小鳥「バック・トゥ・ザ・ピヨちゃん」(1000)

 
カチ…     カチ…       カチ…      カチ…    カチ…
  カチ…  カチ…      カチ…   カチ…カチ…    カチ…
 カチ…       カチ…    カチ…    カチ…  カチ…    カチ…
   カチ… カチ…   カチ…    カチ…    カチ…   カチ…

 『……原子力安全委員会は昨日午後、作業中の原子力発電所における燃料紛失事件について盗難の可能性を否定しており……』

 
カチ…     カチ…       カチ…      カチ…    カチ…
  カチ…  カチ…      カチ…   カチ…カチ…    カチ…
 カチ…       カチ…    カチ…    カチ…  カチ…    カチ…
   カチ… カチ…   カチ…    カチ…    カチ…   カチ…


  『今後発電所付近でのより強い監視体制を整えるとのコメントを残しました。ニュースは以上です、続いては……』


コンコン

  「高木社長。います?」

ガチャ

  「鍵が開いてる……? もう、不用心なんだから……」

 
カチ…     カチ…       カチ…      カチ…    カチ…
  カチ…  カチ…      カチ…   カチ…カチ…    カチ…
 カチ…       カチ…    カチ…    カチ…  カチ…    カチ…
   カチ… カチ…   カチ…    カチ…    カチ…   カチ…


  「高木社長ー。おはようございまーす」

  「いないんですかー?」

  「……はぁ、どこに行ったのかしら」



  「まあいいわ。いつものように、あれ借りますからね」スタスタ


カチッ
ブオォォォォオン……


  「勝負の日はやっぱりこれで、気分を高めないとね。 ステージより大きい特製アンプ」

カチカチ
ウィイイィィイイィイイン……

 
  「出力はオーバードライブ、音量最大……」

カチカチカチ
ブゥゥウウゥウン……


  「マイクをつないで……」

ブツッ


  「……すぅ……はぁ……エントリーナンバー3番、歌っちゃいますよ」


  「マイクのスイッチを……ON」

カチッ


  「……すぅ……っ」

 






   「空に


ドギュアァァアアアァアアァアアアン!!!!!!!
ドゴオオォォオオオォオオオン
ボゴオオォォオオォォオオン


  「んぎゃああぁああっ!!!?!?!」ゴツン


ドンガラガッシャアアァァアアァアアアアン!!!
ボトッ ボトッ
ガランガラン ゴロンゴロン
メリメリメリメリ… バキバキッ

 
カランカラン……コロコロコロコロ……
バチッ… バチッ……
パラパラパラパラ……
ゴトン……ゴロゴロ……


  「…………」


  「ふぇぇ……ぶっ飛び……」


prrrrrrr


  「んっ、電話が……」ピッ

  「もしもし?」

 
    『もしもし、小鳥君か? おはよう』

小鳥「高木社長! どこにいるんですか?今高木社長の家なんですけど」

    『すまない、少しやらなければいけないことがあってね』

小鳥「家の玄関、開きっぱなしでしたよ。気をつけてください!」

    『おお、そうだったか。すまないね、君の合鍵で頼む』

小鳥「全く……で、今何してるんですか?」

    『そのことなんだがね、今日の1時にショッピングモールに来てくれないか』

小鳥「1時? ダメですよ、今日はオーディションが……」

    『ああ違う、夜中の1時だ。人目につくと厄介だからね』

小鳥「よ、夜中? お母さんに怒られますよ……」

 
    『そこを何とか。こっそり忍び出て来てほしいのだよ』

小鳥「そ、そんなこと言われても……はぁ、分かりました。なんとかやってみます」

    『良かった! 助かるよ。1時にショッピングモールだからね』

小鳥「はい……」

    『あぁそれと、例の特大アンプは使わないように。調子が悪くてね』

小鳥「……気をつけます」

    『では、オーディションがんばってくれたまえ。応援しているよ』

小鳥「あ、ありがとうございま……」


カチッ…
ボーン ボーン  ゴ-ン ゴーン
  ピピピピピピピピ   ピピピピピピピ
ピッポー ピッポー  ジリリリリリリリリ


小鳥「!? う、うるさっ……」

 
    『その音は?』

小鳥「と、時計が……一斉に……8時ちょうどになったから」

    『うむ、ぴったりだな』

小鳥「うぅ、とめないと……」

    『家中の時計をきっかり25分遅くしておいたのだよ。すべての時計が1秒の狂いもなく正確に進んでいるな、うむ』

小鳥「そんなことより……えっ、今なんて?」

    『25分だ! きっかり25分遅らせた』


小鳥「……うそ……じゃあ今、8時25分ってこと!?」

   『そうだ』



小鳥「大変! 早く出発しないと! 社長、また夜に!」

   『あっ待ってくれ小鳥君、言い忘れていたんだがカメラを───』

プツッ

 
──────

  「それでは次のひと、どうぞ」

小鳥「は、はい! よろしくお願いします!」

  「残念ながら審査員長が急用で来られなくなったのですが、予定通りオーディションは行います」

小鳥「そうなんですか……」

  「いい結果を残せるよう、がんばってください」

小鳥「は、はい」





      「♪空になりたい 自由な空へ

                翼なくて翔べるから 素敵ね

           空になりたい 好きな空へ

                      雲で夢描けるから……」

 

審査員A「ふぅん……なるほど……」

審査員B「どうですかね?」

審査員C「悪くはないんだけどねぇ」


小鳥「…………」


審査員A「いやなかなかだと思いますよ? 歌も上手いし」

審査員B「だけどこう……華、は違うな……派手さにかけるというか」

小鳥「派手さ……ですか」

審査員C「そうねえ。それにその曲……何というか、少し古い感じというか」

小鳥「ふ、古いですか……?」

 
審査員B「ですね。少なくとも最近の流行にはそぐわないかもしれません」

審査員A「他に持ち歌は?」

小鳥「い、いえ……これだけしか」

審査員C「そうなの。……はい、分かりました」

審査員B「結果は後ほどご連絡しますので、しばらくお待ちください」

審査員A「お疲れ様」


小鳥「……ありがとうございました。失礼します……」


ガチャ
バタン

 
──────

小鳥「はぁ……まただめだった……」


    ”少し古い感じというか”

        ”最近の流行にはそぐわない”


小鳥「……そんなにダメなのかしら……とってもいい曲だと思うんだけど……」



ガチャ

小鳥「ただいまー……」

小鳥「……?」


     「君はまだそんなことを言っておるのかね」

   「何度言われようと、俺は俺のやり方を変える気はありません!」


小鳥「……お父さんと……もう一人は……」

 

父「黒井社長、あなたは昔もそうやって……」

黒井「理想論に過ぎないのだよ、君の話は。私のやり方に従えばもっと結果が出るというのに」

父「そんな金に物を言わせたやり方で、本物のアイドルが育つと思ってるんですか!」

黒井「往生際が悪いな。君のいう『本物のアイドル』が、今まで君のいた事務所で育ったとでも?」

父「…………」

黒井「君が最初に出会ったのが高木だということだけが、本当に残念でならない。私とて君の能力は買っているのだ、ただ道を正してやろうとしているだけなのに」

父「結構です。俺は……」

黒井「何十年も前につぶれた三流事務所のことなど忘れたまえ。時代は変わったのだ」


黒井「これ以上私に逆らう気なら、芸能界での君の居場所をなくすことなどたやすいことなのだよ」

父「ぐっ……」

黒井「そうなりたくはないだろう?」

父「…………」

黒井「わかったら、ほら……」

父「そ、そんなダメです」

 
小鳥「……お父さん、と黒井社長」

父「! 小鳥……帰っていたのか」

黒井「こんばんは。お邪魔しているよ」

小鳥「……こんばんは」


黒井「娘さんもアイドルを目指しているそうだな。だがちっとも結果が出ない」

父「いえ、娘はいずれ大成します……才能があるんです」

黒井「せっかく才能があっても、環境が悪いのでは実りも小さいのだ。彼女も961プロへくれば……」

父「やめてくださいっ!!!!」

小鳥「っ……」ビクッ

黒井「…………」


父「すまないな小鳥……部屋へ行っててくれ」

小鳥「……うん」


バタン…

 

    「忘れるなよ、私は765プロが倒産して路頭に迷いかけた君を救ってやった張本人なのだぞ」

  「……」

    「今日はこの辺にしておいてやる、だがもしこれ以上私のやり方を否定する気なら……分かっているな?」

  「……」

    「では失礼」

ガチャ

小鳥「!」

黒井「む」

小鳥「…………」

黒井「……何をじろじろ見ているのだ」

小鳥「…………」


黒井「……お母様によろしく」

バタン

 

父「……はぁ」

ガチャッ

小鳥「お父さん……」

父「あぁ……見苦しいところを見せてしまったな」

小鳥「お父さん……プロデューサーの仕事楽しくない?」

父「……いいや、楽しいさ。若いころからの夢だし……この仕事のおかげで母さんにも出会えた」

小鳥「でも……」

父「お前も同じようにアイドルを目指してくれて、本当に嬉しく思ってるんだ。ただ父さんは……ふがいないね」



父「高木社長にはお世話になった。今でもたまに話をするよ」

父「だけど765プロがつぶれて、なぜか俺だけが黒井社長に拾われたんだ」

小鳥「そうなの……」

父「きっと見せしめなんだろうな。後は昔さんざん楯突いたことに対する仕返し」

リメイクかしら

期待支援

 
小鳥「どうして961プロをそんなに嫌うの?」

父「あの事務所で一番力があるとされているのは金とコネ。所属アイドルのことなんてなんにも考えちゃいない……ただ利益のために走らされるんだ」

父「お前を、そんな金儲けの道具のように扱う事務所には入れたくなかったんだよ」

小鳥「そんなに悪い人なの?」

父「黒井社長も悪人というわけではない。才能を見極める力は確かだし、結果を出せばきちんと評価する」

父「……一応は恩人でもあるしな」

小鳥「…………」

父「ただな……最近はずっと考えてるよ」


父「もしも父さんが若いころ、765プロがもっと上手く行っていたら……」

父「あのときのみんなにつらい思いをさせることもなかっただろうし、きっと……今のアイドル業界ももっと純粋だったのかもしれない」

 
小鳥「…………」

父「……ははは、すまないね。子供の前で弱音なんて……そうだ、今日のオーディションは?」

小鳥「ううん。だめだった」

父「そうか……残念だな」

小鳥「…………」

父「また次があるさ。そろそろ母さんが帰ってくる、晩御飯の準備を手伝ってあげないとな」

小鳥「うん」

>>25
一応そういうことで

元スレは知らなくてもいいの

 
──────

母「そう。だめだったのね」

小鳥「うん……ごめんなさい」

父「母さん。あんまり……」

母「分かってますよ、責める気なんてこれっぽっちもありません」

小鳥「審査員の人がね、曲が古臭いって」

父「見る目がないな」

母「ですね。最近はトレンドだのなんだのばっかり気にして、本当にいいものが評価されませんから」

父「昔からそうだったのかもしれないがな」

母「ねえ。ふふふ」

 
母「昔……昔といえば、思い出すわ。あの時は本当に……」

小鳥「……また765プロ?」

母「いいじゃないの、何度話しても退屈しないんだもの」

小鳥「私はもう飽きるほど聞いたわよ……」

母「いつでも笑顔が絶えなくて……みんなとっても仲良しで、それはもうすばらしい場所だったの」

小鳥「うんうん、知ってる」

母「みんな結局、あまり人気は出ずに終わってしまったけど……全員の団結力はきっとどの事務所にも負けてなかったわ」

小鳥「それも知ってる」

母「それに何より、お父さんとお母さんが……」

小鳥「お父さんとお母さんが出会ったのも765プロで、アイドルとプロデューサーだったけど両思いで綺麗に結ばれたんでしょ?」

母「もうやめなさいよ小鳥、照れるでしょ」

小鳥「…………」

 
父「まあまあ、そのおかげでお前も生まれたんだ。少しくらい付き合ってやってくれ」

母「それにね」ボソボソ

小鳥「ん? 何?」

母「ここだけの話だけど、本当はお母さんあまり売れなくて良かったと思ってるの」ボソボソ

小鳥「えっ、何で?」

母「まじめなあの人のことだもの、人気があってずっとアイドルを続けてたらきっと手を出してくれなかっただろうから」ボソボソ

小鳥「…………」

父「何の話をしてるんだ?」

小鳥「はぁ……なんでも」

 
──────

小鳥「……すぅ……すぅ……すぅ……」


prrrrrrrr

小鳥「……すぅ……すぅ……すぅ……」

prrrrrrrrr

小鳥「……んっ……ぁ……っと。寝ちゃってた……」ピッ

小鳥「ふぁぁ……もひもひ」

    『小鳥君? まさか寝ていたのか?』

小鳥「まさか、そんな……ふぁっ……大丈夫です」

    『言い忘れていたんだがカメラを持ってきてくれないか。記録を残さないといけないからな』

小鳥「……ふぁい……」

    『いいね? 1時にショッピングモールだよ。ではまた後で』

ピッ

小鳥「……ケータイのカメラでいっか」

 
──ショッピングモール──

小鳥「……社長ー。来ましたよー」


小鳥「…………おっきなトレーラーね」

小鳥「……しゃちょーっ」


バウ!バウバウ!

小鳥「……あれ?この子……響おばさんのところの」

バウ!バウ!

小鳥「いぬ美二世じゃないの……なんでここに?」

バウ!バウバウ!

小鳥「……いい子ね」ナデナデ


プシュウウウウッゥゥゥウウウゥ

小鳥「!」

 
ウィィィイイィイイン…

小鳥「おぉ、後ろが開いた……」

プシュウウウゥゥウゥウゥウウウ……


バウ!バウバウ!

小鳥「よしよし、大丈夫よ」ナデナデ


シュウウッゥゥウウゥウゥゥウ……

ブロロロロロ……


小鳥「……車? トレーラーに積んでたのね。一体どうして……」


ガチャッ

高木「……ふぅ。小鳥君、よく来てくれたね」

小鳥「社長! これって……」

 
高木「カメラは持ってきてくれたかね?」

小鳥「はい。ケータイでいいですか?」

高木「何!? ケータイ……」

小鳥「だ、だめでした?」

高木「……まあいい、後でDVDに焼いてくれたまえ」

小鳥「わ、わかりました。……この車かっこいいですねぇ。改造したんですか?」

高木「まあね。これから少しばかり実験に付き合ってもらうよ」

小鳥「実験?」

高木「いぬ美二世、さあこっちへ」チョイチョイ

バウバウ!!

小鳥「あの、実験台にしておばさん怒らないんですか?」

高木「我那覇君には、最近ぼけてきた私が夜中に散歩しだすのを止める役として彼女を借りたいと言っている」

小鳥「……色々と最悪な嘘ですね」

 
ガチャッ

高木「いぬ美二世を車に乗せて……よしよし、おとなしくしてておくれ」

バウ!

高木「よしよし、いい子だ」

小鳥「運転席に乗せて……どうやって運転を?」

高木「リモコンで操作できるように改造した」

小鳥「えぇ……」

高木「始めるよ。小鳥君! カメラを回して」

小鳥「はいっ」ポチポチ

 
●REC

高木「まずはここにある二つの時計を撮ってくれ。一つは私が持ち、もうひとつはいぬ美二世の首にかけておく」

[1:20] [1:20]

小鳥「どっちも間違いなく同じ時間ですね」

高木「撮ったかね?」

小鳥「バッチリです」

バウ!

高木「よし。いよいよだぞ、元気でな」ナデナデ

ガチャン


小鳥「このリモコンで?」

高木「そうとも。始めるよ」クイッ

ブロロロロ…

小鳥「う、うごいた……」

 
ブロロロロロロロ…

高木「…………」クイッ クイッ

小鳥「……あの、これから一体何を」

高木「私じゃなく車を撮るんだ!」

小鳥「はっ、はいっ」


高木「……あのあたりからかな」クイッ

キィッ

小鳥「……とまった」


高木「見ていたまえ小鳥君。私の計算が正しければ、あの車のスピードが時速123kmを超えたとき……」

小鳥「…………?」



高木「ブッたまげるようなことがおきる」

 
小鳥「ブッたまげるようなことって……?」

高木「正確に言えば時速123.0885kmだがそんなことはどうでもいい。しっかり撮っておくんだよ」

小鳥「…………」ゴクリ


高木「…………」クイッ


ブロロロロ
ギュルルルルルルルル…


高木「エンジンの回転速度を上げて……」


ギュリュリュリュルルルルルルルル…


小鳥「……」

高木「…………」


ギュルルルルルルルルルル……

 
小鳥「…………」

高木「撮っているかね!?」

小鳥「はいっ」


ギュルルルルルルルルル……!


高木「…………よし」カチッ


ギュルルルルルル
ブオオォオォオオン……!



小鳥「……こ、こっちに近づいてきますけど」

高木「大丈夫。そのままカメラを!」


ブオオオォォォオォオン……!

 
小鳥「社長……このままじゃこっちに突っ込んできますよ」

高木「心配は要らん。時速100km……」


ブォォォォォォオオオオオ…………!!


小鳥「避けなくていいんですか!?」

高木「私を信じろ!110km……!」


ブォォォォオオオオオオオオオ…………!!


小鳥「危ないですってば!!」

高木「120………!」


バシッ!

バシッ!!

バシッ!!! バシィッ!!


小鳥「!? 光って……」

 





高木「123!!」

小鳥「っ!!!」


バシッ!バチィッ!!

バシッ!!バシッバシッ!!

バシッ!!!
シュバァァァァァァアアアン!!!


小鳥「……………っ………!?」


ヒュゥゥゥゥゥゥゥウウン………

カランカランカラン………カタッ

 
高木「……………」

小鳥「…………き、きぇた………?」

高木「……やった……やったぞ………」


高木「やったぁーっ!! はーっはっはっはっ!!」

小鳥「!?」

高木「見事成功だっ! はっはっはっ!!」

小鳥「しゃ、社長ってそんな笑い方するでしたっけ!?」

高木「車が無事時間を飛び越えた記念すべき時間は、午前1時21分だった!!」

小鳥「……そ、そんなことより……」


小鳥「車といぬ美二世が消えた……一体どこに行ったんですか!?」

高木「『どこ』ではなく『いつ』といってもらおうか!」

小鳥「はい!?」

>>56訂正
小鳥「しゃ、社長ってそんな笑い方する人でしたっけ!?」

 
高木「あの車といぬ美二世は時間の壁を飛び越え、現在よりも先の世界へと飛んでいったのだ!」

高木「私はいぬ美を、未来の世界へと送ったのだよ!!」

小鳥「……!?」


高木「未来といっても、ほんの1分先だから……正確には午前1時22分きっかりに、いぬ美はここへ戻ってくることになる!!」

小鳥「…………ちょっと待ってください」


小鳥「それじゃ社長は……社長は、あの車を……タイムマシンに……!?」

高木「そうだとも!!」


小鳥「……なんてこと……」

 
高木「最初は冷蔵庫を改造して作ろうと思っていたのだがね、よくよく考えたら移動できる車のほうが勝手がいいと思ったのだよ」

小鳥「それにしたって……」

高木「それに、どうせタイムマシンを作るならかっこいいほうがいいだろう? あの車は1980年代に作られていたデロリアンという外車でね」

小鳥「……」

高木「あの車はボディーの材質がちょうど良くて、粒子の……」


ピピピッ ピピピッ


小鳥「えっ?」

高木「危ない!!」ガバッ

小鳥「きゃぁっ!!?」


バシッ!

バシッ!!

バシッ!!!

シュバァァァァァアアアアン!!!!

