勇者「俺が転生しただと?」(373)
勇者(俺は……死んだのか……)
勇者(体の感覚がない……魔王に敗れて俺は……)
勇者(何も見えない……聞こえない……)
勇者(いや、なんだ……?暖かい?)
勇者(なんだこれは……これが……死か)
勇者(ああ……何もかも消えて……)
―――勇者(♂0歳)
医者「元気な男の子ですよ」
父「よくがんばったなっ」ギュッ
母「はい……あなた……」
勇者(なんだ……急に暖かいところから寒いところへ……)
勇者(僧侶!戦士!魔法使いー!)
勇者「おぎゃーおぎゃー!」
勇者(声が……変だ)
勇者(目もかすんでよく見えないし……耳も良く聞こえない……)
父「かわいいなぁ、この目元なんてお前そっくりだな」
母「口元はあなたそっくり……きっといい男になるわよ」
勇者(誰か……いるのか……おい、ここはどこだ……)
勇者「ほんぎゃー」
母「よしよし、いい子いい子。泣かないの」ナデナデ
―――家
勇者(少しずつ視界がはっきりしてきた……どこだ?ここは?)
勇者(おーい!)
勇者「あー……うーっ」バタバタ
勇者(起き上がれない……あれ?なんだこの小さい手は……)
勇者(まるで赤ん坊の手だ……体も思うように動かないし……)
母「あー、よちよち。おっきしましたかー」ニコッ
勇者(誰だ?このお姉さんは……)
母「おなかすいたのかなー?おっぱいあげましょうねー」スッ
勇者(おっぱい!?ちょっ!な、なにしてるんだ!?お、おい。やめ)
勇者「あーあーうー」イヤイヤ
母「あら、お腹すいてないのかなぁ?」
勇者(女の子のおっぱいなんて初めて見た……っていかん!なんだこれは)
勇者(まさか……俺は赤ん坊になってるのか?)
母「好き嫌いしてたらおっきくなれませんよぉ」プニッ
勇者(や、やめ……人妻のおっぱい吸うとか……吸いたいけどだめだろ!)
勇者「うーっうーっ」イヤイヤ
母「おかしいわねぇ、ちょっとあなたー!」
パタパタパタ
勇者(あ……残念……じゃなくって助かった……)
勇者(赤ん坊になっている……もしかして……生まれ変わったのか?)
勇者(でもなんで前世の記憶を……)
勇者(まさか……神がもう一度チャンスをくれたのか)
勇者(そうだ!仲間を助けにいかないと……まだ生きてるかも……)
勇者「あーあーあー」ジタバタ
勇者(く、立てない……体も全然力が入らない)
勇者(肉体も神経も赤ん坊のままか……)
勇者(この体のままじゃ……無理か……)
勇者(成長しないと……鍛えて魔王を倒さないと……)
勇者「あーうー」パタパタ
父「なんだ、おっぱい欲しがってるみたいじゃないか」
母「あら?おかしいわね。ほらっ」パフパフ
勇者(旦那さんごめん、いただきます)
勇者「ちゅーちゅーっ」コクコクッ
母「ふふっ、美味しそうね」
父「ああ、幸せそうな顔してるな」
勇者(とにかく早く体を鍛えないと……とりあえず立つ練習だ)
勇者(ふっ……ふっ)ジタバタ
勇者(まだ運動神経が全然発達していない……体の操作がうまくいかない)
勇者(心と体のずれを直していかないと……)
勇者(言葉がうまく話せないのも何とかしないとな……)
勇者(頭では分かってても脳がまだ覚えていないんだ……声を出して慣れないと)
勇者「あーうーあーうー」ジタバタ
勇者(魔王め……今度は勝つ!)
数ヵ月後
勇者「よち!立ちぇた」フラフラ
勇者「みちぇろよ……魔王」フラフラ
勇者「おっちょ」ガシッ
勇者「まだちゅかみ立ちまでちか無理か」
勇者「魔王たおちゅぞ」
母「え?」
勇者「あ」
母「喋った?ねぇ、何か喋ってた?」パァ
勇者(や、やっば……こんな歳で普通に喋ったりしたら気味悪いだろ)
母「ママって言ってみて。ほらママー、ママーよ」
勇者(ど、どうする。普通の赤ん坊のふりしないと……えっと……)
勇者「まーまー」
母「!!」
母「言ったわ、ママよ。もう一度呼んで」
勇者「まーまーまー」
勇者(ごまかせたか……気をつけないといけないな)
―――勇者(♂3歳)
勇者(3歳)「8、9、10!」グッグッ
勇者「はぁ……はぁ……やっと腕立て10回たっちぇいだ」
勇者「少しずつ体ができちぇきたな」
勇者「この調子できちゃえないと」
パタパタパタ
勇者「おっと、ママだ」サッ
母「あら、勇者。絵本見てたの?」
勇者「うん」
母「じゃあ、ママが読んであげようね」
勇者「それよりお外に行きたい!」
母「じゃあ、ママと一緒に公園でもいこうね」
久しぶりにSSでワクワクする
支援
勇者「ひとりで大丈夫。帰ってきたらお手伝いするね」タタタッ
母「あっ」
父「どうした?」
母「またあの子ったら一人で出て行って……心配だわ」
父「男の子は元気でいいじゃないか。それにお手伝いもしっかりできてる」
母「それにしても洗い物までできるなんてしっかりしすぎじゃない?」
父「君の教育がいいのさ」
母「そうかしら、なんだか心配だわ」
勇者「よち、今日はあの丘まではちるか」タタタッ
勇者「はぁはぁ……ダッシュ!」
勇者(だいぶこの土地にも慣れてきたぞ)
勇者(今まで聞いたことによると俺の生まれた町よりかなり南だな)
勇者(気候もあたたかい。魔族の土地からも離れているほうだ)
勇者(それなのに……あそこの人も……あれも……)
勇者(どうして人の土地に魔族がいるんだ?)
―――勇者(♂6歳)
母「今日から小学校よ。一人で大丈夫?」
勇者「うん」
父「この子はしっかりしてるから心配することないよ。友達と仲良くするんだぞ」
勇者「うんっ、行って来ます!」タッ
勇者(学校か……義務教育とはな。俺の田舎じゃそんなものなかったが……)
勇者(じいさんが勉強教えてくれたからな……)
勇者(とりあえず子供のふりをつづけないと……)
勇者(しかし、こんなことしてる場合じゃないんだけど……)
勇者(とりあえず、俺は魔王に倒されて人間は魔族に服従したということは分かった)
勇者(この町はまだそれほど魔族は多くないが……北のほうは酷いらしいな)
勇者(そろそろみんなのことも探さないとな……)
―――教室
幼女「ねぇねぇ」
勇者「ん?」
幼女「席となりだね。よろしくね」ニコッ
勇者「ああ、よろしく」
勇者(つっても今更小学校かぁ……まわり子供ばっかだな。あたりまえだけど)
先生「じゃあ、この問題わかるひとー?んー、ちょっと難しかったかな?じゃあ、勇者君」
勇者「俺?あ、13です」
先生「正解!よくわかったわねぇ。偉いぞー」ナデナデ
幼女「勇者君すごーい」
「あたまいー」
「ねー、ここ教えてー」
ガキ大将「けっ!なんだあいつ気にくわねぇ」
―――体育
先生「じゃ、かけっこよ。あっちの木までね。よーい、ドン!」パンッ
勇者「ふっ!」ダダッ
勇者(こんな無駄な時間をすごしてるわけにはいかないのに……せめて、体だけでも鍛えておかないと)
ガキ大将「くそっ!追いつけない」
勇者「ふぅ!」
先生「一着は……また勇者君かー。足はやいねぇ」ナデナデ
幼女「すごーい」
「かっこいいよねぇ」
「わたし好みかも」
「告っちゃおうか。ねっ?」
キャーキャー
ガキ大将「あの野郎ー!むかつくー」
ガキ「だよなー」
ガキ大将「おい、クラスの男子集めろ」
ガキ「え?」
ガキ大将「やっちまおうぜ」
ガキ「で、でもそんなことして先生にばれたら……」
ガキ大将「あ?文句あんのか?」
ガキ「わ、わかったよ」
―――放課後
勇者「なに?こんなところに呼び出して。僕忙しいんだけど」
ガキ「ちょっと話があるだけだから、こっちこっち」
ガキ大将「来たか」
ズララララッ
勇者「なんだ、クラスのみんなじゃないか」
ガキ大将「お前、見ない顔だけどどこの幼稚園だよ」
勇者「幼稚園?行ってない。必要なかったからね」
ガキ大将「そっか、じゃあ知らないんだ。まぁこれからいろいろ教えてやるよ」
勇者「何を?」
ガキ大将「お前が生意気だってことをだよ。いい気になるなよ」ドンッ
「そーだそーだ」
ワイワイ
勇者「あー、うん、なんだ。いじめか?こんなことしてもいいことないぞ?」ポンッ
ガキ大将「な……お前ビビッてるくせになにいってんだ」ドンッ
勇者「こんなことしてないでさ。友達になればいいじゃないか。なっ」ポンッ
「そ、そうだよな」
「別にいじめなくても……」
ガキ大将「黙れ!こいつはいい気になって俺たちを見下してるんだよ」
勇者「そんなことないって。みんなでワイワイやってたほうが楽しいぞ?」
ガキ大将「やっちまえ!」
「で、でも……」
ガキ大将「やれっていってんだよ」ゲシッ
「う、うわあああああああ」
「このやろこのやろ」
ガキ大将「なぐれなぐれ」
ボカボカ
勇者「……」
勇者(んー、子供の力で殴られてもなぁ。ここまで結構鍛えてきたし、痛くも痒くもないな)
ガキ大将「こ、こいつ」
「全然動かないよー」
「手がいたぁい」
ガキ大将「この。石で殴ってやる」ガシッ
ガキ大将「このぉ!」
勇者「おいおい」ギュッ
ガキ大将「い、いたたたああああ手が……」
勇者「石はだめだろ。石は。相手に怪我させたらどうするんだ。お前だって傷つくぞ」
ガキ大将「く、くそっ!」
勇者「そんなことより仲良くしよう、なっ?」
「だ、だよな」
「別に俺ら本気じゃなかったんだ、ごめん」
「お前つよいなー」
ガキ大将「なんだよ!お前ら!裏切るのか」
勇者「お前もそんなこといってないでさ、大人になれよ。あ、子供だったか」
ガキ大将「く、くそお!覚えてろ!」ダダダッ
勇者(ちょっと目立ちすぎたか……?)
