しちゃったよぉ」(133)

霧夜「なんてことをしてくれたんだ、まったく」

飛鳥「ごめんなさい。わざとじゃないんです」

霧夜「とりあえず半蔵様に相談しよう」

飛鳥「えぇー、じっちゃんに!?」

半蔵「なに、孫が葛城を殺害しただと」

半蔵「それは誠か?」

霧夜「はあ。そのようで」

半蔵「飛鳥め。ちとおてんばが過ぎるのう」

飛鳥「だってぇ、じっちゃん。かつ姉のセクハラがしつこいから、つい」

半蔵「やれやれ。どうしたもんか」

霧夜「しかし、半蔵様。善忍が同胞を殺害するなどあってはならないことです」

飛鳥「えー。もしかして私、退学処分とかになっちゃうの?」

半蔵「うーむ」

飛鳥「いやだよ、じっちゃん。もうしないから許してよ」

飛鳥「ねぇねぇ、いいでしょ。じっちゃ~ん」

半蔵「霧夜よ。孫もこう言っていることだし」

半蔵「今回のことはワシの顔に免じて、大目に見てやってはくれんかのう」

霧夜「いや、ですが」

半蔵「聞けば葛城の方にも責任があるようじゃし」

半蔵「正当防衛だと考えればよい」

半蔵「それに葛城の家族はもういないようなもんじゃろ」

半蔵「ダメか? 霧夜」

霧夜「……。わかりました、半蔵様がそうおっしゃるのなら」

飛鳥「ワーイ! じっちゃんも先生も大好きー」

霧夜「という訳で、葛城は練習中の不幸な事故で命を落とした」

霧夜「非常に残念で哀しい気持ちもわかる」

霧夜「だが、いつまでも哀しんでいてはそれこそ葛城に申し訳が立たん」

霧夜「志半ばで落命した葛城のためにもお前たちにはこれまでどおり」

霧夜「修行に専念してもらう、以上」

雲雀「そんなこと言われたってかつ姉がいなくなっちゃったのに」

雲雀「修行なんてできないよ……ひくっ、うえーん」

柳生「泣くな、雲雀」

斑鳩「そうですよ。そんなのでは立派な忍びにはなれません」

雲雀「でもぉでもぉ……ひくっ」

飛鳥「そうそう、天国でかつ姉に笑われちゃうよー」

飛鳥「こういうときはじっちゃんの太巻きでも食べて元気だそうよ、もぐもぐ」

柳生「よくこんなときに物を食べていられるな」

飛鳥「だって、さっき霧夜先生が言ってたじゃん」

飛鳥「気持ち切り替えないとね」

柳生「まあな」

斑鳩「飛鳥さんのいうとおりです」

斑鳩「立派な忍びになるためにもここで立ち止まっていてはいけません」

雲雀「う、うん……」

飛鳥「ほら、早く練習場行って特訓しよ」

雲雀「うん、わかった」

飛鳥「あ、雲雀ちゃん。気を付けてね」

飛鳥「その辺、かつ姉の血がまだ残ってるよ」

雲雀「えっ、い、いやああぁ」

柳生「大丈夫か、雲雀」

飛鳥「霧夜先生、ちゃんと掃除しておかなかったんだね。もう」

斑鳩「これでは練習がしづらいですし」

斑鳩「拭いておきますか」

飛鳥「はーい」

雲雀「ひ、雲雀もやらなきゃダメ……?」

柳生「雲雀には無理だろう。そこで休んでおけ」

飛鳥「ダメだよ、血くらい雲雀ちゃんも拭かなきゃ」

飛鳥「じゃないと死んだかつ姉に呪われちゃうよぉ?」

雲雀「や、やるよ……」

飛鳥「くっさーい」

飛鳥「それにベトベトするよぉ」

斑鳩「それは血ですからね……」

飛鳥「雲雀ちゃんの体の中にもこういうのがあるんだよー」

雲雀「うぅ……」

柳生「やめろ、飛鳥」

斑鳩「不謹慎ですよ!」

飛鳥「えへへ、ごめんごめーん」

霧夜「よし、全員訓練場に集まったな」

霧夜「それでは本日は組手で練習を行う」

霧夜「二人一組になりなさい」

柳生「雲雀、組むぞ」

雲雀「うん、よろしくね。柳生ちゃん」

斑鳩「それでは飛鳥さんは私とで」

飛鳥「うん。四人だからこれで組手の訓練はやりやすくなったね」

斑鳩「飛鳥さん! いい加減にしてください!」

飛鳥「え? 私、何か怒らせるようなこと言ったかなぁ」

斑鳩「先ほどから見ていると、飛鳥さんは葛城さんが亡くなって」

