ハニー・ポッター「誰一人だって、欠けさせないわ」 (967)

ハグリッドの小屋

ドンドンドンッ!

ハニー「ハグリッド!開けなさい!私よ!」

ガチャッ!

ハグリッド「おぉハニー!『透明マント』被っちょるんだろうが俺には分かるぞ!お前さんの豚な俺ぁ、お前さんがいるこの空間の空気だけでそりゃもう!ヒンヒン!」

ロン「おいおいいいなハーマイオニーといいそのスキル……お、わ」

ハーマイオニー「今までどこに……きゃぁ!?」

ハニー「っ……ハグリッド!その怪我!」

ハグリッド「あー、あんまり騒がんでくれ、大丈夫だ、大丈夫。なんでもねぇんだ、うん。ほれ、入れや。お前さんたちが来るだろうとおもって茶の用意をしとるんだ」

ハニー「っ、出来る豚のあなたらしいわね、けれど……血まみれじゃないの、あなた」

ハグリッド「なんでもねぇんだ、ほーんとだ。ほれ、ハニー。あー、俺がおめぇさんに命令なんてでき……うぉ!?」

ハニー「……」

ハグリッド「あー、ハニー!?俺ぁ、そりゃぁ、お前さんに腰のあたりに抱きつかれるのは本望っちゅうかそりゃもう天にも昇るっちゅうかあれここ天かあれハニーそうかお前さん天使だったんか知っとったが」

ロン「おいふざけんな!女神だろ!」

ハーマイオニー「茶々いれないの」

ハニー「……えぇ、そうよ。この私の加護があったくせにそんな体たらくはなんてざまなの、ハグリッド!私の豚!私……わたし、心配したんだから」

ハグリッド「……ありがとうよ、ハニー。あぁ、俺なら大丈夫だ。ほれ、そうさ。お前さんらが待ってるってぇのに、俺がどっか行っちまうわけねぇだろうが?え?」

ハニー「……当然よ。あなたは私の、豚さんなんだもの」


ハニー「わたしの大切な人は、誰一人だって、欠けさせないんだから」

ハグリッド「俺ぁ今死んでもいい」

ロン「残念だったねハグリッド!僕らは君より随分と前にハニーからのもっとありがたいあぁそりゃもう」

ハニー「ロン」

ロン「なんだいハニー!」

ハニー「雪の中に蹴とばされるのと、ヒンヒン鳴くの。どっちがいいのかしら」

ロン「どっちもさ!もちのロンでうわっ!?ぶはっ!ありがとうございまヒンヒン!」

ハーマイオニー「文字通り頭冷やしなさいよ、全くもう」

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ハニー・ポッター「私が、魔法使い?」
ハニー・ポッター「賢者の石、ですって?」
ハニー・ポッター「賢者の石は、どうなったのかしら」

ハニー・ポッター「秘密の部屋?なぁに、それ」
ハニー・ポッター「スリザリンの継承者?なんなの、それ」

ハニー・ポッター「脱獄囚の、シリウス・ブラック?」
ハニー・ポッター「『エクスペクト・パトローナム!』」
ハニー・ポッター「『守護霊よ、来たれ!』」

ハニー・ポッター「勝つのは私、そうでしょ?」
ハニー・ポッター「何がこようと、受けて立つわ」
ハニー・ポッター「いつか必ず、来るものは来るのよ」
ハニー・ポッター「来るものは来る、来た時に受けてたてばいいのよ。勝つのは、私よ」

ハニー・ポッター「騎士団、いいえ。私の豚団ね、そうでしょ?」
ハニー・ポッター「『私は、嘘をついてはいけない』……?」

のつづきやで

ロン「しっかしほんと、ハグリッド。君傷だらけだなぁ。ハニーの顔みればすぐ痛みも引くだろうけど、何せハニーだし」

ハニー「違いないわね。私の言葉を聞いてるうちは幸福感しか感じないはずだもの」

ハグリッド「ほんとだな、あぁ。全然痛くねぇ」

ハーマイオニー「麻酔か何かにしないで頂戴。ねぇハグリッド、そんなわけないわ。その歩き方、あなた、肋骨が折れているんじゃない?」

ハグリッド「な、なんのこっちゃ。俺ぁいつもの通り元気爆発薬だぞ!うん!イテテッ」

ロン「ほらハグリッド、ハニーハニー」

ハーマイオニー「だから薬薬みたいに言わないの」

ハニー「……私に仕えるのは当然至極のことだけれど、ハグリッド。当然、私は嘘をつかれるのだって嫌いよ?」

ハーマイオニー「嘘というか、強がりというか……髪の毛も血でべったりだし、誰が見てもあきらかだわ」

ロン「顔中傷だらけだもんな、手も足も。あぁ、そうだね。なんでもなかったんだろうさハグリッド、君が重症だって言う時はきっとあの蜘蛛の化け物に食われたときくらいのもんなんだろうな、その分じゃ」

ハグリッド「そりゃ本望だがよぉ……あー、そうさな。ちーっと、うん。怪我をした。任務の……おっと!」

ハニー「ハグリッド……?」ツツーッ

ハグリッド「オッホォーヒンヒン!ダンブルドアから受けた任務で、って、いけねぇ!いけねぇ!話しちゃなんねぇんだ!」

ハーマイオニー「もうほとんど言ってしまったようなものだわ、ハグリッド……巨人に襲われたの?」

ハグリッド「!?な、なんのこっちゃ!?巨人!?なんだそりゃ、おいファング、お前さん巨人って知っとるか?え?」

ファング「バウアウッ!」

ハグリッド「シラネーヨー……ほれ!ファングもそう言っとる!」

ロン「去年君自身のことで散々揉めたじゃないか、何言ってんだかまったく」

ハニー「誤魔化すのは下手ね、ハグリッド。それにファングは今、そうね。肯定の意味、だったように思うわ……」

ハーマイオニー「犬語を勉強しているのは分かったから本題の方に目をつけて頂戴、ハニー」

ハグリッド「ん……まぁな、頭がえぇお前さんたちのことだ、うん。気づくに違いねぇと思っとったわい。ハニーおるし」

ロン「あぁ、ハニーいるからな」

ハニー「全知の女神ね」

ハーマイオニー「拝ませてもらうわ、はいはい」

ハグリッド「巨人、そうだ。俺ぁ夏休みが始まってからずーっと、ダンブルドア先生様の命令で巨人を探しとったんだ」

ロン「奴さんたちって僕らの何倍も大きいんだろ?ハグリッド、君ってそんなに目が悪かったっけ?豚リストにそんな届出はされてないように思うけど」

ハーマイオニー「彼らは海外で隠れて生活してるのよ、ロン……あと何よまたそういうあるんだかないんだか頭が痛くなりそうなそれは」

ハグリッド「そう、連中は山に隠れとる。まぁ、ロンの言うことも間違っちゃいねぇ。探し方を知ってりゃ出くわすのはそう難しくねぇもんだ」

ハーマイオニー「そんなものなの……でも、待って。それならふとした拍子にマグルに見つかることだって」

ハグリッド「あるらしい。んで、遭難事故だとかの扱いになるわけだ」

ハニー「……あなたは帰ってこれてよかったわ、ハグリッド。帰巣本能、というわけね」

ハーマイオニー「だから、ハニー、それは犬だってば」

ロン「ハニーが豚だって言ったら犬だって豚だよ。そうだよな、ファング」

ファング「バウワウッ!バフッ、ブヒンッ!」

ハーマイオニー「……ファングの健気さに泣けてくるわ」

ハニー「……牙豚?」

ハーマイオニー「やめてあげて」

ロン「なぁハグリッド、ハニーの手とか息とかをわずらわせる前に『屋敷しもべ妖精福祉振興協会』っちまえよ」

ハーマイオニー「あら正式名称でどうもありがとう、だけど『反吐』じゃないって何度言わせるつもりかしら!」

ハグリッド「しかしなぁ、あー」

ハニー「あなたが話さないと言うのなら、私の夏のことも話してあげないわよ、ハグリッド。吸魂鬼に襲われたこと、とかね」

ハグリッド「俺ちょっくらアズカバンに再投獄されてくる……なんだって!?吸魂鬼がハニーんとこに!?なんだそりゃ!あいつぁなーにやっとったんだ!?」

ロン「誰のこと言ってんのさ……でも、なんだったかな。その吸魂鬼は魔法省と関係無いの一点張りだったたしいよ、ハニーの退学がかかった裁判によると」

ハグリッド「!? ハニーが退学!? はに、なっ、そんなもん、それじゃぁこのハニーは……俺達の、夢!?」

ハニー「そして希望ね、えぇ」

ハーマイオニー「集めてやまないでしょうけど実体よ。退学は逃れられたの。そのあたりのハニーの夏休みの、夜の事以外のことを、ハグリッドがやっていたことを教えてくれたら話すわ」

ハグリッド「……仕方ねぇ、うん。あっ、全部話すから夜のそのナニかも教えちゃくんねぇか?え?」

ハーマイオニー「無理ね、これは私だけの……きゃぁ!?」

ハニー「そんなこと言わずに、ハーマイオニー。そうね、あなたと私だけの秘め事でもいいけれど、みんなに幸せを分けるのも悪くない、そう思わない……?」

ハーマイオニー「ちょ、っと、ハニー!やめっ、そんな、分け、あぁ、そんなの、あなたがいればいつだって、周りの人は『三本の箒』の店内みたいに暖かに、決まってるわ……」

ロン「つづけて」

ハグリッド「どうぞ」

牙豚「ヒンヒン!」

ハグリッド「ハーマイオニー、ほれ、紅茶だ。落ち着いたかい」

ハーマイオニー「フーッ、フーッ、どうも、えぇ……ハニー、覚えてなさい。何が分けるよ、大体いつも誰かがいるからそれこそいつものことじゃないのよ」

ロン「どうぞるのは僕ら豚の役目だからね、あぁ。地球の反対側にいても駆けつけるよ、ハニーの後光届くし」

ハニー「全世界余すことなくね、えぇ。さっ、ハグリッド」

ハグリッド「あー、そうさな。どっから話すか……とにかく俺と、それにマダム・マクシームは学期が終わるとすぐに出発したんだ」

ロン「へーぇ、ハグリッド!やったじゃないか!」

ハグリッド「おぉ、ありが……いやちげぇ!ちげぇぞ、うん!オリンペが来てくれたのはダンブルドアの言いつけだからだ、あぁ、そりゃぁちーっとは期待して」

ロン「本音」

ハグリッド「よっしゃぁ!ルビウスのホグホグがワツワツだ!って、うん」

ロン「処分はおって連絡するよ、会議の後にね」

ハグリッド「言わせといてあんまりじゃねぇか!?」

ハニー「……?」

ハーマイオニー「聞かなかったことにしていいわ、ハニー。ハグリッド、話の続きを。マダム・マクシームもあなたの任務についてきてくれたのね?」

ハグリッド「あぁ、一度も弱音を吐かんかった。男の俺でさえくじけっちまいそうな事が何度もあったのによぉ。あの人は強ぇ、身なりのえぇ、きれいな人だ……ハニーくれぇに」

ハニー「あなたが選んだのなら認めてあげるわ、えぇ。高貴さや可憐さでは私に軍配が上がるでしょうけれど」

ロン「僕にとっちゃ儚さも伝説的さも道徳的さも家庭的さも君のスニッチ・キャッチ勝ちだよハニー!もちのロンで!」

ハグリッド「一ヶ月かかったな、連中の隠れ家にたどり着くまでに」

ロン「一ヶ月!?なんだいそりゃ、まさか君達、歩いて行ったのかい!?移動キーとか、そんなもんも使わずに!?マーリンの髭!」

ハーマイオニー「ハグリッドたちは見張られていたのよ、きっと。ダンブルドアに信用されている二人が一緒に行動を起こすんだもの、目立たないわけないわ」

ロン「背の高さとか?」

ハーマイオニー「もはやわざとでしょあなた」

ハニー「揉めないの。ダンブルドアに味方している二人が何かするのを、あの人たちが黙って見過ごすわけがない、そういうことよね?あの、魔法省が」

ハグリッド「そうだ、うん。ハニーは賢いなぁ、知っとったが。俺達は魔法省に追跡されてたもんで、表向きは普通に、なんだ。休暇を過ごすふりをしとったんだ、途中まで」

ロン「ふりのつもりが本当に楽しんじまってそのせいで一ヶ月かかったとかはなしだぜ、ハグリッド」

ハグリッド「な、なんのこっちゃ、わかんねぇな、うん。ファングもそう言っちょる、なぁファング!?」

牙豚「ヒンヒン!」

ロン「いや、今のハグリッドは嘘をついてるって言ってるじゃないか、何言ってんのさ」

ハーマイオニー「私からしたらあなたこそ、よ。私というか、世間一般の常識は」

ハニー「私がどうしたの?」

ハーマイオニー「えぇ、あなたこそが最早常識なのよね、分かったわよ、もう」

ロン「ハーマイオニー、諦めも大事だぜ」

ハーマイオニー「金言をどうもありがとう、身に染みるわ」

ハグリッド「とりあえず、オリンペの学校を目指しとるフリをしてフランスに入った。そのあたりで連中を撒けてな。どこだったか、ディー、あー」

ハニー「私?」

ハグリッド「そう、そこだ。ディー・ハニー。あぁ、お前さんみてぇに綺麗な町だった。ヒンヒン!」

ハーマイオニー「せめて地名には進出しないで」

ロン「ダイアゴンはそろそろだろうけどね」

ハーマイオニー「そんな話あったわねやめなさいってば。ディージョン、のことじゃない?えぇ、あそこって本当にいいところよね!私、一昨年のバカンスで——」

ロン「ハーマイオニー、おいおい。今君のバカンスの話はいいじゃないか。マーリンの髭」

ハーマイオニー「散々話題ブレさせてたのは誰よ」

ハニー「あとでゆっくり聞くわ、ハーマイオニー。後で、ゆっくりね。それで?」

ハグリッド「あぁ、監視の目がなくなったんで、オリンペも、俺もちょいと魔法を使いながら旅が出来た。いい旅だった、うん。途中で狂ったトロール二匹と出くわしたりしたがよぉ」

ロン「バレエでも教え込もうとしてた奴がいたのかい?どっかのバーナバスみたいに」

ハグリッド「いんや、どっちの棍棒がどっちのだったかで喧嘩しとったみてぇだ……オリンペが畳んじまったが。文字通り。素手で」

ハーマイオニー「魔法ってなんだったかしら」

ハニー「私の魅力の一つね」

ハーマイオニー「否定はしないけど、そういうことじゃなくって」

ハグリッド「んで、ダンブルドアに教えてもらった、奴さんたちが隠れてるっちゅう山のあたりにたどり着いたんだ」

ロン「なんでも知ってるんだなぁ、あの同胞」

ハニー「……少しくらいそれこそ分け与えればいいのだけれどね」

ハーマイオニー「? 随分とお世話になっていると思うわよ、ハニー?」

ハニー「……どうかしら。それで、魔法で巨人を探し出したのね?」

ハグリッド「あー、いんや。連中の近くじゃ魔法を使わなんだ……あいつらは魔法使いを毛嫌いしとるからなぁ」

ハーマイオニー「確執があるからこそ隠れているんだものね……刺激すると何をされるか分からないわ」

ハグリッド「あぁ、そんで、近くに『死喰い人』の奴らもおるんじゃねぇか、ってダンブルドアは考えとってな。そっちの目を引かないようにしなくちゃなんねぇってんで、魔法はお預けだった。俺とオリンペはちっとばっかタフだもんで、魔法がなくともその山ん中を歩き回るのは大変じゃなかったんだ」

ロン「歩くっていうよりは駆け抜けてたんだろうな、って想像つくよ、あぁ。それで?」

ハグリッド「見つけた。ある夜尾根を越えたら、下の方にいくつも焚き火が見えた。その周りにおったんだ……『動く山』が」

ハーマイオニー「あー……あなたも私達から見ればそんなようなものだけど、本物の巨人って……?」

ハグリッド「六メートルくれぇは、あったな。大きい奴だと七、八メートルってとこか……俺よりでけぇのを見るのなんて子供んときぶりだからあれは驚いた。器がでけぇのは何人もおったがな、うん」

ハニー「パパとかママとか、私ね」

ロン「ハニーの器は大きすぎて漏れようがないよなぁ」

ハーマイオニー「それで全力で掬いにくるものね、えぇ。震えてでもね」

ハニー「……二人がニヤニヤしているのが気に食わないけれど、後で分からせるわ。ゆっくりね。どのくらいの人数がいたの?」

ハグリッド「ざっと七十、八十、ってところか。うん、八十、それっきりだな。最後の巨人族たちは」

ハーマイオニー「……多くはないだろう、って、本では読んでいたけど。それだけなの……」

ハグリッド「奴さんたちはそもそも集団で暮らすのに向いてねぇ。各地で追われてあの山に何百って種族が集まったはずだが、お互いに殺しあっちまったんだろう。それでもあいつらは塊って生きるしかねぇ、そうして自衛しとかねぇともっと絶滅が早まっちまう……ダンブルドアに言わせれば、俺達魔法使いのせいだ」

ハーマイオニー「……奴隷労働!」

ロン「いやそれ反吐とは違うだろう? 分からなくもないけどさ」

ハグリッド「ともあれ、難しいことはそんくらいでえぇ。俺とオリンペは連中を見つけた。そんで、準備に入ったんだ」

ハニー「私を讃えるための?」

ハグリッド「そりゃ毎朝毎晩やっとるな、うん。連中と話をつけるにゃ、貢物をせにゃなんねぇんだ。ダンブルドアがまた教えてくださった。カーグに尊敬の気持ちを示す、そういうこった」

ロン「誰に何をだって?尊敬?そんなもんハニーにしか注ぐ価値ないと僕ぁ思うね」

ハグリッド「全くだ、俺も何度もそう思っちょった」

ハーマイオニー「……その傷はまさか」

ハグリッド「いや、いやいやちげぇ、そう思っちょってもダンブルドア先生からの言いつけを守らんわけにいかねぇから、そう、一族の頭って意味のカーグに貢物をもってったんだ」

ハニー「私のような存在がいるわけね、彼らにも」

ハグリッド「とんでもねぇ、ハニー。一番でかくて一番醜くて、おまけに一番なまけもんだった。お前さんとは天と地ほどもちげぇよ、うん」

ロン「当たり前だろ比べるのもおこがましいね、マーリンの髭!」

ハグリッド「カーグはカーカスって名前でな。八メートルちょっと、それに象二頭分の体重ってとこか」

ハニー「そんなものの前に、のこのこと参上したというの……?」

ハグリッド「参上っちゅうか、下ってったんだがな。カーカスは谷底の湖の近くで寝そべっとった。そんで、俺とオリンペは貢物を高くかかげて、近づいてったんだ」

ロン「連中に比べりゃ髭とマーリンの髭くらい差がある君とマダム二人で!?殺されたらどうするつもりだったんだ!?」

ハグリッド「そうならねぇようにダンブルドアがやり方を教えてくれた。貢物をかかげて、まっすぐカーグだけを見つめて進むんだ。そうさな、ヒッポグリフに触りてぇ時と同じだ。他の連中はムシして、カーカスだけをだ。最初掴みかかろうとしてきた奴らもすぐに察して引っ込んだ。俺の肝は冷えっぱなしだったぞ」

ハーマイオニー「それは、そうだわ。そんな大きい相手にすごまれるんだもの……」

ハグリッド「あぁ、それとマダムが『少しでもわたーしたちに手を触れたらただじゃおきませーん』って呟いとったから」

ロン「頼りになるなぁマクシーム、ハニーの次に」

ハグリッド「あぁ、ハニーの次に」

ハーマイオニー「さすがのハニーも巨人相手に関節技なんて無理よ」

ハニー「跪かせるのは、どうかしらね」

ハーマイオニー「想像できてしまいそうだからやめて。えーっと、貢物っていうのは?」

ハグリッド「魔法だ、うん。連中は『魔法』そのものは好きなんだ。ただ連中にとって不利な魔法を使われるのが嫌なだけで。俺とオリンペはその日ダンブルドアに用意してもらった『グブレイシアンの火の枝』を送った」

ロン「いま、クシャミした?」

ハーマイオニー「『グブレイシアンの火の枝』!永遠の火よ、ロン!フリットウィック先生が授業で二回は話に出しているのに、もう!」

ロン「なんだ、そんな火ハニーを想う僕ら豚の心にいつだってあるから気にとめてなかったよ、うん、そうに違いないね。あぁハニー!君の素晴らしさって僕の赤毛なんて目じゃないくらい真っ赤に燃え上がるよね!ヒンヒン!」

ハグリッド「俺とオリンペはカーカスに『火の枝』をやって、『巨人の頭に、アルバス・ダンブルドアからの貢物です。ダンブルドアがくれぐれもよろしくと』って伝えたわけだ」

ロン「へぇ、その文字通り頭でっかちは、なんて?」

ハグリッド「なーんにも。英語がわからんからな。ヒン語ができちょくれればよかったんだが……」

ハーマイオニー「その事態になっていたら最早何も貢物なんていらないと思うわ」

ハニー「私に跪いた後だものね、えぇ、私の前に万物がひれ伏すのは当然のことだけれど」

ハグリッド「ハニーをあんな危険な連中の前に連れ出すなんて俺ぁ頼まれてもやらんがな。そんでもカーカスの部下には何人か英語の分かる奴がおってな。そいつに通訳してもらった」

ハーマイオニー「喜んだでしょう?」

ハグリッド「そりゃもう、大騒ぎだったな。あんまり喜んで笑うもんで雪崩がおきとった。そんで、とりあえずその日はそれまで。『また明日、ダンブルドアからの贈り物を持ってきます』つって、俺とオリンペは退散した」

ロン「なんだってそんな回りくどいことをするのさ。ハニーが嫌うぜ?」

ハグリッド「そりゃ死ぬほど辛いが、あー、連中に俺達が『約束を守るやつらだ』ってところを見せるんだ。それに渡した『火』が本物か確かめる時間もやれる。次の日降りていったときには連中、みんなで歓迎しとったわい」

ハーマイオニー「接触に成功したのね。それから、話を?」

ハグリッド「おぉ、小鬼製のほれ、絶対壊れねぇ兜をやったら上機嫌でよ。そんで、俺達を近くに座らせてくれて、ダンブルドアのお考えを伝えた」

ロン「で、どうだったのさ。なーんにもなんてなしだぜ?」

ハグリッド「そうさな、だいたいが話を聞いとった。カーカスはダンブルドアがイギリス最後の巨人を殺すのに反対したことを知ってたもんで、先生様が何を伝えたいのか興味をもっとった。それに、英語が分かる連中も特にな。おぉ、俺とオリンペはしめた、と思ったもんだ。このままカーカスを説得して、巨人みんなを、ってよぉ……けどなぁ、あぁ、そう上手くいかんかった。現れたのよ、連中が」

ハニー「……仮面が恥ずかしいバカな集団<死喰い人>ね」

ハグリッド「そう、そいつらだ。うん、ちげぇねぇ」

ロン「シリウスの影響うけやすいなぁ」

ハーマイオニー「今に始まった事じゃないと思うわ」

じゃあもしおいたんが「街角で素っ裸にコートがロックだと気づいたんだ」とか突飛な事を言い出したら……


ハグリッド「カーカスに前々から対抗心を燃やしとった、ゴルゴマスって巨人がおってな……俺達が手ごたえを感じながら帰ったその日の晩、そいつが戦いを起こしっちまったんだ」

ハーマイオニー「……カーカスは」

ハグリッド「……次の日の朝、湖の底に首が沈んどった。カーカスが寝そべっていた場所にゴルゴマスが陣取っててな。『火の枝』と『小鬼の兜』をもってよぉ」

ロン「あー……そのゴルなんとかを焚きつけたのが、連中ってわけかい?フォイフォイみたいな汚い奴ら」

ハグリッド「どうもそうらしい。俺とオリンペはゴルゴマス達に殺されかけたが、あいつらの贈り物は受け取ってたみてぇだからな」

ハーマイオニー「!? カーカスが殺されたのに、あなたとマダムはまだ貢物をしようとしたの!?」

ハグリッド「そりゃそうだ!たった二日で諦めて帰れるかい!?え!? だがまぁ、うん、間違いだったんだがな。俺はゴルゴマスの仲間二人に脚を掴まれて宙吊りになっちまった……後のオリンペの戦いっぷりったら」

ハニー「……私以外にうっとりするなんて、まったく。ふふっ」

ロン「話してる内容と表情が一致してないぜ、ハグリッド。まったく、マダムってすっげぇってわけだね。わかったよ。それで?」

ハグリッド「あぁ、オリンペが二人に『結膜炎』をかけて逃げおおせた後、見つからないように隠れとったらゴルゴマスに会いに行く『死喰い人』どもをみつけたんだ」

ハニー「……人殺しをするような奴らと、みんなの頭を平気で裏切るような巨人、話が合う、そういうことね」

ハグリッド「……『死喰い人』の一人は、あぁ。確かにそうだったろうな、うん。覚えとるか、マクネアってやつを。ビーキーの首をはねにきたあいつよ……だがなぁ、うん……」

ロン「? なんだよ、ハグリッド。煮え切らないな」

ハーマイオニー「『死喰い人』ども、と言うからには、まだ何人かいたのよね?」

ハグリッド「そう、そうなんだ……二人おった。一人はマクネアだ、あの歩き方に、それに趣味の悪い鎌を持ったままだった……よう考えたらなんだあれ、バカか」

ハニー「私が回りくどいのは嫌いだ、って、あなたにはもう言う必要もないと思うのだけれどね、ハグリッド?」

ハグリッド「ヒンヒン!おうともハニー!   あー、でも……こればっかりは」

ハニー「……ハグリッド」

ハグリッド「……俺の憶測なんだ、あんまり真に受けんでくれなくてもえぇ。あぁ、お前さんは優しいから俺のバカみてぇな意見だって聞いてくれるんだろう、それでもだ。俺の戯言だと思っちょくれ」

ハグリッド「……でもなぁ。俺、俺ぁ奴さんをよーく知ってる……受け持ったのは二年きりだが授業じゃよう手伝ってくれちょったし、それまでもすれ違えば挨拶してくれた。うん……俺ぁ、見間違いだと思いてぇ。でも」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

ハグリッド「でも見たんだ、あの趣味の悪い仮面をつけたローブの、胸の辺りに光るバッジをよぉ……あれは」

ハニー「……嘘でしょ」

ハグリッド「……セドリックだった、と、俺は思う。あぁ、ハニー……だから俺ぁ言いたくなかったんだ。ヒン、ヒン」

とりあえずここで区切り
明日の十時頃再開
じゃあの

乙ぅぅぅううう


セド、再び、か……

再開

ハニー「……あなたの事は信じたいわ。でもね、ハグリッド」

ハグリッド「あぁ、ハニー。俺はきっと巨人のぼんくらにやられっちまって、目がどうかしとったんだ。忘れてくれ」

ハーマイオニー「……良い点だけ見れば、あー、彼がまだ生きているっていう証明になるわ。そうよね?」

ロン「あぁ、なんでだか趣味の悪い仮面なんかをつけてね」

ハニー「……」

ハーマイオニー「どういうことにせよ、本心のはずがないわ。ねぇハニー、シリウスが言っていた事、覚えてるでしょう?一言一句」

ハニー「……えぇ。操られてる、そういうことね……それとも、バッジが妙に流行っている魔法界だもの。似たようなバッジがどこかで売られてても、不思議じゃないわ」

ロン「ハニーバッジはそろそろ完成だから待っていてほしいなヒンヒン。で、ハグリッド。君達はそいつらに邪魔されて、帰る羽目になっちまったのかい?」

ハグリッド「まさか。たった三日で諦められるはずがねぇ!ゴルゴマスは確かにでけぇし力も強ぇが、全員が全員あいつに賛成してるとは限らねぇ、そういうやつらを探して説得する方向に切り替えたんだ。オリンペは賢い、あぁ、いい人だ。ハニーの次に」

ハーマイオニー「最後のはどうしても必要なのあなたたち」

ハニー「美意識の先頭に私がいるから仕方ないわ。見つけたの?ゴルゴマスの反対派を」

ハグリッド「六人か七人、ってところか。ゴルゴマスに何度も痛い目あわされとった奴らでな。あぁ、話をして、納得してくれとった、そう思う」

ロン「すっげぇや!それじゃ、そいつらが味方になるのかい?え?養豚場を増築しないといけないよな!」

ハーマイオニー「あなた日頃は豚扱いはやめろって言ってるのに……待って、ハグリッド。納得して、くれていた?っていうのは……」

ハグリッド「……その晩、そいつらは襲われた。あぁ、次の日には一人残らずその洞窟から消えとったわ。ひでぇ闇の魔法の跡があったから、きっと……」

ハニー「……」

ロン「……マーリンの髭」

ハグリッド「俺とオリンペは誰も連れて来ることは出来んかったがな、無駄骨だったとは思ってねぇ。あぁ、そうともさ。ハニーにとびついてもらえただけでも俺ぁこの任務やってよかったと思っちょる」

ハニー「私を寂し、オホン、物足りなくさせたのは重罪だけれどね」

ハグリッド「すまんハニー!ヒンヒン! 生き残ってゴルゴマス側についてる奴の中にも、カーカスに話をした時に聞いていた奴はおったしな。そいつらがダンブルドアが何を考えているか覚えておいてくれれば、ゴルゴマスに本当に反抗したいときに俺達の事を思い出すかもしれん」

ハーマイオニー「ダンブルドアは自分達に友好的で、権利を認めるだろう、ってことを?」

ハグリッド「そうだ。そうすりゃ、なんだ。『例のあの人』のほうじゃなくて、俺達のところに来てくれるだろうさな。いつか、多分」

ロン「あー……えっと。そういやハグリッド。おふくろさんは見つかったかい?」

ハグリッド「死んだそうだ、あぁ。俺の顔を見て気づいた奴が教えてくれた。何年も前に死んだんだとよ」

ロン「……マーリン、いや、ごめん」

ハグリッド「気にすんな、顔も覚えてねぇ相手だ。いい母親だったとも思えねぇ」

ハニー「……身内を大事にできない豚は嫌いよ」

ハグリッド「ヒンヒンすまんハニー!あぁ、一目でいいから会いたかったもんだ!そうすりゃあいつのことをもっと……うぉっほん!それで、ハニーの夏休みのことだけどどういうこった?え?」

ハーマイオニー「待って、ハグリッド。まだこんなに帰るのが遅くなった理由も、それに、その傷だらけのことも説明がないわ」

ロン「そうだよ、ここまでスピューっちまったんだ、吐いっちまえよ」

ハニー「豚の健康状態を把握しておくのも私の役目なの。さっ、ハグリッド……?」フーッ

ハグリッド「お、オッホーォ!実は俺におと——」

ドンドンドンッ!



「ごぉめんあそばせぇ〜♪」



ロン「!?うっぷ、『S.P.E.W』が出そうだ!マーリンの髭!」

ハーマイオニー「さっきのはまだ見逃してあげたけどいい加減にしなさいよ……こ、この声、アンブリッジ!?」

ハニー「ハグリッド、出て頂戴。居留守はあなたに不利にしかならないわ。ロン、ハーマイオニー、マントの中に」

ロン「僕は厳密には君の下に、だけどね!ヒンヒン!」

きたか、二重の意味で

ハグリッド「あー、っと……?」

アンブリッジ「あらあら随分とボロ雑巾のようですこと。それじゃ、あなたが——」

ハグリッド「なんだ、おめぇさんは……あぁ、なるほど。『森』で生まれた新しい子かい?え? 何との何の合いの子だかなぁ……カエルとデミガイズってぇところか……?」


ロン「ハグリッドさすがだぜ、あのババァの醜面見ても吐き気どころか飼う算段たててやがる」

ハーマイオニー「褒められた癖ではないけどね……ああ、無駄に逆なでする言動はしないでほしいわ」


アンブリッジ「何を勘違いしているのか検討もつきませんけど、私はドローレス・アンブリッジといいますの。あなた、ハグリッドですわね?」

ハグリッド「そうだ。うん?ドローレス・アンブリッジ?そいつはぁたしか魔法省の人だと思ったが……ファッジんとこで仕事をしてなさらんか?え?」

アンブリッジ「えぇ、コーネリウス付きの上級次官でした。あぁコーネリウス……!オホン、それはよろしいんですの。今はこちらで『闇の魔術に対する防衛術』を教えていますわ」

ハグリッド「そりゃ物好きだな。今じゃだれもこの教科は教えたがらねぇ」

アンブリッジ「そして、『ホグワーツ高等尋問官』でもありますの」

ハグリッド「? なんですかい、そりゃ」

アンブリッジ「わたくしも今同じことを言おうとしていましたの。どうしてマグカップが四つも出ているのかしら?」

ハグリッド「どうして、って……あぁ、お前さんには見えねぇかい?そうさな、こいつらはちーっと気難しい」

アンブリッジ「……は?」

ハグリッド「あんまり気を悪くせんでくれ。俺ぁ何もあんたが魔法使いとして劣ってるとかそういうことが言いてぇわけじゃねぇんだ。ただ、こいつらを見るにはほら、素質とかそういうのがねぇと……」

アンブリッジ「……なるほど、授業に使う魔法生物デミガイズ!先ほど言っていたのはこいつらのことでしたのね!えぇ、毛皮が透明マントになるこの生物は訓練を受けた上級魔法使いしか!まぁ!わたくしともなれば容易いわけですの!!!」

ハグリッド「そうだろうなぁ、うん。さすが先生様」


ロン「すげぇぜハグリッド」

ハニー「あとで目一杯褒めてあげないといけないわね」

アンブリッジ「てっきりここに誰か来ていたのかと思いましたわ。それも、ついさっき。今しがた。雪の上に、そうですわね、三人分の足跡が残っていましたもの。城からここまで」


ハニー「……迂闊だったわ」

ハーマイオニー「……帰りは足跡を『消失』させながら帰りましょう」

ロン「足跡を消失って、無くすのかそれとも現すのか何かよくわかんないよな。マーリンの髭」


ハグリッド「さぁなぁ、俺自身が帰ってきてまだ一時間と経ってねぇし、あー、入れ違いだったんじゃ?」

アンブリッジ「帰りの足跡はありませんでしたわ。まぁ、よろしい。あなたの帰り、そう、わたくしはそのことを話にきたんですの。一体今学期が始まって二ヶ月も経った今日まで、あなたはどこにいらしたのかしら?」

ハグリッド「あー……ダンブリッジ、じゃねぇ、ダンブルドア先生様には、あー、言ってあるはずなんだが」


ロン「混ざってる混ざってる」

ハーマイオニー「さっきまではなんとか余裕だったのに……ハグリッド、しどろもどろだわ」

ハニー「……手のひらに書いてきてあげようかしら」

ハーマイオニー「犬から離れて、えぇ、意識だけでいいわ。とりあえずは」


ハグリッド「俺は、あー、健康上の理由で休んどった。そんで、休暇を空気の綺麗なとこで過ごしてたんだ、うん。おかげで元気一杯だ」

アンブリッジ「その割にはズタボロのようですわね? 空気の綺麗な……そう、例えば?山、とかですの?フランス経由の?」

ハグリッド「山……いや、いや。ちげぇ、全然ちげぇぞ、うん。山なんて一つもねぇ海におったんだ。日がな一日ほれ、やれ海水浴だ、日光浴だ、ハニーを讃えるために朝日を浴びたりだ……そういうのだ」


ハーマイオニー「最後」

ロン「常識だろ、君だってしてるんじゃないかい?なんだかんだいって」

ハーマイオニー「残念でした、私が朝日と一緒に浴びるのはもっとありがたいものだわ」

アンブリッジ「海に、日光浴。なるほど、その割には日焼けをしていないようですが」

ハグリッド「あー、俺は、肌が弱くてな、うん。あんまりほら、肌を見せなんだ、このオーバーをきて、うん」

アンブリッジ「海に行ったのに?」

ハグリッド「あー、ちーっと、たまには海以外にも行ったかもしんねぇ。そうだ、あー、友達の友達が飼育しとるアブラクサン馬に乗ってこけっちまって、それでこんな怪我をよぉ。ハッハ、ハ、ドジでなんねぇって、むかっしから言われとるんだ、俺ぁ」

アンブリッジ「それは大変ですわね。さて、ハグリッド。あなたが遅れて戻った事は大臣に報告させていただきます、よろしいですわね?」

ハグリッド「そりゃあんたの権限だし、俺に止められるもんじゃなかろう?知っとるよ、魔法省さんのやることくれぇは」

アンブリッジ「はいその通り、やめてと言ってもお伝えしますわ。それに加えて高等尋問官の権限として、わたくしは——驚くべき事に——同僚の教師であるあなたの授業を査察しなければなりません。近いうちにまたお目にかかることと思いますわ。こんなボロ小屋でというのはごめんですけど」

ハグリッド「査察……?」

アンブリッジ「えぇ、そうですよ。ハグリッド、肝に銘じておくことですわね。魔法省は教師として不適切な者を取り除く覚悟ですので」

ハグリッド「そうか、そんじゃ俺ぁあんまり気にしなくてよさそうだなぁ」

アンブリッジ「……無駄にでかいのは図体だけでなく態度もでしたのね。それでは」

バタンッ

ハーマイオニー「……出て行ったフリをして、耳傍をたてていないかしら」

ロン「性悪顔も悪なあいつならやりかねないな……あぁ、窓から城に戻るのが見え、オェッ」

ハニー「ハグリッド、少しダメなところもあったけれど、あの女との初対面としては上出来な対応だったわ。出来る豚ね、褒めてあげるっ」フーッ

ハグリッド「オッホォー!そりゃもう俺はお前さんの豚でヒンヒンヒーーーン!」

ハグリッド「本当なんかい?あのヒトが先生を査察してるっちゅうのは」

ロン「もちのロンさ。トレローニーの奴は早速停職になるらしいよ」

ハーマイオニー「ね、ねぇハグリッド?さっきあなたはあぁ言っていたけど、実際、今後の授業ではどんなものを教えるつもり?」

ハグリッド「そうさな、授業の計画はたっくさんあるぞ、うん!俺も二ヶ月授業ができんかったのと、あと四ヶ月ハニーに会えなくて死にそうだったからな」

ハニー「えぇ、当然でしょうね。悪いのは待たせたあなただけれど、そうよね?」

ハグリッド「違いねぇですヒンヒン!」

ロン「よし、ハグリッド。第一回の授業は『ハニーの素晴らしいところ』についてでどうだい!」

ハーマイオニー「授業でやるようなものでもないし第一回ってあなたと私で週一回以上やってるでしょそれは。ハグリッド、本当に、きちんとした計画をたてないと……」

ハグリッド「大丈夫だ、でーじょうぶ。OWLの学年用にとっといたすげぇもんがある。すっげぇぞ!おったまげるぞ、うん!あぁハニー、お前さんが喜ぶ顔を見んのが楽しみだなぁ!」

ハニー「なぁに?サラザールでもつれてくるのかしら」

ロン「!ハグリッドが秘密の部屋を開いただって!?」

ハーマイオニー「あなたの頭って柔らかくっていいわね。絶対に見習わないし尊敬もしないけど……ねぇ、ハグリッド。これまでみたいに危険な生物を扱ってしまったら、魔法省は……」

ハグリッド「危険?まさか、まさか。おまえたちに危険なもんなんぞ連れてこんぞ、俺は」

ロン「あぁ、そうだね。ビーキーは対マルフォイキラーだっただけだし、それに、スクリュートに至っちゃ同胞だもんな、あぁ。危険なんてマーリンの髭さまったく」

ハグリッド「俺が長いこと育ててきてな。そりゃ、自己防衛くれぇはするが本当に大人しいいい奴らなんだ。すげぇぞ、なんせイギリスでただ一つっちゅう飼育種だ」

ハーマイオニー「つまりはそれまで飼育されていた前例がない、って……危険な要素しかないじゃない!」

ハニー「……ハーマイオニー、諦めましょう。こうなったハグリッドに何をいっても無駄よ」

ハーマイオニー「……えぇ、それに、あなた自身がその生き物をみるのがとっても楽しみなのですもんね?」

ハニー「なんのことかしら」

ハーマイオニー「こっちを見ていいなさいよ、もう。こっちを見て、ほら。私の方……あぁ、ハニー、あなたの目……ハッ!させにないわよ!もう!」

ロン「君割りと墓穴掘るよな、もちのロンでさ」

日曜 昼

談話室

ロン「『足跡がつく』という現象の消失、つまりは雪につけた跡を元の状態に戻すのはどちらかといえば『現れ』呪文の意味合いが強いがどちらも正しく理解していた場合その矛盾を、あー……レポートをでっちあげるのは難しいなぁ。マーリンの髭」

ハニー「クィディッチの練習やら何やらで溜まったのだものね、宿題。私の方はDAの方に取り組みすぎていて、だけれど」

ロン「あぁ、僕は君の分まで滅茶苦茶に活躍しなくちゃなんないし、それに君ときたら完璧主義だからって名目で教えるものは完全にみんなの前で披露してもばっちりなくらい練習するしねあぁハニー君のすばらしさはたゆまぬ努力からあらわれ痛い!ありがとう!ヒンヒン!」

ハニー「完璧主義なの、それだけよ。まぁ、私が完璧なのは皆目周知の通りでしょうけれど……あら、ハーマイオニー。お帰りなさい」

ロン「ヒンヒン! どうだったんだい、ハグリッドは君の『これでハニー並に完璧!アンブリッジの査察に通るための授業計画』を聞き入れてくれた?」

ハーマイオニー「てんでダメだったわ……ナールなんかを教えるよりもキメラを使ったほうが俺もみんなも楽しいに違いねぇ、そう言って……あぁ、なにも本当にキメラを教材にする気はないと思うわよ。例えよ、きっと……多分」

ロン「ライオンの頭ヤギの胴体ドラゴンの尾とかいうあれか……あれ、言葉にすればなおの事それじゃハグリッドが手に入れるのは時間の問題だなぁ」

ハニー「ホッグズヘッドのバーテンはどうなのかしら、それ。胴体はヤギだけれど」

ハーマイオニー「その他が凶暴すぎてダメでしょうね、いくらなんでも。でもハグリッドが手に入れる努力をしたことがあるのは間違いなさそうだわ。卵の流通についてやたらと詳しかったし……私の授業計画には少しも耳をかさないくせに」

ロン「痛くて耳が遠くなってるのかもしれないよ、ハニーの声は三千里離れてても耳元の囁きに聞こえるだろうけど」

ハーマイオニー「そう、それよ。最初私が小屋に行った時、ハグリッドはいなくって。しばらくしたら森から出てきたの……昨日よりもさらに血だらけで、新しい傷を作って」

ハニー「……任務で帰ってくるまでにつけた傷、ではなかったのね……あの豚」

ロン「ハニーに隠し事なんてなんてやつだろうねまったく、犬に格下げだな」

ハーマイオニー「ハニーにとっては格上げでしょうし唯一無二でしょうからやめておきなさい」

足跡消しは『概念』、あるいは『認識できなくさせる』かもしれないのでは

月曜 朝

大広間

ザワザワザワザワ

フレッド「おいおいおいおい!職員テーブルにあるあの小山はなんだい!え!?」

ジョージ「ハーグリッド!おやまぁ、随分とおそーい登場だったじゃないか!?」

ハグリッド「よぉ、フレッジョ!おぉ、ひっさしぶりだなぁ!」

ネビル「戻ってきたんだね!えーっと、傷だらけでひどそうだけど、よかったよ!ヒンヒン!」

ハグリッド「あー、そうだ。色々とあってな!ヒンヒン!」

ワイワイワイワイ

ロン「ハグリッド、歓迎されてるなぁ。主に同胞とかから」

ハーマイオニー「……そうでもない人も、結構いるようだけどね」


ヒソヒソヒソ

ラベンダー「グラブリー=プランク先生の方がよかったわよね」

パーバティ「OWLの試験があるのに……」


ハニー「……危険だけど可愛い生き物と、変哲もない上に可愛くもない生き物ならハグリッドの方がずっといい、私はそう思うけれどね」

ロン「あぁハニー!君がそう言うならそれがスタンダードだよ!うん!豚の僕らにとってもね!」

ハーマイオニー「生き物のセンスに関しては本当、ハニーってハグリッド寄りよね」

ロン「あぁ、何せ君も危険たっぷりだもんな、そう言えるだろうさ。もちのロンで」

ハーマイオニー「石化されたいのなら頼まれなくてもしてさしあげるわよ?」

ハニー「……可愛いの方はかかってるのかしら、どうなのかしらね。ふふっ」

火曜日

『魔法生物飼育学』

マルフォイ「やぁポッター、お友達の巨大なでかぶつくんが帰ってきて嬉しいんじゃないか?残念だねぇ、もうすぐお別れになるなんて」

ハニー「話かけないでくれないかしら虫唾がひどいわ」

ロン「お別れってんならお前と永久にお別れできればいいのになもちのロンで」

ハーマイオニー「『巨大なでかぶつ』って何よ『頭痛が痛い』くなるから口閉じてて頂戴」

ネビル「フォイフォイ言ってなよ」

マルフォイ「……ロングボトムはなんだよ!!!!」

ロン「いや君こそなんなんだよ」

ハグリッド「おーい、みんな集まっちょるかー?あぁハニー、今日もお前さんに会えて光栄だヒンヒン!」

ハニー「ハァイ、ハグリッド……あなた、それ、なぁに?」

ハグリッド「おぉ?こいつか、これぁ死んだ牛の半身だなぁ。これから会いにいく連中の好物なんだ」

マルフォイ「おーやおや、また生徒の半身まで晒すような惨事を引き起こさないでくれよな。それともなんだい、君も食われかけたのかな、その様子……おっと、ズタボロで惨めなのはいつものことか」

クラッブ・ゴイル「「ゲラゲラゲラゲラ!!」」

ロン「犠牲者第一号にしてやるぞこんにゃろ……」

ハーマイオニー「放っておきなさい、ロン。どうせ本当に恐ろしい生き物が出てきたら一番びくびくするのはそこのシロイタチよ」

マルフォイ「うるさいぞグレンジャー!」

ハグリッド「マルフォイ、黙るフォイ。授業中だぞ」

マルフォイ「……このでかぶつめっ!」

ハニー「態度だけ大きいあなたよりは立派よ、ハグリッドの方が」

ハグリッド「ヒンヒン!光栄だハニー!」

ハグリッド「さーてと、そんじゃ俺の最初の授業をおっぱじめることにする!」

ザワザワザワザワ

ラベンダー「……期待はしないわ」

パーバティ「これも私達で自習とかしたほうが……?」


ハニー「私ならば爆発豚だって用意が出来るけれど、ダメよそんなの」

ハーマイオニー「……」

ロン「君、今割りと必要かもって思ってるだろ」

ハーマイオニー「まさか。ハグリッド、続けて。えぇ、私の計画を俄然無視してあなたが選んだという教材のことを、どうぞ」


ハグリッド「おぉう、ハーマイオニーからどうぞられるのは新鮮だな。今日は、『森』に入る!」

ザワザワザワザワザワ
 ガヤガヤガヤガヤガヤ

ネビル「ひっ、うわ、あの『森』に……嫌な思い出しかないなぁ」

マルフォイ「…………」

ハグリッド「でぇーじょうぶだ、今日は俺が先頭におるし、真昼間だからな。あー、でも女の子たちはちゃーんと、俺が連絡したこと守ってきとるかい?え?こればっかりはどうしようもねぇからな、うん」

ハーマイオニー「えぇ、今日はきちんと……スカートではなくパンツルックで来たけど、ハグリッド、これってどういう意味があるの?森で怪我をしないように、とか?」

ハニー「……自称賢人たちに火傷させられないように、よ。何も言わずに信じなさい、ハーマイオニー。あと、ロン。なるべく私達を囲って回りに見られないようにすること。いいわね?」

ロン「もちのロンさハニー!あぁ!いつものスカートから除く健康的な曲線美も素晴らしいけどズボン姿もまた格別だねハニー!君はいつだってみんなの特別だけどね!おら豚ども!フォーメーションIだ!」

ヒンヒン!