―――次の日
親「先生!どうなっているんざますか!」
ガキ大将「……」
先生「ですから先ほどから説明しているとおり……」
親「あーたしの話をちゃんと聞いてたんざますか!うちの子がクラスでいじめられたんざますよ!」
親「見て!見てみてみて!この手に付いたあざを!あの子にやられたんざます!」
勇者「あー、ちょっと跡ついちゃったか。ごめんな」
ガキ大将「ふんっ」プイッ
先生「クラスの児童たちにも聞きましたが、それはおたくのお子さんがこの子をいじめようとしたんですよ」
親「んまぁ!なんて先生ざんしょ!校長を呼んで頂戴!あんたなんてクビにしてもらうざます!」
先生「ですから……」
「先生のいうとおりだよ」
「そうだそうだ」
「ガキ大将君がいじめようって言ったんだ」
親「な……な……」
「かえれかえれー」
勇者「ちょっとみんなやめなって。俺が悪かったんだからさ。なぁ、ガキ大将」
ガキ大将「……」
勇者「友達になろう」スッ
親「もう結構ざます!」バシッ
親「いくざますよ!」グイッ
ガキ大将「あっ……」ズルズル
―――廊下
親「どうして嘘をついたんざますか!」バシッ
ガキ大将「うわあん」ビービー
親「泣いてたらわからないざんしょ!赤っ恥ざます!」グイッ
ガキ大将「うぐぐっ」
親「なんとかおっしゃい!」バシバシバシバシッ
ガキ大将「もう、やめて……うううっ」
親「まだ口答えするの!この子は!」ブンッ
勇者「その辺にしておきなよ」ガシッ
親「な……離しなさい!」
勇者「しつけにしてはちょっと酷いんじゃない?」
親「元はといえばあんたのせいざんしょ!」
勇者「そう、俺が悪い。だからガキ大将君を離せ」
親「なんですって!」
勇者「殴りたかったら俺を殴りなよ」ギロッ
親「ひっ……」ポトッ
ガキ大将「ぐえ」ドサッ
勇者「本当に俺が悪かったよ。なっ、許してよ」ポンッ
ガキ大将「う、うん……」
勇者「そして友達になろう」
ガキ大将「うっ、うん……ぐすっ」
親「なーに言ってるざますか!あーたしは許しませんよ!」
勇者「いい加減にしなよ、おばさん。子供は親のペットじゃないよ?」
親「何を知った口を……」
勇者「もしガキ大将君に虐待でもしてるなら……許さない」ゴゴゴゴゴッ
親「ひぃ!な、なにこの子は……この迫力は……も、もう好きにしなさい!」ダダッ
ガキ大将「あ、ありがとう……」
勇者「気にするな。友達だろ」
勇者(マズったか……いや、こんな南の地なら魔族は少ない……」
―――廊下
側近「魔力!?大きい!」
魔王子「ああ、感じたな」
側近「王子は次の授業にでていてください」
魔王子「おいおい、付き人の仕事はどうする」
側近「このあたりに王子にかなうようなのはいませんよ」
魔王子「どうだかな……父の魔王の力もここまでは及ばぬからな」
側近「だからその支配者になるためにあなたがここに来たのでしょう?」
魔王子「まぁな」
側近「では行ってまいります」ザッ
―――家
母「学校はどう?」
勇者「うん、楽しいよ」
父「そうか。友達はできたか?」
勇者「うん」
父「そうかそうか、お前は俺に似て顔がいいからもてるだろう」
勇者「そんなことないよ」
母「幼女ちゃんだっけ?毎日朝呼びに来るあの子とか?」
勇者「違うって、もう!」
母「あらっ、この子ったら照れてるわ」
父「ははは、俺に似ていろんな子に手を出してたりしてな」
母「……いろんな子に手を出してるの?あなた?」ピシッ
父「い、いや!違うぞ!なにその手の包丁!」
母「ちょっとこっち来て」ガシッ
父「かあちゃん勘弁!」
父「アッー!」
母「ちょっと今日お風呂使えなくなっちゃったから銭湯にでもいこっか」ニコッ
勇者「あ、あの……パパは?」
母「ほほほっ、お風呂の底に……いえ、ちょっと遠くに出かけちゃったの」
勇者「そ、そう」
母「さっ、行くわよ」ギュッ
勇者「う、うんっ」
―――銭湯
勇者「じゃあ僕はこっちだね」スッ
母「どこいくの。一緒に行くのよ」ギュッ
勇者「え?でも……」
母「大人と子供一人ずつね」チャリンッ
番頭「まいどー」
勇者「ちょっとおおおお」ズルズルズルッ
勇者(ど、どうする……体は子供だけど、これはまず……うおっ!?)
勇者(こ、これは……この世の桃源郷!?)
勇者(いや、いかんいかん。見ちゃダメだ見ちゃダメだ見ちゃダメだ)チラチラッ
幼女「あー!勇者君だー!」
勇者「げっ」
母「あら幼女ちゃん?」
幼女「こんばんはっ」
勇者「こ、こんばんは」オロオロ
母「うふふ、この子ったら恥ずかしがっちゃって。早く脱ぎなさい」
幼女「勇者君一緒にお風呂はいろー」
勇者「ちょ、ちょっと服引っ張らないで……いやああああああああ」
バン はよ
バン (∩`・ω・) バン はよ
/ ミつ/ ̄ ̄ ̄/
 ̄ ̄\/___/
バンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン
バン (∩`・ω・) バンバン
_/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
\/___/ ̄
; ' ;
\,,(' ⌒`;;)
(;; (´・:;⌒)/
(;. (´⌒` ,;) ) ’
(´:,(’ ,; ;'),`
/ ̄ ̄\
/´‐ω‐` \
ミ( ;´・)
_/_ / ̄ ̄ ̄/
\/___/ ̄
幼女「今日ねー、勇者君すっごいかっこよかったんだよ」チャプチャプ
母「あら、何があったの?」
勇者(目、目のやり場に困る……どこ見ても裸の女の人ばっか)ブクブクッ
幼女「いじめっ子をね、やっつけちゃったの」
母「あら、でも暴力はよくわないわね」
幼女「違うよー。いじめっ子も友達にしちゃったんだよ!」
母「へぇー。どうして話してくれなかったの?そんないい話」
勇者「べ、別に」ブクブク
幼女「えへへー。あたし勇者君のこと好きー」ギュッ
勇者「ちょっ!くっつくのはやばいって」
幼女「えー、どうしてー」ツルツル
∧∧
( ・ω・)
_| ⊃/(___
/ └-(____/
∧∧ シュッ
( ・ω・)
Σ⊂彡_,,..i'"':
|\`、: i'、
\\`_',..-i
\|_,..-┘
<⌒/ヽ-、___ モゾモゾ
/<_/____/
母「あらあら仲良しさんね」
「あー、勇者君と幼女ちゃん」
「なにくっついてるのー、ずるーい。抜け駆けなしっていったでしょ」
勇者「げ、クラスの女子」
「勇者君、いっしょに洗いっこしよっ」キュッ
「あたしが先よー」プニッ
勇者「や、やめれえええええええええええええ」
キャッキャッ
―――翌日
勇者「あー、昨日はやばかった……俺の体が成長してなくて逆によかった……俺も女子もみんな……はぁ……」
幼女「あ、勇者君おはよー。昨日は楽しかったねー」
勇者「おはよう。そりゃよかったね……」
幼女「あっ!」ササッ
勇者「ん?どうしたの?」
幼女「勇者君!どかなきゃ!危ないよ!」ギュッ
勇者「え?」
側近「おい!そこをどかんか!人間!魔王子様の道を塞ぐな!」
勇者「魔王子?」
幼女「勇者君……」
側近「どけっ!」ドンッ
幼女「きゃっ!」ドタッ
勇者「な、何をする!」
幼女「勇者君、ダメ……逆らっちゃ……魔王様の子供だよ」
勇者「魔王!?」
側近「貴様ら!魔王様を呼び捨てにするか!」
幼女「ううっ……怖いよぉ」ブルブル
勇者「やめろ!呼び捨てにしたのは俺だけだ!こいつは関係ない」
側近「そうか、ならばお前だけ死ね」ジャキンッ
魔王子「待て」
勇者(こいつが……魔王の子供?まだガキじゃないか)ジロジロ
魔王子「ふふふっ、なかなかいい目をしている。もういい、いくぞ側近」
