柚「フツウの女の子」 (22)
柚「アタシの名前は喜多見柚♪ フツウの女の子だよー」
柚「身長もー体重もー、ノーマルな感じでーす」
柚「え? 誰に向けて言ってるのかって?」
柚「やだなぁ。Pサンにじゃないってばー」ケラケラ
柚「…これからファンになってくれるかもしれない誰かに、だよっ」
柚「黙ってると、いろんな人に紛れて見えなくなっちゃうかもだから! どんどんアピールしていかなきゃね!」
柚「……いい心がけって、そんな他人事みたいな言い方ってばないよ」
柚「へへっ。Pさんとアタシで、一緒に、アイドル頑張って行こうね!」
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1367504644
柚「うあー。それにしても、もう五月になるのに……まだ寒いねー…」ブル
柚「そーだ! 走って事務所に行ったら体もあったまるかも!」
柚「…ってそんなに嫌そうな顔することないじゃん? Pサンってちゃんと運動してる? たるんでない?」ムニムニ
柚「ふぎゃ!? パ、パーカーを無理に被せないでよぅ…ごめんごめん」テヘ
柚「……」
柚「…Pサンが忙しいのはアタシのせいだから、…その、他人事みたいに、運動ちゃんとしなさーい! …なんて言えないけどー」
柚「けどね? こうやって一緒に歩いたり、走ったり、誘ってくれたら付き合うよ! って言うか私が誘っちゃう!」パシ
柚「ほらほらー! 今日も元気にいこぉー!」タタッ
柚「あ、Pサン! 様子を見に来てくれたの?」
柚「…へへ、うん、ありがと…無理しないね。…正直、もう、へとへとでさー……」クタ
柚「レッスンって厳しいねー…」
柚「……ううん、大丈夫。嫌になってなんかないよ」
柚「…楽しんでるよーアイドル活動」ニコ
柚「それに、こうやってPサンがいてくれるもんねー…なーんて」エヘヘ
柚「…うん、元気カイフクしたっ。あと少し、頑張ってくるね!♪」
柚「気合入れてこーっ!」オー
柚「……」
柚「え、やっぱり? うー…」
柚「うん。そろそろ切らなきゃねー。って、切るほど伸びてないって?」
柚「んあー、Pサンってば分かってないな! 分かってないったら分かってないよー♪」ペシペシ
柚「前髪が目にかかっちゃうと前が見えないでしょ? それってほら、いろいろ見落としちゃうかもってことじゃない?」
柚「面白いこととか、大事なこととか!」
柚「へへっ、もしかすると、私がPサンを見つけたのもこの髪のおかげかもしれないからー」
柚「え? そうでなくとも、俺が見つけたって? うわーきざな台詞!」
柚「うん、でもありがとっ!」
柚「…うー…テストなんてなかったらいいのにー…勉強は嫌いカナ…」グデー
柚「PサンPサン、ここ教えてよー」グイグイ
柚「…教科書をちゃんと読めばいいって? へへっPサンってば、アタシがいつも教科書は学校に置いてること、知ってるでしょ!?」
柚「あうっ!? ア、アイドルの頭を叩くなー! もうっ」
柚「! へへ、そうだ! じゃあさじゃあさ、Pサン一緒に学校に付いて来てよ! 教科書取りに行くんだ!」
柚「ほらほら、休憩がてらのジョギングだよー。ね?」
柚「うんうん、さすがPサン分かってるなぁ♪」
柚「ほっ」
柚「ン? うん。パーカーかぶると、あったかいよ。Pサンもパーカーにするといいのにー」
柚「せっかくだし、今度おそろのパーカー、買いに行こうよ!」
柚「へへっ、そしたらきっと、アタシはもーっと楽しいよ!」
柚「……わ、分かってるってば。仕事も頑張るよぅ」
柚「…も、もう。アイドルだって、大事だけど、アタシにはもっと大事なものがあるんだからー…」
柚「ふん、鈍感なPサンには教えてあげないよっ♪」ベー
柚「ン? 緊張してるかって?」
柚「えへへ、ヘーキヘーキ! だってPサン、そこからアタシのこと、見ていてくれるんでしょ?」
柚「……うん、うん、うん! きっと大丈夫! アタシだって頑張って来たんだもん! 他の子にだって負けたくないし!」
柚「じゃあ、Pサン! アタシ行って来るね!」タッ
柚「柚タイム、始めるよ! Pサンも、みんなも、きっとワクワクさせるから!」
柚「だからPサン、アタシのこと、ちゃーんとみててね!」
