小鞠「最近さあ、蛍、何か私と距離置いてない？」

蛍「ふぇっ！？そ、そんなことありませんって……」

小鞠「嘘！今、目が泳いだ！」

蛍「うぅ～……」

蛍（小鞠センパイへの思いはおおっぴらにできるものじゃない……。それに、センパイにも迷惑をかけてしまう……）

蛍「そ、そんなことより今日の給食の配膳係はセンパイですよ？早く準備しないと」

小鞠「ああっ、ほんとだ！さんきゅ、蛍」




夏海「……」

れんげ「なっつん、こまちゃんの方睨んで、どうかしたん？」

夏海「ん？いんや、別になんにもー。それより給食給食～♪」

れんげ「うんっ！」

蛍「はぁ……」

れんげ「どしたん、ほたるん」

蛍「れんちゃん……」

れんげ「最近ほたるんの元気がないん。うち、心配なん」

蛍「アイエエ、そんなことありませんよ」

れんげ「じーっ……」

蛍「あ、あはは、そんな見つめても何もありませんって」

れんげ「ならいいのん」

蛍「ほっ」

れんげ「誰なのんっ！？」ﾊﾞｯ

そう叫ぶと、れんげは振り向きざまに拳を叩き込んだ

れんげ「誰もいなかったのん……」

蛍「……」ｿﾞｸｯ

蛍（もしかして、夏海産廃が……）

れんげ「確かに視線を感じたのん……」

蛍「私はれんちゃんの気のせいだと思うなー……なんて」

れんげ「むむ……そういうことにしておくのん……」

小鞠（とっさに地面に潜ってれんげ達から隠れたけど、危うく見つかるとこだった……）

小鞠（れんげは勘が良いとこあるもんなー。さっきだって、蛍の様子がおかしいのを感じたのか聞き出してた）

小鞠（やっぱり、私だけじゃなかったんだ。蛍の様子がおかしいって思ってたの……）

小鞠（よし、ここは先輩として、週末辺りに何か奢ったりして元気を出させてあげよう）

小鞠（えっと、お小遣いまだ残ってたっけかな……）




夏海「……」

蛍「えっ？週末の予定ですか？」

小鞠「そうそう。もし暇してるんだったら街まで遊びに行かない？」

れんげ「いいなー、うちも行きたいん」

小鞠「れんげはお小遣いないでしょ」

れんげ「小学一年生に経済力を求めるんは間違ってると思います」

小鞠「あはは、まあ、今度別な機会にれんげの事は誘うからそう怒らないでよ」

れんげ「約束なのん！」

小鞠「で、蛍はどうなの？」

蛍（正直、先輩と二人で街に出かけるなんて嬉しい……。でも……）ﾁﾗｯ

夏海「ん？何見てんのさ、ほたるん」

蛍「いえ、別にそんな……」

夏海「いいじゃん、行ってきなよ」

蛍「えっ」

小鞠「夏海、あんたはついて来ないでよね」

夏海「へいへい。どうせ夏海ちゃんは街に遊びに行くお小遣いとかないしねー」

小鞠「ね、行こ？大丈夫、お昼とか私が奢ってあげるから！美味しいお店をタウン誌で見つけたんだ～♪」

蛍「は、はぁ……。それじゃあ喜んで……」

小鞠「決まり♪じゃ、待ち合わせ時間とかはあとで連絡するから」

蛍「すみません、お願いしま……」

蛍「ッッ……！？」

夏海「……」ﾊﾞｷｯ

蛍（すごい目で睨んでる……。しかも、持ってたストローをまるで箸を折るかのように粉砕した……。怖い……）

蛍「は、話って何ですか？」

夏海「うち、言わなかったっけ？姉ちゃんとあんまり仲良くすんなってさあ」

蛍「で、でも、私が誘ったわけでもないわけですし……」

夏海「黙らっしゃい！」ﾋﾟｼｬｰﾝ

夏海が突如両手を勢いよく叩くと、そこにはハエの亡骸が潰されていた

夏海「あんまり調子乗ってると、ほたるんもそのハエみたいになるよ」

蛍「あわわ……」ｿﾞｸｯ

夏海「週末の姉ちゃんとの約束に行くな、と言いたいところだけど、そしたら姉ちゃんがガッカリするだろうからなあ……」

蛍「ほっ……」

夏海「じゃあこうしようよ。その日、ほたるんは姉ちゃんに嫌われる事しかしないでよ」

蛍「えっ……？」

夏海「考えてもみてよ。年頃の女の子二人が街を歩くだなんてさあ、どう考えてもおかしいじゃん。もうゆるゆりなんてレベルじゃないよ？」

蛍（普通だと思いますけど、でも、夏海先輩の怒りを買うといけないので言わないでおきましょう……）

夏海「言ってること、わかるよね？」

蛍「は、はい……。わかりました、言われた通りにしますぅ……」

夏海「よーし、いい子だ。いやー、日曜が楽しみだなー♪」

蛍（こっちは気が思いですよー……）

小鞠「待った？」

蛍「いえ、今来たばかりです（本当は一時間前から居ましたが）」

小鞠「そっか。よかった。じゃあ行こっか」

蛍「はい♪」

蛍（きっと夏海先輩が尾行とかしてるんだろうなぁ……）

小鞠「あれ？蛍、今日はなんていうか格好が幼いっていうか、年相応っていうか……」

蛍「あ、はい。センパイと街に出かけるっていうんで少しお洒落してきたんです」