 
キキイイイィイイイィイィッ……
ヒュゥゥゥウウゥゥゥウン………



小鳥「……っ…………」

高木「…………」





シイー……ン




小鳥「…………?」

高木「…………」

小鳥「…………」

高木「…………」

 
小鳥「…………」

高木「…………」ソローリ

小鳥「…………」ソローリ

高木「…………」ソローリ


フシュウウウウゥゥゥウゥウゥゥゥゥゥゥゥウウウゥゥウウウウゥゥウウウ


高木「!!」ビクッ

小鳥「!!」ビクッ

高木「…………」

小鳥「い、いぬ美二世は……?」



コンコン

高木「つめっ……!!」

小鳥「えっ!?」

高木「冷たい…車が凍り付いている……」

 
高木「よっ……」

ガチャッ

小鳥「あ……」

高木「……はっはっは。いやぁ、無事だったかいぬ美二世!」ナデナデ

小鳥「…………」

高木「ありがとう、ちょっと借りるよ」ヒョイッ


高木「見たまえ、いぬ美二世の首にぶら下げておいた時計を」

[1:21] [1:22]

高木「きっちり1分遅れているが、ちゃんと動いているぞ」

小鳥「……ホントだわ」

 
バウバウ!
タッタッタッ

小鳥「……無事みたいですね」

高木「ああ、だが彼女には大変な旅をしたという意識はない。彼女の中の時間は車が消えている間過ぎていなかったのだからな」

高木「だから時計が一分遅れているというわけだ。いぬ美二世は1分を飛び越え、次の瞬間ここに戻ってきたのだよ」

小鳥「…………」

高木「小鳥君、こっちへ。操作を教えてあげよう」

さるが怖いので休憩

 

高木「まず、タイムサーキットのスイッチを入れる」

ガチャンッ

 M   D    Y   H M
MAY  20  2012  01 22
  DESTINATION TIME


MAY  20  2012  01 24
   PRESENT TIME

MAY  20  2012  01 21
LAST TIME DEPARTED


高木「上から目標の時間、現在の時間、そして最後に出発した時間だ」

小鳥「へぇ……」

 
高木「目標時間はどんな時でも自由に入力できる。日米和親条約が締結された日なら……」ポパピプペ


 M   D    Y   H M
MAR  31  1854  01 22
  DESTINATION TIME



高木「近世日本の命運を分けた戦いが見たければ……」ポパピプペ


 M   D    Y   H M
OCT  21  1600  01 22
  DESTINATION TIME



高木「科学の歴史上、記念すべき日に行くならば、1982年10月24日だ」ポパピプペ


 M   D    Y   H M
OCT  24  1982  01 22
  DESTINATION TIME




高木「……はっきりと覚えているよ。あれは1982年の10月24日だった……」

小鳥「……何の日なんです?」

 
高木「私がタイムトラベルを思いついた日だ。今でもはっきり思い出せる……」

小鳥「はぁ……」

高木「時計をかけようと思ってトイレに足をかけたとたん滑って便器で頭を打ったのだ。そして意識が戻った瞬間!」

小鳥「…………」

高木「ひらめいた。これをだ! これこそタイムトラベルを可能にするものなのだよ」


高木「次元転移装置」

小鳥「次元転移装置……?」

高木「アレから30年というもの、これを発明するために家財をほとんどつぎ込んできた。社長業もそこそこに……」

小鳥「ダメでしょう、それ」

 
高木「思えば長い年月だった……そうそう、そのとき同時に思いついたのが君の大好きなあの歌なのだ」

小鳥「えぇっ? そ、そんなついでみたいに」

高木「頭を打った瞬間、まるで空を飛んでいるような感覚に襲われたからね」

小鳥「もっときちんと考えてくれてるものだと思ってました……」

高木「もちろん真剣に詩を作ったさ。何年もかけてな」

高木「あの曲を歌うにふさわしいアイドルがなかなか見つからず、君と出会うまでずうっと封印し続けたほどだ」

小鳥「そうなんですか?」

高木「なぜか律子君に存在が見つかってしまい、作曲に携わりたいと言われたとき以外は誰にも譜を見せなかった」

高木「というよりも、ずっと私の頭の中にあったからね」

小鳥「なるほど……だから作曲者が『武田蒼一・秋月律子』だったんですね」

高木「そうとも。……あぁ、ついつい昔のことを思い出してしまった。歳を取るとすぐこうなってしまうからいけないね」

小鳥「765プロですか?」



高木「……小さい会社ではあったが、少なくともタイムマシン以上に私の夢だったよ」

 
高木「この町もすっかり変わってしまった。君が生まれたころまではここは商店街だったんだよ」

小鳥「それ、聞いたことあります! それで、この先の一番向こうに……」

高木「765プロのビルがあった。よく知っているね」

小鳥「えへへ。お父さんやお母さんがよく話してくれましたから」

高木「君のお父さんはすばらしいプロデューサーだった。お母さんも才能あふれるアイドルだったよ……歌が大好きでね」

小鳥「その話は何度も聞いてます……けど、大好きな話です」

高木「そうか……765プロにいた当時12人のアイドルは全員輝く何かを持っていたんだ。才能を開花させられなかったことは本当に申し訳ないと思っている」

小鳥「……どうしてつぶれちゃったんですか?」

高木「それまではみな順調に活動できていたのだがね。バブルがはじけて以来、すっかり不振になってしまって……」



高木「とどめになったのは、起死回生を狙ったオールスターライブが失敗してしまったことだがね」

小鳥「そんなことが?」

高木「あの日もいやというほど思い出す……雷のひどい夜だった」

 
高木「ライブの最中に停電が起こってしまってね。きっと雷のせいだったんだろうが……」

高木「ライブを中断し、必死で復旧作業を進めたんだが……その間にお客さんが不満を爆発させてしまってね」

高木「せめて後少しでも間を持たせられたらと思うと……いや、いまさら昔の話をしても遅いか! すまないね、暗い話をしてしまって」

小鳥「いいえ、私こそごめんなさい。 ……そっか、だからあのときの……」

高木「ん?」


小鳥「思い出しました! お父さんとお母さんと、一度古い公民館に行ったことがあるんです」

小鳥「なんでこんなところに連れてくるんだろうって思ってましたけど……お父さんたちが結婚するきっかけになった場所だって」

小鳥「……きっとそれがそのライブ会場だったのかも」

高木「おぉ、そんなことが……」

小鳥「確かケータイにそのときの写真が」

高木「そうだったのか……うんうん……お父さんとお母さんにもまたご挨拶しておかないとね」

小鳥「きっと両親も喜びます!」

 
高木「……うむ。思い出話はここまでにしておこう。実験を続けるぞ」

小鳥「はい。 ……これ、かっこいいデザインですよね。ガソリンで動くんですか?」

高木「はは、残念ながらガソリンでは無理だよ。もっと強力なやつをね」


高木「プルトニウムだ」

小鳥「プルトニ……えっ!? じゃあこれ……核燃料を使ってるんですか!?」

高木「カメラを回し続けて! さあ」

小鳥「は、はい……」

高木「車の動力は電気なんだがね、0.961ジゴワットの強力な電力を得るためには核反応が必要というわけだ」

小鳥「で、でもプルトニウムなんてそこらへんで買える物じゃ……」


小鳥「ひょっとして盗ん……」

高木「シーッ!! しーっ!!!!」

 
高木「少し拝借した! 事故のあった発電所にはまだ無傷の燃料が残っているからな」

高木「似たような防護服を着て作業員のフリをしてな」

小鳥「それってとんでもないことしてるんじゃ……!?」

高木「彼らは自分たちの仕事で精一杯だから、私が一人増えたところで気づかんよ」

小鳥「うわぁ……」

高木「さあ、これから燃料の交換をするぞ! 君も防護服を着たまえ」

 
●REC

高木「フシュー…フシュー…気をつけて取り扱わないとね」

小鳥「ひぇぇ……フシュー…怖い……フシュー…」


ガコンッ
プスー……


高木「この中にフシュー…セットして……」カチャンッ

小鳥「…………!」ブルブル


ガコンッ


高木「……ふぅ」ガバッ

高木「もう大丈夫だ。ふたをしたからな」

小鳥「…………」ガバッ

 
高木「データはきちんと保存しておいておくれ。貴重な記録だからね」

小鳥「は、はい……」

高木「おおっとぉ!!」

小鳥「!?」ビクッ

高木「着替えを持っていくのを忘れていた。未来でで着るものがないと困る」

小鳥「……未来って、今から行くんですか……?」

高木「そうとも。25年先の世界を見てこようと思う」

高木「一度でいいから未来を見てみたいと思っていたんだ。人類がどこまで進歩しているのか……」

高木「それに、未来の流行情報を先取りするのも悪くない」

小鳥「そうなんですか……だったら……」


小鳥「私の未来も……」

高木「?」

小鳥「私の未来も、見てきてもらえませんか」


高木「ああ、いいだろう」

 
高木「さあ、録画を」

小鳥「……」ポチッ


●REC


高木「ごほん。えー……私高木順二朗は、今から歴史的な旅に出発するところです……」


高木「あぁ! 私としたことが。帰りのぶんの燃料を積むのをすっかり忘れてしまっていた!」

小鳥「えっ?」

高木「一回のタイムトラベルに一本の燃料が必要なんだ。忘れてしまってはどうしようもない」

小鳥「なるほど……」

バウ!

高木「……?」

バウバウ!

小鳥「いぬ美二世? どうしたの」


バウ!バウバウ!!

 
…………ウー…ウ────ゥ……


小鳥「……あれは……サイレン?」

高木「……まさか……」



……ゥウ────ゥ……ゥウ────ゥ……

小鳥「……何か事件かしら?」

高木「……大変だ……まさか燃料のことがバレた……?」


……ゥウ────ゥ……ゥウ────ゥ……




高木「小鳥君! 逃げるんだ今すぐ!」

小鳥「!?」


……ゥウ────ゥ……ゥウ────ゥ……
……ゥウ────ゥ……ゥウ────ゥ……

 
小鳥「社長! あれ、パトカー!? 警察ですか!?」

高木「機動隊だ! 私がプルトニウムを盗んだことが電力会社にばれていたんだ!」ダッ

小鳥「うそっ!?」


……ゥウ────ゥ……ゥウ────ゥ……
……ゥウ────ゥ……ゥウ────ゥ……


    『そこの二人、動くな! お前たちに危険物所持の疑いがかかっている』


高木「小鳥君! 二手に分かれるんだ! 逃げろ!」

小鳥「えぇっ!?で、でも私先月免許取ったばっかりで」

高木「言ってる場合かね!! 私はこっちのトレーラーにのって逃げる!!」バタンッ

ブルルルルオォォォン!!


    『そこのトレーラー、止まりなさい! とまりなさい!』

小鳥「……大変……!!!」

 
小鳥「社長ー!! ……ど、どうすれば……!!」



……ゥウ────ゥ……ゥウ────ゥ……
……ゥウ────ゥ……ゥウ────ゥ……


高木「……私が引き付けておくから、その隙に逃げなさい!」グンッ

ブロロロロ……


    『そこのトレーラー! 今すぐ止まりなさい! 今すぐ降りてきなさい!!』


小鳥「…………」


ブロロロロロロ……


小鳥「社長ー!! 危ないですってばぁっ!!! あんな大きな乗り物であんなスピード出したら……」

 
高木「くっ……まさかこんなことに……」

ブロロロロロロロロ……!!


   『止まりなさい! 止まりなさい!!』


高木「……なんとか小鳥君が逃げる時間稼ぎを…………!?」グルグル

ブロロロロロロロロ……!!




小鳥「社長!!! 前っ!!!!」


高木「!!」

     『止まりなさい! 止まり……』

高木「あっ…………」

 







ドゴシャァァッ……!!


小鳥「っ……!!」


小鳥「社長っ!! 社長っ!!!」




小鳥「社長ぉっ!!!! いやぁぁあっ!!!!!」

 



小鳥「うそよ……!! ウソ……!!」

小鳥「社長!! 社長……!!」


   『そこの女性、止まりなさい。止まりなさい』


小鳥「……はっ!! わ、私……!? 私何も……」


   『そこの女性、止まりなさい。おとなしく……』


小鳥「…………っ……」


ダッ


小鳥「に、逃げなきゃ……!!」ガコンッ

グンッ
ブロロロロロロ……!!

 
    『そこの車! 止まりなさい! 止まりなさい!!』


小鳥「そっ、そんなこと言われたって……!」

ブロロロロロロロ……


小鳥「………うぅっ……社長……社長……」

ガコンッ
キュイィィイン…


小鳥「……っ……!」

グンッ
ブオォォオオォォ……

 

  ─ 100km/h ─


   『止まりなさい! 止まりなさい!』

小鳥「……これ、余計ダメなパターンかも……うぅ、でもいっぺん逃げちゃったし……!」

グンッ
ブオオォォォォオオ……



  ─ 110km/h ─


小鳥「くっ……急カーブ……!」

グンッ
キィイィッ


  ─ 30km/h ─

 

グンッ
ブオオオォォォ……!!


  ─ 70km/h ─


小鳥「こうなったら……アクセルいっぱいまで……!!」



  ─ 110km/h ─


   『止まりなさい! 止まりなさい!』



小鳥「いまさら止まれるもんですか……このっ!!」

グンッ
ブオォォォォオォ……!!!

 
ブオオオォォォォオォォ……!!



  ─ 120km/h ─


小鳥「とりあえずモールから出て……」


バシッ!

バシッ!!

バシッ!!! バシィッ!!


小鳥「!!??」

 

バシッ!!

バシッ!!! バシィッ!!

バシッ!バチィッ!!

バシッ!!バシッバシッ!!


小鳥「うぅっ……何、これ……!!??」


  ─ 123km/h ─



小鳥「────っ……!!!」

 





   ─  MAY  20  2012  01 32  ─





   ─  ≡≡  20  20≡  ≡ ≡  ─





   ─  OCT  24  1982  01 22  ─

 
バシッ!!!
シュバァァァァァァアアアン!!!


小鳥「…………えっ」


                      たるき亭





′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′′●′′′′′
′′′′●′′′′′●●●●●′′′′′●′′′′′●●●●●●●●●●●
′′′′●′′′′′′′′′●′′′●●●●●●′′′′′′′′′′′′′
′●●●●●●●′′′′′●′′′′′′′●′′′′′′●●●●●●●′′
′′′●′′′′′′′′●′′′′′′′′′●′′′′′●′′′′′●′′
′′′●′●●●●′′●●●●′′′●●●●●●●′●●●●●●●●●●●
′′●′′′′′′′●′′′′●′′′′′′′●′′●′′′′′′′′′●
′′●′′′′′′′′′′′′●′′′′′●●′′′′●●●●●●●′′
′′●′●′′′′′′●●′′′●′●′′′′′′′′′′′′●′′′′′
′●′′●′′′′′●′′●′●′′●′′′′′′′′′′′′●′′′′′
′●′′′●●●●′′●●●●′′′′●●●●′′′′′′′●●′′′′′




小鳥「いぎゃ嗚呼あああああああああああああああああっ!!!!?!?!?!?」

 











ドガッシャアアアアアァァァァアアァアァアァアアン!!!!!!!!!!!!!!!




フシュウウウウゥウゥウウウゥウウウゥウウゥゥウ………!!

きうけいなの

 
──────

小鳥「…………」



小鳥「あいっ……くぅっ……痛たたたたた……」

   ザワザワ……

           ザワザワ……

小鳥「……うぅっ……」

小鳥「…………ぁ……」


小鳥「…………────」

 
──────

小鳥「…………ん……」


    「目が覚めたか?」


小鳥「…んっ……そのこえ………たかぎ……社長……」


    「よかった、もう目を覚まさないかと……」


小鳥「……ここは……?」


    「そのままゆっくりしていろ、大変な目にあったんだからな」


小鳥「……たいへんな……ほんとですよ……もう……」


    「そうだな」

 

小鳥「きいてくださいよ……変な夢を見て……」


    「そうなのか」


小鳥「変な機械に乗って……追いかけられて……タイム……」


    「そうか。だがもう大丈夫だ、ここは病院だからね」


小鳥「……そう……病院……」



小鳥「病院!?」ガバッ

 
小鳥「いったたたたたたた……!!」

   「あぁこらこら、安静にしてろって。目も閉じていろ」

小鳥「うぅっ……痛い……はぁっ……」

   「先生は全身打撲と鞭打ちだってさ。他に大怪我がなくてよかったよ、全く」

小鳥「……私、どうなって……」

   「車ごとビルに突っ込んだんだよ」

小鳥「……車ごと……」

   「自分が何をしてたか覚えてないのか?」

小鳥「……私…………」

 
   「…………」

小鳥「…………」

   「まあいい。それよりご家族は?」

小鳥「家族……それならケータイに……番号が……」



   「ケータイ?なんだそれは」

小鳥「……え……?」

   「だから。ケータイって?」

小鳥「何って……えっ? だからケータイ」

   「いいから、君のご家族の連絡先を教えなさい」

小鳥「……ま、って……」ムクリ

 
小鳥「……社長が何を言ってるのか……って……」


高木「社長って誰だ?」

小鳥「……!!!」

高木「……もう起きて大丈夫なのか?」

小鳥「……は、はい」

高木「そうか。あまり無理するなよ……黒井に報告しておくか……」

小鳥「黒井……」


高木「えーっと、『ケガ ナイラシイ アトデムカウ』……と」ポチポチ

小鳥「あの……それは……?」

高木「は? ポケベルだけど」

小鳥「…………うそ」

 
高木「……さて。悪いけど親御さんには自分で連絡してくれな」

小鳥「は、はぁ……」

高木「俺はもう行くけど、二度とあんな危険な運転するなよ。じゃあ」


バタン


小鳥「…………」



    『次のニュースです。アメリカの自動車会社であるデロリアン・モーターカンパニーが今月経営破綻に陥ったことで、米自動車産業の……』



小鳥「……テレビ丸っ……ぶあつっ……」

 
──────

コンコン
ガチャ


   「失礼します。体の調子は……」


   「! いない……」


   「ナース長! ナース長! 今朝運ばれてきた女性がベッドから抜け出してます!!」



小鳥「うっ……まだ痛むわね……」ヨロッ

小鳥「……おかしい。こんなの絶対おかしいわよ……」

小鳥「……あの広告も……」


    [NECの新商品 PC-9801 好評発売中!]


小鳥「……なによあれ……ケータイは……」

    [※圏外]

 
小鳥「……おかしいでしょ……町のど真ん中なのに……」

小鳥「……そういえばモールにはまだ公衆電話があったはず……行ってみましょう……」




    [商店街 セール中]


小鳥「…………えぇ……?」

小鳥「……道は合ってるはずなのに……ここ、どこなの……?」




小鳥「!」

 


  『♪お昼休みはウキウキウォッチン……』


小鳥「…………電気屋さん……?」


    『はいこんにちは森田一義です、、この番組も始まって1週間を過ぎましたが……』


小鳥「……何言ってるの……?」


小鳥「…………」


小鳥「すぅー……はぁ……すぅ……」

小鳥「落ち着きなさい小鳥、あなたは夢を見てるのよ」


小鳥「……ちょっぴり……とっても……きつーい夢を……」

 

    『10月21日の天気です。今日は全国的に晴れ間が一日中続くことでしょう……』


ガサッ


小鳥「……新聞。あったわ」ゴソゴソ


   [1982年10月21日]



小鳥「……まさか」

小鳥「……お願い冗談って言って……誰か……」フラッ

バターン


   「えっ」

      「おい、誰か倒れてるぞ」

    「救急車! 救急車!」

 
──────

小鳥「…………ぅ……」


   「はい……申し訳ありません……いえ、身内ではないんですが……」

   「まったく……時間の無駄だと何度言ったら分かる……」

   「はい……ええ、まだ家族の連絡先も分からなくて……そうなんです……」

   「高木、いつになったら終わるんだ!」

   「電話中だ、静かにしろ! ……はい、それまでは見ておこうかと……はい、ありがとうございます……」


小鳥「……だれ……?」


   「……高木。起きたぞ……高木!」

   「はい、では失礼します……うるさいな、聞こえてるよ!」


小鳥「……病院……?」

 
高木「おい! 勝手に抜け出すなんて何考えてるんだ!」

小鳥「……ご、ごめんなさい……」

黒井「見知らぬ女の世話を焼く義理はないだろう、高木。さっさと仕事に戻りたいんだが」

高木「まあまて黒井。 ……何か事情があったのか知らないけど、もう絶対やめろよ」

小鳥「はい……すみません、高木社長……」

高木「……は?」

小鳥「それに……黒井社長」

黒井「は?」

 
高木「……なんで俺たちの名前知ってるの……?」ボソボソ

黒井「それに社長……?」ボソボソ

小鳥「あぁっ! な、なんでもないんです!さっきの話が聞こえただけで……」

高木「……?」

黒井「……?」

小鳥「……そ、それにしてもお二人とも若いですね! いやぁ……びっくりしちゃいました!」

高木「……君、名前は?」

小鳥「わ、私の名前ですか? 小鳥です、苗字は……」

黒井「?」

高木「?」

小鳥「苗字は……えーっと……」

 
黒井「何を隠す必要がある?」

小鳥「その……なんというか……」

高木「落ち着け黒井、こんなおとなしそうな子をあまり脅かしてやるな」

小鳥「! おとなし……そう! 音無! 音無小鳥です!」

黒井「…………」

高木「音無小鳥か。いい名前だね」

黒井「……ご両親は?」

小鳥「あっ、えーっと……いるには、いるんですが……連絡がつかなくて……電話に出られないって言うか……たぶん話についていけないって言うか」

黒井「家の電話番号は? 高木が代わりに連絡する」

小鳥「ダメです!」

高木「?」

小鳥「……っていうのは……そのー、つまり……留守なんです。長い間……私一人で暮らしてて……遠くに行ってて、連絡も……全然」

 
高木「……らしいぞ」

黒井「どうも怪しいな」

高木「……ならばやはり仕方ない。当面は私たちが君の面倒を見よう」

黒井「何だと!?」

高木「すぐに来られる身寄りが近くにいないんじゃ、しょうがないだろう。それともたった一人でほうっておくのか?」

黒井「……お前は何でそうお人よしなんだ……付き合いきれん」

高木「この際だ。君の入院費用も貸してあげよう。お金もなさそうだしね」

小鳥「えぇっ!? そ、そんな……悪いですよ!」

高木「なに、返してもらえれば問題ない。君が元気になるまでは私を頼ってくれればいい」

黒井「……バカじゃないのか」

高木「紹介が遅れたね。高木順二朗だ、よろしく……こっちは友人の黒井崇男」

小鳥「どうも……始めまして」

黒井「…………」

 
──────

高木「無事に退院できてよかったね」

小鳥「本当に、なにから何まで……ありがとうございました!」

高木「いいんだよ。私も黒井と最近新しい会社を立ち上げたところでね、色々な人に協力してもらったから」

小鳥「……そうなんですか」

高木「ところで、君の乗っていた車は……」

小鳥「車?」





小鳥「……ああぁっ!!」

高木「!?」

monkey eaten

 
小鳥「高木社長!!!」ガシッ

高木「な、何だ……というか、何で俺を社長と呼ぶんだ……?」

小鳥「確認させてください……今日は……今日の日付は……?」

高木「日付……?10月22日だよ。君は昨日事故を起こしたんだ」

小鳥「何年ですか?」

高木「は?」

小鳥「西暦何年ですかっ!?」

高木「何年って……1982年に決まっているだろう」

小鳥「………………車……どこですか」

高木「さ、さあ……だいぶ前に撤去されてたから、町のスクラップ場じゃないのか」

小鳥「……スクラップ場…………そんな……」ヘナヘナ

 
高木「君、気持ちは分かるが……仕方ないよ。たるき亭に突っ込んでぐしゃぐしゃになっていたんだから」

小鳥「どうしよう……」

高木「軽い怪我ですんだだけもうけものだと思ったほうがいい」

小鳥「違うんですっ!」

高木「えっ……?」

小鳥「あの車は……あのデロリアンは……」


小鳥「高木社長! お願いです、助けてください!」

 
高木「た、助けるって……まさか車を弁償しろとでも……?」

小鳥「違うんです! でも……おねがいです……! アレがないと私……私」

高木「……あのなあ、確かに手を貸すとは言ったが」

小鳥「そうじゃないんです!」


高木「…………ははぁん。分かったぞ」

小鳥「ほ、本当に……?」

高木「君、アイドル志望の子だな?」

小鳥「えっ?」

 
高木「私が始めた会社が芸能事務所だというのが良く分かったな。黒井に教えられたか?」

小鳥「い、いえ……そうじゃなくて」

高木「……ふむ……よく見ると君はアイドルになる素質のありそうな子だ。声も綺麗だし……どこかでトレーニングを?」

小鳥「あの、社長」

高木「しかしなあ、どうせなら最初はもっと大手の芸能事務所を目指したほうがいいぞ。西園寺とか、東豪寺とか……」

小鳥「ですから、社長」

高木「ウチはまだ名前もついていない出来立ての赤ん坊みたいな会社だ。まあ人が増えるのは嬉しいことだし、それでもいいというなら……」

小鳥「社長!」

高木「ところで君はどこから来たんだ? 音無だっけ? まだ君のことを一切知らないな」

小鳥「社長っ!!」

高木「?」

 



