奉太郎「千反田、最後はお前が選べ……」(169)

奉太郎「里志、実はオレは千反田に告白しようと思っている」

放課後、部室にはオレと里志の二人しかいない。

オレは一番信頼できる親友に、募っていた思いを吐露した。

里志は少し驚いたような表情を見せた。

里志「あの奉太郎が告白!? 気は確かなのかい? 奉太郎?」

奉太郎「オレだって人を好きになることぐらいある。お前も薄々分かっていたんじゃないか?」

里志「……まあ、そうだけどさ」

里志はオレから目線を逸らした。

里志「それで、どうしてそれを僕に?」

奉太郎「ああ、実は少し協力して欲しいんだ」

里志「協力? 奉太郎が告白するっていうんならどんなことでも僕は厭わないよ」

里志が微笑みを見せた。

やっぱりこいつに相談して良かった。

奉太郎「別に大したことじゃない。明日、部室には来ないで欲しい。それだけでいい」

里志「部室に来ないで欲しい? どうしてだい?」

奉太郎「……オレと千反田がはじめて会ったのはここだからな。だから、千反田にはここで告白したいんだ」

里志「つまり、僕は邪魔物ってことだね?」

奉太郎「ああ、悪いが……」

里志「あははは、いいよ。でも奉太郎の告白なんて珍しいからな~。カメラを仕掛けておいてもいいかい?」

奉太郎「やめろ」

里志「冗談だよ。奉太郎」

奉太郎「できれば伊原も明日は、来ないようにしてもらいたいんだが……」

里志「お安い御用だよ。明日は僕が摩耶花を誘って、どこかに遊びにでも行ってくるよ」

奉太郎「すまんな。気を使わせて」

里志「ただし……」

里志は椅子から立ち上がり、人指し指を立てて、オレの顔に向けた。

里志「結果報告はきちんとしてもらうよ」

奉太郎「分かってるよ」

里志が再び席につく。

里志「まあ、成功すると思うけどね」

奉太郎「本当にそう思うか?」

里志「奉太郎は不安なのかい?」

里志には、オレの全てを見透かされてる気がする。

奉太郎「それは、まあ、な」

里志「僕は、千反田さんも奉太郎のことが好きだと思うよ」

奉太郎「そうだといいんだがな……」

確かに自信はあった。

千反田のオレに対する態度を見ていても、少なくとも嫌われていることはないはずだ。

里志「健闘を祈ってるよ」
里志は、いたずらっぽい笑みを浮かべて言った。

帰り道。

オレの頭の中には、これまで見た千反田のあらゆる表情が巡っていた。

笑った顔の千反田。

驚いた顔の千反田。

怒った顔の千反田。

泣いた顔の千反田。

明日、オレと千反田の関係に間違いなく一つの結論がでる。

オレは明日、どんな顔で千反田に告白しているのだろう?

千反田はなんと言うだろう?

期待と不安が入り混じっていた。

夜、オレは千反田への告白の言葉を考えていた。

「好き」

たった二文字で表せる感情を伝えるのが、どれだけ難しいだろうか?

二人がはじめて出会った場所。

我ながらシュチュエーションは、完璧だと思っていた。

あとは言葉だけだ。

千反田には結構ロマンチックなところがある。

どんな言葉が千反田に最もよく響くだろう。

結局、結論がでないまま眠ってしまった。

朝。

いつも通りの時間に起きて、いつも通りの時間に家を出る。

全てがいつも通り。

一つだけいつもと違うのは、朝からオレの心臓が高鳴っていること。

こんな気持ちになるのはいつぶりだろう?

オレは千反田と出会ってなかったら、どんな高校生活を送っていただろう?

