代行
--須賀家--
京太郎「おいおい、限界に挑戦って……まさかどれだけ飽きずに食べ続けられるか的な意味じゃないだろうな?」
優希「ふっ、甘いな京太郎……」
京太郎「そりゃそうか、いくらお前でも……」
優希「他にどういう意味があると思ったんだ?」
京太郎「ですよねー」
優希「全国に向けてどれだけタコス力を蓄えられるか挑戦するのだ! 幸い今は休み、誰にも邪魔される事なく挑戦できる!」
京太郎「人の家でやるのかよ! だいたい資金とかはどうすんだ、タコスだってただじゃねぇんだぞ?」
優希「ふふん、それについても心配無用! 見よ、この食材達を!」
京太郎「こ、これは! 大量のタコスの材料じゃねぇか!」
優希「行きつけのタコス屋が完全協力してくれたからな! 材料には困らないじょ!」
京太郎「マジかよ……お前の道楽に付き合うなんてそのタコス屋も酔狂というかなんというか……」
優希「それじゃあ、疑問も解けたところでさっそく頼むじぇ」
京太郎「は? もしかしてお前、俺にタコス作れとか言い出す気か?」
優希「他にわざわざ場所を京太郎の家にした理由があるのか?」
京太郎「おいおい……俺だって暇じゃないんだけどな」
優希「……ダメ?」
京太郎「なんだよ、らしくないな……わかったわかった、作ってやるよ」
優希「さすが京太郎! それでこそ私の犬だ!」
京太郎「誰が犬だ、こら。 じゃあ作ってくるからちょっと待ってろよー」
--少年調理中--
京太郎「お待たせいたしました、と」
優希「うむ、苦しゅうない! いただきまーす!」
京太郎「……どうだ?」
優希「モグモグ……美味しいけどまだ合格点はやれないな!」
京太郎「これでも一生懸命やったんだけどな……ちなみに何点だ?」
優希「60点」
京太郎「そこそこか」
優希「千点満点でな!」
京太郎「ダメダメだな、おい!」
優希「まあそれは冗談として……さぁ、認められたかったらもっとタコスを持って来ーい!」
京太郎「ちっ、わかった、とことん付き合ってやる! 絶対お前に美味しくてまいりましたって言わせてやるからな!」
優希「期待はしてないじぇ」
京太郎「ぐぎぎ……」
--京太郎が作ったタコス・1個--
京太郎「へい、お待ちってな」
優希「モグモグ……」
京太郎「どうだ?」
優希「40点!」
京太郎「下がった!?」
優希「奇をてらって何か入れたみたいだけど逆効果だじぇ。 創意工夫なんて満点を取ってからだ!」
京太郎「くっ! まだまだ基本からって事か……」
--京太郎が作ったタコス・10個--
京太郎「どうだ?」
優希「モグモグ……シンプルだけどそれがいい、65点だじぇ」
京太郎「うしっ! 最初より点上がったぜ!」
優希「京太郎はタコス作りに関しては才能があるな!」
京太郎「おいおい、それ以外にないみたいな言い方はやめろよ」
優希「えっ」
京太郎「おいこら、なんだその『えっ、あると思ってたの?』みたいな顔は」
--京太郎が作ったタコス・25個--
京太郎「今度はどうだ?」
優希「モグモグ……70点だじぇ」
京太郎「よしよし、順調に上がってんな」
優希「まだまだ先は長いぞ、油断せずに精進するのだ!」
京太郎「お前はどこの師匠なんだっつーの」
優希「ふっ……私はちょっとタコスに魅入られた呪われし血族なだけだじぇ」
京太郎「だからそれ、メキシカンに失礼だからな?」
--京太郎が作ったタコス・50個--
京太郎「ほらよっと」
優希「モグモグ……うーん、68点」
京太郎「また下がった!?」
優希「タコス生地の焼き加減が微妙だじぇ。 京太郎、お前何かしながらやっていたな!」
京太郎「ギクッ」
優希「なんだなんだ、私のタコスを作る以上に何か大切な事でもあったのか?」
京太郎「……いやー、ちょうど読んでた雑誌におっぱい大きい子が……」
優希「タコスキック!」
京太郎「いてぇ!?」
--京太郎が作ったタコス・75個--
京太郎「おい優希、材料がなくなってきたぞ」
優希「む……じゃあまたタコス屋に頼むじぇ」
