ほむら「…身体がダルいわ…はあ…」 (63)


~ほむらの家~


ほむら「……う、うう…」


ほむら(起きたはいいものの…身体がやけにダルいわ…)

ほむら(あ、頭も重いし…痛い…!)


ほむら「も、もしかして…風邪…?」

ほむら(どうして…?悪魔の私が風邪なんか…!!)

ほむら(確かに時期ではあるけれど…というかどうして悪魔が風邪なんか引くのよ…!)


ほむら(くっ…!)

ほむら(こんなことで負けてられてられないわ…!)

ほむら「とりあえず起きないと…!」

…バッ

ほむら「…はあ、はあ…はあ…」
フラフラ


ほむら(うう…寒い…!)


ほむら「とりあえず熱だけでも計って…」


………
ピピピピッ
ピピピピッ


ほむら「…!」

ほむら(38.9°…これはちょっとまずいわね…)

ほむら(今日の学校は無理のようね…仕方ないわ)

ほむら(一日大人しく寝てましょう…)

ほむら(悪魔の休日ってとこね)

ほむら(明日まで響くと、それこそ厄介だわ…)

ほむら「……」


ほむら(それにしても、なぜ悪魔にまでなった私が風邪を…)

ほむら(まさか、まだ生きてたのかしら、私の病弱設定…)

ほむら(それとも、美樹さやかのお年玉を盗ったから…?)

ほむら(ふっ、まさかね…)


ほむら「…うう…うっ」


ほむら(薬は飲んだけども、まだ眠くない…)

ほむら(でも眠らないと治らないわ…!)

ほむら(…なんでもいいから、早く治ってちょうだい…!)



ほむら「はあ…今頃まどかは何をしてるのかしら…」

~見滝原中 教室~



まどか「…ほむらちゃん、お休みだって…」

さやか「珍しいね、あいつが休むなんて」

杏子「へえ、アイツも風邪とか引くもんなんだな」

まどか「杏子ちゃん、それ失礼だよっ」

杏子「いや~だって、アイツが休むなんて珍しいからさ」

まどか「大丈夫かなあ…ほむらちゃん」

さやか「大丈夫でしょ、アイツのことだし」

まどか「…私、放課後、ほむらちゃんの家に行くよ」

さやか「ええ~そこまでしなくても大丈夫でしょ」

まどか「でもプリントとか誰かが持ってってあげないと…!」

杏子「相変わらずまどかはいい奴だよなあ~」

まどか「友達として当然だよ~」

~ほむらの家~


ほむら「……」

ほむら「…はっ」


ほむら(だいぶ寝ていたようね…時間は…もう4時ね…)

ほむら(朝よりは…少し楽にはなったけど…)


………
ピピピピッ
ピピピピッ


ほむら「……まだ38°ある…」


ほむら(…どうしましょう…病院にいっても仕方ないでしょうし)

ほむら(とりあえず、今夜も寝て、明日の朝の状態で判断しましょう…)

ほむら「……」

ほむら(それにしてもこんなときって暇ね…)

ほむら(身体はダルくて何もする気は起きないけど、さっきまでずっと寝てたわけだし)

ほむら(もう眠気なんて微塵もないわ…)

ほむら(話す相手でもいたら…暇潰しにはなるのだけど…)

ほむら(いけないわ、こんなこと考えたら)

ほむら(私は悪魔…悪魔は孤独…孤独で当然なのよ…!)

ほむら(というより、話相手なんかいたら、その相手に風邪がうつってしまうし)

ほむら(流石にそれは申し訳ないわ)

ほむら「…ん?」



ほむら(そういえば話相手になっても風邪がうつらないような存在がいたわね…)

ほむら(あの白い塊が…)

ヒョイッ
QB「やあ」


ほむら「消えなさい、現れていいと許可を出したかしら?」


QB「許可も何も、この世界では君が思ったりしたことが現実になるんだろ?」

QB「そして、今君は自分の頭の中で僕のことを想像してくれた」

QB「だから現れるのは当然じゃないか」


ほむら「じゃあ、今すぐ消えなさい」


QB「待ってくれ、久しぶりに出てきたんだから…」


ほむら「この世界で私の意志に叛いた場合、どうなるかは知ってるわよね?」

QB「…わかったよ、でも何度も言うように僕を何体殺しても…」


ほむら「今日はボロ雑巾がいいかしら?」

ほむら「それとも蜂の巣?」

ほむら「あ、すりおろしでもいいわね」

ほむら「でも、一番は子どもたちと遊んでくれた方が助かるわ」


QB「ひっ、きゅっぷいっ」


QB「いいよ、そこまで言うなら僕は魔獣退治にでかけるよ」


スッ…

ほむら「…」


ほむら(本当に憎たらしいわね…どうして私が創り変えた世界なのに)

ほむら(あんな奴がまだ存在してるのよ…!)



