春香「大江戸七六五ぷろ」(175)

 

春香「ううん今日もいい天気。あら、そこ行くお方はぷろでゅーさー」

ぷ「おう春の字今日も良い面してるじゃねぇか、へへ、ちょいとイカした儲け話があるんだが一つどうだい?」

春香「なんでしょう?」

ぷ「おうよお前ぇも顔ぐらいは見たことあんだろ、高木の旦那が目新しい商いを始めようってのよ」

春香「商いなんて女の私には務まりませんよ」

ぷ「いやいやこれが女のお前ぇにしか務めらんねぇんだ、何せその商いってのはいわゆる遊郭」

春香「遊郭!? お断りします、おまんま食べるにゃ苦しいくらしむきではありますが若い身空で売る体はありません!」

ぷ「おうおう焦るねぃ焦るねぃ、何も柔肌見せろってんじゃあねんだよ。ちょいと舞台で歌って踊ってくれりゃあいいんだ」

春香「女が歌舞伎の真似事なんてお上から禁じられてますよぅ」

ぷ「バカお前ぇこれは歌舞伎じゃねんだ、異国風の見世物で『あいどる』ってんだとよ」

高木「ああ、来てくれたかい。まあまずは腰を落ち着けとくれ。おうい小鳥君、二人にお茶を」

小鳥「はい旦那様ただいま」

ぷ「おや高木の旦那、どこであんなべっぴんさんを?」

高木「昔の友人のツレでね。それはそうと、そちらのお嬢さん。どうもはじめまして、呉服屋の隠居、高木順一郎と言います」

春香「ああ、これはご丁寧にどうも、私天海春香と申します」

ぷ「高木の旦那、きれいどころのおなごと言われたがこいつでいいかい?」

高木「うむうむ充分、大変見目麗しいじゃないか。ぷろも隅に置けないねえ」

春香「あの、『あいどる』という商いを始めると聞いたのですが」

高木「おお、そうだったそうだった。すまんね年を取るとどうにも無駄話をしてしまって」

春香「いえいえ、それで私は何をすればいいんですか? 昔馴染みのぷろでゅーさー、その義理でついては来ましたが女を売るような話なら私」

高木「……ぷろ、お前この娘さんにどんな説明をしたんだね?」

ぷ「へぇ、言われた通り体を売らない遊女になってくれと、そう」

高木「ぷろ、お前さんバカだねえ。私が言ったのは歌と踊りでお客さんを楽しませるって仕事だよ」

ぷ「へぇ、つまり交わねぇ遊女でござんしょ?」

高木「バカ。すまないね、天海さん。誤解をさせちまったようだが何の事はない、今言った通り歌と踊りでお客さんを楽しませるだけの健全な仕事だよ」

春香「は、はぁ」

高木「とは言えそのぐらいの事ならそれこそ遊郭に行けばおまけもついてくる。そこで私はこれをもそっと大きな舞台でやろうと思ってね」

春香「歌舞伎の真似事ともぷろさんから聞きましたが」

高木「あれは皆座って弁当をつつきながら観るものだろう? 私はもっと観客が食い入るような、そんな舞台を作りたいと思っていてね」

ぷ「分かったか、春香」

高木「どうしてお前さんが偉そうなんだ……で、どうかね? やってくれるかい?」

春香「私が人様の前へ出てなんてそんな、顔も良くないですし服だってろくにありません。そりゃあ歌は好きですけれど」

高木「何、心配はいらないよ。歌が好きなら大丈夫だ、顔だってそこらの娘よりよほど整っている。私は呉服屋の隠居だからね、美しい衣装なら山ほどある。どうかな?」

春香「……じゃあ、試しに少しだけ」

ぷ「おう、決まりだ!」

ぷ「ちょいとそこ行くお兄さん、姐さん旦那に坊やもおいで! これよりお見せいたしまするは世にも珍しい異国の見世物! あいどるにございます!」

若衆「おうなんでぃなんでぃ」「なんでも高木の旦那がまた新しい見世物を始めたんだとよ」「おうそりゃ見て行かねぇわけにゃ行かねぇな」

ぷ「異人に手解き受けて十年、苦節苦難を乗り越えて、本日初日の初舞台! お代は見てのお帰りよ! それでは皆様お待ちかね、天海春香の登場にござい!」

春香「あ、ああ天海春香です! 今日は楽しんで行ってください!」

ぷ「心を込めて歌いまするは『太陽の妬み』、どうぞごゆっくりお楽しみください!」

春香「~♪ もおっと遠くへ泳いでーみたい♪」

ーーーー

春香「ありがとごじましたぁ!」

ぷ「お、お楽しみ頂けたならこれ幸い……今後も天海春香のご活躍に乞うご期待……」

若衆「帰ぇろ帰ぇろ」「うーん、どうだったよ?」「目新しさはあるんだがちぃと俺には合わなかったなぁ」

ぷ「ありがとうございます、ありがとうございます、お気を付けて、ありがとうございます、お気を付けてお帰り下さい……」

高木「おう、帰ったかい。それで、どうだったね? 盛り上がったかい?」

ぷ「あまりこういう言い方ァしたかねぇが……てんで駄目だな、ありゃ」

春香「お力になれず、すみません……」

高木「う、むぅ……いやいや、初めから上手く出来る者はいないという。どうだろう、せめて一年でも続けてみないかい?」

ぷ「旦那、何やらいつになく真剣じゃないですかい。いつもなら今頃また新しい見世物をとかなんとか言ってるのに」

高木「ぷろ、私ゃ年ゃあ取ったが眼まで曇った覚えはないよ。天海さんに光るものを見たんだ、彼女はこの道を極めなくてはならん」

ぷ「そうは言っても……なぁ春香、お前ぇはどう思う? あの静まり返ェった空気……俺ァ一日限りのお遊びってことで仕舞ェにすんのがいいと思うが」

春香「ぷろさん、いいえぷろでゅーさーさん。私、これまで人前になんて出たことなかった。けれど、あんな空気だったけれど、あんな風に歌えて気持ちよかったんです」

ぷ「……お前ェ」

春香「高木さん、私、私どうすればもっとお客さんを楽しませられますか!? 私、あいどるになりたいです! あいどる、続けたいです!」

高木「おお、そう言ってくれるかい! ありがとう、天海さん……ぷろ、お前も私の夢に協力してくれんか? 流されるままに呉服屋を務めてきたが、この歳になってようやく見つかった夢なんだ」

ぷ「はぁ、ご隠居はご隠居らしく伊勢参りでも夢にすりゃいいものを……負けたよ、負けた負けた! 春香と高木の旦那にこうまで言われて逃げ出すってんじゃ男が廃るってもんだ!」

