P「油断した」 (21)

P「端的に状況を説明しよう」

P「別に焦っていたわけではないんだ。むしろ落ち着いていた」

P「たしかにここは焦りとともにやって来る場所だ。万人が腹に黒い不浄なる物を抱えて駆けこむ場所だ」

P「しかし一度そこに身を落ち着けると、四辺の真っ白な無垢なる壁が、その不浄ごと優しく俺を包み込んでくれる…」

P「そして、俺のその汚れを、優しく受け取ってくれるんだ。ゆえにそのときの俺は落ち着いていた、間違いなく」



千早「……あの」

千早「なぜプロデューサーが女子トイレにいるのかを、端的に、説明するのでは?」

P「焦っていたんだ」

千早「先ほどは落ち着いていたと言っていましたが」

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千早「理由如何によっては、プロデューサーをインフェルノしてもよいのですが」ゴゴ

P「お、落ち着け千早! インフェルノは動詞じゃないぞ!」

千早「…なんでもいいです」ハア

千早「いいから、早く出て行ってください。お願いですから」

P「そ、そうしたいのは山々なんだが」

P「…実は、その、…拭く前にパンツを履いてしまってな」

千早「は?」

P「ゆ、油断していたんだ」

千早「なにからですか」

P「なんだろうなあ」ハハッ

千早「…プロデューサー…」ゴゴゴ

P「落ち着くんだ千早!」

千早「私はこの上なく落ち着いています」

P「た、頼む。このまま外に出ると、事務所での俺の名誉に関わる!」

千早「今さら気にするほどの名誉もないと思いますが」

P「あだ名がう○こ野郎とかになっちまう!」

千早「知ってたんですか?」

P「なにを?」

千早「……何でもありません」

P「……俺はちーちゃんのことを信じてるぞ」

千早「台詞が完全に犯罪者のそれですが」

P「そのことはあとで詳しく聞こう」

千早「はあ」

P「頼む。替えのパンツを持って来てくれないか」

千早「いやです」

P「頼む!」

千早「コンビニで買って来いと? そんなことできるはず…」

P「違う。俺の鞄に替えのパンツが入っているんだ。それを取って来てくれ」

千早「…………」

P「と、泊まりで仕事をするときのための替えだぞ!」

千早「なにも言っていませんが」

P「な、なあ頼むよ。一生のお願いだ。この通り!」パンッ

千早「……プロデューサー」

P「なんだ?」

千早「…たしか先日も、プロデューサーの一生のお願いを聞いたところだと思うのですが」

P「ソウダッタカ」

千早「はい」

P「……ああ思い出した、たしか一昨日——」

千早「な、内容は言わなくていいですから!」//

P「そう?」

千早「そ、そうです」ゴホン

P「いやーあのときの千早は可愛かっ  千早「言わなくていいです!」

P「わ、分かった。じゃあ、取って来てくれたら、千早の言うことを一つ、何でも聞いてやろう」

千早「ほう」ピク

P「…どうだ?」

千早「…」ハア

千早「分かりました。こうしていても、時間の無駄ですし」

P「おお! さすがちーちゃん!」

千早「…その、ちーちゃんと言うのは、やめてください」

P「恥ずかしいのか? ん?」

千早「取って来ませんよ」

P「ごめんなさい」

千早「それに」

P「ん?」

千早「…プロデューサーが早く出てくれないと…その」モジ

千早「わ、私も、トイレに用があって来たわけですから」

P「……?」

P「あ、ああ。そりゃそうだ」

千早「は、はい」

P「なんだったら俺は気にしないけどな!」

千早「私が気にするんです!」バンッ

P「ひぃっ! か、壁ドンするんじゃない!」ビクビク

千早「と、取って来ますから、大人しく待っていてください!」バタンッ

P「り、了解」

ガチャ


小鳥「……」カタカタ…

千早「…」

千早「(事務所には音無さんだけ…さすがに、何も言わずにプロデューサーの私物を漁るのはまずいわよね…)」

千早「(素直に、一言声をかけよう)」