小鳥「違うんです高木社長。聞いてください……私」


小鳥「未来から来たんです。 あなたの作ったタイムマシンに乗って……!」



















高木「はぁ……君、大丈夫?」

 
小鳥「ウソじゃありません! 本当です!」

高木「怪我が治るまで面倒を見るといったがな、流石に頭の中身までは責任は持てん!」

小鳥「本当なんです! お願いです、2012年に戻る手助けを……」

高木「大体、私はタイムマシンなど作った覚えはない」

小鳥「これから作るんです! ちゃんと証拠もありますから! 見てくださいこれ……私の運転免許証」スッ

高木「どれどれ……取得年月日:2012年4月……下らん偽物だ、金属を貼り付けた免許証なんてあるわけないだろう」

小鳥「他にも! これ……ほら、500円玉。平成17年って」

高木「ひらなり? ばかばかしい。偽の硬貨作りは犯罪だぞ」ポイッ

小鳥「まだまだ……これ、私と両親の写真です。ほら2008年って!」

高木「では聞くがな『未来からきた少女』さん、2012年における日本の総理大臣は誰だ?」

小鳥「えっと……野田佳彦です。民主党の」

高木「民主党? ……民主党!? ハッ!」

 
高木「未来では自民党から自由だけ取ってしまったようなわけの分からん政党が政治を握っているとでも言うのかね!?」

小鳥「わ、私未成年ですよ! 政治のことなんて……」

高木「それじゃあ何か? 未来の第二与党は共産党とでも言うのか!?」

小鳥「で、ですから」

高木「ソ連がアメリカに勝って、ベルリンの壁はアルプスを越えてるのか!?」

小鳥「社長、私の話を」

高木「アドバイスしといてやる……下らんウソをつくならな、もっとまともな内容を考えたほうがいいぞ。もう帰ってくれ! 付き合いきれん」グイグイ

小鳥「待ってください! おねがいします! 社長!」

高木「実に面白い未来の話だったよ。 おかげで30年後が楽しみだ」

バタン

 
小鳥「し、閉めないで! それじゃぁあれはどうです!? 高木社長は昨日、トイレで滑って転んで頭を打った!」

小鳥「壁に時計をかけようとして便器に上ったんです。それで気がついた瞬間思いついた……次元転移装置のシステム!」


   「昼間病院から抜け出したと思ったらわざわざここへ来てトイレを覗きに来たというのか!? ふざけるな!」


小鳥「違いますよ!!」


   「これ以上ウチの事務所に迷惑をかけるようなら警察を呼ぶぞ! 曲がりなりにもきちんとした仕事場なんだ」


小鳥「社長! 社長!」ドンドン

 

小鳥「……社長……!」ドン…ドン…


小鳥「…………グスッ……お願いですよぅ、社長……言ってたじゃないですかぁ……」

小鳥「次元転移装置と同時に思いついた……未来の私にくれた歌が……」


小鳥「高木社長が何十年もずっと温めてた大事な曲って……『空』っていう…………とっても素敵な曲です……グスッ……」





ガチャッ

小鳥「!」

高木「…………」

 
──────

小鳥「……本当にここにあるんですか?よっと……」ヒョイッ

高木「町に一番近いのはここだからな。ここにその車がなければ……後は分からん」ヨジヨジ

小鳥「そんな……あ、足元気をつけてください」ピョンッ

高木「ありがとう。よっと……車種は?」ドシンッ

小鳥「デロリアンです。改造してるから見た目は変わってますけど……」

高木「デロリアンか……つい3日ほど前に倒産してしまったなぁ。私もひそかにあこがれていたのだが……」

小鳥「……あっ!」

高木「どうした? 見つかったのか?」

小鳥「はい! ありました!」

高木「うん、フロントはつぶれているが後ろは無事みたいだな」

小鳥「んぎぎぎぎ……ドアが開かない……!」グググ…

高木「貸せ。危ないから離れていろ……ふんぬっ!」

ガコンッ

 

ギギギギ……

高木「……これは……」


バチッ……バチッ
  ピシッ……ピリピリッ……バチッ…


小鳥「…………未来の高木社長が言ってました。車のこの部分にある『次元転移装置』……これが、タイムトラベルを可能にするって」

高木「…………」

小鳥「……社長?」

高木「…………トイレで頭を打ったとき……とっさにこれを思いついて……メモに起こしたのだ」ピラッ

小鳥「…………ここにあるのとそっくり……」


高木「……ここにあるものを……私が……?」

小鳥「……そうです」

高木「……信じられん……私が……? こんな発明を……?」

 
高木「これだって……ほんの冗談で書いたものなのに……」

小鳥「……信じてもらえました? 私が……2012年からやってきたって」



高木「…………使える部品を運び出そう。足りないものは用意して、整備するんだ」



高木「君が家へ帰れるように」

 
──────

小鳥「高木社長。これを」

高木「……なんだねその小さな機械は」

小鳥「ケータイ電話です。……あーつまり、外に持ち運びできる電話」

高木「これが電話? ボタンも受話器も電線もないが……」

小鳥「なんといいますか、もはや電話としてイメージできるものの範囲を超えてるんです……テレビも見られるし、ネットも」

高木「ネット? 網がどうかしたのか」

小鳥「……いえ、何でも」ポチポチ

高木「……なんと! 画面を触ると動くのか……私の持っているポケベルと同じ大きさなのに……」

小鳥「ここに録画した動画が残ってるはずです。それを見てみましょう」ポチ

高木「いやはや……技術の進歩というのはすさまじいな……」

小鳥「社長、よく見ててくださいよ」

 
小鳥「ええと……ここからかしら」ポチ


    『ごほん。えー……私高木順二朗は……』


高木「これは私か!? なんてこった、ひどい老いぼれだ!」


    『今から歴史的な旅に出発するところです……』


高木「髪が真っ白じゃないか! なぜ毛染めを使わない!?」

小鳥「知りませんよ……えーっと」ポチポチ


    『車の動力は電気なんだがね、0.961ジゴワットの強力な電力を得るためには核反応が必要というわけだ』


高木「……なに、0,961ジゴワット? ……ジゴワット?」

小鳥「社長が言うには、とにかく大きな電力らしくて」

高木「30年後ならともかく、今の私は科学者でもなんでもないただの経営者の卵だぞ。見当もつかん……ん?」

小鳥「え?」

 

高木「すまんが今の、もう一度巻き戻してくれ」

小鳥「あっ、はい」ポチ


    『車の動力は電気なんだがね、0.961ジゴワットの強力な電力を得るためには核反応が必要というわけだ』


高木「核反応と言ったか!?」

小鳥「ええ、まあ……」

高木「核反応!?」

小鳥「そ、そうですよっ!?」


高木「核ぅ!?」


小鳥「そうですよ!」

高木「バカな! 私にそんな……恐ろしい……未来では近所のスーパーで核燃料が手に入るのか?」

小鳥「いえ、そんなことは」

高木「……まあ……いいだろう。それよりもだ、目下考えないといけないのはタイムマシンそのものの修理!」

 
高木「幸いにもこの次元転移装置自体は無事だった……しかし残りの部品はほとんどが壊滅状態なのだ」

小鳥「そうですね……」

高木「車のトランクにしまってあった設計図で、ある程度のものは分かるかも知れんが……わけの分からない部品を探すのには苦労しそうだ」

小鳥「…………」

高木「……これがすべて直るまで、一体どれだけかかることやら……」

小鳥「…………高木社長! このとおりです!!」ペコリ

高木「なっ、なにをしているんだ!?」

小鳥「何ヶ月でも待ちます! 何年でも待ちます! その間私をこき使ってくれてもかまいません!」


小鳥「私が元いた時代に帰るには……高木社長だけが頼りなんです!」

高木「…………」



高木「……よし。ならば……ひとつだけ条件が」

小鳥「…………?」

休憩したいの

これ書き溜めてあるんだよな?

>>201
ないんだな、それが

風呂入ってからかくの……でないと死ぬの

 
──────
黒井「俺は反対だ」

小鳥「…………」

高木「黒井……分かってくれないのか」

黒井「当たり前だ! 出身も家族も分からん不審な輩をアイドルにするだと!?」

黒井「貴様の悪い癖だ、高木!何でも感覚で決め付けて、感情に任せて始めてしまう!」

高木「アイドルとは心に訴えるものだ。自分の直感を頼って何が悪い!」

黒井「違う!アイドルとはビジネス戦略を立て、ライバルを出し抜きながら勝ち進まなければ生き残れん!」

高木「お前こそ、そんなやり方では誰も心から愛されるアイドルになれないんだよ!」

黒井「そんなものは必要ない!偶像とは昔から孤高、孤独な存在なのだ!」

黒井「貴様のやり方では、本当の意味でのトップアイドルなど生み出せるわけがない!」

高木「いいや、出来る。証明して見せよう、お前のやり方が間違っていると」

黒井「……………勝手にしろ!! ……俺は降りる、あとは一人でやれ」


小鳥「黒井社長……」

 

小鳥「高木社長……ごめんなさい……わ、私のせいで………」

高木「……いつか、こうなるような気はしていたんだ」

高木「君が気にすることじゃない」

小鳥「…………」

高木「アイツとは、またどこかで会うことになる……それまでは俺達で頑張っていこう」

小鳥「……はい」

 
──────


高木「……さて! 気を取り直さなければね。ようやくプロデューサーとアイドルが揃ったんだ、これから本格的に活動して行こうではないか」

高木「もちろん、傍らで修理も進めながらな」

小鳥「そうですね! 私……一生懸命やりますから!」

高木「そこでだ……まだ決めていない事務所の名前を考えなければ。特に何もなければ高木プロにしようと思っているのだが……」

小鳥「えっ、た、高木プロですか……?」

高木「ん? 不満か?」


小鳥「……いえ、でも……」

高木「……何か案があるのなら、言ってくれていいんだよ。君は新たな事務所の初期スタッフなのだから」

小鳥「…………」


小鳥「765…………765プロ」

 
高木「765プロ……? なぜそんな名前に?」

小鳥「いえ……なんでもないんです、ただ……」

高木「……そうか」


高木「うむ! 765プロ、いい名前じゃないか!ティンとくる響きだ」

小鳥「ほ、ホントですか?」

高木「ああ。よし……私たちの新しい事務所を『765プロ』とし、君はその初期メンバー。私は初代社長かつプロデューサーだ」

高木「よろしく、音無君」スッ




小鳥「……」

小鳥「ハイッ!」ギュッ

 
──────

高木「……で、ボーカルレッスンから始めてみたはいいが……」


小鳥「♪~」


高木「音無君、すばらしい歌声じゃないか! ひしひしと君の才能を感じるよ……」

小鳥「ありがとうございます! 向こうでも私、歌だけは毎日ずっとがんばって練習してきましたから!」

高木「なるほど。 歌が好きなのだな」

小鳥「えへへ……お母さん譲りですね」

高木「お母さん?」

小鳥「お母さんも、昔アイドルをやっていたんです。歌が大好きだって……」

高木「……なるほど。アイドルなのであれば、いつか君のお母さんにもご挨拶したいね」

小鳥「……あぁ、たぶんできますよ……いつか」

高木「?」

 
──────

高木「ダンスレッスン……」


小鳥「よっ、ほっ、1、2、3、4……」クルッ シュタッ


高木「……なかなかレベルが高いな」


──────

高木「ビジュアルレッスン……」


小鳥「はいっ!」キュピーン


高木「……これも……」



小鳥「ふぅ、ふぅ……どうでした?」

高木「……君は元いた世界では相当の売れっ子ではないのか?」

小鳥「えぇっ!? そ、そんなことありませんよ……」

 
高木「しかし……君の実力なら」

小鳥「仮に私に実力があっても、未来では……宣伝や広告の力が大きいですから」

高木「君の実力でも、評価されないというのかね?」

小鳥「……私なんてさっぱりです。それに私の一番大好きな歌が……古臭いって言われちゃって」

高木「……古臭い……」

小鳥「流行にそぐわないって。まるで『君の親の世代なら受けたんだろうけどね』みたいな目を……」

高木「失礼な話だ。……まさかその曲が」



小鳥「『空』です」


高木「なんと! 私がいつか作るかもしれない曲が古臭い……!?」

小鳥「で、でも……今ならちょっとは評価が変わるかも! 社長、オーディションであの曲歌っても」

高木「ダメだ!」

小鳥「どうして?」

高木「まだ私が完成させていないからだ! 私に歌詞を教えてくれるなよ!」

 
小鳥「でも、どうせいつか高木社長が考える歌詞なんですから……」

高木「意味が変わってくるのだよ! 仮にそんな形で歌詞をすべて教えてもらったら、思い入れが弱くなってしまうだろう!」

小鳥「…………」

高木「……私だって知りたいに決まっている」


高木「初めて頭に曲のアイデアが降りてきて以来、どんな出来になるのか、どんな出来にしてやろうか悩まない日はないんだ」

高木「だがな、これだけは私自身の手で作り上げたい。君の言う未来が本当なら、私はそんなものクソくらえだ!」

高木「誰にも文句を言われないような、歴史に残る名曲を書きたいのだよ……私は……」


小鳥「……だったら」

小鳥「社長のいないところで、社長に聞こえないように歌うのはダメですか……?」

高木「…………」

小鳥「でないとせっかくの歌詞を忘れてしまいます」

 
高木「……私に絶対に歌詞を知らせるんじゃないぞ」

小鳥「分かりました」

高木「絶対にだ!」

小鳥「約束します!」

高木「よし! では今度のオーディションで歌う曲を決めようか」

小鳥「はい!」

高木「…………あっ!」

小鳥「どうしました?」


高木「出だしを思いついた……!」

小鳥「! それってもしかして……」

高木「音無君……少しだけ……少しだけでいいから」


小鳥「♪空になりたい 自由な空へ……」

高木「ストップ! 完璧だ……思ったとおりだ!」

小鳥「…………」

【速報】>>1氏の眠気が限界、後の展開が思いつかないレベルに

起きた

 
──オーディション会場──


高木「いよいよ始めてのオーディションだが、気分は?」

小鳥「……ええ。緊張してます」

高木「そうか。大丈夫、君なら出来るよ」

小鳥「…………」

高木「そう硬くならずに。向こうでも受けたことくらいあるんだろう?」

小鳥「はい。だけど……いえ、がんばります」



高木「では君は控え室に……ん?」

小鳥「?」

高木「あれは……」


   「あら? 高木プロデューサーじゃない」

高木「舞君」

小鳥「……おぉ……」

 
舞「今は高木社長、だったかしら?」

高木「久しぶりだねぇ。元気にしていたか?」

舞「ええ。社長もお変わりないみたいで何より」

小鳥「……もしかして、日高舞……さん?」

舞「そうよ。あなたは……みない顔だけど」

小鳥「うわぁ……昔から綺麗……」

舞「ん?」

小鳥「いえっ、なんでも……は、はじめまして」

高木「その子は娘さんかい?ずいぶん大きくなったじゃないか」

舞「ええ。もう3歳ですよ」

小鳥「……娘……」

舞「愛っていうの。ほら愛、ご挨拶」


愛「あいです!! さんさいです!!」

 
高木「元気があっていいねぇ」

舞「ちょっとうるさいくらいよ」


愛「おねーちゃん、こんにちは!!」

小鳥「こんにちはー」


小鳥「……あなたが愛さん……通称『豆タンクアイドル』……」

愛「えへへー!!」

小鳥「すでにその片鱗を見せているというわけ……」

舞「何か言った?」

小鳥「いえいえ、何でもありません……可愛いお子さんですね!」

 
高木「それで、今日はテレビ局に何か用事でも?」

舞「そうなのよねえ。最近退屈だし、娘もちょっとずつ手がかからなくなってきたし……面白いものでもないかしらと思って遊びに来ちゃった」

高木「どうせなら芸能界に復帰すればいいじゃないか。アイドル再デビューとは行かなくても、何かしら関わることは出来るぞ」

舞「もう一度ねぇ……」

小鳥「そ、そうですよ! あなたオーディションの有名な審査員長に……」

舞「私が? ふふっ、無駄よ。競う相手がいなくて飽きたからやめたんだもの、よっぽど面白いものでもないとそんなのやりっこないわ」

小鳥「えっ、そうなんですか……?」

高木「審査員長か。君ならむしろオファーが来るくらいだと思うがね」

舞「サボってもいいなら引き受けてもかまわないけど。……いえ、やっぱり面倒そうね」

小鳥「…………」

舞「ところであなた、新人さんね。名前は?」

小鳥「……音無小鳥です」

舞「そう。……がんばってちょうだい」

小鳥「あっ、はい。がんばります!」

 
舞「じゃ、私そろそろ行くわ。もっといろいろ見て回りたいから」

高木「そうか、では」

舞「高木社長、また。愛、バイバイって」

愛「ばいばい!!!」



高木「……舞君を知っているのか?」

小鳥「超有名ですよ……あの人に口出しできるのはそれこそ高木社長か黒井社長くらいしかいません」

高木「……さすが、いつになっても恐ろしい存在なのだな」

小鳥「…………」

高木「時間が押してる。準備を急ごうか」

小鳥「わ、分かりました」

 
──────

小鳥「4番、音無小鳥です!」

   「765プロ……聞いたことない事務所だな」

     「最近出来たところらしいですよ」

 「それは興味深いわね。さあ、始めて」





小鳥「♪~」

 
──────

高木「すごいぞ音無君! ぶっちぎりで1位合格だったじゃないか」

小鳥「はい……ありがとうございます」

高木「……嬉しくないのかね」

小鳥「いえ、まさかそんな! ……とっても嬉しいですよ」

高木「それより、2時間後に収録が始まるらしい。私は打ち合わせをしてくるから、この控え室で待ってておくんだよ」

小鳥「はい。がんばってください」

高木「……これで765プロの名前が少しでも知れ渡るといいね。今日は本当にありがとう、よくやってくれた」

高木「また後でな!」

バタン

小鳥「…………」



小鳥「ふぅ……複雑ね」

 
小鳥「…………」

小鳥「もしかして、2時間暇なのかしら……」

小鳥「…………」








小鳥「………空になりたい……自由な空へ…………

 

舞「せっかく会ったんだし、高木社長とあの新人さんにおめでとうでも言っておこうかしらね。愛」

愛「おめーと!!」

舞「まだよー。確か控え室は……あら?」



       翼なくて……翔べるから 素敵ね……

    空になりたい…… 好きな空へ……

       雲で夢……描けるから……



舞「……聴いたことない歌ね」

舞「『765プロ様』……この部屋で間違いないはずだけど」

愛「こんにちはー!!」

舞「シッ! 静かに」

愛「しー!」

      始まりはどこになるの?

            お終いはどこになるの?

