花陽「ハッピーバースデイ、ディア …………私」 (33)


━━かよちんち

カチッ…カチッ…カチッ…カチッ

花陽「……」

カチッ…カチッ…カチッ…カチッ

花陽「……」ソワソワ

カチッ…カチッ…カチッ…

ゴーンゴーン

花陽「!」

花陽「……」チラッ

iPhone 『00:00 1月17日金曜日』

花陽「……えへへ」

花陽「ハッピーバースデイ、ディア …………私」

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花陽「……って私何言ってるんだろ///」カアアッ

花陽「うぅ、恥ずかしくなってきちゃった……深夜だと何だか変なこと口走っちゃったりするもんなぁ……」

花陽「今日はもう寝ちゃおうかな」

ブーブー

花陽「ひゃ! め、メール?」ススッ

『花陽ちゃん誕生日おめでとー!(≧∇≦)』

『誕生日おめでとうございます、花陽』

『かよちゃんお誕生日おめでとう(・8・)』

『起きてるか分からないけど一応送っとくわ、誕生日おめでとう花陽』

『にっこにっこにー♪ プレゼント楽しみにしときなさいね!』

『プレゼントかぁ……ウチは何にしようかなぁ……』

『誕生日おめでとう花陽。今日は部室でパーティの予定だから楽しみにしててね』

花陽「わぁ…みんなからお祝いのメールがたくさん……えへへ、嬉しいな♪」

花陽「あれ?……希ちゃんのメールだけ何だか変な気が…」

花陽「……」

花陽「あ、あんまり深く考えちゃダメだよね! うん!」

花陽「……凛ちゃんからは来てないみたい」

花陽(凛ちゃん、夜更かし苦手だもんなぁ。ちょっぴり残念だけどしょうがないよね。きっと凛ちゃんのことだから朝会えばお祝いの言葉をくれるだろうし)エヘヘ

花陽「さて、そろそろ寝ちゃおうかな」ポフッ

花陽「……」スー…

……ーン…

花陽「……?」

花陽(今何か聞こえたような……)

カ……チーン……

花陽(や、やっぱり聞こえる……こんな時間に誰……? も、もしかして泥棒!?)

チーン……チーン……

花陽(ひいぃっ! だ、だれかたすけてー!)

カヨチーン!

花陽(……あれ? この声は……)

バァーン!

花陽「!!??」

凛「颯爽と凛が登場にゃ! 誕生日おめでとうかよち……ん?」


花陽「……」シロメ


凛「かよちーーーーーん!?」


━━

凛「ご、ごめんねかよちん……驚かそうとしてたのは確かなんだけど、あんなにびっくりされるとは思わなくて……」

花陽「びっくりするに決まってるよぉ! いきなりクローゼットの中から凛ちゃんが飛び出してくるんだもん! 心臓止まるかと思ったよ!」

凛「いやぁ~、忍び込んだはいいけどうっかり寝過ごしちゃって……気づいたら日付が変わってたから慌てて出てきたのにゃ!」

花陽「凛ちゃん……なんでそこまでして……」

凛「かよちんの誕生日だもん! こう……わーって驚かせようと思ってサプライズを用意したんだよ」

花陽「ふ、普通にお祝いしてくれればいいのに……」

凛「だめだめ! 今日ほど特別な日もそうないにゃ、思いっきり騒がなきゃダメにゃー!」

花陽「え、えぇぇ?……それよりいつの間にクローゼットの中に……」

凛「凛は今日練習早引けしたでしょ?」

花陽「う、うん」

凛「そのあとかよちんの家に向かってクローゼットの中に入ったの」

花陽「……凛ちゃん、私の家に不法侵入したの?」

凛「かよちんなら笑って許してくれると思ったのにゃ!」

花陽「おかしいよぉ……今日の凛ちゃん変だよぉ……」

凛「それより誕生日おめでとうかよちん!」

花陽「あ、ありがとう……」

花陽(凛ちゃん……クローゼットの中にずっと入っていたのと深夜っていう時間帯の合わせ技で変なテンションになってる気がする……)

凛「じゃあさっそく凛からプレゼントふおーかよちんにゃ!……えーっと」ゴソゴソ

花陽(すごい大きな袋……)

凛「まずはこれ! お米十キロにゃ!」

花陽「わぁ……! ありがとう凛ちゃん!」

花陽(これは普通に嬉しいなぁ……でもよく持ってこれたね凛ちゃん)

凛「そしてお次はこれ、アルパカの顔が描いてあるしゃもじ!」

花陽「か、可愛い……!」

凛「最後は凛の抱き枕にゃ!」

花陽「わぁ~……えぇ!?」

凛「これを凛だと思って抱いて欲しいにゃ……///」ポッ

花陽「ポッ、じゃないよ! 何でこれを……ていうかどこに売ってたのこれ!?」

凛「ことりちゃんに頼んだら作ってくれたよ?」

花陽「えぇぇ!?」

凛「ことりちゃんもやたら乗り気だったにゃー」

花陽(あんの雌鳥があぁぁぁぁ!!)

