音無「オペレーション・エンジェルトーカー…?」(236)

――朝――


音無「………あ、靴紐が全部切れてる」

音無「仕方ない、ローファーで行くか」



――登校中――


音無「………黒猫が五匹連続で横切った」



――校門前――


音無「うわっと!? ……鳥の糞に危うく当たるところだった」


音無「一体なんなんだ、見えざる何かが俺を学校に来させまいとしているみたいだ…」


日向「うーっす、おはようさん!」

直井「音無さん、おはようございます!」

音無「ああ、おはよう。 お前ら二人揃っての登校とか珍しいな」

日向「ただ校門前で鉢合わせただけだっつの」

直井「そうですよ、偶然でも働かない限り誰がこんな愚民と肩を並べて歩くものかと」

日向「んあぁ!? なんだよその言い草、こっちだって願い下げだっての!」

直井「今の貴様の考えとは息が合うが、貴様と同じ場で息を吸いたいかと言えば話は別だ」

日向「あーそーですか! だったらお前一人でさっさと前歩けばいいじゃねぇかよ!」

直井「全く、これだから愚民は…。
   春月の可憐さを背負う音無さんと登校したくて僕は校門前で待っていたんだぞ。
   当の目的を達する前になぜ僕が一人で行かなければならないんだ。
   阿呆か貴様。阿呆だな貴様、救いがたき阿呆だ」

日向「これ見よがしにアホアホ畳み掛けるように言ってんじゃねぇよ!
   チクショウ、お前なんか気まずい空気を小一時間くらい吸って人知れず悶えてろ」

音無「なんだその絶妙に陰険な捨て台詞は……」


日向「それにしても今日はやたら暑っついな。 時期的にはもう秋に差し掛かるってのに何だよこの蒸し暑さ!」

音無「さらにここ数日で急激に冷え込んできてるからな。生前だったら確実に風邪ひいてる寒暖差だ」

直井「この時期は会長の『深まる秋へ向けての清掃活動』がどうこうで、生徒会の美化作業が行われる時期なのですが…。
   いかんせん広い敷地なので面倒と言えば面倒なんですよね」

音無「俺で良ければいつでも手伝ってやるさ。人手が足りなくなったら、その時は声かけてくれ」

直井「流石は気高き貴族のオーラを纏う音無さん…その慈悲深き申し出、有難く受け取らせて頂きます!」

日向「へへっ、しゃあねぇから俺もヒマだったら手伝ってやるよ」

直井「貴様の手を借りるくらいなら猫の手を借りた方がマシだ。
   いや、まだ目の保養になるだけ猫の方が重畳するのやも知れないな。有体に言うと巨大なお世話だ愚民」

日向「ねぇちょっと! 扱いの差がちょっとヒドすぎやしませんか、オイ!?」

音無「うん。相変わらず仲良さそうだな、お前ら」

日向「今のやり取りでそう見えたんなら重度の疲れ目だぜ、音無……」


< はー、ぶえっきしょい!

音無「オッサンみたいなクシャミの仕方だな」

日向「へへ、悪りぃ悪りぃ」

直井「僕の制服に唾が飛んだぞ、死ね」

日向「クシャミ1つでまさかの暴言!?」


< ふぇっくしゅんっ!

日向「おいおい、大丈夫かy……」

直井「大丈夫ですか音無さん! もしや何らかの悪性ウイルスに感染している可能性があるやも知れません!
   これはいけない! さぁ、早急に服を脱いで僕に全てを委ねてください!」

日向「落ち着け! 落ち着け、ステイ!」


< ……へぷちっ!


日向「おい、直井」

直井「なんだ、愚民」

日向「今のクシャミか?」

直井「咳に決まっているだろうが。神はクシャミなぞしない」

日向「……さいですか」


音無「それにしても冗談抜きで暑い。押入れにしまった扇風機を引っ張り出す必要がありそうだ」

直井「音無さん。 宜しければ、ぼ、ぼ、僕が全身全霊をかけて貴方を温めますよ!」

日向「変な部分でどもんなっつーの! 言い草的にもマジっぽくて流石に怖いわ!
   しかも音無は暑いっつってるのに、さらに暖めてどうするんだよ!?」

直井「ふん、音無さんの体調を心配する故につい暖めるという発想に至っただけだ。
   それに貴様のような愚民は知らないだろうな。『北風と太陽』という逸話を」

日向「そんなん誰でも知っとるわ! ていうか何、今の聞く限りだと後者が真の理由なワケ!?」

直井「ふん。荘厳たる気品を纏う音無さんならともかく、貴様はいくら体調を崩しても支障は起きない。
   分かったらとっとと肺炎でも患って自宅療養でも当分していろ、愚民が」

日向「へん、生憎だがこの世界では風邪や病気の概念なんてないんだぜ。
   どっかの自称神様は堂々と間違ったこと言っちまったようですけれどねー!」

直井「皮肉も分からんとはな。これは感情も一周して憐憫すら覚えてしまいそうだぞ。
   知っているか? 人と猿の大きな違いは言語を理解できるか否か、だ。
   その分類法でいけば貴様は猿と同意だな日向。いや、ヒナタトラロピテクス」

