P「君の名前は?」  貴音「四条貴音と申します」(109)

P「お疲れ様です」

小鳥「お疲れ様ですプロデューサーさん」

P「いやー、今日は大変でしたよ」

小鳥「亜美ちゃんと、真美ちゃんですか?」

P「そうですよ、あの姉妹には困ったもんですよ」

小鳥「ふふ、元気いっぱいですもんね」

P「ホント、貴音みたいに落ち着いてもらいたいですよ」

小鳥「貴音?」

P「えぇ、貴音みたいに落ち着いて──」

小鳥「えっと、誰ですか?」

P「えっ」

P「何言ってるんですか、貴音! 四条貴音ですよ」

小鳥「えっ、はぁ……アイドルの人ですか?」

P「な、なんだ分かってるんじゃないですか」

小鳥「どこの事務所の娘なんですか?」

P「さっきから何言ってるんですか、765プロに決まってるじゃないですか」

小鳥「えっ……あぁ、新しく入ってくるんですか?」

P「……」

P「ちょ、春香」

春香「どうしたんですかプロデューサーさん?」

P「お前……貴音が分かるか?」

春香「貴音さんですか? それは分かりますよー」

P「だ、だよな」

春香「貴音さんがどうかしたんですか?」

P「いや、小鳥さんが変な事を言うからさ……」

春香「変な事?」

P「まるで貴音を知らないような素振りをするんだよ」

春香「そうなんですか」

P「変だろ?」

春香「えっ、はい、あれっ……」

P「? どうかしたか?」

春香「い、いえ……すいませんプロデューサーさん貴音さんの写真とかってありますか?」

P「写真? グラビアとか潜在の奴とか色々あるはずだけど」

P「それに花見でとった奴とかあるだろ」

春香「そ、そうですよね」

P「そうだ、小鳥さんに写真を見せつけてやる」

春香「し、失礼しますプロデューサーさん」タタッ

P「おう」

――――――――――――――――――――

P「なんでだ……?」

P「確かこの雑誌に載ってたはずなのに」

P「これも……こっちにも載ってない……」

P「どうなってるんだ……」

P「花見の時の写真!」

P「確かデスクの中に」

ゴソゴソ
P「あったあった」

P「音無さん、これ貴音ですよ貴音」

小鳥「……貴音ちゃん」

P「そうですよ。もう、変な悪戯止めて下さいよ」

小鳥「あれ……なんで私、貴音ちゃんの事を忘れてたんだろ」

P「大丈夫ですか? 疲れてるんじゃないですか音無さん?」

小鳥「そ、そうですよね。アイドルを忘れるなんて……」

P「今日はもう帰った方がいいんじゃないですか?」

小鳥「す、すいません、そうさせてもらいます……」

――――――
――――
――

P「さすがに音無さんがいないと仕事が捗らないな」

P「お茶でも飲みたいがもう事務所には俺だけだし……」

P「自分で淹れるか」


ガチャ

P「!」

P「貴音じゃないか、こんな時間にどうした?」

貴音「プロ……あなた様」

P「明日、仕事は……なかったよな?」

貴音「えぇ、仕事は入ってはいません」

P「じゃあ、どうしたんだ?」

貴音「……」

貴音「あなた様は私の事が……分かりますか?」

P「……分かっているに決まってるだろ」

