蒲原「ワハハ、賭郎勝負するぞー」 衣「衣は全てを賭ける」(167)

昨日の夜から書き出した突貫なので矛盾あるかも
あとギャンブル模写は素人





都内某所 とあるマンションの一室にて

蒲原「稼いだ稼いだ。これで2千万ちょいかー?」ワハハ

妹尾「さ、智美ちゃん、そろそろ出ようよ」アセアセ

妹尾(新しい雀卓とプロジェクターが欲しいって、どこにいくかと思えば……)

妹尾(違法賭博場だったとはー!)

妹尾(しかも高レートで一度も負けなし。他のお客さんみんな帰っちゃったよ)

妹尾(あっちの元締めっぽい耳が半切れのおじさんがすっごい睨んでる……)

蒲原「むー。ま、いっか。これで当分部費は困らないぞ」

鮫丸「嬢ちゃん、そいつはないんじゃないかねー。それだけ巻き上げて、はいさよならはだめだろ?」

蒲原「じゃあどうすればいいんだー?ただでは返してくれないみたいだぞ」

鮫丸「答えは簡単。これから行う勝負に有り金全部を賭けてくれればいい。今日一番の大勝負だ。もちろんこちらm」

妹尾「そんなのおかしいです!こっちは客としてきてるのに!」

鮫丸「るせぇ!ここは元々カタギが来るようなところじゃねぇんだよ。譲歩してるってのにそれでも帰るってんなら……」

鮫丸「無事な体で出れるとは思えねーなあ」ヒヒヒ

妹尾「ひいい」

蒲原「むっきー」

睦月「うむ」ヒュッ

鮫丸(な、消え――)

鮫丸「ぐあっ!!いつの間に後ろに!!」

鮫丸(いや、それよりも体が全く動かん!)

睦月「頚椎に牌を押し込んだ。抵抗すれば殺す」

鮫丸(クソ、ガキだと思って舐めてた……)

鮫丸「て、抵抗できねぇよ。……さっき言った最後の勝負だが、おめーらにも悪くない取引だと思うぜ」

蒲原「ワハハ、二千万を全賭けできるぐらいかー?」

鮫丸「そうだ……。おまえ、賭郎って組織は知ってるか」

蒲原「……かけろう?」

妹尾「賭郎……、聞いたことあるよ。日本のあらゆる闇ギャンブルを取り仕切る超法規組織。全日のプロ麻雀連盟のトップもずぶずぶに関わってるとか関わってないとか」

鮫丸「そいつの会員権を賭けよう」

蒲原「そんなのほしくないぞー」ワハハ

妹尾&鮫丸「!!」

妹尾「何言ってるの!?どんだけそれが希少価値か知ってる!?会員数は倶楽部発足から変わらない四十八!そして会員には、賭けの遂行から取り立てまで完璧に遂行してくれるという絶対保障!国中のヤクザを相手に皆殺しにできる暴力が後ろ盾につくんだよ!」

蒲原「そ、そうなのか?」

鮫丸「いやあ金髪の嬢ちゃんは物わかりがいい(なんでこんなに詳しいんだ?)。そっちの子はオツムが足りてないみたいだな」

蒲原「ワハ、ハ?……むっきー」

鮫丸「いだだだだ!折れる折れる!今のは悪かった、離してくれ!」

蒲原「むっきー、そのぐらいでいいぞ。死んじゃったら困るしな」

睦月「うむ」スッ

鮫丸「ハァハァ、で、どうだ?やるか?」

蒲原(ふーむ。さてどうしよう。ここにきたのは部費と備品の金を稼ぎに来ただけで、2千万あれば五十年は鶴賀の麻雀部は安泰だ)

蒲原(だけども、あの佳織の眼。いつもの天然巨乳のそれではない。そんな佳織がキャラ崩壊をさせてまで食いついた会員権とやら……)

蒲原(興味がでてきた)

蒲原「よし、やろう」

鮫丸(かかった!)

鮫丸「そうか、じゃあせっかく会員権を賭けるんだ。ここはひとつ、賭郎に取り仕切ってもらおう」

蒲原「いいぞー」ワハハ

鮫丸「ちょっと――三十分ほど待ってくれないか?今電話で呼び出す」

蒲原「わかった。佳織、むっきー、始まるまで暇だからトランプでタワー作るぞ。一番大きいやつ作ったらプロ麻雀せんべえ一年分だ」

妹尾「え、いらな、あっ(察し)」

睦月「部長……私の本気を見せてあげましょう」ゴッゴッゴッゴッ

蒲原「むっきーはこうでもしないと遊んでくれないからなー」

三人 ワイワイ

鮫丸「孫六、手筈通りだ」

孫六『はい、わかりました……』

三十分後

蒲原「おー、むっきーのタワーのてっぺんが天井についてしまったぞ!」

妹尾「流石に睦月ちゃんには勝てないよ」

蒲原「いったい何セット使ったんだ……」

睦月「うむ、私なりに精一p「兄貴ー遅くなりましたー」ガチャ

津山「ウムァッ!?」ゴスッ

孫六「うぐっ!」ドサ

津山「台詞に被せるんじゃねェーッッ!」ゴスゴス

黒服A「こ、この女何しやがる」

黒服B「押さえろ!」

鮫丸「おい!」メクバセ

黒服s「!!」

蒲原(ん?)

蒲原「津山睦月、やめろ」

睦月(は!?マズイっ、本性がバレる!!)

睦月「す、すいません、ちょっとカっとなってしまい、その、」

蒲原「ワハハ、意外と怒りっぽいところが玉に瑕だな」

睦月「あ、あはは、大人しくしてます(よかったバレてない)」

妹尾(睦月ちゃんヤベェ)

蒲原「さーさて、一人怪我人出してしまったな。申し訳ない。ところであんたらが賭郎か?」

黒服「そ、そうだ我々がこの場を取り仕切る倶楽部賭郎だ」

蒲原「ふむ、そこでのびてるゴリラ顔の奴もか?」

黒服「この方は関係ない。鮫丸様のお連れの方だ」

蒲原(なるほどなー。とすると賭郎面子は七人で私たちは三人。そのうちこちらは一人しか戦闘要員がいない。もしものときは……)

鮫丸「ではゲームのルール決めに入ろう」

蒲原「ちょっと待ってくれ」

鮫丸「……どうした」

蒲原「立会い人はどうした?佳織の話じゃ賭郎勝負には、冷静沈着で聡明かつ異常な暴力を持つ『立会人』が取り仕切るらしいぞ」

黒服「それはですね、」

鮫丸「俺がそう指示した。俺が会員権を持ったとき最初の立会人が碌でもないやつでな。それから立会人は呼ばず、こうして下っ端の連中だけを呼んでいる」

蒲原「わがままなんだなー」ワハハ

鮫丸「それじゃあルールを、」

蒲原「そいつは中立の立場である、賭郎さんたちに決めてもらおう」

蒲原「これならどちらも文句は出ない、だろう?」

鮫丸(一瞬ひやりとしたが)

鮫丸(見た目通りのアホだったか)

黒服「では、ルールを、……そうですね、トランプを使ったシンプルな――テキサス・ホールダムなんてどうでしょう」

蒲原「おお、それならルールがわかるぞー。ポーカーの一種だな」

黒服「はい、そのとおりです。鮫丸様もよろしいでしょうか」

鮫丸「ああ」

黒服「基本的なルールは http://www.pokerdou.com/texasholdem-first/rule/ でございます」

黒服「今回は勝ち負けの二択となるので金銭のやりとりは発生いたしません。故に特別ルールを設けさせてもらいます」

黒服「ここに80枚のチップがあります。二分してそれらを持ち金に見たてて奪い合うというのはどうでしょう。強制ベットは1-2枚固定」

黒服「そして、最初に5枚のカードを場札として裏面でならばさせてもらいます」

蒲原「時間制限はどうする?このまま朝になっても勝負がつかないなんてこともあるだろー?一応私たちは未成年だからな」

黒服「それでは、制限時間を一時間とし、終了時に多くチップを持っていた方が勝利、というのは?」チラリ

鮫丸「」コクリ

蒲原(今は夜十時……都内……一時間……)

蒲原「いいぞー」ワハハ

黒服「それでは始めましょう」

二十分後

蒲原「あーっ、ぜんっぜん勝てなくてあったまくるなー」ワハハ

鮫丸「嬢ちゃん、残りチップ数は二十枚だぜ。次は逆転狙って勝負にこいよ」ニヤニヤ

妹尾(お、おかしい!)