灰色の生活から救ってくれたのは千反田だ。

千反田が、オレの毎日に色を与えてくれた。

える「おはようございます。折木さん」

奉太郎「ち、千反田!?」
声が裏返ってしまった。

える「すみません。少し驚かせてしまいましたか?」
奉太郎「い、いや、少し考えことをしててな……」

艶のある黒髪。

吸い込まれてしまいそうな大きな目。

白く透き通った肌。

鼻腔を通って伝わる自然ないい匂い。

える「何を考えてたんですか!? 私、気になります!」

そしてこの好奇心。

この少女に、オレは8時間後には告白している。

これまたオナニー臭がやべえな

奉太郎「それは……そうだな。放課後に教えてやる」

える「どうして今では駄目なんですか?」

奉太郎「オレにも色々と事情がある」

える「……絶対ですよ! 折木さん!」

奉太郎「分かった。分かった」

なんとか千反田をやり過ごした。

やがて授業がはじまったが、全く頭には入ってこない。

頭の中は千反田のことばかり。

そして、その時は刻々と迫っていた。

授業が全て終わった。

いよいよ放課後だ。

オレは荷物をまとめ、真っ先に教室を出ようとした。

だがそのとき、尾道に呼び止められた。

尾道「折木、お前今週の宿題出したか?」

オレはその返についてはぬかりがない。

もちろん今回も出している。

奉太郎「出しましたよ」

尾道「出したと言ってもないものはないんだ。とりあえず職員室に来い」

奉太郎「でもオレは急いでいるんです」

尾道「宿題より大事なものなんてない。とにかく来い」

奉太郎「……分かりました」

これ以上、尾道と問答を続けても無駄だ。

結局、オレは二度同じ数学のプリントを解くはめになった。

こんなときに……なんてタイミングの悪い禿だ。

今日は手筈通りにいけば、今、部室にいるのは千反田だけだ。

だが、誰も来なければ帰ってしまうかもしれない。

全力で数学の問題を解く。
一度は解いた問題だから、一回目ほど時間はそうかからない。

しかし、なかなかの量があったため、30分ほどかかってしまった。

できたプリントを尾道に提出し、走って部室に向かう。

プリントを出したときも、尾道はなにか小言を言っていたが無視した。

古典部の部室である地学準備室へ向けて、一段一段階段を登る。

階段を登るごとに、自分の気持ちも高まっていく。

とうとうこのときが来た。

オレと千反田の関係が今日変わる。

階段を登り終えた。

部室はもうすぐそこだ。

千反田の話し声が聞こえた。

良かった。

千反田はまだ部室にいる。


話し声? 誰か部室に千反田の他にいるのか?

足が止まった。

神経が耳に集中する。

いったい誰が千反田と話している?

この声は……里志?

どうして里志が今、部室にいる?

昨日のオレが言ったことを忘れたのか?

これでは今日中の告白はできそうにない。

また計画を練り直さなくてはならない。

オレの足は、再び部室へと動き出した。

段々、会話の内容がはっきりと聞こえてくる。

里志「千反田さん、僕と付き合ってくれないかな?」

オレの足は再び止まった。

嫌な汗が滲み出る。

里志「僕はさ、千反田さんのことがずっと好きだったんだよ」

里志、お前は何を言っている?

里志「だから僕達がはじめて会ったこの場所で、今日千反田さんに告白しようと決めたんだ」

殺意が沸いた。

える「いきなり……そのようなことを言われても……困ります」

里志「まあ、それは困るのも無理はないよね~。だって千反田さんは、奉太郎のことが好きなんでしょ?」
える「……」

書き溜めがなくなりました。

更新スピード落ちます。

氷菓のssってエロかオナニー臭えラブコメしかねえよな
元はミステリーなんだろ?
つまんねえから少しは考えろよ

里志「ばれてないとでも思ってたの? あんなにあざといぐらいに奉太郎に付き纏ってた癖にさ」

える「……」

里志「あはは、でも僕は千反田さんのそういうところも好きだよ?」

える「摩耶花さんは……」
里志「ん? 何? 聞こえない」

える「福部さんは摩耶花さんのことが、好きではなかったんですか?」

里志「僕が一度でも自分から、摩耶花のことが好きだ、なんて言ったかな?」

える「し、しかし、摩耶花さんは福部さんのことを……」

里志「そんなことは関係ないよ。僕はむしろ摩耶花のことは嫌いなんだ」

える「そんな……ひど過ぎます! 摩耶花さんはあんなに福部さんのことを……」

里志「一方的な好意ほど迷惑なものはないさ」

える「……」

里志「それで、千反田さんは僕の告白を受け入れてくれるのかな?」

える「……」

里志「あははは、睨んでる千反田さんもかわいいね。でも黙ってるってことは肯定だよ?」

える「……お断りします」
里志「あーあ、千反田さんも何考えてるか分からないよ。僕の告白を断って盗み聞きするような男を好きになるなんて」

里志「そこにいるのは分かってるよ。入ってきなよ。奉太郎」

つじつま合わせにキャラdisまでやりはじめたらもう終わり。
これはまとめに載らねえわ
つまんね

オレは今、ドアを開けてしまって大丈夫だろうか?

