エリック「………」
エリック「あれから6年にもなるのか」
陽光も射さぬ、暗く冷たい雨の日であった。
1917年の戦いから正式にベルモンド家の分家リカードの跡取りとなったエリック・リカードは、
故郷スペインに建つ、今は亡き恋人への6回目の墓参りに赴いていた。
あれから時は流れ1923年の9月、図られた忌まわしき大戦を乗り越え、
ヨーロッパを覆った闇を祓っても、世界は未だに平和を勝ち取ることができずにいた。
ここスペインとて例外ではない、現に自分のヴァンパイアハンターという身分の下の保護がなければ、
軍事政権の発足したスペインからはとっくに家族ともどもどこかへ亡命していただろう。
教会はクーデターを支持しているそうだが、とてもうまくいくとは思えない。
「あなた?あまり長くいらっしゃるとお体に障りますよ」
「それに、この娘たちにもよくないですし」
ステラ「…」
ロレッタ「ん…ふ、ぇ」
エリック「…そうだな、もう帰ろう」
丁度去年の始まった頃に彼、エリックは新たに見初めた相手と結婚を迎えた。
恋人の死の以前から親交のあった者だった。
復讐の為の哀しき戦いを終え虚無感に見舞われたエリックを慰め、優しく接し続けた懐の大きい人物であった。
そして今年に入りステラとロレッタ、2人の娘を授かるにも至ったのだ。
「そんなに大事にされていた恋人だったなんて、妬けてしまいますわ」
エリック「…すまなかったな」
「いいんですよ、どれだけ大事だったかなどとうに存じております」
エリック「ありがとう…」
「行きましょう、もう夕暮れ時にもなりますから」
夫婦とその娘たちを乗せて、雨ですっかりぬかるんだ道を超え自動車は墓場を後にしていった。
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うわミスったアーカードじゃないよHELLSINGじゃないよ…アルカードだよ…
とりあえず続きは明日書かせていただきます
「どうしたんです?帰るなりキャンバスに向かって」
バルコニーに席を構えて、エリックはパレットと筆を構えたままぼんやりと物思いに耽っていた。
エリックは幼い頃から芸術を愛する男でもあった。
美しきを愛で、豊かな想像に励み、愛に生きようとする心優しい少年だったのだ、しかし…
エリック「描きたくなったんだ、だが…やはり、いつもの通りさ」
「…べたついた曇り空だからですよ、描きたいなんて思えないから」
エリック「そんなことじゃない…わかってるだろ?」
「………」
1917年の一件以来、彼は絵も詩も、さっぱりと書けなくなってしまったのだ。
こうして愛用の筆を握りキャンバスに向かっても、ただそこには真っ白な帆布が見えるのみ。
何も、沸いてこない。
エリック「心が汚れてしまったのかな」
「そんなことはありません、あなたはヴァンパイアハンターなのですから」
エリック「だけど復讐の為の戦いだった」
「それは復讐でなく、決着と呼べばよいのです」
エリック「…」
(決着か。
だとしたら、私の中では…まだ戦いは終わっていない。
心の中の整理も、まだ放ったらかしなのだから…)
エリック「ステラ達は?」
「…お昼寝ですよ、先ほど寝かしつけたばかりです」
エリック「…すまないな」
「何がでしょうか?」
エリック「面倒な男に付きあわせてしまって、だ」
まだやることがあるので失礼します、とだけ言って、
まるで聖母のような微笑を浮かべながらエリックの妻はバルコニーを後にした。
エリック(そうだ、決着だ)
あれからぷっつりと便りも姿も消えた生涯の親友にして戦友。
ジョニー・モリス…彼はアメリカへと帰っていったはず、六年も経つというのにあれから一度も顔を合わせてはいない。
エリック(奴に会えば、私の心の決着は付くのだろうか)
年上ながら彼の意思の強さ、力、そして心持ちには感服させられた。
若くして、分家の身であるにも関わらず彼はヴァンパイアキラーの力を最大限まで引き出してみせた。
彼の振るうムチは光の如き速さで力強く悪魔どもを祓いのけた。
己の命を削ることさえも彼は承知の上だった、本気で、自らの手で世界を救うと決めていたのだ。
復讐の為の戦いをする自分がみじめに見えてしまうほどに、ジョニーは強かった。