日向「なに勝手に新人類みたいな原人名つけてくれてんだよ!
   ぬぅぅぅぅぅわぁぁぁぁぁぁぁーーー! 朝からどんだけ言ってくれるんですかチクショウ!」


音無「……朝からホント賑やかだなぁ」


日向「あー、朝から声を張り上げたから、登校前に既にグロッキーだわ」

直井「声を張り上げる貴様が悪いんだろう。自業自得だ」

日向「元を正せばお前がなぁ…って、また大声出しそうになっちまった」

音無「とりあえず一服がてらに食堂で時間つぶすか?」

日向「賛成だぜ。ハチミツ味の飴が恋しくて仕方ねぇや」

直井「音無さん、ちなみに今日のご予定は何かあるんですか?」

音無「ん? いや、別にこれといった用事は無いがな」

日向「じゃあ丁度いいや。俺と一緒に野球しようぜ音無!」

直井「おい日向、先に音無さんの予定を聞いたのは神である僕が先だ。
   決定権は僕にあるに決まっているだろうが」

日向「へん、こういうのは言ったモン勝ちなんだよ!」

直井「愚民のくせに減らず口を…音無さん、今日は僕と一緒に生徒会の公務を手伝って頂けませんか!?」

日向「いいや! 今日は俺と一緒に野球で青春の汗をかくんだよな、音無!」

音無「ど、どうしようかな……」

日向「んじゃ、音無! 昼飯どうするか決めてっか?」

音無「いや、まだ何も予定は無いな」

直井「丁度良かった。でしたら僕と一緒にお昼を過ごしませんか?」

日向「なんでだよ! 会話の流れからしてどう見ても俺が誘う流れだったろうが!
   なに普通に何食わぬ顔して本題をインターセプトしてるワケ!?」

直井「朝から喧しいぞ愚民。貴様はあの頭がピンクの輩と一緒に食べていればいいだろう」

日向「ユイ!? それってユイの事!?
   『頭がピンク』って全然別の意味合いに聞こえて仕方ないんですけど!」

音無「あー、はいはい。いつもどおり三人で一緒にメシ食べような」


~~♪ ~~♪


日向「ん? 校内放送?」

直井「朝一番から珍しいな」

日向「どうせNPCの呼び出しだろ。まぁ、確かにこの時間帯で呼び出しはレアだな」

直井「ふん、杞憂で済めばいいんだが」

日向「なんでぇ、直井。お前すごい脂汗かいてるぞ」

直井「貴様はそれに含めて顔色すら真っ青になっているんだがな」

日向「どっかの誰かさんの所為でチャイム音に緊張感しか覚えなくなっちまってんだよ……」


『あ~、1年の折木。もし登校していたら職員室に来るように』


~~♪


音無「……ふぅ」

直井「普通の放送で何よりでしたね」

日向「しかして、NPCとは言え朝っぱらから呼び出されるとは災難だな」

音無「朝からの呼び出しなんてロクな事が無いって相場は決まっているからなぁ」

日向「ははっ、そりゃ言えてら!」

直井「……ええ、それは確かに言えてますね」

音無「……だろ?」

日向「……なんで朝からチャイム音で一喜一憂しなくちゃならねぇんだっての!」

~~♪ ~~♪


直井「またチャイムか」

日向「どうせまたNPCの呼び出しってんだろ」

直井「この学園のチャイムは福音のような響きで当初は好ましく思っていたのだが。
   その感情のベクトルが逆を向き始めたのはいつからだったか……」

日向「悪りぃな、うちのリーダーが呼び出し音みたいにしてっから……」


『あ、あー、あー。……よし』


日向「……ん?」

直井「またえらく聞き覚えのある声だな」

音無「聞き覚えがあるというか、普段からよく聞いている声というか」

日向「……」

音無「日向、凄い汗だぞ……」

『SSSのメンバーに告ぐ! 繰り返す、SSSのメンバーに告ぐ!』


日向「いやぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!! やっぱりゆりっぺの声だったぁぁぁーーーーー!!
   これ絶対面倒くさい事に巻き込まれるパターンのアレだぁぁーーーーーー!!」