P「ミステリアスでラーメンが大好きで落ち着いてるけど少し抜けてる所がある765プロのアイドルだ」

貴音「ふふ、えぇ、その通りですね」

P「それがどうかしたのか?」

貴音「いえ、なんでもありませんよ」

P「ふーん、そうか」

P「そうだ、ラーメンでも食べに行くか?」

貴音「らぁめんですか!」

P「新しい店を見つけてな、多分貴音も気にいると思うぞ」

貴音「本当ですか! それは楽しみです」

P「あっ」

貴音「どうしたのですか?」

P「すまん、この仕事今日中にやらないといけないんだ」

貴音「なんと、それでは……」

P「本当にすまん。今日は無理だ」

貴音「そうですか……」

P「今度、今度絶対に連れていくから」

貴音「そうですか……ではその日を心待ちにしましょう」

――――――
――――
――

P「あー、疲れがとれない」

小鳥「昨日はすいませんでした、プロデューサーさん」

P「あぁ、いえ、いいんですよ」

小鳥「……あの私って昨日──」

小鳥「プロ0デューサーさんと何の話をしてましたっけ?」

P「えっ」

小鳥「プロデューサーさんと話していて、何かの話題になった所で頭が痛くなって帰った事は覚えてるんですけど……」

小鳥「確かすごく、すっごく大事な話をしてたと思うんです」

小鳥「けど、全然思いだせないんです……」

P「なっ……」

P「な、何を……」

小鳥「忘れちゃいけない事だとおもうんですけど……」

P「……」

ガチャ
春香「プロデューサーさん!」

P「は、春香」

春香「わ、私……私……」

P「お、落ち着け、なんだ? 何かあったのか?」

春香「分からないんです……」

P「分からない? 何が?」

春香「貴音さんの……顔が、声が……分からないんです……」

春香「CDも写真も探したんですけど見つからなくて……」

P「写真、写真なら俺のデスクに……」

ごそごそ
P「……ない」

P「昨日はここに入れておいたのに」

春香「うっ……うっ……」

P「音無さん、貴音のCDとか写真とかどこにありますか?」

小鳥「えっ、貴音って?」

P「資料室に四条貴音で探してみてください」

小鳥「は、はい」

P「落ち着け春香、まずは落ち着こう」

春香「うぅ……はい」

P「……」ピッピッ

prrrrrrrrrrrprrrrrrrrr……

P「ダメだ出ない」


ガチャ
響「プロデューサー!」

P「今度は響か」

響「聞いてよプロデューサー千早が変な事を言うんだぞー」

P「す、少し待ってもらっていいか? 今は春香と話してるから」

千早「変な事を言ってるのは我那覇さんよ」

響「そんな事ないぞー」

P「少し、静かに──」

千早「四条貴音なんて人、この事務所にいないわよ」

P「……」

春香「うっ……うぅ……」

響「だからー、なんで千早はそんな意地悪いうのさー」

P「……」

千早「はぁ、そんな事を言われても本当の事だからしょうがないのだけど」

響「うーがー、だーかーらー──」


P「春香、大丈夫か? 少しソファーで横になった方が気分が落ち着くぞ」

春香「すいません……」

P(……貴音を忘れていってるんだ)

P(多分、貴音と交流が少なかった人から順々に)