    上を見て あなたを聞いてみたら

        始まりとお終いなんて

                   繋がって巡るモノ

           大事なのはやめない事と

     諦めない事



舞「……これは……まさかさっきの新人……?」

愛「?」

舞「静かに聴いてましょうね……」ナデナデ

 
     春は花をいっぱい咲かせよう

           夏は光いっぱい輝こう

               奇跡じゃなくて 運じゃなくて

                  自分をもっと信じるの

        秋は夜を目一杯乗り越え

            冬は雪を目一杯抱きしめ

               笑っていいよ 泣いていいよ

      だって巡ってまた春は来るから

          繋ぐレインボー



舞「…………やるじゃない、あの子」

愛「?」

舞「よし…………突入ー!」

コンコン
ガチャ

 
小鳥「ふぅ…………よし、次は2番を」

コンコン
ガチャ

小鳥「!?」

舞「どうも~」

愛「どーもー」

小鳥「ひっ……舞さん!!??」

舞「オーディション合格したみたいじゃない! 結構兵ぞろいだったのに、あなたなかなかやるわね」

小鳥「あ……ありがとうございます」

愛「おめーとーざいます!!」

小鳥「あはは、ありがとう愛さ……愛ちゃん」



舞「ところで、今歌ってたのって」

小鳥「!!!」

 
高木「音無君! 今すぐ来てくれ、打ち合わせは本人参加で……おや、舞君」

小鳥「社長!」

舞「あら」

高木「こんなところで一体なにを?」

舞「いえいえ、ただ一言お祝いを」

高木「おお、そうだったのか。わざわざありがとう……小鳥君、すぐに来てくれ」

小鳥「あ、はい! 舞さん、どうもありがとうございました」

舞「えっ? ちょっと待って! まださっきのこと聞いてないわよ」

小鳥「すいません、急ぐみたいなんで!」ダッ

高木「失礼するよ舞君!」ダッ

舞「ちょっと!?」

バタン


舞「…………」

 

舞「何よ、もう! 失礼ね、私を誰だと思ってるの!?」







舞「……いい曲だからちゃんと聴かせてほしかっただけなのに」

愛「?」

舞「……まあいいわ、また聞く機会はあるでしょうから」

 


高木「さっき舞君と何を話していたんだ? 何か聞きたがっていたみたいだが」

小鳥「いえなんでも……きっとオーディション合格の秘訣とか」

高木「何をバカ、彼女はウインクするだけで合格してしまうような怪物だぞ。他人の秘訣などいらん子だ」

小鳥「うっ」

高木「……何の話を?」

小鳥「いえ……ホントになんでもないです、これからもがんばってねって言われて……」

高木「……ならいいが」

20分

ほんまや
>>330訂正
上を見て あなたに聞いてみたら

 









高木「さあ、君の記念すべきテレビ初デビューだぞ。気合入れて行ってくるんだ」

小鳥「はい! がんばってきます」タッ


        『才能あふれるアイドルの卵を発掘し紹介する当番組、今週も超大型新人が登場します』

         『それでは歌っていただきましょう、音無小鳥さんです!』


   ワー   ワー   ワー
     キャー   キャー   

 


  小鳥「皆さん始めまして!! 私の歌、聴いてください!!」






──────



    『皆さん始めまして!! 私の歌、聴いてください!!』



小鳥「……まさかこんな古いビデオが残ってるなんてね」プチッ

小鳥「……これ、いつのだっけ」ピッ

ガチャン


  ”1982 音無小鳥 初オーディション”


小鳥「……1982年か」

 
高木「音無君、何を?」

小鳥「ああ、いえ……昔のステージの映像があったので、つい」

高木「ほお……82年か、懐かしいね」

小鳥「もうこっちに来てずいぶん経ちますから」

高木「…………」


高木「もうすぐみんなが帰ってくる。出迎えてあげないとね」

小鳥「……はい」


タタタタタ……


小鳥「……お、この足音は」

高木「噂をすれば、だね」


ガチャッ


  「「「「ただいまー!」」」」

 
高木「おぉ、お帰り」

伊織「疲れたわ。小鳥、お茶頂戴」

小鳥「お帰りなさい。用意するわね」

雪歩「あ、伊織ちゃん。それは私が……小鳥さんはそこにいてください」

伊織「ありがと」

真「ふぅ、最近は仕事がどんどん増えてきて嬉しい悲鳴ですね」

高木「景気がいいからね。実にいいことだ」

小鳥「お帰りなさい。どうでした?」

律子「ええ、何とか。最近はどの局に行ってもわりかし名前が通ってるのでとっても仕事がやりやすいです」

高木「うんうん。順調だね……いや、今日もお疲れ様!」



高木「帰ってきて早々で申し訳ないが……実はだね、君たちに重大ニュースがある」

保守ばっかで申し訳ない

急用なので1時間ほど

 

高木「わが765プロはこの春、新たなメンバーを大幅に増やす!」

小鳥「!」

律子「……ホントですか!?」

伊織「アイドルが増えるってこと?」

高木「そのとおり!」

小鳥「えっ!? 社長! それ私も聞いてませんよ!」

高木「驚かせるためにわざわざ秘密にしておいたのだ。君たちにも負けないすばらしいアイドルの卵だよ」

真「へぇ……何人増えるんですか?」

高木「9人」

雪歩「……9人!?」ビチャッ

真「わっ、雪歩!?」

 

雪歩「ご、ごごごめんなさいぃ……今拭きますぅ!」

律子「ま、待ってください社長! 今でさえ3人の面倒を見るのが手一杯なのに……」

律子「アイドルがいきなり4倍に増えるんですか!?」

小鳥「さすがにそれはやりすぎじゃ……」

高木「心配いらんよ、そういうと思ってな……」


高木「新しいプロデューサーも用意してある」

小鳥「……プロデューサー……」


雪歩「うぅ……どうしよう、いじめられたりしたら……」

伊織「アンタが弱気でどうするのよ……」

 



──────



高木「……では、これから皆で一丸となってともにがんばっていこう。いいね?」


   「「「「はーい!!!」」」」



真「ずいぶん賑やかになったね」

伊織「どころか、この事務所じゃ全員入るのは狭いわね」

雪歩「ええと……1、2、3、……8人?」

律子「一人……いえ、新しいプロデューサーもあわせると二人足りない?」

小鳥「……社長? どうかしたんでしょうか」

高木「プロデューサーは少し遅めに来るように言ってあるから問題はないんだが、おかしいね……誰が来てないのだっけな」


ジリリリリリ…

 
小鳥「…あら、電話」

ガチャン

小鳥「お電話ありがとうございます、こちら765プロダクションです……」


   『あのっ! すみません、遅くなって……もうみんな集まってますよね……?』

小鳥「? あの、どちらさまで……あ、もしかして今日来るはずの?」

   『そうです、天海春香って言います…… すみませんっ! 今駅前の喫茶店にいるんですけど、ここからどう行けば……』


小鳥「天海春香……」


小鳥「……天海春香……!」

 
   『あの、何か……?』

小鳥「いえ、なんでもないの。そうね……分かったわ、迎えに行くからそこで待っててちょうだい」

   『ホントですかっ!? あ、ありがとうございます……待ってます!』


ガチャン


小鳥「……社長。天海春香……ちゃんなんですけど、私が迎えに行っても良いですか?」

高木「ふむ……道に迷っていたのか。ではお願いするよ、ありがとう」

小鳥「はい。行ってきますね」

 
──────

カランカラン……

小鳥「このお店って言ってたわね……ええと……」


小鳥「人がいっぱいでよく分からない……」

小鳥「!」



春香「…………」ソワソワ

小鳥「…………」

春香「…………」ソワソワ

小鳥「…………」ジィー

春香「…………?」



小鳥「……あなた……天海春香ね……」

 
春香「えっ!? あ、はい! あなたは……」

小鳥「…………」

春香「…………あの……?」

小鳥「…………おか……」

春香「へ?」

小鳥「っ……おか、おか……しいと思ったのよなかなか来ないから。始めまして! 私は音無小鳥」

春香「音無小鳥……さん」

小鳥「765プロの事務を担当してるものです。迎えに来たわよ」

春香「……あ、そうだったんですか! よかった……ご迷惑おかけして、ごめんなさい!」

小鳥「いいのよ。さ、行きましょう」

春香「はい!」


小鳥「……懐かしい……!」

春香「?」

 
──────

春香「結構簡単な道だったんですね……教えてもらえれば自分でいけたかも」

小鳥「そうね。意外とすぐ近くでしょ?」

春香「はい。わざわざ迎えに来ていただいて、本当にすみません……」

小鳥「いいのよ、私がやりたくて勝手にやったことだから。それよりも今日からみんなと一緒にがんばらないと」

春香「そうですね。……他の子達はどんな感じでしたか?仲良くできるかな……」

小鳥「大丈夫よ。春香ちゃんなら、上手くやっていけるに決まってるから」

春香「本当ですか……?」

小鳥「…………ええ。そんな気がするもの」


   「……んー?おかしいなぁ、この辺りなんだけどな……」

 
小鳥「今、高校生?」

春香「はい! 17歳です」

小鳥「そう……あと10年遅かったら、同い年くらいだったのにね」

春香「えっ、そうなんですか? もっと若いかと……」

小鳥「若いわよ? …………実際にはあなたよりずっと……」

春香「?」


   「あの、すいません」

春香「?」

   「……ちょっと良いですか?」


春香「はい、なん──」

小鳥「どうかしましたか?」

 


   「ちょっと道に迷っちゃって。この住所に行きたいんですけど……」

小鳥「どちらでしょう?」

春香「…………」



小鳥「……この住所って、もしかして……あなたも765プロに?」

   「も?」

小鳥「…………」


   「……あの……」


春香「……どうかしたんですか? えと……音無さん」


小鳥「……なるほど……二人の出会い……765プロか……」

 
──────


小鳥「……高木社長、お疲れ様です」

高木「ああ、お疲れ様。新しいアイドルたちとプロデューサーの彼はどうかね?」

小鳥「みんなとってもいい子達だと思います。プロデューサーさんもやさしそうだし……そんなことより!」

高木「ん? 何かね」


小鳥「……会ったんです、今日」

高木「……誰に?」



小鳥「お父さんとお母さんに!!!」

高木「何!?」

 
小鳥「もう二人ともすっごく若くて!!」

高木「…………」

小鳥「お母さんなんかまだ高校生で、ホントに可愛いし……お父さんもさわやかだし!」

高木「…………音無君」

小鳥「もうびっくりして!! それにもう何年も顔を見てなかったから……嬉しくて……」

高木「音無君」

小鳥「あ、これ見せましたっけ? 昔私と家族で撮った写真なんですけど。3人で公民館の……」

高木「音無君! 少し私の話を聞いてほしい」

小鳥「……え……? は、はい」

 
高木「いいかね……君がこっちの世界に来て約10年経過している」

小鳥「…………そうですね」

高木「君に頼まれたタイムマシンの修理も……ここまでかかって順調とはいえないが、着実に進んでいる」

小鳥「……はい」

高木「私は君から預かった設計図を元に 科学について色々と勉強をしたりもした。それで気づいたこともいくつかある……」


高木「すでに手遅れだが……本来君はこの世界の誰とも接触してはいけなかったのだよ」

小鳥「……それ、どういうことですか?」


高木「君はもともとここにはいなかったはずの存在だ。だが君はこれまで……さまざまなことに干渉してきた」

高木「君をアイドルとしてデビューさせたこと……それを通じて多くの人物が君の存在を知り、どこかで何かの考えを変えたりしたかも知れん」

小鳥「……?」

高木「分かるか? 君の行動ひとつで歴史にどんな影響を及ぼすか分からないということだ!」

 
高木「たとえば! つぶれかけの映画館があったとしよう」

高木「その映画館は、あと一人でも来場客数が足りなければ閉鎖されてしまう」

小鳥「はぁ……」

高木「しかしだ。そこへ本来この時代にいないはずの君が訪れた。するとどうなる……?」

小鳥「…………」

高木「その映画館の売り上げに変化が生じ、映画館が存続するか否かの問題で、本来は存続しなかったはずなのに……」

高木「君のぶんの売り上げで存続になったとしたら……」

小鳥「…………」

高木「さらにだ! もしその映画館が後に火事にでもなってだね」

高木「逃げ遅れた人の中に将来の総理大臣になるべく運命づけられている若者がいて、もしその火事で死んだとしたら……」


高木「そうなったら、歴史を大きく改変するかもしれないんだぞ!」

小鳥「そ、そんな大げさな……」

高木「大げさなどではない!君のどんな行動が、未来のどんなことに影響するか全く予想できんのだ!」

 
小鳥「…………」

高木「……とはいえ君も765プロの一員としてすでに事務所のメンバーには存在が知られている。いまさら君をどこかに閉じ込めておくことも出来まい……」

高木「だがこれだけは約束したまえ。久しぶりにご両親に会えたと言ったな、嬉しい気持ちは分かるが決して……」


高木「決して……君が元の時代に戻るまでは、そのご両親とは関わってはいかん。顔を合わせるのもダメだ!」

小鳥「…………」

高木「二人とはどこで出会ったんだ?」


小鳥「…………むりですよ……だって……その二人は……」

高木「…………」

 
高木「…………まさか……765プロに……? 今日新たに入社してきた子達の中に君の母親が……!」

小鳥「……そう……なんです」

高木「なんということだ…………とんでもないことになってしまった……」


高木「……まて、当てて見せよう。そうだ、一人遅刻してきた子がいたな! 名前は……」

小鳥「天海春香」

高木「それだ……待ってくれたまえ」ゴソゴソ


高木「……やはり……」

小鳥「……履歴書?」


高木「どうして気がつかなかったんだ……彼女と……天海君と」

高木「10年前、初めて会ったときの君と……瓜二つじゃないか……!」

小鳥「…………」

 
高木「父親は……?」

小鳥「…………プロデューサーさんです」

高木「…………そういうことか……そういえば、君が今日天海君を喫茶店へ迎えに行ったな」

小鳥「はい……」

高木「何か変わったことは? どんな些細なことでもいい」

小鳥「いえ、特に何も……来る途中にプロデューサーさんに会って……」

高木「途中で……まて。つまり彼と初めて顔を合わせたのは事務所ではないのだな?」

小鳥「はい。道が分からなかったみたいで私に尋ねてきたんです」

高木「…………君に?」

 
高木「それだよ……もし君が天海君を迎えに行かなかったとして……」

高木「天海君が一人でここへ足を運ぶ途中、彼に出くわしたとしたら……?」

小鳥「…………」



小鳥「話しかけていたのは、私じゃなくて……お母さん……?」



高木「……君の家族写真……」

小鳥「これですか?」ピラッ

高木「そうだ。こっちへ……見せておくれ」

高木「…………」

小鳥「…………」

 


高木「…………あぁ大変だ……君の父さんを見てみろ!」

小鳥「……?」







小鳥「!?  頭が消えてる……消しゴムで消したみたいに……!」



高木「この写真から……消えかかっている……」

 
──────

小鳥「それで、私は何をすれば……」

高木「いいか、君はご両親の最初の出会いを邪魔してしまった」

高木「プロデューサーの彼が道すがら話しかけたのは君の母さんではなく君になってしまったのだ」

小鳥「そんなことだけで……」

高木「恋愛のきっかけというのは得てしてそんなものなのだよ」

高木「それでだ。君の父親と母親はこのままでは結婚しないことになる」

高木「だから写真から父親の姿が消えようとしているんだ。結婚しなければこうして一緒に写ることもないからな」

高木「その次は母さん、そして最後には君が写真から消える」

小鳥「……お父さんやお母さんはともかく、私が写真から消えたら……」

高木「今はそこまで考えなくとも良い。君はこれからお父さんとお母さんをくっつけるためになんとか知恵を振り絞りたまえ」

 
小鳥「でも、どうやって……」

高木「考えるんだ音無君。自分の親だ、見当はつくだろう! ……何かこう……きっかけというか」

小鳥「……そうだ! プロデューサーさんをお母さんの担当にさせれば」

高木「うむ……確かにそれもひとつの有効な方法だな。一緒にすごす時間が増えれば増えるほど関係も深まるだろう」

小鳥「よし! まずはそれで行きましょう」

高木「そうだな。……まあ落ち着くことだ音無君、何も彼らとて出会って1日やそこらで結婚するかどうか決めるわけでもあるまい」

小鳥「…………」

高木「まずは落ち着いて様子を見よう。ゆっくりと策を練っていくんだ」

小鳥「……そうですね」

高木「よし。朝礼が始まるぞ、みんな事務所にいるだろうからそろそろ社長室からでないとね」


ガチャッ

 
P「あっ、音無さん。おはようございます!」

小鳥「……お……プロデューサーさん、おはようございます」

P「今日から本格的に仕事開始ってことで、やる気十分です!」

小鳥「そうですか。これからがんばってくださいね」

P「はい!」

小鳥「分からないことがあったら、いつでも私に聞いてくださってかまいませんからね」

P「はい。そのときはお願いします!」



高木「ごほん。さて……みんな集まっていることだね、関心関心」

高木「当面はレッスンに励んでもらい、少しずつ仕事に慣れていってもらおうと思う。がんばってくれたまえ」

 

高木「それでは今日も一日、頑張っていこう」


 ザワザワザワ
        ザワザワ





小鳥「春香ちゃん。春香ちゃん? ちょっといいかしら」

春香「はーい」

こんなクソ長くなると思わんかった

休憩

 
春香「呼びました? 小鳥さん」

小鳥「ええ。少しだけね……プロデューサーさんがね」

春香「はい?」

小鳥「春香ちゃんにはきっと才能がありそうだって。きっと素敵なアイドルになれるって言ってたわ」

春香「ほ、ホントですか!?」

小鳥「もちろんよ。どの子もすばらしいけど、春香ちゃんは特にって」

春香「そ、そうなんですか……えへへ、嬉しいなぁ」

小鳥「だから、プロデューサーさんの期待に応えられるよう、これからがんばらないとね?」

春香「はい! も、もちろんそう言ってもらえてなくてもがんばりますけど……がんばります!」

小鳥「そう。レッスン、がんばってね! 行ってらっしゃい」

春香「はい! 行ってきます」タッタッタッ



小鳥「……うん。最初はこんなもんね、次は……」

 
小鳥「プロデューサーさーん!!」

P「呼びました?」

小鳥「ちょっと質問が……」

P「何でしょう」

小鳥「ズバリ! プロデューサーさんにとって、12人のうち誰が一番好みなのかなって」

P「……はい? 好みって……」

小鳥「まあまあそんな変な意味はないですから! 純粋に……」

P「……うーん……どうでしょう。みんな素敵だとは思いますけど……」

小鳥「春香ちゃんなんかどうです?」

P「春香……ああ、あの子ですか」

小鳥「私、あの子は特にいいと思うんですよねー。なんていうか、とってもいい子なんじゃないかって」

 
P「ははは……そうですね。まあ、そう言っちゃうとみんないい子だと思いますけど」

小鳥「まあ、これから女の子たちと色々お話して仲良くなっていってくださいね?」

P「そうですね。……まあ、好みっていったら俺はその……アレですけど」

小鳥「?」

P「なんでもないです。じゃあ、俺も行ってきますね」

小鳥「行ってらっしゃーい」



小鳥「……ふぅ……」

高木「今の話は?」

小鳥「春香ちゃんとプロデューサーさんに、お互いのことをほんの少しでも意識してもらえるためのきっかけ作りです!」

高木「…………」

小鳥「まだ出会ったばかりなんであまり踏み込めはしないですけど、最初はこんなもんですよね?」


高木「…………少し心配だな」

 
──────

高木「…………ここが……こうで、いや違う……違うなぁ……」カキカキ

高木「……そうか、ここでこういう感情を……! うん……」カキカキ


コンコン
ガチャ

小鳥「社長?」

高木「! おぉ、音無君……茶を持ってきてくれたのか」

小鳥「はい。……それ」

高木「いや……未来の私はいったいいつこれを書き上げたんだろうねぇ……」

小鳥「あぁ、歌ですか」

高木「最近になってな、とてももどかしく感じてきたのだよ。君の頭の中にはすでに完成した歌詞があるのかと思うと……」

小鳥「急がなくても構いませんよ。私はゆっくり待ってますから」

高木「…………」

 
小鳥「そんなことよりも、ほらこれ! 見てください」ピラッ

高木「……例の写真か、これは……」


高木「お父さんの足から上が……」

小鳥「綺麗さっぱりなんです」

高木「少しずつタイムリミットが近づいているのかも知れん。あまり悠長には出来んな……」

小鳥「そうなんですが……未来で聞いてきた話を知れば、参考に出来ますか?」

高木「いや……出来ればそれは避けたいところだな。というよりやめてくれ」

小鳥「どうしてです?」

高木「言っただろう、過去で何かをすれば未来にどんな影響が起きるか分からんと」

小鳥「…………」

 