ほむら「はあ、はあ…」


ほむら(ちょっと感情的になりすぎてしまったわ…)

ほむら(急に身体が重くなってきた…とりあえずベッドに入りましょう…)

………


ほむら「……」


…ピンポーン


ほむら「……ん?」


ほむら(ようやく寝そうだったのに…誰かしら)


…スタスタ

ガチャ…

ほむら「…どちらですか」


まどか「あ、あの、ほむらちゃん…?」

まどか「大丈夫…?」

ほむら「」

…バタン



まどか「えっ?」


まどか「えっ!?ほむらちゃん!?ほむらちゃん!?」

ほむら「……」


ほむら(正直予想はしてたけど、どうしてあの子だけなのかしら…)

ほむら(よく考えてみたら、なぜこの世界はやけにまどかと二人きりになるイベントが多く発生するの…?)

ほむら(本当にこの世界が私の望んだ通りのことしか起こらない世界なのなら…)

ほむら(私がそれを…望んでいるってこと…?)

ほむら(いえ、私が望んでいるのは…まどかの幸せだけのはず…!)

ほむら(たとえ、まどかの敵になったとしても…私は…あなたの…!)


『ほむらちゃんっ!ほむらちゃんっ!』



ほむら「!」


ほむら「ご、ごめんなさい、まどか…!」

ほむら「とってもありがたいわ…でも、風邪がうつっちゃうかもしれないし…」




『そ、そんなこと気にしないよっ…私…ほむらちゃんのこと心配で…』



ほむら「……で、でも」


『それに、みんなもほむらちゃんのこと心配して、たくさんいろいろ持たせてくれんだよっ』



ほむら「……っ」


ほむら(だ、ダメよ…まどか…!)

ほむら(これ以上優しくされると…私はあなたに甘えてしまう…!)




『…わ、私もほむらちゃんとお話したいよ、学校で会えなかった分、お話したいよっ』




ほむら「……」


ほむら(やっぱり…私はダメね…)


…ガチャ

…………


まどか「…ほむらちゃんは、寝てて」

ほむら「……」

まどか「ごめんね…でも、ほむらちゃんのことすごく心配で…」

ほむら「…ごめんなさい、心配させて…」

まどか「ううんっ、ほむらちゃんが謝ることなんて何もないよっ」

まどか「友達なんだから、当然だよ」

ほむら「……」


ほむら(ああ…この子は本当に天使ね…)

まどか「うぇひひっ、みんなほむらちゃんのこと心配してくれて…」
ゴソゴソ

まどか「こんなにいろいろ持たせてくれたんだあ…」


まどか「さやかちゃんがね、よくわからないんだけど…」

まどか「かぼちゃとラズベリー持ってけば、ほむらちゃんが元気出すからって言ってね」

まどか「かぼちゃパンとラズベリーのジャム買ってきてくれたんだっ」

ほむら「…あ、ありがとう…」


ほむら(美樹さやか…!あなたには…いつか相応のお返しをしてあげるわ…)

まどか「でね、このリンゴはもちろん杏子ちゃんから」

まどか「風邪のときにはリンゴはすごくいいんだって、杏子ちゃんが言ってたよっ」

まどか「あとで剥いてあげるね」

ほむら「う、うん…ありがと」

まどか「最後はマミさんとなぎさちゃん、来るときにマミさんとこに寄ってきたんだ」

まどか「マミさんは風邪に効く紅茶を水筒に入れてくれて、なぎさちゃんはチーズをくれたんだあ」

ほむら「そう…みんなにありがとうって…伝えてて、まどか」

まどか「うんっ、もちろんだよっ」

まどか「ほむらちゃん、それで、具合はどうなの…?」

ほむら「ええ…ちょっとまだ熱が…」

まどか「…そっか、大丈夫?」

まどか「何か食べれそう?」

ほむら「…なんとか」

まどか「じゃあ、杏子ちゃんのリンゴ剥いてくるね」

ほむら「…ええ、ありがと…」


ほむら(ああ…なんて優しい子…)

ほむら(病気のことなんて忘れてしまいそうだわ…)

…………


まどか「はーい、お待たせ~」

まどか「ついでに、マミさんの紅茶とさやかちゃんのパンとジャムも持ってきたよ」

まどか「うぇひひっ、ほら、ほむらちゃんっ、うさぎっ!」

ほむら「上手に切れたわね、とっても可愛いわ」

まどか「うんっ、ママにね、教えてもらったんだ」

まどか「あ、でも、ほむらちゃん、一人で食べれる?」

ほむら「う、うん…」

まどか「ええ~残念だなあ、食べさせてあげようと思ったのに~」

ほむら「…え、あ…じゃ、じゃあ…」


ほむら(ダメよ…私…これ以上まどかに甘えてしまうわけには…!)