直井「……なんという事だ」

音無「まだ内容を喋っていないのに、なんだこの絶望感は……」

直井「そうだ、そういえば僕は今日は熱があったのに無理に学校に来ていたんだ。
   生徒会副会長の任があるとはいえ、流石に資本である体に無茶をさせてはいけないな」

日向「あ痛たたたたたた! なんか知んねぇけれどすっげぇ腹痛が襲ってきた!
   盲腸まで三歩手前のこの痛さ、こりゃ直ぐに帰って自宅療養しないとやべぇ!」

音無「朝の不吉な出来事はこのチャイムを警告していたんだろうな……」

『ガルデモ含め戦線精鋭は全員集合! 時間は本日の9時とする!』


音無「集合時間まであと30分もあるのか。まぁ有情といえば有情か」

直井「くっ……非常に不本意だが、神である僕の体が悲鳴を上げているという一大事につき
   今回の件に関してはあの女のミッションに参加できそうにない!」

日向「俺も野球で培っていた筈の健康優良ボディが痛みを訴えているからな…。
   へへっ、すまねぇ、音無…俺たちの事は置いて先に行ってくれ!」

音無「サボり二名としっかり伝えておくぞ」


『もし来なかった人は、その人の秘密を集まったメンバー全員に伝えるからね。
 遊佐さんのネットワークを軽んじて見ている人は無理に集まらなくてもいいのよ♪』


日向「そんなこと言われたら集まるしかないに決まってるじゃねぇかチクショウ!」

~ 一方その頃、別サイド ~


ひさ子「こりゃまた面倒事が始まりそうだな……」

関根「久々にガルデモ5人で登校できたと思った矢先にコレですよ!」

入江「なんか最近は前線部隊のミッションに私たちもよく呼ばれるよね~」

ユイ「練習にライブにオペレーション! 引っ張りダコ状態で売れっ子気分ですね☆」

ひさ子「願わくば前者二つくらいで留めてもらいたいんだがなぁ……」

岩沢「~~♪ ~~♪」

ひさ子「おーい、音楽キチ。 イヤホン外してアンタも放送聞いといた方がいいぞー」


『しかして、私も毎度こうして突然呼び出すことに申し訳なさも感じているわ…。
 なので今回は一番最初に来た人には特別サービスでもしちゃおうかしら!』


ユイ「なんか露骨に『申し訳なさを感じている』って部分で声に抑揚をつけてきましたね」

ひさ子「ありゃ詐欺師の喋り方に限りなく近いサムシングだな」

入江「ごめんなさいっていう風に思っているのが伝わってくるねぇ~」

関根「…みゆきちは少し人を穿って見る視点を覚えよう、うん」

岩沢「~~♪ ~~♪」


『そのサービスの内容とは……岩沢さんの恥ずかしい秘密をこっそり教えるわ!』


岩沢「~~♪ ~~♪」


岩沢「………は?」


『では、本日の9時に対天使作戦本部で待っているわね♪』



ひさ子「こうしちゃいられないぞ、ユイ!」

ユイ「合点承知!」

関根「私たちも走るよ、みゆきち!」

入江「あ、待ってよしおり~ん!」


岩沢「え、あ、ちょ、ちょっと待てお前ら!!」


――午前九時 対天使作戦本部――


ゆり「みんな、ご苦労様。よく集まってくれたわね」

音無「おい、ゆり…」

ゆり「何よ?」

音無「何よ、じゃないだろ! 一般生徒が血眼になってこの作戦本部を探してたぞ!」

高松「どこぞの紛争地帯を彷彿とさせる混沌ぶりでしたね」

松下「何やらたった30分の間に学園全体が修羅の国みたいになっていたからな」

野田「ああ、俺のハルバードが唸りを上げて共振していたぜぇ!」

大山「『お前知らないか、知らないのか!?』って血相変えてNPCが来たときは
   ホントもうどうなっちゃうんだと思ったよー」

藤巻「しかも男だけならまだしも、女まで躍起になってやがったぞ…」

日向「ガルデモの認知度を朝からまざまざと体験させてもらったぜ…」

TK「I Hate Folk,A DAY IN THE GIRL'S LIFE~♪」

椎名「あさはかなり」

岩沢「それで、教えたのか……?」

ゆり「何を?」

岩沢「その、アタシの、その、あれをだ……」

ゆり「ああ、教えたわよ」

岩沢「一体誰にだ!?」


ゆり「遊佐さんよ」

遊佐「いぇい」

岩沢「なん……だと……」


ゆり「安心して頂戴。遊佐さんには最初から作戦本部でスタンバイしてもらっていたから、
   結局は誰にも秘密を暴露することは無かったってワケよ」

岩沢「いや、結局はそのふわふわした奴に教えているじゃないか!」

遊佐「私が調べた秘密ですので、知っているのは私と貴方だけです。ご心配なく」

岩沢「そ、そうなのか……だったらいいのかな」

音無「おい岩沢! なんか上手い具合に言いくるめられているのに気づいてくれ!」

ユイ「ね、ねぇ、ひさ子、さん………」ゼェー ゼェー

ひさ子「しゃ、喋りかけるな、呼吸が乱れる……」ゼェー ゼェー

ユイ「アタシね、実は、生前って寝たきりだったん、です、よ……」ゼェー ゼェー

ひさ子「だったら、寝たきりの、奴が、なんで、スプリンターみたいな走り方してんだよ…」ゼェー ゼェー

ユイ「走り方の技法くらい、気合と、根性で、何とか、なりますよ☆
   人間、やる気になれば、不可能は……げぇっほ!げほ、ごほ!」 ゼェー ゼェー


大山「ねぇ、この人たちはなんでこんな事になっているの?」

関根「最初は岩沢さんの秘密を知ろうとしてただけなんだろうけれど…。
   途中から『どっちが早く着くのか競争』みたいなテンションになっちゃいまして」

入江「二人とも芯が意固地だから、ついつい本気出しちゃったんだろうね~」

日向「いや、だからといってコンパクト酸素吸引機を使うほど本気にならなくても……」

ユイ「よ、要するに、アホ、ですねっ!」ゼェー ゼェー

日向「お前どんだけ自分にブーメラン返す気なんだよ!」


高松「思い返すと、久々に急な呼び出しを受けた気がしますね」

松下「今回はまともなミッションになるのだろうか」

大山「前回は足腰を鍛えるという名目で『鬼ごっこ』だったね」

藤巻「刃物持った鬼役の椎名に捕まったら刺されるとか、この世界では死なないと分かってても怖かったぜ…」

日向「結局ものの5分もかからずに全滅したけどな」

TK「She has a power! Fooooooooo!!」


ひさ子「更にその前は…『死んだ世界戦線でガルデモに対抗するバンド結成』だったか」

入江「アレは何ともカオスだったねぇ~」

関根「岩沢先輩が独創的すぎるバンドに、音楽キチっぷりを全力で発揮していたからね」

ユイ「メンバーの7割がドラム、2割がボイパ、1割が手拍子!」

遊佐「一番音がよく響いていたのが手拍子だったのは予想外でした」

岩沢「ボーカルが存在しないバンド……ロックだったな!」

ひさ子「お前ロック言いたいだけだろ!」

音無「まともなミッションだと今日こそは信じていいのか?」

直井「嘗てまともと呼べる内容が無かっただけに、期待は薄いですね」

日向「内容がないよう、ってな」

直井「死ね」

日向「たった一言に凝縮された辛辣さ!?」

ゆり「さて、アホは放っておいて今回のミッションについて説明するわ」

野田「ゆりっぺ、そろそろ天使との全面戦争を始めるんだな! 俺には分かる、分かるぞォ!」

ゆり「アホは放っておいて今回のミッションについて説明するわ」

大山「全力でスルーした!?」

藤巻「しかも二回目は『アホ』を強調したな」

野田「……おぅ!」

日向「おぅ! じゃねぇよ!!」


ゆり「今回のオペレーションの内容を説明するわ」


『我々の目標である神の討伐。それに立ち向かう為の登竜門である天使の存在。
 天使を倒さなければ先は見えないが、肝心の天使に関する情報が不足している。
 ならば、実際に本人と話をして情報を収益してみるべきではないのか。
 その上で天使にこちら側との意思疎通が可能であれば、出来うる限り親密になってみる』


ゆり「以上、大まかな概要よ」

遊佐「……つまり?」

ゆり「天使と喋ってあっちから情報を引き出そうって寸法よ。
   武器持ってたり敵対心を抱かなきゃ無害ってのは、もう過去の実績で分かってるしね」

遊佐「分かりやすいご説明ありがとうございます」

音無(ゆりが天使と和解を求めている、だと…!?
    これは誤解を解く2つとないチャンスじゃないのか!)

直井「音無さん、どうかされたんですか? 何か思いつめるような顔をしていますが」

音無「あ、ああ。すまん、何でもない」


音無(上手く俺が立ち回れたら、奏は戦線メンバーと仲良く出来るかもしれない…!)


音無「なぁ、ゆり。ちょっと聞きたい事があるんだが」

ゆり「発言を許可するわ」

音無「今回のミッション、立候補制とかじゃダメなのか?」

ゆり「…それはどうして?」

音無「天使との対話を望む奴なんてそうそう居ないだろ。
   中立的立場として気楽にあいつと喋れるのは、俺か直井くらいだ」

直井「いえ、僕は別に……」

音無「だからこそ、ここは俺が一つ矢表に立ってそのミッションを引き受けてやる!」

ゆり「音無くん、その心意気は流石ね」

音無「だったら…!」

ゆり「でも、ゴメンなさい。意見には感謝するけれど、その案は却下よ」

音無「な、それは一体なぜ!?」

ゆり「貴方は中立的と言ったけれど、私の直感としては
   天使側に比重がやや向いているような気がするの」

音無「ぐっ……」

ゆり「だから、やきもきした気持ちのままで作戦を任せるのは、ちょっと、ね…」

音無「…そりゃ仕方ない、か。無理な事言って悪かったな」

野田「そうだぞ貴様、一人でしゃしゃり出ようとは笑止千万だな!」

日向「お前が出てきたらややこしくなるから下がってろっつーの!」


ゆり「それにね………」

音無「それに?」


ゆり「作っちゃったの、クジ引き用の箱……」

音無「お前絶対それ試したいだけだろ!!」

ゆり「ええい、うっさいわね!
   折角こうして作ったクジ箱を有効活用しない手はないでしょ!」

大山「むしろこの手のオペレーションでしか効力を発揮してないよね、ゆりっぺ!」


ゆり「ちなみに今回は、一度に何人もというワケにはいかないわ。
   さすがに複数人で向かうと警戒されるだろうし、長話は無駄を生むと思うの。
   一人一回、時間は長くても20分という形を取らせてもらうわ」

松下「ということは、会話の際は複数人で向かわないだけで
   複数回に分けて行なわれるミッションというのだな」

ゆり「正解よ。そしてミッションを遂行する人員は一度ごとに交代。
   効果的か否かの目安を図る為にも大体三回を予定として、場合によっては回数を水増しするかもね」

野田「分かったァ!」

高松「了解です」

藤巻「へーへー、了解」

ユイ「はいはいはーい、質問でーす!」

ゆり「質問を許可するわ」

ユイ「あざっす! えっとですね、具体的に天使と何を喋ればいいのか分からないんですが…」

ゆり「それは完全に遂行者に任せるわ。
   下手にこっちが指示を出して、天使に訝しまれたらアウトだからね」

ひさ子「なんつうか、ファジーな感じだなぁ…」

ゆり「別に何でもいいのよ。天気の話題やら好きな人の話、それこそ雑談でOKなの。
   その雑談の最中に『神』についての切れ味鋭いネタを盛り込めれば御の字って所ね」

