忍「極秘任務、でございますか?」 (10)

ある作品の二次です

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武者奉行「おうよ。おめぇの実力を見込んで一つ頼み事がある」

忍「頼み事などとおっしゃらずご命令下さいませ。 この忍、命に代えてでも遂行してみせまする」

武者奉行「まぁ、そう固くなんな」

武者奉行「確かに、身分の上じゃあオレが上で、おめぇは直属の部下になるがぁ・・・オレぁそういう堅苦しいのは嫌いじゃ。 あくまでうちの大名様が決めた関係よ」

忍「・・・あまり滅多なことは口になさいませぬよう・・・聞く者が聞けば、比喩でなく首が飛びまする」

武者奉行「くっ、時と話す相手は選んでるつもりだぜ。 それにこん場所ぁ、余計な目も耳もない。 心配はいらねえよ」

忍「・・・」

武者奉行「ともかく、今からオレが頼もうとしてる事ぁ大名様の指示とは関係ねえ。 意向も汲んでるとは言い難い」

武者奉行「だからよ、これは“仕事”じゃあねえ。 断るのも自由だ」

武者奉行「勿論、お上に報告するのもなぁ・・・ くっく」

忍「剛毅なお方だ」

武者奉行「・・・で、どうするんじゃあ? この頼み。 断るか、聞き入れてくれるか・・・」

忍「因みに断った場合?」

武者奉行「・・・くくっ」



忍「それではこの娘を探し、武者奉行殿の前に連れてくれば良いのでございますな?」

武者奉行「おう。ちっと似顔絵と人相が違ってるかもしんねぇが・・・後は渡した通りだ」

忍「名は津雲、赤い瞳に・・・黄金の如き髪色が特徴でございますか」

武者奉行「ああ」

忍「・・・分かり申した」

武者奉行「お上にゃあ不在の理由を繕っとく。 そうさな・・・紀伊に出向かせたとでも伝えとくか」

忍「異論はありませぬ。 丁度良き頃合いかと」

武者奉行「じゃあ頼んだぜ」

忍「はっ」



山中

忍「・・・ううむ」

(前情報通り、いやそれ以上に峻厳な山だ。 無事に渡りきれるだろうか)

忍「・・・」

シュバッシュバッ

修験僧「待たれよ」

忍「っ!」

ピタッ

修験僧「お主、付近の者ではないな。 この六甲の地に何用か」

忍「・・・」

修験僧「口にする気はないか。 ・・・愚かな」

ビュオオォォォォォ

忍「!?」

修験僧「度重なる暴虐にて荒廃の危機に晒されしこの山・・・ お主を襲う猛き風、山の怒りとしれ」

ビュオオォォォォォ ザシュッ

忍「っ・・・」

バッーースゥ

修験僧「む・・・面妖な」



山麓


ーーーーシュバッ

忍「・・・」

(思わぬ邪魔が入った。 別の路をいこうとしても見越されたかのようにあらわれ、牽制される)

(山を迂回していくか・・・ しかしそれでは時間がかかりすぎる)

忍「・・・くっ」

スタスタ

「阻まれたか」

忍「・・・」

覆面「無様・・・と言いたいところだが、お前ほどの手練れが足止めを食うか。 ただ事ではないようだ」

覆面「今回の件、あまり手助けは出来そうにない。 重要な案件が生じた」

覆面「きな臭い噂・・・ お前の任にも影響が出るやもしれぬ」

シュバッ

忍「・・・」フゥ




麓付近の村


村人「おや娘さん。見ない顔だねぇ」

忍「三河より参りました商家の娘で染と申します。 父の使いで安芸国へと行脚しております」

村人「商家の娘さんが一人で・・・? 織田領と毛利領の国境(くにざかい)を往くのは大変だろうに」

忍「使用人がついていたのですが、この先の山ではぐれてしまいまして。 どうしたものかと・・・」

村人「六甲を越えようとしたのかい!? そりゃ無茶ってもんだよ」

忍「はい・・・近道になるかと思ったのですが、とても進めたものではなく」

忍「せめて使用人と合流したいのですが・・・」オロオロ

村人「ううん・・・それは、しかしこの先の山にゃあ天狗も・・・」

忍「天狗?」

村人「ああ。このところ戦乱続きで何かと入り用だからねぇ・・・」

村人「山ん中に築かれたっていう城も、しょっちゅう騒ぎになってるって噂だよ」

忍「・・・」

村人「なんでも天狗っちゅうんは意のままに風を操るらしいじゃないか」

村人「その使用人ってのも、何かお怒りに触れたんじゃあ・・・」

忍「そう、ですか」

忍「・・・」

忍「あの、山に詳しい方をご存じないでしょうか」

村人「まさかまた山に入る気かい!? 娘さん、そりゃあ」

忍「山を越えようと無理を言ったのは私なのです。見捨ててはおけません」

村人「・・・立派だねぇ。このご時世、そう言える人はそういないよ」

ズッーーズズーー

村人(うちらもそうできたらどんなに・・・)