ハグリッド「準備できたみてぇだな。そんじゃ、森に入るぞ。着いてこいや!」

ゾロゾロゾロゾロ
ザクッザクッザクッザクッ
 ワイワイワイワイ



「……チッ」

 「クソが」

「スカートじゃないなど許されない、土星がそう言っているというのに……これだからヒトは」


ハニー「今すぐ火をかけるわよ散りなさい茂みの向こうにいる賢者ども」

「……ふぅ。君達なにを言っているんだい、パンツルックの高尚さを穢す背徳感こそまた、ふぅ……」

ハニー「一頭次のステージに行ってるんじゃないわよぶっ飛ばすわよ」

『禁じられた森』

ハグリッド「よーし、よし。この辺だ。全員ちゃーんとおるか?え?」

ロン「怖い事言うなよ、何に襲われるってんだよ。蜘蛛はやめろよな」

ハグリッド「こういう課外授業じゃフラフラどこか行っちまう子がつきもんだろうが。それに『森』っていう楽しいとこなら尚更な!」

ハーマイオニー「ここを楽しめるのはあなたくらい知り尽くしている人だけだわ、ハグリッド」

ハグリッド「おぉっとありがとうよ。そうさな、そろそろあいつらはこの肉のにおいに引き寄せられてここに来るはずだ」

ハニー「えぇ、それに私の魅力に魅せられるのね」

ロン「どうりで僕フラフラしちまうわけだよな、もちのロンで」

ハーマイオニー「それはあなたが私達の周りで凄い速さで反復横とびのような動きをしていたからだと思うわ、はいはいご苦労さま」

ハグリッド「さすがロンは一番の豚だなぁ。あいつらにもヒン語を教えてほしいとこだが、こればっかはどうにも、ってぇわけで……ケェエエエッ、ゲェェェエエエエッ!!!」

マルフォイ「っフォ、っ、ごフォん。なんのマネだい、でかぶつ!バカの真似はそのまんまでも優等だろう!?」

ハグリッド「マルフォイ、私語は慎め。授業中だ」

マルフォイ「さっきからなんなんだお前!!」

ハーマイオニー「えーっと、ハグリッド?今の雄たけび?は、その何かを呼び出すための声だったの?」

ハグリッド「その通りだハーマイオニー、さっすが、俺達のハーマイオニーに分からねぇことはねぇな。ハニーのこと含め」

ハニー「そうね、ハーマイオニーは私とお互いに——あっ」

ハーマイオニー「な、ナニのことを言ってるのハグリッド。は、ハニー?ダメよ、今授業中……え?」

ハニー「あれ……!やっぱり!やっぱり、見間違いでも幻でもなかったんだわ!あの可愛い、馬!」

ロン「馬……?ハニー、あー……ちっくしょうなんだって僕はハニーの眼球じゃないんだ!マーリンの髭!」

ハグリッド「さっすがハニー、見えとったか! こいつは天馬の希少種で、セストラルっちゅうんだ」

セストラル「ブルルルッ!」

ネビル「うわぁ……いつみてもコワイなぁ」

ロン「!ネビル、君もかい!?なんだよちくしょう君ばっかりいいとこもってって!」

ハーマイオニー「みんなあなただけには言われたくないと思うわ」

ハグリッド「さーてと、こいつの姿が見えるのはどのくれぇいる?うん?」

ハニー「わたしっ!」

ハグリッド「あぁ、ハニー!お前さんは元気がいいな、うん!あとネビルと、ほぉ、それに——」

マルフォイ「さっきから何の話をしてるんだい。どこに馬がいるっていうんだ?それともポッターのお得意なでっちあげかい?次はなんだ?吸魂鬼でも現れるのかい?」

ハニー「そうしたらとある眼鏡が黙ってないわよ黙ってなさい」

ハグリッド「あぁ、そうだった。ほーれ、なーんも見えん子たちは俺がさっき地面に投げた牛の肉を見てみろ」

セストラル「ブルルルッ!」ムシャムシャムシャムシャ

ザワザワザワザワザワ

ラベンダー「キャーーーーッ!?」

パーバティ「じゃ、じゃぁ本当にそこにセストラルがいるっていうの!?なんてこと!あんな、縁起の悪い生き物!見た者にありとあらゆる災難が降りかかる、ってトレローニー先生が——」

ハグリッド「うん?だから、見えるもんと見えないもんがおるっちゅうのに何だそりゃ、ひでぇ迷信だな。トレローニー先生は本当にこいつらのことを知ってるのか?」

パーバティ「……」

ラベンダー「し、信じる者は救われるのよ!」

ロン「足元とかね。ハグリッド、つづけなよ」

ハグリッド「おぉ、あんがとよ。それでな、こいつらは何かっつうと色んな意味で良く見られねぇが、どえらく賢いし役にたつんだ。ここでの仕事は馬車引きと、あとダンブルドアが『姿現し』を使わず遠出する時の足代わりくれぇか

ハニー「……ダンブルドアの」

ハグリッド「おぉ、こいつらは力も強ぇしいっくらでも空を飛べる。乗ってみるかい、ハニー……おっと、また来たぞ」

ガサガサッ

フィレンツェ「……」

ハニー「……」

フィレンツェ「女の子が裸馬に乗ると聞い、ふぅ。やぁ、ホグワーツの生徒さんたち。私はフィレンツェ、二つの意味で下半身が——」

ハグリッド「セストラル、ちょっくらそいつ向こうに運んどってくれ。今邪魔にしかならん」

セストラル「ブルルルルッ!」

ハニー「……出来る馬ね、どこかの駄馬たちと違って」

飛べねぇ馬はただの駄馬さ…ドヤァ


とかセストラルさんに喋ってもらいてぇ

ハグリッド「さーてと、この広場にもう三頭ほどいるわけだが、安心しろ。どいつも大人しいからお前さんたちを傷つけたりしねぇ。あぁそうだ、ドラコ。頭を下げなくったってな」

マルフォイ「うるさいな」

ロン「君に言われたくないね」

ハグリッド「そんじゃ、誰ぞ知っとるもんはおるかい?こいつらがどうして見える奴と見えない奴がおるか」

ザワザワザワザワ

ハーマイオニー「……はいっ、ハグリッド先生」

ハグリッド「うぉう、なんだかくすぐったいなその呼ばれ方は。よーし、ハーマイオニー。言ってみろ」

ハーマイオニー「セストラルが見えるのは、死に直面した人。それを受け入れることが出来た人のみ、です」

ハグリッド「よーく出来た!グリフィンドールに十点!」

ハニー「……私の場合は……でも、セドリックはきっと……あぁ、パパたちの木霊のおかげで改めて認識したから、かしら」

ロン「細かいことはマーリンの髭だね」

ハグリッド「そういうこった、うん。そんで、こいつらがどうしてここに——」

アンブリッジ「エヘンッ!エヘンッ!」

ハニー「!」

ロン「うげっ」

ハーマイオニー「……おでましね」

ハグリッド「うん?なんだ今のは……テネブルス、おめぇさんか?今の変な気色悪い音を出したんわ。喉の病気かもしんねぇな、どれ」

アンブリッジ「エヘンッ!エヘンッ!!こちらですわこのでかぶつ!」

ハグリッド「お? やぁ、あんたでしたかい」

アンブリッジ「わたくしから今朝送ったメモは目を通しまして?人の文字が分かるのでしたら、今日わたくしがこの授業を査察することはわかっておいでのはずですわね?どうしてわたくしを待たずに、それに『森』に入っていったのかしら?」

ハグリッド「あぁ、そりゃぁあんたのようなのが書いたのでも俺は文字は分かる、うん、中々巧く書けとったし。それにこの場所はあんたならきっと分かると思ってよぉ、すまなんだ」

アンブリッジ「ふんっ、おだてても査察の目は緩めませんわ!」


ハーマイオニー「ハグリッド、随分と、あー……紳士的?」

ロン「いや、ちがうね。どうにもありゃ、ハグリッドのやつ完全にあのばばあを新種の魔法生物扱いしてら。もちの僕で」

ああ、珍獣扱いしてるからハグリッドがこんなに扱いうまいのかww

アンブリッジ「それで?こんな何もないところで何を始めようというのかしら?まさか、隠れて秘密の術でも教えようというのではないでしょうね?」

ハグリッド「あー、あんたには見えんですかい。セストラルっちゅうのを知っとるか?」

アンブリッジ「セス、なんです?」

ハグリッド「セストラル、だ。こう、ほら、こーんな感じで羽があって、バッサバッサと飛ぶ、骸骨みてぇな!こう、こういう風に!」


ロン「ハグリッドのボディーランゲージは危ないよな、近くにいる人が巻き込まれて脳震盪起こしそうって意味で。ハニーの美貌はめまいがするくらい素晴らしいけど」

ハニー「えぇ、そうね。危険すぎて直視もためらうでしょうね」

ハーマイオニー「蛇好きだけにとどまってて頂戴」


アンブリッジ「『原始的な……身振りによる……言語に頼らなければ……ならない』っと」ガリガリガリガリガリ

ハグリッド「そ、そういうわけじゃねぇんだが。あー、それじゃ説明を続け……ん?俺ぁ何の話をしとったかい?」

アンブリッジ「『物忘れが激しく……直前のことも』っと」ガリガリガリガリ

ハグリッド「あー……そうだ!群れだ、群れの話をしとったんだ、うん。そうだ」


マルフォイ「…………」

ロン「マルフォイのやつ、ニヤニヤしやがって……」

ハーマイオニー「あの女カエル、黙って書いていればいいのに……!わざと皆に聞こえるように、あんなこと!」

ハニー「……ハグリッドの良さは私達が分かっていればいいわ。気にしない、っ、ハグリッド、それで、どうしてここに群れがいるのかしら?」



ハグリッド「おぉ、ハニー!いい質問だ!やっぱりお前さんは天使だなぁ!ヒンヒン!」

アンブリッジ「『一人の生徒に対して……とにかく贔屓する兆候……それも要注意人物』」ガリガリガリガリ


ハニー「……私が贔屓されるのは至極当然だわ」

ハーマイオニー「……否定しきれないものね、えぇ」

ロン「なにが要注意人物だよ、ご自分は危険物シールが貼られるような存在のくせに。マーリンの髭」

ハグリッド「あー、最初は雄一頭と雌五頭で初めてな。こいつらはハーレムを作る。そんで、その中でいっちばん最初に生まれたのがこのテネブルスだ。俺がいっちばんかわいがっとる奴でなぁ」

テネブルス「ブルルルルッ!」


ハニー「確かに、可愛いわね」

ロン「そうなんだろうねハニー!僕は見えないからね、とりあえず心から言えるよハニー!」

ハーマイオニー「ネビルは複雑そうな表情をしているあたり、察するわ」


アンブリッジ「ご存知かしら?魔法省がセストラルを『危険生物』に分類していることは?」

ハグリッド「こいつらが、危険?そりゃ間違っとる、あぁ、そりゃこいつらはなにかって縁起が悪いと思われとるけどな。それに、こんな見た目だから驚いた犬なんかが噛み付いちまって、黙って噛まれるわけにもいかねぇから自己防衛なんかはするが、間違っても自分から襲ったりなんてしねぇ!ホントだ!」

アンブリッジ「『暴力の行使を楽しむ傾向……』」ガリガリガリガリ

ハグリッド「ちげぇぞ、違うんだ、死っちゅうイメージがあるせいで悪く思われとるだけだ。ほとんどの奴に見えねぇもんで、思い込みで分かったつもりになっちょる、そうだろうが?魔法省でのこいつらの扱いは?」

アンブリッジ「『省に対する……見下したような態度』」ガリガリガリ

ハグリッド「……あっ、なるほど。人語が通じねぇのか、うん」


ロン「ある意味正しいけどね、ハグリッド……解決になっちゃいないぜ」


アンブリッジ「さーて、それでーは。授業をつづけてくださーいね♪」

ハグリッド「お?話せるように……うん?なんでそんなゆっくりだ?え?」

アンブリッジ「わかりませんかー?授業をー、つづけてー、くださーい。こう、こーう、ね?わたしはー、せいとのみなさんを見回りまーすから。よろしいかしらー♪」

マルフォイ「おいおい見ろよみんな、あのデカブツ、まるで保育師に諭される幼稚園児みたいじゃないか?」

スリザリン生徒「ゲラゲラゲラ!」


ハーマイオニー「あの、腹黒鬼ババぁ蛙……!」

ロン「えっ、うわっ、びっくりした。声出してないのに声が出たのかと……お、おぉっと?ハーマイオニー?授業中だし、ハーマイ鬼ー状態はやめとこうぜ?な?」

ハーマイオニー「何を企んでるか分かってる、あの人、混血を毛嫌いして……最初っから正当に評価するつもりなんてないんだわ!」

ハニー「……ハグリッドがまるでダメなように振舞って、その印象を強くさせてるわね」

ロン「……まぁそれ以上にそんな態度が気持ち悪くて木立に吐いてる正常な奴のが多いけどさ」

オェエエエエエエッ オェエエエエエエッ
 あれがおにゃのこなどとわたしはみとめオェェエエエエエエッ!

アンブリッジ「あなたはハグリッド先生をどう思う?授業は分かりやすいかしら?」

パンジー「いいえっ、っぷ、だって、あの人いつも唸ってるみたいな声で、何を言ってるか分からないんですもの」

ゲラゲラゲラゲラゲラ!

ハグリッド「あー、そんで、こいつらは頭がすごくえぇ。行き先を言うだけで連れてってくれるし、帰りに迷うこともねぇんだ、うん」

マルフォイ「そりゃいや、でもあんたにゃ無理だろうな。だって、っく、唸ってるみたいで何言ってるか分からないもんな!」

ゲラゲラゲラゲラゲラ!

アンブリッジ「ロングボトム?あなたはあれが見えるんですわね?」

ネビル「えっ、うわっ、こっちきた……うっぷ、はい、アンブうっぷ先生」

アンブリッジ「あらあら、怖くて怯えておいでですのね。大丈夫ですわ、あなたたちの安全は……わたくしが守りますわ♪」パチンッミ☆

ネビル「」

ディーン「ネビルーーーーーーーぅぅぅ!!!」

アンブリッジ「あーらあら、怖さのあまり気絶してしまいましたのね」

ハグリッド「そ、そんなはずぁねぇ!ネビルは俺達豚の中でも、漢で……!」

アンブリッジ「『生徒の印象や体調も省みることができないようだ……』っと!こんなものですわね!それではハグリッド、査察の結果は十日後にお渡ししますわ。それまで、どうぞ、ごゆーっくりと、お馬さんとお戯れなさいな♪」

ザクッザクッザクッザクッザクピョコッ

ロン「……行っちまった」

ハニー「……ハーマイオニー、よく耐えたわ。お互いね」

ハーマイオニー「フーッ、フーッ、あぁ、ハニー、今学期あなたに癇癪を抑えてってしつっこく言ってごめんなさい。何よ、あの、腐れ、嘘つきの、根性まがり……!」


ハグリッド「……可哀想になぁ。あんな見た目で、これまで何度も群れからはじかれっちまって、性根ごと腐っちまったんだろうな、うん。いい仲間がおるといいんだが。あいにく俺ぁカエルは育ててねぇんだ……」

ロン「そんで君は生き物のこととなるとまるで聖人だね、まったくさ。見習いたいね、豚として」

昼休み

ハーマイオニー「ほんっとうに、頭にくるわ!もはや魔法省の云々さえ関係ないのよ!ただ!混血が気に食わないだけであの女蛙はハグリッドにあんなまねを!」

ハニー「あんなに優しくて出来た豚に、ほんと、なんなのかしら」

ロン「あぁ、本当に見習いたいよ僕ぁ。君から頭を撫でられるなんてハグリッドの奴めマーリンの髭」

ハーマイオニー「それに今日の授業は全然悪くなかったわ!スクリュートなんかに比べれば——あー、ハニー、危険度という意味で、よ?セストラルは爆発したりしないでしょ?——とってもいい授業だったのに!」

ロン「まったくさ、僕に至っちゃ見えないしね。ハニーしか見えてなくて万々歳だよ、いつものことだけど」

ハーマイオニー「少し早かったかもしれないけど、あれ、NEWT試験では出されるようなとっても高度な魔法生物よ。それを飼いならすなんて、ハグリッドは本当、魔法生物を扱う腕はあるのよ。今日改めて分かったわ。改めてというか、初めて」

ハニー「私の豚だもの、当然だわ。ずーっと前からそうだったけれどね、私にとっては」

ハーマイオニー「あなたの先を見通す目は確かよね、えぇ……見る、と言えば、セストラルを直接見られないのは残念だわ」

ハニー「……そう思う?えぇ、確かにあの子たちはとっても、可愛いけれどね」

ハーマイオニー「あっ……ハニー、ごめんなさい。私、何も考えずになんてこ、きゃぁ!?」

ハニー「えぇ、そうね。可愛いものは他にもたっくさんあるもの。それを見られればあなたもあんなこと言わずに済むのじゃない?ねぇ、ハーマイオニー?こっちを見て?あなたがさっきそう言っていたでしょう?」

ハーマイオニー「あっ、ハニー、そんな、あなたをそんなに見てしまったら、世の中の物全部『アズカバン監獄』以下に、思えてしまうじゃない……」

ロン「つづk」

マルフォイ「やぁウィーズリー!君も誰かくたばるところを見れば少しはクァッフルを見られるんじゃないのかい!」

ロン「いけっ!!僕が背負って医務室に運ぶ予定だったネビル!!!!」

ネビル「うーん、蛙がトレバーを食べうわぁああああああん!?!?」

とりあえずここで区切り
再開がちと何時頃になるかわからん。十時前後
年末最後のDAの件までやる
じゃあの

乙ぱい

楽しみに全裸待機

再開

しゃぁああ

十二月終盤

ロン「年末だなんだって、監督生の仕事とやらが忙しいよまったく……ハニーのこと以外で苦労したくないよ僕ぁ」

ハーマイオニー「選ばれた以上は職務を全うしなさい、ハニーもそう言ってるでしょ」

ハニー「その通りよロン、私の豚ならばそれくらいのことはこなせるに決まってる、そうでしょ?」

ロン「当たり前だぜハニーもちのロンさ! でもさぁ、城の飾りつけとかまでやらされるのは、なんだか違うよなぁ」

ハーマイオニー「生徒の代表だもの、当然よ」

ロン「だってさぁ、僕も君もクリスマスはここにはいないんだぜ?なのに城の飾りつけだなんて、おかしいよまったく。マーリンの髭」

ハニー「……」

ハーマイオニー「それは、そうね。私は家族でスキーに行く事になっているし、そっちは隠れ穴でしょう?」

ロン「ビルやらチャーリーやらも今年は帰ってくるらしくってさ、何かのついでだろうけど。晩餐は楽しみだなぁ」

ハニー「……えぇ、あなたたちの飾りつけを楽しむのは城にいる人なのだから、つまり、私のためにしっかり励みなさい、ロン」

ロン「うん?」

ハーマイオニー「えっ?」

ハニー「……なぁに、その顔は。私のためにって思えばいやな作業も楽しくなるに決まっている、そうでしょ?」

ロン「……? あー、ハニー?君の言うことに間違いなんてほとんどないしたとえ違ってても豚が総力をあげて正解にするんだけどさ……どういうことだい?だって、君も僕んちに来るんだろ?」

ハニー「……えっ」

ロン「何週間も前にママから君を招待するように、ってちゃんと……あれ?僕、君に伝えてなかったっけ…………?」

ハーマイオニー「呆れた……まぁ、あなたもクリスマスに浮かれてたってことね、もう」

ハニー「ロン」

ロン「ヒンヒン!なんだいハニー!」

ハニー「クリスマスにむけて、トナカイたるあなたは第一に自分の鼻に何か飾るべきじゃないのかしら」

ロン「トナカイって何て鳴くのかな」

ハーマイオニー「あぁ、どちらにせよあなたはヒンヒンしか言わないんでしょう?」

ロン「もちのロンさ。どうだいハニー!ハーマイオニー監修で一年生次に君からもらった青い鼻を光る仕様にしてみたよ!ヒンヒン!」

ハニー「出来るトナカイね、あとは空を飛べるよう努力しなさい」

ハーマイオニー「もはや人類にかける言葉じゃないわ……ロンの方は人類の言葉でもないけど」

ロン「ハニ豚類ってね」

ハニー「分類学までも書き換えるわね、えぇ。それで、ロン。あなたのお家でのパーティのこと、だけれど……」

ハーマイオニー「……おばさまはきっと、シリウスは呼ばないと思うわ、ハニー」

ハニー「……」

ロン「ママは何かとシリウスと衝突するからなぁ……あー、でも大丈夫だよハニー。休暇中きっと、騎士団の本部に行くチャンスはあるだろうさ!もちのロンで!」

ハニー「……折角城の外で過ごせるのにクリスマスに会えないと、意味がないわ。今年は……そうね、毎年それどころではないしシリウ、スナッフルは宿無しだったから渡せなかったけれど、用意したのに」

ハーマイオニー「あなたからの贈り物ならどんな渡され方だろうと飛び上がって喜ぶと思うわよ、あの人は

ロン「尻尾も振ってね。うーん、ママにもう一回手紙を出しとくよ、うん。さーてと、それじゃ学期最後の見回りにでも行こうかな……あぁハニー!君を一人にするなんて豚失格だごめんよ!ヒンヒン!」

ハニー「何度も言わせない、与えられた仕事はこなしなさい。私の豚ならば。私は先に『必要の部屋』に行くわ。午後は今年最後のDAだもの。ハーマイオニーをしっかり支えるのよ、私の豚?」

ロン「ヒンヒン!」

ハーマイオニー「私が支えられることなんて皆無ですけどね」

ハニー「どうかしら。寒いもの、手を握ってもらったら?」

ハーマイオニー「あなたじゃあるまいし結構よ、もう」

青鼻のトナカイ、空を飛ぶ…




なんだ、ハニーはロンにチョッパーマンになってほしかったのか

×青い鼻
○赤い鼻
マーリンの髭!

『必要の部屋』

ハニー「……誰の仕業かしら、って、ドビーしかいないわね」

『楽しいハニー・クリスマスを!ヒンヒン!!』

ハニー「……私を讃えるのは当然の行動だけれど、さすがに天井から無数に金の星の飾りを吊るしてそれ全部にチカチカと光らせるのは、やりすぎだわ……『ディフィンド』、『アクシオ』」

ブチブチブチッ サーーーッ

ハニー「壁の飾りは残しておきましょうか……靴下を人数分吊るしているのはステキね。あら、この手編みの靴下、ドビーったら去年から随分と上達したじゃない……ハーマイオニーに教えて、ううん、やめときましょう」

キィィッ

ハニー「? あら……ハァイ、早いのね、ルーナ」

ルーナ「こんばんは。うん、とくにやることもないから。綺麗な飾りだね、あんたがやったの?」

ハニー「違うわ、流石の私でもここまで自己主張はしないわよ」

ルーナ「? あんた遠くから見てもしすぎなくらい主張してみえるけど」

ハニー「あなたに言われたくないったら」

ルーナ「見た目のことじゃなくって——あっ、ヤドリギだ。あんたの真上」

ハニー「? あら、ほんと……あー……離れない?」

ルーナ「その方がいいよ。ヤドリギにはナーグルがいっぱいなことが多いから」

ハニー「そう。ナーグルが何かは、聞かないわ」

ザワザワ
 ガヤガヤ

ハニー「それじゃ、私の代役のシーカーは、ジニー?」

アンジェリーナ「あぁ、これが中々上手くってさ。もちろん、君と比べたら雲泥どころの騒ぎじゃないけど……他のボンクラどもに比べれば段違いだったよ」

ケイティ「ほんと」

アリシア「ほんとほんと」

ハニー「そう……あとで褒めてあげないといけないわね。あら、噂をすれば」

ジニー「こんばんはおねぇさま!ねぇ聞いて!私、シーカーになったの!」

マイケル「えっ、僕まだ聞いてない!?」

ジニー「そうだったっけ、そうなのよ、はい聞いたわね。おねぇさまの代わり、立派に務めてみせるわ!」

ハニー「えぇ、大役でしょうけれどしっかりやりなさい。果たせたなら、そうね……ご褒美をしなくっちゃ」

ジニー「あぁ、光栄、光栄だわおねぇさま……ヒンヒン!」

マイケル「……」

ハニー「マイケル、ごめんなさね。お付き合いしてるあなたは複雑でしょうけれ……ど……あなた、ビクトール・クラムは好き?」

マイケル「え?あぁ、去年ちょっと意気投合したよ、うん、ナニかは言わないけどね」

ハニー「……あのむっつり、しっかり根をはっていったのね」

ガチャッ

ハーマイオニー「私達が最後みたいね。おまたせ、ハニー」

ロン「まったく、ネビル。なんでだってあんな時間まで地下牢のあたりをウロウロしてたってぇのさ。フィルチに見つかったらなんにもしてなくても難癖つけられるのは分かるだろ?もちのロンで」

ネビル「いや君が僕のことぶん投げてフォイに当てた罰則を今の時間までくらってたんだよ僕!わぁい!とばっちり!なれっこさ!」

ハニー「今日は最後の訓練だし、新しいことを始めても休暇の間に忘れてしまうと思うわ。だから、これまでの復習をして終わりにしようと思うの」

ガヤガヤガヤガヤ

ザガリアス「なんだ、新しいことは何もしないのかい?だったら僕——」

フレッド「そうだなザガリー、それを知ってたらお前さんはもっとマシなことに精を出してたのになぁ」

ジョージ「例えばザガリー、君のベッドの下に忍ばせてるこの秘蔵本に、とかなぁ。ナニを出すのやら」

ザガリアス「!? な、なんで知ってるんだよっていうか持ってるんだよ!返せよこの!こ……なっ」

フレッド「おーやおや?僕らの勘違いだ、すまんねザガリー。それはただの古い教科書だったみたいだぜ」

ジョージ「そんで?君は僕らが何の本を盗んだと思ったんだい?うん?口を開くか?それとも閉じるか?」

ザガリアス「……ナンデモアリマセン」

ハニー「はい、ありがとう。それじゃ、『妨害の呪い』、それに『失神術』をおさらいするわ。モデルになりたい人——」

ロン「ヒン!」

ネビル「ヒンヒン!」

ディーン「ヒンヒンヒン!」

ハニー「は、キリがないからやめておきましょう。二人一組になって頂戴、また私が見回るから」

ザワザワザワガヤガヤ

マイケル「なぁザガリー、どんな本だったんだい?え?」

ジニー「そうよそうよ、このお城でそんな本ってことは、百合の園なのどうなの?」

ザガリアス「……自分で言うのもなんだけど、ここで一番まともなの僕なんじゃないかと思うんだ」

インペディメンタ!
 妨害せよ! インペディメンタ!

ステューピファイ! 
 ステューピフィー! ステューピファァイ!

ハニー「……みんなかなり上達してるわね。特に……」


ディーン「う、うーん。またやられっちまったのか……ネビル、君、ほんと術をかけるのが上手くなってるよなぁ」

ネビル「そ、そうかな。あはは。えーっとね、コツは相手をフォイの奴だと思うことだよ、うん」

ディーン「イメトレってやつかぁ」


ハニー「……最初は杖を落とすこともできなかったネビルが、あんなに。ふふっ、私の豚だから当然だけれどね……こっちは」


チョウ「あら、ハニー。見て、私マリエッタに『妨害の呪い』かけるの、上手くいったわ!」

ハニー「……なんだか、形容し難い表情で飛び掛っているように見えるけど」

チョウ「そうね、なんでだろ……あっ、誰かの呪文でヤドリギが私の頭に……もう、マリエッタったら。ふふっ」

ハニー「えっ」

チョウ「『ウィンガーディアム・レヴィオーサ』……あそこであっていたかしら、ヤドリギが飾られていたのって」

ハニー「え?あー、そうね。そうだったように思うわ。部屋の、隅……」

チョウ「……今日このあと、大丈夫?」

ハニー「!?」



ロン「……」

ハーマイオニー「……」

ロン「……つづけt」

ハーマイオニー「ステューピファイ」

ネビル「ハーマイオニー!ハーマイオニーーーー!!!杖!!杖握って!!!魔女だから杖を握って失神させようよ!!!!それもう素手だよそれに失神じゃなくってもはや撲殺だよぉおおおおお!!ロ、ローーーーーーーーーン!!」

鉄拳《すてゅーぴふぁい》

一時間後

ハニー「みんな、えーっと、かなり上達したわ」


ガヤガヤガヤガヤ

ロン「あぁ、ハーマイオニーなんて魔法必要じゃなくなっちまったもんな。君、マダム・マクシームと気があうんじゃないか?いててっ」

ハーマイオニー「わ、悪かったわよ、もう。事故よ事故、そう、魔法力の暴走とか、そういうので」

ネビル「……傍から見たら大惨事だったんだけどね」

ディーン「あれが一番豚の耐久力……ゴクリ」


ハニー「この分なら休暇の後に、何か大技に入れるかもしれない。石化とか、それに……『守護霊』とか、ね」

ザワザワザワザワ

ハニー「パパに会うことになるでしょうけれど、あまり驚かないでくれると助かるわ」

……?

ハニー「気にしないで。それじゃ、みんな、いいクリスマスを」

ガヤガヤガヤガヤ

ハニー「……二人とも、あー、私、クッションを片付けておくから。先に戻っていいわ」

ロン「そうかい?それじゃお言葉に甘えようかな」

ハニー「あら、随分と……あなたってほんと」

ロン「なーんにも聞かないよ、もう聞いたしね。ハーマイオニーも納得済みさ、うん。大半は」

ハーマイオニー「……本当なら今すぐ魔法の義眼をはめてでも見張りたいところだけど、ロンに諭されたからやめるわ。でも、あの、ハニー……談話室で、まってるわね。それじゃ」

ハニー「……」

バタンッ

ハニー「……(私自身、どうしたいのか分からないわ)」

ハニー「(憧れだった、周りの人たちと自然体で接する素敵な女の人)」

ハニー「(チョウに誘われて、ここに残って——自分が、何を期待しているのか)」

ハニー「(彼女に感じているのは、ハーマイオニーへの想いとか、ロンへの気持ちとか、そういうのとも違うのに。何をしようと、してるのか)」

ハニー「(でもとにかく——今は)」

ハニー「……チョウ、おまたせ……」

チョウ「っ、ぐすっ、ひっく、ぐすっ……」

ハニー「……えっ?」

ハニー「チョウ……なっ、どうして、泣いて……?」

チョウ「っ!ごめん、ごめんなさい、ハニー。せっかく残ってくれたのに……でも、あぁ……あのね」

チョウ「今日、私があなたから習ったようなことを……彼も知っていたら、あんなことにはならなかったのかな、って、思ったら……」

ハニー「……(あぁ——期待して、何を考えてるのかしら、私——チョウは、ただ)」

ハニー「……セドリックは、みんな知ってたわ。それに、私なんかよりずっと、上手だったもの」

ハニー「(ただ、セドリックの話がしたかった——それだけなのね)」

ハニー「ただ、相手がヴォルデモートだった。彼になかったのは運だけ、よ。それに……」

チョウ「っ……でもあなたは、ハニー……あなたはずっと赤ん坊の時に『あの人』に打ち勝ったわ……?」

ハニー「……えぇ、それは、どうしてなのか誰にも分からないの。この私でさえ、一歳の頃のことなんて流石にね」

ハニー「(そう、私は期待なんてしてなかった。だから、ただ——一言、メリー・クリスマスって、言ってもらえれば、それで)」

チョウ「っ、ごめんなさい、こんな話をして……そう、よね。あなたは間近で彼と戦っていたのに……彼のことは忘れてしまいたい、のよね」

ハニー「……そんなわけ、ないわ」

チョウ「……本当?」

ハニー「……忘れられないじゃない、そうしたくっても。だって彼は……ホグワーツのチャンピオン、そうでしょ?」

チョウ「……えぇ、いつまでだって……ねぇ、ハニー。あなたはとっても、いい先生だわ……本当、それが言いたかったの、私」

ハニー「……そう。じゃぁ、メリー——」

チョウ「本当に、ステキよ……ねぇ、ハニー。あなたくらい、ステキな子なら」

ハニー「——クリスマ、きゃぁ!?」

チョウ「ヤドリギの枝の意味くらいは、知ってるわよね……?」

ハニー「ちょ……チョウ?」


チョウ「ハニー。あなたが、好きよ————っ」

ハニー「っ————」




談話室

ロン「だからさぁ、別にハニーは君のことがその、なんだ、表現がみつからないからこう言うけど、遊びだったとかそういうことじゃないんだろうって何度も言ってるじゃないか」

ハーマイオニー「じゃぁなんだって言うのよ、それは、ハニーの決めたことだもの。私が意見することじゃないけど、でも、私は!私はハニーが魔法界に入ってから一番最初に——あっ」

バタンッ

ハニー「————」

ハーマイオニー「あ……ハニー、おかえりなさ——」

ツカッツカッツカッツカッ

ガバッ!

ロン「!?」

ハーマイオニー「きゃぁ!?ちょっとハ、んっ!?んむっ……ぷはっ、っちょ、んんっ〜!?」

ハニー「……っ、っふぅ……そう、よね。こういうことよね」

ロン「あ、あー、えーっと?あまりの急展開に僕ぁどうぞる隙もなかったくらいおったまげっちまってたんだけど、あー、つ、つづけて?」

ハーマイオニー「は、ニー?なに、が、んっ、あの、っ、はな、あっ、ん……っ」

ハニー「(好きよ、って気持ちで。たまらなくなって求める時の気持ちは)」

ハニー「(絶対に、間違っても……さっきのチョウのようにはならない、はずだわ)」

ハニー「(でも、チョウは「好き」って口にして……彼女が嘘なんて、つくわけがない)」

ハニー「(ねぇ、チョウ……あなたはどういうつもりだったの?どういうつもりで、私と——)」

ハニー「(……とりあえず)」

ハニー「んっ……っは……ハーマイオニー?分かるまで、大人しくしてね?」

ハーマイオニー「あっ……えぇ……お願い。つづ、けて」

ロン「どうぞ!!!!!!!!!!!」

女子寮

ハーマイオニー「スーッ、スーーーッ」

ハニー「……結局、こんなに明け方近くになってしまったけれど……チョウがどういうつもりなのか、は……分からなかったわ」

ハニー「……ハーマイオニーのことはもっとよく分かったけれど」

ハニー「……この次のチョウは、ひょっとしたらもっと楽しい顔をしてくれるかもしれないわ。そうしたら、分かるかもしれない。どうしてあんなことを言ったのか……あんなことをした、のか」

ハニー「……そういえば、気になることが聞こえたわね」

ハニー「……ねぇ、ハーマイオニー。わたしの、ハーマイオニー?あなたは遊びなんかじゃないわ……わたしはいつだって本気なの、知ってるでしょ?」

ハーマイオニー「んっ……んん……スーッ、スーッ」

ハニー「……愛情って難しいのね。順番なんてつけたくないけれど、どうしても大事にしたいものも、人もいるもの。まぁ、私にとっての一番はいつだって私自身……一番」

ハニー「……一番星、は」

ハニー「……」

ジャラッ

ハニー「……ちゃんと、渡したいわ。私からも、お母様に頼んでみましょう」

ハニー「さっ、寝なくっちゃ……明日は……早いんだもの」

ハニー「そう、休暇が始まるんだわ——」

ハニー「列車に乗って、まずはキングズ・クロス駅に——」

ハニー「そう、列車——あの、長い」

ハニー「蛇、みたいに————」








シューーーッ、シューーーーーーーッ!

ハニー『あら……いつからわたし……こんなに背が低くなったのかしら。それに、こんなに、しなやかに』

ハニー『……当然よね、そうよ……わたしは、蛇なんだもの……さぁ、やることがあるわ。早く行かなくっちゃ』

シュルシュルシュル シューーーッ、シューーーーッ

ハニー『この狭い石畳の廊下の向こう……わたしがほしいもの……ずっと、求めていたもの』

ズルズルズルッ、ズルッ

ハニー『もうすぐ……もうすぐ、だわ……あら』

「……Zzz」

ハニー『誰か、いるわ……邪魔するなら……いいえ、寝ているのね。それなら無視しましょう。今はもっと大事なものがある、大事な、やるべきことが……あの扉の、向こうに』

「……!——っ!————!」

ハニー『あぁ、嫌だわ……起きてしまったのね……じゃぁ』

ハニー『かみ殺してしまう、しか……だって今のわたしは、蛇なんだもの……』

「——!?——っ!—!」

ハニー『暴れても、無駄……あぁ、この人は誰だったかしら。知っている気がするわ……蛇だからほとんど見えないけれど……これだけ近づけば』

ハニー『……なぜかしら……額が、とっても……』


「——モ、リー……すまない」








ハニー「あああああああああああああああああああぁあああああああっ!!!」

ハーマイオニー「ハニー!!ハニー!!!しっかりして!!ハニー!! ラベンダー、急いでマクゴナガル先生を呼んできて!ハニー!しっかり、あぁ!なんてこと!」

ハニー「あぁああああっ、あっ、う、っ、ハーマイ、オニー?」

ハーマイオニー「!ハニー、気がついたの!?あなた、突然額を押さえて、あぁ、ハニー!大丈夫、すぐに先生がいらっしゃるわ!だから……!」

ハニー「ダメ、違うわ。すぐに、ロンに!ロン、お父様が、大変あぁ、わたし、わたしのせいだわ、ロン、ロン……!!」

ガシャーーーーーーン!!

ロン「呼ばれて飛び出て窓から登場、箒を手にしてついに飛べる豚になった、僕ことロナルド・ビリウス・ウィーズリーさ!!!」

ハーマイオニー「せめて談話室で待ってなさいなにやってるのよあなた!?」

ハニー「ロン!ロン……!」

ロン「あぁ、なんだいハニー!僕の……ハニー?」

ハニー「あぁ、わたしが。ロン、ロン!巨大な蛇が、わたし、わたしがみて、、襲われて……!酷い出血で、あぁ……!」

ハニー「お父様が……アーサーおじさまが、襲われてしまった、のよ……!ロン、ごめんなさい、ごめん……」

マクゴナガル「にゃにごとですか、こんな夜更けに……ポッター!?そ、それにウィーz」

ロン「先生、罰則なら向こう三年間だって受けます。聞いてください」

マクゴナガル「……なんです、随分と紳士な顔だちにおなりになって」

ロン「ハニーをダンブルドアのところに連れて行きます。僕の父が——どこかで襲われたそうなので」

とりあえず今日はここまで
つづきは明日の夕方以降
じゃあの

体調不良
つづきは土・日

再開

校長室前

ガーゴイル「おいおい、先生様がジャリ二匹つれてこんな時間に何のようだ?パジャマパーティの予定は聞いていないがね」

マクゴナガル「お黙りなさい、緊急です!『フィフィフィズビー』」

ガーゴイル「緊急、そうかい。そんじゃ俺に拒否権はねぇな」

ピョンッ

ロン「ハニー、平気かいハニー。あぁ、君にとっては愚問に違いないけどね、今日は寒いから。だから震えるのも仕方ないってもんだよ、もちのロンで。だからしっかり僕の背中にひっついておくといいよ、寒いからね」

ハニー「……えぇ、そうね。とっても、心まで寒いもの……あぁ、ロン。わたし……」

ロン「とりあえず、話は校長先生のとこで。そうですよね、マクゴナガル先生」

マクゴナガル「……平時の授業でもそのくらい聞き分けと察しがよければ助かるのですが。さぁ、階段にお乗りなさい」

ロン「もちのロンです先生。自動で動くなんてやるよなぁ……ハッ!さてはこの階段め、豚だなっ!」

マクゴナガル「仕掛けですウィーズリー」

ハニー「……校長室の、扉」

ガヤガヤガヤガヤ

ロン「?なんだろ、こんな時間なのに話し声?……ガーゴイルはあぁ言ってたけどパジャマパーティでもしてるのかな、ダンブルドア」

マクゴナガル「いいえ、おそらく……まぁ、よろしい」

コンコンコンッ

ガヤガヤ……シーン

ダンブルドア「……入っておるよ!」

マクゴナガル「当たり前ですここはあなたは部屋でしょう。失礼」

ガチャッ

ダンブルドア「おぉ、あなたじゃったかマクゴナガル先生。それに——あぁ」

ハニー「……」

ダンブルドア「……こんばんは。どうしたのかね、ミネルバ。その生徒二人が何か重大な違反でも?」

マクゴナガル「そうではありません。ポッターが……悪夢を、見たと——」

ハニー「っ、夢じゃないわ!あれは!」

マクゴナガル「ポッター!教授の言葉を遮るのは——いいでしょう、あなたから校長先生にお話なさい」

ハニー「……えぇ。その……」

ダンブルドア「……」

ハニー「……」

ロン「……おいこの豚!!ハニーと話す時にどこみてんだ!!マーリンの髭!」

マクゴナガル「ウィーズリー!」

×ここはあなたは部屋でしょう
○ここはあなたの部屋でしょう
マーリンの髭!

ハニー「……わたしも、最初はただのくだらない夢をみていたの」

ダンブルドア「……」

ハニー「でも、それは違ったわ。ただの夢とは全然違う感覚で、それで、わたしは……わたしは、気づいたらどこか狭い、暗い通路にいて……」

ダンブルドア「……」

ロン「……だからなんで組んだ自分の指みてんだよこんにゃろう蹄にするぞこんにゃろう」

マクゴナガル「ウィーズリー、あなたの手こそそうされたくなければつつしみなさい」

ハニー「そこで、わたし……見たのよ……アーサーお父様が、ロンの、お父様が巨大な蛇に……襲われるのを」

ダンブルドア「……」

マクゴナガル「……」

ロン「……巨大なママとかじゃなかった?」

ハニー「それこそ夢でしょ……でも、違う、信じて!これは夢じゃないの!わたしには、っ、私には分かる!あれは、現実に起こったことだ、って!何でかなんて、聞かないで!私を信じられないの!?あなたは——」

ダンブルドア「どんな風に見たのじゃね」

ハニー「——っ、あー……どう、って。分からないわ。私の頭の中で、としか……」

ダンブルドア「私の言ったことが分からなかったようだね。よいか?君はその光景を、どこから見ておったのじゃ?うん?」

ハニー「何よ、その言い方——あっ」

ダンブルドア「どうじゃね?君はその惨劇を、蛇、またはアーサーの横に立って見ておったのか?それとも、神の視点からすべてを把握しておったのか。あるいは——」

ハニー「……蛇、だったわ」

ダンブルドア「……」

ハニー「私……わたしが蛇そのもので……蛇の目で、全部」

ダンブルドア「……」

マクゴナガル「……」

ロン「あぁハニー、それじゃパパは本望だったに違いn」

マクゴナガル「ウィーズリー、それ以上言うと残してきたグレンジャーを呼んできますよ」

ダンブルドア「アーサーは、酷い怪我なのだね?」

ハニー「あぁ、さっきからそう言っているじゃない。どうして分からないの、今もお父様は——」

ダンブルドア「よろしい。エバラード!ディリス!」

エバラード『あぁ、ダンブルドア』

ディリス『聞いていたよ、アルバス』

ロン「? どっから……あっ、歴代校長の肖像画!?おったまげー、いつも眠りこくってる訳じゃなかったんだ」

ダンブルドア「すぐさま行動に移してくれ。警報を。そしてアーサーが然るべき者によって発見されるよう——」

エバラード『了解した。私はあちらに——』

サッ

ディリス『では、私は聖マンゴを——』

サッ

ハニー「……?どういうこと……絵にかかれた人が隣の絵に入ったりするのは見たことがあるけれど……二人は、消えてしまったわ」

ダンブルドア「あの二人はホグワーツ歴代校長の中でも最も有名な二人での。わし除いて。高名故、他の重要魔法施設にも多くの肖像画が残されておる。自分の肖像画であればその間を自由に行き来できるのじゃ」

マクゴナガル「あのお二人が外で起こっていることに、警告と、それに報せを持ってきてくれるでしょう。さぁ、ポッター、ウィーズリー。おかけなさい」

ハニー「でも、でも、お父様がどこで襲われたかなんて——!」

ダンブルドア「あぁ、数分かかるじゃろう。じゃが、教授の言うことは聞くべきではないかね?」

ハニー「っ……そうして、あげるわ。ロン」

ロン「うん、ハニー。さっ、僕の背中の用意はバッチリだよ」

ダンブルドア「フォークス、見張りをしておってくれるかの」

フォークス「……フィ〜♪」

パッ

ハニー「……赤豚まで、私になんの断りもなく……まったく」

ロン「あぁ、定例会議もんだよな、うん。ダンブルドアもだけど……今度はなんだか変な道具を取り出してるし全く、ハニーを愛でる精神はどこにいったんだか」

ハニー「……壁に並んだ銀細工の一つね……何を始めるのかしら」

ダンブルドア「……」

チリンチリン カタカタカタカタ

ポッポッポッ

ハニー「……緑色の煙……蛇……?あれが、何か夢について……?」

ロン「あっ、二つに裂けた。ハニーに可愛がられる前にそんな風になるなんて蛇豚の風上にもおけないな」

ダンブルドア「なるほど、なるほど……本質的に分離しておる、そういうことじゃな?」

マクゴナガル「……ダンブルドア?」

ダンブルドア「おぉ、すまんのう。あー、なーに……ちょっとした時間つぶしじゃ。ほったらかしてすまんかったの、諸君。レモンキャンデーでもいるかね?」

ハニー「……もらってあげ——」

ダンブルドア「エバラード!戻ったのかね!」

ハニー「……なによ」

エバラード『あぁ、ダンブルドア!誰かが駆けつけてくれるまで叫び続けた!あの陽気なアメリカン崩れめ、ピザ片手に肩をすくめてばかりで一向に——だが、半信半疑で確かめに行ってくれた。地下には肖像画が一つもないので追いかけられませんでしたがね、しばらくしたら運ばれてきましたよ、彼が——血だらけだった。あれはいけない』

ダンブルドア「ご苦労じゃった。さすれば、今にディリスが——」

ディリス『えぇ、ダンブルドア。みんなが彼を病院に連れ込みました。酷い状態のようですが、あそこの癒者にかかれば——』

ダンブルドア「それは朗報じゃ。二人とも、間違ってもこの子の名前は出しておらんの?」

エバラード『まさか。その子が関わってるとなれば聞く耳を持たない連中ばかりでしょう』

ハニー「……」

ディリス『当然、その子のおかげではありますけどね。さぁ、ダンブルドア。次はどうします?』

ダンブルドア「そうじゃの、ねぼすけを起こすこととしよう。フィニアス、どうかご起床願えるかのう?」

フィニアス『……あと五十年』

ダンブルドア「引き裂いてもいいんじゃぞ」

フィニアス『やってみろ、高貴なる知恵と由緒ある肖像を損失する気があるのならば』

ハニー「……なんだか、見覚えある人、だわ」

ダンブルドア「フィニアス、あなたの別の肖像画を再び訪ねてほしいのじゃが」

フィニアス『ふぁ〜、あ。私の別な肖像?ふむ、どれのことだね。何せ私は由緒ある高貴な』

ダンブルドア「人望なさすぎでほとんどないじゃろ他に肖像画」

フィニアス『……で、グリモールド・プレイスに何の伝言だね。あの愚か者が私の肖像画を処分してなければ、伝えてやろうか』

ダンブルドア「シリウスはあなたの肖像画は処分するべきではない、と理解しておるよ」

ハニー「! 思い出したわ……フィニアス・ナイジェラス!シリウスの曽々祖父!あぁ、っ、はじめ——」

ダンブルドア「それは今重要ではない。それで、伝言なのじゃが」

ハニー「……」

ロン「おいいい加減にしろよこの豚このやろ、ハニーになんて口を」

マクゴナガル「ウィーズリー、おさえなさい。ポッター、今は緊急なのです、分かりますね?」

ハニー「……えぇ。でも……校長?」

ダンブルドア「アーサー・ウィーズリーの負傷、と。それからすぐにウィーズリー兄弟と、この子がそちらに向かうと伝えておくれ」

ハニー「……校長先生」

フィニアス『……ふんっ、随分とその子に入れ込むな、ダンブルドア』

ダンブルドア「何を言っておるのじゃ。この子の報せは正しかった、じゃから正等に扱うまでじゃ」

ハニー「……このっ、っ、」

ダンブルドア「シリウスにとってはよい報せじゃろう。新学期まで、この子を——」


ハニー「わたしを見て!!!!」

ダンブルドア「!」

ハニー「わたしを、見てよ!!!わたしは、『その子』じゃない!!『この子』じゃない!!!」

ダンブルドア「……」

ハニー「わたし、わたしは……あなたの」

ダンブルドア「ハニー・ポッター。そうじゃな、生徒に対してとはいえ無礼な物言いじゃった。すまんかったの」

ハニー「っ、この……!」

ダンブルドア「さぁ、この『移動キー』に触れるのじゃ。あちらでシリウスが待っておることじゃろう。ミスター・ウィーズリー、兄妹もすぐにむかわせる。ハニー・ポッターとともにあちらに待機じゃ、よいな?」

ロン「……そりゃ、僕がハニーと一緒なのはもちのロンだけど」

ダンブルドア「よい返事じゃ」

ハニー「待って、待ちなさいこの」

ダンブルドア「それでは、わしは忙しいのでな。これを——」

ハニー「いい加減に……いい加減にしなさいよ!!ダンブルドア……ダンブルドア!!!!」

ダンブルドア「——よいクリスマスを」

ハニー「っっっ、呪ってやる!!呪ってや……あっ」


グンッ

グルングルングルングルングルンッ






>フィニアス『……あと五十年』
コイツこんなキャラだっけwwwwwwwwなんかツボッたwwwwwwww

グリモールドプレイス 十二番地

ロン「痛い!ありがとう!あぁハニー!着地まで君は華麗だねヒンヒン!」

ハニー「……」

ロン「……ハニー、気にすることないよ。なんだいあいつ、豚のくせにまったく。あんな態度じゃいくら温厚さがうなぎのぼりな君でも暴言の一つだってはきたくなるってもんだよ。もちの僕で」

ハニー「……えぇ、そうね。腹が、たったんだもの……でも、さっきのは」

クリーチャー「……戻ってきた、血を裏切るガキどもが」

ロン「おっと、暗いもんでよく分からなかったけど……この声クリーチャーだな」

クリーチャー「戻ってきた。赤毛のクズども。父親が死にかけているというのは本当なのか?しかしフィニアス様が——」

シリウス「出て行け、クリーチャー!!!」

ハニー「っ、シリウス……!」

クリーチャー「——仰せのままに」

ロン「あのやろ、なんて目で僕のハニーを睨みやがる……やぁ、シリウス。昼間の格好のままでなんて、あー、粋だね」

シリウス「あー、いや、少し酒をひっかけていたらソファで眠ってしまってね——大丈夫だハニー、腹は出していない。君こそ元気にしていたか?うん?」

ハニー「……っ」

シリウス「……今はそんなはずはないな。アーサーが大怪我をしたと聞いた。それを、君が見たとも。辛かったな」

ハニー「っ、辛く、なんて……驚いて、少し、だけ、焦って……それに、あの腹黒、ダンブルドアに……怒っただけ。だから……頭なんて、撫でなくったって」

シリウス「強がりはいい。ロン、君も平気か?」

ロン「僕はハニーの一番の豚だぜ?ハニーが困ってるのに僕がうろたえてどうすんのさ。頭を撫でるのは結構、ハニーに両手を回してやってよ、マー髭だけど」

パッ

ドサドサドサッ!

ハニー「きゃぁ!?」

シリウス「おっと」

ロン「マーリンの髭!?って、あぁ。なんだ」

フレッド「おい、おい、おい、一体ぜんたい何がなんだってんだ!?親父が……あーっと」

ジョージ「いきなり呼び出されてわっけが分かんねぇ……おや、僕たちゃお邪魔のようで」

ジニー「パパが大怪我したっていうのは……ロン、自分の背中の上でおねぇさまが誰かと抱き合うのを耐えるなんて、あなたってほんと」

ハニー「〜っ!?ちが、違うわよ、あなたたちがいきなり、降ってきたから!あー、ロンが驚いたせいで、その、〜〜っ!シリウス!!お酒臭いわよ、もう!!!」

シリウス「はっはっは、そういうことにしてあげよう。あー、すまないね。君に冬も会えないのかと悲観にくれていたんだ。思わぬクリスマス・プレゼントとなってありがたい話だ、アーサーには悪いが」

ハニー「っ、そんなの、他に用意し、っ、いいから、離して!もう!」

フレッド「おや、おや、おや、いいのかい女王様。僕らは構わないぜ、いないものとして思ってもらっても」

ジョージ「事情はこっちの君の豚の方から聞いておくからさ、ごゆっくりしていてもらって結構なんだぜ?」

ジニー「ヒンヒン」

ロン「ヒンヒン」

ジニー「! ぱ、パパが大きな蛇に襲われたのをおねぇさまが予見したの!?おねぇさまステキ!あっ、そっちはごゆっくり」

ハニー「ちゃんと、私に話させなさい!ちょ、っと、っっ、ニヤニヤしないの!!!」

フレッド「大怪我、大出血、意識不明の大重症ってなぁ……」

ジョージ「あー、でもほら、病院に運ばれたんだろ?なぁ?」

ジニー「すぐに行きましょ!あっ、おねぇさまはここで、どうぞ。シリウス、マントか何か貸してくれる?パジャマのままだと寒いわ——」

シリウス「待ちなさい、まだ動いてはいけない。聖マンゴにすっ飛んでいくわけにはいけないんだ」

フレッド「そんじゃ歩いていこうか。それなら止められる道理はないだろ」

ジョージ「いいか、襲われたっていうのは僕らの親父なんだ。行かないと」

シリウス「アーサーが襲われたことをどうやって君たちが知りえたと説明するつもりだ?え?」

フレッジョ「「家族の勘さ」」

シリウス「……あー、私には縁がないから完全に否定はできないが、ダメだ。ダンブルドアは秘匿したが、ハニーからの情報だと知られる可能性だってある。そういうハニーの情報を魔法省がどう解釈するか、分かるかい?」

ジニー「そんなの、飛躍しすぎだわ。だって、おねぇさま以外からだって、誰かに教えてもらったって言えば……」

シリウス「誰か?いいか、君たちのお父さんは騎士団の任務中に襲われたんだ——君たちが迂闊な行動をとれば、騎士団そのものの崩壊を招く」

フレッド「騎士団なんてクソ爆弾くらえだ!」

ジョージ「それに豚団だろ今は!まったく!」

シリウス「君たちのお父さんはその騎士、あぁ、豚団のために命をかけたんだ!その尊さが分かるか、覚悟が分かるか!自分の子供達がそれを台無しにして喜ぶと思うのか?え?あぁ、だから君たちは団に入れないんだ。全く分かっていない、命をかけるというのがどういうことか——」

フレッド「あぁ、あぁ、ご大層に講釈たれるのは簡単だろうよ!だってここに閉じこもってる分にはご自分の首はかかってないもんな!豚たちの嫉妬以外!」

ジョージ「ご大層な台詞を吐くならまずは腕で閉じ込めてる我らが女王様をだしてやってからにしたらどうかな!その画じゃ締まるもんも締まらないだろ!」

シリウス「いや寒いと言うから」

ロン「言ったのジニーだけどね髭」

ハニー「いいっ、から、真面目に話しをしてあげて、シリ、もう、本当にお酒のにおい、ひどいわ!あとでお洗濯しっかりするんだから」

シリウス「何を言う、私はいつだって大真面目だ。におい、そうだな。君のにおいなら大歓迎だ、私は鼻がいい」

ロン「痛い!ありがとうございます!ヒンヒン!」

シリウス「とにかく、辛いのは分かる。今はモリーからの連絡を待つんだ」

フレッド「……」

ジョージ「……」

ジニー「……」

シリウス「あと、私がここに閉じこもって、という件だが……そうだな、アーサーは私なんかよりとてもとても立派だ。彼を誇るならば、我慢してほしい。いいな?」

フレッド「……そんな真面目な顔しないでくれよ、蕁麻疹がでるから」

ジョージ「……煽って悪かったよ、はーいはい。分かったよ、待つさ」

ハニー「シリウス……あなただって立派だわ?」

シリウス「……あぁ、ありがとう。君にそう言ってもらえれば私は他に何もいらない。が、腹ごなしは必要だな……冷えるし、バタービールでも飲んで待とう」

ロン「クリーチャー呼ぶかい?」

シリウス「いいや、あいつはさっきおっぱらったし、私は出来るだけ頼らないようにしてる。探し物をするときは別だがね。なにせあいつが奪っていることが多いからな……『アクシオ、バタービール』さぁ、飲みなさい」

ジニー「ありがとう……パパ、大丈夫よね?」

シリウス「聖マンゴは素晴らしい医療施設だ。外傷なんて、彼らにとっては取るに足らないさ」

ロン「ハニーの前にいる全ての人類くらいね。あぁハニー、君って素晴らしいよ本当。君が知らせてくれたおかげでパパは助かるんだ」

ハニー「えぇ……でも」

ロン「蛇がどこの誰とかはどうでもいいよ、うん。誰か、なんてね」

ハニー「……あなたって」


2時には戻る

再開

チクタクチクタクチクタク

ハニー「……」

ハニー「(ロンはあぁ言ったけれど……私は、わたしは確かに蛇そのものになってたわ)」

ハニー「……」

ハニー「(ただでさえ可愛い蛇だもの……このわたしがなったとなればかなりの、って、それはどうでもいいの)」

ハニー「(……落ち着きなさい。私には牙なんてない。蛇の言葉は分かっても、蛇に変身できるようになった覚えはないわ)」

ハニー「(私が蛇に、なんて……馬鹿げてる)」

ハニー「(でも、そうだとしたら……どうしてあの人はあんな反応をしたの?まるで最初から、私がどういう風に見ていたか分かっていたかのように)」

ハニー「(あの人……あの腹黒の、ダンブルドアは)」

ハニー「(……それに)」

ハニー「(腹が立ってた、そうよ、悲しかったわけじゃ……腹が立っていたとはいったって、私、本気であの人のこと……呪ってやる、って)」

ハニー「(……一体何が起きているの? 私 わたしは、どうなっているっていうの)」

ハニー「……」

ボタボタボタボタボタ

ロン「ハニー、ハニー、考え事してるとこ悪いね、君のバタービールが頭にかかるなんて滅茶苦茶光栄だけどさ、このままじゃ君の服にまでかかっちまうからあぶぶぶぶぶぶぶぶヒンヒン」