京太郎「さすがにこれ以上付き合わせらんねーだろ。 これからは俺が材料用意しとくわ」
優希「でも資金がないんだろ?」
京太郎「宝くじが当たったからそれ使うさ。 親だって説得済みだしな」
優希「準備がいいな、京太郎!」
京太郎「今さらひけねぇだけだよ。 ここまで来たらお前が満点出すまでやってやる!」
優希「ふふん、そう簡単には満点はやらないじぇ!」
京太郎「言ってろ! じゃあちょっと買い物行ってくる」
--京太郎が作ったタコス・100個--
京太郎「えーっとこれとこれと、後これだな」
咲「あれ……もしかして、京ちゃん!?」
京太郎「んっ? おー、咲、奇遇だな、お前も買い物か?」
咲「う、うん。 和ちゃんが遊びに来るから夕飯の買い出しに……今日は寒いからお鍋にでもしようかなって」
京太郎「相変わらず仲がいいんだな、咲と和は」
咲「まあ、ね……ところで京ちゃんはどうしたの?」
京太郎「俺はタコスの材料を買いにな」
咲「えっ、タコス……?」
京太郎「実は今優希のわがままに付き合わされててさ。 あいつときたらなにを血迷ったのかタコスをどれだけ食べ続けられるかに挑戦してんだよ、わざわざ人の家で泊まりがけでだぞ?」
咲「京ちゃん……な、なにを言ってるの?」
京太郎「本当になにを言い出してんだかな? まっ、俺もタコス作りの修行になるしちょっとくらいなら付き合うつもりなんだけど」
咲「そ、そうじゃなくて優希ちゃんが京ちゃんの家にってどういう……」
京太郎「あっ、もうこんな時間か。 悪い咲、優希が待ってるからまたな」
咲「えっ、京ちゃん、まだ話は……」
京太郎「じゃあなー」
咲「き、京ちゃん……嘘、でしょ……?」
--須賀家--
京太郎「ただいまー、待たせたな優希」
優希「遅いぞ、京太郎!」
京太郎「悪い悪い、ちょっと外で咲と会っちゃってさ」
優希「咲ちゃんと? はっ、まさか浮気か!?」
京太郎「アホか」
優希「もう、つれないじぇ、あ・な・た♪」
京太郎「あなたじゃねぇから。 ほら、くだらない事言ってないでタコス作るから大人しく待ってろ」プルルルルル……
京太郎「んっ、電話か?」ガチャッ
京太郎「はい、もしもし」
???「……!……!」
京太郎「あの、どちら様ですか?」
???「……!?……!!」
京太郎「いたずらなら切りますよー」ガチャッ
京太郎「何だったんだ今の? まっ、いいやタコス作りタコス作りっと」
京太郎「どうだ?」
優希「モグモグ……75点だじぇ」
京太郎「なんとか軌道修正は出来たか……おっ、そういえばさっき変な電話がかかってきたんだよ」
優希「モグモグ……電話?」
京太郎「そうそう、でも不思議なんだよな……よく聞こえなかったのにちゃんと聞かなきゃいけなかったような……つうっ!?」
優希「京太郎!?」
京太郎「だ、大丈夫だ、ちょっと頭痛くなってきただけだから」
優希「とても大丈夫には見えないじぇ……ここはいいからちょっと休め」
京太郎「……そうだな、悪い。 ちょっと横になるわ」
優希「ん、おやすみ」
京太郎「おやすみ……」
--京太郎が作ったタコス・200個--
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優希『京太郎もタコス作りがうまくなったな!』
京太郎『おっ、マジか?』
優希『うむ、まだ100点満点ではないけど、99点までは届いてるじぇ! これなら決勝で私も十二分以上に力が発揮できる!』
京太郎『そうか……俺も少しは全国でみんなの役に立てたんだな』
優希『京太郎……』
京太郎『ここまで付き合ってくれてありがとな、優希』
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京太郎「……夢?」
京太郎「ったく決勝って気の早い話だな……まっ、それだけみんなを信じてるのかもしれねぇけど」
京太郎「さて、とそれじゃあタコス作り再会といきますか! ちょっと待ってろよ優希」
優希「はーい」
京太郎「こういう時は素直なんだな……」プルルルルル
京太郎「また電話?」ガチャッ