高木「おお、それじゃあ……!」

春香「ぷろでゅーさーさん……!」

ぷ「男ぷろでゅーさー、拙いこの身ではありますが天海春香殿、高木順一郎殿の夢の礎とさせて頂きます!」

ぷ「んん……朝? ああ、昨日は確かあのまま前祝いってんで宴会騒ぎに……つぅ、飲み過ぎたな」

高木「おお、ぷろも目が覚めたかい。早速だが今後について」

ぷ「ああいやいや旦那、顔を洗ってくるんでその話はあとで」

高木「そうかい? なら先に朝飯としようかね。おうい、準備は出来てるかい?」

小鳥「はい、旦那様ただ今」

高木「うむ、よろしく頼むよ」

ぷ「……いつ見ても美しいですねぇ、何さんでしたっけ?」

高木「小鳥、音無小鳥という。若くは見えるがあれでぷろ、お前さんより年上だよ」

ぷ「ええ!? ……はー、おなごってのは不思議なもんだ」

小鳥「朝食の準備が整いました、旦那様、ぷろでゅーさーさん」

高木「ん、ありがとう、すぐ行くよ。ぷろ、お前も早く顔を洗ってきなさい」

ぷ「へぇい」

ぷ「……ふー、そういえば春の字はどこ行きゃあがったんだ?」

春香「おはようございます、ぷろでゅーさーさん。今朝は私もお団子作りをお手伝いしたんですよ」

ぷ「おう、おはよう春香。そうか、音無さんの手伝いをしてたのか」

春香「ええ、私にお酒はまだ早いですし今朝もきっちり日の出と同じに」

ぷ「ほう、感心関心……ところで春香よぅ」

春香「はい?」

ぷ「ああいや、飯食ってからにするか。とりあえず昨日の舞台を軽くでいい、思い出しておいてくれ」

春香「は、はぁ」

ぷ「やー旦那に音無さんまでお待たせしました」

高木「いやいや、構わんよ。では……いただきます」

>>11訂正
小鳥君→音無君

高木「ご馳走様でした、いやあいつもすまないねえ音無君」

小鳥「いいえ、旦那様。それではお茶を淹れてきますね」

高木「うむ、お願いするよ……さて」

ぷ「あいどるとしての今後について、ですね? 旦那はどうしていくおつもりで?」

高木「そう、そのことなんだがね……ぷろ、お前さんに任せてみようかと思う」

ぷ「え、ええ!? 旦那、高木の旦那ァ! あいどるは旦那の夢なんでしょう!? それを俺なんぞに……!」

高木「ああいや、言葉が足りなかったね。老いたる私の頭では新しいものを広める新しい案は出てこないのではと考えたんだ」

ぷ「は、はぁ」

高木「つまり、君の若さ溢れる斬新な案と、これまでの経験や繋がりを持つ私の助言とでやっていこうと、こういうわけだ」

ぷ「そういうことなら……要は、俺が帆で旦那は舵を取るというわけですかい」

高木「そんなところだね。そして、天海さん」

春香「は、はい!」

高木「君は私たちの船の竜骨です、君なしでは夢の島には辿りつけません。どうか、頑張ってください」

春香「そんな、高木さん頭をあげてください! 若輩者ではありますが、天海春香、ぷろでゅーさーと同じく身を粉にして努めるつもりです!」

高木「ははは、頼もしい返事だ」

ぷ「さて、まとまったところで早速ぷろでゅーすと参りますか」

春香「ぷろでゅーす?」

ぷ「おうよ、なんでも異国じゃあいどるをと育て上げる時に使う言葉らしい。さて、春香。春香は昨日の舞台をどう思った?」

春香「え、ええと……歌うことと踊ることに精一杯でどう思うも何も」

ぷ「そう、そこだ。まずはそこから改善して行かにゃならん」

高木「? どういうことだい?」

ぷ「春香は周りを見る余裕もなかったと言っているんですよ。その上、厳しいことを言いますが歌も踊りも練習よりひどかった」

高木「いやいや、そこは練習の日にちが少なかった所為もあるだろう」

ぷ「お客にゃそんな事情は関係ありませんよ旦那。時間を取れなかった所為ならそこも改善して行かにゃなりません」

高木「むう、確かにそれはそうだねぇ」

ぷ「つまり、まず始めにすべきは次の舞台の日にちを決めること。次がそこへ向けての出来得る限りの練習です」

高木「なるほど……」

春香「じゃあ予定が決まるまで私はまたお団子でも」

ぷ「待てぇい!」

春香「!?」

ぷ「歌と踊りを練習するにもまずは基礎がなっていなくちゃいけねぇ。春香、お前ェの昨日の舞台は後ろの客に声が届いてなかった」

春香「こ、声が小さかったですか?」

ぷ「というよりは息が続いていなかった。そこでお前には武道の道場へ入ってもらう」

春香「え、ええ!? 歌も踊りも関係ないじゃないですか!」

ぷ「町娘やってたお前ェにゃそもそもの体力が足りねぇのよ。毎年祭りの為に鍛えてる男衆でも、動きながら声を出しゃすぐぶっ倒れるもんだから今はまだ仕方ねぇがな」

春香「そ、そんなの鍛えてどうにかなるですか?」

ぷ「どうにかなるとかじゃねんだ、商いは金が入らにゃ続けられねぇ。旦那と春香の夢を叶える為にはどうにかするしかねぇんだ」

高木「なるほど、それなら早速知り合いの道場に紹介状を書こう。菊地の看板で問題ないかね?」

ぷ「ええ、お願いしやす。あすこならみっちり春香を鍛えてもらえそうだ」

春香「菊地道場って、あの厳しいって噂の!?」

ぷ「おう! と言っても師範は今いなくてここ数ヶ月は代理に倅が取り仕切ってるらしいが。良かったな春香、菊地の息子は美青年だともっぱらの噂だぞ!」

春香「ご、ごめんくださーい……」

???「でやあー!」

???「うぎゃー!」

春香「きゃ!?」

???「ん? 見ない顔だね、入門希望者かい?」

春香「は、はい! 私、天海春香です! これ、高木順一郎からの紹介状で!」

真「はいはじめまして、僕は菊地真です。では紹介状の方を失礼……ふんふん、分かりました。ようこそ、菊地流格闘道場へ」

春香「はい、これからお世話になります! よろしくお願いします! 」

真「うん、よろしく。響! いつまでも寝転がってないで案内を!」

響「分かったぞ! はいさーい! 自分、我那覇響! よろしくね!」

春香「あ、天海春香です! よろしく」

響「固い固い、同じぐらいの年だし響でいいよ」