エリック「会うならば伝えねばなるまい、彼女には」
家をしばし空ける、と…そして娘たちを頼むと。
そう呟いた時には雲は晴れており、夕日も沈むころになっていた。
エリック(この混乱のスペインの中では、伝えるのは早い方がよいだろう)
夕食の終わる頃に伝えるのがよいだろうか。
美しい夕焼けのグラデーションからも目を離し、またも一人エリックは思考の中に沈んでゆくのであった。
・
・
・
エリック「…は」
椅子に深く腰掛けていたせいか、すっかり意識を手放し眠ってしまっていたようだ。
気づけば空は、三日月と星々が輝く夜空となっていた。
「エリック、お目覚めですか?」
エリック「ああ、恥ずかしい所を見られたな」
エリックの妻は椅子の背もたれの横に、見守るように立っていた。
おそらく夕食の支度などが終わってからすぐここへと来て、様子を見ていたのだろう。
エリックにかけられた毛布がそれを証明していた。
「夫婦の仲でしょう、これくらいは普通のことです…ところで」
エリック「どうした」
「先ほどからお客様がお見えになっております、教会の方だそうですよ」
エリック「…それを早く言わないか、着替えてくる」
私を気にかけてくれるのは嬉しい、だが私の周りもできれば気にかけてやってくれ。
エリックは自室に向かう途中、そう思わずにはいられなかった。
あっしまったジョニーはVKの秘密知らないんだった
「己の命を削ることさえも彼は承知の上だった」ここは脳内で削除してください…
エリック「申し訳ありません、随分とお待たせしました」
神父「いえいえ、こちらこそ夕食まで頂いてしまって…」
エリック「なんと、妻があなたの分を?」
神父「作ってくださいました、いやはや、お恥ずかしい限りで…」
前言撤回だ。
私の妻は気の利いた、本当に良くできた妻だと褒めずにはいられない。
エリックはその瞬間、そう思わずにはいられなかった。
エリック「そうして神父殿」
ドリン「ああ、ドリンです、名字だけ記憶していただければそれでよいのです」
なんとも引け腰な男であった、恐縮を通り越して憐れみさえ覚えるほどに。
身体の端から困窮しているという雰囲気がにじみ出ているとも感じた。
しかし、ちゃっかり夕飯を馳走になっているあたりそういう所はしっかりした男なのだろう。
ドリン「教会の命にてここに来ました、エリック・リカード様に協力を求めよと」
エリック「私を名指しで?」
小粒といえどヴァンパイアハンターは数多く教会にいるはず。
それがわざわざ――自分で言うことでもないが、英雄エリック・リカードを名指しで指名するとは。
エリックは妙な胸騒ぎと同時に、わずかな期待を膨らませた。
(ジョニー、お前も呼ばれているのか?)
エリック「詳細な内容を求めたい、できますか?」
ドリン「はい、そのために参ったのです」
ドリン神父はやがて教会の指示の全貌を語り始めた。
現在も続くスペインとモロッコの戦争、その一端から奇妙な報告を聞いたという。
モロッコ軍の都市への攻撃を凌いだスペイン軍の敗残兵の一人がこう語った、「悪魔が全てを滅ぼした」と。
訊けばその「悪魔」は突如として霧の中から現れ、戦う者すべてを等しく無力と化していったらしい。
銃弾はおろか空爆の爆風に煽られてもものともせず、その戦いの一画から倒れた者がいなくなるまで「悪魔」は暴れたらしい。
また違う者は「悪魔」は漆黒のマントを羽織り、その内から炎を吹きださせていたとも言っていた。
エリック「マント…炎、それはまさか魔法、それも…『ヘルファイア』」
ドリン「暗黒魔術『ヘルファイア』を扱えるのは、確認されている内ではごく一部の魔法使いと…」
ドリン「あなたもよく知るドラキュラ伯爵のみ、だから、あなたに命が下ったのだと思います」
ドラキュラの復活…それもこんな短い期間の間に。
教会が恐れるのも当然のことだ、原因を突き止め、不完全なら即刻封印しなければならない。
しかしここで当然の疑問が生じた。
エリック「城は…悪魔城は確認されているのか」
ドリン「そこなんですよ、すでにモロッコに捜索の手が回っておりますが、悪魔城はどこにも確認されておりません」
エリック「そんな馬鹿な」
ドラキュラが復活したのであれば必ず暗黒の城・悪魔城が存在しているはず。