妹尾(半耳のおじさん、智美ちゃんにいい手がきたときだけ、全く勝負してこない)

妹尾(それだけじゃない、こちらが微妙な手でコールすれば間違いなくレイズしてくる!)

妹尾(何かイカサマをされている!)

妹尾「睦月ちゃん」ヒソヒソ

睦月「うむ?」

妹尾「絶対おかしいよこの勝負!何かカードにしかけがされてるはず」ヒソヒソ

睦月「おそらく。だけど、蒲原部長は看破してるよ」

妹尾「じゃあなんで指摘しないの?『当人同士にばれないイカサマ』だけがありだよね。だったら……」ヒソヒソ

睦月「何か狙いがあるんだよ。それに私たちは土俵に上ってないから見守るしかない」

妹尾「そ、そんな」

睦月(妹尾さんは勘違いをしている)

睦月(確かに、蒲原先輩はそれほど麻雀の力に長けていない。しかしそれはあらゆる危険を排除した籠の中の勝負だからだ)

睦月(金は血。命に近いそれを賭ける事に躊躇しない者がいる。ただのジャンキーか化け物か)

睦月(私は蒲原先輩を後者だと確信している)

睦月(彼女の異常性に気がつかないとは……)

妹尾「ま、また負けた」ヒャー

睦月(しょうがないか。それに)

睦月(本当の彼女を知るのは私だけでいい)ゾクゾク






蒲原(残り十枚……)

蒲原「鮫丸さん、提案がある」

鮫丸「なんだ?いまさら勝負やめてくださいなんてのは」

蒲原「ルール変更をお願いする」

鮫丸「ほう」

蒲原「お互いのチップを五分の一にまで減らしてもらいたい」

鮫丸&妹尾「!!」

鮫丸「馬鹿いってんじゃねぇ!そんなルール、お前が有利なだけだろ!」

蒲原「そうか?こちらは残り二枚になる。もし次即オリだとしても強制ベットでマイナス一枚、その次は私がBBになるから強制ベットさえ払えない、要は負けだ」

鮫丸(確かに次でこいつがフォールすれば勝ちは確定。だがしかし、普通はどんな手でも勝負する。俺が負ければ最低でも強制ベットの二枚がとられ、結果的にチップの差は12対4)

鮫丸(その後の2ゲーム、どちらも降ろせば俺の勝利)

鮫丸(勝つことを考えれば確かに有利……)

鮫丸(馬鹿か!俺には第二の勝利条件がある!時間……あと二十分てところか……それまでこいつらをここに繋ぎとめておけばいいんだ)

鮫丸「その条件、飲めないな」

蒲原「ま、そうだろうなー。流石にタダとは言わない」

蒲原「五百万を上乗せする」

鮫丸「!! どこにそんな金がある」

蒲原「仲間に持ってきてもらう」

鮫丸「絶対に持ってくるという確証は?」

蒲原「確証?確証ならいるじゃないかここに」ビシ

蒲原「賭郎。そういう組織なんだろう?取立ては絶対。だったらこいつらに任せればいい」

鮫丸「……あ、ああ。なるほど、そうだな」

鮫丸(気づかれた?いや、そうではないな。元々こいつのタネは三百万。プラス五百万がありえないということはない。それに最悪、こいつらの体で支払ってもらえばいい)

鮫丸(金髪の……妹尾、と言ったか?あいつは上玉だ、高く売れる)ククク

鮫丸(憂慮すべきは後ろの投牌女)

鮫丸(……こっちは8人だ。なんとなるだろ)

鮫丸「乗った。チップは五分の一。それ以外はないな」

蒲原「ああ、じゃあ電話で呼び出すか」

蒲原「もしもし、あ、モモ?悪いなーこんな遅い時簡に。え?ちょっと頼みたいことがあってさー………

蒲原「よし」ピッ

蒲原「そんじゃあ始めるかー」ワハハ

蒲原智美 残りチップ2 二千五百万

      VS

二階堂鮫丸 残りチップ14 賭郎会員権

ルール改定後第1ゲーム
鮫丸(俺の手札)ペラ

鮫丸(2のペア!!)

鮫丸(そして、奴のは)グググ

鮫丸(スペードの1とハートの2!)

鮫丸(ククク、こんな簡単なイカサマ、どうにも気づかれない)

鮫丸(この部屋に置かれたトランプは全てジュースカード!)

鮫丸(裏の模様に巧妙に細工が施され、目の焦点をずらすことで透けるようにナンバーとマークがわかる)

鮫丸(運よりも読みを重視するテキサス・ホールダムにおいて、相手の手札が透けて見えればサルでも勝てる!)

鮫丸(……、そして場札は)

鮫丸(ス3、ス8、ク6、ダ1、ハ1)

鮫丸(1のトリプル……)

鮫丸(チッ、例えフロップで最初の三枚が見えたとしてもやつは絶対におりないだろう)

蒲原「お、結構いい手札だぞー」ワハハ

鮫丸(猿芝居が……)

蒲原「強制ベットの一枚」スッ

鮫丸「二枚」スッ

蒲原「じゃー私は……どうしよっかなー、おりよっかなー」

鮫丸「……」

蒲原「あー、でも降りたら負けちゃうのかー」ワハハ

鮫丸「……」プルプル

蒲原「コール。オールイン」

鮫丸「……フォール」

蒲原「フォール?フォールだって?ここで勝負しないのかー?してもしなくてもそっちは二枚失うだけだぞー?」

鮫丸「……」チッ

蒲原「場札はなんだったんだろうなー」スッ

鮫丸「おい!」バシ

蒲原「イタタタタ、冗談だよ。冗談」

鮫丸(今のが冗談だと?手にかけてめくろうとしていたじゃねーか。それにしてもこいつルールわかってんのか)

鮫丸(チクショウ、俺もどうかしてた。今の行動はどう考えても『勝負』だ。気持ちが焦りすぎている。こんなガキに!)

蒲原「回収ー回収ー」

第二ゲーム
鮫丸(こちらはス3とダ12)

鮫丸(やつはク7とク9.……場はク5、ク6、ス5、ダ11、そして最後が)

鮫丸(ハ12!)

鮫丸(やつは間違いなくフロップを見て勝負を仕掛けてくる!)

鮫丸(ククク、フロップへ持ってゆけば俺の勝ち!間違いなくやつはコールする!)

鮫丸「ベット」スッ

蒲原「ほい」スッ

蒲原「それじゃあどうするー?降りるかー?」

鮫丸(このガキ……)

鮫丸「コール」

蒲原「ふぅーむ、なるほなるほど、なるほどー」

蒲原「チェック」キリッ

黒服「カード、オープンいたします」

ク5、ク6、ス5

妹尾「!!」

妹尾(智美ちゃん、すごい!ここに来てなんという強運!ストレートとフラッシュ、それにストレートフラッシュも見える!こ、これは絶対勝負だよ!)

鮫丸(、と後ろの嬢ちゃんは思っているだろう。表情がわかりやすすぎる)

鮫丸(それに比べてこいつは全然かわらねー。まさしくポーカーフェイスってやつだ。もう少し喜んでもいいと思うが……)

鮫丸「レイズだ」

蒲原「勝負しにくるかー」アチャー

鮫丸(芝居は下手くそだがな)

蒲原「よし、コール、オールイン。勝負するぞー」ワハハ

妹尾「ねぇ睦月ちゃん」

妹尾「フロップまでいって智美ちゃんが勝ったのって……」

睦月「一度もないね」

妹尾「それってまずいんじゃあ……」

睦月「うむ」ニギ

睦月(牌、抜いとくか。いつでもいけるように)ゴッゴッゴッ

妹尾(ひぃぃー。睦月ちゃんの周りの空気がゆがんでる!)