シリウス「眠たいかねハニー? そろそろ連絡がきてもいいころだとは思うのだが——!」

ボッ! フィピィ〜♪ パサッ

ハニー「! 赤豚、の……鳴き声と、羽、だけ?」

シリウス「あ、赤豚? フォークスからの配達だ。これは……モリーの筆跡だ。さぁ」

フレッド「ありがとさん……『お父さんはまだ生きています』……あぁ、ママ。そりゃなんとも不安を吹き飛ばす心強いお言葉だこって」

ジニー「『母さんはこれから聖マンゴに向かうところです。じっとしてなさい、できるだけ早く知らせます』ですって……」

ジョージ「あぁ、ハニー。この間の夏に君がどれだけいらだって不安だったかよーく気持ちが分かったぜ。なんとまぁ、歯がゆいもんだ」

ハニー「……お母様も慎重なのよ、分かってあげて」

ロン「ヒンヒン!」

シリウス「アーサーの無事は知れただろう?どうだ君たち、上へ行って休んでは。夏使っていた部屋はそのままにしてあるが——あぁ、いや。愚問だったな」

フレッド「お世話様。待たせてもらうよ、お袋がここに来るまで」

ジョージ「そのままってことは放っておかれっぱなしなんだろ?」

ジニー「この椅子の上で寝てるのと寝心地に変わりはなさそうだわ」

ロン「言うねジニー。僕も、もちのロンで。ハニー、君は——うん、愚問だったねごめんよハニー!」

ハニー「当たり前だわ。お母様の口から直接聞くまで、ゆっくり寝てなんていられないわよ」

シリウス「君は優しいな、知っていたが。フォークスの羽は君が持っているといい、君の髪に合うだろう」

ハニー「っ、それは、この私だもの。どんなものだって似合うに決まってるわ、むしろ物の方が合わせるに決まってる、そうでしょ?」

ロン「そりゃそうさ、だって世の装飾品は全て君のために存在してるようなもんだもんな。ヒンヒン」

ハニー「その通りよ。フォークス……ダンブルドアの不死鳥の、羽」

ハニー「……あたたかいわ」

ロン「あぁハニー、それはひょっとしてシリウスのコートに包まれてるからってことも関係してるんじゃ痛い!ありがとう!ヒンヒン!」

明け方

ガチャッ

モリー「……あら、久しぶりにここが賑やかなようね」

フレッド「賑やかしの僕らがいるからね」

ロン「ママ!パパは……」

モリー「大丈夫ですよ。お父様は眠っています」

……

モリー「……普通に、普通に寝てるという意味で!今はビルが看てくれているわ。あとで皆で面会に行きましょう」

ジョージ「……はーっ、よかった、はは」

ジニー「ママ……あぁ、ママ。本当に良かったわ!」

モリー「えぇ、ジニー。ほら、ジョージも来なさい。心細かったでしょう、えぇ」

ロン「ママの万力じゃ細くもなるだろうな、ははは、ふーっ……よかったよかった」

シリウス「よし、それじゃ、朝食だ!朝食、っと!クリーチャー、はどうでもいい。私が用意しよう、えーっと?七人分……少し待っていてくれ、捕まえてくるから」

ロン「出来ればネズミ料理以外にしてもらえるかいマーリンの髭!?」

ハニー「シリウス、私、手伝うわ。ここじゃ私、他にやれることも……」

モリー「あぁ、ハニー。あなたも座ってなさいな?あぁ、あなたはとっても、あなたのおかげでアーサーは助かったんだもの」

ハニー「っ、お母様、そんな……私、抱きしめられるようなこと、なんて」

モリー「いいえ。アーサーはあのままだったら何時間も発見されずに、朝には冷たくなっていたわ。あなたのおかげで命が助かったし、それにダンブルドアにアーサーがあんな場所で何をしていたか言い繕う時間も与えたの。全部あなたのおかげよ、ハニー」

ハニー「……」

モリー「シリウス、あなたも。子供達を一晩中見ていてくれてありがとう」

シリウス「なに、礼には及ばない。私もたまには役に立つところを見せないと君に、今度こそ呆れられてしまうからな。そうだろう?」

モリー「ふふっ、そうでしょうとも。あぁ、入院中はもしかしたら全員ここに留まることになるわ——聖マンゴに近いし、それに、魔法省の目を逃れる必要がまた出来てしまったんですもの」

シリウス「どうぞどうぞ、丁度退屈していたところで——アーサーの傷はクリスマスまで長引きそうかね!?え!?」

モリー「あー、そうなるとおも——」

シリウス「大勢の方が楽しいよ!あぁ!そうだとも!!!ワン、いや、うん!!!よしっ!!!よしっ!!!!!ちょっと待っていてくれ、今大きい鳥の料理をする準備をしてこよう!!!」

ロン「それまさかバックビークの頭とかじゃないだろうねやめなよマーリンの髭!!!」

ハニー「……ねぇ、シリウス。あー、料理に使う食材は私が持ってくるわ。だから……少し手伝って?食糧庫に」

シリウス「……あぁ、構わないよ。みんなはここにいてくれ、ハニーは私をご所望だからね」

ツカッツカッツカッツカッ

モリー「……聖夜にはまだ早いわ!!!」

ロン「……伸び耳は!?」

フレッド「もちのお前だロニー坊や!さぁ行け!二人の会話を聞き取るんだ!」

ジョージ「……あっ!シリウスめあのやろ、『邪魔避け呪文』かけてやがる!」

ジニー「邪魔よけてなにをするの!!!おねえさまになにをするのヒンヒン(怒)」

食糧庫

シリウス「それで、ハニー。話とはなんだ?」

ハニー「……私、そんなこと」

シリウス「君の後見人を舐めてはいけない。いつもはズケズケとなんでも言ってくるくせに、何か重大なことを私だけに話したい時の君のお父さんそっくりだった。いいや、そうでなくとも分かるがね」

ハニー「……アーサーおじさまが、襲われた時の事なのだけれど」

シリウス「あぁ、聞かせてもらえればありがたい。私も詳しく把握していないんだ」

ハニー「……私、わたし、それを。蛇の中から見ていたの」

シリウス「……」

ハニー「……まるで自分の意思で動いてるかのようで。それで、おじさまがいて……わたしが、アーサーおじさまを襲って」

シリウス「そのことは、ダンブルドアには?」

ハニー「話したわ。でも、何も答えてはくれなかったの……もう随分前から、何も話してくれないけれど」

シリウス「何か本当に心配するべきことならば、その場で君に教えるはずだ。ダンブルドアは私達に君を任せておけば大丈夫、と判断して——」

ハニー「それは、あなたに会えたのは嬉しいけれど——違う、ちがうの、シリウス、それだけじゃないの!わたし……あの人を、呪いたくなって」

シリウス「あぁ、騎士団員の全員が一度はあのジジイ呪うぞこんちくしょうと思うものだ、うん」

ハニー「そういうことじゃなくて! わたし、本気で……そういう冗談なんかじゃなくって」

シリウス「……」

ハニー「また自分が、蛇になったような感覚になって……本当に、ダンブルドアを、滅ぼしてやりたいって、気持ちで一杯に……わたし」

シリウス「……」

ハニー「わたし、頭が……おかしくなったのかしら」

シリウス「幻を見たことが尾を引いていたのだろう。それだけだ。大丈夫、君はおかしくなんかない」

ハニー「幻、って……そんなんじゃ、ないったら……」

シリウス「君はショックを受けているんだ。襲撃を目撃したことを自分のせいにして、自分を責めている、そのせいで、そう感じたと勘違いしているのだろう。さっきモリーが言ったことは聞いたかい?アーサーは君のおかげで助かったのだ」

ハニー「……」

シリウス「ここには君を責めようとしている者は誰もいない。もちろん、そんな者がいれば私が全力で守るがね。ハニー、朝食をとったらしっかり休むんだ。いいね?そうすれば少しは整理できるだろう」

ハニー「……それは、命令?」

シリウス「いいや。お願いだ。君の家族から」

ハニー「……そ。分かったわ……じゃぁ、私からも」

シリウス「なんだね?」

ハニー「……気分よく抱きとめられたいから、お風呂にはいってきてほしいわ」

シリウス「はっは、そうだな。鼻の先までしっかり綺麗にしておくとしよう」



ハニー「……みんなは休んでいるのかしら」

ハニー「……シリウスにはあぁ返事したけれど……とても、眠れなかったわ」

ハニー「眠ったら……また自分が蛇になって。今度はここにいるみんなを、襲ってしまうんじゃないか、って」

ハニー「そう考えたら、とても……眠ってなんて」

ハニー「……」

コンコンッ

ハニー「……入らせてあげるわ」

ガチャッ

ロン「ヒンヒン!やぁハニー!僕のハニー!よく休めたかい?ママが、昼食にしてみんなで聖マンゴに行こう、ってさ!」

ハニー「えぇ、当然じゃない。私だもの。そう、すぐに行くわ」

ロン「そりゃよかった!あぁ、それとねハニー!」

ハニー「なぁに?」

ロン「地下鉄ってのはよく眠れるらしいからそこでしっかり休みなさい、大丈夫、マッド-アイが付き添いだから、って、シリウスから」

ハニー「……」

ロン「なんのことやらさっぱりだね!君の寝入りのよさを奴さん知らないと見えるよ!ま!僕ことハニーの豚兼枕な僕はいつでもどこでも君が寝るなら見守るけどね!ヒンヒン!」

ハニー「……そうさせてあげるわ。まったく……みんなして予想通り、そういうわけ?」

ロン「ああ、君って分かりやすいしね痛い!ありがとう!!」

地下鉄

ゴウンゴウンゴウン

トンクス「ハニー、あなたのとこの血筋に『予見者』がいるんじゃないのかな」

ハニー「さぁ、知らないわ……それに、なんだかあの先生と同じくされたようでイヤね、それ」

トンクス「あぁ、あのジャラジャラ昆虫ね。ごめんごめん。うーん、そっか。それに厳密には予見とも違うよね。どういう理屈なんだろ」

マッド-アイ「トンクス、静かにせんか!誰に聞かれておるかわからんのだぞ!」

トンクス「はーい、はい。でも平気だよ、うん。改札をスッと通れるかどうかで魔法使いがいないか大体分かったし」

フレッド「親父に聞いてはいたけどなんだいありゃ、たまげたなぁ」

ジョージ「中に入ってる妖精だかは四六時中紙食ってんだろうなぁ」

ロン「僕みたいな見上げたヤギなんだろうな、うん。もちのロンで」

ハニー「変なところでアナログなのかなんなのか分からないわねあなたたち……ほんと、魔法使いがマグル社会で過ごすのは難しいのね」

ジニー「マッド-アイってば、ただでさえ山高帽が目立つのに自分を足止めした駅員に杖向けそうになるんだもの……」

トンクス「ほんとだよ。今日はショッキングピンクの髪な私より目立つってどういうこと?」

マッド-アイ「えぇいうるさい!マグルが操られとるかもしらんだろうが!油断大敵!」

トンクス「いや今はあなたのがうるさいって」

ハニー「……この電車で、どのあたりまで行くの?」

トンクス「ロンドンの中心よ。また魔法を使うわけにはいかないからこんな手段でごめんね。でもさ、まーた箒で飛んでったりなんかしたら、今度こそみーんな凍え死んじゃうでしょ?」

マッド-アイ「鍛え方が足りん、まったく」

トンクス「そうだねマッド-アイ。あなたにとっては飛ぶより切符を買う方が難儀だったようですけど!」

ハニー「喧嘩はやめて、えぇ、そのつもりがなくっても」

×マッド-アイ「
○ムーディ「
マーリンの髭!

ロンドン中心街

ガヤガヤガヤガヤガヤ

ホーーホーーフォーイ、メーリー・クリスマース!

ザワザワザワザワ

ハニー「……クリスマスムード一色ね」

ロン「昔ママに連れられていったけど、この時期のダイアゴンもこんな感じだよ。どこも似たようなもんなんだなぁ」

トンクス「クリスマスのプレゼントに飾りつけにお料理のお買い物、ってね。ねぇ、みんなは今年あそこで年を越すんでしょ?だったらパーティとか——」

ムーディ「無駄口叩いとらんでさっさと歩け!止まるな!死ぬぞ!油断大敵」

フレッド「おいおいそんな物騒なこと言う菜よな、マッド-アイ。ここは前線か何かじゃないんだからさ」

ジョージ「買い物戦線真っ只中ではあるだろうけどな。なぁ、僕らのグッズもすこし商売してみれば……」

ジニー「ママに言いつけるわよ」

ハニー「聖マンゴは、こんな人通りの多いところにあるというの?」

ムーディ「あぁ、そうだ。ダイアゴンにはもう十分な土地はなかったし、魔法省のように地下につくるわけにはいかん。不衛生だからな。結局、この街にあるビルをなんとか手に入れたのだ」

トンクス「なんだったかな。そう、病気の魔法使いが出入りしても人ごみに紛れちゃうから、って理屈で。ま、龍痘の酷いのなんかだったら隠しようがないだろうけど」

ハニー「……慎重な割りに雑なところがあるわよね、魔法界」

ロン「君のキメ細やかな肌とは雲泥の差だね、うん。もちのロンで……あっ!ハニー色の建物だ!ありがたや!」

ムーディ「目ざといなアーサーの息子。そう、あれがそうだ」

ハニー「……あれ、って……時代遅れの、デパート?」

ロン「ハニー色のくせになんで古ぼけてんだよまったく!マーリンの髭!」

フレッド「ふーん……古ぼけたガラスのショーウィンドウ、丸裸のマネキン」

ジョージ「どうみても、ただいま営業していません、って感じだね、こりゃ」

ジニー「『改装中』の札がかかってるわ」

ハニー「何年も改装中なのでしょうね、それはもう……目立たないようにっていう処置なんでしょうけれど、悪目立ちって言葉知らないのかしら、魔法省って」

トンクス「それ思うよ、うん。さーてと、みんな揃ってるね?迷子になった子はいない?」

ムーディ「お前がついてこれているんだ、一目瞭然だろう」

トンクス「うるっさいなぁ……よし、っと。ハーーーァッ」

ロン「ガラス曇らせて、何するんだい?ハニーに前衛アートで賛美歌でも書くの?」

トンクス「それはそれはパンクでいいだろうけどね……オホン。こんちわ。アーサー・ウィーズリーに面会に来たんだけど」

マネキン「イェー」

トンクス「うん、ノリがいい受付で助かったよ。さ、フレッジョ、先に入って」

フレッド「あいよ」

ジョージ「お先に」

スルッ

ハニー「……ガラスの中に、二人が消えて行ったわ」

ムーディ「今更驚くこともないだろうが。お前は毎年どうやってホグワーツ特急に乗ってる?え?」

ハニー「……それは、こんなデパートに一瞥をくれる暇な人もいないのでしょうけれど。いくらなんでも人が消えて誰も騒がないなんて、ありえるの?」

ムーディ「マグルはな、見えないものでなくとも見なかったことにする奴らばかりなのだ」

トンクス「それでもわざわざ騒ぎ立てるやつをなんと呼ぶか知りたい?『変わり者のオカルト野郎』って笑われるのが関の山なんだよ、うん」

ハニー「……うまいこと出来てるのね」

聖マンゴ疾患病院 ホール

モリー「あら、ハニー!こっちよ!トンクス、マッド-アイ。何事もなく到着してよかったわ」

ハニー「ハァイ、お母様……ここが、聖マンゴ」

ボンッ!
 ピーーーーーーーーーッシューーーーーーーッ
チャカポコチャカポコ

ハニー「……病院なのに、騒がしいのね。えーっと……症状が」

ロン「何せ魔法傷害のほとんどをここで看るっていうからね、君の愛みたいに分け隔てなくってところかな」

フレッド「おいみろよ、あのおっさん耳から湯気でてるぜ。人間ヤカンにでもなっちまったみたいだ」

ジョージ「あっちのむさっ苦しい魔法戦士なんて、頭から鈴の音色響かせてやがる。参考になるなぁ」

モリー「何のかは聞きたくもないわよお前たち。さぁ、いらっしゃい。受付をして、お父様に会いにいかないと」

ハニー「随分と並んでるわね……壁に標語なんかのポスターが貼ってあるのはマグルの病院と一緒だわ。『鍋が不潔じゃ、薬も毒よ』私が作ればどんな薬だろうと極上でしょうけれどね」

ロン「違いないね、飲み干すよ。『無許可の解毒剤は無解毒剤』 スネイプの作った、の間違いじゃないかな」

ハニー「そうね……あら……ディリス・ダーウェント。そう、ここにかかってたのね」

ディリス『……こんにちは、ハニー・ポッター』

ロン「聖マンゴの癒者から、ホグワーツの校長になったんだってさ。天使の君が女神になるようなもんか」

ハニー「もうなっているでしょ、違う?」

ロン「違いないよハニー!天使の段階なんてとっくに過ぎっちまってるよね!」

魔法使い「なんだって?なぁ、そこの君。この症状を克服したのならどうやったあ教えてくれないか?何せこの子ときたら今朝からこの翼で飛び回ってばかりで——アイタッ!」

ハニー「……魔法ってスゴイ」

ロン「娘さんに弟子いりさせてください!もちの僕で!!!!!」

魔法使い「私は別に——馬鹿にしてるわけじゃないんですよ!あいたっ!ただ——この靴のせいっ、で!馬鹿げたジグ・ダンスを踊り続けてしまう、だけで!あぁ——なんとか、してください!」

受付「その靴のせいで文字認識に異常が出てるわけじゃないでしょうね?案内板を見る!!あなたの場合は『呪文性傷害』!五階!次!」

魔法使い「プレデリック・ボードに会いたいんじゃが……」

受付「49号室。でも話せるかは責任持てませんよ。まだ随分と錯乱してらして、自分を急須だと思い込んだままですから。お茶を一杯してみたらどうです、コポコポ言うと思いますけど。次!」

魔法使い「あの、娘が飛び回って——」

受付「はいはいよかったね!まるで天使だ!そう思ってテメェで呪文かけたんだろこのボケ!五階!次!」


ハニー「……荒らんでるわねぇ」

ロン「忙しいだろうからね、うん」


魔法使い「ケツに大きなできものがね、できまして、デュフh」

受付「おい守衛こいつ引きずりだせ!ちっくしょう!なんでクリスマス時期のこんな日に変態の相手しないといけないのよ!誰か恋の病に伝染つしてくれよ!!次!!!!」


ハニー「……私怨だったようだわ」

ロン「君の豚になれば余計なこと考えなくて済むのになぁ」

モリー「こんにちは。夫のアーサー・ウィーズリーが、今朝別の病棟に移ったと思うのですが——」

受付「あぁ、アーサー・ウィーズリー……二階、右側二番目のドア。ダイ・ルウェリン病棟よ」

モリー「ありがとう」

受付「ところで、付き添いで来てたイケメンは——」

フレッド「ざーんねんおねぇさん、奴さんにはいい人がいるもんでね」

ジョージ「精々お仕事とあつーいデートでもしてなよ。そんじゃぁね」

受付「……お前ら全員黒斑病になれ!!」

ムーディ「なんだ!?宣戦布告か!いい度胸だ!こい!!!!」

トンクス「マッド-アイ、マッド-アイ、相手にしてたら名前に泥がつくからやめなよ、まったくもう」

『危険な野郎 ダイ・ルウェリン記念病棟——重篤な噛み傷』

トンクス「担当医師ヒポクラテス・スメスウィック、研修医オーガスタス・パイ。うん、ここで間違いないみたい」

ムーディ「よし。まずはわしが突撃する。わしが返り討ちにあったらお前たちはここを急いで——」

トンクス「だからこんなとこが落とされてたらどうしようもないでしょうが!マッド-アイは黙る! 先にあなたたちだけで見舞ってよ、大勢おしかけても迷惑だし。最初は家族で過ごすべきだわ」

ハニー「そうね、そうするべきよ。だから……」

モリー「そうなったら、ハニーも一緒に来てもらわないと。ねぇハニー、遠慮なんてしないで頂戴。アーサーもあなたにお礼を言いたいの」

ハニー「……そうさせてあげるわ」

ガチャッ

アーサー「うーむ、折角マグルの街のど真ん中にいるのに何もできないのはもったいな——やぁ、みんな!」

フレッド「怪我ないかい、パパ!」

ジョージ「けがないかい、けが!」

アーサー「あるともさ!怪我も毛も!髪の話はやめよう!うん! ビルとは入れ違いになったな。今しがた仕事に戻ったところだ。あとでそっちに寄るはずだがね」

モリー「気分はどうなの、アーサー?」

アーサー「上々さ。包帯さえとれれれば帰れるんだが……」

ジニー「? じゃぁ取ってしまえばいいのに」

アーサー「あぁ、そうなるとドバッと出血するものでね。みんなを驚かせるわけにはいかない」

ロン「うっわぁ……まだ酷いってことかい?マーリンの髭」

アーサー「そういうわけでなく、あの蛇の牙には傷口がふさがらないようにする特殊な毒があったらしい。でも、なーに、死ぬ事はない。血液補充薬をたまに飲んで、あとは先生が解毒剤を見つけるのを待つだけだ。これだけで済んだのは——ハニー、こっちに」

ハニー「……」

アーサー「ありがとう、君のおかげだ。私は助かったし、それに狙われた物——」

モリー「アーサー!」

アーサー「あー、っと。つまり、HAHAHA。とにかく無事だった。本当にありがとう」

ハニー「……お父様が良かったのなら、喜ばしいことだわ」

ロン「君の存在くらいね」

ハニー「えぇ、そうね。世界の祝福ね」

アーサー「あぁ、拝めてよかったよ。今日と言う日に、みんなと一緒にね」

アーサー「私なんて軽いものさ。あそこの老婆の傷なんて酷いにおいを放ってる上に、原因不明だ。おそらく非合法のものを扱ったに違いない」

ロン「ハグリッドのトモダチかな」

アーサー「あっちの人も、もっとだ。狼人間に噛まれたんだ——可哀想に」

ハニー「……狼人間?」

モリー「まぁ……ねぇ、アーサー。一般病棟で大丈夫なんです?だって——」

アーサー「満月まではあと二週間もある。平気だよ、それに、私達の近くにだって一人いるじゃないか」

モリー「あぁ——そうよね、ごめんなさい私ったら」

アーサー「そう、今の魔法界の医療技術ならほとんど普通の生活を送れる。あの人も癒者や、それに私がそう説得したんだがね」

ジニー「なんて言ったの?」

アーサー「黙れ、噛み付いてやるぞ、だとさ」

モリー「ちょっと待ってらしてね、あなた。フレッジョ、ジニーの目を。ロン、ハニーの目を覆っていなさい」

フレッジョ「「あいよ、マム」」

ロン「もちのロンさ」

アーサー「モリー、落ち着いて。彼も悲観的になっているだけさ、いずれ分かるよ、うん」

フレッド「ふーん。確かにそういうのに比べりゃパパのなんてかるーいもんだよな」

アーサー「そうだろう?いや、怪我はあるがね、けがは」

ジョージ「ふーん、そんで?パパはその取るにたらない怪我をどこで負ったって?」

アーサー「あぁ、そりゃもう魔法し——」

モリー「フレッジョ!聞き出そうとしない!!アーサー!」

アーサー「おぉっと!はっはっは、お前たち、いい魔法警察部隊になれるよ」

モリー「行き着く先はご厄介になる方な気がして心配ですけどね、母さんは!お前たち、あんまりしつっこく聞くんじゃありませんよ!いいですね!」

フレッド「でもさ、おふくろ。僕たち普通に過ごしてて大蛇に襲われるなんてことないぜ?気になるだろ」

ハニー「そうかしら」

ロン「そりゃハニー、君って普通じゃないからね。美しさって意味で」

ジョージ「さっきいいかけてたろ?何狙ってたのさ、その蛇ってのは。さぁゲロっちまえよ、楽になるぜ」

モリー「お父様を追い詰めるんじゃありません!」

ジニー「パパはその何かを護衛してたんでしょう?そういう任務の時だった、って聞いたわ」

アーサー「あー、そのだね」

フレッド「そういやハニー、君、あの人が復活した日でかい蛇がいたって言わなかったか?え?」

ジョージ「その蛇ってのが親父を襲ったんじゃないか?そうだ、蛇といやぁ『例のあの人』だ!」

ロン「あー、それで、パパ。その守ってたのって、もしかして『武器』なのかい?夏に言ってたやつ?」

モリー「お黙り!そんな質問をするならぶっ飛ばして、不慮の事故であちらの魔法使いにぶつけますからね!?」

狼人間青年「……!?」

アーサー「モリー、まずは君から少し休憩してきたらどうだ」

廊下

フレッド「結局僕らおんだされちまったな」

ジョージ「まったく、家族にお優しいよな」

ジニー「渋ったってことは、正解だったのかしら……パパが守ってたのは、あの、『武器』?」

フレッド「さーぁね、是非は俺達と入れ違いで中に入ってった彼らから教えてもらおうじゃないか」

ジョージ「聖マンゴの連中が、扉にきちんと『邪魔避け呪文』をかけてるかどうか、看てやろうぜ」

ロン「今度は伸び耳が役に立つといいよな」

ハニー「今度は……? でも……いいのかしら」

フレッド「とれよ、ハニー。君は親父の命を救った。盗聴する権利があるとすりゃ君だよ」

ジョージ「っていう建前のもと君が動いてくれれば僕らはその恩恵にあずかれるんだがね」

ハニー「……正直な人は好きよ、ふふっ。貸して」

フレッド「その意気だぜ。さぁ、いけっ!僕らの伸び耳!」

ジョージ「願わくばマッド-アイが見ていませんように!」

ザーーッ、ザーーーーーッ

トンクス『——くまなく探したけど、蛇はどこにもいなかったらしいよ——』

ハニー「!すごい、トンクスの声がすぐそこで話されてるみたいに!」

フレッド「そうともハニー、そういうや君これ使うの初めてだっけ?」

ジョージ「これぞ我らが自慢の逸品『伸び耳』にござーい、ってね!」

ハニー「……どのくらい遠くまでいけるのかしら、これ!」

ロン「あぁハニー、残念だけどハニーホグワーツからロンドンまでは無理だと思うね僕ぁロンドンっていうかぶっちゃけるとグリモ痛い!ありがとう!ヒンヒン!」

>>248
あれ、原作に「慶察」って言い回しがあるように「警察」って言葉が魔法界には無いんで
「魔法警察部隊」は誤訳って聞いたような……

トンクス『あなたを襲ったあと、蛇は消えちゃったんじゃないかな——でもさ、『例のあの人』もまさか、蛇が中に入るなんて期待してないよね?』


フレッド「やったぜ、ビンゴだ!あの蛇は『あの人』のものみたいだ!」

ジョージ「君が例の場所でみた巨大な蛇ってやつだろ、ハニー!え!?」

ハニー「えぇ……あいつのじゃなきゃ可愛い、あの子、だったのね」

フレッジョニー「「「!?」」」

ロン「聞き流してくれていいぜ、うん、マーリンの髭で」


ムーディ『わしの考えでは、蛇を送ったのはあくまで偵察のつもりだったのだろう。今までは全くの不首尾で終わっておるのだろうが?さすれば、奴はこう思ったに違いない。もう一度、立ち向かうべきものをしかと見ておこう、とな』

アーサー『私がいなければ、あの周辺をもっと探っていたのだろうね……ある意味では、私があそこにいたのは幸運だったわけだ』

モリー『幸運なものですか!ハニーがどれだけ怯えていたか——でも、ねぇ、私、こんなことは思いたくわないのだけど。ダンブルドアはどうも、ハニーにこんなことが起こるのを——待ち構えていた、そう思わない?』


ハニー「……」


ムーディ『む。まっこと、そうだろうな。ポッターは何かおかしい、それはわしら全員が知っておる。知っておかねばならん』

ロン「殴りこんでいいかな」

ジニー「後につづくわ」

フレッド「黙ってろよな、二頭とも!」

ジョージ「弟妹の墓を作るのは御免だ」


モリー『でも——今朝お話したときは、ダンブルドアは。ハニーを心配しているようにも見えたんです。一体、どちらがあの人の——』

ムーディ『無論、心配もしておろう。ポッターは蛇の『内側』から事を見ている、これが何を意味するか分かるか?え?』



ムーディ『もしも、『例のあの人』がポッターに取り憑いておるのなら——』

ハニー「っ!!   あ……」

フレッド「……」

ジョージ「……」

ジニー「……」

ハニー「……私、わた……っ!」

ロン「ハニー!あっ、ちょ、なんだよ耳が絡まって、こんちく、マーリンの——」

バターーーン!!

ムーディ「何の騒ぎだ!!!敵か!!!!!!殺すぞ死ねぇええええええ!!!!」

ロン「うわちがやめ髭ぇえええええ!!ハニーーーーーー!ヒンヒン!ヒーーーーーン!!」



ハニー「っはぁ、はぁ……あぁ……やっぱ、り」

ハニー「私は……わたしは、あいつに」

ハニー「あいつがわたしに、やらせたんだわ。全部……っ、わたし、が」

ハニー「ヴォルデモートが……わたしに、乗り移って……」

ハニー「っ、ぅっ、っ……!」



「HAHAHA!あれ?あそこで泣いてるバンビーナがいるような……しくよろするべきかな!ねぇ!」

癒者「はいはい、まずはお薬のみましょうね、ギルデ——」


8時半には戻る

再開

グリモールド・プレイス 十二番地

シリウス「お帰り。アーサーはどうだった……ハニー?」

ハニー「……えぇ、元気そうだったわ。ごめんなさい、わたし、人ごみに酔ってしまって……お夕食の前に少し、休ませてもらうわね」

シリウス「……そうか。ゆっくりしなさい、私はみんなとクリスマスの飾りつけの相談をしよう。君も後で来るといい、きっと楽しいぞ?」

ハニー「……えぇ、出来れば」

バタンっ

シリウス「……何があった」

モリー「さぁ……帰りの地下鉄からずぅっとあの調子で……何か酷い怪我人でも見たのかしら。あの子は、優しいから」

ロン「……そりゃ、ハニーは天におわすなんとかより慈悲深いけどね」

ジニー「……」

フレッド「……」

ジョージ「……」

モリー「……お前たち、何か軽口たたきなさいな……明日は大雪、いいえ、冬だしきっと真夏日ね、その分じゃ」

ハニー「……今回は一人部屋にしておいてもらって、良かったわ」

ハニー「一人になれる……そうよ」

ハニー「……わたしみたいなのは、一人でいないと」

ハニー「……みんなは心も体も、ヴォルデモートに汚されてない清潔で無垢な優しい人たち」

ハニー「なのに、わたしはどう……?あいつに乗っ取られて……蛇そのものに、なって」

ハニー「……穢れてるわ。汚された……みんなと、食卓を囲むことなんて——」

ハニー「っ、っっぅ」

ハニー「……あいつが求めた『武器』は……わたし、だったとしたら?」

ハニー「……そうよ、そうすれば……辻褄があうわ。わたしはあの腹黒、っ、ダンブルドアの近くにいるし……お父様お襲ったように、ダンブルドアの寝首を、かける」

ハニー「だから、みんなわたしの、護衛を……わたしをあいつらから守る、じゃない……あいつらの力にさせないように、って」

ハニー「わたしの中にいる……あいつと、結びつかせて……あぁ」


白豚「ピィ〜ヒン!」

ハニー「っ!?白豚……どうしてここ……あぁ、トランクが……わたし達があちらに行ってる間に、届いたのね……」

白豚「……ピピーィヒン?」

パッ、シューッ

ハニー「っ、近寄らないで!!!!」

バシンッ!

白豚「ピィッ!ヒンヒン!ヒンヒン!ハァハァ!」

ハニー「近寄っちゃ、ダメ……わたし、っ、友達の、あなたまで……っ、どこかに行って!さぁ!」

ガチャッ

ハニー「早く!どこか、遠くに……消えて!見たくも、っ、見たくも、ないわ!この、豚!」

白豚「……ピィー、ヒーン」

パサッ シューーッ……

ハニー「……っ、ぅっ、」

ハニー「……どこかで、いい人、に……飼われて、ね……ヘドウィグ」




パリーン!ケェーーーーーッ!!

ウワアアア!?せっかく美味しいケーキ買ってきたのにーーーー!!!!

ハニー「っ、ぐすっ……」

ハニー「……何、してるの。わたし……そう、よ。追い出すのは、ヘドウィグじゃ、ないわ」

ハニー「……今なら、荷物も全部ここにある。大事なもの、全部……本当に大事なものは下の階、と、今頃スキーをしているでしょうけれど」

ハニー「……わたしが、出て行かなきゃ。そうしないと……みんなみんな、危険だわ」

ガタゴトッ、ゴロゴロゴロゴロ

ハニー「……今この瞬間にも、わたしはあいつにこの組織の情報を漏らしているようなものじゃない……早く、いかなきゃ」

ハニー「でも……行くって言っても、どこへ……ホグワーツは、ダメよ。城のみんなや……ダンブルドアが」

ハニー「……」

ハニー「……覚悟を、きめなさい。わたし。ちっぽけで、弱い、わたし」

ハニー「そのくらいのことは、しなきゃ……自分を、魔法界から切り離さなくっちゃ」

ハニー「……プリペッド通りに。純粋なマグルを、わざわざ乗り移ってまで手をかける意味も、ないでしょ……」

ハニー「さぁ……」

ガチャッ……


『逃げるのか?』

ハニー「っ、違う!わたし、私は——誰?」

『ここだ、ここ。少し戻って壁を見てみろ、この高貴な姿が目にはいるだろう』

ハニー「……あぁ。ここにかけられていた、のね……フィニアス」

フィニアス『小娘に呼び捨てられる覚えはない。それで?私の考え違いかね。グリフィンドール寮に属するということは、君は勇敢である、そう判断されたはずだが?』

ハニー「……だから、逃げてなんか」

フィニアス『そうだ、そうだな。君のそれは逃げではない。どうやら私の見たところ、君は私の寮の方が合っていたようだ。我らスリザリン生は勇敢だ、しかし、愚かではない。我らは選択できるのならば、常に自分自身を救う確かな道を選ぶ。あぁ、そうとも』

ハニー「っ、一緒にしないで!サラザールとも違うあなたたちの勝手なスリザリン像と!」

フィニアス『……ふーむ?』

ハニー「私は、自分を救うんじゃないわ。ふざけないで——あなたの、話なんて」

フィニアス『——あぁ、なるほど。なるほど、っく、君は——あぁ、君は愚かだな。私の寮にはいらん。そう!君はこう言いたいのだろう!わたしは尻尾を巻いて逃げるのではなく——気高い自己犠牲精神のもと、ここから立ち去るのだ、と!』

フィニアス『なんともはや。クソ食らえだ』

ハニー「……」

フィニアスいいこと言うなぁ…

>>266
スリザリンキャラの中では美味しいキャラの一人かもしれん

フィニアス『自己犠牲だの人のためだのくだらん。全て自分のための行動のくせにそうやって押し付けがましく言い方をかえるクソみたいな考えは、私は一切切り捨てる』

ハニー「……いいたいことはそれだけ?それじゃ、私は行かせてもらうわ。私の生き方は、あなたのご趣味にはあわないようだもの」

フィニアス『あぁご勝手に、と私個人としては言いたいがね。ダンブルドアからの言伝だ』

ハニー「……ダンブルドアから!?」

フィニアス『あぁ。動くでない』

ハニー「っ、今は一歩も動いてないじゃない!さぁ、教えて頂戴!あの人は私、わたしになんて——!」

フィニアス『今伝えただろうが、愚か者。ダンブルドアは君に『動くでない』と言っている」

ハニー「……は?他に、他には!?他になにか、わたしに——指示でなくてもいい!お願いじゃなくてもいい!何か、いまのわたしに、言うことがあるんじゃ——」

フィニアス『だから、伝えたとおりだ。ダンブルドアはただ一言、君にここから動くなと言っている。グリフィンドール生は言葉の意味から教えんといかんのか?』

ハニー「……な……なによ、それ……なによ、それ!!!わたし、わたしはこの十二時間の間に、っ、恐いことと安心と、また恐いことを突きつけられてるのよ!?なのに、なのに!!あの人は、まだわたしに何も話そうとしないっていうの!?!?」

フィニアス『ホグワーツ校の校長に、君のような小娘にかまっている時間はない』

ハニー「あなたは口を挟まないで!あなたに何が分かるの!知ってる、知っているわ!あなたは——ホグワーツでいっちばん、人望がない酷い校長だった、って!!だから——」

フィニアス『ほう、それで、だからなんだと言うのだね。私の校長としての仕事ぶりが、君が私に口答えする正等な理由になるというのかね。生前の私のことを何も知らず、ただあの私ひいてはこの家全体を憎んでいるのあろう愚か者の言葉でしか私のことを知らない君が、さぁ、言ってみろ。今この瞬間の話題と、私の生前の評価に何の関係がある』

ハニー「っ……あなたが、あなたがうるさい、から!」

フィニアス『これは驚きだ、君は耳という器官が正しく機能しているか一度聖マンゴにいって看て貰うといい。先ほどまで声を荒げていたのは誰だ。ヒステリックに喚きたててとんちんかんな糾弾をし始めたのは誰だ?』

ハニー「うるさい、うるさいわ!あなたも、ダンブルドアも!!わたしに何があったってどうでもいいんでしょう!あなたたちで全てかたずける!だからわたしは大人しく、とじこもって、何も言わず!!!!!ちっぽけな脳味噌で何も考えず待っていろ、って!!!そう言いたいんでしょう!?」

フィニアス『これだから子供は嫌いだ。自分が世界の中心だと思い込む。君は悲劇のヒロインか?え?多感なお年頃、言っていろ。ただ単に自分だけが可愛くて自分だけが苦しいのだと勘違いしているだけだろう』

フィニアス『私が教師をしていることが身震いするほど嫌いだったのは君のような生徒のせいだ。自分が正しく他の意見を聞かない。鼻持ちならない思い上がりで自ら破滅を招くくせにいざとなったら助けてと教えを乞う。それに見合った尊敬や敬意は示さない——あぁ、そうだ』

ハニー「っ、ぅぅっ」

フィニアス『泣けば済むと思っているその態度もだ。クソ食らえ』

ハニー「っ!泣いて、ない!泣かない、わ、っ」

フィニアス『それはありがたい。シミでもつけられては大変なのでな。そう、君は考えが足りない。自分のことで頭が一杯なのだろう、自分とみんな、オトモダチのためにというなんとも頭が幸せそうな言葉でな』

ハニー「……」

フィニアス『ホグワーツの校長が、自らの企て全てを明かさないのはたぶんれっきとした理由があるのだろう、何故そう思えないのだ』

フィニアス『不当な扱いを受けていると感じている暇があるのならば、これまでダンブルドアの命令を聞いていて一度も危害が及ばなかったことを考えもしなかったのか?』

ハニー「……吸魂鬼、は」

フィニアス『結果君は無事で退学も逃れた。尽力したダンブルドアの姿は君は間近で見ていたはずではないのか?優しい声をかけられなかったら自分をどうでもいいと思っている証拠か?』

フィニアス『言っておくが、ウィゼンガモット大法廷に証人として立つことは並大抵の魔法使いなら逃げ出したいほど大変なことだ。図太い神経をお持ちの君のような若者はなんとも思わんのだろうがな』

ハニー「……」

フィニアス「そうだろうな、君は結局他の若い連中と同様、自分だけが考える頭を持っているのだ、そう信じ込んでいるのだろう。自分だけが危険を予知できて、賢く、他のものが鈍くさく感じてしかたないのだろう。分かりたくもない、驕る人間の思考など理解する価値もない』

ハニー「……」

フィニアス『闇の帝王の企てを理解できるのは自分だけだ、と思わないことだ。むしろ、君は先にあげた馬鹿げた思考のせいで迷走に迷走を重ねている。足を止めて、『動くでない』。これが物理的なことだけだと思っているのならグリフィンドールは見下げ果てた愚か者の集まる寮となるだろう』

ハニー「……じゃぁ、あいつ、ヴォルデモートが何か企んでいることは、確かなのね?」

フィニアス『そんなことを言った覚えはない。さぁ、私は去ろう。高貴な私の時間を思春期の悩みなどに費やすほど無駄なことはない』

ハニー「えぇ、っ、帰ればいいわ——勝手に。ダンブルドアに伝えなさいよ……『何も教えないでくれてありがとう!』って!」

フィニアス『あぁ、そのように』

スッ

ハニー「……」

ハニー「っ……」

ドサッ

ハニー「っ、っっぅ、じゃぁ……どうしろ、って……言うのよ」

ハニー「……ダンブルドアの、ばかぁ……」

翌日

コンコンコンッ

ハニー「……」

 ロン「あぁハニー!昨日の夕食も今朝も何も食べてないだろ!?そのままだとお腹と背中の髭がマーリンしちまうよ!」

ハニー「……」

 ロン「……ここにママ特製のサンドウィッチ置いておくからさ!気が向いたら食べてよ!大丈夫、ピーナツバターは入ってないさ!もちのロンでね!」

ハニー「……」

 ロン「それじゃ……あのさ、ハニー。ここまで聞こえるだろ?あー、君の大事な人の」


 シリウス「〜♪世のヒッポグリフよ忘れるな クリスマスは——♪」


 ロン「ノリノリな替え歌で飾り付けするほど、君がここにいるのが楽しくて仕方ないんだ。僕も、みんなもさ」

ハニー「……」

 ロン「だから 言わせてもらうよ 馬鹿な考えはやめて、出てきてくれたら——」

バンッ!!!

 ロン「……おぉっと。今日の枕が僕じゃなくて良かった……君から受ける折檻なんてただのご褒美だけどさ。それじゃ……またあとで」

トンッ、トンッ、トン……

ハニー「……知ったような口……そうよ、ロンは、いつもそうだわ」

ハニー「そうよ……みんなが楽しいのは、わたしがいないおかげよ……ほら、フレッドとジョージも、笑ってるわ。昨日はあんなに、無言で……難しい顔、だったのに」

ハニー「……みんなのために、わたしは……ここで、この部屋で」

鳥豚「……ゲェーヒン」

ハニー「……わたしが蛇になりそうになっても、あなたならすぐ、逃げられるわよね?それか、表に飛び立てる?」

鳥豚「……ゲェー、ヒンヒン」

ハニー「……ありがと。本当は、一人でいればいいんでしょうけれど……それも、寂しいのよ」

ハニー「……自分勝手ね、わたし。あの肖像画の、言う通りだわ……嫌な子だわ……わたし、って」





バーーーーーーーンッ!!!!

「ご本人様であろうと、私の大切な人を卑下するのはやめていただるかしら!」

ハニー「!?」

ロン「いやほらまってよほらここは穏便にさあのもうちょっとうわこわ鬼ーだこれハーマイとれた鬼ーだよこれはマー髭」

ハーマイオニー「鬼で結構!!!!さぁ、ハニー!来なさい!!」

ハニー「なっ、ハーマイ、オニー?なんで、ここに」

ハーマイオニー「なんでもいいわ!とりあえず一ついえるのは、今日の私は怖いわよ!!!色々!!!!」

ロン「あー……城に置き去りにされたこととか含めて……鬼だ、鬼だよ今日のハーマイオニーは……もちの髭で」

ハニー寝室

ハーマイオニー「パパとママには、今年は大事なテストの年だからやっぱり残る事にした、って伝えておいたわ。これで新学期まで私もここにいれるわね」

ロン「スタートは遅れたけ、や、なんでもないです、なんでも髭です」

ハニー「……どうして」

ハーマイオニー「そんなの決まってるわ。あなたと一緒にいたいから、よ。ハニー。他に何があるというの?」

ハニー「……」

ジニー「ここにいるみんながそう思ってるわ、おねぇさま。本当よ?」

ハニー「……嘘よ。だって」

ハーマイオニー「あら。嘘も何も、あなたは聖マンゴから帰ってから、ずーっとみんなを避けていたんでしょう?何故そういえるの?」

ハニー「……そんな風にハーマイオニーと話していたのね」

ジニー「だって、おねぇさま。本当のことだわ……おねぇさまと半日目が合わないだけで、私とロンは半死半生よ」

ロン「三途の川を三度はみたよ」

ハニー「目を合わせないの、は——あなたたちでしょ」

ハーマイオニー「だから、ハニー。ずーっと隠れてたのなら合わせようがないんじゃない?違う?」

ハニー「……」

ロン「……髭」

ハーマイオニー「えぇ、ハニーに背中に座ってもらえなくて調子が出ないのは分かったからあなた黙ってて」

ロン「……この四年ですっかり普通に座る事に違和感が」

ハーマイオニー「聖マンゴにかかることをお勧めするわ」

ハーマイオニー「ねぇ、ハニー。全然分かってもらえない、って顔をするのはやめて。私たち少なくとも分かろうとしてるわ。『伸び耳』で聞いた情報のことを、さっき教えてもらったのだけど……」

ハニー「……えぇ、みんなで噂してたのでしょ、私のことを話してたのね。なれっこだわ、じゃぁ、私は、いないほうが」

ハーマイオニー「言っておきますけど、拗ねても可愛いだけよ。私たちを怒らせて出て行かせようったって、そうはいかないわ。あー癒される」

ジニー「おねぇさま可愛い。ねぇ、おねぇさま。私たち、おねぇさま“と”話したかったの」

ハニー「一体何を?私は何もないわ、あなたたち豚に……聞きたいことなんて、なにも」

ジニー「あら……それは、おねぇさまにしてはとっても——おバカさんね」

ハニー「っ!今、なんて——」

ジニー「だって——おねぇさま。私は、『例のあの人』にとりつかれていたところを、あなたに助けてもらったんだもの。今あなたを悩ませていることに答えられるのは、きっと、豚広しといえども私だけだわ。そうでしょ?」

ハニー「……あっ」

ジニー「……」

ハニー「……私……わたし……その。忘れて、いたわ」

ジニー「しおらしいおねぇさまマジ可愛い」

ハーマイオニー「あとちょっと頑張って」

ジニー「それは、おねぇさま。すこーしお幸せすぎね……私たち豚は、いつだってあなたの力になるのに。ね……は……ハニー」

ハニー「……ジニー、こっちに」

ジニー「? えぇ——わっ!?あ、ああああああのおねぇさ」

ハニー「ハニー、でいいわ。ジニー……ありがとう。あなた、すっかり……いい女になったのね。いつまでも私をおねぇさまって呼んでいてはいけないわ」

ジニー「そんなぁあでもおねぇさまからの命令ならそうするのは豚の摂理というか当たり前のもちの兄なんだけどあぁ、そんな恐れ多いこといいえ抱きしめられてる今の状況で十分おそれおおいのだけどあぁハニー!ヒンヒン!ヒン!私たち、あぁ、私のハニー!ヒンヒーーーン!」

ロン「……ジニー、雌豚から……女豚に昇格、っと」

ハーマイオニー「それは果たして上がってるのかしら、地位」

ハニー「それで……あいつに乗っ取られるのはどういう感じなの、ジニー」

ジニー「えぇ、は、ハニー……あー、おね、オホン。あなた、自分のやったことを全部思い出せる?つまり、何をしていたのか思い出せない空白期間があるか、ってこと」

ハニー「……いいえ。寝ている時以外、一度も」

ジニー「そう。それじゃ、あの人があなたに取り憑いたとは考えられないと思う。私、あの事件の時は日に何度も、自分がそこで何をしていたのか覚えがないのに、気がついたらおかしな場所にいて、日が暮れていたりしたもの」

ハニー「……でも、私がみた蛇と、お父様の夢は——」

ハーマイオニー「……そうだわ、ハニー。あなたは前にも同じようなものを見たじゃない。先学期——ヴォルデモートが何を考えているか突然理解できたことがあったでしょう?」

ハニー「あれは、今度のとは違うわ。私は蛇の中にいて、私自身が蛇だったんだもの! ヴォルデモートが、私を……アーサーおじさまを襲ったっていう、ロンドンに連れて行ったとしたら——?」

ハーマイオニー「だとしたら私は『ホグワーツの歴史』を暖炉にくべなくちゃいけないわ」

ロン「そりゃ、文学的損失だこって」

ハーマイオニー「文学違うわよあれは。いい?何度だって言いますけど、学校内では『姿くらまし』も『姿あらわし』もできないわ。それにね、あなたは一瞬だってベッドから離れてないわ……だって、ほら、あの日はあんな後で、ほら、あー、明け方近くまで……それに、あー、あなたがいなかったらすぐ分かるくらい、その」

ジニー「何で私二人と同じ寝室じゃないのかしら」

ハーマイオニー「学年が違うからよ」

ロン「なんで僕って女の子じゃないんだろ」

ハーマイオニー「神様の高プレーよそれは」

ロン「マーリンの髭……あとさ、箒とかなんとかで飛ばしたって線もないと思うよ。僕ぁハニーが叫びだした瞬間から窓から飛び降りたけど、怪しい影なんてなかったしね」

ハニー「……そう……全部、全部理屈に通ってるわ。それじゃ、私は……わたしは、『武器』なんかじゃない?」

ロン「そ、そんなとこまで考え込んでたんだ……あったりまえのもちのロンだよハニー。いや、君の存在は三国も傾けそうなくらいだとは思うけどね、美貌で」

ハニー「わたしは……汚れてない?」

ジニー「汚れてるのはこの屋敷だけで十分だわ、お、ヒン、ハニー」

ハニー「……わたし、穢れて——きゃぁ!?」

ハーマイオニー「えぇ、ハニー。そうね。そろそろ我慢の限界だから言わせてもらうわ——あなたはとっても綺麗で素敵よ。一緒に、確かめましょうか……」

ハニー「あっ、ちょ、っと。ハーマイオニー、そんなの、許さ……あぁ——」

ロン「つづけて!!!!!!!!」

ジニー「どうぞ!!!!!!!!ヒンヒン!!!」

何らかの予感を受けまくって
プレーに身が入らないクラムが目に浮かぶよ!

>>300
予感を受けたクラムの様子は雑談所でこっそり投下してあるぞ!ヒンヒン!

ハニー「……厨房が、見違えてるわ」

シリウス「おっ、来たな不機嫌お姫様。どうだい、バックビークはいい話し相手になったかな?え?」

ハニー「……そうでもなかったわ。元気づけてはくれたけれどね。シリウス……信じて待っててくれたの?」

シリウス「何かあると高いところに篭るのはお父さんと同じだな、君は。あぁ、君と君の友人達を信じていた。だから私の方は君が目一杯ここでの休暇を楽しめるよう専念した、というわけさ」

フレッド「僕らもな、我らが女王様!この飾りを見てみなよ、洒落てるだろ?」

ジョージ「赤毛の獅子が蛇を追い掛け回して退治しっちまうのさ!僕らの手製」

ハニー「……あなたたちも」

フレッド「いやぁ、僕らは口を開けば軽口しか出ないからね。どうやりゃ君を元気付けられるか考えてたのさ」

ジョージ「その回答が半日もかかってやっとこれなんて、僕らのスポンサー様の君には頭が上がらないけどさ」

ハニー「……いいえ、とってもステキだわ。ありがとう」

モリー「ステキなのは飾りだけじゃないわよ、ハニー!さっ!みんな揃ったんですから豪勢なお夕食にしなくっちゃ!」

ロン「わーぉ、ママってば身内以外が多くなると力入れるんだもんな!まぁハニーがいれば僕に取ってはなんだってご馳走なんだけどね!ヒンヒン!」

ハニー「えぇ、いい椅子に座れて私も機嫌がいいわ、ロン。出来る豚ね」フーッ

ロン「ヒンヒン!!!!!」

ジニー「あぁ、おね、ヒンヒン、ハニー!あなたに食べさせてもらえる権利なて光栄すぎるわ!いいのかしら!私今夜寝れないわ!」

ハニー「えぇ、それだけのことをしてくれたんですもの。当然よ、ジニー……出来る、いい豚ですもの」

ハーマイオニー「……寝れないのは私もだと思うと今からゲンナリだわ……トランクも普通にハニーの寝室に運ばれているし」

ハニー「あら、それも当然だわ。しっかり、お礼をしなくっちゃね。そうでしょ?」

白豚「ピィーヒンヒン」

ハニー「……ごめんね、ヘドウィグ。また一緒にいてくれる?」

ヘドウィグ「ピィー?ヒンヒン!ヒン!」

ロン「なんのことやら、でも、もちのロンさ!だってさ、ハニー!」

ハニー「えぇ、そうよね。当たり前、よね……あぁ、私……わたし、なんてバカだったんだろう」

ハニー「こんなに素敵な人たちに囲まれてるのに……プリペッド通りに行こう、なんて」

ハニー「……みんな、ありがと」

モリー「それじゃ、グラスをもって。いいわね、じゃぁ家主のシリウス、音頭を」

シリウス「あー、オホン。痛ましい事故で思わぬ形で集まることになったわけだが——とにかく、冬休暇おめでとう!一緒に!そう!一緒に楽しもう!ハニーに、かんぱーーーい!」

かんぱーーーーい!

ヒンヒン、ヒーーーーーン!

区切りもいいし今日はここまで
次回は火曜昼から
じゃあの!

再開

クリスマス

ハニー「……まぁ」

ロン「あぁハニー!メリー・クリスマス!うん、厨房入るなり目に入った飾りつけの数々を見る君の表情を見られただけで今年のクリスマスも最高だよ僕は!君のご尊顔が最高なのはいつだってどこだって同じだけどね!ヒンヒン!」

ハニー「えぇ、年中無休でね。メリー・クリスマス」

ロン「ハーマイオニーも、あー、立ててよかったね。メリー・クリスマス」

ハーマイオニー「なんとかね、何のことかしら……メリー・クリスマス」

ハニー「いいイブだったわ、今年も。それで飾りつけだけれど……シリウスったら、夜通しで仕上げたのね」

ハーマイオニー「昨日まででも随分と豪華だったのに、本当、すっかり別の屋敷に来たようだわ……これ、飾りじゃなくて本物の雪みたい」

ロン「あの張り切りようは豚もびっくりだよ、うん。ハニーの前で張り切るのは人体の構造に組み込まれてる動作だけどさ」

ハニー「遺伝子レベルで、そうね……っ、シリウス!」

シリウス「メリー・クリスマス。どうだい、クリスマス仕様の飾りつけは」

ハニー「メリー・クリスマス……ええ、素敵だわ。廊下に飾られた屋敷しもべ妖精の生首にまで赤い帽子と白い髭がつけられていたのは、そうね、笑ってしまったけれど」

ロン「あぁ、そうだねハニー!君の笑い声ってたまに『キャァッ!』ってなるんだよね!知ってるよ僕ぁ!何せ僕って君の」

ハニー「ロン」

ロン「なんだいハニー!ヒンヒン!」

ハニー「雪だるまならぬ雪豚が欲しいところだけれど、どうせならただ雪で作ったものより雪を纏った豚の方が見てみたいわ」

モリー「メリー・クリスマス!ロン、風邪をひいてもしりませんよ」

ロン「本望さっ!ヒンヒン!寒くなんてマーリンの髭だよ!」

ハーマイオニー「隠し切れてないわ」

シリウス「その雪は溶けない呪文かかってるからいつまでも冷たいぞ、ロン。ところで、どうだった。今年のクリスマス・プレゼントは。大収穫か?」

ハニー「当然ね、この私だもの。リーマスからは、『実践的防衛術と病みの魔術に対するその使用法』って本をもらったわ」

ハーマイオニー「動くイラスト入りでためになったわね……ためになるといえば!ロン、私からの『宿題計画表』は受け取った?」

ロン「そりゃプレゼントの山に隠されてりゃ手をつけないわけにはいかないよ。なんだいありゃ、僕にとっちゃ呪いの手紙みたいのもんさ、マーリンの髭」

ハーマイオニー「……あなたが少しでも計画的に宿題をこなして練習に力を注げれば、と思ったのよ!

