勇太「凸守の執事になった……」(186)
~11話・六花が実家へ行った後~
勇太『そんな力はないんだよっ!』
凸守『……!』ビクッ
凸守『うぅ……、ヒグッ、~~グスッ、……エグッ、…………うぅ』
勇太『…………』
凸守『グシュ、ヒック…………ズズ、────です…』
勇太『ん?』
凸守『それでは今からDFMはこのミョルニルハンマーのサーヴァントになるがいいデスっ!』
勇太『はぁ!?』
凸守『マスターこと邪王真眼の監視がなくなった今!DFMを野放しにするのは危険デース!』
凸守『ならばマスターの意思を引き継ぎ、DFMを制御下に置いて不可視境界線を見つけるのが凸守の使命デ~ス!』
勇太『何を言っているんだお前は』
凸守『では明日から覚悟するデスDFM!』タタタッ
勇太『ちょ、おい凸守……!』
~翌日~
勇太「サーヴァントって……何させる気だよあいつ」
一色「よう勇太。どうしたんだ浮かない顔して」
勇太「おはよう一色。いや別にたいしたことじゃない……と思う」
一色「小鳥遊さんのことか?」
勇太「それも心配だが……本当にたいしたことじゃないから気にしないでくれ」
一色「そうか……。ところでお前の後ろで髪の毛ブンブン振り回して着いてくる中坊はいったい何事だ?」
勇太「え?ぁ痛っ!」ゴチン
凸守「まったく。己のマスターの気配にも気づかないとは……たるみすぎデスよDFM」
勇太「いきなり何するんだ凸守……仮にも先輩だぞこっちは」
凸守「マ・ス・タ・ー!こう呼ぶデスよ我がサーヴァント」
一色「マスター?サーヴァント?」
勇太「こっちの話だ。それで朝から何の用だ」
凸守「ん」
勇太「ん?ってなんだこの本の山は」
凸守「この学園の第一級禁猟区にあたる特秘魔道書庫から拝借したマビノギオンたちで今日までに祭壇に戻し供えないと呪いが──」
勇太「はいはい。要するに図書室から借りた本の返却日な」
凸守「そうとも言うデス」
一色「よくわかるなお前」
勇太「な、なんとなくな!……で、その本がどうした。早く返して来いよ」
凸守「はぁ……DFMにはサーヴァントたる自覚が足らないようデスねぇ」
勇太「そんなもの最初からないが」
凸守「黙るデス!こんなに重たいものをミョルニルハンマーの遣い手とはいえこのか弱い凸守に運ばせる気デスか!」
凸守「サーヴァントならば!いや本物の紳士ならばレディーには手を差し伸べるものデスよ?」
勇太「レディーて。というかここまではどうやって運んできたんだよ」
凸守「それは爺やが」
勇太「じ、じいや?」
凸守「いいからっ、とっとと、運ぶデ~ス!」ポカポカ
勇太「わかったから叩くな!──ったく。サーヴァントっていうかただのパシリじゃないかこれ……?」
凸守「何か言ったデスか?マイ・サーヴァント」トテトテトテ
勇太「なんでもないですよ。まい・ますた~」テクテクテク
一色「…………行っちまった」
森夏「何あれ?」
一色「おぉ丹生谷。俺にもよくわからんが勇太が中坊のパシリになってたぞ」
森夏「…………ふ~ん」
勇太「ふぅ。やっと終わった」
凸守「ご苦労だったデースDFM。まぁサーヴァントならば主人を助けるのは当然の務めデスが」
勇太「お前六花にも同じようなことしていたのか」
凸守「元マスターは自分の道は自分で切り開く高潔な精神を持っていました」
凸守「よって些細なことではこのミョルニルハンマーの力を必要としなかったのデス」
凸守「無論凸守もこのような些事は一人で十分だったのデスが」
凸守「まだサーヴァントとして未熟なDFMを教育するために、協力させてあげたのデスよ」
勇太「さいですか。寛大なますたーに感謝いたしますよっと」
凸守「むむ。まぁだサーヴァントとしての自覚が足らないようデスねぇ」
勇太「ほら、ますたー!もう始業のベルが鳴りますよっ。急げ急げ」
凸守「わわっ!どうやら管理局の手で時空を捻じ曲げられたようデス!」
凸守「指導の続きは放課後までとっておいてやるデス!ちゃんと結社に顔を出すのデスよっ」テテテッ
勇太「結社って。部活は無くなったんじゃないのか……」
~放課後~
勇太「ちーっす」
くみん「zzz」
勇太「って。まだ先輩だけか」
勇太「なんだか先輩が邪王真眼を継承して中二病になってる気がしたけどそんなことはなかったぜ」
くみん「zzz……クチュン!……zzz」
勇太「寒そうだな先輩。え~っとどこかに毛布が……あったあった」
くみん「(ファサ)zzz……あったか~い……zzz」
勇太「これでよし。それにしても凸守は中等部だから早く終わってるんじゃ──」
ロッカー「ガっシャー!!<凸守「DFM!!」
勇太「おわぁ!!お、おま、いつからそこにいたんだ!」
凸守「それデスよそれ!」
勇太「ど、どれ?」
凸守「今くみんに毛布をかけてあげたように!その気遣いをもっと凸守にむけるべきデス!」
勇太「はぁ」
凸守「サーヴァントたるものマスターには敬意と誠意をもって慈愛に満ちた接待をするものなのデス。DFMよ」
勇太「別にくみん先輩を特別扱いしてるつもりはないんだけどな」
凸守「と・に・か・く!DFMは凸守にもっと──や、やさ、やさし、く、するべきデス!」
勇太「そう言われてもな。具体的にどうすればいいんだ」
凸守「ふむ。たとえば…………そうデス!今日のミョルニルハンマー。どこか違うと思いませんか?」
勇太「???まったくわからん」
凸守「ぶぁかデぃスか?もっとよく括目するデース!」
勇太「んんむ……(皆目見当もつかないがまがいなりにも女子がわざわざ髪をアピールしてくるってことは───)」
勇太「(何か目に見えない変化を指摘してほしいのではないだろうか───)」
凸守「ドキドキ」
勇太「はっ!(……ふふ、このDFMに解けない謎はない。たどり着いたぞ真実≪オリジナル≫に!)」
凸守「ワクワク!」
勇太「ズバリ!≪キューティクル・エキス≫……もとい シ ャ ン プー を変えたな?」
凸守「…………違うデス」
勇太「あ、あれ?じゃあリンス?」
凸守「違うdeath」
勇太「わかった!シャンプーハットだ!」
凸守「──爆ぜろリアル──弾けろシナプス」
勇太「落ち着け!髪を振り回すな!ちょ、ちょっと待て今当てるから……」
凸守「───バニッシュメント・ディス・ワールド!」ポカポカポカポカポカポカポカポカ
勇太「ぐわあぁぁぁぁぁァァァァァ」
くみん「zzz……乙女心がわかってないねぇ……富樫くん……むにゃzzz」
凸守「まったく。サーヴァントたるものマスターの変化にはつねに気を配るデース」
勇太「結局なんだったんだよ」
凸守「ほらっ」ミョルニルグイーーー
勇太「…………?何か、違うのか?」
凸守「ふんっ、DFMの洞察力もたいしたことないデスね」
凸守「髪を結う位置がいつもより低いでしょう?つまり今日のミョルニルはロングレンジに特化した魔具ということデ~ス!」
勇太「わかるかっ」ペシッ
凸守「デコッ?!」
勇太「くだらん。もう誰も来ないようだし俺は帰るぞ」
凸守「えぇ!?ま、待つデス!」
勇太「まだなにかあるのか?はっきり言って六花がいないんじゃ部活が成り立たないだろう」
凸守「そ、そんなこと!」
勇太「お前一人で中二病を逸らせたって不可視境界線なんて見つかりっこないし」
凸守「……っ」
勇太「お前しか活動してない部なんて廃部になるのも時間の問題さ(くみん先輩も活動?してるけど…)」
凸守「~~~~っっっ!」ポカァ!