里志の顔を見てしまえば、オレは自分を抑えていられないかもしれない。

える「折木さん? いるんですか?」

里志「さっき足音がしてからずっと僕達の会話を聞いていたみたいだよ。全く趣味が悪い」

オレはゆっくりとドアを開けた。

徐々に見慣れた部室が、視界に入る。

まず最初に目があったのは――――千反田。

その大きな目からは、大粒の涙が溢れ出ていた。

目線を移す。

千反田が泣いているのは、全部こいつのせいだ。

友達が告白すると聞いたのにそれより先に告白するのは趣味が悪くないのかと小一時間問い詰めたい

>>40
ハッピーエンドに持ってくとしたらそれは全部演技でしたで終わるからいいだろ
主人公マンセーでサブキャラdisる展開はどのssでもつまんねえわ

見慣れきったその顔。

人を馬鹿にするような少し上がった口角。

今では全てが憎たらしい。

拳に自然と力が入る。

ゆっくりと里志に向かって足が動く。

里志「奉太郎、僕を殴るのかい? いいよ。そうすれば奉太郎を退学に追い込むこともできるからね」

もう駄目だ。

こいつは殴るしかない。

そのとき、後ろからオレの歩みを阻むものがあった。
える「いけません! 福部さんを殴ってはいけません!」

こんなクソみたいなssまとめに来ねえから保守してやってんだろ
文句いうならレスつけてやれよ
書きためして投下が5分おきとかするレス乞食なんだからレスしてやんなきゃ淋しいだろ

猿されるほど容量使うほど1レス長くねえだろ
何言ってんだ?