側近「しかし……」
魔王子「二度言わせるな」
側近「はっ」ザッザッ
勇者(魔族……か)
幼女「勇者君大丈夫?」
勇者「うん、でも魔族がなんで?」
幼女「知らなかったの?ここは魔族と人間共学だよ」
勇者「そうなの?」
幼女「うん、ほとんど魔族の人はいないけどね」
幼女「でも魔族の人を見たらすぐ道を譲らないといけないの、ママが言ってた」
幼女「そうしないと殺されちゃうんだって……」
勇者「くっ……俺が負けたせいで世界はそんなことに……」ギリッ
―――廊下
幼女「ごめんなさい、ごめんなさい」ペコペコ
側近「魔族にぶつかっておいて謝ってすむと思うんですか?」
側近(くくくっ、こっちがぶつかってやったのだがな)
側近「ガキ……殺してやろうか?」グイッ
幼女「あああああん」
勇者「あ、あいつは……今朝の……」
側近「ほれほれっ、斬れますよぉ」ツンツン
幼女「たすけてぇー」
ガキ大将「や、やめろ……むぐぐっ」
勇者「お前たちは黙ってろ、絶対出てくるな。いいな」
ガキ大将「なんで止めるんだよ。幼女が殺されちまうぞ」
勇者「俺が行く。だから絶対動くな。約束だ」
ガキ大将「お、おう」
側近「さて、脅すのも飽きたましたね。殺しますか」スゥ
ゆっくりでいいから完結させてくれ支援
勇者「はぁ!」バシッ
カランカラン
側近「私の剣に何のマネです?」
勇者「殺すことはないだろう。ぶつかったくらいで」
側近「それは人間のルール。魔族のルールとは違います」
幼女「勇者……くん……」
側近「剣がないなら捻り殺すだけです」グッ
勇者「やめろ!」ガッ
ポトッ
側近「ぐっ、なんです?人間の癖にやるきですか?」
勇者(くっ……やるしかないのか……こんなところで……)
勇者(俺の全力でどこまでできるか……)
勇者「はぁあああああ」ゴゴゴゴゴゴゴッ
側近「魔力!?まさかお前が!?この間の魔力の源は……」
ヒョコッ
僧侶(♀)「じーっ」ジー
勇者「んっ?なんか窓から視線が……」クルッ
僧侶「じーっ」ジー
勇者「僧侶?あれ?なんか大きくなってるけど僧侶?」
僧侶「勇者様みつけたああああああああああああ!」ギュッ
僧侶「あー、もうちっちゃくなっちゃいましたねぇ。探しましたよー」スリスリッ
勇者「あの……僧侶、今そんな場合じゃ……」
僧侶「絶対生きてると思いました。勇者様の魔力を感じたときはもううれしくてうれしくて」ムニッ
勇者「ちょ、胸あたってるよ。僧侶」
僧侶「あー、もうその反応。やっぱり勇者様ですぅ」ムギュムギュッ
勇者「お前本当に大きくなったなぁ……俺が死んだとき12歳だっけ?」
僧侶「今はもう18ですよぅ。大人ですよ!大人!子供扱いしないでください」プンプンッ
側近「もういいですか?感動の再会は」
僧侶「あ、お構いなく。私この子持って帰るだけですから」ヒョイッ
勇者「ちょっ」ジタバタ
僧侶「それじゃあ!」ダダッ
側近「待て!」
女僧侶(32)
―――裏庭
僧侶「ここまでくれば……」タタタッ
勇者「おい、僧侶。下ろせ。自分で歩ける」
僧侶「はいはい。どうぞ。しかし、見れば見るほどかわいくなっちゃいましたねぇ」
勇者『お前に言われたくないよ……俺よりずっと年下だったくせに……」
僧侶「12歳でしたからね」
勇者「12で魔王討伐とかお前の才能が怖いよ」
僧侶「勇者様なんて今6歳くらいでしょう?」
勇者「うっ……」
僧侶「あー、かわいいなぁ」スリスリッ
勇者「やめい」
側近「こほんっ、ゆるいムードもそこまでですよ」
勇者「なっ……」
側近「私を誰だと思っているんです?そこらの中級や下級魔族とは一緒にしてもらっては困ります」
側近「魔王様直属の側近である私にかかれば追尾など児戯に等しいのですから」
勇者「側近というわりにこんな地方に飛ばされているのな」
僧侶「しっ、勇者様!そういうこといっちゃいけません。可哀想でしょう」
側近「……どうやらすぐにでも死にたいみたいですね」ブルブルッ
勇者「くっ……この体でやれるか……はぁあああああ」ゴゴゴゴゴゴッ
勇者「極大火炎魔法!」ゴゴゥ
側近「むぅ!こ、こんな子供がこれほどの魔法を……おおおおおお」ジリジリ
勇者「うっ……」ガクッ
僧侶「勇者様!?」
勇者「だ、だめだ……体のキャパシティが少ない……魔力も……体力も……はぁはぁ」
側近「ふっ、所詮子供ですねっ」ズザザザザッ
勇者「なっ……速い!がっ……」
側近「このまま首の骨を折って差し上げましょう」グググッ
僧侶「やめて!」
側近「あなたは次に相手してあげますから黙っててください」ドンッ
僧侶「きゃっ」
側近「ふんっ」ボキンッ
勇者「がふっ……僧侶……逃げろ……」
側近「おらおらおらっ」ドスドスドスッ
僧侶「や、やめて……」
勇者「」ビクンッ
側近「ふっ……心臓が止まりました」
僧侶「い、いや……もう勇者様が死ぬのはいやあああああああああ」
カッ
側近「次はあなたですよ」ドスッ
僧侶「」
側近「ほらほらっ、どうしました!?」ドスドスドスッ
僧侶「」
魔王子「おい、何をしておる」
側近「あ、王子。お待ちをもうすぐ終わりますから」
魔王子「終わるとは何がだ?地面に手刀を刺して」
側近「え!?」
側近「これは……幻影魔法!?ちっ、女のほうは逃がしましたか」
側近「しかし、ガキのほうはきっちり始末しました」
魔王子「誰がそんなことをしろと言った」
側近「え」
魔王子「人間といえどいずれ私のものになるのだ。むやみに傷つけるな」
側近「はっ」
魔王子「次はないからな。いくぞ」
勇者(首の骨が折れた……)
勇者(心臓も貫かれた……今度こそ死ぬのか……)
勇者(僧侶……逃げていればいいが……)
勇者(それにあの体の両親と友人達……)
勇者(酷い目にあってないといいが……ああ……消える……)
勇者(俺が……消える……)
勇者(……)
勇者「おぎゃーおぎゃー」
女「はぁはぁ……生まれたわ……」
男「げっ、気持ちわりぃな」
女「何いってんのよ。あんたの子でしょ」
男「知るかよ、んなもん」
女「どうすんのよ」
男「どうするって……育てられるわけないだろ」
女「あたしだってそうよ!」
男「なら置いてくしかねーだろ」
女「そ、そうね。道に置いとけば誰かもってくかもしれないわ」
男「おっ、お前あったまいいー」
女「じゃ、いこっか」
男「おう」
勇者「おぎゃーおぎゃー」
勇者(なんだ……目がよく見えない……これは……)
勇者(転生!?)
勇者(また生まれ変わったのか……?体もよく動かない)モゾモゾ
勇者(誰かが何か言ってたみたいだけど……)
勇者(お腹すいたな……誰かいないのか?さっきいたのが親か?)
勇者(寒い……なんだこの寒さは……)
勇者「あーあーあー」ブルブルッ
勇者(寒い……寒い……どれくらい時間がたったんだろう……)
勇者(とても……眠い……ひもじい……)
勇者(なんだ……生まれ変わってなんかないのか……)
勇者(きっとこれは地獄だ……俺の罪を償うための……)
勇者(コ……キュー……トス……)
僧侶「勇者様!?」
勇者(誰か……いる?)
僧侶「酷い!こんなに冷え切ってる……早くあたためないと!」ギュッ
勇者(暖かい……なんか……懐かしいな……)ガクッ
勇者(´・ω・`)
勇者「んーんーっ」パチッ
勇者(なんだ?あったかくて柔らかいぞ)ムニッ
僧侶「あ、目が覚めました!よかった!」
勇者(って僧侶が裸!?なんで!?)
僧侶「体で暖めたかいがありました。よかった……本当によかった……」ギュッ
勇者「んまんまー」
勇者(服きてくれー!気まずすぎる!)
僧侶「あら?おっぱいが欲しいんでちゅかー?」スッ
勇者(ちげーよ!)