忍(・・・)

村人「わかった。案内くらいしかできないが、林の爺さんのところに連れていこう」

村人「あの爺さんは修行僧で、若い頃何度も山に入ったらしいからね・・・」


村中 畦道


忍「このあたりは・・・」

村人「村のもんが共同で耕してる田んぼさ。あっちに畑もあるよ」

村人2「おや、トメさん。そちらのべっぴんさんは?」

村人「商家の娘さんさ。三河の方からきたらしい」

子供「へー」

子供2「へー」

子供3「きれいなキモノー。いいなあ」

忍「お邪魔しております」

村人2「へえ三河から! そりゃまたよくいらしたね」

村人「ちょっと立て込んじまったらしくてね。林の爺さんとこに案内してくるよ」

忍「作業のお邪魔をして申し訳ありません」

村人2「はっは。気立ての良い娘さんだな」

村人3「なんもねえとこだけど、ゆっくりしていってや」

ザクッ ザクッ

村人「あんま長居してる訳にもいかないね。うちのむさい男どもが色目使ってくる前にいこうか」

忍「あはは」

テクテク

少女「・・・」

忍「あれ? あの子は・・・」

村人「うん? あ、ああ・・・どうかしたかい」

忍「いえ、他の子供と何だか様子が違って見えたものですから。単に休憩か何かしているだけですかね」

村人「・・・ああ」

ズッーーズズーー

村人(なんでこんなときに・・・!)

忍「・・・どうかしました?」

村人「い、いや。なんでもないよ。歳のせいかね、ぼうとしちゃっていけないね、はは」

忍「大丈夫ですか? ご無理をさせる訳には・・・ なんでしたら、大体の目星を教えていただければそれで」

村人「っ、大したことじゃないさ」

村人「娘さんの言葉に心打たれて引き受けようとしたんだしね。最後まで責任は持たせておくれよ」

ズッーーズズーー

村人(よそのもんを自由にうろつかせる訳にゃいかねえ。 ごまかし方が悪かったか)

忍(・・・?)

忍「それでは・・・ 重ね重ね申し訳ありませんがお願いいたします」ペコリ

村人「頼まれたよ」



村人「さ。着いたよ」

村人「あの手前に見えるのが爺さんの住む小屋だ」

忍「ありがとうございます。 本当に・・・何と申し上げたらよいか」

忍「・・・あの。これをお納めください」

村人「これは・・・き、金かい? 髪飾りの形をしているようだけど・・・」

忍「黒川金山より採れた金をあしらったものです。 お受け取りください」

村人「こ、こんなもん・・・ 受け取ってちゅうても受け取れねえよ。 幾らなんでも見合わねえ」

忍「私にはそれだけ価値あることをしてくださったのです。 受け取ってもらわなくては、三河の商人の娘として面目が立ちません」

村人「そ、そう言われてもなあ・・・!」

翁「・・・人ん家の前で何ぞ騒いどるんじゃあ。静かにせんか」

村人「っ、爺さん」

忍「こちらの方が?」

翁「何じゃ、儂に用があったんかい。 てっきり悪ガキどもが冷やかしに来たのかと思ったわ」

忍「初めまして・・・三河より参りました染と申します」

村人「はあ、相変わらず無愛想な爺だね。 お客さんを怖がらせてるじゃないか」

翁「・・・ふん。 愛想をふりまくのは苦手じゃ」

村人「・・・染さん。 爺さんと話がついたら田んぼにおいで。 お礼の件はまたそのときに」

忍「いえ、そうも参りません。 私としても体裁がありますし・・・何より急いでおりますので」

忍「もしご迷惑であれば捨ててくださって構いません」

村人「・・・」

スタスタ

翁「何じゃい・・・揉め事はごめんじゃぞ」

忍「お騒がせしました。 ですが急ぎ教えていただきたいことが」

翁「・・・まあ、いいわ。 小屋ん中ぁ入りな」

忍「お邪魔します」

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