柚「んー♪ おいしいっ」
柚「Pサン、ありがとね。あ、あんな小さなライブの成功祝いって言うのも、何だか照れ臭いケド…」
柚「う、うん。あんなってことは、ないよね。初ライブだったもんね」
柚「…お前こそ、めちゃテンション高かったって? へへっまあね! 初めてのライブだったし!」
柚「……うん。初めてだったもんね。これでアタシも、ちゃんとアイドルってかんじ…」
柚「えへへ。フシギな感じがする! 全部Pサンがアタシを見つけてくれたおかげ!」
柚「ありがとう、Pサン。よし、これからもーっと、アタシ頑張るね!♪」
・
・
・
柚「おーPサンだ。えへへ…すごいね。こんな土砂降りの中でも、ちゃんと見つけてくれるんだね。さすがっ」
柚「…とはいえずぶぬれじゃん! 寒くない?」
柚「アタシはほら、フード被ってるし! …えへへ、ごめん、やっぱ寒いや…」ブルブル
柚「っくし」
柚「……すごい雨だねー」
柚「……Pサンと出会えたのも、こんな風に寒い日だったっけー」
柚「いやー何事かと思ったけど♪」
柚「……Pサン。アイドルはとっても楽しいよ」
柚「うーん…でも、ちょっと、アタシみたいなフツウの女の子には、……難しかったかも」
柚「へへっ、らしくなって、そうかな?」
柚「……そんなことないよー」
柚「いつだって不安だよ?」
柚「アイドル始めるまでは、なにか面白ことないかなーって。探してるってことは、今が楽しくないのかなって」
柚「学校も、友達といるのも、楽しいハズなのにさー。そんな風に考えるようになって。いつの間にか、前髪を伸ばすくらいのことも不安になって」
柚「それでようやく、Pサンに見つけてもらえて、不安なこと忘れるくらい楽しいなって思えて……」フルフル
柚「けど、やっぱり何だか上手く行かなくて」
柚「あはは、たった一度の失敗で、こんな風に思うなんてね!」
柚「ねえPサン。どうしよう。どうしたらいい?」
柚「いやだよ。このまま諦めちゃうのなんてやだよ、だってそんなことしたら、」
柚「あの日Pサンと出会えたことさえ、アタシ、嬉しかったって思えなくなっちゃうよ…!」
柚「…ひっく」
柚「え、へへ。ごめんね。こんな風に泣いたのって久し振りだなー」
柚「……けど、泣いたらすっきりするなんてウソだね!」
柚「…ねえPサン。やっぱりアタシは、こんな風によわっちいフツウの女の子なんだー」
柚「やっぱアイドルは、もっと他の子たちみたいな、トクベツな子がやんなきゃね! ってことで…」
柚「きゃう!? ぴ、Pサン? フードをそんな風にしちゃうと、前が見えないよー」ワタワタ
柚「……」
柚「……ぷっ。あはは! な、…に、そのきざな台詞! Pサンってば、たまーにしれっと、すごいこと言うよねぇ!」
柚「…でもそっか、そーきたか」
柚「アタシの代わりに、前は、Pサンが見てくれるのかー」
柚「…えへへ」
柚「……うん。もしかすると、自分で前を向いているより安心かもっ! なーんちゃって! てへ!♪」
柚「…そうだね」
柚「アタシは、アタシだけだとフツウの女の子で、きっとそのままだったケド」
柚「……Pサンのおかげで、アタシはアイドルに——トクベツに、なれたんだもんね」
柚「雨やんだねー」
柚「うん、そうだね。事務所にもどろっか」
柚「……ねえPサン」
柚「アタシはあのとき、Pサンに見つけてもらえて…ちょっぴり自分のこと、信じられるようになったんだ」
柚「それでね、お仕事も頑張ってー、うん、やっぱりあの日は運命的だったんだー! って思うようになって…けどやっぱり不安で」
柚「自分で思ってるだけじゃ、分かんないもんね」
柚「だからPサン。これからは、今までよりもーっとしっかりアタシの手を握って、引っ張ってってね!」
柚「アタシ、Pサンのこと信じてるよーっ。えへへ!」
柚「あの日のことがやっぱり運命だったんだって!」
柚「幸せなことだったんだって!」
柚「Pサン! アタシにそう思わせてね! これからもよろしくっ」
おわり。
ただの柚ちゃんスキーだから拙いSSだったと思う。
読んでくれた方には大変感謝。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません