リコ「私は蝶になる」(301)

リコが片思いしています
捏造ありです
リコの名前は、アニメのスタッフロールに掲載の、ブレツェンスカとさせていただいてます
別マガ1月号までのネタが入る予定です

何時の頃からだろう
あの人を目で追うようになったのは
無事であるかを真っ先に確認するようになったのは
視界に入る度に、心臓が震えると錯覚する様になったのは

所属兵団も違う
考え方も、多分正反対
私は保守派だ
現状維持が最優先だと思う
駐屯兵団はもとより保守派が殆どを占めているのだ
唯一の例外が、ピクシス司令だろう


あの人は…
調査兵団という変人の集団にいて、常に先陣を切って変革を求めている
何を変えようとしているのかはわからない
だが、何か大きな流れを変えようとしているように見える
…私にはわからない、何かを…

「リコ、リコ」
私を呼んだのは、ピクシス司令の副官アンカ
通称しっかりしたお孫さん
…まあ本人と司令はそう言われている事は知らないだろう

「アンカ、おはよう」
相変わらずぶっきらぼうだ
可愛いげなど全く無い
自覚しているが、変えようとも思わないし、変える必要も無い

アンカは凄いと思う
大人しそうなかわいい顔をしておいて、あのピクシス司令の頭を叩いたり、酒を取り上げたり、説教したり、凄い勇気だ
普段はとても女の子らしいのだが

「明日、休暇でしょう?私もやっと一日司令が休暇をくれたの♪町に買い物に行かない?たまにはお洒落をして出掛けなきゃ、女じゃなくなりそうなんだもん」
…ほら、女の子だ、ごく普通のね

「…リコ、何か用事がある?」

しばらく返事が無かったからだろう
心配そうな表情で聞いてくる
かわいいな…と思う

「いや、何も無いし、付き合うよ」
そして相変わらず可愛いげの無い自分の返事

「良かった!じゃあ、明日兵舎前に朝食後ね!?」

「了解。アンカ」
ビシッと敬礼をして、駆け足で去って行ったアンカを見送る

明日は買い物か…
きっと女の子なら、何を着て行こうか、たまには化粧をしようか、なんて考えるんだろう
楽しみに、胸をときめかせるものなんだろう

私は、無頓着すぎるのかもしれない
それが私なのだから、構わない
私は私

でも…ふとあの人の姿が脳裏に浮かぶ

…やっぱりたまにはお洒落をしようかな?

…そう言えば、お洒落ってどうするんだろう?

…だめだ、やはり私は女の子にはなれそうにないな…

兵舎の食堂で、夕食を摂る
今日は野菜スープに細い麺が入っている
…熱々だ
蒸気で眼鏡が曇る…煩わしい

「はぁ」
自然とため息が出た
隣に座っていた兵士がビクッとしたのがわかった

私の日頃の行いのせいか、気軽に声をかけてくる兵士はあまりいない
私は厳しいらしい
仕方がないと思う

班長なんて肩書きを貰っている以上は、それ相応の働きをしなければならない
…兵士の教育だって、しなければならない
手本にならなければならない

…沢山の事が私にのし掛かる
でも…

あの人は、もっと沢山のとてつもないものを背負っている
それに比べたら私の背負っているものは、米粒くらいの小ささかもしれない

しかし、私も班長として、部下の命を背負っている
出来うる限り守りたいと思う
その為には、兵士自身が自らを律して、鍛練する事が必要だ

野菜スープのために、眼鏡をはずした
隣の兵士がちらりと私を見た
目があった

「何かついてる?」

「いえ、何も付いていません、班長!すみません!」

…何故か謝られた
きっと怖い顔だったんだろう…

兵士は慌てて食べ終えて、食堂を飛び出して行った

「はぁ…」
本日何度目かのため息をついた…
今日は早く寝よう…
明日着ていく服、どうしよう…
やっぱり少し悩んでみよう…か

私はいつも朝が早い
兵舎の敷地内にある屋外訓練場でのジョギングが日課だからだ
よほどの有事で無い限りは、毎日欠かさず行っている

「ハァハァ…」
15分程走り続けて、座り込む
ふと、空を見上げた
…朝日が眩しい
吹き抜ける風が心地いい

「んー!」
大きく伸びをする
そのまま寝転びたい衝動に駈られる

だめだ。今日は買い物に行くんだった
…急いで兵舎に戻って着替えよう

昨夜は中身の少ないクローゼットを開けて、服を探したが、やはりお洒落な服なんてなかった
…当たり前だ、買ってないんだから

「はぁ」
本日一度目のため息が出た

「リコ!!おはよう!お待たせ♪」
アンカがやってきた
待ち合わせ時間きっちり
私はいつも少し早く待ち合わせ場所に着く様にしている

「おはよう、アンカ。私も今来た所だよ」

「そっか!!ならよかった♪」

アンカの服、少し胸元の空いた、薄紫…ラベンダー色のワンピース
ふんわりとしたスカートの下から、細身の綺麗な脚が伸びる
胸元には綺麗な石の付いたペンダント
…かわいい

「アンカ、ワンピース良く似合ってるね、かわいい」
正直な感想を淡々と言う

「リコもワンピース着たらいいのに!!絶対似合うのに!今着てるジーンズも似合ってるけどね?」
アンカ、それは無理
私は人前でスカートなんて履けない
筋肉がしっかりついてる私の脚…
だめだめ、人に見せるなんて無理…

「私はスカートは似合わないから…ジーンズが楽でいいんだ」
「そんなことないのに!!リコ、勿体ないよ!?」
アンカは優しい
こうやっていつも、私を思いやってくれる
心配してくれる
ありがたい、友人だ

町は活気に溢れている
服屋、宝石屋、帽子や靴の店など、沢山の店が軒を連ねている

「リコ、これはどうかな?」
アンカが本日5着目くらいの試着をして、試着部屋から出てきた
「…かわいいと思うよ。」
ごめんアンカ、私にはどれが似合ってるとかわからない
お洒落の意味すらわからないような私なんだから

「さっきのピンクのと、この白いレースの襟のワンピースならどっちがいいかな?」
真剣に悩んでいる様子で聞いてくる
…女の子ってこれが普通だよね
私も少し悩んでみよう

「うーん、私は今着てる白いレースの方が好きだけど…どちらも似合ってたよ」
当たり障りのない返答

「なら、この白いワンピースにするわ♪リコありがとう!!」
やっぱりアンカは優しい
アンカみたいに仕事も出来て、お洒落もできるのはやっぱり憧れる

「リコも何か買いなよ?ワンピースかスカートしか駄目よ?」
「私は脚を出したくないから…」
「駄目だよリコ!!」
この押し問答は買い物の時はいつもやっている気がする

「ほんとにリコは勿体ないよ!!」
頬を膨らませて怒るアンカはほんとかわいい

でもスカートは履かない…

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