春香「う、うん。よろしく、響ちゃん」

響「へぇー、『あいどる』かー。まあ体力はばっちり付くと思うぞ、うちの師範代は無茶苦茶厳しいから」

春香「あ、やっぱり厳しいんだ……」

響「でもほら、自分みたいな女の子もちゃんとやってける道場だから安心してよね!」

春香「うう、大丈夫かなぁ」

響「なんくるない ……あっとと、なんとかなるさー!」

春香「? 響ちゃん、もしかして遠くから?」

響「あはは、ばれちゃったか。実は魚獲りしてる時に嵐にあって、気付いたらすっごく遠くのこの土地に着いてたんだ。その時からここの師範のお世話になってて」

春香「すっこぐ遠く?」

響「うん、琉球ってところなんだけど、分かる? もし帰り道とか知ってるなら……!」

春香「ごめんなさい、分からないや……」

響「そ、か。ううん、気にしないで! 生きてればその内きっと帰れるぞ!」

春香「うん、そうだよね……あ、そうだ! お団子食べない? これからお世話になるからお土産に作って来たんだけど」

響「お団子! そうだな、道場の案内は後にしてお茶にしよう! 師範代ー! 真ー、真ー!」

響「美味しいぞー! 今度、自分もサーターアンダギー作ったげるね!」

春香「さ、さたー? うん、楽しみにしてるね」

真「響、女の子なんだからもう少しお淑やかにしなよ。ほら、春香さんを見習ってさ」

春香「は、春香さんだなんて。春香でいいですよ、真さん」

真「ああ、いや……じゃあこれからはお互い門下生同士ということで敬語も敬称もなしということで。いいね、春香?」

春香「はい、じゃなくて、うん、真さ、真」

真「うんよろしく。で、案内は終わったの、響?」

響「いやーそれが春香の『あいどる』の話をしてる内にお団子があるっていうからさー」

真「はぁ、全くもう。食べ終わったらちゃんと案内するんだよ……ところで春香、『あいどる』って?」

春香「えーと、どう言えばいいかな」

真「……ふぅん、それってその、か、可愛い衣装を着て?」

春香「うん、取り仕切ってる高木さんが呉服屋のご隠居さんでね、綺麗な服や可愛い柄の衣装がいっぱいあって。私はまだ見たことないけど異国風のもあるんだって」

真「へ、へー、ふーん、ほー……」

春香「真? 真もそういう格好の女の子が好きなの?」

真「あ、いやその……別に?」

春香「?」

響「師範代ー、もうお団子もないし案内した方がいいか?」

真「そ、そうだね。じゃあ僕は稽古に戻るよ」

響「はーい! 行くぞ、春香!」

春香「あ、うん」

真「……春香!」

春香「はい?」

真「後でまた、その『あいどる』の話聞かせてよ」

春香「? わ、分かった」

響「春香? 置いてくぞー?」

響「で、言わなくても分かると思うけどここが道場っと。師範代、終わったぞー」

真「お疲れ様、今日はもう遅いし響はご飯の支度して。僕は春香と色々話があるから」

響「ん、分かったぞ。今夜はラフテーでも作ろっかなー」

真「……行ったかな。春香、話っていうのは他でもない、ボクのことだ。ボクのことをもっと君に知ってほしい」

春香「え、ええ!? ちょ、真待って!? ななな何をいきなりっていうかまだ会って一日」

真「ボクは、女なんだ!」

春香「大体私にはぷろさんが……あ?」

真「驚かせてしまってごめん、でも本当なんだ! そうだ、なんなら今ここで道着を脱ぐからその目で確かめてほしい! ほら!」

春香「ちょ待っきゃー! 誰かー!」

響「真ー、お豆腐買って来るからおぜぜーってえー!? なんだこの状況ー!?」

真「ひ、響!?」

春香「きゃー! きゃー!」

春香「まとめると、男として育てられた女の子の真はいい加減やってられなくなった、と」

真「大体男として育てるってなんだよ! ボクだって綺麗な着物着たい着たい着たいー!」

響「子供に戻ってる……えらいこっちゃだぞ……」

春香「父親が遠出したのを好機に男の弟子を皆武者修行に出して、響ちゃんから女らしさを学ぼうとした、と」

響「最初から女だって言ってくれれば簪とかお化粧とか色々出来たのにな」

真「だって恥ずかしかったんだよー!」

響「春香には出会って一日で言えたさー」

真「……『あいどる』の話を聞いてたら羨ましくなっちゃって」

春香「それで自分も道場なんてやめて『あいどる』になりたい、と……って困るよ! 私は誰に稽古つけてもらえばいいの!?」

真「響!」

響「自分も『あいどる』やりたいぞー!」

真「えー!?」

春香「だから私は誰に稽古をー!?」

???「今帰ったぞー! って誰もいないのか?弟子どもは一体どこに……ん?」

真「と、父さん!?」

真一「うむ、ただいま。お前の父、菊地真一だ」

真「父さん、ボクはもう師範代なんてやめる! そして『あいどる』になるんだ!」

真一「? 何を言っているのか良く分からんが、その顔は本気みたいだな……いいだろう、やめたいならやめろ」

真「ほ、ほんと!?」

真一「ただし! この俺を倒せたらだ! 日取りは明日、この道場で正々堂」

真「せいっ!」

真一「ぐぅ!? ふ、ふふ、浅いぞ真、よ」

真「ふん! せい! やぁ!」

真一「あぐ!? おぼっ、ぐあ!!」

真「勝った!」

真一「まだ、むぁだあ!」

春香「と、止めなくていいのこれ?」

響「父親と娘の熱い絆だ、感動的さー。自分たちの出る幕じゃないぞ、春香」

真「へへ……菊地真はこれより、女として『あいどる』として生きていきまーす! とびっきり可愛くなるぞー!」

真一「ふん。まぁ、不意打ちでも負けは負けだ……ただし、分かってるな?」

真「はいはい、道場での稽古もちゃんとこなせばいいんでしょ? 分かってるってば」

真一「ならいい、好きにしろ」

響「ねぇ、自分も『あいどる』になっていいか師範」

真一「全然構わないよ」

真「ちょ、ボクの時と態度違い過ぎでしょ!?」

真一「ええい騒ぐな騒ぐな。それでお前たち、今日はどんな稽古をしたんだ?」

響「今日は春香が来たり『あいどる』の話聞いたりでほとんど何もしてないぞ」

