絢辻「まさか手帳落とした…?」(839)
教室
絢辻「…」
「ねえ、これってどういうコト?」
「…信じらんない」
絢辻「…」
「これって絢辻さんの手帳でしょ?」
「いつも持ってるの見かけてるし」
絢辻「…そう、私のよ」
「…」
「…中を勝手に見た事は謝るよ。だけど、さ」
絢辻「…」
「───酷いよね、こういうのって」
「…最悪、いつもそんな風にあたし達のこと見てたんだ」
絢辻「……」
絢辻「…とりあえず、その手帳を返して」
「……言われなくても返すよ、こんなの」パサ…
絢辻「……」
「ねえ、絢辻さん。私たち、これを何処で拾ったかわかる?」
絢辻「……いいえ」
「……」
「ここよ、ここ。教室で拾ったの」
絢辻「…そうなの、それはありがとう」すっ…
「……」
「ッ……なにそれ、あたし達が言ってること分かってんの?」
絢辻「……」
「…この手帳はさ、私たちだけが中身を見たんじゃないってことなんだよね」
絢辻「……」
「ほぼクラス全員、それに噂とかでクラス中に広まってると思う」
絢辻「……」
「この意味、わかるよね?」
これは俺得スレ
絢辻「…ええ、わかるわ」
「……」
「なん…なの、その態度ッ……!」
絢辻「……」
「ねえ、絢辻さん」
絢辻「…なにかしら」
「これからのクラスでの創設祭の準備、私たちは参加しないから」
絢辻「っ…どうして」
「どうして? とか聞かないでくれると嬉しいんだけど」
絢辻「……っ」
「私は表だって言葉にしたくないんだ、皆もそう思ってる」
「……女子の殆んどは、そういう風になってるから」
絢辻「……」ぐっ…
「…じゃあ次のhrで、頑張ってね絢辻さん」くる
絢辻「っ…ま、待って!」がたっ
橘純一(俺)はまだか!!
「………」
絢辻「創設祭はっ……関係、ないでしょう!
この手帳でのことは、あたしッ…私だけの! 私だけの問題であって…!」
「…関係無い、か」
絢辻「っ……そ、そうでしょう?」
「じゃあ聞くけど、絢辻さん。私たち、楽しく創設祭やりたいんだよね」
「……そこに、アンタみたいなやつが一人居たらどう思う?」
絢辻「それは……っ」
「…残念だけど、ほんとうに残念だけどさ。私たちは私たちで、創設祭を楽しもうと思ってる」
「…このクラスでやること全部、あたし達は虫唾が走るの」
絢辻「っ………」
「だって絢辻さん委員長だもんね、仕方ないよ」
「あたし達だけで楽しむには、無理じゃない? だから、諦めて上げるの。こっちから!」
絢辻「………」
「…分かってほしいとは言わないけど」
絢辻「……」
「──貴方はそれ程のことをやったんだって、思って欲しい」
「じゃあ、そんな感じだから。じゃあね、絢辻さん」くる…
絢辻「……」
「──やっぱり甘いって、あれぐらいじゃ皆の気持ちが晴れないって……」
「──いいの、あれぐらいで十分だから……」
絢辻「……ッ……」
ぐぐっ…
絢辻「………───」
hr
絢辻「───それでは、今年の創設祭でやるクラスの出し物を決めようと思うのですが」
クラス一同「……」
絢辻「誰か、提案はありますか」
クスクス……ねー……だよねー……
絢辻「……誰か、挙手をお願いします」
「……」
「……誰か言えよ」
「…お前が言えって…」
「……ばっか、言えるかよこんな空気でっ」
絢辻「……」
「あー退屈ぅ……やらないコト決める時間ほど退屈なことないよね~」
「クスクスっ……だよねー」
「ねー、なにか言ってあげなよー? 可哀そうじゃんっ」
「何を提案するの? あっは、今年はなにもやりません~! とか?」
絢辻「……誰か、挙手をお願いします」
「───アンタが一人で決めれば?」
クラス一同「っ……」
絢辻「……どう言う意味かしら」
「そのまんまの意味よ、わるでしょ? アンタが一人で創設祭でのやること全部よ」
「───アンタ一人でやればいいじゃない?」
絢辻「……」
「だって出来るんでしょ? 一人でなにもかも完璧に、誰の手も借りずに」
「大した自信家だってことは、このクラスにいる全員が知ってるわよ」
クラス一同「……」
絢辻「…私は、創設祭は皆でやる物だと思っています。ですから…」
「ハッ、笑わせないでよ……皆でやるもの? 絢辻さんアンタ今そう言った?」
絢辻「…ええ、言ったわ」
「……皆でワイワイとやって、楽しい創設祭を迎えよう。確かにそれはあたしもやりたい」
「───だけど、それをぶち壊したのは誰?」
「───一体誰が楽しい創設祭を無残な空気にしたと思ってんの?」
薫「……ねえ、絢辻さん?」
④
絢辻「………」
薫「………」
田中「か、薫…!」
薫「アンタは黙ってなさい、いいから」
田中「……う、うん」
絢辻「……」
薫「…ねえ、聞かせてよ。絢辻さんアンタってどうしてそこまで馬鹿なの?」
絢辻「…意味が分からないのだけど」
薫「へー、わかってないんだ。じゃあ言うけど、この空気で誰かが提案するとか思ってる?」
絢辻「…クラスでの決めごとだから、皆の意見を聞くことは重要でしょう」
薫「うん、それはそうよね。絢辻さん、だけどさ?」
薫「───もっと重要なこと、あんでしょ? アンタがまずしなきゃいけないことが」
絢辻「……重要なこと?」
薫「………分からないんだ、アタシが言ってること」
薫「なんで謝らないの。まずはあたし達に、このクラス全員に大して」
ワカメ「謝罪しるニダ」
絢辻「……」
薫「アタシが言ってる意味、わかるわよね」
絢辻「……」
薫「それにクラスのみんなが、アタシが言ってることはわかってるはず」
クラス一同「……」
薫「アンタ、当たり前のことも出来ないの? 人に悪いことをしたら謝ることもできないの?」
絢辻「……」
薫「今日のhrでは、そのごめんなさいの一言が聞けると思って出たけど……はぁ、とんだ時間の無駄ね」がたっ
田中「か、薫…っ?」
薫「帰る」
絢辻「…っ…待ちなさい! まだhrが…!」
薫「…ここに居てなんの意味があんの?」
絢辻「っ……」
薫「……。意味が無いからアタシは帰る、それだけ」すたすた がら…
薫「…他の人たちも、勝手に帰れば?」ばたん!
田中「か、薫…ま、待って!」がたっ
絢辻「……」
田中「……あ、その! すみません! ごめんなさい! わ、わたし……!」
田中「か、帰ります…っ!」だっ
がらら…
田中「ま、待って薫~!!」たったった…!
絢辻「……」
「ど、どうする…?」
「いや、どうするって言われてもな…」
「いいーじゃんかえろーよ、別に薫変なこと言ってないし~」がたっ
「だよね~、かえりますかー」がた…
絢辻「っ……ま、待ちなさい…!」
「……ぐおぉ……ど、どうすんよ…?」
「……帰る?」
「…あ、明日決めればいいじゃん! な!? そうだろ!?」
絢辻「だ、駄目よ! 明日にはもっと細かいことを決めないと日程がっ…!」
「す、すまん委員長! お、俺ちょっと用事がっ……!」
「そ、そうそう! 俺も用事があって! 明日なら~……うん! そんな感じで!」
絢辻「ま、まって……!」
がたっ……がたたっ……
絢辻「皆ちょっと待って! それじゃあ創設祭はっ……!」
「──だから、ひとりできめればいいーじゃん…クスクス」
絢辻「っ……!」
───パタン
絢辻「あ……」
絢辻「………」
絢辻「……………」
トイレに
絢辻「……なんで…」
絢辻「…ッ……」
ガララ
高橋「──ごめんなさい! ちょっと職員会議で遅れちゃって~……あら?」
絢辻「………」
高橋「えーっと、皆は? 絢辻さんだけ?」
絢辻「……そうです」
高橋「……。ということはもう決めちゃったのね? 凄いわね~、他のクラスはまだ話し合ってるのに」
絢辻「……───」くる
高橋「やっぱり委員長が捌けると時間の浪費も……ん、絢辻さん?」
絢辻「…創設祭での報告がありますので、これで」すっ…
高橋「あ、はい……気を付けて…」
絢辻「………」すたすた…
高橋「………」
高橋「…あれ? 私に報告は?」
廊下
絢辻「はぁっ……はぁっ……」たったっ
絢辻「はぁっ……っ……はぁっ…!」たったっ…
絢辻「はぁっ……はぁっ…」たっ…
絢辻「───はぁー……」すた…
絢辻「……っ…」
絢辻「……くっ…」
絢辻「……だめ、弱っちゃダメよ詞…」ぎりっ…
絢辻「……なんてこと、無い。こんな問題…なんていことは、ないんだから」
絢辻「っ……」ぎゅっ…
絢辻「───私は強いわたし、泣かない、喚かない、寂しがらない」
絢辻「………大丈夫、大丈夫だから」
絢辻「大丈夫…大丈夫……」すた…すたすた…
次の日
絢辻「……」
「───クスクス……だよねー…あははー…」
絢辻「……」
「おはよー! ん、どうしたの?」
「あ、おはよ。ねえねえ見てよアレ、クスクス…」
「なになにー? あ、なにあれー?」
「…なんか机に落書きしてあるらしいよ? 誰がやったんだろうねー?」
「えー、本当にぃ? くすくす…」
絢辻「………」すっ… カチャ…
ゴシゴシ…ゴシ…
絢辻「………」ゴシゴシ…
「…あ、消してるよ?」
「ッチ、なんか言えばいいのにね~」
絢辻「………」ゴシゴシ…
「……空気ががが」
「…ムリだ、俺たちには無理だ」
「……どうにしてやれよ、弱ってるんだぜ?」
「……いや、知ってるだろあの手帳のこと…ムリだろ、あんなの性格」
「…だな、普段からそう考えてるとか怖すぎるわ…」
「だとするとよ、やっぱアイツは知らなかったのな?」
「あ、そう思う? やっぱ悲しむよな……というか軽蔑?」
「だろ? 流石にあの仏のた───」
薫「───ぐんも~、恵子…」
田中「あ、うん……おはよ薫」
薫「んー……」がた
田中「……えっと、なんだか元気ないね」
薫「…そお?」
田中「う、うん……ちょっと普段と違うかな、みたいな」
薫「………」
田中「だけど! その~……えっと、あのね…?」
薫「…いいわよ、別に口にしなくても」
田中「…そ、そっか」
薫「…それで? この空気はなんなの?」
田中「…えっと、その…あれかな?」
絢辻「……」ゴシゴシ…
薫「……」
田中「…う、うん。そんな感じ…だよ」
薫「……いい気味じゃない」
田中「えっ…?」
薫「いい気味って言ったの、恵子」
田中「……そっか」
田中「……薫も、言うんだねそういうこと…」ボソッ
薫「……なに?」
田中「あ、う、ううん! な、なんでもないの!」
薫「…わかってるんでしょ、アンタも」
田中「…う、うん」
薫「あそこに居る奴は、こんなことをされても仕方ないことを思ってた」
薫「……これぐらいの態度とられて当たり前じゃないの」
ぐぐっ…
田中「……」
薫「あー……ムカつく、ムカつくムカつくッ…!」ガタッ!
クラス一同「っ……!?」
薫「──トイレ! トイレ行ってくる!!」ガタッ ダッダッ!
ガラリ! ピシャ!
「び、びっくりした~」
「ちょww薫トイレとかww大声wwwばかwww」
「…笑いすぎ、アンタ」
絢辻「………」
きーんこーんかーんこーん
高橋「hr始めるわよ~! みんな席について~!」がらり
がやがや…
絢辻「………」すとん…
高橋「ん、みんな席に着いたわね……あら? 棚町さんは?」
田中「あ、えっと~……と、トイレに……イッタソウデス…」ゴニョゴニョ…
高橋「と、トイレ? 田中さん…例えそうだとしても正直に言うのは女の子として…」
「先生ぇー! 薫が大声でトイレ行ってくるとか言ってましたよ~?」
高橋「…後で棚町さんには指導です」
クラス一同「あはは! くすくす!」
絢辻「………」
高橋「──まあ、仕方ないですね。とりあえずhr始めます」
高橋「では出席から──……」
絢辻「……」
絢辻「……────」
~~~~~
放課後 hr
絢辻「──……」
「さぁ、帰ろっかー」
「そうだねー」
「あれ? 麻耶ちゃん先生は?」
「また会議だってよ、創設祭での」
絢辻「………」
絢辻「……大丈夫、大丈夫…」ブツブツ…
絢辻「っ……───」
絢辻「───ちょっと待って、みんな!」がたっ
クラス一同『……!』
絢辻「……今日こそは、ちゃんと創設祭での出し物を話し合ってほしいの」
「……話し合ってほしいの、とか言われても~」
「あたし今から用があるしさー、ムリムリ」
絢辻「でもっ……! このままじゃ私たちのクラスは、何も出来なくなって…!」
「……まぁ、確かに。そうだけどさ…」
「…うん、だけど…」
絢辻「っ……」
絢辻「……それじゃあ、私がキチンと謝れば…」
絢辻「創設祭のことを考えてくれるの…?」
クラス一同『………』
絢辻「私があの手帳に書いたことを、みんにちゃんと謝れば…!」
絢辻「ちゃんと、ちゃんと…」
「…謝るんだってさ、委員長」
「どうするー? 許しちゃう感じこれ?」
「えーw どうしようかなっーww」
「うんうん、迷っちゃうよね~」
絢辻「……」ぐっ…
「──でも、今さらって感じだよね?」
絢辻「っ……」
「そうそう! 本当に今さらー!」
「じゃあ昨日の内に謝っておけって感じだよね?」
「薫が言ってたことに対して何にも言わなかったし」
「結局うわべだけじゃない? ほら、あの手帳の中身もそうじゃんw」
「こっわー! それでもっと恨みごととか、文句とか書くわけでしょー?w」
絢辻「そ、そんなことはもうしないから…! わたしは、わたしはただ創設祭を成功させたくて…っ」
「……成功とか、良く言えるよねそんなこと」
「誰が失敗に追いやったんだっつーの、ほんと」
「なんか私たちが悪者みたいな言い方じゃないアレ?」
絢辻「そんなことっ…!」
「あー分かるわかる! なんっか謝らせてるみたいなねー!」
「……最悪、だからあんなコト書けるんだろうね」
「かえろー、ここにいたらマジであたし達悪もんだし~」
がたがた……
絢辻「まって! 私はそんな風に貴方達を見て無い!
私は…! 私はちゃんとこのクラスのことを思って…!」
がやがや…
絢辻「っ……だめ、ここで引いちゃダメ…!」
だっ!
絢辻「──待って!」ばっ!
「…退いてよ、邪魔」
「廊下で大声出さないでよ……迷惑でしょ他のクラスに」
絢辻「っ……でも、そうしないと貴方達は帰るでしょうっ?」
絢辻「今回は……本当に色々決めないといけないの! だから教室に戻ってキチンと話し合いを…!」
「………」
「………何か見てるよ、他のクラス…」
「…知らないわよ、んなの」
絢辻「ダメ、戻って教室に!」
「──…じゃあ、お先に失礼するわねー」
絢辻「っ……棚町さん…!」
薫「…ん、なに」くる
絢辻「貴方も教室に戻って、お願いだから…っ」
薫「…いやよ」
絢辻「っ……それは私のことで? だったらちゃんと謝る、きちんと謝罪を述べるから…!」
薫「……」
絢辻「私が悪いことは、自分でもわかってる! だけど、創設祭は何も悪くないじゃない!」
薫「…で?」
絢辻「…で、って…」
薫「謝るから、なんなの? それで何の解決になんの?」
絢辻「だって…貴方がそう…」
薫「……へえ」
薫「───あんな言葉、真に受けたんだ? あっは、おかっし~」
絢辻「っ……!」
薫「ホントにっ? 嘘でしょ~! ……今らさ謝って許されるとか思ってんの?」
薫「あっはははっ…! 本当に絢辻さん、馬鹿だったんだ~!」
「…ちょっと薫…」
「…それは…」
薫「───はぁ? なに? アンタ達だってそういってたじゃない」
「……そう、だけど…」
「………」
薫「…自分が相手に向かって言った言葉ぐらい、ちゃんと責任取りなさいよ」
「……うん…」
「…ごめん……」
薫「……そんなわけだから、絢辻さん。今頃謝っても遅いし」
薫「──そもそも謝っても許すなんて、アタシは一言も言ってないから」
絢辻「───………」
薫「もう良いわよね、帰らせてもらうわ。んじゃバイバイ」フリフリ
絢辻「………ッ…」ギリ…
絢辻「──ダメ……」
薫「……」ぴた
薫「…なに?」
絢辻「ダメよ、ダメって言ってるの!」
薫「………」
絢辻「貴方は勝手すぎるわよ! っはぁ……貴方は! 毎回そうやって言いたいことを言って!
やれないものは放っておく! 時間にもルーズで直ぐに暴力で解決しようとする!!」
絢辻「その身勝手さに巻き込まれた人たちの身になって考えてみなさいよ!
貴方の傲慢さはっ…全て、全部全部貴方の過ちになって…!!」
薫「……」
絢辻「貴方の元へ帰ってくるはずよ! そうなっても…! 遅いんだからっ…」
薫「……」
絢辻「っ……はぁ…はぁ…」
クラス一同『……』
薫「…言いたいことは、それだけ?」
絢辻「……ん、っく…はぁ…」
薫「だったら、今度はアタシの番。ちょっとアンタこのかばん持ってて」ぐいっ
「え、あ、うん……?」
薫「…っはぁー……」
薫「……口には、口。拳には、拳。アタシの喧嘩モットーはそれなんだけど…今日は破るわ」
「……へ? ちょ、薫…!?」
絢辻「………」
薫「…覚悟しなさい、アンタ」
絢辻「…なによ」
薫「わからないかしら? じゃあ言ってあげる───」
薫「───このアタシを、本気で怒らせたことよ」ダダッ
絢辻「ッ……」
「きゃあッ……!」
ブン!
絢辻「……───」ぎゅっ…
絢辻「────」
絢辻「────……?」すっ…
薫「……どういうつもり」
田中「……」
絢辻「……田中、さん…?」
田中「……」
薫「…言ってるわよね、アタシ。いっつもアンタに」
薫「───アタシの喧嘩を邪魔すると、アンタも殴るよってさ」
田中「……」
薫「退きなさい」
田中「……だめ、ダメだよ薫」
薫「殴るわよ」
田中「……」
薫「ッ……殴るわよ本気でッ!? いいから退きなさいよッ!」
田中「…薫」
薫「いいから、アンタはそっちにッ…行ってなさいッ!」ぐいっ!
田中「きゃっ…!?」
「……よっと」ぽすっ
田中「あ……」
「…大丈夫か、田中さん」
田中「え、あっ……ごめんね! 受け止めてもらっちゃって…!」
「いいってことよ、それぐらいなら俺にだってできるからな」
薫「……なに、そっちもアタシを止めようっての」
「………」
薫「アンタだって何にもやってないじゃない! 陰でこそこそやってるだけでしょ!?」
梅原「──ああ、そうだな。俺は卑怯もんだ」
薫「ッ……じゃあでしゃばるんじゃないわよ、黙ってなさいよッ!」
梅原「言われなくたってそうしてやるよ、だがよ。今は黙ってらんねえな、棚町」
薫「……アンタも殴られたいの」
梅原「めっそうもねえ、殴られずに済むなら越したことはねえよ」
梅原「…だが違うだろ、棚町がやってることは」
薫「ッ……なにが、言いたいのよ…ッ!」
梅原「……相変らず、強いな棚町はよ」
薫「ハァッ?」
梅原「……棚町の強さは分かってるってことだ」
薫「強さ? そうでしょうね、中学の時のアタシのことを知ってるアンタならッ!」
梅原「…ちげーよ、ここだここ」トン…
薫「なに、よっ……それ!」
梅原「ここが強いことは、俺だって知ってる。短い付き合いだけどな」
薫「ッ……なによ…!」
梅原「だが、今の棚町は違う。俺はそう断言できる」
梅原「……アイツが悲しむぞ、やめとけその辺で」
薫「……ッ……なによ、わかったような口を聞いて…! アンタに何がっ…!」
田中「…薫、梅原くんの言う通りだよ」
薫「…ッ…」
田中「…そこまでやったら、薫らしくない」
薫「……恵子…!」
田中「…いいから、ね?」
薫「っ………」
薫「……なんなのよ、本当にっ…!」ギリ…
薫「……」チラ
絢辻「っ…」
薫「……あたし、帰るから」
絢辻「………」
薫「…カバンありがと」すっ
「う、うん……」
薫「………」すたすた…
田中「……。ありがとね、梅原君」
梅原「…いいってことよ」
田中「……絢辻さん」
絢辻「っ……なに、かしら」
田中「………」
絢辻「田中、さん……?」
田中「…今日は帰ります、ごめんなさい」ぺこ
たったった…
絢辻「あ……」
「……ど、どうする?」
「……周り見てる、ね…?」
「か、帰ろっか…!」
たったった…!
絢辻「っ………」
梅原「……俺も、帰ろうと思う」
絢辻「…梅原、くん」
梅原「……すまねえ」
絢辻「……こっちこそ、ごめんなさい…」
梅原「あ、いやっ……えっと、その…」
梅原「……言いたいこと、沢山あるんだがよ」
絢辻「………」
梅原「…俺には、どうしようもねえ。無理だ」
絢辻「…いいの、貴方も手帳のことを知ってるんでしょう」
梅原「……ああ、知ってる」
絢辻「…大丈夫だから、私は」
梅原「……すまねえ、本当に」
すたすた……
絢辻「………」
「…あの、絢辻…さん?」
絢辻「……桜井さん」
梨穂子「えっと~……ごめんね、お邪魔かな~…?」
絢辻「───」ぐぐっ…
絢辻「───そんなこと、無いわよ? ごめんなさい、他のクラスにも聞こえてたかしら?」ニコ
梨穂子「あ、うん……ちょっとだけ~…その」
絢辻「えっとね、実は創設祭での出し物で言いあいになっちゃったのよ」
梨穂子「え…?」
絢辻「それで棚町さんと一緒に私もヒートアップ、クラスのみんなも止めてくれたんだけど…」
絢辻「…廊下にまで発展しちゃって、本当にごめんなさい」ぺこり
梨穂子「あっ、ううん! 大丈夫だよ? 全然大丈夫だったから!」
絢辻「…そう、でも本当にごめんなさい」
梨穂子「う、うん! そうだったんだ~…なんか棚町さんが凄く怖かったからなにがあったのかなって~…」
絢辻「………」
梨穂子「…そ、それじゃあクラスのみんなにそう伝えておくね?
みんな気になってるみたいだから~」
絢辻「…うん、お手数掛けちゃってごめんなさい」
梨穂子「あはは、絢辻さん謝ってばっかだよ~?」
絢辻「…うん、そうね」
梨穂子「それじゃあ、これで~」フリフリ
絢辻「うん」
絢辻「……」
絢辻「……」くる…
教室
絢辻「……」
絢辻「……もう、誰も居ない」
絢辻「ここには私一人だけ」
絢辻「………はぁ~…」
絢辻「………」
絢辻「……やって、やるわよ」
絢辻「出来るわ私なら、大丈夫。一人で何だって出来たもの」
絢辻「…なんだって、一人でやってきた」
絢辻「大丈夫、平気……なんにも怖くない」
ぶるる…
絢辻「………」
絢辻「──あーあ! 嫌になっちゃう! 本当に馬鹿ばっか!」
絢辻「陰でこそここそと甚振るしかできないなんて、本当に頭が足りないのね!」
絢辻「集団でしか人を貶せない! 暴言を吐く度胸が伴ってない! 人を拒絶する作為を決断できない!」
絢辻「……いやーになっちゃう、ほんとーに」
絢辻「……本当に…」
絢辻「………」
絢辻「……あたしの、馬鹿」
~~~~~~~
絢辻「……」
絢辻(……問題が解決するまで、来ないって決めてたのに)
絢辻「……」ぴんぽーん
「───はーい、今あっけますよー!」がちゃ
絢辻(相変らず元気がいいわね…)
「ありゃっ? 絢辻さん!」
絢辻「…こんばんわ、ごめんなさい。こんな夜遅くに」
「いいんですよ~、あんな馬鹿なにぃにのお見舞いに来る人なんて絢辻さんぐらいですからっ」
絢辻「…くす、そうかしら」
美也「ええ、そうですともっ! ……それで、その~」
絢辻「あ、これ…つまらないものだけど」すっ
美也「んにゃー! これは駅前の限定肉まん! にっししし! ありがとうございまーす!」
絢辻「そこまで喜んでくれると、こっちも嬉しいわ」
美也「いえいえ! みゃーこれが大好きで大好きで!」
絢辻「じゃあ今度、それを簡単に帰る方法を教えてあげましょうか?」
美也「ええぇー! 本当ですかー!! じゃあじゃあ、今度! お願いします!」
絢辻「ええ、ちゃーんと一から十まで教えてあげるわ」
美也「にしし! あ、玄関だと寒いですよね! にぃには多分おきてるともうので~」
絢辻「…ごめんなさい、あがらせてもらっても?」
美也「いいですとも! にしし!」
絢辻「ありがとう、橘さん」
~~~~~
絢辻「…………」すた…すた…
絢辻「……ここ、よね」
絢辻「……はぁ、ふぅ…」パンパン!
絢辻「…………よし、いつもの〝あたし〟になった」
絢辻「………」
絢辻「……橘くん、いる?」コンコン
「───あふぇあっ!? あ、絢辻さんっ!?」ガタタッ!
絢辻「………………」
「え? えっ? 本当に絢辻さんっ?!」
絢辻「………そうだけど、橘くん」
絢辻「今、何やってる最中?」
「──ッ~~~!? な、なんにもぉ!? なんにもやってませんよ絢辻さん!!」ガタッガチャ!
絢辻「何を片づけてるの?」
「か、片づけなんてしてませんって! 本当です! 僕の部屋はいつまでも綺麗だよ!!」
絢辻「そう、じゃあビデオデッキに入ってるのは忘れないようにね」
「あ、本当だいっけない忘れる所だった……」ウィーン…
絢辻「……………………」
「………………」カシャ…
絢辻「………………」
「………入っていいよ、うん」
がちゃ…ぎぃ
絢辻「こんばんわ、橘くん」
「うん、こんばんわ───」
純一「───絢辻さん、久しぶりだね」
絢辻「………」
純一「え、でも久しぶりって程でもないかな? 僕が風邪をひいて二日目だから…」
絢辻「………」
純一「……ん、どうしたの絢辻さん?」
絢辻「……っ…」ぶるるっ…
絢辻「……なん、でもないわよ」
純一「そ、そう? だったらいいけど…」
絢辻「…というかこの部屋、どうして窓があいてるのよ」
純一「えっ!? ちょっと換気をしようかなって…! ほら! 絢辻さんに風邪をうつしちゃ悪いし!」
絢辻「…寒い、普通に寒い」
純一「そ、そうだよねー! あー、でももうちょっと換気してたいかなぁ~? どうかなぁ~?」
絢辻「………」
純一「やっぱもうちょっとだけ! もうちょっとだけ、いいかな…?」ちらっ
絢辻「………」…ットスン
純一「…あれ? カバン落としたよ絢辻さん…?」
絢辻「………」すたすたっ…
純一「…ん!? なんでこっちに急に歩み寄ってきて…!? だ、ダメだよ! こっちはまだ匂いが───」
ぎゅう…
絢辻「………」
純一「───ついてるん、だけど……」
絢辻「……」
純一「……絢辻さん?」
絢辻「…黙ってて」ぎゅっ…
純一「う、うん……わかったよ…?」
絢辻「………」
純一「……」ポリポリ…
絢辻「……栗の花の匂いがする」
純一「ッ!?」ドッキン!
絢辻「くす……冗談よ、心臓の音こっちまで聞こえてきたじゃない」
純一「…びょ、病人をからかわないでください…」しくしく…
絢辻「…うん、ごめんなさい」
純一「え、あ、うん……?」
絢辻「………」
純一「…もうちょっとだけ、抱きついとく?」
絢辻「…うん」
純一「そっか、了解…」ぽんぽん…
絢辻「………」ぎゅう
紳士とられたからモジャは荒れてたのか
~~~~
絢辻「……コホン」
純一「……」にこにこ
絢辻「…な、なによ。どうして笑ってるのっ」
純一「んーん、なんだか絢辻さんが……ちょっと甘えたがりで可愛かっおぶっ!?」ぼふっ!
絢辻「だ、黙ってなさい!」
純一「…だ、だからって病人にまくらを投げるのはどうかと…」
絢辻「っ…んもう、本当に貴方は風邪引いてるのっ? どうみたっていつもどおりじゃないの…っ」
純一「あはは、そうだね」
絢辻「……それでも、とりあえず体調のほうはどうなの?」
純一「ん、もうちょっとかかりそうかなって思う」
絢辻「……」ジトー
純一「ほ、本当だよ!? 別に学校をサボりたいからって、そう言うワケじゃないからね!?」
絢辻「…あたしが部屋に入ろうとした時…」
純一「あ、あれは! その! 色々とね! やっぱあるよね! ……いや、本当に勘弁して絢辻さん…」
ウンコ行ってきます
絢辻「……くすっ」
純一「っ……もう、本当に絢辻さんは~…!」
絢辻「あはは、ごめんなさい……なんだかちょっと久しぶりな感じがして」
純一「あはは、そうだね!」
絢辻「……でも、本当に残念」
純一「…うん、ごめんね僕がこんな体たらくで」
絢辻「風邪ならしょうがないじゃない、仕方ないことよそれは」
純一「……でもさ、やっぱり僕も参加したかったよ色々と」
純一「創設祭とか、絢辻さんの仕事の手伝いをやりたかった」
絢辻「………」
純一「みんなは、どうしてる? 元気?」
絢辻「…うん、何時も通り」
絢辻「創設祭も、滞りなく進んでるわ。だって、あたしがいるんだもの」
純一「そっか、それは良かった」
絢辻「………」
純一「…みんな頑張ってるんだろうな、だって凄く楽しみにしてたし」
絢辻「…そうね」
純一「特に薫の奴とか、あははっ…変に無茶して邪魔になって無い? 大丈夫?」
絢辻「うん、大丈夫よ」にこ
純一「おおっ…アイツがやる気になってるのか。それはそれは…」
絢辻「………」
純一「…僕もやっぱり参加したかったな」
絢辻「…何言ってるのよ、創設祭までに直しちゃえばいいじゃないの、風邪なんて」
純一「あはは、そうだよね!」
絢辻「弱気になってたら、治るものも治らないわよ?」
純一「うん! 確かにそうだ……僕らしくなかった」
純一「……ちゃんと治さないとね、うん」
絢辻「………」
~~~~~
絢辻「───ん、もうこんな時間…」
純一「あ、本当だ」
絢辻「そろそろ帰らないと……」すっ
純一「うん、ごめんねわざわざお見舞いに来てくれて」
絢辻「いいのよ、お礼を言いたいのは……」
純一「…絢辻さん?」
絢辻「…ううん、なんでもない」ふるふる…
絢辻「それじゃあ橘くん、きちんと睡眠ととって水分摂取。
そして無駄な運動をしないで、安静に眠ること!」
純一「は、はい…」
絢辻「…本当にわかってる?」
純一「わかってます! 了解しました!」びしっ
絢辻「よろしい、じゃあこれで」くる
純一「──絢辻さん」
絢辻「…なに、橘くん」
純一「無茶、しないでね」
絢辻「っ………」
絢辻「…このあたしに心配だなんて、いい度胸ね、本当に」
純一「とりあえずだよ、気にしないでいいよ」
絢辻「……それじゃあ、またね」
純一「うん! またね!」
ぎぃ……ぱたん
絢辻「…………」
絢辻「……っはぁー…」
絢辻「……頑張らなきゃ、私」
絢辻「………」
絢辻「……」すたすた…
~~~~
放課後 hr
薫「………」がたっ
田中「…今日も帰るの?」
薫「………」すたすた…
田中「…そっか」がた…
「──待って」
薫「っ……」
田中「…あ…」
絢辻「棚町さん、まだ帰るのは待ってちょうだい」
薫「………」
絢辻「それに他の人も、もう少しだけ待ってくれたら嬉しい」
クラス一同『………』
薫「…なに、まだアタシに言い足りないことでもあんの」
絢辻「……そうじゃないわ、私が言いたいことはただ一つだけ」
絢辻「──創設祭を成功させること、だけよ」
薫「っ……まだそんなこと…!」
田中「……」
「…まだいってるよ」
「…委員長、本当につえーな…」
絢辻「ただ、それだけ」
薫「……はぁ、ねえ? あれだけ言われてまだ懲りないの?」
絢辻「どう言う意味かしら」
薫「勝手に一人で盛り上がってるみたいだけど、みんな態度がわからないのかしらってコトよ」
絢辻「………」
薫「成功なんて、もう無理じゃない。適当に休憩所なんて書いて提出すればオシマイでしょ?」
絢辻「………」
薫「とにかくアンタがどれだけクラスの皆に言おうが、誰一人アンタの話を聞く奴なんて居ない」
薫「───早くわかりなさいよ、そんな簡単なことを!」
絢辻「…そうね、確かにそうだわ」
薫「………」
絢辻「私の言葉なんて、誰一人聞いてくれない。それはわかってる」
絢辻「…謝っても、どんなに謝罪してもみんなの気持ちは晴れないとわかってる」
薫「…わかってるなら」
絢辻「──でも、あたしは絶対に創設祭を成功させたいっ!」
薫「っ……」
絢辻「どれだけの恨みを買ってでも、あたしはこの創設祭だけはやり遂げたいの!」
絢辻「──だから、だから……あたしは…!」
薫「………」
絢辻「っ……これを、みんなに見てほしい!」ばさっ
薫「………!」
田中「わぁ…っ!」
「なにこれ……すご」
「…すっげー細かい、計画図…?」
薫「…なんなのよ、これ」
絢辻「今回、クラスのみんなでやってほしい──お化け屋敷の図案」
薫「………」
「…衣装代、設置物からなにもかも細かく書いてある…」
「嘘だろ、これ全部…?」
「……一人で考えたの?」
絢辻「この紙束に書いてるある全てをやれば、滞りなく創設祭を行えるでしょう」
絢辻「…私が断言する。絶対に失敗は、しない」
薫「……」
絢辻「なんの心配も問題も無い。これをやるだけでいいの…本当に」
薫「……やるだけでいいって、何言ってるの絢辻さん」
絢辻「ええ、棚町さん。貴方が言いたいことも分かる」
薫「……」
絢辻「───果たしてそれが、楽しい創設祭になるかということでしょう?」
薫「……」
絢辻「勝手にきめられた物を実行するほど、楽しくないことはないわよね。
みんなで決めて、ワイワイとやりたいことを決めて行く。それが本当に創設祭」
クラス一同『っ……』
薫「……わかってるじゃない、じゃあその邪魔な紙束をしまいなさいよ」
絢辻「……」
薫「……」
絢辻「……まだ、言いたいこと、あるの」
薫「…なによ」
絢辻「…………この創設祭での、準備、そして全ての実行を…」
絢辻「───私は、一切関わらないことを……誓う」
薫「っ……」
田中「えっ…それ、って…」
「……関わらないって…」
「つまり、どういうこと…?」
梅原「……絢辻さん、アンタは俺たちだけでやれと言ってんのか?」
絢辻「っ……そう、よ」
梅原「自分が考えた事を、全部?」
絢辻「……」こく…
梅原「……そりゃあ身勝手と思う以前に、おいおいと思うぜ」
絢辻「…わかってる、ちゃんとわかってる」
梅原「よんでみりゃーわかるよ、ちょっとだけだが……凄いなこりゃ」
「……おお、マジかよ。俺たちの性格に合わせて配置とか決められてるぞ…」
「…資金管理お前だってよ」
「お、俺が守銭奴ってわかってたのか…」
「あ、あたしまで…」
「化粧が得意だからメイク係……私も雑貨詳しいからそろえるの簡単だし…」
「これとかすご……全員の行動範囲まで…」
薫「………」
梅原「……絢辻さん、この図案がどれだけの思い入れがあるか分かるぜ」
絢辻「…うん」
梅原「だが、創設祭に自分が本当に関わらなくて良いと……言うんだな?」
絢辻「……────」
絢辻「──うん、断言するわ」
梅原「………」
絢辻「…だってそうすれば、みんな…ちゃんとやってくれるでしょう」
梅原「…絢辻さん」
絢辻「これでいいのなら、こんなものでいいのなら……」すっ
絢辻「……お願いします、どうか、創設祭を成功させてください」ぐぐ…
絢辻さんは裏表のない素敵な人です
クラス一同『………』
絢辻「…お願い、本当に」
「ど、どうする…?」
「……えっと…その…」
「やばい…やっぱ凄いんだこの人…」
「……どうするって、ここまでのもん見せられたら──」
薫「───良いわよ」
絢辻「っ……え…?」
薫「やるわ、アタシ」
絢辻「ほ、本当に……? やって、くれるの…?」
薫「………」
田中「薫…?」
薫「───だけど、条件があるわ」
絢辻「……条件?」
薫「そう条件───……これ、全部絢辻さん一人で準備してよ」
〃∩ ∧__∧
⊂⌒ ( ・ω・) あーかおるきたかおる
`ヽ_つ /⌒ヽ
/ .i! ヽ
( .|| )
) .|| (
( .|| )
) .|| (
ヽ || ノ
ヽ||/
|| ))))
〃∩ ∧__∧
⊂⌒ (・ω・ ) あーかおるいっちゃうかおる
`ヽ_つ_~つ
/⌒ヽ
/ .i! ヽ
( .|| )
) .|| (
( .|| )
) .|| (
ヽ || ノ
ヽ||/
|| )))))
絢辻「っ…!?」
薫「全部書いてること、一人で全部やってのけてよ──そしてたらアタシはやってあげる、そのお化け屋敷とやらをね」
田中「っ……薫! それは…!」
絢辻「………準備、すればいいのね」
田中「あ、絢辻さんっ…!?」
絢辻「…ううん、いいの。やってくれるって言ってくれるだけで十分だから」
田中「なっ……薫!? ダメだよ! そんなことっ…!」
「さ、流石にそれは…」
「…なぁ? やっぱ…よぉ…」
「か、薫…?」
「あ、アンタちょっと言いすぎだって…」
薫「……わかってんのアンタら? これが今までのやり方だったんじゃないの?」
クラス一同「………」
薫「…こうやって自分の凄い所を見せつけて、納得させて、良いようにさせて」
薫「影ではあたし達のことを馬鹿にしたことをずっとずっと…思ってたのよ?」
>>244
これ凄く好き
トイレ
絢辻「…………」
薫「…今回だってそうじゃない、こうやって自分の悪い所を良い風に見せる」
薫「──上手いわね、ほんっとそうやって人のご機嫌取りの仕方がお上手だなことで」
田中「………」
「……でも、そうだよね…」
「今まで、絢辻さんとか良い人って思ってて…」
「…だけど結局、あの手帳に書いてたことを…常に思ってた訳じゃん?」
「…うん、今回もそんな感じってこと? そうなのかなー…」
絢辻「………」
薫「……。だからさ、この図案の準備の所を全部やってよ」
薫「そうすれば……許してあげる、絢辻さん」
薫「───アンタの〝そう言う所を全部、まるっきり全部ね〟」
絢辻「………」
薫「やっぱ無理かしら」
絢辻「……馬鹿言わないで」
薫「……」
絢辻「──やるわ、全て創設祭に間に合わせてあげる」
田中「っ…!」
梅原「………」
薫「…へぇ、出来るんだ。本当に? 全部? 一人よ?」
絢辻「当たり前じゃない、簡単なことよ」
薫「……上等、じゃあやりなさいよ」
薫「アタシはもう帰るから。それじゃ、また明日」くる…
がらら…
田中「………っ…」すたすた…
薫マジうぜえ。原作の涙イベントもウザかったし
>>256
でも原作はドッジボール助けてくれたし
「お、おいっ……どうするよ…?」
「いや、流石にこれは…」
「……あたしどうしよう…」
「……うん…」
「…でも、やっぱり…」
絢辻「───」ブツブツ…
梅原「……?」
絢辻「───ょうぶ…大丈夫……」ブツブツ…
梅原「………ッ! やめ、絢辻さッ──」
絢辻「───はぁーあ、清々したぁ~」ぐぐっ
クラス一同『…っ?』
絢辻「っふぅー……ん、なに? どうしてみんなまだ残ってるの?」
絢辻「───早く帰ってよ、創設祭の準備の邪魔だから」
「なっ……」
「……絢辻さん?」
絢辻「気安く呼ばないで、気が散るから」
「っ……」
絢辻「あー疲れた、やっとあの棚町さんから約束が取れたわー……猫を被るのも大変大変~」
「…どういうこと、それ」
「お、おいおい…」
絢辻「───このクラスでの主導権を握ってるのは、彼女」
クラス一同「っ……」
絢辻「…ここ数日での傾向を見れば、いとも簡単な勢力図なのよね」
絢辻「つまりそれは、あの棚町さんを納得させれば───」
絢辻「───貴方達は仕方なくとも、絶対に創設祭を実行する」
「……絢辻さん、本気で言ってるのそれ」
絢辻「はぁ? 彼女が居ないとなんにも出来ないくせに…ふふっ」
絢辻「自分の立場がまだわかってないのかしら? ちょっと、馬鹿にもほどがあるわ」
「ちょっとッ……それどういう意味ッ!?」
「酷いくないッ!? それは流石にないよっ!?」
絢辻「──黙りなさい」
「っ……!」
「んぐっ…」
絢辻「口答えするぐらいの度胸があるのなら、何かしら思うことがあるのなら」
絢辻「…いいわよ、かかってきなさい。全力で踏みつぶしてあげるから」
「あっ……ぐっ…」
「…なんなの…それっ…」
絢辻「あら? わかってないのかしら? ……手帳のことで理解していただけると思ってたのに」
絢辻「───私に敵う人間なんて、一人もいない。弱い人間は集って逃げ腰で」
絢辻「言われてやられたことを、やっておけばいいのよ」
クラス一同『っ……』
「……」
「……帰る」
「アタシも帰るわ、一人で頑張れば…勝手に」
「…ふざけるじゃないわよっ…」
絢辻「くすくす、そうやって捨てゼリフしか吐けないから弱い人間なのよ」
「ッ……」ガタッ
「…やめな、かまっても一緒だから」
絢辻「賢明な判断、どうもありがとう」
「……後悔するよ」
絢辻「たかが知れてるわ」
「……さようなら」
絢辻「はい、さようなら」
「…俺たちも帰るか」
「…ん」
「まあな、あれだけいわれちゃー……ま、仕方ねえよな」
絢辻「………」
「……仕方ねえよ、俺たちは弱い人間なんだからさ、あの人にとって」
がた…がたがた…
絢辻「…………」
……パタン
絢辻「………」
絢辻「……はぁーあ、それで?」
梅原「………」
絢辻「貴方は帰らないの? 梅原君」
梅原「……絢辻さん」
絢辻「ん、なにかしら?」
梅原「…アンタって、どうしてそこまで創設祭を成功させてえんだ」
絢辻「……」
梅原「アンタはっ…! アンタはっ……どうしてそこまで自分を陥れてまでッ…!?」
絢辻「……くす」
梅原「ッ…」
絢辻「意味なんて───……意味なんて、必要かしら?」
梅原「……教えてくれる気、さらさらねえみたいだな」
絢辻「……」
梅原「俺は、分かった。あんたがやったことは、全部…皆の為だ」
梅原「──ようはつまり、二分になりそうだったものを…自分が悪者になってまとめようって魂胆だろ」
梅原「そしてこれから先、クラスの奴らは……アンタに負けねえよう、頑張るはずだ」
梅原「…創設祭をやりきるはずだっ…!」
絢辻「…勘ぐりすぎよ、梅原君」
梅原「ああ、そうかもな! だけど、俺は……やっぱ…っ」
梅原「やっぱりっ……アイツが好きになった奴だからッ…俺はっ…!」
絢辻「…友達思いなのね」
梅原「…信用してるんだ、それだけの男だからな」
絢辻「そう」
梅原「…絢辻さん、アンタはどうして頑張れる」
絢辻「頑張るの意味が違うわ、梅原君」
絢辻「──これは私にとって、当然のことなの。頑張る価値程も無い」
絢辻「私にとってのステータス、もはや息を吸って吐くほどに簡単なこと」
絢辻「……頑張ることは、もう全部終わらせたの」
梅原「……そうかい」
絢辻「うん、そうなの。じゃあ…梅原君、早く出てってくれるかな?」
梅原「わかった、出て行ってやる…」すたすた…
絢辻「………」
梅原「……最後に、絢辻さん」
絢辻「ん、なにかしら」
梅原「……こんなこと、絶対に───」
梅原「───大将が、黙ってねえと思うぞ」
がらり…ぴしゃ
絢辻「………」
絢辻「……そんな、こと」
絢辻「……わかってるわよ、そんなこと…」
絢辻「………」
絢辻「……さて、準備と」
絢辻「っ……」ふら…
絢辻「───あ、れ……?」ぐら…
絢辻「なんだろ…急に目眩が───」ドタリ
~~~~~
とある帰宅路
「───薫ッ!」
「………」すた…
田中「はぁっ……はぁっ…!」
薫「……なに、恵子」
田中「なにっ……じゃないよっ…! な、なんなのあれっ…!?」
薫「……なにもないでしょ、そのまんまの意味じゃない」
田中「っ~~~…! ど、どうしてあんなこと言えるの…!? そんなのっ…!」
薫「……アタシらしくない、って言いたいの」
田中「っ…そ、そうだよ! あんな酷いことっ…!
それに、薫が言えばクラスのみんながどんなことになるかって自分でもわかってるでしょっ…!?」
薫「……さぁ?」
田中「ッ!? ちょっと…薫!?」
ぐいっ
薫「………」
田中「──え……?」
薫「……見ないでよ、今、最高に不細工だから」
田中「あ……うん…」
薫「…別に、泣いてるわけじゃないから」
田中「……うん」
薫「……どうしようもなく、なってるだけだから」
田中「………」
薫「…ちょっと、公園寄っていい」
田中「え? いいよ…薫の好きな所、行っていいから」
薫「…てんきゅ、恵子」
~~~~
薫「……なんかさ、思うワケよ」
田中「ん…」
薫「今のアタシって、やばいぐらいに……」
薫「……屑な女じゃない?」
田中「…そうだね」
薫「ぐっ……ドストレート、恵子ぉ…」
田中「だって、そうじゃない」
薫「……ん、そうよね」
田中「……でもさ」
薫「なによ」
田中「…カッコいいよ、そういう所」
薫「………」
田中「…うん? えっと…なんか変なこと、いったかな?」
薫「…いやほんっと、恵子は大物だわ…」
田中「え、ええ!? そ、そうかな~?」
薫「ホントホント、今のアタシをカッコいいとか言えるの…アンタぐらいよ?」
田中「…だね」
薫「恵子のアタシ好きには困ったものね~」
田中「…ん、だって信用してるから」
薫「……」
田中「…薫のこと、ちゃんと信用してるから私」
薫「…信用って、そんなの」
田中「大丈夫、私だけでも……薫の味方でいるから」
薫「………」
田中「…平気だもん、例え…ね?
みんなから薫が嫌われても…ないがしろにされても」
田中「───私だけは、ずっと薫の傍から居なくならないよ」
薫「…ばか恵子」
田中「えへへ~、ごめんね馬鹿な私で」
薫「……。恵子……あのさ」
薫「───……どう、見えるのかしら」
田中「うん…?」
薫「今のアタシは……アイツにとって、どう見えるのかしらね……」
田中「……」
薫「……やっぱ、嫌われちゃうかな。アタシ」
田中「………」
薫「なんでこんなことをした、って…お前みたいな女がって…」
薫「……アイツ、アタシのことを怒るでしょうね、きっと…」
田中「……」
薫「だってアイツは……もう…アタシの知ってる、アイツじゃないから…」
田中「……薫」
薫「………」
田中「───弱っちゃダメだよ、薫!」
薫「え…?」
田中「ダメだよ! だって…だって薫が決めたことでしょっ?
だったら最後まで、きちんと、やりとげなきゃ薫じゃないよ…!」
薫「恵子……」
田中「わ、私は! …そうやって頑張る薫は…っ! 凄いと思う! 絶対に簡単にまねなんて出来ないよ!」
田中「だけど、だけど…! やるって決めたのなら、最後まで突き通してよっ!」
薫「……ちょっと、なにそれアンタ…いじめを頑張れとか、無いでしょそれ」
田中「ふぁっ…!? そ、そうだよねっ…!? わ、わたしったらなんてことを…っ」
薫「………」くす
薫「───でも、そうね確かに恵子の言う通り……」すくっ…
薫「ここまでやったのなら、後悔しようがなにしようが……最後の最後まで!」
薫「チリになって燃え尽きるのが! アタシって女よね!」
田中「う、うん! そうだよ!」
薫「あー……ほんと、嫌な立ち位置を選んだものね、アタシも」
薫「……だけど」
薫「絶対に譲れないものが、ここにある限りアタシは揺るがない」ぎゅっ…
薫「覚悟しなさい、絢辻詞……アタシの覚悟の炎は───」
薫「───絶対に、アンタを焼き尽くしてやるから」
薫「その為になら、どんな屑にでも嫌な女にも………」
薫「……なって、やるから」
~~~~~~
絢辻「…あれ、ここは?」
絢辻「……えっと、わたしは何をして…あれ?」
絢辻「…周りが真っ白……これ、夢?」
絢辻「そっか、よくわからないけれど……わたし、夢をみてるんだ」
絢辻「……最近、ちゃんと寝てなかったし…」
「──大丈夫? 絢辻さん」
絢辻「……え?」
「こんな所で寝てたら、風邪をひいちゃうよ」
絢辻「…この声、誰だっけ…」
「あはは、忘れないでよ……落ち込んじゃうからさ…」
絢辻「……嘘よ、憶えてるから」
「そう? よかった~! もう、本当に絢辻さんはー!」
絢辻「…くす、貴方が悪いんだから」
「え…?」
絢辻「わたしを…いつも放っておくから、こうなっちゃうんだから」
「…うん、それは謝るよ。ごめんね」
絢辻「そうよ、貴方はいつもわたしに隠し事ばっかりで…」
「うん…うん」
絢辻「わたしは、それに悩まれっぱなしなんだから…気を付けてよね、本当に」
「…そうだね、今度から気を付けるよ」
絢辻「…本当に? 気を付けてくれる?」
「うん、正直にいうから! ……だから絢辻さんも正直になってね?」
絢辻「え…? それはどういう───」
保健室
絢辻「───……」
絢辻「…あれ、ここは…?」
高橋「すぴー…すぴー…」
絢辻「………」
絢辻(シーツ…そしてベット、保健室か…)
絢辻「…なんだか頭がボーって……」
絢辻「……でも、なんだか…手があったかい……ような」
絢辻「………」
絢辻「───ああっ!? 今、何時!?」がたっ
高橋「ふえぇっ!?」びくぅ!
絢辻「…外が暗い、時計は!? ……七時半…!?」
絢辻「急がないと…! これじゃあ間に合わない! あ、上履きは…もう履いてる時間も無いわよ!」だっ
高橋「ふぇ…? あ、あれ…? 私どうしてここに…あ、そうそう! 絢辻さんが倒れて…それを彼が───」
高橋「──って、絢辻さん!? 何処に行くの!?」
教室
絢辻「はぁっ…はぁっ…まだ何も手を付けてない、これからどうする。何が出来る?」
絢辻「………………」
絢辻「───予定の配置、そして資金の確認。当日にやれる強度の問題…」
絢辻「今日だと何もできない…だから明日は最良の的確さで、動けるよう準備を整えておかないと…っ」
高橋「──あ、絢辻さんっ…見つけた…! はぁっ…はぁっ…」
絢辻「先生! クラスでの資金は今、貰えますか?」
高橋「えっ? あ、うん…それを今日は渡そうとして……」
絢辻「見せてください!」
高橋「は、はいっ…」すっ
絢辻「っ……はぁ、良かった…予定通りの金額。これならいけるわ…」
高橋「あ、絢辻さん…? ど、どうしてそんなにも焦ってるの…?」
絢辻「…すみません、私これから行かないといけない場所があるので、これで」たっ
高橋「え、ちょ、絢辻さんダメよ! 安静に…!」
絢辻「してられません! では、これで先生っ…」たったった…
高橋「あ、絢辻さんっ……?」
高橋「………」
高橋「…まだ、創設祭は先なのね凄い覇気ね」
高橋「あ、そういえば……」
高橋「……彼のことを言えば良かったかしら」
高橋「………」
高橋「…いえ、それは…まだ」
高橋「……クラス皆に伝えないとね、きちんと」
~~~~~~~
たったったった!
絢辻「はぁっ…はぁっ……!」
絢辻「んくっ……やって、やってやるわよ…! 一人でも…!」
絢辻「絶対に成功させてっ…あげるんだから…っ!」
絢辻「───楽しみにしてなさい、橘くんっ…!」
~~~~~~
「かえろっかー」
「あいよ~」
絢辻「……」ビリ…ビィィイ!
絢辻「…よし、こんな感じかな」
「お前部活は?」
「創設祭準備でおやすみー」
絢辻「ん…っしょ!」
絢辻「はぁっ…はぁっ…ふぅ…」
「帰りどこによる?」
「ファミレスでいいんじゃない?」
絢辻「次は…えーと、これね」
薫「…行くわよ、恵子」
田中「…うん」
絢辻「ん~……よし、行けた!」
薫「………」
田中「…薫」
薫「…わかってるわよ」
田中「……」
すたすた…
~~~~~~~
絢辻「───はぁっ……っふー…」
絢辻「できることは、やったけど……」
絢辻「……やっぱり、まだまだ先ねこれじゃあ」
絢辻「…………」
絢辻「…急がないと」すっ
ぱさ…
絢辻「あっ……計画図が──」
ばさぁー
絢辻「ああ、もうっ……私ってば本当に馬鹿、なにやってるのよもう~…」すっ…
ひょい…ひょい
絢辻「…ん」
ひょい
絢辻「……これって、ああ。配役を決める資料の」
絢辻「………」じっ…
絢辻「『ドラキュラ役・橘純一』……ふふ、気にいってくれるかしらね」
絢辻「きっと『ああ、女の子の血を吸えるなんて…!』とか言いだしそうよね…くすっ」
絢辻「……だから、頑張んなきゃ私」
絢辻「彼が……笑って創設祭を迎えられるよう、私がやらなくちゃ」
絢辻「……うん! 行くわよ私!」パンパン!
~~~~~
絢辻「───……ん」
絢辻「あ、もうこんな時間……そろそろやめないと、高橋先生が見に来る…」
絢辻「っ……」くら…
絢辻「───っふぅー……ダメね、こんなんじゃ。体力方も考えたいけど…」
絢辻(ふらつく程度なら、まだ行ける…平気よ、こんなの)ぐっ
絢辻「…さて、もうちょっとやっておきたいけど…ここまでね」
絢辻「……帰る準備っと」
すたすた…
絢辻「………」ちら
絢辻(……橘くん、まだ起きてるかしら)
絢辻「…ちょっとだけ、顔を見にいってあげましょう、仕方ないから」
絢辻「変に風邪が長引いてるみたいだから、しょうがなくね、しょうがなくよ」すたすた…
~~~~~
絢辻「……」ぴんぽーん
絢辻「……?」ぴんぽーん
絢辻「…居ないのかしら、このな時間帯だけど」
絢辻「………」
絢辻「…あんまり押すのもあれよね、うん」
がちゃ
絢辻「…ん?」
「…えっと、絢辻さん?」
絢辻「…この声、橘くん?」
純一「うん、そうだよ。やっぱり絢辻さんだ…こんばんわ」
絢辻「こ、こんばんわ……えっと、ご家族は?」
純一「え? あ、ああ…今はちょっと出かけてるかな」
絢辻「そおなの? じゃあ今は家に一人だけ?」
純一「うん、そうだね……けほっごほっ」
絢辻「ちょ…橘くん? 大丈夫…っ?」
純一「げほっ───ああ、うんっ……大丈夫、ごめんね心配掛けて…」
絢辻「う、うん……まだ良くならないの…?」
純一「…ちょっとね」
絢辻「どうみたって…前よりも酷くなって無いかしら、体調が…」
純一「うーん、ちょっとしたカラ咳きだよ。治る直前に出る奴、だから大丈夫!」
絢辻「…そう、貴方が平気だっていうのなら」
純一「うん! ……えっと、もしかして今日もお見舞いに来てくれたのかな」
絢辻「え? そ、そうよっ…! しかたなくね、仕方なく!」
純一「そっか、それでも嬉しいよ」
絢辻「うん…」もじ…
純一「───せっかくだから、上がってく? 誰もいなくて寂しいんだ」
絢辻「えっ…? でも、橘くんが…」
純一「ううん、僕は大丈夫。絢辻さんが傍にいてくれた方が、良くなりそうな気がするんだ」
絢辻「……ばか」
部屋
絢辻「…お邪魔します」
純一「お邪魔されました、あはは」
絢辻「……」キョロキョロ
純一「ん、どうしたの? なんだか借りてきた猫みたいだね」
絢辻「えっ!? あ、その……なんていうのかしら」
純一「うん?」
絢辻「……なんかこう、部屋の物が…減ってないかしら?」
純一「…そうかな? あ、でもちょっとだけ色々と整理したせいかもね」
絢辻「具合悪い時になにやってるのよ貴方は…」
純一「あはは、ほら勉強してる時って部屋の片づけしたくならない? そんな感じだよ」
絢辻「……病人は大人しく寝てなさい」ぴしっ
純一「あいてっ」
まさかとは思いますが、この「純一」とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか。
もしそうだとすれば、あなた自身が統合失調症であることにほぼ間違いないと思います。
あるいは、「純一」は実在して、しかしここに書かれているような異常な行動は全く取っておらず、すべてはあなたの妄想という可能性も読み取れます。
この場合も、あなた自身が統合失調症であることにほぼ間違いないということになります。
絢辻「もうっ…」
純一「あはは…」
絢辻「…とりあえず、今日は顔が見れてよかった」
純一「うん、僕も絢辻さんの顔が見れて良かったよ」
絢辻「……」
純一「…だって本当のことだし、そう思ったからであって…!」
絢辻「…軽々しくそんなこと言わないの」
絢辻「……照れるじゃない、の…」もじ…
純一「………」じぃー
絢辻「っ…もう! 橘くんの馬鹿!」ぶんぶん
純一「あはは! ごめんごめんなさい絢辻さん…っ」
絢辻「……」ぷいっ
純一「……機嫌直して、お願いだよ」
絢辻「…いやっ」
純一「…絢辻さんはいじっぱりだなぁ。じゃあ、こっちおいで」
絢辻「……」ちら
純一「…来てくれないの? うん?」
絢辻「………」
絢辻「……」ちょこちょこ…
純一「んー……はい、捕まえたー!」
絢辻「……なによ、子供扱いして…っ」
純一「あははー」
絢辻「…もう…っ」ぎゅ…
純一「………」
絢辻「………」
純一「…絢辻さん、今日も髪が良い匂いだね」
絢辻「…ちょっと、橘くん?」
純一「うん?」
絢辻「…そういうのやめて、本当に」
純一「いいじゃないか、だって本当のことだもん」
絢辻「っ……例え、そう思ってたとしても…っ」
純一「僕は好きだよ、絢辻さんの匂い」
絢辻「っ……!」
純一「多分、僕が知っている良い匂いの中で……トップに入るね、これは」
絢辻「……ばか、ばかばか!」ぽかぽか
純一「あはは」
絢辻「ばか…」
純一「…もっとこの匂いに、包まれて居たいな」
絢辻「……」
純一「…いつまでもずっと、ずっとずっと」
純一「僕はこの匂いの中で……僕は、僕は…」
絢辻「……僕は?」
純一「……出来ればそのまま、僕は…」
絢辻「……」
純一「…あはは、なんていうか。良い意味で言うと、往生したいよね!」
絢辻「…やめてよ」
純一「……」
絢辻「……心配するじゃない、そういうの」
純一「……」ぎゅ…
絢辻「……何にも言ってくれないから、だめ、そういうのは」
純一「もう、絢辻さんは心配性だなぁ」
絢辻「………」
純一「…ただの風邪だよ。何にもない、ただの小さな風邪だから」
絢辻「…本当に?」
純一「うん、当たり前じゃないか」
絢辻「一向に…良くなって無いのに? ただの風邪?」
純一「風邪をひいた時期が悪かったせいじゃないかな、だから長引いちゃったんだよ」
絢辻「……普段の貴方はよりも、弱弱しいのに」
純一「それは……」
絢辻「……」
純一「……仕方ない、ことだよ」
絢辻「……」
純一「……平気だよ、僕は」
純一「ちゃーんと学校に戻ってくるから、そして、絢辻さんの所へ戻ってくるよ」
絢辻「……嘘」
純一「僕は嘘をつかない、絶対に」
絢辻「……じゃあ、明日に戻ってきて」
純一「うーん……?」
絢辻「…やっぱりダメじゃない」
純一「明日ってのは…ちょっとなぁ…ごめんね…」
絢辻「……ううん、わたしもごめんなさい。変なこと…言っちゃって」
純一「……寂しい?」
絢辻「え…?」
純一「絢辻さんは、僕が居ないと……僕がいない学校は…」
純一「…寂しいかなって」
絢辻「……そん、なの」
絢辻「…当たり前、じゃない」
純一「そっか、ごめんね…本当にごめん」
絢辻「…早く、戻ってきて。待ってるから、わたし」
純一「うん、うん」
絢辻「…ちゃんと、貴方を…待ってるから」
ぎゅう…
~~~~~~~
絢辻「くぅ……くぅ…」
純一「…寝ちゃった、絢辻さん?」
絢辻「んっ……くぅ……すぅ…」
純一「そっか、寝ちゃったか…」なでなで
純一「……毎日毎日、どうも忙しそうだし」なで…
純一「……ッ───」
純一「ゲホッ…んく、だめっ…だ!」
純一(ここでっ…咳きしちゃ、絢辻さんをさらに心配させちゃう…!)
純一「ッ……ッッ……!」ぐっぐぐ…
純一「──ッ~~~~……っはぁ……ふぅ」
純一「……」ちら
絢辻「すぅ…すぅ…」
純一「……よかった、起きなくて」なで…
純一「っはぁー……時間は、九時ちょうど」
純一「三十分ぐらい、寝かせておこう…かな」
純一「……美也たちも、十時ぐらいだろうし」
絢辻「…すぅ…」
純一「……」
純一「───ねえ、絢辻さん」
純一「僕はまだ、学校にいけそうにないんだ…実は」
純一「だけど、だけどね? 絶対に僕は……必ず絢辻さんの所へ戻ってくるから」
純一「どんなことがあろうとも、もしかして僕が死んで────」
純一「───幽霊になってでも、絶対に戻ってくる」
純一「……多分、君はどうして? って聞くんだろうね」
純一「…そんなの、答えは簡単だよ?」
純一「───好きな女の子の前ぐらい、カッコ付けたいじゃないか」
純一「……」
絢辻「…すぅ…ん…」
純一「今日は、月が綺麗だなぁ……空に一つも雲が無くて、星たちも輝いてる」
純一「……」
純一「絢辻さん……僕は貴方に憧れて、そして好きになった」
純一「だから、だからね。どうかいつまでも……輝いててほしい」
純一「僕は心からそう願ってる、ずっとずっと…」
純一「…これからさき、永遠に」
純一「うーん、っはぁ~」
純一「…そろそろ、起き出そうかな」
純一「のんびりしているのは…もう〝僕の限界だ〟」
純一「───さーて、僕らしく僕ならではのやりかたで……」
純一「カッコ付けに行こうかな」
めしをくう
~~~~
教室
絢辻「次はっ…!」
「…帰ろう」
「うん、そうだね…」
絢辻「んっ…まだそっちが終わって無いから、こっちをまず…きゃっ!?」どたっ
薫「……」
絢辻「あ、ごめんなさい…」
薫「……」すっ…
絢辻「……」パンパン…
絢辻「…よしっ」
~~~~
絢辻「……」うとうと…
絢辻「…はっ!? いけないけない…」ぶんぶん!
~~~~
絢辻「はぁっ…はぁっ…!」
絢辻(──負けない、こんなことでは絶対に私は…!!)
絢辻(──絶対に、創設祭に……間に合わせる…!!)
薫「………」
田中「…頑張るね、絢辻さん」
薫「………」
田中「ほら見てごらん、薫……これ全部絢辻さんが一人でやったんだよ?」
薫「…わかるわよ」
田中「…そうだよね、わかるよね」
薫「……」
田中「…揺らいで無い? 薫の心は、ちゃんと真っ直ぐのまま?」
薫「………」
薫「…アタシは、アタシ。大丈夫よ」くる…
すたすた…
田中「…うん、知ってたよ」すたすた…
~~~~~~
~~~~
~~
~
絢辻「……」ぴんぽーん
「──はーい」がちゃ
絢辻「…こんばんわ」
美也「あ…絢辻、先輩……」
絢辻「ごめんなさいね、また夜分遅くに」
美也「…うん」
絢辻「それで……その、今回もまた橘くんのお見舞いに来たのだけれど───」
美也「───ごめんなさいっ!」
絢辻「っ……え?」
美也「その、えっと…今日は、にぃには……ダメ、なんです」
絢辻「ダメって…え、えっと…どう言う意味なのかしら…?」
美也「………」
絢辻「あ、つまりその…具合がまた悪くなったってコト? しょうがないわね橘くんは…」
美也「……ごめんなさい」
絢辻「っ……どうして、橘さんが謝るの? 貴方は別になにも悪くなんて…」
美也「……」
絢辻「……何かあったわけ、じゃないわよね?」
美也「………」
絢辻「…え、橘…さん? ま、待って…違うわよね? 橘くんに限って…でも、え…?」
美也「…ごめんなさい、絢辻先輩」
美也「今は…その、家族だけで話を……したいんです」
絢辻「家族…だけで…」
美也「……はい、ごめんなさい」
絢辻「あっ……うん、わかったわ…そう、よね…うん…」
美也「……来てくれたことは、にぃにも…感謝してると思います」
絢辻「感謝してるって……あはは、まるでここに居ないみたいな言い方よねそれ…」
美也「………」
絢辻「……いない、の…?」
美也「ひっぐ…」
絢辻「えっ…!? あ、ごめん、なさい…! わたし、えっと…!」
美也「ぐすっ……い、いいんです。また、きちんと…お話、しましょうね…っ」
絢辻「あ……うん…わかった、わ」
美也「それじゃあ……ごめんなさい…」
ぎい……ばたん
絢辻「…………」
絢辻「…橘、くん? なにそれ……嘘でしょ?」
絢辻「……なんなの…?」
絢辻「どうして、家に居ないの…?」
とある道
絢辻「………」すた…すたすた…
絢辻「………」すた…
ぽつ…
絢辻「あ………」
ぽつぽつ……ざぁああああ…
絢辻「………」
絢辻「…やっぱり、隠してたんじゃない」
絢辻「わたしに、あたしに、私にっ……隠してたんじゃないっ」
ざああああああ……
絢辻「なによっ! 隠し事しないって……言ったくせに…!」
絢辻「わたしの所へっ…ちゃんと、ちゃんと戻ってくるって…!」
絢辻「いった…くせ、にぃい……っ」
ざああああああああ………
絢辻「…………」
絢辻(…あの様子だと、妹さんは私が色々と知ってると勘違いしてたんでしょうね)
絢辻(だから何も言わなかった。むしろ口に出さないことが良いことだと思ってたのね)
絢辻「…わたしはなにも、聞かされてないのに」
ざああああああー……
絢辻「…彼から一言も、何もウチ開けられてないのに」
絢辻「彼のことを、大切に思う時間さえ……無かったのに」
絢辻「貴方はどうして……そう身勝手なのよ」
ざあああああー………
絢辻「今までの私の頑張りは、なんだったの」
絢辻「それなら、全てを放って貴方の傍にいた方が良かった」
絢辻「……どうして、居ないのよ。わたしの傍に」
絢辻「…貴方は一体、何処に居るの?」
絢辻「わたしは……今、ここに居るのに」
絢辻「……橘くん、橘くん……」
すた……すたすたすた……すた…
絢辻「…橘くん、傍にいてよぉ……」
とぼ……とぼ…
絢辻「たち、ばなっ……くぅんっ…」
とぼ…
ざぁあああああああああー……
~~~~~~~
創設祭当日
「……嘘、だろ」
絢辻「…遅かったわね」
クラス一同『っ……』
絢辻「出来たわよ」
「…出来たわよって、本当に…?」
「マジかよ…」
「全部、全部一人で……?」
絢辻「…貴方達が証明者じゃない」
「っ……だけど、本当に出来るなんて…!」
「……本当にヤバいな…」
「こりゃすげぇ…」
絢辻「………」
絢辻「───これで、十分かしら」
薫「………」
絢辻「やったわ、全て。私が計画したことを全部全部───」
絢辻「───百パーセント、ちゃんと現実にしたわ」
薫「…全部やったの?」
絢辻「ええ、もちろん」
薫「あの分厚い図案の中身が全部?」
絢辻「不足は無い、全てをやりきってる」
薫「……馬鹿なの?」
絢辻「そうね、だけど…」
絢辻「…貴方達がやらなかったことを、私はやってのけた」
絢辻「ただただ、それだけよ」
薫「………」
絢辻「…みんな、このお化け屋敷でやることはこの紙に書いてあるから」
クラス一同「……」
絢辻「一人ひとり、名前のを確認して各自持ち場についてください。
ですが……この文面に言う通りに動く必要は無いと思ってる」
「…どういうこと?」
絢辻「…好きにすればいいってことよ」
「あ、うん……」
絢辻「それで……約束は守ってもらうわよ」
薫「……ええ、もちろん。守るわよ」
絢辻「絶対に、創設祭を成功させること」
薫「当たり前じゃない」
絢辻「………」
薫「…なによ、まだ何か言い足りないことがあるワケ?」
絢辻「……橘くん」
薫「っ……純一がどうかしたの」
絢辻「…今日、来てないけど」
薫「…風邪でしょ、高橋先生もそういってたじゃない」
絢辻「……。そう、風邪ね」
薫「っ……なに、それ。アンタなにか純一のこと知ってんの…?」
絢辻「……知らない、わたしは」
薫「え…?」
絢辻「知らないって…言ってるでしょッ!」
薫「っ……」
絢辻「あんな人っ…わたしは知らない! なにもかも、なにもかも秘密にするあの人なんてッ…!」
絢辻「例え今頃呑気に歌種でもしてるんじゃない!? だからッ…わたし、私なんてっ…彼にとって必要ではなかったのよっ!!」
「…え、なに?」
「どうしたの…?」
「わからん、どういうこと…?」
「橘がどうしたって…?」
薫「…絢辻、さん…? アンタは何を知ってんの…っ?」
絢辻「………………」
薫「お、教えなさいよっ…! アイツになにがあったっていうの…ッ?!」
絢辻「……じゃない」ぼそっ
薫「え…?」
絢辻「…死んだんじゃないの、彼」
薫「……死ん、だ?」
薫「あ、あははっ…ちょっと待ちなさいよ、冗談キツイって言うか、へたくそっていうか…なにそれ」
絢辻「……可哀そうに」
薫「っ……」
絢辻「──貴方もまた、なんにも知らされてないのね。可哀そうに」
薫「……───」バン!
田中「薫っ!」
薫「…どういうことよソレ、ちゃんと答えなさい!」
絢辻「そのままの意味よ」
薫「ぜんっぜんわっかんない! 言葉にして喋りなさいよ!」
絢辻「……。じゃあ橘くんがただの風邪なら、どうしてここまで休んでるの」
薫「ッ…それは、なにかしらの理由が…!」
絢辻「そう何かしらの理由」
薫「……風邪じゃなかったとでも、言うの?」
絢辻「彼の状態は、日に日に悪くなってた」
薫「なんっ……」
絢辻「あたしはそれがわかってたし、だけど敢えて何も聞かなかった。
彼がわたしに何も言わなかったから、その程度の問題と私は区切りを付けていた」
薫「……」
絢辻「そして昨日、彼は家に居なかった」
薫「…家に、居ないって…」
絢辻「…そして、彼を除いた家族全員が家にいたのよ」
薫「……なにそれ、風邪ひいてるのならどうして…」
絢辻「…入院の可能性、または」
薫「っ……やめて」
絢辻「彼がなにかしら、危険な状態であることが───」
薫「──やめなさいよっ!」
絢辻「………」
薫「やめ、てよ……そんな不安になること言うの、やめて…!」
絢辻「…知らないわよ、そんなこと」
薫「っ……アンタはっ…! それでいいのかもしれないけど! アタシはッ!」
絢辻「ッ…それでいいです、って…ッ!? ふざけないでよっ! 貴方にわたしの何が分かるっていうのよッ!!」
田中「ちょっと…二人とも…!」
絢辻「貴方になにがわかるっていうのよッ…! わたしのことを、一切知らないくせにっ…!」
薫「アンタだってッ…! なんにも、何にもッ! アイツのことを分かって無いクセにッ!」
梅原「ちょ、お前ら止めるぞあの二人…!」
「え、お、おう…」
絢辻「ッ……どういう、ことよ!」
薫「アイツがッ…純一がどれだけあんたのことでっ悩んでたかわかってんのかってことよッ!」
薫「アンタのことずっとずっとっ…アイツは悩んでたッ!