京太郎「はい、もしもし?」
???「…………?」
京太郎「はい? 今なんか言いましたか?」
???「…………」
京太郎「あの、昨日を思ったんですけどあなた誰ですか? いたずらならいい加減にしてくださいよ」
???「…………」ガチャッ
京太郎「切れた……なんなんだよ、気分悪いな……タコス作ってさっさと忘れよう」
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京太郎「どうよ?」
優希「モグモグ……80点だじぇ」
京太郎「後20点か……先はまだまだ長いな」
優希「それを理解できただけでも十分成長したじぇ」
京太郎「そんなもんかね。 まあいいや、俺はひたすらタコス作りに励むだけだからな」
--京太郎が作ったタコス・300個--
???「なんとかしなきゃ、なんとかしなきゃ……」ブツブツ
京太郎「ど、どうだ?」
優希「モグモグ……」
京太郎「……」
優希「最初に比べたら成長したな京太郎……90点だじぇ」
京太郎「いよっし! ようやくここまで来たか!」
優希「なんだか最近は、私の挑戦じゃなくて京太郎の挑戦になってる気がするじょ」
京太郎「あはは、確かにそうだな」
優希「タコスがいっぱい食べられるのは嬉しいからいいけどな!」
京太郎「なら100点満点になるまで頼むぜ、優希審査員?」
プルルルルル……プルルルルル……
優希「……また電話?」
京太郎「ああ、いい加減鬱陶しいな」ガチャッ
京太郎「もしもし?」
???「…………」
京太郎「はあ……おい、本当いい加減にしろよ」
???「……!」
京太郎「誰だかしらねぇけど、ここんとこいっつも電話かけてきやがってさ……こっちはいい加減迷惑なんだよ」
???「……!?……!……!」
京太郎「今度かけたら警察呼ぶからな!」ガチャッ
京太郎「ったく……電話線抜いとくか」
京太郎「はあ……この電話さえなきゃいい気分なんだがなあ」
???「……電話線が抜かれました」
???「そんな……和ちゃんどうにもならないの?」
和「アプローチを帰る必要がありそうですね……いったん帰りましょう咲さん」
咲「うん……」
京太郎「……なんだよ、これ」
受信メール30件、着信40件
京太郎「全部同じアドレスと番号……内容は家の電話みたいな無言電話とメールは意味不明の単語の羅列」
京太郎「本当になんだよ、これ……気持ち悪い」
京太郎「削除して拒否に放り込んどくか……くそっ、寒気がするぞ」
京太郎「こんな時はタコス作って気を紛らわせねぇと……心配させたくねぇし優希には電話やメールについては黙っとこう……」
--京太郎が作ったタコス・400個--
京太郎「……これはどうだ?」
優希「……99点」
京太郎「いよっしゃあ!!後1点、ついにここまで来たぜ!」
優希「京太郎も本当に成長したじぇ……ご主人様は嬉しいぞ」
京太郎「誰がご主人様か。 だけどそうか、後1点で……長かったな」
優希「頑張れ京太郎、ここまで来たら私をあっと言わせるタコスを作り上げるのだ!」
京太郎「任せとけ!」
--京太郎が作?た-?ス・500?--
咲「電話もメールも着信拒否されてる……和ちゃん、どうしよう……?」
和「須賀君……急がないと、いけないかもしれませんね」
優希『やった、やったじぇ京太郎! 清澄の優勝だじぇ!』
京太郎『ああ、やったな優希!』
優希『白糸台も出来なかった全国三連覇……清澄は成し遂げたんだ!』
京太郎『こりゃお祝いにタコスパーティーだな!』
優希『そうだな! みんなも呼んでパーッと派手にやるじぇ!』
京太郎『よっしゃ、任せとけ! ついでにお前から満点も取ってやるからな!』
優希『ふん、やれるものならやってみろ!』
???『……やめろ』
----
京太郎「……!?」
京太郎「なんだ、今の夢……?」
京太郎「どうだ?」
優希「99点」
----
京太郎『悪かったな、お前には随分俺のわがままに付き合わせちまった』
優希『タコスがいっぱい食べられたから気にしてないじぇ』
京太郎『俺が気にすんだよ』