だというのに、あるはずのものが確認されないとはどういうことなのか。
エリック「…考えても謎は深まるばかりか、用意をしてくる、案内は任せます」
ドリン「わかりました」
直接行って確かめなければ、わかるはずもないことだ。
ならば突き進むのみ、この魂と槍にかけて。
「………」
エリック「聞いていた、か」
エリック「家をしばし空ける、そして娘たちを頼む」
夕暮れ時に考えていたことをこんな形で話すことになろうとは。
なんとも奇妙な偶然もあるものだ、と心の中で呟いた。
「無事に…戻ってくださいね」
エリック「心配はいらないさ、戻る理由もある」
今は失ったものじゃなく、あるもののために戦わねばならない。
妻と、娘たちと、祖国と、醜くも美しいこの世界。
何人たりとも穢させはしない、私はヴァンパイアハンター…闇を祓う守り手なのだから。
エリック「この槍を使うのも久しいか」
妖槍アルカードスピア、リカード家に伝わる魔力を秘めた槍である。
多少無理な動きをしても決して折れることもなく、抜群の切れ味を誇るそれはまさに妖槍と呼ぶにふさわしいモノだ。
以前の戦いを生き残れたのもこの妖槍による所が大きいだろう。
エリック「今度も頼む」
生きているわけではない、しかしまぎれもない「戦友」に対し、敬意を込めてそう呟いた。
今日はここまでで、続きは明日です。
地の文=サンの雰囲気は出せているでしょうか…
本土から船での長旅を経て、とうとうメリリャまで来た。
独立を勝ち取ったモロッコだが、スペインの自由貿易港のここだけはどうしても落とせなかった。
今はスペインの領土として残っているが、飛地ということでやはり今もゲリラ等の襲撃が絶えない。
生傷だらけの街だが、しかし人々はそれでも力強く生きている。
エリック「夜だというのに活気づいた町だ…」
ドリン「エリック様、こっちです」
生憎とここの地形はわからない、地図を持つ神父に案内してもらわなければならない。
件の話、その現場まで。
・
・
・
エリック「…霧?これは」
証言の中にあった「霧」だろうか、メリリャは霧の多い街だとは聞かないが。
しかし、確実に不審を抱かせる出来事がすぐに起きた。
エリック「…神父の気配が、消えた」
あまりに濃い霧の中だ、はぐれたのだろうか…それとも。
エリック「『悪魔』とやら…来るか!」
妖槍を握る手に力がこもる。
腰に着けたサブウェポンの存在もすぐさま確認する、臨戦態勢に入るために。
いつしか、穂先には緑色に妖しく輝く炎が生まれ始めた…
しかし、その炎のゆらめきも次の出来事が起こる頃には霧散してしまった。
周りの霧が1点に集まり形を成していく。
エリック「!?」
驚愕を隠せなかった。
集まった霧の中から現れた影は人の形、そしてやがて黒く色づき、はっきりとした姿が露わとなる。
装飾を施された黒いマント、細身の剣、流れるような金髪、そして美しい風貌…
アルカード「お前を待っていた」
エリック「貴方は?まさか…」
彼の名を、先代や親類を学ぶ時何度も聞いた。
中世のラルフ・C・ベルモンドの悪魔城攻略に力を貸したドラキュラの息子。
約百年前に再び目覚め、リヒター・ベルモンドを洗脳から解き再び悪魔城を滅ぼし、その後は行方をくらましたと聞いた。
そして、リカード家にこの妖槍を託した男でもあると。
エリック「貴方が…アルカードか」
エリック「『悪魔』とはあなたのことか」
アルカード「あんなものは作り話だ、闇の世界の住人が人に手を下すべきではない」
エリック「では神父をどこへやったのだ?」
アルカード「彼は帰っただろう、手筈通りお前を呼び込んだのだから」
まさか、この男は教会と繋がっているとでも言うのだろうか?
おかしくはないかもしれない、彼は闇の眷属である前に過去に2度も悪魔城を滅ぼしたヴァンパイアハンターなのだから。
アルカード「お前を呼んだ理由がわかるか?」
わざわざ戦いの準備を整えさせてまで、この地へ私を呼んだ理由。
確信こそないが全てを察するのにあまり時間はかからなかった。
エリック「アルカードスピア…」
アルカード「そうだ、私の愛槍…遠い記憶を思い出したのだ」
自らの大事なモノを返せというのはよくわかっているつもりではあった。
しかし、今更になってこんな…どういうつもりで?