僧侶「でも残念。私のは出ないんですよ。はい、これっ」チュッ
勇者「んっんんっ」コクコクッ
僧侶「哺乳瓶で我慢してちゃいねぇー」ナデナデ
僧侶「私のは勇者様がおっきくなったら飲ませてあげまちゅからねぇー」ナデナデ
勇者「ぶーっ」ゲフンゲフンッ
僧侶「あー、もう、なんで吐き出しちゃうんですか」
僧侶「えっと、なになに?こういうときはゲップを出させる?こうかな?」トントン
勇者「……」ゲップ
勇者(なんだこれ)
僧侶「あー、かわいいなぁ、かわいいなぁ、かわいいなったらかわいいなぁ」ツンツン
勇者「あーうー」
勇者(やめてくれ……っていうかどうしてこうなったんだ)
僧侶「あの勇者様が赤ん坊だぁ……うふふー」ツンツン
勇者(おい、僧侶、説明を……)
勇者「おーおー」ワタワタ
僧侶「手ちっちゃいですねぇ……」フニフニッ
勇者(うっ……っていうかおしっこしたい……)
勇者「うーっ」ブルブル
僧侶「どうしたんでちゅかー?何か我慢してます?あ、もしかしてトイレでちゅかー?」
僧侶「ちゃんとオムツしてるから大丈夫ですよー」
勇者(そういう問題じゃ……くっ、一番見られたくないやつの前で漏らすとか……)
勇者「うーうー」ブルブルッ
勇者(あ、無理だ……)
ショワワワワ
勇者(あれ……なんか感覚が違う……股間の感覚が……)
―――勇者(♀0歳)
―――勇者(♀3歳)
勇者「僧侶!僧侶!」クイクイ
僧侶「あ、勇者様しゃべれるようになったんですか」
勇者「ああ、だから説明ちてくれ」
僧侶「赤ちゃん言葉かわいいー」ギュッ
勇者「こらっ、くっちゅくな」
僧侶「ママーって言ってみてください」キラキラッ
勇者「いうか!」
勇者「ちょれより、やっと喋れるんだからいままでの経緯をおちえてくれ」
僧侶「ああ、そう言えば子育てに夢中で言ってませんでしたね。てへっ」ペロッ
僧侶(21)
勇者「何年またちぇるんだ……」
僧侶「でももうお風呂入る時間ですよー。お風呂で体洗いながら話しましょうか」
勇者「えっ///」カー
僧侶「何恥ずかしがってるんですかー。いつも一緒に入ってるのに」
勇者「いつもはずかちいよ!」
僧侶「それにもう女の子でしょ」
勇者「うっ……神様……性別くらい選んで生まれ変わらせてくだちゃい……」
―――お風呂
チャプチャプ
僧侶「んーっ、暖かいですねー」プニプニ
勇者「僧侶、背中にいろんなものが当ちゃってるんだけど」
僧侶「んーっ?何が当たってるんですかぁ?言って見て下さい」
勇者「///」ブクブク
僧侶「あはは、真っ赤になっちゃってかわいいです」
僧侶「勇者様も昔、私が落ち込んでるとこうしてくれましたよね」
勇者「そうだったっけ?」
僧侶「はいっ」ギュッ
勇者「だからだきちゅくなー!」チャプチャプ
僧侶「いいじゃないですか。今は女同士ですよぉ」
勇者「ううーっ」
僧侶「ほらほらっ、勇者様~?あひるさんですよぉ」ヒョイッ
勇者「子供扱いちゅるな」
僧侶「ほ~らっ、かわいいですよぉ」クルクル
勇者「……」ウズウズッ
僧侶「ほらほらっ」
勇者「わーい!あひるさんあひるさん!」チャプチャプ
勇者「わーい!わーい!」
僧侶「……」ジー
勇者「はっ!?」
僧侶「はぅぅ……」キラキラッ
勇者「ちっ、違う!今のは違う!このあひるさんがこんなに可愛いからわるいんだ!」
僧侶「かわいいー!」スリスリ
勇者「もしかして精神まで幼児化してちまっているのか……」ガクッ
僧侶「かわいいからいいじゃないですかぁ」
勇者「よくない!それよりはなちを……」
僧侶「そうでしたね。まず何から話しましょうか」
勇者「俺の……というかこの体の両親はどうちたんだ?」
僧侶「あー、その話ですか……えっと……その……」モゴオゴ
勇者「覚悟はちているから……いってくれ」
僧侶「えっと……えーっと……そうです!私が勇者様を産みました!」クワッ
勇者「うそちゅけ!」
求めていた方向性と何か違うけど支援
僧侶「だから安心してください!勇者様は両親の愛の結晶なんですよ!」
勇者「相手誰だよ!」
僧侶「もう……///」
僧侶「それを私に言わせるんですか?あ・な・た・で・す・よっ」ツンッ
勇者「意味わかんないよ!」
僧侶「だから勇者様は胸を張って生きていけばいいんですよっ」
勇者「わかんないけど……わかったよ……ありがとう。僧侶」
勇者「じゃあ、次は今まであったことを」
僧侶「そうですね。最初に魔王との戦いの後なんですけど」
勇者「そこが良く思いだちぇない……」
僧侶「戦士さんは魔王軍に捕まってしまってそのあと将軍に抜擢されました」
勇者「え!?」
僧侶「魔法使いさんは行方不明です」
勇者「!?」
僧侶「そして運よく逃げ出した私は新しい勇者様を探す旅に出るのでした」
勇者「ちょっ、ちょっとまって」
僧侶「なんです?」
勇者「いろいろつっこみ所が多すぎて……」
勇者「戦士が寝返ったの?」
僧侶「寝返ったというかスカウトされたというか、そんな感じです。で、魔法使いさんは……」
勇者「魔法使いはいいとちて……お前は?」
僧侶「心機一転新しい勇者様探しの旅に……」
勇者「その前」
僧侶「運よく逃げ出した」
勇者「逃げたの!?」
僧侶「あはは、ごめんなさい。怖くなっちゃって」
勇者「はぁ……まぁいいか。それで?」
僧侶「いつまでたっても新しい勇者様が現れないんですよね。誰かが神の啓示を受けると思ったんですが……」
僧侶「でもそれが間違っていたんですね。勇者様は転生していたんですから」
勇者「俺が転生しただと?」
僧侶「記憶を受け継いで新しい生命として生まれてきていたんですね」
勇者「それが前の肉体か」
僧侶「それからたまたま来ていた町で勇者様に似た魔力を感じたので周りを調べていたんですよ」
僧侶「そしたら子供が私を僧侶って呼ぶものですから、確信しました」
勇者「でも、その後……」
僧侶「ええ……勇者様はまた魔族に殺されてしまって……」
勇者「あの時の両親にもうち訳ないな……」
僧侶「遺体は後から渡してきました」
勇者「そっか……ありがとう」
僧侶「そして、きっとまた転生したのではと思って……」
勇者「なんで分かったんだ?何も魔力なんて発ちてなかったのに」
僧侶「なんででしょうね……私にも分かりませんけど……感じたんです。勇者様を……」
勇者「そっか……助かったよ」
勇者「あ、あれ……目、目が……」
勇者「まわるぅうう」フラフラッ
僧侶「いけない!のぼせちゃいましたね」ザパァ
―――ベッド
僧侶「さぁ、そろそろおねむの時間ですねぇ」ポンッ
勇者「だから子供あちゅかい……ふぁぁ……」ゴシゴシ
僧侶「ふふっ、じゃあ寝る前にお話をしてあげましょうね」
勇者「ねみゅい……」
勇者「結局、寝かしちゅけられる俺……」
僧侶「んー、何から話そうかなぁ」
僧侶「そうですね、じゃあ……」
僧侶「むかーし、むかし、あるところに小さな女の子がいました」
勇者「……」スースー
勇者に転生されたあげく魔族にケンカ売って遺体で対面か…子どもの両親が可哀想すぎるな
僧侶「身寄りのなかった女の子は教会に預けられることになりました」
僧侶「女の子はお世話になってる教会に恩返しがしたいと思いました」
僧侶「いっぱいいっぱい勉強して、女の子は世の中のことを知りました」
僧侶「神様のこと、人間のこと、魔族のこと、戦争のこと。そして預言された世界を救う青年のこと」
僧侶「女の子はいつか青年と一緒に世界を平和に導く力になりたいと思いました」
僧侶「女の子はいままでよりもっともっとがんばりました」
僧侶「がんばって教会で一番の成績をとりました。でも教会のみんなはそれを快く思いませんでした」
僧侶「女の子が年上の自分達より上に行くのが気に入らなかったのです」
僧侶「教会では身分が決まっていました。孤児の女の子は当然一番下です」
僧侶「そんな女の子にみんなはさまざまないやがらせをしました」
僧侶「それでも女の子はがんばりました」
僧侶「ある日、青年が仲間を集めて魔王を倒そうと立ち上がりました。預言が本当になったのです」
僧侶「女の子の心は踊りました。しかし、その一方で落ち込んでいました」
僧侶「なぜならこれで自分の夢見てたものが、もう夢さえ見ることが出来なくなってしまうからです」
僧侶「女の子は自分が選ばれないことは心の片隅では分かっていたのです。位の高い高僧の誰かが選ばれるのでしょう」
僧侶「しかし、女の子の予想は裏切られました。なんとその青年が自分の前に現れたのです」
僧侶「女の子は青年に連れられ、旅にでることになりました」
僧侶「仲間には陽気な男の人と女の人。ただ、みんな大人でした」
僧侶「12歳の女の子は戸惑いました。本当に自分はこの中にいてもいいのだろうか」
僧侶「不安や孤独感に襲われましたが、その度に青年は側にいてくれるのでした」
僧侶「そのあとは旅の仲間達による八面六臂の大活躍です。悪い魔物たちを倒しながら魔王討伐の旅は続きます」
僧侶「女の子の役割は仲間のサポートです。女の子は法力で仲間の守りを固め、回復をして一生懸命仲間を守りました」
僧侶「そして、ついに魔王との対決です」
僧侶「魔王の強さは計り知れないものでした。七日七晩戦い続けても戦いは続きました」
僧侶「女の子も懸命に戦いました。そして青年の剣が魔王に届いたそのとき、ついに女の子の力が尽きてしまいました」
僧侶「魔王は青年の一太刀を浴び、負傷を負いましたが、その代わり守りの力を失った青年は致命的な一撃を受けてしまいました」
僧侶「ほかの仲間はもう動く力は残っていませんでした」
僧侶「誰も動ける仲間がいなくなり、女の子は怖くなりました。怖くて怖くて堪らなくなり、ついに逃げ出してしまいました」
僧侶「世界は平和になりませんでした。青年は死んでしまいました」
僧侶「女の子は何もできませんでした。そして女の子に罪悪感が襲いました」
僧侶「守れなかったこと。逃げ出したこと。女の子は毎日謝り続けました」
僧侶「しかし、後悔し続ける女の子の前に、なんと青年が生きて現れたのです」
僧侶「女の子は今度こそ絶対に守ろうと誓いました。あんな思いはごめんです」
僧侶「さぁ、女の子の戦いはこれからだ……なんちゃって」
勇者「……」スヤスヤ
僧侶「ふふっ、よく寝てる……かわいい」ツンッ
僧侶「でも、その女の子の本当の願いはただ、こうして一緒にいられることなんですよ」
―――勇者(♀6歳)
僧侶「勇者様ぁ」ニコニコ
勇者「な、なんだ?その笑顔は」
僧侶「んふふーっ、勇者様もいい年になったんですからおしゃれしないといけませんね」
勇者「おしゃれ?」
僧侶「そうです!おしゃれは女の子の基本です!」
勇者「いや、俺はそういうのいいや」
僧侶「ダメです!まずはこれです!」ジャーン
勇者「そ、それは……パンツ……いや……パンティ!?」
僧侶「そうです。いつまでもお子様パンツじゃいけません!どうです?かわいいでしょう?」
勇者「ブリーフを要求する!」クワッ
僧侶「なんと!?」
勇者「トランクスでも可!」
僧侶「ダメですよぉ、女の子が何言ってるんですかぁ。ほらっ、ちゃんと服もかわいいの買って来たんですよ」
勇者「げっ……なに、そのひらひらしたの……」
僧侶「かわいいでしょう?ワンピースとスカートですよぉ」
勇者「まさか俺にそれを着ろと」
僧侶「はぁい、ぬぎぬぎしましょうねぇ」バッ
勇者「や、やめれぇ」
僧侶「あぁ、かわいい!もう!食べちゃいたいくらいです」
勇者「屈辱……」キラキラッ
僧侶「髪も金髪でさらさら……ツインテールにしてみたんですよぉ」
僧侶「ほらっ、鏡見てくださいよ」
勇者「なっ……これが俺……」
僧侶「かわいいでしょ?ねっ」
勇者「う、うん……///」コクッ
勇者「はっ!違う!俺はこんなの求めていない!」
勇者「装備くらいせめて俺に選ばせてくれ……」
僧侶「装備じゃないですっ、おしゃれですっ」
勇者「どっちでもいいよ」
僧侶「じゃ、お買い物一緒にいきます?」
勇者「わーい!僧侶とお出かけお出かけーっ」キャッキャッ
勇者「はっ!?」
この僧侶にはヤンデレの素質がある
―――雑貨屋
僧侶「ちょっと私は子供用のカート取って来ますから待っててくださいね」
勇者「まさかそのカートに俺を乗せる気じゃないだろうな」
僧侶「ふふふっ、乗ったらはしゃいじゃうくせに。かわいいなぁ」ツンツンッ
勇者「はしゃがないもんっ!」
僧侶「じゃ、待っててくださいね」タッ
・
・
・
勇者「僧侶、遅いなぁ」
紳士「ね、ねぇ」キョロキョロ
勇者「ん?誰?」
紳士「君一人?お母さんは?」
勇者「お母さん?あー、いない……かな」
紳士「いないの?そう。実は連れが君の事を呼んでいるんだ」
勇者「連れ?あー、もしかして僧侶のこと?」
紳士「そうそう。君の事を呼んできてほしいってさ」
勇者「どこ?」
紳士「こっちだよ。一緒にいこうね」ギュッ
勇者「うん」トコトコ
―――資材置き場
勇者「僧侶はどこ?」
紳士「ふふふっ、そんな人いないよ」
勇者「なっ……まさか」
勇者(魔族か!?俺が勇者だとバレたのか!?)