黒服「それでは残りの場札、同時にオープンします」

蒲原「賭郎さん、その前にちょっといいかー?」

黒服「はい、なんでしょう」

蒲原「鮫丸さん、賭け金を吊り上げよう。こちらは一千万追加の三千五百万。そちらにもプラス一千万を追加で賭けていただきたい」

鮫丸「嬢ちゃんよぉ……。いい加減にしねぇか」ピクピク

鮫丸(だめだ笑うな)

鮫丸「さっきからてめぇの好き勝手言って、勝負がトンとすすまねぇ。いい加減にしねぇと」

蒲原「しないと?」

鮫丸「本当に沈めるぞ」

鮫丸(金額の吊り上げだと!?)

鮫丸(願ってもねー!!)

蒲原「ワッハッハー」

蒲原「これが最後のお願いだ。それなりの覚悟だってあるぞー」

鮫丸「ほう、見せてみろ。小指でも落とすか?」

蒲原「指?指か。いいなそれ。それでいこう」

蒲原「むっきー。ナイフ持ってたか?貸してくれ」

妹尾「は?え!?」

睦月「こちらです」

妹尾「智美ちゃん!ちょっとまっ 

   ザクリ   ボタタタタタタ

蒲原「流石に……いてーなー」ワハハ…

妹尾「――っ、きゃああああああ!!」

鮫丸(馬鹿か!?)

鮫丸(いや、馬鹿なんてもんじゃねぇ!!確実に狂ってる!!)

蒲原「……むっきー、指、この瓶にでも入れといて。あと……」チラリ

黒服「」ビクビク

蒲原「包帯もまいてくれー」

睦月「わかりました」

蒲原「どうだ?これで私の覚悟がわかったか?」

鮫丸「……わかった。こちらも一千万だそう」

鮫丸(キチガイが!何もしなくても吊り上げはやった!小指を落とせと言って普通落とすか!?)

五分後

睦月「終わりました」マキマキ

蒲原「ありがとう。ちょっときついから緩めてくれ」

睦月「はい」

蒲原「下がって。佳織のフォローを」

妹尾「うっううぅ」ポロポロ

睦月「妹尾さ  パシン

妹尾「おかしいよ!なんでそんな冷静でいられるの!?」

妹尾「ナイフも、ぐすっ、平然と渡して……!睦月ちゃんは、死ねって言われたら死ぬの!?」

睦月「死ぬよ」

睦月「それが蒲原先輩の言葉であれば」

妹尾「そんな」

睦月「彼女が死ねと言えば死ぬし、殺せと言えば殺す。もし彼女に障害が現れれば全力でつぶす」

妹尾「じゃあもうこんなのやめよーよ……」

睦月「蒲原先輩はこの状況を楽しんでいる。そして負けることもないだろう。妹尾さんは付き合いが長いのだろう?なぜ彼女を信じられない」

妹尾「だって、指、切り落としたんだよ」

睦月「再縫合自体は難しくはない。わざわざ除菌した小瓶を持っていたし、この事態を予想していたのかもしれないでしょ?」

睦月(それに指に刃を当てた時、間違いなく蒲原先輩は生の実感を受けていた)

睦月(瞳孔が伸縮し、紅色の虹彩が輝いていた)

睦月(アドレナリンの分泌による輪状筋肉の伸縮)

睦月(このくだらない余興から、少しでも自分を追い詰めたかったのだろう)

睦月(まったく、私に一言言えば血なんて沢山見れたのに)

睦月「妹尾さん、蒲原先輩を信じよう」

睦月「うん……睦月ちゃん」ダキシメ

睦月(可愛い///)

蒲原「とまぁ、後ろも落ち着いたみたいだし、早速勝負の続きをするかー」

黒服「はい、それではオープンいたします」メクリメクリ

鮫丸(これで終わる)

 ダ11 ハ12

妹尾「そ、そんな」ガクガク

鮫丸「残念だったな」

蒲原「残念?なぜだ?まだ手札は見せてないぞー」

鮫丸「……、おう、だったらてめえの手札をみ」ゾクッ

鮫丸(今、あいつが持っているのは)

鮫丸(ク12とス12!?)

鮫丸(あいつ、すり替えやがった!!)

蒲原「そいじゃ、オープンだ」

黒服「……、トリプルとペア……。蒲原様の勝利です」

妹尾「ふぇ?」

蒲原「ワハハー、これでチップは同数だな」

妹尾「あれ?だってs」ガシ モゴモゴ

睦月「しーっ」

鮫丸(すり替えをしたタイミングはいくつかあった。ナイフを渡す瞬間、切り落とす瞬間、包帯を巻いている間……。)

鮫丸(カードは?まさか、後ろのトランプタワーから?)

鮫丸(視線誘導のためだけに小指を切り落としたのか……?)

鮫丸(理解できない)

鮫丸(……)

鮫丸(これでフェア。振り出しだ。しかし)

鮫丸(間違いなくこちらの手の内はばれている。なぜそれを賭郎に伝えないんだ)

鮫丸(こいつらが偽者だってことに気付いている……のか)

蒲原「なー鮫丸さん」

蒲原「次はお互いオールインだ。終わりにしよう」

鮫丸「てめえ、自分の立場が」

蒲原「わかってるから言ってるんだ。それに私は小指を落とした。ここで逃げたらヤクザもんとして部下に示しがつかないんじゃないか?」

蒲原「なぁあんた、鮫丸さんの仲間だろー?」クルッ

黒服「ぐっ」

蒲原「私も賭郎自体知ったのは今日だし、いまいち確信が持てなかったんだ」

蒲原「立会人の不在ってのはそういうもんかと納得したけど、」

蒲原「その他の行動がちょっとお粗末すぎたなー」ワハハ

鮫丸「……ククク、まぁ最初から突き通せるとはおもっちゃいなかった。で、どうする?勝負は無効。それともやりあうか?こちらは8人。あまり利口とは言えないがな」

蒲原「確かにこちらがむっきーだけでは佳織が怪我をしてしまうかもしれない」

蒲原「そいつはよくない。だからさっき電話で呼び出した」

???「やっと出番すか」

黒服A「な!?」

黒服B「誰もいないところから声が」

???「失礼っすね」ゴリ

黒服B「」

鮫丸「どうした!?」

蒲原「モモ、でてきていいぞー」

桃子「素人殴ってもつまんないっす」

黒服s「幽霊!?」

桃子「む」

蒲原「どうする?4対7になったぞー」

鮫丸(ここでひけねぇ!!面子ってもんもある!こんなガキどもに全てを奪われるわけにはいかねー)

鮫丸「やれっ!!ガキだと思って舐めるな!殺す気でいけっ!」

蒲原「ワハハ、戦争だー」

・・・・・・・・・・・
妹尾「」ヒャー

桃子「準備運動にもならないっすね。およそ三十秒ってとこすか」

蒲原「まぁ所詮はチンピラだしなー」

桃子「何いってんすか。元部長さん、何もしてないじゃないっすか」

蒲原「私は非戦闘員だぞー?それにちゃんと佳織のお守りもしてたしな」

蒲原「それにしてもムッキー、今日の投牌はキレがよかったぞー」

睦月「う、うむ。私なりにs 孫六「ん?あれ俺どうして」

睦月「寝てろォ!!」ゴキ

孫六「」

蒲原「さて、鮫丸さん」

鮫丸「……」

蒲原「勝負の続きをしよう」

蒲原「会員権が嘘だとわかった今、新たな金銭もしくは物品を賭けて貰いたい。そうだな……ここの権利書なんてどうだろう。二千万には届かないかもだが、まぁ悪くはない」

鮫丸「……わかった。それで手を打つ」

蒲原「ゲーム再開だー」

桃子「それではせっかくなので」

桃子「このゲーム、倶楽部「賭郎」玖拾玖號立会人、東横桃子が取り仕切らせてもらうっす」

桃子「といっても成り立ての新人っすけど」

鮫丸「!?」

蒲原「ワハハー、いや私たちもさっき知った話でなー、なぜか佳織だけがその事実を知っていたのだ」

桃子「かおりん先輩には関係ない世界だと思って、ついうっかり口が滑っちゃったっす」

蒲原「まともに取り仕切れるのがいると大助かりだぞ」

桃子「お二人とも会員じゃないから、こんな勝負適当でもいいんすけどね」

鮫丸「ルールは、ルールはどうする。変えなくていいのか?」

蒲原「さっきも言ったとおりオールインでいこう。それ以外はないぞ」

鮫丸「それじゃあ全くの運否天賦になる」

蒲原「それでいい。ギャンブルとはもともと不条理。先の見えない勝負こそが私が求める賭け事の本質。それで死ぬなら本望だ」ワハハ

津山(///)ゾクゾク

鮫丸(俺に、選択権はない、か)

桃子「それでは開始といきましょう、っす」

第三ゲーム
鮫丸 ス3 ク10

蒲原 ハ1 ダ1

場札 ス1 ク1 ハ12 ハ6 ダ13

鮫丸(何が賭け事の本質だクソ!)