エリックは自ら出したはずの回答の意図に苦しめられる。
アルカード「しかし、400年余りも預けたモノを今更返せとも言わん、ただ」
エリック「ただ…?」
瞬間、魔術に疎いエリックにも感じられるほどに濃い闇の力を感じた。
草木がざわめき、星々で輝いていた空も鈍く薄れ始めている。
500年の魔力、その威圧感…人間の想像をはるかに超えたものがエリックに直にぶつかり始めたのだ。
アルカード「――示してもらいたい、その槍が果たして本当にお前のモノなのかな」
そういうことだったのか。
私をここまで人気のない場所へ誘い出したのも。
エリック「…受けて立つ」
相対しているだけでも実力は理解できる。
だが、けして引き下がるわけには行かない…権利でなく、もはや誇りの問題だ。
伝説の魔物であろうと、侮ってもらってはリカードの名がすたるというもの。
全力で、ぶつからなければならない!
双方とも得物を構え相対する。
むせ返るような闘志が辺りを包み、誇りのぶつかり合いが冷たく空間を凍らせている。
まるで、時が止まったようで――――
エリック「ッつァ!」
やがて残ったのは槍閃に切り裂かれた、静寂。
エリック「…」
手ごたえを全く感じない。
それどころが槍閃は宙を切っていた、アルカードは再び霧と化していた。
アルカード「とァ!」
エリック「ふ…っ」
槍を回しながら反転させ、気配の強い方向へと向き直る。
するとそれはすでに背後へと回っていた、迫る剣を柄で受け、対応する。
細身ながら剣の一撃の重みが、槍を握る手に伝わってきた。
エリック「はっ!!」
つばぜり合い剣を押し返す、再び槍を回転させ、握りが甘くなった手から剣を柄で叩き落とした。
絶好のチャンス、穂先をアルカードに向けそのまま突き通した。
エリック「なに!?」
当たると思われた一撃はむなしく空を切った。
そして消えたアルカードは…別の姿のなって足元に迫っていた。
狼「ヴォォオオオオ!!」
エリック「オオカミだと!?く…そッ!」
悲境の貴公子から見るも醜い狼へと姿を変えたアルカードが、牙を喉笛へと向かわせる。
左手を腰にやったエリックは、すぐさま聖水を手にとり狼へ叩きつけようと左手を戻す。
しかし聖水が地面に落ち火柱を立てる頃には狼はすでに背後へと走り去っていた。
一連の動きの目的は聖水を使わせることだったのだ。
エリック(強い…とんでもなく)
戦慄がエリックを襲った。
今日はここまでにします
そして書いてから気づいたけどエリック左ききじゃん…
戦闘描写も~た、~したばっかだしこれはもうダメかもわからんね
続きは明日の晩です
申し訳ありません
今日上がった蒼月TASのホァイ後にアビスに行く調整方法を探っていて遅くなってしまいました
実機で手動となると無理なんですかね…とにかく今日は更新できません
明日3時頃の更新とさせていただきます
今の攻防で確信した、奴はヴァンパイアハンターのやり口を知っている。
恐らく普通の戦い方ではとても通用しないだろう。
この槍を持つ、私自身の戦い方でなければ奴を倒すことはできない…!
エリック「………」
アルカード「………」
そう悟ったはいいが、それから互いに見合う形で動けない。
相手の出方を見なければならない、ヴァンパイアハンターの戦闘とは相手のパターンを見切ることから始まるのだ。
何の考えもなく手札を晒せばまず勝てることはなくなるだろう。
…もしも、相手の手など造作もなく打ち崩せるほどの切り札≪アイテムクラッシュ≫があれば別だが。
アルカード「…来たれ!」
エリック(これは…魔法!)
先に動いたのはアルカードだった。
虚空から魔力の球を4つ、生み出してエリックに向かわせた。
エリック(この弾速…上から追尾してくるか)
エリック(大したことはない、1つずつ消せば…!?)
せまる光球の輝きで視界が塞がれ、アルカードの姿が消えた。
エリック(しまった、視界を消すことが狙いか!)
槍を振り光球をすべて払うとようやく光が消え視界が自由になったが、それでもアルカードを確認できない。
奴は、どこに消えたのか?
――それはすでに、またも別の姿にかわり空中を漂っていた。
夜の象徴たる蝙蝠となって、全身に魔力をたぎらせている。
エリック(あの態勢は!?)
