モバP「こんばんわ >>3」 (88)

気分転換に。
アイドル名をどうぞ。

「こんばんわ >>3


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幸子

「こんばんわ、プロデューサーさん」

「こんばんわ、幸子」

彼は少し考える素振りを見せてから

「なんでお前が居るんだ?」

「ボクが事務所に居たら変ですか?」

「そんなことないが…」

彼は少し困ったような顔で言う。

「…帰らないんですか?」

窓の外は真っ暗で、時々聞こえる車の走る音だけが事務所に響く。

「まだ仕事があるからな」

当然の様にデスクに向かい続ける彼はボクに背中を向けながら話し続ける。

「ほら、子供は帰る時間だぞ」

「ボクを子供扱いしないでください!」

全く失礼な話だ。

「ボクも仕事があるので残りますっ!」

嘘だ。

適当に誰かが置いていったファッション誌を読む素振りをする。

「はぁ……」

彼は一つ大きな溜息をついて立ち上がる。

「お前が帰ったら食べようかと思ってたんだがな」

おもむろに冷蔵庫を開けて、小さな紙袋を取り出す。

「え?何でプリン…?」

紙袋に付いていたセロハンテープを剥がすと、沢山のクリームの乗ったプリンが二つ入っていた。

「二つとも、独り占めしようと思ってたんだけどな」

そう言って彼は、プリンの片方をボクに差し出す。

「ほら、さっさと食わないと両方とも貰っちゃうぞ」

プリンの封を乱暴に剥がし、中身をヒョイヒョイと口の中に放り込む彼。

「た、楽しみにしてたならもうちょっと大事に食べましょうよっ!」

彼のちぐはぐな行動につい突っ込んでしまうボク。

「食べ終わった、ほら、貰っちゃうぞ?」

ボクのプリンに手を伸ばす彼。

「ボクのものをそう簡単に盗れると思わないでくださいねっ!」

ボクは慌ててプリンのビニールを剥がして

彼を牽制しながら、スプーンをプリンに差し込んでは、口に入れる作業を繰り返す。

「そ、そこまでやられたら盗れないなぁ…」

それほど残念ではなさそうな顔で両手でプリンを抱えるボクを見る彼。

ふふん!思い知りましたか!