高木「ほんの些細なことでも歴史を変えてしまうのかも知れんとな。君が私に未来のことを教えることもそれに含まれる」


高木「バブルがはじけても、不況の煽りに負けずウチはやってこれたんだ……少なくともこの事務所の未来は台無しにしたくない」

小鳥「…………」




小鳥「ん?」

高木「どうかしたのかね?」

小鳥「…………いえ、なんでもないです」

高木「だからね、未来の話を元に何か行動を起こすなら、まずは君自身がやってみてくれ。私の協力が必要なら必要最低限を言えばいい」

小鳥「……それじゃあ、どうしましょう……?」

高木「それを君が考えるんだ! 私には分からんことでも君なら分かることがあるはずだろう」

小鳥「………」

 
──────

小鳥「……確か……お父さんとお母さんの出会いはもちろんこの事務所……」

小鳥「…………待ってよ……?」



小鳥「確かお母さんは…………なんて言ってたっけ……?」

小鳥「くぅっ……昔のことだから、思い出せない……思い出すのよ小鳥……!」




    『ここだけの話だけど、本当はお母さんあまり売れなくて良かったと思ってるの』




小鳥「! そうよ……あと、社長は……えぇっと……」


   『それまではみな順調に活動できていたのだがね。バブルがはじけて以来、すっかり不振になってしまって……』

   『バブルがはじけても、不況の煽りに負けずウチはやってこれたんだ……少なくともこの事務所の未来は台無しにしたくない』


小鳥「…………」

 
小鳥「おかしい……昔、いや未来で言ってたことと違う……」

小鳥「元いた時代では不況のせいと、ライブの失敗で倒産したって言ってたけど……」

小鳥「…………おかしい……どうして……?」


小鳥「!」



   『とどめになったのは、起死回生を狙ったオールスターライブが失敗してしまったことだがね』


   『なんでこんなところに連れてくるんだろうって思ってましたけど……お父さんたちが結婚するきっかけになった場所だって』

   『……きっとそれがそのライブ会場だったのかも』


   『まじめなあの人のことだもの、人気があってずっとアイドルを続けてたらきっと手を出してくれなかっただろうから』



小鳥「…………ぐちゃぐちゃだけど……なんとなく、わかったような気がする……」


小鳥「どうしてお父さんとお母さんが結婚しない未来になろうとしてるのか……」

ごめんちょっと煮詰めてくる

 






──半年後──






小鳥「ええっと……春香ちゃんが雑誌の取材で午後からは……竜宮小町はテレビ出演、やよいちゃんと真美ちゃんがラジオ……」

小鳥「真ちゃんと美希ちゃん雪歩ちゃんがステージでミニライブ……響ちゃんと貴音ちゃんが……」

律子「もうてんやわんやですね! 全く嬉しい悲鳴ですよ」

P「こんなときにこれだけ仕事があるなんて、嬉しい限りじゃないですか? 音無さん」

小鳥「……そうですね」


小鳥「……お仕事いっぱい。不況なんてなんのその…………」

 
小鳥「スケジュール表に埋まりきらないけど、千早ちゃんもワンマンライブのお仕事が控えてるものね……今日はそのための調整か」

千早「はい」

P「もうすぐだもんな。がんばらないとな」

千早「もちろんです」

律子「では、私たちも行ってきますね」

亜美「ピヨちゃん、またね~」

あずさ「行ってきます」

伊織「今日もばっちりこなしてやるから、見てなさい!」


P「じゃあ俺たちも。春香、行こうか」

春香「はい! 小鳥さん、行ってきますね」

小鳥「行ってらっしゃい。がんばってね」


バタン…

 
小鳥「…………『起死回生のオールスターライブ』か……」

小鳥「これじゃ、そんなことする必要もなさそうね……」

小鳥「…………社長に相談するべきかしら……」

千早「?」



ジャー
ゴボゴボ…


ガチャ

高木「ふぅ……そろそろトイレの壁掛け時計を買い換えないとな。古くなって埃がつまっとる」

小鳥「社長……」

高木「また便器に上って足を滑らせるのはごめんだけどね。ははは、あれは今でも思い出せるほど痛かった」

 
高木「みんなはもう行ったかね?」

小鳥「はい。千早ちゃんももうすぐ出発よね?」

千早「ええ。お邪魔でしたら早めに出ますが……」

小鳥「まさか、邪魔だなんて。ゆっくりしていったらいいのよ?」

千早「……ありがとうございます」


高木「さて。……音無君、ちょっと社長室に来てくれんか。ある企画について相談があるんだ」

小鳥「企画?」

高木「まだプロデューサーの彼にも、律子君にも伝えてないことだ。先に話しておこうかと思ってね」

小鳥「そうですか」

高木「さあ、こっちへ。如月君、レッスンがんばってくれたまえ」

千早「はい、社長」



バタン…

 
──────

小鳥「…………!」

高木「というわけだ。彼女たちのこれまでの活動を総括するつもりで、今回この『オールスターライブ』を企画した」

小鳥「……オールスター……」

高木「何か異論はあるかな?」

小鳥「……いえ、ありませんが……」

高木「日付はまだ決めていないが、会場は町にある巨大な公民館で行おうと思う。あの時計台つきのな」

小鳥「!」

高木「これは絶対に成功させなければならない。わが765プロがこれからさらに羽ばたくための土台としてだね……」


小鳥「…………」

高木「……? 音無君?」

小鳥「…………」

高木「……どうかしたのか? 様子が変だよ」

 
小鳥「…………社長……私……」

高木「……?」

小鳥「…………」

高木「一体何が…… まさか、あの話で何か進展が……?」

小鳥「…………」

高木「音無君、話してくれ。私に協力できることならすると言っただろう」

小鳥「…………大丈夫です」

高木「何を隠しているのかね?」

小鳥「…………」



小鳥「…………」スッ

高木「……これは、いつものご家族の写真じゃないか」

 
小鳥「最後に見せたときからしばらくは変わらないままでしたけど、またお父さんがすこしずつ消えていってます」

高木「ふむ……確かに、もうほぼ全身が見えないね。 お父さんとお母さんの関係は今……?」

小鳥「……いい感じです。……だと思います……とっても……だけど……」



小鳥「お母さんが言ってました。『アイドルを続けてたらお父さんとは結婚してなかっただろう』って」

高木「……?」

小鳥「元いた時代では……その最後の決め手になったのが、このライブでした」

高木「!!」



高木「……いや、待ってくれ。『続けていたら結婚していなかった……』?」



小鳥「…………本当なら……このライブは……失敗します」

高木「…………」

ちょっと壮大にミスった気がするの

あああああかん頭パンクしそう

考える時間をください

タイムパラドックスネタはややこしい

251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/01/06(日) 20:56:18.31 ID:wFEAYeSC0
妹「え?お兄ちゃんが死んでる?」

男「」

妹「ま、まさかそ、そんな…」

男「」モゾモゾ

妹「!!」

このままいく

 
小鳥「……そして……そのまま765プロは倒産したと」

高木「!?」

小鳥「でも……それがきっかけで、二人は結婚を決めたんです」

小鳥「お父さんはまじめで……アイドルのままのお母さんには手を出そうとしなかったから」


小鳥「いえ、きっと今は違うと思うんです……社長が言ってた事務所の話が、今と違ってますから」

高木「……違うというのは?」

小鳥「……もともとは不況のせいで全然仕事がなくて……このライブも、現状打破のためのものだったんです」

高木「……それが失敗して倒産……というのが、本来の歴史かね」

小鳥「はい……それでお母さんはアイドルを辞めて、お父さんと……」

高木「…………そうか」

 
小鳥「…………社長。私……いえ」

小鳥「……ライブ、成功させましょう」

高木「…………自分が何を言っているのか分かっているのか?」

小鳥「だって、わざと失敗させることなんて出来るわけないじゃないですか!」


小鳥「ライブが成功して、みんながアイドルとして大成できるのなら……私は……」


高木「バカをいうな」

 
高木「……君が本来聞いた歴史では、私の事務所はすでに仕事がさっぱりなくて鳴かず飛ばずだというではないか」

小鳥「……?」


高木「だが今の765プロを見てみたまえ! アイドルたちは仕事で引っ張りだこ、全体の業績も上々!」

高木「なぜだか分かるかい?」

小鳥「……いえ……それは私も不思議に思ってました……」


高木「私に言わせればね……それは」



高木「君のおかげだ」

 
小鳥「えっ……私の……?」

高木「そうとも! 君が1982年に来なければ君がこの時代にアイドルをやることもなかった!」

高木「765プロが有名になる最初のきっかけもなかった!」

高木「そうなれば今の事務所はなかったはずだ!」

小鳥「…………!」

高木「だったら……今回のライブはもしかしたら成功するかもしれないし、君のお父さんとお母さんも……」

高木「アイドルとして成功した傍ら、結ばれることだってあるはずだ!」

小鳥「…………」



高木「分かったろう? 君はもうすでに……未来を変えているのだよ」

小鳥「…………」

高木「確かにこのまま何もしなければ、君はこのまま消えてしまうのかもしれない……だがそれは私がさせない!」

高木「われわれの手によってその未来を変えてしまうことだって可能だということだ!」

小鳥「…………」


高木「それにだ! 君のお母さんは結婚などせず、アイドルを続けていればよかったと一言でも言っていたか?」

高木「君を産んだのを後悔したことが一度でもあったのかね? 思い出したまえ!」

高木「君がいなくなれば、未来で帰りを待っている君のご両親はどうなる? 私はどうなる!?」

小鳥「…………」


高木「私は君と過ごしたこの10年をなかったことにするつもりなどない!!」

高木「私は君を必ず無事に未来へ送り返すと決めたのだ! 10年前に……君と約束した……!」



小鳥「…………社長……社長……」

 
高木「…………一応聞いておこうか。なぜそのライブは失敗したのかね?」

小鳥「たしか……そう、雷! その日は雷がひどくて……停電って言ってたかしら……」

高木「雷……?」

小鳥「はい。あ、確か……この写真に……」

高木「……そういえば、撮影時間は昼間だというのに時計の針が10時4分で止まっているね」

小鳥「例の公民館の時計台、まだ動いてますよね?」

高木「…………まさかその雷で……」

小鳥「……そのはずです」

 
高木「……そうか……雷か!」

小鳥「……?」

高木「雷だよ! ……あぁすっかり忘れていた、ライブの話の後に君に伝えたかったもうひとつのことがあったんだ!」

小鳥「…………」


高木「先に謝っておくよ……10年間も待たせてしまって、本当に申し訳なかった」

小鳥「!!」

 
──────

ガラガラガラ…

小鳥「社長の家のガレージでずっと作業を続けていたんですか……?」

高木「人目につくような場所では出来ないからね。ほら」


小鳥「デロリアン……私が乗ってきたのと、そっくり……!」

高木「次元転移装置の調子もバッチリだよ」

小鳥「すごい……すごいです! 社長!」

高木「音無君、もう一度君の持っている持ち運び電話にある映像を見せてもらえないか」

小鳥「は、はい」

 
小鳥「えっと…これですね」ポチ


   『車の動力は電気なんだがね、0.961ジゴワットの強力な電力を得るためには核反応が必要というわけだ』


高木「これだよ……0.961ジゴワットの強力な電力!」

小鳥「…………」

高木「残念ながらこの1992年では、核燃料を手軽に手に入れられる方法は見つからん。」

高木「2012年にもスーパーで売ってないとなると……未来の私がどうやって手に入れたのか皆目見当もつかないがね」

小鳥「……」

高木「0.961ジゴワットもの巨大な電力を持ったものなど、稲妻くらいしかないというわけだ」

小鳥「……稲妻……雷!」

 
高木「そうとも! 君の話によればライブの日の夜、雷がひどいということだ」

高木「おそらくその日の夜午後10時4分にだね、公民館の時計台に巨大な雷が落ちる! そのせいで写真の時計は止まっている」

高木「何とかその雷を……その電気を! ぴったり捕らえて……タイムマシンの次元転移装置に送り込むことが出来れば……」

小鳥「……0.961ジゴワットの電力が手に入る……! でも、日付まで分かるんですか……?」

高木「なに、ライブの日付は何週間も前から決めていた。きっかり一月後だ、間違いない」

小鳥「…………」

高木「完璧だ! 分かったかね音無君……今度のオールスターライブの夜……!」


高木「絶対に、君を未来へ送り返してみせる!」

 

高木『……と、言いたいところだが……問題はまだいくつか残っている』

小鳥『一つはもちろん……』


高木『そう、ご両親のことだ』



小鳥「…………」

P「……うん、おいしいな……さすが春香」

春香「本当ですか?よかったぁ……まだたくさんありますから、遠慮なく食べてくださいね」

やよい「春香さん! 私も一つ食べていいですか?」

春香「どうぞどうぞ。はい、あーん」

やよい「あーん♪」


小鳥「…………はぁ、お父さんとお母さん……」

P「はい?」

春香「えっ?」

 
小鳥「あ、いえ…何でもないんです、ごめんなさい」

P「いきなり何を言い出すんですか」

やよい「どうかしたんですか?」

小鳥「いえいえ、あれですよ。そうやってやよいちゃんを挟んで仲良くお話してるところを見るとですね……」

小鳥「なんだか二人が夫婦みたいだったんで、つい出てきちゃいました」

春香「ふ、夫婦……!」

P「意味が分かりませんよ」

やよい「あ、でも、プロデューサーがお父さんで春香さんがお母さんになってくれたら……」

やよい「それって、すっごく楽しそうかもー!えへへ」

小鳥「でしょう?やよいちゃん」

P「そうか?はははっ、春香は俺にはもったいないよ」

やよい「そんなことないと思いますよ?」

春香「………」

 
P「あ、営業の時間なんでそろそろ…春香、出掛けるぞ」

春香「は、はい!じゃあ行ってきます」

小鳥「行ってらっしゃーい」

やよい「いってらっしゃい!」

P「行ってきます」

バタン


小鳥「……全く……」

小鳥「お父さんは鈍感だし……お母さんは押しが弱すぎると見たわ」


小鳥「……まだまだ苦労しそうね」

やよい「?」

 
──────

春香「ただいまー」

小鳥「お帰り、春香ちゃん」

春香「もー、疲れましたよ……ふぅ」

小鳥「お茶入れてあげるわね」

春香「あ、ありがとうございます」


春香「いただきまーす」

ズズズ…

小鳥「ところでなんだけど。春香ちゃん、最近プロデューサーさんとどう?」

春香「えっ? どうってどういう……」

小鳥「とぼけないでいいのに」ニヤニヤ

春香「な、何ですか…?」

小鳥「………好きなんでしょ?」

春香「ギクッ」

 
小鳥「んー?」ニヤニヤ

春香「そ、そんなこと……!」

小鳥「分かりやすいわねー」ニヤニヤ

春香「……な、なんで…そう思ったんですかぁ……」

小鳥「んー、何となく見ててわかるわよ。プロデューサーさんを見てるときの春香ちゃん、目が違うというか」

小鳥「まさに、恋してます!って表情になるのよねー」

春香「うぅ、恥ずかしい……」

小鳥「そんなことないわ。プロデューサーさんは優しいし男前だし…」

小鳥「いつも一緒にいる年頃の春香ちゃんが意識しないわけないもの」

春香「……そうですか?」

小鳥「ええ。それで、アタックしてるの?」

春香「あ、アタックといいますか…特別にお菓子を作ってあげたりは何度か」

小鳥「いいと思うけど、まだまだ足りてないみたいね」

春香「そ、そうなんですよ!……プロデューサーさん、いつも美味しそうに食べてはくれるんですけど」

春香「普通に、プロデュースのお礼か何かとしてしか受け取ってくれなくて……」

 
小鳥「よくも悪くも、真面目な人だもんね。……ねえ春香ちゃん」


小鳥「私が協力してあげましょうか」


春香「えっ、どうして……?」

小鳥「実はね……プロデューサーさん、春香ちゃんに気があるみたいなの」

春香「えっ……ええぇぇええっ!?」

小鳥「知らなかったの?」

春香「いやっでも、そん、なの、あるわけないですよ、ぅ、プロデューサーさんが、わ、わた、私のこと」

小鳥「だからね、思い切って告白しちゃいなさい」

春香「ちょっ、えっ、こっ!!??」

 
小鳥「……そんなに照れなくてもいいのに。可愛いんだから」

春香「…でも、いいんでしょうか……やっぱり、アイドルとプロデューサーだし……」

小鳥「そんなことはないわ! 必要なのはたった一つ、その心だけよ!」

小鳥「……というか、いい加減二人にはそろそろ動いてもらわないと私が安心できないし」

春香「……? どういう意味です?」

小鳥「意味なんてないわ! そうね……いい言葉を教えてあげる、春香ちゃん」



小鳥「何事もなせばなる、ってね」

春香「……なせばなる……」

休憩

 
──────

ガチャ

P「ただいまー」

小鳥「お帰りなさい。春香ちゃんは?」

P「直帰させました。ふいー、疲れた……」

小鳥「お疲れ様です。お茶淹れましょうか?」

P「あ、どうも……」



P「いやー、音無さんのお茶はいいですね。俺の好みの味ドンピシャです」ズズズ

小鳥「そりゃ、何年も淹れてきましたから」

P「ははは、そんな何年もってほどでもないでしょ」

小鳥「…そうでしたね。ふふっ」

 
小鳥「春香ちゃんは?」

P「いい感じですよ。ライブもこの調子でこなせそうです」

小鳥「それは良かった。春香ちゃん最近がんばってますもんね」

P「ええ、そりゃもう」

小鳥「春香ちゃんみたいな女の子は、きっと素敵なお嫁さんになると思うんですよねー。でしょう? プロデューサーさん」

P「えっ? あ、まあ……そうでしょうね。気が利きますし……」

 
小鳥「プロデューサーさんはずっと一緒にいますもんね。どうです? 女の子としての春香ちゃん」

P「えぇー……はぁ……いや、悪くない……とは思いますけど……」

小鳥「なら、いつか……ってのは考えてたり?」

P「いやいや、そんなこと出来ませんよ! アイツはアイドルだし……」

小鳥「そういうの、関係ないと思うんですけどねー……」

P「確かに素敵な子だとは思いますけど……やっぱりダメですよ」

小鳥「…………でも思ったより反応悪くない……」

P「?」

小鳥「いえ、なんでも!」

P「ただ……俺は、その……えっと……」

小鳥「はい?」


P「俺はですね……春香以上に素敵な女性を知ってるので」

小鳥「ええっ? それは誰ですか!?」

P「えっ、知りたいんですか」

小鳥「も、もちろん! 気になります……!」

 
P「……縁の下の力持ちで、いつでも笑顔が素敵で……」

小鳥「ふむふむ」

P「おいしいお茶を入れてくれる人……です」

小鳥「ほうほう。えっ?」

P「…………」


小鳥「えっ?」

P「…………音無さん!」

小鳥「えっ?」

 
─────

高木「厄介だね。どうやらお父さんは君のお母さんでなく君にお熱というわけか」

小鳥「ライブまであと一週間でお父さんの気持ちをお母さんに向けてあげないと……!」

高木「しかし君の話によればお母さんにも十分好意を抱いているように聞こえるが……」

小鳥「どうすれば……!」

高木「協力したいがね、流石に私まで口を出してしまっては余計に怪しまれるし第一無粋というものだろう」

小鳥「……分かりました。両親の件はこのまま自分でがんばってみます」

高木「心配はいらんと思うがね。夫婦の絆は多少のことでは切れん……それが将来の絆であってもな」

小鳥「いいこと言いますけど……」

高木「私はもう一つの問題にも気を使わないといけないからね、悪いがそちらは任せるよ」

小鳥「もう一つ?」


高木「……君の年齢だ」

小鳥「うっ」

 
高木「君がこっちへきてからすでに10年経っている。今、君が元の時代に帰ったとしても……」

小鳥「いきなり10歳も歳をとった状態で、家に帰れるわけありませんね…」

高木「これも、対策を練らないといけないね」

小鳥「はぁ……ここへ来て色々と散々だわ……」

高木「そう悲観するな。心配せずともきっと上手くいく……大事なのはやめない事、諦めない事だ」

小鳥「……だといいんですけど」

高木「……今のなかなかいいな……」

小鳥「何がです?」

高木「いやなんでもない、何も言わんでくれ!」

小鳥「?」

 
──────



小鳥「……復習よ。ライブが終わった後、春香ちゃんは?」

春香「……会場の裏の駐車場」

小鳥「そう。それでプロデューサーさんは?」

春香「お、同じ場所で待ち合わせ……」

小鳥「それで?」

春香「……ぷ、プロデューサーさんがきたら……その……こ、告白……」

小鳥「はい、台詞の練習!」


春香「……あっ、あにょっ! ずっずっと私……プロデューサーさんのこひょ……」

小鳥「……うーん、緊張しすぎかしら……練習だっていうのに」

 
春香「うぅ……小鳥さん、無理ですよぉ……絶対断られるに決まってます……」

小鳥「そんなことないわ! ああみえてプロデューサーさんも押しに弱いから。しっかり思いを伝えれば大丈夫よ」

春香「でも……」

小鳥「大丈夫。きっと上手くいく……プロデューサーさんも春香ちゃんのこと好きなんだもの」

春香「……だったら、プロデューサーさんから好きって言ってくれたほうが嬉しいなぁ……」

小鳥「だめねぇ春香ちゃん、もうすぐ21世紀よ? 男の告白を待つ時代なんてもう古いのよ」

春香「そ、そうなんですか……さすが小鳥さん、恋愛経験多そうですもんね……」

小鳥「……ええ、まあ……参考文献は数知れずってとこかしら……」

くぅ~疲れましたw これにて倒産です!
実は、プロデュースしてた俺に高木がティン! ときたのが始まりでした
本当は961に行きたかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのアイドルとの恋愛関係で挑んでみた所存ですw
以下、アイドル達のみんなへのメッセジをどぞ

春香「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

真「いやーありがと!
ボクのかわいさは二十分に伝わったかな? まっこまっこりーん!」

やよい「もやしをくれたのは嬉しいけど別にもやし好きで食べてるんじゃないかなー、って・・・」

小鳥「(BL本)見てくれありがとう!
正直、(BL本の)作中で言った私の気持ち(北斗×P)は本当よ!」

あずさ「・・・あらあら~」どたぷ~ん

では、

春香、真、やよい、小鳥、あずさ、P、黒井「皆さんありがとうございました!」



春香、真、やよい、小鳥、あずさ、P「って、なんで黒井社長が!?