優希『うーん、なら1つだけお願いを聞いてほしいじょ』
京太郎『お願い? いいぜ、何でも言ってくれよ』
優希『じゃあ……デート、してほしいじょ!』
???『やめろ』
--京太郎が??たタ?ス・600?--
京太郎「どうだ?」
優希「99点」
----
京太郎『デートしてくれねぇ……あいつにしてはかわいらしいお願いじゃないか』
京太郎『でもこれじゃ、あいつのお願い聞いたのに俺も得しちゃってるんだよなあ』
京太郎『……今度は俺から誘うか』
???『やめろ、やめろ……』
--京太郎が??た??ス・7?0?--
京太郎「どうだ?」
優希「99点」
ピーンポーン……
----
優希『んー、今日は楽しかったじぇ!』
京太郎『そりゃ良かった。 お前を満足させるために頑張った甲斐があったわ』
優希『なんだ? もしかして京太郎も楽しみだったのか?』
京太郎『……』
優希『まあ、そんなわけないか。 だって京太郎の好みは……』
京太郎『そうだって言ったらどうする?』
???『やめろ、やめろやめろやめろ』
--京太郎が??た???・?00?--
京太郎「……材料切れた、買ってこないと……」
優希「99点」
----
優希『……え?』
京太郎『俺達、なんだかんだでほとんど一緒にいたよな。 地区予選の時も、一年の全国の時も、部長の卒業式の時も、全国二連覇した時も、色んな行事の時も……今日、白糸台すら出来なかった全国三連覇を果たした時も』
???『やめろやめろやめろやめろやめろ』
--京太郎が??????・???--
京太郎「頭が痛い……それでも作らねえと……作らねえと俺は……」
優希「……」
ピンポーン、ピンポーン……ドンドン!!
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優希『あっ、えっ、京太郎……?』
京太郎『あのな、優希……言いたい事があるんだ』
???『やめろ、やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ』
--京太郎が??????・????--
京太郎「……」
ピンポンピンポンピンポーン
ドンドンドンドンドンドンドン!!
----
優希『ま、待って!』
京太郎『……?』
優希『えっと、もし京太郎の言葉が私の想像通りならちょっと待ってほしいんだじぇ……』
京太郎『なんで?』
優希『い、今の私は……その言葉をまだ聞けないような気がするから』
京太郎『そんなこと!』
優希『だから、明日! 私の家に来てほしい……』
京太郎『えっ?』
???『やめろ、やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!』
--京太郎が??????・??月--
京太郎「……」
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン
ドンドンドンドンドンドンドンドン!!
キョウチャン、アケテ! サキサン、ヤッパリヨウスガ…
----
優希『そ、そこで私の答えを返すから……ダメ?』
京太郎『なんだよ、らしくないな……わかったわかった、行くよ』
優希『……ありがとう京太郎。 それでこそ--』
??郎『お願いだからやめて、くれ……』
--京太郎が??????げた日から??月--
京太郎「ああ……」
ドンドンドンドンドンドン、ガチャガチャ、バキッ!!
ア、アイチャッタヨ! スガクンニハアトデアヤマリマショウ、サキサンイソイデ!!
----
京太郎『えっと、あそこだな』
優希『京太郎ー!』
京太郎『優希の奴、わざわざ家の前で待ってたのかよ……かわいい奴だな、全く』
優希『……京太郎っ、危ない!!』
キキィィィィ!!
京太郎『は?』
?太郎『やめてくれ、お願いです、やめて……』
--京太郎が優?の?から逃げた日から?ヶ月--
京太郎「そうだった……」
----
優希『京太郎、ダメー!!』ドンッ
京太郎『あっ……』
優希『京--』
グシャッ!!