ロン「えっ、あー、そりゃどうも……」

ハーマイオニー「もう!あなたこそなによ、あの香水!香水は、私、あー、色々好みが……!」

ロン「……そりゃ悪かったね!へぇ、それはそれはこだわりがおありなんだろうねこのにおいは!ハニーの香りすりゃ光栄だろうに!なんだい!?大人なビッキーにでも選んでもらったってのかい!?マー髭!!」

ハーマイオニー「ビッキーって呼ばないで!!!!」

ロン「本人も喜んでただろうるさいな!!!」


ハニー「……ハーマイオニーが今日つけてるの、ロンからの香水なのよ」

シリウス「ほう、どうりでいつもと違うと思った」

モリー「ロン……選んだはいいけど確かめていなかったのね、まったくじれったい」

ハニー「そうよね……クシュンッ。?」

シリウス「風邪かい、ハニー?そんな寒い格好をしているからだ、まったく。ほら」

ハニー「っ、あ、ありがとう。あの、シリウス。もしかしてこれが、あなたから……?」

シリウス「あー、違う違う。こんな私の着古したものなんてほしくないだろう、君も」

ハニー「そうでもないわ」

シリウス「? 変わってるな……で、私から君へのプレゼントだがね。直接渡したいから置いておかなかったんだ。晩餐のあと、いいかい?」

ハニー「っ、眠くてしかたないでしょうけれど、いいわ、そうしてあげる! あの、私、わたしも、その……」

シリウス「? なんだね」

ハニー「〜〜っ、なんでも、ないわ!その時に、えぇ。その時までには……勇気が出ていると、思うもの」

モリー「……まったくじれったい!!!」

×病み
○闇
マーリンの髭!!!

フレッド「おーやおや、クリスマスってのは家族の日なんじゃないのかねぇ」

ジョージ「そう言うなよ相棒、将来的には家族になるような輩なんだからさ」

モリー「メリー・クリスマス、フレッド、ジョージ。お前たち、『惚れ薬』的なものは作っていないの?プティングにしこんでやろうかしら、まったく」

フレッド「そのうち商品として扱っとくよおふくろ。ところで今年もセーターをありがとさん」

ジョージ「でもイニシャルはいらないって言ってるのに。間違えったりしないのにさ、僕らは」

グレッフォ「「グレッドとフォージさ」」

モリー「はいはいドヤ顔でありがとう。さっ、お前たち。それに微笑ましい人たちも。早く朝食にしてしまいますよ。今日はお父様のお見舞いに行きますからね」

ハニー「微笑ましい、って!?それは、私をみたら、その、頬が釣りあがるのは自然現象でしょうけれどねっ!えぇ!」

ロン「もちの僕さ。あー、そっか。パパんとこか……待ってくれよ、ママ!そんじゃクリスマス・ランチはどうなるんだい!?」

モリー「晩餐に回しますから心配しないの。なんです、ロン!お父様よりクリスマス・プティングの方が大事だって言うんですか!?」

ハニー「家族を大事にしない豚は嫌いよ?」

ロン「とんでもないよ!とんでも!ヒンヒン!パパに会えないくらいなら僕ぁ年明けまで絶食したほうがましだね!うん!」

ハーマイオニー「ハニーに嫌われるくらいなら、の間違いでしょあなた、もう……おじさまの傷、よくなったかしら」

モリー「毒をなんとかする魔法薬はみつかったから、あとは安静にしておけば、と言ってたわ。今日にも退院じゃなかしら……」

シリウス「モリー、提案だがね。ある本に『アニマル・セラピー』というものがあるとあったんだ。これは、読んで字の如く動物と触れ合うことで——」

ハーマイオニー「それは心のご病気の方に効くのよシリウス、どうにかしてここから出られないか画策しないで」

シリウス「……他にやることもないので本ばかり読んでいたんだ。トンクスが選んでくる本は面白いぞ」

ロン「マーチン・ミグズとか?」

シリウス「いや、一番笑ったのは『マグルでも分かる!賢い犬の飼い方』だな。間違いばかりだった」

リーマス「それは君が賢くないからではないのか」

シリウス「いきなりやってきてなんだ君はうるさいな」

ハニー「リーマス!メリー・クリスマス!」

リーマス「やぁ、メリー・クリスマス。アーサーのところに行く護衛で来たんだが……ここはすっかり見違えたね。クリーチャーが重い腰をあげたのかい?」

シリウス「あのおいぼれには何も頼まない。私がやったのさ、客人を完璧に迎えるためにな」

リーマス「客人の部分にたった一人の名前でルビが見えるがね」

ハーマイオニー「そういえば、そのクリーチャーはどうしたの?私、彼にもプレゼントを渡そうとしたんだけど……」

ロン「お掃除計画表とかかい?」

ハーマイオニー「それならあなたの口から掃除させるわ。キルトよ、彼の寝室が少しでも明るくなればと思って」

シリウス「巣穴の間違いだろう? いなかったのかい、あいつは」

ハーマイオニー「そんな言い方をするならもっといい部屋をあてがってあげて頂戴!もう! えぇ、そこの納戸に姿はなかったわ」

シリウス「そうか。まぁ、上の階でコソコソしているんだろうさ」

フレッド「そういや最近見かけないな」

ジョージ「ここに来た晩っきり、かな」

ハニー「……シリウスが厨房から追い出したきり、ね」

シリウス「その程度でへこたれるとは思わないが、もしかすれば母のブルマにでもすがり付いて篭ってるのかもしれないな。そのまま乾燥用戸棚で干からびていれば、それはそれはいいクリスマス・プレゼントだ」

ハーマイオニー「シリウス!!!」

リーマス「言葉がすぎるよ、パッドフット。ハニーも聞いているんだ」

シリウス「おっと。すまないね、ハニー。ほんの冗談だ」

ハニー「……えぇ、分かってるわ……でも、シリウス。私たちがお父様のところに行っている間、クリーチャーのこと探していてくれる?お願いだから」

シリウス「はっは。ハニー、だから冗談だと言ったろう?君は素直だな」

ハニー「っ、頭は、なでなくて、いいから!もう!嫌な予感がするの、って、もう!!  そこ!ニヤニヤしないの!!!」

聖マンゴ疾患病院 受付

ジニー「私が寝坊している間にそんなおね、ハニーの愛らしい姿が見れただなんて。なんてこと……!」

ハニー「私が愛らしいのは四六時中でしょう?ちがう?」

ジニー「あぁそうだったわおね、ハニー!私のおハニー!ヒンヒン!」

ハーマイオニー「上品な言い方みたいになってるわ馴れて早く……クリスマスだっていうのに、病院は盛況ね」

ロン「むしろなんだかこないだより込み合ってるよな。ハニーの信望者はこんなもんじゃないけど」


魔女「鼻のあぁ(穴)に詰っはみはん(蜜柑)が、とれないんれすけども——」

受付「家庭内のいざこざ?ねぇねぇ家庭内のいざこざ?ざまぁみさらせ!!テメェで三人目だ!呪文性損傷!五階!メリー・クリスマス!!!次!」


フレッド「あーのヒステリー女、また患者にあたりちらしてら」

ジョージ「あの分じゃ昨日のイブの夜も仕事だったんだろうな」

モリー「お可哀想に。それで、リーマス?昨日の護衛任務はどうでした? トンクスと!二人での!」

リーマス「? あぁ、変わりなかったよ。強いて言えば、トンクスが少し元気がなかったな……マッド-アイ、何か知っているかい?」

ムーディ「……貴様がとんでもない鈍感者だというくらいだな」

リーマス「?」

ハニー「……トンクス」

ハーマイオニー「……今日の晩餐に顔を出したら慰めてあげましょう」

病室

アーサー「あぁ……や、やぁみんな。メリー・クリスマス」

モリー「メリー・クリスマス。あなた、お加減はいかが?」

アーサー「あぁ、とってもいいさ!うん!」

ビル「あぁ、違いないね、パパ。っく、っふふ。やぁ、みんな。メリー・クリスマス。ジニー、またでかくなったな」

ジニー「メリー・クリスマス!うん、今にビルを追い抜いてあげるわ!」

ビル「そりゃいい、変な虫がつかなくてすむかもな」

フレッド「メリクリビル兄ぃ。残念だけどその心配するには遅すぎたぜ、一年ほどさ」

ジョージ「それよりデラクール嬢を放っておいていいのかい?え?クリスマスなのに」

ビル「おいなんだよそれ詳しく……ああ、フラーか。安心しろよ、昨日は放っておくどころかつきっきりだったからな」

モリー「ビル!どういうことです!?母さん聞いてませんよ!?!?」

ビル「おっと、つまり、仕事で一緒だったって意味さ、うん、大意はね」

ハニー「私のお友達と仲が良いようで助かるわ、ビル。リーマスにも見習って欲しいくらい」

リーマス「……ハニー、期待を裏切ってすまないんだが、私の体質ではグリンゴッツに務めることは」

ハニー「そういう意味じゃなくって」

モリー「どこもかしこも!まったく……あら?あなた、包帯を替えるのは明日じゃありませんでした?」

アーサー「あー、そうだ、ハニー!素晴らしいプレゼントをありがとう!ねじ回しに、銅線!これがあれば——」

モリー「何を作るおつもりかも気になりますけど、アーサー。こちらを向きなさい。向かせますよ」

アーサー「……いや、うん。なんでも……あの」

モリー「……」

アーサー「母さん、母さんや。その顔はやめよう、うん。あの、子供たちが見てるから、ほら、怯えてはいけない」

ロン「安心してよ、パパ。ハーマイオニーで慣れてるからさ」

ハーマイオニー「……」

ロン「!?ま、ママが増えた!?マーリンの髭!」

アーサー「あー、つまりだね。心配しないでくれ、その、研修医のオーガスタスが少し思いついたんだ、その——大変興味深い、補助医療を」

モリー「……」

アーサー「それは、つまり……旧来のマグル医療ではあるんだが……実に効果的であると認められていて……縫合、と呼ばれるものなんだが——」

モリー「あなたのおっしゃりたいのは、つまり。せっかく治る兆しがみえた傷に、マグル療法でバカなことをやってみた、そういうわけ?」

アーサー「モリー、モリーや、モリウォボル、落ち着きなさい。ほら、マグル出身のハーマイオニーもいるんだ、そんな風に言っては、ほら」

ハーマイオニー「気にしないわ、おじさん」

アーサー「そ、そうかい?それは、その、よかった。いや、うん、よくはないが、あのだね。たしかに、真に遺憾ながらこの手の傷には効果がなかったが——」

モリー「つ ま り ?」

アーサー「あー——ぬ、縫い合わせることは、できず、その……」

モリー「弄繰り回した結果酷い出血をして、包帯を変えなくてはいけない羽目になった!なんて、言うのではないでしょうね!?アーサー、わたしは自分の夫がそこまでおバカさんだとは————」


リーマス「……おや、あれがアーサーの言っていた青年かな——私は少し彼と話をしてくるよ」

ビル「うん、そうしてやってほしいな。僕は、少しのどが渇いたしお茶にでも行って来よう。お前たちは?」

フレッド「おふくろが誰かを怒鳴るのは気分いいけどさ、まったく」

ジョージ「親父の面子のためにそうしようか、世話のかかる両親だ」

ハニー「あなたたちだけには言われたくないと思うわ、それ」

×モリウォボル
○モリウォブル
マーリンの髭

ジニー「パパらしいわ、ほんとにもう。傷を縫い合わせる、だなんて!」

ロン「ほんとだよな、破れたテディベアじゃあるまいし。蜘蛛とかで」

ハーマイオニー「でもね、魔法の傷以外では上手くいくのよ?」

ハニー「……」

ハーマイオニー「きっと、出血毒以外にもなにか特殊な毒があったのね。糸を溶かしてしまうもの、とか。限定的だけど……ハニー?」

ハニー「やっぱりどう考えても、クリーチャーがいなくなったのはあの晩だわ……『出て行け』ってシリウスが言ってから」

ロン「おぉっと……ハニー、おーい」

ハニー「……服をあげるような真似はしていない、けれど、ドビーの時のようにやろうと思えばいつだって屋敷しもべ妖精は……仕えてる家の外に出ることだって、できるはず」

ジニー「おね、ハニー?あの、そっちはまだ五階よ!?ハニー!?おハニー!?」

ハーマイオニー「だからそれ……あー」

ロン「考え事モードに入っちゃったねありゃ……ビル、フレッドジョージ、先行っててくれよ」

フレッド「任された。お前たちの分までしっかりとお茶を飲んでおいてやろう」

ジョージ「ハニーの豚やら何やらはせいぜい姫様の強がりを呑んでてやりなよ」

ロン「ハニー以外が豚って言うなよ!」

ハニー「……とにかく、クリーチャー本人に——?ここ、どこかしら」

ロン「やぁハニーお帰り。ここは五階『呪文性損傷』の病棟だね!ヒンヒン!」

ハニー「あら……なぁに?この私をちゃんと先導できなかったというの?出来ない豚ね、もう」

ハーマイオニー「八つ当たりはよしなさいよ、もう。さぁ、三人に追いつき——嘘でしょう?」

「HAHAHAHA!」

ジニー「? どうしたの、ハーマ——なにこの声……えぇっ!?」

「HAHAHAHAHAHA!」

ロン「……あのドアのガラスにへばりついてる、ライラック色の部屋着……金髪に、腹立つくらい白い歯……おいおい、なんてこった」

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!」

ハニー「……ロック、ハート!?」

ガチャッ

ロックハート「こんにちは!!やぁやぁこんにちは!!可愛いバンビーナちゃんたち!こんにちは!」

ロックハート「私に会いにきたんでしょう?知ってますよ!HAHAHAHA!何せ私ですからねっ!サインをあげましょう!」

ハーマイオニー「あっ、あー、あの——こん」

ロックハート「サインがほしいんでしょう!知ってますよ!何せ私に合った人はみなそう言いますからね!」

ロン「……あー、っと。おい、この——」

ロックハート「サイン!そう!私はしくよろにサインが上手いんです!もう続け字を書けるようになりましたからねっ」

ロックハート「何せ私は——誰だっけ。まぁ、よろしい!私が私である理由!それは鏡をみればしくよろですよね!えぇそうですとも!イケメンの存在理由なんてそれだけで、しくよろだよね」パチンッミ☆



ロン「……久々に言っていいかい。 ウゼェエエエエエ髭エエエエエEEEEEEEEeeeeeeeeeee!!!」

ジニー「……まっっったく変わってないわね」

ハーマイオニー「さ、最後は少し大人しくなっていたように、思ったのだけど」

ハニー「……治療で中途半端に戻ってしまったのかも、しれないわ」

ロックハート「HAHAHAHAHAHAHAHAHA!はーーーっHAHAHAHAHAHAHA……おや?君は——」

ハニー「……ハァイ、ロックハートせんせ」

ロックハート「どこかで、会って……せんせい?」

ハニー「えぇ、少しだけだけれど。あなたは私たちの先生をしていたのよ」

ロックハート「……」

ロックハート「なるほどっ!!!分かりましたよ、あなたたちの知っていることは全て私が教えたにちがいしくよろありませんねっ!何せ僕は……イケメンだからねっ!」パチンッ☆

ロン「うるせぇヒンヒン言ってろこんにゃろう!ヒンヒン!ヒン!!!」

ロックハート「……うん?な、んだ……頭が」

ロン「!よし、一時はよく分からなくてもヒンヒン言ってただけあるな!お前もやっぱり豚の——」

ロックハート「すまないね君、私はイケメンだから……可愛いバンビーナ以外の君みたいなもてないフェイスが近づくと……頭痛がするんだ。あっちでしくよろしてくれるかい?サインはあげよう、ティッシュとかでいいかな?」

ロン「……再入院させるぞこんにゃろう!!!マーリンの髭!!!!!!」

ロックハートの病室

癒者「よかったわね、ギルデロイ!クリスマスにこんなに、お客様が来てくれるなんて!」

ロックハート「HAHAHAHAHA!僕だからね、このくらいはしくよろだよねっ」

癒者「キャー!ギルデロイカッコイーーーーーー!」

ロン「あー、あの、僕たち別にこいつに会いに……や、なんでもありません」

ジニー「……あんないい顔で言われたら否定できないわ」

ロックハート「写真は足りるかな?この子達にサインをあげてたんだ!ブロマイドをたっくさん用意しなくっちゃ」

癒者「キャーー!ギルデロイシンセツシンノカタマリーー!えぇ、えぇ、その前にギルデロイ。お昼食の後の薬を飲みましょう。はいどうぞ……ギルデロイのファンなの?え?」

ハーマイオニー「あー……そんなようなもの、です」

ロン「君は頷いちまっていいと思うよ、力いっぱいね」

癒者「ありがたいわ。二、三年前までこの人はとっっても有名だったんだけど、入院してから一度も『家族』が現れないの。こういう症状はこの人のことを知ってる人が近くにいるのが一番なのに……」

ハニー「……」

癒者「でもね、サインをしたがるでしょう?これはきっと昔の記憶が段々と戻っている証拠だと私たちは考えているんですよ。あぁ、もっといてもまったく構わないのだけどね!可愛いギルデロイ坊や!」

ロックハート「ぷはっ!うん?なんだって?僕がイケメン?HAHAHAHAHA!言われなくともしくよろですよ!僕だからね!」

癒者「キャーー!ギルデロイキダイノイケメーーーン!はいはい、あとでサインを頂戴な。あなたたち、ここでギルデロイとお話していてくださる?私はクリスマス・プレゼントを配りきってしまわないと——さぁ、さぁ、プレデリック。鉢植えに、素敵なカレンダーが届いたわよ」

ハニー「……せん、あー……ロックハートさん?」

ロックハート「なんです、バンビーナちゃん!あぁ、君たちへのサインはあとにしくよろしてくれるかな?僕は先にファンレターのお返事をかかないといけませんからね!」

ロン「ファンレター、だって?」

ロックハート「えぇ、えぇ!私のとこにはたっくさん、ほぅら、こんなにお手紙が届くんですよ!なんでだかさっぱりだけど。きっと僕がイケメンだからなんだろうね——ふふっ、グラディス・ガージョンには続け字でサインをあげよう」

ジニー「……物好きもいたものね」

ロン「おい、ハーマイオニー。まさかビッキーへの一大長編に隠れてこいつにも出してやしないだろうな」

ハーマイオニー「……ここは長期入院病棟みたいね。おじさまの病室より随分と私物が多いわ」

ロン「おい」

ハニー「さっきの癒者、この人には家族が現れない、って言ってたわ」

ロン「そりゃ、こいつの恥ずかしい数々が全くの嘘八百だったってばれっちまってるからね」

ハニー「そういうことじゃなくって……そうだとしても、この人の知人が一人も出てこないのは、おかしいでしょう?」

ハーマイオニー「……言われてみれば、あの、あー、この人が一番有名だった時も」

ロン「君がとち狂ってた時期がなんだって?」

ハーマイオニー「うるさいわ。ほら、あんなに生い立ちも、あー、捏造していたのに……この人の過去を暴露する人、誰もいなかったわ」

ジニー「……うそ臭い、とはみーんな思ってたけど、そういえばそうね」

ハニー「……ねぇ、ロックハートさん?」

ロックハート「HAHAHAHAHA!なんです?そうですね、僕のサインが欲しいのはもっともですがすこーしだけお待ちなさいバンビーナちゃん!すぐに素敵なサインをあげますからね!」パチンッミ☆

ハニー「……」

ハニー「家族や友達も、全部。捨てたの?」

ロックハート「……?」

ハニー「……有名になるためにどんな努力だってしてきた、って、あなた言ってたわね……あの時は聞き流していたけれど」

ハニー「……そうなの? 得意な、自分が唯一誇れる『忘却術』で——」

ロックハート「……」

ハニー「自分のことを知っている人の中から……本当の自分を消したの?そこまで、して——」

ロックハート「バンビーナちゃん、どうしたんです!?HAHAHAHAHAHAHA!僕の前にいるときは笑顔でなくっちゃ!しくよろじゃない!まーったくしくよろじゃありませんよそんな顔は!せっかく僕には負けるけどいいお顔をしているっていうのに!」

ロン「ふざけてるところじゃないけどふざけんな」

ハニー「……無理そうね。今のこの人に聞いたって」

ハニー「……きっと戻りかけているっていうのは、本当だわ。でも、もしも戻ったときに」

ハニー「……自分のした取り返しのつかないことや、今の世の中で自分がどう思われてるか、本能的に感じてるんでしょうね」

ハニー「だから、戻らない。戻りたいと思ってない」

ハニー「……」

ハニー「そんなことは、許されないわ」

ハーマイオニー「……ハニー?」

ハニー「ハーマイオニー、鞄を見せて」

ハーマイオニー「……嫌だって言ったら?」

ハニー「全力で口を塞いでその間にロンに取らせるわ」

ハーマイオニー「……分かった、分かったわよ。はい」

ドサドサッ、ドサッ

ロン「うわっ、なんだいこれ。おいおいハーマイオニー、なんだか嫌に馬鹿でかい、学校で使うような鞄を持ってるなって思ったら……なんだよこの量の本は」

ジニー「それにこれ……ロックハートの本?」

ハーマイオニー「……あー、実は偶然、この人がここに入院してる、って知ってしまって」

ロン「そりゃ随分前からなんだろうね。それで?」

ハーマイオニー「……機会が、その、あれば。記憶が戻る手助けに、って。渡そうと思って」

ハニー「いい読みだわ。ここの人たちは、刺激が強すぎるからまだ読ませていないみたい。さすが私のハーマイオニーね……さぁ、ロックハート」

ロックハート「HAHAHA!なんだい、しくよろな僕に贈り物かい!?愛から何から受け付けましょう!」パチンッミ☆

ハニー「えぇ、これを。この私から、かつて少しでも豚だったあなたにメリー・クリスマスよ」

ロックハート「HAHAHAHAHA!随分と大きい色紙で——あれ?これ——わた、し?」

ハニー「そう、あなたよ。かつてのあなた……行きましょう、みんな」

ロックハート「これは——私、僕は、一体——どうしてこんなことを?だって僕は——僕は、なんだ?」

ハニー「さぁ。それを聞くのも、教えてあげるのも——今のあなたになんか、してやらないわ」

ハニー「ギルデロイ。自分が何者かしっかり思い出したら、私にヒンヒン鳴かせてあげる。じゃあね」

ガチャッ

バタンッ





癒者「さぁさ、可愛い坊や!あら、お友達は——ぎ、ギルデロイ!?それ……」

ギルデロイ「……」

ペラッ、ペラッ

癒者「……こんなに集中して、何かをするなんて、まぁ……」

ギルデロイ「——僕は——私は——」

ペラッ、ペラッ

ギルデロイ「こんなことを——どんな、ことを——?」

ギルデロイ「そんな訳は——だって、僕——」

ギルデロイ「僕は——誰なんだろう。私は——誰?」

ペラッ ペラッ
 ペラッ……

廊下

ジニー「いいのかしら、癒者のことわりなくあんな——あっ!おね、ハニーのやったことに意見なんてしないけど!ヒンヒン!」

ハニー「いいのよ正直に言って。そうね——あんまりよくは、ないと思うわ」

ロン「そんなことないよハニー!君のやることはぜーんぶ正解だよ!ヒンヒン!」

ハーマイオニー「あー、自分でやろうと思っておいてなんだけど——あの状態のあの人に渡すべきでは、なかったようにも思うわ」

ハニー「それでも、あんな風に自分から逃げるなんて卑怯よ。ただでさえ——自分を随分と裏切ってるでしょうに」

ロン「そうだねハニー。君は自分のしたいように生きてるからね、うん——慈悲深いなぁ、君は」

ハニー「感銘を受けたかしら?」

ロン「受けっぱなしだよそんなの、もちの——アイタッ!マーリンの髭!」

ネビル「イタッ!ご、ごめんなさい!あの僕前をみてなか……あっ!?」

ロン「あー、いいよ気にするなよ。僕の方こそ後ろ向きで歩いてて角を……あれっ!?ネビル!ネビルじゃないか!さっすが君は豚の中の漢だね!偶然をも引き寄せてハニーのとこに馳せ参ずるなんて!」

ハニー「……っ、ハァイネビル!それじゃ、私たち急いでるから——」

老婆「おやおや、ネビル。お友達かえ……おう、おう!これはこれは」

ネビル「……僕の、ばあちゃんだよ。あの、ばあちゃん。こっちは……」

ネビル祖母「紹介は結構!もちろん存じてますよ、ハニー・ポッターさん。ネビルはあなたのことを大変褒めていましてね。さぁ、握手を」

ハニー「えぇ、光栄ですわ。っ、力がお強いのね、ミセス・ロングボトム」

ネビル「……」

ネビル祖母「そえに、あなたがたはウィーズリー家の?えぇ、えぇ、ご両親を存じています。立派なお二人、それはもう立派な」

ロン「そりゃどうも。えーっと、二人も喜びます」

ジニー「は、はじめまして。うわっ、ほんと、力強いわ」

ネビル祖母「それに、あなたがハーマイオニー・グレンジャーだということも。何度もネビルが授業で行き詰っているのを助けてくれたそうで」

ハーマイオニー「友達ですから、当然です、ミセス」

ネビル祖母「えぇ、えぇ。いいお友達に恵まれたようでよかった。この子はいい子で、だけどもどうにも才能がなく——そこにいる父親からはすこしも受け継ぎませんでした」

ネビル「……」

ロン「そこ、って……えっ!?ネビル、君のお父さんってここにいるのかい!?」

ハニー「ロン、私猛烈にのどが渇いたからスニジェット速で六階から——」

ネビル祖母「なんたることです?ネビル、お前は両親のことをお友達に話していないのですか?えっ?」

ネビル「……ううん。うん、話して、ないよ……ばあちゃん」

ハニー「あー……ミセス?私たち、別に——」

ネビル祖母「大方お前は、あのハニー・ポッターの前でそのようなことを話すのは恥ずかしいと思ったのでしょう。何を恥じることがあるのです!いいですか、ネビル!お前は二人を誇りに思うべきです!あの二人が——」

ハニー「ミセス!!」

ネビル祖母「『例のあの人』の配下に拷問され、正気を失ったことを!」

ジニー「……」

ハーマイオニー「……」

ロン「……」

ハニー「……」

ネビル「…………僕は恥ずかしくなんて、思ってないよ。ばあちゃん」

ネビル祖母「当たり前です。私の息子と嫁は、お前の両親はとても優秀でした」

ネビル「……」

ネビル祖母「二人とも『闇払い』だったのですよ。魔法使いの間では、非常な尊敬を集めていて」

ハニー「……」

ネビル祖母「えぇ、えぇ。ミス・ポッター。あなたのご両親に負けないほど。それはもう二人とも才能豊か——おや」

ネビル「……っ」

ギィィィッ……

ネビル祖母「あぁ、アリス……どうしたのかえ?外に出てはいけないだろう?」

アリス「————」

ネビル祖母「またこけたかえ?それに、髪も——あぁ、また。さぁネビル、なんでもいいから、受け取っておあげ」

ネビル「うん。ママ、今日は何をくれるの?」

アリス「————」

ポトッ

ネビル「うわぁ——『ドルーブルの風船ガム』だ!僕、これ、大好き——ありがとう、ママ」

アリス「————♪」

フラッ、フラ、フラッ

ネビル祖母「病室に行くのかえ?どれ、私たちもついて行ってやらないと。みなさん、また。ネビル、その紙クズはどこかに捨てておしまい、もう今までの分でお前の部屋の壁紙が貼れるほどでしょう」

ネビル「うん、ばあちゃん——っ」

ジニー「……」

ハーマイオニー「……」

ロン「……」

ハニー「……ネビル」

ネビル「……っははは。あのさ、笑っていいんだよ。ママったら、おっかしいだろ。だけどね、僕の——僕は本当に、二人が誇らしいんだ。自慢の家族だよ——」

ハニー「っ、ネビル……!」

ネビル「ごめんよ、ハニー!  その腕、とっても嬉しい。だけどさ」



ネビル「僕、二人に会う時は絶対に笑顔でいるって決めてるんだ。泣いた跡なんて、見せたられ、ないよ。それじゃ……メリー・クリスマス」


バタンッ

×見せたられ
○見せられ

ハニー「……」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

ジニー「……知らな、ぐすっ。知らなかったわ」

ロン「僕もさ。一度だって……当たり前だけど」

ハーマイオニー「私も……」

ハニー「……私は、知ってたわ。ずっと、黙っていたけれど」

ロン「あぁ、何せ君だからね——ネビルのことを思って、僕らには言わないでいてくれたんだろ?」

ハニー「……先学期、昔の裁判の記憶を見た時に。ベラトリクス・レストレンジたちは、二人に『磔の呪い』を使った、って」

ハーマイオニー「あぁ——だから、だからネビルは、あの時」

ハニー「……このことは、もうネビルに話さないわ。いいわね」

ジニー「うん。その方がいいと思う……自然に接するわ」

ロン「もちのロンさ。ほんと、ネビルって——漢だよな。豚、じゃなくっても」

ハーマイオニー「……レストレンジ。あの人、ヴォルデモート、は——ほんっとに」

ハニー「……えぇ。こんな日にあいつの事なんて考えたくないけれど……いつか絶対、お辞儀——跪かせてやるんだから。ヴォルデモート……!」




ブォオオオオオオ!ブォォォオオオオオオオオ!!


ロン「……披露してやがる。こっちのタイミングもばっちりでほんっと、ネビル!君は漢だね、漢!豚の中で!」

とりあえず今日はここまで
十時間後に再開。今日こそは
じゃあの

再開

グリモールド・プレイス

モリー「それじゃ、みんな改めて。メリー・クリスマス!」

メリー・クリスマス!

トンクス「七面鳥食べないと、クリスマスを過ごした気分になれないよね。いやー、ありつけてよかった!」

ハニー「お昼間は任務で忙しかったのかしら、トンクス?」

トンクス「ん、まぁね……あー!いやいや!うん、ちょこーっと魔法省のお仕事でドタバタしただけだよ!ほんとほんと、うん!任務?あっはっは、なにがなんやら!はっ、ふっ、へっ!だわ!」

リーマス「昨日は調子が悪かったようだが、トンクス。今日にまで支障がでているのなら、少し休んだほうがいいよ」

トンクス「あ、ありがとう。どの口が言うんだこんにゃろうとは思うけど」

リーマス「?」

ロン「ハーマイオニー、君、食事の時くらい本から手ぇ離せないのかい?え?三度の飯より、どころか食べてても読むなんて、君こそヤギを目指せるんじゃないのかな、まったく」

ハーマイオニー「ハニーがくれた『新数霊術理論』の本、本当にためになるのよ。寝る間だって惜しむわ」

ハニー「そう、それは光栄だけれど、残念ね……」

ハーマイオニー「撤回。やっぱり寝る時は読まないことにします、えぇ」

ジニー「どうせ寝れないのでしょうけどね!いいなぁ!ヒンヒン!」

ロン「そう言うなよジニー、僕らはハニーからもらったトナカイ用のベルだけで十分じゃぁないか。首輪につけられるんだぜ?あぁハニー!君の鈴を転がしたような素晴らしい声にはまけるけど精一杯リンリン鳴らすよ!リンヒン!」

ハニー「えぇ、そうね。サンタの方が引っ張りたくなるくらい立派に勤め上げなさい」

フレッド「聖夜が過ぎても我らが女王様の豚共は変わらないよな、まったくさ」

ジョージ「変わらないというか変わる気がないからなぁ。今に新年だってのに」

シリウス「新年……そうか。君達は年が明ければすぐ……いや、いや!何のことだか!とにかく今日はめでたい日だ、うん!私にとってはこんなに楽しいクリスマスは十何年ぶりだ!楽しくやろう!」

ハニー「……シリウス。えぇ、そうよね。皆で集まれて、本当に良かったわ」

モリー「ほんと、シリウス。あなたには今回お世話になりっぱなしだったわ。さ、ワインをもう一杯!」

シリウス「いいのかい?いやいや、私は、そうだな。ここの家主としての責任を——」



ガチャッ

「おやおや——どうやらようやく、何か少しでも役にたてて舞い上がっているところでしたかな、なるほど。どうりで我輩が屋敷に入っても気づかぬわけだ」

ハニー「! この声!」

シリウス「……君に招待状を送った覚えはない。スネイプ、何の用だ」

スネイプ「我輩とて、出来れば訪れたくはない。ブラック、賢い番犬でも飼えばどうですかな——そうすれば貴様も戯れる相手ができよう」

シリウス「嫌味と吐き気がするような声しか口から出せないなら、帰ってもらおうか」

スネイプ「我輩とて用事を済ませて少しでも早く立ち去りたいと思っている。無駄につっかかり時間を浪費させているのはそちらだろう」

リーマス「二人とも、落ち着いて。やぁ、セブルス。用事というのは、私の薬のことかな?今月分は確かに受け取ったはずだと思うけどね。君からのふくろう便で」

スネイプ「そうではない……ふくろうと言えば、我輩がここに入る時と同じく、このふくろうがこれを運んで着ましたぞ。誰宛とは書かれていないが——様子を見るに、送り返されてきたようですな」

モリー「あっ……それ、は……」

フレッド「おんや?これってママが僕らに送ったプレゼントの包み紙とおんなじ……おいまさか」

ジョージ「……ママが、パースの野郎に、って。送ったセーターだ……あいつ、開けてもいねぇ」

モリー「……カードは。何か、カードくらい……あぁ」

ジニー「ママ……あの、石頭!」

ロン「よく言ったぜジニー。パーシーめ、あんにゃろ。パパの容態一つ聞きやしないのか……」

フレッド「まったく、やってくれるぜあの堅物め……なぁママ、気にすんなよ」

ジョージ「そうそう、あいつなんてばかでっかいネズミのクソの山さ、ほんと」

モリー「うぅっ、ぅぅ……パーシー……パーシー……!」

リーマス「……モリー、大丈夫だ。パーシーもいつか気づく、きっとだ」

トンクス「そ、そうだよ!その時目一杯、セーターどころか全身分おしつけてやろっ!ねっ!私、手伝うからさ!」

シリウス「……それで、スネイプ。お前はせっかくのお祝いムードを台無しにしにきた、そういうことか?え?まさにお前らしい役回りだな」

スネイプ「違うと言っている。ポッター、我輩は君に用事があってここに来た」

ハニー「……私?」

ハーマイオニー「わざわざ、先生が休暇中に……まさか!ハニーのレポートが『T』を……って、ロンじゃあるまいし、ありえないわね」

ロン「うっさいなマー髭」

シリウス「冗談はよせ。君が、この子に?なんだ?逆さづりにする呪いでもプレゼントしようというのか?」

スネイプ「貴様らじゃあるまいし、そんな趣味の悪い事はせん。黙っていろ」

ハニー「?」

シリウス「あー、君は知らなくていい。だったら何だと言うんだ、答えてもらうぞ。まさかお前、この子に——」

スネイプ「ダンブルドアのご命令だ」

シリウス「……」

スネイプ「なるほど、最初からこれだけ伝えればよかったのですかな。ダンブルドアの命ともなれば、いくら、あー?ここの主たる君にも指図はできまい。よろしいかな?ブラック殿?」

シリウス「……いいだろう。さぁ、話すといい。そうしたらさっさと——」

スネイプ「悪いがおおっぴらにおいそれと話すことではない。あちらの部屋を使ってもいいでしょうな。ポッター、来い——」

シリウス「この家で命令するのはやめてもらうか、君もご存知の通り今はここは私の家なのでね!」

スネイプ「……」

シリウス「……」

リーマス「……何をグダグダと。さぁ、ハニー。セブルスについて行きなさい」

ハニー「えぇ、そうしてあげるわ。あー……スネイプ、先生。それじゃ——」

シリウス「私も一緒に聞くぞ、いいな?」

スネイプ「……ダンブルドアは我輩にポッターと話すようにと」

シリウス「それにダンブルドアはよーく知っている、私はこの子の後見人だ。私が聞いていたとして、利益以外は何も生じない。それに、犯罪を未然に防ぐ結果になるかもしれないしな。ヤドリギに変な気を起こした童貞三十路が何をしでかすか」

スネイプ「黙れブラック。犯罪だと?貴様はこれまでのご自分の行動を省みるということを少しはしてみればどうだ、我輩はダンブルドアから聞いているぞなんだ貴様はいや違うあれはリリーではないがなんなんだ貴様違うあれはリリーではあれはリリーではないのだあれは——」

シリウス「おぉっとスニベリー、なんだって?今ご自分のことを棚どころか屋根裏部屋までぶち上げる音が聞こえたが、それはどういう意味か左腕におありのカッコイイ(笑)タトゥーを見ながらもう一回——」

リーマス「ハニー、少しだけ待てるかい。さぁ三十路ども、僕の服をサンタクロース色に染めてくれる覚悟はあるんだろうね」

空き部屋

スネイプ「……」

シリウス「……」

ハニー「……えぇっと。こんなに長いテーブルの端と端だと、話しづらいのではないかしら」

シリウス「いいや、ハニー。こいつと私にとっては適当な距離だ」

スネイプ「まだ足りん。間にさらに三メートルの箒を挟んでいたとしても足りませんな」

シリウス「あぁ、君の口がまだ臭うしな、たまには同意してやろう」

ハニー「……まだ続けるようなら、リーマスを」

スネイプ「それには及ばん。座るんだ、ポッター」

シリウス「命令するなと言っている。ハニー、さぁ。私の隣にかけなさい」

ハニー「えぇ、そうしてあげるわ」

スネイプ「……随分と甘やかしておいでのようだ。いや、と言うよりはあなたは少しでもその子に関わっていたいのですかな?」

シリウス「何を言い出すかと思えば。当然だ、私はこの子の後見人で、それに家族なのだから」

スネイプ「なるほど、なるほど。そうすることで、騎士団にとってなんの役に立っていないという負い目から逃げようというわけだ。尻尾を巻いて——」

ハニー「シリウスの侮辱を続けるつもりなら、私、すぐに寝室に引き上げるわよ。それで、フィニアスに『スネイプ教授は伝言一つこなせなかったとダンブルドアへ伝えなさい』って、言ってあげるけれど」

スネイプ「……」

ハニー「シリウスも、早く終わってしまったほうがいいでしょう?用件を伝えて、先生」

スネイプ「……反抗的な態度と目にグリフィンドールから」

ハニー「お生憎様、いまは学期中じゃないわよこの童貞教師!」

スネイプ「黙れ!」

シリウス「ハニー!ど、童貞なんてそんな言葉どこで覚えた!?」

スネイプ「貴様もさっき言っていただろう黙れ!!」

スネイプ「……用件に移っていいですかな」

ハニー「さっきから私はそう言っているのだけれど」

スネイプ「そうでもなかろうが、これだから……ゴホン。ポッター、校長は来学期に君が『閉心術』を学ぶことをお望みだ」

ハニー「……閉、なんですって?」

スネイプ「……ふんっ、学業が少し優秀とはいえ、所詮は学生でしたかな?ポッター、閉 心 術、だ。繰り返せ、へーい、しーん——」

シリウス「一年生の時からドップリベタベタな誰かさんの違って極めて健やかなハニーはまだ聞き覚えがなくて当然だろう。君はそれでも教師か?え?」

スネイプ「……我輩は見聞を深めさせようと思ったまでだ」

ハニー「『閉心術』、はい、覚えたわ。続けて頂戴……それは、どういうものなの、先生」

スネイプ「外部からの侵入に対して心を防衛する魔法だ。ほとんど知られていない分野ではあるが、非常に役にたつ」

ハニー「……外部からの、侵入……ダンブルドアが、それを私が身につけるべきと、判断したの?」

スネイプ「そうだ。一週間に一度の個人授業となる。他の生徒にも教師にも誰にも、何をしているのかは言わないように。特にドローレス・アンブリッジには」

ハニー「……それは、当然だわ。えぇ、そうしましょう。それで、個人授業をするのは、やっぱり……ダンブル——」

スネイプ「我輩だ」

ハニー「…………はっ?」

スネイプ「我輩がその個人授業を受け持つ。毎週月曜夕方六時、よいな?」

シリウス「待て、どうしてダンブルドアが教えない!?よりによって、よりによってどうして君が!」

スネイプ「我輩とてやりたいわけではない。これは校長の特権だろう——喜ばしくもない仕事を我々に押し付ける、というのは」

シリウス「……あぁ、まぁ、うん。一世紀に一度は君の言うことに同意してやろう——それでもだ!君が……ハニーだって、嫌だろう!?え!?」

ハニー「……それはもう、私が何をしたというの、と、思うけれど……これは」

スネイプ「ダンブルドアの決定だ」

ハニー「……」

シリウス「……あの人は一体何を考えてるんだ!!!!こんなことが、許されるなら!私をグリフィンドールの番犬につける案だって通していいだろう!!!」

ハニー「! え、餌は毎日、手づくりするわ!」

スネイプ「茶番が始まるならばそろそろ失礼させてもらいましょうかな」

シリウス「……待て」

スネイプ「何だ。我輩は君と違って非常に忙しい。すでにかなりの時間を浪費している。手短にお願いしよう」

シリウス「ならば要点だけ伝える。もしも君が『閉心術』の授業を悪用して、この子を辛い目にあわせたら。私が黙っていないぞ。いいな」

ハニー「……」

スネイプ「泣かせるねぇ。しかし、君もお気づきの通り。ポッターは父親そっくりだ、そうだろう?」

シリウス「君の中ではそうなのだろうな。何が言いたい」

スネイプ「つまり、こやつの傲慢さときたら。我輩が少し心をつついたところで、どうにも——」

バンッッ!!!!

ハニー「っ!シリウス!!」

シリウス「それは宣戦布告と受け取るぞ。貴様は今、私のハニーに向かって『危害を加える』と言ったんだ」

スネイプ「おや、おや、おや。監獄に収容され畜生の姿になって長いと、どうやら人の言葉まで分からなくなってくるようだ。我輩は一言もそんなことは申していませんが?」

シリウス「警告したはずだぞ、スニベルス」

ハニー「シリウス、シリウス、止まって!ダメ!杖を、下ろして!」

シリウス「ダンブルドアが貴様は改心したと思っていようが、知ったことじゃない。私の方がよくわかっている——貴様がどれだけ下衆で、どれだけ見下げ果てるべき人間か——」

スネイプ「そう思うならばダンブルドアに直接進言してみてはどうだ?それとも、なにかね。母親の家に六ヶ月も引きこもる畜生、おっと、失礼、人間の言葉は真剣にとりあう価値もないと思っておいでなのか」

シリウス「仲良しのルシウス・マルフォイの様子はどうだ?え?さぞかし喜んでいるだろう、自分の尻尾をふる体の良い駒がホグワーツにいるのだから」

スネイプ「尻尾を振る、そういえば君はこのことくらいは連絡を受けていますかな? 学期始めに君が遠足に出かけた様子をルシウス・マルフォイが目撃し、正体に気づいたと——ブラック、よくやったな?うまい考えだ」

シリウス「何が言いたい、ネチネチと腹の立つ奴だ」

スネイプ「つまり、これで君は完全に隠れ家からでなくてよくなったわけだ。完璧な口実だ、誰も君を責める者はいない。たとえ何もせずビクビクとここに閉じこもっていても——」

スパァーーーーーーーーーーーン!!

シリウス「……」

スネイプ「」

ドサッ

ハニー「……シリウスがどれだけここにいるのが、苦しいか!何も知らないくせに!!!!!何も!!!!この、この——!!!!」

シリウス「ハニー、ストップ。待ってくれ、うん、気持ちはありがたい。でもスニベリーはほら、ビンタですでにのびて、待つんだ!杖、杖を下ろすんだハニー!ストーーーーーーップ!!」



リーマス「……なんて状況だい、これは」

ハニー「ふーーっ、ふーーっ、あの、ふーっ、童貞!!」

シリウス「よしよし、うん、あいつは酷いやつだ。うん」

リーマス「……ハニーのことは頼んだよ?私は、セブルスをどこか空いている寝室に運んでくるからね」

シリウス「外にでも放っておけ、そんなやつ」

リーマス「凍死するよ、何月だと思っているんだ。『モビリコーパス、体よ浮け』」

スネイプ「」フワーッ

ハニー「その、ままっ!大気圏外にでも飛んでいってしまえばいいわ!」

リーマス「焼死するよ、ハニー。落ち着いたらモリーのクリスマス・プティングを食べに来なさい。またあとで」

バタンッ

ハニー「なによ、スネイプ、あいつ……!シリウス!よく我慢できたわね!」

シリウス「いやまぁ、それまでは君が私とあいつの間に立っていた上に、沸騰する寸前で君が奴にノーモーションビンタをしてくれたものだからね。我慢というか、必然というか」

ハニー「信じられないわ!人の事を、あそこまでコケにできるなんて!」

シリウス「あー……まぁ、私も事前に煽りすぎていたという点が少なからずある。さぁ、ハニー。落ち着きなさい。深呼吸だ」

ハニー「ふーっ、ふーっ、えぇ。そう、そうしてあげる……ふーぅ」

シリウス「……」

ハニー「……」

シリウス「……」



ハニー「!? わ、わたし、ど、どうしてシリウスの膝に座っているの!?!?!?」

シリウス「あぁ、ははっ。ようやくそこに気がついたかい。それはもう、大分前からさ」


九時にはもどる

再開

シリウス「君は考えこむと回りが見えなくなるな。うん、そのあたりはそっくりだ」

ハニー「何故だかよく言われるけれど、っ、そうよ、集中力はあるもの、私。それ以外のあらゆる力だって味方しているけれど」

シリウス「はっは、違いない。さて、ハニー。折角だから、ここで済ませてしまおうか」

ハニー「!? な、何を!?あの、待って。少し、気持ちの——」

シリウス「? プレゼントの交換、という話だが。二人きりにな今が丁度良いとは思わないか?」

ハニー「……そう、ね!っ!痛い!」

シリウス「どうしたね、テーブルを蹴って。っとと、あまり暴れると落ちてしまうだろう?」

ハニー「っ、それなら、普通に!」

シリウス「いいじゃないか。私のためにあのスネイプに向かって反抗してくれた、そうだな。ご褒美だよ」

ハニー「……っ、そうね。今日は、クリスマスだものね」

シリウス「あぁ、家族の日だ——君には十四年も、一人にさせてしまったが」

ハニー「……ここ数年は、そうでもなかったわ。それに、これからは」

シリウス「あぁ、私が毎年祝おう。なんならツリーの上の星になってもいい、シリウスだけにな」

ハニー「いやよ。星になるなんて……冗談でも」

シリウス「あぁ、ははっ。君は素直だな、ハニー」

シリウス「それで、プレゼントだがね。本当は、リーマスと同じく本にしようと思ったんだ」

ハニー「あのとってもためになる本のように?」

シリウス「あぁ。だが、結果的に……さっきのスニ、オホン、スネイプの提案を聞くと、これにして良かったようだ」

ハニー「?どういうことかしら。痴漢撃退スプレーとか?」

シリウス「それはよく分からないが……必要なら後日トンクスに買ってきてもらおうか?」

ハニー「なんでもないわ」

シリウス「そうか。おっと、少し腰を浮かしてくれるかい、ハニー。このあたり……」

ハニー「んっ……ちょ、っと。シリ、どこ触って、っ!」

シリウス「?ポケットだが……あぁ、あったあった。ハニー、これを。メリー・クリスマス」

ハニー「っ、密着した状態であんまり……これ、って」

シリウス「包装が雑なことは目を瞑ってほしい。何せ、あー……私の持ち物だったのでね」

ハニー「っ、あなたの! もらってしまって、いいの?」

シリウス「ああ、当然だ。それは同じものがあるし——まぁ、そういう物なのだが」

ハニー「!つまり、つまり!お揃い、と、いうこと!?」

シリウス「あー、そうなる、のかな?日頃から身につけるものではないがね」

ハニー「ううん、十分だわ!シリウス、あり、ありがとう……開けていい?」

シリウス「あー、それなのだがね。部屋に戻ってからにしてほしい」

ハニー「?どうして?」

シリウス「実を言えば、それを君に渡す事は……リーマスから反対されてるんだ」

ハニー「……?」

シリウス「ハニー。私が渡したそれは——もしもスネイプが君になにかした時、私に連絡をとれる手段となるだろう」

ハニー「!!」

シリウス「どうだ、スゴイだろう? もしもあいつに何かされたら、それで私を呼んでくれていい。すぐに駆けつけよう」

ハニー「……」

シリウス「いやぁ、我ながら妙案だ。それにタイミングもよかった、うん。いいかい、ハニー。私が必要になったら、使いなさい。いいね?」

ハニー「……えぇ、シリウス」

ハニー「……ありがとうっ、大事にするわ!」




ハニー「……(これを、使っては——いけないわ)」

ハニー「(私のせいで——シリウスを、危険な目にあわせるなんて。ダメよ——絶対に、ダメ)」

ハニー「(これは——大事に、飾っておきましょう)」

ハニー「素敵なプレゼントを、ありがとう……あなたからもらったものはいつも、大事に使ってるわ」

シリウス「あぁ、ありがとう。しかし、なんだい。ファイアボルトはしばらくお役御免だそうだね?」

ハニー「っ……ごめんなさい」

シリウス「いやいや、いや。責めてなんていない。むしろ私は君が誇らしい……リリーを侮辱されて?」

ハニー「……あんなことをするべきじゃなかったわ」

シリウス「いいや。君はまだ十五だ……誰しもそのくらいの時は、感情任せになるものさ」

ハニー「っ、私、子供ではないわ!」

シリウス「ははっ、そうだな。たった二年で——君は随分と女の子らしくなった」

ハニー「だ、か、ら!子、ではないったら!もう!」

シリウス「あぁ……そうだな。君はリリーよりもずっとずっと可愛い。あいつは、たまにがさつだったから」

ハニー「っ!と、当然、あの、たとえママだって、私と、あの!わたしと比べるなんて……!」

シリウス「……君はリリーではない。ジェームズ、でもない。そうだ……君は君だ、ハニー」

ハニー「……いわれなくても、そのつもりだわ。なぁに、シリウス……私、自身。そうね……うん。ねぇ、目を瞑ってくれる?」

シリウス「あぁ——これでいいかな」

ハニー「えぇ……少し、待ってね」

シリウス「あぁ」

ハニー「……すー、はーっ」

シリウス「……」

ハニー「……っ」




ジャラッ

シリウス「……?」

ハニー「目、開けて」

シリウス「あぁ……これは?」

ハニー「ロケットよ……あのね、その……中身は……あっ!ま、待っ——」

カチッ

シリウス「! 君の——写真?」

ハニー「〜〜っ、約束、したじゃない。いつかちゃんと、写りのいいものをあなたに、って!」

ハニー「私の……わたしの、お友達の一人、いいえ、一匹なのかしら……ロケットを昔持っていた、って話を聞いたの」

シリウス「……」

ハニー「その人は……今は、もう離れ離れになってしまったけれど……ロケットの中に込めた大事な人たちの思い出を、持ち歩くことで忘れなかった、って」

シリウス「……」

ハニー「あ、あなたがわたし、私を忘れることはないでしょうけれど! あなたにも、持っていてほしいわ」

シリウス「……」

ハニー「シリウス。私の——わたしの大事な家族」

ハニー「ううん」

ハニー「わたしの、大切——だい、す」

ハニー「……!?」

ハニー「(わたし、今、な、なんて言おうと——でも、あぁ)」

ハニー「(シリウス、近い——!そんな)」

ハニー「(何か、何か、言わない、と……!)」

シリウス「——ハ」

ハニー「や、ヤドリギ!」

シリウス「……うん?」

ハニー「あの、そこのヤドリギは——シリウスが飾ったの?」

シリウス「あぁ、そうだ。身内ばかりなのでムードもなにも、と思ったが——」

ハニー「……!?あっ、あの、あーっ!」

シリウス「……あー、ハニー?気になるなら、離れて——」

ハニー「!ううん!あの、わたし!し、シリウスなら——いいわ!」

シリウス「……」

ハニー「あっ……いい、って、いうのは……その」

シリウス「……」

ハニー「……」

スッ

ハニー「——ぁ」





ガタンッ!!!!

シリウス「!?」 バッ!

ハニー「きゃぁ!?」ババッ!

クリーチャー「旦那様、旦那様。メリー・クリスマス、にございます……クリーチャーめは、クリスマスのしたくを一つもお手伝いできず至極申し訳ないと——」

シリウス「クリーーーーーチャーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

ハニー「っ、あの、シリウス!めり、メリー・クリスマス!おやすみなさい!!」

ガチャッ! バタバタバタバタバタッ

シリウス「——クゥウゥウウウウウリィイイイイイイイチャアアアアアアアアア!!!!」

クリーチャー「なんにございましょう、旦那様。ブラック家のご当主として、このクリーチャーめにご命令を?」

シリウス「そんなものは今すぐ投げ捨ててやる!!!貴様の存在ごと!!!貴様、あああああああああああああ!」

クリーチャー「——左様にございますか。よーく、分かり申し上げました」

ハニー、ハーマイオニーの寝室

バタバタバタバタバタバタバタッ

ハニー「〜〜〜っ!!っ!!っ!!!」

ハーマイオニー「……あー、ハニー?シリウスと、何が——えぇ、聞こえてないのね。分かるわ、うん。あなたが枕に顔をうずめて、足をバタバタさせる音で、大騒動ですものね」

ハニー「〜〜〜っ(言い逃げ!!!!この、私、がっ!!!言い逃げ、なんて!!!!)」

ハーマイオニー「……何か唸ってるわ」

ハニー「(なんてこと!なんて!あぁ、シリウス、シリウス、突然あんなこと言って!私が、不真面目な、そうよ!あばずれだって、思われたらどうしよう!!)」

ハニー「(ヤドリギで、いい、なんて……!!!!チョウ……チョウの)」

ハニー「チョウのせいよ!!!チョウのせいよ!!!!」

ハーマイオニー「……よく分からないけど、あなた自身の問題だと思うわ……あぁ、終わったと思ったらまた枕に戻るのね」

ハニー「(チョウが、よくわからないまま、あんなこと言うから……!混乱して!!)」

ハニー「(あんな、こと——でも)」

ハニー「(あぁ、あぁ——どうしよう、どう、しよう——)」

ハニー「(何か言わなくっちゃ、って!苦し紛れに、なって!それで、それに——少し前までの気持ちが、本当なら)」

ハニー「(セドリックって……あの時!!!!)」

ハニー「何が友達よあの人!!!!!!!!!」

ハーマイオニー「……あー、あなたにとっての全人類が?」

ハニー「何が一緒に掴みましょうよわたし!!!!!!」

ハーマイオニー「……話が見えないわ、さっきからだけど」

ハニー「(でも……ってことは、わたし——どうしよう、わたし、本当に)」

ハニー「……シリウスの顔、見れない」

ハーマイオニー「……二年前に気づくべき想いに、ようやく、よーーーーーうやく気づいたのね、ハニー」





シリウス「……」

リーマス「酷い激昂だったね。君があれほど怒ってるのをみたのは、そうだな——おっと、最近だった。ワームテールを追い詰めていたとき、以来か」

シリウス「……」

リーマス「でも結局、君はクリーチャーに救われたんじゃないのかい?ねぇ、パッドフット——あのまま、君はどうするつもりだった?」

シリウス「……」

リーマス「ハニーは気づいたようだ、自分の気持ちに。さぁ、君は——応える用意が、断る覚悟が、あったのか……」

シリウス「バカを言うな、ムーニー。そんなこと、決まっている」




シリウス「私は……私が!!僕があの日!!あの子の両親を、殺したんだぞ!?そんなあの子に……僕が、どうやって!!!!」

リーマス「……十五年前に捨て置くべき想いが、未だに残っていると見えるね。パッドフット」

短いが区切り的にここがいいか
続きは明日 時間は約束しかねる
じゃあの!