花陽(……はっ! 思わずことりちゃんに暴言を……! やっぱり深夜は怖い……!)

花陽「と、とりあえずありがとうね凛ちゃん。抱き枕の扱いに関しては考えておくよ……」

凛「喜んでもらえてよかったにゃー」

花陽「それよりもう遅いし……家に戻った方がいいと思うよ?」

凛「大丈夫! 今日はかよちんの家に泊まるっていってあるから!」

花陽「わ、私は聞いてないよ!?」

凛「事後承諾にゃー」

花陽「もう確定してるのぉ!?」

凛「うん、かよちんに拒否権はないよ!……それでは語り合うにゃ!」

花陽(やっぱりおかしい……凛ちゃんはここまで非常識じゃないよ……)

花陽「……って語り合うって何を?」

凛「今日でかよちんもまた一つ大人になったでしょ?」

花陽「うん、そうだけど……」

凛「そこでかよちんの半生を振り返るのにゃ!」

花陽「ま、まだ私高校生だよ!? もう半分いっちゃったの!?」

凛「とにかく、時が移ろうのは早いのにゃ。先を急ぐことも大切だけど時には後ろを振り返ることも大事なのにゃ」

花陽(り、凛ちゃんがそれっぽいことを言ってる……)

凛「さぁ、お菓子や飲み物もたっぷり用意してきたし存分に話そうよ、かよちん!」

花陽「うぅ、分かったよぉ……」

花陽(今日の凛ちゃんには何を言ってもダメそう……)

凛「思えばかよちんとも長い付き合いだよね」パクパク

花陽「うん、最初に会ったのはもう十年近く前だよね」

凛「かよちんは初めて会った時からおどおどしてたにゃー」モグモグ

花陽「や、やっぱりそうだったのかな……」チラッ

凛「うんうん、第一印象は生まれたての子鹿さんだったにゃー」モリモリ

花陽「そ、そんなにプルプルしてたかな私……それより凛ちゃん」

凛「なに?」パリパリ

花陽「夜中にそんなにお菓子ばっかり食べてると太っちゃうと思うよ?」

凛「凛はあんまりお肉つかないから大丈夫にゃー」ゴクッゴクッ

花陽「……うぅ」

花陽(これは辛いよ……生殺し状態だよ……今ダイエット中なのに……)

凛「んー、このお菓子おいしいにゃー」

花陽(凛ちゃんも全然気遣ってくれないし……お菓子食べるのがメインになってる気もするし……)

凛「あ、かよちんの昔話するんだっけ?」

花陽「あ、思い出したんだね……自分で言ってたのに……」

凛「あはは、お菓子に夢中で忘れてたにゃー。そうだなぁ、かよちんとの昔話……あ、小学三年生の時の誕生日覚えてる? かよちん」

花陽「え? 小学三年生……」



━━かよちん小学三年生の時の1月17日

キーンコーンカーンコーン

りん「わーい、学校終わったー! かーよちん、かーえろ!」

はなよ「あ、うん。ふふ、凛ちゃん何だか元気だね」

りん「もっちろん! だって今日はかよちんの誕生日パーティがあるんだよ? テンションが上がってしょうがないよー!」

はなよ「そ、そうかな……私の誕生日パーティでそんなに……」

りん「かよちんの誕生日パーティだからだよ! こんなにおめでたいことはなかなかないよー。美味しいものもいっぱい食べられるし!」

はなよ「えへへ、ありがとう凛ちゃん。でも食べ物の方が凛ちゃんにとっては大事なんじゃない?」

りん「……」ウーン…

りん「そんなことないよ! かよちんの誕生日だから凛は嬉しいの!」

はなよ(い、今だいぶ間が空いたよ凛ちゃん……)

りん「さぁ、はやくかえろ。誕生日プレゼントもばっちり用意したから楽しみにしててね!」

はなよ「……うん、楽しみにしてるね♪」


━━

凛「どう? 思い出した?」アムアム

花陽「あー……あったようななかったような……」

凛「もう、凛はばっちり覚えてるのにかよちんは忘れちゃったのー?」モグモグ

花陽「だって小学三年生の時の記憶なんてもうあんまり残ってないよ。それにそこだけじゃまだよく分からないし……」

凛「分かったよ。かよちんが思い出せるように詳しく詳しく話していくにゃ」ムシャリムシャリ

花陽「……ねえ、凛ちゃん。食べるか話すかどっちかにしない?」

凛「えっ、何でー?」パックパック

花陽「カーペットにお菓子がこぼれまくってるんだよ……」

凛「ふふ、蟻さんが片付けてくれるよー」グビッ

花陽(傍若無人……今の凛ちゃんには私の言葉は何一つ届かないんだね……)