勇太「おいっ、いきなり叩……く、…………凸守」
凸守「~~~~、グス、…デス、……ヒグッ、……境界線は、エッグ、あぅ、…………あるデス、~~~~」ポカポカ
勇太「……………………ないよ」
凸守「 あ る デ ス ! ! 」ポカッ
勇太「…………」
凸守「うぅ、ヒッグ、……グシュ、~~~~うぅぅぅ、」
勇太「(俺は、きっと、六花がいなくなって、少しイラついていたんだ)」
勇太「(いや、六花だけじゃなく、みんなと過ごした、この場所が無くなるのが、辛いのかもしれない)」
勇太「(こいつも……寂しいんだろうな)」
勇太「──すまん。悪かった凸守。……だから泣かないでくれ」
勇太「ちゃんと来るよ。部活」
勇太「俺にできることなら何でもするからさ」
凸守「グスッ、ヒック…………本当に?」
勇太「ああ。本当だ」
凸守「……………………ふふっ」
勇太「(よかった。機嫌なおしたみたい──)」
凸守「────本当に何でもしてくれるんですね?」
勇太「 え 」
くみん「zzz……ご愁傷さま……zzz」
勇太「それからというもの」
~休み時間~
凸守「DFM!」
一色「おぉ中坊。また来たのか」
勇太「……今度はなんだ」
凸守「あからさまに嫌な顔をしていますねぇ」
勇太「当たり前だ。たびたび押しかけてきて宿題やら日直の手伝いやら面倒なことを手伝わされてるんだぞ」
凸守「…………何でもするっていったのに」シュン
一色「ん?何でも?」
勇太「わかった!わかったからそのことはここで言うな!」
凸守「わかればいいのデ~ス!さすがはマイ・サーヴァント」
凸守「では早速この忌まわしき古文書≪マイノリティ・リポート≫を済ませてしまうデス」
勇太「……結局宿題の手伝いか」
一色「なんだか大変みたいだなぁ」
~昼休み~
勇太「どうもー。凸守いますかー?」
モブ「あ、凸ちゃんの……凸ちゃ~ん、彼氏さん来たよー」
凸守「かっ、彼……!そんなんじゃないデース!何回言わせる気デスかっ」ワタワタ
モブ「本当ですか~?」
勇太「ああ…。ただの部活の先輩 凸守「 サ ー ヴ ァ ン ト っ!」 ……だそうだ」
モブ「それはそれで意味深……まぁ後は二人で楽しんでくださ~い」
凸守「まったくもう……それよりDFM!遅いですよ!」
勇太「これでも急いできたんだよ。というかどうして毎日一緒に飯を食う必要があるんだ」
凸守「サーヴァントがマスターの膳のお供をするのは当たり前でしょう?」
凸守「いつ刺客が毒を盛ってくるかもわからないデスしね」
凸守「というわけで毒味デスDFM!はい、あ~~~……」
勇太「そんなわけあるかっ」ペシッ
凸守「デコォ?!」
~部活~
勇太「ちーっす……ってまたお前だけか」
凸守「来たデスねDFM。……確かに最近はくみんもあまり居ないデスね」
凸守「(気を遣わせてしまったのでしょうか……だとしたら悪いことをしてしまいました)」
凸守「そんなことより!例のごとく不可視境界線を探しに行くデスよDFM!」
勇太「はいはい。仰せのままにまい・ますたぁ」
凸守「と、その前にっ。ミョルニルハンマーが崩れてしまったデス。直してくださいDFM」
勇太「それは構わないけど……普通女子は髪を異性に触れさせたくないもんじゃないか?」
凸守「ただの髪ではなくミョルニルハンマーデス!これは魔力に耐性がないものが触れると大惨事に~~~」
勇太「あーそういう設定はもういいから。ほら梳くぞ」
凸守「むむぅ。…………DFMはサーヴァントだから特別なんデス」
勇太「そういうもんかね」
凸守「それに凸守は自分でミョルニルを結べませんから」
勇太「え?じゃあ普段は誰にしてもらっているんだ」
凸守「それは婆やが」
勇太「ば、ばあや?」
凸守「……なんだか髪を梳くのが様になってるデスねDFM」
勇太「ん?ああ。昔はよく樟葉の髪も梳かしてたからな。今はやらせてくれなくなったけど」
凸守「……じゃ、じゃあ。これからは」
凸守「ミョルニルの整備はDFMに任せるデス。これから…………ずっと」ゴニョゴニョ
勇太「アホ。自分の髪くらい自分で結えるようにしとけ」
凸守「~~~っっっ」
凸守「あーあー!なんだか喉が渇いたデース!ついでに紅茶もいれるデス、マイ・サーヴァント!」
勇太「調子にのるな」ペシッ
凸守「デコス?!」
~放課後~
勇太「そろそろ帰るか」
凸守「そうデスね。今日はこれ以上の成果は望めそうにないデスし」
勇太「(いつもどんな成果がでているっていうんだ)」
凸守「今なにか失礼なことを考えたデスね」
勇太「滅相もございませんまい・ますたー」
凸守「ふんっ。では今日もエスコートを頼むデス、マイ・サーヴァント」
勇太「すぐそこの駅まで送るのにエスコートも何もないだろ」
凸守「とんだ甘ちゃんデスねぇDFMは」
凸守「常日頃から命の危機に晒されているこのミョルニルハンマーは」
凸守「いついかなる瞬間も外敵からの急襲にそなえ気を張り巡らしているのデス」
凸守「それは我がサーヴァントであるDFMも同じことデスよ?」
勇太「まぁ確かに……こう暗くなってからお前を一人で帰すのは心配だけどさ」
凸守「わかればいいのデ~ス!ではでは……」ギュッ
勇太「…………この手をつなぐのにも意味はあるのか」
凸守「もちろん!こうしてお互いの魔力を高めあっているのデスよ?」
勇太「───はいはい」
勇太「(なぜだかわからないけど)」
勇太「(こいつと手をつなぐと、少し、安心する)」
勇太「(人肌が、恋しかったのかもしれない)」
凸守「ほらっ行くデスよ!」
勇太「ああ……そうだな」
凸守「ふふっ」
森夏「……………………」
~数日後~
凸守「──っと。今日はこれくらいで勘弁してやるデースDFM。ではまた黄昏時に!」
勇太「放課後な。それじゃまた後で」
勇太「ふぅ。なんだかんだ慣れてきたな、あいつのサーヴァントとやらにも」
森夏「とーがしくん」
勇太「おわっ!……ってなんだ丹生谷か」
森夏「なんだとはなによ。つれないわね」
勇太「そっちこそつれないじゃないか。最近はまったく部活にも顔を見せないでさ」
森夏「べっつに~。二人の邪魔しちゃいけないと思ってね~」
勇太「凸守のことか?邪魔どころかあいつの相手を代わってほしいくらいなんだが」
森夏「そうなの?それにしては随分楽しそうだったけど」
勇太「楽しいもんか。宿題手伝わされたり昼飯に無理やり付き合わされるんだ」
森夏「あの娘ほど頭が良かったら宿題に手伝いなんていらないと思うけど」
森夏「それに私たちの黒歴史と違ってぼっちってわけでもなさそうだから、お昼の相手にも困らないはずよ」
勇太「それは……」
森夏「本当は富樫くんもわかっているんでしょう?」
勇太「……なんか怒ってる?」
森夏「あら。どうして?」
勇太「いや、なんとなく、不機嫌そうに見えるんだが……」
森夏「へぇ~。私の気持ちはわかるんだ~」
森夏「───小鳥遊さんの気持ちはわかってあげられないのにね……」
勇太「……っ」
森夏「ま。私には関係ないけど。せいぜい浮気者の富樫くんはあの中坊とよろしくやってなさいよ」
勇太「俺と凸守はそんなんじゃ……!」
森夏「あーあー聞こえなーい。それじゃあね~」
勇太「待てよ……おぃ……!」
勇太「…………」
勇太「───やっぱりいけないのかな……こんなこと…………」
・・・・・・
凸守「DFM!待ちくたびれたデスよ」
勇太「……ああ、すまない」
凸守「まったく。いまだにサーヴァントとしての自覚が足らないんデスから。困ったものデス!」
勇太「…………」
凸守「……?まあ御心深いマスターである凸守は臣下の素行不良ぐらい大目に見てあげるデース」
勇太「…………」
凸守「……???さ、さて今日もはりきって不可視境界線の謎を──」
勇太「───凸守」
凸守「は、はひ?」ビクッ
勇太「もうやめないか」
凸守「………え」
凸守「………え」
凸守「やめ、る、って、なにを…」
勇太「このマスターとサーヴァントの契約をだ」
凸守「~~~なんでデスか!」
凸守「今まで通りだったじゃないデスか!」
凸守「邪王真眼とDFMの関係が、私に置き換わっただけで、上手くやれてたじゃないデスか!」
勇太「……それがいけないんだ」
凸守「なっ……なんで……」
勇太「お前も、俺も、六花がいなくなって寂しくなって…」
勇太「それでポカンと空いた穴を埋めるために無意識に」
勇太「──こんな傷を舐めあうような関係が間違っているんだ」
凸守「~~~っっっ」
勇太「…………」
凸守「~~~ぅデス…」
勇太「え?」
凸守「違うデス!!……ぅしてェ……どうしてっ、わかってくれないんデスか……!」
凸守「邪王真眼が……!……小鳥遊先輩がいなくなったせいじゃ…………ないっ……!」
凸守「わ、私が!~~~っ」
凸守「───富樫先輩……何でもするって言ってくれたじゃないですか…………!」
勇太「…………すまない」
凸守「…………」
勇太「本当に悪いと思ってる。……でもやっぱりやめようこんなこと」
凸守「…………」
勇太「……凸守」
凸守「……………………フフッ」
勇太「………?」
凸守「………ふふっ。フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ……」
勇太「~~~っ?」
凸守「あ~。なんでもっとはやくこうしなかったんだろう」
勇太「で、凸守さん???」
凸守「調教します」
勇太「はぃ?」
凸守「爺や!婆や!」
爺・婆「「ほっほ」」シュタ!