真一「ほう……三人共立てい! これから師範直々に稽古だ!」

響「うぎゃー!? 余計なこと言ったさー!」

真「『あいどる』になるためだ、どんな高い壁だって……!」

春香「え、え? そんなに大変な稽古なの? でも私初心者だし手加減」

真一「問答無用! まずは正拳中段一万本! 始めぃ!」

ぷ「おう、おはよう春香。随分ぐっすり寝てたみてぇだな。どうでぃ体力作りの方は?」

春香「あいたたた……身体中の筋肉がビキビキです……」

ぷ「はっはっは! 最初はそんなもんよ、すぐに慣れらぁ」

春香「だといいんですけ、ど、いてててて……あ、そうそうぷろさん。他にも『あいどる』になりたいって子が」

ぷ「他にも? 一体ェどういうことだい?」

春香「かくかくしかじか」

ぷ「なるほどなるほど……こりゃちょいと面白いことが出来そうじゃねぇか、旦那に相談してみるかな」

春香「面白いこと?」

ぷ「おうよ、昨日一日『あいどる』について話し合ってた中に『ゆにっと』っつーのもあると聞いてな。まぁ早い話がまとめ売りだ」

春香「?」

ぷ「ま、今はまだ分からなくてもいい。必要になった時にゃまた説明する。お前ェはさっさと飯食って稽古に行って来い」

春香「はぁい……あいたたた」

ぷ「そうだ、春香。いい先生を見つけたんだ、帰ェってきたら歌の練習するからな」

春香「は、はい!」

春香「ただ今戻りました、うう……」

真「お邪魔します」

響「お邪魔しまーす」

ぷ「おう、いらっしゃいって春香がふらふらじゃねぇか……しかし早速歌の稽古だ。先生、先生!」

小鳥「はい、よろしくお願いします」

春香「え? 歌の先生って小鳥さん?」

ぷ「疑ってるみたいだな。先生、一つお願いします」

小鳥「先生なんてそんな……それじゃあ、触りだけ」

ぷ「三人共よく聞いておけよ」

小鳥「~♪ 空になりたい、自由な空へ♪」

春香「あ……」

ぷ「な?」

小鳥「ど、どうでしょう?」

春香「よろしくお願いします、先生!」

ぷ「なるほど、女らしくなぁ。とはいえ世の娘さん方にはお前ェは男ってことにしておいた方が人気は出そうだがなぁ」

真「それじゃここに来た意味がないです! ボクはどうしても女らしく、きゃぴきゃぴな感じになりたいんです!」

ぷ「お、おう……なら段階を踏んで徐々にやって行こう。一足飛びじゃ何事も上手く行かねぇものよ」

真「……ぷろでゅーさーがそう言うなら、分かりました」

ぷ「心配するねぃ、お前ェなら街行くお侍も振り返るようなとびっきりの娘になれらぁ」

真「な、軽々しくそういうことを言わないでください!」

ーーーー

ぷ「ふんふん、その琉球とやらの踊り、ちょっと見せてもらってもいいか?」

響「いいよ。よっほっ、とっ」

ぷ「この辺りの流行りたぁ毛色が違うが面白いかも知れんな」

響「でも自分はこれじゃ退屈さー。もっとこう、ていっほっやっ……とこんな感じの激しい方が好きだぞ。アンマーの前でやると違うって怒られてたけど」

ぷ「……いい、これだ」

響「え?」

ぷ「これだよ響! 旦那ァ、高木の旦那ァ!」

高木「私もあまりこういったことには詳しくないが、心にくるものがあるよ、うん」

ぷ「でしょう? 珍しい歌に見慣れない踊りの組み合わせはこれから来ますぜ、こりゃあ如月先生も大喜びだ」

響「如月先生?」

ぷ「おう、春香が初めて舞台に立った時の話はしたよな? その時の太陽の嫉妬を作ったのが如月先生よ」

響「へぇ、あの曲を……ねぇ、どんな人なの? この辺の歌ともうちなーの歌とも全然違ったから気になるぞ」

ぷ「それが、会ったことがねぇんだ……どうにも人嫌いらしくてな。譜面だきゃあ寄越してくれたから別に良いっちゃ良いんだが」

響「ふぅん……あ、それで自分の踊り見てこれだ!って言ってたけどなんだったの?」

ぷ「そうだ、話が逸れちまったなぁ。響、
お前ェ他の二人の踊りも面倒見てやってくれ」

響「ええ? 自分が先生やるのか?」

ぷ「そこらの先生に習っても古臭ェ振り付けになっちまって困ってたのよ。斬新で華麗なの、期待してるぜ」

響「ちょっと待ってよ! そんないきなり」

ぷ「なんでぇ? 出来ねぇってのかい? 案外大ェしたことねぇんだな」

響「出来るぞ! 自分、完璧だからな!」

ぷ「おう、そう言ってくれると信じてたぜ。よろしくな」

高木「うむ、よろしくお願いしますよ」

響「成り行きで引き受けちゃった、けど自分なんかに……なんくるないさー! このまま名前が広がれば琉球への帰り道を知ってる人にもその内会えるさー!」

春香「あれ、響ちゃん? そろそろ道場に行くよ」

響「あ、うん! ……っと、お待たせ! さぁ今日もちばるぞー!」

真「なんだか今日は元気だね、響」

響「えへへ、実はぷろの字から踊りの先生を任されたんだ」

春香「えー、すごいよ響ちゃん! あ、こらからは響先生か」

響「な、なんかくすぐったいから今まで通りでいいぞ……」

真「ふふ、響は可愛いなぁ」

響「ちょ、からかうのはやめてよね!」

真「あはは、痛い痛い」

春香「あはは、危ないよ二人とも」

真「眠れない夜こーの身を苛む煩悩♪」

響「焦燥感耐えられないーなら♪」

春香「闇に潜る家来を呼ぶのーどんな時も万全に答えられる♪」

小鳥「うんうん、三人共随分良くなって来たわ。それじゃあ今日はこれまで。みんなお疲れ様」

春香「お疲れ様ですー。それにしてもどれも不思議な曲ですね……なんだか異国情緒溢れるっていうか」

真「この『忍夜を往く』も鐘の音から入るし、太鼓の使い方が独特というか」

響「ほんと、どんな人なんだろうね如月先生って」

小鳥「さぁ、私もあまり知らないけど。噂では皆と同じくらいの若い娘さんらしいわよ?」

春香「へぇー、会ってお話してみたいなぁ」

小鳥「すっごく人嫌いらしいから難しいかもしれないわね。でもそういう手合いに限って心を許した相手にはとことんべったり尽くすものなのよ、そうそれこそ相手が望むのならその身を投げ出してーーーー」