投下は明日昼に。申し訳ない

再開

休暇最終日

ロン「年が暮れても明けても宿題三昧、ってね……マーリンの髭。まぁぼくの一年は常日頃ハニーで埋め尽くされ三昧だけどさ」

ハニー「……」

ロン「おぉっと!ハニーはスネイプのクソ野郎との個人授業が不安みたいだ!ごめんよハニー!君が怖がってるのに気づかずにこんな能天気な——」

ハニー「誰が怖がるですって、この豚。私が恐れるのは退屈と体重計だけよ。よりにもよって、あんな童貞なんて。怖がる価値もないわ。そうでしょ?」

ロン「ヒンヒン!あぁ、スネイプなんてレタス食い虫並に歯牙にかける必要ない存在だよな!」

ハーマイオニー「……実際、ハニーが今悩んでいるのはそちらではないでしょうしね」

ロン「おいなんだよそれ、僕聞いてないぜ……おっと、そろそろ夕食だ。ハニー、行こうか。ママがきっと豪勢なさよならパーティの用意をしてくれてるよ」

ハニー「えぇ、そうしてあげるわ……」

ガチャッ

シリウス「おっと!」

ハニー「あっ……シリ——」

シリウス「あー、今から晩餐かね。それはいい、さぁ、行きなさい。私は——ちょっと、バックビークと話があるのでね。それじゃ」

ハニー「……」

トントントントントンッ……

ロン「……奴さんはいつから頭が鳥になっちまったんだ?え?」

ハーマイオニー「……確かに脳みそはそう呼んでもよさそうね。まったく、あれ以来——ハニーを避けてるんだもの」

厨房

モリー「シリウスにも困ったものだわ。いくらハニーたちが帰ってしまうからって、クリスマス以来あんなに不機嫌になってしまうだなんて」

ジニー「ハニー……!を避けるなんて、定例会議に出席したら全力で叩かれるべき案件だわ」

ロン「全くだよな」

ハーマイオニー「去年のあなたが聞いたら耳が痛いでしょうね。あと心」

トンクス「変なところで子供っぽいっていうか、分かりやすいっていうか。ねぇ、リーマス?リーマスとは大違いだよ」

リーマス「……そうだね、うん。彼は分かりやすいよ。やすすぎて困るほどだ」

ハニー「……是非教えてもらいところだわ、リーマス」

フレッド「そう落ち込むなよ我らが女王様。そんだけきみの愛しのおじさんは——」

ハニー「うるっさいわね!!!」

ジョージ「こりゃ失礼。相棒、愛し君はおかんむりみたいだ。そっとしとこうぜ?」

ロン「あー——ハニーの分かりやすさも筋金入りだよな。そういうことかぁ」

ハニー「私がなんですって、ロン」

ロン「君って素直で素晴らしいよなってことさ、ヒンヒン!」

ハニー「そっ、言われるまでもないけれど……あらっ?」

『おのれぇえええええ!血を裏切る者ども、下賎な——』

ハーマイオニー「玄関ホールだわ……おばさま、誰かお客様がいらっしゃることになっていたの?」

モリー「さぁ、さぁ、さぁ!どうかしらね! 入ってらして!」

ガチャッ


ムーディ「手を上げろ!!!そちらが多数とはいえ遅れはとらんぞ!!!!」

トンクス「……マッド-アイ、新しすぎるよ。侵入者の方に偽者疑惑かけられるなんて……いーかげんにしなよあなたはさ!よっ、アーサー!おかえり!」

アーサー「あぁ、みんなただいま!全快だ!」

ジニー「パパ!」

ロン「ママ、黙ってるなんて人が悪いよ!おかえり!」

フレッド「怪我なくなったのかい、パパ!」

ジョージ「そりゃよかった!けがなくて!」

アーサー「とにかく髪の話はよそうか」

ムーディ「つけられてはおらん。三度ほど引き返して確認したからな」

トンクス「病みあがりになにさせてんの……やっぱあたしが迎えにいけばよかった」

モリー「マッド-アイ、ご苦労様でした。スープをいかが?」

ムーディ「いいや、いや。わしは今から野暮用だ、失礼する。ポッター、ウィーズリーズ、グレンジャー。いいか、城に戻っても——」

「「「「「「油断大敵!」」」」」」

ハニー「……でしょ?ムーディ先生」

ムーディ「むっ、よろしい。まっこと、生意気な。それではな」

バタンッ

ハーマイオニー「……ぶれないわね、あの人も」

ハニー「私の美しさくらいね……お父様、退院おめでとう」

アーサー「いやいや、ありがとう。このくらいで済んだのも君のおかげだよ、ハニー」

ハーマイオニー「あー、本当はもう少し早かったんじゃないかしら、おじさま?」

ジニー「『縫合』だかなんだかでいじくりまわさなければ、ね!」

アーサー「あ、あっはは。痛いところを突いてくれるじゃないか……まぁこうして、君たちのお別れパーティには間に合ったんだからよしとしよう」

モリー「いい薬になったでしょうものねぇ。こ、れ、で!二度とマグルの医療なんかにちょっかいだす気にはならない、そうでしょうね?」

アーサー「そのとおりだよ、モリーや……おや、シリウスはどうしたんだい?」

ハニー「……鳥豚とお話だそうだわ」

ロン「ヒン語も使えないのに何を言ってんだか、マーリンの髭」

アーサー「そうか……君たちのおかげで随分と楽しい冬になったろうから、寂しさもまたひとしおなのだろうね」

ハニー「……それもあるでしょうけれど」

フレッド「まったく、親父が噛まれたお陰で楽しく過ごせたんだから、奴さんこそ親父に感謝するべきだよなぁ」

ジョージ「そうだそうだ、そんな親父の怪我なくなった事に、お祝いとかはげましの言葉とかかけるべきだよな」

アーサー「お前たち、父さんそろそろお前たちに一生髭剃りがついて回る呪いをかけないといけなくなるぞ?」

トンクス「明日はさ、あたしがみんなの護衛につくよ!」

ジニー「……ま、マッド-アイは?」

トンクス「ろ、露骨に不安そうな顔しないでよ!平気だって!あたしも……まぁ、うん。ドジだけどさ、あー」

リーマス「みんな、安心してほしい。護衛は私も一緒だよ」

トンクス「……い、一気にホッとしてる。ひどいわ、あたしだって立派な闇払いだよ!?ねぇ!?」

リーマス「あぁ、トンクスはよくやってくれる。それに、明日はキングズ・クロスには行かない。通りに出たらすぐ『夜の騎士バス』を呼ぶんだ。心配いらないよ」

トンクス「そうそう、そのくらいならあたしだって——なんだかフォローされてるようでされてない!」

フレッド「そりゃぁさ、トンクス。君に任せてたら僕達のトランクごとどっかいっちまいそうなんだもんな」

ジョージ「そうそう、さもなきゃ誰がどのトランクだったか分からなくなったり。特に、僕ら双子のとかね」

トンクス「七変化の観察眼舐めないでほしいね!君たちを見分けるのくらい、簡単だよ!グレッドとフォージでしょ!?」

ハニー「……マッド-アイが帰っていてよかったわね、トンクス。そう、それじゃ、明日はホグワーツ特急で帰るのではないの……『夜の騎士バス』」

ロン「やったぜ!ハニーの話で聞いて以来、乗ってみたかったんだ!  豚としての心構えを伝えなくちゃいけないしね。野良豚扱いは同胞もイヤだろうし」

ハニー「同属に優しい豚は好きよ、ロン」

ロン「ヒンヒン!」

ハーマイオニー「……さすがは、一番の豚さまさま?」

ロン「ハニー以外が豚って呼ぶなよ!!マーリンの髭!!」

ハーマイオニー「反省の二文字はいつまでたっても心構えにならなそうね、あなたって」

翌日

ドタバタドタバタ
 バタバタバタバタ

モリー「急いで、急いでみんな!あぁジニー、スカーフをつけていきなさいな。外は冷えますよ!」

ジニー「ありがとう、ママ!平気よ!視界に、ハニー!がいるし!」

モリー「それもそうねぇ……お前はいつの間にかハニーを名前で呼べるようになって。母さん、期待してますからね……?」

フレッド「おーっとママ、百合の蕾に胸躍らせてるとこ悪いんだけどさ、そこどいてくれるかい?」

ジョージ「何せ僕たちいまから、絶望ひしめく胸糞悪い蛙の待つ城に戻らなくちゃいけないからね」

モリー「あぁ、はいはい——お前たち。来た時に送られてきた荷物よりも随分と多いみたいですけど?」

フレッド「あーっと、そりゃあれだ、かあさんや」

ジョージ「少し痩せた?だからそう見えるだけさ」

モリー「痩せたのは本当ですけど母さんの目を誤魔化せると思ったら大間違いですからね!お前たちはまた!WWWの新商品でも詰め込んでいるんでしょう!開けなさい!さもないと——」

リーマス「モリー、モリー。悪いが時間がない、息子達をしかりつけるのはまた後日手紙にしてくれるかい?」

モリー「……えぇ、そうしましょう。いいですね、お前たち!」

フレッド「はーいはい。さんきゅー、ムーニー!」

ジョージ「さっすが我らが大先輩様の仕掛け人!」

リーマス「あぁ、大いに笑わせてほしいね——おや、噂をすれば。随分と久しぶりじゃないか。久しぶりに鳥以外と喋る気になったのか?」

シリウス「……見送りはしなければ。それに、いつまでも避けているわけにいかない。普通には、接さねば」

リーマス「あぁ、ついでにそろそろ君の方も限界だったのだろうしね——あぁ、ハニー。準備は出来たかい」

ハニー「えぇ……シリウス!」

シリウス「やぁ、ハニー。寝坊してすまなかったね——バックビークから伝言だ。元気で、と」

ロン「いや、『お前いつまでここいんだよヘタレさっさとハニーんとこイケヤボケ』っつってただろ、ヒンヒンって」

ハーマイオニー「茶化さないの、事実でも。事実であってほしくないけど」

シリウス「だからそのヒンヒンって……あー」

ハニー「……」

シリウス「……ハニー。あのプレゼントのことは、忘れないでほしい。私は——いつだって、君のもとに駆けつける」

ハニー「……えぇ、覚えておいては、あげる。だから——」

シリウス「あぁ、私の方も忘れない。何せ、うん。これがあるからな」

ジャラッ

ハニー「……そ、そう、ね!うん!そ、それであの——それを渡した、後の事だけれど!あの、あれのことは、忘れ——」

シリウス「……ハニー」

ギュッ

ハニー「っ!?」

シリウス「元気でな。さぁ、行きなさい」

パッ

ハニー「〜〜〜っ、あっ、〜〜〜っ!」

リーマス「……トンクス、みんなと先に出てくれるか。私がしんがりになろう」

トンクス「えっ、あ、うん! そんじゃみんな、進んで進んでー!はーいはい、ハニー!しっかり前みてね!うん!ロナルドとハーマイオニーの袖掴んで歩いて!そう!」

ギィィィィィッ……

リーマス「……君は卑怯者だ」

シリウス「……」

リーマス「誤魔化すために期待を持たせる。その気もないくせに。受けれる覚悟がないのなら——そんなそぶりは見せるべきじゃない。相手を傷つけるだけだ」

シリウス「おやおや、それは——僕でなく、自分に言っているのじゃないのか?え?」

リーマス「——うるさいよ」



トンクス「…………」

ソーッ……パタンッ

広場

トンクス「ばんごー!」

ロン「ヒン!」

ジニー「ヒンヒン!」

ハーマイオニー「目立つ行動はやめて!」

トンクス「あっはは、ごめんごめん。こんだけそろうとつい……あっ、リーマス。問題ない?オーケー?」

リーマス「……あぁ。アーサーから、ハニーに。『私のために、蛇を見張っておいてくれ』と」

ハニー「……あっ、え、えぇ!ふふっ、そうしてあげるわ!」

ロン「テンション高いハニーマジ天使、いつもだけど。違った女神だった」

ハニー「えぇ、そうね。さながら今は雪の使い、というところかしら」

ロン「トンクス、リーマス、ちょっと待っててくれる?スプーンとってくるから」

ハーマイオニー「積もった雪を食べようとしないでお腹壊すわよ」

ジニー「本望だわ」

ハーマイオニー「『夜の騎士バス』は今すぐ呼べるのかしら!

リーマス「あぁ、早く乗るにこしたことはないね——」

サッ

バーーーーーン!!

フレッド「! ヒューッ!リーマスが通りに右腕を掲げたら!ド派手に登場してくれるじゃないか!」

ジョージ「! どこからともなく、なんだってんだこりゃ!紫色で三階だてのど派手なバスだって?」

ガチャガチャッ、バタンッ

「ようこそ、我が——」

トンクス「はいはいはい、分かってるよごくろーさん。八人ホグワーツ行き、ココアはいるけど歯ブラシはいらないよ」

ハニー「ハァイ、スタン。元気でいい子にしていたかしら」

スタン「! おぉ、アニー!おめぇさんか! おんや、今日はスカートん中は拝ませてくんねぇのか、ってな!」

ハニー「忘れなさいと言ったはずよねこの豚!!!!」

ジニー「どういうこと!!どういうことよ!!!!!」

ロン「ヒンヒン(怒)!!!!」

ガタガタガタガタッ

スタン「ヒンヒン!無礼なこと言ってすいませんでアニー!一番豚!そんでハーミー姐さん!ジニーお嬢!」

ロン「分かればいいのさ、あとハニー以外が豚って呼ぶなよ」

ハーマイオニー「姐さんはやめて」

ジニー「ハニーの前ではみんな平等な豚だからそういうのはいいわ、ヒンヒン」

ハニー「アーニーは元気かしら?今日も安全運転でお願いしたいわ」

スタン「おぉともアニー!おい、アーン!アニーがよろしくってよぉ!」

アーニー「——おぉ」

ロン「アーだのなんだの紛らわしいなまったく、マーリンの髭!ヒンヒンで伝えろよ!」

ハーマイオニー「一部にしか伝わらないからやめて……私、グリモールド・プレイスに来る時にもこれに乗ったけど、ハニーが乗るだけでこんなに運転に差が出るのね」

ハニー「私はいつでもどこでも特別扱いを受けるべき存在、そうでしょ? それに私も、今回は前より乗り心地がいいわ。いいクッションがあるから。ねぇ、ロン?」

ロン「ヒンヒン!もちのロンでどんな揺れでもなんのその、ってね!」

スタン「これが一番豚——!俺も、野良豚でいられねぇ!」

ハーマイオニー「その俗称公式なの、あなたたちの間で」

バーーン!

スタン「えぇーっと、今はバーミンガムのちょいと先でぇ、アニー」

ハニー「待たされるのは嫌いだけれど、これだけ先客が多ければ仕方ないわね……急がなくていいわ、って、アーニーに伝えて」

スタン「いんや、それがよ。あの、さっきおめぇさんと一緒に乗った、前に座ってる態度のでけぇ姉さんが——」

 トンクス「トンクスさんがなんだって!?」

スタン「——トンクスさんが、チップをくれてよぉ。ちょいと気分の悪いマダム・マーシを下ろしたら、おめぇさんたちから先に降ろすことになったんだ」

ハーマイオニー「……商売としてどうなのかしら、それって」

ロン「さっきもハニーが言ったろ?ハニーが特別待遇なのは世の常だよ、もちの僕で」

ハニー「えぇ、そうね——でも、あんまり悪いから……全員に首輪でも、あげようかしら」

ジニー「跪いて喜ぶと思うわ!ヒンヒン!」

ハーマイオニー「……ハニー、忘れているなら、あー、教えるけど。今の魔法界であなたは、あんまり——」

ハニー「……」

ジロジロ
 ヒソヒソ

ハーマイオニー「も、もちろん、私たちはそうじゃないわよ!?あなたのことを信じているし、それに——きゃぁ!?」

ハニー「えぇ、そうね。誰にも信じてもらえてなくったって——あなたが慰めてくれるんですものね、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「ちょ、っと、ハニー。そんな、こんな、揺れるところで……あぁ、それは、いつも結局揺れてるでしょうけど、こんな中でなんて、されたら……、夜の騎士バス』は止められるわけ、ないわ……」

ロン「つづけて!」

ジニー「どうぞ!」

スタン「奥に案内してよかった!ヒンヒン!」

ハーマイオニー「ふーっ、ふーっ、な、何が夜の、よ!朝よ、今は!!!」

ロン「さすがのツッコミだね、ああ」

ハニー「あなたは出来る豚ね、スタン。そうね……車掌豚だわ」

スタン「! 光栄だアニー!ヒンヒン!」

ハーマイオニー「また増えたわ……とにかく、もう。前のように誰かれかまわず、というわけにはいきそうにないってこと、思い出して頂戴ね」

スタン「あー、それだがよぉ。アニー、おめぇさんの名前は夏からさんざん新聞で読んだぜ?」

ロン「あと、君の頭の中で繰り返し沸き起こるハニーの笑顔と名前とかな」

スタン「俺の場合笑顔っちゅうかスカート抑えて赤らめる顔だけんどよぉ」

ハニー「首をアーニーの運転席にぶら下げられたいのかしら」

スタン「ヒンヒン! そんでよぉ、『予言者』にはおめぇさんについて、なぁにひとつ良い事は書いてやしなかった」

ハニー「……そうでしょうね」

スタン「おれはアーンに言ってやったね。あぁ、こう言ってやった。『おい、アーン?俺達のアニーにこんなことを言ってやがるぜ?魔法省に突っ込んでって、呪いでもかけてやろうか?』ってよぉ」

ハニー「……あなたは、本当に出来る豚のようね。たまーに一言多いけれど」フーッ

スタン「! ヒンヒン!」

ハーマイオニー「……それ、魔法省に聞かれていないと、いいんだけど」

ホグワーツ校門前

スタン「ホッグワーツ、ホッグワーツでぇ」

ハニー「……帰ってきたのね。スタン、それに、アーニー。ありがとう、助かったわ」

スタン「どぉってことねぇ、アニー。まーたな!」

アーニー「——ヒン!」

ハニー「ええ、ふふっ。またね」

トンクス「さっ、みんな降りた降りた。ちょーっとちょっと、見せ物じゃないよ。どいたどいた」

ドタドタドタドタ

リーマス「日が落ちるまでに到着してよかった——さぁ、みんな。お別れだ」

トンクス「校門の中に入っちゃえば、もう安全だよ。ダンブルドアの腕の中も同然だからね!ジニー、元気で!クィディッチ頑張ってよ。ハーマイオニー——」

リーマス「……ハニー、ちょっとこっちへ」

ハニー「……なぁに?トンクスに悪いから、手短に済ませてほしいわ」

リーマス「何がかは聞かないが……いいかい。君がスネイプの事を嫌っているのはよーく知ってる。だが、彼は優秀な『閉心術士』だ——素直に、彼の教えを受けてほしい」

ハニー「……せめてあなただったら、よかったのに」

リーマス「私? ははっ、ハニー。それはとても無理だ……一世一代の秘密を、たかだが十一歳の少年に容易く看破されたことのある私だよ?」

ハニー「……ふふっ。それは、相手が悪かったのだわ」

リーマス「あぁ——そして、君の相手はヴォルデモートだ。どちらがたちが悪いかは、言うまでもないね」

ハニー「……」

リーマス「……どっこいどっこいかな」

ハニー「言うと思ったわ」

リーマス「私たち全員が、君が身を守る術を学んで欲しいと思ってる」

ハニー「……えぇ」

リーマス「相手があのスネイプだ、というのはそれは、それはもう、シリウス筆頭にみんなが反発したが」

ハニー「……」

リーマス「特にマッド-アイとマクゴナガルなんて——いや、うん。なんでもないよ」

ハニー「いい寮監をもってありがたいわ」

リーマス「本当にね。そう、シリウス含めて、君に身につけてほしいんだ。多少……あー、かなりイヤでも、頑張るんだ。いいね?」

ハニー「……えぇ、そうしてあげる。あなたも元気で……随分と、皺が増えたようだわ。リーマス」

リーマス「ははは……私も歳だね」

ハニー「そんなこと——」

トンクス「そんなことないよ、うん!リーマスはまだまだ若いって、ねっ!」

リーマス「いたっ! トンクス、背中を叩くのはやめてくれるかい……」

トンクス「あなたたちの話が長いから!ほら、みんな待ってるよ……ハニー!いい新学期を!」

ハニー「えぇ、トンクス……ありがとう。あなたたちは、この後……?」

リーマス「あぁ、すぐに本部へ……」

トンクス「の、前にさ!せーっかくホグズミートの近くなんだし、一杯飲んでからにしようよ!ねっ!あたしたちの任務はとりあえずここまでなんだから!」

リーマス「……トンクス、まずは報告をだね」

トンクス「おっと!それじゃ一番近い手紙をだせる場所はどこだっけ……ホグズミートの郵便局だ!そうでしょ?」

リーマス「……分かった、分かったよ。今日君はよく動いてくれたし、一杯おごろう。一杯だけだ、いいね?」

ハニー「……ふふっ。トンクス、仲良くね」

トンクス「うん……ハニー、さっ!握手! お互い、がんばろ。食肉目のバカな意地に、負けてたまるかってね」

ハニー「?」

トンクス「なーんでも。じゃあね!」

校庭

ザクッザクッザクッザクッ

フレッド「あーぁ、われらの城に戻るのがこんなにも憂鬱だったことはないな?え?」

ジョージ「あのババァ蛙が僕らのいない間に幾つ新しい『なんとか令』を出したか、賭けるてみるか」

ジニー「『高等尋問官の許可なしに例外的に生徒の城からの外出を認めない』なんて、どうかしら……あーぁ」


ハーマイオニー「……これまで以上に、放課後に寮からでさえ出るのさえ難しくなるかもしれないわ」

ロン「そんときゃハニーを拝もう!心が豊かになるね、うん! それに、クィディッチも……あー」

ハニー「……クィディッチもなし。おまけに、スネイプの個人授業。この私に、なんて待遇なのかしら」

ハーマイオニー「……ある意味では特別だわ」

ロン「安心してよ、ハニー!僕たち豚が精一杯、君が快適なように務めるよ!ヒンヒン!」

ハニー「えぇ、そうして頂戴……それに。あなたたちもいるし、悪いことずくめ、ってわけでも……」

ハーマイオニー「……」

ロン「……」

ハニー「……ニヤニヤするなら寒空の湖に叩き落すのだから覚悟しなさい! それに、えぇ。DAだって……DA」

ハーマイオニー「? どうしたの、ハニー。えぇ、リーマスからもらった本で、DAの計画も進められそうね」

ハニー「……チョウのこと……すっかり、忘れてたわ……あー……帰りたい、グリモールド……でも、シリウス……あー、もう!ロン!!」

ロン「ヒンヒン!なんだいハニー!」

ハニー「ちょっとイカ豚のところに行って——!」

ハーマイオニー「八つ当たりはやめましょう、ハニ……ロン、ロン!?言うが早いか飛び込む体勢になるのはやめて!ロ——」

バシャーーーン!!! 
 ヒンヒーーーーーン!

翌日

大広間

ガヤガヤガヤガヤ
 ザワザワザワヒソヒソヒソ

ザガリアス「せっかく新学期なのに、今夜は集まらないって言うのかい?」

ハニー「悪いけれど、日程が決まったらいつもの方法で知らせるわ」

ロン「そのくらい言われなくっても分かれよ、ザガリー」

ザガリアス「その呼び方やめろよ!」

ハーマイオニー「あなたで何人目かしら……そういうことだから、金貨は常にポケットへお願いね」

ザガリアス「でも、変じゃないか。みんな張り切ってるし、それに、今日は絶対クィディッチの練習だってどこのチームもやってない。絶好の集合日和だろ?」

ロン「個人的事情ってやつが存在することも考えられないなら部屋の隅っこで一人で生きてろよスミスだけに」

ザガリアス「……」

ハニー「いいすぎよ、ロン」

ロン「へいザガリー!悪かったね!」

ザガリアス「だったらまずその呼び方をよせって言ってるだろ!」

ハニー「私の事情なのよ。この私の、それで文句はないでしょう? 放課後は、あー……『魔法薬』の補習を受けなければいけないの」

ザガリアス「『魔法薬』の補習? おっどろいた、君って相当酷いんだね、成績。だってあの人が補習なんて、聞いたことも——」

フレッド「そんじゃ今聞いたな、分かったらとっとと失せろよザガリー。昼飯がまずくなっちまうぜ」

ジョージ「それとも聞こえなかったか?オーケー、耳の穴だせよザガリー。またかっぽじってやろう」

ザガリアス「ヒッ!そ、それじゃ!早く知らせてくれよな!」

ハニー「ありがとう二人とも、やりすぎだけれどね」

フレッド「あぁいうのは痛い目合わせないとわかんないのさ、お優しい女王様」

ジョージ「まぁあんだけやってるのに学習しないあいつも大概だがね、全くさ」

ロン「ほんとだよ、ザガリーの野郎。こっからならまだ呪いはとどくかな。ナメクジ食らわそう」

ハーマイオニー「また逆噴射しても知らないわよ、やめなさい。ねぇハニー、あんまり気にすること——あー」

ハニー「? なぁに?」

ハーマイオニー「ロン、私たちはえーっと、図書館に行きましょうか」

ロン「君も随分と我慢ができるようになったらしいね。あぁハニー、ごめんよハニー!ヒンヒン!僕、うっかり課題の残りがあるのを思い出してさ!悪いけど、あぁ本当に悪いけどしばらくこの硬い椅子に腰掛けてくれるかいごめんよ!」

ハニー「どうしたって言うのよ……そう、それは、あなたたちが二人きりになりたい、って言うなら……あっ」

ハーマイオニー「えっ?」

ロン「うん?」

ハニー「えぇ!うん!いいわ!我慢してあげる!さっ、行って!行きなさい!」

ハーマイオニー「……あ、あなたのニコニコ顔は貴重だし眼福だけど、何か大きな勘違いをしていない!?ねぇ!?」

ロン「マーリンの髭!」

ハニー「さぁね、どうかしら——行ったわね。ふふっ、ハーマイオニーったら突然どうしたのかしら。今夜じっくり——」

チョウ「ハァイ、ハニー!」

ハニー「!? ちょ、チョウ!? は、ハァイ」

チョウ「話しかけるタイミングを見ていたのだけど、あなたが珍しく一人になってくれて良かったわ……ね?ゆっくり、話したいもの」

ハニー「あっ、えぇっと……ありがとう。あの二人、そういう……えぇっと、チョウ。手、冷たいわね」

チョウ「そう?じゃぁ、あなたの手でこのまま暖めさせてもらおうかなっ」

ハニー「私はカイロではないのだけれどね、もう」

チョウ「いいクリスマスだった?」

ハニー「あー……そうね。賑やかでは、あったわ」

チョウ「そう。私の方は静かだったわ……あの、ね?」

ハニー「えぇ、なぁに?」

チョウ「掲示板は見た? 次のホグズミート休暇のことが、貼りだされていたの」

ハニー「あー、まだだわ。城に帰ってから、一度も掲示板は見ていないの。ろくでもない、教育令がチラリと見えたもの——」

チョウ「バレンタインデーなの、ホグズミートに行けるのは」

ハニー「あっ……そう、なの」

チョウ「……あのね!」

ハニー「! え、えぇ!」

チョウ「休暇前、最後の日。いきなりあんなことをしてごめんなさい。次の日、あなたに会ってちゃんと話そうと思ったんだけど……いなくなってしまったし」

ハニー「あー……あの、いいのよ。気に——」

チョウ「気にするわ!当たり前よ……それとも、考えてたのは私、だけ?」

ハニー「……そんなこと、ないわ」

チョウ「……時間が空いてしまったせいで、少し考えすぎてしまったの。だから、ハニー。あのね」

チョウ「バレンタインの日、デートをしましょう? そこでハッキリ、させてくれないかな」

ハニー「……」

チョウ「……」

ハニー「……(私は、今のチョウがどんな気持ちで切り出したのかを知ってる——はぐらかされたらどう思うのか、も。だから——)」

ハニー「えぇ、いいわ。一緒に行きましょう?」

チョウ「! ほんと? ありがとう、ハニー!」

ギュッ!

ハニー「! あー、あの、分かったわ、分かったから——抱きつくのは……もう」




ロン「えーっと、『占い学』の課題……『今日は男子トイレが異様に込み合うだろう』っと」

ハーマイオニー「なに、その予言」

ロン「おっと、これは予言じゃないぜ。現在進行形の事実さ、もちのロンでね」

ハニー「……行ってしまったわ。バレンタイン、ね……」

ハニー「チョウが本当のところ、どういうつもりなのか……聞けるの、かしら」

ハニー「……嘘では、ない、けれど……ホントでもない」

ハニー「……わかんないわよ、わたしには。自分が——ハーマイオニーやロンに感じてるのも違う——そんな想いがあるってことに、ついこの間気づいたっていうのに」

ハニー「……わたしが、どうしたら」


ルーナ「? 何か悩んでるなら、『庭小人』、正式には『ゲルヌンブリ・ガーデンジ』に噛まれてみるといいよ。ヒラメキが身につくかもしれないもン!」

ハニー「きゃっ!? る、ルーナ!?いつから!?」

ルーナ「うーん、さっきから。ねぇ、今夜はあの集まりはするの?」

ハニー「答えになってないわよ……いいえ。私の都合で、できないの。悪いわね、あー……『魔法薬』の補習なの」

ルーナ「そうなんだ——セブルス・スネイプ?」

ハニー「えぇ、それよ」

ルーナ「——気をつけて!パパが、あの人は普通の魔法使いじゃない、って!」

ハニー「!? る、ルーナ……それは、どういう……?」

ルーナ「うん。パパはスネイプが——」

ハニー「えぇ……!」

ルーナ「吸血鬼に違いない、って!」

ハニー「!なんですって!?————えっ? な、なんですって、ルーナ?」

ルーナ「吸血鬼、だよ。ヴァンパイア」

ハニー「……」

ルーナ「あの血の気のない顔とか、滑るみたいな歩き方とか」

ハニー「……」

ルーナ「ベタベタな髪とか、地下に部屋があるところとか」

ハニー「……」

ルーナ「あたし、観察してたんだけど。あんまりあの人が物を食べるとこって見たことないんだ。ワインは飲むけどね。『赤い』!ワインは!」

ハニー「……」

ルーナ「それに、あんたは知ってるのかな? 四年前までいた、クィレルって先生はスネイプを怖がってて、それで、いっつもターバンからにんにくの臭いがした、って!」

ハニー「……っふふ、そうね。それに、初めて会った時にクィリナスは、『吸血鬼』に関する本をダイアゴンで探していたそうだわ」

ルーナ「! ほんと!やっぱりそうなんだ——気をつけたほうがいいよ。わかる?あんた、二人きりになったら血を吸われちゃうかもしれない」

ハニー「えぇ、そうね。とっても怖いわ、っ、気をつけないと、ね」

ネビル「! あぁ、ハニー!あのさ!僕、僕君のためならいつだって罰則覚悟であんにゃろうぶっ飛ばすよ!ヒンヒン!」

ハニー「あら、ハァイネビル……」

ネビル「……ほんとだよ!僕、あんな奴にだって負けない、うん! 頑張る、って。決めたんだ!」

ハニー「……そう。偉いわ、ネビル」

ルーナ「にんにくは、気休めにしかならないって聞いたけど。持ってて損はないって。ハイ、あんたにあげる。それから、あんたにも」

ハニー「あら、用意がいいのね」

ネビル「あっ、えっと、ありがとう。ほら貝に入れておいてくれる?」

ルーナ「どういたしまして。DAでも、教えたほうがいいかもね。吸血鬼の対処法」

ハニー「……えぇ。あぁもう、ほんと……あなたたち見てると、悩んでたことがバカみたいに思えてくるわ……ありがとう、ルーナ。ネビル」

ハニー「スネイプの奴に何かされそうになったら、こいつを口に放り込んでやることにするわ。ふふっ」

今日はここまで
続きは日曜夜
じゃあの!

申し訳ない。本当に申し訳ない
続きは明日昼間から夜中まで。

再開

うわっふぅーーーーーー!

放課後

スネイプの研究室

コンコンッ

スネイプ「入りたまえ」

ガチャッ

ハニー「……失礼するわ」

スネイプ「ここはあの愚犬の家ではない。言葉遣いには細心の注意を払わないと容赦なく減点しますぞ、ポッター」

ハニー「……失礼しますわ、スネイプ、先生」

ハニー「……アンブリッジの部屋に入るのとどちらが嫌か、いい勝負ね」

スネイプ「余計なことは喋らず、入りたまえと言っている。不用意に他の者に見られて勘ぐられても困る。扉を早く閉めたまえ」

ハニー「はいはい、そうしてあげる——自分で牢に閉じ込めた気分ね、あぁ、もう」

バタンッ

スネイプ「結構。こちらを見たまえ」

ハニー「……」

スネイプ「我輩を見るな。こちらを見ろと言ったまでだ」

ハニー「なんなのよあなた」

スネイプ「そうだ、我輩の鼻あたりでも見ていたまえ。間違ってもその眼を我輩に向けるな。それとも、このアイマスクをつけるつもりがあるのならば話は別だが——」

ハニー「注視してあげているあなたの鼻をへし折ってやりたくなる衝動を行動に移されたくなかったら早く初めていただけないかしら」

スネイプ「教授に対する宣戦布告ともとれる言動に五点減点」

ハニー「喧嘩売ってるのは確実にそっちのようにおもうのだけれどね」

ダンブル「わしの肩揉みをしてくれたハニー・ポッターに感動した。グリフィンドールに…………5000点」


とかが後で起きるため全く問題ないかと

スネイプ「さて。ポッター、ここにいる理由は分かっているな?」

ハニー「えぇ。あなたが『閉心術』を教えてくれる、そうでしょ?」

スネイプ「先ほども言ったように、いくら普段の授業と違うとは言え、我輩が君の教師であることに変わりはない。であるからして、発言には『先生』とつけるように」

ハニー「えぇ……はい、『先生』。これでよろしいかしら、『先生』」

スネイプ「……声まで……あとは本当に眼をどうにか、いや、これはリリーではないまかり間違ってもリリーではないむしろリリーとは程遠いそうだろうみろあの眼をいや見るな抑えろ杖をとる出ないスニベルス……!」

ハニー「……何かブツブツ言ってるわ」

スネイプ「……五点減点」

ハニー「……理不尽とかそういうのでは収まらないわよね……今に始まった話ではないけれど。『先生』」

スネイプ「さて、『閉心術』だ。君の大事な後見人様様の前でも説明したように、この分野の術は外部からの魔法による侵入や影響に対して心を封じる術である」

ハニー「そう。それで、前は聞きそびれてしまったのだけれど……どうして、ダンブルドアは私にそれを学ばせようとしているのかしら。『先生』」

スネイプ「気づいていないのか?思考も発想も何もかもが足りんな、ポッター。君の目は節穴かね、取り替えて貰えば良いのでは。緑とか。そう、緑とかに」

ハニー「この私の容姿にとやかく言われる部分など存在しないわ、『先生』。どういうことかしら、教えていただける?」

スネイプ「『闇の帝王』は『開心術』に長けている。人の心から感情や記憶を引き出す能力だ」

ハニー「……人の、心が読める、ですって?」

スネイプ「繊細さの欠片もないな、ポッター。微妙な違いを分かろうともしない。そう、そこが君の大きな違いであり——そうだそれだこの目の前の赤い塊はリリーではない間違ってもリリーはこんながさつな神経はしていないそれはカエルの卵とかポケットにつっこんではいたがそれはうんスニベルス」

ハニー「……またブツブツが始まったわ。なんなのかしら、本当に」

ルーピン「彼は優秀な『閉心術士』だ」



駄々漏れなんですが

スネイプ「『読心術』はマグルの言い草だ。ポッター、君はいつからマグルとして生きることにしたのかね。もっとも、我輩の授業の成績の悲惨さを見ればその決心も分からなくもありませんがな」

ハニー「あなたが理不尽に零点にした時以外はそれなり以上のものを仕上げているつもりよ、『先生』」

スネイプ「人の心は書物ではない。『心を読む』などとはふざけた言い方だ。心は、思考とは、好きな時に開いたり調べたりできるものではないのだ。侵入者が誰彼なく一読できるよう頭蓋骨の内側に書き込まれているような代物ではない」

スネイプ「心とは、ポッター。重層的で複雑なものだ——もっとも君のように、自分のことしか考えない傲慢な性根の人間に限ってはどうか分かりかねますがな」

ハニー「先生、嫌味を聞かされる授業ではなかったと思うのですけれど?」

スネイプ「予備知識だ口を挟むな五点減点。さて、しかしながら『開心術』を会得した者が、一定条件下において獲物の心を穿ち、そこに見たものを解釈できる、というのは本当だ。『闇の帝王』ともなれば、誰かが嘘をつけばほとんど必ずそれを見破る」

ハニー「……」

スネイプ「『閉心術』に長けた者だけが、口とは裏腹な感情も記憶も閉じ込めておくことができ、帝王の前で見破られることがない」

ハニー「でも、それじゃ……どこで誰が何を考えているか、あいつには……ヴォルデモートには筒抜けということ?」

スネイプ「っ……そうではない。『開心術』は繊細でありかつ複雑なものであるからして、通常の原則では『目を合わせる』という前提が重要となる」

ハニー「……通常の原則」

スネイプ「そうだ、ポッター。どうやら君の場合はこの『原則』には当てはまらない。他の人間は『闇の帝王』と隔てられている距離、そしてホグワーツの古からの守護により、全ての身の安全、精神の安全が保障されている」

スネイプ「しかし、君と『闇の帝王』の間に作り出された絆はそれらを越えて、干渉してしまうようだ。精神が弛緩し、無防備な状況下において——例えば眠っているときなどだが」

ハニー「……感情や、思考の共有……アンブリッジの罰則で参ってしまった時……クィディッチの練習で疲れていた時……それに、眠っていた時の夢……」

スネイプ「校長はこの状態が長く続くのは芳しくないとお考えだ。そのため、我輩にこの役目を押し付けやがっ——ゴホン。我輩に一任されたのだ」

ハニー「でも、おかしいわ。私だってあんな奴との繋がりなんて考えたくもないけれど……これまでは、役に立つことが多かった。傷の痛みに警戒したり、それに、この前の蛇……」

ハニー「そうよ、あの時私は『蛇』からお父様を見ていたわ!あそこに、ヴォルデモートはいなかった!」

スネイプ「っ、口を挟むなと言っている」

ハニー「私がヴォルデモートと記憶を共有しているのなら、どうして『蛇』の中から——」

スネイプ「『闇の帝王』の名を言うな!!!!」

ハニー「……」

スネイプ「……」

ハニー「ダンブルドアは、名前で呼ぶわ」

スネイプ「……ダンブルドアは極めて強い魔法使いだ。であるからして——」

ハニー「それに、私の知っている勇敢な人たちだってみんな。名前なんかに恐れてない」

スネイプ「勇敢さと無謀さを履き違える愚か者ばかりだということだ。ダンブルドアは……それだけの力があるだろう。しかし、その他の者は……」

サッ

ハニー「……『闇の印』」

スネイプ「……」

ハニー「……私は、ただ。知りたかっただけよ……あー、知りたかっただけ、です」

スネイプ「何故、夢の中で蛇に入り込んだか。そう、それはその時『闇の帝王』が蛇の中にいたからだ。『帝王』は体を失って以来、他者に取り憑く術を研鑽し続けたらしい。体を取り戻しても、蛇の中に自己を移しおおせた」

ハニー「ナギニね……」

スネイプ「同時に、『帝王』はこれまで知る由もなかった君と自身の絆の可能性に気づいた。あの晩襲撃したアーサー・ウィーズリーが助け出されるには、それしか説明がつかない」

ハニー「……私があいつの感情を読んだように。繋がりがあると知ったあいつが、今度は——私の思考や感情を読み取ろうとうすかもしれない、そういうこと?」

スネイプ「そう。そして、そのための『閉心術』だ。それと、ポッター。『先生』」

ハニー「あら、あなたの先生になった覚えはないわ、『先生』」

スネイプ「すぐに生意気は言えなくなるだろう。実演に入る、杖を持ちたまえ——あぁ、少し待て。準備がいる」

ハニー「……それ、『憂いの篩』?ダンブルドアの部屋にある……」

スネイプ「黙っていたまえ。……」

スゥゥゥゥッ

ハニー「……スネイプのこめかみから、銀色の……糸のようなものが。あれが確か、『記憶』なのよね」

サァァァッ

スゥゥゥゥッ

サァァァッ

スゥゥゥゥッ

サァァァッ

ハニー「……『憂いの篩』の中に、スネイプの記憶が……そんなにも見られたくないものがあるのかしら」

ハニー「……まぁ、私にだって一つや、ふたつ……あるけれど」

スネイプ「……さぁ、これでいい。杖を構えたまえ、ポッター」

ハニー「……はい、『先生』。私は、何をすればいいのかしら」

スネイプ「杖を使って、いいか、『杖 を 使 っ て』我輩を武装解除するもよし。そのほか、思いつく限りの呪文で、いいか、『呪 文』で防衛したまえ」

ハニー「……ビンタはなしと言いたいわけね、『先生』。えぇ、分かったわ。それで——それで、あなたも杖をかまえているようだけれど——何を?」

スネイプ「我輩は、君の心に押し入ろうとする、当然だ」

ハニー「っ!?」

スネイプ「君がどの程度抵抗できるのかを見てみよう。『服従の呪い』に抵抗せしめたことは聞いている……今回もその類の力が必要だとわかるだろう。構えるのだ、いくぞ」

ハニー「ちょ、っと!待——」

スネイプ「『開心! レジリメンス!』」

————

———

——

— 

——早く、早くお料理を作らなきゃ——自分の分も、食べさせてもらえない——

ダドリー『おい親なし! さっさと料理を出せよ、この豚!』

——豚は、あなたじゃないの——それに、どうして——この子ばっかり——


ハニー「……やめ、て」





ダドリー『真っ赤な自転車だ! パパ、ぼく、青いのがいいって言ったのにっ!!!!』

——いいな——自転車があれば——この人たちから逃げられるかも——ううん、そんなことなしに——

——羨ましい——祝ってくれる家族——誕生日の、プレゼント——


ハニー「やめて……」





ダドリー『知らないよ!こいつが勝手に乗ったんだ!僕の自転車!こいつが滅茶苦茶にしたんだ!!』

——違う、違う!私じゃない!ダドリーの、取り巻きたちが!強引に、乗させて!それで、坂から——!

——あぁ、でも、なんて説明すればいいって言うの!自転車は潰れてひしゃげて、わたしだけ——何にも怪我せずに、ダドリーたちに何かできるはずなんて、ないのに——

——何も、言えないわ——なんにも——


ハニー「やめ……て」





マージの犬『バウワウッ!!バウワゥッ!!!!』

バーノン『ダドリー、みてみろ!あの娘がリッパーに追いかけられて木に登ったぞ!ガッハッハッハッハッハッハ!』

ダドリー『ざまぁみろ!うぇーっ、汚いから足閉じろよなこの豚!』

——怖い!怖い!!怖い!!!——ひどい、ひどいわ——

——わたしなんにも、してないのに——こんなのって——


ハニー「っ!やめ……!」





魔女『まぁ……まぁまぁ、まぁ!!!あなた、ハニー・ポッター!?』

バーノン『!? ご、ご婦人、何の用ですかな!?私どもは急いどるんで、っちょ、おい、小娘を掴んで何を……小娘!この人はお前の知り合いなのか!?え!?こんな妙ちきりんな格好をしとるのは!』

魔女『いーぃえぇ、この子はなーんにも知らんでしょうとも!でもねぇ、あぁ、ハニー!なーんて素晴らしい子。あなたは——お母さんに似て、とっても美人さんねぇ!とっても可愛いわ!』

——わたしが——美人——可愛い——?





ハニー『高貴で、そして可憐なわたし——私は、あなたみたいな醜い豚でも愛してあげるわ』

ハニー『跪きなさい、ダドリー?』

ダドリー『……』

ダドリー『ブヒィーーー!ブヒィーーーーーー!!!ヒンヒン!ヒンヒーーーーン!!!』


スネイプ「(……過程が分からないがなんというクズ化——これがポッターの血か)」

過程って、大事だよね


何があったんだよォォォ

ギュッ

ハーマイオニー『えっ、えっ!?な、なにを!?』

ハニー『また、きっと会いましょう?ハーマイオニー』フーッ

ハーマイオニー『あ、あ、あぁ……え、えぇ!きっと、絶対、絶対だわ!///』

——少し前歯が気になるけれど、この子は磨くととてつもなく光るわね。しっかりつばをつけておかないと——

ハニー「あぁ、昔のハーマイオニーも——ちが、もう、やめ」





ハニー『……私の靴に、チョコがついたわ』

ロン『えっ……あー、どっちかと言うと、君が踏んだように思うんだけれど。なんのつもりだい、君……君、は……』

——ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!——

スネイプ「ごめんなさい……?いいや、聞き間違いか」

ハニー『ごちゃごちゃ言わずに、舐めとりなさい。ロニー坊や』

ロン『……』

ロン『もちのロンさっ!!!!!』

ハニー「思えばロンってこの時には……っ、こんなの、やめ」





ニャーマイオニー『〜〜〜〜〜〜〜、〜〜〜〜〜〜!〜〜〜〜!』

——可愛い可愛い可愛い可愛い何言っているか頭に入らないわ可愛い!!——

スネイプ「オエッ」




  吸魂鬼 吸魂鬼
吸魂鬼   吸魂鬼 吸魂鬼

ハニー『エクスペクト・パトローナム!』」

守護霊『跪k』

スネイプ「次っ!!!!!!!!」





チョウ『あなたが好きよ、ハ——』

ハニー「!!!ダメ!!絶対、ダメ!!これは、っ!!」





シリウ——

ハニー「ダメ!!!!!!もっとダメ!!!!!っ、離し、離れ、なさいよ、この、童貞教師!!!!!!」

バチッ

スネイプ「!」

ハニー「っ、はぁ、っはぁ、はぁ……あぁ……研究室。術が、解けたのね」

スネイプ「……『針刺しの呪い』をかけようとしたのかね」

ハニー「……さぁ。わた、私、無我夢中で」

スネイプ「……そうだろうな。君は我輩を深く入りこませすぎた。制御力を失っていただろう」

ハニー「……でも結果は、あなたが押し出されたわ」

スネイプ「結果は、そうだ。だが、十分に君の記憶の断片を手に入れたぞ。これが『闇の帝王』だったならば——」

ハニー「っ……全部、見たの?私が見させられていたのと、同じものを」

スネイプ「断片だった、と言っている……随分と素敵なご親戚のようですな?」

ハニー「……っ」

スネイプ「……最後の記憶だが」

ハニー「生徒のプライベートに必要以上に首を突っ込むのはどうかと思うわ、『先生』」

スネイプ「……君が最後に我輩に向かって口走った暴言と何か関係があるのかね。その場合、我輩は即座にブラックについてダンブルドアへ報告せねばならんが」

ハニー「知らないわ、と言ってるでしょう」

スネイプ「そうかね、よろしい。続きは——もう一度やればよい」

ハニー「そうね、それじゃこれで——えっ」

スネイプ「初めてにしては、悪くなかった。喚いて時間を無駄に浪費したが、最終的にはなんとか我輩を阻止したのだ。気持ちを集中しろ、頭で我輩を跳ね除けろ。そうすれば、杖に頼る必要さえなくなる」

ハニー「ま、待って……まだ、続けるというの……?」

スネイプ「当然……夜は長いぞ、ポッター? 全てをさらけ出したくなければ、集中することですな——『レジリメンス!』」






きっと、オ(ーイ)エ(ー)ッ って事だな

一時間後

ハニー『セドリック……セドリ——』

ハニー「いやあああっっ!!!やめて、やめ、て!!!!!」

スネイプ「心を空にしろと言っている!!ポッター!全ての感情を捨てるのだ!」

ハニー「っ、わたっ、っっ、私、やっているわ……!」

スネイプ「出来ていないからこうなっているのだ!立て、ポッター!努力をしていない!我輩の侵入を許している!我輩に武器を差し出しているぞ!」

ハニー「っ、〜〜っ、努力は、してる、わ!」

スネイプ「その目でこちらを見るなと言っている!!感情を捨てろ、とも!教授に向かって怒りの目とは何事だ、ポッター!」

ハニー「っ、怒りも、するわ!ほとんど何も、教えないくせに、こんな——」

スネイプ「そうなれば、君はやすやすと『闇の帝王』の餌食になることだろう!」

ハニー「っ……」

スネイプ「鼻先に誇らしげに『心』をひけらかすバカども。感情を制御できず、悲しい思い出に浸り、やすやすと挑発される愚かな犬のような者ども——言うなれば弱虫どもよ——そやつらは帝王の力の前に何もできぬ!ポッター、帝王はやすやすとお前の心に侵入するぞ!」

ハニー「っ、私、私は、弱虫——弱虫だ、って、あいつの力なんかには、負けたりしないわ、絶対にっ!!!」

スネイプ「なれば証明してみろ!己を支配するのだ!怒りを制し、心を克せ!かまえろ!『レジリメンス!』」

————

———

——

バーノン『小娘に手紙?そんなものあるわけ——』





リー『マクゴニャガルせんせーーー!』

にゃんこー!





『神秘部でございます』

アーサー『ボード、また今度!さぁ、ハニー。こっちだ。十号法廷……あんな、何年も使われていないところなんて!」』

ハニー『ここで、尋問が……?上の階の廊下と違って、ずいぶんと……壁も廊下もむき出しで、これじゃまるで……』

——ここの向こうで、裁判があるのかしら……怖い、なて思っていないけれど——

アーサー『いや、いや。ここじゃない。もっと下だ。あんなところまではエレベーターも通っていない……さぁ、こっちの階段を——』

——もっと下、なのね。この廊下は、どこだと言っていたかしら——もう、来ることもないでしょうけれど——

——たしか——『神秘——



ハニー「そうか、そうよ!!!分かった、分かったわ!!!」

スネイプ「っ、なん、だ!?」

バチッ!

ハニー「っ、分かった、ようやく分かったわ、あの、夢に出ていた……狭い廊下、黒い扉!どこかで見覚えがあると思っていたのよ……それに、アーサーお父様が襲われた場所も……!!」

スネイプ「……急激な感情の変化がみてとれたので、切り上げた。ポッター——何があったのだ」

ハニー「——『神秘部』には、何があるのかしら」

スネイプ「……今、なんと……言った?」

ハニー「あら、あなたがうろたえるなんて珍しいからすぐ分かるわ、『先生』」


8時半には戻る

>スネイプ「人の心は書物ではない。『心を読む』などとはふざけた言い方だ。心は、思考とは、好きな時に開いたり調べたりできるものではないのだ。侵入者が誰彼なく一読できるよう頭蓋骨の内側に書き込まれているような代物ではない」

杜王町のとある漫画家「喧嘩を売られた気がする」

再開

っしゃっ

数十分後

談話室

ハニー「私が夢で見ていた暗い廊下……『神秘部』だったのよ!うなされた夜は毎回、その廊下が登場していたわ」

ハーマイオニー「それに……アーサーおじさまが襲われたのもその場所だった、って言うのね?」

ハニー「えぇ。蛇の中で私、つまり、ヴォルデモートは……中にある何かを欲しがっていた。つまり」

ロン「魔法省に『武器』があるってことかい?マーリンの髭……!いや、ハニーの推理を反対するつもりなんて髭ほどもないんだけどさ!ヒンヒン!」

ハニー「えぇ、そうね。全ての真実ですもの!」

ハーマイオニー「……フーッ。飛躍しすぎよ、と、言いたいとこだけど……今回は本当に、辻褄があう……そうなんだわ」

ロン「何がそうなんだ、なのさ。よろしけりゃその思慮深いご推察を僕らにお教えくださいませんか、だ」

ハーマイオニー「言われなくても、よ。覚えてる?スタージス・ポドモアは『魔法省の重大機密の部屋に押し入ろうとしていた』って」

ハニー「あの部屋の護衛をしていたところを見つかったのね……それとも、あいつに操られてしまったのかも」

ハーマイオニー「考えられるのはそんなところかしら……偶然で片付けるには出来すぎているもの。ねぇ、『神秘部』には何があるの?アーサーおじさまは何か……?」

ロン「うーん、そこの連中を『無言者』って呼んでることは知ってるよ。でもそれ以外はなーんにも。パパが世間知らず、ってわけじゃないぜ? 誰も本当のところは知らないってんだから。マーリンの髭」

ハーマイオニー「……重大機密、魔法省の人間でさえそこで何が研究されているのかは知られていない」

ハニー「『武器』を隠すには、もってこい……ふふっ、ふふふっ」

ロン「あぁ、ハニー!ここんとこ山ほどある悩みが一つ解消されて嬉しそう——ハニー?立ち上がって、どうしたっていうんだい?うん?僕の座り心地悪かったかな」

ハーマイオニー「えぇ、でもそれこそ山ほどの宿題がなくったって私達には関係——ど、どうしたの?笑ってる、のに、額を……傷、傷が痛むの、ハニー!?」

ハニー「誰が悩み、悩みですって、ロン——痛む、ふふっ、ふふっ、あははははははっ!そんなのとは、程遠いわ————!ハハ、ハハハハハッアハハハハハハハハハハ!!!」

ロン「声上げて笑うハニーも女神だなぁ」

ハーマイオニー「たまにはブレなさい! ハニー、ハニー!?