勇太「はぃ?!」
凸守「連行」パチン
爺・婆「「ほっほ」」ガシィ!
勇太「はぃぃぃ?!!」
凸守「例の手筈でよろしくお願いします」
爺・婆「「ほっほ」」コクン
勇太「ちょ!ちょっと待て凸守!これはいったいどういうことだ!!誰なんだこの人たちは!!」
凸守「大丈夫ですよ先輩っ。すぐ楽になりますから」
勇太「どういう意味だ!?おいっ、離せ!離してくれ!」
凸守「それではあとは二人に任せますので。先輩しばしお別れですね……寂しいです」
勇太「待て、待ってくれ凸守!……くそっ行ってしまった」
勇太「ぜんっっっぜん状況についていけない!えぇいなんて力してるんだこのジジババどもはぁ!」
勇太「……あ、あのう?離してはくれませんか?というか助けてくれませんか?」
爺「ほっほ」
勇太「お願いします!何されるかわからないけど取り返しのつかないことになる予感がする!」
婆「ほっほ」
勇太「ああ引っ張らないでぇ!離せぇ!~~~わ、我が名はDFM!貴様らなど容易く灰に……」
爺・婆「「ほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほっほ」」
勇太「ぅわあああぁぁぁァァァ!!たすけてくれえええぇぇぇェェェ!!!」
~数日後~
森夏「(……富樫くんここ最近ずっと欠席)」
森夏「(もしかして……ちょっと言い過ぎちゃった?)」
森夏「(でも富樫君がふわふわと中途半端なのがいけないのよ)」
森夏「(一応釘を刺したわけだし、あれ以上中坊と進展することはないでしょうけど)」
森夏「念のためもう少し様子見るかぁ。はぁ~あ。私ってほんとおせっかい焼きよね」
一色「何がだ?」
森夏「あんたには関係ないわよ。それより富樫くんまだ休みなの?」
一色「あぁ勇太な。どうも家にはいないらしいぞ」
森夏「は?」
一色「なんかな、あいつが休み始める前に俺のとこに電話きてよ」
一色「相手は知らないオッサンだったけど『富樫君はしばらく君の家に泊まっていることにしてほしい』って言ってさ」
一色「勇太の家にばれないよう口裏あわせてるってわけよ」
森夏「……は?え、ちょ?はぁ?」
一色「ん?どうした」
森夏「どうしたじゃないわよハゲ。あんたそれめちゃくちゃ怪しいじゃない」
一色「でも安全だとも言ってたし勇太とも親しいって……」
森夏「なんでそんなこと真に受けてんのよワカハゲ!誘拐だったらどうすんのよ!」
一色「えぇ~考えすぎじゃないか?それにすぐ返すって……」
森夏「あんたが考えなさすぎなのよバカハゲ!!もう話してらんないわ……少しでも情報を集めないと」
一色「大げさだなぁ。───あれ。勇太じゃん」
森夏「へっ?どこよ」
一色「ほら……校門の……とこ……ろ……?」
森夏「あらほんと……よかっ……た…………?」
・・・・・・
勇太「早苗お嬢さま。今日は寒さが厳しくお体が冷えるでしょう。これをひざ掛けにお使いください」キリッ
・・・・
凸守「まあ可愛らしいブランケット。ふふっ。ありがとうございます勇太さん」ストレートファサァ
勇太「お気に召されたようでなによりです。では本日のスケジュールを確認いたします」
凸守「大丈夫です。今日一日の予定は頭に入っています」
勇太「失礼いたしました。さすがは早苗お嬢さまです」
凸守「もう。そんなたいしたことではありませんよぅ。それよりちゃんと……」
凸守「……休み時間も、お昼休みも、部活動も、放課後も───」
凸守「───ずーっと、一緒にいなくちゃ……困りますからね私」
勇太「心得ておりますとも。…おや、もうHRの時間ですね。お嬢様の教室までご一緒させていただきます」
凸守「はいっ」
森夏「…………………何あれ」
一色「…………………さぁ?」
~休み時間~
凸守「勇太さん。試験も近いので勉強を教えてほしいのですが……」
勇太「それでは僭越ながらこの富樫勇太が責任をもって監督させていただきます」
凸守「ありがとうございますっ。じゃあ早速ここの問いを…」
勇太「…………………………………………?????」
凸守「勇太さん……?」
勇太「……も、申し訳ありませんお嬢さま……。不肖たる富樫勇太ではお嬢さまの指導係は役不足だったようです……っ」
凸守「あぁ気を落とさないで!ちなみに役不足の使い方も間違っています」
勇太「聡明なお嬢さまの執事にあるまじき失態……!なんとお詫びすればいいことかッッッ」
凸守「いいんです。ちょっとお馬鹿でも勇太さんは私の最高の執事ですよ。なんなら私が勉強を教えてあげます」
勇太「はぅああ……!なんともったいなきお言葉!愚鈍なわたくしめに救いの手を差し伸べるとは現生に降臨なされたまさに女神!」
凸守「もうっ大げさなんですから。ほら、ここはこうやって~~~」アーダコーダ
勇太「ふむふむ~~~なるほど~~~ほうほう~~~」マッタクワカラン
モブ「凸ちゃん今ハーバード大の過去問なんてやってるんだ~。すご~」
~昼休み~
勇太「お嬢さま。本日のランチは海鮮風ペンネアラビアータでございます」
凸守「やったぁ。パスタは大好物ですっ」
モブ「わ~凸ちゃんいいなあ。お昼ごはん豪華~。わたし今日お金忘れてパン一個だけだよ~」
凸守「それはいけません。よろしかったらご一緒にどうぞ」
モブ「え?いいの!」
凸守「ええ。困ったときはお互い様ですから。構いませんね?」
勇太「もちろん。今日は作りすぎてしまいましたから助かります。お先にスープをどうぞ」
凸守「ふふっ。ありがとう」
モブ「あれ?ポッドにパスタが入ってると思ったのに…。じゃあパスタはどこに?」
勇太「ただいまお持ちいたしますので」
凸守「特別に許可をいただいて家庭科室で調理しているんですよ。産地直送ですっ」
モブ「お金持ちってすごい」
~部活~
凸守「……今日も誰も来ませんね」
勇太「きっと皆さんお忙しいのでしょう。けれどご安心ください」
勇太「まだ未熟なれどこの富樫勇太はお嬢さまの執事にして所有物」
勇太「あなたの傍を一時も離れたりはしません」
凸守「──ふふっ。一時も?じゃあこれからは授業中も傍にいてもらいましょうか」
勇太「そ、それは~~~。お嬢さまが望むのであれば……」
凸守「じょーだーんです。……しかし誰もいないというのであれば好都合ですね」
勇太「はっ。それでは…」
凸守「ええ。≪封印≫を解きましょう」
凸守「……と、その前に──」
勇太「お嬢さま。御髪を整えます」
凸守「さすがは私の執事っ。よろしくお願いしますね」
勇太「では失礼いたします」ファサァ
凸守「…………ふふっ。もうすっかり手慣れたものですね」
勇太「いえ。お嬢さまの美麗であられる御髪を傷つけぬよう常に細心の注意をはらっております」
凸守「それはもう感謝していますよ?」