改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に倒産

 
小鳥「まあいいわ。それで、無事告白が成功して、プロデューサーさんと春香ちゃんは幸せになるって筋書き」

春香「そんなに上手く行きますかね……? 言うだけなら簡単そうですけど……」

小鳥「うーん……春香ちゃんに足りないのは思い切りの良さなのよね」

春香「思い切り……」

小鳥「そう、思い切り! なんなら言葉だけじゃなくてもいいのよ」

春香「へっ?」

小鳥「……分からないかしら?」

春香「う、ぇ、ぁ……そ、そんなの無理に決まってます!!」

小鳥「もう、だからそれじゃだめなのよおか……おかしいでしょ? 好きなんだったらそのくらいしないと」

春香「…………」


小鳥「がんばって。応援してるから」

春香「……考えただけで怖くて仕方ないですよ……」

小鳥「怖がることなんてないわ。もっと自信を持って……言ったでしょ?なせばなる」


春香「なせばなる……」

 
──ライブ会場前──


   [765プロダクション オールスターライブ]


  「誰が一番好き?」「俺はやよいちゃんかなー」  「あえての亜美単体だね!真美もいいけど」
       「美希一択だね」「綺麗だもんねー」        「やるじゃん」
   「あずささんしかいないね。もうたまらん」   「いや貴音ちゃんだね。ケツがいいよケツが」
                「いおりんじゃないとかバカすぎ」  「いやお前がバカ。雪歩しかいない」

    ザワザワ…     ザワザワ
        ガヤガヤ        ガヤガヤ

高木「…………」カンカン

高木「…………」カンカン


高木「……うん、こんなものかな」


   「高木社長?そんなところで何を?」


高木「……おぉ……その声は……」

 
舞「ライブ開催、おめでとうございます。今日は娘と一緒に遊びに来ましたよ」

愛「こんにちは!! 始めまして!!」

高木「こんにちは。 じつは初めてではないのだがね」

愛「えっ、そうなんですか!!??」

舞「愛がもっと小さいころにね。 ……ところでそれは?」

高木「おお、これかね。いや何、今日はこの後天気が悪くなりそうなのでな」

舞「天気……? 雲ひとつないのに?」

高木「……まあね」

舞「まあいいわ。今日は楽しませてもらうから、それじゃ」

高木「ああ、楽しみにしておいておくれ」

舞「ではまた後でー。終わってから楽屋に遊びに行ってもいいかしら?」

高木「構わないよ」

スタスタ…

 
高木「…………」カンカン

高木「…………」カンカン


小鳥「社長。そっちはどうですか?」

高木「おおむね順調だがね……本当に嵐が来るのか?」

小鳥「天気予報が絶対当たる保証はないですから。20年後でも同じです」

高木「…………君が言ってしまうとさびしくなるよ」

小鳥「そうですか?」


高木「君に出会えたことで私にも生きる希望が出来た。タイムマシンなどという不可思議なものを発明する変な才能も見つかったし……」

高木「少なくとも、765プロをずっと未来まで存続させるという目標が今の私にはある」

高木「少なくとも2012年までは生きているらしいし、自由にタイムトラベルが出来るうえに未来の君とも知り合えているのだからな」

小鳥「…………」

>>632訂正
高木「765プロをずっと未来まで存続させるという目標が今の私にはある」

 
高木「長い時間だった……この10年のことを再び君と話し合えるのも20年後か。待ち遠しい……」

小鳥「…………」


高木「さびしくなるよ、音無君」


小鳥「……私だって同じですよ」


高木「…………」カンカン

小鳥「…………社長。どうしても言っておきたいことが……20年後のことなんですけど……」


高木「よしてくれ!」

小鳥「!」

 
高木「いいか、君から未来のことを聞いたのはあくまで君を助けるための必要最低限だ」

小鳥「でも…………」

高木「未来のことについて必要以上に知らされたら、逆に危険なことになるとあれほど言ったろう……」

高木「親切からしたことでも、かえって仇になりかねないのだよ」

小鳥「…………」


高木「どんなに重大な事実であったとしても。……そのときがくれば自然と分かる」

小鳥「…………」

 








小鳥「…………高木順二朗社長へ。私が未来に戻った夜……」カキカキ



──────
高木順二朗社長へ

私が未来に戻った夜、あなたはトレーラーに乗ったまま追われて
大事故を起こしてしまいます

そんな馬鹿なことにならないように、何とか身を守る方法を考えてください

あるいはプルトニウムを直接盗むなんてやめてください

               あなたの友 小鳥より

──────


小鳥「……あなたの友、小鳥より……」カキカキ

ドクとマーティの関係は凄く素敵

 
小鳥「…………2012年まで開けないでください、と……」カキカキ






高木「…………」カンカン

律子「高木社長、そんなところで何をやってるんですか?」

高木「ん? 律子君か、いや大したことではないのだよ、ちょっとした準備をだな……」



小鳥「…………」


         「もうすぐステージが始まるって言うのに、小鳥さんと一緒にこんなところで油を売ってちゃダメでしょう!」

       「別に油を売っていたのではないのだよ、これは必要なことであってな……」


小鳥「…………」

スッ

小鳥「……読んでくださいね、社長」

風呂

いやいやいや、日本なのに西部劇はおかしい

しっくり来るなら、大正時代くらいじゃなかろうか。
ハイカラな芸能文化と合間って。

 
──────


 『大変長らくお待たせいたしました。ただいまより、765プロダクション・オールスターライブを開催いたします……』


  ワアアアァァァァァアアアァァ
       キャアアアァァアァアァアァア


春香「みなさーん!こーんばーんはーぁ!」

美希「ミキ、みんなに会えてとっても嬉しいの!」

亜美「今日は最後までCHO→盛り上がっていこうね→ん」

真美「真美たち頑張っちゃYO!」

やよい「うっうー!今日は楽しみましょーっ!」

千早「私達の最高の歌を、聴いていってください!」

伊織「竜宮小町もいるわよ!にひひっ」

あずさ「まぁ~、会場がお客さんでいっぱいだわ~」

 
響「最高の夜にしてあげるぞ!なあ真!」

真「もちろんさ!」

雪歩「きょ、今日は来て頂いてありがとうございますぅ」

貴音「まこと善き夜ですね。嵐の前の静けさといいましょうか」

春香「最初はみんなで歌っちゃいますよ!曲はもちろん」


  「「「「「”THE IDOLM@STER”!!!」」」」」


♪~


P「始まりましたね!」

律子「ええ。いいスタートですね」

小鳥「最後までトラブルが起きませんように………」

 
高木「ふぅ……間に合ったね……」

小鳥「社長! 終わったんですか……?」

高木「ああ、電線の準備は完璧だ。今は彼女らを見守ろう」




亜美「お次は竜宮の亜美と」

真美「真美による、一夜限りの双子デュオだよー!聴いてねーん」

亜真美「「"スタ→トスタ→"!!」」


♪~


律子「さすが、息が合ってますね」

P「あいつらはセットにすると外れるリミッターでもあるのかね」

小鳥「(一度会ったことあるけど、息ぴったりだったものね……)」

 


美希「ミキがキラキラするところ、みんなちゃんと見ててねー!」

美希「"マリオネットの心"なの!」


♪~


P「あいついつもあのくらい本気出せばいいのに」

律子「……ほんとですね」

小鳥「美希ちゃんも若いころからすごいわねー…」

律子「…?」

小鳥「あ、いえ、何でもありません」

高木「……風が強くなってきたかも知れないね」

小鳥「…………」



   「……765プロが生意気にもこんな場所でライブだとはな。笑わせる」

 
真「いくよ、響!」

響「いつでも来るさー!」

 「「"迷走Mind"!!」」


♪~


P「さすが、あいつらは本番でもブレない」

律子「あの二人は見てて安心ですもんね」

小鳥「ダンスするの、とっても上手いですよね……」


小鳥「…………」チラッ


小鳥「……写真が……」

小鳥「……私一人だけになっちゃってるわ…………」


P「音無さん? どうかしました?」

小鳥「!!!!」バッ

 

P「こんな暗いところで何か見てたんですか?」

小鳥「い、いえ!! なんでもないんです……なんでも、あはは……」


律子「二人とも、何してるんです? ステージの途中ですよ!」


P「……何か隠しました?」

小鳥「そ、そんなことないですよ!? ほら、真ちゃんと響ちゃんがサビに入りましたからちゃんと聞いてあげ……」ガッ

ヨロッ

小鳥「ないっ……わっとと……!」

P「あ、危ないっ!?」ガシッ

 







P「…………」

小鳥「……あはは……ぷ、プロデューサーさん……どうもごめんなさい……」

P「…………」

小鳥「……あの……顔が近い……そんなに抱きしめられると……その……あはは……」

P「……あぁ……ごめんなさい……」パッ

小鳥「……ふぅ。ともかくありがとうございます」

P「…………?」

小鳥「……? プロデューサーさん?」


P「……変だな」

小鳥「?」

 
律子「……あの二人何してるの……? なにいちゃついてるの……?」


P「……音無さんって……その、とても素敵だと思うんですけど……」

小鳥「は、はあ……」

P「…………全然緊張しない……?」

小鳥「?」

P「いえ、違うんです! 決して音無さんに魅力がないとかじゃなくてですね!」


P「……抱きしめる体勢になっても……まるで家族にしてるみたいで……」

小鳥「!」

 
P「おかしいな……こんなはずじゃ……? あれ……?」

小鳥「…………ま、間違ってないんじゃないでしょうか……たぶん……」

P「…………?」


律子「あとで厳重注意ね……」






   「お前達、分かっているな」

   「はっ。配電盤を…ですね」


   「こんな下らんステージ、めちゃくちゃにしてしまえ」

 
伊織「お待たせー♪」

あずさ「盛り上がってますかー?」

亜美「亜美は2回目だよー」

「「「"SMOKY THRILL"聴いてください!!」」」


♪~


P「律子、鼻高々って感じだな」

律子「えっ!?いえ、そういうつもりでは…」

小鳥「良かったですね、律子さん」

律子「……ええ、まあ……」

小鳥「ふふふっ」

高木「……少し外の様子が心配だ。見てくる」

小鳥「あ、はい。行ってらっしゃい……」

 

やよい「うっうー!元気いっぱいで、張り切っていきましょーっ!」

やよい「"キラメキラリ"です!」

♪~


律子「やよいも、頼もしくなりましたね」

P「……ですね。嬉しいような寂しいような」

小鳥「(社長がまだ帰ってこない…それに…舞台裏が騒がしい…)」

小鳥「あの、私ちょっと楽屋見てきます」

P「?」

律子「え? はい……」

 
小鳥「……社長……どこですかー……?」

小鳥「……!!」



  「黒井!こんなところにまでやってきて、どういうつもりだ!」

  「やかましい!どうせこんなライブ、失敗に終わるのがオチだ!」



小鳥「…………高木社長に、黒井社長……」

黒井「! ……貴様、音無小鳥」

高木「音無君……!」

 
黒井「……フン! まだこんなみみっちい事務所に残っていたとはな。引退した後はとっくに消えたと思っていたが」

小鳥「765プロはみみっちい事務所じゃありません」

高木「音無君……」

黒井「フハハハハ!! 下らん、実に下らん! 上辺だけの友情や絆に何の価値がある!?」

黒井「貴様らのやり方はしょせんごっこ遊び。頂点など遠く及ばん!」

小鳥「……いくらあなたでも、言っていいことと悪いことが……」

黒井「高木も、貴様も、竜宮小町にいるアイドル崩れのプロデューサーも!」



黒井「無能なアイドルたちも!」

黒井「あの腰抜けプロデューサーも!」

小鳥「!」

黒井「全部まとめて、765プロなど取るにたらない三流事務所なんだよォ!!」

小鳥「っ……!!」グッ…


パアァァァアァァアァァンッ!!!!!!

黒井から涌き出る小物感がすごい

 
黒井「……っ!」

高木「…………君」


小鳥「……!?」



春香「……やめてください」


春香「……私の仲間の悪口を……!」


春香「プロデューサーさんの悪口を言うのはやめてくださいっ!!!!」

春香「あの人は腰抜けなんかじゃありませんっ!!!!!」

小鳥「春香ちゃん!?」


春香「謝って下さい!! 黒井社長っ!!!」


春香「プロデューサーさんに謝って下さいっ!!!!」

 
黒井「……こんの小娘風情がぁ……!!」ドンッ

春香「……きゃっ……!!」ドサッ


高木「黒井! 貴様……!!」



   「おい」

黒井「あぁっ?」

バキィッ!!

黒井「ひゅべっ……!?」


ドサッ…

 


春香「……はっ……はぁっ……ヒック……クシュッ……」

P「次やったら殺しますからね、黒井社長…………って、あれ」


黒井「」


P「……うわ、やっちゃった……」


小鳥「…………プロデューサーさん……」

高木「君、大丈夫かね……!」

P「あーいたい……手痛い……いえ、問題ありません……ふーっ、ふーっ……」ヒリヒリ


P「春香、大丈夫か……?」

 
春香「……ヒグッ…………ぷろりゅーしゃあしゃぁぁん……ぅぁぁぁああぁん……!!」

P「危ないじゃないか……なんでこんなことしたんだ……?」

春香「だっでぇっ……ぐやしくてぇっ……ングッ……! ぷろっ……ぷおゆーしゃっ……ッグ……」

P「そっかそっか……みんなと、俺のために……?」

春香「……っ……!! っ……!」コクコク

P「ありがとう春香。嬉しいよ……ありがとう……」ギュゥ

春香「……ぅっ……ぐっ……! ぅぁぁぁぁぁあぁ……」ギュゥ

 
高木「……君、天海君は頼んだ。次のステージまでになんとか泣き止んでもらわないとね……」

P「はい、任せてください」

春香「…………ヒック……ヒグッ……」

高木「音無君、私たちはステージ袖に戻ろう。ね」

小鳥「……はい」



小鳥「……春香ちゃん……プロデューサーさんのために……すごい……かっこよかった……」

小鳥「……プロデューサーさんも、春香ちゃんを守るために……」

 
──────

貴音「響、準備はよろしいですか」

響「もちろんさー! 美希は?」

美希「バッチリなの!」

「「「"オーバーマスター"!!」」」


♪~


律子「小鳥さん…それに社長!どこ行ってたんですか!?」

高木「いやすまんすまん、少し野暮用を思い出してね…」

ゴォ……ゴォー…
ガタ…


小鳥「会場、ちょっとだけ揺れてますね……大丈夫でしょうか」

高木「………」

 
千早「私が今出せる、最高の歌声を……聴いてください」

千早「"眠り姫"」

♪~

P「……ただいま」

律子「プロデューサー! 遅かったじゃないですか……」

小鳥「あの、春香ちゃんは……?」

P「もう大丈夫です。きっと立派に歌ってくれますよ」

小鳥「……そうですか。よかった……」


ゴォ……ゴォー……


高木「………頼む、耐えてくれ……」

小鳥「………」

 
春香「みなさん!楽しんでますかー!」

春香「さて、次の一曲で、そこに跪いてくださいね! ……なんちゃって! えへへ」

春香「"乙女よ大志を抱け"!!」


♪~


P「春香も、本番までに調子を取り戻してくれてよかった」

律子「あの……さっきから何の話を? 春香に何か……?」

小鳥「本当によかったですね……」

高木「そうだね」

律子「?」


小鳥「………頑張れ、お母さん」

 
雪歩「わ、私の歌を聴いてくださって、ありがとうございますぅ」

雪歩「い、一生懸命歌います…!」

雪歩「"Kosmos, Cosmos"」


♪~


P「雪歩は頼りないように見えて、人一倍芯が強いんですよね」

律子「ファンの間でも、儚さと強さを兼ね備えてるって高評価です」

高木「ウチにきたときはあんなにオドオドしていたのにねぇ……」




小鳥「……お母さんの想い、プロデューサーさんに伝わったかしら……?」チラッ


小鳥「…………そう、まだなのね……」

小鳥「次はいよいよ私か…………」

 
──────

P「ライブも終盤だ」

律子「みんな、あと一息よ!頑張って」

「「「「はいっ!!」」」」



   「………これか……へへ、ざまあみやがれ!」



バチン
ヒュウウウゥゥゥン………


P「!?何だ…照明が消えた!!」

春香「うわぁっ!?」

真「ちょっと春香、いきなりこけるなよ! 大丈夫……?」

 
やよい「うー、怖いです……」

律子「停電!?」

伊織「ちょっと!直るのこれ!?」

小鳥「ま、マイクもききません!!」


高木「き、君!懐中電灯をもって、配電盤の様子を見に行こう!」ダッ

P「はい、社長! 律子、音無さん、あとお願いします!」ダッ

律子「ちょっと!プロデューサー!?」


雪歩「うぅ…ライブ中止になっちゃうのかな……」

響「えぇっ!そ、そんなの嫌だぞ!」

貴音「皆、落ち着くのです……こういうときは、らぁめんの麺を数えるのです……!」

真美「お姫ちん、あわてすぎ」

 
小鳥「大変…お客さんもパニックになってるわ!」


  「おいおい、これどうなってんの?」ガヤガヤ

  「停電かよ…外雷鳴ってんの?」ガヤガヤ

  「そんな感じしなかったけどなぁ」ガヤガヤ

  「ライブどうなるのー?続きはー!?」ガヤガヤ





小鳥「……このままじゃいけないわ………」

小鳥「……アイドルのみんなも、不安になってる……」

小鳥「……………これって……」



小鳥「……………よし!」ダッ

律子「こ、小鳥さん!? 危ないですよ、真っ暗なのに!」

 
  「早く始めろよー…」ブーブー

  「まだ直んないのー?」ブーブー

  「もう帰ろっかな」ブーブー


律子「大変…お客さんが不満がってる………」

律子「…………? 待って、何これ………」

亜美「律っちゃんどうしたの?」

律子「しっ!」

 
  「……おい」

  「なんか聴こえるぞ」

  「ちょっとお前ら静かにしろ!」

  「……なんだ?こんな曲聴いたことない……新曲か?」

  「誰が歌ってるんだ?」



   空になりたい 自由な空へ

      翼なくて翔べるから 素敵ね

         空になりたい 好きな空へ

               雲で夢 描けるから




律子「この声……小鳥さん!?」

  「「「「!!??」」」」

 
──────

P「社長、怪しいやつがいました!」ゲシッ

   「うわっ!」

高木「君かね?配電盤のヒューズを切ったのは」

   「………けっ」

P「配電盤の場所を言え! 今すぐ!!」ガッ

   「……わかった、分かった。言うよ………」

高木「急ぐぞ!」

P「はい!」

 


始まりはどこになるの?

    お終いはどこになるの?

       上を見て あなたに聞いてみたら

  始まりとお終いなんて

    繋がって巡るモノ

           大事なのはやめない事と

      諦めない事



律子「こんな曲……小鳥さん、こんなの持ってたの……!? 全然知らなかった……」

律子「アカペラで…………すごい……!!」


律子「…………!!」ポパピプペ

 
春は花をいっぱい咲かせよう

  夏は光いっぱい輝こう

    奇跡じゃなくて 運じゃなくて

      自分をもっと信じるの

   秋は夜を目一杯乗り越え

 冬は雪を目一杯抱きしめ

   笑っていいよ 泣いていいよ

     だって巡ってまた春は来るから

       繋ぐレインボー


  「誰か知らんけど……いいぞー!」

  「これ、春香ちゃんかな!?」

  「いや、でもちょっと声がちがうぞ!」

  「最高!! ヒュ───ッ!!!」

   「この曲……間違いないわ、あのときの……!!」

prrrrrrr
 
律子「もしもし、涼!? 私よ私、いとこの秋月律子よ! 忘れるんじゃないわよ!」

律子「あなたの知り合いに作曲家いたでしょ!? 武田って人! 今私すごい曲を見つけたの!!」

律子「とりあえず今から聞かせるから録音して! 急いで!!!」


    空になりたい 晴れの空へ

        涙乾かしてあげる 無敵ね

      空になりたい 雨の空へ

    笑顔だけじゃ寂しいかな

           意味がないとダメですか?

             答えないとダメですか?