「コーヒー淹れて来る」

「っとと…お子様は眠れなくなっちゃうから牛乳でいいか?」

「だから子供扱いしないでくださいってば!」

でも、牛乳でいいです。

「帰るぞ」

プリンと牛乳を綺麗に片付けたボクに向けて彼は言う。

「…仕事は?」

「そういう気分じゃなくなっちゃったしな」

小さく笑みを浮かべる彼。

「そうですか」

こんな生活を繰り返していたら彼はいつか壊れてしまう。

「カワイイボクを女子寮まで送らせてあげます!」

「はいはい、畏まりました」

車のキーを指先でクルクル回す彼。

……

「こんばんわ、プロデューサーさん」

「こんばんわ、幸子」

「……またか‥」

「…何のことだかボクには分かりません」

今日もまた嘘を吐く。

そしてまた

「お前が帰ったら食べようかと思ってたんだがな」

「昨日はクッキーでしたね。今日は?」

ボクの最近の新たな日課のお話。

アカン、自分は安価スレに向かない気がした。

「どこに行った? >>16

のあさん

「……ごめんなさい、少し席を外していたわ」

「いや、大した用事じゃないんでむしろ俺が…」

すると彼女は少しムッとした顔をする。

「……要件の大小を問わず私に頼ってほしいわ」

彼女は時々こういう顔をする。

初めて彼女に会った時から彼女の沢山の表情を見せてくれたが、

彼女がこういう表情を見せてくれるようになったのは最近からだ。

「……聞いているの?」

もちろん聞いてますよ。

「……貴方はいつもそうね」

「…最初は貴方から追いかけてきた筈なのにいつの間にか私が追いかける側になっている」

少し寂しそうな、そしてそれでも嬉しそうな表情をする彼女。

「そんなことないですよ」

どれだけ経っても俺が彼女の力を百%引き出せているなんて自信を持つことは出来ないだろう。

そう思う俺を見透かした様に

「私の空白は…貴方が埋める…。貴方に足りぬ力は…私が授ける…私たちの関係はそういうもの…覚えておいて」

「…前にもそう言ったわ」

そうでしたね。覚えてますよ。

「私を活かすも殺すも貴方次第。私は貴方と出会った時からずっとそう思ってるのよ」

「初めて会った時は少し刺々しかった気がしますよ?」

いつも貴方に試されているようで、毎日ドキドキしてました。

「…今だって変わりないわよ?」

彼女は口元で小さく微笑んでそう言う。

「あはは、これからも気が抜けませんね」

あの頃はこんな笑い方してくれなかったじゃないですか。

自然と笑いが溢れる。

「…気を抜かなかった貴方だったから私は付いてきているのよ?」

……ありがとうございます。

「はは、それじゃあ、本題のお話です」

「……次はメイドの仕事とか如何ですか?」

少し冗談めかして言う。




「ふふ、本当の意味で私を手なづけるつもりなら…それなりの覚悟が必要よ」

ええ、初めて出会った頃から分かっています。

そこには苦笑いを浮かべた俺が居た。

「おーいっ! >>26

きらり

眠いので一旦切ります。
きらりん了解しました。次回は地の文ではぴはぴします。

「おーいっ!きらりー!」

俺が声を掛けるときらりは

「おっすおーっすっ☆」

とこちらに向かって小走りで走ってくる。

「Pちゃぁーんっ!」

小走り…で……?

「ぐほっ!?」

走って来るきらりを抱きとめられずにソファーに倒れこむ俺ときらり。

「うぇへへ…しっぱーいっ!」

ソファーに倒れこんだ状態のままくしゃっと笑うきらり。

「危ないから少し加減しなさい」

本当に危なっかしいやつだ。

「次はどーんっ!からとーんっ!くらいにするにぃ☆」

具体的にどう変わったのか説明して欲しい。

「あのね!あのね!Pちゃん!」

やけに楽しそうに話掛けてくる。

「きらりんねぇ〜!ちっちゃいファンが出来たゆ!」

ちっちゃいファン…?

「うぇへへ☆きらりんぱわーでお友達〜♪」

ニコニコしながらきらりは続ける。

「きらりん見に来てくれるファンにねっ!杏ちゃんくらいちっちゃい娘がいたのー☆」

「それは確かにちっちゃいな」

含み笑いをしつつそう返す。

「きらりちゃん見てると元気で出てくゆってー☆」

「そうだな。俺も元気を分けて貰ってるよ」

「うぇへへ、その娘もきらりんみたいにおっきくなりたいって言ってたのー!」

これはまた…相当頑張らなくちゃだな、その娘。

小さく苦笑いを零す。

「きらりんもファンの娘もハッピーよね〜☆」

「ニヤけるー! ヤバーい☆」

本人が嬉しそうでプロデューサー冥利に尽きる。

「きらりんアイドルやって良かったにぃ!」

…そう言って貰えるだけで、きらりのプロデューサーとしてやってきたことが肯定された気がして嬉しい。

「Pちゃんもはぴはぴしちゃってる?」

「ははっ、俺もはぴはぴだな」

そうだ。はぴはぴなんだろうな。

自然と周りを笑顔にするこのアイドルのはぴはぴはきっとこれからも沢山の人をはぴはぴにする。

「きらりんねー!Pちゃんとならたっくさんの人をによによさせられると思うのー☆」

「によによか…、出来るか分からないが頑張るか!」

によによか…自分の頬に手をやってによによがどんな顔か弄り回す。

「Pちゃん変な顔ー☆」

きらりが笑いながら近づいてくる。

「によによー☆」

俺の頬に手を添えて、俺の頬をこねくり回すきらり。

「こんな感じかにぃ?」

十分ほど、俺の頬を弄り回して満足する顔になったのか手を固定するきらり。

「あのな、今更だが……」

当たり前のことをひとこと。





「鏡が無いから自分がどんな顔してるか分からん」

「……Pちゃん、ちょっと残念な子?」

残念な子言うな。

二人してひとしきり笑って一日が終わった。

お久しぶりです。

もしかして疲れてるか?>>39

卯月

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輿水幸子(14)

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高峯のあ(24)

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諸星きらり(17)

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島村卯月(17)

「もしかして疲れてるか?卯月?」

「えへへっ、そんな訳ないですよっ!」

「アイドル島村卯月、今日も絶好調です!プロデューサーさん!」

そう語る卯月の足取りは重い。

「そうか…」

本人がそう言うからにはこちらとしては強く出れない。

「仕方ないな……」

休むのも仕事のうちだと理解させてやらないとな。

口元に小さく笑みを浮かべる。

「なっ、なんかプロデューサーさんがすっごく悪い顔してますっ!」

失礼な話だ。デフォルトでこの顔だ。

……あれ?そっちのほうがマズくないか?