馬鹿みたいに、どうしたらいいのかって、他人のことなのに…真面目にアホみたいにずっとよ!?」
絢辻「ッ……」
薫「だけど、それなのに! アンタはそんなアイツにっ……なんて、なんで…あんなことを思えるのよッ…!」
絢辻「……」
薫「アンタは最低な奴よッ! そうやって人の心を騙してッ…!
なにもかもわかったようにしてるくせに、全然っわかってない! なによっ! 全部理解しておきなさいよッ!」
薫「アンタは全くッ…凄くなんて無い! やれる女でも無く、出来る女でもないッ!」
薫「出来そこないでっ…人の気持ちを履かれなくてッ……馬鹿な、女じゃないッ…!」
絢辻「………」
薫「アンタみたいな女をっ…好きになった奴が、可哀そうじゃないのっ…!」
薫「アンタのそれはっ…! 優しさなんかじゃないわよッ!
ただの自意識過剰でっ…クソみたいな自尊心の塊じゃないのよっ…!」
薫「そんなものがあるからッ…アイツはずっと悩みっぱなしだったんでしょ!?
だったそんなの…そんなの、アタシがかえてやるわよ! アンタの性格を!!」
絢辻「……」
薫「なにもかもっ……全部、全部このアタシが…全部っ…!」
薫「…なのに、なんなのよっ……馬鹿、みたい…やめてよ…」
薫「…頑張る勇気を無くすようなこと、言わないでよ……」
薫「……いや、よ…純一が死んだとか…」
田中「………」
梅原「……」
クラス一同「……」
薫「…ふざけないでよ……そんなこと、アタシ…絶対に…絶対に…」
絢辻「…身勝手ね、棚町さん」
薫「……」
絢辻「貴方は勝手にそうやって、自分自身が正しいことをしてると思えれば」
絢辻「──人に対して傲慢に出来ると、勘違いしてる」
薫「…知ってるわよ、そんなこと……」
絢辻「…だけど、私もそう」
薫「……」
絢辻「私も自分が正しいんだって思えれば、なんだって出来ると思ってる」
薫「………」
絢辻「貴方は気付いてたのね、私と…自分の考えが似てることを」
絢辻「…だから棚町さん、貴方は私に今まで強く出てこれた」
絢辻「───そう簡単に折れる人間ではないと、わかってたから」
薫「………」
絢辻「…大した演技力ね、惚れちゃいそうだわ」
薫「……違う」
絢辻「…いいわよ、何も言わなくて」
薫「違う、わよ……」
絢辻「…そう、じゃあそういうことにしておくわ」
すっ…
絢辻「……もういいわよ、全部わかったから」
薫「………」
絢辻「私は最低な奴、陰でこそこそ人に対して文句や愚痴、はたまた弱点を伺う猫かぶり」
絢辻「…もうわかってるから、そんな大根芝居しなくてもいいわ」
薫「………」
絢辻「…もういいのよ、全部」
絢辻「いいんだから、終わったの。わたしの全てが、頑張らなきゃいけないことが……」
絢辻「…無いんだから、もう」
薫「………」
絢辻「…みんな」くる
絢辻「…ごめんね、こんな空気にしてしまって。だけど…みんなには創設祭を頑張ってほしいと思ってる」
絢辻「こんな物でよかったら……是非、創設祭を楽しんでください」ぺこ
クラス一同「……」
絢辻「……じゃあ、これで」くる…
薫「……」
田中「……」
梅原「……」
クラス一同「……」
絢辻「……」すたすた…
絢辻「……ぐすっ…っはー……」すた…
絢辻「………」すたすた…
絢辻「……橘くん、頑張ったよわたし」ぼそ…
絢辻「なにもかも、全部終わらせたよ……全部、全部だよ」
絢辻「……なのに、貴方は…」
絢辻「…どうして、今、わたしの傍にいてくれてないの…」
絢辻「……どうして、どうしてよ……!」
廊下
がやがや…がやがや…
「おーい、そっちはどうだ?」
「…看板が曲がってるよ、もっと右」
「え、うそだろ? まじかよー」
絢辻「……どうして、いないのよ」
絢辻「……わたし、これからどうしたら…」
「お皿が足りないよー!」
「あ、こっちにありましたよ? どうぞどうぞ」
「あ、ありがとう! へ? なにかのコスプレですか…?」
絢辻「もう、わかんないわよっ……!」すた…
絢辻「わたしは…これから、なにを頑張れば…っ」
絢辻「………」
絢辻「……ん?」
絢辻「………」
絢辻「………」くる
絢辻「……?」
「へーそうなんですかー!」
「ええ、実はねこれ手造りでして…凄いでしょう?」キリ
「手造り!? なんかマントもかっこよくて凄いです!」
絢辻「………」
「あはは、いや~…でしょ? いやー作った人が凄いからさ!」
「凄いですね~、それってやっぱりあれでしょう?」
「ええ、そうですよ!」
「───吸血鬼、ヴァンパイヤです!」
「やっぱり!」
「あはは、がおー! ……所で可愛いお嬢さん、血を吸ってもいいですか?」
「え、それはちょっと…?」
「あ、いえいえ! 本当に吸うわけじゃなくて! …ちょっと首を噛みたいだけなんです」
「え…?」
「うーん、じゃあ産毛を! 産毛を噛むのは!? ダメ…?」
絢辻「………」すたすた…
「え、えっとぉー…」
「ダメかー…吸血鬼的に、けっこう遠慮したと思うんだけどなぁ~」
絢辻「…そこの吸血鬼さん」
「んっ!? この可愛らしい声は──……なにようですかお嬢さ…………ん~~~、ん~~! ぴゅ~♪」
絢辻「………」
「ぴゅ~♪ …んむ、どうしたのかね可憐なお嬢さん?」
絢辻「それ、素敵な衣装ですね」
「だ、だろう!? こ、これはだなぁ!」
絢辻「ええ、どうやら…私たちのクラスで使う…衣装に似ている気が…?」
「ま、まさか! そんなわけがない! これは私の一張羅出会ってでね~、ごほん!」
絢辻「まあ、そうなんですか~」
「そうなのだよ、うむ!」
絢辻「………」にこにこ
「……」
絢辻「…で?」
「…謝れば、許してもらえる感じですか?」
絢辻「無理です」
「…土下座という選択肢は…」
絢辻「ダメです」
「……すべからく、逃げ道を閉ざされていくだけとなる」
絢辻「…ところで吸血鬼さん」
「いや、絢辻さん…? もう分かってるんだよね…? そうだよね…?」
絢辻「吸血鬼さん」
「……なんでしょうか」
絢辻「具合は?」
「……ほぼ治りました」
絢辻「本当の病名は?」
「……肺に色々、と」
絢辻「へえ、なのに…風邪、と?」
「………シンパイカケタクナカッタンデス」
絢辻「心配、今してますけど?」
「……面目ない限りです!」
絢辻「…………」
「……えっと、絢辻さん」
純一「…本当にごめんなさい」
絢辻「……」
純一「僕は……なんていうか、その…」
絢辻「……」ふら…
純一「っ……絢辻さんっ!?」
ぎゅうっ
絢辻「あ……」
純一「ちょ、ちょっと…! 急に倒れるとかどうしたっていうのっ…!?」
絢辻「ごめん、なさい……なんだか安心したら急に脚の…力が…」
純一「だ、大丈夫? 飲み物とかいる…? トマトジュースしかないけど…」
絢辻「…ううん、いいの…大丈夫、平気だから…」
純一「そ、そっか…よかった」
絢辻「───全然、良くないわよ! ばか!」ぎゅっ!
純一「おおっ…!?」
絢辻「ばかばかばか! 橘くんのばかっ…! 心配、心配すっごくしたんだからっ…!」
純一「う、うんっ…!」
絢辻「全然橘くんのこと、わかんなくてっ…! わたし! わたしっ…ふぇええっ…」
純一「えー!? ちょ、ちょっと泣くのは…!」
絢辻「ばかばかっ…」
純一「う、うーんと……」ポリポリ…
「ひゅ~ひゅ~」
「そこの吸血鬼! 女の子襲うなよ!」
「あははは!」
純一「あ、あははっ…! すいません、ちょっと可愛すぎて困ってます!」
絢辻「………」ぎゅうっ…
純一「…絢辻さん、とりあえずね」
絢辻「……」
純一「僕はちゃんと、ここに戻ってきたよ」
絢辻「…遅いわよ…」
純一「でも、約束は守った。ちゃーんと、絢辻さんの傍に居る」
絢辻「…うん」
純一「…色々と、心配掛けたよね。うん、わかってるんだ」
絢辻「…泣いちゃったわよ、わたし一人で」
純一「本当に? それは困った……なんで傍に僕はいなかったんだろうね、その時の僕を叱ってやりたいよ!」
絢辻「…いいの、怒らないで上げて」
純一「え、いいの?」
絢辻「うん、だって…」
絢辻「…今の貴方が、一番だから」
絢辻「その時の貴方も、そして今の貴方も……好きな橘君だから」
絢辻「…皆悪い子だけど、みんな好きな貴方だから」
絢辻「怒らないで、あげて」
純一「ほ、ほう……僕はよくわからないんだけど、とにかく僕のこと…好き?」
絢辻「……大好き」
純一「───よし、来た!」ぐいっ
絢辻「きゃあっ!?」
純一「…任せてよ、後は」
絢辻「えっ…なに!? どうしてお姫様抱っことか…! やめなさいよ! は、恥ずかしいから…!」
純一「今さらだよそんな事! もう恥ずかしいこといっぱいやってるよ既に!」
絢辻「う、うん……」もじもじ
純一「…と、とにかく! えーと、そうそう! 後はもう全部、僕に任せていいよ」
絢辻「…任せるって?」
純一「今起こってる、クラスでの問題だよ」
絢辻「…え?」
純一「……大丈夫、全部どうにかしてあげる」
絢辻「いや、でも…というかどうしてそれを知ってるの…?」
純一「当たり前じゃないか! だって僕だよ?」
純一「──貴方が好きだと言ってくれた僕に、絢辻さんのことで知らないことなんて……」
純一「…一つもないってことさ! 僕にはね!」
~~~~~~
田中「え、えっとー……」
純一「おはよう田中さん!」
「た、橘ぁっ!?」
純一「よう、マサ! そしてケン!」
「お、おう……お前、すげーな…」
純一「ん、どういうこと?
「その格好もそうだけどよ……」
絢辻「っ………」かぁあああ…
「……その抱えてる人は、なんだ」
純一「僕の大切な人だよ、わかるだろ…? んっふふ」
「おうわかった、一発殴らせろ」
純一「ええっ!?」
絢辻「た、橘くんっ…! 橘くん!」
純一「いたッ!? あ、お前ッ…! ん、どうしたの?」
絢辻「ど、どうしてっ…わたしお姫様抱っこのままなのよっ…!?」
純一「それは、うん…それなりの理由があるかな」
純一「……っと、言ってればお出ましだ」
「……ずいぶんと、アタシが想像してるより元気じゃない」
純一「うん? 僕がいつ、元気がなさそうなアピールをお前にしたかな」
薫「…よーくわかってるわね、アタシがアピールが嫌いなコト」
純一「当たり前だよ、そんなこと知ってて当然だ。付き合い長いしな」
薫「…んで?」
純一「ん?」
薫「アンタの空気でだいたいわかるわよ……このアタシを説得しに来たワケ?」
純一「………」
薫「……変わらないわよ、アタシの覚悟は揺るがない」
薫「例え、アンタに嫌われても絶対に」
純一「…絢辻さんを変えようとするのか、お前は」
薫「…へえ、知ってるんだ。色々と」
純一「当たり前だろ」
薫「…まあ、思いつく人はいるけど」ちら
梅原「……」ぐっ!
純一「……」ぐっ!
絢辻「……梅原くん…」
薫「陰でこそこそ……してたのは知ってたし、まぁ予想してた展開ね」
純一「ほう、そうなのか。見くびってたよ、お前ってそんなに頭良かったか?」
薫「…人の為なら、なんであれ」
純一「…かっこいい女だよ、相変らずな」
薫「褒めてもダメよ、純一」
純一「わかってるよ、まあ焦るなって薫」
純一「……順々に、お前を懐柔してやるから、期待しておけ」
薫「…まあとりあえず、期待しておくわ」
純一「…おう、それじゃあ行くぞ?」
純一「───さっき、僕はお前を順々に…懐柔してやると言ったけど」
純一「ありゃ嘘だ、すまん!」
薫「は…?」
絢辻「え…?」
純一「一発で終わらせる、一言でお前を納得させてやるよ」
薫「…なに、言う気よアンタ…っ」
純一「なーに、今の僕だからこそ言えることだ」
純一「…それに、僕の責任だからこそ言えるんだ」
薫「……そう、じゃあ言ってみなさいよ!」
純一「おう! じゃあ言うぞ!」
純一「───ごめん、お前のこと好きになり掛けてたけど、やっぱ絢辻さんのことが好きだ!」
薫「なっ……!」
絢辻「えっ……?」
田中「ふえっ……!?」
梅原「……あーあ」
クラス一同『……え?』
純一「…うむ、口にすると清々しい位に最低だな僕…」
薫「ちょ、ちょっと待ちなさいっ……アンタ~ッ…」
純一「ん、なんだ薫」
薫「どぉ~してッ…それがアタシの懐柔させるっ…一言なワケ?」
純一「…そのまんまの意味じゃないか、わからなかった?」
薫「ッ……分からなかったどころじゃないわよ!」
純一「ストレートだったろ、期待させて悪かった」
薫「き、期待って…!」
純一「───そんな男なんだよ、僕は。薫」
純一「最低なんだ、女の子を期待させて…そうやって中に入り込む」
純一「そしてその子がどんな風に動いてくれるかを、僕は考えながら付き合いを進める」
純一「……そして今のお前だ、薫」
薫「………」
純一「実に分かりやすいよな、お前って。動かし易かったよ、本当に」
純一「…結局は僕の為に動いた結果だろ? 今回のことって」
薫「………」
純一「ありがとう、素直にお礼を言うよ。そしてごめん、やっぱ好きになれなかった」
純一「騒動を色々と起こしたみたいだけど、ダメだったな。僕はお前を好きになれなかった」
薫「……それ、アンタの本音?」
純一「うん」
薫「だから、アタシが悪くないって……そう言う風に言ってるわけ?」
純一「それは言いすぎだよ、そこまで考えてないし」
純一「…そこまで考える僕に見えるか? そもそも?」
薫「……」
純一「それに……今回の発端である、手帳の件」
絢辻「……」
純一「───ねえ、絢辻さん……もうしっかりしなよ?」
絢辻「…どういう意味?」
純一「そのまんまの意味じゃないか、もうちょっとそういうのは上手く管理しなきゃいけないって」
純一「いつも口を酸っぱくしていってるじゃないか、僕が」
絢辻「……橘くん、それ…」
純一「ん? だからそういってるじゃないか───」
純一「───僕が流した情報は、キチンと管理しなきゃって」
「僕が流したって…」
「…え、橘が?」
「全部、アイツ…?」
純一「そうだよー? あっはは、なになに? みんなもしかして…本気で絢辻さん本人が書いたとか思ってたの?」
純一「…じゃあおかしいと思わない? そんなに大切なものなのなら、どうして教室なんかで落とすのかな?」
「それは……」
「……確かに、見られたくないものをそう簡単に落とすわけ…」
純一「その通り、実にその通りだよ皆!」
純一「…あれはね? 僕が絢辻さんを使って、みんなの情報を書きうつすように言ったものなんだよね」
クラス一同「っ…」
純一「そもそもの手帳の持ち主は……この僕、橘純一の所有物なんだ」
純一「もう一度言うよ?」
純一「───あれは、僕の手帳であり、僕の所有物なんだ」
「なん、で……そんなこと、だったら委員長はどうして何も言わなかったの!?」
純一「言わせると思う?」
「っ…」
純一「あはは、待ってよ。ちょっと待って……言えるわけないよね?
だってそれは、絢辻さんが…僕に嫌われる要因じゃないか」
絢辻「たち──むぐっ」
純一「そんなこと彼女が…絢辻さんが出来るわけないし、僕もさせるわけがない」
「……脅してるって、こと」
純一「脅してるって……まさかまさか、そんなわけ無いよ」
純一「───好きだからに決まってるじゃないか? ね?」
「……それ、最低なことだよ…っ!」
純一「…他人にとやかく言われる問題じゃないって思うんだけど、違うかな」
「そ、それでも…!」
純一「……僕のこの交際の仕方に、色々と思う所があるみたいだけど」
純一「まあ手帳の件もばれてるし、仕方ないよね…絢辻さん?」
絢辻「むぐー!?」
純一「…うんうん、そうだよね」
純一「───あのさ、皆に言うけど…だから結局どうしたの、僕には関係ないよ」
純一「僕は、悪くない」
クラス一同「なっ……」
純一「例え女の子を狂わせようが」
薫「……」
純一「例え好きな女の子を好き勝手しようが」
純一「僕は悪くないし、僕の責任でもない」
純一「…そうなったから、しかたないことなんだよ」
クラス一同「………」
純一「…わかったかな? よし、それじゃあ終わり」
薫「終わりじゃないわよ、純一」
純一「……ん、なんだよ薫」
薫「…皆の顔、見てみなさい」
純一「…なんだよ、見なくたってわかるよそれぐらい」
薫「違う、分かって無いわよ。今のアンタは」
純一「………」
絢辻「ぷはっ…た、橘くん…っ」
純一「………」
薫「……ねえ、アンタ。もしかしてって思うんだけど…」
薫「───今まで言い切ったコト、全部信用されてると思ってる?」
あとちょいか…(,,゚Д゚) ガンガレ!