関根「な、なんだか高い会話術を求められてるね」

入江「そうだね~。すごく難しそうだね~」

関根「……みゆきちが選ばれたら、天使と蝶を眺めるだけで一日が終わっちゃいそうだなぁ」

音無「ま、今回は結構気楽に構えてられるな」

直井「そうですね」

日向「あの天使と対話ってのに、よくお前らは悠長に構えてられるよな」

直井「ふっ、愚民が。貴様と爽涼たる精神を持つ音無さんを一緒に捉えるんじゃない」

高松「ですが、実際どういうタイミングであの両手の剣で切り刻まれるのかを考えると
   あまり気乗りしないという点では日向さんと同意見です」

野田「ふっ…ゆりっぺが望むのならば全力を尽くすだけだ!」

大山「今回はあまり喋れなくても問題なさそうだしねぇ~」


ゆり「あ、ちなみに何も情報得られなかった人は10日間不眠だから」


日向「いきなり洒落にならない罰を言い出しちゃったよこのリーダー!?」

大山「……これは意地でも情報を聞き出さなくちゃならなくなったね」

直井「音無さん……僕に任せれば、あの女を成仏させることも可能ですよ!」

音無「くそぅ、ちょっとだけ『宜しく頼む』と言いそうになった自分が悔しい!」

関根「えーと、つまり…240時間も起き続けなくちゃいけないんですね」

岩沢「60時間寝ないだけで精神に若干の支障が生じ始めると聞いた事があるぞ」

ひさ子「私が生きていた頃は、確かギネス記録が11日間不眠だったと思うんだが…」

ユイ「死ねって事ですよ言わせないでください恥ずかしい☆」


※ちなみに、今はギネスに不眠の枠はありません


遊佐「ゆりっぺさん」

ゆり「どうしたの?」

遊佐「鬼ですね」

ゆり「こんな可愛い顔の鬼なんているわけないでしょ♪」

ゆり「よっし! それじゃあ、ちゃっちゃと引いちゃうわよー!」


松下「むぅ…相変わらずの緊張感だな」

TK「Gia corn fillipo dia~♪」

椎名「あさはかなり」

高松「さてさて、第一日目の犠牲者は誰になることやら…」

音無「ま、なるようになるさ」

直井「フッ…神は当たらない」

ユイ「おおぅ!? ひなっち先輩、ブルってんのかァ~!?」

日向「ざっけんなっつーの! お前だって小悪魔風の尻尾がヨレヨレしてんぞ!」

岩沢「~~♪ ~~♪」

ひさ子「…こんな時でもギター弾けるアンタの余裕はどこから湧いてんだか」

ゆり「なんか久しぶりね、この感じ」

日向「願わくば久しいままで終わって欲しかったぜ」

ゆり「あぁん?」

日向「なんでもないです」

ゆり「ったく、女神のようなリーダーからの提案を無碍にするとは困った戦線メンバーね」

日向「女神はドス効かせた声で睨みなんかきかせねぇっつーの!」

ゆり「あー、うっさいうっさい! もうさっさと引かせてもらうからね!」



ゆり「どっせええええええええええええええいい!」


【今回の犠牲者その1】

>>65

ゆい

>>65


ユイ「って、アタシかああああああああああい!」

ひさ子「またえらく微妙な所で運無いな、お前……」

ユイ「か弱くて人見知りのユイにゃんが出来るわけないでしょー!」

関根「ユイが人見知りなら、コミュニケーションという言葉の定義を考えたくなるねぇ」

入江「ユイ~。ファイトだよ~!」

ユイ「うっ、ちょ、ちょっとひなっち先輩! 先輩からも何か言ってあげてくださいよぅ~」

日向「本音を言うとだな……」

ユイ「うんうん!」

日向「俺に当たらなくてすっっっっげぇ安堵しちまってるわ! ま、頑張れや~!」

ユイ「ひ……ひなっち先輩の薄情者セカンドフライお陀仏野郎~~~!!」

日向「人の傷をつぎはぎするような悪口言われてる、俺!?」

ゆり「こりゃ参ったわね…ユイが天使とどういった風にコンタクトを取るのか皆目検討もつかないわ」

音無「まぁ、普段があの調子だからなぁ」

直井「これは流石にクジの引き直しも考慮しておくべきじゃないのか?」

ゆり「いえ、このまま続行するわ。彼女のポテンシャルに賭けてみましょう」

藤巻「おいおい、マジかよ!?」


遊佐「……現在、天使は自販機前に移動中」

ゆり「丁度いい機会よ! ユイ、貴方のそのキャラクターでどこまで行けるか試してきなさい!」

ユイ「こ、こうなったらやぶれかぶれッスよ!
   見てろよぅ、寝たきり時代にリピート再生して何度も『ア○トーク』仕込みの抱腹絶倒世間話をぅ!!」

ひさ子「一人で勝手にハードル上げまくってるが大丈夫かよアイツ……」

岩沢「しかもその番組かなりニッチな内容だと思うんだけど」

音無「……岩沢。お前、ああいうバラエティも見てたのか?」

岩沢「……悪いの?」

音無「……意外だな」

ゆり「………行ったわね」

音無「ああ、行ったな」

大山「小粋なステップ踏んで行ったね」

松下「いつもどおりの勢いだったな」


遊佐「それで、どうされますか?」

ゆり「まずは向こう側の様子見よ…。
   私たち戦線メンバーでも異色の彼女と、どういう風に接するのか見極めましょう。
   状況次第では第ニ陣を送り込むためのクジを引く準備は万全よ」

高松「色物キワ者揃いの戦線メンバーで異色も何もあったものかと」

藤巻「まるで自分は蚊帳の外みたいに言ってるけどてめぇも一員だかんな」

日向「こりゃ次に行くヤツはハードル上がっちまいそうだ……」


ゆり「それでは、『オペレーション・エンジェルトーカー』ミッションスタート!」

~自販機前~


天使「……あ

天使(……Keyコーヒー売り切れてる)

天使(確かこの前補充したばかりと思っていたけれど、もう品切れ?)

天使(……そんなに人気なら、一度くらい飲んでみようかしら)


ユイ「お、いたいた!」

天使「?」

ユイ「やいやいやいやい! ちょっとツラ貸せやゴルァ!」

天使「……いいわよ」

ユイ「え、嘘……ホントに貸してくれんの?」

天使「……? 貴方が貸してと言ったんでしょう?」


《作戦本部 隠しカメラ映像鑑賞中》


日向「ユイ死んだーーーーーーーー!!」

ひさ子「ちょっとわがままで人の胸揉みしだくアホだったけど…お前の事、大好きだったぜ……」

入江「ううぅ……せっかく友達になれたのにぃ……」

関根「なんて、なんて儚いんでしょう、人の命というのは……」

岩沢「い~つも ひ~と~り~で あ~るいていた~♪」

音無「いや死なないから、これ成仏とかじゃないから!お前らなんでそんなグッバイムード出してるんだよ!?」


~自販機前~

天使「それで、用件は?」

ユイ「うっと、え~っと。い、いやー。
   まさか本当に顔貸してくれるとか思わなかったから、ぶっちゃけ用件なんて無いッス!」

天使「……そう」

ユイ(ユイにゃん死んだーーーーーーー!!)