ハニー「——ついに戻った——!我らの家族が——さぁ、お辞儀をさせて——っ!!!」

ロン「あぁそりゃもうハニー君の命令ならいつだって跪くけどね、そんな心にもない言葉じゃなければいつでも——うぉおっと!!!ハニーが倒れこむ時は僕ぁ全力で下敷きになってぐへぇ!」

ハーマイオニー「よくやったわ、ロン!ハニー、ハニー!?大丈夫!?」

ハニー「——っ、あっ……今、笑っていたの……私、わたし、なの?  いいえ、違う、わね」

ハニー「何か……何か起きたんだわ。あいつが、ヴォルデモートが心から喜ぶような……」

ロン「……君の笑顔を見た、とか?」

ハニー「それはもう、涙して喜ぶところでしょうけれどね、えぇ。今の、っ、あなたみたいに」

翌日

大広間

ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
 ヒソヒソヒソヒソ ザワザワザワザワザワ

ロン「何だか大広間、妙に騒がしいな。ハニーを一目見てざわめきたって色めきたってどよめきたつのは当たり前だけどさ」

ハニー「えぇ、そうね。いつだって渦中の人だもの……城でも、何かが?」

ハーマイオニー「……そうじゃないみたい。いいえ、そう、昨日のことと関係はあるのだけど……第一面、そのものズバリ、だわ」

ロン「なんだい?『例のあの人』がキャノンズのキャンプに訪れて激励でもしてったってのかい?どうせならトルネードーズのとこに行ってくれないかな」

ハーマイオニー「黙ってこれを見て——黙らざるをえないでしょうけど」

バサバサッ

ハニー「……一面に、魔法使いと魔女の写真……アズカバン監獄の収容者、っ、これ……『ベラトリックス・レストレンジ フランク並びにアリス・ロングボトム夫妻を——』……この人をあざけるような口元の笑い。あそこでやせこけてても、変わらないのね」

ロン「…………『アントニン・ドロホフ ギデオン並びにフェビアン・プルウェットを殺害——』あぁ、顔も根性も捻じ曲がったクソったれだ。こいつらが、なんだっていうんだ……獄中パーティのご報告?そのまま——おい、おい!おい!!!嘘だろ!?!?」

ハーマイオニー「……『アズカバンからの集団脱獄 魔法省の危惧——かつての死喰い人、ブラックを旗頭に結集! か?』見出しには、こうあるわね」

ハニー「っ!また、またこうやってシリウ、スナッフルを……!!!」

ハーマイオニー「ハニー、落ち着いて。今彼の名前を出すのはあんまりにも危ないわ……『魔法省は昨夜遅く、アズカバン監獄より集団脱獄があった、と発表した』」

ロン「『これら十人の魔法使い、魔女は極めて危険であり、魔法大臣コーネリウス・ファッジは既にマグルの首相にも危険勧告を通達したと語った』あぁ、そりゃ危険だろうさ。極悪だね」

ハニー「……『歴史上、唯一件の牢獄から脱獄せしめたシリウス・ブラックが外より何らかの手段をもって手引きした、と魔法省は推測しており——』あぁ、あぁ!!あなたたちの考えが正しかったことなんて、一度も……一度も!!!!!」

ハーマイオニー「落ち着いて、ハニー! 『ベラトリックス・レストレンジが彼の従姉であることからみても、ブラックを指導者として彼らは集結したと見るのが——』えぇ、そう見るしかないのでしょうね。ダンブルドアが前々から吸魂鬼がヴォルデモート側に通じている可能性を警告していた、なんて、いえるはずないもの」

ロン「『あの人』が昨日滅茶苦茶喜んだ、ってのはこれか……マーリンの……うん?」

ハニー「っ、なによ、ロン!回りくどいのは嫌いだって——」

ロン「ヒンヒン!ごめんよハニー! たださぁ……最後のこれ、こりゃなんだい?」

ロン「……『尚、アズカバン監獄最下層に収監されているある囚人二人について、これら凶悪犯罪者の手引きを配膳ボウルをぶん投げて追い払った、という根も葉もない噂は、省側はこれを否定している——』なんだそりゃ」

ハーマイオニー「死喰い人に脱獄を誘われたのに……?意味が分からないわ」

ハニー「どうだっていいわ!本当、本当に、魔法省って……!もう!!!!」

漢すぎるだろ…

ロン「こいつらが暴れたせいで、十人っきりしか脱獄できなかった、とかなのかなぁ」

ハニー「さぁ。それにしても全く呆れるわ……ここまで、来ても!『ヴォルデモートが復活した』ことについては少しも……!全部、シリウ、スナッフルのせいって論調じゃない!」

ハーマイオニー「六ヶ月以上みんなにむかってあなたやダンブルドアのことを嘘つき呼ばわりしていたのだもの……このくらいのごまかしは平気でするのよ、きっと。待って、他の面に何か書いていないか探すから……」

ロン「マーリンの髭、髭、髭さ——こんなことがあったんじゃ、そりゃみんな騒ぎもするよな」

ガヤガヤガヤガヤ

ハニー「……それでも割と、普段通りの空気に戻ってはいるけれどね。信じられないわ……あいつの陣営の、最悪の集団が今、自由になったのよ?」

ロン「さすがの僕も君の存在に感謝するくらいしか明るいことは考えられないな……それだけあれば十分すぎるくらい僕の心は照らされてるけどね」

ハニー「えぇ、そうね。精神的お日様ですもの……職員テーブルは、割と神妙だわ」


  ダンブルドア「——、————」

  マクゴナガル「——、——————!」


    アンブリッジ「…………」ズズズズズックッチャクッチャクッチャ

ロン「……オエッ、アンブリッジの捕食シーンを見ちまった。マーリンの髭……ダンブルドアとマクゴナガルが深刻に話し込んでるのを、ひどい面、違った、毒々しい面で見てるよ」

ハニー「……何か思うところがあるのかしら。スプラウト先生も——泣いて、るわ。どうして?もしかして、先生の身内に連中の被害にあった人、とか……」

ハーマイオニー「……それは、きっとここを読んでいるから、だわ。『魔法省役人、非業の死 プロデリック・ボード(49)が、昨夜、鉢植え植物に首を締め付けられ死亡しているのを、入院中の聖マンゴ病院の癒師が発見した』」

ロン「……待ってくれ、ボードって……聞き覚えがあるな」

ハーマイオニー「……ロックハートの反対側のベッドに寝ていた人よ。それに、鉢植え……私達、クリスマスに行った時にそれを……」

ハニー「……サイドテーブルに置かれたところを、見てるわ……『ストラウト癒師は、鉢植えが「ひらひら花」でなく「悪魔の罠」であることに気がつかなかった、と——』悪魔の罠……あぁ……こんなの、私、わたしたち、一年生のときに実物を見ているのに……!!!!」

ロン「ハニー、君のせいじゃない。よりによって『悪魔の罠』が鉢植えになりすましてるなんて、誰に予想できるってのさ」

ハーマイオニー「誰にも、おそらく誰にも……だから、誰かがこれを送ったんだわ。匿名で——ボードさんを、殺害するために。そんなにも魔法省で重大な役職だったのかしら……あら?珍しい、所属が書かれてない……」

ハニー「……この人は、『神秘部』の人間だわ。裁判の日、一緒に地下へのエレベーターに乗ってる!」

ロン「……思い出した。こいつ、パパが言ってた『無言者』の一人だよ、うん!もちのロンで!」

ハーマイオニー「……」

ガタンッ!!

ハニー「きゃぁ!?」

ロン「うわっ!?な、なんだよ!いきなり立ち上がるなよ!新聞放り投げて!かぼちゃジュースがぶっとんでネビルに頭からかかっちまってるじゃないか!!」

ネビル「——気にしないでよ、ロン!僕、強い男になるんだ!って、きめたんだ!!!」ポタポタポタポタ

ハニー「……物理的な意味合いだとは思っていなかったわ、ネビル」

ハーマイオニー「ご、ごめんなさネビル……私、手紙を出してくる!」

ロン「どこにさ?『悪魔の罠を撲滅させ不幸な事件をこれ以上起こさせない協会』とかなら協力しないこともないよ」

ネビル「だ、ダメだよ!あれは悪用したら大変だけど、貴重なものなんだよ!?」

ハーマイオニー「そういうのじゃないの……うーん、うまくいくかは分からないわ。でも、やってみる価値はあると思う。それに、私にしか出来ないこと」

ハニー「……回りくどい言葉は嫌いだけれど。あなたがやることなら、信じるわ。ハーマイオニー」

ハーマイオニー「ありがとう。いずれ、あなたにも協力してもらうことになるけど……それじゃ、またあとで!」

ロン「……まーたこれだ。一体何をやろうとしてるのか、僕らに一度くら教えてくれたっていいじゃないか。あんなに出し惜しみしなくたってさ。マーリンの髭」

ハニー「ハーマイオニーは、確証がないことや根拠のない提案をしたがらないのよ。待ちましょう、きっと正しいことだもの」

ロン「そんなものかな、うん、君が言うならそうなんだろうけどさ。授業行こうか。ネビル、一緒するかい?」

ネビル「寮に一旦戻って、着替えてからにするよ……カボチャになった気分だもの。あぁハニー!またすぐにね!ヒンヒン!」

ハニー「えぇ、ネビル……すっかり元気になって、よかったわ。無理をしているようにも見えないし」

ロン「やっぱり漢だよなぁ、ネビルのやつ。腰につけたほら貝が様になってるよ、うん」

ハニー「えぇ、そうね。私の豚なれば当然でしょうけれど」

ギィィッ

玄関ホール

ハニー「あら、豚の噂をすれば。ハァイ、ハグリッド!」

ハグリッド「おーいてて……ハニー!ヒンヒン!よぉ、よぉ!元気か……いててっ」

ロン「少なくとも君よりはね。ハニーは常にだけど……おいおいハグリッド、まーた傷が増えてるんじゃないか?」

ハニー「……ハグリッド。本当に、大丈夫なのよね?」

ハグリッド「で、でぇじょうぶだ!うん!これぁあれだ、その、火トカゲの世話に戸惑ってよぉ!」

ロン「へぇ。そんで、君にそんな怪我を負わせる火トカゲって体長何メートルだってのさ。それってもはやドラゴンって呼んでいいんじゃないかな。マーリンの……」

ハグリッド「た、体長?あー、6メートルくれぇか……?」

ハニー「……」

ロン「……おいハグリッド。まさかマジでまたドラゴンを」

ハグリッド「ち、ちげぇ!ちげぇちげぇ!ドラゴンじゃねぇ!ドラゴンじゃ、うん!!ほんとだ!ハニーに誓う!ヒンヒン!」

ロン「そんならいいけどさ……ハニーへの誓いは豚にとって何よりの宣言だし。ハニーは女神だし」

ハグリッド「あぁ、反するくらいならポークチョップにされる方を選ぶなぁ。ハニーは女神だなぁ」

ハニー「改めて言われなくても分かっているわ。変わりない、って。信じるわよ、ハグリッド?」

ハグリッド「あぁ、そうしちょくれ。ちょーっと今は忙しくってな。授業のことやら、なんやら。さっき言った火トカゲの鱗が腐っちまって。あとそれに、あぁ。あー——停職になった」

ロン「そっか、そりゃ大変——はぁあ!?て、てい、停職だって!?」

ハニー「っ、ハグリッド!どうして、そんな——!」

ハグリッド「あぁ、あのなぁ、ほんと言うとこんなことになるんじゃねぇかって思ってたんだ。お前さんたちには分からなかったかもしんねぇが、あの査察は上手くいってなくってよ……うーん、新種ってのは中々心を開かねぇもんなんだ、うん」

ロン「開かれたくもないけどさあのババアカエルには……」

ハニー「……落ち込んでない、なんて言い訳いらないわよ、ハグリッド。あなた、だって……この授業が」

ハグリッド「あぁ、ありがとうよハニー。うん、俺ぁこの教科教えるのが好きだからよぉ。停職くれぇで凹んでられねぇんだ、うん……まぁ、先生でなくなっても。森番は、俺にしか勤まらなかろうが?え?」

ロン「そりゃぁね。そうでなきゃだーれが奇妙奇天烈なあの森の奴らとオトモダチになれるってのさ。マーリンの髭」

ハニー「バカ言わないで。先生だってあなたでないと認めないわよ、ハグリッド。私の出来る豚でしょ、あなたは。いい?」

ハグリッド「ヒンヒン! そんじゃ、停職明けても残ってられるようしっかり授業の準備をしねぇとな……じゃあな。またお茶に来てくれよ!あぁハニー!俺がお前さんとこに駆けつけるべきなのに悪い!ヒンヒン!」

ズンッ、ズンッ、ズンッ

ロン「……でっかい背中に、哀愁が漂ってるなぁ」

ハニー「……一体どれだけ悪いニュースが入ってくればいいのかしら。次はなぁに?」

ロン「なんだろうね……ドラゴミール・グルゴビッチがキャノンズに移籍するとか?ハッハ、それこそ悪夢なマー髭だけど」

×ドラゴミール・グルゴビッチがキャノンズに移籍するとか?
○あれだけ無い金を積んでキャノンズが獲得したドラゴミール・グルゴビッチがリーグで使い物にならなかった、とか?
マーリンの髭!

新種はむずいからなぁ…

数日後

温室

ヒソヒソヒソ

スプラウト「作業に集中なさい!さっ、植え替えを!しっかり、丁寧に!平気ですよ、『キーキースナップ』は、っ、危険な植物じゃありませんからね!!!!」


スーザン「私、いとこの一家があの十人の中の一人に殺されてるの……みんなに指差されたりヒソヒソされる気持ち、やっと分かったわ。あぁ、とっても嫌!よく耐えられたわね、あなた!」

ハニー「いつものことだもの、時期に過ぎてしまうわ。それに——私に向けられる方の視線は、なんだか変わっているようだものね」

ヒソヒソヒソヒソ コソコソコソコソ

シェーマス「……」

ハーマイオニー「敵意というより、好奇心に変わった、そんなところ?」

ハニー「えぇ。嫌な感じ、ではないわね」

ハーマイオニー「まぁ、予想できたことだわ。魔法省の主張が段々無理があることに、みんな気づいているのよ」

アーニー「シリウス・ブラックが恐ろしい人だというのは知っている、だけど彼個人の力だけでアズカバン監獄から十人も脱獄の手引きをするんて、どうやったって無理がある、そういうことだね?」

ハーマイオニー「そう。『予言者』の話では満足できない。そして、ダンブルドアとハニーが夏から訴えてきたことを、ここに来て見直そうとするの」

ロン「現金な奴らだよな。僕ら豚ときたらいつだってハニーの味方だったってのに。もちの僕なことだけど」

ジャスティン「当然さ。あと、先生たちの様子の変化もみんなが『何かあるんだ』って判断する材料にはなってると、僕は思う」

ハニー「廊下で二、三人で集まって、深刻な顔で話していれば。否応無く目立つというものだわ」

ハーマイオニー「職員室では気軽に喋れないんでしょ、あの女カエルがいるんだもの」

ロン「かと言って、僕らになーんにも教えてくれるわけじゃなさそうなのが困りものだよな。ほら、あれのせいで。なんだっけ?第何条になったんだったかな」

ハーマイオニー「『教育令第二十六号 教師は自分が給与を受けている科目に厳密に関係すること以外は、生徒に対し、一切の情報を与えることを禁ずる』ね」

アーニー「こんな文言は馬鹿げているよ!だってこれじゃ、先生方は僕らに指導一つできないじゃないか!」

ロン「あぁ、そう言って僕らの寮のリー・ジョーダンがあのババァカエルに食って掛かったんだってさ」

スーザン「どうなったの?」

ロン「お婿にいけない、って」

ハーマイオニー「冗談にならない冗談やめなさい。手の甲をひどく出血してたから、マートラップの回復薬を教えてあげたわ」

ハニー「私は太ももで、男の子には手の甲……汚い人だわ、ほんと」

アーニー「横暴だよ、本当に!あんな女が教師としてここにいる、なんて!」

ハンナ「そうよ、そうよ!あんなことがあったのだから、少しは恥じ入って大人しくなればいいのに!」

ハーマイオニー「むしろ逆、なのでしょうね。愛しのファッジの鼻先のアズカバンであんなことをされた以上、ホグワーツの方はなんとしてでも省の統制下に置いてやる、って」

ロン「張り切って膨らんで破裂しちまえばいいのにな……ハグリッドとトレローニーの授業じゃ毎回あのババァカエルがいやがるしね」

シェーマス「どちらを先に首切るか、品定めしてるのかな」

ハニー「そんなことさせないわ」

ロン「そうだぞシェーマス!ハグリッドは同胞だろ!ヒンヒン!」

シェーマス「!ごめんなさいハニー!ヒンヒン!」

ハニー「私はいいわ……でも、本当にあの女……私からクィディッチ、それに、シリウ、スナッフルとの手紙、今度は……大事な豚まで取り上げようというんだから、我慢ならないわ」

ハーマイオニー「ハグリッドの職の方は、私と一緒に立てた計画通りの授業を上手く進めてくれれば……上手く、えぇ、いけば」

ロン「……ちょーっと難しいかもな。ハグリッドの奴、最近、アンブリッジに対して傍から見ればバカにしてるとしか思えない『ゲコゲコ!ウキーッ!ゲコゲコ!』って謎の言葉で喋りかけてるもんな」

ハーマイオニー「……大真面目なのよ、本人は」

ハニー「……私があの女にできる最大の反抗は、DAね」

アーニー「今日もあるんですよね、ハニー!ヒンヒン!」

スーザン「私、今まで以上に頑張るわ! おばさんたちの、ためにも!」

ハニー「えぇ、ふふっ。そうして頂戴」

ハグリッドの優しさに涙



もういっそシリウスって言っちまったほうがもどかしさが消えるww

放課後

必要の部屋

ハニー「……みんな、本当に上達してきたわね」

ハーマイオニー「ええ、それに、アーニーやスーザンだけじゃない。死喰い人の事件で、DA全体に活が入ったみたい」

ロン「あのザガリーでさえ文句言わずこなしてんだもんな。こりゃザガリアスって呼んでやる日も近いよ、うん」


ザガリアス「うるっさいな!!普通に呼べよ!っ、『ステューピ——うわぁ!?」

ネビル「『プロテゴ!』……やった!」

ジニー「! 凄いわ、ネビル!『盾の呪文』、成功じゃない!」

マイケル「今の、よく退かなかったなぁ……呪いが直撃するところだったんだぜ?いっくら練習とはいえ、凄いね」

ネビル「あ、あはは。負けるもんか、って……えっと、ざ、ザガリー、大丈夫かい?」

フレッド「おぉっとネビル、僕に任せなっ!『エネルベーコン』……おぉっとしまったぁ、間違えたー」

ジョージ「うわぁ、ザガリーの口から山ほどのベーコンがーっ。悪いな、相棒もわざとじゃないんだぜ」

ザガリー「モガモガモガモガ……」


ロン「ネビルの上達っぷりったらないね。まだ誰も『盾』作るのは成功してないってのに。ハーマイオニー以外」

ハーマイオニー「集中の仕方が他の人とは段違いだわ、ネビル……そこの双子も見習いなさい!!!『盾』そのものぶつけてやるわよ!?」

ハニー「……私も、『閉心術』の方でネビルの進歩具合を見習いたいところ、だわ」

深夜

談話室

ロン「お帰りハニー!僕のハニー!ヒンヒ、おっと!あぁ、疲れたんだね!そりゃあのベタベタクソ野郎スネイプと二人だもんな!うん!もっと深く腰掛けなよ!何せ僕ぁ君のクッションだし!」

ハニー「えぇ、そうしてあげるわ……本当に、疲れて……傷も痛むし。もう!」

ハーマイオニー「ここの所、よく痛むみたいね……あー、きっと、病気の場合とおんなじなのよ。病気はいったん悪くなってから、良くなるの。きっと、それと……」

ハニー「スネイプとの練習のせいよ。そうに、違いないわ……前は傷むのは時々、それも夜だけだったのに。それに、ついなんだかイライラしたり……っ!」

ロン「痛い!ありがとう!ヒンヒン! あぁ、大丈夫だよハニー。心からの謝罪は君の心から読み取ってるからね。『開心術』?なんだいそりゃ。豚として当然のことだよ、だって僕って君の一番の豚だからね」

ハニー「……ありがとう。それに……つい楽しくなって……ハーマイオニーを物陰につれていきたくなるんだもの」

ハーマイオニー「それって結構日常だったわよね……いいえ、その、嫌と言ってるわけじゃ。むしろ嬉し、いいえ、あの」

ロン「どうぞ」

ハーマイオニー「そういう話をしてるのではないの! ハニー、きっと正しく『閉心術』を身につければそういう揺らぎもなくなっていくのよ。あなた、もう少し一生懸命にならなくっちゃ」

ハニー「あら、誰に物を言ってるのかしら? 私はいつだって、全力だわ」

ハーマイオニー「どうかしら。あなたきっと、夢の中の『神秘部の扉』を開いてしまいたい、そう思っていたりするんじゃない?ちがう?」

ハニー「……」

ロン「おい、何を根拠にハニーにそんなこと言ってんのさ。マーリンの髭」

ハーマイオニー「あなたもさっき言ったでしょ。『開心術』なんて大層なもの知らなくても、分かるものは分かるわ……だ、大事な人の事ならいつだ、って、きゃぁ!?」

ハニー「えぇ、そうね。私の、わたしの大事な人。ハーマイオニー?そう言ってくれるなら、話は早いわ……?」

ハーマイオニー「あっ、だか、だから今そんな話をしてるんじゃ、あっ、えぇ、それはもう……私にとってのあなた、は、『神秘部』の中の物くらい、大事ではある、けど……」

ロン「つづけて! どうぞ!」

ハーマイオニー「ふーっ、ふーっ、は、話を、大事な、そう、本当に大事な方に、戻してもらうわよ!」

ハニー「えぇ、どうぞ。私は十分元気を取り戻させてもらったもの」

ロン「僕も僕も」

ハーマイオニー「うるさいわ、全力で。ダンブルドアは、ハニー。あなたに『扉』の夢なんて見て欲しくないのよ。だからスネイプに授業を頼んでいるのに……あなたが真面目に受けないなんて」

ハニー「……それは、豚のお願いは聞いてあげるのが私の主義、だけれど。でも、あなただってやってみればいいわ!スネイプが、私の頭の中に入ろうとしてくるのよ!?私、わたしやあなたたちとの思い出を勝手に覗き見ようとするのよ!?」

ロン「屠殺してやりたいなぁ」

ハーマイオニー「少なくとも再起不能にはしたいわね」

ハニー「……そこまで真剣に考えなくてもいいけれど。あの訓練が楽しくてしょうがない、とは思えない。そうでしょ?」

ハーマイオニー「……それでも、ダンブルドアが——」

ロン「うーん、でもさ。ハーマイオニー。もしかしたら」

ハーマイオニー「もしかしたら、なんだと言うの? 回りくどい言い方はハニーに嫌われても知らないわ!」

ロン「喰ってかかるなよ言うよ!マーリンの髭! ハニーが心を閉じられないのは、ハニーのせいじゃないかもしれないじゃないか。スネイプが、ハニーの心をわざと弱らせてるとしたら?」

ハーマイオニー「……また、いつものお決まりの?」

ロン「あぁ、スネイプ黒幕説!さ!もちのロンで」

ハーマイオニー「あのねぇ……一体全体何十回、スネイプに疑いをかければ気がすむの?」

ロン「だって、今回は本当に好都合じゃないか。ハニーの心を閉じさせる役目を逆手にとって、『例のあの人』を受け入れやすくするためにわざと——」

ハーマイオニー「そう疑って一度でも正しかったことがあるの?スネイプは騎士団、あー、豚団のために働いてるじゃない」

ロン「どうだかね。あいつ、死喰い人だったんだぜ?」

ハニー「……っふふ、ふっ、っ」

ハーマイオニー「ハニー、突然笑い出さないで。えぇ、きっとヴォルデモートのせいなんでしょうけど、今のはタイミング的にもややこしいわ」

ロン「ほらみろ! それに、スネイプが完全にこっちの味方だなんて証拠はどこにもないぜ?」

ハーマイオニー「ダンブルドアが信用してるわ。それに、私達にとってダンブルドアが信じられないなら、あとはハニーの言うこと以外何も信じられないじゃない。違う?」

ロン「……マーリンの髭」

ハーマイオニー「反論の余地無し、と受け取るわ。ねぇハニー、あなたも納得してくれた?」

ハニー「……最近の、腹黒豚は気に食わないことばかりだけれど……えぇ、そうね。そうしてあげるわ」

ハーマイオニー「ありがとう。さっ、一月はあっという間よ。宿題もこなさなくっちゃいけないし、DAの今後、それにロンは——」

ロン「クィディッチのヘボさをなんとかしろってんだろ、言われなくってもわかってるさ。フレッジョに脅されてるからな」

ハーマイオニー「そういうことじゃ……あー、あの。二月の中頃にはホグズミート休暇もあるじゃない?ハニーは用事が入ったようだし、あなたが暇なら、あー」

ロン「お生憎、その頃はクィディッチシーズンだから休暇返上で練習で……おい、おい!なんだよ!なんで怒るんだよ、おい!その分厚い本をおろせよ、ちが、僕の頭の上って意味じゃ——!!!」


ハニー「……二月、ホグズミート……あぁ、考える事がたくさんあるって、いうのに。そうだったわ」

ハニー「……チョウ」

今回はここまで
次回は出来れば明日昼以降、遅くとも木曜
じゃあの!

再開

二月十四日

大広間

ハニー「……」

ロン「あぁハニー!今日も君は登った朝日レベルで変わらないステキ具合だね!ヒンヒン!」

ハニー「えぇ、そうね。悠久と言えると思うけれど……」

ロン「あー、でもちょっと今日はすこーしだけ違ってるかもな、うん。なんせなんだかソワソワして、スプーンに写った自分の髪何度もおさえつk痛い!ありがとう!」

ハニー「バカを言わないで、この私が身だしなみを整えないうちに豚の前に現れると思っているの?これは、そうよ。あー、スプーンの汚れが気になっただけ」

ハーマイオニー「奴隷労働されている屋敷しもべ妖精が卒倒するからやめて。そうね、気になるのでしょうとも……チョウと出かけるんでしょう?」

ロン「おいおいハーマイオニー、不機嫌になるのはなしだぜ。なんだよ君はここんとこいつにも増してカリカリと……おっ?」

ケェーーケェーー
 バタバタバタバタッ
キュイーーーッ、キュッキュキューーーイッ ホーホーフォーイ

ハニー「ふくろう便ね。白豚……は、いない、わね」

ハーマイオニー「? 手紙でも出していたの、ハニー?」

ハニー「……いいえ。期待したわけではなかったけれど……あら?あなたに、みたいよ。ハーマイオニー」

モリフクロウ「ホーォゥ」

ハーマイオニー「! やっときたのね! もしも今日来なかったら殺虫剤を送りつけてやるところで……はいはい、ありがとう。ベーコンをどうぞ」

ロン「……ハッハーン、そうか。こんな日だもんな、愛しのビッキーから贈り物かい?え?」

ハーマイオニー「そ、そんなんじゃないわ……あなた今日が何の日か知って……」

ロン「ハニー記念日だろ?年中無休だけど」

ハーマイオニー「……」

ハニー「ロン」

ロン「ヒンヒン!なんだいハニー!」

ハニー「あそこ。マイケルがジニーから、何か受け取っているわね……?」

ロン「ペッッペッッ!!ペッ!!!マーリンのひペッ!!うぇー、顔中蝙蝠のクソだらけだ!」

ハーマイオニー「まごうことなく自業自得よ……ふんふん、ふん」

ハニー「手紙、随分と短いみたいね……それだけじゃ、挨拶も書ききらないんじゃない?違う?」

ロン「あぁハニー、そりゃ君がハーマイオニーやスナッフルに送るのと一緒にしちゃ、いや、うん、君こそが全てにおいてワールドワイドにスタンダードなんだけどね。もちのロンで」

ハニー「えぇ、そうね。あらゆる基準は私に合わせるべきだわ」

ロン「君が起きたら朝ってことにしよう、豚時間だ」

ハーマイオニー「またそうやってあるんだか無いんだか分からないものを……うんうん、いいわ。観念したみたいね」

ハニー「満足そうな顔ね、ハーマイオニー。なぁに?誰からなの?」

ハーマイオニー「あー、あなたもすぐに分かるわ。ねぇハニー。今日お昼頃、『三本の箒』で会えないかしら……あっ」

ハニー「……」

ロン「……おいハーマイオニー、話が違うぜ。優しいハニーが君からおお願いを無下に出来るわけないだろ」

ハーマイオニー「ち、ちがっ、私別にハニーとその、チョウを邪魔しようとしたわけじゃないの!ほんとよ!あー、打診した日程にあちらが返事を、だから、その……」

ハニー「あー、ハーマイオニー。流石に先約だったから、断るわけにはいかないわ……その代わり、今夜たっぷり……ね?」

ハーマイオニー「あっ、えぇ、チョコを用意し——そうじゃなくって!!!!お昼からでいいの!それに、チョウも連れて来てかまわないわ!私も一人ではないもの!」

ロン「手紙の相手でも来るのかい?  おいおい、ビッキーのやろ、リーグ中だってのに何してんのさ」

ハーマイオニー「彼じゃないったら! それじゃ、私お先に。急いで返事を出さないと——は、ハニー。楽しんできてね」

ハニー「……そうなったらいいのだけれど」

ハーマイオニー「なるに決まってるわ、えぇ、それはもう——それはもう!」

ロン「ハーマイオニー、ハーマイオニー。握った拳それ以上絞めない方がいいよ。ネビルがとばっちりが飛んでこないかビクビクしてるからさ」

ロン「ペッッペッッ!!ペッ!!!マーリンのひペッ!!うぇー、顔中蝙蝠のクソだらけだ!」

ハーマイオニー「まごうことなく自業自得よ……ふんふん、ふん」

ハニー「手紙、随分と短いみたいね……それだけじゃ、挨拶も書ききらないんじゃない?違う?」

ロン「あぁハニー、そりゃ君がハーマイオニーやスナッフルに送るのと一緒にしちゃ、いや、うん、君こそが全てにおいてワールドワイドにスタンダードなんだけどね。もちのロンで」

ハニー「えぇ、そうね。あらゆる基準は私に合わせるべきだわ」

ロン「君が起きたら朝ってことにしよう、豚時間だ」

ハーマイオニー「またそうやってあるんだか無いんだか分からないものを……うんうん、いいわ。観念したみたいね」

ハニー「満足そうな顔ね、ハーマイオニー。なぁに?誰からなの?」

ハーマイオニー「あー、あなたもすぐに分かるわ。ねぇハニー。今日お昼頃、『三本の箒』で会えないかしら……あっ」

ハニー「……」

ロン「……おいハーマイオニー、話が違うぜ。優しいハニーが君からおお願いを無下に出来るわけないだろ」

ハーマイオニー「ち、ちがっ、私別にハニーとその、チョウを邪魔しようとしたわけじゃないの!ほんとよ!あー、打診した日程にあちらが返事を、だから、その……」

ハニー「あー、ハーマイオニー。流石に先約だったから、断るわけにはいかないわ……その代わり、今夜たっぷり……ね?」

ハーマイオニー「あっ、えぇ、チョコを用意し——そうじゃなくって!!!!お昼からでいいの!それに、チョウも連れて来てかまわないわ!私も一人ではないもの!」

ロン「手紙の相手でも来るのかい?  おいおい、ビッキーのやろ、リーグ中だってのに何してんのさ」

ハーマイオニー「彼じゃないったら! それじゃ、私お先に。急いで返事を出さないと——は、ハニー。楽しんできてね」

ハニー「……そうなったらいいのだけれど」

ハーマイオニー「なるに決まってるわ、えぇ、それはもう——それはもう!」

ロン「ハーマイオニー、ハーマイオニー。握った拳それ以上絞めない方がいいよ。ネビルがとばっちりが飛んでこないかビクビクしてるからさ」

ロン「行っちまった。なんなんだか、マーリンの髭」

ハニー「……この私に教えないなんて、もう。誰からなのかしら、あの手紙」

ロン「本命、ビッキー。次点で、授業計画を練り直したいハグリッド。それとも、そうだな。君に会わせるためにご両親、これかな」

ハニー「それは、そうね。いつかゆっくり話さないと、とは思うのだけれど」

ロン「僕はあんまりそうしたくないなぁ。パパがマシンガントークで話電(フェリトン)について聞きまくる姿が見えるよ」

ハニー「電話(テレフォン)よ、ロン。それに、あなたはいずれ絶対にそうなると思うわ。そうさせてあげるもの、この私が」

ロン「よくわかんないけど君が言うなら真理だね!ヒンヒン!」

ハニー「えぇ、大宇宙のね……あなたは今から、クィディッチの?」

ロン「うん、一日中練習だ。それでどうなるとは思えないけど……フレッジョの代わりのスローパーとカークったらないよ。ブラッジャーより自分達の頭を叩いてる方が多いかもしれない」

ハニー「それなら尚の事練習をしっかりしないといけない、そうでしょ?」

ロン「ヒンヒン!そうだねハニー! あー 僕も、人の事をとやかく言えないヘボっぷりだしね……」

ハニー「ロン。私の豚が、今、私の豚になんて勝手な評価をしたのかしら?」

ロン「ヒンヒン!君の豚としてしっかり励んでくるよハニー! それじゃ、ここでごめんよ。チョウによろしく」

ハニー「……えぇ。ヨロシクしてくるわ」

ロン「あぁ、うん。並んで歩く姿を拝みたかったなぁ……コリンに後で焼き増したのまなきゃ。マーリンの髭」

玄関ホール

ガヤガヤガヤガヤ
 ザワザワザワザワ

ハニー「……新学期最初のホグズミート休暇だから、凄い人の群れね……豚の群れ、でないのが残念だけれど」

ハニー「さて、チョウは……あっ」

チョウ「……! ハニー!」

ハニー「……飛び跳ねて、手を振ってるわ……ただでさえ目立ってるのに、もう」

ハニー「ハァイ、チョウ。遅くなってごめんなさい」

チョウ「いいえ、私も今来たの。髪が中々決まらなくって。あなたは?」

ハニー「私? 私は、いつだって決まりきっているわ」

チョウ「ふふっ、そうよね。それじゃ——行こっか!」

ハニー「っ。えぇ」

ザワザワザワ……ザワザワザワザワザワザワ!!!

ディーン「!? は、ハニーとチョウが!連れ立ってる!?!?」

ネビル「!? れ、歴史的瞬間だ!すごい!獅子と鷲の……みんなに報せなきゃ! スーーーーッ」

ブォオオオオオオオオオオオオッ!!!ブォオオオオオオオオヒーーーーーン
  ヒンヒン!?ヒーーーーーン!?
ドタバタドタバタドタドタ

チョウ「? なんだか、一層騒がしくなっちゃったわね。さっ、ハニー」

ハニー「あー、そうね。私の豚が……手?」

チョウ「繋いでほしいな……ダメ?」

ハニー「……そうしてあげる、って、言わせているようなものじゃない?」

チョウ「……えぇ、あなたは優しいものねっ!」


ザワザワザワザワザワザワガヤガヤガヤヒンヒンヒーーン

校庭

チョウ「あら、クィディッチ競技場。今日はグリフィンが使ってるのね……ハニー?飛べなくて寂しい?」

ハニー「……物足りない、とは思うわ。一年生からずっと、飛んでいたんだもの」

チョウ「あぁ、そっか。最年少シーカーさんだったんだものね……私達が最初に対戦したときのこと、覚えてる?」

ハニー「私は三年生だったわ……あなた、私の後ろにピッタリついていたもの。忘れようがないわね」

チョウ「ふふっ、中々だったでしょう? 今は、あなたの真横に」

ギュッ

チョウ「ピッタリつかせて、もらっているけど。ふふっ」

ハニー「……追いかけるスニッチは、なんなのかしらね」

チョウ「さぁ、きっとホグズミートで見つかるわ。ねぇ、クィディッチと言えばワールドカップでも——」

ハニー「あぁ、あの変態紳士がまだ良い選手だと思っていた頃、ね」

チョウ「?」

ハニー「こっちの話」

ホグズミート

チョウ「——ウロンスキー・フェイント、あなたみたいな優秀すぎるシーカーがいる中じゃ、活用しづらいでしょうけど、凄かったわね!」

ハニー「私がいればフェイントをかける局面にはならなものね、えぇ——」

ハニー「(思っていたよりも、ずっとずっと普通に喋れるわ……)」

ハニー「(クリスマスの、あの時のように……泣き出したりするんじゃ、って。不安に思って損して……)」

ハニー「誰が不安よ、誰が」

チョウ「?」

ハニー「……なんでも。あー、不安と言えば、そうね。私達のチームの——」


  パンジー「うわぁー、あれ見て。ポッターと、チョウだわ」

 ヒソヒソヒソヒソ

ハニー「……」

チョウ「……」


  パンジー「あーんなにハンサムなセドリックと付き合ってたのに、チョウってそういう趣味があったのねー」

  スリザリン女生徒1「やだー」

  スリザリン女生徒2「きしょくわるーい」

  スリザリン女生徒3「わくわくs——ありえなーい」


ハニー「……ちょっと待っていてくれるかしら。いいえ、杖なんて使わないわ。あの童貞教師以外にもたまには」

チョウ「ま、待って。いいのよ、いいの。 せっかく、あなたとの楽しい時間なんだもの。ねっ?」

ハニー「……チョウが、それでいいなら」

チョウ「うん。手は離さないで……そのまま」

ハニー「……」

チョウ「……」

ハニー「……あー、そうね。えっと……一昨年までキャプだった、ウッドなんだけれど。今——」

ハニー「(クィディッチの話題しか出てこないの!?わたし!!!)」

チョウ「あの、ハニー。ゆっくりお話したいから——マダム・パディフットのお店に、行かない?」

マダム・パディフットのお店

『♥ ♥ ♥ カップル限定♥ ♥ ♥  バレンタイン♥デーおめでとう♥ ♥ ♥ 』

ハニー「……流石、バレンタインね。いつもピンクの外装で目だっているけれど……ハートの紙ふぶきが舞ってるわ。いつかのあの似非イケメンがやったみたいに」

チョウ「えぇ、でもばら撒いてるのが金色のキューピッドだし、とっても——ムードがあるわ。ね?」

ハニー「……そうね。あー……何度か、来たことが?」

チョウ「えぇ、チームの人とか。ここ、一人じゃ入れないでしょう?雰囲気が気に入ってるし、一緒してもらうの」

ハニー「……その後、またその人とは?」

チョウ「? いいえ、何度も誘うのは悪いでしょう? 付き合ってるのでも、ないんだし」

ハニー「罪深いわね、天然って。正直なのはいいけれど」

チョウ「? あなたの方は……?」

ハニー「入るのは、初めてだわ。結局ね」

チョウ「……そう、来たい相手、いたのね」

ハニー「あー……まぁ、えぇ」

チョウ「……」

ハニー「えぇっと、あなたは何を?コーヒーでいいかしら」

チョウ「……えぇっ!あっ、お勧めはね……!」

ハニー「……あぁ、でも。そうだったわ……お昼は『三本の箒』に行きたいの。だから、軽いものがいいのだけれど」

チョウ「えっ、あー、分かったわ。でも……『三本の箒』?」

ハニー「そうなの。あなたも、一緒に来てくれる? ハーマイオニーと、そこで待ち合わせているの……あっ」

チョウ「……ふーーーーーん?」

ハニー「……あー」

チョウ「……私とのデート、って約束をしていたのに……その後、ハーマイオニー・グレンジャーと?」

ハニー「そういうことじゃないの。そう、あの子がどうしてもって……あなたも一緒でもいいから、って、あー」

チョウ「そう、それはご親切に……っ、それなら私も、あそこで女の子とナニかしてるロジャー・デイビースのお誘いを受けておけばよかった、かな」


 ロジャー「んっ……んんっ!?ぷはっ!?ちょ、ちょっとチョ——あいたっ!!!!!」
 ブロンド女生徒「さいっっってーーーーーー!!!」


ハニー「っ、私のは、私のはそういうことじゃ、ないわ!ハーマイオニーが、何か真剣にお願いしていたから——」

チョウ「えぇ、あなたと日頃とっても仲が良い、あの子……そういうことじゃない?そういうこと、でしょ? 私も——前なら、喜んで一緒したかもしれないわ。だけど」

ハニー「それ、どういう——」

チョウ「……セドリックとここに来たことがあるわ」

ハニー「っ」

チョウ「……あなたで二回目よ。ここで——他の人の名前をだされたの」

ハニー「……どういう」


チョウ「セドリックは私と、ここで——あなたの話ばかりしていたのよ。ハニー」

ハニー「……あっ」

チョウ「……ねぇ、セドリックは」

ハニー「……」

チョウ「セドリックは、あなたと……あなたと一緒にいた時、何か一言でも、私の話をした?私に、言葉を残してくれた?」

ハニー「……それは……そんな、彼が死んだかのように言わないで。だって……」

チョウ「それでも、覚悟していたはずでしょう?……やっぱり、やっぱり、私のことなんて一度も。意識してくれなかったのね」

ハニー「……」

チョウ「知ってたわ。知ってた……彼の気持ちが私に少しも、って。分かってたつもりだわ、えぇ」

ハニー「……ねぇ、やめましょう。せっかくの、って。さっきあなたが言ったばかりじゃない……セドリックの、話は」

チョウ「でもね——あなたから、何か——私にセドリックのことを話してくれてもいいのに、あなたは——あなたは、誰にも、なにも!!」

ハニー「あの夜のことは、私、わたし、もう話したわ。ロンや、ハーマイオニーに——」

チョウ「えぇ、あなたも!あなただって——少しも、私のこと、なんて」

ハニー「……違うの、チョウ。ちがう……」

チョウ「私……あなたが、憎いわ。ハニー」

ハニー「っ! …………っ、そう、よね」

チョウ「……」

ハニー「……当然だわ。あなたにとって」

チョウ「憎いわ……憎んで、いたかった。……」

チョウ「でも……できない」

ハニー「……え?」

チョウ「セドリックのことを、忘れたわけじゃない……それでも——あなたを——あぁ、私……わたし、きめたのに」

ハニー「……」

チョウ「あなたを、憎んでるわ、って!!言い放ってセドリックのこと、問い詰めたかった……でも」

チョウ「あなたのことなんてもう、って、冬中考えぬいたのに」

チョウ「ここで、期待をもたせて……あなたにセドリックのことを思い出させてやろうって、そう、思ってた、のに……」

チョウ「あなたがあの子の名前を出したとたん、私……あなたのことなんて、って、思ってた、はずなのに」

ハニー「……」

チョウ「嫌いに……なれない……どうして……」

ハニー「……チョ——」

チョウ「触らないで!!!」

ハニー「っ」

チョウ「優しく、しないで——出て行って、行ってよ! あなたが、行かないなら……私が、私が出て行くわ」

ガタンッ

カランカランカランッ……

ハニー「……」

シーン……

マダム・パディフット「……ブランデーは入れる?お嬢さん」

ハニー「……目一杯お願いするわ、マダム」

ハニー「……」

ハニー「(みんな、いつか気づく)」

ハニー「(時がくれば、目が覚めれば)」

ハニー「(……なんて)」

ハニー「(リーマスたちでも、間違う事があるんだわ。いつか、じゃ遅いの)」

ハニー「(何も知らない人たちが——何も知らないまま悩んでる)」

ハニー「(私の事を——好きだ、って。泣きながら、言ってくれた人が)」

ハニー「(自分を殺して、自分を痛めつけて、悩んでる)」

ハニー「(なのに……全部知ってる私が。自分が辛いからって、話したくないから、って。黙ってる、なんて)」

ハニー「そんなの……わたしらしくない」

ハニー「わたしは、わたしのしたいようにしてる——わたしは、みんなみんな、全部全部、救いたい」

ハニー「わたしだけが辛いことから逃げて……待ってるなんて、やよ」


ハニー「……だから」






『三本の箒』

ハニー「全部話すわ、あの夜のこと」

リータ「素敵ざんす、素敵ざーーーーんす!さぁハニー!すーべて話しておくんなまし!わたくしがセーーンセーショナルなすんばらしぃー記事にしてあげるざーーーーーーんす!!!」

ハーマイオニー「少しでも脚色したらその口に殺虫剤を『出現』させるわよ、リータ・スキーター!」

ルーナ「うん。パパの雑誌、嘘はいけないもン!」

ハニー「まさかハーマイオニーが、私が今日思いつくことと全く同じことを考えていたなんて……ふふっ。ねぇ、ハーマイオニー。私、ちょっと色々あって水分が足りないのだけれど。あなたの、飲ませてくれる……?」

ハーマイオニー「偶然だけど光栄だわ……ちょ、っと、そんなハニー、ここ、『三本の箒』にどれだけ人目があると、あ——」

リータ「シャーラップガァァルズ!!さっさとインタビューに移らせてほしいざんす!」

ハーマイオニー「……このコガネ——」

ハニー「後にしましょう、後に。でも、意外ね。あなたこういうの、鼻息荒くメモをとると思ってたのに」

リータ「ハニー、あーなたのプライバシーに触れる事は一切書くな、と言われてるのよ。そこのミス・優等生にね。それに、前回のことでよーくわかったざんす。『週間魔女』の定期購読者は9割以上女性、女性が食いつくのは百合よりもむs」

ハーマイオニー「あなたの汚れた仕事については一切聞きたくないわ。それに、今回記事を下ろすのは『ザ・クィブラー』よ」

ハニー「……いいの、ルーナ?あなたのお父様が出版してる雑誌……今の世の中じゃ、私の記事なんて載せたら」

ルーナ「言ったと思うんだけどな。パパも、あたしも。あんたのこと支持してるって。パパは喜んで載せるってさ」

ハニー「……」

ルーナ「でも、いつになるか約束はできない、って。次の号は『しわしわ角スノーカック』のとっても有力な目撃情報総特集だから、その次の号までまでもちこしかも。だってそれって、とっても大事なことだもン!」

ハニー「……えぇ、ふふっ。そうね」

リータ「見出しはこう!『ハニー・ポッターついに語る!』小見出しで『「名前を呼んではいけないあの人」の真相——私がその人の復活をみた夜』なーんて、どうざんしょ!」

ハーマイオニー「えぇ、とびきり派手にやってちょうだい。あなたの得意分野でしょう?」

ハニー「……取材って言うことは、この人に払うギャラはどうなるのかしら」

ルーナ「? パパは寄稿者にお金なんてあげてないよ。みんな、名誉だと思って情報をくれるから」

ハーマイオニー「あぁ、そのことについては心配いらないわ。私たちから何か請求しようとしたって、この人に待ってるのは、ちょっとお茶目な姿に関する魔法省からの追求書、ですものねぇ?」

リータ「ふんっ、言われなくともよーくわかってるざんす。この小娘……それに、この仕事ならあたしゃ自分から金を出したって引き受けるざんすよ?」

ハニー「……どういうことかしら?」

リータ「あーら、ハニー。だってあたくし、一年以上も断筆させられていたざんすよ?そこのミス・優等生のせいで」

ハーマイオニー「社会的にはおかげで、ね」

リータ「そーう。今のあたしに記事を依頼してくれるとこなんてどこにもないんざーんす……そこに!舞い込んだ『ハニー・ポッターの告発文』なーんてお仕事!!よござんしょ!このリータ・スキーターの華々しい凱旋にはもってこいざんす!!」

ハニー「……」

ハーマイオニー「……」

ルーナ「ウィ〜ズリ〜は 我が王者〜♪」

リータ「さぁ、さぁ、さぁ!腑抜けた頭で同じ文句しか並べられない!!省の飼い犬『予言者』の編集部ども!」

リータ「みせてやるざんす!大衆を味方につけるとはどういうことか!!世論を煽るとはどういうことか!!」

リータ「筆一本で紙切れ一枚で社会を動かす!!!それがあたしたちジャーナリストの『魔法』なんざんすから!」

リータ「フッフフ、ハッハハハハハアッハハハゲラゲラゲラゲラ!!そこのファンキーなお嬢ちゃん!お父上に重版する用意を今からさせたほうがようござんすよ!!!」


ハニー「……これを世に解き放っていいのかしら」

ハーマイオニー「……いざとなったら本当にしかるべきところへたれこむわ」

数時間後

大広間

ハニー「……話疲れたわ」

ハーマイオニー「リータの聞き出しかたったらなかったものね……お疲れ様、ハニー」

ハニー「いいのよ。私も出来るだけ、みんなに真実を話したかったんだから……」

ネビル「君の金言はいつだって真実だけど……いいことをしたね、ハニー。辛かったろうに……あぁ、君は本当に女神だよ。ヒンヒン……」

ハニー「ネビル……えぇ。ヴォルデモートが何をやってのけるのか、みんなが知らないといけないの。そうでしょう?」

ネビル「うんっ、怖くっても、そうするべきだ……死喰い人のことも、みんなもっともっと知るべきなんだ」

ハニー「……あなたは本当に、出来る豚ね。ネビル。座り心地も、そうね。悪くないもの」

ネビル「ヒンヒン!クィディッチでまだ帰らないロンの代わりにしてもらえて光栄だよハニー!ヒンヒン!」

ディーン「ちっくしょうネビル爆散しろ……ハニーの話が記事になったらアンブリッジ蛙がどんな反応をするか、楽しみだね!ヒンヒン!」

  シェーマス「……」

ハーマイオニー「……ハニー、シェーマスが聞き耳たててるわ」

ハニー「えぇ、そうでしょうとも……またきっと、ヒンヒン鳴いてくれると思いたいわ」

ハーマイオニー「その望みもどうなのかしら。あぁ、そういえば。チョウは一緒じゃなかったけど、どうしたの?」

ハニー「……あー」

ハーマイオニー「……」

ハニー「あの、ね……実は」

ハーマイオニー「……皆まで言わなくていいわ、ハニー。ちょっと待っててね、レイブンクローテーブルで何か轟音がしても気にしないで頂戴」

ハニー「落ち着いて」

ハニー「——ってことが、あったの」

ハーマイオニー「……」

ハニー「……あ、呆れ顔はやめなさいよ。やめ、やめてよ。分かってるわ」

ハーマイオニー「あなたらしくなかったわね、ハニー。いつもは相手の気持ちを、考えすぎるくらいなのに」

ハニー「えぇ、それに今までヴォルデモートのことを黙っていたことも、わたしらしく……分かってるったら」

ハーマイオニー「……そこは、そうよ。『本当は行きたくもないけれど、あの子がどうしてもって、脅してくるから仕方なく』とでも言えばよかったんだわ。それに、あー。私のことをとってもブスだ、ときゃぁ!?」

ハニー「分かってる、ってば……でも、あなたはわかってないみたいね、ハーマイオニー?私はあなたのこと、間違ってもブスだなんて思わないし言わないわ……だってこんなに……ねぇ……?」

ハーマイオニー「あっ、そん、そんな、あぁ、そんなつもりじゃなくって、たとえで、あぁ、ハニー、それは、チョウとそんなことがあっても、っ、私があなたのものであることは、『ホグワーツ』の長い歴史よりも明らか、だけど……」

ネビル「つづけて!」

ディーン「どうぞ!」

ロン「ヒンヒン!」

ジニー「ヒン!!」

ネビル「あっ、お帰りロン、ジニー。さすがだね」

ロン「僕らがどうぞるタイミングを逃すわけないさ、もちのロンでね。それで、そこ代われよネビル」

ネビル「……や、やだねっっ!!!