里志「やっぱり千反田さんは優しいね。僕を守ってくれるのかい?」

える「違います」

千反田の声は今までに聞いたことがないほど、冷たい声だった。

える「折木さんがここで福部さんを殴ってしまったら、最終的に得をしてしまうのは福部さんです」

里志「さすがは学年トップだね。こんなときでも冷静だ」

える「大体、この一件は私が福部さんの告白を断れば、それですむ話です」

千反田のその発言の後、突然、里志は狂ったように笑いはじめた。

奉太郎「なにがおかしい」
里志「いや、ふふ、なんでもないよ。ただ考えが浅いな~と思ってね」

える「そのようなことを言っても、私は騙されません」

里志「じゃあ言うけどさ。千反田さん、千反田さんには許嫁がいるでしょ?」

その瞬間、オレを止めるために密着していた千反田の身体が震えた。

える「それが、どうしたと言うんですか?」

里志「強がっても駄目だよ。千反田さんは基本的に異性との親しい交際は禁止されている、そうだね?」

える「……」

千反田のオレの身体を抑える力が段々弱まっていく。

奉太郎「里志、それがどうしたっていうんだ?」

里志は再び笑みを浮かべた。

里志「一年生のときから、奉太郎と千反田さんは、よく二人でいることが多かったよね?」

確かにオレは千反田と一緒にいることは多かった。

しかし、他人に言われて恥ずかしいようなやましいことは一切してない。

奉太郎「それがなんだ?」

里志「もしその二人きりのときの写真を僕が持っているとして、それを千反田さんの両親に見せたらどうなるかな?」

奉太郎「なっ……」

里志は巾着からスマートフォンを取り出すと、画面を操作しはじめた。

そして、画面をオレと千反田の方へ向ける。

える「それは……」

そこにはオレと千反田の思い出の切れ端が詰まっていた。

部室。

川辺。

文化祭。

初詣。

そして、その全てに共通するのはオレと千反田が二人きりで写っていること。

里志「これを見たら千反田さんのご両親はどうするかな~?」

える「どうして……どうして……こんなことをするんですか?」

千反田の声は掠れて、途切れ途切れだった。

里志「そんなの決まってるじゃないか。千反田さんのことが好きだからだよ」

狂っている。

こんな奴を親友だと思っていた自分に寒気がした。

奉太郎「里志、こんなことをして、本当に千反田の心が自分に向くと思っているのか?」

里志「相変わらず奉太郎は、僕に対して上からだね」

里志「僕は昔から奉太郎のそういうところが大嫌いだったんだよ」

里志の口調が変わった。

里志「いつもいつもいつもいつも奉太郎は、僕にはできないことを簡単にやってみせた」

奉太郎「……」

里志「僕はその度に劣等感に苛まれたよ。僕は奉太郎には勝てないってね……」

里志「でもね! 今回だけは絶対にそうはいかない! 千反田さんだけは絶対に奉太郎の思い通りにはさせない!」

奉太郎「お前はそんなくだらないことのために、千反田の感情を弄ぶのか!?」

里志「そうでもないさ。僕は千反田さんを愛しているつもりだよ」

里志の口角が上がる。

スマートフォンを壊してしまえば証拠はなくなる。

オレは機会を伺っていた。
里志「さっきから僕の動きを見てるみたいだけど、スマホを奪って壊そうとでもしてるのかな?」

奉太郎「……」

里志「だとしたら無駄だよ。データは全部パソコンにスペアがあるからね」

里志「残念でした。あははははは」

今すぐにでも殴ってやりたかった。

だが千反田がオレの背中で泣いている。

それがオレに、歯止めをかけてくれていた。

里志「まあ、せいぜい考えるんだね。返事の期限は明日。もし断れば、この写真をばらまく」

える「……」

里志は部室から出て行った。

部室には千反田のしゃくり泣く音だけが響いている。

すみません。限界です。

飯買ってきます。

今、コンビニです

最後まで書きあげたいので保守させて下さい

かまってちゃんアピールうぜえわ
書きため終わってからスレ立てりゃいいだろ
くっせえからもう本文以外書き込むなや

次、ご飯食べ終わりました!保守ありがとうございますとか書き込んだら荒らす

ご飯食べ終わりました!保守ありがとうございます

おかえりー
待ってたからはよ

オレは千反田を抱き寄せた。

える「折木……さん……?」

奉太郎「すまん。千反田……全部オレのせいだ……」
千反田は涙を拭いた。

える「いえ、折木さんはなにも悪くないです。こんなことになるなんて誰も思いません」

奉太郎「千反田……」

この少女をずっと抱きしめたかった。

守ってあげたかった。

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
ほうたろうイケメンすぎ!カッコヨス!><
素敵!抱いて!めちゃくちゃにして!

なんか誤解されとんな……(´・_・`)
俺荒らし向いてねえな
もう消えるわノシ

える「折木さん、私はもう大丈夫です」

千反田がオレの身体を離れる。

える「明日のことを話しあいましょう」

奉太郎「ああ、しかしもう下校時間だ。とりあえず外に出るぞ」

える「はい」

荷物をまとめはじめる。

明日にはこの部室で……

里志はやってはいけないことをした。

あいつは許せない。

オレと千反田は学校を出た。

日は西に傾きかけている。
える「少し川辺をお散歩しませんか?」

奉太郎「ああ……」

千反田は、どうしてこんなに落ち着いていられるんだろうか?

混乱しているのは、むしろオレの方なのかもしれない。

オレ達は川辺に腰掛けた。

える「折木さん、やっぱりまだ私、ダメみたいです」
座ってすぐに千反田が言った。

さっきまでのはやっぱり強がりだったのだろうか。

無理もない……

千反田は泣き続けた。

オレにできるのは、ただただ泣く千反田の頭をそっと撫でてやるだけ。

自分の無力さをのろった。
しかし、いつまでも泣いていてもいけない。

結論を出さなければいけない。

すみません

ちょっと出て来ます。
なるべくはやく戻ります

ただいま戻りました

需要あったら続きかきます

奉太郎「千反田……」

オレは再び千反田を抱き寄せた。

さっきよりも強く。

千反田もオレの腰に手を回した。

奉太郎「千反田、オレはお前が好きだ」

える「!……」

奉太郎「だが里志のことを断れとは言わない……」

奉太郎「千反田、最後はお前が決めろ……」

える「はい……」

千反田はオレから身体を離した。

明日、全て決まる。

オレか里志か……

古典部が壊れていく。

でももう後戻りはできない。

もし千反田が里志を選んだらそのときオレは…

翌朝。

いつもと変わらない朝がきた。

いつも通りの時間に起きて、いつも通りの時間に家を出る。

一つ違うのはオレの心境だけ。

里志はどうしてこんなことをしたんだろう?