鮫丸(明らかな積み込みじゃねぇか、バカにしやがって!)

蒲原「さて、宣言どおりオールインだ。お互いオープンしようじゃないか」ワハハ

鮫丸「いや、ちょっと待ってくれ……!」

鮫丸(あと少し、あと少し時間を稼げば)

蒲原「それはないだろー?あんまり遅いとゆみちんg「……」ガチャリ

津山&桃子「っ!」

???「鍵が開いてる?ここは空き家だったはずじゃないのか……?」

鮫丸(きた!)

鮫丸(保険のために呼んだ集英組の連中!)

鮫丸(……)

鮫丸(てあれ?あれあれあれあれ?)

鮫丸(今なんて言った?『ここは空き家だったはず』?)

???「なんだ?ガキ4人と雑魚が一匹……。カールのやつ適当な情報を」

鮫丸「……あんた集英組……?」

???「……?ああ、下で寝てた奴らか。悪いが当分起きないな」

鮫丸「」

???「おいゴミ虫、邪魔だ」ガスッ

鮫丸「」ドサッ

桃子(狼のような目つき、目の周りの火傷、屈強な肉体)

桃子(以前どこかで……)

桃子(……)

桃子「……伽羅?」

伽羅「……どこかであったか?まぁいい」

伽羅「ガキは寝る時間だ。とっとと帰れ」

桃子「こまるっすねー。今は勝負中っす。部外者こそ『とっとと帰れ』っす」

伽羅「ガキに舐められたのは久しぶりだ」

伽羅「力づくでこい。少しは遊んでやる」

桃子「言われなくても!」 ズズ…

伽羅(消え――)

桃子「そこじゃないっすよ」

 グギン! ズシャアア

蒲原「おお、見事な延髄蹴り……」

蒲原「て、死んでないよな、おーい、あ――」ブン

睦月「先輩っ!!」

睦月「つっ」バキ

睦月(腕、折れたなこれ)

桃子(効いてない!?常人であれば三日は起きれなくなるというのに)

伽羅「いい反応だった。今のを止められとはな」

伽羅「しかし、いや、やはりというか、お前の一撃は大したことがなかった」

伽羅「所詮は女子供の徒手」

伽羅「もう一度言う。ここから消えろ。俺は別に弱いものいじめをしにきたわけじゃない」

桃子「私も弱いものいじめは嫌いっす」

桃子「それに立会人として、勝負の手前、退くわけにはいかないんすよ」ズズ…

伽羅(また消えた)

  グシャ

伽羅(横のトランプタワーが崩れた。いや、こちらはブラフ)

桃子(それもブラフ!本当に横からこめかみに一撃!決まったっす!)

伽羅「ということはこっちだ」ヒュン

桃子「は!?」

桃子(なんだこれは?靴!?よけきれn)

桃子「がはっ」

伽羅「鳩尾へゴォオル」かはっ

桃子(息が、できない)

伽羅「立会人って言ったな」

伽羅「思い出したぞ。お前、能輪の孫娘だな」

桃子「!!」

伽羅「そうかそうか、能輪のじじいが一度連れてきたことあったな。あんときのチビか」

伽羅「しかし、よっぽど人員不足のようだな賭郎も」

伽羅「こんなガキが立会人、か」

伽羅「むしろ問題はあのじじいだな。孫の可愛さに號をくれてやるとは」

伽羅「ついにボケがまわってきたか」ククク

桃子「はぁ、じいちゃんの、っ、悪口を、言うなあ!」

蒲原「モモ!しゃべるな!もう、」

桃子「ふぅ……、元部長さん、かおりん先輩とむっきー先輩連れて逃げてください。私はこいつに勝つまで帰りません」

睦月「私も残ります。少々腹が立つので」ゴッゴッゴッ

蒲原「お、落ち着け!」

伽羅「おう、二人まとめてかかってこい。ハンデとしては少なすぎるがな」

桃子「」ギリ

桃子は飛んだ。テーブルを踏み台に全力の跳躍。木材の破裂音と共に桃子の存在は『消失』し、伽羅の視覚、聴覚の二感を欺く。
両手の十指は天井のクロスをつき破り、桃子の華奢な体は宙へと留まる。
伽羅は笑った。自らの居場所を教えるその行為には何かしらの意味があるのだろう、と。二重三重のブラフ。
力なきものがどうにかして強者と渡り合うための猪口才な駆け引き。だったら『その辺』を殴り散らせばよい。これはギャンブルではなく殺し合いなのだ。

伽羅「そこか?」

地面から天井の傷へと縦一線に蹴り上げる。先ほどまでとは違い本気で筋肉を賑わす。触れれば致命傷、当たれば即死の一蹴だった。

伽羅(おう?)

風を切る音だけだった。肉の感触はない。
片足立ちという一瞬の隙に心の奥底で僅かな恐怖がざわついた。
睦月の進撃は音もなく忍び寄る。桃子が『消える』直前の目の合図に睦月はその意図を読み取った。伽羅を中心に桃子と対象に位置した睦月は挟撃の瞬間を待っていた。

伽羅「がっ!?」

唯一伽羅の体重を支えていた片足へ、睦月の渾身の足払いが捕らえた。

桃子(むっきー先輩、ナイスっす!)

体が浮いたらされるがまま、強いも弱いも関係ない。桃子は今のいままでそうだと思っていた。
だから、油断した。姿を晒した。
伽羅の見上げるそこには指の力だけで天井に這い蹲るように体を押しとどめている桃子がいた。

桃子(いまっす)

津山(うむ)

刹那に互いの視線が交差する。睦月は地を蹴り、桃子は天を圧す。拳は胸椎へ。踵は鼻筋へ。
桃子は人生最長の一瞬を過ごしていた。思考がめぐりめぐって、一種の道徳心へ触れる。
これが、最初の殺人。立会人にとって人を殺めることなど大したことではない。取立て、排除、望むならば號奪戦。
倶楽部賭郎は流血を益とする闇組織なのだ。だからこれは最初の一歩だった。
それはいわゆる躊躇。
正中へと踵が届こうとする寸前、伽羅の驚愕の表情は柔和な笑みと変わった。

桃子「」ゾク

伽羅は人外の早さで首を振りきり、桃子の一撃を耐えることなく受け流した。
そのまま回転を殺さず既に背筋へ拳を押し付けていた睦月の突きでさえも、強引に滑らせ空を切らせた。
形勢は逆転した。空いた両手は二人の顎を弾く。対に吹き飛び、桃子はコンクリートの壁へと頭を打ちつける。遠くで震える妹尾の耳にまで嫌な音が届いた。
睦月の視界はゆがみ、腹から吐しゃ物がこみ上げ、我慢できずに折れた奥歯を交え吐き出した

睦月(足が、立たない)

蒲原「もうそのへんでいいだろ」カチャ

伽羅「拳銃?本物か」

蒲原「ああ、黒服から頂戴した」

伽羅「いい脅しだ。俺以外にはな」

蒲原「ここにマンションの識別情報の入った権利書がある。持っていけ」

伽羅「何を言っている?これは既に殺し合いだ。どちらかが命をおとすまd」パァン

蒲原「次は当てるぞー?ふざけたこと言ってないで、これ持って消えろ」ワハハ

伽羅「」ブチン

伽羅「お前も死にたいらしいな」

桃子「……」ブツブツ

伽羅「だったらお望みどおりだ。動くな。楽に逝かしてやる」

桃子「……」ブツブツ

桃子「……せんぱい」

伽羅「あ?」

桃子「んぱいせんぱいかじきせんぱいおいていかないでくださいわたしのこして」

伽羅(気配が変わった?)

桃子「なんでいっちゃうんすかぶかつしていっしょわたしぜったいか」

桃子「ちますめのまえのそうじぶしつのそうじして、あ、」

桃子「ごみがいる」

伽羅(お、お、お)

伽羅(ふつふつと湧き上がるこの感覚!)