天使「……良かった」

ユイ「へ?」

天使「切羽詰った顔をしていたから、何か助けてほしいのかと思っていたわ。
   悩み事があればいつでも言って。出来うる限りの助力を惜しまないから」

ユイ「あ、あざーっす……」



《作戦本部 隠しカメラ映像鑑賞中》


松下「天使だ……」

高松「天使ですね……」

大山「天使だね……」

関根「ええ、紛れも無く天使です……」

藤巻「それに引き換え、うちのリーダーと来たら」


チラッ


ゆり「なによ、何見てんのよ。作戦サボろうとか考えてんじゃないでしょうね?」


音無「はぁ……」

直井「ふぅ……」

椎名「……あさはかなり」


野田「ゆりっぺ……天使だ……」

~自販機前~


天使「……じゃあ、この辺りで」

ユイ「ちょちょちょ! ちょーっと待ったァ!」

天使「?」

ユイ「せ、生徒会長! ご機嫌は如何ですかぁ!?」

天使「……ぼちぼち」

ユイ「そ、そっすかー! お元気そうで何より!」

天使「……じゃあ、この辺で」

ユイ「生徒会長ゥ! 好きなお菓子は何ですかァ!?」

天使「……ドーナツ」

ユイ「マジっすか、アタシもドーナツ大好きですよ!」

天使「そう。 じゃあこの辺で」

ユイ「だからちょっと待ってって言ってるじゃないですかァー!」


天使「もしかして、何か用事でも?」

ユイ「いや、そのー…用事というか、何というか」

天使「?」

ユイ「えぇい! 今暇してんならアタシとちょっとおしゃべりしようって言ってんだろがゴルァ!」

天使「……おしゃべり?」

ユイ「そうそう! ガールズトークっていう世間で話題のアレっすよ!」

天使「……もしかして、それを言うために声をかけたの?」

ユイ「おぅ、何か問題でもあるんですか!?」

天使「……もっと分かりやすく言ってもらわないと困るわ」

ユイ「アンタにだけは言われたくない台詞です……」

ユイ「それで、どうなんですか? 時間あります? ありますよね、よっし話しましょう!」

天使「……いいわよ」

ユイ(いよっしゃー! ユイにゃんの世間話スキルをガンガン使ってやりますぜぇー!)


ユイ「えーっと……その……」

天使「……」

ユイ「お名前は?」

天使「立花かなで」

ユイ「ご、ご趣味は?」

天使「……最近は読書」

ユイ「へ、へぇー!」

天使「……」

ユイ(も、もう世間話の弾が切れたぁー! まさかこんなにも早く尽きてしまうとは!?)



《作戦本部 隠しカメラ映像鑑賞中》

日向・ひさ子・ゆり「下手くそか!」


ゆり「やっぱりアホに一存するのは問題があったわね」

日向「よくよく考えたら、アイツって世間話あんまり得意としてない気がするわ。
   音楽とか自分の専門ジャンルなら饒舌なんだけれど、人にネタ振るようなキャラじゃねぇしな」

遊佐「彼女の事をよくご存知ですね」

日向「いんや、普段よく一緒に居るから見えてくるところってのがあるんだよ」

遊佐「なるほど」

松下「む? 何か天使に動きがあるぞ?」

大山「おもむろに自販機に向かっていったね」

TK「Just Easy~♪」

椎名「あさはかなり」

~自販機前~


ユイ(ぬうぅぅぅぅぅ~~~!! き、緊張して何喋っていいのか分からない……)


ピッ  ガコン


天使「……はい」

ユイ「……へっ?」

天使「……お話するなら、飲み物あった方が良いかと思って」

ユイ「あ、ありがとう…」

天使「オレンジジュースで良かった?」

ユイ「う、うっす! ゴチになりやす! マジ感謝っす!」

天使「……おっす。ゴチしましたっす」

天使「貴方は、よくここの自販機で飲み物買うの?」

ユイ「いんや。体育館前と学食の自販機ならよく使うけれど、ここはそんなに使わないっすねぇ」

天使「そう……」

ユイ「またどうして?」

天使「ここのKeyコーヒー、よく売り切れるから人気なのか気になったの」

ユイ「あー、確かにKeyコーヒーここにしか無いのによく売切の赤ランプ点いてる気が」

天使「……残念」

ユイ「……今度もし売ってたら、アンタに買ってきてあげましょっか?」

天使「?」

ユイ「オレンジジュース奢ってもらった恩は死ぬまでに果たさせてもらいますから!
   ユイにゃん嘘つかないんで安心してください!」

天使「……待ってるわ」


ユイ(……あれ? 今、この子、笑った?)

《作戦本部 隠しカメラ映像鑑賞中》

ゆり「……そろそろ潮時かしら」

大山「そろそろも何も最初から潮時だった気がするよ、ゆりっぺ」

日向「大山、こういう時のゆりっぺは馬耳東風だから言っても無駄だって」

野田「なんだその不味そうな豆腐は? ゆりっぺが好き食べ物か?」

日向「変な所で食いついてくんなっつーの! お前どんだけゆりっぺスキーなんだよ!」

椎名「あさはかなり」



ユイ(ん、なんかインカムから聞こえてくる……)