               前を見て あなたに聞いてみたら

                 意味や答えと言うのは

               後からついてくるモノ

              必要なのはたったひとつ

             その心だけさ

      花はどこだって種を舞わすよ

         光はどこだって闇照らすよ

            私のままに 意のままに

       自分にちゃんと素直に

    夜はいつだって朝に変わって

  雪はいつだって息吹残して

 一日ずつ 一歩ずつ

       きっかけは何だって大丈夫

         続くレインボー


春香「……小鳥さん、綺麗な声……」

千早「……素晴らしいわね」

やよい「はわー……」

真「いい歌だね」

雪歩「う、うん……」

亜美「ピヨちゃんやるねぇー……」

お父さん、ピヨちゃんをボクに下さい。

 
   ワアアァァァァァァアアアァァアア
                 キャアァァアァァァアアァァア
   ワアァァアァァアアァァアァ!!!!!!



律子「大喝采、だわ…………」


バチン
ブゥゥゥゥン……


春香「照明が戻った!?」

響「はぁー、よかったぞぉ……」

 
ダダダッ

社長「遅くなってすまない……!」

P「大丈夫だったか!?」

律子「はい、なんとか………」

P「そうか、よかった……ふぅ……」


律子「小鳥さん……内緒にするんですか?」

小鳥「いいんです。いずれ分かることですから……ゴホッ、ゴホッ……」


小鳥「…………のどの感覚が……」



P「よし!気を取り直して、最後の一発決めてやれ!」

  「「「「はい!!!!」」」」

 
  「みんなー!さっきはゴメンねなのー!」

  「お詫びに、とびっきりの一曲をお送りしますからねー」

  「最後の曲です!」


  「「「「"CHANGE"!!!」」」」


♪~


   ワー…ワー…
      ワー…ワー…


小鳥「(いよいよ時間がないわ………)」

小鳥「指の感覚もなくなってきてる……」チラッ


小鳥「写真も……透けてきたわね、私」

 
──────

小鳥「ライブは無事成功………か」

小鳥「765プロでの最後の仕事……立派にやり遂げられたかしら……」

小鳥「……ううん! 今はそのことはいいの!」

小鳥「このあたりにプロデューサーさんを呼び出して、春香ちゃんを待ち伏せさせてるから……」

小鳥「いよいよ勝負ね……うぅ、オーディションよりも緊張する……」

小鳥「いよいよ指先が消えてなくなりそうだし………怖い、怖すぎる……!」

小鳥「…あ、春香ちゃんきた……!」


  春香「…………」キョロキョロ


小鳥「……頑張って、春香ちゃん…………」


  P「春香」

  春香「あっ……プロデューサーさん」


小鳥「来たわね……!」

 
  P「春香、ライブが終わったら伝えたいことって………?」

  春香「……ぷ、プロデューサーさん………」


小鳥「……頑張って…」


  春香「その…………」

  春香「私…………!」


小鳥「春香ちゃん……!」


  P「ああ……聞くよ」

  春香「私、ずっと…………」

  春香「プロデューサーさんのことが……」

 
小鳥「頑張って………!!」


  春香「プロデューサーさんのことがっ!」



小鳥「…お母さんっ!!」



  春香「………す、好きでしたっ!!」



小鳥「………どう来るっ…!?」



  P「…………ありがとう」



小鳥「そうじゃなくてっ!!……お願い、早く……」

小鳥「もう、手がほとんど……!!」グスッ

小鳥とお父さんに挨拶しにいったら小鳥に断られていた
何を言ってるのかわからねぇと思うが俺もわからねぇ
アタマがフットーしそうだよぉ…

 
  P「俺も……春香のことは好きだよ」

  春香「ほっ…ホントですか!?」

  P「ああ…だが、今はアイドルである以上…まだ付き合うというわけには……」


小鳥「何で……戻らない……!」

小鳥「手が戻らないよぅ………!!」グスッ

小鳥「お願い、お母さん………助けて……」スゥー……

小鳥「!!…い、嫌ぁ…!」

 
  P「だから…いつか、お前がアイドルを辞めて」



小鳥「ダメっ……そんなんじゃダメなのっ……!! ……あっ……」ガクッ

小鳥「だ……め……体に力が…………」スゥー……


  P「そのときにまだ、俺のことを好きでいてくれたら」


小鳥「…………っ……」スゥー……



  春香「嫌ですっ!!!」

 
  春香「私はっ…!今、お返事が聞きたいんです!」

  春香「アイドルだからとか、関係ありませんっ!!」


  春香「私は…今すぐ」

  春香「プロデューサーさんの恋人になりたいんですっ!! ……なせばなるっ!!」グイッ

  P「春香っ……んむっ……!?」

  春香「……んっ……!」



小鳥「…………!!」ガバッ

小鳥「……えっ……!?」

 
  春香「…………ぷはっ」

  P「………は、春香……………」

  春香「……………」

  P「……………はぁ……負けたよ。春香」

  春香「……えっ!?」

  P「そこまで、俺のこと好いてくれてたんだな……ありがとう」

  春香「! じゃ、じゃぁ………」


小鳥「!! て、手が………」

小鳥「戻って……!! やった…! やったわっ!」

小鳥「……グスッ、よかった……!」


  春香「……グスッ、よかった……!」

  P「……ほらほら、泣くな。今日2回目じゃないか」ギュゥ

  春香「……うわぁあぁん、だって、だっでぇっ……」グスッ

ζ*'ヮ')ζ<イイハナシダナー

 
──────

   『ライブの後、すべて上手く行ったら時計台の前に来なさい。待ってるよ』


小鳥「……社長はもうあっちにいるのね」

小鳥「みんな会場の片づけで忙しいみたいだけど…………このまま何も言わずにいなくなっちゃうのは寂しいかも……」


   「……ことりさーん……小鳥さーん!」

小鳥「……あの声は……」


春香「はぁ、はぁ……小鳥さん! あのっ……そのっ、一応結果だけ、報告を……」

春香「……プロデューサーさんも、わたしのこと……好きって……」

小鳥「そう……よかったわ……よかったわね、春香ちゃん……!」


P「音無さん」

小鳥「……プロデューサーさんも」

P「はい……恥ずかしながら、あはは……」

 
小鳥「…………」



小鳥「あの……お二人に言わなきゃいけないことがあるんです……」





春香「えぇっ!?」

P「やめちゃうって……どうして」

小鳥「何も聞かないで下さい! 詳しいことは、明日社長に聞いてください」

P「でも……」

 
春香「そんな……急にいなくなったら、みんな寂しがりますよ……」

小鳥「ごめんなさい。だけどみんなにお別れを言ってる暇はないの」

小鳥「ただ……せめて二人には言っておこうと思って。本当に急でごめんなさいね」

春香「…………そうですか」

P「…………」

小鳥「……もう一度、おめでとう。二人ともきっと上手く行くわ」

P「……ありがとうございます」

小鳥「私、もう行かないと……でも、その前に一言だけ」

小鳥「ここに来て……二人に出会えて……すごく勉強になりました」


春香「……またいつか会えますか?」


小鳥「…………ええ、保証する」

 
春香「そっか……小鳥さん。いろいろとためになる忠告を、どうもありがとうございました」

春香「私……一生忘れません」

小鳥「そんな……水臭い」

P「…………」

小鳥「それじゃあこれで。…………二人ともお幸せに」


P「…………」

春香「…………」








小鳥「……あぁそうだわ。……もう一つだけ」

P「?」

春香「?」

いよいよ、クライマックスだ。
後は、突っ走るのみ!!

 
小鳥「あなたたち二人に子供が生まれてね」

春香「えっ……えへへ……そんな」


小鳥「その子が4歳になって、『太陽のジェラシー』に合わせておもちゃのマラカスを振り回したりして」

小鳥「部屋をぐちゃぐちゃに散らかしちゃうようなことがあっても……」



小鳥「あんまり叱らないで?」


P「ははっ……ええ。分かりました」

小鳥「…………ふふっ」

タッタッタッ……






春香「…………『小鳥』って…………とっても素敵な名前」

P「……だな」

休憩させて……死ぬ

ピヨちゃんの為なら保守くらい朝飯前だ
俺は保守するのは朝飯の前って決めてるんだよ

 
──────

ゴオオォォォォォオ……
       ゴオォォォォオオ……

小鳥「社長!社長ー!」タッタッ

高木「…おお、音無君!…その姿を見るに、うまく行ったようだね」

小鳥「はい! ありがとうございます!」

高木「君のご両親…天海君とプロデューサーの彼にも、祝福の言葉をかけてやらんとな」


小鳥「それより聞いてください高木社長! 社長にも見せたかったですよ、お母さんのあの姿!」

高木「ん?」

小鳥「お父さんにあんなに積極的なところ、今まで見たことありませんでした!」

高木「なんだって?」

小鳥「そのおかげですべて上手く行って……お父さんだって黒井社長に対してあんなすごいパンチ……あんなの考えられません!」

小鳥「二人ともまるで別人みたい!!」

 
高木「…………別人?」

小鳥「……えっ、どうかしました?」



高木「いや、いいんだ! それより、目標時間を確かめておこう」



ガチャッ
ウィイイィィン

ピキュイイィイン…

 M   D    Y   H M
MAY  20  2012  01 32
  DESTINATION TIME


NOV  05  1992  21 56
   PRESENT TIME

MAY  20  2012  01 32
LAST TIME DEPARTED


高木「この一番下が、君が出発した時間だ。この時間とぴったり同じ時間に君を送り返す」

ピヨー!

 
高木「それでひとまずは元通り。……といいたいところだが」

小鳥「…………」

高木「……すまない。方法が思いつかなかった……」

小鳥「……別にいいですよ」

高木「し、しかし……」

小鳥「お父さんもお母さんも、事情を話せば分かってくれると思います」

小鳥「それに……ここで過ごした10年を、なかったことにするのも嫌ですし」

高木「………今すぐには無理だが、必ず何とかする」

小鳥「……ふふっ、もう帰っちゃうって言うのに、それじゃ間に合いませんよ」

高木「………約束する。何とかするよ……」

小鳥「……そうですか」

 
高木「……いいか! 時計台の向こうの先に白い線が引いてある! ずうっと向こうにだ」

高木「そこからスタートすればいい」

高木「電流接続までの距離は加速のスピードを計算に入れて割り出してある。風の抵抗ももちろん計算に入っているからね」

小鳥「……はい……!」

高木「落雷の時間まで正確にはあと7分と22秒ほどだ」

高木「この時計のアラームを合図に、車をスタートさせればいい! 運転席においておくよ」

ジーコジーコ
コトン

小鳥「分かりました!」

 
高木「……これで、すべて説明したからね」

小鳥「…………」

高木「…………」

小鳥「ありがとうございます、社長。本当に長い間……」

高木「……礼を言うのはこちらだ。ありがとう……」


小鳥「…………っ……!」ダキッ

高木「!」


高木「……20年後にまた会おう!」ギュッ

小鳥「…………待ってますよ、社長……!」ギュゥ

ね、眠い!だがっ!

 
高木「……なに、心配はいらん!」


高木「落雷のその瞬間に時速123kmで道の上の電線の下を走り抜ければ、時計台と完全につながるんだからね!」

小鳥「…………!」


高木「大丈夫、上手く行く!」

小鳥「……はい!」


高木「…………?」ゴソゴソ

小鳥「あっ……」

高木「…………」ピラッ

   [2012年まで開けないでください]


小鳥「……ぁぁっ……」

 
高木「この手紙は何のつもりだ?」


小鳥「……20年後に開ければ分かります!」

高木「まさか未来のことが書いてあるのか!? 絶対に知ってはいけない未来が!」

小鳥「! ま、待ってください、社長!!」

高木「何度言ったら分かるのかね、音無君!」


高木「歴史が変わるような恐ろしい結果になるかも知れなんだぞ!!」

小鳥「だけどその危険を冒すだけの値打ちがあるんですよ社長!! あなたの命に関わることなんです!!」

高木「やめてくれ!! 私はそんな大きな責任は金輪際負いたくはないんだ! ええいこんなもの……!」

ビリビリッ

小鳥「そ、そんな……! ……だったら社長っ!」

小鳥「私……今ここで言っちゃいますからねっ!!」


ゴオオオオォォオオッ……

バリバリバリ……ドドォン…

 
ブチッ…


高木「!!」

小鳥「!!」


高木「倒木のせいでケーブルが外れた……!」

小鳥「ええっ!? ど、どうすれば……」


ピシャアァアァァアン!!!


高木「……!」ゴソゴソ


高木「音無君! 私が時計台に上ってロープをたらす! 君はそれをケーブルとしっかり結び付けてくれ!」

小鳥「分かりました!」

高木「急がないと時間がないぞ!」ダッ

 
高木「……はっ……はっ……」タッタッ…タッタッ…


    小鳥「…………」ソワソワ


ピシャアァァアン!!
ゴロゴロゴロゴロ……


高木「……はぁっ、はぁっ……ついた……うぅっ……やはり高い……!」

    小鳥「社長ー! 早く投げて!」

高木「分かっている! ……それっ!」ポイッ

シュルルルルル……


    小鳥「よし……こうして、こうやって……」ギュッ


高木「結べたか!?」

   小鳥「ええ! 引き上げて!」

高木「……ふっ、はっ、……よっ……!」グイグイ

小鳥「急いで!」

 
ピシャアァァアァン!!
ゴロゴロゴロゴロ……


高木「……よっ、ほっ……よし!ケーブルが戻ってきた……」


    小鳥「…………」

    小鳥「…………社長!!」

高木「……ん……? なんだね!?」

    小鳥「未来で何が起こるかどうしても言っておきたいんです!!」


高木「なんだって!?」


    小鳥「何が起こるか知っていれば、どうにかすることが出来るから!!」

    小鳥「私が未来に戻った夜……!!」


    小鳥「社長は────」


ゴオオオォォォォオオオォォォオオオオオォォオオォオオオン!!!!!!!!!!

 
高木「!!!!!?????」


    小鳥「ぐっ…………鐘が……!」


ゴオオオォォォォオオオォォォオオオオオォォオオォオオオン!!!!!!!!!!


高木「………ぁぁあぁああぁぁぁああああぁぁぁあっ…………!!」ジンジン

    小鳥「社長ーっ!!!」


高木[耳が……早く行きたまえ! もう10時だ!! このままだと間に合わなくなる!!」

    小鳥「でもっ……!!」

高木「急げっ!!」

    小鳥「…………」

    小鳥「………っ!」ダッ


ゴオオオォォォォオオオォォォオオオオオォォオオォオオオン!!!!!!!!!!


高木「んぐぅぅぅぅうぅううっ……!!」

 
小鳥「はぁっ……はぁっ……! 車を……!」

カチッ
ギュルルルルル
ブオオオォォン


小鳥「スタート地点へ……!」グンッ

ブロロロロロロ……!!



──────


キキィッ…


小鳥「……よし…ここがスタート地点…………」

小鳥「……社長……ひどいですよ……せっかく書いた手紙を……!」


小鳥「……! そうだ」

小鳥「私が出発したより10分早く戻れば……!」ポパピプペ

 
 M   D    Y   H M
MAY  20  2012  01 22
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NOV  05  1992  22 01
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MAY  20  2012  01 32
LAST TIME DEPARTED


小鳥「よし、これで大丈夫……! エンジン良し、次元転移装置良し……準備完了!」


ブロロロ……
ヒュウウゥゥン……


小鳥「………ちょっとまって、何でこんなときに……!」

カチッ
ギュルルルルルル……


小鳥「……かかりなさいよっ……!」

実際のデロリアンも相当アレな車なんだっけか

 
 M   D    Y   H M
MAY  20  2012  01 22
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NOV  05  1992  22 01
   PRESENT TIME

MAY  20  2012  01 32
LAST TIME DEPARTED


小鳥「よし、これで大丈夫……! エンジン良し、次元転移装置良し……準備完了!」


ブロロロ……
ヒュウウゥゥン……


小鳥「………ちょっとまって、何でこんなときに……!」

カチッ
ギュルルルルルル……


小鳥「……かかりなさいよっ……!」

 
──────


小鳥「もう時間がない……!」

カチッ
ギュルルルルル…

小鳥「かかって…お願い、いい子よ……」

カチッ
ギュルルルルル…

小鳥「かかりなさい……かかりなさいよ……!」



ジリリリリリリリリリリリ

小鳥「!!!」

小鳥「……お願い……お願い…!!」

 
ジリリリリリリリリリリリリリ


ギュルルルルル…

小鳥「…かかってぇーっ!!」ゴツンッ


プァー
ブルルルルォォオオオオオオオン…


小鳥「……!   よっしゃぁっ!!」

ガコン
グンッ

ブォォォォオオオオオオ…………!!

 
──────

高木「なんのっ……中年をなめるでないっ……!!」

高木「……ふんぬぉっ!!」グイッ

グンッ
ブチッ…

高木「…………」

高木「ああぁぁああっ……! 今度は下のケーブルがっ……!!」

高木「ど、どうすれば……!?」

 
──────

  ─ 80km/h ─

ブォォォォオオ……!!


小鳥「順調よ、小鳥……」


  ─ 90km/h ─

小鳥「……………っ…!」

 
──────

高木「もう時間だ…間に合わない……!」

高木「こうなったら…………」

高木「………一か八か、というやつだな…!」

高木「電線を滑り降りよう……」ギュッ


高木「とぉっ!」バッ

スルスルスルスルスルスルスル……


高木「ああああああおおおあああああ…」

メインテーマかけながら読むと最高盛り上がる
あと、5分で起床だわ・・・

 
──────


  ─ 100km/h ─

ブォォォオオオオ……!!

小鳥「………行け、行くのよ……!」


  ─ 110km/h ─

小鳥「…………落雷まであと15秒……!」


  ─ 120km/h ─


小鳥「あと10秒……!!」

小鳥「お願い……社長っ……!」

 
──────

スルスルスルスル……

ドンっ

高木「~~っ…あいたたた……」

高木「! 後10秒……!」

高木「ケーブルは…!?」

高木「あそこか!」

ガチャガチャッ…

高木「あと5秒……くっ、気に絡まって……」

高木「………とれた! よし!あとはこれをつなげば………」

 
──────

  ─ 122km/h ─

バシッ!!
   バシッ!!
  バシィッバシッ!!!

小鳥「後1秒………」

ピカッ…

小鳥「!!…光ったっ…!!」

 
──────

高木「ぬおおおおおおおぉぉ……っ!!」


ビシャァァァァアアン!!!
ビリビリビリビリ……!!


高木「ふぬぉぉぉっ…!!」カチッ

高木「繋いだっ!」

ビリビリビリビリビリ!!

ドォン!!

高木「うわぁっ!?」




  バシィッ!!!
   バシィッ!!!゙シッバシィッ!!!

  ─ 123km/h ─


小鳥「……………………!!!!!」

もう外でピヨちゃんが鳴いてる時間なんだが

 









   ─  NOV  05  1992  22 04  ─





   ─  ≡≡  ≡  ≡≡ ≡  ≡  ─





   ─  MAY  20  2012  1 22  ─

 
バシッ!バチィッ!!

バシッ!!バシッバシッ!!

バシッ!!!
シュバァァァァァァアアアン!!!


ヒュゥゥゥゥゥウウウウン………

カランカランカラン……カタッ


高木『……………』

高木『……………消えた…』


高木『………やった……やった……!』

小鳥「やぁ、また会ったね」

 
高木『成功したぁぁっ!!』

高木『やったぁっっ…!』

高木『! ……ゴホン』

高木『……音無君。いや……小鳥君……良かった……グスッ……』


高木『……さて……喜んでいる場合ではないな』

高木『約束はきちんと果たさないといけないね』

高木『……待っていてくれたまえ、小鳥君』


高木『いや、彼女は待つ必要はないのだったな』

高木「そんな・・・!今送り出したばかりじゃないか・・!」
小鳥「戻ってきたんですよ!・・・未来から」
高木「なんということだ・・・」

To be continued....PART3

今日は小鳥スレが多くて幸せだ

 
──────

バシッ!

バシッ!!

シュバァァァァァアアン!!


ヒュウウウゥゥゥゥウウウン……



ピィー……ピィー……ピィー……ピィー……
フシュウウウウゥゥゥウゥウゥゥゥゥゥゥゥウウウゥゥウウウウゥゥウウウ


ガチャッ


小鳥「ふへぇ……けむたぃ…………」

小鳥「…………」

小鳥「ここは………私」

小鳥「戻ってる…!?」

 
小鳥「………やったんだわ……ようやく……」


小鳥「帰ってこられた………! ……グスッ……懐かしい町並み……」


小鳥「! そうだ、高木社長……!」

小鳥「急いで知らせに行かないと……!」

ブロロロ……
ヒュウウゥゥウゥン……


小鳥「…………うそ……またなの……?」

 
──────
小鳥「はぁっ……はぁっ……」タッタッ…

小鳥「社長…………!」


    「トレーラーを追えぇっ!! ジジイを殺せっ!!」

    「逃げるんだ、小鳥君!!」ブロロロロ……

    「社長ーっ!!」


小鳥「……あれ?」

小鳥「……追いかけてる人……あんなんだっけ……?」


    ドゴシャァアアン!!

    「社長っ! いやああぁぁあっ!!」

    「おい! もう一人もだ!」

    「……っ……!」ダッ


小鳥「…………?」

 
    バシッ!!!バシッ!!バシィッ!!!
    シュバァァァァァァアアアン!!!