伽羅(あの時のマルコに似ている)

伽羅(覚醒……。気絶がトリガー?)

伽羅「いいぞ!遊び足りなければとことん付き合ってやる!!」

桃子「ごみ」

…………
……

二時間後 ワーゲンバス車内

蒲原「いやーよかったよ小指つながって!」フリフリ

睦月「感覚あるんですか?流石は全員分の治療とはいえ五百万要求するだけあって、いい仕事しますね。あの医者」

蒲原「これから怪我したらあの医者に通おう!」

睦月「麻酔無しで縫合されてよく言えますね、そんなこと……」

睦月「それにしても」テラ

睦月「全然起きない二人が心配です」

蒲原「佳織は今日のことはちょっと刺激が強すぎたな。ある意味佳織が原因だけど」

蒲原「桃子もそのうち起きるだろ。伽羅のおっさんも大した外傷はないって言ってたからなー」

睦月「……」

睦月「私、あそこから生きて出ることはできないと思いました」

睦月「なんで見逃してくれたんでしょうか」

蒲原「伽羅のおっさんの言うとおり、飽きたんだろう」

蒲原「あのとき、モモは間違いなく狂った強さだった」

蒲原「だから『ここで殺すのはもったいない』という意味もあったんじゃないかー?」

蒲原「そのへんは拳を通して語り合ったモモに聞かないとわかんないだろう」ワハハ

蒲原「それにしても人間て催眠状態になるとすごいんだな」

蒲原「もちろん、むっきーもすっごいかっこよかったぞ」ナデナデ

睦月「///」

睦月「そ、そういえばジュースカード!あれ、どうやって見破ったんですか?」

蒲原「あれは、トランプタワー眺めてるときに見上げていく途中で違和感あったんだ。で視線ずらしていくとあの正体がわかった」

蒲原「私が一番背が低いからなー。それでむっきーたちは気がつかなかったんだよ」

睦月「はー……。じゃあ最後の勝負で先輩の手札と場札で4カードが揃っていたのは?本当に運で」

蒲原「ん?ありゃあモモとむっきーが偽黒服相手に暴れまわってるとき、こっそり積んでたんだ。モモは気がついてたみたいだけどね」

桃子「そっすよ」ヒョコ

蒲原・睦月「!?」

桃子「私とむっきー先輩が必死で戦ってる最中、」

桃子「……」

桃子「私負けたんすよね、そういえば」

桃子「負けたのに生きてるんなんて、いい恥晒しっす」

桃子「立会人失格だなー」

桃子「ほんと、惨めで、情けないっす」

桃子「……」ジワ

桃子「かおりん先輩、胸、借りるっす」グシ

蒲原「……」

蒲原「モモ、こんなの余計なお世話かもしれないし、聞きたくないことかもしれないけど」

蒲原「伽羅のおっさんはモモのこと認めてたぞ」

蒲原「それにモモが死んじゃったら、ゆみちんがすごい悲しむ」

蒲原「それはモモにとっても嫌なことだろー?」

蒲原「私は今この状況がうれしい。みんな無事に戻ってこれたし、お金も手に入ってウハウハ」

桃子「……」グスッ

蒲原「東横桃子」

桃子「……なんすか」

蒲原「お前はゆみちんの剣となれ。その力は本当に大切な人を守るために、行使すればいい。それならお前は後悔しない」

桃子「……」

蒲原「それに、剣は使い手に嘘をつけないからな」ドヤッ

桃子「……ありがとうっす」ボソ

睦月(先輩……。う、鼻血が……)

蒲原(なんだこれ、ちょっと恥ずかしいぞー)ワハハ

蒲原(それにしてもみんな、ぼっろぼろだなー。ゆみちんになんて言い訳しよう)

蒲原「車にひかれた、街中で喧嘩した、……これはこれでまずいか」

睦月「どうしたんですか?」

蒲原「ギャンブル場言ってボコボコにされましたって言ったらゆみちん怒るだろー?」

蒲原「だから言い訳を……お、いいのを思いついたぞ」

桃子「どんなやつすか?」

蒲原「それはだな……

 …………

桃子「あはは、それは面白いっす」

睦月「い、いやそれは逆に怒らせるんじゃ」

蒲原「まぁまぁ、その場のノリで誤魔化せるから大丈夫だろー」

桃子「それにしても、元部長さんて意外と」

蒲原「んー?」

桃子「嘘つきっすね」


槓!

もうちょっとしたら後半書きます

~一週間後~
蒲原「いやー田舎の空気はうまい!長野はいいところだなー」

加治木「確かに、長い間東京にいたせいかここの空気が新鮮に感じる」

蒲原「つっこみなしかー。ワハハ」

妹尾「智美ちゃんは元々長野住みでしょ」

蒲原「つっこみおせえっ!」

桃子「なんだか機嫌いいっすね」

蒲原「やっぱホームが一番てわけだよ」

睦月「うむ」

蒲原「私はここでしか生きていけないんだなって感じるよ」

蒲原「都会でせわしなく生きる事も悪くない。だけど人間は元々そうは作られていないんだ」

蒲原「自然に生きる。これがヒトのあるべき姿だよ」

加治木「あ、モモ!このあいだ潰れた駄菓子屋がコンビニになってるぞ」

桃子「ほんとっす。これで買出し楽になりましたね」

蒲原「おいおい、シカトはきついぞー」ワハハ

睦月(あーもう、蒲原先輩かわいいなぁ)

◇◆◇◆◇◆

加治木「よし、津山とモモ、荷物降ろしたな」

桃子「っす」

睦月「うむ」

蒲原「ワハハ、じゃあ私は佳織を送っていくからここでばいばいだ」

妹尾「みなさん、また部活で」

桃子「ばいばいっす」

睦月「うむ」

加治木「蒲原、東京に連れて行ってくれてありがとう」

蒲原「なんだよ改まって」

加治木「いや、お前がいなかったら、清澄の応援もいけず、高校最後の夏の思い出も作れなかった」

加治木「本当に感謝している」

加治木「だからありがとう。蒲原」

蒲原「ん?」

蒲原「ああ、これフラグかー?」

桃子「は?」

睦月「うむァ!?」

加治木「別に大した意図はないのだが」

桃子「元部長さん、発言には気をつけてください」

蒲原「ハイライト入ってない目で言われると笑えないぞー」

加治木「じゃあな蒲原、運転気をつけて」

蒲原「ゆみちんも。帰るまでが旅行だからな」

桃子「……」プクー

蒲原「お姫様が怖いから、行くぞ佳織!」ギュルルルル

妹尾「ちょ、アクセルめいっぱい踏まn」

蒲原「今回の旅行、どうだった?」

妹尾「うーん、まぁ、楽しかったよ。あの日を除いて」

蒲原「ああ、レイプされそうになった佳織を助けようと、モモとむっきーが男8人を血祭りに上げた日だな」

妹尾「そんな事なかったでしょ!しかもレイプって……」

蒲原「佳織が言いたいのは賭博マンションでの一件か」

蒲原「でもあれ、佳織が煽ったせいってのもあるぞ」

妹尾「うん、それは否定できないよ。ごめん」

蒲原「別に謝ることじゃないぞ。少なくとも私は楽しかったしな」

蒲原「あと、お金。三千万だ。とりあえず最新パソコン買ってプロジェクターもそれと新入生のために雀卓もあと二台買おう」

妹尾「智美ちゃんは全然いらないの?」

蒲原「んー、別に。欲しいものないし」

蒲原「あ、いや、一つあったぞ」

妹尾「?」

蒲原「賭郎会員権」

妹尾「諦めてなかったんだ」

蒲原「これは何億って積まないと手に入らないからな」

蒲原「正直諦めようかとも思ったけど」

妹尾「けど?」

蒲原「私にも運があるらしい。ちょっとしたチャンスがきた」

蒲原「と、もう、佳織ついたぞ」

妹尾(またあんな危ない事するんだ)