勇太「執事として当然のことをしているまでです。……よし。終わりましたよお嬢さま」
凸守「えぇ?もう?……勇太さんに髪を結われてる時間が好きなのにな。なんというか、心が落ち着くというか…」
勇太「私もお嬢さまの御髪に触れている時間が大好きです。心が洗われます」
凸守「ふふっ。───では。気を取り直して」
勇太「かしこまりました」
凸守「──爆ぜろリアル」
勇太「──弾けろシナプス」
凸・勇「「──バニッシュメント・ディス・ワールド!!」」
凸守「…………フフ」
勇太「…………ふふふ」
凸・勇「「ふぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」
凸守「フ~っ。ど~うデスか?久しぶりに顕現した気分は。DFM?」
勇太「ふん。相も変わらず瘴気にあふれて息苦しいところだ。ミョルニルハンマーの遣い手よ」
凸守「仕方のないことデス。黒炎龍を取り込んでいるその体には現世の空気は生温いのデスよ」
勇太「黒炎龍について随分と知った風な口をきくではないか。この力……その身をもって教えてやろうか」
凸守「おぉーっと≪契約≫を忘れないでほしいデスねぇ。今の私たちの関係は……マイ・サーヴァント?」
勇太「ちっ。忌々しい≪契約≫だ……マイ・マスター」
凸守「わかればいいんデスよ。……今は亡き邪王真眼の代わりに魔力を供給しているこの凸守に感謝してほしいデス」
勇太「その魔力を回復するために魔力の源泉≪エーテル・ポイント≫を探しているのだろうが」
凸守「問題ないデース!昨晩エリアC-5にて大規模な魔力の奔流を感知したデスよ」
勇太「ほう……?」
凸守「おそらく間違いないでしょうが……管理局の張った罠とも考えられるデス」
勇太「知るか!邪魔するものはすべて屠るまで!その場所一帯を塵も残さず焼き払ってやる!!」
凸守「さすがはDFM。≪焔帥≫の冠は伊達ではないようデスねっ」
勇太「ほう。いま俺はそう呼ばれているのか。まぁ長い間あらゆる戦乱を荒らしてきたから通り名がいくつあっても不思議ではないが」
凸守「いえ。今私がつけました」
勇太「…………。──≪焔帥≫か。気に入ったぞマスター」
凸守「!……ふふっ。そうと決まればさっさと出陣デス!ついてくるデス、マイ・サーヴァント!」
勇太「仰せのままに、マイ・マスター」
凸・勇「「ふぁっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」」
ロッカー<くみん「zzz……出るタイミング失っちゃったよぅ……zzz」
~放課後~
凸守「ふう……。なんとか魔力を回復することができたデスね」
勇太「ああ……だが想定外の痛手も受けたがな……」
凸守「管理局の妨害までは読めていましたが……まさか学年主任≪ベルフェゴール≫という超大物がくるとは」
勇太「おかげで反省文≪リグレクト・アーカイブ≫なんて呪いを受けるはめに……」
凸守「まぁまぁ。凸守もマスターとして解呪に付き合うデスから」
勇太「ふん。こんなチャチな呪い俺一人で十分だがな。……そろそろタイムリミットのようだ」
凸守「デース。DFMという強大な魂を顕現させられる時間は限られているデス。凸守の力が足らないばかりに……」
勇太「案ずるな。不可視境界線を見つければ俺たちも自由に顕現できる」
勇太「それまでは仮初の関係だろうとお前の傍にいてやるさ……マイ・マスター」
凸守「……っはいデス!」
勇太「では───」
凸守「───≪封印≫ッッッ」
勇太「──はっ」
凸守「勇太さん。もう大分暗くなってしまいましたよ」ストファサ
勇太「……ええ、そのようですね。帰りましょうお嬢さま」
凸守「はいっ。しっかりエスコートしてくださいね」
勇太「お任せください。お嬢さまのためならばたとえ火の中水の中草の中~~~」
凸守「もうわかりましたからっ。お願いしますよ……私の執事」ギュッ
勇太「仰せのままにご主人様」ギュッ
森夏「…………………………………………」
~数日後~
森夏「(ここ最近の言動であの中坊の執事ということが定着してきた富樫くん)」
枚方「おはよー富樫くん」
勇太「ああ、おはよう」
子子子子「富樫くーんあたしの執事もやってよー」
勇太「はは……勘弁してくれ」
森夏「(ただしクラスでの立ち振る舞いは今まで通り)」
一色「よぅ勇太。いきなりで悪いが宿題見せてくれ」
勇太「まったくお前は……」
森夏「(けどあの中坊のこととなると)」
一色「そういえばお前いつまであの中坊の執事なんて──」
勇太「 お 嬢 さ ま を 中 坊 だ な ん て 呼 ぶ な 」
一色「──ご、ごめんなさい……?」
森夏「はぁ~…(何があったかわからないけど完璧に洗脳されてるわね)」
森夏「(問題は富樫くんじゃなくて……中ぼ……じゃない。凸守のほうにあったか)」
~休み時間~
モブ「凸ちゃ~ん呼んでるよ~」
凸守「!勇太さ……丹生谷先輩」
森夏「なによ。あんたまで嫌な顔しないでくれる?」
凸守「……何の用ですか。わたし人を待っているので……」
森夏「富樫くんならクラス委員の仕事押し付けたから来ないわよ」
凸守「~~~っ」キッ
森夏「ってことで今時間空いてるわよね。……ちょっと来てくれる?」
森夏「久しぶりに部室来たわ~。ここなら誰も来ないわよね」
凸守「…………」
森夏「なんだかおとなしくなっちゃって……中二病はもうやめたの?」
凸守「部活に来てない人には関係ありません」
森夏「生意気なのは変わらないわね。休み時間も少ないし手短に言うわ」
森夏「富樫くんに何をしたの?」
凸守「別に。何も」
森夏「嘘。面倒くさいからさっさと全部話してくれない?」
凸守「本当に私は何もしていないんですよ」
森夏「『私は』ね……あんた結局富樫くんをどうしたいのよ」
森夏「最初は二人して小鳥遊さんを埋め合わせてるのかと思ってた」
森夏「それがだんだんと依存に変わっていって……私は富樫君を諫めた」
森夏「……その結果がこれ?執事?あんた何考えてんの」
凸守「…………でも勇太さんは現状に満足しています」
森夏「そう刷り込んだんでしょ。満足してるのはあんただけ」
凸守「先輩に私たちの関係をアレコレ言われる筋合いはありません」
森夏「あるわよ。だって私は……小鳥遊さんの友達なんだから」
凸守「……っ」
森夏「だいいち小鳥遊さんのことを放っておいてこんな関係になって……あんた満足してるの?」
森夏「あんたは小鳥遊さんの……友達じゃなかったの?」
凸守「…………今は契約が切れた元マスターです。もう休み時間が終わってしまうので失礼します」
森夏「ちゃんと真正面からぶつかんないとその人には伝わらないわよ」
凸守「……?」
森夏「富樫くんのこと好きなんでしょ?」
凸守「~~~だから!先輩にはっ、関係ないです!」ダダダ!