蛍（夏海先輩が怖いので、かっこいい服装はやめてあえて子供っぽい格好で来たんですけど……）

小鞠「ふ～ん、そっか～♪（これだと私がお姉さんみたいに見られるかも）」

蛍「……？」

蛍（何故かセンパイ、機嫌よさそう……）

蛍（電車は一両編成……。夏海先輩がついてくるとしたらここで鉢合わせになりそうなものなのですが……）

小鞠「さすが田舎。休日だってのにうちらしか乗客いないねー」

蛍「ですね」

蛍（夏海先輩の姿は無い……。でも、油断せずにいきましょう……）

蛍「ふぁっ！？」

小鞠「ど、どしたの蛍！？いきなり声出して？」

蛍「い、いえ、何でもありません」

蛍（い、今、電車の外を夏海先輩が並走してました……。田舎の人は身体能力が高いとは聞いていましたが、まさかここまでとは……）

小鞠「いやー、やっぱり街は栄えてるねー」

蛍「そうですね、センパイ（それでも田舎なんですけど……）」

小鞠「それじゃあ行こっか、蛍」ﾆｺｯ

蛍「ふぇぇ……///」

蛍（こんな満面の笑みで誘われたらどこへだって……///）

蛍「！？」ｿﾞｸｯ

蛍（今の気配……。まさかシスコンがこの街に……！＿？）

蛍（で、でも、電車は速いし、さすがについてこれないはず……）

小鞠「蛍ー、はやくー」

蛍「はーい、今行きまーす」

小鞠「ここ、ここ！」

蛍「わぁ、雰囲気の良い喫茶店ですね」

小鞠「でしょー？ここ、カップルがよく使うお洒落なお店らしいよ。タウン誌に載ってた」

蛍「カップル向け……///」

小鞠「それにしても、どれも高いな……」

蛍「あ、私、自分の分くらいは出しますから！」

小鞠「いいのいいの。最近元気のない蛍の為に、ここは私が年上のお姉さんとして奢るって決めてるんだから！」

蛍「は、はぁ……。それじゃあお言葉に甘えて……」

蛍（ここの最低メニィーはコーニーでも４００円はする……。お小遣いを無計画に使ってる夏海先輩は入ってこれないはず……）

蛍（うん、大丈夫ったら大丈夫）

小鞠「コーヒーとケーキのセットだとややお得かな……。いや、でも……」

蛍「あ、私何でもいいですので、一番安いアイスティーとかで……」

小鞠「あ、あはは、何かごめんね、気を使わせちゃって。それじゃ、二人でこれ頼んじゃうけどいい？」

蛍「ふぇっ！？」

蛍（こ、これ、恋人同士が一つのを二人で飲むっていう、あの……///）

小鞠「えへへ、二人別個に頼むと結構かかるから……。蛍はこれでいい？」

蛍「は、はい！」

蛍（えへへ……センパイと一緒にこんなラヴい飲み物だなんて……///）

蛍「！？」ｿﾞｸｯ

蛍（やっぱりこの気配……。夏海先輩がすぐ側に……）

蛍（でも、一体どこに……）ｷｮﾛｷｮﾛ

小鞠「ふふっ、蛍、そんなにキョロキョロしてたら田舎者だと思われちゃうよ、もう♪」

蛍「あ、はい、そうですよね」

蛍（センパイは何だか上機嫌そう。どうしよう、夏海先輩がもしここに居るなら、センパイに嫌われる事をしないと……）

小鞠「あ、きたきた。蛍、注文した奴来たよ」

蛍「わ、わぁ、すごい大きいですね」

駄菓子屋「ふーん、それでれんげはうちに来たわけか」

れんげ「うち、仲間はずれにされたのん」

駄菓子屋「いやいや、金もないんだし仕方ねーだろ」

れんげ「だから仕方なくここに来たのん」

駄菓子屋「仕方なくってお前なあ……」

れんげ「お茶でも淹れてあげようと思ったけど、ここにはお茶がないのん」

駄菓子屋「あー、切らしてたか。悪ぃーな」

れんげ「アイスティーしかなかったけどいいん？」

駄菓子屋（えっ、それって、定番の誘い文句じゃねぇか……///）

駄菓子屋「一向に構わぬ！」

駄菓子屋（はぁ……はぁ……。大きめなエプロンをして調理場で悪戦苦闘するれんげ、愛おしい……）

れんげ「うーん、うーん……。駄菓子屋、量はこのくらいでいいん？」

駄菓子屋「あ、ああ……」

れんげ「ふーん、ふーん」

駄菓子屋（やべぇ、可愛過ぎる……。これはもう襲うか？襲うしかないのか！？）

れんげ「氷は冷凍庫でいいのんな」

駄菓子屋「ああ、冷蔵庫の下だ」

駄菓子屋（あっ、あっ、冷蔵庫にかがんだれんげのスカートの中が！）

駄菓子屋（み、見える……。私にも見えるぞ……///）

ギュッ

れんげ「もう、駄菓子屋。何するん？氷がこぼれてしまうんな」

駄菓子屋（つい後ろから抱き締めてしまった……）

れんげ「駄菓子屋……？」

駄菓子屋「すまん……。少しこのままでいさせてくれ……」

れんげ「……仕方ないのんな。好きなだけ甘えるといいのん」

駄菓子屋「すまん……」

駄菓子屋（れんげは私の言葉から何かを感じたのだろう。察しがいい奴だからな……）

駄菓子屋（いっそ、れんげの優しさにつけこむ形でヤっちまうか……？）

れんげ「……」