春香「長くなりそうだし湯屋に行ってこよっか」

響「そうだな」

真「如月先生、か……」

春香「ふぅ、温まったねー……やっぱり一日の締めはお風呂だよ、お風呂」

響「春香、なんかおばさんみたいだぞ」

春香「!?」

真「……ねえ、二人は如月先生に会ってみたくない?」

春香「? どうしたの急に」

響「そりゃ会ってみたいけど、人嫌いなんだろ? 仕方ないさー」

真「もし、如月先生の家を知ってたら忍び込んでみたいと思わない?」

響「え!? 場所、知ってるのか!?」

真「うん、この間偶然ぷろを街中で見かけてさ」

春香「つ、つけたの?」

真「わざとじゃないんだ、ちょっと驚かせようとしただけだったんだ、けど」

響「如月先生の家だったわけか」

真「どんな人なのか気になって覗いちゃうのは仕方ないよね?」

春香「なくない、なくない」

響「なんくるない」

春香「来ちゃったよ……お屋敷だよ? 見つかったらきっとううう打ち首だよ!?」

真「春香、声が高い。見つからなければ大丈夫」

響「そうそう、ちょっと会ってお話するだけさー」

春香「うう、二人は武道やってるからいいけど私は」

真「春香もうちの道場に通ってる門下生じゃないか」

響「大丈夫、最近は転んでもちゃんと受身とれてるぞ」

春香「そういう問題じゃなくてー……」

真「じゃあ春香はそこにいて、ボクらだけで行くからさ、じゃあ行くよ響」

響「おう! なんなら春香は先に帰ってもいいぞー」

春香「そ、そんなあ……うう、分かったよ、私も行きますー!」

真「声が高いってば」

響「草がぼーぼーだな」

真「気配もしない……使用人がいないのか?」

春香「二人とも、早いよ、ちょっと、待って」

響「壁一つくらいすぐ登れなきゃ舞台で踊れないぞ?」

真「しっ、誰か来る……」

???「……? 誰か、いるの?」

春香「ど、どうしよう見つかった?」

真「静かに、まだばれてないはず」

???「……気のせいかしら。誰かいるのなら先に言っておくわ、この家にはお金になりそうなものはないわよ。如月千早、私一人がいるだけ」

響「え!? 君が如月先生なのか!?」

真「ちょ、響!?」

春香「いやー、打ち首はいやー……」

千早「貴方たちは?」

響「自分たち、『あいどる』だ! 如月先生に曲を作ってもらってるからそのお礼に来た!」

真「人嫌いと聞いていたので、正面から訪ねても会えないだろうと考えこうして忍び込んだ非礼を詫びさせてください」

春香「本当にすみませんでした! 打ち首だけは、打ち首だけはー!」

千早「そう、貴方たちが……いいわ、今日は気分がいいの。上がって行きなさい」

真「ありがとうございます、お邪魔します」

響「お邪魔しまーす」

春香「え? え? あれ?」

ーーーー

千早「聞いていた通りの三人ね。赤い髪飾りのと、格好の良いのと、髪の長いの」

真「お会い出来て光栄です、如月先生。まずは重ねて、先程の無礼を詫びさせてください」

千早「先生なんて堅苦しいわ、千早でいい。それに無礼だとかそんなこともどうでもいい、新しい曲が出来たの」

響「あ、それで嬉しそうなのか」

春香「……思った通り、歌が大好きな人なんだなぁ」

千早「これよ、題名は……そう、蒼い鳥」

真「すごい、けど」

響「うう、譜面見るだけでも難しそうな曲だぞ」

千早「今までで最高の出来よ、手放したくないけれど貴方たちにあげるわ」

春香「え、手放したくない……?」

千早「っ、なんでもないわ。急用を思い出たの、三人共もう帰って」

真「千早? どうしたの?」

千早「なんでもないっ。いいから帰って、
二度と来ないで」

響「え、でも……」

千早「帰って!」

ぷ「三人共随分な長風呂だったじゃねぇか、お前ェらも江戸っ子なら風呂ぐれぇパッと済ませねぇか」

春香「す、すみません」

ぷ「ん? その手に持ってる紙ァ……こ、こりゃ如月先生の新曲じゃねぇか! お前ェらどこでこれを!?」

春香「帰りにばったり出会って、その時に渡してくれました。これまでで一番よく出来た曲だと」

響(よくもまぁそんなにすらすら嘘を)

真(春香って時々黒いよなぁ)

ぷ「そうか、なら構わねぇが……失礼はなかったろうな?」

春香「特には」

響(即答だったぞ)

真(ある意味すごいなぁ)

春香「ど、どうしよう!? 今からでもちゃんと本当のこと言った方が良いのかな!?」

真「もう夜中だよ、静かにしなよ……」

響「帰りにばったり出会ったのもまぁ本当だし、特にはとは言ったけどないとも言わなかったしいいんじゃないか?」

春香「そうかなぁ、でもぷろでゅーさーさんに嘘なんて、うう……」

真「とにかく、明日また千早に謝りに行こう。今日はもう帰ろう」

春香「はぁ、私って嫌な子だ……」

響「また明日なー」

真「また明日、春香」

春香「はあぁ……」

春香「辻斬り?」

ぷ「ああ、昨日の夜遅く長屋の男が袈裟懸けにバッサリだそうだ」

真「っ、一歩間違えばボク達がやられていたかも……」

響「これからは明るい内に帰るとかしたいけど……朝から道場、昼から歌で夕方は踊りでしょ? 稽古の時間が減っちゃうぞ」

ぷ「そう難しい顔するねぃ、俺が何か方法考えらぁ。ひとまず今日のとこはこのまま泊まってくとして、お前ェらはさっさと音無さんに歌の稽古つけてもらいな」

春香「はい……」

ーーーー

響「うん、二人とも踊りもいい感じだぞ。これならもうちょっと難しいのもいけそうだな」

真「すっかり先生が板についてるね」

春香「これ以上、激しいのは、無理だよう……」

真「春香も随分と体力が付いたし大丈夫だよ」

春香「そんなことないってば」

小鳥「夕飯の支度が出来たわよー」

春香「あ、はーい! すぐ行きまーす!」

高木「うむ、皆揃ったね。では、いただきます」

春香「あれ? ぷろさんは?」

小鳥「届けものがあるって先に食べて出て行ったわ」

春香「? そう、ですか。いただきます……」

響「この煮物美味しいぞー、すごいぞピヨ子」

小鳥「ピ、ピヨ子!?」

ーーーー

ぷ「ありゃ、もうこんなに暗くなってら。早ェとこ菓子折り届けて歌の礼言って……あん?」

千早「あっ……」

ぷ「ああこりゃ如月先生どうもおこんち、本日も大変お美しゅう」

千早「お世辞は要りません、それでは」

ぷ「そんな釣れねぇこと言いなさんな、うちの三人が世話になったみたいで。こらぁ歌の礼の菓子折りでさぁ」

千早「要りません、私はそんなものの為に歌に関わっているわけではありませんから」

ぷ「そんな冷たいこと、!? ……っぶねぇ!!」

千早「きゃ!?」

???「……」

ぷ「野郎、件の辻斬りってわけかい。先生、逃げるぞ!」

千早「え? きゃ、あ!」

???「……」

ぷ「はぁ、はぁ、くそ、しつけぇ!」

千早「は、あ、あ、っ、く、もう、だめ」

???「……」

ぷ「ダメだ! 死にてぇのか!?」

千早「も、いい、私は、充、分……!」

ぷ「……っ、くそったれ! 先生は先に行け! 旦那の家は知ってんだろ!? 走れ!」

千早「そんな」

ぷ「早く!!」

???「……」

ぷ「よう覆面辻斬り野郎よぅ、男ぷろでゅーさー、ここで死ぬわけにゃいかねんだ。見逃してくれねぇかい?」

???「……」

ぷ「っ、そうかい、じゃあ……」

???「……」

ぷ「あばよ!!」

???「!?」

ーーーー

ぷ「はぁ、はぁ、はぁ、ふぅー。逃げ切れたみてぇだな。如月先生も無事だろうな。とにかく一旦どこかで腰を落ち着けてから戻……蕎麦屋か。おう、一杯くんな!」

???「はい、お酒はお付けしますか?」

ぷ「そうだな、頼む。ははぁ、しかし随分なべっぴんさんだなあんた、蕎麦屋やるにゃ勿体ねぇな」

???「そうですね、蕎麦は本業ではございません。時に、随分と厄介なものに巻き込まれていませんか?」

ぷ「本業じゃねぇってお前ェ、や、それよりそうなんだ聞いてくれるかい? さっき例の辻斬りって奴に会ってよ」

???「それは、そこに立っている方のような?」

ぷ「え……?」

訂正

ーーーー

ぷ「はぁ、はぁ、はぁ、ふぅー。逃げ切れたみてぇだな。如月先生も無事だろうな。とにかく一旦どこかで腰を落ち着けてから戻……蕎麦屋か。おう、一杯くんな!」

蕎麦屋「はい、お酒はお付けしますか?」

ぷ「そうだな、頼む。ははぁ、しかし随分なべっぴんさんだなあんた、蕎麦屋やるにゃ勿体ねぇな」

蕎麦屋「そうですね、蕎麦は本業ではございません。時に、随分と厄介なものに巻き込まれていませんか?」

ぷ「本業じゃねぇってお前ェ、や、それよりそうなんだ聞いてくれるかい? さっき例の辻斬りって奴に会ってよ」

蕎麦屋「それは、そこに立っている方のような?」

ぷ「え……?」

???「……」

ぷ「な、手前ェさっきの!」

蕎麦屋「お下がりください、これは人のどうこう出来る類にありません」

???「……」

ぷ「蕎麦屋、あんた何やってんだ!? 早く逃げ」

蕎麦屋「心配はご無用、すぐに済みます故……」

???「……!」

ぷ「な……白い、髪?」

蕎麦屋「あまり見つめないで下さいまし、何やら面映ゆい心持ちです」

ぷ「あ、バカ! そんなこと言ってる場合じゃ!」

???「……っ」

蕎麦屋「えいっ!」

???「……!」

ぷ「あ、え? あ、何が……?」

蕎麦屋「……言ったでしょう、すぐに済みますと」

ぷ「あんた一体、いやそれより今のは」

蕎麦屋「正体はこれです」

ぷ「……刀?」

蕎麦屋「世に刀の数多くあれど、名刀妖刀ほど人を選ぶ物はありません。これもまた、並々ならぬ怨念を携え幾多の生き血を啜ってきた妖刀。凝り固まった邪気は人の形を取り人を襲うと申します」