凛「それじゃあ続きといくにゃ!」


━━

りん「せんせー、さよーならー!」

はなよ「さ、さようなら……」

先生「はい、さようなら。星空さんは何だかご機嫌ね?」

りん「うん、かよちんの家で誕生日パーティやるんだよー! 友達がいーっぱい集まって思いっきり盛り上がるの!」

先生「あら、羨ましいわね。先生も行きたいわ」

はなよ「あ、せ、先生も来てくれると嬉しいです……」

先生「ふふ、ありがとう小泉さん。とっても残念だけど先生はお仕事があるからまた今度誘ってくれるかしら?」

はなよ「あ……は、はい。もちろんです」

りん「かよちんはやさしいねー。先生が来たら好き勝手に飲み食いできないから来なくていいのにー」

先生「星空さん?」ニコッ

りん「冗談です!」ビシッ

はなよ「……あれ? あれは……」


さとう「……」テクテク


りん「あっ、おんなじクラスの佐藤君だ」

はなよ「あれ? 給食当番のエプロンとか色々持ち帰ってるけど……何でだろう?」

先生「……」

りん「あんまり話したことないからよく分からないやー」

はなよ「せ、先生? 何で佐藤君あんなに持ち帰っちゃうんですか?」

先生「……それがね」


先生「あの子、来週には転校するのよ」

はなよ「え……?」

りん「そうなのー?」

先生「ええ、お父さんが転勤するそうなのよ。……転校してきて間もないのにね」

りん「うーん、あんまりクラスにも馴染めてなかった気がする」

先生「そうなのよね。あの子、昔から何度も転校を繰り返していて、友達と仲良くなる前に別れてしまうものだからどうも周りに壁を作っちゃうみたいで……私がもっとしっかりしてれば……」

りん「うーん……」

はなよ「……」グッ…

はなよ「……」タタッ

りん「? かよちん?」


はなよ「あの……佐藤君!」

さとう「……?」クルッ


はなよ「わ、私の誕生日パーティ、来てくれない?」


━━

凛「あの時はびっくりしたよー。普段は引っ込み思案なかよちんが自分から、しかも男子に声をかけるなんて」モッシャモッシャ

花陽「……」

凛「かよちん?」ムッシャリムッシャリ

花陽(そっか、思い出した……小学三年生の誕生日ってあの日のことかぁ……)

凛「もー、かよちん聞いてる?」モーグモーグ

花陽「あ、ごめん。聞いてるよ」

凛「そういえば結局何で佐藤君を誘ったの? 理由がいまいち分からないにゃー」パクッ

花陽「う~ん……佐藤君が私に似てるような気がして……」

凛「んん? どういうこと?」ペロン

花陽「凛ちゃんが手を引いてくれるのを待ってる時の私に似てるって思ったの。本当は寂しいんだけどなかなか言い出せない気持ちを佐藤君も抱えてたんじゃないかなって」

凛「ふ~ん」ムシャリ

花陽(私と違って佐藤君はいっぱい転校してたそうだから……きっと寂しさも私の比じゃなかったんだろうな……)

凛「それで佐藤君とは何か話したの? パーティに来てたみたいだけど」グビビ

花陽「え~と……」

花陽(たしか……)