ロン「……マーリンの髭!!!」

ハニー「今日の練習はどうだったの、ロン?」

ロン「あぁ、悪夢だったよ。君を見ればその残像も払拭されるけどね……ヒンヒン」

ハーマイオニー「フーッ、フーッ……ゴホン。まぁ、ロン。そんな悪夢だなんて、まさかそれほど」

ジニー「それほど、だったのよ。アンジェリーナなんて、しまいには泣きそうだったわ……ヒンヒンじゃなくて」

ハニー「そう……そのアンジェリーナは?」

ジニー「シャワー室で、ケイティとアリシアに『慰め』られてると思うわ。邪魔しちゃ悪いし、って思って先に夕食を。あと、おね、ハニー成分の摂取に」

ロン「あぁ、そろそろ欠乏症になるとこだった」

ハニー「えぇ、そうね。でも、クラクラするのは一緒だと思うのだけれど?」

ジニー「あぁ、そうよ、はぁ……ハニー素敵」

ディーン「あぁ……ハニー天使だなぁ」

ロン「なに言ってんのさ……女神だよ、あぁ」

ネビル「ヒン、ヒィン……」

ハーマイオニー「ノリノリなのは分かったわ、まったく」

ロン「いや君のハニーに押し倒された時の待ってました顔よかマシだよ、もちのぼくで」

談話室

フレッド「へーい女王様に才女様。宿題で忙しいところちょーっといいかい」

ジョージ「ロンとジニーはいないな?まったくあいつらときたら死刑もんだ」

ハーマイオニー「開口一番なによ、二人とも……って、聞くまでもないのがいやね」

ハニー「二人は今日も、チームの練習を見学しにいったの?」

フレッド「見学と言うか、観客席からかるーい野次をね。でも、ありゃダメだ。僕らがいなけりゃまるでクズだぜ」

ジョージ「おいおい、そこまで言うことないだろ。ジニーに至っちゃあそこまで上手くなったことがビックリだぜ」

ハーマイオニー「ジニーはね、六歳の頃から庭の箒置き場に忍び込んで、みんなの目を盗んで」

ハニー「あなたたち二人の箒に変わりばんこに乗って、練習していたそうよ?」

フレッド「へぇ……そりゃいいや。特に、僕らから隠れてってところが気に入った」

ジョージ「なーるへそ。ジニー嬢はいつのまにやらたくましくなっていたのだなぁ」

ハーマイオニー「ロンの方は、未だにゴールを守れていないの?」

フレッド「あー、まぁね。奴さん、誰も見ていないと思うとそこそこブロックできるんだけどさ。どうにもこうにもあがっちまうね」

ジョージ「だから僕らが試合でできることと言やぁ、みんなお願いだからそっぽ向いてお喋りしててくれ、って頼むことくらいだな」

ハーマイオニー「……こ、今度の観客席には、ハニーがいるわ!」

ハニー「えぇ、そうね。私の視線があれば、ロンなら」

フレッド「そりゃもう百人力、いや、百匹力だろうけどさ。女王様」

ジョージ「そいつぁ果たしてあのはなったれのためになるのかねぇ」

ハニー「……」

フレッド「君が今後、ピッチに足を運べないことがあったら?」

ジョージ「その度にあいつはまた使い物にならなくなるのか?」

フレッド「いーや、ハニー。これはあの坊やの問題だ、見守ってやれ」

ジョージ「君が選手でない以上、あんまり肩入れするべきじゃないぜ」

ハニー「……なんだかズルいわ、あなたたちって」

フレッド「あーぁ、実を言えば、俺達さ。学校に留まった最大の理由って」

ジョージ「クィディッチ優勝杯を最後にもう一度、って思ったからなんだ」

ハニー「……そうね。市場調査なんて、あなたたちならそんなことしなくっても自信満々でしょうもの」

ハーマイオニー「だ、か、ら!今年は二人とも大事な『NEWT試験』があるじゃない!」

フレッド「だーかーらー、僕らはそいつにすこーしも興味がないんだってば。前に言ったろ?おやおやお忘れかい才女様」

ジョージ「『スナックボックス』最後の課題だった厄介な吹き出物も、リーから聞いたマートラップの薬で片付いたしな」

ハーマイオニー「……教えるんじゃなかったわ」

ハニー「親切心じゃない、そんなこと言わないの。そう、それじゃ二人とも……やめてしまうの?」

フレッド「おぉー、泣いてくださるな愛しい君! なに、今すぐって訳じゃぁない。心配するな」

ジョージ「あぁ、鳴くのは君の豚どもだけでいいさ! でもできれば今度の試合は見たかないな」

ハニー「……ザガリアスがチェイサーの、ハッフルパフチームとの対戦ね」

ハーマイオニー「……クィディッチってこれだから。団結していたみんなが無駄にピリピリしてしまうわ」

フレッド「ザガリーが僕らのことをピリピリさせてくれんのは、なにも今に始まったことじゃないだろ?」

ジョージ「まっ、ロンの奴がバリバリ活躍して光明を見せてくれたら、僕らが留まるのも長くなるかもな」

ハニー「辞めるときは、一言頂戴。いいわね?あなたたちは……わたしの豚、ではないけれど」

フレッド「はーいはい、お優しい女王様。最っ高の置き土産を準備しとくぜ」

ジョージ「笑い転げて仕方が無い、耳を塞いでもまだうるさい、大騒音をな」

ハーマイオニー「……おばさまに連絡してでも縛り付けておきたくなるわ、もう」

土曜日 試合後

校庭

スリザリン生徒<ウィーズリーは 我が王者〜♪

スリザリン生徒<ゲラゲラゲラゲラゲラ!!!


グリフィンドール談話室
  
シーーーーーーン

ハニー「……この私が部屋にいるというのに、随分と静かね?」

ネビル「! ヒ、ヒンヒン、ごめんよハニー!ヒンヒーン!」

ディーン「あー、あのさ!あの!ま、負けたっていっても、たった十点差じゃないか!ひ、ヒンヒン!頑張ったよ、みんな!」

ロン「……僕以外はな」

ハーマイオニー「あー、あのね、ロン。それは、あなたも十四回ゴールされたけど、あー、十回もペナルティ・ゴールをとられたスローパーとカークも……いいえ、彼らのことは責めないであげましょう。今頃双子に猛特訓させられているでしょうから」

ハニー「ジニー、いいスニッチキャッチだったわ。あなたが取らなければ、百六十点差で負けたんだもの」

ジニー「あ、ありがとう、ハニー。えぇ、優勝の可能性ごと消えずにすんだ、けど……あなたなら絶対、もっと早くに取ってたわ。違う?」

ハニー「……それは」

リー「僕さ、ハニーがいっつもすぐにスニッチとるから忘れてたけど、クィディッチってこのくらい点取るもんなんだよな。どっちも二百点越えなんて久しぶりに読んだぜ」

<ウィーズリーは 我が王者〜♪

ネビル「まだ校庭で、スリザリンが浮かれてるみたいだ……ふぉ、フォイならぼく、戦うぞ!」

ロン「やめとけよ……今じゃあいつら、最有力優勝候補だもんな。ハニーの前じゃそんな称号かすんで仕方ないけど……ヒンヒン」

×百六十点差
○三百十点差
マーリンの髭!

寝室

ハーマイオニー「……実際、あなたが選手だったらどのくらいで終わっていたの?」

ハニー「……ロンが十回目に抜かれたとき、カークの足元にスニッチを見つけたわ」

ハーマイオニー「……あなたがチームに戻ればきっと」

ハニー「忘れちゃダメよ、私は一生涯クィディッチ禁止なの。そうでしょ?」

ジニー「アンブリッジがいる間、でしょう?終身じゃないわ。ほら、学期末にはあの人、いなくなってるかもしれないじゃない?」

ハーマイオニー「とっても前向きなのはいいけど、どうしてジニーがこっちに?」

ハニー「スニッチキャッチのご褒美で、ラベンダーとパーバティにジニーのとこへ移ってもらったのよ」

ジニー「ヒンヒン!光栄だわ! あっ、心配しないで。私はこっちの離れたベッドだから。ハニーと同じ空間で、あと夜な夜な妙声聞ければそれでいいから、どうぞ」

ハーマイオニー「配慮なんだかなんなんだか……アンブリッジ。観客席で、意地悪な顔、いいえ、面をしていたわね」

ハニー「私とハーマイオニーの二、三列前に座って……何度か振り返ってニタニタしてきたわ」

ジニー「ほんっと、嫌なカエル!!じゃぁ、おやすみなさい。ハニー!夢であいましょう!」

ハニー「えぇ、そうね。お茶とノンシュガーのお菓子と跪く用意をしていなさい?」

ハーマイオニー「接待される気満々ね……ねぇ、ハニー。ちょっと」

ハニー「なぁに?あら……ジニーの期待にこたえてあげるの?」

ハーマイオニー「ち、ちが、今日はいいわ、今日は! オホン! 忘れちゃだめよ、スネイプに言いつけられたこと」

ハニー「あぁ……寝る前に感情を無にしろ、というあれね……今日に限ってはとっても難しいわ。クィディッチに、あのアンブリッジへのこととか」

ハーマイオニー「それでもやらなくっちゃ。スネイプが……きゃぁ!?」

ハニー「えぇ、そうね。それじゃ、何も考えられなくなるくらい、疲れてから眠ればいいのかしら。手伝って、くれる?ハーマイオニー……?」

ハーマイオニー「ちょ、っと、そんな、ハニー。疲れるなんて、本末転倒で、あぁ、大体、あぁ、『グリンゴッツ』のトロッコに乗った後くらい疲れさせられるのは、私の方で……」

ジニー「ご褒美万歳!つづけて!」



男子寮

ロン「……どうぞ!!!! ムニャムニャ」

ネビル「うわぁ!? へ、変な寝言だなぁ」

月曜日

大広間

ハニー「……傷が痛むわ」

ロン「ヒンヒン!いっくらハニーの一部とは言えハニーを悩ませるならこのハニーの一番の豚こと僕が黙ってないぞこんちくしょう!ヒンヒン!」

ハーマイオニー「傍から見たらあなたがハニーに怒鳴ってる図にしか見えないからやめて。ハニー、またあの夢をみたの?」

ハニー「今日は、あと少しで扉を開けられたのよ……ほんのあと数十センチだったのに。そこで、ハーマイオニーに起こされて……もう」

ハーマイオニー「だ、だからあんなに不機嫌で、朝からあんなことを!?と、とばっちりだわ!」

ロン「そのとばっちり、豚のみんなが是非とも一度は受けたいな、そう思ってるよ」

ネビル「そうだよそうだよ……僕なんて日頃碌なとばっちり受けてないのに。あっ!でもいいんだ!僕、強くなるってきめたからね!ヒンヒン!」

ハニー「ネビル……そうね。私の豚らしくつとめなさい?」

ネビル「うん、ハニー!ヒンヒン!だから……」

コノハズク「ゲェーーーッ」シューーーッ、ドカッ!

ネビル「どこかの荷物が僕の頭にぶちあたっても気にしないんdうわあああああん!!」

ロン「やっぱり漢だねネビル!君は漢だ! あれ?」

ホォオオオ!ホーーーホーーーホーーーー
 ピーーーピピィ、ピピィー! ギーギーッ!
ギュアッギュァッ! ホーーーォ、ホーーォ
バタバタバタバタバタ ピーーーチチチピピーッ

ハニー「……それは、ふくろう便の時間は今でしょうけれど。なぁに?ふくろうの、つぶて……私の魅力に引き寄せられるのは当然だけれどね」

ロン「ネビル、ネビルーーー!君いつの間に、ハニーのポストになっちまったんだい、ネビルーーーーー!」

ブォ、ォォッ

ロン「……うん、埋もれてるけど、元気みたいだね。もちのロンで」

ハーマイオニー「これって……あっ!ハニー、ハニー!これ!最初のコノハズクが持ってきた包み、これから開けて頂戴!」

ハニー「な、なぁに? あなたのお願いなら、そうしてあげるけれど……」

ビリッ、ビリビリッ

ハニー「……あぁ」

ルーナ「ん、届いたね。パパに一部、あんたに届けるようお願いしといたんだ。こっちの手紙は、早売りを読んだ人からの感想とかじゃないかな」

ハニー「ルーナ!これ……『ザ・クィブラー』の」

ロン「っひゅー!ハニーが表紙だなんてそれだけでこの号は売り切れ必死だぜ、もちのロンで!」

ハーマイオニー「リータ、書き上げたものを意地でも最速でださせたのね。頼りになるわ、なりすぎて困るけど」

ハニー「……表紙の見出しは、これね。『生き残った女の子、ハニー・ポッターついに語る! 「名前を呼んではいけないあの人」の真相——私がその人の復活をみた夜』」

ロン「小見出しはここだ。『緊急告発! ハニー・ポッターがすっぱ抜く、あなたの隣にいる死喰い人!』」

ハーマイオニー「『恐ろしい計画の首謀者、ルシ××・○フォイとは!?』……ほとんど言ってしまってるわ」

ルーナ「パパは大忙しだって。しばらく次の号が出せないくらいの大反響でビックリだ、ってさ。『スノーカック』読みたかったな、あたし」

ハニー「っふふ。ごめんなさいね、ルーナ」

ルーナ「いいよ。これはこれで、面白いから……勇猛果敢な騎士道で、他とは違うグリフィンド〜ル♪」

ビリビリッ、ビリッ

ハニー「たっくさん、たくさんだわ。手紙……あっ」

ロン「ぼくも開けていいかいハニー!うん?どうしたのさ……やってくれるぜ、スナッフル」

ハーマイオニー「……肉球のスタンプが押された羊皮紙一枚……えぇ、伝わるわよね。ハニー」

ハニー「……うんっ。さぁ、開けてみましょう。みんなも、好きにやってしまって?」

ロン「もちのロンさ……うわ、こんにゃろ、君がいかれてるってさ。マーリンの髭」

フレッド「こいつぁどっちつかずだな。嘘を書いてるようには思えない、だけど私は信じたくはない、だとさ」

ジョージ「なんともはや、羊皮紙の無駄だな。おっ、こっちのご婦人は、君がショックを受けてるだけだとさ」

ネビル「ケホッ、ケホッ。えっと、この魔女は……この魔女!君の言うことを信じる、って!ハニー!ヒンヒン!」

ジニー「まぁ、この魔法使い!あなたが真の英雄だ、って、そこまではいいけど——自分のプロマイドを入れてるわ!!呪い返してやろうかしら!ヒンヒン!」

ルーナ「この魔法使いは、あんたの口しか証言のないものをどう信じろというんだ、だって。ふぅん……変なの。それじゃ、ブリバリング・ハムディンガーもいないことになるじゃない?」

ハーマイオニー「ハニー、ハニー!素晴らしいわ、この魔女!聞いて!『あなたの側の主張を読んで、「予言者」ひいては魔法省があなたのことを不当に扱ったという結論に達しないわけにはいきません。「例のあの人」復活は確かに衝撃的ですが、私たちはそれを受け入れなければ——』」



アンブリッジ「なんの騒ぎですの?」

ネビル「ひっ、でたっ!」

ハニー「! おはようございます、アンブリッジ、『先生』」


ザワザワザワザワザワザワ
 オエッ、ウェェェェ

アンブリッジ「どうしてこんなにたくさん手紙が来たのですか、ミス・ポッター?」

フレッド「おーいおいおい、冗談じゃないぜ。今度はこれが罰になるってのか?」

ジョージ「手紙を受け取ることが?冗談は体型と顔と存在だけにしてくれよなぁ」

アンブリッジ「ウィーズリーズ、言葉に気をつけないとお友達のようになりますよ?それで、ミス・ポッター?」

ハニー「えぇ、アンブリッジ先生。私が……スーッ」

アンブリッジ「?この、雑誌がなにか……?」

ハニー「この、『ザ・クィブラー』に!六月に私の身に起きたことについてのインタビューが載ったのよ!!!」

ザワザワザワザワザワザワザワ!!!!!
ヒソヒソヒソヒソヒソ

アンブリッジ「!?っ、っ!?」 パラパラパラッ

ハニー「中々いい表紙だもの。先生、それ、差し上げるわ。あなたの趣味の悪い部屋にでも飾れば、どうかしら」

アンブリッジ「っ、〜〜〜〜っ、こんな、もの、こんなことを、ミス・ポッター!!ポッターー!あなたには、金輪際ホグズミート休暇は訪れないとお思いなさい!〜〜〜っ、一週間の罰則!さらに五十点減点!!」

ハニー「上等よ、先生。安いものだわ、そのくらい」

ロン「ヒンヒン!さっすがハニーだぜ!ヒンヒーーーーン!」

ザワザワザワザワ
 ヒソヒソヒソ  ヒン、ヒン……

今回はここまで
次回は出来れば明日
じゃあの

続きは明日昼で。申し訳ない

再開

『薬草学』

ヒソヒソヒソヒソ
 ザワザワザワザワ

ロン「朝のあの騒動からこっち、そこかしこでヒソヒソ言ってるよな。まずはヒンヒンだろまったく。あぁハニー!君はどんなどきだってみんなの関心をあつめてやまないね!」

ハニー「それはそうでしょうね。私がアンブリッジにあんなことを言い放った後、ということもあるけれど。美貌がなせる事態だわ」

ハーマイオニー「いい演出だったわ、ハニー……あちらもすぐに動いてくれたもの。アンブリッジ様様は」

『教育令第二十七号  「ザ・クィブラー」を所持しているのが発覚した生徒は、退学処分とする 高等尋問官ドローレス——』

ロン「まだ昼にもなってないって言うのに、掲示板だけじゃなくてこの廊下やら温室にまで張り出されてるもんな。胸糞悪い文字見せるんじゃないよ、反吐っちまうぜ」

ネビル「動いて、くれた、って言うのは?えっと、僕にはハーマイオニーがどうしてほくそ笑んでるのか、よく……」

ハーマイオニー「あら、分からない?そう、魔法省ができる対処はあの本を禁止することだけ。この、ホグワーツで!絶対秘密のお話!なんてものが守られたこと、今まであったかしら?」

ハニー「むしろあの女に禁止と言われたことで俄然手に入れようと、躍起になるでしょうね。問題は、どうやって手に入れるかでしょうけれど……アンブリッジは抜き打ちで生徒のかばんを調べているようだもの」

ロン「そこんとこは大丈夫。フレッジョがルーナのパパに話しつけて、大量にあれを仕入れて『隠蔽』したものを出回らせるってさ。たくましいよ、まったく」

スプラウト「みなさん、作業はしっかりやりましょう。あぁ、ミス・ポッター?そちらのジョウロをとってくださいな」

ハニー「? えぇ、スプラウト先生。そうしてさしあげるわ。どうぞ」

スプラウト「まぁ、ありがとう。グリフィンドールに二十点、差し上げましょう」

ハニー「……ふふっ。先生?」

スプラウト「このところ腰が痛くて、地面のものを取るのは大変だったんですよ。本当にありがとう、えぇ」

ロン「その杖はなんのためにあるんですか、ってね。野暮なこたぁ言わないよ、もちのロンで」

『呪文学』

フリットウィック「今日は初心に返って『浮遊呪文』です!さぁ、教室の天井近くに色々なものを浮かせてみましょう!」

ザワザワザワザワ

フリットウィック「うーむ!どうしたことか!今日は私の杖さばきがうまくいきません!」

ロン「白々しいぜ、フリットウィック先生。流石同胞」

ハニー「演技の素質はないけれど、できる豚ね。ふふっ」

フリットウィック「うーむ!これは、私は生徒のみなさんの動きに目を配れませんね!何を読ん、何をしていてもこれでは注意できそうにありません!困った!」

ザワザワザワザワザワ
 ペラッ、ペラッッ

ハーマイオニー「みんな、『ザ・クィブラー』を夢中になってめくっているわ……仕事が速いわねあの二人」

ジリリリリリリリリリッ

フリットウィック「おやっ!もうこんな時間ですか!みなさん、かえってよろしい!あぁ——ミス・ポッター!私がそちらに飛ばしてしまった羽ペンを、拾っていただけますかな?」

ハニー「あら、いつから私にお願いできる立場になったのかしら。でも、いいわ。そうしてあげる。はい、先生」

フリットウィック「どうも、どうも……これを」

ハニー「これ……『チューチュー鳴くネズミ菓子』?」

フリットウィック「シーッ!内緒ですよ、ミス・ポッター!何せこれは——『呪文学』とは関係のない事柄でしょうからね!」

ハニー「……ふふっ。えぇ、ありがと。せんせ」フーッ

フリットウィック「! ヒンヒン!こちらこそ!ヒンヒーン!」

『変身術』の教室前

ハニー「どうやら今日はたっくさんの貢物が来る日のようだわ」

ロン「君に目いっぱいの愛情が返ってくるのは当然だけど、そうだね。手紙に点に、お菓子に、あとはそうだな。祈りか」

ハーマイオニー「奉らないで……あっ」

チョウ「——ハニー!ハニー!!!」

ハニー「! ハァイ、ちょ、きゃぁ!?」

チョウ「あなたって、あなたって!本当に、勇敢で——なんて、あぁ……!」

ハーマイオニー「……こんなに人通りの多い場所で抱きつくなんてちょっと非常識だわ」

ロン「いつもはそれ+押し倒されるのは甘んじて受け入れてる人が何か言ってら」

チョウ「ごめんなさい、あんなことを言ってしまって……あなたも、あなたもつらかったのに」

ハニー「……いいえ。チョウがずっと悩んでいたことに比べたら……私……わたし、あなたを」

チョウ「えぇ、ハニー。とっても救われたわ……ふふっ。私、待ってる。もうへこたれないわ……セドリックは生きてる、そう信じられる」

ハニー「……そう」

チョウ「あっ!それから!」

フッ

ハニー「っ!?」

チョウ「あなたのことも、ね!知ってた?私、凄腕シーカーなんだから! 今日は、ほっぺで逃がしてあげる!じゃあね!」

タッタッタッタッタッタ……

ハニー「……また調子が狂う人になってしまったわね、もう。ふふっ」

ハーマイオニー「ロン。私、今度こそ本気で飛行を習いたいわ」

ロン「そりゃいいや。ちょうど窓が開いてるよ」

『変身術』

マクゴナガル「さぁみなさん、お静かに。私の授業では、どんな理由があろうとも。科目に関する事柄以外は一切読むのも話すのも許しません。分かっていますね?」

ザワザワザワ……シーン

マクゴナガル「よろしい。さて、本日より『消失』から進んだ『部分消失』に入ります。これはとても複雑です。気を抜かないように」

ロン「マクゴナガルはブレないなぁ、遊び心ってもんがないぜ、まったく」

ハーマイオニー「あるべき大人よ、あれが。少し融通がないけど、正しいわ。ほら、集中しなきゃ」

マクゴナガル「まずは理論をノートにおとりなさい……おや?」

ハニー「……? いつもならば杖の一振りで動いていくはずのチョークが……」

マクゴナガル「本日はどうにも、調子がよくないようです。こうなれば、私は数十年ぶりに自らの手で黒板に書かなくてはいけません。そうですね、みなさん?」

「「「「「はい、マクゴナガルせんせー!」」」」」

マクゴナガル「先ほど申し上げたとおり、この呪文の理論はとても複雑です!きっと授業中、私は振り返る余裕がないでしょう。ですが、学徒たる皆さんはそのような状況でも慢心せず私の書く魔法理論を真剣に写しおおせる、そう信じていますよ?」

「「「「「はい、マクゴナガルせんせー!」」」」」

マクゴナガル「よろしい。何度も言いますがこれは複雑な理論です。己が手で書く以上、間違えてはなりません。集中のために、耳栓をしていても?」

「「「「「問題ありません、せんせー!」」」」」

マクゴナガル「結構」

ガリガリガリガリガリガリ
 ザワザワザワザアワザワザワ ヒソヒソヒソヒソヒソ
 ペラッ、ペラッ

ハーマイオニー「……」

ロン「なーるほど、確かに模範的な大人の態度だよな?」

ハニー「先生らしいわ、優しいのに回りくどくて……あら?」

シェーマス「……」

ハニー「……どうしたのかしら、授業中に。あなたはここのところ、私からはずいぶんと離れた席に座っていたと思うのだけれど?」

シェーマス「き、君に言いたいことが、あって……僕、あれを。あの雑誌、読んだんだ……ううん、読む前から、本当は謝りたくて……でも、君は戦ってるのに、僕はなにを、って……あぁ、ハニー!僕らのハニー!!!」

ハニー「……えぇ、シェーマス」

シェーマス「許してくれなんて言えないです!けど、僕は君を信じます!だから、また、ひ……ヒンヒン、って」

ハニー「ロン」

ロン「なんだいハニー?」

ハニー「シェーマスが何を言っているか、あなた、分かる?」

ロン「さーぁ?さっぱりだね」

シェーマス「!」

 そ、そうだよ、ね……僕、なんて」

ロン「同胞としては、やっぱりヒンヒンで語ってくれないと分からないよな。だって、そうだろ?僕たちいつだってハニーの豚なんだから」

シェーマス「!」

ハニー「えぇ、そうよね……シェーマス?私は一度だって、あなたが私のかわいい豚であることをやめた、なんて。思っていないわ。そうでしょ?」

シェーマス「あ……あ……」

ハニー「さぁ……シェーマス」

パチンッ!

ハニー「跪いて、ヒンヒン鳴きなさい?いつものとおり、今までどおりに。ねっ?」

シェーマス「ヒンヒン……ヒンヒーーーーーン!ハニーーーーーーーィ!」

……ヒンヒンヒーーーーーーーーーーンン
 ハニー!ハニーーーー!ヒンヒーーーーーン!!

ネビル「!豚囃しの復活だ!!!ヒンヒン!!」

ディーン「まったく!みんな遅すぎるぞ!!ヒンヒン!」

ハーマイオニー「……もう、感動なんだか間が抜けるんだか。締まらないわ、ほんと。ふふっ」






ジリリリリリリリリッ!

マクゴナガル「おや、終業のようです。みなさん、板書は済みましたね?」

……

マクゴナガル「尚、本日私が黒板に書いたものは図書館にある『部分消失術〜〜憎いアイツにデカイ風穴あけるべき?』の大一章に記載しているものと重複していますので、復習にお使いなさい」

ロン「流石だぜマクゴナガルせんせー!」

にゃんこー!

マクゴナガル「お黙りなさい!さぁ、次の授業へ! ミス・ポッター?」

ハニー「えぇ、先生」

マクゴナガル「今日も多く学びましたね?」

ハニー「……とっても」

マクゴナガル「それならよろしい。あなたは大いに学び、そして会得したことでしょう。それを今後も、忘れないように。いいですね?」

ハニー「はい、先生。……ありがと!」

ヒンヒーン!
 にゃんこーヒーーーーン!

マクゴナガル「おやおや、そうですか。どうしても本物の豚にされたい生徒が多いようですね?お並びなさい、立派な尻尾をこさえてあげましょう」

『占い学』

ロン「まったく傑作だったよな、マクゴナガルの授業は」

ネビル「僕、先生があんなに優しい顔してるの初めてみたよ」

ディーン「ハニーの前じゃ笑みがこぼれちまうのはもはや反射に等しいけどね」

シェーマス「ヒンヒン!」

ハニー「えぇ、そうね。全人類の細胞に刻みついた記憶で……あら?」

トレローニー「……」

アンブリッジ「……」

ロン「うぉっと、オエッ、そういやこの授業はアンブリッジの奴が授業監視してんだっけ」

ハニー「あー……ハァイ、トレローニー先生。また、ここ最近のいつも通りにずいぶんとくたびれた様子で」

トレローニー「オォ……おぉおおお、オーーーーーォォウ!!」

ハニー「!?」

ガシッ

トレローニー「見えます、見えますわ!!わたくし、あなたの未来が見えますわーーーーぁ!!」

ザワザワザワザワザワザワ

ハニー「み、未来!?ちょ、っと、先生、足にすがり付かないで、ちょっと」

トレローニー「見えます、見えます!不幸なことにここには未来の波長をことごとく阻害する醜いまるで蛙のような体たらくの置物以下なゴミが存在していますが!わたくしの未来を見通す内なる眼の前には、現世<うつしよ>の要素など超越していくのですわ、オォ、オーーーォオオぉおお!」

ハニー「あー……?」

トレローニー「あなたは早死にしませんわ! それどころかとてもとても長生きします、しますとも!!グスッ、それに魔法大臣になって、グスッ、グスッ、幸せな家庭でずーーーっと暮らせるに違いありませんわ、えぇ!!!」

ハニー「! そ、それは、白い屋根の、おうちなの!?」

トレローニー「もちろんですとも!!!大きな犬小屋も見えますわ!!えぇ!!!子供は二人くらいかしら!!!えぇ!!!!十二人かもしれませんわ!!えぇ!!」

ハニー「じゅ、じゅうに。そんな、わた、わたし、それは、望むなら、望むところだけれど!ちが……っ!」

ロン「痛い!ありがとう!ヒンヒン!!!」

放課後

図書館

ロン「ってわけで、『占い学』も大傑作だったよ。あのときのアンブリッジの顔ったら、吐き気がしたなぁ」

ハーマイオニー「いつもでしょ、それ。よかったわね、ハニー」

ハニー「よ、よくないわ。十二人、十二人ですって……」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

ハニー「ニヤニヤしない! さぁ、早くマクゴナガル先生が言っていた本を探さないと……あら」


マルフォイ「くっそ、ポッターのいかれポンチめ……っ」

クラッブ「! ゴアーッ!」

ゴイル「! ウッホウッホ!」

マルフォイ「おい、よせ。相手にする価値もない。うん、そうだ。今が怒るべきっていうのは合ってたぞ。えらいな」

ノット「……通してくれるかい」


ハニー「えぇ、そうしてあげるわ。どうぞ」

ロン「できれば僕たちも、君らと鼻面合わせるのは勘弁願いたいからね」

マルフォイ「……ふんっ。いつか落ちるところまで落ちるぞ、ポッター!」

ゾロゾロゾロゾロ……

ハーマイオニー「小物らしい台詞ね。それに、一番いいことは。あの人たちがいくら親が死喰い人だって名指しされて怒っていたとしても、あの雑誌を読んだなんて認められないから反論できない、ってところよ。今みたいに」

ロン「あーぁ、何せアンブリッジ様様の教育令だもんな。もちのロンで」

ハニー「今学年で初めて感謝してあげたいわね、ほんの一瞬だけれど」

ハーマイオニー「散々楽しんだところで。宿題と復習をしましょうか。えーっと……あ、あそこね……高いわ。えっと、『ウィンガー——」

ロン「よ、っと。これだろ? 君、いつまでたっても背が伸びないなあ。マーリンの髭」

ハーマイオニー「っ、あなたが伸びすぎなのよ!元からそうだけど、ここのところ……クィディッチをしてから、もっと……は、はやくよこして!ちょっと、ちょ、届かな、ロン!」

ハニー「……ふふっ。トレローニーに、ついでに二人も見てもらえばよかったかしら」

寝室

ハニー「談話室の盛り上がりも、すごかったわね……」

ハーマイオニー「双子があの雑誌を大きくして、それを崇めるあなたの豚たちの大合唱だものね」

ハニー「私が崇拝の対象になるのは当たり前のことだけれど……騒ぎすぎて、疲れたわ」

ハーマイオニー「どこから持ってきたかは考えたくないけど、ご馳走やらバタービールまで夕飯後なのに詰め込まされたもの。当然だわ」

ハニー「……体重計が怖いわね」

ハーマイオニー「それには素直ね、あなた。だけ、というわけでもないけど」

ハニー「何が言いたいのかしら……あぁ、私、寝るわ……ねぇ、ハーマイオニー?」

ハーマイオニー「なぁに?」

ハニー「本当に、ありがと……あなたが話をつけてくれたおかげよ?」

ハーマイオニー「そんな。あなたが決断したら、あとはあなたでもどうとでもなっていたと思うわ。きっとね」

ハニー「ううん……いつだって、わたし。あなたや、ロンに助けられて……」

スッ

ハーマイオニー「! あ、あの……えぇ、疲れたでしょうから、あー……少しだけ……あら?」

ハニー「スーッ……スーッ」

ハーマイオニー「……手を握った、だけね。えぇ、ハニー……おやすみなさい」




ラベンダー「ハーマイオニー、さっきの手を握られた瞬間の期待顔、もう一回お願いできる?」

パーバティ「資料にしたいの。次の夏に出す新刊のために」

ハーマイオニー「黙らないと黙らせ…………ほんっとうに聞きたくないから黙って。黙って……あぁ、そういえば」

ハーマイオニー「……ハニー、今日は寝る前に『閉心術』のあの訓練……してなかったわね。大丈夫、かしら……」








ハニー「(……暗い、部屋だわ)」

ハニー「(スネイプの研究室みたいに暗い……地下じゃなくって、厚いカーテンで締め切っているだけ、のようだけれど)」

ハニー「(せっかく……今日は、楽しいことばかりだったのに……どうして、こんな夢をみるのかしら)」

ハニー「(この、手……これ、私の手?それは、この私の手だもの。白くて美しいのは、当然だけれど)」

ハニー「(ここまで……何十年も日に当たってないような病的な白さじゃ、ないわ。どういう……)」

???『我が君、我が君……ご主人様、どうかお許しを!!!』

ハニー「(? あら……暗すぎて分からなかったけれど……誰かが、床に跪いているわ)」

?『お前を責めるまい、ルックウッド どうやら俺様は 間違った情報を得ていたようだ そうだな ?』

ハニー「(……今の声、どこから……)」

?『お前の言うことは 確かなのだろうな?」

ルックウッド『はい、はい!ご主人様、それはもう! 私めはなにしろ、かつて、かつてあの部で働いていましたので!』

?『エイブリーは、同じように 貴様と同じ部署で働いていたボードならば あすこからそれを取り出せるだろう そう言ったのだけれどなぁ』

ルックウッド『お言葉ですが、あぁ、ご主人様。ボードにはそれができなかったでしょう!間違いなく、ボードはそれ出来ないと知っていて……ですから、だからこそマルフォイの『服従』に激しく抗ったに違いありません』

?『立つがいい、ルックウッド』

ルックウッド『ひ、ひぃいいっ!!お助けを、お助けを……!』

?『お辞儀は今は必要ない 何を言っている、ルックウッドよ 俺様はお前に礼こそ言えど、罰したりはしない それに値するのは   エイブリーよ』

ルックウッド『はい……我が君……えぇ、そうに、そうに違いあり、ません』ガタガタガタガタガタ

?『貴様の知らせは大儀であった ルックウッド、これからも俺様のために尽くせ 貴様の握る情報がすべて必要だ 今からまた始めるのだ  下がってよい エイブリーを呼んでこい』

ルックウッド『はいっ、はいっ、ご主人様!し、失礼いたします!!』

ガタッ、ガタガタッ、ガタッ、バタンッ

?『……』

ツカッツカッツカッツカッ

ハニー「(……ルックウッド……エイブリー……それに……)」

ハニー「(今私の頭に流れてる……どんなお辞儀をさせてやろう、なんて……馬鹿みたいな、考え)」

ハニー「(あの、声……私の口、から……!)」

ハニー「(いやっ、いやっ……!鏡なん、て……見たく、な——)」


ヴォルデモート『招かれざる客には、まずは——おz——』




ハニー「いやあああああああああああああああああああああっっ!!!!!」

ハーマイオニー「ハニー!!ハニーーーーーー!!」

ガシャァァァァァン!

ロン「呼んだかい!?」

ハーマイオニー「頼もしいことだけど額に刺さりまくったガラス抜いて談話室で待ってなさいこの豚!」

ロン「ハニー以外が豚って呼ぶなよ!ヒンヒン!」

談話室

ハニー「……」

ロン「あぁハニー!二月って言ってもまだ寒いよね!存分に抱きしめてくれちゃっていいよ!無駄に広いからね僕の背中はね!ヒンヒン!」

ハーマイオニー「……ボードは、ルシウス・マルフォイに操られてた。そうして『神秘部』の中のどこだかに押し入ろうとして……そこにあった守りか呪いでしゃべられなくなって聖マンゴに入院した。そういうことね?」

ハニー「えぇ……『武器』のある部屋だわ、きっと……あいつがそうまでして欲してるのは、それしか考えられないもの」

ロン「まーたマルフォイの奴かよ、ほんと、大活躍してくれるよな……あいつが魔法省に入り浸ってたって理由がちょっと分かったよ。きっと、様子見したかったんだ」

ハニー「『悪魔の罠』を送りつけたのも、きっと……」

ハーマイオニー「……スタージス・ポドモア!そうだわ、彼も同じような目にあったのよ! 捕まる前のころから、様子がおかしいとムーディが言っていたもの!『服従』させられて、同じように『武器』を取り出すために『神秘部』に……捕まってしまったけど。いいえ、捕まってよかったのかしら、この場合」

ハニー「そうね……ボードの例や、ルックウッドの言っていたことからすると……誰にでも取り出せる、ということじゃないみたい」

ロン「でも、きっと今頃ルックウッドがそいつを持ち運ぶ方法を『あの人』に教えてるんだろうな……マー髭だよ」

ハニー「……いいえ。今は、あいつは……エイブリーを、罰してるわ。傷が焼けるように、痛いもの……」

ロン「……このこと、ダンブルドアに」

ハニー「話せないわ。だめよ……みんな、私がこういうものを見ないように、って望んでいるんだもの」

ハーマイオニー「……ねぇ、ハニー。確かにその通りよ。今後はスネイプの訓練にもっと身を入れないと」

ハニー「……」

ハーマイオニー「……えぇ、今言うことじゃなかったわ……ごめんなさい」

ロン「まったく君って配慮がなってて心優しい理解者だよな」

ハニー「……ロン」

ロン「ヒンヒン!なんだいハニー!」

ハニー「ハーマイオニーに、お辞——土下座なさい。アクロバティックに」

二週間後

スネイプの研究室

スネイプ「——立つのだ、ポッター。休んでいる暇はない」

ハニー「っ、はぁ。はぁ、っ、は、ぁ」

スネイプ「我輩はまだまだ満足しておらんぞ。さぁ、立ちたまえ」

ハニー「ちょ、っと……っ、いいわ。そうして、あげる。『先生』」

スネイプ「威勢だけはいい。だけは、な。さきほどの記憶はなんだね?」

ハニー「……分からない、分かりませんわ。どこ記憶のこと、かしら……っ、いとこが、私を……トイレの中に閉じ込めたところ?」

スネイプ「そうではない——あの暗い部屋と、そして跪いた男の光景だ」

ハニー「……」

スネイプ「君が他人に対して高圧的でそのような姿を取らせる反吐が出そうな趣味があるのは知っている。だが、あの男は——我輩の記憶が確かならば、オーガスタス・ルックウッドのように見受けたが?」

ハニー「あれは……あれは、なんでも」

スネイプ「……まったくもって腹立たしい提案だが、ポッター。こちらを見たまえ。さぁ」

ハニー「っ……」

スネイプ「……少し待て」

ツカツカツカツカ、バタンッ  オェーーーーーーッ! ガチャッ ツカツカツカツカッ

スネイプ「時間をとらせるな。さぁ。っ。目をこちらに向けて、もう一度聞こう。あの光景はなんだね?」

ハニー「あれは……っ、分かった、分かったわよ。ただの『夢』……それだけよ」

スネイプ「……夢、だと?ポッター」

ハニー「……えぇ」

スネイプ「君はここで何をしているのか自覚があるのかね。我輩がなぜこのような仕事のために夜の時間を割いているのか分かっているのか」

ハニー「……『閉心術』を学ぶため」

スネイプ「そうだ。しかし、いやはや。『継続は力なり』という言葉にこれほど信憑性がなくなる事例は初めて見ますな、ポッター。君は最初の訓練の時から、何一つ進歩していない」

ハニー「っ、わた、私、先生の言うとおりにやっていますわ。『先生』」

スネイプ「二ヶ月も特訓して何一つ、だ。君がどんなに鈍くとも少しは身についているものかと思ったのだが」

ハニー「……」

スネイプ「闇の帝王の夢をあと何回見たのかね」

ハニー「この一度っきりだわ」

スネイプ「おそらく君は、こういった幻覚や夢を見ることを楽しんでいるのだろう?いみじくも最初の日におっしゃっていましたな?『このつながりはこれまでは、役に立つことが多かった』」

ハニー「……」

スネイプ「自分が重要人物だと思われることを楽しんでいるのだろう? 自分が、特別に違いないと」

ハニー「……そんなものがなくったって、私は」

スネイプ「いいや、ポッター。貴様は特別でも重要でもない。黙っていたまえ。心を閉じたまえ。闇の帝王が死喰い人たちに何を話すのかを調べるのは、君の役目ではない」

ハニー「……えぇ、そうね。それは先生の仕事のはずだわ。それで、私以上の成果をあげられているのかしら?」

スネイプ「……」

ハニー「……」

スネイプ「その目でこちらを見るなと言っている。五点減点。つづける、用意しろ」

ハニー「えぇ、いつだって。っ、かかってきなさいよ、この……」

スネイプ「一——二——三——『レジリメンス!』」

ハニー「っ……!」





吸魂鬼 吸……
 吸魂… 吸魂鬼

——吸魂——こんなに——

スネイプ「———!」

ハニー「(三年生のときの、吸魂鬼たちの記憶……でも、いままでみたいにハッキリと、じゃない)」

ハニー「(杖を私に向けてる、スネイプの姿も見える……体が、動くわ)」

ハニー「(仕返して……やるわ……よくも、っ!)」

ハニー「『プロテゴ! 防げ!』」

スネイプ「!?」

ハニー「————っ……?」


————

———

——

— 

『お前が!!!お前のせいで——!!!!』

『やめて!あなた!!この子が見て、あぁ——!!!』

——もうやめてくれ——やめてくれ——お母さんに酷いこと——

ハニー「(あれ……あれって……鉤鼻の男の子が……泣いてる)」





ブーーン バチンッ
 ブーンブーンッ  ブチャッ!

——つぶれろ、つぶれろ——いつかあいつも——いいや——

ブチブチッ、グチャッ

——みんな、みんな——この力で——

ハニー「(さっきの子だわ……飛んでるハエを……つぶしてる)」





『みてよ、僕は——こんな、ことだって!飛ぶことも——うわっ!?』

ハニー「(??? さっきの子……嘘みたいに明るい顔、だわ)」

『ふふっ、セブ——それって飛んでるって言うより、きっと振り回されてるって言うのよ』

ハニー「(下で見ているのは……誰?この子の影になって——顔が)」

『あーぁ、あぁ!ほら、危ないけど、離さなきゃだめよ!あなた、そのまましがみついてたらパンツまで見えそう——』



スネイプ「もうたくさんだ!!!!!!」

バチンッ!!

ハニー「っ!?……あっ」

スネイプ「ふーーーっ、ふーーーーっ、ふーーーっ……」

ハニー「あ……もとの、部屋に……じゃぁ、今もしかして、私……」

スネイプ「ふーっ、ふーっ……」

ハニー「……スネイプの、記憶に」

スネイプ「……ふーーーっ。さて、ポッター……今のは確実に、進歩と言えよう」

ハニー「……と、当然、だわ。あー……せん」

スネイプ「質問は一切受け付けん。少し待て」

憂いの篩

スネイプ「……これもある、これも。これも入れた……我輩としたことが……っ」

ハニー「……憂いの篩に入れた記憶を確かめてるわ……やっぱり、あれって」

スネイプ「……さて、ポッター。君に大いなる進歩が見られたところで——もう一度だ」

ハニー「っ!?まさか、この人……本気で、本気で、怒って……散々人のを覗いていた、くせに!」

スネイプ「少々本気を出してもいいでしょうな? 進歩を見せてもらえたのですから」

ハニー「ま、待って頂戴!少し整理を、させ——」

スネイプ「問答無用。整理など必要ない、さきほどの記憶は我輩が今からかき消して進ぜよう……いーち、『レジリメンス!』」

ハニー「三までじゃ——あっ——」


————

———

——

— 

ザァァァァァァァァァァァァッ

——もうすぐだ——もうすぐ先にある——

ハニー「(ここって……また、あの廊下……?)」

ハニー「(すごい速さで動いて……まるで、飛んでるみたいに)」

——さぁ——ここだ——この扉——

ハニー「(いつもの、黒い大きな扉だわ……いつも、ここで……)」

バーーーーーンッッ!!

ハニー「(!?)」

——開いた——開いたぞ——次は——

ハニー「(うそっ——閉じたままだった、扉が)」

——さぁ、この部屋は——どの扉だったか——中は、光で——


スネイプ「ポッターーーー!!」

ハニー「っ、っはぁ、っ、ここ、ここは……お、お城、よね……ここ」

スネイプ「説明しろ……説明しろ!!どうなっている!!!」

ハニー「いたっ……肩、肩を離し、て!私、わたしだって、何が起こったのか分からないわ!あんなこと、今まで!あの扉の先になんて、これまで一度も——」

スネイプ「お前は十分な努力をしておらん!ポッター!怠け者でだらしなく、力も何もないのに思い上がる!!!」

ハニー「っ、そん——」

スネイプ「そんなことだから当然、闇の帝王が——」

ハニー「っ!ヴォルデモートをそう呼ぶ死喰い人もどきなあなたになにも——」



キャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!


スネイプ「!?」

ハニー「きゃぁ!?……な、なぁに、今の……悲鳴?」

スネイプ「……玄関ホールだ。ポッター、今日はこれまで。しかと復習し反省したまえ。一部記憶については即刻捨て去るように、いいか。我輩は、玄関ホールに向かう」

ツカッツカツカッ、ガチャッ、バタンッ!

ハニー「……何よ、あの、態度……それにしても、何が……私も、私も行かないと!」

ハニー「……並んで歩くのはごめんだから、もう少し待つけれど」

玄関ホール

ガヤガヤガヤガヤガヤ

ハニー「すごい人だかり……あそこ、階段で……アンブリッジともみ合っているのは……トレローニー?」


トレローニー「こんなこと認められませんわ!!!こんな、あぁ、あぁあああああ——!!」

バタバタバタバタンッ、ドサッ!
 キャーーーッ!


ラベンダー「あぁ、先生!ひどい格好に……あぁ、なんて」

パチル「先生……!」


アンブリッジ「あーら、ごめんあそばせ。足が引っかかってしまったようですわ。何せわたくし、足が長いものでして」

チッ チッ
 オエッ

アンブリッジ「ですがあなたがさっさと階段をお降りにならないのが悪いのよ。さっ、あなたの——荷物の一切です」

ポイッ ドサッ、ドサッ

ザワザワザワザワ

マクゴナガル「……」

トレローニー「いやよ!いやです!こんなこと、こんなことが、起こるはずが——!」

アンブリッジ「あら、あら、あら。あなた様の内なる眼は、こんなにも簡単に見通せるべき未来も見えなかったんですのね。まぁ、さもありなんというところでしょう。明日の天気さえろくすっぽ予測できない、無能力な似非予言者なのですから」

トレローニー「それは、それは!!あなたが——わたくしのような超越した神託者を邪推し、未来の波動を汚し——」

アンブリッジ「結構、わたくしは未来からの波長ではなくあなたの授業ぶり、進歩のなさを判断しましたの。その上で解雇は避けられない、これは当然至極のことですわ?」

トレローニー「あなたに、そんなこと、で、できないわ——おぉ、おぉぉぉぉ!わたくしを、クビ、クビになんて!ここはもう十六年も、わたくしの——家です!」

アンブリッジ「家“だった”のよ。あーら、あら。泣きじゃくる様は普通の人間のようですわねぇ?地に落ち、お香も焚かなければ、あなたもこんな顔をする方なのかしら?それとも、最初から?」

トレローニー「あぁ、あーああああぁあああ、おーいおいおいおいおい……」

アンブリッジ「トランクからお退きなさい。つい一時間前に魔法大臣が『解雇辞令』に署名なさった瞬間から、あなたはここの教師ではありませんの。即刻ホールから出ていってちょうだい、恥さらしですわ」

ザワザワザワザワザワ


ハニー「……っ、こんなこと、こんな真似……あんまりだわ。あの……!」

マクゴナガル「ポッター。とどまりなさい」

ハニー「! 先生、でも!!!」

マクゴナガル「これを。いいですか、私に近づけないように」

ハニー「は? えっと、これは……先生の杖、よね?」

マクゴナガル「そうでもしないと、私はあの蛙を本物のイボガエルに変えてしまいたくて仕方ありません。頼みますよ」

ツカッツカッツカッツカッ

ザワザワザワザワ
  マクゴナガルだ……! ザワザワザワザワ

アンブリッジ「……ふふーん?」

マクゴナガル「さぁ、さぁ。シビル……落ち着いて。これで鼻をおかみなさい」

トレローニー「グスッ、グスッ……み、ミネ、ルバ……?」

マクゴナガル「あなたが考えているほど、ひどいことではありません。ホグワーツを出ることにはなりませんよ?」

アンブリッジ「エヘンッ、エヘンッ! そうお思いですの? マクゴナガル先生?」

マクゴナガル「えぇ、当然です。そうですね、ドローレス。あなたは『教育令二十三号』にのっとって、教育水準に満たないと判断したシビルを解雇した、ここまではよろしい」

アンブリッジ「そうでしょう?なにせこれは、公的拘束力のある権利なのですから。ですから——」

マクゴナガル「それは教職を剥奪する権利、に限られています。ドローレス、あなたにシビルを職から退かせることはできても、『ホグワーツから』退かせることはできません」

ザワザワザワザワ

アンブリッジ「ふ、ふーーん?詭弁ですわ、詭弁!第一、その方は教師でもないのにどうしてこの城に置いておく道理があるというのです!?」

マクゴナガル「それは、決まっています。シビルは——あー」

シビル「グスッ、グスッ」

マクゴナガル「——私の友人です。私が、ホグワーツに彼女を残すべきだと判断します」

トレローニー「! みね、ミネルバぁ……」

ザワザワザワザワザワザワ!

ロン「うっわ、マジかよ!マクゴナガルが、あのトレローニーをかばったぜ!?やぁハニー!あの蛙豚みんなでつぶしていいかな」

ハーマイオニー「歴史的瞬間だわ……は、ハニー?すごいことになってるわね」

ハニー「えぇ……先生、がんばって」


アンブリッジ「ほほ、オホホホ、オーーーーーッホホホホホホホ!!!マクゴナガル先生!?あなたはもうすこーし論理的に話を進められる方だと思っていましたわ!あなたがそう宣言なさる権利が、いったい、どこに——」

ギィィィィィッ

「そうじゃのう、ミネルバ。大変、とてもとても、そりゃもうめちゃんこ感動的であり胸をうつ言葉だったのじゃが。残念ながらその権限は君にはないじゃろ——その権限を持っているのは、あぁ、ドローレス、君でもない」

ザワザワザワザワ

アンブリッジ「っ、まさか——」

ダンブルドア「わしじゃよっ」


ザワザワザワザワザワ!!

 ダンブルドアだ!!  うぜぇ! ザワザワザワザワ!
校庭で何やってたんだあの人!!

ダンブルドア「……諸君、わしもたまには傷つくんじゃよ?」

アンブリッジ「〜〜っ、ダンブルドア。では、あなたまで。あー、この無能な教師を?」

ダンブルドア「おーぉう、アンブリッジ先生。無能というのはいささか乱暴に過ぎる表現じゃ。シビルの能力は繊細で、かつ特異なものじゃて。のう、ミネルバ?」

マクゴナガル「……『占い学』の私個人的な重要性に関する評価は置いておくとして。その能力者の素質は天体や季節により大きく左右されるよ聞き及びます。見極めるのは半年では到底難しいでしょう、えぇ」

アンブリッジ「わたくしの査察に不備がある、と!?」

ダンブルドア「いーやいや、そうは言うとらん。別に。そんなことは言っておらんよ。単にこれは一般論じゃ。のうミネルバ?」

マクゴナガル「えぇ、至極当然な判断と言えましょう」

ダンブルドア「そういうわけで、城から職員を追い出す権限を有してるわしは。トレローニー先生に今後ともこの城に残っていただきたいと思っておる。『占い』の極意は一日、半年にしてならず。その可能性を、ここで研究していただきたい」

アンブリッジ「〜〜〜っ!」

ダンブルドア「ご友人であり、副校長のミネルバの後押しもあることじゃしのう。さて、これがわしの最終決定じゃ。アンブリッジ先生、何か御託は?」

アンブリッジ「……っ、ありま、せんわ」

ダンブルドア「よろし。ミネルバよ、シビルに付き添って上までつれていってくれるかの。その足では歩くのは困難じゃろうて。大丈夫じゃシビル、労災は魔法省からがっぽりとっておくからの」

シビル「っ、ぇぅっ、ダンブルドア、ぜんぜぇ、わたくし、うっぅ、ミネルバぁ……!」

マクゴナガル「はいはい、分かりましたから。行きますよ、お立ちなさい」

フリットウィック「私もお供いたしましょう。『ロコモーター・トランク』」

トランク フワフワフワフワ

ダンブルドア「頼みましたぞ、先生方。さて、アンブリッジ先生?あなたが集めなすったこの大観衆は夕食もまだなのじゃ。そろそろ大広間に行きませんかのう?エスコートいたしますぞ、っぷ」

アンブリッジ「……ひとつだけ。わたくしが新しい『占い学』の教師を任命し、あの方の今使っている住処を使う必要が出れば!もちろんあの方は立ち退くと……」

ダンブルドア「おぉ、ご心配には及ばんよ。わし、もう新しい教師は見つけておるからのう。彼の事情からみて、一階に住むのが望ましいじゃろ。地より足を離すのは懸命ではない、そう言っておった」


ザワザワザワザワ

ロン「新任教師……?マジかよ、もしかしてそれの迎えにいってたってのか?」

ハーマイオニー「まさか……だって、ファッジが解雇したのは一時間前と言っていたわよ?そんな短時間で」

ハニー「……どうしてあの腹黒のローブ、裾に枝がついているのかしら」


アンブリッジ「み、みつけた!?きょ、教育令二十二号によれば——」

ダンブルドア「それは、『校長が適任者を見つけられなかった場合』の権利じゃろ。惜しかったの、書状をもうちーっとよくばればよかったのじゃ」

アンブリッジ「〜〜〜っ!誰、誰ですの、いったい!どこの、馬の骨で!!!」

ダンブルドア「おぉーう、いみじくも半分正解じゃ。ドローレス、あなたに任せてもよかったかのう……どれ、こちらへ」


ガチャッ

パカッパカッパカラッ

ザワザワザワザワザワザワザワ

キャーーー!キャーーーー! カッコイーーーーー!