ぷ「は、はは、なんだいそりゃ。馬鹿げてるぜ」

蕎麦屋「ええ、それで構いません。逢魔ヶ時に見た夢幻、疾く忘れてしまいなさい」

ぷ「ははは、ははは、狐に化かされてんのかい俺ァ。くそ、なんだか体が重く、瞼まで、くそ、一体、何が……」

蕎麦屋「眠りなさい、眠りなさい……」

ーーーー

蕎麦屋「……さん、お客さん!」

ぷ「お、おお!?」

蕎麦屋「飲めないならお酒付けてなんて言うもんじゃありませんよ、さぁお代を払ってとっとと帰ってくんな」

ぷ「あ、ああ……いくらだい?」

ぷ(夢、だったのか?)

蕎麦屋「へぇ、蕎麦十一杯に酒一本……まぁこれはまけて、しめて百七十六文になりやす」

ぷ「じゅ、十一杯!? 俺ァそんなに食ったのかい!?」

蕎麦屋「何を仰るのやら、お客さんは一杯。綺麗なお連れさんがいたでしょう、あのお方が十杯で合わせて十一杯でさぁ」

ぷ「綺麗なツレってお前ェ……そりゃもしかして白い髪の、乳の張ったべっぴんさんかい!?」

蕎麦屋「そうだよ、あんたのツレだろう? なんだい気持ちが悪いねぇ、狐に化かされたって言われてもしっかり食うとこ見たんだから! さぁ払っておくんなせぇ!」

ぷ「おう、払うよ……払うにゃ払うが、あいや命の値段にしちゃ安いが、しかし……」

蕎麦屋「何をぶつぶつと、本当に気味の悪いお客さんだねえ」

ぷ「ああいや、邪魔したな。また今度来るからそれで許してくんねえ」

蕎麦屋「もう来なくて結構だよ! ったくほんとにもう、なんだってんだ」

ぷ「ありゃあ夢だったのか? にしちゃあ妙に現実味のある……ああ、考え込んでる内に着いちまった」

春香「ああ、ぷろさんお帰りなさい。聞いて下さい、千早ちゃんが辻斬りに!」

ぷ「おう知ってる、俺が助けた……ってああ、こりゃどうやら夢じゃなかったのか」

春香「夢? 何をぶつぶつ言って、とにかく来てあげてください! さっきからずっと泣いて」

ぷ「あん? あの如月先生が? っておいおい春香、バカお前ェ如月先生を千早ちゃんなんて呼ぶんじゃねぇよ失礼だろうが」

春香「ああもうなんでも良いから早く!」

ぷ「な、なんだってんだよ一体……へぇい、如月先生はこちらですかい? ご所望のぷろでゅーさーに」

千早「! あ、ああ……生き、生きて、て、ひっく、ぐれだぁ……!」

ぷ「ちょ、如月先生!? 落ち着いて、ああこんなに涙を流して、美人が台無しじゃねぇか……どうしたんです、どこか怪我でも?」

高木「いいから、いいから今は黙って抱き締めておやりなさい」

ぷ「高木の旦那……へぇ、如月先生、俺ァここにいますよ、大丈夫です、大丈夫」

千早「う、うう……ぐす、う……」

ぷ「落ち着き、ましたか?」

千早「……ええ、すん。取り乱してしまってごめんなさい」

ぷ「生きてりゃ誰しも泣きたい日はありましょうが、一体何がそんなに」

千早「辻斬りに。辻斬りに……殺されました、私の家族は」

ぷ「なんと、そりゃあ……ううむ」

千早「貴方は悪くありません。いいえ、私の命を救ってくれた。感謝しています」

ぷ「誰だってああいう時はああしまさぁ、男が女より先にケツ捲るなんざ。けれど如月先生、先生はあの時、私はもう充分、
と。ありゃあ一体」

千早「誰だって、ね。私は、弟を見殺しにしました。助けることも、助けを呼ぶことも出来ずに震えて、動けずに」

ぷ「……すいやせん」

千早「謝ることはありません。だから、私はもう充分生きたんです。いいえ。弟を見殺しにし、残され狂った家族を止められなかった私は、もう生きていちゃいけないんです」

ぷ「先生、すいやせんっ」

千早「だから貴方が謝ることは、え? きゃ!! ……い、た」

ぷ「失礼しました。ですが、生きていちゃいけないなんて言わんでくだせぇ。そんなこと、もう二度と言わんでください」

千早「ごめん、なさい」

高木「今日は泊まっていってください、これで帰りにまた襲われたんじゃあ折角拾った命も無駄になります」

千早「お言葉に、甘えさせていただきます」

高木「いえ、お気になさらず。おうい、音無君。如月先生を寝床へ」

小鳥「はい、旦那様ただ今」

高木「……いやしかし、物騒な世の中だね。ぷろ、お前の方は変わりないかい?」

ぷ「旦那、旦那ァ寝てる間に蕎麦を十一杯ェ食えますか?」

高木「お前、随分とおかしなことを聞くねえ、とんちかい? 私は昔からとんちが苦手でねえ。まあ食べられるかと言われれば一杯だって食べられやしないよ」

ぷ「……変なことを聞いてすいやせんでした、忘れてくだせぇ」

高木「そうかい? ぷろ、ぷろでゅーさー。お前疲れた顔をしているよ? 今日はお前もうちに泊まってゆっくり休みなさい」

ぷ「へぇ、ありがとうございやす……はぁ、ったく今日は一体何がどうなってやがんだか」

春香「千早ちゃん、大丈夫?」

千早「貴方は確か……春香。大丈夫よ、少し疲れただけ」

真「少しって感じじゃないよ、早く寝た方がいい」

千早「いいの、まだもう少し起きているわ」

響「夜更かししてると大きくなれないってあんまーもよく言ってたぞ、もう寝ようよ」

千早「……もう少しだけ、夜風に当たらせて」

春香「……ねぇ、千早ちゃん。歌ってみない?」

千早「え?」

春香「元気なさそうだから。歌えば、少しは楽になると思よ。嫌なら私の歌を聞いてくれるだけでもいいし」

千早「……聞くだけにしておくわ」

春香「そ、そっか。じゃあ……泣くことーなら容易いけーれどー♪」

春香「このー翼ーもーがれてはー 生ーきーてゆーけないわたーしーだかーらー♪……どうかな?」

千早「ふふ、まだまだ下手ね、磨けば光りそうではあるけれど」

春香「え、えへへ、褒められてるんだかそうじゃないんだか……ねぇ? 千早ちゃんも歌わない?」

千早「歌わないわ」

春香「歌おうよー、そうだ! お手本を見せるってことでさ! ね?」

千早「……春香。私は、私は歌ってはいけないの」

春香「歌、嫌いなの?」

千早「好きよ、何よりも大好き。歌っている間は何もかも忘れられるくらい」

春香「じゃあなんで……」

千早「私はもう、弟の為にしか歌わないと決めたから。あの子が大好きだった私の歌は、あの子だけに捧げると決めたから」

春香「千早、ちゃん?」