森夏「……ふ~む。まったく手のかかるやつばっかりなんだから」
くみん「zzz……なんだか楽しくなってきたねぇ……zzz」
森夏「いたのアンタ?!」
凸守「はぁ……はぁ、はぁ、……富樫先輩が好きかどうかなんて、そんなの……」
凸守「───わかんないデスよぅ……」
凸守「…………ますたぁ……」
~放課後~
勇太「ふぁっはっはっは!ついに……ついに会得したぞ黒炎龍最終秘奥義『○王炎殺黒龍波』をッッッ!」
勇太「この力さえあれば…ククク、不可視境界線を見つける日も近い……!」
勇太「そうなればマスター、いやミョルニルハンマーの遣い手よ。貴様とのお遊びもこれまでよ!」
凸守「!!……そ、そうです……あ、いや、そうデスね……」
勇太「……どうした。いつもの煩わしいくらいの覇気を感じんぞ」
凸守「な、なんのことデスかっ。凸守はぴんぴんしてるデスよ。ホーレホーレ!」ブンブン
勇太「振るなうっとうしい。……ふん、別状ないなら構わんがな」
凸守「あれれ~?もしかして心配してくれてるんデぃスかぁ~?あの≪焔帥≫ともあろうものが」
勇太「貴様も気に入ったのかそれ…。まぁ仮にも我が主人だからな。そこらで野垂れ死なれてはかなわん」
凸守「そ…そうデスか……。それはいい心がけデース……」
勇太「……おい。今すぐ俺を≪封印≫しろ」
凸守「え?」
勇太「早く!」
凸守「で、デ~スっ!───ふ、≪封印≫!!」
勇太「……………………はっ!?お嬢さま!大丈夫ですか!?」
凸守「何がデス……はわわ、違、えっと、何が……でしょうか」
勇太「どこか体調が優れないのでは!?」
凸守「……大丈夫ですっ。ほらっ私ぴんぴんしてますよ!……あ!っとと」ブンブン……グィ~ファサァ
勇太「ですが……お嬢さま。お気に召さないことがあればこの富樫勇太になんなりとお申し付けください」
勇太「私にどこか不備があるというならば全力で改善いたします」
凸守「そんな!勇太さんは何も悪くありません!」
凸守「そう、勇太さんは……何も…………」
勇太「…………お嬢さま。帰りましょう」ギュッ
凸守「あ……」
勇太「帰ったらすぐにお嬢さまの好きな蜂蜜入りホットココアを用意します」
凸守「…………」
勇太「そういえば昨日新作のクッキーを作りました。それもご一緒に」
凸守「…………グスッ」
勇太「海外から取り寄せたアロマも焚きましょう。きっと疲れもお悩みも吹き飛びますよ」
凸守「……エッグ、ヒック……えぇ。きっと」
勇太「ご安心ください。お嬢さまの執事たる富樫勇太がずうっとお傍にいますよ」
凸守「グシュ……はぃ……ウゥゥ、エグッ…………ふふっ……ズズッ」
──────
────
──
~翌朝・凸守邸~
勇太「お嬢さまが風邪をっ?!」
爺「ほっほ」
勇太「心配するなと言われてもっ!……くそ!昨日からお嬢さまの様子がおかしいことに気づいていたというのに!」
爺「ほっほ」
勇太「いいえ責任は私にあります。この富樫勇太一生の不覚ッッッ!今日はお嬢さまの傍で不寝の番をさせていただきます」
爺「ほっほ」
勇太「そんな!学業を疎かにすることなどお嬢さまに一人で辛い思いをさせてしまうのに比べたらどうということはありません!」
爺「ほっほ」
勇太「しかし!……いえ、もちろん執事長たちのことは信頼しております。出過ぎたまねを致しました……」
prrrr!
勇太「はっ!これはお嬢さまから渡された執事専用のピッチ!」
凸守『……勇太さん?』
勇太「はいっお嬢さま!お体のほうはいかがですか?!」
凸守『……ふふっ。たいしたことはありませんよ。少し熱っぽいだけですぐに治ります』
勇太「そうですか……安心致しました。では今日の学校が終わり次第ただちに向かいますのでどうかご養生を」
凸守『いいえ。その必要はありません』
勇太「な……何故ですか!?」
凸守『最近はずっと勇太さんに付き合ってもらっていましたから……たまにはゆっくり休んでもらおうと思って』
勇太「必要ありません。お嬢さまの傍にいられることがなにより安らぐのです」
凸守『ダ~メですっ。勇太さんに風邪を感染させてはいけませんから』
勇太「ですが……お嬢さまの傍にいると誓ったばかりなのに……」
凸守『もちろん?私の風邪が治ったらまたうぅ~んと付き合ってもらいますからねっ!覚悟してくださいよ?』
勇太「…………かしこまりました。この富樫勇太、全身全霊をもって休暇を堪能させていただきます」
凸守『ふふっ。……あ、それと』
勇太「?」
凸守『───フーフッフッフ。富樫勇太の奥に眠るDFMよ。貴様も主人の監視がないからといって油断するなデ~ス』
凸守『DFMの魔力はすでに記憶しているんデスから、何をしていてもすぐに感知できるデース!』
凸守『いいデスね?不穏な動きを見せたらミョルニルの鉄槌がくだるデスよ!』
勇太「───ふん。肝に銘じておくとしよう……………………はっ?!私はなにを……」
凸守『───ふふっ。では勇太さん。また今度』
勇太「はっ。お嬢さまの傍に戻られる日を一日千秋の思いで待っております」
pi!
爺「ほっほ」
勇太「はい……わかりました。お嬢さまが快復したらすぐにご連絡をお願いします。執事長」
婆「ほっほ」
勇太「餞別……ですか?これはお嬢さまに……わかりました。ありがたくいただきます。メイド長」
勇太「では。行ってまいります…………お嬢さま」
~数日後~
森夏「(中坊……凸守が休んでいるここ数日。富樫くんはあからさまに落ち込んでいる)」
勇太「…………」ポケー
一色「勇太!悪いんだけど宿題見せてくれるか?」
勇太「………おぉ」ポケー
一色「サンキューなっ。……って、あれ?おーい勇太真っ白だぞー」
勇太「………あぁ、やるの忘れてた」ポケー
一色「大丈夫かお前……なんだかずっと呆けているけど」
勇太「………おぉ」ポケー
一色「やっぱあの中学生のことか」
勇太「……お嬢さまはすぐに戻ってくる」
森夏「(かと思えばいきなりそわそわしだす)」
勇太「…………っ」ソワソワ
一色「勇太ー。飯食おうぜー」
勇太「お、おう」ソワソワ
一色「へへーん。今日は奮発してチキンカツサンドだ。うまそ~だろ~」
勇太「な、なぁ一色。それもいいけどこのフィラ鴨のステーキ食べてみないか……?今日はうまくできたんだ」ソワソワ
一色「おおぅ旨そうだな~。でもいいのかこんな高そうなの」
勇太「あぁ。ほら……一色…………あ~~~ん……」ソワソワ
一色「ゆ、ゆうたぁ……?!」
ザワ・・・ ザワザワ・・・ ザワ・・・ ザワザワ・・・
森夏「(……見てられないわね)」
ゴチンッ!