アンブリッジ「」

ハニー「」

フィレンツェ「賃金はいりません。この空間は私にとっての真理、そして……ふぅ。こんにちは、みなさん。二つの意味で下半身が馬並み、ケンタウルスのフィレンツェです」




ハニー「ダンブルドア!!!!ちょっとこっち……!!にげ、逃げるんじゃないわよこの、この豚ぁああああああああああああああああああああ!!!」

フィレンツェ「! もっと!もっとです!ハニー・ポ……ふぅ。あぁ、あなたが一番豚ですか。おうわさはかねがね。そしてお隣の……えぇ、期待していまふぅ」

ハーマイオニー「」

ロン「オーケー、この野郎。マーリンの髭から教え込んでやろうじゃないか、もちのロンでね」

いったんここで区切る
十時前には戻る
じゃあの

再開

二日後

大広間

ガヤガヤガヤガヤ

ラベンダー「ねぇハーマイオニー、あなた、『占い学』を辞めた事後悔してるでしょ?」

ハーマイオニー「まさか」

パーバティ「うそ。だって彼って、あぁ!とーってもハンサムじゃない?」

ハーマイオニー「見解の相違ね。足が四本あるようなボーイフレンドなんてまっぴらよ」

ハニー「前足はいいと思うわ」

ハーマイオニー「ハニー、そういう話ではなくって」

ロン「ったく、ほーんと女の子ってミーハーックハートとだよな」

ハーマイオニー「ロン、最後の造語は一体どういうおつもりなおかお聞かせ願えるかしら……第一ねぇ、ラベンダー、パーバティ」

ラベンダー「ラベパティでいいわよ」

パーバティ「言いづらいでしょ?」

ハーマイオニー「何その妥協……ラベパティ、あなたたちってトレローニーを慕っていたように思うけど。もう鞍替え?」

ロン「馬だけにね」

ハーマイオニー「上手かないわよ」

ラベンダー「もちろん、トレローニー先生だって心配よ!」

パーバティ「私たち昨日、ラッパ水仙をもってお見舞いに行ったの!」

ハニー「どんな様子だったのかしら」

ラベンダー「酷く落ちこんでたわ……当然よ、あんなことをされたんですもの」

パーバティ「で、も!それはそれ、これはこれよ!ああラベンダー、私のまつげ、ちゃんとカールされてる?」

キャイキャイキャイ

ハニー「……話してみるまでの、淡い希望を抱いているといいわ。えぇ」

ハーマイオニー「あのときは黄色い歓声でほとんどに聞こえてなかったのよね」

ロン「豚どもには一級配備をさせてるけどね。ありゃ同胞は同胞でもありえないよ、うん。ヒンヒン」

ネビル「おはようハニー!ヒンヒン!ハーマイオニー、ロン、ラベパティも」

シェーマス「ヒンヒン!遅くなってごめんよ、今日の君も女神だね、知ってたけど」

ディーン「今日の一時間目はあの下のネタ馬だろ?豚みんなでフォーメーションを確認してたんだ」

ハニー「ハァイ、豚さんたち。ご苦労様、頼もしい子達ばかりで心強いわ。しっかりね?」

ヒンヒーーーン!

ハーマイオニー「あなたは参加しなくてよかったの?」

ロン「そりゃ、僕ぁハニーの下で指揮官だからね」

ハーマイオニー「下なんだか上なんだか……まぁ、いいわ。ハニー、間違っても何かされたら教えてね」

ハニー「平気よ、しつけてやるまでだもの」

ハーマイオニー「それでも、よ。今夜の晩餐が馬のたたきになるでしょうけどね……あぁ、たたきといえば。叩きのめされた気分でしょうアンブリッジの様子は、どうかしら」

ロン「朝から不快な単語を耳に入れさせるなよな……相変わらず気持ち悪い、もとい意地悪い顔してら。うっぷ」

ハニー「フィレンツェが就任した時の驚愕顔といったらなかったわね。私もだけれど」

ハーマイオニー「よりにもよって、アンブリッジが嫌う半人間だもの……あー、もしも悪化したらどうしましょう」

ロン「悪化、って。これ以上悪化したらどうするってんだい?え?ホグワーツは石の壁が砂になって朽ち果てっちまうよ、もちのロンで」

ハーマイオニー「顔の話じゃなくて。あのひ、蛙、今頃必死になってダンブルドアへの反撃を探してるわよ」

ハニー「……掴まるハエが、いないといいけれど」


アンブリッジ「……っ」

11号教室

ラベンダー「掲示板に書いてあったわ。今度からここが『占い学』の教室だ、って」

パーバティ「それはそうよね。彼があの蹄ではしごを登れるわけがないもの……それを補う顔があるけどっ!」

ロン「けっ、何が顔だよ。そんなもんハニーのご尊顔の前じゃみーんなトロールに等しいってのにさ」

ハニー「否定はしないけれど、ハーマイオニーは除きなさい。私とあなたのために。さっ、入りましょう?」

ガチャッ

サーーーーァッ

ハニー「……これって……なぁに?どういうこと?」

ネビル「わぁ……城の中なのに、森になってる!」

ロン「奴さんの住処に合わせたのかな……おっと、もういるぜ。こっちきた。全員緊張を解くなよ?ヒンヒン!」

ヒンヒン!

フィレンツェ「君たちで最後のようです。ハニー・ポッター……またお会いできて光栄です」

ザワザワザワザワ

ラベンダー「! またハニーばっかり!でも、美男美女!いいわ!」

パーバティ「ハッ!四足動物におk」

ロン「パーバティ、それ以上喋ったらどこかで誰かのハーマイが取れるぜ」

ハニー「あら……ハァイ、馬豚。どうやら今朝は少しマシのようね。ええ、握手を——」

フィレンツェ「ハッハ、それはもう。何せ朝から五回戦ですk——」

ロン「ハニーの手に触るなこの野郎!!!マーリンの髭!!!」

フィレンツェ「ハッハッハ、戦と言っても相手はいませんから、いわゆるソロp——」

ロン「喋るなって言ってんだよ!!マーリンの髭!髭!!授業始めろよ!!」

ハニー「? 何を怒っているのかしら、ロン……?」

ロン「いや、いや。なんでもないよハニー……この馬野郎疲れるね本当に」

ハニー「それには同意するわ」

フィレンツェ「改めて……やぁ、グリフィンドール生のみなさん」

キャーキャー!

ラベンダー「おはようございます!先生!」

パーバティ「先生!先生!」

フィレンツェ「……ふーっ。 ダンブルドアのご好意で、この教室が準備されました。光栄に思います」

ハニー「……なんとか耐えているみたいね」

ロン「今すぐそっちの話題にふりたくてたまらないって顔してるぜ、うん、僕らは分かるぜあの目線あの馬野郎」

フィレンツェ「この森の風景は、私が住んでいた『禁じられた森』に似せられています。つい先日まで私もそこで暮らしていました。豊かに、開放的に。野外で行う……なんでもありません。火星が綺麗ですね」

ハニー「朝よ今は」

シェーマス「先生、ぼく達あの森にはハグリッドと一緒に入ったことがあります!怖くはありません!ハニーがついてmすし!」

フィレンツェ「いえ、何も君たちの臆病を心配したのではありませんよ……私が、あの森に戻ることが叶わないのです。群れから追放されたので」

ザワザワザワ

ラベンダー「群れ……?あっ、分かった!先生のお仲間が、もっとたくさん……?」

パーバティ「男女比が!男女比が知りたいです!男が多いですか!上半身裸の雄がっっっ!!!」

ディーン「へぇ、あの森に……あっ!ハグリッドが繁殖させたんですか?セストラルみたいに…………あっ」

フィレンツェ「————」

ディーン「あ……あの、気に触る言い方をしたなら、その」

フィレンツェ「私たちケンタウルスはヒトの召使いでも、ペットでもありません——ハニー・ポッター、あなたのようなおにゃのこになら喜んで踏まれまs——」

ハニー「脱線するわ黙りなさい」

フィレンツェ「——オホン。とにかく、我々は特に人の世話により維持されているわけではありません。……あっ、ですが夜のお供にはよくつかわせてもr」

ロン「もう君抑える気ないだろそろそろ」

パーバティ「あの、ちなみに……ど、どうして先生は追放されたのでしょうか……」 

フィレンツェ「それは……ケンタウルス族はヒトのために働くことをよしとしません。仲間は、これが我々種族を裏切ることだと見ているのです」

…………

フィレンツェ「……酷い罵声、いえ、馬声を浴びせられました……それはもう……お前ばかりズルイぞ、間近でおにゃのこの臭いをかげるだと、少し顔がいいからって、爆発してしまえ、もげろ、と……それは、それはもう」

ハニー「……判断基準のブレなさに関心しるわ、そこまでくると」

フィレンツェ「さて……それではそろそろ授業に入りましょう」

ハニー「長いわよ……」

フィレンツェ「ナニがですか?長いですよ?」

ロン「ディフィンどってもいいんだぜ」

フィンレンツェ「これはこわい。さて、おにゃの、オホン。女の子達。準備をしましょう……」

ラベンダー「えー、何を教えてくれるんですか、せんせー!」

パーバティ「知りたい知りたいー!おしえてー!」

キャイキャイキャイキャイ

フィンレンツェ「……それでは、まずは…………そうですね。みなさんのおツンパを見せていただいて占うケンタウルスの秘儀を……ふぅ。……あっ」

ラベンダー「……」

パーバティ「……」

フィレンツェ「……」

ラベンダー「きゃーっ、せんせーったらー!」

パーバティ「下ネタなんてさいてーっ!」

でもせんせーなら許しちゃうー!
 イケメンは正義ーーー!

キャイキャイ、キャイキャイ

フィレンツェ「あぁ——ここが————われらが目指した——境地でしたか————っっっ!!!!」

ロン「うわぁ本気でぶっ飛ばしたい……もうハニーの護衛関係なしにぶっ飛ばしたいなんだあいつイケメンってなんだちくしょうマー髭!!!!!マー髭!!!!!!」

ハニー「安心なさい、ロン。そろそろころあいね。少し大人しくしてもらいましょう、あの駄馬には」

馬豚「ヒト族に言う『占星術』とはバカげた考えです。些細な怪我や事故など、星が示すはずはありません」

馬豚「そうしたものは広大な宇宙にとって、忙しく這い回る蟻程度の意味しかないからです。それは、間違っても惑星の動きに影響されるようなものではありません」

馬豚「ヒトの限界により束縛された視野や、発想。それらを捨て、ケンタウロスの叡智をみなさんには学んでもらいます」

馬豚「自己満足の戯言でなく、個人的なものや偏見から離れ。星々に記された邪悪なものや『変化の潮流』を見極めるのです」

馬豚「えぇ——我々が今見ているものが何事か読み解くのに、何十年という歳月がかかることさえあります」

馬豚「あの、我々の真上にある赤い星」

馬豚「この十年間ほど、魔法界が二つの戦争の合間の静けさを生きていると、あの星は記しています。一つはみなさんも知る戦い——そして、それが再び巻き起こる予兆」

馬豚「ケンタウルスはそれがどれくらい差し迫っているか、を。薬草や木の葉を燃やし、その炎、そして煙で読み取ります。さぁ、火を。占いましょう」





馬豚「えぇ、ヒトよ。何も読み取れなくてもかまいません。ヒトがこれを得意だったためしは私もほとんど見たことがありませんし、ケンタウルスでさえ読み違えることがあるのです……」

馬豚「どちらにせよ、こんなことを信用しすぎるのは愚かだ、そうでしょう?全ての真理は……あなたがたのスカートの中にあ、ふぅ……おや、終業のようですね」

ジリリリリリリリリリリリリリッ

ガヤガヤガヤガヤ

ロン「……ギャップが凄かったけどさ、あと一歩だったねありゃ」

ハニー「はなからあまり期待していないわ……トレローニーの占星術を否定されて、ラベパティは始業の時ほどフィレンツェにぞっこんではなくなったみたい」

ロン「そりゃいいや、もちのロンで」

馬豚「ハニー・ポッター。少しいいですか?」

ハニー「……えぇ、なぁに?大人しいなら少しだけ聞いてあげる」

馬豚「あなたはハグリッドの友人だと覚えています。なんと羨ましい。踏まれ放題で……ふぅ。いいえ、あなたの前には等しく豚でしたね」

ハニー「分かってるなら大人しくしなさい」

馬豚「ハグリッドに伝言を。彼のやろうとしていることは、上手くいきません。放棄するほうがいい、と」

ハニー「……ハグリッドの、やろうとしていること?」

馬豚「えぇ……彼はとても優しい。彼の魔法生物にかける愛情は、あなたのものと並ぶほど尊敬に値します。私の口から、彼の行動をあなたにお伝えすることはできません。彼と私の友情にかけて。ですが、誰かが目を覚ましてやらなくてはいけません」

ハニー「そこで私、というわけね」

ロン「君、目は確かみたいじゃないか。同胞」

馬豚「えぇ、それはもう。おにゃのこなら千里先からだって」

ハニー「締まらないわね、もう」

四月

『魔法動物飼育学』

ザァァァァァァァァァァッ

ハニー「大雨でさすがにアンブリッジは城から出てこないわね」

ハグリッド「変だなぁ、むしろ喜ぶんじゃねぇかと思って、俺ぁ色々準備しとったんだが」

ロン「もう完全に蛙か何かとみなしてるよな、君。正しいけどさ、正解じゃないんだよな」

ハーマイオニー「ハグリッド、聞いて頂戴。フィレンツェからの伝言」

ハニー「あなたのやろうとしていることは上手くいかない、って。放棄したほうが懸命だ、って言っていたわ」

ハグリッド「! そ、そうか……あぁ、フィレンツェはいい奴だ……同胞だし……ちょっと感情きまますぎるところがあるが」

ロン「ちょっと?」

ハグリッド「言わんでやってくれや。あぁ、けどよぉ。これに関してはあいつはなんにもわかってねえ。俺は、あのことはうまくやっとる。うん」

ハーマイオニー「ねぇ、ハグリッド!いい加減に教えてくれてもいいじゃない、何をしているの?」

ハニー「……」

ハーマイオニー「気をつけないといけないわ。アンブリッジは、トレローニーをクビにしたことで勢いづいてるわ。ハグリッドが何か、何か——不利になるようなことをしていたら、きっとそれを」

ハグリッド「世の中にはな。職を守るよりも大切なことがある。そうだろうが?」

ハーマイオニー「……それは」

ハニー「……私、とか」

ロン「すべてだなぁ」

ハグリッド「あぁ、ハニーだな。ヒンヒン……あとは、そうさな。家族……うん。なんちゅうても、血ってもんは大事だ……」

ハニー「……戻りましょう、二人とも」

ロン「ヒンヒン。君がそういうならね」

ハーマイオニー「っ、ハニー、でも……」

ハニー「ハグリッド、これだけは忘れないで。あなたは、私、わたしの大切な 家族も同然なんだから。どうしようもなくなったら、頼ること。いいわね?」

ハグリッド「っ、ハニー、あぁ……山も動かしたくなるくれぇ困ったら、そうすらぁ!ヒンヒン!女神!おめぇさんは女神だ!ヒンヒーーーン!」

談話室

ロン「あのババア蛙のこと、ハグリッドのこと。これだけでも心配山盛りなのに、クィディッチのこと、宿題……それにー、あーあ!マーリンの髭!先生たちは『OWL!OWL!』って!頭が燃えっちまうよ!」

ハーマイオニー「その色の通りにね……仕方ないじゃない。試験まであと……たった……やめましょう。考えたくないわ」

ロン「き、君がそんなに思い悩んじまったら僕なんて寝込まないといけなくなるじゃないか!やめろよ!ハニーの永久クッションは僕だぞ!」

ハニー「わざわざ宣言しなくってもそのつもりよ……五年生や七年生はもう参ってしまってるみたいね」


フレッド「さーぁさぁお集まりのみなみなさま!最後に僕のこのすってきな顔をよーく覚えておいてくれよ? ハイッ!」

ジョージ「あら不思議、帽子を被ると首がなくなる『首なし帽子』!ニックが嫉妬間違いなしの代物!一個2ガリオン!」

ガヤガヤガヤガヤ!


ハニー「……あの二人以外は」

ハーマイオニー「……『透明呪文』には間違いないわね……その効果範囲を帽子から延長させてるわね。効き目は長持ちしないでしょうけど、かなり賢いやりかただわ」

ロン「あーぁ、試験に興味ないって二人がそんなんなんだものな……マーリンの髭だよ」

ハーマイオニー「宝の持ち腐れ、と変換させてもらうわ……受ける気がない、って。あれ、本気だと思う?」

ハニー「さぁ、どうかしら。きっと二人とも……タイミングを待っているように思うわね。何かの」

ロン「何か、ってなんだい?あぁハニー、推理する君の冴えきった顔もすばらしいね、ヒンヒン」

ハニー「何かしでかすのに一番いいタイミング、ってこと……タイミング、といえば。DAの方も、そろそろあれに移っていいころだと思うわ……みんな、とっても上達したことだもの」

ハーマイオニー「あれ、って……あっ!本当なの、ハニー!?それじゃ、明日の集会から……?」

ハニー「えぇ……『守護霊の呪文』を、始めるわ」

翌日放課後

必要の部屋

ハニー「……ここにいるみんななら、全員が『闇の魔術に対する防衛術』のOWLで『O・優』の評価でもおかしくないわ!えぇ、みんな、とっても上手!」

ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ
 ザワザワザワザワ
パタパタパタパタ ケーケーッ ピチピチピチ

ロン「守護霊の大合唱だなぁ……なんだか部屋の中が眩しいよ」

ハーマイオニー「みんな、は言いすぎだけど。何人かは、上手く出せるようになってるわね」

ハニー「上出来よ、上出来。私の最初の頃なんて——完璧だったけれど。『吸魂鬼』に変身した『まね妖怪』のせいで酷い目にあったわ」

ラベンダー「そ、そんな怖い手段勘弁してほしいわ!私、こんな、煙みたいなのしか、出ないのに!」

ハニー「幸せな思い出よ、ラベンダー」

ラベンダー「うーん、考えてるのよ?今度の新刊のこととか——『エクスペクト・パトローナム!』あぁ、やっぱり——枯れた薔薇みたいなものしか落ちてこないわ」

ハーマイオニー「まずあなたは幸せの定義から考え直しましょうか……ネビルも、苦労してるわね」

ネビル「うーーん、うーーーん。考えてるんあ、けどなぁ」

ハニー「ネビル……頑張って」フーッ

ネビル「! ヒンヒン!ありがとうハニー!『エクスペクト・パトr——』」

ブォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

ネビル「うわぁ!?な、なんでホラ貝……う、うわぁ!?光るホラ貝だ……あれ!?!?生き物じゃ、あれぇ!?!?!?!?」

ハニー「ルーナ。あなたも成功したみたいね」

ルーナ「うん、ウサギだって。『スノーカック』かなって思ってたんだけど、これも可愛いからいいかな」

ハニー「なんとなーく、あなたならすぐ出来そうだと思ってたわ」

ルーナ「ん、あたしも。ここにいれば大体幸せだもン、あたし」

ハニー「……? 楽しくは、あるでしょうけれど。それって……きゃっ!?」

チョウ「ハニー、ハニー!見て、私も成功したわ!」

ハニー「ちょ、チョウ。もう、いきなり後ろから飛びついてくるは……白鳥?」

チョウ「うん、そうなの。とっても可愛いでしょう?」

ハニー「あー、そうね。でも、一応言っておくわよ?それはあなたたちを守るものなんだから……可愛くってもあまり」

チョウ「あら、可愛かったら他の誰かが守ってくれるんじゃない?違う?」

ハニー「……あなたねぇ、もう」

チョウ「ふふっ、冗談よ。この子も強い鳥になったらいいな……マリエッタも今日こそ来るべきだったのに。もったいない」

ハニー「……そういえば、今日はお休みね?」

チョウ「ええ。少し体調が悪いんですって。後で介抱してあげなくっちゃ……あら、ふふっ。あの子は友達よ?」

ハニー「そうでしょうね、えぇ。ルーナと二人で守護霊を観察していてくれる?  人の姿になったりするかもしれないから」

チョウ「そう、それじゃ……えっ???ひ、人????」

ルーナ「やっぱり、変わってるなぁ」

ハニー「……ねぇ、ハーマイオニー、ロン」

ハーマイオニー「あぁ、おかえりなさい。ねぇ、みて……ほんとに、ちょっと素敵じゃない?」

パタパタパタ クーッ

ロン「カワウソの守護霊かぁ。君にしちゃ随分可愛らしいよな」

ハニー「ハーマイオニーだから、でしょう? ねぇ、聞いて頂戴。チョウのお友達の——あら?」

ギィィィィッ、バタンッ

ハニー「? 誰かが入ってきた音が、したと思ったのだけれど……」

ハーマイオニー「? 本当……待って、おかしいわ。この部屋は……内側から、閂をかけてあるのに!」

ロン「っ、シーンとしてら。おい、みんなどうしたってんだ!?ヒンヒン!」




「ヒン、ヒンにございます……」

ハニー「きゃぁ!? あ、足元から、急に……ドビー!?」

ドビー「ハニー・ポッター、ハニー・ポッター様!ドビー、ドビーめは、ご注進に参りましてございます……」

ハニー「あら、そうなの。どうしたというの?お願いなら聞いて……聞いて、あげるけれど。ドビー……そんなに震えて、一体、何を……?」

ドビー「ドビーめは、ドビーめはたまたまお聞きしたのでございます——ですがドビーは今、このお城に使える屋敷しもべ妖精ですので——あの方に喋ってはいけないと、戒められているのです、ですが、あぁ、あぁぁぁ!ドビーは、ドビーは……!!!」

ハニー「っ、やめて!!!!ロン、ドビーの腕を押さえて!!!」

ロン「合点さハニー!おい同胞、落ち着けよ!!」

キャァア!?
 ザワザワザワ

ハニー「ドビー、どうしたの。何があったの」

ドビー「あっ、あぁ、ハニー・ポッター。あの人が、あの女、が……!恐ろしい女かえrドビーは悪い子!!!!」

ロン「いってぇ!!マー髭!!!」

ハニー「あの人っていうのは、誰なの!?ドビー、あの女って!言いかけたのは……まさか……アンブリ、ッジ?」

ドビー「っ!ドビー、ドビーは……!」

ハニー「だって、そんなはずないわ。ここのことは——DAのことはバレる、はずが——ドビー」

ドビー「ぅっ、ぅぅっ、ドビー、は……!」

ハニー「……ドビー。アンブリッジが……ここを突き止めて。今すぐここに、乗り込んでこようと……しているのね?」

ドビー「っ、そうです!ハニー・ポッター、そうです!!!」

ハニー「……」

ロン「……」

ハーマイオニー「……」

…………

ハニー「……何をグズグズしてるの!!みんな、逃げて!!!!早く、逃げて!!!!」

キャァアアアアアアア!!
  ドタバタドタバタドタドタ、バターーーンッ!バタバタバタ ブォオオオオオオッ!!

ハニー「行って!!ロン、ハーマイオニー!!先に行って!!」

ロン「っ、そんなこと出来るか!ハニー、僕がなんのために君の一番の豚をしてると——」

ハニー「いいから行きなさい!バラバラに逃げたほうが、固まって動くよりも安全よ! いって!!!ハーマイオニーと、二人で!」

ロン「……ハーマイオニー、乗れ!特別だぜ、君だからね!」

ハーマイオニー「っ、ハニー、絶対に、絶対に、談話室で!」

ハニー「えぇ、今日は寝れないものと思いなさい!」

バタバタバタバタ ドタドタドタ……

ハニー「……私は、こっちをどうしても。ほうっておけないわ。おけるわけが、ない」

ハニー「ドビー、ドビー!!私を見なさい!!自分を殴ろうとするのはやめて!たとえあなた自身であろうとも、私の豚を傷つけるのは許さないわよ!?」

ドビー「うぅ、ハニー・ポッター……ヒン、ヒンヒン!」

ハニー「よく知らせてくれたわ。あなたのお城に対する恩義まで裏切って。あなたは出来る豚ね。自慢の豚よ」

ドビー「っ、滅相もございません、ハニー・ポッター……!ドビーめは、あなたさまのためならば……!」

ハニー「それなら、お願いしてあげるわ。今すぐ厨房に戻りなさい。他の妖精の仲間と一緒にいて、もしも、誰からでも私に警告したのかと聴かれても『ノー!』といいなさい。これは私の命令よ。いい?この、私の!」

ドビー「っ、ありがとう、ありがとう、ハニー・ポッター!ヒンヒン!」

バチンッ!

ハニー「行ったわね……さぁ、私も急がないと」

バタンッ

ハニー「……夜なんて怖くないわ。当たり前じゃないの。退屈とは程遠いわね、えぇ!」

バッ!

ハニー「マートルの、女子トイレに! そこにいれば、彼女が——あぁああああっ!?」

グイッ、バターーーーーン!

ハニー「っ、足が、急に……縫い合わされたみたい、に……」


「フォッフォッフォーーーイ! ゴホン はっはっはー!ざまぁみろ、ポッター!」

ハニー「この、声……っ、どこまでも、うるさいわよ!マルフォイ!」

マルフォイ「吼えていろ、精々ね。先生、アンブリッジ先生!一人捕まえました、ポッター、ポッターです!士気が高マルフォイ!」

ハニー「うるさいって言ってるの!!!この、この……!」

アンブリッジ「まぁ、まぁまぁ!本丸フォイじゃない、ドラコ!よくやりました!五十点あげましょう! さぁさぁささぁ。ポッター? 年貢の納め時、ですわねぇぇ??」

今日はここまで
このスレは次のアルバスが粋な件で締める。回収はそこが区切りがいい
明日の夕方以降
じゃあの!

再開

校長室前

ガーゴイル「なんだなんだ、今日はお客さんで一杯だな。茶でも一杯淹れるか?おっと、口から出る水だけど勘弁しろよ、何せ今の俺はガーゴイルだからな」

アンブリッジ「お黙りなさい。『フィフィフィズビ〜』」

ガーゴイル「はいはい、どうも」

ピョンッ

ハニー「……校長室の入り口ね」

アンブリッジ「さぁ、階段をお進みなさいミス・ポッター。さながら断頭台に登る囚人のようですわねぇ?」

ハニー「……えぇ、そうね。最期だというのに動く階段だなんて、さすが私への待遇といったところかしら」

アンブリッジ「口が減らないこと。その御足に刻まれた言葉を思い出して一生反省なさいな」

クルクルクルクル……

ハニー「……(みんなは逃げ切れたかしら)」

ハニー「(もしも退学になんてなったら……モリーお母様は、ロンを許してくれるかしら)」

ハニー「(ハーマイオニーは……OWLを受けられないとなったら、どうなってしまうの)」

ハニー「(ネビルはあんなに……せっかく上達していたのに……杖が折られてしまうなんて)」

ハニー「……」

アンブリッジ「よろしい、随分と大人しくなったようですわね? けど、今から存分に吐いて、おっと、証言していただきますのよ?証人として……さぁ、着きましたわ」

ガチャッ

ダンブルドア「ドーリッシュ、君に会うのは久しぶりじゃのう。よもやファッジの護衛になっておるとは、宝の持ち腐れとはこのこと……」

ドーリッシュ「……客のようですが」

ダンブルドア「ほうそうかね気づかんかったわい……おや、こんばんは、アンブリッジ先生。さっきぶりじゃの」

アンブリッジ「えーぇ、ダンブルドア。宣言通り、当事者たちを捕まえてきましたわ!」

ハニー「……」

ダンブルドア「……ふむ?」

ファッジ「でかした!でかしたぞドローレス!」

アンブリッジ「いいえ大臣当然のことですわあぁ大臣!!!」

ファッジ「ウェーザビー!記録の準備はいいな!!」

パーシー「はい大臣!!もちろんですともあぁ大臣!!!」

ハニー「……パーシー。それに」

ファッジ「いいか、キングズリー!ポッターとダンブルドアが不信な動きをしないかあたm、ごほん、目を光らせているのだぞ!ドーリッシュも!」

キングズリー「えぇ、大臣。耳も存分に澄ませていますので、あとで給与についてお話があります」

ハニー「……」

マクゴナガル「……アンブリッジ先生。ポッターは無様に逃げるような真似はしません。肩を離しておやりなさい」

ハニー「……先生まで」

ファッジ「さーて、さてさて。歴代校長もどうやらお目覚めのようだ。ここで世紀の大裁きといこう」

エバラード『……』

ディリス『……』

フィニアス『……なんだというのだ、人がせっかく寝ているというのに……おや、愚かな娘がまた自分勝手を起こしでもしたのかね』

アンブリッジ「そうですとも。大臣、この子はグリフィンドール塔に戻る途中でしたわ!マルフォイ君がこの子を追い詰めたのです!」

ファッジ「なんと、そうか!ほーう、さすがはルシウスの息子!花丸フォイだ! さて、ポッター。どうしてここに連れて来られたか、わかっているだろうね?」

ハニー「……それは、当然——」

フォークス「フィ〜♪」

ダンブルドア「何じゃねフォークス、急に歌いだすとは。燃焼日が近いのかの?え?違う?そうじゃない?ほう、となれば痴呆かね。ほっほ、わしより先にボケるとは難儀じゃのう」

ハニー「……」

ファッジ「少し黙っていろそこのボケ老人!!!おっほん!!とうぜん、なんだね!?え!?」

ハニー「……当然、何がなんだか分からないわ」

ファッジ「……はぁ!?」

フォークス「フィ〜フィ、フィヒィ〜ン♪」

ハニー「っ、えぇ。この私に、いきなりこんなまねをして。どういうつもりなのかしら」

ファッジ「な、なにを、まったく分からないと?え?笑わせてくれる。校則を破った覚えはないというのかね?」

ハニー「校則?なんのことかしら」

ファッジ「な、魔法省令はどうだ?」

ハニー「私の友人はありがたいことに全部記憶しているけれど、それにそむくようなことはなんにも?」

ファッジ「……では、これも初耳だというのかね?うん? 学内に、違法な学生組織があると発覚したのだが?」

ハニー「えぇ、なぁにそれ。聞いたこともないわ。私の豚たちのことを言っているのならば……」

ファッジ「そんなものではない!いや、似たようなものか……そうか、シラを切るつもりなのだな?そのつもりなら……」

アンブリッジ「大臣、通報者を連れてきましょう!それなら話も早いはずです。ポッターも意地をはれなくなるでしょう!」

ファッジ「あぁ、うむ。そうしてくれ」

ボテッボテッボテッ、ガチャッ、バタンッ!

ファッジ「……なんと言ってもちゃんとした目撃者が一番だ、そうだろダンブルドア?」

ダンブルドア「そんで、どうじゃねドーリッシュ。そちらではどのくらい貰っておるのじゃ?来年あたりの『闇の魔術に対する防衛』なんちゃらの授業とか受け持つ気ないかの?二倍までなら勉強するぞ?」

ドーリッシュ「……」

ファッジ「聞けよボケ老人!!!!」

ダンブルドア「うん、なんじゃねコーネリウス。ドローレスがいないと空気が美味しいとか、そういうことじゃったかの」

ファッジ「ちがっ!ち、違うが、まぁ、否定は……そういう話ではない!!!ウェーザビー!今のところは食べておけ!!」

パーシー「はい大臣もちろんですともえぇ大臣モシャモシャ!!!」

数分後

ガチャッ

マリエッタ「うぅっ、ぅっ、うっ、うぅ……グスッ、グスッ」

アンブリッジ「さ、さぁさ。お進みなさい、怖がることはないのですよ?」

ハニー「……チョウの友達の……随分泣いて、顔が見えないわ」

マクゴナガル「! ドローレス!よもや、そのこを脅して無理やり聞き出したのではないでしょうね!?!?」

アンブリッジ「そんなことはありませんわ、黙っていらして! この子は、正義感をもってわたくしに教えてくれたのですわ!大臣、この子のお母様は煙突飛行ネットワーク室のエッジコム夫人です——わたくしが煙突を見張るのにも協力してくれた、あの夫人ですわ」

ファッジ「結構、結構!なんと賢明で正しい母子だろう!さぁ、顔をあげて泣き止みなさい! 大丈夫、ポッターが何かしようとしても私が味方して……な、なんと!?」

マリエッタ「うぅ、うっ、こんな、こんな顔、に、なっちゃう、なんて、う、うわぁああーーぁあああん!」

ハニー「……顔中、紫色のできもので……『密告者』……えげつないことするわ、あの子ったら」

アンブリッジ「さ、さぁさぁ!そんなできものなんて気にしないで、大臣へわたくしに教えてくれたことをお話しして……」

マリエッタ「いや、いやああああああ!!もう酷く、うぅっ、これ以上酷くなるのはいやぁあああああ!!ああああああん!!」

アンブリッジ「っ、なんてバカな子!!よろしいですわ、わたくしからお話しします。ウェーザビー、記録を!」

パーシー「はい高等尋問か、うっぷ、仕事はできる高等尋問官!」

アンブリッジ「このミス・エッジコムは、夕食の後にわたくしの部屋にやってきたのです。曰く、八階の『必要の部屋』と呼ばれる秘密の部屋に行けば。わたくしにとって何か都合のよいものが見つかるだろう、と」

ファッジ「ほーぉう?『必要の部屋』!ダンブルドア、私はあなたからそのような部屋の存在は聞いた覚えがありませんがね!」

ダンブルドア「だってわしじゃって知らんもの」

ファッジ「嘘をつけ!!! 続けてくれ」

アンブリッジ「えぇ大臣! もう少しといつめ、オホン、聞き出したところ。そこで今夜何かしらの会合が行われるのだ、と……あー、そのあたりで」

マリエッタ「ぅぅっ、ぅっうっうっ、うぅ……」

アンブリッジ「この、あー、ちょっとしたできものが顔に。鏡を見たこの子はそれ以上喋らなくなってしまいましたの」

ファッジ「あー、ミス・エッジコム。君はたいへん勇敢だった!うん! さぁ、話してごらん。一体なにが——」

マリエッタ「いやぁああああ!!いや!!いや!!!うわあああああああん!!!!」

ファッジ「あー……」

フィニアス『……これだから子供は』

ハニー「あなたも紫色のインクで『無能校長』と書かれれば分かるのじゃない?」

ファッジ「あー、逆呪いはないのかね?この子が自由に喋られるように」

アンブリッジ「……まだ、どうにもみつかっていませんの。申し訳ありません、ああ大臣、申し訳ありませんわ!!」

ハニー「……ロンに、杖をもってなくってもハーマイオニーはハーマイがとれたら恐ろしいわよ、と言っておかないと」

アンブリッジ「この子が喋らなくとも、これまでのわたくしの調査で聞き及んだことでお話しできますわ。大臣、お聞きくださいますかしら?」

ファッジ「うむ、説明してもらおうか」

アンブリッジ「昨年十月に送った報告書をご記憶とは存じますわ。なにせ、コーネリウスですもの……きゃっ、失礼大臣!名前で呼んでしまいましたわ、つ、い♪」

ファッジ「やめて」

ドーリッシュ「……」

キングズリー「……」

ダンブルドア「お二人、吐き気がするならレモン・キャンデーはどうかね?うん?」

ハニー「……ファッジに同情したくなるわ」

アンブリッジ「十月に、ポッターが複数の生徒と共にホッグズ・ヘッドで会合をした、と!」

マクゴナガル「何か証拠は?」

アンブリッジ「不信に思ったウィリー・ウィダージンが店の外で様子を見ていたそうですわ、えぇ。それに会話まで一言一句聞き逃さず」

マクゴナガル「あぁ……どうりであの男が『逆流トイレ』の件でお咎めなしになったのか、よーく分かりました!わが国の司法制度のおもしろい内幕ですね、えぇ!」

肖像画『わしの時代はこんなことなどなかった!小悪党と省が取引するなんぞ!昔はよかったなぁ!!』

ダンブルドア「合いの手をどうもじゃ、フォーテスキュー」

アンブリッジ「エヘンッ、エヘンッ! ポッターの会合の目的は!違法な組織に生徒を加盟させ、魔法省が不適切とした呪文や呪いを学ぶことであると——」

ダンブルドア「じゃからドローレス、そのあたりはそちらさんの思い違いじゃとお気づきになるはずじゃがのう?」

アンブリッジ「あなたは黙ってらして!!」

ダンブルドア「了解じゃ。じゃからのう、ドーリッシュ。待遇のことじゃが、朝食に君だけレモン・キャンデーをつけtも……」

ファッジ「話題から外れろとは言っていない!!!!」

ハニー「……全開ねあの豚」

ダンブルドア「しかしのう、何度も言っておるのに堂々巡りをしておるからわし飽いてもうたんじゃ……その会合が違法?はてのう」

ハニー「……」

ファッジ「ハッハ、ハッ!なんだね、ダンブルドア!お得意の詭弁か!?またポッターを贔屓するために新しいホラ話でも用意したのかね?」

ダンブルドア「わしは嘘など生まれて一度も言うておらんよ、コーネリウス。ほんとほんと、ホントジャヨー」

ファッジ「嘘付け嘘まみれのくせに!さぁどうぞ、ダンブルドア!披露してみたまえ、改心の嘘を!ウィダージンの見間違えだとでも!?ポッターが実は双子だったとでも!?」

ハニー「英国中、いいえ、世界中が混乱するわね。太陽が二つあるようなものだもの」

ファッジ「黙りたまえ! あるいは、時間でも逆転させたのかね!え!?死んだ男が生き返ったのか!?いもしない『吸魂鬼』が二体いたという埒も無い言い逃れか!?」

パーシー「あぁ大臣!凄い迫力です流石ですあぁ大臣ったらあぁ大臣!!」

ハニー「……ひっぱたきたいわ」

ダンブルドア「ほっほ、コーネリウス。己が発言に自信をもてるようになったのう。よいことじゃ、行き過ぎはあれじゃが。よいかね、コーネリウス?わしはなにも、否定をしておるわけじゃない」

ファッジ「ハッハハハハハハ!そりゃ傑作——は?」

ダンブルドア「その子——オホン、ハニー・ポッターとその友人、信望者たちがホッグズ・ヘッドに集まったというのは本当じゃろう。内容もその通りじゃろうて。そこはよいのじゃ、うむ」

アンブリッジ「あーら、でしたら——」

ダンブルドア「わしが思い違いじゃ、と指摘しておるのは、じゃ。ご記憶じゃろうが学生の組織を禁じた教育令の発行はその日から二日後。つまり、彼女らはホッグズ・ヘッドで会合したことについて、なんら咎められるいわれはないはずじゃ、と言っておる」

ファッジ「は、ハッハッハハ!そんな——あ」

アンブリッジ「……」

ダンブルドア「……御託はあるかの?」

アンブリッジ「……ハッ! お、オッホホホ!ダンブルドア、それはよろしいですわ。大変結構、見事な切り反し。ですがね、教育令第二十四号の発行から六ヶ月が経過していますの。最初の会合が違法でなかったにしろ——」

ダンブルドア「その後は違法じゃのう。しかしじゃ、ドローレス。続いておれば、じゃろ?」

アンブリッジ「……は、はぁ?」

ダンブルドア「わしには、ミス・エッジコムは今夜の会合のことのみ報告したように聞こえたのじゃが。今日までに会合が件の部屋で開かれておった、という証拠がおありかね?」

アンブリッジ「あ……っ」

ダンブルドア「ミスター・マルフォイがミス・ポッターを見かけたのは『グリフィンドール寮に向かう途中』ということじゃったのう? 誰かが、その『必要の部屋』とやらにいる決定的瞬間を見ているのかね?」

アンブリッジ「っ、ぐぅ、捕まえられたのは——ポッターのみで」

マクゴナガル「ポッター、あなたはあんな時間にあそこで何をしていたのです?

ハニー「私は、あー……少し、星を見たくなって」

ダンブルドア「そうじゃのう、今夜は火星が明るいとフィレンツェも言っておった、うむ。つい抜け出したくなる気持ちも……」

ファッジ「いいや、いいや!!違う!!その子は嘘をついている!!!」

アンブリッジ「ミス・エッジコム!いい子だから!えぇ、話たくないのなら首をふるだけでいいですわ!お聞きなさい!」

マリエッタ「……」

アンブリッジ「会合はどのくらいの頻度で行われていたの!?え!?この六ヶ月、定期的に開かれていたのでしょう!?」

マリエッタ「……」

ダンブルドア「んで、じゃ。ドーリッシュ、福利厚生の話じゃがな。昔の話じゃがケトルバーン氏など手足一本半でもここで教えられるくらいサポートも充実しておってのう」

ドーリッシュ「……今は局面でしょうあちらに集中してはどうですか」

キングズリー「——」

ハニー「……」

アンブリッジ「首を縦か横に振るだけでいいんですのよ!さぁ、お答えなさいな!会合は開かれていたのよね、何度も!!」

マリエッタ「……」

ブンブン

アンブリッジ「……はっ?な、えっ!?!?」

マクゴナガル「横に振る、と。つまりは一般的に、否定を意思表示するものと思われますが?そうですね、ミス・エッジコム?」

マリエッタ「……」コクリ

アンブリッジ「な、なぜ、何故いま頷きますの!あぁ、質問の意味が伝わっていなかったんですのね!もう一度!!六ヶ月間、ポッターたちの会合にあなたは参加していたのでしょう——どうして首を横に振るの!!!」

ガシッ!!!

ダンブルドア「ドローレス」

アンブリッジ「なんで——ひぃぃっっ!?!?!?」

ファッジ「」

ドーリッシュ「……っ!」

キングズリー「ダンブルドア、杖を納めてください。彼女はあの子の肩をつかんだまでだ」

ダンブルドア「わしの生徒たちに手荒な真似をすることは許さぬ、そう伝えたかったまでじゃよ。ドローレス、お互いに落ち着こうかのう?それ、ひっひ、ふーじゃ」

アンブリッジ「あ、あぁ、えぇ。わたくし、少し取り乱しまして……ひ、ひぃっ、ひっ、ふーーーーーっ……」

ハニー「……怒ってる顔、初めて……っ、見たわ……あの子は」

マリエッタ「……」

ハニー「……アンブリッジに掴みかかられても、あの豚のあんな顔みても、涼しいまま……いつの間にか泣き止んでいるし……気が強いのね……私には負けるけれど」

ダンブルドア「そういうわけで、このパジャマパーティの主旨グッダグダになったわけじゃが……」

ファッジ「……」

アンブリッジ「……」

ダンブルドア「どうするね?暴露タイムとでもいこうかの?そうじゃな、わし、実は蛇語喋れるんじゃ。マジでマジで。しゅーしゅろろっ」

ハニー「……(『ようやったハゲ!』って何よ、デタラメね)」

ファッジ「ま、まだだっ!! ドローレス、今日の会合!今日の会合が確かに行われたという証拠!それは、あるのだろう!?え!?」

アンブリッジ「え……えぇ、えぇ!!そうですわ!!わたくしどもが、あー、わたくしとわたくしを慕う優秀な生徒達!親衛隊とでも名付けましょう!」

ハニー「趣味悪いわね」

ダンブルドア「……」

ハニー「……言いたいことある目をしてるくせにこちらを見ないのがまたムカツクわ」

アンブリッジ「どこで知ったのやら、わたくしが来るという警告が伝わっていたようで『部屋』はもぬけの殻でした……ですが!これが!!さぁ大臣、こちらを!」

ファッジ「おぉ、おぉ!でかした! これは、これは!」

ダンブルドア「なんじゃね? この城の精巧な地図でもあったのかのう?欲しいものじゃ」

ハニー「やらないわ」

ファッジ「なんの話だ! これを見ろ、ダンブルドア!集まりに参加したとされる生徒の名前だ!この子がグループを何と命名したと思うね?泣かせてくれるな!  『ダンブルドア軍団』だ!」

ダンブルドア「…………」

マクゴナガル「……」

キングズリー「……」

ハニー「……あ」

ダンブルドア「……ほっほっほ、万事休すじゃのう」

ハニー「っ……」

ファッジ「はっは、はっはっは!そうだ!これで、ポッターは——」

ダンブルドア「それで、コーネリウス?わしはどうすればいいかね、告発書でも書こうかの?それとも今ここで、厳正なる書記のミスター・ウィーズリーに発言を記してもらえばよいのかね?」

ファッジ「……は?え? こ、告発書?それに、ウィーズリー……?」

パーシー「……」

ファッジ「あぁ、なるほど君か、って、それはいい、どうでも。何を、言っている?告発?発言?いったい……」

マクゴナガル「……アルバス」

キングズリー「っ、っ!!!」ブンブンブン!

ダンブルドア「よーく見てみたまえ、『ダンブルドア軍団』じゃよ、コーネリウス。この証拠を掴んでもまだ分からんかの。『ポッターの豚団』ではない。『ダンブルドア軍団』じゃ」

ハニー「……!!」

ファッジ「それは、つまり———ハッ!!!」

ダンブルドア「そうじゃ、いいひらめきじゃよコーネリウス。それじゃそれじゃ」

ファッジ「あなたが?」

ダンブルドア「ソウジャ」

ファッジ「あなたがこれを組織した?」

ダンブルドア「ソウジャヨー」

ファッジ「生徒を集めて——あなたの、軍団を?」

ダンブルドア「イカニモジャー。見込みのありそうな生徒をリストアップしてのう。わしの独断と偏見故、生徒には軍団の主旨も伝えておらなんだ……今夜はミス・エッジコムと面談の予定だったのじゃが、もうちーっと説明しておけばよかったかのう……失敗失敗」

マリエッタ「……」コクコク

ファッジ「う、頷いている……そ、その生徒たちを指揮して……私を、私を陥れようとしたのだな!?自らの軍隊を作って!!」

ダンブルドア「その通りじゃこのヤロー、魔法省はわしのもんじゃー、うはははははー」

ハニー「ダメ……ダメよ!!!そんなのダメ!!!ぶ、校長先生!ダメよ!!!」

ダンブルドア「静かにするのじゃ小娘ー。むぅ、君さえいなければ我が野望もうんぬんかんぬん。静かに出来ないのならば、わしの部屋から出て行ってもらうが?」

ファッジ「そうだ、黙っていろポッター!ハッハ、ハハハハハツ!今日は君を退学させにきたつもりだったが……なんたる幸運、海老で鯛どころかラモラを釣ったようなもの!代わりに……」

ダンブルドア「わしを逮捕することになるのう。明日の朝刊は大賑わいじゃ。久しぶりじゃのう、あの紙面にわしに関する正しい情報が載るのは」

ファッジ「ウェーザビー!全て書き取っているだろうな!」

パーシー「はい大臣!もちろんですともええ大臣!!!」

ファッジ「ダンブルドアの告白、とくに魔法省に対抗する軍を作っていたという件!それに私を失脚させようとしていたという件は!」

パーシー「余すことなくあぁ大臣!!」

ファッジ「よしっ!いけ!今すぐメモを複写して『予言者』に送るのだ!いけ!お前はスニジェットだ!」

パーシー「はい大臣!ぼくは——大臣のためなら——飛べるっっ!!!」

ガシャァアアアアアン!

ハニー「ぱ、パーーーシーーーーぃぃ!?!?」

マクゴナガル「……肉体派になったようですねぇ、ウィーズリーは」

ダンブルドア「盲目じゃなぁ」

マクゴナガル「安心なさい、ポッター。私が下にクッションを『出現』させました……それより」

ハニー「え、えぇ、ありがとう……校長、何を、この……」

ファッジ「ダンブルドア!お前をこれから、魔法省に連行する!」

ダンブルドア「?」

ファッジ「そこで正式に起訴され、アズカバンに送られるのだ!」

ダンブルドア「ふーむ……?」

ファッジ「そこで裁判を待つことになるだろう! ハッハ、どうした!あまりのことに実感がわかないか、え!?かつての賢人が見る影もないな!!」

ダンブルドア「あぁ……なるほど。コーネリウス、なんじゃね。君はわしが、あれじゃ。神妙にお縄につく、といった空想のもと、話をすすめておるのじゃな」

ファッジ「く、空想だと!?」

ダンブルドア「だって、そうじゃろ。のう、ファッジよ。わしはアズカバンに送られる気はないのじゃ」

ファッジ「っ!?」

ダンブルドア「脱獄は余裕綽々じゃろうけどな今のあすこなら。じゃがのう、正直言ってわしは脱獄犯の称号より、いっぺんお尋ね者ってのになってみたかったんじゃ。ワクワクするのう」

ファッジ「あ、あなた、いや、お、おまえは……抵抗する、と。言うのか?」

ダンブルドア「いいや、いや。まさか。そんなつもりはない。今は、のう。堂々とその扉から出て行く気満々じゃよ……のう、ドーリッシュ。無駄なことはよしたらどうじゃね」

ドーリッシュ「……っ」

ダンブルドア「君が『NEWT試験』で全教科『O・優』を取ったのは覚えておるよ。じゃが、そんなものはわしが一世紀ほど前に越えた壁じゃ。なーんの障害にもならん。杖をとるのはよすのじゃ。君を傷つけるのは、本意じゃない」

ドーリッシュ「……どうします、ファッジ」

ファッジ「っ、この、この、腑抜けおって!なんだね、ダンブルドア!君は、君は、私、ドローレス、シャックルボルト、ドーリッシュを相手にする心算だというのか!?」

ダンブルドア「コーネリウス。言うておくが、わしを本気で止めたいのなら……アラスターを一ダースは連れてこんといかんのう。全盛期の」

ファッジ「っ!?な、なにを言っている、この老害め!たった一人で、なにが!」

マクゴナガル「一人ではありませんっ!!ダンブルドアは、一人では——」

ダンブルドア「いいや、ミネルバ。わしは独りじゃ、下がっていなさい。ホグワーツは君を必要としておる」

マクゴナガル「っ、でしたら、でしたら……あなたこそ!」

ファッジ「なにをゴタゴタと——かかれぇえええええ!!」



ハニー「ダンブルドア——ダンブル、ドア……!」



ダンブルドア「——じゃあの!」


バーーーーーーンッ!!!!バチバチバチバチ ——バーーーーーーンッッッ!!

モクモクモクモク

 ドサッ、バタッ

ハニー「ゲホッ、ゲホッ! ひどい、煙……あぁ、こんな」

マクゴナガル「伏せていなさい、ポッター!」

ハニー「っ、せん、せい……先生が私の襟首を掴んで、床に引き倒してくれたのね……あぁ」

???「聞こえますか——聞こえますか、ハニー・ポッター」

ハニー「……」

???「わし、ゴホン……私はあなたの心に直接話しかけています——煙の向こうから」

ハニー「……それは、もの凄く濃いもの……姿は見えないけれど、この——」

マクゴナガル「ポッター、とりあえず聞き出すことが先決です。姿ないお方、一体このミス・エッジコムはどうして首を……」

???「キングズリーは素晴らしい気転が利く男でのう……わしがドーリッシュをひきつけている意味を察して、その子の記憶を修正してくれたのじゃ。ようやったハゲ、と伝えておいてくれるかのう。あと、呪いをかけて悪かったと」

ハニー「……もう隠す気もないじゃない」

???「なんのことかの——よぉくお聞き。アルバス・ダンブルドアから伝言じゃ、で、伝言じゃん」

ハニー「変な語尾にしないで。……なぁに?」

???「一心不乱に『閉心術』を学ぶのじゃ、と。何故そうなのかは——まもなく分かる」

ハニー「……っ」

???「よいか、約束じゃぞ……ハニー」

ハニー「!! っ、ぅ、っ!?」

ハニー「(名前、を……っ、今、なんで……傷、っ!!!)」

???「……声だけにして正解だったかの。  ミネルバ、時間がまったく経っていない風に振舞うよう、頼みましたぞ」

マクゴナガル「えぇ、えぇ——あなたは、いえ、アルバスは、どちらに」

???「さぁてのう、あっちへちょこちょこ、こっちへちょこちょこ、じゃ。フォークス!」

フォークス「フィピィ〜♪」

???「さて、今度こそ、じゃ。じゃあの」

バタバタッ……ブワッ!!!

ハニー「! 煙が……っ、フォークスの炎……」

マクゴナガル「……行ってしまった」


ファッジ「ぅ、くっ、なに、くそ……や、やや!?だ、ダンブルドアはどこへ行った!?」

キングズリー「うぐっ、わ、分かりません!やられた!!くそっ!!誰がハゲだ!!!!」

アンブリッジ「な、何に切れていますの!? この城の中では、『姿くらまし』できないはずですわ……!」

ドーリッシュ「階段だ!!あっちだ!!」

アンブリッジ「! 続きなさいシャックルボルト、ドーリッシュ!あぁ大臣、こちらでお待ちくださいまし!すぐに、すぐにひっとらえてきますわ!」

ドタバタドタバタドタドタドタドタ……

ハニー「……」

マクゴナガル「……」

ファッジ「……ふんっ。さてミネルバ。あなたのご友人のダンブルドアも、どうやらこれまでだな」

マクゴナガル「……そうでしょうかしら?」

ファッジ「そうとも。 あぁ、歴代校長の方々。間もなくここに、魔法省が認めた新たな大臣が来ましょうぞ」

ディペット『そんなものを我々が認めるはずありますか!』

エバラード『カーッ、ペッ!』

ディリス『黒斑病になればいいのに』

フォーテスキュー『お前は歴代最悪の大臣だな!昔は良かった!!』

ファッジ「黙れ! ゴホン……あー、あなたはどうですかな?フィニアス・ナイジェラス・ブラック?」

フィニアス『……』

ファッジ「どうやら、その子。ポッターにあまり良い印象はないようで。あなたなら、我々に賛成なのでは?ダンブルドアの手から、ここが移されるのは」

ハニー「……」

フィニアス『……いやぁ、大臣。そうだな、確かに私は色々な点で彼とは意見が合わない……しかし、ダンブルドアは、とにかく粋な男だと言えるだろう。えぇ——無粋な貴殿はお引取り願おうか。高貴な私は、ようやく静かになったここで眠りにつきたいのだ』

ファッジ「……ふんっ、今に分かりますぞ!」

ドタドタドタ、バタンッ

ハニー「……先生」

マクゴナガル「……さあ、ポッター。寮に向かいましょう。平気ですよ、私が送ります——」

ハニー「私の……わたしの、せいだわ」

マクゴナガル「……いいえ。あなたはよくやりました。アルバスも——オホン」

ハニー「わたし、わたし……みんなみんな、助ける、って。思ってた、のに」


ハニー「……誰一人だって、欠けさせないって。思ってた、のに」



ハニー「あなたがいなくなっちゃ……ダメ、じゃない。ダンブルドアの……ばかぁ」



つづく

っちゅうわけでこれで!
騎士団これ5スレコースやなこれ!しゃーないな!シリーズ最長やしな!
新スレは下手したら来週なってまうけど堪忍な!
ラドクリフお大事に
じゃあの!



 ハリー・ポッターシリーズ

 一巻〜七巻

 世界的大ヒット発売中!

 2014年後半、USJにて

 ハリポタアトラクション建設決定!!

>>885
×新たな大臣
○新たな校長
マーリンの髭!

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