完結しないと寝れん
ほ
紳士
死んで
なかった
純一「僕が好きなのは梅原だぁー!」
梅原「大将~!」
ぉ
昼になればきっと
の
おきたでござる
一時に書く
何でID変わってんの
モバイルだから六時間で変わっちまうんだ
ちょいうんこ
純一「…え?」
梅原「…大将、そりゃないぜ」
マサ「なあ?」
ケン「…おう」
田中「うん、あのね橘くん……ひとついっていいかな?」
純一「な、なにかな?」
クラス一同『庇ってるの、分かりやす過ぎ』
純一「……」
「橘くん…無いわぁw」
「…情報流したって、そんなこと橘くんが出来ると思う?」
「無理っしょ?」
「無理だな」
「女の子を操るなんて、出来てたらお宝本みねぇだろ橘!」
「だろだろ!」
きたか…!!
( ゚д゚ ) ガタッ
.r ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
\/ /
純一「お、おう…」
絢辻「…橘くん、やっぱり馬鹿ね」
純一「あ、絢辻さんまで……いやいや! ちょっと待ってよ!」
薫「───無駄よ、純一」
純一「んぐっ…どうしてだよ」
薫「アンタの言った言葉は全部、本心に聞こえそうだったけどさ」
薫「……それでも、アンタの絢辻さんに対してベタ惚れなのは皆が知ってることよ」
純一「………」
薫「アンタが何か言いだした時は…
…皆は絶対に、アンタが庇ってると思うはずだから」
薫「まあ……それにアタシも入れてくれたことは、ちょっと、嬉しかったけど」
薫「でも、欲張り過ぎよ。完全に疑われたまんまじゃないの」
起きててヽ(;▽;)ノよかった!
純一「……そんなつもりなんて、僕は」
絢辻「…橘くん」
純一「っ…絢辻、さん」
絢辻「…ありがとう、いいのよ」
純一「………」
絢辻「なんか、その……また無茶してるみたいだけど、
わたしはそんなの嬉しくなんかないわよ」
純一「………」
絢辻「…いいの、これはわたしの問題だから。橘くんが背負う必要なんて、これっぽっちもない」
純一「…背負うなんて、可哀そうになること言わないでよ」
絢辻「……?」
薫「…それで、アンタの説得はこれでオシマイ?」
純一「………」
薫「じゃあ一つ、いわせてもらってもいいかしら」
純一「…なんだよ、薫」
薫「…あのね、これから先の皆は多分」
薫「今回のことを踏まえて、それなりの雰囲気で三年になっていくはず」
純一「……」
薫「…悪い雰囲気だとか、そういうのじゃなくて。
結局のところそうなんだけど、だけど、やっぱり何も変われないのよ」
純一「……」
薫「───起こってしまったことは、もうどうしようもない」
薫「…始まってしまったことは、もう止められない」
薫「アンタがどんなに頑張ろうとも、この空気は…もうダメなのよ」
絢辻「……」
薫「…アタシだってそう、多分、変われない」
薫「だけど、アンタは……守るんでしょう?」
純一「………」
薫「その抱えてる、大好きな女の子を。そんな悪い雰囲気からずっと」
純一「………」
薫「……みんな、どうしようもないのよ」
絢辻「………」
薫「もう、遅すぎた感じ……分かるでしょ」
梅原「……」
田中「……」
純一「…変われる一歩が、わからないってコトか」
薫「……頑張りなさいよ、アンタは好きだって言ったんだから」
薫「……アタシはアタシで、今の〝アタシ〟になり続けるから」
くる
薫「…さ、始めましょ創設祭」
田中「…薫」
薫「……よかったのよ、これで」
薫「……アイツが幸せなら、それでいいのよ恵子」
田中「……うん」
さるよけ
薫「…やっと、アイツが守るって想いになったんだから。
アタシは、それからずっと鬼になってればいいだけ」
田中「…うん、うん」
薫「…全部、全部、計画通りよ」
田中「……うん」
絢辻「……」
純一「……」
絢辻「…ねえ、橘くん」
純一「…ん」
絢辻「…一つ、教えてほしいんだけど」
純一「…なにかな?」
絢辻「あの、その……どうして」
純一「…うん」
絢辻「───さっきから、嬉しそうにしてるの…?」
あああああああああああああああああああああああああ!!!!僕はただた幸せになりたくてなりたくてただそれだけで!!!
なのに僕はどうしてこんなことになったのか全く分からない!!なんでどうして僕は本当に忘れたくてそうやってただけなのに!!
みんなみんなみんな僕から離れていく!!僕が悪かったの!?僕がダメだったの!?どうして!?頑張ったのに!僕は僕は!!
好きになっちゃいけなかったの!?僕は君たちを好きになっちゃダメだったの!?ならどうして僕を見た!!僕を翻弄した!!
弱い僕はダメな僕は流されてしまうに決まってるだろ!!わかってくれとはいわない!!だけど僕は僕は僕は僕は僕は僕は!!
裡沙「くすくす…」
人を好きになりたかっただけだったんだ!!この思いを誰かに届けたいとねがっただけで!!
なにか特別なことが欲しかったわけじゃない!!小さなものでよかった!あの記憶がなくなるだけで!!
だから人を好きになりたかっただけなのに!!もう誰も僕のことを見てくれないの!?ダメなの!?
裡沙「あははっ……ふふ」
純一「……僕が、嬉しそうにしてるかな」
絢辻「うん、してるじゃない」
純一「こんな状況なのに?」
絢辻「こんな状況なのに、よ」
純一「そっか、僕は…嬉しそうにしてるのか」
絢辻「……」
純一「それはそれは……だって、それはだってしょうがないじゃないか」
純一「───変わりたいと、みんなが願っているのなら」
純一「───あとはどうにかすればいいだけの話だよ」
絢辻「え……?」
純一「よいしょっと……ちょっと降りてね、絢辻さん」
絢辻「う、うん…?」
純一「……ふぅ、はぁーー……」
絢辻「…??」
梅原「───……ん……っ!? ま、待て! 何をしようとしてる大将!?」
>>526
これ違うスレに書きこむのだけはやめてくれ
チョイトイレ
>>530
すまなかった
純一「ふぅー……」
絢辻「え、梅原くん…っ?」
梅原「ちょ、ちょっと退いてくれ…っ! ダメだって橘!」
純一「──覚悟は出来た、うん」
純一「…必要なのは、ちょっと背中を押すことなんだよ絢辻さん」にこ
絢辻「えっ…?」
純一「本当のことを知るのは誰にだって怖いことだ、だけど、絢辻さんはその本質を…見に抜けてしまう」
純一「…その〝ホントの自分〟を知る覚悟が無いから、みんな手帳のことを忘れることが出来ないんだよね」
絢辻「う、うん…?」
純一「…もったいないよ、それって」
絢辻「も、もったいない…?」
純一「そう、もったいない。出来ることがまだあるのかもってことなのに、みんながそれを見ないふりをするんだ」
純一「……だから、見せつけてあげるんだ」ぐぐっ…
純一「本当の、隠された、本質の自分を……ね?」
ジョン「───わおおおおおおおおおおおおおおおんっ!!」
ジョンだと!?
クラス一同『……!?』
ジョン「わんわん!」
田中「ふぁっ…!?」びくっ
ジョン「くぅーん……へっへっへ…わん!」
田中「た、たちばな…くんっ?」
ジョン「へっへっへ…!」くるくるくる
ジョン「わん!」
田中「え、ええっ…!? わ、わんっ?」
「な、なんだっ……!? 急に犬が現れたぞ!?」
「あ、あれはっ……橘だ! 橘純一だ!」
薫「───なに…廊下騒がしいけど、アンタら早く創設祭の……」
ジョン「わんわんっ!」
薫「………は?」
なんだこれ
一体何が起こってるんだ!?
ジョン「へっへっへ…」
薫「……。イヤちょっと待って、なに、アンタそれなんなの」
ジョン「わぅ?」
薫「わ、わぅじゃないわよっ! じゃなくて、乗せられてどうするのアタシ…違う違う!」
ジョン「わぅんっ~」すりすり
薫「ちょっ…足元にすりよってくんるなっ!」ばっ
ジョン「へっへっへ…!」
ドドドドドドドド!!
田中「…え? 誰かこっちに走ってくる…?」
「───今この辺で、犬の声が聞こえた気がしたんだけど! 何処に居るの!?」
「で、出た…」
「かの有名な……」
森島「むむむ! 犬ちゃんがどこにも居ないわね? ……ありゃ?」
ジョン「?」
森島「────居るじゃない! きゃーん!」
森島「なんなのなんなのー! どっからか紛れ込んできちゃったのかしら~~! んー!」ぐりぐりぐりぐり
ジョン「イッフ! エッフ!」
森島「おっ? この辺がいいのか~? んんー、いやしんぼさんめ! これでどうだ~!」なでなでなで
ジョン「キュイーン!」
絢辻「……………………………」
梅原「……大将…」
薫「な、なにやって……なにやってるのよアンタら!?」
絢辻「…………………………橘くん?」
ジョン「おふっ!?」びっくぅ…
絢辻「………そろそろ、説明」
ジョン「…わぅん?」
絢辻「説明」
ジョン「……りょ、了解です」
ジョン「ごほん……それでは、どう思う今の僕を!」
薫「…仰向けになって、お腹撫でられてる変態ね」
絢辻「…どうみたって変態、変態の犬」
ジョン「そ、その通り!」
田中「な、なにがその通りなの橘くん……」
ジョン「僕はこんな奴なのさって事だよ! みんな!」
クラス一同『えぇー……?』
ジョン「僕は犬なんだ! 犬っころで、撫でられるのが大好きで!」
ジョン「それにこのアングルから見る女の子の姿が超好きで!!」
絢辻「っ……!」ばっ
ジョン「女の子にこうやって構われることが、好きで好きでたまらないんだ!!」
森島「あ、この犬耳付ける? わお! 凄く似合ってるわよ!」
薫「変態」
絢辻「変態」
ジョン「ぐぉっ……わ、わかってるとも! 変態だよ僕は!」
ジョン「変態で醜くて、どうしようもなくて、お馬鹿さんで! 犬っころだけど!!」
ジョン「───それがどうした! 僕は僕だ!!」
ジョン「犬であって、変態であって、でもそれが僕と言う本質だから!」
ジョン「なにも怖がることは無くて、ただひたすらに自分の想いに正直になれた奴だけなんだよ!」
ジョン「この想いが!! この強くてなによりも絶対的な心が!!」
ジョン「僕の弱さなわけ、あるはずがない!!」
薫「っ……あんた、犯罪者にでもなるワケ?」
ジョン「なるわけないだろ! 紳士だぞ!」
梅原「……ああ、紳士だよ大将」
森島「いいこね~」なでなで
ジョン「わぅん! ……だ、だから! みんなは怖がりすぎなんだよ!」
ジョン「──どうして自分の弱みにそこまで怖がるんだ!
あの手帳に書かれていたことは、本当に…本当に! 悪いものだとなんで決め付けるの?!」
薫「……それは」
ジョン「確かに絢辻さんはみんなことを悪く書いていたのかもしれない! いや、書いてると思う! 絶対!」
絢辻「………」
ジョン「だけどそれは! 自分自身が知りたくないって思ってた、そんな『弱い所』を書かれていたから!」
ジョン「みんなはどうしようもなくなって、絢辻さんに冷たくなってしまったんじゃないか!?」
クラス一同『………』
ジョン「僕は、そんなのおかしいと思う! 悪いのは確かに絢辻さんで、みんなは悪くない! だけど!」
ジョン「───それを受け止められなかった、みんなの弱さにも原因はあるよ!!」
クラス一同『………』
完結してると思って読んでて追いついてしまった今のこの絶望感、だれかと共有したい
>>555
未完よりマシだろ
ジョン「みんな! もっと強くなろうよ! 知ってるんでしょう!? 絢辻さんの凄さを!」
「……まあ、な」
「一人で……創設祭の準備とか」
「……計画図案の、みんなの配置とかね」
ジョン「そうだよ! みんな……わかってるじゃないか、どれだけ絢辻さんが凄いんだってことが、知ってるじゃないか」
すっ…
純一「……僕は、その絢辻さんの凄さで。そして弱みで、僕は〝犬〟にもなれた」
純一「こんなにたくさんの人たちが居るのに、僕はそんな『変態』な所を見せつけることが出来たんだ」
純一「……ダメだよ、みんな。逃げちゃだめだ」
クラス一同『……』
純一「例え、それがどれだけ自分にとって認めたくない部分だったとしても。
自分自身がそうじゃないって思いたくてしょうがなくても」
純一「……心の中には、絶対に崩せないものってあるんじゃないのかな」
純一「それは、確かにここにあるんだ」トン…
純一「逃げては何も出来ないよ、弱点だからって、隠しても良いことには絶対にならないから」
純一「……自分の本当の弱さ、そしてその強さを自覚して」
純一「───さあ、前を向いて歩きだすんだ」
薫「…アンタ……」
絢辻「…橘くん」
「っ……でも、どうしたらいいのかわかんねぇよ…」
「そうだよ…橘が言ってること、かっけえけどよ…犬耳つけてるけどよ…」
「…そうよ、弱みなんて判断することなんて…」
純一「何言ってるんだよ、簡単なことじゃないか!」
クラス一同「えっ……?」
純一「そんなの、きっかけとしては簡単だよ? だってさ、その弱点はどうしてみんな知れたの?」
純一「だからね、こうすればいいんだよ───」
純一「───絢辻さんを、超えてやればいい」
絢辻「っ……」
純一「その指摘されていた弱点を、克服して、強さにかえて!」
純一「自分の自身の武器として、絢辻さんに立ち向かえばいい!!」
「立ち向かえばいいって……」
「そんなこと……」
純一「……うん、出番だよ絢辻さん」
絢辻「えっ…?」
純一「出来るよね? ここまでお膳立てしたんだよ、大丈夫…平気だよ」
絢辻「………」
純一「──ラスボスさん、どうかここで…勇者たちに」
純一「激励の言葉を、お願いします」
絢辻「……───」
絢辻「───わかった、橘くん」
クラス一同『……?』
絢辻「……」すた…
絢辻「───ねえ、こんな言葉を知ってるかなみんな」
絢辻「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
絢辻「…賢者は私、そして愚者は貴方達」
絢辻「私は常に人の心を欺き、嘯き、そして騙す」
絢辻「私と言う強さは、誰にも理解できないほどに……長い時と時間で形成されているの」
絢辻「……まあ、言えば『そういった自分』というものを自覚できるのよね」
絢辻「だけど貴方達は、愚者」
絢辻「経験でしかものごとを学べない、つまりは失敗でしか成長が出来ないのよ」
絢辻「つまりこれって……やっと私にちょっとだけ辿り着いたってことかしら?」
クラス一同『……』
絢辻「失敗を重ね、成功を学び、そして強くなる」
絢辻「……あ、でも貴方達はまだ失敗しているだけだっけ?」
クラス一同『……』
絢辻「ざーんねん、そうだったわね。だったら仕方ない、それじゃあもっと失敗しなさい」
絢辻「失敗に失敗を重ね、そして本当の愚者になればいいのよ」
「……絢辻さん、それは本音?」
絢辻「そうよ? まあ難しい話はみんなにわからないかしらね」
絢辻「だからみんなは馬鹿なのよ、いつまでのそのまま、何も変わらない」
絢辻「失敗から何も学ぼうとしない」
クラス一同『…』
絢辻「ずっとそのままでいればいいじゃない、いいわよ、大丈夫、誰も困らないから」
絢辻「──私という存在が居る限り、そんな劣等感が永遠に続くだけでしょうしね」
絢辻「…もっとも、それでも……」
絢辻「………そういった失敗を、常に重ねたいのなら」
絢辻「失敗という連鎖の中で、貴方達が……それでも『何かを求めたい』と思うのなら」
絢辻「───いいわよ、かかってきなさい。全力で立ち向かってあげるから」
絢辻「………」
「………なにそれ」
「…それって、私が天才だから」
「かかってこいとか、そういうこと?」
「俺たちが弱いから…」
「…委員長が強くしてくれるっていってるのか?」
「はぁ? まじかよ…」
絢辻「………」ぐっ…
「──やってやろうじゃないっ…」
「ああ、そうだ! 見てろよ! 委員長!」
「何よ! よくもっ…よくもそんな事を言ってくれたわね!」
いいクラスじゃないか
絢辻「……え…」
「ふざけるなよっ! 友達に金を借りてもっ…ちゃんと返すわ!」
「そうよっ…! 勉強できなくても、これからちゃんとするわよ!」
「身だしなみが悪いって…ぐぁ! ちゃんと髪型もととのえりゃーいいんだろ!」
絢辻「あ……」
「悪かったわね! 創設祭でっ…なんにもやれなくて! 怖かったのよ!」
「委員長! 馬鹿! 一人でやるとか行ったら! 絶対に弱音吐くとか思うだろ!?」
「みんなみんなっ…! 委員長の凄い所……わかってるから、わかってるから何もできなかった!」
絢辻「……」
「悪かったわよっ! あんなこといって……だけど、やっぱりダメだって思ってたけど!!」
「そんなこと、普通は認められねえだろ! やっぱり!」
「ばかー! 凄いけどばかー!」
絢辻「みんな…」
俺「俺のこと何も書かれてなかった…」
すっ…
薫「………」
絢辻「……棚町さん」
薫「…あれが、アンタの本音?」
絢辻「…うん」
薫「うそつき」
絢辻「…どうかな、それは」
薫「相変らず、上手いのね。人の顔色の伺い方が」
絢辻「…うん、そうよ。私ってそういう人間だから」
薫「……」
絢辻「こうやって、みんなの顔色をうかがうことしかできないの」
薫「……そう」
薫「っはぁー……なにそれ、本当に羨ましいじゃない」
?「プジョルで悪かったわね!!」
薫「…アタシは周りのみんなを焚きつけるぐらいしか、できないってのに」
薫「自分自身のわがままを、強くさせるしかできないのにさ」
薫「……アンタは、アンタのわがままで…周りを変えちゃうんだもん」
絢辻「………」
薫「……なによそれ、アイツが好きになるのもわかるじゃん…」
絢辻「…違うわよ、棚町さん」
薫「……」
絢辻「というか、わかってるんじゃなくて?