千早「あの、音無さん」

小鳥「? あら千早ちゃん。どうかした?」

千早「えっと、プロデューサーに、頼みごとをされて。ちょっと鞄を取りますね」

小鳥「そう。分かったわ」

千早「」ホッ

千早「では…」ガサ

千早「(…何だか、男の人のパンツを探して鞄を漁るなんて…妙な気分ね)」ガサガサ

小鳥「なにか荷物を頼まれたの?」カタカタ

千早「え、あ、はい」ドキ

小鳥「書類か何かなら、机の上にあると思うけれど…」カタカタ

千早「あ、いや、その」アセ

小鳥「??」

千早「(ま、まずいわ。こうなったら、何か別の物をひとまず取り出して…)」ガサ

千早「……」

千早「(ど、どうしてパンツばかり入っているのかしら…)」ガサガサ

小鳥「千早ちゃん?」

千早「ひゃいっ!?」

小鳥「あ、ごめんなさい。驚かせるつもりじゃなかったんだけど…」

千早「い、いえ」ドキドキ

千早「(へ、変な気分になっている場合じゃないわ…落ち着きましょう)」ハー…

小鳥「探し物はあったかしら?」

千早「え、えっと…その…」ゴソ

千早「?」

千早「(…これ、なにかしら…服?)」

千早「! …っ」

小鳥「?」

千早「あ、あの。ちょっと見つからないので」パタン

千早「鞄、そのまま持って行きますね」

小鳥「え、ええ。そうね、その方がいいかも…」

千早「し、失礼しますっ」タタッ

バタンッ

小鳥「?? …なんだか様子がおかしかったような気も…まあ、大丈夫よね。仕事に集中しないとー」ウン

ガチャ


P「お」

千早「はーっ…はーっ…」

P「おかえり千早! 待ちわびたぞ!」

千早「……ぷ、プロデューサー…」ハァ、ハァ

P「ど、どうかしたか?」

千早「目を見て話しましょう。戸を開けてください」

P「え? い、いや、それはだめだって。臭うぞ、今の俺」

千早「私は気にしません。早く言う通りにしてください」

P「は、はい」カチャ

千早「これはなんですか」

P「……ん、メイド服だな」

千早「なぜこんなものがプロデューサーの鞄に?」

P「そりゃちーちゃんに着てもらおうと思って。変なこと聞くなあ」ハハ

千早「……」ハア

P「この前の水着もよかったけどな!」

千早「も、もうその話はいいですから!」//

千早「…ひょっとして、私にこれを見つけさせるために、わざと…?」

P「さあ」

千早「……もう…ほんとに、この人は…」ハア

P「なあ千早」

P「ひょっとして、これは一体だれのための服かと勘繰ったか?」

千早「……そんなことはありません」

P「にやにや」

千早「叩きますよ?」

P「喜んで!」

千早「」バシ

P「ああんっ」

千早「…」ゲシゲシ

P「ぐ、あ、足は痛いっ、ちょ、まっ」

P「し、嫉妬したらどんなに可愛いかと思って…」ボロ

千早「死んでください」

P「すいませんでした」

千早「……まったく」

スッ

千早「……」

P「安心しろよ。俺が千早以外の誰かに、こんな服を持ってくるわけないだろう?」ナデナデ

千早「……用を足したままの手で触れないでください」

P「冷たいなあ」

千早「プロデューサーでなければ、ちょっとでも触れさせていません」

P「そうか」

P「あ、それともう一つ」

千早「まだなにか?」

ペロ

千早「ひぅっ」

P「事務所には小鳥さんがいるからなあ」

P「こうしたら、二人きりになれるかと思って」

千早「…ま、まだお昼ですよ? それに、ここは女子トイレで…」

P「俺はもう仕事済んだし。今はみんな出てるし」

千早「……」

P「なあ千早! 頼むよ、一生のお願いだから!」

千早「……もう…プロデューサーは、…」ハア

千早「い、いいですけれど。つまりプロデューサーは、…その…一生私と、いてくれるんですよね?」

P「もちろんだ!」

千早「……ふふ」

千早「まあ、私の方こそ、プロデューサーを一人にはしませんけれど」ニコ




おわる

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