碧に輝く魔力を放ちながら巨大な蝙蝠が突進する。
魔導器の力を借りた、≪ウィングスマッシュ≫が猛烈な速度でエリックを狙う…
エリック(速い!受けきれな…)
エリック「ぐ…おおッ!?」
その一撃は防御の構えなど意にも介さず、易々とエリックを槍ごと吹き飛ばした。
体勢を立て直せない、エリックはそのまま地面に倒れ込む。
…しかし、次の瞬間にチャンスは訪れた。
エリック(奴はまだ…空中にいる、もう一撃来る!)
悠々と蝙蝠の姿で空中に浮かび、魔力を貯めるアルカードをエリックは見逃さなかった。
絶好の勝機、これを逃せば勝ちはさらに遠のくだろう。
エリック(体勢を直せ!合わせるのだ…奴の攻撃に)
焦燥からかはたまた攻撃からくる疲労からか、うまく立ち上がれない。
だがしかし、間に合わせなければチャンスは二度と来ない!
一瞬の時間を、碧の閃光がふたたび切り裂き――
アルカード「…!」
エリック「勝機ッ!!」
エリックは跳んでいた。
地面に槍を突き立てまるで棒高跳びのように、アルカードより高く跳んでいた。
蝙蝠化が解け、着地し体勢を整えるのもままならないアルカードをエリックが襲う。
エリック「雷電槍、来たれ!」
アルカード「…!!ッ」
エリック自身の全力の奥義で。
アルカード「く…」
エリック「…私を認める気になっただろうか」
アルカードの霧化も電撃による全体への攻撃には無意味だった。
倒れ伏すアルカードと悠然と立つエリック、早い決着ではあったが勝敗は一目瞭然だった。
だが、これにエリック自身が納得できなかった。
エリック「たとえあなたが全力でなかったとしてもだ」
アルカード「さすがに見抜いている…いい腕をしているな」
伝説の魔王の息子たるアルカードの手がこれほど少ない筈もない。
闇の気配もまだ衰えてはいない、奴はもっと大きな力を隠し持っている…
これがエリックが感じとった、アルカードが全力でないという根拠である。
アルカード「認めよう、貴様の力を…エリック・リカード」
エリック「………」
アルカード「納得がいかないか、情熱的な男だ」
エリック「情熱の国の生まれなのでな」
アルカード「ベルモンドに代わる次代のハンター…父が消えるまではまた会うこともあるだろう」
アルカード「それまでその顔、覚えておく」
そう言い残すとアルカードの体は、多数の蝙蝠に分かれ去っていった。
次代のヴァンパイアハンター、モリス家とリカード家…それを試すためにアルカードは来たのだとしたら。
ここにはきっと、彼も。
ジョニー「よう」
エリック「…やはり、見ていたか」
かつての戦友、そして今エリックの心中の答えを持つであろう男がそこにいた。
このような形ではあるが、6年ぶりの皆合であった。
エリック「6年も何をしていた?」
ジョニー「6歳年をとって体重が増えてカミさんができたな」
エリック「…そういう事ではない」
ジョニー「冗談だよ」
この男はいつもそうだ、いつもは掴みどころのない性格をしているのにここぞという時ばかり真剣になる。
やりにくいのだ、年下だというのに。
まるで自分が軽くあしらわれているようだと感じる時には、とっくに態度は変わっている。
ジョニー「ようやく傷が治ったんでな、話があって来た…吸血鬼坊ちゃんとはついでだよ」
エリック「ようやく?今まで傷が治ってなかったと?」
6年前の傷が未だに治らなかった?あまりに不自然だ、ありえない。
年数的にもシモン・ベルモンドの一件を想起したが、傷が癒えたのなら呪いの影響というのはありえないだろう。
ジョニー「今までずっと中央教会で治療と調査を受けてた」
ジョニー「…俺はもう、長くはもたないらしいぜ」
エリック「…馬鹿な」
ジョニー「本当さ、VKの力に耐えきれなかったみたいだ」
エリック「そんな馬鹿な!どうしてだ!お前はあれほどVKをうまく扱って」
ジョニー「だからだろ」
エリック「…!!」
突然に明かされた衝撃的な真相に、エリックはただ理由を問いただすことしかできなかった。
いや、たとえどれだけの訳を話されたとしてもこの時は受け入れなかっただろう。
それがたとえ親友自身の口から明かされたものだとしても。
ジョニー「なぁに、今すぐ死ぬってワケでもないさ…ただちょっと死ぬのが早くなるだけだ」
エリック「お、お前…!」
ジョニー「ただな…約束してくれ」
ジョニー「俺にももう少しで子供が生まれるだろう」
ジョニー「いつかそいつがお前に会う時、その時は絶対にVKの事を教えるな…たとえ俺が死んでいたとしてもだ」