京太郎『やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!』
----
咲「京ちゃん!!」
和「須賀君!!」
京太郎「……」
咲「京ちゃん……」
和「な、なんですかこれ……腐ったタコスが山積みになって……うっ!」
咲「和ちゃん、大丈夫!?」
京太郎「ああ、そっか……そうだったんだ」
咲「京、ちゃん?」
京太郎「優希は……
俺が、殺したんだ……」
--京太郎が優希の死から逃げた日から、1ヶ月--
咲「京ちゃん……」
和「ごほっ、須賀君、やっぱりあなたはまだ……」
京太郎「馬鹿か俺は、自分で優希殺しときながらそれを忘れるとかありえねぇだろ」
咲「ち、違うよ京ちゃん! 優希ちゃんを死なせたのは居眠り運転の車で、京ちゃんじゃ……」
和「そうです須賀君……優希だってきっとあなたを助けられて良かったと--」
京太郎「気休めなんかいらねぇんだよ!!」ガシャーン!!
咲・和「!!」ビクッ
京太郎「確かに殺した直接の犯人は優希を轢いた後、電柱に事故って死んだ車の運転手だ!!」
京太郎「だけどそれがなんだって言うんだよ、俺があの時もっと気をつけてれば、俺が優希の家にもっと早く行ってれば、そもそも……あの日、あいつに告白なんかしようとしなければ優希は、死なずにすんだんだっ!!」
京太郎「俺が……俺が、あいつを殺した原因の大部分であるのに、変わりはねぇんだよ」
咲「京ちゃん、包丁なんか持って何を……!」
和「まさか……やめてください須賀君!」
京太郎「もう疲れた……そういや結局、あいつから満点もらえなかったな……俺は最後まで半人前、か」
???「ダメだ、京太郎!」
咲「えっ……」
京太郎「……!」
ザクッ
咲「京ちゃああああああん!!」
和「あっ……き、救急車、呼ばないと……」
--病院--
咲「京ちゃん……」
和「お医者様の話ではギリギリ急所は外していたらしいです。 ただまともに何も食べていなかったらしく栄養失調の状態ですし、目覚めた後一度壊れた須賀君の心が元に戻るかはわからないと……」
咲「助かったのなら、それで私は十分だよ……それにしても京ちゃん、どうしてあんなにタコス用意できたんだろ……」
和「……咲さん、これは私が出た後お医者様が看護士さんと話していたんですが」
和「須賀君、内臓がいくつかないらしいんです」
咲「……えっ?」
和「私も信じられなかったんですが……須賀君、腎臓などの2つある内臓はもう1つしかない状態らしくて……」
和「須賀君があれだけのタコスを作る資金がどこから来たのか考えれば……そういう、事なんでしょうね」
咲「そんな……」
和「ペットのカピバラも売ったみたいです……救急車を読んだ後見てみた須賀君の部屋から、カピバラ宛てにごめんってたくさん書いてある手紙がありましたから」
咲「京ちゃん、そこまで思い詰めてたんだ……」
咲「京ちゃん、優希ちゃんのお葬式で『俺には泣く資格なんかない』って言ってたのに……なんで私、気付いてあげられなかったんだろう」
和「咲さんだけの責任じゃありません……私なんて、葬儀の時泣いていない須賀君の事、冷たい人間だと勘違いしてしまったんです」
和「私は何も見えてなかった、泣く事すら出来なかった須賀君の心の悲鳴を……これじゃあ優希に申し訳が立ちません……」
咲「京ちゃん……あれ?」
和「どうしました、咲さん」
咲「なんか、京ちゃんの病室辺りが騒がしくないかな?」
和「そういえば……」
咲「私、ちょっと見てくるね!」
和「あっ、私も行きます!」
咲(私達が、治療したばかりの京ちゃんが病室からいなくなったと聞かされたのは、そのすぐ後の事でした)
咲(そして懸命の捜索が行われても、京ちゃんは見つかりませんでした)
咲(京ちゃんにプレゼントされて旅行に行っていたという京ちゃんの両親の泣き顔が、今でも……脳裏から離れません)
--数ヶ月後・墓地--