私という存在がやってのけたことじゃないのよ、これは」
絢辻「彼が……橘くんが、周りのみんなの背中を押したから」
絢辻「……それを私が、ちょっと補完しただけよ」
薫「……まーたアイツがごちゃごちゃにしたってワケか」
絢辻「ふふ、そうね」
薫「──あー! ばっからし!」ぐしゃぐしゃ
薫「じゃあハッキリと言うわ! 絢辻さん!」
絢辻「え、なにかしら?」
薫「……」
絢辻「…棚町さん?」
薫「───女の嫉妬って、凄いわよね」
絢辻「……」
薫「アタシはゴチャゴチャだった、守りたいって思った気持ちと、アタシだけの気持ち」
薫「それが混ざり合って、からまって、自分がどんな人間かって分からなくなるほど」
薫「……アタシっていうアタシが、わからなくなってた」
絢辻「…うん」
薫「だけど、そんなゴチャゴチャがあたしなんだって……気付かせてくれた友達がいたの」
絢辻「………」
薫「そいつは言ってくれたわ、決めた事なら最後まで突き通せって。それが棚町薫だってさ」
薫「…そう、そうなのよ。アタシはただただ、それだけしかない女」
薫「自分に正直で、自分の想いに燃える女。健気にそしてしたたかに、輝かなきゃいけないの」
薫「だから……今回のことで、アタシは一切として嘘は無い」
絢辻「…わかってるわ」
薫「例え、アンタがアタシを演技だと言っても。気持ちに嘘は無かったと断言するから」
絢辻「…ええ」
薫「あの時の自分は、アンタにとって最悪の人間だったかもしれない」
絢辻「…そうね」
薫「だけど! だけど……アタシは、本当にアタシは」
薫「……なんでもない、忘れて」
絢辻「……意気地無し
薫「っ……」
絢辻「…ダメじゃない、それじゃあダメよ棚町さん」
薫「…なによっ」
絢辻「……嫉妬、してたんでしょう? だったら最後まで、立ち向かわなきゃ」
薫「……」
絢辻「貴方が感じてた、そしてそれを突き通そうとしたその思い。
それを最後に揺らぎそうになっていた、どうしてかしら?」
薫「………」
絢辻「…別に謝ってもいいじゃない、悪かったわよ、ごめんなさいって」
絢辻「その言葉を口にしたら、今までの自分が嘘になってしまう……とか考えてるんじゃなくて?」
薫「っ……」
絢辻「弱いわね、笑わせないでよ。だったら強がらず、そのまま悪者になってればよかったのに」
絢辻「───自分の弱さを克服してこそ、強い女じゃなくて?」
薫「っ~~~! ……い、言うわねぇ…アンタ…!」
絢辻「当たり前、だって勝ち組だもの」
薫「へぇー……あ、そう。そうなの、そんなこと言っちゃうんだ~ッ…」
田中「あ、あれ…? なんでそんな不穏な空気になっちゃってるの!?」
梅原「…放っておいてやろうぜ、田中さん」
絢辻「…なによ、また嫉妬? それとも謝罪? …ただ怒るだけ?」
薫「ッ……ああ、そうねッ…例えばそう、こんな感じかしらッ?」
薫「──ごめんなさい、絢辻さん。本当に悪かったわ!」ばっ
絢辻「…土下座」
薫「イヤよ!」
絢辻「はぁ? ……私が経験した寂しく、苦痛の日々はその程度の謝罪で済まされるわけ無いのよ」
薫「元はアンタの手帳のせいでしょうッ? なに自分は被害者ぶってるのかしらねェ~」
絢辻「いじめの主犯は貴方、過激させたのも貴方」
薫「…元の根本的に悪かったのは、全てアンタでしょ。後の行動も全てアンタのせいじゃない」
絢辻「クラスの主導権を握って操作してた件は?」
薫「ただ単にアンタが折れなかったこと。大して悪ぶって無い雰囲気、本当最悪じゃない」
絢辻「…まあ、嫉妬?」
薫「ええ、嫉妬ね! でも、それが周りの正しい反応だったわよ!」
絢辻「醜いわね」
薫「…醜いでしょうね、だけどアンタも馬鹿だった」
絢辻「……」
薫「………」
絢辻「……そうね、ごめんなさい」
薫「……こっちも、ごめんなさい」
絢辻「……私も、なにもわかろうとしてなかった」
絢辻「あんな風に…自分の悪口を思ってた人間に、偉ぶられたら……イラつくわよね」
薫「…こっちもよ、自分の想いを身勝手に周りに押し付けて…人を貶めるとか、最悪」
絢辻「…だけど」
薫「…うん、そうじゃない」
絢辻「これがわたしなのよ、ふざけないで」
薫「こっちもこれがアタシなのよ、ふざけないでよ」
絢辻「………」
薫「………」
「──プッ……あははっ……なにそれ、最悪じゃないアタシ達っ…」
「──くすっ…ほんと、なんなのかしらねっ…本当にっ……」
支援
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絢辻「───それじゃあ、みんな! 準備はいいかなっ!?」
クラス一同『はぁーい!』
絢辻「……今年の創設祭は、記念すべき私たちにとって二回目よ!」
絢辻「一回目は経験をし! 三回目は記憶に残す!」
絢辻「だけど二回目の創設祭は……ただ単に、楽しむことが出来る唯一の創設祭!!」
絢辻「──だから、全力で楽しむわよ…?」
クラス一同『うぉおおおおおおおおおおおお!!!』
絢辻「じゃあはじめ! みんな各自、配置について!!」
クラス一同『おうっ!!』
絢辻「………」
絢辻「…本当に、本当に……良かった───」
森島「──ええ、グゥートな青春よね!」
純一「良かったガフッ」
梅原「大将~!」
絢辻「えっ……あ、森島先輩…?」
森島「はろー! 可愛い可愛いキュートな飼い主ちゃん!」
絢辻「えっ?」
森島「むむむ? 違うのかしら? あのわんぱくな犬ちゃんの飼い主じゃないのかな?」
絢辻「えっと…その、ええ、まあ…」
森島「わお! やっぱりね!」
絢辻「…それで、森島先輩。三年生の持ち場に行かなくてもよろしいんですか?」
森島「…あ」
絢辻「…急いで戻った方がいいと思います」
森島「あわわっ…! このままじゃひびきゃんに怒られるわっ…!」がくぶる
絢辻「あはは…」
森島「───でも、その前にひとつだけ」
絢辻「え?」
森島「お姉さんから、貴方に……教えてあげることがあるの」
森島「あの子死相が出てるわ」
~~~~~~~
絢辻「はぁっ…! はぁっ……!」たったった!
絢辻「はぁっ…馬鹿、馬鹿…!」たったった!
「きゃっ…!?」どっ…
絢辻「ごめ、んなさいっ…急いでるので…!」だっ
絢辻「んくっ……はぁっ! …なによ、馬鹿!」
~~~
森島「──彼は、体調が悪いと思うわ」
森島「──触ってみて分かった。体温が凄いの、これでもかってぐらいに」
森島「──だけど彼はなにも言わないでって、眼で訴えてたから」
森島「──だから私は、飼い主の貴女だけにこの事を伝えておくわね? バーイ!」
~~~
絢辻「──なによっ……馬鹿じゃない、のっ…!」だだだっ
絢辻「具合、良くなって無いじゃないっ…! なのに、なのにっ…!」
ラブリーが ^o^ で再現されて困る
ヾヽ'::::::::::::::::::::::::::'', / あ ま ま ヽ
ヾゝ:::::::::::::::::::::::::::::{ | わ .ま ま |
ヽ::r----―‐;:::::| | わ あ ま |
ィ:f_、 、_,..,ヽrリ .| わ わ |
L|` "' ' " ´bノ | わ わ |
', 、,.. ,イ ヽ て ま /
_ト, ‐;:- / トr-、_ \ わ /
, __. ィイ´ |:|: ヽ-- '.: 〃 `i,r-- 、_  ̄ ̄
〃/ '" !:! |:| :、 . .: 〃 i // ` ヽヾ
/ / |:| ヾ,、` ´// ヽ !:! '、`
! |:| // ヾ==' ' i i' |:| ',
| ...:// l / __ , |:|::.. |
とニとヾ_-‐' ∨ i l ' l |< 天 ヾ,-、_: : : .ヽ
と二ヽ` ヽ、_::{:! l l ! |' 夂__ -'_,ド ヽ、_}-、_:ヽ
絢辻「…馬鹿っ…!」たったった…!
純一『…ただの風邪だよ。何にもない、ただの小さな風邪だから』
絢辻「なによっ……!」
純一『ちゃーんと学校に戻ってくるから、そして、絢辻さんの所へ戻ってくるよ』
絢辻「うそ、ついてたじゃない…!」
純一『でも、約束は守った。ちゃーんと、絢辻さんの傍に居る』
絢辻「このあたしにっ……わたしにっ…!」
純一『僕は嘘をつかない、絶対に』
『どんなことがあろうとも、もしかして僕が死んで───』
『───幽霊になってでも、絶対に戻ってくる』
絢辻「っ……橘くん…ッ!」
まさか・・・!
( ゚д゚ ) ガタッ
.r ヾ
__|_| / ̄ ̄ ̄/_
\/ /
もし自分がこのクラスにいたらなら手帳になんて書かれてだろう…
~~~~~~
絢辻「はぁっ! はぁっ! はぁっ!」
絢辻「ひっぐっ……はぁっ! はぁっ!」
絢辻「どこにも、居ないっ…! 保健室にもっ…どの教室にもっ…!」
絢辻「ッ…っはぁ…っはぁ……」
絢辻「──一体っ……何処にいるのっ…」
『…もっとこの匂いに、包まれて居たいな』
絢辻「っ……」
『…いつまでもずっと、ずっとずっと』
『僕はこの匂いの中で……僕は、僕は…』
『……出来ればそのまま、僕は…───』
絢辻「っ……まさか…!」
>>615
「きょうも出席せずっと」
r、ノVV^ー八
、^':::::::::::::::::::::::^vィ 、ヽ l / ,
l..:.::::::::::::::::::::::::::::イ = =
|.:::::::::::::::::::::::::::::: | ニ= 紳 そ -=
|:r¬‐--─勹:::::| ニ= 士 れ =ニ
|:} __ 、._ `}f'〉n_ =- な. で -=
、、 l | /, , ,ヘ}´`'`` `´` |ノ:::|.| ヽ ニ .ら. も ニ
.ヽ ´´, ,ゝ|、 、, l|ヽ:ヽヽ } ´r : ヽ`
.ヽ し き 紳 ニ. /|{/ :ヽ -=- ./| |.|:::::| | | ´/小ヽ`
= て っ 士 =ニ /:.:.::ヽ、 \二/ :| |.|:::::| | /
ニ く. と な -= ヽ、:.:::::::ヽ、._、 _,ノ/.:::::| | /|
= れ.何 ら -= ヽ、:::::::::\、__/::.輝.:::| |' :|
ニ る と =ニ | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::.日.:::Y′ト、
/, : か ヽ、 | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::東:::::| '゙, .\
/ ヽ、 | |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ト、 \
/ / 小 \ r¬|ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| \
~~~~~
「───無理し過ぎたかな…」
「…いや、そうでもないよね」
「僕が出来ることなんて、これぐらいだし」
「なにもかも、これでよかったんだよ」
「あー……頭がぼうってする…ヤバいのかな、これ」
「……まあ病院から抜け出したらそうなるよね」
「……あの時、絢辻さんが来た時びっくりしたなぁ」
「どうにかお宝ビデオって誤魔化せたけど…」
「──薬の容器、持ってたら心配するだろし……」
「……これでよかったんだよね、うん」
「全部よかったんだよね、絢辻さん……」
「あ、眠たくなってきた……おお、これがあれのかな…」
「嫌だなぁ…もうちょっとだけ、ほんの少しだけ…」
「絢辻さんとイチャイチャしたかったなぁ」
待ってくれよぉ・・・
そりゃないぜ大将ぉ
「……絢辻さん」
「貴方は本当に……綺麗な人だった、可愛くて、いじっぱりで」
「器用だけど、やっぱり不器用で……あはは、なんだかどうしようもない人みたいだ」
「だけど、好きでした」
「…ずっとずっと、貴女のことが好きでした」
「こんな愛しい人が……僕の彼女になってくれるなんて、本当に夢のような日々で」
「…貴女を腕に抱くたびに、幸せでいっぱいでした」
「本当に、僕は幸せ者でした」
「…だから、これからも」
「もっともっと、幸せになれると思うから…だから、だから」
「───ずっとずっと、笑顔でいてください」
「あは、こんな風に語れるなんて…僕も幸せものだね、本当に」
おいおい殺してお涙頂戴とか許さないぜ
ざああああ……
「…ああ、雨が」
「冷たいなぁ…雨ってこんなにも冷たかったかな…創設祭大丈夫かな…平気かな…」
「でも、絢辻さんも……薫も田中さんも梅原も…クラスのみんなも…居るから大丈夫だよね」
ざああああっ…
「……」
「…匂いが、消えてく……」
「彼女の匂いが……消えて……」
「……悲しいな、やっぱ───」
「───ごめんなさい、絢辻さん……」
ざあああああああああっ……
「…約束、守れなくて…ごめんなさい」
「嘘ついて、ごめんなさい………ごめんなさい…ごめんなさい…tね」
「───橘くんっ!!」
「っ……あれ…?」
「たちっ…げほっ……たちばな、くんっ!? 何処に居るのっ!?」
「この声──……ああ、夢か…それなら仕方ない…」
「橘くぅうんっ!!? 何処に居るのよ!! ここに居るんでしょう!!」
「……あ、え…?」
「っ……居た…ッ!」
ざっざっざっ…!
「はぁっ…はぁっ…」
「……あはは…これって、夢なのかな? 絢辻さん…?」
「はぁっ……夢、じゃないわよっ…!」
「…そうなの? それは大変だ……」
「はぁっ…はぁっ…」
「絢辻さんが泣いてるじゃないか…現実なら、慰めないと…」
「はぁっ……んっ…ばか、ばかっ!」
紳士は死なないって信じてるぜ
_⊥__
(____)
/ (_()_)_|
(6 ̄ ̄| 3 | 3 | / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(\__◎_ノ \___________
/ )
「…ん、かもね…」
「はぁっ…なに、やってるのよっ…! こんな河原で…! 貴方は一人で何やってるのよっ…!?」
「……そうだね、お花の匂い嗅いでたんだ…」
「…良い匂いだよ、まるで絢辻さんの匂いみたいで……あ、それでわかったの…?
何時僕……そんなこといったっけ……?」
「ん、っく………そんなの、言わなくてもわかるでしょっ…」
「え…?」
「…愛の力よ、愛の力っ!」
「…わぁお、かっこいいね絢辻さん」
「どういたしまして! っすん、げほっ…なにやってるのよ…本当に貴方は…!」
「…ん、なんだろうね…わかんないや」
「わからないって……どうみたって、肌が真っ白で…っ…雨、そうだ雨宿りしなきゃ…っ」ぐいっ
「……絢辻さん、風邪ひいちゃうから」
「黙ってなさいっ!」
「…ごめんなさい」
すた…すたすた…すた…
「っはぁ…っはぁ……」
「…ねえ、絢辻さん」
「っ…なに、橘くん…!」
「…僕って、絢辻さんにとって大事な人かな…?」
「なに、よそれっ…! 当たり前じゃないっ…!」
「あはは、そっか……こんな風に…肩を持たれて、運ばれてるのに…」
「…嘘つきで、馬鹿で、どうしようもないのに……」
「僕は、絢辻さんの大事な人なんだね……ありがと、本当に」
「っ……やめてよ、喋らないで歩くことだけに集中してないさいっ…!」
「………」
「ばかっ……本当に、何考えてるのよっ…! 貴方は、他人のことを心配し過ぎよっ…!」
さるよけ
「なにもかも一人で背負いこんでっ…! そんな貴方をっ…橘くんをっ!
好きになってしまった人のことをっ…考えてみなさいよっ…!?」
「…うん」
「わたしはっ…わたしは貴方が心配でしょうがなくてっ…!」
「どうしようもなくって…大事で大事でもう、狂っちゃうぐらいに好きなんだからっ…!」
「そんな橘くんを見てるとっ…わたしまで具合が悪くなっちゃうじゃないっ」
「…ごめんね、罰なら何だって受けるから…」
「はぁっ…はぁっ…じゃあ、まずはっ…元気になりなさい! そして…学校にきちんときなさい!」
「そしたら存分に甚振ってあげるっ! 踏んであげるし、なんだってしてあげる!」
「…そっか、嬉しいなぁ」
「だからっ…だからっ…あ……」ずりっ
べしゃあ…
絢辻「痛……あ、橘くん!? 大丈夫!?」
紳士ぃぃぃぃぃぃ!!
(出番まだかな……?)
三 三三
/;:"ゝ 三三 f;:二 iュ 三三三
三 _ゞ::.ニ! ,..'´ ̄`ヽノン
/.;: .:}^( <;:::::i:::::::.::: :}:} 三三
〈::::.´ .:;.へに)二/.::i :::::::,. イ ト ヽ__
. 〈::ミ /;;;iー゙ii====|:::::::.` Y ̄ ̄ ̄,.シ'=llー一'";;;ド'
};;;};;;;;! ̄ll ̄ ̄|:::::::::.ヽ\-‐'"´ ̄ ̄ll
こしふってせっくふ
純一「………」
絢辻「っ……橘くん…?」
純一「……ん、大丈夫…だよ…」
絢辻「ごめん、なさっ……今、橘くん、気が失って…っ」
純一「ううん、大丈夫だって……泣かないで、絢辻さん…」
絢辻「あっ…うっ…」
純一「大丈夫…だいじょうぶだから…ね?」なでなで
絢辻「たち、たちばなっ……くん…っ…!」
純一「ああ、もう……泣き虫だなぁ…絢辻さんは…」なで…
絢辻「…ひっぐっ…もうちょっとで、救急車がくるからっ…!」
純一「…うん、ここでいいよ。平気だよ…」
絢辻「っ……」
純一「……ありがとうね、大好きだよ、絢辻さん」
この橘さんを死なすくらいならいっそ夢オチでも・・・
ぱた…
絢辻「……え…」
絢辻「え、うそ……」
絢辻「ちょっと、待って…橘くん…?」
絢辻「目を開けてよっ…! 大丈夫だから! 平気だって…平気だって言ったじゃない!」
絢辻「僕は平気だって! 大丈夫だって! わたしに言ってくれたじゃない!」
絢辻「ぇ…あっ…ダメよダメ! 起きて! またわたしにっ…言ってよ! 好きだって!」
絢辻「わたしのこと好きって! 眼を開けて、わたしに言ってよ! お願いだからっ!」
絢辻「橘くんっ…! 橘くん!」
~~~~~
病院
「──にぃに!? にぃにはどこ!?」
絢辻「あ……」
大将・・・・・・?