━━

りん「いえー! ビンゴー!」

モブ1「凛ちゃんずるいよ! 言われてない番号のところまで開けてるじゃん!」

モブ2「そうだよー、8番も74番もまだだよー」

りん「うるさーい! どんな手を使ってでもお菓子の詰め合わせは凛が手にいれるんだー!」

モブ3「こ、この悪魔!」

モブ4「鬼!」

モブ5「アザゼルさん!」

りん「今なんつったあぁぁぁあぁ!?」


ギャーギャー


さとう「……」ポツン

はなよ「佐藤君。はい、飲み物」スッ

さとう「あ、ありがとう……」

はなよ「えへへ、凛ちゃんったらはしゃぎすぎだよね」

さとう「うん。あんなキャラだったっけ……」

はなよ「う、う~ん……」

さとう「……小泉さんは何でぼくを誘ってくれたの? あんまり話したことなかったと思うんだけど……」

はなよ「えへへ、パーティは大勢でやった方が楽しいよ。それに……何の思い出もなしに転校しちゃうの、寂しいと思って」

さとう「そっか、ありがとう。でも……思い出を作ると余計に辛くなることもあるんだ。だからぼく、あんまり友達作らないようにしてるの」

はなよ「え……?」

さとう「どうせすぐに転校するんだって思うとね、別れる時の辛さを考えてそういう風にするようにしちゃうんだ」

はなよ「……」

さとう「……今日も正直、行こうか迷った。辛くなるだけだからって」

はなよ「じゃあ……なんで?」

さとう「小泉さんがすっごく勇気だしてくれたの分かったから。何となくだけど、似たもの同士な感じがするから分かるんだ。……だからね」

さとう「ぼくも変わろうって思った。もう少し勇気だして、短い間でも……めいっぱい楽しもうって思ったんだ」

はなよ「……えへへ、そっかぁ。私なんかでも役に立てたなら嬉しいな」


りん「かよちーん! 佐藤くーん! こっち来て一緒にあそぼー!」


はなよ「あ、うん。いこっ!」

さとう「うん」


モブ1「凛ちゃんまたズルしたでしょ!?」

りん「してないよ! ビンゴカードすり替えただけだよ!」

モブ2「それをズルってゆーの!」

はなよ・さとう「あはははは!」


━━

花陽(……うん、凛ちゃんのキャラがおかしいのは目の前の光景のせいとして……)

凛「?」ハムッハムッ

花陽(そっかぁ……そんなこともあったなぁ。元気かなぁ佐藤君。あのまま転校していったけど……)

凛「そんなこと話してたんだね~」モッグムッシャ

花陽「うん。すっかり忘れちゃってた」

凛「まぁ五年以上前のことだもんね」ゴクッ

花陽「……私、あの頃から成長できてるのかな」

凛「む?」ピクッ

花陽「佐藤君を勇気づけられたみたいだけど……スクールアイドル、凛ちゃんと真姫ちゃんがいなければきっと今でもうじうじしてたと思うし……」

凛「……」

花陽「誰かに引っ張ってもらわないと何もできないのは……変わってないのかな」

凛「ていやっ!」ビシッ!

花陽「あいたっ! き、急に何するの凛ちゃん!?」

凛「かよちんが凛を怒らせること言うから悪いんだよ! 誰かに引っ張ってもらわないと何もできないなんて……そんなこと絶対ないにゃ!」

花陽「で、でも……」

凛「凛達はきっかけを作っただけだもん! 自分の意思でやりたいって言ったのはかよちん自身! 凛達が強制したわけじゃない!」

花陽「り、凛ちゃん……」

凛「だからまた変なこと言ったら……わしわしMAXにゃー!」ガバッ

花陽「ひゃあっ! ご、ごめん、もう言わないからやめて~!」

花陽(凛ちゃん……ありがとう。いつも私のことを気遣ってくれて……今はあれだけど……これからもよろしくね)

花陽「さてと、もう遅いしそろそろ寝ようよ。凛ちゃんは泊まっていくんでしょ? 今お布団用意するから……」ガシッ

花陽「……え?」

凛「うふふ、か~よち~ん///」モミッ

花陽「り、凛ちゃん!?/// な、何するの!?」

凛「さっき変なこと言ったからその分のわしわしタイムだにゃ~///」ヒック

花陽「うわっ、お酒臭い……! 凛ちゃんもしかして……」チラッ

『オレンジサワー』

花陽「やっぱりぃぃぃぃぃぃ!」

凛「凛はお酒なんて飲んでないよ~、オレンジジュースしか飲まなかったよ~///」

花陽「凛ちゃんあれオレンジジュースじゃないよぉ! アルコールばりばり入ってるよぉ!」

凛「ふふ、かーよちーん///」ワシワシワシワシ

花陽「ひゃあぁぁ/// だ、だ、」

ダレカタスケテー!



━━

花陽「……///」

凛「……///」



絵里「誕生日パーティなのに……何だかあの二人の空気がおかしいわね」

希「珍しいこともあるんやね」

にこ「普段なら見てる方が気まずくなるくらいちちくりあってるのにね」

真姫「ほんとに。明日は台風でも来るのかしら?」

海未「そこまで言いますか……しかし顔が赤いですね二人とも」

ことり「ふふ、きっと仲を深めあったんだよ」

海未「はい?」

穂乃果「ま、何はともあれ……」




「「「誕生日おめでとう! 花陽(ちゃん)!」」」




花陽「わっ、えへへ……みんなありがとう!」




終わり

(一日遅れだけど)かよちん誕生日おめでとう!

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