<時間切れ 時間切れ  10日間不眠確定   時間切れ>


ユイ「ぬわあああああああああああああああ!! いやじゃあああああああああ!!」

天使「どうしたの?」

ユイ「あ、スイマセン…そろそろ行かなくちゃ……」

天使「そう、お疲れ様」

ユイ「はぁ……もうコレ罰則じゃなくて拷問ですよぅ……」

天使「もし、良ければ」

ユイ「?」

天使「また、話しましょう」

ユイ「……オッケ! 喜んで! 次会うときはユイにゃんの抱腹絶倒トーク期待してろよゴルァァァ!」

天使「……楽しみにしてるわ」

―― 対天使作戦本部 ――


ユイ「……惨敗でした」

日向「そうしょげんなって。お前にしちゃよく頑張った方だろ」

ユイ「ううぅ~。ひなっち先輩からまさか優しい言葉をもらえるなんて……。
   さっき薄情者って言ってスンマセンっしたぁ~~」

日向「『セカンドフライお陀仏野郎』の方は取消無しの現状維持!? ホワァァァァイ!?」

音無「まぁでも、あれはかなり喋れていた方だろう。健闘賞くらいあげてもいいんじゃないか?」

ゆり「……そうね。次向かう人のハードルも思った以上に下がったし、とりあえず10日不眠は無しかな」

ユイ「いやっほおおおおおおおおおおぅぅぅ!! いやぁー、ユイにゃん頑張った甲斐ありました!」

ゆり「10日間絶食で」

ユイ「……鬼じゃ、鬼がここにおる」

岩沢「鬼、か。 いいね! そのフレーズいただき!!」

ひさ子「フレーズもへったくれもない単語から何をインスピレーションしたんだお前は!?」

ゆり「では第二陣! 覚悟はいい!?」

大山「うう~、当たったらやだなぁ」

藤巻「俺も当たったところで、麻雀くらいしか会話のネタが無いしなぁ」

松下「ふむ、攻撃さえされなければ一女生徒。俺はさして不安は感じないぞ」

高松「もし当たったら、とりあえず今月読んだ『ター○ン』の筋肉ネタで小一時間はいけるでしょう」

日向「どっから来る自信だよそれ! 小一時間どころか1分もったら奇跡だわ!」

音無「みんな気負いすぎだろう。普通の女の子と話す感じでいいじゃないか」

直井「流石は高貴を纏う音無さん。普通の女なら喋り一つで腰砕けにする自信があるという事ですね!
   そこにシビれます、憧れます!」


入江「……賑やかだなぁ」


ゆり「じゃあ、次の話し手は貴方よ!」


ゆり「どっせええええええええええええええええええいい!!」


>>125

岩沢

音無「岩沢、岩沢」

岩沢「~~♪ ~~♪」

音無「おい、岩沢」

岩沢「~~♪  ん? なんだ、せっかく良いフレーズ降りてきていたのに」

音無「お前、当たったぞ」

岩沢「何が?」

ひさ子「次の犠牲者、お前だってさ」

岩沢「またまた冗談を」

ひさ子「何しれっとシラ切ろうとしてんだよ! ほれ、当たってるから行って来いっつーの!」


ゆり「当たった事は致し方なし。岩沢さん、健闘を祈るわ」

岩沢「面倒だなぁ……」

ユイ「岩沢さーん! 別に無理に頑張らなくてもいいんですよー!」

日向「自分が絶食確定だからって道連れ増やそうとするなっての!」

直井「しかして、あの人選で大丈夫か?」

ユイ「音楽キチと天使のコラボ、こういう不確定要素がぶつかり合うと
   良い方向に動くのは稀によくある事だって世間一般では決まってるんですよ!
   自称神様には分っかるかなー? 分っかんねぇだろうなぁー!?」

直井「愚民に煽られるとは僕も堕ちたものだ、嘆かわしい……」

遊佐「落ちるじゃなくて堕ちると表現する辺りは流石ですね」


~自販機前~


天使「……」

天使「……お昼、何食べようかな」


岩沢「よぅ」

天使「?」

岩沢「生徒会長様はこんなところで何してるんだ?」

天使「休み時間だから、休憩」

岩沢「へぇ」

天使「貴方も授業に参加して」

岩沢「……そのうちね」

岩沢「まぁ、何ていうかアタシもこの時間って暇だしさ」

天使「?」

岩沢「隣、いい?」

天使「別にいいわ」

岩沢「サンキュ」


《作戦本部 隠しカメラ映像鑑賞中》

ひさ子「流石は岩沢。生前は色んなところで働いてたみたいだし、最低限の良識はありそうだな」

音無「謎の安定感ってやつを感じるな。こりゃ意外と上手い方向に転ぶかも」


~自販機前~


岩沢「ついでに一曲いいかい?」

天使「いいわよ」


音無・ひさ子・日向「会話の緩急が凄まじするわぁぁぁぁーーー!!」

岩沢「~~♪ ~~♪」

天使「………」パチパチ


< おい、アレってガルデモの岩沢さんじゃね?

< きゃー! ゲリラライブ始まっちゃうの!?

< うっはぁー! マジ岩沢さん素敵ッス! ユイにゃんの永遠の憧れやでぇ~!!

< アンコール! アンコール!


岩沢「なんかギャラリー増えてきてるね…場所変えてもいいかい?」

天使「……よく分からないけれど、いいわ」

岩沢「決まりだね。じゃ、そのまま昼休みってことで学食にでも行こうか」

天使「でも、授業が残っているわよ」

岩沢「そんなの後でいくらでも受けれるだろう。今はこっち優先って事で!」

天使「……強引ね」

《作戦本部 隠しカメラ映像鑑賞中》


ゆり「流石は岩沢さんね! いとも容易く天使とゆっくり話せる環境を作り上げるなんて」

野田「ほぅ、やるな」

高松「彼女が戦果を上げるときはそう遠くないやも知れませんね」

日向「……つーか何!? なんでユイがいきなり消えたかと思ったら岩沢の近くに行ってるわけ!?
   アイツどんだけ岩沢に懐いてんだよ!」

関根「そういえば、さっきの映像にユイ映ってたね」

入江「最前席で岩沢さんのアカペラ聞いてたねぇ~」

ひさ子「あいつ罰則確定だからって自由すぎるだろ……」

ど、どこで過去作品が読めるか教えてくれ…

そしてこのお方の見分けかたも

大山「よりにもよって音楽キチの岩沢さんが引き当てられてるからさ。
   僕、これは話す内容がもの凄く、ものすごーく絞られそうな予感がするんだ」

ひさ子「そりゃ普段のアイツ知ってる奴なら不安じゃないワケないよな」

関根「…ちなみに、岩沢さんの思う世間話ってどんな内容なんでしょ?」

ゆり「…ちょっと聞いてみようかしら」


岩沢(ん? インカムから通信?)

< 岩沢さん、こちらゆり。 突然だけど、簡単な質問に答えて頂戴

岩沢(いいぜ。ただ、天使が近くになるから小声なのは勘弁してくれ)

< 岩沢さんが話そうとしている世間話って、どんな感じ?

岩沢(世間話だろ? まずレッドツェペリンの話題から振ってみて、
   どういうジャンルの音楽を語れるのかを相手に委ねるのが普通ってモンさ)

<  アンタにとっての世間はなんちゅう狭い世間だよ! 万人がレッドツェッペリン知ってるの前提で話を進めるなっての!」

岩沢「今の声はひさ子か?  RZを皆知ってるなんて当然に決まっているだろう?」

ひさ子「疑問詞で返すなぁぁぁーーー!!」


日向「おーい、ゆりっぺぇー! これ下手したら第三陣の準備が早急に必要になってくるぞーー!!」

< 岩沢さん、しっかりミッションを達成するためには事前の対策が必要になってくるわ」

岩沢(その声はゆり? なんだか試験前の先生みたいだな)

< そこで、よ。貴方もう最初から話題をいくつか定めておきなさい」

岩沢(音楽さえあれば充分だろ?)

