憧(しず・・・雨に打たれながら泣いてる・・・。何か辛いことでもあったのかな・・・)
穏乃(春に降る雨は、あの透明でツルツルして美味しい春雨なんじゃなかったのか・・・!くそぅ、くそぅ・・・)ポロポロ
憧(そっとしといてあげたいけど、ほっとけないよ!)
憧「しず!風邪ひくといけないからおうちに入ろ?ね?お菓子もあるから・・・」
穏乃「うん・・・」
憧(よかった・・・。しず、こんなに濡れて、まぶたも赤くなって・・・。慰めてあげたい・・・)
穏乃(お菓子ってなんだろう・・・?)
憧「ほら、これで体拭いて・・・」
穏乃「うん・・・あいがと・・・」
憧(しず、相変わらず華奢な躰・・・。誰かが支えてあげないと今にも壊れちゃいそうな・・・。こんなに儚い表情をたまに見せるからほっとけないのよね・・・)
穏乃(お菓子まだかな・・・)
憧「はい、お茶淹れたわよ。それとお菓子ね。このお菓子は神社へのお供え物をいただいたの。ご利益あるわよ?」
穏乃「ふぐぅ・・・うえぇぇぇん・・・」ポロポロ
憧「ちょ、ちょっと、何でまた泣くのよ・・・?」オロオロ
穏乃「何でもない・・・ごめん・・・憧・・・」ポロポロ
憧(優しくされて、また気が緩んじゃったのかな・・・?どうして穏乃がこんなに弱ってるのか知らないけど、どうしよう・・・)
穏乃(このお菓子、私が苦手なすあまだ・・・。うえぇぇん、嫌だよぉ・・・)
憧「その・・・何があったか知らないけど、無理そうなら口つけなくていいからね・・・?ほら、雨に濡れた体があったまるからお茶は飲みなさい?ね?」
穏乃「うん・・・」
憧(ほっ・・・。よかった、少しは落ちついてくれたわね・・・)
穏乃(よかった・・・。すあま食べなくて済みそう・・・)
穏乃「・・・ふぅー、ふぅー。・・・んくっ」
憧(ちっちゃな体のしずが、湯飲みを両手で持ってチビチビお茶を飲んでる姿は癒されるわね・・・)
穏乃「ふぇぇ・・・」ポロポロ
憧「わわっ!もう、どうしたのよ・・・」
憧(私がよこしまな気持ちでしずを見てたのがバレた!?いやいや、それはない。しず・・・どうしてそんな辛そうなのよ・・・)
穏乃(お茶が熱くて舌をヤケドしたかも・・・。うぇぇん・・・)
憧「よしよーし、いい子だから泣かないでねー?はい、なでなで」サスリサスリ
穏乃「うぅぅ・・・」
憧(普段元気なしずが見せる弱気な姿・・・。反則でしょこれ・・・。あー、もう!抱きしめてあげたい!)
穏乃(何で私は舌をヤケドして、憧に子供みたいにナデナデされてんだ・・・。どうしよう、何だか惨めな気持ちになってきた・・・)
穏乃「ふぇぇーん・・・」ボロボロ
憧「わわっ、どうしよどうしよ・・・。お願い、泣き止んで、しず・・・」ギュッ
憧(えーい、もうどうにでもなれっ!もう抱きしめちゃったもんね!・・・それにしても、小さくて細い躰・・・。こんな子が一人で麻雀部立ち上げて全国目指そうっていうんだもん・・・。無理させちゃったのかな・・・)
穏乃(うぅぅ、子供の頃は私の後ろをいつもくっついてきてた憧になでなでされるばかりか、子供みたいに抱きしめられて慰められてる・・・。こんなのってないよ・・・)
穏乃「ふぅぅぅぅ・・・」ポロポロ
憧「ごめんね、しずの気持ちわかってやれなくて・・・。これからはあたしがしずを支えていくから・・・。だから安心して・・・。ね・・・?」
穏乃「うぅ・・・」フルフル…
穏乃(くそぅ、くそぅ、私より背も胸も大きくなったからって・・・。頭もいいからって子供扱いして・・・。悔しい・・・悔しいよ・・・)
憧(こんなに震えちゃって・・・。いいんだよ、しず・・・。今はあたしに甘えときなさい・・・)
穏乃「あっ・・・」
憧「んー?どうかしたのー?」
穏乃(そういえば憧、部活終わった後におやつの残りをポケットに入れてたな・・・。憧、そういうとこしっかりしてるもんな・・・。確かチョコが・・・)
憧(もしかして急に恥ずかしくなったとかかしら?しずって、そういうとこあるからね)