斑鳩「喜んでいるようにしか見えません」

飛鳥「ひどいなぁ。そんなことないよ」

斑鳩「いいえ!」

霧夜「やめないか、二人とも」

斑鳩「先生、確かに先生のおっしゃるとおり」

斑鳩「葛城さんのことをいつまでも気にしていてはいけないと思います」

斑鳩「しかし、だからといって葛城さんに対する」

斑鳩「飛鳥さんの無神経な発言はどうにも許せません!」

霧夜「……」

霧夜「斑鳩、いい加減にしないか!」

斑鳩「せ、先生……」

霧夜「罰として廊下に下がっていろ」

斑鳩「しかし、霧夜先生」

霧夜「口答えするな! 言われたとおりにしろ!」

斑鳩「はい……」

飛鳥「あーあ、斑鳩さん怒られちゃった」

柳生「霧夜。喧嘩両成敗ではないのか?」

霧夜「飛鳥はそのまま柳生たちと混ざって練習を続けろ」

柳生「なに?」

飛鳥「当たり前だよ。私、全然悪くないもん」

柳生「飛鳥、お前……」

飛鳥「文句があるなら直接先生に言ってね」

飛鳥「先生の言うことなら私ちゃんと受け入れるよ」

柳生「どうだかな」

飛鳥「ほらほら、そんな怖い顔したら雲雀ちゃんまた泣いちゃうよ」

飛鳥「早く練習練習ぅー。ね、雲雀ちゃん」

雲雀「……」

数時間後

霧夜「よし、今日の訓練はここまで」

雲雀「はぁー、疲れた」

柳生「よく頑張ったな、雲雀」

雲雀「うん」

飛鳥「私ももうクタクタだよぉ。さてと寮に戻ろっかな」

霧夜「飛鳥」

飛鳥「はい」

霧夜「すまんが少し残ってくれないか」

飛鳥「何ですか? 霧夜先生」

霧夜「あのな」

霧夜「斑鳩のことなんだが」

飛鳥「平気です。私、全然気にしてませんよぉ」

霧夜「いや、そうではなくてだな」

飛鳥「はい?」

霧夜「知っているとは思うが、葛城と斑鳩は学院で一番付き合いが長かった」

霧夜「だから、その、なんだ。もう少し、斑鳩の気持ちも察してやるというか」

霧夜「意識してやってはくれないか……」

飛鳥「あっ。もしかして、お説教ですか?」

霧夜「いや、説教という訳ではなく」

霧夜「先生の個人的な頼みのようなものでな……」

飛鳥「おかしいなぁ。さっきのこと、何も悪くないから」

飛鳥「私は廊下に下がるよう言われなかったと思ったのになぁ」

霧夜「いや、だからな」

飛鳥「わかりました。先生の命令なら仕方ないですよね」

飛鳥「飛鳥、何も悪くはありませんが廊下に下がってきます」

霧夜「いや、いいんだ……! そうとも、お前は悪くない」

霧夜「何でもないんだ。今の話は忘れてくれ」

飛鳥「あ、はーい!」

浴場

飛鳥「わーい」

飛鳥「お待ちかねのお風呂タイムだぁ~」

飛鳥「あれ? 斑鳩さんがいないやぁ」

雲雀「まだ下がってたよ」

飛鳥「そっかー。かわいそう」

飛鳥「それー、一番風呂っ!」

ザバァ

柳生「くっ。そんなに飛び込むな。それと先に身体を洗ってからにしろ」

飛鳥「いいじゃん。湯船は先に入った方が気持ちいいよー」

柳生「決まりぐらい守れ」

飛鳥「柳生ちゃん、先生でもないのに私に命令するのぉ?」

飛鳥「それにさー、これでも私の方が先輩なんだよぉ」

柳生「だからなんだ」

飛鳥「そっか。別に柳生ちゃんがそれでいいって言うならいいんだけどねっ」

飛鳥「でも、あんまりいばってると多分いいことないと思うけどなぁー、私は」

柳生「な、何が言いたい……」

飛鳥「えへへ、別に何でもないよ~」

飛鳥「ほらほら、雲雀ちゃんもこっちおいでよー」

飛鳥「お風呂で一緒に遊ぼう」

雲雀「う、うん。先に洗い流すからちょっと待ってて」

飛鳥「えー。そのままそんなの湯船に入って洗い流しちゃえばいいじゃん」

雲雀「でも、それじゃ」

飛鳥「私と遊びたくないの?」

雲雀「そ、そんなんじゃないよ!」

飛鳥「なら、早く遊ぼ。ねっ」

雲雀「うん、今いくね」

柳生「……」

柳生(すまない、雲雀)