紳士「お兄さんはね。君のお世話をしてあげたいだけなんだ」
勇者「はぁ?」
紳士「君のパンツをちょっと見せてくれるだけでいいんだよ。はぁはぁ」
勇者「なんだ……ただの変態か」
紳士「変態じゃないよ!変態という名の紳士だよ!」
勇者「結局変態じゃねーか」
紳士「い、いいから。ちょっと見るだけだから、ねっ。何もしないから。はぁはぁ」
勇者「はぁ……俺のパンツみたいって。別にパンツくらい見られたっていいけど」
紳士「ほ、本当!?は、はやく。はやく見せて」ジロジロ
勇者「な、なんだこいつ」
紳士「ほ、ほらっ、お兄さんが手伝ってあげるよ。ほぉらスカートを……」スッ
勇者「きゃああああああああああああ!」ボコッ
紳士「へぶっ!」ドテッ
勇者(な、なんだ……悪寒が……)
紳士「ひ、酷いなぁ。見せてくれるって行ったじゃないか。ほらっ、お兄さんにパンツ見せておくれよ……うへへへへへうへへ」
勇者「いやあああああああああああ!気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!」ガスガスッ
紳士「あふんっ、幼女に蹴られてる……いいっ!もっと!もっと蹴って!」
勇者「やああああああああああ!この女の敵があああああああああ!つぶれてしまえええええ!」
ブチッ
紳士「ぎゃー!玉……が」ガクッ
勇者「はっ!お、俺……まるで女みたいな反応を……」
勇者「っと僧侶が待ってるんだった。戻ろう」タッ
―――雑貨屋
『ぴんぽんぱんぽーん まいごのお知らせをします 6歳くらいでツイテールのかわいい女の子をさがしています 見かけた方はお近くの係員まで……』
勇者「あちゃー。どこだ?僧侶」
「放送の子ってあの子か?」
「かわええー。うちに欲しい」
「金髪ツインテール萌えー」
「ね、ねぇ君。お兄さんがつれて行ってあげるよ。ふひひ」
「何言ってるんだ。ここは僕が」
「ねぇ、お兄ちゃんって呼んでみてよ」
「馬鹿いってんじゃねーよ。なぁ、君、うちの妹になりなよ」
「VIPからきますた」
ワイワイワイ
勇者「き……」
勇者「きゃああああああああああああああ!」ゲシゲシッ
僧侶「その声は……勇者様!」
勇者「僧侶!僧侶ぉ」ギュッ
僧侶「もうっ、どこいっちゃってたんですか」
勇者「怖かったよぉ」グスッ
僧侶「それに何ですか。この周りに幸せそうな顔して倒れてる人たちは」
勇者「変態……」
僧侶「んーっ、勇者様かわいいですからねぇ」
勇者「もう嫌だ!なんでこんな目に……」
勇者「ん?そうだ。もう一度死んでみるか。そうすれば男になれるかも……」
僧侶「!!」
パシーン
勇者「いたっ……」ビリビリッ
僧侶「な、何てこと言うの!!」
勇者「そ、僧侶。冗談だよ」
僧侶「冗談でも言っていいことと悪いことがあるでしょ!」
勇者「……」
僧侶「死ぬなんて言わないでください」ポロポロ
僧侶「死ぬなんて言わないでくださいよぉ」ポロポロ
勇者「ご、ごめんなさい」
このまま勇者が16歳になるだけでも僧侶は34なんだぜ
―――勇者(♀10歳)
勇者「よしっ!いよいよ魔王討伐に出発だ」
勇者「僧侶のおかげで回復しながら目一杯体も鍛えられた。それに法力も教えてもらった」
勇者「これならいける!それなのに!」
勇者「なんでこんなヒラヒラの服なんだよ!」
僧侶「女の子だからです!」
勇者「リボンだけでも取っちゃダメ?」
僧侶「だめです!かわいいは正義っていうでしょう!正義の象徴の勇者様がかわいくなくてどうするんですか」
勇者「でも……」
僧侶「安心してください。剣はちゃんといいものがありますから」トンッ
勇者「なっ……これって俺が愛用してた勇者の剣?」
僧侶「これなら安心でしょう?」ニコッ
勇者「あれ?でも俺が死んだとき逃げたお前が何で持ってるんだ?」
僧侶「さぁ!魔王討伐に出発です!」
勇者(まぁ、いいか)
―――魔王城下町
勇者「何かえらい発展してるな、この町」
僧侶「それは魔王が勇者様を倒した場所ということで人は集まってきますよ」
勇者「人って言ってもほとんど魔族だな」
僧侶「ここじゃ人間差別が酷いみたいですから気をつけましょうね」
魔法使い(♀)「僧侶?」
僧侶「え?」
魔法使い「僧侶じゃない!」
僧侶「魔法……使いさん?生きていたんですか!」
魔法使い「勝手に殺さないでよ!ひさしぶりねー。そっちの可愛い子は?」
僧侶「そ、それはここじゃちょっと……」
魔法使い「んー?じゃあうちくる?」
僧侶「この町に住んでるんですか!?」
魔法使い「まぁね。ま、お茶くらいだすわよ」
―――魔法使いの家
ボロッ
魔法使い「ちょっと汚いけどくつろいで頂戴」
勇者「これがちょっと汚いくらい……・?」
魔法使い「むっ……」ビキッ
勇者「相変わらず部屋汚いなぁ。魔法使いは」
魔法使い「このっ」バシッ
勇者「あいたっ。何するんだよ」
魔法使い「何するっていきなりあんたみたいな子供に呼び捨てにされたらむかつくでしょ」
僧侶「魔法使いさん、違いますよ」
魔法使い「何よ。ちょっと可愛いだけのこのクソガキ」ギュッ
勇者「ほっぺたひっはるなー」ムニニ
僧侶「可愛いのは認めますっ。でもこの子は勇者様なんですよ」
魔法使い「勇者?この子が?」
僧侶「はいっ」
魔法使い「ぷっ……ぷはははははははははは」
魔法使い「あんたねぇ……昔から頭の中お花畑だったけど、今じゃフラワーフェスティバルでもやってるわけ?ぷふふふふ。そんなんじゃいつか痛い目みるわよ」
僧侶「いえ、本当に勇者様なんです!」
魔法使い「これが勇者って性別からして違っちゃってるじゃない。ほらっこんなに柔らかいし」ムニムニ
勇者「ひゃんっ!」
魔法使い「ここにも何もついてないし」スリスリッ
勇者「あっ///」
僧侶「ちょっと私の勇者様になにするんですか!」ダキッ
魔法使い「だからこれのどこが勇者だっての?」
勇者「あー、本当に相変わらずだな。魔法使い」
魔法使い「まだ言うか」
勇者「相変わらずBLは好きなのか?」
魔法使い「なっ///」カー
勇者「隠れて俺と戦士のBL本とか作ってただろう」
魔法使い「なんであんたが知ってるのよ!ま、まさか……本当に勇者?」
勇者「ふけたな。魔法使い……ぷっ……オバサン。お前もう30代だろ」
魔法使い「……」ビキッ
魔法使い「こんのクソガキがあああああああ」グリグリッ
勇者「頭がああああああああああ」
勇者「いたた……割れるかと思った」
魔法使い「あんたが悪い」
僧侶「そうですよ。女性に年齢のこといっちゃいけませんっ!」
勇者「はい……」
魔法使い「で、あんたたちどうしてこんなところに?っていうかそんな体に?」
僧侶「勇者様は転生したんです」
魔法使い「転生?」
僧侶「新しい体で生まれ変わったんです」
魔法使い「へぇ……信じられないけどこうしているのよねぇ。で、何をする気?」
僧侶「リベンジです!」
勇者「魔王を倒すんだ!」
魔法使い「……」
僧侶「魔法使いさんはどうしてこんなところに?」
魔法使い「あたしは……まぁあんたたちと似たようなもんよ。あはは」
魔法使い「よしっ!魔王討伐、あたしも一緒にいくわよ」
僧侶「本当ですかっ」
魔法使い「実はあたしもそうしたかったんだけど一人で困ってたのよね。魔王城の構造だってばっちり調べてあるから安心して」
勇者「さすが年の功ってやつだな。あははははは」
魔法使い「年で悪かったわね……」グリグリグリッ
勇者「NOOOOOOOOOOO!」
―――翌朝
僧侶「朝ごはんまでいただいちゃってすみません」
魔法使い「あー、いいのいいの。たっぷり食べて」
勇者「不味いな……相変わらず料理下手だなぁ」モグモグ
魔法使い「いいからさっさと食え!」ゴンッ
勇者「ぶっ」
僧侶「あはははは」
魔法使い「どうしたのさ」
僧侶「なんか旅してた頃を思い出しまして。楽しかったですねぇ、あの頃」
勇者「だな」
魔法使い「……そうね」
―――魔王城
勇者「こっちでいいのか?」
魔法使い「ええ、この時間警備が手薄になるの」
僧侶「狙うは魔王のみですね!」
勇者「ああ、魔王さえ倒してしまえばやつらが魔王から与えられてる力も失うし、統率も乱れる」
魔法使い「ここから中に転送するわ」パァァ
パッ
勇者「ここは?」
魔法使い「いいから、最短ルートで魔王の間までいく……」タッ
ガコンッ
魔法使い「わよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」ヒュー
勇者「あ、ドップラー効果」
僧侶「言ってる場合ですか!落とし穴に魔法使いさんが!」
勇者「だが穴がふさがってしまったぞ」
「なんだ今の声は?」
「こっちか?」
ザワザワ
僧侶「気づかれた!?」
勇者「安心しろ。雑魚程度なら……うっ……」ビリビリッ
僧侶「勇者様?どうしました!?」
勇者「な、なんか体が痺れて……」
僧侶「えっ……そ、そういえば私も……」
「侵入者か!」
「ひっとらえろ!」
…さて、この物語にはまだ続きがあります。
主人公は誰ですかって?