常時悪い顔のプロデューサー……?

「に、にこっ☆」

想像しうる中でもっとも笑顔に近いであろう表情を浮かべてみる。

「怖いですよ!その顔!」

傷ついた、膝をがっくりと折り、うなだれる俺。

「プ、プロデューサーさん!?」

「担当アイドルに怖いって言われた……」

「違いますって!いつも通り普通の顔してればいいじゃないですかっ!」

必死にフォローに回ってくれる卯月。

だが傷心中の俺はスルーする。

「あーあ、どうせ俺は笑顔が怖いプロデューサーですよーだ…」

近場にあった再生紙を使って淡々とゴミ箱を折り始める俺。

「そんなにメンタル弱かったですかっ!?プロデューサーさん!?」

だって割りと演技だもの。

笑顔怖いとか言われたのは傷ついたけど。

「飯っ!飯だっ!」

卯月の手を引いて無理やり外に連れ出す。

「私っ、これからレッスンがっ!」

わたわたと慌てる卯月。

「心に傷を抱えた俺とレッスンどっちが大事なんだ」

自分で言っといてなんだがこれはクズだ。

「そっ、それはプロデューサーですけど…」

モジモジしながらもそう言ってくれる卯月。

これでレッスンですとか言われたら傷心旅行にでも行ってたかもしれない。

「トレーナーさんには俺から謝っておくから、なっ?」

「はぁ……手の掛かるプロデューサーさんですね」

珍しく呆れた顔をこちらに向けてくる卯月。

「どこに連れて行ってくれるんですか?」

「蕎麦だ」

凄く微妙な顔をする卯月。

そんな顔しないで欲しい。



……

「らいらいれふねっ!ぷろりゅーふぁーふぁんふぁ…」

届いた瞬間にズルズルと蕎麦を啜りながら俺の文句を言う卯月。

しかしいきなり喋る口を止めて卯月は黙りこむ。

「……」

「…美味しいですね、この蕎麦」

卯月の豹変ぶりに吹き出しそうになるのを押さえて返す。

「そうか、それは何よりだ」

そこからは会話もなく、延々と蕎麦を啜る音だけが響いた。

『ごちそうさまでしたっ!』

二人揃って麺一本無くなったザルの前で手を合わせる。

とりあえず卯月を外に出して会計だけ済ませる。



「あの、美味しかったです、ごちそうさまでした」

帰り道、卯月の簡潔なお礼。

「疲れてる時は美味しい物食べてよく寝ること!」

「分かったな?」

俺は少し意地の悪いであろう顔を浮かべて卯月に言う。

「あはは、全部お見通しですね……」

卯月はただ苦笑いを浮かべながら

「お仕事が増えるのはとっても嬉しいんです」

「それに、お仕事が増えたのだって頑張ってきた成果だって思いませんかっ!」

「色んなお仕事して、少しずつ私が大きくなれる気がしてっ!」

瞳を輝かせてそう言う卯月から、仕事を減らすのもプロデューサーの仕事なのだろう。

卯月のことを考えたら。

「そうだな」

だが……。

「自由にやってみろ、卯月」

この娘が自分自身を伸ばしていく様を見てみたいと思うのも、しょうがないのかもしれない。

「もし私がまた疲れちゃって、どうしようもなくなっちゃったら……」

「プロデューサーさんが助けてくれるんですよね?」

これは責任重大だ。

「そうだな。手に負える範囲で頼むぞ?」

「えへへっ♪やーですっ!」

卯月はそう言い、駆け足で事務所の前まで走ると、事務所の扉を開いて中に入ってしまった。

卯月に遅れて俺が事務所に入ると

『お帰りなさいっ!プロデューサーさん』

先に事務所まで走って行ったのはこれがしたかっただけか。

なるほど、それなら乗ってやらないとな。

『ただいま、卯月』

次はどこに連れて行ってやろうか。

卯月とか言う小悪魔。可愛い。


「……雨か…、>>54

美優さん

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三船美優(26)