千早「辻斬りに殺された、可哀想な優。私の目の前で、最後まで私のことを。なのに私は今も生きて! そのことを忘れて、自分が楽しむ為だけになんて、歌えない……!」

春香「千早、ちゃん」

真「春香、それに千早も。体を冷やすといけないよ」

千早「騒がしくしてごめんなさい、真」

真「いや、盗み聞きするような真似をしてたボクに謝る必要なんて。ほら、響はぐっすり寝てるし」

千早「……そうね。春香、貴方も早く寝なさい」

春香「千早ちゃんは、それでいいの?」

千早「おやすみなさい、春香」

春香「この先もずっと、ずっと苦しい思いをして、それで!」

真「春香、響が起きちゃう。今日はもう寝よう、ね?」

春香「……うん」

千早「……」

高木「おはようございます如月先生。ところでー、どうですかな。先生も音無君と同様、ここで暮らすというのは」

千早「それは、どういう」

高木「いや、他意はありません。歌を作った者が一番歌を知っている、ならばその指導も作った者を交えた方がよいのでは、という彼の提案でして」

ぷ「まぁそれはほんの建前です……差し出がましいようですが、如月先生はあのお屋敷にお一人。先生の人嫌いは承知の上ですが、俺ァ先生に人と触れ合う温もりを思い出してほしい」

千早「忘れたことなんて、ありません」

ぷ「先生」

千早「……けれど、そうですね。彼女たちをよりよい歌声に育てられるなら」

高木「決まりですな、今日より如月先生もこの家の一員です。遠慮などなさらぬよう」

千早「では、まず初めにお二人は私への敬語をやめてください。こんな小娘を相手に先生などとは」

ぷ「しかし、先生」

千早「やめてくださいと言いました、ぷろでゅーさー」

ぷ「……分かった、千早」

高木「うむ、うむ」

高木「いやしかし、なんとも賑やかになってきたものだねえ」

ぷ「はは、この調子で行くと五人十人と増えて行くんじゃねぇですかね」

高木「うむ、それもまた大いに結構。異国には何十人と立ち並ぶ『ゆにっと』もあるそうだ」

ぷ「旦那、そこまで行くと面倒も見切れませんし歌や踊りの構成も小難しくなっちまいますよ」

高木「それもそうか、ともあれまずは彼女たちの初舞台をせんことには何事も始まらんな」

ぷ「春香たちを見て自分もやりたいと飛び込んでくるような物好き、いますかねぇ?」

高木「そこはそれ、出来次第で変わってくるだろう。彼女たちのやる気を引き出すのもぷろ、お前次第だよ」

ぷ「へぇ、ご隠居のご期待に答えられるよう励ませていただきやす」

高木「うむ、頑張っておくれ」

ーーーー

春香「って話してたんだよ!」

真「そうかー、初舞台……もうすぐなんだよね」

響「今から緊張してるのか? 師範代も大したことないなー」

真「む、武者震いだよ!」

千早「そう、あまり時間がないのね。なら、もっと根を詰めて頑張りましょうか」

春香「ねぇ、千早ちゃん。一緒に出てみない?」

千早「またその話? 私は優の為以外には歌わないわ」

春香「私、考えてみたんだけどね。千早ちゃんの幸せは、優君の幸せにならないのかな。千早ちゃん自身の為に歌うことって、優君の為にならないのかな」

千早「っ、知った風な口を利かないで」

春香「千早ちゃん、私ね」

千早「静かにして! 私のことは放っておいてよ……!」

春香「手放したくないって、言ってたじゃない!」

千早「うるさい!」

春香「千早ちゃん、千早ちゃんは悪くないのに、こんなに、苦しい思いする、なんて、おかしいよ」

千早「やめてよ、私なんかの為に、泣かないでよ」

春香「歌、大好きなんでしょ? 一緒に歌おうよ、じゃないと、私、ずっと泣きっぱなしなん、だから」

千早「……勝手にしなさいっ」

響「ねえ、千早。サーターアンダギー食べなよ」

千早「いらない、そんな気分じゃないの」

響「食べろよー、美味しいぞ」

千早「お腹がいっぱいなの、ごめんなさい」

響「千早はバカだなー」

千早「! 貴方には言われたくないわ」

響「いっぱいなのはお腹じゃなくて胸の奥だろ? それに泣きたい時に泣かないのもバカだぞ、やっぱり千早はバカさー」

千早「……何? 春香の差し金なの? 貴方も、一緒に歌えっていうの?」

響「言ってほしいなら言うけど、そうなの?」

千早「そんなこと、ない」

響「千早、サーターアンダギー食べなよ」

千早「……」

響「甘いものとか美味しいもの食べると元気が出るぞ。春香のお団子も美味しいから今度作ってもらうと良いさー」

千早「もぐ……おいふぃい」

響「自分が作ったから当然さー」

真「千早。踊りの練習、やってみない?」

千早「え?」

真「踊りの練習。響が教えてくれるからさ、ボクたちと一緒に」

千早「遠慮しておくわ、私は『あいどる』になるわけじゃないし」

真「……もやもやしてることがあるなら、口から出すか、体を動かすかした方がいいよ」

千早「別に、もやもやなんて」

真「うちの兄弟弟子が今の千早みたいな顔をする時は、大体言いたいことを言えない時かやりたいことをやれない時なんだ」

千早「……」

真「多分、千早は言いたいことを言えない方なんだろう? 教えろとは言わないけど、我慢は体に悪いよ」

千早「……踊り」

真「やる気になった?」

千早「考えておくわ」

真「いつでも大歓迎だからね!」

千早「ええ」

ぷ「お前ェら調子はどうだい? 緊張して声が出ねぇやつぁいねぇか?」

春香「大丈夫です! 今度こそ、お客さんを、あっと言わせて見せます!」

ぷ「おう、見せつけてやんな! 真はどうだ?」

真「胸が高鳴ってはいますが、いつも通りにやるだけです」

ぷ「心配なさそうだな、響!」

響「絶好調だぞ、ぷろでゅーさー!」

ぷ「頼もしいねえ、んじゃあ俺が呼ぶまでここで待ってな! きっちり煽ってやりやすい空気にすっからよ!」

春香「はい、お願いします!」

ーーーー

ぷ「千客万来ありがとうございます! 覚えておいでのお方もございましょうが、本日これよりの『あいどる』舞台は先日天海春香のお見せ致した異国の見世物にござい!」

若衆「今日はしょっぱいとこ見せるなよ!」「違ぇねぇや!」「ははははは!」

ぷ「心配ご無用、ご用心! 麗しき三人の美女の舞う様に心奪われることなかれ! 歌い踊るは皆様ご存知天海春香! 道場の秘蔵っ子菊池真! そして遥々海を渡った我那覇響!」