それはこのSSを読み切ったあなた方1人1人です
今の世の中、たくさん辛いこともある。たくさん嫌なこともある。もう誰も信じられない、信じたくない。そう思っている人がたくさんいるでしょう。
私もかつてその1人でした。でもこのSSの「男」のように(というかモデルは作者自身だったり…)懸命に生きて、今では細々とですが暮らしています。
開けない夜は、ありません。
これが、このSSで伝えたかったことの全てです。
最後の最後に、登場人物たちからのメッセージをお聞き下さい。
男「おう!まあなにやら辛いこともあるが、生きてみようぜ!開けない夜は、ないってな!」
作者「ちょっ、俺のパクったな!」
女「やれやれね、この二人は…クスッ」
友「見てくれて、ありがとな!お前らも頑張れよ!…イテッ!」
作者「(友の頭をはたきながら)読者様にお前らとか言うな!失礼だろが!」
まあなにはともあれ…
全員「読んでくれてありがとう!」
ありがとうございました!(続編をもしかしたら投下するかも…ゴホンゴホン)
戦士「侵入者だと?」
魔族兵「はっ!将軍様!すでに捕らえて牢に入れてるど」
戦士「誰がどこから入ったのだ」
「転送装置だど。えっど……僧侶ともう一人はめんこい女の子だったど……ぐへへ、嫁にしてえべ」
戦士「僧侶か……でかした!そうだな……お前が見張りに立て」
魔族兵「お、おで……すか?」
戦士「そうだ!牢屋を見張っておれ!絶対に目を離すなよ」
魔族兵「わ、わがっだど。絶対に目を離さないど」ドテドテドテ
戦士「……」
―――牢屋
勇者「くそっ……まだ体がしびれてる」
僧侶「何かの魔法でしょうか?」
勇者「分からない……だけどとにかくここを出ないと……」
ドテドテドテ
魔族兵「見張るど。目を離さないど」
勇者「なんだ?」
僧侶「こっちを見てますよ」
勇者「な、なんか寒気が……」
魔族兵「可愛いど……」チャラチャラ
僧侶「勇者様。あの魔族……カギを持ってますよ」
勇者「ああ」
僧侶「勇者様を可愛いって言ってじーっとみてます」
勇者「そうだな」
僧侶「ここはアレしかないでしょう」
勇者「あれって……なんとなく嫌な予感」
僧侶「色仕掛けしかないでしょうっ!」
勇者「いやだ!」
僧侶「大丈夫です。勇者様の可愛さならいけます。いいじゃないですか、減るもんじゃあるまいし」
勇者「減る!俺の大事な何かが磨り減ってしまう」
僧侶「でもここはやるしかないですよ」
勇者「ううっ……」
魔族兵「はぁはぁ……」
勇者「ねぇねぇ」
魔族兵「な、なんだど!」
勇者「おにいちゃんって呼んでもいい?」
魔族兵「ふおおおっ!い、今なんていったど」
勇者「おにいちゃんっ」キラキラッ
魔族兵「ふおおっ」
勇者「ねぇ、おにいちゃんっ……」
魔族兵「な、なんだど……」
勇者「しよっ///」ウルウル
魔族兵「な、何をだどおおおおおおおお!」
勇者「こっちに来たら教えてあげる」パチッ
魔族兵「はぁはぁ……」フラフラッ
勇者「よしっ!掴んだ!」ガシッ
魔族兵「ぎゃっ、く、首が……絞まるど」
勇者「ぬぬぬぬっ」ギュー
魔族兵「ぶくぶくぶく……」ガクッ
勇者「勝った……けどこの敗北感はいったい……」ガクッ
僧侶「ねぇ、勇者様。おねえちゃんって言ってみてくれませんか?」キラキラッ
勇者「まだ体の痺れが残ってる……ここはいったん引こう。僧侶」フラフラ
僧侶「見つからないようにですね。出口はこっちのほうでしょうか?あと、私のことはおねえちゃんっと」
勇者「分からないけど……行くしかないよ、僧侶……おねえちゃんっ///」カー
僧侶「はぅぅ」
勇者「い、いいから行くぞ!」
僧侶「あ、待ってくださいよー」
―――牢屋
魔族兵長「な、なんだこれは……牢が空いている……」
魔族兵長「それにあそこに倒れてるのは……伝令くらいにしか使い道のない魔族兵じゃないか」
魔族兵長「誰がこんなやつに見張りを任せたりしたんだ……」
戦士「お前だろう」スッ
魔族兵長「はっ!?将軍様?」
戦士「あいつはお前の部下だ。お前の命令で見張りについたのだ」
魔族兵長「いえ!私はそのような指示はしていませんが」
戦士「この責任はあいつと上司のお前にある。第一級の指名手配犯を逃したのだ。覚悟は出来ているな」ドスッ
魔族兵長「な、何を……」バタッ
戦士「……」
戦士「……」
戦士「……このくらいの時間があればあいつらは外か」
ピー
戦士「であえ!」
「お呼びですか!将軍!こ、これは……」
戦士「囚人が脱走した!魔族二人を殺害して逃走しておる!応援を呼びひっ捕らえよ!絶対に逃がすな!魔王子様にも報告せよ!」
「はっ!」ダッ
戦士「生きていたのか……」
勇者「追ってきているな」
僧侶「どうしましょう……ん?あれは」
魔法使い「勇者!僧侶!こっちよ!」
勇者「魔法使い!無事だったのか!」
僧侶「良かった!心配しましたよ」
魔法使い「あのくらいであたしは死ぬわけないでしょ。ほらっ、こっちが裏口だから」
勇者「助かる」
バタンッ
「そこまでだ!」
「動くな!」
勇者「な……魔族……待ち伏せか!?」
僧侶「こんなにたくさん……」
勇者「だ、だがやるしかない!」ジャキンッ
僧侶「私がサポートしますから勇者様と魔法使いさんで……」
魔法使い「影縛り!」ピカッ
勇者「うっ……体が……動かない」
僧侶「魔法使いさん……何で私達に魔法を……」
魔法使い「あはははははははは!まぁだそんなこと言ってるわけ?あたしが呼んだのよ」
魔法使い「ばっかじゃないのぉ?きゃははははははは」
僧侶「えっ、えっ……どういう……」
魔法使い「だから言ったじゃない。そんな頭の中お花畑じゃいつか痛い目見るってね」
勇者「魔法使い!お前は……」
魔法使い「そう!あたしは魔族に仕えてるの。あんたたちの敵ってわけ」
魔法使い「まさか牢屋から逃げると思わなかったから驚いたわよ」
僧侶「う、うそです!魔法使いさんはそんな人じゃ……」
魔法使い「あんたに何がわかんのよ!いつもいつも善人ぶってムカつくったらないわ!」
魔法使い「あたしがあの後どんな目にあったか知ってんの?え?」ゲシゲシッ
僧侶「い、痛いです……」
魔法使い「あんた達が逃げたせいでね!あたしは魔族に捕まっちゃったのよ!」
勇者「あんたたち?」
魔法使い「それがよく平気で仲間面できるわね!笑わせんじゃないわよ!」
僧侶「探したんですよ……魔法使いさんのこと……」
魔法使い「言い訳なんて聞きたくないの。あたしが聞きたいのはあんたの悲鳴だけ」
魔法使い「そしてこの手柄であたしはもっと上に行くの」
魔法使い「さっ、面倒な勇者から殺しちゃって」
「槍構えー!」ザッ
「てぇー!」
ギィーン
「な、刺さらない!?」
「硬い!なんだこの硬さは……」
僧侶「はぁぁ……」パァァ
魔法使い「何強化魔法なんてつかってるのよ!」ゲシッ
僧侶「ううっ……」
魔法使い「あら?何?あんた自分には強化魔法かけてないの?毒で弱って勇者にかけるのが精一杯?」
勇者「毒だと?」
魔法使い「まぁだ気づいてなかったの?あははははははは。今朝の朝食にたっぷり入れておいたのよ」
魔法使い「まぁ、あんまり食べなかったから死ななかったみたいだけど」
勇者「てめぇえええええ」ブルブルッ
魔法使い「怒ってもあんたたちはここで死ぬの」
僧侶「勇者様は……私が守ります」ブルブルッ
魔法使い「じゃああんたを先に殺してあげる」ゲシッ
僧侶「ううっ……勇者様」
勇者「や、やめろ!」
魔法使い「ほらほらっ、どうしたの?あんたが死んじゃったらあんたの憧れの勇者様が守れないわよぉ」ゲシゲシッ
勇者「やめろおおおお!」
僧侶「私がいなくなっても……勇者様を待っている人がきっといます……だから……うっ……」ビクッ
魔法使い「ほらほらっ」グシャ
勇者「やめろおおおおおおおおおおおおおお!」ブルブル
僧侶「」
魔法使い「ほぉらほら」グチャグチャ
「お、おい。やめとけ。もう死んでる」
「ひでぇな。いくら人間でもよ」
魔法使い「あらそう?じゃ、次はあんたの番よ?」
勇者「くそっ!くそおおおおおおお!」
魔法使い「あら、みっともない。女の子がそんなはしたない言葉言っちゃダメよ。あははは」
魔法使い「さっ、やっちゃって」
ドスドスドスッ
勇者「うあああああああああああああああああああああ」ガクッ
側近「転生した勇者を見つけたんですって?」
魔法使い「はい!このとおり僧侶と一緒にこの魔法使いが始末しました!」
側近「捕らえよと言ったはずですが?」
魔法使い「え……でも……」
側近「殺してしまってはまた転生されるではないですか」
魔法使い「あ……」
側近「あなたには今夜たっぷりおしおきが必要なようですね」キュッ
魔法使い「あ///」
側近「まぁ、いいです。赤子に転生するというのであれば、人間の赤子をすべて捕らえればいいだけのこと」
転生祭り
勇者(うああああああああああああああああああああああああああ)
勇者(なんで……なんで僧侶があんな目に……)
勇者(また……俺は転生するのか?)