勇太「あでっ?!」
森夏「まったく。どうしたっていうのよ?さっきから見てれば落ち込んだりわさわさしたり。挙動不審で気持ち悪いっての!」
勇太「い、いや……それがだな」ワサワサ
勇太「ずっとお嬢さまのお世話をしていたからなのか……なんかこう……無性に誰かの世話をしないと気がすまないんだ」
森夏「(…………重症ねこれは)」
森夏「とりあえず一色はやめておきなさい。誤解されるわよ」
勇太「それは困るな……。ああ、お嬢さま……」
森夏「そんなにあの中坊 勇太「 早 苗 お 嬢 さ ま 」 ……早苗ちゃんはまだ具合が悪いのかな~?」イラッ
勇太「いや、もう風邪自体は治ったらしいが……。なぜかまだ会わせてもらえないんだ……」
森夏「ふ~ん……(前言ったこと気にしてるのかしらね)」
勇太「休暇を満喫するとはいっても現時点で日常生活に支障がでている……ああどうすればいいんだ……」
森夏「じゃあ……お嬢さまとやらが戻ってくるまで代わりを見つけたら?(というかあんたは小鳥遊さんを気にかけなさいよ)」
勇太「代わり…?」
森夏「たとえば……樟葉ちゃんだっけ?妹さんとか」
勇太「樟葉はもとより家族は家事スキルがアップしたって大喜びしてるよ」
森夏「そ、そう。だったらくみん先輩とか」
勇太「先輩は手がかからなそうで……」
森夏「そうね……。ん~じゃ~……一色はマズイし………私?……なぁ~んて」
勇太「──丹生谷!」
森夏「へぇ?!」
勇太「お前ブレザーの裾がほつれてるじゃないか!すぐに直さないと!」
森夏「え?あ、ほんとだ。いや、でもこんなの帰ってからでも……」
勇太「い~やダメだ。服の乱れは心の乱れ!そうですよね執事長!」
森夏「執事、長?」
勇太「待ってろ、おれ今裁縫キット持ってるから」
森夏「そ、そう?じゃあ……お願い 勇太「ほら直った」 …って速っ?!」
勇太「ん?丹生谷の手もの凄く冷たいぞ」
森夏「え?ああ、私冷え症だから………ってなにどさくさにまぎれて手握ってんのよ」
勇太「そうだ!今日のスープは生姜を使っているんだ。ほら、暖まるぞ」
森夏「ど、どうも…………何これ旨すぎ……」グビグビ
勇太「ははっ。そんながっつかなくてもまだおかわりあるぞ。せっかくだからこのメイド長と作ったスコーンも味見してくれ」
森夏「め…メイド長?…………何これやめられない……」サクサク
勇太「あ~あ~。ほら、口元に食べかすが……顔あげろ」
森夏「んっ」フキフキ
森夏「……って何してんのよ変態!」
勇太「変態って。ナプキンで口拭っただけだぞ」
森夏「でも…!ここ教室……っ!」
ザワ・・・ ザワザワ・・・ ザワ・・・ ザワザワ・・・
森夏「うぅぅ……(視線が痛い……)」
勇太「はぁ~なんだか落ち着いてきた。丹生谷って意外と世話のしがいがあるやつだったんだな」
森夏「嬉しくないわよそんなの……。あんたいつもこんなことしてんの……?」
勇太「まあおおむね。しっかり者のお嬢さまだけどああ見えておっちょこちょいな一面もあるからな。俺がサポートしないと」
森夏「あんたにはあの娘がどんなふうに見えてるのよ……」
勇太「それはもう可憐で聡明で気高くてでも儚くて~~~」アーダコーダ
森夏「はぁー……(富樫君はこんな調子だし)」
森夏「(どうすればいいのかしら)」
森夏「(…………でも富樫くんの執事……………………ちょっといいかも)」
くみん「zzz……嬉しそうだねぇモリサマちゃん……zzz」
~凸守邸~
ビュールルルー
凸守「……揺れる。凸守は風に吹かれて揺れるデス……」
凸守「…………いいえ、揺らいでいるのはそう……心」
凸守「……何を言っているデスか私は」
凸守「…………」
凸守「富樫先輩……今頃何してるかな……」
凸守「………小鳥遊先輩も……マスターもこんな気持ちだったんデスかね……」
凸守「また、マスターと、不可視境界線を探したい、デス」
凸守「……でも、DFMと、富樫先輩と離れるのも、嫌、……」
凸守「そういえば……マスターと、DFMの恋人の契約は……どうなったのかな」
凸守「遠距離恋愛…?それとも……自然消滅ってやつデス……?」
凸守「……やっぱり、マスターは……小鳥遊先輩が、今の私たちのことを知ったら……嫌だろうな……」
凸守「~~~っ」
凸守「なんで……!今まで通りの……!時間が続かなかったんデスか……っ」
凸守「マスターとはしゃいで……くみんが寝てて……ニセサマーが騒いで……そしてDFMが仲介して」
凸守「……こんな作り物の関係なんかじゃ……嫌デス」
凸守「……でも……だって、マスターがいなくなったのに……DFMまでいなくなるのは、もっと嫌デス……」
凸守「…………最初はそういう気持ちだったはずなのになぁ」
凸守「なんで…………好きになっちゃうんデスか……ぶぁかデぃスか……」
コンコンッ
凸守「はい。どうぞ」
爺・婆「「ほっほ」」
凸守「え……勇太さんが?……でも」
爺・婆「「ほっほ」」
凸守「───そうですよね。わかりました。すぐに行きます」
爺・婆「「ほっほ」」
凸守「ええ。ありがとう。爺や、婆や」
凸守「勇太さんっ」
勇太「嗚呼……ッッッ!やっと、やっとお嬢さまのご無事な姿を見ることができて……私は……私は……ッ!」
凸守「もうっ。相変わらずオーバーなんですから。たいしたことないと言ったでしょう」
勇太「いえ。お嬢さまに会えないだけで寂寥感が募り息が次げない日々が続きましたとも」
凸守「そんな様で休暇は過ごせたのですか?ちゃんと休んでと言ったのに」
勇太「はい。しかし体を動かさないと落ち着かない体質になってしまったようで……」
勇太「ついつい丹生谷さまの世話を焼いてしまいました。ご迷惑にならなければよかったのですが」
凸守「へぇ~丹生谷先輩に………むぅぅ。あのニセサマーめ……」
勇太「はい?」
凸守「いいえ?なんでもありませんよっ?───それより我が執事」
勇太「はっ。なんなりとご主人様」
凸守「では。……少し散歩に行きましょうか」
~公園~
凸守「うぅぅ~……ひ、冷えますね……くちゅん!」ブルブル
勇太「いけませんお嬢さま!では私のコートを…」
凸守「それでは勇太さんが寒いでしょう?……だから」ウデクミッ
勇太「お嬢さま?」
凸守「今だけ……このままでいさせてください」
勇太「……かしこまりました」ギュッ
凸守「ふふっ。……ところで勇太さん。そのバスケットはいったいなんでしょう?」
勇太「ああ。せっかくですのでお嬢様と離れている間に作ったマカロンを持ってまいりました」
勇太「丹生谷さまもお気に召されたようですので味は保証できますよ」
凸守「まあまあそれはそれは…………ニセサマーはあとできっちり問い詰めなくてはならないようデ~スね……」
勇太「え?」
凸守「いえいえ。喜んでいただきますっ」
勇太「温かい紅茶もありますよ。どうぞ」
凸守「さすが我が執事!気が利き…………って。ミルクティー???」
勇太「はい」ニッコリ
凸守「あ、あの……勇太さん?わたし、その、牛乳は……」
勇太「もちろん知っておりますとも。けれど厳密には普段飲んでいる牛乳と紅茶に使用するミルクは違うのでご安心を」
凸守「で、でもぉ…」
勇太「実は執事長からお嬢さまの牛乳嫌いを治せと前々から言われていたもので……」
勇太「ですのでこうして少しずつ近しいものから慣らしていこうかと」
凸守「爺やが……」
勇太「お嬢さまに辛い思いをさせるのはこの富樫勇太にとっても身が引き裂かれんばかりの苦痛でございます!」
勇太「どうか…どうか!この愚かで哀れな執事をお救いくださいお嬢さま……」
凸守「う……。わ……わかりました。執事を助けるのも主人の務めです……」
勇太「では……(本当は生乳7:紅茶3のブレンドですが頑張れお嬢さま!)」
凸守「……………………うぅ。~~~っえい!」ゴクリ
勇太「おお!(9:1だったっけな…?)」
凸守「ングッ……ング……ング、ングッ、ングッ、ングッ、~~~ぷはっ」
勇太「さすがは我が主。感服いたしました」
凸守「ハーッ、ハーッ、……ふふーん。ハーッ、と、当然デース。この凸守が勇太さんからもらったものを無下にするわけないデスよ……っ」
勇太「お嬢さま、キャラが」
凸守「ハッ?!」
凸守「…………いえ。ちょうどいいデス。ミョルニルを装着するデス我が執事」
勇太「?……はい」
勇太「……お嬢さまの髪は相も変わらずお美しいです」ファサァ
凸守「ふふっ……ありがとうございます」