蒲原「どうした?」キキッ

妹尾「……、だめだったら諦められない?」

蒲原「そのときは手を引くさ。所詮それが私の限界なわけだからな」

妹尾「そう、」ガチャリ

妹尾「そう、」ガチャリ

蒲原「東京楽しかったな佳織!」

妹尾「……うん!」

蒲原「また機会があったら行こう」

妹尾「うん、じゃあね」

蒲原「またなー」ワハハ

ブロロロ

蒲原(次だめだったら、最悪私は死ぬだろう)

蒲原(嘘ついちゃってごめんな、佳織)

◇◆◇◆◇◆

ハギヨシ「衣様、鶴賀学園の蒲原様からお電話です」

衣「ん、智美から?いったいなんの用だろう」

衣「もしもし……、うむ!衣である!」

衣「……、その日は私もハギヨシも屋敷におるが?」

衣「、それ、知っているぞ!……、ああ、確かに父からの遺言で譲り受けた」

衣「……。ほう、いや、私は特には……」

衣「……、ふむ、それが本当なら一考の余地がある」

衣「……いいだろう。その勝負、受けて立とう!」

衣「ではまたその日に」

ハギヨシ「衣様、いったいどういった用件でしょうか」

衣「智美と遊ぶ事になった」

衣「いやそれよりもハギヨシ、」

衣「貴様隠し事があるな」

ハギヨシ「……」

◇◆◇◆◇◆

蒲原「さっすが龍門渕!でかすぎるにもほどがあるだろ!」ワハハ

蒲原「インターインター、ああこれか」ピンポーン

ハギヨシ『お待ちしておりました。蒲原様、すぐに向かいます』

蒲原「お、カメラまでついているのかー」

――一分後――

ハギヨシ「お待たせいたしました」

蒲原「はやいなっ」

ハギヨシ「別館までお車を運転いたします」

蒲原「いやー、それは悪いぞ」

ハギヨシ「いえ、衣様の大切なお友達ですので、お手を煩わすわけにはいきません」

蒲原「そうか、じゃあ頼みます」

蒲原(ワハハ、これで逃げれなくなったな)

ハギヨシ「さてそれでは急ぎましょう。衣様もあなたとの勝負を楽しみにしておられます」

ハギヨシ「おや?本日は東横様と津山様はいらっしゃらないのですね」

蒲原「必要としないからな。それよりも、」

蒲原「少し聞きたいことがあるのだが」

ハギヨシ「はい、なんでしょう?」

蒲原「ハギヨシさんの號はいくつだ?」

ハギヨシ「……」

蒲原「東京で少し調べたんだ。天江家の賭郎会員と」

蒲原「龍門渕の執事について」

ハギヨシ「……」キキッ

ハギヨシ「今ここで、」

ハギヨシ「今ここであなたを屠ることができます」ニコォ

蒲原「そしたら、衣が悲しむぞー」ワハハ

ハギヨシ「向かう途中の交通事故……としておけばよいでしょう」

ハギヨシ「龍門渕の敷地に入ったという事実は私しか知りません」

ハギヨシ「記録の改竄など、あなたが思っている以上に容易いものです」

蒲原「それは、衣のためか?」

ハギヨシ「もちろんそのつもりです」

ハギヨシ「私は立会人であり、衣様の従者です」

ハギヨシ「そしてあなたは主人に牙を剥く獣」

ハギヨシ「駆除にどのような問題が?」

蒲原「ただ遊びに来ただけなのに、それはちーっときついんじゃないかー?」

ハギヨシ「賭郎勝負を遊びというのは軽すぎますね」

蒲原「今、私が泣いて懇願してもダメか?」

ハギヨシ「あなたはそういう性質じゃないでしょう」

蒲原「なんだー、バレバレかー」ワハハ

蒲原「ま、保険はかけてるんだけどな」

蒲原「はじめー」

国広「……」ムクリ

国広「……ハギヨシさん、今言ってたことは本当ですか?」

蒲原「おっと、余計な詮索はしないほうがいい。君はただの人質だ」

ハギヨシ「そうですか」グイ

蒲原(いつの間に首筋に!早すぎて全く見えなかった)

蒲原(息が、)

ハギヨシ「国広様に危害を及ぼすようなものは見受けられません」ググ

ハギヨシ「それを人質などとは言わないのでは?」

国広「やめて!ハギヨシさん!」

国広「ぼくから教えてくれって言ったんだ」

国広「最近、ハギヨシさんの様子がちょっとおかしかったし、」

国広「それが智美から電話が来た日からだったからそれで、」

国広「ほら、電話受けたのがぼくだったでしょ?」

ハギヨシ「……」

蒲原(そ、そろそろやばいっ)

国広「だから、ごめん!本当はハギヨシさんに直接聞くのが一番だったんだ」

国広「でも、そんな勇気なかったから、智美にお願いしたんだ」

ハギヨシ「……そうでしたか」パッ

蒲原「かはっ」

蒲原(マジに殺しにきてたな。笑えないぞ)

蒲原「……というわけだ。面白いものが見れるから、一緒に乗れってな」

ハギヨシ「ほう」

国広「智美!なんでそんな挑発的な言い方するんだ!」

蒲原「さあ?私は元々そういう性分なんじゃないか?」

ハギヨシ「……それで私兵をお連れにならなかったのですか」

蒲原「友人宅で血を流したいやつがどこにいるんだ」

ハギヨシ「左様ですか……フフ」

ハギヨシ「フフフ……ハッハハハー」

国広「ハ、ハギヨシさん?」

ハギヨシ「失礼いたしました。いえ、蒲原様に一本とられてしまいましたのでね。確かに良き余興でした」

ハギヨシ「もちろん私も本気ではありませんでしたよ?」

蒲原(うそつけこのヤロー)

蒲原「ワハハー、はじめもびっくりしたろー」

国広「う、うん。本当にびっくりしたよー」

国広(完全に顔真っ青だったけど……)

国広「あ、衣だ。待ちきれなかったんだね」

衣「こらー!遅いぞー!」トテテ

ハギヨシ「申し訳ありません。私の不手際です」

衣「よし、じゃあ衣もバスに乗せてくれ!」ガチャ

衣「智美もこっち座れ!」

蒲原「ああ、そのほうがよさそうだなー」ワハハ

蒲原(衣ナイス!)

◇◆◇◆◇◆

蒲原「ここが衣の別館……!?」

衣「そうだぞ!衣のお屋敷だ!」

蒲原(なんだここ日本か?)

衣「さて、智美。血沸き肉踊る勝負……。といったな」

衣「いったい今日は何をするのだ?」

蒲原「あ、ちょっとまってくれ衣」

蒲原「ハギヨシさん仲受け持ってくれ」

ハギヨシ「……まかされました」

ハギヨシ「倶楽部賭郎、立会人拾壱號萩原にてこの勝負の進行を勤めさせてもらいます」

ハギヨシ「どうぞよろしく」ニコオ

国広(結局さっきの話本当だったのか)

国広(というかなんだあの不謹慎な笑顔!)

衣「ハギヨシ」

ハギヨシ「はっ」

衣「この勝負、賭け事であるらしいな」

ハギヨシ「その通りです」

衣「衣が持つあらゆる尤物を賭けてはいい」

蒲原「衣は会員権だけでいいぞ」

衣「む、そうか?ならば智美は何を差し出す?」

蒲原「全てだぞー」

衣「全てとは?」

蒲原「とりあえず財物だな。東京のマンションの権利書がある」

蒲原「ここに比べたらその辺の石ころみたいなもんだけどな」ワハハ

蒲原「あとは私の命」

ハギヨシ「ほう」ニヤ

衣「命?智美を好きにしていいのか?」

蒲原「そうなるな」

衣(やったー!勝てば智美もうちのメイド入りだ!)