勇者(やめろ!神様!お願いだ!お願いします!俺なんかどうでもいい!)
勇者(僧侶を助けてくれ!お願いだ!僧侶にもう一度……)
勇者(今度は幸せな人生を……お願いします)
勇者(神様……お願いします……お願いします……)
―――勇者(♂0歳)
勇者(また俺が転生したのか……)
医者「元気な男の子ですよ」
母「ああ、神様、ありがとうございます」
勇者(神……なんでだよ……なんで俺なんだ……)
父「ああ、神様に感謝しよう」
勇者(神なんて糞ったれだ……)
母「でもこの子泣かないわね」
勇者「……」
勇者(糞、糞糞!僧侶のいない人生なんて……)
父「まさかのどに何か詰まっているんじゃ」
勇者「……」
勇者(僧侶のいない人生なんて……)
医者「いえ、そんなことはなかったです」
母「噂のサイレントチルドレンっていうのかしら」
勇者「……」
勇者(……いらない)
―――魔王城
魔王子「側近、最近なにやら人間達にちょっかいを出しているようだな」
側近「いえ、勇者が転生したというので赤子狩りでもと思いましてね」
魔王子「人間達を奴隷化しているという話も聞くぞ」
側近「人間など家畜も同然。何を遠慮することがありますか」
魔王子「父はそのようなことを命じたのか?」
側近「命じるも何も魔王様は部屋から出てこられないではありませんか」
魔王子「では父がそのようなことを命じろと思うのか?」
側近「人間の代表の勇者を倒せばすむというような簡単な話ではないのですよ。これは」
側近「まぁ私に任せてください。魔王様もきっとお喜びいただけるはずです」
魔王子「……」
バン はよ
バン (∩`・ω・) バン はよ
/ ミつ/ ̄ ̄ ̄/
 ̄ ̄\/___/
バンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン
バン (∩`・ω・) バンバン
_/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
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(;; (´・:;⌒)/
(;. (´⌒` ,;) ) ’
(´:,(’ ,; ;'),`
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ミ( ;´・)
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―――勇者(♂6歳)
母「あなた、最近王国のほうで子供がさらわれる事件が増えてるんですって」
父「このあたりは田舎だから大丈夫だろう」
母「心配だわ。この子に何かあったら……」
勇者「……」
父「安心しろ。何かあったら父さんが守ってやるからな」
勇者「いい」
父「むっ、お前信用していないな?こう見えても父さんは昔勇者様に剣を教えてもらったことがあるんだぞ」
勇者「どうでもいい」
勇者(女の子一人守れない俺なんてさらわれて地獄に落ちればいいんだ……)
父「よし、お父さんが剣の玩具を買ってやろうか」
勇者「いらない」
母「でも今日はとってもいいプレゼントがあるのよー?」
勇者「?」
トントン
母「あ、来たみたい」
少女母「どうも、こんにちは」
母「いらっしゃい。ほらっ、勇者もあいさつして」
勇者「……」
母「もうっ、この子ったら無愛想ですみません」
少女母「お隣に越してきました。これからよろしくお願いします。ほらっ、あなたもあいさつあいさつ」
少女「よろしく」ニコッ
勇者「!?」
勇者「その顔は……僧侶!?」ダッ
勇者「僧侶なのか?なぁ、そうなんだろ?な、なぁ」
母「うふふ、この子ったら可愛い子には目がないのね」
少女「そうりょ?だれ?あたしは少女っていうの」
勇者「え……」
勇者(そっくりなのに……)
少女「ねっ、あたしたち同い年なんだって。お友達になりましょう」スッ
勇者「……うっせー!ぶす!」
バターン
母「あ!こらっ!すみません……ごめんね、少女ちゃん……ってあら?いない」
少女母「謝らないでください。うふふ、あの子も言われっぱなしでいるような子じゃありませんから」
―――空き地
勇者「くそっ!なんだよ!顔だけ似てやがって!期待させやがって!」
勇者「ううっ……」
少女「ちょっと君!」
勇者「ついてきたのか……」
少女「いきなりブスはないでしょ!女の子にそんなこと言っちゃダメよ」
勇者「あー、はいはい。悪かったよ」
少女「はい、は一回!」
勇者「はい、それじゃあね」スッ
少女「ちょっと待って。まだ終わってないわよ」ギュッ
勇者「なんだよ」
少女「まだ名前を聞いてないわ」
勇者「どうでもいいだろ」
少女「いいから教えなさい」
勇者「勇者……」
少女「ふーん、じゃあ勇者ちゃんね」
勇者「はぁ!?」
少女「私のことは少女様と呼ぶが良いわ」
勇者「なんでお前だけ様付け!?」
少女「冗談よ。少女ちゃんでいいわよ」
勇者「よばねーよ……」
少女「え?」
勇者「もう放っておいてくれ!」ダッ
勇者(僧侶のことを思い出させないでくれ……)
少女「泣いてた……?なんで?」
―――勇者(♂12歳)
ヤンキー「へへっ、見ろ。こんな宝石盗んできてやったぜ」
不良「あそこの魔族の貴族だろ?金もってかんなー」
チーマー「すっげ。マジすっげ」
ヤンキー「これも兄貴のおかげだよなー」
不良「兄貴はマジぱねぇっすからなー」
チーマー「兄貴マジすっげ」
勇者「兄貴とか呼ぶな。お前ら俺よりずっと年上だろうが」
不良「でも俺らのチームのリーダーじゃないっすか」
勇者「誰もいない場所だから俺はここにいるだけだ。後からお前らが来たんだろ」
不良「俺らコテンパンにやられちまったっすよね。ぎゃはははは」
チーマー「すっげやられた」
ヤンキー「兄貴じゃないなら先生ってことで」
不良「で、先生、新しいメンバーつれてきたんすけど見てくれますか」
チンピラ「あ?何?このガキ?」
勇者「……」
ヤンキー「お、おい……」
チーマー「やっべ、こいつマジやっべ」
不良「こら、謝れ」
チンピラ「お前らこんなガキにしめられてんの?ダッセー」
チンピラ「僕ちゃんおいくつちゅかー?ばぶば……」
勇者「……騒々しい」ゴスッ
チンピラ「いでぇ!」
チンピラ「な、なんだよ、こいつ強すぎね?」
少女「……」キョロキョロ
少女「あ、またこんなところにいた!勇者ちゃん!」
勇者「またお前かよ……」ポリポリ
少女「お父さんもお母さんも心配していたよ!帰ろう!」
勇者「ほっておけっての」
チンピラ「なぁに?この女の子。かわうぃーねぇ、へへへ」ズィ
少女「こんな不良とチンピラとヤンキーとチーマーのたまり場みたいなところにいちゃダメよ!」
チンピラ「無視すんなよぉ」
少女「な、何よ」
チンピラ「なぁ俺たちと楽しいことしようぜ」ワキワキ
少女「ちょっ、ちょっと近づかないでよ」
チンピラ「なぁ、みんな。この子みんなでまわしちまお……ぐええええ」
勇者「……」ギリギリッ
不良「ちょっ首はまずいっすよ!兄貴!」
勇者「ふんっ」ポイッ
チンピラ「……」ピクピクッ
少女「あ、ありがと……勇者ちゃん……」
勇者「帰れ……ん?誰だ?」
魔族「あー、ここだここだ。将軍。ここですぜ」
戦士「……」
勇者「!?」
魔族「ここのやつらが最近魔族から金品奪ったりしてるんでさぁ」
魔族「で、お探しの12歳くらいの子供ですがね。ほらっ、あそこに……あれ?女のガキと二人いる」
魔族「まぁいいや。全員やっちまうんでしょ?あっしにもやらせてくださいよ」
戦士「俺の楽しみを奪う気か?」ゴゴゴゴゴッ
魔族「へ、へぇ……滅相もない。お任せします」
不良「な、なんだ。たった二人っすか」
ヤンキー「やっちまおうぜ!」
チーマー「すっげ余裕。すっげ」
勇者「や、やめろ!」
ゴス
ドガッ
ドゴォ
不良・ヤンキー・チーマー「ばたんきゅー」
戦士「次はこのガキだ」ザッ
少女「ひっ……」
勇者「やめろおおおおおおおおおお!」ガッ
戦士「木の棒か……だがこの太刀筋は……」
勇者「くっ……全然効いてないな」
勇者(魔力を使うか……いや、使ったら別の魔族に感知されてしまう……剣技だけでやるしかない!)