     「消えた!?」

     「前! 前っ!」

     「あああああああああっ!!!!」

     ドゴシャァァアッ……


小鳥「…………」


シイイィィン……


小鳥「……社長っ!」ダッ

 
シュウウゥゥウウゥゥウウウ…

小鳥「運転席が、つぶれてる………そんなぁっ……ヒック……」

小鳥「結局……間に合わなかっただなんて……ヒグッ……」

小鳥「社長……社長……っ……! グスッ……」


ガチャン…


小鳥「……!?」

高木「…………」

小鳥「う、後ろの荷台から? で、でも社長……運転席にいたんじゃ……」

高木「……これをね」

小鳥「……リモコン……!?」

小鳥「待って、じゃああの人たちは!? 機動隊だったはずじゃぁ……」

高木「直接盗むのをやめてな、遠い町の『そういう』組織の人に頼むことにした」

高木「爆弾を作ってくれといわれたから、代わりにパチンコ玉で作ったインチキと引き換えにな」

 
小鳥「…………でも、どうして!? 教える暇なんてなかったのに……」

高木「……」ゴソゴソ


ボロッ…

小鳥「それは……私の手紙……」

高木「……ははは」


小鳥「社長……ずるいですよ、そんな……歴史に影響を及ぼすだとか、散々言っておいて……!」

高木「……硬いことを言うな、この際だ」


高木「ついでにもう一つ」スッ

小鳥「……それは? ……薬?」

高木「タイムマシンに使われた次元転移装置をナノマシンに応用したものだ」

小鳥「…………!」

高木「君と別れてから、きっかり20年かけて何とか開発に成功した。間に合ってよかったよ」


高木「これを飲めば、君の体の細胞の構成が…10年ほど、過去に戻ることになる」

 
小鳥「…………社長っ……グスッ……!」

高木「言っただろう?『必ず何とかする』と」

小鳥「……社長っ……グシュッ、ありがどう、ございますっ……!!」

高木「例など要らん。言いたいのはこちらのほうだ」

高木「君は765プロ創設者の一人、かつ命名者」

高木「そして名誉事務員だ。メンバー全員で決めた」



高木「………いままで、ありがとう」

 
小鳥「………ヒック、ぅゎぁぁぁぁぁぁぁぁん……………!」

高木「こらこら、なにもそんなに泣く事はないじゃないか」

小鳥「……だって…嬉しいんです………!」

小鳥「お父さんとお母さんが大好きだった765プロに……」

小鳥「自分が、仲間としていられたんですもの………!」

高木「………うれしいよ」


高木「私の頑張りも、無駄ではなかったのだね……」

ご都合主義万歳だな

高木技研工業

 
──────

ブロロロロ…

高木「さあ、家だよ」

小鳥「……それで、未来のどの辺りへ行くんですか?」

高木「ざっと30年後だね。キリのいい数字だ」

小鳥「じゃあ私にも会ってきてくださいね。そのときにはもう……47ですけど」

高木「分かった」

小鳥「……元気で」

高木「君もな」

小鳥「はい。……いぬ美二世は預かりますね」

バウバウ!

小鳥「あぁそうだ。再突入のときなんですけど……衝撃がありますよ」

高木「……覚えておこう」

 
ブロロロロロ……


小鳥「…………」


 
バシッ!バチィッ!!

バシッ!!バシッバシッ!!

バシッ!!!
シュバァァァァァァアアアン!!!


小鳥「…………」

小鳥「……ただいま」

 
──────

小鳥「……すぅ……すぅ……」

小鳥「……すぅ……すぅ……」

小鳥「…………んっ…………ふぁぁぁあっ……」

ムクリ


小鳥「…………ひどい夢」





小鳥「……おはよう……」

P「小鳥。まだ寝てたのか」

小鳥「おはようございます、プロ……じゃない、お父さん」

P「?」

小鳥「ううん、なんでもないの」

俺「おかえり」

 
P「朝ごはん、早く食べなさい。今日は大事なオーディションだろう?」

小鳥「えっ、オーディション?」

P「忘れたのか? 昨日は審査員長が来れなくなったから、一日延期になったって連絡が来ただろう」

小鳥「……あぁ……そうだった……」


春香「……ふぁぁ……っと」

小鳥「! お母さん……」

春香「あら、おはよう小鳥。そうよ? お母さんよ?」

小鳥「……うん、そうね……」


春香「……あなた~♪」

P「わっ、母さん、ちょっ……」

春香「……んっ……ちゅ……」

P「んんっ……んむ……!」

小鳥「!!!??」

 
小鳥「ちょっ……お母さん!?」

春香「小鳥、邪魔しないでちょうだい。今いいところなんだから」

P「ぷはっ……いやいや、母さんはいつも積極的で困るよ……」

小鳥「…………うそ……ぅぇぇぇ……」



春香「それより小鳥、今日は大事なオーディションでしょ? ちゃんと食べて、元気に行ってらっしゃい」

小鳥「…………うん、ありがと……」

P「支度が済んだら、父さんの車で一緒に事務所に行こう。今日はみんながお前の応援に来てくれる予定だぞ」

小鳥「事務所? どこの事務所……? それにみんなって?」

春香「……何言ってるの? 小鳥」


P「765プロに決まってるだろう」

 
──765プロ事務所前──

小鳥「……でかっ!!」

P「何言ってるんだ、何回も見たことあるだろう」

春香「まだ寝ぼけてるの? もう、しゃきっとしてよ?」

小鳥「……961プロより大きいかも……」

P「961プロ? 誰からそんな……ああ、高木会長か」

小鳥「……会長……」

春香「961プロは何年も前に倒産したのよ。違法取引が表に出てね」

小鳥「…………そうだった、そうだった……」

>>877

>小鳥「…………うそ……ぅぇぇぇ……」

一瞬、嘔吐してると思った

 
──────

ウィーン…

P「おはよう」

   「おはようございます社長、本日もお早いご出勤で……」

P「どうも。あぁあまり気を使わなくていいですよ『黒井さん』」

小鳥「!」

黒井「そ、そんなことおっしゃらずに。私の仕事がなくなってしまいますから……あぁ春香奥様に小鳥お嬢様、おはようございます」

春香「おはようございます、黒井さん」

小鳥「…………ウソでしょ」

P「まったく気の利かない人だなあ。黒井さん、今日お呼びしたお客はみんなもういますか?」

黒井「申し訳ありません……はい。皆様そろって来賓室でお待ちいただいてます……ささ、どうぞこちらへ」

黒井崇男(CV:玄田哲章)

 
──────

ガチャ

P「おはよう! みんないるかな?」

亜美「あっ!プロデューサーが来たよ」

真美「お久しぶりでーっす」

P「あはは……お前らはいつまで経っても若いな……」

千早「春香、お久しぶりね。小鳥も」

春香「千早ちゃん、会えて嬉しいよ。ほら小鳥、ご挨拶」

小鳥「お、おはようございます!」

響「ピヨ子~、高木社長がいぬ美二世を返してくれないんだけど」

小鳥「あ、ウチにいますよ」

響「そっかそっか、社長のとこにいるよりはよっぽどましだ。よかった! あはは」

 
やよい「小鳥ちゃん、私のこと覚えてる?」

小鳥「そりゃもちろん……やよいおばさん」

やよい「よかったぁー、忘れられてたらショックだもんね……」

美希「心配しすぎなの、やよい。小鳥、今日は頑張ってね」

小鳥「……はい。頑張ります!」

貴音「古都からここまで、長い道のりでした……小鳥、ご武運を」


真「小鳥、今日は特別なプレゼントがあるんだよ」

小鳥「え……なんですか?」

雪歩「……じゃじゃーん。ステージ用の新しいアクセサリー」

小鳥「……インカム……?」

伊織「私が作らせたのよ。アンタにぴったりだと思って」

小鳥「伊織おばさん……」

伊織「765プロ出身のアイドルが無様にオーディションで負けちゃいけないって知ってる? それつけてバシッと決めてきなさい」

小鳥「……わかりました!」

 
あずさ「小鳥ちゃん、今日も大好きな『あの歌で』勝負するんでしょう?」

小鳥「あの歌……? そ、それはもちろん!」

あずさ「ふふっ。それじゃあ、作曲者の律子さんから一言応援のメッセージをどうぞ~」


パチパチ
    パチパチ

律子「えっ!? ちょっと、いきなり振らないで下さいよあずささん……ごほん」

小鳥「……」

律子「……小鳥。今日は765プロ初期メンバーみんなであなたの応援に来たの。残念ながら一人とは連絡がつかなかったけど……」

律子「……元765プロのプロデューサーとして、伝えておきたいのはたった一言! ……楽しんでらっしゃい」

小鳥「……! はい!」

今日は休むか

 
P「よし!一通り激励の言葉をもらったところで……みんな、今日は娘のためにどうもありがとう。心から感謝するよ」

P「小鳥。頑張れるかい?」

小鳥「もちろん!」



春香「よし、じゃあ全員で掛け声やって出発しようね!」



春香「いくよ……765プロ───」

  「「「「ファイトーっ!!!」」」」

  小鳥「ファイトーっ!!!」

 
──オーディション会場──

  「それでは次のひと、どうぞ」

小鳥「は、はい! よろしくお願いします!」

  「審査員長が急用で来られなくなったことで、昨日はご迷惑おかけしました」

小鳥「い、いえ……」

  「いい結果を残せるよう、がんばってください」

小鳥「は、はい」





      「♪空になりたい 自由な空へ

                翼なくて翔べるから 素敵ね

           空になりたい 好きな空へ

                      雲で夢描けるから……」

 
審査員A「ふぅん……なるほど……」

審査員B「どうですかね?」

審査員C「悪くはないんだけどねぇ」


小鳥「…………」


審査員A「いやなかなかだと思いますよ? 歌も上手いし」

審査員B「だけどこう……華、は違うな……派手さにかけるというか」

小鳥「派手さ……ですか」

審査員C「そうねえ。それにその曲……何というか、少し古い感じというか」

小鳥「ふ、古いですか……?」

審査員B「ですね。少なくとも最近の流行にはそぐわないかもしれません」


    「待ちなさい」

 
審査員A「……審査員長」

審査員長「あなた……その曲、だれに教えてもらったの」

小鳥「えっ……えっと、高木社長……元社長です。765プロの」

審査員長「……高木社長が……やっぱり……」


審査員長「あなたよ!! 見つけた!!」

小鳥「!?」

審査員長「私が20年……いや30年間探し続けた曲が……ようやく見つかったわ」

審査員B「えっ!?」

審査員長「プロフィール見せて。……音無小鳥……これ、芸名よね? なるほど、すごい偶然もあるものね……」

審査員長「決めた。その子合格ね」

小鳥「えぇっ!?」

審査員C「ちょっと、日高さん……!!」

小鳥「あっ……!?」

 
舞「何? 私の決定に逆らう気? 私がこの子がいいって言ったの、分かる?」

舞「流行だとかトレンドだとか、私そういうの正直嫌いなの」

審査員A「ですが残りの子達は……」

舞「適当にやっといて。ちょっとあなた、私と詳しくお話しましょう。今日のTV出演の話なんかもね」

小鳥「え、えぇっ…?」

舞「じゃーねー♪」

小鳥「ちょっと、まっ」

バタン

 
舞「高木社長もケチな人ね、あの人が何年前からこの曲を隠してたか知ってる?」

小鳥「さ、さあ……」

舞「30年よ、30年! おかげで確かに最新の曲ほどの派手なものじゃないけれど」


舞「これは確実に名曲よ。歴史に残る名曲……それにあなたにぴったり」

小鳥「あ、ありがとうございます……」

舞「あら、大きなこと言い過ぎて実感ないかしら?私は歳は取ったけど、目だけは確かよ

舞「私のシングル売り上げ記録、更新できるといいわね。……まあ無理でしょうけど」

小鳥「…………」



小鳥「…………はい。頑張ります……!」


舞「2時間後に収録よ。しっかり準備しておいて」

 
──────

小鳥「…………うぅ、こんな大きなTV久しぶりだから緊張する……!!」

P「……小鳥」

小鳥「……お父さん」

P「もうすぐ本番だぞ。心の準備は?」

小鳥「……あんまり……」

P「……そうか。緊張するのも無理はないさ」

P「でも、ほら……後ろを見てみなさい」

小鳥「……」クルッ

あぁ、いい天気だなぁ…
小鳥日和だ

 
春香「頑張って、小鳥!」

千早「頑張ってね」

真「頑張れ! 大丈夫、ばっちりだよ!」

雪歩「頑張ってねー。ふふっ」

伊織「気合入れなさい!」

亜美「ファイトー!」

真美「ファイトー!」

やよい「ファイト!」

美希「ファイトなの」

響「しっかりやるんだぞ!」

貴音「……」グッ

あずさ「頑張ってちょうだいね~」

律子「あなたならいけるわ。全力を出してきなさい!」


小鳥「…………! みんな……」

 
P「あれだけの人と、ステージの向こうにいる大勢の観客がお前の歌を楽しみにしてるんだ」

小鳥「……グスッ……! うん……ありがとう……グシュッ……!」


小鳥「…………」ゴシゴシ

小鳥「……お父さん。私、絶対この曲でトップアイドルになってみせる!」

小鳥「……だから……ちゃんと見ててね」


P「お前ならできるよ。なんてったって俺と母さんの子だからな!」

小鳥「……うん!」

 
    『続いては今回の激戦オーディションをぶっちぎりで1位通過した、脅威の大型新人の登場です!!!』



  ワアァァァアァアァアアァァア!!!!!!!
            キャアアァアアアアァァァアア!!!!!



P「よぉし……行って来い、小鳥!」パシンッ

小鳥「はい!」ダッ



   『それでは歌っていただきましょう!! 音無小鳥さんで───』


                 『曲は、「空」』

http://www.youtube.com/watch?v=8yeAqcplKC4



     BACK TO THE PIYOCHAN
                        終

休憩後おまけあり

クレジットに空が流れていたんだ…
お疲れ

3に期待してるよ

おまけを期待とかお前ら鬼畜だな

 
(BACK TO THE OMAKE)


P「せーの、」


   「「「「TV出演おめでとう!! カンパーイ!!!!!」」」」


亜美「ピヨちゃん、やるねえ。いいステージだったよ」

小鳥「ほ、ホントですか……? ありがとうございます」

真美「うんうん。私たちの現役時代にギリギリ負けてるくらいすごかったよ!」

小鳥「そ、そうなんですか……」

真「……小鳥ぃ~!!」ガバッ

小鳥「わっ!? ま、真おばさん……!!」

真「感動したよぉ……小鳥の声大好きなんだ! これからもずっと頑張るんだよ! ね、小鳥!」ギュゥ

小鳥「は、はい……ありがとうございます……!」

この>>1は出来る

 
律子「真、その辺でやめときなさい。小鳥が迷惑そうにしてるでしょ……でも確かに、あんなすごいの見せられたあとじゃね……」

雪歩「小鳥ちゃん。ほ、ホントに17歳……だよね? 私がそのくらいのときとは、出来がもう全然違いすぎて……」

小鳥「! や、やだなぁ……このとおり、ピチピチの17歳ですよ。ほら……」

雪歩「……」プニプニ

小鳥「ひゃはは、ゆひほおあはん……」

伊織「アンタたち騒ぎすぎ。一回勝ったくらいで調子に乗られちゃ、すぐに足元すくわれるのよ?」

伊織「小鳥以外にも出来のいいアイドルはたくさんいたんですからね。分かってる?」

小鳥「は、はい……もちろんです!」

やよい「そんなこと言って、伊織ちゃんも泣きながら喜んでたよね?」

伊織「泣いてはないわよ! ……ま、今日のところはよくやったって褒めてあげてもいいわ。 ……おめでと」

小鳥「はい! ありがとうございます」

 
美希「小鳥、レッスンはサボっちゃダメなの。それとスタイルには十分気をつけて、ダンスの練習も忘れずにね」

小鳥「は、はあ……」

美希「それさえ守ってればOKなの! これからも頑張るんだよ」

あずさ「響ちゃん、今度いぬ美二世ちゃんに会わせてくれないかしら? どんな犬なのか見てみたいの」

響「いぬ美の娘だから、見た目はそんな変わんないぞ」

あずさ「そうなの~。じゃあ、いぬ美三世ちゃんならどうなってるのかしら? うふふ」

響「…………」

千早「四条さんは?」

春香「貴音さんなら、残念だけど先に帰るって言ってたよ。小鳥にもおめでとう、って伝えてって」

小鳥「そうなんだ……ありがとう、お母さん」



P「勝ったとはいえ、ずいぶん賑やかだなあ」

P「……まるで昔の765プロに戻った気分だよ」

 
──────


   「「「「おやすみー。元気でねー」」」」


小鳥「……みんないい人たちばっかりで、私大好き」

春香「そうね。お母さんが765プロのことを大好きだって毎日言ってる理由、少しは分かった?」

小鳥「……うん」

P「小鳥、嬉しいのは分かるが浮かれてばっかりじゃダメだぞ。 明日からまたレッスンを続けていかないとダメなんだからな」

小鳥「わかってまーす。私、これからも頑張るね」

春香「そうね。お父さんもお母さんも、小鳥には期待してるから」

小鳥「……ありがと」

 
──────

チュン…チュン…
   チュン…チュン…


小鳥「……すぅ……すぅ……」

小鳥「……すぅ……すぅ……」


小鳥「…………ふぁぁ……よくねた……」


小鳥「…………また朝かぁ」




小鳥「お父さん? お母さん?」


小鳥「……二人とももうお仕事か……朝ごはん食べよ」


小鳥「そういえば合格したのが嬉しくて忘れてたけど、大変なことがあって1日2日しか経ってないんだもんなぁ……」モグモグ

小鳥「せっかくだし、久しぶりの町並みをじっくり味わいながら散歩してからレッスンに行こうかな?」

 
──────

小鳥「……よし。玄関の鍵を閉めて……と」

カチャカチャ……


小鳥「……この辺も30年でずいぶん変わったんだ」

小鳥「…………」

小鳥「よーし。いってきまーす……」


バシッ!バチィッ!!

バシッ!!バシッバシッ!!


小鳥「…………?」


バシッ!!!
シュバァァァァァァアアアン!!!



小鳥「…………!?」

 
小鳥「まさか……」


ガチャッ
ウィイィイン


高木「小鳥君!」

小鳥「高木社長!?」

高木「あぁちょうど良かった。一緒に来ておくれ!」

小鳥「……!?」


高木「ええと、ゴミ箱ゴミ箱……」ゴソゴソ

小鳥「行くって、どこにです!? それにそのヘンテコな格好!!」

高木「未来へ戻るのだよ!」ゴソゴソ


高木「これくらいでいいかな……」

小鳥「その生ゴミは!? 一体どうするんです」

高木「燃料にする!」

 
ガチッ
プシューッ…
パカッ

高木「これとこれとこれと全部………」ポイポイ

小鳥「ま、待ってくださいよ社長。冗談ですよね? 私この間戻ってきたばっかりで……」

小鳥「今日だってこれからレッスンなんですよ?」

高木「レッスンか……アイドルらしいね……」

小鳥「一体どういうことなんです? まさか……未来の私に何か問題が?! もしかして……結婚できず独身、とか……」

高木「いやそれは問題ない。君はふさわしい相手を見つけきちんと結婚し子供もいる」

小鳥「うそッ!?」


高木「だが問題はその君の子供と……アイドル業界全体に関わることなのだよ」

小鳥「えっ? アイドル業界って……」

高木「とにかく乗りたまえ」

 
ガチャッ

ブロロロロロ……

小鳥「社長。停まってる車で道がいっぱいですよ? これじゃ時速123kmまで加速できませんけど……」

高木「道? ……ふん、我々の行こうとしているところでは道など必要ないのだよ」


ガコンッ
ウィイィィィイイン
シュゴオオォオォォオォ……


小鳥「!? と、飛んだ……!?」

高木「しっかりつかまっておくんだよ」

 
シュゴオオォオオオォォオォォオ……




  ─ 110km/h ─




  ─ 120km/h ─






  ─ 123km/h ─



バチッ!!バシィッ!!

バシッ!!
シュバアアァァアァアァン!!!!

http://www.youtube.com/watch?v=3NCFjeVpAPM



        TO BE CONTINUED

まさかの30時間&300レス越え
バカすぎわろた

最後のは映画どおり「(ピヨちゃんの時空を超えた冒険はこれからも)TO BE CONTINUED」
という意味なので今のところ続編などというそんなもんの予定はないよ


非常に長い間お付き合いありがとう

よく完走した

くぅ~w疲れました

>>967
正直貼ってしまいたいくらいのテンションなのである

とりあえず寝ればいいんじゃないかな…
俺はねる
ずっと見ててもう頭いたい

 Z
  z
 <⌒/ヽ-、___
/<_/____/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 !?
 <⌒/ヽ-、___
/<_/____/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

     オハヨー!!
    ∧∧ ∩
    (`・ω・)/
   ⊂  ノ
    (つノ
     (ノ
 ___/(___
/  (___/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


ほかにクロスとか書いてたら教えてほしい

>>974
ジャイアントキリング(ミカン)

最後に訂正

>>133

    『10月24日の天気です。今日は全国的に晴れ間が一日中続くことでしょう……』


ガサッ


小鳥「……新聞。あったわ」ゴソゴソ


   [1982年10月24日]

訂正
>>161
高木「日付……?10月25日だよ。君は昨日事故を起こしたんだ」

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