勇太「……?し、失礼ですがお嬢さま。今はどちらの人格なのでしょうか…?」
凸守「───ミョルニルハンマーの遣い手のサーヴァントはどうだったデスかDFM」
勇太「えっ…?」
凸守「───凸守の……私の執事は楽しかったですか勇太さん」
勇太「お嬢さまなにを…」
凸守「私は……楽しかったし、…………苦しかったデス」
勇太「…………」
凸守「だからもう───終わりにするデス」
勇太「っ!お嬢…」
凸守「何も言わないで。…………勇太さん。今まで本当にあり────」
森夏「まーたあんたはそうやって逃げるわけ?」
凸守「!!……………………ニセさ、……丹生谷先輩」ジトォー
森夏「(なんかすごく恨みがましそうに睨まれてる)」
勇太「丹生谷……何しにきたんだ」
森夏「ちょっとね。くっそ生意気な中坊にお灸をすえてやろうかと思って」
凸守「……先輩には関係ありませんから」
森夏「自分のいいように引っ掻き回しといて飽きたらはいさよならって……我儘にもほどがあるわよあんた」
凸守「飽きてなんかっ……そんなんじゃ!」
凸守「……もういいです。何度も言うようですが丹生谷先輩に口出しされるいわれはありません」
森夏「あっそ。でも───この娘はどうかしらね」
「 凸 守 」
凸・勇「!!?」
六花「───久しぶり」
凸守「ま、まま、……マスター……?」
六花「……勇太」
勇太「…………り、六花……」
六花「…………」
凸守「なんで……マスターが、ここに……」
森夏「あんたらがあまりにも面倒なことになってるから私が呼んだのよ」
くみん「zzz……わたしもいるよぉ~……zzz」
六花「凸守」
凸守「ひっ……」ビクッ
六花「丹生谷からだいたいの事情は聞いた」
凸守「う、うぅ」
六花「…………凸守」ズイッ
凸守「~~~っ」
勇太「ま、待ってくれ六花!お嬢さまは悪くない!責任は全部おれ……」
凸守「やめてくださいっ!!」
勇太「なっ…!?」
凸守「勇太さんの……今の富樫先輩が私にむけている感情は……!作り物です……偽物なんですっ!」
凸守「富樫先輩は、本当は、もっと、小鳥遊先輩を気にしなくちゃダメなんです……!」
凸守「でも、私が……私が……富樫先輩を、変えちゃったから……」
勇太「お、お嬢……さま……。何を…」
六花「…………」
凸守「……だから悪いのは私です。……小鳥遊先輩。許されることではないけど……本当に、ごめんなさい……」
六花「───私は別に怒ってなどいない」
凸守「……え?」
六花「むしろ。謝るのは私のほう」
凸守「なんで……小鳥遊先輩が……、はぅわ?!」グィッ
六花「ごめんね凸守」ギュッ
凸守「あっ…」
六花「散々振り回して、勝手に中二病やめて、何も言わずに居なくなっちゃって」
六花「あんなに楽しかったのに……凸守に辛い思いをさせた。……私はマスター失格」
六花「それもこれも私が弱かったから。……ごめんね」
凸守「ぅ……あ……」グスッ
六花「でももう大丈夫」
六花「凸守に、勇太に、……みんなに支えてもらったから。私は強くなった」
六花「今度は私が助ける番」
凸守「うぅ、ヒック、で、でも、私は……富樫先輩を……」
六花「それについては言いたいことがある」
凸守「や、やっぱり……」
六花「凸守。───もっと正直になって」
凸守「───え」
六花「そして。ちゃんと勇太と向き合って」
凸守「…………」
六花「無論。凸守相手でも手加減はしない。……邪王真眼は最強」キリリッ
凸守「……小鳥遊先輩」
六花「違う。今ここに再び≪契約≫は成された。ミョルニルハンマーの遣い手よ」
凸守「~~~はいデスっ!マスター!」ギュッ
くみん「zzz……いい話だねぇ……zzz」
森夏「一件落着ね…………で。富樫くんはうずくまってるけどどうしたのかしら」
勇太「オジョウサマ…チガウ…デコモリ…リッカ…シツジ…イヤ…モリサマー…DFM………オレハ……アァ……」ブツブツ
森夏「こわっ」
くみん「zzz……洗脳が解けそうになってるんじゃないかなぁ……zzz」
勇太「オジョウサマ、オジョウサマ、オジョウサマ~~~~~ぅぁぁああああああああああああッッッ!!!」
森夏「ちょ、ちょっと!これやばくない!?」
六花「勇太!ど、どうしたの……」
凸守「……おそらくDFMの脳が情報の改竄に耐え切れなくなったのデス」
凸守「爺やたちの調教の際にも脳が酷使され深刻なダメージになっているようデース」
森夏「調教って……あんたいったい何したのよ!」
凸守「そのぉ……まぁ……たいしたことではないデスよ?」
凸守「一週間地下に監禁して『○執事』『いぬ○く』『エ○』などのアニメ数本を連続視聴させて従事する喜びを覚えさせ」
凸守「寝る間も与えず礼儀作法に調理、護身術を徹底的に叩き込み」
凸守「凸守の生まれたときから現在に至るアルバム・ホームビデオを延々と垂れ流し保護対象を刷り込んだだけデスよ」
森夏「 地 獄 か っ ! 」
くみん「zzz……寝られないとか(笑)……zzz」
六花「そ、そんなことより凸守。戻すにはどうしたらいいの……?」
凸守「…………ぶっちゃけわからないデ~ス!!」
森夏「はぁ!?じゃああんた富樫くんにずっと執事をさせるつもりだったの!?」
凸守「う、…………ニセサマーも満更ではなかったくせに」ボソッ
森夏「えぇ~なんのことかしら~???あらら富樫くんだいじょうぶ~?」アセアセ
勇太「うああああああああああああああああああああああああああ…………!!」
六花「勇太……!どうしよう…」
くみん「zzz……ショック療法がいいんじゃないかなぁ~……zzz」
森夏「どういうこと?」
くみん「zzz……うまく言えないけどぉ……王子様はお姫様のキスで目を覚ますんだよぉ~……www」
六花「きっ…!」
凸守「キッス……デスと……!?」
六花・凸守「「で、でも…」」
勇太「ぁぁぁあああああああああああああああッッッっっ!!?」
くみん「zzz……ほらほら~……王子様が苦しそうだよぉ……zzz」
六花「……っ!───わかった。わ、私が、す、する……」
凸守「~~~っ!待つデス、マスター!……凸守も……わ、わたしも…」
凸守「富樫先輩とちゃんと向き合いますっ!だ、だから!……わたしにもチャンスをください!」
六花「………チャンスとは自分で掴み取るもの。この件に関しては私と凸守は対等」
凸守「じゃあ…!」
六花「……一緒にしよ。凸守」
凸守「はいっ!」
森夏「じゃあわたしも~、…………な~んて………」ソロ~
六花・凸守「「……………………」」
森夏「……やぁね。冗談よ冗談。アハハ……」
六花「(凸守。性の伝道師モリサマーの動向には注意すること。一人じゃ太刀打ちできない……)」
凸守「(同感デス。あの腐れ淫乱ニセサマビッチがいつDFMを籠絡してもおかしくないデ~ス)」
森夏「なによ。やるならさっさとしなさいよ」
六花「では私はこっち側」ドキドキ
凸守「凸守は反対側デス」ドキドキ
六花・凸守「「───せーのっ」」
チュッ
勇太「あああああ!!?………嗚呼アァァ……ァァァ……………………」
──────
────
──
~後日~
森夏「よっ。富樫くん。部活行きましょ」
勇太「おお丹生谷。じゃあ一色も誘うか」
森夏「それより……調子はどう?」
勇太「ん?いたって普通だけど……どうかしたか」
森夏「(あの日洗脳が解けたショックからか富樫くんは凸守の執事をしていた記憶を失っていた)」
森夏「ならいいの。忘れて」
勇太「そうか?……ああ、でもなんだかちょっと前からたんこぶが異様にできててさ。まだ腫れがひかないんだよ」
森夏「…………へ~」
森夏「(結局キスでは治らなかったから全員であらゆるショック療法(物理)を試みたのは内緒)」
森夏「そういえば小鳥遊さんはどうするって?」
勇太「ああ。来週にはこっち戻ってくるってさ。部で歓迎会でもするか」
森夏「嬉しそうね」
勇太「そりゃ、まぁ…………いや、嬉しい。すっごく嬉しいんだ」
森夏「……ふ~ん。ちょっとは成長したみたいね」
勇太「それに……凸守も喜ぶだろ」
森夏「…………」
森夏「(………凸守は、富樫くんと小鳥遊さんと……新しくどんな関係を築くんだろう)」
一色「よぉ~勇太~」
勇太「おぅ一色。今から部活行くけど来るか?」
一色「行く行くー。くみん先輩成分を補充しなきゃならないからな」
森夏「きもっ」
勇太「きもいぞ一色」
一色「ひでぇ……。そういえば勇太。最近は中坊の執事してないのな」