穏乃「・・・・・・・・・」ゴソゴソ
憧「んんっ・・・///」
穏乃(なかなかポケットに手が入らないな・・・。憧、特に反応してないし気付いてないよね・・・?憧ばっかりおやつ持ってきてズルイ・・・。こっそりポケットから抜いて食べちゃおう・・・)
憧(えっ?えっ?何でしず、そんな・・・いきなり手を・・・///)
憧(もしかして抱きしめたりしたからそういう気になっちゃったのかな・・・?も、もう、しずったら・・・///)
穏乃「憧・・・今日はいい天気だね・・・」サワサワ
憧「ふぇっ!?へ・・・ええ、う、うん、まあ確かに・・・///」
穏乃(とりあえず、憧の気をポケットから逸らす為に適当な話題を振ろう)
憧(しずったら、今日は雨じゃない・・・。しず、緊張してるのかな・・・?で、でも、あたしもいっぱいいっぱいでまともに答えられないよぉ~///)
穏乃「今日が雨じゃなかったら、こうしてること(憧のチョコをこっそり奪う)もなかった・・・」サワサワ
憧「ふぁぁ・・・」ビクビクッ
憧「そ、そうね・・・///」
穏乃(お互い密着して抱き合ってるから、手が上手くポケットにいかないな・・・)
憧(しずったら、念入りに腰周りを撫でて・・・///)
憧(どれだけ焦らし上手なのよ・・・///)
穏乃「えーっと・・・憧、ほら、何か憧の方からも話してよ」スルッ
穏乃(よし、ポケットに入った!)
憧(くぅっ・・・///)
憧(し、しずったら、もう、どこに手を入れてんのよ・・・///)
憧「え、えっと、そうね・・・。あたしはしずになら・・・いいよ・・・///」
憧(きゃーっ、言っちゃった言っちゃった!しず、なんて言ってくれるのかしら///)
穏乃「ん・・・わかった・・・。それじゃいただくね・・・」
穏乃(こっちのポケットにチョコはなかった・・・。という事は反対側のポケットに・・・)
穏乃(そして、憧の言葉から察するに、ポケットに手を入れたのがバレた・・・。でも、きっと勝手に取って食べていいって意味だよね)
穏乃(よし、反対側のポケットに手を・・・)
憧(えっ・・・?うそうそ!?これって、しず、オッケーってこと・・・?)
憧(あの、ちょっと鈍感なしずが・・・!?やだ、嬉しい・・・)
憧(で、でも、こういうことしてるってことは・・・)
憧(やだ・・・嬉し過ぎる・・・)
穏乃「・・・・・・・・・」サワサワ
憧(しずったら、無言になっちゃって・・・。こんなに手探りで・・・。うわっ、何だかすごく緊張・・・すごく恥ずかしい・・・///)
憧(汗とかかかないようにしなきゃ・・・)ドキドキ
穏乃「・・・・・・・・・」スルッ
穏乃(よし、こっちのポケットに手が入った!)
憧「・・・ぁっ///」ピクン
穏乃(向こうのポケットになかったってことは、こっちにあるはず・・・)サワサワサワ
憧「んんんっ・・・///」ビビクン
穏乃「えっ・・・」ピタッ
憧「ど、どうしたの・・・?」
穏乃(チョコレートが・・・無い!?何で・・・?)
憧(どうして止まっちゃうの・・・?しず・・・何で・・・?)
穏乃「ごめん、憧・・・。今日はもう帰る・・・」ポロポロ
憧「あっ・・・しず・・・」
穏乃(くそぅ、くそぅ・・・。うかつだった・・・。今までの時間に憧が食べてたかもしれないって可能性を考慮に入れてなかった・・・!私のバカ・・・!もう帰ってふて寝しよう・・・)トボトボ…
憧(しず・・・泣いてた・・・。そうだよね、あたしが傷心のしずにつけこむような真似したから・・・)
憧(あんなに辛そうなしずだったのに・・・。あたしはそれをわかってたのに・・・。ごめん、しず・・・)
翌日
穏乃「よっ、憧」
憧「あ・・・うん・・・」
穏乃「どうかしたのか?元気ないみたいだけど・・・」
憧(しず、昨日のことわざと言わないでくれてる・・・。こんな卑怯なあたしに気遣って・・・)
憧「昨日はごめん・・・」
穏乃「え・・・?いや、気にしてないからだいじょぶだよ、憧」
穏乃(何かあったっけ・・・?あ!そういえば・・・!)