「ポリバケツの音が好きなのが私らしいんですか?」

少しムスッとした顔を彼に向けて、意地悪をする。

「い、いえっ、ち、違いますってばっ!?」

予想以上の慌て方。

いつも慌てているのは私ばっかりだったから少し新鮮。

「……冗談です」

デスクに座ったままの彼のおでこに人差し指をピタリとくっつけてそう言う。

「脅かさないでくださいよ…」

心底ホッとしたような顔をする彼。

「熱いコーヒーでもいかがですか?」

意地悪をしたお詫びも兼ねて彼に尋ねる。

「……ミルクも砂糖も一通りください」

溜息をつきながらそう言う彼。

「…今日はブラックじゃないんですね?」

仕事中の彼が砂糖やミルクを欲しがることは普段ないので少し驚く。

「少し休憩を入れようと思いまして」

机の上に散らばった書類を一箇所に纏めていくつかに分けてクリップで止める彼。

「休憩に付き合ってくれますよね?」

目敏く私が二人分のコーヒーを淹れていることに気づいた彼がそう言う。

「あはは……」

相変わらず、変な所ばっかり鋭い人ですね。

「…お付き合いさせて頂きます」

こういう空気、久しぶりですから結構嬉しいんですよ?



彼は色んなことを話してくれました。

深夜の事務所でのお話。

色々な意味で苦戦したアイドルのお話。

小さなファンが出来た時のアイドルのお話。

ひたすら頑張り続け、休むタイミングを失ってしまったアイドルのお話。

彼は、誰の話かなんて一言も言っていないのに、

お話を聞いただけで誰との話なのか一人一人頭の中に顔まで浮かんでしまいます。

そして、私もそのお話の方のお名前は出しませんでした。

「プロデューサーさんとっては私はどんなアイドルですか?」

ふと零れ落ちた疑問。

「…恥ずかしいのでやめておきます」

私はつい、ぷっと吹き出してしまいました。

「もしかしてそのお話でお名前を出さなかったのって……」

「…は、恥ずかしいからです…」

恥ずかしいなら最初から話さなければいいのに。

そう言うと、彼は

「こ、こういう空気…久しぶりですから…」

なんだ、私とおんなじこと…考えてくれてたんですね。

照れ隠しに私は半分のお砂糖と半分のミルクを入れたコーヒーを少し口に含みます。

逃げてばっかりだった私。

今曲がっていても、ねじれていても、私が前に進めているのはプロデューサーさんのお陰です。

私も、恥ずかしくてそんなこと言えないですから。

ですから…。

「次は私の番ですね」



「私からは…最近になってやっと…自分がアイドルだと思えるようになった…」

「へんてこなアイドルのお話をしましょうか?」

美優ンヒロインとかいう謎単語が浮かんだ。


「怖い夢でも見たのか、>>66?」

ありす

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橘ありす(12)

「いっ、嫌っ!——くならないでくださいっ!」

ソファから飛び起きるなり、大きな声をあげるありす。

尋常でない様子だったので声を掛ける。

「怖い夢でも見たのか、ありす?」

「なっ、なんですかいきなり!?」

寝起きのありすは小さく体を震わせると、震えた唇で言葉を放つ。

「あとっ!名前で呼ばないでくださいって何度も言ってますよねっ!」

思春期の娘というのはこうも扱いが大変なものなのだろうか。

全国のお父さんに敬意を払わねば。

…俺は父親じゃないけど。

——

「結局なんだったんだ。ありす」

仕事帰り、車を運転しながらありすに尋ねる。

「だからありすって呼ばないでくださいと何度も…」

「仕事も集中出来てなかったみたいだしな」

そう言うと、ありすは口ごもる。

責任感の強いありすに仕事の話で返すのは少しズルかもしれない。

「…変な夢を見ただけです」

フィッとこちらから目を逸らすありす。

「…そんなに怖い夢だったのか?」

気になって尋ねてみる。

「プロデューサーには関係っ!……なくもない…ですけど……」

モジモジしながら応えるありす。

……何なんだ…?