勇者「はぁああ!」ズバッ
戦士「鎧に傷をつけただと……ならば……」ジャキンッ
勇者(やばい……剣技だけでこいつには勝てない……)
戦士「子供だろうと遠慮はいるまい」
少女「ゆ、勇者ちゃん!危ない」ガバッ
勇者「馬鹿!どけ!」
戦士「二人まとめて死ぬがいい!」ドスッ
勇者「がぁはっ」
戦士「心臓を貫いた。たわいもない」
魔族「おおー。さすが!あ、でも子供は殺すなって命令じゃなかったんですかい?」
戦士「あ?まだ斬りたりないんだがな?どう思う?お前斬られるか?」
魔族「ひ、ひぃ!だ、黙ってます!」
戦士「くだらん任務だ!待ってるやつがいるってのにこんなところで盗賊ごっこか!」
魔族「こんなやつらの待ってる家族なんてろくでもないのっしょ。へへへ」
戦士「まったく!呆れるぜ!行くぞ!」
魔族「へい!あ、でも剣刺したままですぜ?」
戦士「あんな屑どもの血で汚れた剣などいらん!」ザッ
少女「勇者ちゃん。もう起きていい?」
勇者「ああ」
少女「ほかの人たちは?」
不良「いてぇっす」
ヤンキー「いつつ」
チーマー「すっげ」
勇者「無事みたいだな……」
勇者(服を貫いて殺したふりをした?それに最後の言葉……そしてこの残していった剣は……)
勇者(俺の勇者の剣じゃねーか……)
勇者「戦士……」ポタポタ
少女「勇者ちゃん、泣いてるの?痛いの?」
勇者「くっそー、お前かよ……くっそー」
少女「?」
勇者「俺のこと待ってるやつってお前かよ……くそっ!俺はホモじゃねーぞ。うっ……ぐすっ」
少女「勇者ちゃん大丈夫?ねぇ勇者ちゃん」
勇者(行ってやるよ!これで最後だ!)
くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、不良達のみんなへのメッセジをどぞ
不良「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」
チーマー「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」
チンピラ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」
ヤンキー「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」
DQN「・・・ありがと」ファサ
では、
不良、チーマー、チンピラ、ヤンキー、ほDQN、俺「皆さんありがとうございました!」
終
不良、チーマー、チンピラ、ヤンキー、ほDQN「って、なんで俺くんが!?
改めまして、ありがとうございました!」
本当の本当に終わり
―――魔王の間
「誰だ!ぐわぁ!」
「待て!とま……ぎゃっ」
勇者「はぁはぁ……どけ!もう……俺は立ち止まらない!」
ギギィ
勇者「魔王!どこだ!」
魔王「……」
勇者「そのカーテンの向こうか!出て来い!」
魔王「……」
側近「魔王様は動けませんよ?」
勇者「お前は……」
側近「はじめまして、魔王様の側近です。それともお久しぶりですか?勇者」
勇者「お前は魔王子に付いていた……」
側近「いやぁ、感謝しますよ。あなたのおかげでここまで入ることができた」
勇者「何?それに魔王が動けないとはどういうことだ」
側近「ふふふっ、魔王様はね?危篤なんですよ」
勇者「何!?」
側近「あなたの一撃が原因でね。でもしぶとくってですね、困っていたんですよ」
側近「さっさと死んでくれれば私が新しい魔王になるものを」
側近「暗殺してやろうとも思いましたがここは警備が厳しくってですねー。あなたが警備をやぶってくれて助かりましたよ」
側近「あなたが殺したことにすればいいことですしね」
勇者「俺に勝てるとでも?」
側近「それは私の台詞ですよ。仲間もなしに私に勝てるとでも?くくくっ、あの僧侶はどうしました?」
勇者「ぐぅ……ううっ」ギリッ
???「勇者様!あなたは一人じゃありませんよ」
勇者「ま、まさか!?そ……」
そげぶ?
魔玉子でしょ
魔法使い「あなたは私が守りますから!……ぬぁんちゃって」ペロッ
勇者「魔法使い!」
魔法使い「どう?似てた?僧侶かと思った?あははははははははは!おっかしぃー」
勇者「くぅ……」ギリッ
魔王「ああ!勇者様!勇者様は私が守ります!きゃはははははははは」
魔法使い「僧侶はね、死んだの!あたしが踏み殺したの!あんたと違って生まれ変わることもないの!ばっかじゃないのぉ」
勇者「お、お前……」
魔法使い「ほんっと僧侶って馬鹿よねぇ。あの時も血だらけのあんたを担いで窓から逃げちゃって」
勇者「は?俺を担いで?」
魔法使い「なぁに?あの子言ってなかったの?ほんと馬鹿ねぇ、あははははは!知ったらあんたが傷つくとでも思ったのかしら」
勇者「どういうことだ」
魔王→魔法使い 間違えました
魔法使い「あの子はあんたを担いで逃げ出したのよ、魔王から。どうせ助からないのに」
勇者「そんな……それじゃあ俺が死ぬ寸前に感じたあの温もりは……」
魔法使い「そういえばどっかの学校であんたが死んだ時も同じようなことしてたんだってね。何回同じことすれば気がすむのよ。あはははははは」
勇者「そうか……だから勇者の剣も今俺の手に……僧侶が……持っていてくれた……」
魔法使い「ほんと死ねばいいのに」
勇者「魔法使いいいいいいいいいい!」ダッ
側近「おっと、後ろががら空きだぞ?」ジャキンッ
勇者「くっ……」
戦士「後ろががら空きなのはお前だ」ドスッ
側近「な……ん……だと……がはぁ……」
勇者「戦士!?」
戦士「勇者……ったくよお……ほんっと……ったくよぉ……待たせすぎだぜ……」ブルブル
勇者「待たせた……悪い……」
側近「ぐおおおお……だがこの程度では……」
魔王子「灼熱!」ゴゴゴゥ
側近「がああああああああああああ!魔王子様……なぜ……」
魔王子「お前が父を暗殺しようとしていることは分かっていた。やっとしっぽをだしたな」
側近「く、くそう……があああああああああ!魔族には私のような指導者が必要なのだ!魔王やお前のような甘い考えでは……ぐああああああ」ボシュー
魔王子「戦士、よくやってくれた」
戦士「はっ、魔王子様!」ザッ
勇者「お、おい。どういうことだ」
戦士「あー、これで契約終了。やっと普通に喋れるぜー!」
戦士「ったくあんな堅苦しい言葉使いキャラじゃねーっての」
勇者「どういうことだ」
戦士「俺が魔族に捕まったって話は聞いたか?」
勇者「ああ……」
戦士「そのとき俺は殺されちまうか、いっそ自分で命を断とうと思っていたんだ」
戦士「でも結局そうしなかった……」
勇者「なんでだよ」
戦士「待つことにした。いつかお前のような人間が来るときまで生きて待とうとな。それまでは裏切り者と呼ばれようと、どんな屈辱でもなんでも受けてやろうとな」
戦士「そんな時、俺は魔王子と契約したんだ」
勇者「契約?」
戦士「ああ、側近の企みは魔王子としても許しがたいものだったらしい。それを阻止して、その後、勇者と戦わせろってな」
勇者「はぁ?俺と戦いたいのか?」
戦士「そして俺も一緒に戦うぜ!」
魔王子「待て……父の心臓が今……止まった」
勇者「……」
魔王子「父の意思は私が受け継ぐ……魔力とともにな」ゴゴゴゴゴッ
勇者「敵討ちか?」
魔王子「そうかもしれない。だが父とお前は敵同士といえど正々堂々と戦ったであろう?」
勇者「ああ……強かった……そして負けた」
魔王子「いや、相打ちだ。そしてそんなお前と私は戦いたくなったのだ。一人の男としてな」
勇者「……」
魔王子「魔族と人間。どちらが上か。決めようではないか」
勇者「わかった……」
魔法使い「は……はは……なにそれ?男同士できもいんですけどぉ。そういうのはBL本のなかだけで……」
バキィ
戦士「おまえちょっと黙ってろ」
魔法使い「」ガクッ
魔王子「さぁ!世界の覇権をかけて!かかってこい!」バッ
勇者「いくぞ!戦士!」
戦士「おお!」
カッ
―――数日後
戦士「お前この後どうするんだ?よかったら俺の村に……」
勇者「うほっ、遠慮します」
戦士「そうか。だけど、お前ならちゃんと表に出れば英雄扱いされるぞ」
勇者「そのつもりはない……じゃあな」
戦士「お、おい……」
勇者「なんだ?」
戦士「死ぬなよ?」
勇者「……」ダッ
戦士「お、おい!」
―――エピローグ
勇者「この塔がこの町じゃ一番高いかな」ヒュー
勇者(魔王も魔王子も倒した……もう俺の役目は終わりだ)
勇者(もう死んだって転生することはないだろう)
勇者(この町で生まれたこの体……この町に返そう……)
勇者(俺を待ってた戦士もちゃんと救えたしな)
勇者(僧侶との約束も果たした……)
勇者(でも……もう僧侶はいないんだ……もう疲れたよ……)
勇者(もう待ってるやつもいないしな……)
勇者(この高さから無防備で落ちれば……)ダンッ
勇者(死ねば僧侶に会えるかな……無理か……俺は地獄行きだろうからな)
ヒュー
少女「行ってきます!」
少女母「まだ勇者ちゃん探してるのかい?」
少女「うんっ!だってもう一ヶ月もいないんだよ!はやく探してあげないと」
少女母「でもそんな毎日じゃあんたのほうが心配だよ」
少女「大丈夫!それになんか放っておけないもん!」タッ
勇者(もうすぐ……全部終わる……んっ)
少女「勇者ちゃーん!どこにいるのー!」
勇者(少女!?まずい!ぶつかる!)
勇者「疾風魔法!!」ギギィ
勇者(風でブレーキを……間に合うか!?)
ギギィ
勇者「ぐえっ」ダンッ
少女「きゃっ」
少女「え?勇者ちゃん!?なんで上から?」キョロキョロ
勇者「うるさい!邪魔しやがって!俺はもう死ぬんだ!」
少女「え?」
勇者「俺なんてもう生きていても仕方ない!」
少女「!!」
パシーン
少女「何てこと言うの!!」
勇者「!?」
少女「冗談でも言っていいことと悪いことがあるでしょ!」
勇者「そ、その台詞……どこかで……僧侶……」
少女「死ぬなんて言わないでよぉ。うわああああああああああん」ポロポロ
勇者「うっ……うっ……うわあああああああああああああん」ポロポロ
「なんだなんだ?あ、行方不明の……」
「父のところの勇者君じゃないか。無事だったんだ」
「あたし呼んでくるわ!みんな心配してたもの!」
「よかったなぁ。本当によかった」
おしまい
最後まで見ていただいた方いましたらありがとうございました。
それでは!
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この勇者頭弱すぎww