ジョニー「そして…俺の子供を見守ってやっていてくれ」
ジョニー「それだけが…俺の願いだ、頼めるな」
エリック「そっ……ッ」
こいつには、この男には…すでに覚悟ができている。
自分がどれほどもつか、どれほど残り少ない命かと知っている。
だから私にこんなことを頼む、それ以外ない。
私に何ができるというのだ?この男に。
互いに視線を合わせつつしばらく押し黙った後、エリックがようやく口を開いた。
エリック「…わかった」
ジョニー「頼む…つっても、俺も鞭を使わせないように育てるケドな」
エリック「…そうしてくれ、負担が減る」
ジョニー「お?エリックにしちゃ珍しく言うじゃないか」
この悪ふざけの中に隠された覚悟の程はまだわからない。
だが…覚悟は共に背負えなくともせめてお前の望みだけは叶えてやる、それが私の、お前への手向けだ。
いつか逝く時が来たら、せめて安らかに逝って欲しい。
お前の背負った重みも、全て外して…
エリック「…最後に一つ教えてはくれないか」
ジョニー「何だ?なんでもいいぜ」
最初にエリックがジョニーに会おうと思い立った理由。
たとえ答えが出なくとも、いつか去ってしまうのならどうしても今ここで答えてもらわねばならない。
次に会う事はないかもしれないのだから。
エリック「私は絵を描けなくなってしまった、何故かわかるか」
ジョニー「えぇ~…んなこと言われてもなァ」
ジョニー「ま…強いて言えば、ヴァンパイアハンターだからだろ」
ヴァンパイアハンターだから。
どういう事だ、私にもう絵は描けないと言いたいのか…エリックはそう解釈した。
次に続く言葉でその誤解もすっかり解けてしまうのだが。
ジョニー「絵を描く時ぐらいは、ヴァンパイアハンターはやめたらどうだ?スッキリするんじゃないのか?」
………そういう事か、そんな簡単な事だったのか。
どうやら気負いすぎて凝り固まっていたようだ。
少年の時を思い出した、あの時は自由に、何も考えず、ただキャンパスに発想を固めてぶつけていた。
芸術とは縛られない自由な心から生まれる、一介の芸術人だというのにそれを忘れていた。
…そんな、簡単な事だったんだ。
エリック「…お前の方が芸術家に向いているようだ」
ジョニー「え?無理だって、俺には絵の具の種類だってわかりゃしないんだぜ?」
エリック「そういう事ではないんだがな」
――――これが、エリック・リカードとジョニー・モリスの文書以外で最後の会話となった。
・
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エリック「これで最期か」
崩れ去る悪魔城の中でエリックは一人呟いた。
瓦礫に挟まれようと霊体の体はすでに何も感じられない。
ジョニーの息子、ジョナサン・モリスが戦いの最中で成長しとうとう悪魔城の攻略を成し遂げた。
愛娘も、友の息子も、新たな天才も…次代のヴァンパイアハンター達はここに巣立っていったのだ。
唯一残っていた戦友≪アルカードスピア≫も彼らに継がれた。
もはや、思い残すことなど何もない――――
悪魔城に繋がれていた体がゆっくりと消え去っていく。
思えば50年とちょっと、長く苦しかったが退屈もなかった。
本当に良い人生であった…
エリック(天国があるのなら――)
天国があるのなら、お前はそこで私になんと言うだろうな?
私は、天国さえ描き切ってみたい――――
――――とりとめのない思考をぶつ切って、エリック・リカードの魂は消え去った。
それから65年、モリス家とリカード家の悲願は達成されることとなる。
その功績を湛えられたエリック・リカードの墓前には、生前エリックの描いた数多くの絵が今も添えられている…
NKK…(長く苦しい掛け持ちだった…)
デレデレデェェェェン
IGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
TAKEDA☆TAKASHI
しまむらゾーン
………
んー…
よう!
ドゥゥゥゥゥゥゥゥン
終了です、見てくださった方ありがとうございました
ところでスレってどうやって落とすんですか…?
何か特殊な方法を用いるそうですが
自己解決しました
html依頼というものを出してきます
このSSまとめへのコメント
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