P「貴音、どこにいるんだ……」



響「プロデューサー! ねープロデューサー」

P「お、あぁ」

響「プロデューサーは貴音の事分かるでしょ?」

P「あぁ。分かるに決まってるだろ!」

響「けど、けど皆に聞いたけど……」

P「皆……覚えてないのか?」

響「亜美も真美も伊織もやよいも、真も雪歩も美希もあずさも知らないって……」

P「……」

響「みんな、分からないって……」

P「とりあえず貴音を探そう」

響「うん」

P「貴音がどこにいるか心当たりはあるか?」

響「わ、分かんない」

P「よく行く店とかは?」

響「お店……わ、分かんない……」

響「プロデューサー自分分かんない! 貴音と行ったお店が思いだせない」

P「……とりあえず家に行ってみよう?」

響「うん……早く、速く行こう」

P「あ、あぁ──」

春香「あれ、どっか行くんですか?」

P「ちょっと貴音の家にな」

春香「たかね?」

P「……行こう、できるだけ早く」

響「うん」

ドンドンドン

P「貴音! いないのか?」

prrrrrrrrr prrrrrrrrrr
響「ダメ 全然出ないぞ」

P「くそ、手分けして探すぞ」

響「うん……」


響「ねぇプロデューサー」

P「なんだ?」

響「貴音、見つかるよね?」

P「見つかるに決まってるだろ」

響「う、うん。じゃあ自分こっちにいくぞー」ダッ

P「……」

P「見つかる……きっと……」

P「貴音ー! 貴音ー!」

P「ダメだ……全然見つからない……」

――――――
――――
――


P「どこにも見つからない……」

P「携帯もつながらない……」

P「もしかして事務所に?」

prrrrrrrr──

P「あっ音無さんですか?」

P「はい、あの貴音……いや、銀髪の娘は来てませんか?」

P「そうですか……あっ、資料室の」

P「えっ……」

P「資料室に四条貴音の記録はない……」

P「分かりました、ありがとうございます」
ピッ


P「……」

響「プロデューサー……」

P「響」

響「……分からなくなっちゃったぞ」

P「えっ?」

響「自分が探してる大切な物。家族と同じくらい大切な物のはずなのに……思いだせない」

P「貴音だよ……四条貴音!お前の大切な友達だろ……」

響「たかね……分からない、分からないよ……」ぼろぼろ

響「たかね……たかね……」ぼろぼろ

P「もうこんな時間だ、響は事務所に戻っていてくれ」

響「でも、でも……」

P「大丈夫だ俺が見つける!」

響「……分かった」

P「任せろ、俺はプロデューサーだからな」

響「うん、お願いするさプロデューサー」




P「どこにいるんだ、貴音」

P「もうこんな時間か、月が――」



貴音「あなた様」

P「! た、貴音!」

P「な、何やってたんだ!? 急に連絡が取れなくなって皆、心配したんだぞ」

貴音「……いいえ、それはありえないのです」

P「は?」

貴音「私の事を覚えているのは……もうあなた様だけなのです」

P「そんな訳、そんな訳ないだろ」

貴音「そもそも、あなた様が私を覚えている事が不思議なのです」

P「……」

貴音「今日の朝には皆が私の事を覚えていないはずだったのですが……」

P「そんな事はない。春香も響もさっきまでお前の事を……」

貴音「春香と響が……ふふ、それはとても嬉しいですね」

P「俺も、俺だって覚えている」

貴音「えぇ、あなた様にこれほど思われて、私は心から嬉しいですよ」

貴音「ですがもう、時間のようです」

P「っ……俺も貴音を忘れるのか?」

貴音「残念ながら」

P「なんで、なんでそんな事に!?」

貴音「決まっている事なのです」

P「どうにも……ならないのか?」

貴音「……残念ながら」

P「ラーメン……ほら、昨日ラーメン屋に一緒に行くっていったろ?」

貴音「えぇ」

P「まだ行ってないじゃないか。約束だろ?だから─―」

貴音「もう無理なのです……」

P「無理じゃない……約束だろ……一緒にラーメン食べに行くって……」

貴音「……」

P「響にも連れて帰るって……約束したんだよ……」

貴音「もう……時間のようです……」

貴音「……あなた様、私は765プロが皆が大好きです。あなた様の事は特に……」

P「俺も! 俺も貴音がアイドルで──」

貴音「本当に、本当にありがとうございました。あなた様」

――――――
――――
――

――――――――――

P「今日の撮影もよかったな」

響「自分完璧だからなー」

響「あっ!自分、本屋寄って行っていいかな?」

P「そっか、じゃあ俺は先に事務所に帰るわ」

響「分かったぞ」

P「じゃあ、ここで走って怪我するなよ?」

響「はいさーい」タタッ

P「……さて、久々に俺も歩いて帰るか」

P「……!」バッ

P「あの、すいません?」

「はい?」

P「急にすいません、私芸能事務所の者なんですけど、もしかして芸能関係の方ですか?」

「いえ、昔は少しやっていましたが」

P「そうなんですか……なんで、辞めてしまったんですか?」

「ふふ、とっぷしーくれっとです」

P「へ、はは、そうなんですか」

「ですが、今度こそは、ずっと皆と……そう思っているのです」

P「そうなんですか……じゃあ、内の事務所について話を聞いてみないですか?」

「えぇ、ずっと聞きたいと思っていました」

P「そうですか、じゃあそこの喫茶店にでも……あっ、そういえば──」

P「君の名前は?」

貴音「四条 貴音と申します」

おわり

こんな時間まで保守してくれた方ありがとうございました

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