< 向こうは天使よ、一体どんなトリッキーな会話をしてくるのか分からないわ。
   音楽の話をしているときにいきなりカツ丼の話をされるかも知れない」

岩沢(そ、それは確かにトリッキーだな…)

< 万が一の事態に備えて、話せそうなネタをいくつか揃えておいて頂戴」

岩沢(あ、ああ…分かった)

【岩沢さんの話のネタ】

>>150-155 から2つ抜粋

音無について

>>145
たぶんこれ
抜けてたらだれか補完頼んだ
<・音無「オペレーション・ラブエクストリーム…?」> 1作目
<・音無「オペレーション・スレイブオブマイン…?」> 2作目
<・音無「オペレーション・ラブエクストリーム 2 …?」> 3作目
<・音無「オペレーション・ラジオウェイブトーキング…?」> 4作目
<・ゆり「オペレーション・スイーツフォワード!」>5作目

~学食~


天使「いただきます」

岩沢「……何それ?」

天使「マーボー豆腐定食」

岩沢「……粘膜を痛めつけるのが趣味だったりするのか?」

天使「食べる?」

岩沢「薦めてくれて有り難いんだけどさ、ハスキーボイスしか出なくなりそうな食べ物は遠慮しておくよ」

天使「そう、残念」

岩沢(あ、本当に残念そうだ……)

天使「ご馳走様でした」

岩沢「食べるの早いな……」

天使「じっと見られると恥ずかしいから、急いで食べただけ」

岩沢「あ、ああ。悪かったね」

天使「気にしないで。……そういえば」

岩沢「ん?」

天使「久しぶりに、誰かと一緒にご飯の時間を取った気がする」

岩沢「…そっか。そりゃ何よりだね」

天使「それで、何か用事でもあったの?」

岩沢「いや、珍しい人が歩いていたから声かけただけ」

天使「そう。今日は珍しい日ね」

岩沢「?」

天使「さっきも同じような感じで話しかけられたわ」

岩沢「ああ、ウチのボーカルが迷惑かけちゃったか?」

天使「いいえ。話せて良かったわ」

岩沢「そっか」


岩沢「なぁ、生徒会長」

天使「なに?」

岩沢「何か適当に話そうよ」

天使「何か、と言われても困る……」

岩沢「ああ、そうだね……それじゃ、共通の話題って事でさ」

天使「?」

岩沢「記憶無し男の事でもどう?」 【>>150

天使「……」

岩沢「どうした、いきなり考え込んで?」

天使「一つだけいい?」

岩沢「何さ」

天使「記憶無し男って、誰なのか分からないわ……」

岩沢「ホラ、音無なんとやら」

天使「……結弦の事?」

岩沢「そうそう!」

天使「彼の話?」

岩沢「まぁ、ぶっちゃけさ。……付き合ってるの?」

天使「?」


《作戦本部 隠しカメラ映像鑑賞中》


音無: (´゚ω゚)・*;'.、ブッ


藤巻「坊主が血ぃ吐いたぞ!」

大山「しっかり! 傷は多分あさはかなりだよ!」

椎名「あ、あさはかなり!」

日向「椎名っち、無理して乗ろうと頑張らなくていいから!」

TK「It's wonderful and Beautiful~~♪」

~学食~

天使(つきあう、って。 何を指すのかしら?)

天使(つきあう、つきあう……)

天使(……なるほど)


天使「つきあって、という事は無いけれど」

岩沢「?」

天使「私から一方的に、ということはあるわ」

岩沢「!!!??」

岩沢「え、あ、え、せ、生徒会長から、なのか……」

天使「ええ。相違ないわ」

岩沢「そ、それはちなみにいつ頃の話なんだ?」

天使「結弦と出会ってすぐの話」

岩沢「そ、そりゃまた電光石火だね……」

天使「まだこの世界に来て、右も左も分からない結弦にひどい事したって…反省している」

岩沢「ひどい事、ねぇ。 それって聞いてもいい話?」

天使「刺したわ」

岩沢「さ、挿した!?」

天使「結弦の急所に、思いっきり一突き」

岩沢「………………」

天使「口をパクパクさせてどうしたの?」

岩沢「い、いや…すごい話を聞いちゃったと思ってさ……」

岩沢「……」

天使「無防備な状況だったから気は引けたのだけれど…。
   私の高鳴る鼓動が、確かめるべきだと叫んでいた」

岩沢「な、なにを……?」

天使「彼の中身が詰まっているのかどうか」(注:心臓的な意味で)

