柚「フツウの女の子」 (22)

柚「アタシの名前は喜多見柚♪ フツウの女の子だよー」

柚「身長もー体重もー、ノーマルな感じでーす」

柚「え? 誰に向けて言ってるのかって?」

柚「やだなぁ。Pサンにじゃないってばー」ケラケラ

柚「…これからファンになってくれるかもしれない誰かに、だよっ」

柚「黙ってると、いろんな人に紛れて見えなくなっちゃうかもだから! どんどんアピールしていかなきゃね!」

柚「……いい心がけって、そんな他人事みたいな言い方ってばないよ」

柚「へへっ。Pさんとアタシで、一緒に、アイドル頑張って行こうね!」

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柚「うあー。それにしても、もう五月になるのに……まだ寒いねー…」ブル

柚「そーだ! 走って事務所に行ったら体もあったまるかも!」

柚「…ってそんなに嫌そうな顔することないじゃん? Pサンってちゃんと運動してる? たるんでない?」ムニムニ

柚「ふぎゃ!? パ、パーカーを無理に被せないでよぅ…ごめんごめん」テヘ

柚「……」

柚「…Pサンが忙しいのはアタシのせいだから、…その、他人事みたいに、運動ちゃんとしなさーい! …なんて言えないけどー」

柚「けどね? こうやって一緒に歩いたり、走ったり、誘ってくれたら付き合うよ! って言うか私が誘っちゃう!」パシ

柚「ほらほらー! 今日も元気にいこぉー!」タタッ

柚「あ、Pサン! 様子を見に来てくれたの?」

柚「…へへ、うん、ありがと…無理しないね。…正直、もう、へとへとでさー……」クタ

柚「レッスンって厳しいねー…」

柚「……ううん、大丈夫。嫌になってなんかないよ」

柚「…楽しんでるよーアイドル活動」ニコ

柚「それに、こうやってPサンがいてくれるもんねー…なーんて」エヘヘ

柚「…うん、元気カイフクしたっ。あと少し、頑張ってくるね!♪」

柚「気合入れてこーっ!」オー

柚「……」

柚「え、やっぱり? うー…」

柚「うん。そろそろ切らなきゃねー。って、切るほど伸びてないって?」

柚「んあー、Pサンってば分かってないな! 分かってないったら分かってないよー♪」ペシペシ

柚「前髪が目にかかっちゃうと前が見えないでしょ? それってほら、いろいろ見落としちゃうかもってことじゃない?」

柚「面白いこととか、大事なこととか!」

柚「へへっ、もしかすると、私がPサンを見つけたのもこの髪のおかげかもしれないからー」

柚「え? そうでなくとも、俺が見つけたって? うわーきざな台詞!」

柚「うん、でもありがとっ!」

柚「…うー…テストなんてなかったらいいのにー…勉強は嫌いカナ…」グデー

柚「PサンPサン、ここ教えてよー」グイグイ

柚「…教科書をちゃんと読めばいいって? へへっPサンってば、アタシがいつも教科書は学校に置いてること、知ってるでしょ!?」

柚「あうっ!? ア、アイドルの頭を叩くなー! もうっ」

柚「! へへ、そうだ! じゃあさじゃあさ、Pサン一緒に学校に付いて来てよ! 教科書取りに行くんだ!」

柚「ほらほら、休憩がてらのジョギングだよー。ね?」

柚「うんうん、さすがPサン分かってるなぁ♪」

柚「ほっ」

柚「ン? うん。パーカーかぶると、あったかいよ。Pサンもパーカーにするといいのにー」

柚「せっかくだし、今度おそろのパーカー、買いに行こうよ!」

柚「へへっ、そしたらきっと、アタシはもーっと楽しいよ!」

柚「……わ、分かってるってば。仕事も頑張るよぅ」

柚「…も、もう。アイドルだって、大事だけど、アタシにはもっと大事なものがあるんだからー…」

柚「ふん、鈍感なPサンには教えてあげないよっ♪」ベー

柚「ン? 緊張してるかって?」

柚「えへへ、ヘーキヘーキ! だってPサン、そこからアタシのこと、見ていてくれるんでしょ?」

柚「……うん、うん、うん! きっと大丈夫! アタシだって頑張って来たんだもん! 他の子にだって負けたくないし!」

柚「じゃあ、Pサン! アタシ行って来るね!」タッ

柚「柚タイム、始めるよ! Pサンも、みんなも、きっとワクワクさせるから!」

柚「だからPサン、アタシのこと、ちゃーんとみててね!」