蒲原(命、つまりは負ければ即処刑もしくは拷問受けての死。会員権に対したら私の命で済めば軽いもんだ)

蒲原(衣のやつ、わかってんのかなー)

ハギヨシ「確かに、蒲原様の賭け物は会員権に値すると思われます」

衣「ああ!じゃあじゃあ早く勝負しよう!」

衣「といってもいったい何をするのだ?」

蒲原「小手先の運がからむ勝負、例えばカードや麻雀ははっきり言って衣に太刀打ちできない」

蒲原「だからもっと衣にさえ支配できないような事象――」

蒲原「天気予報なんてどうだろう」

衣「天気予報?そんなのでいいのか?」

蒲原「ああ、今日の日没、それまでに雨が降るか降らないか、この二択だ」

衣「ふむ。で、どっちを選ぶんだ?」

蒲原「勝負事を提案したのは私だ。衣が先に決めていいぞ」

衣「天気か……」

衣「うむ!私は降らないほうに賭ける!今日はめいっぱい智美と遊びたいしな!」

蒲原「そうか、じゃあ私は降るほうだな」

蒲原(なんだか罪悪感が)

蒲原(時計……丁度十一時か)

蒲原(今日の降水確率は三時から60パーセント)

蒲原(今は快晴でも後々大降りになる……負ける気はしないな)

蒲原(衣を騙してるみたいで悪いけど、会員権のためだしょうがない)

衣「日没まで暇だからお出かけしよう」

蒲原「このへんでか。駅前にデパートができたからそこに遊びに行こうか」

衣「うん!」

国広「ぼくもついていっていい?」

蒲原「もちのろんだぞー」ワハハ

◇◆◇◆◇◆

衣「人がいっぱいだー」オー

蒲原「衣離れるなよ」

国広「なんかぼくたち視線浴びてない?」

蒲原(自分の服装を考えれば一発だろー)ワハハ

衣「あ!あれ!食べたい!アイスクリーム!」

ハギヨシ「は、では私が買って参ります」

衣「チョコチップ!」

蒲原「抹茶で」

国広「イチゴでお願いします」

ハギヨシ(……)

ハギヨシ(やはり視線を感じる)

ハギヨシ(衣様や国広様ではなく間違いなく私に対してだ)

ハギヨシ(冷徹さから染み出る仄かな殺意)

ハギヨシ(半人前で暗殺者きどり、と言ったところでしょうか)

ハギヨシ(少なくともこのフロアではない)

ハギヨシ(となりのビルの屋上……)

ハギヨシ「チョコチップと抹茶とストロベリーを一つずつお願いします」

 「あいよ。今日はデートかい?洒落込んじまって」

ハギヨシ「あはは、そんなところです」

 「じゃあ、おまけしてあげるよ。特盛だよ」

ハギヨシ「ありがとう」



――ビル屋上――

睦月「……!」

睦月「……気付かれたか」

『蒲原「いいかむっきー、私がどうなろうとも手を出さなくていい」』

『蒲原「彼にこちらも私兵があるんだぞという意思表示だけで十分だ」』

睦月「拾壱號……おそらく伽羅に満たなくとも私や桃子と同等以上」

『蒲原「私が死亡した際は即時撤退だ。無駄な血は流すな」』

睦月「あの時ははいと言ったけど、先輩が死んだこの世に未練はないだろうな」

睦月「弔い戦で死ぬなら本望です」

サル避け支援一本場
ところで、書いてる人がsageてるから上げない方がいいの華菜

猿食らってました
>>109
そんなことないです



◇◆◇◆◇◆

――龍門渕邸――

衣「今日は楽しかったぞ智美」

蒲原「といってもまだ4時じゃないか」

蒲原(そして未だ快晴。なんてこった)

衣「我が家にはたくさんのテーブルゲームがある。まだ時間があるなら遊ぼう!」

蒲原(今日の日没は6時半……。夏の天気は変わりやすいが嫌な予感がする)

衣「……智美?」

蒲原「あ、ああ。トランプでもやろうか」



衣「外でトランプというのもなかなか乙なものだな!よし、あがったぞ!」

国広「じゃあ8切りで。そして12のスペードを捨ててぼくの上がりっ」

蒲原「ま、また私がドンケツ」ズーン

衣「わーい、衣がまた智美からカードをもらえるのか!」

蒲原(おかしいぞ!?手札操作までしてるのに勝率が4割いかない)

蒲原(しかしこれ以上するとはじめにバレそうだしなー)

国広「……」

国広(既にバレバレだよ智美)

国広(そして実はぼくもイカサマを使いまくっている!)ドーン

国広(その結果がこの二位キープだ。おかしい、おかしいぞ衣!)

蒲原「ま、まだまだ!もう一戦だぞー」

蒲原(とりあえず、2を三枚とスペ3を回収できるように、と)シュッシュッ

蒲原「それじゃー配るぞー」ワハハ

国広「……お、いい手札だ」

国広(ジョーカーが2枚きた。智美の奴とにかくクズカードを衣に回したな)

国広(セオリー通り中強弱強強弱の流れで勝てる!)

国広「今回は負けないよ」ニヤリ

衣「かかってこい有象無象共!」

衣「ときに智美、なぜ賭郎会員権などがほしいのだ?」

智美「あれは、なんていうかな、己の欲望解放に必要なものなんだ」ペラ

衣「……そんな大層なものなのか。衣には理解できない」

智美「生前、お父さんはなんて?」

衣「子供の玩具だと」ペラ

国広「……パス」

蒲原「パス……衣のお父さんは立派な人だな」

衣「どういうことだ?それでは自分を卑下してることになるぞ?」

蒲原「そりゃそうだ、なにせ自分の命をかけているんだからな」ペラ


衣「……?負けたらうちのメイドになるんだ。もしかして嫌か?」ペラ

蒲原(やっぱり勘違いしていたか)

蒲原「命を賭ける、要は死だ」

国広「え?」

衣「……は?」

衣「何を言っているのだ智美。そんな冗談わr」

ハギヨシ「衣様、蒲原様が敗北した場合、死が約束されています」

ハギヨシ「それが釣り合いとして妥当です」

衣「……」

衣「そうかそうか、これも芝居のひとつだな」

衣「面白かったぞ。それでは続けよう」

蒲原「本当だ。ハギヨシさんは嘘をつかない」

衣「……けでいい」

衣「負けでいい!」

衣「会員権なんていらない!衣の負けでいい!」

蒲原「ダメだ。これは勝負だ。決め事は全て最初に完了している」

衣「ハギヨシ!」

ハギヨシ「賭郎勝負に負けを宣言することはできません」

ハギヨシ「勝負の結果が全てです」

衣「おまえ!主人の言葉が聞けないのか!?」

ハギヨシ「……」

蒲原「やめてくれ衣。ハギヨシさんを苦しめないでやってくれ」

蒲原「これも、彼の仕事の一つだ」

衣「智美……お前、死にたいのか……?」

蒲原「何言ってんだ。陰りが見えてきたし日没まであと1時間だ」

蒲原「今日の降水確立は60パーセント。負けるほうがおかしいぞー」ワハハ

蒲原「それにな、ここで死ぬ程度ならこの先生き残れるはずがない」

蒲原「早くも遅くも一緒だ」

衣「いやだー!――なんでそんなこと、」

蒲原「これが私の生きる道なんだ」




――およそ200メートル西――

睦月「天江さんが泣いている」

睦月(あと一時間か。早いな。そしてこの天気。だめだな湿り気がない)

睦月(動くか)

睦月「と、その前に」

 「お前ここで何をしている」

 「警備鐘が反応なかったぞ。どうやって入ったんだ?」

睦月「警備の人間か。なかなかいい装備をしている」

 「高校生……?とにかく、ここは立ち入り禁止だ。いますg」ゴ

 「お、おいどうした?なんだこれ雀牌?」

睦月「失神しただけだ。命に別状はない」

 「なんだこいつ、つ、通報しないとっ」

睦月「やめておけ。騒ぎ立てるなら殺すぞ」

 「ひぃっ」

睦月「頼みがある。私と遊んでほしい」

睦月「ただの準備運動だ。殺しはしない」

睦月「ふぅ、武器はいらんな。空手で十分」ガチャ

睦月「用意はいいか?いくぞ」

 「うぁあああああ」





ハギヨシ(……悲鳴?)