「プロデューサーは……」

「なんだ?」

あくまでこちらを向かず、ありすは車のサイドミラーを見ながら尋ねて来る。

「居なくなったりしません…よね…?」

何を言っているんだこいつは。

「もし…誰かが……私が…トップアイドルになって…」

「お前はもう…一人前だ…。俺の助けは必要ないって……」

運転中だ。そんなに派手な行動も出来ない。

眠気予防に車に放り込んで置いたブラックガムをありすの口に突っ込む。

「なんれふかっ!?いきなりっ!?」

まぁ、当然の反応。

ちょっとご飯とかその他諸々で席外します。

「辛っ!?辛いれふこへっ!?」

慌てて包み紙にガムを吐き出すありす。

流石運転のお供、ブラックガムさん、子供には劇物。

「酷いじゃないですかっ!」

自分でも割りと酷いと思う。

「トップアイドルになるんなら余計俺が居なくなったら困るだうが」

「子供は自分のことだけ考えてればいいんだ」

思いっきり不満そうな顔をするありす。

「子供扱いしないでくださいっ!」

俺にもこんな時期があったのかな。

「でも……分かりました」

「私は自分のことだけ考えてます」

「自分のことだけ考えますから……」

ありすは、自分にいいきかせるようにこちらにギリギリ聞こえるような声量で話しかけてくる。

「だから…見ててください…」

「私がてっぺん…取りますから…」

「そうか」

ありすの家の前で車を止める。

だが、ありすは車を降りようとしない。

「わ、私をっ!」

「私をあんまりほっといたらどっか行っちゃうんですからねっ!」

ありすはそう言うと、車のドアを乱暴に開け

『あっ、ありがとうございましたっ!』

こちらに礼をして、家の中に戻っていった。



「私がてっぺん取ります……か…」

ニヤニヤが止まらない。

「……丁寧にお礼してくれるのはいいんだけど…」





「…ドアぐらいはきちんと閉めてって欲しかったな」

俺の目の前ではハンドアのランプが点滅していた。

この安価でありす取っていくとは中々…。
ラスト一人です。

「椅子に座りっぱなしっていうのもな…、>>80

美玲

「椅子に座りっぱなしっていうのもな…、美玲」

体を捻って背中を鳴らしながら美玲に話しかける。

「なんでウチにその話題振るんだよッ!」

まぁ、確かに。

「お前じっとしてるタイプじゃないもんな…そういうの無縁か…」

「オマエすっごい失礼だなッ!」

「この予想の範囲内で返してくるあたりがチョロくて可愛いぞ」

机の下に仕込んでおいた緑茶をおもむろに取り出して音を立てて啜る。

「今どこからお茶出したんだッ!?」

いやぁ、本当にからかい甲斐がある。

「いやぁ、仕込んだ通りに驚いてくれるから美玲からかうの楽しいわ」

「普通そういうこと思っても口に出さないだろッ!?ひっ、ひっかくぞッ!」

「……ふぅ…」

また一口緑茶を口に含んで一息つく。

「一体何に満足しちゃったんだオマエはッ!?」

満足しちゃ駄目なのだろうか。

「腰が痛い」

切実な一言。

「本当にプロデューサーは言い出すことが脈絡ないなッ!」

そうだろうか。そうかもしれない。

そうだ…閃いた。

「美玲ちょっといいか」

「…なんだよ…」

呼べばきちんと反応してくれるしやはりこの娘は素直可愛い。

「俺を踏んでくれ」

わざと色々と言葉を短縮する。

「プロデューサーは変態だったのかッ!?」

目を見開いてドン引きする美玲。

「マッサージだ。寝転がるから背中を踏んでくれ」

「最初っからそう言えよなッ!」

だって素直に言ったら面白くないし…。

「オマエ今面白くないとか考えただろ!」

おぉ、エスパーか。てへぺろ顔を浮かべる。

きらりとによによ顔を研究していた頃の副産物だ。

「怖いからその顔やめろよッ!」

また顔怖いって言われた……。

「本当に凹むなよ!オマエのそういう琴線よく分かんないぞッ!」

これは遠回しに情緒不安定とか言われているのだろうか。

「なんでさっきより凹んでるんだよ!」

……だってぇ…。

「オマエ初めて会った時からそんな面倒くさいヤツだったか!?」

「……あぁ、面倒くさいやつだったな…」

美玲が唐突に遠い目をする。

これ以上美玲の親愛度を落とす訳にもいかない気がした。

「ということで頼んだ」

仮眠用に以前持ち込んだマットの上に背中を向けて寝る俺。

「パートナーの健康を気づかうのも大事か…」

ボソッと呟く美玲。

パートナーか…美玲からそう思われていることが嬉しい。



「こっ、こうかっ?」

美玲は両足で肩甲骨あたりを踏み始める。

「良い感じだ」

十四歳くらいならまだまだ両足で乗られても平気だな。

「…あのさッ!」

「…ウチのこと、どう思う…?」

「…っとと」

美玲がよろけながらも両足を動かして訪ねて来る。

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