岩沢「OK、OK。もうアレだ。ギブアップだ。これ以上聞いたら立ち直れない」

天使「立ち直れない?」

岩沢「……こっちの話」

天使「その結果、結弦は血塗れになったわ」

岩沢「そりゃ…血塗れにもなるだろ……」

天使「あんな事をされても結弦は優しいから武具を使わない。
   だから、私と彼は今まで突き合った事ないわ」

岩沢「そりゃ付き合えないだろ…というか、そんな事されても平然と振舞う記憶無し男の方が天使じゃないか」

岩沢「……もう少し、優しくしてあげようかな」

天使「何の話?」

岩沢「こっちの話さ。それでさ、もう一つ気になる事があるんだけどいい?」

天使「?」

岩沢「ウチの男達で記憶無し男以外に気になる人っている?
   というか、ぶっちゃけ死んだ世界戦線の事どう思っているか聞いてみたいんだ」【154-155】

天使「貴方達の、事……?」

天使「貴方達の事だったら、そうね……」


天使「……まず、授業に参加してほしい」

岩沢「そりゃ無理な相談だね。んで?」

天使「……許可なくライブを開くのは止めてほしい」

岩沢「それもまた無茶な要望かな」

天使「生徒達も喜んでいるところがある。申請したらライブしてもいいのに」

岩沢「ゲリラライブで行なってこそ、ロックって奴だろ」

天使「……あとは」

岩沢「あとは?」


天使「……楽しそう」

岩沢「……ま、否定はしないよ」

岩沢「あとはウチの男子たちの事だけど…。
    ぶっちゃけアタシ自身そういう話にあんまり興味が無いからよく分からない」

天使「そうなの?」

岩沢「興味がある風に見えたのなら是非とも教えてほしいくらいさ」

天使「結弦の話のとき、あんなに真剣に聞いていたのに?」

岩沢「いやまぁ…アレは内容が内容だったから……」

天使「?」

岩沢「あー、もー。やっぱこういう話は向いてない。
   今の気持ちを伝えるには……歌しかないだろう!」

天使「……」パチパチパチ

《作戦本部 隠しカメラ映像鑑賞中》

日向「いやいやいや! 良い感じに喋れてたじゃねぇか! 
   なんで急に歌!? ホワァァァイ!」

ユイ「ちっちっち。ひなっち先輩は分かってないですね。
   アレは照れ隠しですよ」

日向「照れ隠し?」

ユイ「普段恋バナすら新曲のベクトルに変える音楽キチの岩沢さんが、
   割と真面目に異性関係を話そうとしていたあの現状…慣れない事をする分、照れが大きくなる!」

日向「うっ、な、なんか妙に説得力あるぜ……」

ユイ「なので、突拍子も無い歌はそれ即ち! 岩沢さんの照れの具現化に他ならないんですよー!」

日向「ま、まるで恋を知っている女子高生のような含蓄をユイから感じているだとぅ!?」


遊佐「岩沢さん、本気で歌っているようです。成仏の際に発する淡い光に包まれ始めてます」

ユイ「い、い、岩沢さぁぁぁぁーーーん!! ストップ、ストップぅぅぅ-!」

日向「お前今さっきまでドヤ顔で語っていた恋愛観の何某は一体なんだったんだぁぁぁーー!」

~食堂~


岩沢「あ、危うく消えるところだった」

天使「……」

岩沢「ん?」

天使「貴方は、したくないの?」

岩沢「何を?」

天使「……成仏、したくないの?」

岩沢「……まだ、遣り残した事があるんだ」

天使「……そう」

岩沢「ま、せいぜいこれからもヨロシク頼むよ。生徒会長」

天使「……困った事があれば、いつでもどうぞ」

岩沢「あ、そうだ。一つだけ聞いて良いか?」

天使「なに?」

岩沢「アタシの歌、どうだった?」

天使「……例えるなら」

岩沢「うん」

天使「戦乙女。素敵な歌声だった」

岩沢「……へへ、気恥ずかしい」

天使「もし承諾してくれるなら、いつか貴方に歌ってほしい」

岩沢「リクエストって珍しいね。別にいいよ」

天使「これ」

岩沢「……ルーズリーフの紙?」

天使「私にとっての神様の歌」

岩沢「!?」

《作戦本部 隠しカメラ映像鑑賞中》


ゆり「ぬわぁぁぁんですってえええええええ!!」

高松「まさか自ずから尻尾を出してくるとは思いませんでしたね」

TK「Secret Rhythm Secret~~♪」

椎名「あさはかなり」

直井「まさか、僕を讃える歌がすでに完成していたとは……っ!」

藤巻「間違ってもそれだけは無いから安心しとけっての」

~学食~

< 岩沢さん、聞こえる!?

岩沢(こちら岩沢。とてつもないブツを入手した、オーバー)

< でかしたわ。戦線史上に残る功績よ。後は無事に作戦本部まで戻ってきて!

岩沢(了解)


岩沢「そんじゃ、生徒会長。長々と悪かったな」

天使「構わないわ」

岩沢「さっきのヤツ、有り難く受け取っておくよ」

天使「ライブで歌ってくれたら嬉しい」

岩沢「……歌って、いいのか?」

天使「? その為に渡したのよ」

岩沢「マジか。 分かった、しっかり歌い上げるから安心してくれ」

天使「楽しみにしている」

天使「…………♪」

岩沢(ホント表情は微々たる変化だけど、天使が嬉しそうにしているのって、なんか可愛いな)

―― 対天使作戦本部 ――


岩沢「と、いうワケで首尾は上々だったよ」

ゆり「流石は岩沢さんね。どこぞのピンク髪とは雲泥の差だわ」

ユイ「プッフーwwwww  ひなっち先輩、マジ凄い言われようッスね~wwwww」

日向「お・ま・え・の・こ・と・だ・っつー・の!」

ユイ「ギャー! ギブギブ! だ、第二関節キメられたら折れる、マッチ棒の如くポッキリと折れますぅ~~!」

大山「でも流石は岩沢さんだね。あの天使相手に怯まず戦果を上げるなんて」

音無「ああ、確かにな。 やるじゃないか、岩沢」

岩沢「記憶無し男…か……。最近どう、体の調子とか大丈夫?」

音無「なんで急に体調気遣ってんだよ。らしくないぞお前」

岩沢「らしくない、か。アンタ色々大変だろうに、人を気遣えるなんて凄いね……」

音無「おい何だその無駄に優しい生温かい視線! この1時間で何があったんだ!?」

岩沢「今度はさ、アタシが夕飯奢るよ。あったかいもの食べような」

音無「岩沢さん!? 岩沢さーん! お前何か凄い誤解を植えつけられてないですかー!?」

ゆり「アホは放っておいて。ひさ子さん、早速この『神の楽曲』の解析を頼むわ。
   もし演奏が可能な曲であれば、早速今日のオペレーション・トルネードで実行するわよ!」

ひさ子「マジか…流石にちょっと緊張するな」

入江「こ、怖いよぅ~」

関根「だ、大丈夫! あたし達に出来るのは楽器を奏でることだけだよ!」

入江「う、うん…頑張ろうね、しおりん!」

ユイ「あ、あの~。 ここらで一つ。
   今回の件は結果として成功したんで私の罰則は無しって事でいいっすよね! あざーっす!」

ゆり「勢いで押し切ろうとしたのはいい度胸ね。水を飲むことくらいは許可するわ」

ユイ「や、やぶへびだったあぁぁぁぁぁぁ~~~!!!」


ゆり「では、これにて『オペレーション・エンジェルトーカー』は終了!
   各自夕暮れのトルネードに備えて準備開始!」


戦線メンバー「応っ!」


“エピローグ”


日向「さて、全員配置についたはいいけれど」

音無「やっぱり気になるな、かなd…天使の渡したあの楽曲」

高松「もしかするとさりげなく渡したフリをして、その実聞いたものを発狂させる魔奏では?」

大山「うえぇ、そういう猟奇的な発想は止めようよ~」

松下「何が起こっても不思議ではないな、今回のミッションは」

TK「Get Wild and tough~♪」

音無「おいおい、あんまり不安を煽るなって」

日向「ま、ぶっちゃけ一番不安なのはガルデモの面子だろ」

音無「そうだな。今日最前線で戦っているのはあいつらだ。俺達は全力でサポートしようぜ」

藤巻「お、坊主のくせに良い事言うじゃねぇか」

椎名「あさはかなり」



< こちらオペレーター。 南南西、天使の姿を確認。



音無「……来たっ!」

<会場にて>

岩沢「今日も来てくれてありがとう!」

ユイ「みんな、愛してるぅ~!」


\ ワーワー /  \キャーキャー/   \イワサワサーン! ユイー!/  \ヒサコネエサーン!/ 

\ アトカゲウスイヒトー!/ \ベースノ…エート…ベースノヒトー!/  \イリエチャーン!/


関根「お前らライブ終わったら覚えてろよチクショー!」

岩沢「さっそくだけど聞いてくれ、今日の為に作った特別ナンバー!」

ユイ「タイトルは……!」


死んだ世界戦線戦歌 From  girls dead monster!



おっそらの死んだ世界から~♪
お送りします~♪
お気楽ナンバー♪
しぬまでに~食っとけぇ~♪
まーぼー豆腐~♪

ああ~♪麻婆豆腐~♪
まーぼーどーふ~♪


ゆり「なっ……」

音無「なっ……」

日向「なっ……」


戦線メンバー「なんじゃこりゃあああああああああああああああああああああああああ!!」



天使「……名曲ね」





           END
    ___∧ _ _
          ∨

少々短めの話でお粗末様でした。
またこうしてSSを投下できて嬉しい限り。

Angel Beats!のSSが今後も増える事を願いつつ…。
それでは、解散!


http://www.youtube.com/watch?v=JKmafS8k4Bk&feature=related

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