柚「んー♪ おいしいっ」

柚「Pサン、ありがとね。あ、あんな小さなライブの成功祝いって言うのも、何だか照れ臭いケド…」

柚「う、うん。あんなってことは、ないよね。初ライブだったもんね」

柚「…お前こそ、めちゃテンション高かったって? へへっまあね! 初めてのライブだったし!」

柚「……うん。初めてだったもんね。これでアタシも、ちゃんとアイドルってかんじ…」

柚「えへへ。フシギな感じがする! 全部Pサンがアタシを見つけてくれたおかげ!」

柚「ありがとう、Pサン。よし、これからもーっと、アタシ頑張るね!♪」






柚「おーPサンだ。えへへ…すごいね。こんな土砂降りの中でも、ちゃんと見つけてくれるんだね。さすがっ」

柚「…とはいえずぶぬれじゃん! 寒くない?」

柚「アタシはほら、フード被ってるし! …えへへ、ごめん、やっぱ寒いや…」ブルブル

柚「っくし」

柚「……すごい雨だねー」

柚「……Pサンと出会えたのも、こんな風に寒い日だったっけー」

柚「いやー何事かと思ったけど♪」

柚「……Pサン。アイドルはとっても楽しいよ」

柚「うーん…でも、ちょっと、アタシみたいなフツウの女の子には、……難しかったかも」

柚「へへっ、らしくなって、そうかな?」

柚「……そんなことないよー」

柚「いつだって不安だよ?」

柚「アイドル始めるまでは、なにか面白ことないかなーって。探してるってことは、今が楽しくないのかなって」

柚「学校も、友達といるのも、楽しいハズなのにさー。そんな風に考えるようになって。いつの間にか、前髪を伸ばすくらいのことも不安になって」

柚「それでようやく、Pサンに見つけてもらえて、不安なこと忘れるくらい楽しいなって思えて……」フルフル

柚「けど、やっぱり何だか上手く行かなくて」

柚「あはは、たった一度の失敗で、こんな風に思うなんてね!」

柚「ねえPサン。どうしよう。どうしたらいい?」

柚「いやだよ。このまま諦めちゃうのなんてやだよ、だってそんなことしたら、」

柚「あの日Pサンと出会えたことさえ、アタシ、嬉しかったって思えなくなっちゃうよ…!」

柚「…ひっく」

柚「え、へへ。ごめんね。こんな風に泣いたのって久し振りだなー」

柚「……けど、泣いたらすっきりするなんてウソだね!」

柚「…ねえPサン。やっぱりアタシは、こんな風によわっちいフツウの女の子なんだー」

柚「やっぱアイドルは、もっと他の子たちみたいな、トクベツな子がやんなきゃね! ってことで…」

柚「きゃう!? ぴ、Pサン? フードをそんな風にしちゃうと、前が見えないよー」ワタワタ

柚「……」

柚「……ぷっ。あはは! な、…に、そのきざな台詞! Pサンってば、たまーにしれっと、すごいこと言うよねぇ!」

柚「…でもそっか、そーきたか」

柚「アタシの代わりに、前は、Pサンが見てくれるのかー」

柚「…えへへ」

柚「……うん。もしかすると、自分で前を向いているより安心かもっ! なーんちゃって! てへ!♪」

柚「…そうだね」

柚「アタシは、アタシだけだとフツウの女の子で、きっとそのままだったケド」

柚「……Pサンのおかげで、アタシはアイドルに——トクベツに、なれたんだもんね」

柚「雨やんだねー」

柚「うん、そうだね。事務所にもどろっか」

柚「……ねえPサン」

柚「アタシはあのとき、Pサンに見つけてもらえて…ちょっぴり自分のこと、信じられるようになったんだ」

柚「それでね、お仕事も頑張ってー、うん、やっぱりあの日は運命的だったんだー! って思うようになって…けどやっぱり不安で」

柚「自分で思ってるだけじゃ、分かんないもんね」

柚「だからPサン。これからは、今までよりもーっとしっかりアタシの手を握って、引っ張ってってね!」

柚「アタシ、Pサンのこと信じてるよーっ。えへへ!」

柚「あの日のことがやっぱり運命だったんだって!」

柚「幸せなことだったんだって!」

柚「Pサン! アタシにそう思わせてね! これからもよろしくっ」

おわり。


ただの柚ちゃんスキーだから拙いSSだったと思う。
読んでくれた方には大変感謝。

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