ハギヨシ「申し訳ありません、しばし席を、」

蒲原「だめだ。立会人だろ?」

ハギヨシ「……はい、今は立会人萩原でありました」

衣「」グス

国広「智美」

蒲原「ん?」

国広「もし負けたら、死ぬんだよね?それはここでかい?」

蒲原「まぁそうだな。ハギヨシさんなら血を流さずやってくれるだろう」

国広「衣の前で?」


蒲原「それは嫌だな。友達の前で死ぬのは嫌だ」

衣「!」

衣「だったら、なぜ私に賭郎勝負など、命をかけるなどという愚行を!」

蒲原「なんでだろうな。私が衣を好きなせいかもしれない」

衣「……」

蒲原「私と正反対なんだ。純粋さ、力量、性格……」

蒲原「ないものねだりだったんだ。自分に無い物を持つ者に対する憧れ」

蒲原「人生最後のゲームの遊び相手がそんなやつだったらサイコーだろ?」ワハハ

蒲原「すまん衣。これは私のワガママだ」

蒲原(ハハ、まじかー晴れてきやがった)

蒲原(天の江で衣を纏う。そんなやつに勝てるわけがなかったか)ワハハ

…………
……

ハギヨシ「残り五分といったところでしょうか」

蒲原「短い間だったが私は楽しかったぞ、衣!」

衣「……」グッ

衣「……」ググウ

バリンバリン!

国広「屋敷のガラスが!」

衣「智美、衣をなめるな」ググググッ

蒲原「へ?」

国広「雲が……集まってきた」

衣「……」ツー

蒲原「おまえ……血が」

衣「触るな!集中が途切れる!」パシッ


 ガサガサ

 「ふぅー、全くここは樹海ですか」

蒲原「出てくるなって言ったろう……むっきー」

睦月「勝ちの目はつぶしたらまずいでしょう」

蒲原「そうじゃなくて!」

睦月「負けたら私にとってあなたはクズです。だから勝つ。勝たせる」

睦月「賭郎。私と遊べ」

ハギヨシ「まさか、龍門渕の敷地に侵入者がまぎれこみ、その上勝負の妨害とは」

ハギヨシ「いいでしょう。処理します」ズズズッ

国広(なんだあれ、本当にハギヨシさんか?)

国広(っ、ここから逃げ出したい)


睦月「」ヒュ

ハギヨシ(あいさつ代わりの一投。手元が見えないとはこれはなかなか)

ハギヨシ(楽しめそうですね)パシ

睦月(視線をずらさずか)

ハギヨシ「いきますよ」ダッ

睦月(踏み込み、深すぎ)

睦月(膝をあわせ、)

ハギヨシ「はっ」トン

睦月(乗られ――!?)ゴス


国広「今の、」

国広(ハギヨシさんが直進したと思ったら津山さんがふっとんでた)

ハギヨシ「踏み込みの膝合わせ読みです」

ハギヨシ「右ストレート。どうですか?」

睦月「……」スタ パンパン

ハギヨシ「ほう」

睦月「それ読みで肩を当てた」ニコッ

睦月「伽羅ほどじゃない。所詮は二桁台だな」

ハギヨシ「」ピク


ハギヨシ「伽羅と申しましたか?まさかあの方とお遊びに?」

睦月「ああ。あれは鬼神の如き暴力だった」

睦月「それに比べたら肩透かしだ」

睦月「かかって来い二流」

ハギヨシ「……」

ハギヨシ「実は私、挑発に弱いんです」

睦月「うむ。御託はいい」

ハギヨシ「参ります」


睦月(相変わらずの突進)

睦月(と見せかけての右手に隠した私が投げた牌がある)

睦月(それもフェイント?)

ハギヨシ「ふ」

睦月(呼吸とずれたフック)ヒュン

睦月(勢いを殺さず回し蹴り)

睦月「おっと」ガシ

ハギヨシ「……」バッ

ハギヨシ「攻撃――しないのですか?」

睦月「カウンターが好きなので」

ハギヨシ「……なるほど」


ハギヨシ「時間稼ぎにしか見えませんね」

睦月「だとしたら?」

ハギヨシ「あなたにプライドがあるのなら、間合い詰めの一撃勝負はどうでしょう」

ハギヨシ「我々はこれを號奪戦に用います。ご存知ですか?」

睦月「うむ」

ハギヨシ「ならば話が早い。もちろん受けますよね?」

睦月「そうだな、強奪戦か」

睦月「……私が勝ったらその號がほしい」

ハギヨシ「いいでしょう。その心意気大変素敵です」


国広「ハギヨシさん、もうやめよう」

ハギヨシ「やめません」

国広「そんな」

ハギヨシ「今の私は龍門渕執事ではなく賭郎立会人です」

ハギヨシ「邪魔が入れば全力で排除します」

睦月「お話はそれで終わりか?」

ハギヨシ「お待たせいたしました。それでは」

牌が投げられた。コンクリートを弾く音が終劇への合図。
頭上を通り過ぎ、自然落下が始まる。徐々に徐々に地へとめがけ速度は増す。
二人の脈拍は限界を向かえ、その時へと体は力を溜めた。
音がした。
逆袈裟に迫るハギヨシの脚に睦月は反応した。
完全な読み勝ち。腕で撫でるように弾き後の先を得る。
そのまま顎へと渾身の――
違和感。
ハギヨシのあまりに無策な一撃、そして二の手の不在に腕が躊躇した。
ただならぬ予感に思考を飛ばして防衛本能が生き、拳を止めた。視線が原因を探る。
ハギヨシの腰には白く細い腕が回っていた。

トンボが止まりそうなほど静止した腕に雨粒があたった。


衣「聞こえなかったか?」

衣「今雨が降っている」

衣「智美の――勝ちだ」

衣「衣はハギヨシが好きだ智美が好きだ麻雀で戦ったみんなが好きだ」

衣「だから、もうこんなことはやめてくれ」ポロポロ

衣「もう誰も失いたく――」ドサ

ハギヨシ「え?」

ハギヨシ「血……?」

蒲原「……!」

蒲原「病院、いや龍門渕の電話番号は!?」

国広「ええっとちょっとまって、今思い出すから!」

ハギヨシ「衣様」


……
…………




衣「うぉおお!ここから出せー!」

「だ、だめですよ。一応は二日入院て透華様よりご指示があるんです」

衣「ただの貧血だぞ!?」

「そう言われましても」

ガララ

蒲原「衣ーっ元気にしてるかー」

衣「さとみー!ここから出してくれー」

加治木「先日は申し訳ない。うちの連中が迷惑を」ペコ

衣「ん?迷惑とは?」

加治木「蒲原と津山がそちらで暴れまわったって、龍門渕さんから、」


衣「そんなことないぞ!あの日は楽しかった!」

衣「智美が連れ出してくれて、一日中遊んでくれたしな!」

衣「最後はハギヨシと睦月が舞踏を披露してくれた」

衣「私への盛大なドッキリつきでな」

衣「それでちょっと興奮して貧血が起きてしまったのだ」

蒲原(ハギヨシさんどんな説明したんだろ。うまくやってくれたなー)

衣「それで、だ。少し智美と二人で話したい。ゆみ、ちょっとはずしてくれないか?」

加治木「、わかった」






衣「智美は命の取り合いが好きか?」

蒲原「え!?」

蒲原(誤魔化し失敗してるじゃないかー)

衣「一は納得したみたいだが、衣には効かないぞ」フフフ

衣「ハギヨシとは長いのだ。どれだけ取り繕ってもすぐにわかる」

蒲原「あは、あはは、そっかーわかっちゃうかー」

衣「もう一度聞く。智美はあの世界に生きるのか?」


蒲原「……私は今も昔も変わらずだよ。たぶんずっと取り合いをしてるんだ」

衣「衣は普通に生きる智美が好きだ。あれは裏の顔を隠しているのか」

蒲原「あれも私だ。殺し殺されるのも。常に自然体だな」ワハハ

衣「それが決めた道なら、衣は否定しない。だけど智美」

蒲原「ん」

衣「普通でいる間は衣の友達であってくれ」

蒲原「もちろん!」

衣「今度鶴賀に遊びに行ってもいいか?」

蒲原「いいぞいいぞ。みんな喜ぶ」


蒲原「それにしても、衣が私のことが好きだなんてな」ワハハ

衣「ん?へんか?」

蒲原「その返しは予想してなかったぞ?まぁ言葉の綾とかそういう、」

衣「心から好きだ」

蒲原「ぐっ」

衣「ちょっと抱きつかせて」

蒲原「わわ、そんな体重かけたら」

ガラッ

透華「衣、体調はどう――」

衣「あ」

蒲原「ワ、ワハハ」



槓!

長いこと読んでくれていありがとうございました。
やっぱりワハキチとしてはワハハは幸せになってほしいのでこういうオチになりました。
とにかく長くなりましたが、なんとか終わってよかったです。
ほいじゃ寝ます。

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