憧(昨日あんなに辛そうだったのに、今日はこんなにも何でもないふりしてくれてる・・・。自分の方がきっと辛いはずなのに・・・)
穏乃「そういえば、昨日タオル借りたまんま持って帰っちゃってたたんだった。こっちこそごめん」
憧「あ、そんなのいいのよ。なんだったらもらったっていいし・・・」
穏乃「ううん。そんなわけにはいかないよ。今日帰りにうちに寄りなよ、憧。あ、ついでに今夜泊まってったら?明日は土曜だしさ」
憧「えっ?・・・えっ?あっ・・・はい・・・///」
憧(どういうこと・・・?も、もしかして、昨日はそんな気分じゃなかったけど、今夜はオッケーってこと・・・!?)
憧(いやいやいや。で、でも、これってそういうことなんじゃ・・・!?)
穏乃「いやぁ~、助かったよ憧。親が急な用事とかで、今日から家に私だけなんだよ」
憧(き、きたーっ!!!!これは確定でしょ、もう絶対に!!!!よかった・・・)
憧「じゃ、じゃあ、泊まるなら着替えとか用意しないといけないし、一回家に帰ってからしずの家に行くね」
穏乃「うん。あ、それと」
憧「え、何?」
穏乃「なんか今日の憧、とっても女の子っぽいっていうか、何かそんな気がする(言葉が突っかかってこない大人しい感じだからかな?)」
憧「えぇっ!?そ、そんなことないから・・・。じゃ、じゃ、また後でね・・・///」
憧(しずったら、急に何言い出すのよ・・・バカ・・・///)
憧(でも、これでほんとにほんとで確定よね・・・。あたしを意識してくれてるってことだもんね・・・!)
憧(しっかり準備していかないと・・・。なんてったって、二人の初めての夜なんだから・・・!)
憧「お、お邪魔します・・・」
穏乃「いらっしゃーい。ささ、あがってあがって」
憧「う、うん・・・」
憧(しずったら、何だか積極的・・・///)
穏乃「飲み物持ってくから、部屋で待っててよ」
憧「わかった」
憧(久しぶりのしずの部屋・・・)キョロキョロ
憧(小学校の頃以来だけど、何だかすごくドキドキする・・・。このしずのベッドで今日、あたしとしずは・・・///)
穏乃「お待たせー」
憧「ひゃぁっつ!?の、ノックくらいしてよ、しず!」
穏乃「えっ?・・・それもそうか。ごめんね。あ、それと飲み物なんだけど、アイスコウティーでよかったかな?これしか冷蔵庫になくってさ」
憧「う、うん。何でもいいよ」
憧(コウティーって何よ?紅茶って言いたいの?ならティーでいいじゃない。まったく、あたしが緊張してるからリラックスさせたいのね・・・。ほんと、昔から優しいとこは変わってないんだから・・・)
穏乃「さて・・・と」
憧「ふぇっ?な、何?」
穏乃「することもないし、もう寝よっか」
憧「あ・・・うぁ・・・あの・・・///」
憧(ス、ストレート過ぎるでしょうが!で、でも、このまま・・・///)
憧(いやいや、汗とか大丈夫よね?ちゃんと来るときチェックしたし・・・。あ、でも、ここまで来る時結構歩いた・・・)
憧「ま、待って・・・。その前にお風呂入る・・・。その、一応寝る前だし・・・///」
穏乃「あ、だよね。ごめん」
穏乃(確かに睡眠前はお風呂だもんね。お母さんいないからそのまま寝ちゃえって思った私が恥ずかしい)
憧「じゃ、じゃあお風呂先に使わせてもらうわね///」タタタ…
憧(ふぅーっ・・・。やばいやばい。気恥ずかしさと緊張でまともに顔合わせられなかった・・・///)
憧(で、でも、この後はしずともっとすごいことが・・・)
憧(あわわ・・・///)
憧(と、とにかくまた念入りに洗わないと・・・)
穏乃「憧を待ってる間暇だなー・・・。かといって、することもないし・・・。まあ、少しだけ寝てようかな・・・」
穏乃「Zzz・・・」
憧「お待たせ・・・///」
穏乃「・・・・・・・・・」
憧(しず、もうベッドに入ってる・・・。それにとっても静か・・・。きっとしずも緊張してるのね・・・)
憧「しず・・・入るね・・・///」モゾモゾ
穏乃「んんーっ・・・」
憧(きゃーっ!しずと一緒のベッドに入っちゃった・・・///)
憧(で、でも、これからどうしたらいいのかしら・・・?しず・・・は大人しく布団に包まってるし・・・)
憧(布団を剥いだ方が・・・?でも、しずは自分の未発達な躰にコンプレックスを感じてるよね。だから布団に包まってる・・・)
憧(あたしも初めてで不安だし、とりあえずお互い緊張しないようにしなきゃ・・・)
憧「しず・・・。手、握ってもいい?」
穏乃「・・・うぅーん」
憧「あ、ありがと。それじゃ・・・」キュッ
憧(あったかい・・・。少し汗ばんでる・・・。えへへ、しずもこんなに緊張してるんだ・・・///)
憧(あたしの手を握り返す力もほとんどない・・・。そ、そうだよね。しずはいつも明るくて元気だけど、ほんとはちっちゃくて華奢な女の子だもん)
憧(えっと、次はどうしよ・・・?ん・・・?肘が当たってるけど、もしかしてしず・・・)
憧「し、しず~・・・?」サワッ
穏乃「んんーっ・・・」ピクッ
憧(やっぱりそうだ!しず、ジャージ脱いで裸だ・・・!もう用意はできてるんだ・・・!)