森夏「ばっっっ…!?」
勇太「………シツジ?中坊って…………凸守……………………オジョウサマ???」
森夏「ふんッッッ!!」ガンッ
勇太「あだぁ?!」
森夏「ぬんッッッ!!」ドゴォ
一色「なんで?!」
森夏「あらやだ。盛大にバランス崩しちゃったわ。大丈夫???富樫くーん」
勇太「──はっ!……お……俺はいったい……?」
森夏「うん大丈夫ね。ささっ、部活行くわよ~」グイグイ
勇太「おい、引っ張るな、丹生谷、頭いたいんだけど………」グイグイ
一色「」
~部室~
勇太「ちぃーっす」
森夏「ども~」
凸守「ぬぅふっふ………来たデスね。───DFM!!………ついでにニセサマーも」
凸守「ここ最近の結社ではじつに安穏とした平和な日々を送らせてやったデスが」
凸守「それも我が主こと邪王真眼が魔界≪パンデモニウム≫から戻ってくる来週までデ~ス!」
凸守「今のうちに束の間の休息を噛みしめておくデスよ……ぬぅふぁっはっはっはっは!!」
勇太「なんだ。もう知ってたのか」
森夏「……すっかり元通りね」
勇太「何がだ?」
森夏「なんでも」
くみん「zzz……でもこうして部活で集まるのも久しぶりだねぇ~……zzz」
勇太「おはようございます先輩。だから六花の歓迎会をしようと思ってるんですけどどうです?」
凸守「おぉ!それは名案デス!そうと決まればさっそく魔法陣を敷かないと……」
森夏「いやなんでそうなるのよ」
凸守「魔界での大乱で傷ついたマスターの魔力を癒すために決まってるデスよ……???」キョトン
森夏「いやなんでさもわかって当然みたいな顔して……ちょっと私が悪いの!?あんたその憐れんだ目をやめなさい!!」
凸守「ま・所詮はニセモリサマー……いやど腐れ淫魔ニセサマザーファッカーデスね」
森夏「こぉんのクソ中坊~~~!……凸ちゃ~ん。ここにいいものがあるわよ~?」
凸守「そっ、その白濁とした汚水は…!」
森夏「なっま温い牛乳飲みなさいコラァァァ!」
凸守「やデーーース!!」
勇太「……なんか本当に久しぶりって感じだな」
くみん「zzz……そうだよぅ?みんな富樫くんを待ってたんだからぁ……zzz」
勇太「え?どういう…………寝てる」
森夏「さぁもう逃げられないわよ~」ニジリニジリ
凸守「うぅぅ…………」チラッ
勇太「?」
凸守「───デス」
森夏「堪忍しなさ───え?」
凸守「飲んでやるデスっ!」
森夏「え、えぇ……?どうしたのよあんた……べ、別に無理しなくていいのよ……?」
凸守「いいからさっさと寄越すデスっ!」
凸守「ゴクリっ!……ング、ングッ、ングッ、ングッ…………ぷはぁ!!」
森夏「うわぁ……飲み干した……」
凸守「(うげぇー……前のミルクティーとは大違い……)」オエェ
勇太「おお!すごいな凸守。牛乳克服したのか」
凸守「!!…………ふふっ」
~放課後~
森夏「すっかり遅くなっちゃったわね」
勇太「結局六花が喜びそうなアイテムで飾り付けしてたからな」
くみん「zzz……疲れてねむくなっちゃたよぅ……zzz」
凸守「くみんは寝てただけデスが………では帰りましょう勇太さ───あ、」
勇太「え?」
凸守「あ、いや、その…………だ、DFM!」アタフタ
凸守「この深淵なる黒い帳が下りた時間こそ我ら闇の遣いの領域!今こそ不可視境界線を探しにいくデース!!」
勇太「えぇー……つまり送っていけってことか?」
凸守「うぅ、それは、デコォ……」
森夏「…………いいんじゃない?後輩の面倒くらいみてやりなさいよ」
凸守「!!」
勇太「だったら丹生谷のほうが……女同士なんだし」
森夏「私はこのねぼすけさんを送んなきゃいけないみたいだから。中坊はまかせたわよ」
くみん「zzz……zzz……zzz」
勇太「歩きながら寝ている……だと……?」
凸守「だ……だめ……デスか…?」
勇太「いや、いいよ。送ってく」
凸守「!…………ふふーん。それでいいんデスよ!DFMならばそれくらいの器量を持っていなくては」
勇太「まったく。調子のいい奴だな」
森夏「じゃ。そういうことで~」
凸守「あっ、ま、待つデス!ニセサマー!」
森夏「なによ。まだなんかあるの?」
凸守「いや、えっと、その」
凸守「───いろいろと、すみませんでした」
凸守「あと……ありがとうございました。………丹生谷先輩」
森夏「…………ふん」ペシッ
凸守「デコッ!?な、何をするデスか???」
森夏「急にしおらしくなるんじゃないわよ気持ち悪い。あんたはいつも通りでいいの」
凸守「……でも」
森夏「それよりせっかく二人きりにしてあげたんだから……シャキッとしなさいシャキッと」
凸守「………はいっ!」
勇太「丹生谷となにを話してたんだ?」
凸守「ひ・み・つ・デ~ス!乙女の秘め事に首を突っ込むのは野暮ってもんデスよDFM」
勇太「乙女って。なんだ……随分仲良くなったんだな」
凸守「『怨敵』と書いて『とも』と呼ぶ仲デス。ニセサマーからエセサマーに昇格させてやりましょう!」
勇太「意味変わってないだろそれ」
凸守「………ところでDFM」
勇太「ん?」
凸守「ま、マスターとの…………恋人の契りは、どうなっているのデスか……?」
勇太「………さあな。どうなっているんだろうな」
凸守「なんデスかその曖昧な……」
勇太「俺はあのとき六花を見捨てたようなもんだからな…………もう愛想を尽かされているかもしれない」
勇太「それに……よくよく考えてみると、俺と六花はただ依存し合っていただけで恋愛とは違ったんじゃないかって思うんだ」
勇太「だからもう一度……俺も六花も気持ちを整理して見直さなきゃいけない」
凸守「───小鳥遊先輩は富樫先輩のこと大好きですよ」
勇太「え」
凸守「……サーヴァントである凸守が言うんだから間違いないデス!」
勇太「……そうか。ありがとな。凸守」
凸守「ふふん。まぁ凸守は認めていないデスが仮にもマスターと愛の契りを結んだ者を気にかけてやるのは当然デ~ス」
勇太「はいはい」
凸守「それにもうマスターと……DFMが、苦しんでいるのは見たくないデスから」
勇太「…………」
凸守「凸守にできることならなんでもしてやるデスよ」
勇太「………あのさ、凸守」
凸守「はい?」
勇太「俺もおまえの苦しんでいるところは見たくない」
凸守「………はい?」
勇太「俺は凸守も幸せになってほしい」
凸守「な、な……なん……ですか……いきなり…」
勇太「なんかよくわからないけど…………胸の奥がモヤモヤするんだ。今の……無理しているお前を見ると」
凸守「無理なんか……してませんよ……」
勇太「何でもいいから頼ってくれよ。俺じゃ力不足かもしれないけど」
勇太「凸守が悲しむと六花も辛いし、六花が辛ければお前も悲しいだろ」
勇太「六花がいなくなって一番傷ついたのはおまえだろうから……もう同じ過ちを繰り返したくないんだ」
凸守「……グスッ、本心、ですか?……ヒック……また、調教でも、されたんですか……エッグ…」
勇太「調教……???なんのことか知らないけど」
勇太「俺はもう決めたぞ。六花も凸守も幸せにするって」
勇太「だから………泣くなよ」ファサ
凸守「……グシュ……いいんですか?わたし結構面倒くさいですよ」ナデナデ
勇太「知ってる。………それに」
凸守「?」
勇太「なんだかお前の傍にいると………守ってやりたくなるんだよな」
凸守「───ふふっ。さすがは…………先輩ですね」
勇太「さすが?」
凸守「なんでもありませんよぅ」
凸守「……もう大丈夫です。見苦しいところをすいませんでした」
勇太「気にするな。俺でよければいつでも力になるぞ」
凸守「富樫先輩でなければ………いえ。DFM!貴様でなければマスターと凸守にはついてこれないでしょう!」
勇太「急に戻るな」
凸守「これからの管理局との戦いはより一層激しくなるデス……DFM!警戒を怠るなデス!」
勇太「はいはい…」
凸守「何でもするといったからには我がサーヴァントのごとくコキ下してやるから覚悟するデスDFM!!」
勇太「仰せのままに───ご主人様」
凸守「!!……さ、さらばデスっ」タタタッ
勇太「あっ……行っちまった。それにしてもご主人様って妙にしっくりくるな……?」
凸守「───ふふっ。大好きですよ……我が執事!」
~完~
駄文すまんかった
改めて読み直すと凸守のコレじゃない感がやばい
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