美也「あ…絢辻さんっ!」
絢辻「…橘さん」
美也「に、にぃにはっ!? どうしたの!? 病院を抜け出したって…っ! それで、それで!」
絢辻「…今、ご両親が詳しいことを先生から聞いてるそうよ」
美也「っ……にぃにっ…!」
絢辻「………」
がら…
美也「っ……! お父さん! にぃには!? にぃには大丈夫なのっ!?」
「…今から手術だそうだ、そうとう無理していたらしい」
美也「っ……」
絢辻「…すみません、橘くんの同じくクラスで委員長を務めさせていただいてます。絢辻詞と言います」ぺこ…
「ああ、君が純一を運んでくれた……すまなかったね、本当に感謝してもしきれない」
絢辻「…はい、それで…」
「君は…息子の病名を知っていたのかね」
絢辻「…いえ」
美也「え…?」
「…そうか、アイツも罪作りな奴だ。正直に教えればいいものの」
絢辻「…彼の病名は…?」
「…突発性喘息、そしてインフルエンザにも掛かってるそうだ」
絢辻「っ……」
「喘息の方は以前から治療も行っていた、しかし、インフルエンザともなると…」
「…馬鹿な息子だ、無理をしたんだろう。なにをしてたかはわからないが」
「気道が信じられないぐらいに炎症を起こしてるそうだ、まるで、出る咳を我慢し続けたようだったと」
絢辻「……っ…!」
「軽度の喘息で終わらせればいい物の……馬鹿が…本当にっ」
美也「お父さん…」
うんこ
犬の散歩から帰ってきたけど終わってなかったでござる
絢辻「……」ぎゅっ…
絢辻「ですが、喘息となれば決して治らない病気ではないですよね」
「……ああ、そうだ。先生の方もそう言ってくれていた」
絢辻「…少し、気になるんですが」
「なにかね」
絢辻「……。私は橘くんのことを、たぶん、家族以外で……一番近くで見てきた存在だって思ってます」
「……」
絢辻「それほどまで、橘くんのお父さんに向かって…堂々と言えるほどに、私は橘くんと近い関係にあります」
絢辻「───ですが、気になることがひとつだけあるんです」
「…つまり?」
絢辻「病気に対して、彼が治す気が全くない」
美也「っ……」
絢辻「……喘息であれ、このような自体を起こす引き金ともなってしまう…しかし、それでも」
絢辻「彼はこの病気を、一向に治す気が無かったような気がするんです」
絢辻「……」ぎゅっ…
絢辻「ですが、喘息となれば決して体調が良くならない病気ではないですよね」
「……ああ、そうだ。先生の方もそう言ってくれていた」
絢辻「…少し、気になるんですが」
「なにかね」
絢辻「……。私は橘くんのことを、たぶん、家族以外で……一番近くで見てきた存在だって思ってます」
「……」
絢辻「それほどまで、橘くんのお父さんに向かって…堂々と言えるほどに、私は橘くんと近い関係にあります」
絢辻「───ですが、気になることがひとつだけあるんです」
「…つまり?」
絢辻「病気に対して、彼が治す気が全くない」
美也「っ……」
絢辻「……喘息であれ、このような自体を起こす引き金ともなってしまう…しかし、それでも」
絢辻「彼はこの病気を、一向に治そうとする気がないように思えたんです」
「……何が言いたいんだね」
絢辻「ずっと不思議だったんです、なぜ、風邪として偽っていたのか」
絢辻「正直に言えばいいじゃないですか、私に対しても、周りに対しても」
絢辻「…不治の病ではないのなら、死を宣告されるような病名では無いのなら」
絢辻「だけど、彼は偽った。周りに対して、親しい間柄の人に対して全員に」
美也「………」
「……」
絢辻「……どうしてか、なんてのは、家族の皆さんには理解してますよね」
絢辻「私はそれを聞きたいんです」
「…家族の問題だ、君には…」
絢辻「───関係はありますッ!」
「………」
絢辻「今っ…こうやって…苦しんでる橘くんはっ…!
全部全部、わたしのせいであって…っ…だから!」
絢辻「だからっ……わたし、は…!」
美也「──…お父さんとお母さんを引きとめる為にだと思う」
「っ…美也!」
絢辻「えっ……」
美也「最近、お父さんと…お母さん。仲が悪くて、それで……離婚する話とかでてきちゃって」
絢辻「………」
美也「だけど、ね。ちょうどその時期に……にぃにが喘息になっちゃって…」
美也「……それから、お父さんとお母さんの仲は…ちょっとだけ良くなって」
美也「だから……にぃには、その仲を取り繕うために……」
美也「……にぃには、病気…治す気が無かったって思う」
絢辻「……ありがとう、橘さん。本当に、ありがとう」
美也「……ううん、いいんだよ。にぃにだって…秘密にしすぎなんだから…」
絢辻「…そうね、本当に」
「………」
絢辻「……そういうことだったんですか、わかりました」
一時間だけ時間ください
ちゃんと戻ってきます!
かならず繋ぎ止めるぜ
くそっ、しょうがねぇな
保守間隔短いなww
こんなに人いたのかwww
少し減速した方がいいな
ほ
れ
>>715-717
ほほれって何だよ
す
約束の時間だ
紳士なら隠れずにry
まだかね
いまきたかく
「……」
絢辻「…橘さん、貴方はこのことを知っていたのですか?」
「……ああ」
絢辻「彼が、貴方達……そして家族を守るために。自分の病名を他人に押し隠し、そして」
絢辻「その病気が長引けば、幸せな家庭が続くのだと」
絢辻「そんな彼の覚悟を、貴方は知っていたんですね」
絢辻「……父親、失格です」
「……っ…」
絢辻「こんなこと、何も知らぬ子供言われることほど……屈辱的なことは無いでしょうね」
絢辻「ですが、わたしは言いたい。貴方は親として失格だと、貴方は最低だと」
「私はっ…! 私、はっ……!」
絢辻「───奪いますよ、そんな体たらくでは」
「なっ……」
絢辻「そんなにも彼に負担をかけるのであれば、わたしは彼を貴方達から奪います」
絢辻「───永遠に、貴方達の手から彼の存在を消してやります」
美也「絢辻さん……」
絢辻「……私は、彼のことを何も知らなかった。教えてもらえなかった」
絢辻「例えそれが彼の優しさだったとしても、彼ならではの思いやりだったとしても」
絢辻「…私はもう、その優しさの中で生きて行くつもりはないんです」
絢辻「私が、あたしが───そしてわたしが……」
絢辻「……彼を、全力で幸せにするから」
「………」
絢辻「もう、怖がらない。全てがわかったんです、もう、勘違いもすれ違いもありはしない」
「…君は…」
絢辻「強いでしょう? ふふ、彼が惚れてるわたしですから」
「……」
絢辻「そして、彼に強くしてもらった『わたし』です」
絢辻「………美也ちゃん、いいかなちょっと」
美也「え…?」
絢辻「お願いって言うか、その……宣言があるんだけど」
美也「…いいですよ、なんですか?」
絢辻「うん、あのね────」
絢辻「───元気になったお兄ちゃん、わたしが貰ってもいいかな?」
美也「ふぇっ…?」
絢辻「……多分だけど、この家族で一番彼のことを思ってるのは…貴女だから」
絢辻「今、その彼の大事な人に確認を取ってます」
美也「あ……」
絢辻「…いいかな、貰っても?」
美也「……っ……」
美也「………あ、あんなにぃにでよかったら……うん」
美也「もらってやってください、お願いします…!」ぺこっ
絢辻「ええ、貰ってあげます!」
「………」
絢辻「……さて、これから〝大人〟の会話ですよね、橘さん」
「……私は…」
キタ━━━ヽ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )メ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )メ( ゚∀゚)人(゚∀゚ )ノ━━━!!!!
絢辻「………」
「私は……純一のことを決して…」
絢辻「…ええ、分かってます。貴方は良い父親だと」
絢辻「でなければ、あのような……わたしが好きになれる人に、成長するわけがないから」
「………」
絢辻「だけど、人は絶対じゃない。どこかで間違いを起こして、なにかしらのミスをする」
絢辻「……わたしはそれを、どうにかして止めたい」
「………」
絢辻「……ただの小娘が変えられる問題ではないと、思ってます、けど」
絢辻「どうか……お願いします、橘さん」
絢辻「なんだって、わたしが出来る事なら…全てやります」
絢辻「───お願いですから、彼を…不幸にさせないでください」
「っ……」
支援
美也「…お父さん」
「美也……いや、すまん……お前にも…私は…」
美也「……ううん、いいの。ちゃんとわかってるよ美也…」
「っ……どうにかしてやりたい、その気持ちは私の中にも…キチンとある…!」
「だが、それは…! 私のわがままで、決して簡単に済まされるようなっ…!」
絢辻「………」
「……………弱いのだろうか、私は」
絢辻「………」
「……こんなにも、年の離れた子に…説教をされて、しかも息子の幸せまで願われた…っ」
「こんな私は……本当に、本当に父親失格だっ…!」
絢辻「じゃあ、変えたらいいじゃないですか」
「っ……」
絢辻「今の貴方が抱えて言える、その〝弱点〟を。貴方が押し隠していたいその〝こころ〟を」
絢辻「……貴方なりに、そして父親として」
絢辻「───全力で、前を向けばいいでしょう」
「…前を、向けばいい…?」
絢辻「……この言葉は、貴方の息子さんが言った言葉です」
「っ…純一が…?」
絢辻「ええ、わたしに…そしてクラスのみんなに向かって」
絢辻「──弱みを超えて、強くなれと」
「……アイツが、一番……家族の中で…苦しみを感じてたはずの…」
「……馬鹿野郎、本当に…私は……僕はっ…馬鹿野郎…!」
だっ!
美也「お、お父さんっ!?」
「お前は純一に付添っててくれ! ぼ、私は行く所がある!!」だだっ!
美也「………」ぽかーん
絢辻「ふふ、〝僕〟ね……やっぱりそっくりじゃない」
美也「………その、絢辻先輩…」
絢辻「ん? なにかしら?」
美也「……ありがとう、ございます」
絢辻「…お礼なんて」
美也「…全部全部、先輩のお陰です……だから…」
美也「みゃーは……みゃーは……ひっぐ…」
絢辻「…よしよし」
美也「ありがっ……ござ、いっ……ふぇええええっ!」
絢辻「……橘くんの周りの女の子は、みんな泣き虫ね本当に」
絢辻「………」
絢辻「……これでなにかあったら、許さないわよ本当に」
絢辻「元気になって、ちゃーんとわたしの目をみて……それから!」
絢辻「きちんと、またスキって言わせてあげるんだからっ」
~~~~~~~~
イイはなしえん
梅原「時に思うワケだ」
マサ「おう、なんだ」
梅原「人ってぇーもんは」
ケン「うむうむ」
梅原「……絶対的に馬鹿だと言えるような奴が、絶対に居ると」
マサ「いいこというねぇ!」
ケン「梅原天才だな!」
梅原&マサ&ケン「あっはっはっは!」
「……うるさい、げほっごほっ」
マサ「おっ? おっ? なんだろう…まるで鼻にチューブを通した奴が喋ったような声が聞こえた…?」
ケン「怖いな……なんだそれ怖いな!」
梅原「……霊感あるんじゃねえか、お前?」
マサ「!?」
ケン「…これからちょっと距離置いていい?」
マサ「!?」
梅原「あ、そういえばケンのお宝本親に取られた」
ケン「!?」
「…あ、共同のお宝ビデオ…今回の入院でばれた…」
梅原&マサ&ケン「!?」
「───あーはいはい、アンタら病室で騒がない~」
梅原「いやっ…! こればっかりは許せねえよ! 棚町!」
薫「うっるさいわねッ」ブンっ
マサ「うごぉっ!?」
ケン「マサァァアアアアアア!!!」
薫「アンタもうるさいッ」
ケン「コヒュッ…」どしゃ…
梅原「あわわわっ…!」がくがく…
薫「静かにしてる、おーけー?」
梅原「わ、わったぜ! おう!」
薫「うるさいわよっ!」
梅原「うぉおおおおおっ!! 俺は避けるぜェエエエ!!」
「……お前ら、うるさいから…」
きゃーぎゃー! わーわー!
「……はぁ」
「──まぁでも、楽しくていいんじゃない?」
「……ん…そうかもね…」
絢辻「…体調も良くなってきてるんでしょ? 個室だし、周りにも迷惑掛かって無いわよきっと」
純一「だと……いいけど…」
純一「…でも…仮にもインフルエンザにかかってるんだからさ…」
絢辻「あら? わたしはずーっとお見舞いに来てるけど、かかってないわよ?」シャリシャリ…
純一「…それはね、だって絢辻さんだし……まって、ナイフ危ないからっ…突っ込めないからこの状態だと…!」
絢辻「リンゴ食べる?」
純一「…流動食です、今は」
絢辻「うん、知ってるわよ!」
純一「……うん、だからいつも果物持ってきてるんだよね…わかってたよ…うん…」
絢辻「ふふ」
純一「……あはは」
がらり
美也「にぃにー! ってなにこの状況…!? 死屍累々…!?」
絢辻「ん、こんにちわ美也ちゃん」
美也「あ! 詞先輩! ……今日もお見舞いですか?」
絢辻「そう、今日もお見舞い」
純一「…お見舞いと言う僕いじめ…」
紳士が無事でよかった
絢辻「…」ニコ
純一「…薫ぅー…バトンタッチ…」
薫「イヤよ、勝手に刺されてなさい」
美也「あ、今日はまんま肉まん限定駅前売りを持ってきたんだよー!」
絢辻「まあ、買えたのね?」
美也「にっししし! そうでーす! みんなで食べよー! ほらほら、梅ちゃん起きて起きて!」
梅原「お、おう…ほら、お前らも起きろ」
薫「限定品!? 妹ちゃんっ…それってどこで買えるの! 教えて教えて!」
絢辻「企業秘密よ」
美也「にっしし」
薫「なっ!? …それは酷くない~」
純一「…主に食えない僕が酷いよねこれ……」
美也「自業自得でしょ?」
薫「アンタのせいよ」
梅原「反省しろ」
絢辻「変態」
純一「実にその通りなんだけど…変態関係無いよ……」
絢辻「……ふふ、でも大丈夫よ橘くん」すっ
純一「うん……?」
絢辻「そんな貴方でも、変態で、犬っころで……入院しちゃうようなお馬鹿さんだけど」
絢辻「───わたしは、ずっとずっと大好きだから…ね?」ちゅっ
純一「……あは、僕もだよ絢辻さん」
梅原「この雰囲気…」
薫「完全に二人の世界よコレ…」
美也「何時もこんな感じだよ?」
うらやましえん
マサ「これは上手いなぁ!」
ケン「もしゃもしゃ!」
薫「あっ! アンタら喰いすぎよ!」
梅原「テメー! それ、俺んのだろうがッ!」
美也「…たくさんあるよー? もぐもぐ」
「──調子はどうだ純一…うお、なんだ人が多いな今日は…」
「──まぁ、ほんとに。純一のお見舞い?」
美也「もぐもぐっ…あ、お父さん! お母さん!」
薫「へっ……? あ、こらアンタ達! 親御さんよ!」
梅原「返せゴラッ! なに半分以上も食ってやがんだッ…!?」
マサ&ケン「うぉおおおおおおっ!!」
「……はは、元気がいいな」
「……ふふ、いいお友達ね」
絢辻「……ねえ、橘くん」
純一「……うん、なにかな」
絢辻「今って……貴方にとって、幸せ?」
純一「…んー……どうだろうね……」
薫「黙りなさいッ」
梅原「痛ェ!?」
美也「あのね! あのね!」
「うん、なんだ美也…ほう」
「まあ、ほんと? それは凄いわね~」
純一「……多分だけど……」
純一「───これ以上の幸せは、僕はしらないよ…絢辻さん」
絢辻「……そっか、良かった」
純一「……うん、ありがとう…本当に」
絢辻「コラ、何言ってるの? 橘くん?」
純一「え……?」
絢辻「これぐらいで感謝されてもダメよ、全然ダメ」
絢辻「───貴方はこれからもっと、幸せになってもらうんだから、これぐらいで感謝してたら…」
絢辻「……貴方はわたしからの幸せで、押しつぶされちゃうわよ?」
純一「…はは、そうだね、確かにそうだ」
純一「………絢辻さん」
絢辻「うん? なに橘くん?」
純一「僕は、幸せで…とても幸せで……だから、この言葉を…貴女に言いたいと……思うんだ…」
純一「───今、貴女の匂いに包まれてることが…なによりも幸せです…」
絢辻「っ……」
絢辻「もう、ばかっ!」
俺「もう、ばかっ!」
アマガミ一番くじどこでやってるの?
おわりです
ご支援ご保守ありがとうでした、
薫派です
なにがあろうと薫派です
絢辻さんは苛めるから輝けるんだと思ってます
ではではノシ
うんこいってきます
>>772
かわいい
>>774
俺「もう、ばかっ///」
乙ー
*、 *、 。*゚ *-+。・+。-*。+。*
/ ゚+、 ゚+、 *゚ ・゚ \ 。*゚
∩ *。 *。 +゚ ∩ *
(´・ω・`) +。 +。 ゚* (´・ω・`)
と ノ *゚ *゚ ・ 。ヽ、 つ
と、ノ ・゚ ・゚ +゚ * ヽ、 ⊃
~∪ *゚ *゚ * +゚ ∪~ ☆
+′ +′ +゚ ゚+。*。・+。-*。+。*゚
乙!!
くじは検索してみるといいよ
在庫は電話で確認もできるし
>>1
フッ… l! ∠. ̄~\/
|l| i|li , __ _ / 【】【】【】
l|!・ω・ :l. __ ̄ ̄ ̄ 三 l`・ω・l≡
!i ;li  ̄ ̄ ̄ キ 三 ̄ 三
i!| |i  ̄ ̄  ̄ =`'ー-三‐ ―
// /
// ̄/>; / ; ;
; 【】【】【】ヽ / ヒュンッ
l`・ω・´l|/
/ ξ/ i/ こ、これは乙の軌道じゃなくて忍びの修行なんだからね!
// /´
: /
/ /;
/~ ̄~>≡
ニ【】【】【】ヽ~≡
l`・ω・´l| ニ≡ ; .: ダッ
キ ̄ ̄ 三 三 人/! , ;
=`'ー-三‐ ―_____从ノ レ, 、
というか、>>526のこれって何?
原作のセリフとかだったらすまん、やったことないんだ
ウンコ帰ってきたら凄いことに
ありがとう乙ありがとう
>>826
以前に書いたssの一レス原作関係ない
これを他スレに張ってる人を見かけるので、本当にやめてください
では寝るノシ
このSSまとめへのコメント
良い