憧(そ、そっか・・・。あたしがお風呂入ってた間に・・・///)ドキドキ
憧(さ、最初はキスよね?あたしから誘えばいいのかな・・・?しずはこんなにも無防備で布団の中にいるんだもんね)
憧(あーっ、布団の中で様子がよくわかんないのがもどかしい!ま、まあ、お互いに気恥ずかしさを抑えるのに役立ってないわけじゃないから、そこはまあいいけど・・・///)
憧「しず・・・。その・・・いい?」ギュッ
憧(あたしはこんなに手が熱く、汗だってかいてる・・・。やばい・・・絶対握った手からあたしのドキドキがしずに絶対伝わってる・・・!)
穏乃「ううーんっ・・・」ゴロッ
憧「・・・ッ!?」
憧(ど、どうしよどうしよ!?しず、こっち向いてくれた・・・///)
憧(身長差でしずの顔はあたしのあごの辺り・・・。どんな表情なんだろう・・・?)
憧(うわー、手を握りながらお互い布団の中で向かい合わせってどんな状況よ!?ヤバイヤバイ・・・///)ドキドキ
憧(そ、それに、しずもあたしも裸・・・///)
憧(ど、どうしよ・・・あと一歩の勇気が踏み出せない・・・///)
ヴヴヴヴヴヴヴヴ ガタガタガタガタ
憧「!?」ビクッ
憧(こ、こんなときに電話!?あたしのはあらかじめ邪魔になんないように切っておいてあるから、しずの携帯だ。もう!何なのよこんなときに・・・!)
穏乃「もーっ、なんだよー、せっかく寝てたのに・・・」モゾモゾ
憧「!?」
憧(しずもあたしと同じこと考えてくれてた・・・///)
憧(えへへ、すっごく嬉しい・・・)
穏乃「・・・はぁ、玄さんからのメールだ。月が綺麗ですね?はぁ・・・そんなの知らないよ。まったく」ポチポチ
憧(しず、玄に告白された!?で、でも、まったく相手にしてない・・・。えへへ、だってしずはあたしと・・・///)
穏乃(まったく。玄さんはよくわけのわかんないメールとかくれるよな・・・。天気なんか、昨日から雨だってのに)
穏乃「ん・・・?」
穏乃(あれっ、これ・・・。今、どんな状況なんだ・・・!?)
穏乃(目が覚めたら憧が隣で寝てる・・・。しかも裸・・・)
穏乃(えっと、確か憧が泊まりにきて、何もすることないから寝ようって私が言って、憧がお風呂に行って・・・)
穏乃(あれ・・・それから記憶がない・・・)
穏乃「あ、あこ・・・」ドキドキ
憧「えへへ、な、何・・・///」
穏乃(何だか憧が艶っぽい・・・!?ど、どうしよ・・・私、いつの間にか憧にとんでもないことしちゃってたのかも・・・。憧が裸で隣に寝てたってことは私・・・)
穏乃(も、もしかしてエッチなことしちゃったのか・・・///)
穏乃(二人きりで一緒の布団で寝ると赤ちゃんができるっていうし、きっとそうだ・・・!)
穏乃「憧・・・責任は取るから!結婚しよう!」
憧「!?」
憧(やだ・・・何これ・・・!こんなサプライズあっていいの・・・!?あたし今、最高に幸せ・・・///)
憧「はい・・・喜んで・・・///」
その後、二人は両家公認のもとで交際をスタートさせる
玄「おねえちゃーん、言われた通りの文で穏乃ちゃんに告白メール送ってたけど、相手にされないどころかいつの間にか憧ちゃんと穏乃ちゃんが付き合ってたんだけど・・・」
宥「うーん・・・。何でなのかしら・・・?」
完
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