千反田はどうするのだろう?

考えれば考えるほど分からなくなった。

今日も授業は頭に入ってこない。

千反田とも里志とも今日は顔をあわせてない。

その時は刻々と近づいていた。

7限目終了のチャイムが鳴る。

オレは昨日とは違い、ゆっくりと教室を出た。

部室への階段を一段一段登る。

いやだ。

行きたくない。

でも行かなきゃいけない。
気持ちが揺れていた。

とうとう部室の前まで来てしまった。

人の気配がある。

千反田と里志はもう来ている。

オレはゆっくりとドアを開けた。

見慣れた部室。

ここでオレと千反田ははじまった。

そして、今日終わるかもしれない。

える「折木さん……」

里志「やあ奉太郎、まさか逃げずに来るとは思わなかったよ」

里志は憎たらしい笑みを浮かべている。

千反田は自分に靡くと確信しているのだろう。

奉太郎「逃げるわけないだろ」

オレは短く吐き捨てた。

える「……」

里志「じゃあ千反田さん、奉太郎も来たことだし、結論を聞かせてもらおうか……」

える「……」

里志「どうしたんだい? 黙ってるだけじゃ分からないよ?」

える「……福部さん、もうやめませんか?」

千反田の目から一筋の涙が零れた。

里志「今さら何を言っているんだい?」

える「私、いやなんです! 今までの楽しかった古典部が壊れていくのをみるのは……」

千反田……

里志「はあ、まだそんなことを言っているの……」

里志が椅子から大きくたてて立ち上がった。

里志は千反田へ向け真っ直ぐに距離を詰めていく。

顔の表情から精神状態が穏やかではないことは、分かっている。

たが気付いたときには遅かった。

里志の拳が千反田の頬を捕らえる。

千反田が音をたてて、椅子から転げ落ちる。

里志はその千反田の髪を掴み、怒鳴った。

里志「いい加減にしろって言ってんだよ! お前の綺麗事にはいつも反吐が出るんだよ! とっとと僕の告白を受けいれりゃいいんだよ!」

殺す。

足が動いた。

える「駄目です折木さん! 手を出しては……いけません!」

千反田の悲痛な叫びがオレの足を止めた。

どうして千反田はここまで……

える「手を出したら……負けです……」

里志が狂ったように笑い出した。

里志「あははははは、やっぱり金持ちの娘は頭の中お花畑だね。世の中、理屈だけで生きていける程甘くないよ」

奉太郎「その手を離せ……」

里志「千反田さ~ん、はやく僕の告白を承諾してよ。このままじゃ僕、奉太郎に殺されちゃうよ~」

奉太郎「里志、こんなことをしてまでお前が欲しいものはなんだ!?」

里志「はあ~じゃあもう本当のこと言っちゃおうかな~」

里志「はっきり言ってさあ、僕はこんなブスはどうでもいいんだよ」

奉太郎「なんだと!?」

里志「僕が欲しいのはさ、金だよ。金。いや~、本当に驚いたよ。まさか豪農のお嬢さんがこんな身近にいるなんてさ~」

奉太郎「金だと!? お前はそんな……」

里志「金持ちの家の千反田さんや奉太郎には分からないよ。貧乏の辛さはね……」

里志「千反田さんとゆくゆくは結婚して、千反田さんの両親が死ねば、土地は全部僕のものになるからね。千反田さんは風俗にでも飛ばせばいいし」

奉太郎「……」

里志「あきれてものも言えないかい? 貧乏人の気持ちは貧乏人にしか分からないよ」

える「福部さんは……古典部で楽しいと思ったことはなかったんですか?」

千反田が掠れるような声で言った。

える「福部さんのあの笑顔は全て……嘘だったんですか?」

里志「僕が本気で楽しいと思ったのか一つもないよ」
える「そう……ですか……」

千反田は涙を拭った。

里志「さあそろそろ聞かせてよ。千反田さんの答えを……」

える「……」

いよいよこの時が来た。

オレか里志、千反田は……

える「私は……」

空気が張りつめている。

全てが神経が千反田の言葉を受け止めようと、集中する。

里志は余裕そうな笑みさえ浮かべている。

千反田の髪はまだ掴んだままだ。

千反田に対する脅しのつもりか?