春香「よし、行くよ!」

ぷ「今宵限りの歌と踊り、心行くまでお楽しみあれ! お代は見てのお帰りにござい、お待ちかねのご三人、いざや!」

高木「実に良かったよ、私が伝え聞いた『あいどる』の『らいぶ』とは正にこういうもののことを言うんだろうねえ」

ぷ「いいや、まだまだここらで満足するような三人じゃありませんぜ。な?」

真「正直六割と言ったところですかね、緊張して上手く動けませんでした」

響「一人一人は中々良かったんだけど、まとまりが足りなかったさー」

春香「歌声も全然練習通りには行きませんでした、後ろの方にもちゃんと聞こえてはいたと思うんですけど」

高木「はっはっは。ぷろ、やはりお前に任せて良かったよ。彼女たちの輝く姿を見られたのも、そしてこれから更に輝いていくのを見られるのもお前さんのお陰だ」

ぷ「何をもう終わった気分でいるやら、ここからですよ、旦那」

高木「……皆、本当にありがとう。これからも、よろしくお願いします」

ぷ「旦那、頭を上げてくだせぇ。旦那が言い出さなきゃこんなのあり得なかったんだ。頭として、胸ェ張ってくだせぇ!」

高木「うむ……うむ、いや、年甲斐もなく涙がこぼれそうだ。本当にありがとう。ありがとう、ありがとう……」

ぷ「ああもう分からねぇお人だなあ! ほら涙拭いて、顔上げて!」

春香「みーんな帰っちゃったね」

千早「ええ、帰って行ったわ」

春香「笑顔だったの、見た?」

千早「ええ、幸せそうだった」

春香「歌は、不思議だよね。聞いてる人も歌ってる人も、皆幸せになれる」

千早「……」

春香「千早ちゃん、私ももう帰るね」

千早「そう、私も帰ろうかしら」

春香「千早ちゃんは残って」

千早「え?」

春香「残って、舞台に立って、弟さんの為に歌ってみて。もしそれで『あいどる』やりたくなったら」

千早「……」

春香「『あいどる』、一緒にやろう?」

春香「じゃあね、千早ちゃん。先に帰って、お団子用意して待ってるから!」

千早「春香……」

泣くことなら たやすいけれど
悲しみには 流されない
恋したこと この別れさえ
選んだのは 自分だから

群れを離れた鳥のように
明日の行き先など知らない
だけど傷ついて 血を流したって
いつも心のまま ただ羽ばたくよ

蒼い鳥 もし幸せ
近くにあっても
あの空へ 私は飛ぶ
未来を信じて
あなたを忘れない
でもきのうにはかえれない

蒼い鳥 自由と孤独 ふたつの翼で
あの天空へ 私は飛ぶ 遙かな夢へと 
この翼もがれては 生きてゆけない私だから

春香「お帰りなさい、千早ちゃん! 晩ご飯もうすぐ出来るからね」

響「自分もうお腹ペコペコだぞー……お帰り、千早。遅かったね」

真「はいはい、分かったから筋伸ばすよ。今日はいつもよりきつかったから念入りにね。千早、お帰りなさい」

小鳥「春香ちゃん、そっちの白い小皿、っと千早ちゃんもお帰りなさい」

春香「あ、はーい」

ぷ「ふんふん、鰹の良い匂いが……おう、お帰り、千早」

高木「お帰り、如月君。おお、もう夕飯の時間か。今日は皆頑張ったから沢山食べなさい。如月君も影の主役だ、よく頑張ってくれたね」

千早「春香」

春香「ん、どうだった?」

千早「分からなかったわ」

春香「何が?」

千早「私はどうしたいのか、どうしなければならないのか」

春香「そっか」

千早「『あいどる』をやれ、って言わないの?」

春香「決めるのは千早ちゃんだから」

千早「……もう少し、考える時間が欲しいわ」

春香「うん、待つよ。ゆっくり考えて」

千早「ええ……は、春香!」

春香「ん?」

千早「その、ありがとう」

春香「うんっ」

ぷ「ぁんおいーっとりぃっちょいなちょいいなっと」

???「す、すみませーん……」

ぷ「おう? どしたい嬢ちゃん、高木の旦那に用かい?」

???「そそ、その、その、えっと」

ぷ「おっといけねぇ、まずは目を閉じて深呼吸しねぇ。ほれ吸ってー、吐いてー」

???「すーう……はーあ……あ、あの、この間の『あいどる』」

ぷ「嬉しいねぇ観てくれてたのかい! どうだった三人の歌と踊りは!? っとと旦那に用事だったか、おうい高木の旦那ァ!!」

???「ひ、ひぃん!?」

高木「なんだい、そんな大きな声を出して。私にお客かい?」

ぷ「そうそう、こちらのお嬢ちゃんが、ってあれ? どこ行きゃあがった?」

高木「誰もいないじゃあないか、『らいぶ』が終わって人心地ついたのは分かるがしっかりしておくれよ?」

ぷ「へ、へぇ、すいやせん」

高木「ぷろ、おういぷろ!」

ぷ「へぇ、なんでしょう」

高木「なんでしょうじゃあないよ、なんだいこれは」

ぷ「へぇ、多分これは穴でございましょうねえ」

高木「バカ、そういうことを聞いているんじゃあないよ。どうして私の庭に穴が空いているのかと聞いているんだ」

ぷ「はは、旦那もお人が悪い。こんな穴誰かが掘らなきゃあ出来ゃあせん」

高木「ぷろ。お前、さっきまで庭にいただろ」

ぷ「ええいました、縁側で音無さんの茶ァ飲んでまして。春香の作る団子がまぁ美味くてですね」

高木「どうして穴を掘るのを止めず黙って見てたんだい」

???「あ、あのぉ……」

ぷ「見てませんよ俺ァ空を眺めながらお茶を」

高木「だからそうじゃないよバカ。穴を掘っている人をどうして止めなかった? 危ないだろうこんな穴」

???「うう、すみません~……」

ぷ「へぇ、と言われても今しがた旦那を呼ぶまでありゃあせんでしたが」

高木「何、今の今までなかったのに急に穴が空いたのかい?」

???「ご、ごめんなさい~!」

高木「おや?」

ぷ「あん? ってさっきのお嬢ちゃんじゃねぇか、どうしたそんな穴に嵌まっちまって」

高木「だから言ったろう、こういう穴は危ないと。大丈夫かね? どれ、私の手に掴まりなさい」

???「だだだ大丈夫ですぅ、一人で出られます!」

高木「そうかい? それならいいが……お前さん、私に用があるらしいね。今日はどうしたね?」

ぷ「それがあの『らいぶ』を観に来てくれたってんでついさっき例の言葉を」

高木「お前は黙ってなさい。さ、言ってごらん」

???「あの、この間の舞台を見てわ、私も『あいどる』になりたいと思って、それで」

高木「ほう、『あいどる』にか。聞いたかいぷろ、嬉しい話じゃあないか」

ぷ「ええ、こいつぁ目出度い。お嬢ちゃん、ようこそ『あいどる』の世界へ……名前がまだだったな。俺ァぷろでゅーさーってんだ」

高木「呉服屋の隠居、『あいどる』の頭を務めている高木順一郎です」

雪歩「大工の娘、は、萩原雪歩ですぅ!」

ぷ「おう、良い元気だねぃ。これから一つよろしくいこうじゃねぇか」

高木「うむ。よきかな、よきかな」

限界ってんで>>153でひとまずのお開きとさせていただきたく

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