ほむら「…い、いや、そんなことしたらまどかに風邪がうつってしまうわ…」

まどか「ええ~そんなこと気にしないでいいのに~」
…モグモグ

まどか「うぇひひっ、そう言えばクリスマスは私が看病してもらったよね」

ほむら「あ、あのときは…」カアア…

まどか「どうして顔赤くしてるの?ほむらちゃん」

ほむら「だ、だって…あのときはまどかが…」

まどか「私は何もしてないよ?ただ、ほむらちゃんが…」

まどか「私のこと、好きだって言ってくれて…」

ほむら「…わ、私は…まどかが聞いたから、答えただけで…」

まどか「ええ~、じゃあほむらちゃんは私のこと嫌いなの?」

ほむら「そ、そんなわけないわ…!」

まどか「うぇひひっ、良かった、私もほむらちゃんのこと好きだよ?」

ほむら「……」カアア

まどか「またいつかほむらちゃん家にお泊りしていいっ?」

ほむら「う、うん…もちろん…」

ほむら「でも、今日は…もうそろそろ…」

ほむら「あんまり長くいると、本当にまどかに風邪をうつしてしまうわ…」

まどか「…そうだね、ごめんね、無理に押しかけちゃって…」

ほむら「ううん、本当にありがとう…」

まどか「じゃあ、明日は学校で待ってるね、お大事に」

ほむら「うん、じゃあ…」

ほむら「…はあ」


ほむら(どうしてあの子はあんなに優しいのかしら…)

ほむら(それに今日のあの子はやけに積極的だったような…)


ほむら(この世界が本当に私が望んだことが実現する世界なのなら…)

ほむら(私は…積極的なまどかを望んでいる…ということ…?)

ほむら(はっ!)

ほむら(私は”受け”なの…!?)

ほむら(ど、どうしてよ…!普通に考えて私は悪魔なのだから、受けはおかしいわ…!)

ほむら(というか私は何を考えているの…!)


ほむら(私は別にあの子との関係はどうでもいいのよ…)

ほむら(あの子が幸せにさえ、なってくれさえすれば…)



ほむら(とりあえず…明日まで休むわけにはいかないわ…)

ほむら(寝ましょう…)

翌日
 ~ほむらの家~



ほむら「う、うう…朝ね…」

ほむら(さすがに今日は学校にいかないと…)
…スタスタ

………
ピピピピッ
ピピピピッ


ほむら「!」


ほむら(熱はまだ37.9度…ほとんど下がってないじゃない…!)


ほむら「…うう、でも仕方ないわ…」

ほむら「イブでも飲んでいけば、大丈夫よね…きっと…」


~教室~



まどか「あっ、ほむらちゃんっ、おはよ」

ほむら「お、おはよ、まどか…」

まどか「…具合、大丈夫?ほむらちゃん…」

ほむら「ええ、なんとかね…まどかが来てくれておかげよ…」

まどか「うぇひひっ、そんなことないよっ」

スタスタ…
さやか「あ、ほむら今日は来てたんだ、元気になったー?」

さやか「あたしのラズベリーとかぼちゃパンが効いたんだねえ」ニヤニヤ

ほむら「…そ、そうね…あ、ありがとう…」


ほむら(私が病み上がりなのをいいことに調子に乗ってるわね…美樹さやか…!)


杏子「いや、アタシのリンゴが効いたんだって、なあ、ほむら」

ほむら「リンゴもおいしかったわ…ありがとう…」

まどか「うぇひひ、とりあえず元気になって良かったよ~」


ほむら「……」

ほむら(大丈夫だわ…この調子でいけば、一日くらい…)

昼休み
 ~屋上~


マミ「あら、暁美さん、もう風邪はいいの?」

ほむら「…はい、なんとか」

ほむら(…うう、朝より少し頭が重くなってきたような…)

ほむら「それより、紅茶…ありがとうございました…」

マミ「いいのよ、元気になってくれたのなら良かったわ」

マミ「さあ、みんなお昼にしましょう」

さやか「いえーい」
モグモグ…

まどか「あれ、ほむらちゃん、お弁当は?」

ほむら「…私は今日はいいのよ、朝しっかり食べてきたから…」

まどか「で、でも、お腹減らないの?」

ほむら「ええ…大丈……」

さやか「ああ、ダメだぞ!ほむら!病み上がりなんだし、しっかり食べないと!」

ほむら「え…」

さやか「ほらほら、みんな!ほむらが元気になるようにおかずをわけてあげよう~っ」

マミ「そうね、はい、私のサンドイッチ…好きなの選んで、暁美さん」

まどか「そうだね、さやかちゃんの言うとおりだよ、はいっ、ほむらちゃん、からあげっ」

杏子「ったく、仕方ねーなあ、購買のパン一個やるよ」

さやか「じゃあ、あたしはこれとぉ、仕方ないから、おにぎりも一個あげちゃうよ~」

ほむら「え、あ、ああ…」


ほむら(無理して学校にまで来てるのに…い、今こんなに食べたら、間違いなく…下すか戻してしまうわ…!)

ほむら(私の状況を知りもしないで、あんな提案をして…!美樹さやか…!嫌がらせのつもりなの…!?)

ほむら(で、でも皆の行為を無駄にするわけにはいかないし…断ればまどかも悲しんでしまう…!)


ほむら「あ、ありがとう…みんな…」
…モグモグ

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