残念だったな里志。

千反田はそんなに弱い奴じゃない。

える「私は……福部さんとお付き合いします……」

終わった。

全て終わった。

里志は再び高笑いをはじめた。

里志「やっぱり千反田さんは優秀だね。さすがは学年トップだよ。あはははは」
そのとき、里志の千反田の髪を掴む手が緩んでいた。
里志が油断したその瞬間、千反田は里志の手からスマートフォンを奪い取った。
える「折木さん!」

千反田から里志のスマートフォンが、オレに投げられる。

オレはそれをとると、すぐさまそれを地面に叩きつけ踏み潰した。

そうか

千反田ははじめからはこれを狙って……

里志「この糞女ぁ!」

里志が拳を振り上げる。

もう記録媒体はない。

オレは里志の顔へ右ストレートを打ち込んだ。

里志の身体が2mほど空中を飛ぶ。

里志「あぐっ……」

奉太郎「これ以上千反田を傷つけることは、オレが絶対に許さん」

里志「僕にこんなことをしてどうなるか分かってるのか? スマートフォンを壊してもバックアップはあるんだ……」

奉太郎「ダウト」

里志「?」

奉太郎「実はバックアップなんか本当はない。違うか?」

里志「なにを言って……」
奉太郎「一年生のときに古典部員でチャットをしようと言ったときがあったよな?」

奉太郎「あのときお前は、自分はパソコンを持ってないから無理だ、と言った。あれが嘘である可能性は低い」

里志「願望を語るのもいい加減に……」

奉太郎「なによりお前が今日はじめてかいているその冷や汗。それがなによりの証拠だ」

奉太郎「お前の負けだ。里志」

里志「……」

奉太郎「今すぐ古典部から……」

える「待って下さい!」

奉太郎「千反田……?」

える「福部さん、お願いですから古典部をやめないで下さい!」

奉太郎「なにを言っているんだ? お前をこんなに苦しめた奴だぞ?」

える「誰にでも間違いはあります。でも大事なのは、そこからどうするかだと、私は思うんです!」

える「福部さんだって大事な古典部の一員です! あの氷菓の謎だって一緒に考えてくれたじゃないですか!」

里志「……」

える「古典部は4人で古典部です! 誰一人欠けてもここまでくることはできませんでした!」

奉太郎「千反田……」

える「ですからお願いです! 古典部をやめないで下さい!」

千反田が頭を下げた。

里志は立ち上がり、覚束ないあしどりで入口へ向かった。

千反田「福部さん!」

里志は無言でドアを開けた。

里志「考えておくよ」

千反田の顔に輝きが戻る。
える「ありがとうございます!」

部室に残ったのはオレと千反田。

二人きり。

千反田が顔をあげた。

オレに微笑みかける。

える「ありがとうございました。折木さん」

里志の気持ちも少しは分からなくもないかもしれない。

あんなことを言っていたが、多分本当はあいつも……

える「ところで折木さん、私、折木さんが昨日の朝何を考えていたのか、まだ聞いてません!」

奉太郎「気になるか?」

える「はい、私、気になります!」

千反田が満面の笑みをオレにむける。

今度はオレの番だな……

奉太郎「千反田……」

オレは千反田の両肩に手をおき、真っ直ぐに千反田の顔を見つめた。

奉太郎「オレが朝、考えてたのはお前との未来だ」

奉太郎「オレと付き合ってくれ!」

千反田の目が驚いたように見開く。

顔が紅潮する。

オレも同じなのだろうか。
える「はい……」

千反田がゆっくりと目を閉じる。

奉太郎「いいのか?」

える「はじめては折木さんがいいんです……」

オレはゆっくりと千反田に唇を重ねた。

このまま時が止まってしまえばいい。

そう思った。



Fin~

>>165
乙!

ここまで読んで下さった方々、支援して下さった方々、ありがとうございました。

よかった

>>166>>168
途中色々グダってしまってすまんかった

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