飛鳥「あー、いい湯だった」

半蔵「そりゃよかったわい」

飛鳥「あ、じっちゃん! まだ学院にいたんだぁ!」

半蔵「用も終えたことだし、もう帰ってもよかったんじゃがのう」

半蔵「お前のことが気になってのう」

飛鳥「私ぃ?」

半蔵「お前のことじゃ。葛城のことを気に病んでるんじゃないかとなあ」

半蔵「その様子じゃいらん心配だったようじゃな」

飛鳥「そっか。私のこと心配してくれたんだぁ」

半蔵「さてと、ワシはそろそろ実家の方に戻るかのう」

飛鳥「えぇー、もうしばらくここにいてよぉ」

半蔵「しかしなぁ、そうは言うても」

飛鳥「だめだよぉ。もう帰さないから」

半蔵「やれやれ、相変わらず困った奴じゃな」

飛鳥「私、もっとじっちゃんと一緒にいたいんだもん」

半蔵「はっはっは、仕方ないのう。でも、そんなに長くはいられんぞ」

飛鳥「やったー」

半蔵「それよりどうじゃ。修行の方は順調かの」

飛鳥「うーん。相変わらずかなぁ」

半蔵「ほっほっ、つまりそれは相変わらず失敗ばかりという意味かの」

飛鳥「もうっ。じっちゃんのいじわる」

飛鳥「でも、よく考えたら私、あのかつ姉に勝ったんだよね」

半蔵「何言っとるんじゃ、殺生を働いただけだろうて」

飛鳥「同じことだよー」

半蔵「まあ確かに相手の息の根を止めることを勝利とすることもあるが」

飛鳥「ほらね。私だって、一流の忍びにちゃんと近づいてるって証拠だよ!」

半蔵「偉い偉い。その調子じゃ」

飛鳥「でも、今日先生に注意されちゃったんだぁ」

半蔵「霧夜にか?」

半蔵「何かしでかしたのか」

飛鳥「ううん。霧夜先生ってたまにね、何にもしてないのに怒るんだぁ」

半蔵「うーむ。確かに忍びの修行は厳しいに越したことはないが」

半蔵「理不尽な折檻は生徒の芽を摘むことにもなりかねん」

半蔵「ちと後で霧夜ともう一度教育方針について話し合ってみる必要がありそうじゃのう」

飛鳥「ほどほどにねぇ」

斑鳩「はぁ」

柳生「災難だったな」

雲雀「大丈夫? 斑鳩さん」

斑鳩「柳生さんに雲雀さん」

斑鳩「ええ。私なら大丈夫です。慣れてますから」

柳生「オレたちはこのままで本当にいいのだろうか」

斑鳩「……」

雲雀「柳生ちゃん……」

斑鳩「確かに最近の飛鳥さんは増長する一方ですね」

柳生「さっき聞いた話だが、半蔵がもう二、三日学院に泊まることになったそうだ」

斑鳩「そうですか。それはまた急な話ですね」

柳生「用心棒のつもりなんだろう」

雲雀「二人とも、やめようよ。そういうこと言うの」

柳生「雲雀……」

雲雀「飛鳥ちゃんだって、大事な同じ忍学校の生徒なんだよ」

雲雀「それなのに」

斑鳩「そういうわりには雲雀さんも飛鳥さんのことを好いてるようには見えませんが」

雲雀「雲雀は別に……」

柳生「よせ、斑鳩」

柳生「悪かった、雲雀」

柳生「今後お前の前ではこのような話はしない」

飛鳥「なになに、何の話? 私も仲間に入れてよぉ」

斑鳩「飛鳥さん!?」

柳生「いつの間に」

飛鳥「やだなぁ。私たち、忍びだよぉ?」

斑鳩「それはそうですね」

飛鳥「それより、さっきまで何の話してたの?」

飛鳥「もしかして私のこととかだったり」

雲雀「ち、違うよ。別に大したことじゃないから」

飛鳥「なぁんだ、そっか。あ、斑鳩さん。練習の時はごめんなさい」

飛鳥「あれから考えたんだけど、私斑鳩さんのこと考えずにあんなこと言っちゃってさ」

斑鳩「別に。気にしていませんから」

飛鳥「よかったー。これで斑鳩さんとも仲直りだぁ」

少し休憩させてくだちい

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