咲「……京ちゃん、今日はね、私達の卒業式だったんだ」
咲「竹井先輩や染谷先輩も駆けつけてくれて、お祝いしてくれたよ」
咲「私は麻雀のプロ選手に、和ちゃんは大学に行く事になって離れ離れになっちゃったけど、連絡は頻繁に取っててひとりぼっちじゃないから安心してね」
咲「ねぇ、京ちゃんはどうしてるのかな? 優希ちゃんの所に行っちゃったの?」
咲「みんなは京ちゃんが自殺したって思ってるみたいだけど、私はそうは思わないんだ」
咲「和ちゃんにはきっと否定されちゃうから言わなかったんだけど、私見たから」
咲「京ちゃんが包丁を胸に刺そうとした時、優希ちゃんが京ちゃんの腕をつかんだの」
咲「そのおかげで京ちゃんは助かった、京ちゃんも一瞬ビックリしてたからわかってるんだよね?」
咲「だからこんなお墓に話しかけても、京ちゃんには何も届かないって私信じてるよ」
咲「京ちゃんはこの空の下で今も優希ちゃんを想いながら生きてるって、信じてるから」
咲「また、どこかで会おうね京ちゃん……」
--長野県内・某所--
店主「……」カチャカチャ
「あれ、こんなところにタコスのお店なんてあったんだ?」
「珍しいねー、食べてこっか?」
「そうだね!」
店主「いらっしゃい」
「タコス2つくださーい」
店主「わかりました、少々お待ちください」
「ねぇねぇ、見た?」
「うん、店員さんすごく若かったね」
「大学生くらいなのかな?」
「それでお店持つなんてすごいねー」
店主「お待たせいたしました」
「あっ、ありがとうございます。 あのー」
店主「はい、なんでしょう?」
「ここって店員さんが1人でやってるんですか?」
店主「はい、色々ツテもありましてこの店は1人で経営してるんです。 お客様もそれなりに来ていただいてますよ」
「そうなんですか……」
「うわっ、これすごく美味しい! 私こんなの初めて食べたよ!」
「そんなに美味しいの? どれどれ……本当だ、すごく美味しい」
店主「ありがとうございます」
「何か隠し味とかあるんですか?」
店主「いえいえ、タコス好きの知り合いから自分から満点を取るまで、余計な事はしない方がいいと教えられてますから」
「えー、こんなに美味しいのに」
店主「今99点だから後1点なんですけど……まだまだ俺には修行が必要なんでしょうね」
「へぇ、じゃあ満点取れるように私達も応援してますね!」
店主「ありがとうございます」
----
「じゃあまた来まーす」
「今度は友達連れてきますねー」
店主「ありがとうございました、またのご来店をお待ちしております」
カランカラン……
店主「……」
店主「応援されても無理なんだよなあ……あいつはもういないんだから」
店主「……だからこっちで頑張って修行して、お前の所に行ったら速攻満点叩き出してやるからな」
???「うむ、何十年でも待ってるじぇ! だからせいぜい長生きしておけよ!」
店主「えっ……」
店主「気のせいか……」
店主「……二度も助けてくれてありがとうな、優希」
店主「そういえば優希の奴、あの時俺のために家で弁当作ってたんだってな。 それを俺のタコスと交換して告白の返事にしようとしてた、なんて乙女らしい所もあるじゃねぇか」
店主「そっちに行ったら最高のタコスと一緒に言えなかった言葉言うから、その時にお前の弁当と返事もらうから」
京太郎「だからもうちょっとだけ待っててくれよな、優希……」
カン!
一応補足すると京太郎は最初の時点で既に狂ってる状態
カピバラと内臓売ったお金でタコスを作ってはただ腐らせていく日々
電話はもちろん咲和コンビ、京太郎自身が優希の死にふれそうなものをシャットアウトしていたので電話が聞こえなかったりメールの文面がめちゃくちゃだった
だけど自殺を優希に止められて一応短い時間を前向きに生きていく努力はし始めた
以上補足も終わり、本当にカンだじぇー
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